JP6364964B2 - 含液膜構造体の製造方法及び含液膜延伸成形構造体 - Google Patents
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Description
この多層構造ボトルは、最内層が油性内容物に対する濡れ性に優れており、この結果、ボトルを倒立させたり、或いは傾斜させたりすると、マヨネーズ等の油性内容物は、最内層表面に沿って広がりながら落下していき、ボトル内壁面(最内層表面)に付着残存することなく、綺麗に排出することができるというものである。
しかしながら、この種の容器では、内容物との滑り性を高めるために形成される滑性向上液の液膜を薄く且つ均一に形成するかという課題が残されている。
また、本出願人は、容器内面を形成する樹脂に、滑性向上液を混合しておくことにより液膜を形成するという手段を提案している(特願2013−23468号・PCT/JP2014/052879)。かかる方法は、滑性向上液が含浸された樹脂組成物を用いて成形を行い、容器の内面に、内層を形成する樹脂からの相分離に伴う析出により液膜を形成するというものであるが、析出を利用しているため、液膜の厚みはかなり薄くなってしまい、液膜の厚みを確実に制御することが困難であるという問題がある。
本発明の他の目的は、上記方法により形成された含液膜延伸成形構造体を提供することにある。
前記下地表面を形成する樹脂に液体を含浸せしめて液体含浸樹脂組成物を調製し、
前記液体含浸樹脂組成物を用いての成形により、該液体含浸樹脂により表面が形成されている成形体を作製し、
次いで、前記成形体の表面に液体をコートすること、
を特徴とする含液膜構造体の製造法が提供される。
(1)前記下地表面を形成する樹脂に対して、飽和含浸量の20〜100%の量で前記液体を含浸せしめて前記液体含浸樹脂組成物を調製すること、
(2)下地表面を形成する樹脂に含浸せしめる液体と、前記成形体の表面にコートする液体が同じものであること、
(3)前記下地面を形成する樹脂としてガラス転移点(Tg)が0℃以下であるものを使用すること、
(4)前記液体含浸樹脂組成物を用いての成形を、延伸成形用プリフォームを成形しての延伸成形により行うこと、
が好ましい。
前記下地表面を形成している樹脂層上に形成される液膜の塗布量が1〜30g/m2の範囲内に保持されていることを特徴とする含液膜延伸成形構造体が提供される。
(5)前記下地面を形成している樹脂のガラス転移点(Tg)が0℃以下であること、
(6)前記下地面を形成している樹脂の層に隣接して、ガラス転移点(Tg)が0℃以下の樹脂層が形成されていること、
(7)容器の形態を有すること、
(8)ダイレクトブロー成形容器であること、
が好適である。
しかるに、本発明では、構造体の表面を形成している樹脂には、液体が含浸されているため、コーティングにより形成された液膜からの構造体内部への液体の浸透が有効に抑制され、このような浸透による液膜の厚み減少が有効に回避されている。しかも、液体のコーティングに際しては、構造体(成形体)の表面に液体が点在した状態となっており、このため、液体に対する濡れ性が大きく向上している。従って、コーティング量を少量とした場合にも、構造体(成形体)表面に全体にわたって均等に液体が濡れ拡がり、均一な厚みの液膜を形成することができる。
しかるに、本発明では、このような延伸構造体に液膜を形成する場合であっても、液膜の厚みのバラつきを有効に回避することができる。
本発明の製造方法により製造される含液膜構造体の表面状態を示す図1を参照して、全体として10で示す液膜構造体1は、樹脂製の下地表面を有する下地樹脂層1の表面に、表面改質のために液体(表面改質液)の液膜3が形成されており、この液膜3によって、液膜構造体の表面特性が改質されるものである。
尚、かかる構造体10においては、液膜3を保持する面が下地樹脂によって形成されている限り、その層構造は限定されず、他の基材上に下地樹脂層1が形成された多層構造となっていてもよい。
かかる製造法において、下地樹脂層1の形成に用いる樹脂としては、その表面に形成される表面改質液の液膜3を安定に保持し得るようなものであり、特に適量の表面改質液が含浸された状態で成形可能な樹脂が使用される。
このような樹脂としては、含液膜構造体10の形態や該構造体10を成形するために採用される成形手段に応じた熱可塑性プラスチックが採用される。特に、該構造体を容器の形態とするためには、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルやオレフィン系樹脂などが好適に使用され、特に粘稠な内容物が収容される容器、例えばダイレクトブロー容器に成形するためには、オレフィン系樹脂、特に、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中或いは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンなどが好適に使用される。勿論、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等も好適であり、さらに、特開2007−284066号等に開示されている環状オレフィン共重合体も使用することができる。
また、上述した下地樹脂への含浸及び液膜3の形成に用いる表面改質液は、揮散し難く、例えば大気圧下での蒸気圧が小さい不揮発性の液体(例えば沸点が200℃以上)であることを条件として、含液膜構造体10に要求される表面特性に応じて適宜のものが選択される。例えば、水等の水性物質に対する撥液性や滑り性を高めるためには、油性液体が使用され、油性物質に対しての撥液性や滑り性を高めるためには、水あるいは親水性の高いイオン液体が使用される。さらに、この構造体10を容器として使用し、内容物(例えばマヨネーズや各種ソースなどの粘稠な液体)に対する滑り性を高めるためには、この内容物と混和しないような非混和性(例えば一定厚み以上の液膜3を保持することができる)を有していることが必要である。
さらに、マヨネーズ等の乳化系の内容物に対しては、上記の中でも、乳化に時間を有する性質を示す液体、例えば、比較的分子量の高いものがよい。これは、分子量が低い潤滑液は、分子が小さいため、乳化系の内容物にとりこまれやすい(短時間でとりこまれる)傾向があるためである。例えば、シリコーンオイルや流動パラフィンでは、分子量の比較的高いもの、グリセリン脂肪酸エステルにおいては、脂肪酸基が大きく(脂肪酸の炭素数としては、8以上のもの)、脂肪酸基の置換数の大きいもの(例えば、ジグリセライド、トリグリセライド、特には、中鎖脂肪酸トリグリセライド、グリセリントリオレート等)、食用油脂では、脂肪酸数が大きいもの(主たる脂肪酸の炭素数としては、16以上のもの)が最適である。
上記のような表面改質液を下地樹脂に含浸させての液体含浸樹脂組成物の調製は、押出機等の成形機内の混練部に、下地樹脂と共に表面改質液を投入することにより、容易に行うことができる。
勿論、液膜3からの表面改質液の浸透を抑制するという効果が損なわれない限りにおいて、かかる液体含浸樹脂組成物には、含液膜構造体10の用途に応じて、それ自体公知の各種添加剤が配合されていてよい。
上記のようにして調製される液体含浸樹脂組成物を用いての成形は、該樹脂組成物による層が液膜3を形成する表面に形成されることを条件として、構造体10の形態に応じて公知の成形法により実施される。
例えば、フィルム、シート、筒状等のシンプルな形態の構造体10を成形する場合には、押出成形を好適に採用することができる。この場合、下地樹脂層1が他の樹脂の層に積層されている構造では、液体含浸樹脂組成物による下地樹脂層1が表面となるようにしての共押出により成形を行うことができる。また、下地樹脂層1が、ガラスや金属などの基体上に形成されるような場合には、押出しラミネート等の手段を採用することもできる。
また、構造体10が複雑な立体形状を有するような場合には、射出成形が好適に採用される。この場合、下地樹脂層1が他の樹脂の層に積層されている構造では、液体含浸樹脂組成物の層が表面となるようにしての共射出により成形を行えばよい。
例えば、構造体10を容器として使用する場合には、容器の形態に応じて容器用のプリフォームを成形し、次いで、延伸成形を行えばよい。即ち、ボトル形状の容器を成形する場合には、試験管状或いはパイプ状の有底プリフォームを成形し、次いでブロー成形による延伸成形を行えばよい。カップ形状の容器を成形する場合には、シート状のプリフォームを成形し、次いで、プラグアシスト成形等の真空成形により延伸成形を行えばよい。
本発明では、最後に、上記のようにして得られた成形体の表面(下地樹脂層1の表面)に、表面改質液をコーティングして液膜3を形成することにより、目的とする含液膜構造体10が得られる。
また、下地樹脂層1の表面には表面改質液が点在しており、表面改質液に対する濡れ性が極めて高い。本発明では、このような表面に表面改質液をコーティングするため、表面全体にわたって、均一な厚みの液膜3を形成することが可能となる。
F=(cosθ−cosθB)/(cosθA−cosθB) (1)
式中、θは、下地樹脂層1(表面改質液を含む下地樹脂組成物により形成されてい
る層)の表面での水接触角であり、
θAは、表面改質液上での水接触角であり、
θBは、下地樹脂上での水接触角である、
で表されるが、本発明では、この被覆率Fは1.0であり、下地樹脂層1の全体にわたって液膜3を形成することができる。
上述した本発明方法により得られる含液膜構造体10は、特に下地樹脂層1が厚み分布を有する形態である場合に、最も本発明の利点が活かされる。
即ち、厚み分布を有する下地樹脂層1の表面に液膜3を形成する場合、通常、液膜3を形成する表面改質液が厚みの厚い部分には多く浸透し、厚みの薄い部分への浸透量は少ない。このため、液膜3は、下地樹脂層1の厚みが厚い部分で薄くなり、下地樹脂層1の厚みの薄い部分で厚くなってしまう。しかるに、本発明では、下地樹脂層1中に予め表面改質液が存在しているため、このような下地樹脂層1の厚み分布による液膜3の厚みムラを有効に抑制することができるのである。
しかるに、本発明では、このような延伸成形構造体に液膜3を形成して含液膜構造体10(含液膜延伸成形構造体)とする場合にも、厚みのバラつきが小さく、均一な厚みの液膜3を形成することが可能となる。
例えば、前述した液膜3の形成のためのコーティング量を調整し、液膜3の塗布量を1〜30g/m2の範囲内に収めることができ、この結果、容器内の全体にわたって均等に液膜3による表面特性(例えば内容物に対する滑り性)を発現させることができる。
図2において、本発明の含液膜構造体(含液膜延伸成形構造体)10に相当するダイレクトブロー成形容器は、ボトル形状を有しており、螺条を備えた首部11、肩部13を介して首部11に連なる胴部15及び胴部15の下端を閉じている底部17を備えており、その内面に前述した液膜3が形成されている。
このような容器(10)に粘稠な内容物を充填した後、首部11の上端開口部にアルミ箔等の金属箔19をヒートシールにより施し、所定のキャップ20を装着することにより、包装ボトルとして使用に供される。かかる包装ボトルでは、キャップ20を開封し、シール材が塗布された金属箔19を引き剥がし、容器(10)を傾倒乃至倒立させることにより、必要により胴部壁15をスクイズすることにより容器内容物の取り出しが行われる。
即ち、このような容器では、首部11が未延伸部であり、肩部13、胴部15及び底部17が延伸部であり、胴部15が高延伸部、肩部13及び底部17が低延伸部となっており、高延伸部(胴部15)と低延伸部(肩部13及び底部17)との間には、少なくとも20μm以上、特に30〜50μmの厚み差を有している。本発明では、このような厚み差を有している容器10の内面(下地樹脂層1の表面)の全体にわたって、厚み差が極めて少なく、例えば1〜30g/m2の塗布量の液膜3がムラなく形成され、前述したように、内容物の種類に応じて適宜の表面改質液を用いて液膜3を形成することにより、内容物に対して優れた滑り性(排出性)を確保することができる。
このような接着剤樹脂はそれ自体公知であり、例えば、カルボニル基(>C=O)を主鎖若しくは側鎖に1乃至100meq/100g樹脂、特に10乃至100meq/100g樹脂の量で含有する樹脂、具体的には、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどでグラフト変性されたオレフィン樹脂;エチレン−アクリル酸共重合体;イオン架橋オレフィン系共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;などが接着性樹脂として使用される。
また、多層構造とする場合において、ガスバリア層(中間層)の好適な厚みは、一般に1乃至50μm、特に9乃至40μmの範囲であり、前述した接着剤樹脂層の厚みは、適宜の接着力が得られる程度でよく、一般的には0.5乃至20μm、好適には1乃至8μm程度である。
尚、以下の実施例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及び構造体(フィルム、ボトル)の成形に用いた樹脂等は次の通りである。
後述の方法で作成したフィルム、あるいは容量500gのボトルの胴部から10mm×60mmの試験片を切り出した。23℃50%RHの条件下、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、試験片の内層が上になるように固定し、3μLの純水を試験片にのせ、水接触角θを測定した。得られた水接触角を用いて、下記式(1)より、構造体表面での表面改質液の被覆率Fを求めた。
F=(cosθ−cosθB)/(cosθA−cosθB) (1)
式中、θは、下地樹脂層1(表面改質液を含む下地樹脂組成物により形成されてい
る層)の表面での水接触角であり、
θAは、表面改質液上での水接触角であり、
θBは、下地樹脂上での水接触角である、
表面改質液の被覆率Fを求めるにあたり、θAとθBの値として、下記水接触角の値を用いた。
θA:80.3°
(中鎖脂肪酸トリグリセライドの液膜上での値)
θB:100.1°
(低密度ポリエチレン単体での値)
低密度ポリエチレンA(LDPE−A)
MFR:2g/10min (190℃)
密度:0.919g/cm3
Tg:−70℃以下
低密度ポリエチレンB(LDPE−B)
MFR:0.3g/10min (190℃)
密度:0.922g/cm3
Tg:−70℃以下
エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)
密度:1.20g/cm3
Tg:60℃
無水マレイン酸変性ポリエチレン
低密度ポリエチレンB(LDPE−B)
各種物性は上述のものと同一。
低密度ポリエチレンB(LDPE−B)
各種物性は上述のものと同一。
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
表面張力:28.8mN/m (23℃)
粘度:33.8mPa・s (23℃)
沸点:210℃以上
引火点:242℃(参考値)
尚、液体の表面張力は固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)を用いて23℃にて測定した値を用いた。なお、液体の表面張力測定に必要な液体の密度は、密度比重計DA−130(京都電子工業(株)製)を用いて23℃で測定した値を用いた。また、潤滑液の粘度は音叉型振動式粘度計SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて23℃にて測定した値を示した。
(表面改質液の下地層中への浸透性評価)
ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)を用い、下地層形成用樹脂として低密度ポリエチレンA(LDPE−A)のペレットをホッパーに供給し、ダイヘッド温度220℃で厚み120μmのフィルムを作製した。
作製したフィルムから150mmx150mmサイズの試験片を切りとり、スピンコーター(MS−A200、ミカサ(株)製)を用いて、試験片表面上に表面改質液(中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT))の液膜を塗布した。回転数と回転時間を変更することで、様々な塗布量になるように調製した。塗布前後の重量変化より、表面改質液の塗布量(g/m2)を求めた。
作製した液膜が塗布された試験片を22℃60%RHの環境下で保管し、所定の期間保管した後、上述の表面改質液の被覆率測定を行った。結果を表1に示す。
用いた表面改質液は沸点が210℃以上の低揮発性液体であることに加え、下地層として用いたLDPEは保管温度においてゴム状態であるため、この被覆率の低下は、フィルム上に塗布された表面改質液がLDPEからなる下地層中へ浸透することによって引き起こされたと解釈できる。
(下地層中に表面改質液を含浸させた多層ボトルの成形・評価 <1>)
40mm押出機に、下地層形成樹脂として低密度ポリエチレン−B(LDPE−B)、表面改質液として中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とのブレンド物からなる樹脂組成物を、30mm押出機Aに接着層形成用樹脂として無水マレイン酸変性ポリエチレンを、30mm押出機Bにガスバリア層形成用樹脂としてエチレン・ビニルアルコール共重合体を、50mm押出機に外層形成用樹脂として低密度ポリエチレン−Bを、それぞれ供給し、温度210℃の多層ダイヘッドより溶融パリソンを押し出し、金型温度22℃にてダイレクトブロー成形を行い、内容量500g、重量20gの下地層中に表面改質液を含浸させた多層ボトルを作製した。このボトルの樹脂層構成と各層の厚み比を下記に示す。
(内面) 表面改質液含浸下地層(20%)/接着層(3%)/バリア層(5%)/接着層(3%)/基材層(69%) (外面)
なお、括弧内の数値は全体厚みに対する各層の厚み比(%)である。
ここで、層構成を変更せずに、40mm押出機に供給するLDPE−BとMCTの組成比を変更し、下地層中に含まれる表面改質液の濃度が異なる種々のボトルを作製した。用いた材料の組成比を下記に示す。
LDPE−B/MCT=100/0、99.9/0.1、99.5/0.5、99/1、98/2、97/3、95/5 (いずれも重量比)
さらに、本構成のボトルでは、ボトル成形14日後においても、ボトル1日後と同等の被覆率を示している。これは、ボトルの層構成として、ガスバリア層を外層と下地層の間に配置することにより、下地層に含浸させているMCTが外層へ拡散することを効果的に防止しているためであると言える。このことは、バリア層よりも内側に存在するMCTの合計量と樹脂の合計量を求め、バリア層よりも内側の樹脂層におけるMCTの平均濃度を算出した際、下地層中へのMCTの含浸率(濃度)とバリア層よりも内側の樹脂層におけるMCTの平均値が大きく変わっていないことからも支持されていると言える。
(下地層中に表面改質液を含浸させた多層ボトルの成形・評価 その2)
40mm押出機に、下地層形成樹脂として低密度ポリエチレン−B(LDPE−B)、表面改質液として中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)とのブレンド物(LDPE−B/MCT=95/5(重量%))からなる樹脂組成物を、30mm押出機Aに接着層形成用樹脂として無水マレイン酸変性ポリエチレンを、30mm押出機Bにガスバリア層形成用樹脂としてエチレン・ビニルアルコール共重合体を、30mm押出機Cに外層形成用樹脂として低密度ポリエチレン−Bを、50mm押出機に第2内層形成用樹脂として低密度ポリエチレン−Bを、それぞれ供給し、温度210℃の多層ダイヘッドより溶融パリソンを押し出し、金型温度22℃にてダイレクトブロー成形を行い、内容量500g、重量20gの下地層中に表面改質液を含浸させた多層ボトルを作製した。このボトルの樹脂層構成と各層の厚み比を下記に示す。
(内面) 表面改質液含浸下地層(23%)/第2内層 (53%)/接着層(3%)/バリア層(5%)/接着層(4%)/外層(13%) (外面)
なお、括弧内の数値は全体厚みに対する各層の厚み比(%)である。
このボトルの層構成は、下地層に隣接してLDPEの層が形成され、さらに、ガスバリア層、外層の順で構成されている。このことから、経時により、下地層中に含浸されていたMCT成分が隣接しているLDPE層中に浸透拡散することで、下地層中のMCTの含浸量が低下し、その結果、表面に被覆されていたMCT成分も下地層中へ浸透し、被覆率が低下したものと解釈できる。
実験例2と同様に、バリア層よりも内側の樹脂層におけるMCTの平均濃度を計算すると、1.45wt%となり、下地層中の組成(5wt%)に比べ大きく低下している。従って、このような層構成とした場合、被覆率の低減はより顕著なものとなる。
この結果から、下地層表面に形成された表面改質液の厚みは、下地層中における表面改質液の含浸率だけでなく、下地に隣接する樹脂層の状態(ゴム状ないしガラス状)や表面改質液の含浸率にも強く影響を受けることが分かる。
したがって、特に、ガラス転移点が0℃以下のゴム状の樹脂層を下地に隣接する樹脂層として設ける際には、下地層中に表面改質液を含有させておくことが極めて有効であることが理解できる。
3:液膜
10:含液膜構造体
11:首部
13:肩部
15:胴部壁
17:底壁
19:金属箔
20:キャップ
Claims (9)
- 樹脂製下地表面に、表面を改質するための液体をコートすることにより該表面に液膜を形成する工程を含む含液膜構造体の製造法において、
前記下地表面を形成する樹脂に液体を含浸せしめて液体含浸樹脂組成物を調製し、
前記液体含浸樹脂組成物を用いての成形により、該液体含浸樹脂により表面が形成されている成形体を作製し、
次いで、前記成形体の表面に前記下地表面を形成する樹脂に含浸せしめる液体と同一の液体をコートすること、
を特徴とする含液膜構造体の製造法。 - 前記下地表面を形成する樹脂に対して、飽和含浸量の20〜100%の量で前記液体を含浸せしめて前記液体含浸樹脂組成物を調製する請求項1に記載の製造法。
- 前記下地面を形成する樹脂としてガラス転移点(Tg)が0℃以下であるものを使用する請求項1または2に記載の製造法。
- 前記液体含浸樹脂組成物を用いての成形を、延伸成形用プリフォームを成形しての延伸成形により行う請求項1〜3の何れかに記載の製造法。
- 樹脂製下地表面に表面を改質するための液膜が形成されている含液膜延伸成形構造体において、
前記下地表面を形成する樹脂に含浸されている液体と同一の液体により液膜が形成されており、
前記下地表面を形成する樹脂層は、厚み差が少なくとも20μm以上となる厚み分布を有していると共に、
前記下地表面を形成している樹脂層上に形成される液膜の塗布量が1〜30g/m2の範囲内に保持されていることを特徴とする含液膜延伸成形構造体。 - 前記下地面を形成している樹脂のガラス転移点(Tg)が0℃以下である請求項5に記載の含液膜延伸成形構造体。
- 前記下地面を形成している樹脂の層に隣接して、ガラス転移点(Tg)が0℃以下の樹脂層が形成されている請求項6記載の含液膜延伸成形構造体。
- 容器の形態を有する請求項5〜7の何れかに記載の含液膜延伸成形構造体。
- ダイレクトブロー成形容器である請求項5〜8の何れかに記載の含液膜延伸成形構造体。
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