一実施形態について図面を参照して説明する。
図1〜図4に示す把持装置10は、基板ケース11と、駆動源として周知のソレノイド20と、を備えている。基板ケース11は、断面がL字状のブロックに構成されており、詳細は図示しないが、内部にソレノイド20を動作させるための回路基板が収容されている。ソレノイド20は、基板ケース11のL字状の内側の面に固定されている。ソレノイド20は、例えば自己保持型であり、外部から電力が供給されることにより駆動される。ソレノイド20は、ケース21、永久磁石22、第1コイル23、第2コイル24、第1ストッパ25、第2ストッパ26、可動鉄心27、及びシャフト28を有している。
ケース21は、ソレノイド20の外郭を構成するものであり、一方向に長く、内部に空間を有する筒状に形成されている。この場合、ケース21は、例えば外形が矩形であり、内側が円筒形に形成されている。なお、以下の説明において、説明の便宜上、ケース21の長手方向を、把持装置10の上下方向と定義する。また、上下方向に対して直角方向を、水平方向と定義する。また、水平方向のうち、図1(A)で示す基板ケース11の面に沿った方向を左右方向と定義する。図1等に示す把持装置10の姿勢は、例えば把持装置10が図示しないロボットに装着されて通常使用される姿勢であるが、把持装置10の使用時の姿勢は図1等に示すものに限られない。
永久磁石22、第1コイル23、第2コイル24、第1ストッパ25、及び第2ストッパ26は、ケース21の内部に設けられている。永久磁石22、第1コイル23、及び第2コイル24は、環状に形成されている。第1コイル23は、ケース21の長手方向の一端側、この場合上端部側に設けられている。第2コイル24は、ケース21の長手方向の他端側、この場合下端部側に設けられている。
永久磁石22は、第1コイル23と第2コイル24との間に設けられている。第1ストッパ25及び第2ストッパ26には、中心部にシャフト28を通すことができる穴が形成されている。第1ストッパ25は、ケース21の長手方向の一端部側、この場合上端部側にあって、第1コイル23の環状の内側に設けられている。第2ストッパ26は、ケース21の長手方向の他端部側、この場合下端部側にあって、第2コイル24の環状の内側に設けられている。
可動鉄心27は、例えば鋼材などの磁性体によって、ケース21の長手方向この場合上下方向に長い円柱状に構成されている。可動鉄心27は、ケース21の内部において、永久磁石22、第1コイル23、及び第2コイル24の円環状の内側に設けられている。可動鉄心27は、第1ストッパ25と第2ストッパ26との間で摺動可能である。シャフト28は、ケース21の長手方向この場合上下方向に長い棒状に構成されている。シャフト28は、例えば可動鉄心27の両端側から可動鉄心27の外方へ突出するように設けられ、可動鉄心27と一体的に移動するこができる。シャフト28の両端部は、それぞれ第1ストッパ25及び第2ストーパ26の中心部の穴を通って、ケース21の外部に露出している。
第1コイル23が通電されると、第1コイル23に磁力が生じる。これにより、可動鉄心27は、第1コイル23に吸引されて、第1ストッパ25に係止されるまで一方側、この場合、第1ストッパ25側つまり上側へ移動する。この可動鉄心27が第1ストッパ25に係止される位置を、第1移動端とする。同様に、第2コイル24が通電されると、第2コイル24に磁力が生じる。これにより、可動鉄心27は、第2コイル24に吸引されて、第2ストッパ26に係止されるまで他方側、この場合、第2ストッパ26側つまり下側へ移動する。この可動鉄心27が第2ストッパ26に係止される位置を、第2移動端とする。このように、ソレノイド20は、第1コイル23及び第2コイル24に対して通電と断電とを切り替えることによって、二つの移動端の間で上下方向への直線往復運動が可能となる。また、可動鉄心27は、第1移動端又は第2移動端のいずれかに位置しているときにコイル23、24への通電が遮断されると、永久磁石22の磁力によって現在の位置に保持される。
把持装置10は、ベース31、把持部32、及び開閉案内機構33を備えている。ベース31は、板状に構成されており、ソレノイド20のケース21に図示しないネジなどによって固定されている。ベース31は、一方側の端部この場合下端部に幅広部311を有している。幅広部311は、ソレノイド20のケース21よりも下方へ延びており、ケース21の左右方向の幅よりも広い幅に設定されている。幅広部311には、複数の貫通穴部312が形成されている。例えば図示しないネジなどを貫通穴部312に通し、そのネジを図示しないロボットの取り付け部にねじ込むことで、把持装置10が、ロボットに取り付けられる。
把持部32は、把持対象物を把持するためのもので、右爪部材321と左爪部材322とから構成されている。把持部32は、右爪部材321と左爪部材322とが離接する方向へ移動することにより開閉可能に構成されている。この場合、把持部32は、可動鉄心27の移動方向と異なる方向、つまり左右方向へ開閉可能である。以下の説明では、右爪部材321と左爪部材322とが相互に接近する方向へ移動する動作を、把持部32の閉動作と称する。また、右爪部材321と左爪部材322とが相互に離れる方向へ移動する動作を、把持部32の開動作と称する。把持装置10は、把持部32の閉動作によって、把持対象物を把持する。
右爪部材321と左爪部材322とは、左右対称に構成されている。右爪部材321及び左爪部材322は、それぞれ例えば一枚の矩形の板を切削加工して形成されており、主部323、先端部324、及び案内溝部325を有している。先端部324は、主部323の下端部から下方へ突出している。先端部324の左右方向の幅は、主部323の左右方向の幅よりも狭い。なお、本実施形態では、先端部324が把持対象物と接触してその把持対象物に把持力を伝達するが、これに限られず、例えば先端部324にさらに他の部材を取り付け、当該他の部材が把持対象物に接触する構成でもよい。
案内溝部325は、主部323に形成された溝である。本実施形態の場合、案内溝部325は、主部323を厚み方向へ貫いて形成されたいわゆる長穴である。なお、案内溝部325は、必ずしも主部323を貫いている必要はない。案内溝部325は、ソレノイド20の可動鉄心27の移動方向つまり上下方向に対して傾斜している。また、案内溝部325は、把持部32の開閉方向つまり左右方向に対しても傾斜している。すなわち、案内溝部325は、可動鉄心27の移動方向及び把持部32の移動方向のいずれに対しても傾斜するようにして延びている。
また、案内溝部325は、下方へ向かうほど左右方向の外側へ広がるように形成されている。つまり、右爪部材321と左爪部材322とに形成された案内溝部325は、下方へ向かうほど両者の距離が大きくなるように設定されている。この場合、案内溝部325が延びる方向つまり案内溝部325の長手方向と、可動鉄心27の移動方向との成す角度は、45°未満になるように設定されている。すなわち、右爪部材321と左爪部材322とに形成された2つの案内溝部325の長手方向の成す角度は、90°未満に設定されている。
開閉案内機構33は、把持部32を、ベース31に対して上下方向の移動を不可にするとともに左右方向の移動を可能にして支持するものである。開閉案内機構33は、例えば1つのガイドレール331及び2つの摺動部332から構成されている。ガイドレール331は、左右方向へ延びるようにして、ベース31の幅広部311であって把持部32側の面に設けられている。摺動部332は、ガイドレール331に沿って、ガイドレール331上を滑らかに移動することができる。2つの摺動部332は、それぞれ右爪部材321及び左爪部材322において、ベース31側の面に設けられている。これにより、右爪部材321の左爪部材322は、それぞれベース31に対して上下方向の移動が規制されつつ、左右方向へ滑らかに移動することができる。
なお、開閉案内機構33は、右爪部材321と左爪部材322とをそれぞれベース31に対して上下方向の移動が規制しつつ左右方向へ滑らかに移動させることができれば、他の構成でもよい。例えば、摺動部332をベース31に設け、ガイドレール331を右爪部材321と左爪部材322とのそれぞれに設ける構成でもよい。また、開閉案内機構33を、例えば次のような構成にしてもよい。すなわち、右爪部材321と左爪部材322とのそれぞれに、左右方向へ延びる長穴又は溝を設ける。また、ベース31の幅広部311に、ベース31の面に対して直角方向つまり左右方向へ突出するピンを設ける。そして、ベース31に設けられたピンを、右爪部材321及び左爪部材322に形成されたそれぞれの長穴又は溝部に挿入する。これにより、右爪部材321及び左爪部材322は、それぞれピンに支持された状態で、左右方向への移動が可能になる。
把持装置10は、伝達機構35を備えている。伝達機構35は、可動鉄心27の上下方向への移動を、上下方向と異なる方向、この場合左右方向へ変換して把持部32に伝え、これにより把持部32を開閉させるためのものである。伝達機構35は、連結部材36、移動部材37、及び弾性部材38を有している。また、爪部材321、322の案内溝部325も、伝達機構35を構成している。
連結部材36は、全体として可動鉄心27の移動方向この場合上下方向に長い円柱状に構成されている。連結部材36は、シャフト28の一方の端部この場合下端部に設けられている。これにより、連結部材36は、シャフト28を介して、可動鉄心27の一端側この場合下端側に連結されている。連結部材36は、可動鉄心27及びシャフト28と一体的に移動可能である。
連結部材36は、主軸部361、第1受け部362、及び第2受け部363を有している。主軸部361は、上下方向に長い円柱状に構成されている。第1受け部362は、主軸部361の上端部つまり可動鉄心27側に設けられている。第2受け部363は、主軸部361の下端部つまり可動鉄心27と反対側に設けられている。第1受け部362及び第2受け部363の外形つまり横断面の形状は、例えば円形であって主軸部361の外形つまり主軸部361の横断面の形状よりも大きい。
移動部材37は、第1受け部362と第2受け部363との間に設けられ、連結部材36に対して移動可能に構成されている。移動部材37は、例えばいわゆるフランジ形状に形成されている。移動部材37は、板状部371、筒状部372、及び2つの案内部373を有している。板状部371は、可動鉄心27の移動方向に対して直角方向の面、この場合水平面を有する板状の部材である。板状部371は、例えば図1(c)に示すように、左右方向に長い矩形の板において、把持部32と反対側の2つの角部を切り欠いたような六角形に形成されている。
筒状部372は、可動鉄心27の移動方向と同じ方向へ延びる円筒状に形成されている。すなわち、筒状部372は、板状部371の面から直角方向であってソレノイド20側つまり上方へ突出するように設けられている。板状部371及び筒状部372の中心部には、板状部371及び筒状部372を上下方向に円形に貫いて貫通穴374が形成されている。
移動部材37は、貫通穴374に連結部材36の主軸部361を通して、連結部材36の第1受け部362と第2受け部363との間に設けられる。貫通穴374の内径は、連結部材36の主軸部361の外径よりも若干大きい。したがって、移動部材37は、連結部材36の主軸部361に沿って、主軸部361の軸方向つまり上下方向へ移動することができる。なお、連結部材36の主軸部361に対して、移動部材37が滑らかに移動この場合摺動できればよいため、連結部材36の貫通穴374の内形と、主軸部361の外形とは、必ずしも円形でなくてもよい。
案内部373は、例えば円柱軸状に構成されている。2つの案内部373は、それぞれ右爪部材321及び左爪部材322の案内溝部325に対応して設けられている。2つの案内部373は、それぞれ板状部371の側面つまり厚み方向の面から把持部32側へ突出し、右爪部材321及び左爪部材322の案内溝部325に挿入されている。
弾性部材38は、連結部材36の第1受け部362と、移動部材37の板状部371との間に設けられている。弾性部材38は、例えば圧縮コイルバネであり、その内側に、連結部材36の主軸部361と移動部材37の筒状部372が通されている。これにより、弾性部材38は、可動鉄心27の移動によって連結部材36に作用する力を移動部材37に伝えることができる。
連結部材36に対する移動部材37及び弾性部材38の取り付けは、次のようにして行うことができる。例えば、主軸部361及び第2受け部363を一体に形成する。また、第1受け部362を、主軸部361及び第2受け部363とは別体に構成する。そして、主軸部361を、移動部材37の貫通穴374及び弾性部材38の内側に通した後、主軸部361に対して第1受け部362を取り付ける。
次に作用について説明する。
図1は、把持部32が開状態になっている場合の把持装置10を示している。把持部32が開状態になっているとき、可動鉄心27は、第1コイル23側つまり第1移動端に位置している。図2は、把持部32が無負荷つまり何も把持せずに閉状態になった場合の把持装置10を示している。図1に示す開状態で第1コイル23が断電されるとともに第2コイル24に通電されると、可動鉄心27は、図2に示すように第2コイル24側つまり第2移動端まで移動する。これにより、連結部材36は、シャフト28を介して可動鉄心27と一体的に下方へ移動する。このとき、連結部材36は、下方への力つまり移動部材37を第2受け部363側へ押し付ける力を、弾性部材38を介して移動部材37に加える。
移動部材37は、可動鉄心27から受けた下方へ向う力を、案内溝部325に挿入された案内部373を介して、右爪部材321及び左爪部材322に伝達する。この場合、移動部材37は、可動鉄心27の移動による下方への力を、右爪部材321及び左爪部材322が相互に接近する方向つまり閉じる方向へ変換する。この場合、可動鉄心27が第2移動端側へ移動する力は、第1受け部362から弾性部材38及び移動部材37を介して把持部32が閉じる閉方向への力に変換されて把持部32に伝わる。把持部32が無負荷の状態では、把持部32の開方向への移動が規制されておらず、把持部32は自由に開動作を行うことができる。
すなわち、把持部32が無負荷の状態において、右爪部材321及び左爪部材322は、ガイドレール331に沿って自由に左右方向における相互に接近する方向へ移動することができる。そのため、把持部32が無負荷の状態において、可動鉄心27が第2移動端側つまり下方へ移動すると、移動部材37は、連結部材36及び弾性部材38とともに一体的に下方へ移動する。
把持装置10は、例えば図3に示すように、把持対象物100(以下、ワーク100と称する)を把持する際、まず、開状態の把持部32の2つの先端部324の間にワーク100を位置させる。その後、把持装置10は、図3に示すように、第2コイル24の通電によって可動鉄心27を第2端側つまり下方へ移動させ、これにより把持部32を閉じる。このとき、左右の先端部324がワーク100に接触すると、爪部材321、322は、ワーク100によってそれぞれ左右方向つまり相互に接近する方向への移動が規制される。そして、爪部材321、322の移動が規制されることに伴って、移動部材37の下方への移動も規制される。
その後、可動鉄心27は、図4に示すように、更に第2コイル24に吸着されて下方へ移動する。そして、連結部材36は、可動鉄心27の下方への移動による力を、弾性部材38を介して移動部材37へ伝達する。この場合、移動部材37の下方への移動は規制されているため、連結部材36の第1受け部362は、弾性部材38を圧縮しながら、移動部材37に接近する。このとき、弾性部材38の圧縮量の増大に伴って、移動部材37から把持部32に伝わる力も増大し、これにより、把持部32によるワーク100の把持力も増大する。そして、可動鉄心27が第2移動端に達すると、移動部材37の移動が規制される。これにより、把持部32は、ワーク100を強固に把持した状態になる。
また、把持装置10は、把持部32の開動作を行う際、第2コイル24を断電して第1コイル23に通電する。すると、第1コイル23の吸着力によって、可動鉄心27が第1端部側つまり上方向へ移動する。移動部材37は、可動鉄心27から受けた上方へ向う力を、案内溝部325に挿入された案内部373を介して、右爪部材321及び左爪部材322に伝達する。この場合、移動部材37は、可動鉄心27の移動による上方への力を、右爪部材321及び左爪部材322が相互に離反する方向つまり開く方向へ変換する。つまり、可動鉄心27が第1移動端へ移動する力は、第2受け部363から移動部材37を介して把持部32が開く開方向への力に変換されて把持部32に伝わる。その際、弾性部材38は、圧縮されることなく、連結部材36及び移動部材37とともに、上方向へ移動する。
ここで、本実施形態の作用効果を説明するため、本実施形態の比較例について図5〜図7を参照して説明する。図5〜図7に示す把持装置90は、把持装置10の移動部材37に相当する構成を備えていない。この場合、把持装置90は、連結部材91を備えている。連結部材91は、把持装置10の連結部材36及び移動部材37の相互に部分的に類似した構成である。すなわち、連結部材91は、主軸部911、板状部912、及び2つの案内部913を有している。主軸部911は、上下方向に長い円柱状に構成されている。この場合、連結部材91の主軸部911の長さ寸法は、連結部材36の主軸部361の長さ寸法よりも短い。
板状部912は、把持装置10の移動部材37の板状部371と同様の形状に形成されている。主軸部911は、板状部912の上面から上方つまりシャフト28側へ突出している。主軸部911は、シャフト28の下端部に固定されている。これにより、連結部材91と可動鉄心27とが、シャフト28を介して一体的に移動可能に連結されている。案内部913は、把持装置10の案内部373と同様に、例えば円柱軸状に構成されている。そして、2つの案内部373は、それぞれ右爪部材321及び左爪部材322の案内溝部325に対応して設けられ、それぞれ爪部材321、322の案内溝部325に挿入されている。
弾性部材38の内側には、シャフト28及び連結部材91の主軸部911が通されている。弾性部材38は、連結部材91の上方向への移動に伴って、ケース21の底面つまり連結部材91側の面と、連結部材91の板状部912との間で圧縮され弾性変形する。すなわち、可動鉄心27が第1端部に位置して把持部32が開状態になっているとき、弾性部材38は、図5に示すように、ケース21の底面と、連結部材91の板状部912との間で圧縮されている。したがって、把持部32が開状態の場合、可動鉄心27には、連結部材91及びシャフト28を介して弾性部材38による弾性力が加えられている。
図6に示すように、把持部32がワーク100を把持していない無負荷の状態において、第1コイル23が断電されて第2コイル24が通電されると、可動鉄心27は、弾性部材38の弾性力及び第2コイル24の吸引力によって、第2端部側へ移動する。すると、連結部材91は、可動鉄心27から受けた力を、案内溝部325に挿入された案内部913を介して、爪部材321、322に伝達する。これにより、爪部材321、322が互いに接近する方向へ移動し、把持部32が閉じる。
一方、図7に示すように、把持部32がワーク100を把持する場合、爪部材321、322の先端部324がワーク100に接触すると、爪部材321、322は、ワーク100によってそれぞれ左右方向つまり相互に接近する方向への移動が規制される。そして、爪部材321、322の移動が規制されることに伴って、連結部材91の下方への移動も規制される。この場合、連結部材36は、シャフト28を介して可動鉄心27と一体的に下方へ移動するため、連結部材36の下方への移動が規制されると、可動鉄心27の下方への移動も規制される。そのため、可動鉄心27は、第2端部に至ることなく、下方への移動の途中で保持される。
一般に、ソレノイド20は、可動鉄心27が移動端に位置しているときに、本来の保持力を発揮するように設計されている。したがって、可動鉄心27を移動途中で保持した場合の保持力は、移動端での保持力に比べて大幅に小さい。つまり、把持装置90の把持部32がワーク100を把持する際、可動鉄心27は、移動途中で保持されるため、本来の保持力を発揮することができない。そのため、把持装置90の把持部32がワーク100を把持する際に生じる把持力は、主に弾性部材38の弾性力によって発揮される。
次に、本実施形態の把持装置10と、比較例としての把持装置90とにおける、把持部32の把持動作時において生じる弾性部材38の弾性力の推移について、両者を比較して説明する。なお、図8(1)、(2)のグラフ中における横方向の破線は、把持装置10、90がワーク100を把持する際に必要な力を示している。
把持装置90の弾性部材38は、図8(1)の破線aで示すように、把持部32が閉状態の場合、自然長に対して若干圧縮されている。そのため、把持装置90の弾性部材38には、把持部32が閉状態の場合であっても、若干の弾性力が生じている。この閉状態における弾性部材38の圧縮量は、把持装置90の開閉動作中において最小となる。
また、把持装置90の弾性部材38は、図8(1)の破線bで示すように、把持部32が開状態になる際に圧縮される。この開状態における弾性部材38の圧縮量は、把持装置90の開閉動作中において最大となる。したがって、把持装置90において、弾性部材38の弾性力は、把持部32が開状態の場合に最大となる。この場合、把持装置90は、把持部32の開く度に、弾性部材38の弾性力に打ち勝つ力を生じさせなければならない。つまり、把持装置90は、把持部32を開く度に、弾性部材38を最大値まで圧縮させるための大きなエネルギーが必要になる。また、第1コイル23も、弾性部材38の弾性力に打ち勝つために強い力が必要になる。その結果、ソレノイド20全体が大型化や消費電力の増大に繋がる。
一方、把持装置10において把持部32を開状態にする際、弾性部材38は、可動鉄心27、シャフト28、及び連結部材36とともに移動する。したがって、把持装置10の弾性部材38は、図8(2)の破線a及び破線bで示すように、開動作によっては圧縮されない。そのため、把持装置10の弾性部材38は、把持部32の開動作によって弾性力は生じない。したがって、把持装置10は、把持部32を開く際に弾性部材38を圧縮するための大きなエネルギーを必要としない。よって、本実施形態の把持装置10は、比較例の把持装置90に対して、把持部32の開動作に必要な力つまりエネルギーを低減することがでる。そして、第1コイル23も、弾性部材38の弾性力に打ち勝つ必要が無いため、小さな力のもので済む。これらの結果、ソレノイド20の小型化や省エネ性能の向上が図られる。
また、把持装置90の把持部32がワーク100を把持する際、図8(1)の破線cで示すように、爪部材321、322がワーク100に接触すると、上述したように可動鉄心27の下方への移動が規制されるため、弾性部材38の圧縮量も変化しなくなる。したがって、把持装置90において、把持部32がワーク100を把持した状態では、弾性部材38の弾性力は、図8(1)の破線c及び破線dで示すように一定になる。
ここで、把持装置90において、把持部32がワーク100を把持する際、弾性部材38に蓄積された弾性力は、図8(1)の破線bで示す最大値から、破線cで示す値まで一気に解放されるため、爪部材321、322がワーク100に対して衝突するような把持動作になる。したがって、把持装置90では、把持部32がワーク100を把持する際にワーク100に与える衝撃が大きくなる。
一方、実施形態の把持装置10において、把持部32がワーク100を把持する際、図8(2)の破線cで示すように、爪部材321、322がワーク100に接触した時点では、弾性部材38は圧縮されておらず、弾性部材38に弾性力は生じていない。そして、図8(2)の破線cから破線dで示すように、爪部材321、322がワーク100に接触すると、弾性部材38が圧縮されて弾性力を蓄積しながら、爪部材321、322がワーク100を把持していく。これにより、把持装置10の弾性部材38は、爪部材321、322がワーク100に衝突する際の衝撃を吸収することができる。すなわち、連結部材36、移動部材37、弾性部材38、及び爪部材321、322の案内溝部325を有する伝達機構35は、把持部32がワーク100を把持する際の衝撃を緩衝する緩衝機構いわゆるショックアブソーバとしても機能する。
これによれば、把持装置10は、電気式の駆動源としてソレノイド20を備えていることから、駆動源としてモータを備えた場合に比べて、把持装置10自体の小型化を図ることができる。また、把持装置10は、電気式の駆動源としてソレノイド20を備えていることから、空圧式の駆動源を備えた場合に比べて、配管等の周辺機器が不要になる。その結果、必要な周辺機器を削減することができる。
把持装置10において、可動鉄心27が移動端の一方側この場合第2端部側へ移動する力は、第2受け部363から移動部材37を介して把持部32が開く開方向への力に変換されて把持部32へ伝わる。これによれば、可動鉄心27を移動端の一方側へ移動させることで、把持部32を開くことができる。把持部32を開く際、移動部材37は、第1受け部362と反対側にある第2受け部363から力を受ける。そのため、把持部32を開く際、第1受け部362と移動部材37との間に設けられた弾性部材38は、圧縮されない。したがって、把持部を開く際に弾性部材を圧縮するような大きなエネルギーを必要としない。よって、把持部32を開く開動作に必要な力つまりエネルギーを低減することがでる。その結果、ソレノイド20を弾性部材38の弾性力に打ち勝つような高出力のものにする必要が無いため、ソレノイド20の大型化も抑制される。したがって、把持装置10の小型化や省エネ性能の向上が図られる。
同様に、第1コイル23は、弾性部材38の弾性力に打ち勝つような高出力のものにする必要が無いため、第1コイル23の大型化も抑制される。その結果、ソレノイド20の小型化や省エネ性能の向上が図られる。以上より、把持装置10は、電気式の駆動源を備えつつ、把持装置自体の小型化及び軽量化を図って取扱いが容易なものとすることができる
また、可動鉄心27が第2端部側へ移動する力は、第1受け部362から弾性部材38及び移動部材37を介し、案内部373及び案内溝部325において把持部32が閉じる閉方向への力に変換されて、把持部32に伝わる。これによれば、可動鉄心27を第2端部側へ移動させることで、把持部32を閉じることができる。そして、これによれば、把持部32を閉じてワーク100を把持する際、可動鉄心27の移動による力が、弾性部材38を介してワーク100に効率よく伝わる。
すなわち、把持部32を閉じる際、可動鉄心27が移動する力は、連結部材36の第1受け部362から弾性部材38を介して移動部材37に伝わる。把持部32がワーク100を把持すると、把持部32の閉じる方向への移動が規制される。すると、その把持部32の移動の規制に伴って、移動部材37の移動が規制される。ここで、移動部材37は、連結部材36に沿って移動可能である。そのため、移動部材37の移動が規制された状態で可動鉄心27が第2端部側へ移動すると、可動鉄心27に連結された連結部材36は、移動部材37に対して相対的に移動する。すると、連結部材36の第1受け部362と移動部材37とが相互に近づく方向へ相対的に移動し、これにより弾性部材38が圧縮される。
このように、把持部32を閉じてワーク100を把持する際、可動鉄心27の下方この場合第2端部側への移動による力が、把持力として効率よく把持部32に伝わる。そして、可動鉄心27で発生する力の伝達の効率を上げることで、ソレノイド20を低出力のものにすることができる。その結果、ソレノイド20の小型化や省エネ性能の向上が図られる。以上より、把持装置10は、電気式の駆動源を備えつつ、把持装置10自体の小型化及び軽量化を図って取扱いが容易なものとすることができる。
また、比較例の把持装置90は、可動鉄心27の移動の途中でワーク100を把持するため、把持する際にソレノイド20が発生することができる最大の力を得ることができない。一方、本実施形態の把持装置10は、可動鉄心27の端部でワーク100を把持するため、把持する際にソレノイド20が発生することができる最大の力を得ることができる。したがって、把持装置10と把持装置90との把持力を同一のものとする場合は、把持装置10のコイル23、24を、把持装置90のコイル23、24に比べて低出力で小型のものにすることができる。また、把持装置10のコイル23、24と把持装置90のコイル23、24の出力を共に同一のものにする場合には、把持装置90の把持力に比べて、把持装置10の把持力を大きくすることができる。
また、本実施形態の把持装置10がワーク100を把持する際、可動鉄心27の急激な移動による力は、一旦弾性部材38が圧縮された後に把持部32に伝わる。すなわち、弾性部材38は、いわゆるショックアブソーバとしての機能を発揮することができる。これにより、把持装置10は、可動鉄心27の急激な移動による衝撃を吸収してワーク100を把持することができるため、ワーク100の損傷等を抑制することができる。
また、把持装置10は、可動鉄心27の移動方向及び把持部32の移動方向のいずれに対しても傾斜した溝形状に形成された案内溝部325を有している。移動部材37は、可動鉄心27の移動方向に対して直角方向へ突出して設けられ、案内溝部325に挿入された案内部373を有している。そして、案内部373が案内溝部325に沿って摺動することで、移動部材37の移動が把持部32に伝えられる。
すなわち、可動鉄心27の移動に伴って移動部材37が移動する際に、移動部材37の案内部373が案内溝部325に沿って摺動することで、可動鉄心27の移動方向が把持部32の移動方向に変換されて、可動鉄心27の移動が把持部32に伝わる。これにより、可動鉄心27の移動によって把持部32を開閉することができる。つまり、移動部材37の移動を把持部32に伝える機構を、案内部373と案内溝部325とによって比較的簡単に構成することができる。したがって、不要な部品点数の増加を低減することができ、その結果、把持装置10の大型化を抑制することができる。
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、次のような変形または拡張が可能である。
例えば、開閉案内機構33は、ガイドレール331を把持部32に設け、摺動部332をベース31に設ける構成にしてもよい。また、開閉案内機構33は、右爪部材321及び左爪部材322の左右方向への移動を案内することができればよく、ガイドレール331及び摺動部332に限られない。ベース31は、基板ケース11と一体に構成してもよい。すなわち、基板ケース11の下端部をケース21から下方へ延びるように設け、その延びた部分に開閉案内機構33を設ける構成でもよい。
また、把持部32の移動方向は、可動鉄心27の移動方向に対して必ずしも直角方向でなくてもよい。例えば把持部32の移動方向は、図1等における左右水平方向に対して上方又は下方へ傾斜していても良い。
上記実施形態において、2つの案内溝部325は、下方へ向かうほど相互に左右方向の外側へ広がるように形成されているが、これに限られない。例えば、2つの案内溝部325を、上方へ向かうほど相互に左右方向の外側へ広がるように形成してもよい。この場合、可動鉄心27の移動方向に対する把持部32の開閉が、上記実施形態と逆になる。すなわち、この場合、可動鉄心27が上方へ移動すると把持部32が閉じ、可動鉄心27が下方へ移動すると把持部32が開く。この場合、第1端部及び第2端部は、可動鉄心27の移動方向と把持部32の開閉方向との関係に応じて適宜変更することができる。