以下、図面を参照しながら、実施形態に係る食事型センサ、センシング方法及び食品を説明する。以下の実施形態においては、本実施形態に係る食事型センサを利用することで実現される、生きることへのモチベーションが高まるモチベーション向上社会を例に挙げて、食事型センサの詳細について説明する。ここで、以下では、まず、食事型センサによって収集されたセンシングデータを利用してモチベーション向上社会を実現する健康情報処理装置や、健康情報表示装置について説明した後、食事型センサの詳細について説明する。なお、以下の実施形態では、健康情報処理装置や、健康情報表示装置が、複数の機能(例えば、一次利用サービス、二次利用サービス等)を実現する例を説明するが、必ずしも、複数の機能を実現することが必須の構成ではない。健康情報処理装置や、健康情報表示装置は、複数の機能のうちの一部の機能を実現する構成でもよい。
(本実施形態によって実現されるモチベーション向上社会)
以下に説明する実施形態によれば、生きることへのモチベーションが高まる、モチベーション向上社会が実現される。そこで、実施形態の具体的な構成の説明に入る前に、まずは、我々が提案する、モチベーション向上社会の実現について述べる。
図1は、本実施形態によって実現されるモチベーション向上社会を説明するための図である。今日、誰もが、家族と地域の中で健康快活に、仕事や趣味に生きるのが理想だが、将来の病気への不安、痴呆、うつ、孤独感、離れた家族への心配等が、少子高齢化の進む現代社会において人々を脅かし、安寧な生活を蝕んでいる。そのような状況では、将来像どころか、日々の生きることへのモチベーションすら低下し、強い心持ちにはなれない。もし、さりげなく自分や家族の日常生活や心身の健康状態がわかり、想い描いた自己実現に向けていつでも支援してくれるツールや、家族や自分が健康で且つ活力ある生活を実現するための取り組みに向けて意欲を高めてくれる仕組みが世の中にあれば、誰もが、自己実現の結果、生きることへのモチベーションを高め、現在の暮らしや将来への不安、ストレスから解放され、安心安寧な心持ちで強くなれる。このような理想の自己を獲得し、家族との強い絆に裏打ちされた、不安・ストレスのない強い個々人が、かつての昭和の様な活力と成長力みなぎる経済や社会を取戻す。そこで、以下の実施形態では、半導体・通信・エネルギー・素材・医療技術の輝ける創意を一つに結集して、生きることへのモチベーションを取戻すためのソリューションシステムを開発し、社会実装することを提案した。
図1に示すように、『現代社会』においては、将来の健康や生活に対する不安が蔓延し、家族や社会との絆すら消失しかけている。少子高齢化社会が迫り来るなか、人は、病気にならないか、痴呆やうつにならないか、孤独な生活にならないか、離れた家族は大丈夫か、どうすれば自信を持てるのか等、不安感や孤独感、そして家族の心配に苛まれている。不安、うつ、ストレス、脳疾患、心疾患を抱え、やる気やモチベーションを喪失しかけている。
このような『現代社会』において、誰もが、家族と社会の中で健康快活に、仕事や趣味に生きることを理想としている。その実現手段の1つが、図1に示す『日常人間ドック』である。この『日常人間ドック』では、生体情報とライフログ情報とが紐付けられた真のバイタルデータと、個人のゲノム情報から解析された体質データベースとを統合した革新的なPHR(Personal Health Record)ビッグデータを基盤に、理想のライフスタイルを創造する。
また、『日常人間ドック』では、この革新的なPHRデータを、非意識(Unconscious Sensing)技術により収集する。なお、センシングデータには、図1に示すように、例えば、心拍数、ストレス、血圧、ホルモン、血中濃度、交感神経、薬剤の服用量等がある。また、センシングデータには、例えば、糖分、塩分、胃酸、農薬、微生物、環境物質等がある。また、図1に示すように、ヘルスケアクラウド10上にはPHR処理装置100が構築される。PHR処理装置100は、各個人の生体情報と行動情報とを関連付けてライフログ情報として収集、蓄積する。そして、PHR処理装置100は、図1に示すように、時系列で収集した膨大なライフログ情報とゲノム情報に基づく体質データベースとを複数ユーザについて統合化したPHRビッグデータを、ヘルスケアクラウド10上で一元管理する。
PHR処理装置100は、かかるPHRビッグデータを解析することで、ゲノム情報に基づく将来の疾病発症リスク、食事量、運動量、又は運動負荷に対する体の応答反応等を高度且つ詳細に分析する。ひいては、疾病発症リスクや発作の予兆、自分の体質、ライフスタイルに最適な食事内容、運動、ライフスタイル、薬やサプリメントの選択等、理想像を目指した日々の生活の設計も可能になる。なお、PHR処理装置100は、例えば、ビッグデータマイニング、統合ゲノム解析、シミュレーション、コミュニケーションの可視化定量化技術等を適用する。
ところで、本実施形態においては、このように各個人から収集されたPHRデータを、『日常人間ドック』の仕組みで本人にフィードバックする「一次利用」に活用するだけでなく、様々なサービスへの「二次利用」にも活用する。そこで、以下では、PHRデータがどのように活用されるか、本実施形態において、ヘルスケアクラウド上にて実現されるヘルスケアインフォマティクスの概要を、「一次利用」と「二次利用」とに分けて説明する。
まず、「一次利用」である、『日常人間ドック』の仕組みを簡単に説明する。例えば、PHR処理装置100は、PHRビッグデータの解析の結果を、対象者が装着する装着型情報端末に表示することで、対象者にフィードバックする。そのフィードバックの一例が、「週刊元気予報」である。対象者は、装着型情報端末上に提供される「週刊元気予報」サービスで、自らの将来の健康リスクを把握するとともにその対処法の告知を受け、更に、見える化された目標を持つことができる。また、対象者は、この装着型情報端末上で、医師の指導や家族(若しくは、仮想の家族)等の激励を受けることができる。例えば、図1では、対象者は、主治医の指導(「塩分を控えて!」)を受けている。このように、「週刊元気予報」は、実在の人物や仮想人物による応答システムとしても機能する。こうして、本実施形態によれば、各個人は、日常、さりげなく精度良く収集した情報に基づいて、装着型情報端末等で、各自の健康状態を得て、主治医や家庭医、健康支援スタッフによる指導、激励を受けることができる。また、自分や家族の心身の状態管理や、行動及び生活を確認することができる。
また、『日常人間ドック』の仕組みの中で、PHR処理装置100は、これらの情報を、対象者にフィードバックするだけでなく医療機関にフィードバックすることもできる。医師は、PHR処理装置100からフィードバックされた解析の結果をもとに、例えば、ハイリスクな疾病発症予備軍を認識し、必要に応じ積極的にこれらの者にアクセスする。なお、対象者から送信されたセンシングデータは、対象者の身体の異常検知にも役立てられる。例えば、PHR処理装置100は、ハイリスクな疾病発症予備軍の対象者について日々送信されるセンシングデータを常時監視し、その中で異常を検知すると、直ちに医療機関等にフィードバックする。
また、「二次利用」について説明すると、例えば、PHR処理装置100が、PHRビッグデータの解析の結果を医療機関や各種企業等に提供することで、様々なサービスへの二次利用や、新産業創出に貢献することができる。具体例については、後述する。
こうして、図1に示すように、例えば、5〜10年後には、モチベーション向上社会が実現される。図1では、モチベーション向上社会を実現するための技術のキーワードとして、「バーチャルクローン」、「週刊元気予報」、及び「家族見守りサービス」を挙げている。このうち、「バーチャルクローン」及び「週刊元気予報」は、「一次利用」の例である。また、「家族見守りサービス」は、「二次利用」の例である。
例えば、PHR処理装置100は、各対象者に「バーチャルクローン」を設定し、「バーチャルクローン」に基づく健康づくりを実現している。例えば、PHR処理装置100は、各対象者に対して、「バーチャルクローン」として、将来の健康状態から予測される特徴的な風貌を自分の顔や容姿に反映させた自己像を提示することで、直感的に、現状生活の及ぼす、X年後の自分の将来像を表示させることができる。なお、「バーチャルクローン」には、理想の自己像を設定することもできる。また、本実施形態において、「バーチャルクローン」は、「週刊元気予報」の中で提示される。
また、例えば、PHR処理装置100は、各対象者に、「週刊元気予報」を提示する。この「週刊元気予報」では、仮想的な家族や、上述した仮想的な自己像(バーチャルクローン)が映し出される。また、「週刊元気予報」では、理想的に設計した自分との乖離度や、今の生活を続けた場合の将来の自分の姿を映し出し、理想に向けた指導もしてくれる。また、「週刊元気予報」を見る者は、仮想的な人物や家族との対話を図ることで、常時励ましや元気づけ、健康指導を受けることができ、意欲・気力が高揚し、理想の自己実現に向けた取り組み意欲を向上させることができる。即ち、対象者は、この週刊元気予報を通して、医師や家族(若しくは、仮想の家族)、友達(仮想の友達)や恋人(仮想の恋人)の指導や激励を受けて、やる気をアップすることができる。更に、「週刊元気予報」では、健康度を確認することもできる。
また、例えば、本実施形態では、二次利用サービスの一例として「家族見守りサービス」を実現する。この「家族見守りサービス」によれば、離れた家族をいつでも見守ることができる。ユビキタスなライフログ情報は、離れた病気がちの独居高齢者が、きちんと食事や薬を服用し、つつがなく過ごしていることを、その家族が手に取るように分かるための見守り、コミュニケーションを図る絆ツールとしても活用でき、体調が悪い時は知らせてくれる。その結果、身内に遠慮や気遣いをして無理な我慢や気丈な振る舞いをしたがために、周囲が発症に気づかずに見過して手遅れとなるようなことも防げ、家族の心配や不安までをも和らげてくれる。家族や社会との絆が強化されるばかりでなく、活気ある高齢化社会における自身の強化にもつながる。
更に、図1では図示を省略しているが、本実施形態によれば、努力目標への到達度、競い合う友人の将来像との比較機能、それらのSNS(Social Networking Service)等による公開機能、報償としての地域通貨ポイント付与等の機能によって、例えば、ポイント獲得を目標に、更に、皆の意欲を向上させることができる。また、本実施形態によれば、病気持ちの人にとっては、常時病状が見守られ、発作の予兆が検知され、体調が悪い時や緊急時にはすぐに介助者や救護者が駆けつけ、心身のケアをしてくれる。
例えば、上述してきた「日常人間ドック」を誰もが活用できれば、自分や家族の心身の状態や行動、生活の状況を把握し、管理することができ、誰もが、病気の発症を遠ざける先制医療・個別化予防を享受できるようになる。その結果、理想的な自己目標も明確化され、健全な心身の実現に向けて意欲が高揚し、理想自己実現による達成感は、生きることへのモチベーションを高め、一人一人が強くなることができる。また、「家族見守りサービス」によれば、離れた家族の心身の状態や、行動、生活状況を具体的に把握できることで、不安と心配から解放され、自分と家族の絆を常に身近に感じることで、安心安寧な社会を実現することができる。それは現在十分ではない、日々のきめ細やかな健康維持、食事や体調の管理、高齢者や子供の見守りを支援し、家族と社会の強い絆を取り戻し、健全快活で安心安寧な生活が送れる夢の社会像でもある。このようなモチベーション向上社会が実現すれば、現代社会に蔓延していた、不安、うつ、ストレス、脳疾患、心疾患からも解放される。
上述したように、「日常人間ドック」を活用することで実現される「バーチャルクローン」、「週間元気予報」及び「家族見守りサービス」などが提供されるモチベーション向上社会は、個人の生きることへのモチベーションを高め、一人一人を強くすることができる。さらに、多数の人が「日常人間ドック」を活用して、膨大なPHRビッグデータが蓄積されることで、様々なサービスへの二次利用や新産業の創出を導き、幅広い分野においてイノベーションが連鎖していくことが期待される。本実施形態では、このようなヘルスケアのソリューションシステムの構築が可能となる。
図2は、本実施形態におけるソリューションシステムの一例を説明するための図である。図2に示すように、本実施形態におけるソリューションシステムは、DNAチップ・ゲノム配列情報活用基盤に基づく生体情報や、リアルタイムのライフログである行動情報、脳とこころのチェックなどによる健康(セルフ)チェックが実施され、ヘルスケアクラウド10に情報が集約される。例えば、ユーザAについて、病院や診療所から電子カルテの情報などが集約される。また、ユーザAについて、企業や健康保険におけるレセプト情報、勤労情報、健康診断結果などが集約される。また、研究機関や大学からコホートデータやシーケンスデータなどが集約される。そして、ユーザAから非意識で収集されたセンシングデータが集約される(図中PHR入力)。
このようなパーソナルヘルスレコード(PHR)は、ユーザ(例えば、ユーザA)ごとに管理され、多数の人のPHRが集約されたPHR群がPHRビッグデータとしてヘルスケアクラウド10で管理される。これらPHRビッグデータは、データ信託銀行(データ信託会社とも呼ぶ)によって運用管理される。例えば、データ信託銀行は、PHRビッグデータを解析(ビッグデータ解析)することで、PHRデータの解析データに基づく、各個人の将来予測や、ライフスタイルの提案を可能にする。一例を挙げると、ライフサポートを行なう健康コンシェルジュであるかかりつけ医がPHRデータの解析データに基づくライフスタイルの提案を行なったり、解析データに基づいてバーチャルクローンや、週間元気予報を提供したりする。すなわち、PHRデータを入力したデータに対して、本人の体質及びライフスタイルを反映した元気予報、ライフスタイル変革、リスク診断などの個別の健康指導をフィードバックすることができる。
ユーザは、PHRデータを入力するインセティブとして、上記フィードバックを授受することができることから、継続してPHRデータを入力するようになる(PHRデータ入力の常態化)。さらに、ユーザがそれらPHRデータの二次利用を許諾するようになれば、データ信託銀行は、管理するPHRデータ、或いは、解析データを各種メーカーや、販売・流通業者に提供することが可能となる。ここで、PHRデータ及び解析データは、慎重な取り扱いが求められる個人情報であることから、図示するように、必要に応じて匿名化させる。
PHRデータや解析データの提供を受ける各種メーカーや、販売・流通業者としては、例えば、「セキュリティ」、「製薬」、「食品」、「化粧品」などが挙げられ、各種メーカーや、販売・流通業者は、提供を受けたPHRデータや解析データなどのヘルスケア情報に基づいて、高付加価値な製品開発や、サービス提供を行なうことが可能となる。ここで、各種メーカーや、販売・流通業者によって行なわれる製品開発や、サービスは、例えば、医薬品の開発や、薬事法上の承認を得るために行われる臨床試験(治験)、或いは、映画や番組の視聴者から身体に現れた生体情報を集めるといった単なるマーケティングなど、非常に幅広い分野に亘る。本実施形態のソリューションシステムは、このような幅広い分野で利用され、各分野において、イノベーションの連鎖を引き起こすことが可能である。
また、本実施形態のソリューションシステムは、各個人が日常人間ドックを活用することで、その人向けの新規センサを構築して提供したり(例えば、ユーザのゲノム情報やライフスタイルの情報に基づいて、その人に最適なセンサを提供)、PHRデータの解析データから新たなDNAチップの開発を促進させたりすることも可能である。
(ソリューションシステムの概要)
本実施形態では、まず、ゲノム情報を含むPHRデータをヘルスケアクラウド10上に集約して大規模ゲノム・コホートデータベース114aを形成し、この大規模ゲノム・コホートデータベース114aに蓄積されたPHRビッグデータを基盤データとすることで、将来の健康リスク(例えば、各疾病の発症確率)を精度良く推定する仕組みを構築する。また、個人のPHRデータを、各方面から継続的に収集して一元管理することで、この個人に対して、本人の体質及びライフスタイルを反映した個別の健康指導をフィードバックする仕組み(日常人間ドック)を構築する。更に、ヘルスケアクラウド10上に集約されたPHRビッグデータの二次利用(他人のための利用や商業的利用)の仕組みを構築する。
図3は、本実施形態におけるソリューションシステムの概要を説明するための図である。図3に示すように、本実施形態におけるソリューションシステムでは、ヘルスケアクラウド10上にPHR処理装置100(「健康情報処理装置」とも呼ばれる)が構築され、PHR処理装置100が、上述した各種の仕組みを実現する。なお、図3に示すように、PHR処理装置100のオペレーションを含むヘルスケアクラウドサービスの運用管理は、データ信託会社11によって行われる。例えば、データ信託会社11は、一次利用サービス(日常人間ドック)の提供を受けるユーザや医療機関13、二次利用サービスの提供を受ける医療機関や各種企業等15に対して、サービス提供のための各種手続きを、オンライン若しくはオフラインで行う(図3の点線を参照)。
PHR処理装置100は、PHRデータの収集及び蓄積を行うPHR蓄積部110と、PHR蓄積部110に蓄積されたPHRデータの運用管理を行うPHR運用管理部120とを備える。
PHR蓄積部110は、個人のみならず、研究機関、医療機関、企業等からも、この個人に関するPHRデータ(図3において、PHRデータ12)を収集し、これを個人のPHRデータとして集約、個別に一元管理する。例えば、PHRデータには、個人から継続的に収集されるライフログ情報の他、研究機関から得られる本人のゲノム情報、医療機関から得られる電子カルテ情報、企業や健康保険組合から得られる健康保険組合情報(レセプト情報、勤務情報、検診手帳情報)、母子手帳情報、学校の健康診断の情報等がある。即ち、PHRデータは、個人の健康に関連する情報として、個人のみならず各種機関等から収集されるものであり、その種類に限定はない。また、PHR蓄積部110は、かかるPHRデータを大規模に収集し(例えば、15万人規模)、大規模ゲノム・コホートデータベース114aを形成する。この大規模ゲノム・コホートデータベース114aは、各個人については、新たな情報が日々蓄積されることでその規模を拡大し、また、収集対象者の範囲を拡大することでもその規模を拡大する。なお、以下では、大規模ゲノム・コホートデータベース114aのPHRデータ全体を意味する場合には、これを「PHRビッグデータ」と呼び、個人のPHRデータと区別する。また、PHRデータは、「健康情報」とも呼ばれる。
PHR運用管理部120は、PHRビッグデータ解析部121と、一次利用サービス提供部122(「推定部」とも呼ばれる)と、二次利用サービス提供部123(「出力部」とも呼ばれる)とを備える。PHRビッグデータ解析部121は、所定の目的に従って、大規模ゲノム・コホートデータベース114aに蓄積されたPHRビッグデータを解析し、ゲノム情報と、ライフスタイルと、健康リスクとの関連性を導き出す。そして、PHRビッグデータ解析部121は、個人の体質及びライフスタイルの組み合わせとの何らかの関連性が示された解析結果を得る。
例えば、PHRビッグデータ解析部121は、PHRビッグデータを対象にコホート分析を行い、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせと、将来発症し得る疾病のリスク(「疾病発症リスク」と呼ばれる)との関連性を導き出す。すると、一次利用サービス提供部122は、PHRビッグデータ解析部121によって導き出されたこの関連性を各個人のPHRデータに適用することで、本人の体質及びライフスタイルに応じた疾病発症リスクを割り出す。そして、一次利用サービス提供部122は、割り出した疾病発症リスクの情報をユーザのポータルサイト14aに登録する等して本人へのフィードバックを行う。このポータルサイト14aは、本人の他、家族及び主治医による閲覧が可能であり、ポータルサイト14aを通じて3者間でコミュニケーションを図ることができる。これが、本実施形態における「日常人間ドック」の概要である。「日常人間ドック」の詳細については、後述する。
また、例えば、PHRビッグデータ解析部121は、PHRビッグデータを対象にコホート分析を行い、二次利用サービス用の解析結果を導き出す。また、二次利用サービス提供部123は、PHRビッグデータ解析部121によって導き出された解析結果を出力し、各種企業等(医療機関、食品・サプリメント販売会社、製薬会社、医療機器メーカー、流通会社、セキュリティ会社等)に提供する。二次利用サービスの具体例については、後述する。
また、図3に示すように、ユーザやユーザの家族等の関係者、ユーザの主治医は、PHR表示装置200(「健康情報表示装置」とも呼ばれる)によって、例えば、一次利用サービス提供部122によって提供されるポータルサイト14aを閲覧する。PHR表示装置200は、スマートフォン、PC(Personal Computer)、インターネットテレビ、装着型情報端末等である。また、PHR表示装置200は、表示制御部210と、表示部220とを備え、表示制御部210は、ユーザの将来の健康リスクを表示部220に表示する。
(PHRデータ)
次に、図4は、本実施形態におけるPHRデータを説明するための図である。上述したように、PHRデータは、個人の健康に関連する情報として個人のみならず各種機関等から収集されるものであり、その種類に限定はない。したがって、本実施形態では、PHRデータとして何の情報を収集するかという点も個人毎に異なると考える。もっとも、以下に説明するように、本実施形態の「日常人間ドック」では、個人のPHRデータから本人のライフスタイルの型を割り出す。また、このライフスタイルの型は、本実施形態では、10の項目(喫煙、飲酒、睡眠、ストレス、運動、食生活、薬・サプリメント、精神状態、疲れ、免疫)を評価することで割り出される。よって、本実施形態では、この10の項目を評価することが可能なPHRデータが、各個人から収集されることを想定する。なお、図3では、ユーザAのPHRデータのうち、ゲノム情報及びライフログ情報のみを概念的に示す。
まず、ゲノム情報は、ユーザAの遺伝情報である。図4に示すように、細胞の核の中には染色体が存在し、この染色体を構成するデオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic acid)という物質がDNAである。DNAは、その構成単位であるヌクレオチドが鎖状に連なるとともに、2本の鎖による2重螺旋構造となっている。また、遺伝子は、DNA上の区画である。ヌクレオチドは、デオキシリボース糖がリン酸によって連結されたものであり、デオキシリボース糖に、4種類の塩基のうちのいずれかが結合する。2本の鎖の間では、アデニン(A)とチミン(T)との塩基対、グアニン(G)とシトシン(C)との塩基対が結合される。ヒトのゲノム情報は、約30億塩基対から構成される。
本実施形態において、ゲノム情報は、この約30億塩基対の配列情報、若しくは、ヒトの個性を決定する約100万塩基対の配列情報である。なお、PHR蓄積部110は、塩基対の配列情報をそのまま蓄積してもよいし、あるいは、標準ゲノム情報(例えば、日本人の標準SNP(Single Nucleotide Polymorphism))との差分の形で蓄積してもよい。例えば、ユーザAが研究機関に自身の血液を提供し、研究機関にてユーザAから抽出されたゲノムの全塩基配列(配列情報)が特定された場合、その配列情報を、ユーザAのゲノム情報として取り扱う。
なお、ゲノム情報は、上述した配列情報に限られるものではなく、DNAチップ等想定される種々の手法による解析結果も含む。例えば、ユーザAが研究機関に自身の血液を提供し、研究機関にてDNAチップによる解析が行われた場合、その解析結果を、ユーザAのゲノム情報として取り扱う。例えば、DNAチップによるSNP解析、CNV(Copy Number Variation)解析、マイクロサテライト解析、エピゲノム解析、あるいは遺伝子発現量解析等によって、特定の疾病(例えば、高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病等)に関する遺伝子の型や、特定の薬剤の代謝、アルコール分解に関する遺伝子の型が判明した場合には、その解析結果が、ユーザAのゲノム情報となる。
次に、ライフログ情報は、ユーザAのライフスタイル(生活様式)を表す情報である。図4に示すように、本実施形態では、生体情報及び行動情報を合わせてライフログ情報と呼び、必要に応じてその両者が関連付けられることで、正確なライフログ情報を得ることができると考える。
ここで、図4を用いて、生体情報である「血圧」と、行動情報である「運動量」及び「行動履歴」とが関連付けられることで、正確なライフログ情報が得られる点を説明する。例えば、ユーザAは、生体センサと、加速度センサとを装着しているものとする。これらのセンサは、後述する装着型情報端末に備えられてもよいし、装着型情報端末とは別に、ユーザAに装着(例えば、貼付)されてもよい。生体センサは、例えば、指、手首、耳等の末梢血管における血流変化を検出し、検出した血流変化に基づいて、血圧、心拍数、脈拍等を得る。一方、加速度センサは、直流成分から、ユーザの姿勢を検知し、交流成分から、ユーザの動作(歩行、走行、自転車、自動車、電車等)を識別する。そして、加速度センサは、ユーザの姿勢とユーザの動作とから、ユーザの運動量を得る。更に、行動履歴は、装着型情報端末、若しくは、スマートフォン、PC等の情報端末に入力されたスケジュール情報から得られる。
そして、本実施形態において、生体センサから得られた生体情報、及び、加速度センサやその他の情報端末から得られた行動情報は、それぞれの情報が有する時間情報によって関連付けられるか、若しくは、それぞれの情報が同じレコードに記録されることで、関連付けられる。改めて図4を参照すると、例えば、生体情報である血圧は、日中に一旦上昇しているが、この生体情報と関連付けられた行動履歴を参照すると、この上昇は、会議を起因とするストレスによるものであることが判明する。また、同じく血圧は、夕方以降に下降しているが、この生体情報と関連付けられた行動履歴を参照すると、この下降は、飲酒によるものであることが判明する。更に、血圧と運動量との関連も、明らかとなる。
このように、本実施形態においては、生体情報及び行動情報を、相互に関連付けて取り扱うことを基本としている。なお、本実施形態において、PHR処理装置100は、ライフスタイルの型や現在の健康状態の評価に必要な情報を、収集すべき生体情報及び行動情報として適宜選択することになる。例えば、生体情報は、現在の健康状態を表す各種数値情報や、体内に取り込まれた成分の量、物質の有無を表す情報である。例えば、生体情報は、血圧、心拍数、脈拍、体温、体成分、イオン、pH濃度等である。また、例えば、生体情報は、糖分、塩分等の成分量、胃酸の濃度、農薬、環境物質、食品添加物の有無、アルコールやニコチン、薬剤成分の摂取量等である。また、例えば、行動情報は、運動量や睡眠量、スケジュール情報、GPS(Global Positioning System)等の位置情報である。本実施形態では、かかるライフログ情報の全部若しくは一部を、センサや各種情報端末から収集する。また、例えば、スマートフォン(運動系アプリケーション、スケジュールアプリケーション等)や、SNS、電子レシート等から得られた情報を用いてもよい。
図5は、本実施形態におけるライフログ情報の収集を説明するための図である。本実施形態においては、一例として、ユーザが、装着型情報端末を装着していることを想定する。装着型情報端末としては、例えば、腕時計型のものや、眼鏡型のもの、指輪型のもの等が考えられる。この装着型情報端末は、センサとしての機能を備えて生体情報を収集することができる。また、この装着型情報端末は、いわゆる情報端末としての機能も備えて、行動情報を収集することもできる。そこで、装着型情報端末は、ライフログ情報のドックとしての役割を果たし、図5に示すように、ユーザから個別に収集された生体情報と行動情報との関連付け(ペアリング)を行い、ペアリング後のライフログ情報を、ヘルスケアクラウド10にアップロードする。個別に収集される生体情報や行動情報は、1日の中で定期的あるいは不定期に収集される一方で、ヘルスケアクラウド10へのアップロードは、例えば1日に1回といった頻度で行われる。また、この装着型情報端末は、装着型情報端末とは別にユーザに装着されたセンサや情報端末から、生体情報や行動情報を受信することもできる。この場合も、装着型情報端末は、ユーザから個別に収集された生体情報と行動情報との関連付け(ペアリング)を行い、ペアリング後のライフログ情報を、ヘルスケアクラウド10にアップロードする。なお、ペアリングは、装着型情報端末の側ではなく、ヘルスケアクラウド10側で行われてもよい。
更に、本実施形態において、装着型情報端末は、個人認証を行う。即ち、装着型情報端末は、当該端末を装着している者が確かに本人であるか否かの個人認証を行う。例えば、腕時計型の場合、装着型情報端末は、手首の静脈認証によって個人認証を行う。また、例えば、カメラを備えている場合、装着型情報端末は、顔認証によって個人認証を行う。また、例えば、眼鏡型の場合、装着型情報端末は、網膜認証や虹彩認証によって個人認証を行う。また、例えば、指輪型の場合、装着型情報端末は、指の静脈認証によって個人認証を行う。なお、個人認証の手法は、上述した手法に限られるものではない。なお、本実施形態では、装着型情報端末からライフログ情報をアップロードする手法を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、携帯型情報端末や、据付型情報端末から、ライフログ情報をアップロードしてもよい。
(本実施形態の概要)
以下、本実施形態における食事型センサについて説明する。上述したように、本実施形態では、センサを意識しない非意識センシングを行なうことで、個人の真のデータを効率的かつ継続的に収集する。ここで、本実施形態における食事型センサは、超小型自律駆動型高性能センサであり、食品と混在し、かつ体内に入った際にも消化及び吸収されずに排出されることで非意識で生体情報をセンシングする。例えば、食事型センサは、毎日摂取される様々な食品(生鮮食品、加工食品、調味料、飲料など)に混合され、食品とともに体内に取り込まれ、体内の生体情報を収集する。
図6は、本実施形態における食事型センサが混合される食品の一例を示す図である。例えば、本実施形態における食事型センサは、図6に示すように、ネギなどの生鮮食品や、パン、ふりかけ、ごま、のり、かつおぶし、冷凍食品などの加工食品、ラー油、ドレッシング、こしょう、しょうゆ、みそ、七味、ソースなどの調味料、そのほか、お茶や水などの飲料などに混合され、上記した食品とともに体内に飲み込まれる。ここで、食事型センサは、例えば、生鮮食品に対しては、調理時に混合され、加工食品及び調味料に対しては、製造時に混合される。そして、食事型センサは、食事型センサが混合されたいずれかの食品をユーザが食すことで、体内に取り込まれ、体内の生体情報を収集する。
ここで、本実施形態における食事型センサは、センサ自体を小型化するために、食事型センサ1つで単一の物質のセンシングを行なう。例えば、食事型センサとしては、塩分を計測するセンサ、糖分を計測するセンサ、PHを計測するセンサ、酵素を計測するセンサ、ウィルスを計測するセンサ、菌を計測するセンサ、アルコールを計測するセンサ、煙草のヤニやニコチンなどの特定物質を計測するセンサ、血液を計測するセンサ、特定の薬剤成分を計測するセンサ、脂質を計測するセンサ、鉄分を計測するセンサ、カルシウムを計測するセンサ、繊維質を計測するセンサ、ビタミンを検出するセンサなどがそれぞれ構築される。
また、酵素、ウィルス、菌、特定の薬成分及びビタミンなどについては、さらに、種々の酵素ごと、ウィルスごと、菌ごと、薬剤成分ごと、ビタミンごとの食事型センサがそれぞれ構築される。すなわち、例えば、ふりかけに食事型センサを混合する場合には、各物質をセンシング対象とする複数の食事型センサがふりかけに混合され、ふりかけとともにごはんにかけられ、ユーザの体内にそれぞれ飲み込まれる。そして、各食事型センサは、ユーザの体内の所定の物質をそれぞれ計測し、計測結果を体外の通信装置にそれぞれ送信する。
ここで、食事型センサは、特定の環境下におかれた場合に電源がONの状態となり、体外の通信装置と通信を行って、計測結果を送信するように構築される。例えば、食事型センサは、水分を検出した場合、所定の温度にさらされた場合、体内の酵素を検出した場合、或いは、磁気を検出した場合などに電源がONの状態となり、ユーザが装着する装着型情報端末との通信を開始するように構築される。なお、食事型センサの通信開始の詳細については、後述する。また、上述したセンサの種類や、食品の種類はあくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、その他のセンサとして、農薬や環境物質、食品添加物などをセンシングの対象とするセンサが用いられる場合であってもよい。また、例えば、その他の食品として、チョコレートやクッキーなどの菓子類を用いる場合であってもよい。また、食事型センサと食品とはどのように混合されてもよく、例えば、単純に混合する場合であってもよく、或いは、食品の中に埋め込まれる場合であってもよい。
また、本実施形態の食事型センサは、人間を対象としたセンシングだけではなく、ペットや家畜などを対象とすることも可能である。かかる場合には、例えば、図6に示すように、食事型センサが飼葉に混合されて家畜に与えられたり、ペットフードに混合されてペットに与えられたりする。これにより、家畜やペットの体内の種々の物質のセンシングを行なうことができる。
次に、食事型センサのセンシングの種別と、各食事型センサの識別方法について説明する。以下、食事型センサが人間によって飲み込まれる場合を例に挙げて説明する。食事型センサは、食品と混合され、食品とともに飲み込まれて体内の各物質の情報を収集するが、利用するユーザによってセンシングの対象を種々変化させることができる。例えば、食事型センサがふりかけに混合される場合に、利用者によってセンシング対象の物質を任意に組み合わせることが可能である。
図7は、本実施形態における食事型センサのセンシングの種別の一例を説明するための図である。例えば、図7に示すように、食事型センサは、「特定個人用」、「目的別(各種疾病用):ex.糖尿病」、「目的別(健康管理用):ex.ダイエット」及び「基本型(不特定多数用)」などがある。ここで、「特定個人用」の食事型センサとは、特定の個人用にセンシングの対象が組み合わせられたものである。例えば、ユーザAが日常人間ドックを活用している中で、特に重点的に観察したほうがよいと判断された物質をセンシングする食事型センサの組み合わせである。
また、「目的別(各種疾病用):ex.糖尿病」の食事型センサとは、各種疾病用にセンシングの対象がそれぞれ組み合わせられたものである。例えば、図7に示すように、糖尿病患者にとって重点的に観察したほうがよい物質をセンシングする食事型センサの組み合わせである。また、「目的別(健康管理用):ex.ダイエット」の食事型センサとは、健康管理用にセンシングの対象がそれぞれ組み合わせられたものである。例えば、図7に示すように、ダイエットを目的とするユーザにとって重点的に観察したほうがよい物質をセンシングする食事型センサの組み合わせである。また、「基本型(不特定多数用)」の食事型センサとは、図7に示すように、不特定多数の人を対象とした食事型センサの組み合わせであり、例えば、全ての種類の食事型センサを含むものである。基本型の食事型センサを利用するユーザとしては、例えば、特に大きな目的がなく、日常人間ドックを活用したいユーザなどが挙げられる。
このように、食事型センサは、センシングの種別によって異なる組み合わせで利用される。例えば、食事型センサが混合されたふりかけは、上記した4つの種別があり、食事型センサを利用するユーザが種別を選択してふりかけを使うこととなる。ここで、上記した4つの種別においては、「特定個人用」や、「目的別(各種疾病用)」の食事型センサのユーザは限定的であるのに対して、「目的別(健康管理用)」や、「基本型(不特定多数用)」の食事型センサのユーザは非限定的である可能性が高い。例えば、「特定個人用」や、「目的別(各種疾病用)」の食事型センサが混合されたふりかけは、特定のユーザにのみ利用されるが、「目的別(健康管理用)」や、「基本型(不特定多数用)」の食事型センサが混合されたふりかけは、複数のユーザ(例えば、家族全員など)に利用される可能性が高い。従って、本実施形態における食事型センサは、体内に取り込まれた食事型センサから送信された計測結果が、当該食事型センサを飲み込んだユーザの計測結果であることを識別するための仕組みが構築される。
例えば、本実施形態における食事型センサは、図7に示すように、「特定個人用」や、「目的別(各種疾病用)」の食事型センサの場合の多くがダイレクト型で識別され、「目的別(健康管理用)」や、「基本型(不特定多数用)」の食事型センサの場合の多くが食器経由型で識別される。以下、図8を用いて、ダイレクト型の識別と、食器経由型の識別について説明する。図8は、本実施形態における食事型センサの識別方法について説明するための図である。なお、図8においては、ふりかけに食事型センサが混合された場合を例に挙げて説明する。
例えば、ダイレクト型の識別の場合には、図8の(A)に示すように、ふりかけのビンに含まれる食事型センサ400の全センサIDの情報をユーザAの装着型情報端末500に登録することで、食事型センサ400から送信される計測結果が当該食事型センサ400を飲み込んだユーザの計測結果であることを識別する。すなわち、「特定個人用」や、「目的別(各種疾病用)」の食事型センサの場合、ユーザが限定的であることから、ふりかけを食するユーザは、ユーザAに限られる。そこで、ふりかけを食す前に、まず、ふりかけに混合された全センサのセンサIDの情報をユーザAの装着型情報端末500に登録しておくだけで、ふりかけに混合された全食事型センサ400によって送信された計測結果がユーザAのものであると識別することが可能である。
一方、食器経由型の識別の場合には、ユーザ専用の食器を用いることで、計測結果を識別する。例えば、図8の(B)に示すように、ユーザB専用のユーザB茶碗600が用いられる。ここで、ユーザB茶碗600は、ユーザBの装着型情報端末500との間でのみ通信を行なうことが可能であり、ふりかけに混合された食事型センサ400のうち、ユーザB茶碗600に入った食事型センサ400のセンサIDの情報をユーザBの装着型情報端末500に送信して登録させる。複数のユーザによって同一のふりかけが食される場合であっても、上述したように、各ユーザ専用の茶碗が用いられ、茶碗に入った食器型センサのセンサIDをそれぞれ対応するユーザの装着型情報端末500に送信して登録させることで、各ユーザの計測結果を正確に識別することが可能となる。すなわち、ユーザBがユーザB茶碗600内の食事型センサ400を食し、ユーザBの体内の食器型センサ400によって送信された計測結果がユーザBのものであると識別することが可能である。
ここで、食事型センサ400は、ユーザによって食される段階になるまで電源がOFFの状態となっている。そして、上述したように、食事型センサは、特定の環境下におかれた場合に電源がONの状態となる。例えば、食器経由型の場合には、図8の(B)に示すように、食器(例えば、ユーザB茶碗600)に埋め込まれた磁石によって発生された磁力によって電源がONとなるように構築される。すなわち、ユーザB茶碗600内のごはんにふりかけがかけられると、磁力によって食事型センサ400の電源がONとなる。そして、食事型センサ400は、ユーザB茶碗600に対してセンサIDを送信する。ユーザB茶碗600は、受信したセンサIDの情報をユーザBの装着型情報端末500に送信することで、ユーザB茶碗600内に入った食事型センサ400のセンサIDのみを登録させる。
なお、上述した実施形態では、センシングの種別によってダイレクト型の識別と、食器経由型の識別とが使い分けられる場合について説明したが、食事型センサ400が混合される食品に応じてダイレクト型と食器経由型が使い分けられる場合であってもよい。例えば、個人用に小分けされた食品の場合には、「基本型(不特定多数用)」の食事型センサであっても、ダイレクト型で識別することができる。
次に、図9A及び図9Bを用いて、ダイレクト型の食事型センサ400の利用の一連の流れを説明する。図9A及び図9Bは、本実施形態における食事型センサ400の利用の流れの一例を説明するための図である。例えば、利用するユーザが非限定的な「基本型(不特定多数用)」及び「目的別(健康管理用)」の食事型センサ400の場合には、食品(例えば、ふりかけ等)の製造時などに予め食事型センサ400が混合され、図9Aの(A)の左図に示すように、ドラッグストアや、スーパーなどで販売される。一方、利用するユーザが限定的な「特定個人用」や、「目的別(各種疾病用)」の食事型センサ400の場合には、図9Aの(A)の右図に示すように、医師の処方箋に基づいて、薬局などでユーザごとにセンサの組み合わせがカスタマイズされ、食品(例えば、ふりかけ等)に混合されて販売される。
このように購入されたふりかけには、例えば、図9Aの(B)に示すように、ビンに食事型センサ400を登録するためのバーコードが記載されている。ここで、ビンに記載されたバーコードは、ビン内のすべての食事型センサ400をそれぞれ一意に特定するためのセンサIDの情報を含む。ユーザは、装着型情報端末500でバーコードを読み取ることによって、ふりかけに混合された全食事型センサ400のセンサIDを装着型情報端末500に登録する。
そして、図9Aの(C)に示すように、食事型センサ400は、ふりかけとともにごはんにかけられ、図9Bの(D)に示すように、ユーザによって食される。ここで、食事型センサ400は、特定の環境下で電源がONの状態となる。例えば、食事型センサ400は、ごはんの上に乗せられて所定の温度になった場合や、唾液によって湿った場合などに、電源がONの状態となり、ユーザの装着型情報端末500との通信が可能となる。さらに、食事型センサ400は、自センサがユーザの体内に入ったことを検知する。例えば、食事型センサ400は、口腔内の温度にさらされた場合や、唾液に含まれるアミラーゼを検出した場合、胃酸に含まれるリパーゼを検出した場合、光が検出されなくなった場合などに自センサがユーザの体内に入ったことを検知する。なお、食事型センサ400の電源をONの状態にする条件と、食事型センサ400がユーザの体内に入ったことを検知する条件とに同じ条件を用いる場合であってもよい。例えば、食事型センサ400が所定の温度にさらされた場合に、電源をONの状態にするとともに、自センサが体内に入ったと検知する場合であってもよい。
そして、食事型センサ400は、自センサがユーザの体内に入ったことを検知すると、センサ機能を起動させてセンシングを開始し、排出されるまで継続して物質の計測を行う。例えば、食事型センサ400は、図9Bの(E)に示すように、口腔内、食道内、胃内及び腸内などで、対象とする物質のセンシングを行なう。一例を挙げると、食事型センサ400は、胃内における塩分、糖分、脂質、鉄分、カルシウム、繊維質、各ビタミンの成分量、PH、各酵素、各ウィルス、各菌、各薬剤成分、アルコールの有無や濃度、煙草のヤニやニコチンの特定物質の有無、体内の出血による血液の有無などを計測し、計測結果を自センサのセンサIDに対応付けて装着型情報端末500に送信する。
ここで、食事型センサ400は、体内における滞在時間に応じて所定の頻度でセンシングを行なう。一般的に、口から入った食物は、固形物の場合には約30秒〜60秒、液体の場合には約1〜6秒で口〜食道を通過し、胃に約4時間、小腸に約7〜9時間、大腸に約25〜30時間それぞれ滞在することとなる。そこで、食事型センサ400は、例えば、センサ機能が起動された初期の段階から段階的にセンシングの頻度を低下させるように構築される。一例を挙げると、食事型センサ400は、センサ機能が起動されて即座に物質の計測を行なったのち、5分ごとに物質の計測を行なう。そして、胃を通過したと考えられる時間(例えば、4時間以上)経過したのちには、食事型センサ400は、20分ごとに物質の計測を行う。さらに、食事型センサ400は、小腸及び大腸における滞在時間を考慮して、センシングの頻度を段階的に低下させる。
ここで、食事型センサ400は、体内で物質を計測するごとに、計測結果を装着型情報端末500に送信する。図10は、本実施形態における装着型情報端末500に記憶される計測結果の一例を示す図である。例えば、装着型情報端末500は、図10に示すように、「センサID」ごとに「データ」及び「タイム」を対応付けた生体情報を記憶する。ここで、「センサID」とは、予め登録した食事型センサ400のセンサIDを示す。また、「データ」とは、食事型センサ400から受信した計測結果を示す。また、「タイム」とは、計測結果を受信した日時を示し、装着型情報端末500によって付与される。
例えば、装着型情報端末500は、図10に示すように、生体情報「センサID:1、データ:a1、タイム:20131001073015」を記憶する。かかる情報は、「センサID」が「1」の食事型センサ400によって計測された計測結果「a1」を、装着型情報端末500が「2013年10月1日7時30分15秒」に受信したことを示す。同様に、装着型情報端末500は、センサIDごとに、受信した計測結果と受信時間とを対応付けて記憶する。例えば、図10に示すように、装着型情報端末500は、5分ごとに受信した計測結果をセンサIDごとに受信時間を対応付けた生体情報を記憶する。
このように、食事型センサ400は、体内に飲み込まれた後、排出されるまで物質のセンシングを行い、装着型情報端末500に計測結果を送信する。ここで、食事型センサ400は、体外に排出されたことを検知して電源をOFFの状態にすることができる。例えば、食事型センサ400は、温度の変化、PHの変化、光の検出、或いは、電源がONになってから所定の時間が経過したことなどを検知することにより、自センサが体外に排出されたと判定し、自センサの電源をOFFの状態にする。
図9Bに戻って、装着型情報端末500は、図9Bの(F)に示すように、食事型センサ400から受信して、記憶した生体情報と、行動情報とのペアリングを行い、ペアリング後のライフログ情報を、ヘルスケアクラウド10にアップロード(データ送信)する。ここで、ヘルスケアクラウド10へのライフログ情報のアップロードは、例えば1日に1回といった頻度で行われる。例えば、装着型情報端末500は、図10に示す生体情報に行動情報を対応付けたライフログ情報をヘルスケアクラウド10にアップロードする。ヘルスケアクラウド10においては、アップロードされたライフログ情報を用いて各種PHRビッグデータ解析が実行される。ここで、食事型センサ400によって収集された情報は、各物質の有無や濃度、量が解析されるだけではなく、例えば、口から入って排出されるまでの体内の通過時間を算出することが可能である。例えば、PHを検出する食事型センサ400の計測結果を時系列で解析し、PHが大きく変化した2つの時点(口に入ってPHが変化した時点と、体外に排出されることでPHが変化した時点)に基づいて、体内の通過時間を算出することが可能である。このように、食事型センサ400は、体内の種々の物質を計測することで、種々の情報を解析することが可能となる。
上述したように、食事型センサ400は、食品に混合されてユーザの体内に飲み込まれ、体内の所定の物質のセンシングを行うが、1つのセンサにつき、単一の物質をセンシングするため、一回の食事で計測対象となっているすべての物質に対応する各食事型センサ400が体内に飲み込まれることが望まれる。ここで、例えば、図9Aの(C)に示すようなふりかけの場合、一回の食事で計測対象となっているすべての物質に対応する各食事型センサ400がごはんの上にかけられたか否か判断しにくい。そこで、計測対象となっているすべての物質に対応する各食事型センサ400が1つのセンサ群として構築させることが可能である。
図11は、本実施形態における食事型センサ400のセンサ群の一例を説明するための図である。例えば、図11の(A)に示すように、測定対象となっている物質に対応するすべての種類の食事型センサ400がつながり1つのセンサ群40が形成され、ふりかけのビンに入れられる。ここで、すべての種類の食事型センサ400が、例えば、低融点の食用糊などによって1つのセンサ群40としてつなげられる。それにより、図11の(B)に示すように、ふりかけとともにセンサ群40がごはんのうえに載せられると、図11の(C)に示すように、食事型センサ400をつなげていた食用糊が溶けて、食事型センサ400がバラバラになる。これにより、サイズが小さくなり、ユーザが飲み込み易くなる。
次に、食事型センサ400を利用したダイレクト型のセンシングの処理の流れについて説明する。図12は、本実施形態における食事型400を利用したセンシングの処理手順を示す図である。図12に示すように、ダイレクト型のセンシングでは、まず、装着型情報端末500が、食品のパッケージについたバーコードを読み取ることで、パッケージ内の全センサのセンサIDを登録する(ステップS101)。
そして、食事型センサ400が、特定の環境下で電源がONの状態となると(ステップS102)、自センサがユーザの体内に入ったか否かが判定される(ステップS103)。ここで、自センサが体内に入ったと判定すると(ステップS103肯定)、食事型センサ400は、所定の物質を計測して(ステップS104)、計測結果を装着型情報端末500に送信する(ステップS105)。なお、食事型センサ400は、自センサがユーザの体内に入るまで待機状態となる(ステップS103否定)。
その後、装着型情報端末500は、計測結果を受信すると(ステップS106)、計測結果を送信した食事型センサ400のセンサIDに、計測結果と、時間とを対応付けて記憶する(ステップS107)。食事型センサ400は、計測結果を送信すると、所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS108)。ここで、所定の時間が経過したと判定すると(ステップS108肯定)、食事型センサ400は、ステップS104に戻って、所定の物質を再度計測する。
装着型情報端末500は、受信した全計測結果を行動情報とペアリングしたのち、所定の頻度でヘルスケアクラウド10に送信する(ステップS109)。ヘルスケアクラウド10では、全計測結果を受信して(ステップS110)、PHRデータとして記憶する。なお、上述した処理手順では、自センサが体内に入ったと判定された後に、所定の物質が計測され、計測結果が送信される場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、自センサが体内に入ったと判定される前から、所定の物質が計測され、計測結果が装着型情報端末500に送信される場合であってもよい。かかる場合には、自センサが体内に入ったと判定された後の測定結果に対してフラグを立てて装着型情報端末500に送信する。これにより、装着型情報端末500は、体内に入る前後の計測結果を識別することができ、体内に入った後の計測結果のみを利用することが可能である。
次に、図13を用いて、食器経由型の食事型センサ400の利用の一連の流れを説明する。図13は、本実施形態における食事型センサ400の利用の流れの一例を説明するための図である。上述したように食器経由型は、ユーザ専用の食器を用いることで、複数のユーザによって同時に利用される食事型センサ400の計測結果を正確に識別する。例えば、図13の(A)に示すように、ユーザFとユーザGが同一の食卓で食事をしており、「基本型(不特定多数用)」の食事型センサ400が混合されたふりかけを利用していたとする。
このような場合に、食器経由型の食事型センサ400を用いることで、例えば、ユーザFの茶碗に入った食事型センサ400のセンサID「7、10、2、・・・、15」がユーザFの装着型情報端末500に予め登録される。同様に、ユーザGの茶碗に入った食事型センサ400のセンサID「9、8、13、・・・、5」がユーザGの装着型情報端末500に予め登録される。そして、ユーザF及びユーザGが、それぞれふりかけとともに食事型センサ400を飲み込むと、飲み込まれた食事型センサ400から各物質の計測結果が体外の装着型情報端末500に対して送信されることとなる。
ここで、食事型センサ400の計測結果の送信範囲は、例えば、同一の食卓で食事をしている場合には、図13の(B)に示すように、ユーザFとユーザGとで重なってしまう。このような状況では、一方のユーザが隣のユーザに少し近づくだけで、お互いに隣のユーザの食事型センサ400の計測結果の送信範囲内に入ってしまい、装着型情報端末500が隣のユーザの計測結果を受信してしまうが、食器経由型の食事センサ400を用いることで、自分の食器に入った食事型センサ400以外の計測結果を破棄するように制御することができる。例えば、図13の(C)に示すように、ユーザFの装着型情報端末500は、予め登録したセンサID「7、10、2、・・・、15」からの計測結果をOKとし、登録されていないユーザGのセンサID「9、8、13、・・・、5」からの計測結果をNGとして破棄するように制御する。ユーザGの装着型情報端末500においても同様に制御される。
食器経由型の食事型センサ400を用いたセンシングにおいても、以後の処理は、ダイレクト型の食事型センサ400を用いたセンシングと同様であり、各ユーザの装着型情報端末500が、食事型センサ400から受信した生体情報と、行動情報とをペアリングしたライフログ情報を、ヘルスケアクラウド10にアップロード(データ送信)する。なお、上述した食器経由型では、茶碗が用いられる場合を例に挙げて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、皿などの他の食器が用いられる場合であってもよい。
以下、食事型センサ400を利用した食器経由型のセンシングの処理の流れについて説明する。図14は、本実施形態における食事型400を利用したセンシングの処理手順を示す図である。図14に示すように、食器経由型のセンシングでは、例えば、食器600に内蔵された磁石から発生される磁力によって食事型センサ400の電源がONの状態となると(ステップS201)、食事型センサ400は、食器600に対してセンサIDを送信する(ステップS202)。
食器600は、食事型センサ400からセンサIDを受信すると(ステップS203)、受信した全センサIDを対応するユーザの装着型情報端末500に送信する(ステップS204)。装着型情報端末500は、センサIDを受信して(ステップS205)、受信した全センサIDを登録する(ステップS206)。
そして、食事型センサ400は、自センサがユーザの体内に入ったか否かを判定する(ステップS207)。ここで、自センサが体内に入ったと判定すると(ステップS207肯定)、食事型センサ400は、所定の物質を計測して(ステップS208)、計測結果を装着型情報端末500に送信する(ステップS209)。なお、食事型センサ400は、自センサがユーザの体内に入るまで待機状態となる(ステップS207否定)。
その後、装着型情報端末500は、計測結果を受信すると(ステップS210)、受信した計測結果のセンサIDが登録したセンサIDであるか否かを判定する(ステップS211)。ここで、登録したセンサIDではない場合には(ステップS211否定)、装着型情報端末500は、受信した計測結果を破棄する(ステップS212)。一方、登録したセンサIDである場合には(ステップS211肯定)、装着型情報端末500は、計測結果を送信した食事型センサ400のセンサIDに、計測結果と、時間とを対応付けて記憶する(ステップS213)。
食事型センサ400は、計測結果を送信すると、所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS214)。ここで、所定の時間が経過したと判定すると(ステップS214肯定)、食事型センサ400は、ステップS208に戻って、所定の物質を再度計測する。装着型情報端末500は、受信した全計測結果を行動情報とペアリングしたのち、所定の頻度でヘルスケアクラウド10に送信する(ステップS215)。ヘルスケアクラウド10では、全計測結果を受信して(ステップS216)、PHRデータとして記憶する。なお、上述した処理手順では、自センサが体内に入ったと判定された後に、所定の物質が計測され、計測結果が送信される場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、自センサが体内に入ったと判定される前から、所定の物質が計測され、計測結果が装着型情報端末500に送信される場合であってもよい。かかる場合には、自センサが体内に入ったと判定された後の測定結果に対してフラグを立てて装着型情報端末500に送信する。これにより、装着型情報端末500は、体内に入る前後の計測結果を識別することができ、体内に入った後の計測結果のみを利用することが可能である。
(食事型センサの構成)
次に、食事型センサ400の構成について説明する。図15は、本実施形態における食事型センサの機能ブロック図である。図15に示すように、食事型センサ400は、バッテリー410と、温度計420と、センサ430と、Amp(amplifier)440と、Amp450と、ADC(analog to digital converter)460と、メモリ470と、Logic480と、アンテナ490とを備える。
バッテリー410は、食事型センサ400の電源となる超小型複合電池である。例えば、バッテリー410は、ウェットな環境下で動作する電気二重層型キャパシタと電池(例えば、化学電池、振動電池、熱電池など)とを組み合わせた電池である。これにより、バッテリー410は、例えば、口に入れられ、唾液によって湿った場合に動作を開始する電池として構築することも可能となる。なお、バッテリー410は、例えば、電極部と、湿って始めて機能するポリマー電解質との超薄膜(例えば、10ナノメートル程度)サンドイッチ構造を有する。
温度計420は、金属接合部(例えば、p-n接合)の抵抗変化に基づいて、体内の温度を計測する。センサ430は、体内の所定の物質を検出するセンサであり、例えば、電極、光感受性素子(フォトンカウンタ)などで構成される。図16は、本実施形態におけるセンサ430の処理の例を説明するための図である。例えば、センサ430は、体内の所定の物質を受容するための受容膜を有する。センサ430の受容膜は、所定の物質の受容を、例えば、化学物質、光、熱、質量、屈折率などに変換する。そして、センサ430は、受容膜が所定の物質の受容を化学物質に変換する場合には電極で検出して電気信号で出力し、受容膜が所定の物質の受容を光に変換する場合にはフォトンカウンタで検出して電気信号で出力し、受容膜が所定の物質の受容を熱に変換する場合にはサーミスタで検出して電気信号で出力するように構成される。また、センサ430は、受容膜が所定の物質の受容を質量に変換する場合には水晶振動子で検出して電気信号で出力し、受容膜が所定の物質の受容を屈折率に変換する場合にはSPR(Surface Plasmon Resonance)で検出して電気信号で出力するように構成される。
このように、センサ430は、受容する物質(例えば、塩分、糖分、脂質、鉄分、カルシウム、繊維質、各ビタミン、PH、各酵素、各ウィルス、各菌、各薬剤成分、アルコール、煙草のヤニやニコチンなどの特定物質、血液、Na+、Cl-などのイオンなど)ごとにそれぞれ最適な検出方法で検出して電気信号で出力する。ここで、センサ430の受容膜は、受容する物質との特異性を出すために各物質に対する抗体を固定させることも可能である。なお、電気信号での出力はあくまでも一例であり、光信号で出力する場合であってもよい。
図15に戻って、Amp440は、センサ430から出力された電気信号や光信号を増幅する。Amp450は、温度計420によって計測された温度に応じてフィードバック補正をかけるための信号を増幅する。ADC460は、センサ430から出力された信号(電気信号や、光信号など)をデジタルデータ変換する。メモリ470は、ADC460によって変換されたデジタルデータを記憶する。Logic480は、食事型センサ400を制御する集積回路である。例えば、Logic480は、センサ430によるセンシング、温度計420による温度計測、ADC460におけるアナログデータからデジタルデータへの変換、メモリ470へのデジタルデータの書込み、アンテナ490を介した装着型情報端末500へのデータ送信などを制御する。
ここで、本実施形態における食事型センサ400においては、センサ部430が体内に入ったか否かを検知して、センサ430が体内に入ったと検知された後に、センサ430によって検出された物質の情報を体外の通信装置に送信する。例えば、食事型センサ400は、温度計420によって計測される温度に応じて、自センサが体内に入ったか否かを判定する。一例を挙げると、食事型センサ400は、温度計420によって計測された温度が所定の温度で安定した場合、或いは、温度が大きく変化した場合などをセンサ430が体内に入ったものとして検知する。また、図示しないもう1つのセンサをさらに備え、当該センサによって自センサが体内に入ったか否かを判定する場合であってもよい。一例を挙げると、食事型センサ400は、唾液に含まれるアミラーゼを検出するセンサをさらに備え、当該センサがアミラーゼを検出した場合にセンサ430が体内に入ったものとして検知する。なお、酵素による判定としては、体内のその他の酵素をセンシングする場合であってもよい。また、酵素を検出するセンサではなく、PHを測定するセンサが用いられる場合であってもよい。かかる場合には、PHが大きく変化した場合に、センサ430が体内に入ったと判定する場合であってもよい。また、光を測定するセンサが用いられる場合であってもよい。かかる場合には、光が検出されなくなった場合に、センサ430が体内に入ったと判定する場合であってもよい。なお、上述した各処理は、Logic480の制御のもと実行される。
また、食事型センサ400は、アンテナ490を介したデジタルデータ(計測結果)の送信を所定の頻度で実行する。例えば、センサ430が体内に入ったと判定された後の経過時間に応じて、センサ430によるセンシング及びアンテナ490を介したデジタルデータの送信の頻度を段階的に変化させるように、Logic480が構築される。例えば、Logic480は、体内に入った後、時間の経過に伴って頻度を段階的に低下させながら体内の所定の物質を検出して、デジタルデータを送信するように構築される。
そして、食事型センサ400は、センサ部430が体外に出たか否かを検知して、センサ430が体外に出たと検知された場合に、電源をOFFにすることができる。例えば、食事型センサ400は、温度計420によって計測される温度に応じて、自センサが体外に出たか否かを判定する。一例を挙げると、食事型センサ400は、温度計420によって計測された温度が大きく変化した場合などをセンサ430が体外に出たものとして検知する。また、図示しないもう1つのセンサによって自センサが体外に出たか否かを判定する場合であってもよい。一例を挙げると、食事型センサ400は、PHを測定するセンサが、PHの大きな変化を検知した場合に、センサ430が体外に出たと判定する場合であってもよい。また、光を測定するセンサが、光が検出されなくなった後に、再度光を検出した場合に、センサ430が体外に出たと判定する場合であってもよい。そして、食事型センサ400は、センサ430が体外に出たと判定すると、自センサの電源をOFFするように制御することができる。なお、上述した各処理は、Logic480の制御のもと実行される。
図17は、本実施形態における食事型センサの構造の一例を示す図である。ここで、図17においては、図17の(A)が食事型センサ400の上面図を示し、図17の(B)が食事型センサ400の断面図を示す。食事型センサ400は、人が違和感なく飲み込むことができるサイズで構築される。例えば、図17の(A)に示すように、食事型センサ400は、「縦:0.5〜1.0mm」、「横:0.5〜1.0mm」のサイズで構築される。そして、食事型センサ400は、図17の(B)に示すように、センサ430などの回路が集積された基板とバッテリーが重ねられ、体内で消化及び吸収されないように、ガラスや、樹脂、塩化ビニルなどでコーティングされる。ここで、コーティングに用いられる材料は、ガラスや、樹脂、塩化ビニルに限られず、形成しやすく、熱や胃酸、各消化酵素などに対する耐性が高く、人体に影響のないものであれば、どのようなものが用いられても良い。
そして、食事型センサ400は、図17の(B)に示すように、センサの表面の一部或いは全部が露出した構造を有する。すなわち、体内の所定の物質がセンサ430に接触することができるように、センサ430が露出される。また、電池をウェットな環境下になってはじめて機能させる場合には、食事型センサ400は、図17の(B)に示すように、バッテリーの一部が露出した構造を有することとなる。なお、電池をウェットな環境下で機能させるケースではない場合には、バッテリー全体がコーティングされることとなる。また、温度や、光などで電源のONとOFFとを検知する場合には、それぞれのセンサの表面が露出することとなる。
なお、上述した実施形態では、1つの食事型センサ400が単一の物質をセンシングする場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、2つ以上の物質をセンシングする場合であってもよい。かかる場合には、1つの食事型センサ400が複数のセンサ430を有することとなる。また、食事型センサ400の形は、図17に図示された構造に限られるものではなく、例えば、楕円状や、球状であってもよい。かかる場合には、例えば、長軸のサイズが「0.5mm〜1.0mm」となる。
上述したように、食品と混在し、かつ体内に入った際にも消化及び吸収されずに排出される食事型センサ400は、体内の所定の物質を検出するセンサ430と、センサ430が体内に入ったか否かを検知する温度計420又はセンサと、温度計420又はその他のセンサによってセンサ430が体内に入ったと検知されたことに基づいて、センサ430によって検出された物質の情報を体外の装着型情報端末500に送信するLogic480とを備え、食品とともに飲み込まれる。これにより、食事型センサ400は、非意識で体内の物質のセンシングを正確に行なうことができ、個人の真のデータを効率的かつ継続的に収集することを可能にする。
また、センサ430は、体内の所定の物質を所定の頻度で検出し、Logic480は、センサ430によって検出されるごとに、検出された物質の情報を体外の装着型情報端末500に送信する。これにより、食事型センサ400は、バッテリー410の浪費を抑止して、電池を小型化することを可能にする。
また、センサ430は、体内に入った後の経過時間に応じて、所定の頻度を段階的に変化させて体内の所定の物質を検出する。これにより、食事型センサ400は、体内の滞在時間を考慮してセンシングを行なうことを可能にする。
また、センサ430は、体内に入った後、時間の経過に伴って頻度を段階的に低下させながら体内の所定の物質を検出する。これにより、食事型センサ400は、体内の部位ごとに異なる通過時間に基づいて、センシングの間隔を設定することができ、無駄なセンシングを抑止して、個人の真のデータを効率よく収集することを可能にする。
また、温度計420又はセンサは、温度、水素イオン指数及び所定の酵素のうち、少なくとも1つに基づいて、センサ430が体内に入ったか否かを検知する。これにより、食事型センサ400は、センサ430は体内に入ったか否かを正確に判定することを可能にする。
また、食事型センサ400は、1ミリメートル四方以下で形成される。これにより、食事型センサ400は、違和感なく飲み込むことを可能にする。
また、食事型センサ400は、体内での消化及び吸収に対して耐性を有する物質によって表面がコーティングされる。これにより、人体に影響なく、正確にセンシングすることを可能にする。
また、Logic480は、ユーザごとに対応付けられ、当該ユーザの装着型情報端末500と通信を行なう食器内に自センサが入れられたことを条件に、食器に対して自センサの識別子を送信して、食器を介して自センサの識別子を装着型情報端末500に登録させる。これにより、食事型センサ400は、複数のユーザが1つの食品を共有して食す場合でも、測定結果を正確に識別することを可能にする。
また、食品が、生鮮食品、加工食品、調味料又は飲料である。これにより、食事型センサ400は、様々なバリエーションの食事に適応することを可能にする。
上述したように、本実施形態における食事型センサ400は、食品に混合されて飲み込まれることで、体内の所定の物質を計測するが、実施形態はこれに限定されるものではなく、食事型センサ400が、食器に内蔵される場合であってもよい。図18は、本実施形態における食事型センサの応用例を示す図である。例えば、食事型センサ400は、図18に示すように、箸の先端に内蔵され、口腔内の物質をセンシングすることも可能である。
以上、本実施形態における食事型センサ400について説明した。以下、上述した食事型センサ400によって収集されたライフログ情報を含むPHRビッグデータの解析について説明する。
(PHRビッグデータの解析及び解析結果を用いた健康リスクの推定)
続いて、大規模ゲノム・コホートデータベース114aのPHRビッグデータを対象に行われるコホート分析を説明する。ここで、上述したように、本実施形態では、健康状態の評価や健康リスクの推定を精度良く行うために、大規模ゲノム・コホートデータベース114aを形成し、これを基盤データとする。例えば、PHRビッグデータ解析部121は、後述するコホート分析において、生まれてから亡くなるまでの一生涯のPHRデータの中で、疾病発症から転帰、その際の生活や環境に関する情報との紐付けを行う。また、例えば、PHRビッグデータ解析部121は、後述するコホート分析において、特定地域コホートについて長期間の追跡調査を行い、更に他地域コホートとの間で比較解析を行い、地域間の差を検討する。このような解析は、大規模ゲノム・コホートデータベース114aを対象とするからこそ実現可能であり、小規模なものではその実現は困難であり、特定の疾患を対象にしたもの等に限局される。更に、本実施形態において、PHRビッグデータに含まれるライフログ情報は、センシング技術等によって収集されたものであるので、従来の問診による回答とは異なり正確且つ精密な解析が可能となる。なお、大規模ゲノム・コホートデータベース114aが形成されることで、更には、日本人の低頻度アレルの取得、網羅的な日本人のオリジナルの標準SNPデータベースの構築、タイピングアレイの標準化等も可能となる。
さて、本実施形態において、PHRビッグデータ解析部121は、大規模ゲノム・コホートデータベース114aに蓄積されたPHRビッグデータを対象にコホート分析を行い、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせと、健康リスク(即ち、疾病発症リスク)との関連性を導き出す。
ここで、本実施形態におけるコホート分析とは、特定の要因に曝露された集団(特定のゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせにあてはまる集団)と曝露されていない集団(その組み合わせにあてはまらない集団)とを一定期間追跡し、所定の疾病の発症確率を比較することで、要因(特定のゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせ)と、疾病発症との関連性を導き出す手法である。例えば、PHRビッグデータ解析部121は、大規模ゲノム・コホートデータベース114aに蓄積される健常者の標準データ、健常者と未病者との乖離データ、健常者と発症者との乖離データ、ライフログ情報上の異常サイン等を類型化し、ゲノムの型との関連性を明らかにする。なお、PHRビッグデータ解析部121が解析に用いる手法は、上述したコホート分析に限られるものではなく、他の手法でもよい。
図19は、本実施形態におけるPHRビッグデータの解析を説明するための図である。図19に示すように、大規模ゲノム・コホートデータベース114aは、各個人のPHRデータであるライフログ情報等が日々新たに蓄積されるとともに、新たな個人のPHRデータが新たな運用管理の対象として蓄積されることで、その規模を日々拡大している。なお、この大規模ゲノム・コホートデータベース114aには、例えば、個人の一生涯のPHRデータが蓄積されるので、見方を変えると、健常者、未病者、及び発症者のPHRデータが蓄積されることになる。
図19に示すように、PHRビッグデータ解析部121は、この大規模ゲノム・コホートデータベース114aを対象にコホート分析を行い、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせ毎に健康リスクを推定する、「健康リスク推定テーブルT」を作成する。なお、上述したように、PHR蓄積部110は、PHRデータを新たに蓄積することで、大規模ゲノム・コホートデータベース114aの規模を拡大する。そこで、PHRビッグデータ解析部121は、大規模ゲノム・コホートデータベース114aの日々の拡大に伴い、新たに解析を行い、新たな解析結果である「健康リスク推定テーブルT」を得る。一次利用サービス提供部122は、新たに得られた解析結果を用いて健康リスクを推定する。このため、「健康リスク推定テーブルT」の精度は日々向上し、一次利用サービス提供部122による健康リスクの推定の精度も日々向上する。
まず、本実施形態において、PHRビッグデータ解析部121は、30億塩基対のうちの1つの塩基対若しくは複数の塩基対の組み合わせパターン、又は、ヒトの個性を表すとされる100万塩基対のうちの1つの塩基対若しくは複数の塩基対の組み合わせパターンを、ゲノムの型とする。
また、図20は、本実施形態におけるライフスタイルの型を説明するための図である。図20に示すように、PHRビッグデータ解析部121は、ライフログ情報から得られる10の項目を、「レベルI」から「レベルIII」までの3段階に分類し、それら全ての組み合わせ(例えば、3の10乗分の組み合わせ)のパターンを、ライフスタイルの型とする。なお、本実施形態におけるライフスタイルの型は一例に過ぎず、項目やレベルを任意に変更することができる。また、ライフスタイルの型の導き方自体も、任意に変更することができる。
このようなことから、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせの数は、膨大な数となるが、PHRビッグデータ解析部121によるコホート分析によって疾病発症との関連性が明らかになる型の組み合わせは、当初、その一部に留まると考えられる。大規模ゲノム・コホートデータベース114aの日々の拡大や、その他個別に進む研究の成果等が徐々に反映されることで、疾病発症との関連性が明らかになる型の組み合わせは、徐々に増え、健康リスク推定テーブルT内の空欄も、徐々に結果を反映して埋められていく。
さて、コホート分析にあたり、PHRビッグデータ解析部121は、ライフログ情報に基づいて10の項目を導き出すためのアルゴリズムを、予め保持している。例えば、PHRビッグデータ解析部121は、生体情報としてセンサから得られた「ニコチンの摂取量」から、ユーザの喫煙の有無や、どの程度喫煙したかといった喫煙のレベルを導き出す。また、例えば、PHRビッグデータ解析部121は、生体情報としてセンサから得られた「アルコールの摂取量」から、ユーザの飲酒の有無や、どの程度飲酒したかといった飲酒のレベルを導き出す。また、例えば、PHRビッグデータ解析部121は、生体情報としてセンサから得られた「心拍数」や、行動情報としてスマートフォンから得られた「アラームの設定を行った時刻」及び「アラームの時刻」、その他、センサから得られた生活音等から、ユーザの睡眠時間や睡眠の質といった睡眠のレベルを導き出す。
また、例えば、PHRビッグデータ解析部121は、生体情報としてセンサから得られた「血圧」、「心拍数」や、行動情報としてスマートフォンから得られた「スケジュール情報」等から、ユーザがどの程度ストレスを感じているかといったストレスのレベルを導き出す。また、例えば、PHRビッグデータ解析部121は、生体情報としてセンサから得られた「心拍数」や、行動情報としてセンサから得られたユーザの姿勢や動作、行動情報としてスマートフォンの運動系アプリケーションから得られた「運動情報」等から、ユーザがどの程度の運動を行ったかといった運動のレベルを導き出す。また、例えばセンサで計測した末梢の体温の変動や発汗の度合いから交感神経・副交感神経のバランスを計測することで、精神の緊張や弛緩度合が導き出される。また、例えば、PHRビッグデータ解析部121は、生体情報としてセンサから得られた「糖分」、「塩分」、「胃酸」、「アルコール摂取量」等から、ユーザがどのような食生活を送っていたかといった食生活のレベルを導き出す。また、例えば、PHRビッグデータ解析部121は、生体情報としてセンサから得られた「薬剤成分」等から、ユーザがどのような薬やサプリメントを服用しているかといった薬サプリのレベルを導き出す。なお、上述したアルゴリズムは一例に過ぎない。
このように、PHRビッグデータ解析部121は、ライフログ情報のうち生体情報及び行動情報のいずれか一方のみで、あるいは、両者の組み合わせから、上述した10の項目の値を得て、この値に基づいて各項目のレベルを導き出す。なお、ゲノムの型は、同一の対象者に関しては原則変化しない一方で、ライフスタイルの型は、時間経過とともに変化する可能性がある。
図21は、本実施形態における健康リスク推定テーブルTを説明するための図である。本実施形態では、同一のライフスタイルの型のユーザであっても、ゲノムの型が異なれば、発症リスクの高い疾病の種類や順序は異なると考える。また、同一のゲノムの型のユーザであっても、ライフスタイルの型が異なれば、発症リスクの高い疾病の種類や順序は異なると考える。なお、図21に示す健康リスク推定テーブルTの表現方法は一例に過ぎず、図21に例示される疾病の種類や順序も、説明の便宜上の一例に過ぎない。
例えば、PHRビッグデータ解析部121は、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせ毎に、疾病発症リスクを示す健康リスクグラフを作成する。各健康リスクグラフの縦軸は、疾病発症リスクにおけるライフスタイル要因及びゲノム要因の割合を表し、横軸には疾病が並ぶ。横軸の右方向へ行くほど、ライフスタイル要因の影響が強い疾病であること、横軸の左方向へ行くほど、ゲノム要因の影響が強い疾病であることを表す。即ち、健康リスクグラフは、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせ毎に、ゲノム要因及びライフスタイル要因のいずれの影響を強く受けるかに応じて順序付けされた、将来発症し得る疾病のリストである。なお、横軸には、疾病の名称として、疾病の正式名称と、国際疾病分類に基づくICD(International Classification of Diseases)コードとが表示される。なお、実施形態はこれに限られるものではなく、例えば、疾病の正式名称か、ICDコードのいずれかのみを表示してもよい。
例えば、図21の(A)と(B)とを比較すると、同一のライフスタイル3型のユーザであっても、ゲノムの型が2型と3型とで異なれば、発症リスクの高い疾病の種類や順序が異なることが分かる。例えば、「アルコール性肝疾患(K70)」がライフスタイル要因の影響が強い疾病であることについては共通する一方で、ゲノム2型のユーザにとって、ライフスタイル要因の影響が強い疾病である「痛風性関節炎(M1009)」が、ゲノム3型のユーザにとっては、むしろゲノム要因の影響が強い疾病に位置付けられている。反対に、ゲノム3型のユーザにとって、ライフスタイル要因の影響が強い疾病である「糖尿病性腎症(E142)」が、ゲノム2型のユーザにとっては、むしろゲノム要因の影響が強い疾病に位置付けられている。
また、例えば、図21の(B)と(C)とを比較すると、同一のゲノム3型のユーザであっても、ライフスタイルの型が3型と2型とで異なれば、発症リスクの高い疾病の種類や順序が異なることが分かる。例えば、ライフスタイル3型のユーザについては、「アルコール性肝疾患(K70)」、「肝細胞癌(C220)」、「糖尿病性腎症(E142)」等が、ライフスタイル要因の影響が強い疾病として位置付けられている一方で、ライフスタイル2型のユーザについては、「肺胞性肺気腫(J43)」、「肺門部腺癌(C340)」、「急性右室梗塞(I212)」等が、ライフスタイル要因の影響が強い疾病として位置付けられている。例えば、同一のゲノム3型のユーザの中でも、ライフスタイル3型は、飲酒のレベルが高いユーザで、ライフスタイル2型は、喫煙のレベルが高いユーザである場合等が考えられる。なお、同じゲノム3型のユーザでは、ライフスタイルの型に関わらず、「脊髄小脳変性症(G319)」や「痛風性関節炎(M1009)」等がゲノム要因の影響が強い疾病として位置付けられている。
ここで、PHRビッグデータ解析部121による「健康リスクグラフ」作成処理の一例を説明する。また、具体的な一例として、ゲノム3型及びライフスタイル3型の組み合わせに対する「健康リスクグラフ」を作成する場合を説明する。
例えば、PHRビッグデータ解析部121は、ゲノム情報としてゲノム3型を有するユーザの病歴情報(例えば、電子カルテ情報から得られる)を参照して、ゲノム3型のユーザにとって発症リスクの高い疾病として「疾病A,疾病B,疾病C,疾病D」を特定する。また、PHRビッグデータ解析部121は、ライフログ情報としてライフスタイル3型を有するユーザの病歴情報を参照して、ライフスタイル3型のユーザにとって発症リスクの高い疾病として「疾病D,疾病E,疾病F,疾病G」を特定する。そして、PHRビッグデータ解析部121は、特定した疾病を比較して、ゲノム3型のユーザにとって発症リスクの高い疾病にのみ含まれる「疾病A,疾病B,疾病C」を、「遺伝子要因の影響が強い疾病」に分類する。また、PHRビッグデータ解析部121は、ライフスタイル3型のユーザにとって発症リスクの高い疾病にのみ含まれる「疾病E,疾病F,疾病G」を、「ライフスタイル要因の影響が強い疾病」に分類する。また、PHRビッグデータ解析部121は、その両方に含まれる「疾病D」を、「ライフスタイル要因及び遺伝子要因の影響が強い疾病」に分類する。
続いて、PHRビッグデータ解析部121は、ゲノム3型及びライフスタイル3型の組み合わせのユーザの病歴情報を参照して、ゲノム3型及びライフスタイル3型の組み合わせのユーザにとって発症リスクの高い疾病を特定する。ここで、例えば、PHRビッグデータ解析部121が、ゲノム3型及びライフスタイル3型の組み合わせのユーザにとって発症リスクの高い疾病として「疾病A,疾病C,疾病F,疾病G」を特定したものとする。かかる場合、PHRビッグデータ解析部121は、先に「遺伝子要因の影響が強い疾病」に分類された「疾病A,疾病B,疾病C」と共通する「疾病A」及び「疾病C」を、「遺伝子要因の影響が強い疾病」であると判定し、図21に示す「健康リスクグラフ」において、横軸の左方向へ位置付ける。また、PHRビッグデータ解析部121は、先に「ライフスタイル要因の影響が強い疾病」に分類された「疾病E,疾病F,疾病G」と共通する「疾病F」及び「疾病G」を、「ライフスタイル要因の影響が強い疾病」であると判定し、図21に示す「健康リスクグラフ」において、横軸の右方向へ位置付ける。
ところで、PHRビッグデータ解析部121は、ある基準のもとで、図21に示した健康リスク推定テーブルTを作成する。例えば、PHRビッグデータ解析部121は、「標準の健康状態にある者が、例えば1年間同じライフスタイルの型の生活を継続した場合の10年後の健康リスク(発症確率30%)」という基準のもとで、健康リスク推定テーブルTを作成する。この点、実際のユーザのライフスタイルの型は、一般に、1日、1週間、1ヶ月、1年等、期間の長さに応じて異なると考えられる。例えば、今週は歓送迎会が多かったために特別に飲酒の量が増えたが、1ヶ月で考えたときには、それほど飲酒の量が多いわけではないという場合である。そこで、一次利用サービス提供部122が、この健康リスク推定テーブルTを用いてあるユーザの健康リスクを推定する際には、推定に用いるPHRデータの期間(推定対象期間と呼ぶ)に応じた個別の推定と、現在の健康状態に応じた調整とを行う。なお、PHRビッグデータ解析部121は、上述した基準を、適宜変更することができる。また、PHRビッグデータ解析部121は、上述した基準のうち、推定する将来の「時点」を複数設定することができる(例えば、1日後、1週間後、1ヶ月後、1年後、5年後、10年後、20年後等)。この場合、PHRビッグデータ解析部121は、それぞれの基準に対応する健康リスク推定テーブルTを作成する。なお、異なる「時点」の健康リスク推定テーブルTを比較すると、例えば、1ヶ月後の健康リスク推定テーブルTには、直ぐに発症する疾病が列挙される一方で、10年後の健康リスク推定テーブルTには、長期経過後に発症する疾病が列挙されるといった違いが現れる場合がある。
図22は、本実施形態における健康リスクの推定を説明するための図である。例えば、一次利用サービス提供部122は、ユーザAの健康リスクを推定する際に、ユーザAのPHRデータから、推定対象期間に応じてライフログ情報を抽出する。例えば、一次利用サービス提供部122は、図22に示すように、操作者から指定された推定対象期間に応じて、ユーザAのPHRデータから、例えば、今週のライフログ情報D1、今月のライフログ情報D2、今年のライフログ情報D3をそれぞれ抽出する。
続いて、一次利用サービス提供部122は、推定対象期間毎に、それぞれ10の項目(喫煙、飲酒、睡眠、ストレス、運動、食生活、薬・サプリ、精神状態、疲れ、免疫)の値を得て、この値に基づいて、各項目のレベルを導き出す。そして、一次利用サービス提供部122は、推定対象期間毎に、各項目のレベルの組み合わせのパターンの1つであるライフスタイルの型を、ユーザAのライフスタイルの型(今週のライフスタイルの型、今月のライフスタイルの型、今年のライフスタイルの型)として判定する。例えば、一次利用サービス提供部122は、図22に示すように、今週のライフログ情報D1に基づいて、今週のライフスタイルの型「3型」を判定し、今月のライフログ情報D2に基づいて、今月のライフスタイルの型「30型」を判定し、今年のライフログ情報D3に基づいて、今年のライフスタイルの型「30型」を判定する。
次に、一次利用サービス提供部122は、判定したライフスタイルの型を用いて健康リスク推定テーブルTを参照し、該当の健康リスクグラフを、推定対象期間毎にそれぞれ特定する。例えば、図22の例では、ライフスタイル3型の健康リスクグラフにおいて、「アルコール性肝疾患(K70)」、「肝細胞癌(C220)」、「糖尿病性腎症(E142)」が、発症リスクの高い疾病として列挙されているのに対し、ライフスタイル30型の健康リスクグラフにおいては、「アルコール性肝疾患(K70)」及び「肝細胞癌(C220)」が、発症リスクの高い疾病から外れ、「糖尿病性腎症(E142)」のみが、発症リスクの高い疾病として列挙されている。これはあくまで説明の便宜上の一例に過ぎないが、このように、推定対象期間によってライフスタイルの型が異なれば、推定対象期間によって、発症リスクの高い疾病の種類や順序も異なってくる。推定対象期間に応じて個別の推定を行い、例えば、今週、今月、今年の間で比較を行うことで、健康リスクの方向性(例えば、良い方向に向かっているのか、あるいは悪い方向に向かっているのか等)を提示することができる。
更に、一次利用サービス提供部122は、推定対象期間毎に特定された各健康リスクグラフについて、現在の健康状態に応じた調整を行う。例えば、一次利用サービス提供部122は、ライフログ情報に含まれる生体情報を考慮して、各健康リスクグラフの内容を、個別のユーザの現在の健康状態に応じた内容に変更する。例えば、一次利用サービス提供部122がユーザAの生体情報を解析したところ、ユーザAの肝機能が極めて良好な状態であることが判明したとする。すると、一次利用サービス提供部122は、ゲノム3型及びライフスタイル3型の組み合わせの健康リスクグラフにおいて、「アルコール性肝疾患(K70)」、「肝細胞癌(C220)」、「糖尿病性腎症(E142)」のうち、「肝細胞癌(C220)」の発症リスクは低いと判定して、これを削除する。なお、これはあくまで説明の便宜上の一例に過ぎないが、このように、現在の健康状態によって、発症リスクの高い疾病の種類や順序も異なってくる。
本実施形態において一次利用サービス提供部122が健康リスクの推定を行う際には、上述したような推定対象期間に応じた個別の推定と、現在の健康状態に応じた調整とを行う。なお、上述の例では、推定対象期間として、「今週」、「今月」、「今年」の例を挙げたが、実施形態はこれに限られるものではない。「過去1日分」、「過去1週間分」、「過去1ヶ月分」、「過去1年分」等のように、一定の単位で区切られた期間でもよいし、あるいは、ユーザから適宜設定を受け付け、ユーザの要望に応じた任意の期間であってもよい。
なお、これまで、PHRビッグデータ解析部121が、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせに応じて、疾病発症リスクにおけるゲノム要因及びライフスタイル要因の割合を示す「健康リスク推定テーブルT」を生成するものとして説明した。これに加えて、PHRビッグデータ解析部121は、「ゲノム要因の影響が強い疾病」について、疾病発症リスクを更に増加させる要因となるライフスタイルを示す情報を生成することも可能である。
これまでに、ALDH2遺伝子にSNPを有する場合、喫煙習慣、飲酒習慣がある場合に食道癌の発症リスクが高くなることが知られている。このようなことから、例えば、ある遺伝子にSNPを有するゲノムの型のユーザについて、ライフスタイル別に発症リスクの高い疾病を解析することで、SNPを有することで発症する疾病とライフスタイルとの相関を推定することが可能となる。
かかる場合、例えば、PHRビッグデータ解析部121は、ある遺伝子にSNPを有するゲノムの型のユーザをゲノム情報から検索する。そして、PHRビッグデータ解析部121は、ある遺伝子にSNPを有するゲノムの型のユーザの病歴情報(例えば、電子カルテ情報等から得られる)を参照して、発症リスクの高い疾病を特定する。続いて、PHRビッグデータ解析部121は、ある遺伝子にSNPを有するゲノムの型のユーザのライフログ情報を参照して、特定した疾病の発症リスクを高めるライフスタイルを特定する。
また、上述した実施形態では、健康リスクグラフが「標準の健康状態にある者」を想定して作成されると述べたが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、糖尿病には、腎障害、網膜障害、神経障害等の合併症があることが知られている。また、高血圧には、脳卒中、各種心臓病、腎障害等の合併症があることが知られている。また、インフルエンザには、細菌性肺炎、インフルエンザ脳症、心筋炎等の合併症があることが知られている。このように、ある疾病に合併症がある場合、その疾病に罹患した者の健康リスクグラフにおいては、これらの合併症の発症リスクが高まると考えられる。そこで、例えば、PHRビッグデータ解析部121は、合併症を有する疾病に罹患している者を分類した上でコホート分析を行うことで、例えば、「糖尿病に罹患している者」、「高血圧の者」、「インフルエンザに罹患している者」を想定した罹患者専用の健康リスクグラフを作成することができる。また、この場合、一次利用サービス提供部122は、「糖尿病に罹患している者」、「高血圧の者」、「インフルエンザに罹患している者」に対して日常人間ドックサービスを提供する場合には、罹患者専用の健康リスクグラフを参照して、発症リスクの高い疾病を特定することができる。
(日常人間ドック−週刊元気予報)
さて、本実施形態において、一次利用サービス提供部122は、健康リスク推定テーブルTを用いて、PHRデータを提供したユーザ本人に対するフィードバックを行うことで、日常人間ドックを一次利用サービスとして提供する。その提供の手法としては様々な手法が考えられるが、以下では、図23を用いて1つの手法を説明する。
図23は、本実施形態における元気予報ポータルサイトを説明するための図である。図23に示すように、例えば、一次利用サービス提供部122は、ヘルスケアクラウド10上にユーザA用のポータルサイト14aを立ち上げ、ユーザA及び家族に対してポータルサイト14aへのアクセスを許可する。また、例えば、一次利用サービス提供部122は、ヘルスケアクラウド10上に主治医用のポータルサイト14bを立ち上げ、主治医に対しては、主治医用のポータルサイト14b経由で、ユーザA用のポータルサイト14aへのアクセスを許可する。このように、ユーザA用のポータルサイト14aを介して、ユーザA、家族、主治医のアクセスを受け付けることで、ユーザA本人に対するフィードバックと、3者間の情報共有とを実現する。
また、図23に示すように、本実施形態において、ポータルサイト14aを通じて閲覧可能な範囲は、主治医とユーザA本人(及び家族)とで異なっている。即ち、主治医であれば、ユーザAのPHRデータ自体、並びに、PHRデータに基づく健康リスクの推定結果の両方を閲覧することができる。一方、ユーザA本人や家族は、ユーザAのPHRデータ自体を閲覧することはできない。例えば、ゲノム情報の本人に対する開示は適宜制限されるべきだからである。なお、このような閲覧範囲の制限は一例に過ぎず、他の制限を設けてもよいが、一般に、本人の閲覧範囲よりも主治医の閲覧範囲が広くなる場合が多いと考えられる。
また、主治医の意見に基づいて、ユーザA本人や家族に対する閲覧範囲を調整してもよい。例えば、一次利用サービス提供部122は、健康リスクの推定結果のうち、ユーザA本人に閲覧させた方が望ましい項目、閲覧させない方が望ましい項目の指定を、主治医から受け付ける。そして、一次利用サービス提供部122は、主治医からの指定に従って、ユーザA本人に対して閲覧させる閲覧範囲を調整する。例えば、一次利用サービス提供部122は、主治医用の健康リスクグラフを表示する場合に表示していた疾病の一部を、ユーザ用の健康リスクグラフを表示する場合には非表示とする。本実施形態においては、ユーザのゲノム要因の影響を強く受ける疾病についても、発症リスクの高い疾病として判明する可能性がある。しかしながら、このようなゲノム要因の影響を強く受ける疾病は、ライフスタイルの変更によっても避けられないこと、且つ、例えば治療法が確立しない難病の場合には、本人への告知が意味をなさない(若しくは、かえって悪影響を与える)事態が想定される。そこで、一次利用サービス提供部122は、ユーザ用の健康リスクグラフを表示する場合には、疾病の一部を非表示とすることができる。例えば、一次利用サービス提供部122は、主治医から、非表示とすべき疾病の指定を受け付け、健康リスクグラフの表示にあたり、この指定を反映して、非表示とする。また、このような難病に限られず、例えば、主治医が、本人の性格を考慮して、本人への告知が望ましくないと考える場合も想定される。このような場合も、例えば、一次利用サービス提供部122は、主治医から、非表示とすべき疾病の指定を受け付け、健康リスクグラフの表示にあたり、この指定を反映して、非表示とする。
このように、主治医と、ユーザA本人や家族とでは閲覧範囲が異なること、また、そもそも、主治医と、ユーザA本人や家族とでは閲覧の目的も異なることから、本実施形態においては、図23に示すように、主治医用のコンテンツ14cと、ユーザA本人や家族用のコンテンツ14dとが、別々に準備される。この点については、以下で画面遷移を説明する際に詳しく述べる。
また、本実施形態において、一次利用サービス提供部122は、健康リスクの推定結果を、「健康リスクグラフ」、「バーチャルクローン」、「健康ステータス」、「健康リスクを視覚的に表現したマーク」、「文字情報」のうちの1つ若しくは複数で提示する。
例えば、一次利用サービス提供部122は、健康リスクの推定結果を、ユーザA本人のPHRデータと紐付いた、「バーチャルクローン」によって提示する。例えば、「バーチャルクローン」は、過去から未来までの各時点に対応付けて設定されており、各時点における健康状態を、部位毎に点数化された健康ステータスの形で保持する。例えば、一次利用サービス提供部122は、健康リスクグラフからライフスタイル要因の影響が強い疾病を適宜抽出し、疾病の種類に応じた重み付けを行い、部位毎に点数を算出する。なお、ある部位の疾病が他の部位にも影響を及ぼす場合には、一次利用サービス提供部122は、その点を加味して点数を算出する。また、例えば、「バーチャルクローン」は、健康ステータスに応じた表情の画像を保持する。こうして、病気への距離感の見える化が実現される。
例えば、過去の「バーチャルクローン」は、過去のPHRデータから判明する過去の健康状態やライフスタイルの型に応じた健康ステータス、及び、既往症の情報を保持する。現在の「バーチャルクローン」は、現在のPHRデータから判明する現在の健康状態やライフスタイルの型に応じた健康ステータス、及び、現在罹患中の疾病の情報を保持する。未来の「バーチャルクローン」は、現在のPHRデータから判明する現在の健康状態に、現在のライフスタイルの型を加味した未来の健康ステータス、及び、未来において発症リスクの高い疾病の情報を保持する。更に、本実施形態においては、ユーザA本人にとって理想の「バーチャルクローン」も設定、提示される。
例えば、ユーザAや主治医は、ユーザA用のポータルサイト14aにアクセスしてユーザAの「バーチャルクローン」を閲覧することで、ユーザA本人の健康状態を過去から未来に亘るまで把握することができる。例えば、ユーザAや主治医は、「バーチャルクローン」の時間を過去に移動させることで、本人の病歴やその重症度を把握することができる。また、例えば、ユーザAや主治医は、「バーチャルクローン」の時間を未来に移動させることで、本人の現在のライフスタイルを前提とした未来の健康リスクを表示させることができる。
また、例えば、一次利用サービス提供部122は、健康リスクの推定結果を、「健康リスクを視覚的に表現したマーク」で提示する。このマークは、例えば、健康ステータスに応じたマークとなっており、健康ステータスが悪ければ「悪魔」、健康ステータスが良ければ「天使」のように、ユーザにとって認識し易いものが望ましい。また、例えば、一次利用サービス提供部122は、健康リスクの推定結果を、「文字情報」で提示する。例えば、一次利用サービス提供部122は、健康リスクグラフからライフスタイル要因の影響が強い疾病を適宜抽出し、抽出した疾病の名称を並べて提示する。あるいは、先に述べた「バーチャルクローン」において、将来の健康状態から予測される特徴的な風貌を自分の顔や容姿に反映させた自己像を提示することで、直感的に現状生活の及ぼす、X年後の自分の将来像を表示させることでもよい。
図24は、本実施形態における日常人間ドックの処理手順を示す図である。図24に示すように、ユーザAは、PHR処理装置100に対して、予めゲノム情報を登録しているものとする(ステップS301)。なお、このステップS301の処理は、原則として少なくとも1回行われればよい処理であり、ステップS302以降の処理が、繰り返し行われる処理である。
また、図24に示すように、ユーザAは、PHR処理装置100に対して、センサやその他の情報端末によって収集されたライフログ情報を、装着型情報端末から、日々送信する(ステップS302)。PHR処理装置100のPHR蓄積部110は、受信したライフログ情報を、ユーザAのPHRデータとして日々蓄積し、一元管理する。
一次利用サービス提供部122は、例えば、1週間に1回の頻度で、ステップS303以降の処理を行う。まず、一次利用サービス提供部122は、健康リスクの推定対象期間毎に、ユーザAのライフスタイルの型を判定する(ステップS303)。例えば、一次利用サービス提供部122は、ユーザAのPHRデータから、今週のライフログ情報D1、今月のライフログ情報D2、今年のライフログ情報D3をそれぞれ抽出し、推定対象期間毎に、ユーザAのライフスタイルの型を判定する。
続いて、一次利用サービス提供部122は、予め判明しているユーザAのゲノムの型と、ステップS303で判定したライフスタイルの型とを用いて、健康リスクの推定対象期間毎に、健康リスク推定テーブルTを参照する(ステップS304)。例えば、一次利用サービス提供部122は、健康リスク推定テーブルTを参照し、ユーザAのゲノムの型が3型で、今週のライフスタイルの型が3型である場合、図21の(B)の健康リスクグラフを特定する。このように、一次利用サービス提供部122は、推定対象期間毎に、健康リスクグラフを特定する。
次に、一次利用サービス提供部122は、ユーザAの現在の健康状態に応じて、ステップS304で得られた健康リスクグラフを、推定対象期間毎に調整する(ステップS305)。例えば、一次利用サービス提供部122は、ユーザAの生体情報から、ユーザAの肝機能が極めて良好な状態であると判明した場合、「肝細胞癌(C220)」の発症リスクは低いと判定して、今週の健康リスクグラフからこれを削除する。
そして、一次利用サービス提供部122は、現在から未来までの健康ステータスを推定対象期間毎に算出し(ステップS306)、推定対象期間毎に準備された、現在から未来までの「バーチャルクローン」に登録する(ステップS307)。例えば、一次利用サービス提供部122は、前の週に算出された現在の健康ステータスと今週の生体情報とに基づいて、ユーザAの現在の健康ステータスを算出し、これを、ユーザAの現在の「バーチャルクローン」に対応付けて登録する。また、一次利用サービス提供部122は、現在の健康ステータスを基準に、加齢に伴う減点や、ステップS305で判明した未来の健康リスクに伴う減点等を組み合わせて未来の健康ステータスを算出し、これを、ユーザAの未来の「バーチャルクローン」に対応付けて登録する。なお、一次利用サービス提供部122は、未来のある時点について健康ステータスを算出すると、現在からその時点までの間の中間の時点や、その時点以降の更に未来の時点の健康ステータスを、適宜補間により(複数の時点の健康リスク推定テーブルTが準備されている場合は、それを用いて)算出する。例えば、一次利用サービス提供部122は、1日後、1週間後、1ヶ月後から、1年後、5年後、10年後、あるいは20年後まで、各時点の健康ステータスを算出する。また、一次利用サービス提供部122は、このような健康ステータスの算出を、推定対象期間毎に行う。
また、一次利用サービス提供部122は、ユーザAの主治医が保持する健康リスクランキングリストを更新する(ステップS307)。例えば、一次利用サービス提供部122は、主治医が担当する複数のユーザに関して、例えば、推定対象期間を「今年」とした場合の10年後の健康ステータスに基づいて、疾病の発症リスクが高い者から順に並べた、健康リスクランキングリストを作成している。そこで、一次利用サービス提供部122は、ステップS106で算出された「今年」の健康ステータスに基づいて、この健康リスクランキングリストを更新する。
そして、一次利用サービス提供部122は、上述した処理の結果を、主治医用のコンテンツ、ユーザA用のコンテンツにそれぞれ反映する(ステップS308)。例えば、一次利用サービス提供部122は、主治医用のコンテンツにおいては、更新された健康リスクランキングを反映する。また、一次利用サービス提供部122は、ユーザA用のコンテンツにおいては、推定対象期間毎のライフスタイルの型、推定対象期間毎の健康リスクグラフ、推定対象期間毎の健康ステータスを反映する。
そして、一次利用サービス提供部122は、主治医に対して登録を通知する(ステップS309)。主治医は、まず、主治医用のポータルサイトにおいて健康リスクランキングを閲覧する。そして、例えば、健康リスクランキングでユーザAが上位に位置付けられていた場合には、主治医は、更に、ユーザA用のポータルサイトを閲覧し、自身のコメントを録画して、ユーザA用のポータルサイトにアップロードする(ステップS310)。なお、コメントは、動画データに限られるものではなく、テキストデータによるコメント等でもよい。
続いて、一次利用サービス提供部122は、ユーザA本人に登録を通知し(ステップS311)、ユーザAが、ユーザA用のポータルサイトを閲覧する(ステップS312)。ステップS310において既に主治医のコメントが録画されている場合、ユーザAは、主治医のコメントとしてこの動画を再生することもできる。
なお、図24に示した処理手順は一例に過ぎない。例えば、図24では、主治医によるコメント付与を待って、ユーザA本人による閲覧を可能とする処理手順としたが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、一次利用サービス提供部122は、ユーザ、家族、主治医の3者に対して同時に、ポータルサイトの登録を通知してもよい。また、図24に示した処理手順は、主治医の介在を前提とせずに行われてもよい。その他、推定対象期間の設定や健康ステータスの算出等は、サービスの提供形態に応じて、任意に変更することや、省略することが可能である。
次に、主治医用のポータルサイトやユーザA用のポータルサイトにおいて、どのようなコンテンツを閲覧することができるか、その一例を画面遷移によって説明する。図25は、本実施形態における主治医用ポータルサイトの画面遷移を示す図であり、図26は、本実施形態におけるユーザ用ポータルサイトの画面遷移を示す図である。なお、図25や図26に示す画面遷移はあくまで一例に過ぎず、その画面遷移の順序や、画面の構成等は、任意に変更することが可能である。
ここで、以下に例示する画面遷移は、主治医のPHR表示装置200、又は、ユーザA本人のPHR表示装置200において表示されるものである。これは、一次利用サービス提供部122による制御により実現されるものであると同時に、PHR表示装置200側の表示制御部210による表示制御により実現されるものである。
まず、主治医側の画面遷移を説明する。主治医は、PHR表示装置200によって主治医用のポータルサイトにアクセスする。すると、図25の画面P1に示すように、健康リスクランキングリストの更新があったことが通知されている。そこで、主治医は、『Enter』ボタンを押下して、健康リスクランキングリストを閲覧する。
すると、画面P2に示すように、一次利用サービス提供部122は、主治医のPHR表示装置200に、健康リスクランキングを表示する。健康リスクランキングには、健康リスクスコアが低い順に、ユーザの氏名と、健康リスクスコアと、発症リスクが高い疾病の名称とが表示される。例えば、この健康リスクランキングの上位に、ユーザAの氏名が含まれていたとする。
この場合、主治医は、健康リスクランキング上でユーザAの名前を選択し、ユーザA用のポータルサイトにアクセスする。すると、画面P3に示すように、一次利用サービス提供部122は、主治医のPHR表示装置200に、ユーザA用のポータルサイトを表示する。例えば、一次利用サービス提供部122は、ユーザAの現在の「バーチャルクローン」を表示する。なお、画面P3に示すように、画面上には、推定対象期間を選択するためのタブ(「今週」、「今月」、「今年」のタブ)が設定されている。ここでは、主治医が、推定対象期間として「今週」を選択したものとして説明する。また、「バーチャルクローン」の下には、確認したい時点を受け付けるためのツールとして、バーが表示されている。例えば、主治医は、このバーの位置を10年後の「2023年」に合わせ、『健康リスクグラフを確認』のボタンを押下する。
すると、画面P4に示すように、一次利用サービス提供部122は、主治医のPHR表示装置200に、ユーザAのゲノムの型と今週のライフスタイルの型とを表示するとともに、該当する健康リスクグラフを表示する。また、図示を省略するが、一次利用サービス提供部122は、必要に応じて、ライフスタイルの型の各項目の内容を具体的に表示してもよい。そして、例えば、主治医は、健康リスクグラフを確認後、『PHR確認』のボタンを押下する。
すると、画面P5に示すように、一次利用サービス提供部122は、ユーザAのPHRデータを表示する。なお、画面P5においては、ライフログ情報をグラフ形式で表示する例を示すが、実施形態はこれに限られるものではない。一次利用サービス提供部122は、主治医によって指定されたPHRデータを主治医が望む形式(例えば、表形式)に加工して表示することができる。例えば、主治医は、推定対象期間毎の健康リスクグラフやPHRデータをひと通り確認すると、『コメント』のボタンを押下する。
そして、画面P6に示すように、主治医は、例えば、PHR表示装置200の録画機能を用いてコメント動画を録画し、『送信』ボタンを押下することで、コメント動画をアップロードする。
上述してきた画面遷移について、PHR表示装置200の表示制御部210による表示制御の観点から説明すると、以下の通りである。例えば、主治医のPHR表示装置200は、ユーザのPHRデータに基づいて推定されたユーザの将来の健康リスクを表示部220に表示する表示制御部210を備える。表示制御部210は、複数のユーザ間の比較に基づく健康リスクランキングリストを表示し、健康リスクランキングリストに対して所定のユーザが指定された場合に、指定されたユーザの将来の健康リスク及びPHRデータを表示する。将来の健康リスクは、例えば、バーチャルクローンや、健康リスクグラフ、その他の文字情報等で表示される。また、PHRデータは、グラフ形式や、表形式、その他の文字情報等で表示される。また、表示制御部210は、ユーザのPHRデータとして、ゲノムの型、及び、ライフスタイルの型を表示する。なお、図25においては図示を省略するが、表示制御部210は、疾病の名称を表示する場合に、正式名称やICDコードで表示する。
次に、ユーザA側の画面遷移を説明する。ユーザAは、PHR表示装置200によって、ユーザA用のポータルサイトにアクセスする。すると、図26の画面P7に示す画面が表示されるので、ユーザAは、『Enter』ボタンを押下して、閲覧を開始する。
すると、画面P8に示すように、一次利用サービス提供部122は、ユーザAの現在の「バーチャルクローン」を表示する。なお、画面P8に示すように、画面上には、推定対象期間を選択するためのタブ(「今週」、「今月」、「今年」のタブ)が設定されている。ここでは、ユーザAが、推定対象期間として「今週」を選択したものとして説明する。また、「バーチャルクローン」の下には、確認したい時点を受け付けるためのツールとして、バーが表示されている。例えば、ユーザAは、このバーの位置を10年後の「2023年」に合わせ、『詳細』のボタンを押下する。
すると、画面P9に示すように、一次利用サービス提供部122は、ユーザAによって指定された時点の「バーチャルクローン」と、その時点の健康ステータスとを表示する。また、一次利用サービス提供部122は、健康リスクの推定結果「10年後(2023年)に、「アルコール性肝疾患」、「糖尿病」を発症するリスクが高まっています」を表示する。また、一次利用サービス提供部122は、健康リスクを視覚的に表現したマークを表示する。画面P9の例では、重い疾病を発症するリスクが高まっていることを視覚的に表現する意味で、「悪魔」のマークが表示されている。ここで、例えば、ユーザは、『シミュレーション』のボタンを押下する。
すると、画面P10に示すように、一次利用サービス提供部122は、ライフスタイルの変更を受け付けて健康リスクをシミュレーションするシミュレーション画面を表示する。図27は、本実施形態における健康リスクのシミュレーションを説明するための図である。例えば、一次利用サービス提供部122は、図27に示すように、ライフログ情報から得られる10の項目について、「レベルI」から「レベルIII」までの3段階を選択可能なGUI(Graphical User Interface)を表示する。図27に示すGUIにおいて、各項目の各レベルは、ユーザの押下によって選択可能なボタンとなっている。一次利用サービス提供部122は、初めは、図27の左側に示すように、ユーザAの現在のライフスタイルの型を選択状態にして表示するが、図27の右側に示すように、ユーザAからの押下を受け付けて、そのライフスタイルの型を変更する。ここでは、例えば、ユーザAが、項目「飲酒」のレベルを「レベルIII」から「レベルII」に引き下げ、項目「疲れ」のレベルを「レベルII」から「レベルI」に引き下げた例を示す。なお、ユーザAによる選択の結果、ライフスタイルの型が30型に変更されたことも表示されている。また、シミュレーションのためのGUIは、図27の例に限られるものではない。例えば、プルダウンメニュー等で変更するものでもよい。
こうして、シミュレーションしたいライフスタイルの型を選択すると、ユーザAは、図26の画面P10において、『実行』のボタンを押下する。すると、一次利用サービス提供部122は、シミュレーションされたライフスタイルの型に対応する健康リスクグラフを特定するとともに、ユーザAの現在の健康状態に応じて、この健康リスクグラフを調整し、画面P11に示すように、シミュレーション後の健康リスクグラフを表示する。
ここで、一次利用サービス提供部122は、主治医等の医師に対して健康リスクグラフを表示する場合と、ユーザに対して健康リスクグラフを表示する場合とで、その表示形態を変更する。図28は、本実施形態において主治医及びユーザに表示される健康リスクグラフを説明するための図である。表示形態を変更するポイントは、主に次の2点である。
まず1点目は、疾病の名称の表示形態である。図28に示すように、一次利用サービス提供部122は、主治医用の健康リスクグラフを表示する場合には、疾病の正式名称と、ICDコードとを表示する。一方で、一次利用サービス提供部122は、ユーザ用の健康リスクグラフを表示する場合には、疾病の通称を表示する。例えば、一次利用サービス提供部122は、主治医用の健康リスクグラフにおいて、「肝細胞癌(C220)」と表示していた疾病を、ユーザ用の健康リスクグラフにおいては、「肝臓癌」と表示する。また、例えば、一次利用サービス提供部122は、主治医用の健康リスクグラフにおいて、「糖尿病性腎症(E142)」と表示していた疾病を、ユーザ用の健康リスクグラフにおいては、単に「糖尿病」と表示する。なお、一次利用サービス提供部122は、正式名称及びICDコードと、通称との対応付けを予め保持し、健康リスクグラフの表示にあたり、この対応付けを参照して、適宜置き換えを行う。
次に2点目は、疾病の非表示である。図28に示すように、一次利用サービス提供部122は、主治医用の健康リスクグラフを表示する場合に表示していた疾病の一部を、ユーザ用の健康リスクグラフを表示する場合には非表示とする。即ち、上述したように、本実施形態においては、ユーザのゲノム要因の影響を強く受ける疾病についても、発症リスクの高い疾病として判明する可能性がある。しかしながら、このようなゲノム要因の影響を強く受ける疾病は、ライフスタイルの変更によっても避けられないこと、且つ、例えば治療法が確立しない難病の場合には、本人への告知が意味をなさない(若しくは、かえって悪影響を与える)事態が想定される。そこで、一次利用サービス提供部122は、ユーザ用の健康リスクグラフを表示する場合には、疾病の一部を非表示とすることができる。例えば、一次利用サービス提供部122は、主治医用の健康リスクグラフを表示する場合に表示していた疾病「脊髄小脳変性症(G319)」を、ユーザ用の健康リスクグラフを表示する場合には非表示とする。なお、例えば、一次利用サービス提供部122は、ゲノム要因の影響が強い難病のリストを予め保持し、健康リスクグラフの表示にあたり、このリストを参照して、適宜非表示とする。あるいは、例えば、一次利用サービス提供部122は、主治医から、非表示とすべき疾病の指定を受け付け、健康リスクグラフの表示にあたり、この指定を反映して、非表示とする。
例えば、ユーザAは、シミュレーション後の健康リスクグラフを確認すると、画面P11に示す『健康ステータス』のボタンを押下する。すると、画面P12に示すように、一次利用サービス提供部122は、シミュレーション後の「バーチャルクローン」と、健康ステータスとを表示する。例えば、ユーザAは、シミュレーション後の「バーチャルクローン」の表情や、健康ステータスを確認することで、シミュレーションの内容を実行することにより、健康リスクや健康ステータスが改善することを認識することができる。例えば、ユーザAは、飲酒をやや控え、十分に休養をとる生活に切り換えることで、「アルコール性肝疾患」や「肝臓癌」の発症を回避できることを認識することができる。また、一次利用サービス提供部122は、重い疾病を発症するリスクが低まったことを視覚的に表現したマークとして、「天使」のマークを表示する。なお、例えば、主治医からのコメントがアップロードされていた場合、一次利用サービス提供部122は、画面P12上に、『主治医からのコメント』のボタンを表示する。ユーザAは、この『主治医からのコメント』のボタンを押下することで、主治医のコメントを確認することもできる。
上述してきた画面遷移について、PHR表示装置200の表示制御部210による表示制御の観点から説明すると、以下の通りである。例えば、ユーザA本人のPHR表示装置200は、ユーザのPHRデータに基づいて推定されたユーザの将来の健康リスクを表示部220に表示する表示制御部210を備える。表示制御部210は、将来の健康リスクとともに、ユーザAの目標の健康状態及び当該目標の健康状態に到達するための指導情報のうち、少なくとも1つを表示する。将来の健康リスクは、例えば、バーチャルクローンや、健康ステータス、健康リスクグラフ、その他の文字情報等で表示される。また、目標の健康状態は、理想のバーチャルクローンや、理想の健康ステータス、シミュレーション後の健康リスクグラフ、その他の文字情報等で表示される。また、指導情報は、主治医からのコメントや、予め準備された文字情報等で表示される。
また、表示制御部210は、操作者から推定の時点の指定を受け付けると、受け付けた時点に応じた将来の健康リスクを表示する。また、表示制御部210は、操作者から、推定に用いるユーザのPHRデータの期間の幅を受け付けると、受け付けた期間の幅に応じた将来の健康リスクを表示する。受け付けた期間の幅に応じた将来の健康リスクは、予め期間毎に準備されるものでもよいし、ユーザの指定を受け付けてから準備されるものでもよい。また、表示制御部210は、操作者からライフスタイルの変更指示を受け付けると、受け付けた変更指示に応じてシミュレーションされた将来の健康リスクを更に表示する。また、表示制御部210は、将来の健康リスクとして、ユーザAが将来発症し得る疾病の名称を、通称で表示する。また、表示制御部210は、ユーザA若しくはユーザAの家族に対して疾病の名称を表示する場合には、必要に応じて、一部の疾病の名称を非表示とする。
また、図26の例においては、ユーザA自身がライフスタイルを変更するシミュレーションを行って、シミュレーション後の健康リスクグラフや健康ステータスを確認する例を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、一次利用サービス提供部122は、理想の「バーチャルクローン」をユーザAに提案するライフスタイルとともに提示し、ユーザAに対して、ライフスタイルの改善を自動的に提案することもできる。
このように、「週刊元気予報」によれば、家族や主治医は、「バーチャルクローン」を通じて、ユーザ本人の体や心の健康をモニターすることができる。そして、適切な励ましや理想に向けた指導をすることもできる。ユーザ本人にとっては、健康作りのための手法や進捗状況を具体的に把握することができ、モチベーションを更に高めることができる。なお、上述した実施形態では、「バーチャルクローン」との対話や応答を想定していないが、例えば、シミュレーション技術を併せて活用することで、「バーチャルクローン」との対話や応答も実現することが可能である。この場合、ユーザ本人の「バーチャルクローン」のみならず、家族の「バーチャルクローン」や、主治医の「バーチャルクローン」を設定してもよい。これらの「バーチャルクローン」には、想定される会話や指導内容を、予め設定しておく。すると、実際に家族や主治医からコメントが付与されていない状況でも、ユーザは、コメントを得ることができる。更に、ユーザは、自分自身の「バーチャルクローン」と対話してもよい。
上述してきたように、本実施形態によれば、ゲノム情報を含むPHRデータを活用し、各個人のライフスタイルとそのライフスタイルを続けることによる将来の健康リスクとを精度良く提示することができる。また、本実施形態によれば、最適な食事、運動、ライフスタイルの変革、個人に有効な医薬やサプリメントの推定をすることで、より健康で理想的な自己に近付く環境をもたらすことができる。また、理想の自己への到達度チェックは、目標が見えづらい努力の成果を具体化し、意欲や喜びに変える。なお、本実施形態は、災害等で孤立し、避難地で体調が悪化した際に、所在、生存状況、体調を遠隔で把握し管理する災害レジリエント対応も可能である。
(「健康リスク推定テーブルT」のその他の利用)
また、上述した実施形態では、具体例として、ユーザのゲノムの型及びライフスタイルの型を用いて「健康リスク推定テーブルT」を参照し、ライフスタイル要因の影響が強い疾病の情報を、健康リスクの推定結果としてフィードバックする例を説明した。しかしながら、「健康リスク推定テーブルT」から得られる情報の利用形態はこれに限られるものではない。
例えば、ユーザにとって発症リスクの高い疾病が判明したのであるから、例えば、ユーザから収集するライフログ情報の項目を発症リスクの高い疾病に関する項目に絞り込み、集中的に収集するようにしてもよい。例えば、ユーザ側で利用するセンサの種類や項目を、ユーザのゲノムの型及びライフスタイルの型に合わせて変更することができる。
また、例えば、ユーザのゲノムの型及びライフスタイルの型を用いて「健康リスク推定テーブルT」を参照することにより、ゲノム要因の影響が強い疾病の情報、即ち、ユーザによって遺伝的にハイリスクな疾病を推定することも可能である。
また、例えば、一次利用サービス提供部122は、ユーザにとって発症リスクの高い疾病の予兆を、日々ユーザから送信されるPHRデータから、いち早く補足する仕組みを設けてもよい。例えば、一次利用サービス提供部122は、特定の疾病に合わせた閾値を設け、ユーザから送信されるPHRデータを、逐次その閾値で確認する。
例えば、ハイリスクな疾病が判明したユーザに対しては、例えば、脳や心疾患等、重篤な疾患での予兆の補足を全センサが集中することで、サインを捉えて本人に警告して休憩を促し、早期受診を手配することで発作を抑え、発作が生じても、軽度のうちに迅速な対応や治療が可能となる等、新たな予防・先制医療革命をもたらす波及効果がある。あるいは、心突然死の発症リスクが高いユーザをゲノム情報で選別し、センサで常時自動監視し、発作を未然に防ぐためのライフスタイルの指示や、不整脈の発作時のみ補助的にペースメーカーを作動させたり、抗不整脈薬や抗血栓剤を充填した電子ピルをONにしたり、体調が悪化した際には即座に近隣医療機関や救急要請連絡、心停止の際には近隣のAED(Automated External Defibrillator)の所在場所の指示や救護対応支援等の緊急対応システムが構築可能となる。その結果、突然死や発作後の重症化に伴う長期に亘る後遺症、リハビリテーション、二次障害による寝たきりや痴呆症を予防低減することができ、高齢化社会でも誰もが健康に不安なく趣味や仕事、家事に取り組み、快活で安寧な人生を送ることができる。
また、ストレス時の不整脈に伴う脳梗塞発症サイン等、遺伝的にハイリスクな発症予備軍に対して、日常のデータ監視を強化するなかから、これらを見逃すことなく異常ログを捕捉することで、精度良く早期警戒情報や発症予防措置を各個人や医療機関へフィードバックすることが可能となる。これは、予め登録した離れた家族の情報も同様にフィードバック可能である。その結果、個人にとって最適なエビデンスに基づく個別化のための健康指導法や食、運動のより相応しい選択や生活様式の選択までをも通じて、具体的且つ、無理なく楽しく理想自己の実現が可能となるとともに、家族の見守りをまるで傍らにいるかのように常時行い、安寧な生活を実現できる。
(二次利用サービス)
さて、これまで、PHRデータの一次利用サービスの一例として、日常人間ドックや、週刊元気予報を説明してきたが、上述したように、本実施形態において、PHR処理装置100は、PHRデータの二次利用サービスの提供も想定している。例えば、PHR処理装置100は、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせとある特定の目的との関連性を導き出すべく大規模ゲノム・コホートデータベース114aを解析し、ある一定の関連性を示す解析結果を得て、これを医療機関や各種企業等に提供する。
なお、大規模ゲノム・コホートデータベース114aに蓄積されたPHRビッグデータは、元々は各個人から収集されたPHRデータであり、即ち、個人情報である。このため、PHRデータの利用に関しては、「PHRデータの一次利用は許諾できるが二次利用は許諾できない」、「PHRデータの一次利用、二次利用のいずれも許諾できる」といったように、各個人の意思が異なる場合がある。そこで、本実施形態において、PHR処理装置100は、PHRデータを提供する各個人との間で予め、どの利用までを許諾するかを示す利用許諾を受け付け、利用許諾の情報をPHRデータに付帯させて管理している。利用許諾は、PHRデータ全体、あるいは、PHRデータ内の細分化項目の単位で受け付けられる。以下では、この利用許諾が得られていることを前提に、二次利用サービスの具体例を説明する。なお、以下に説明する具体例は一例に過ぎず、二次利用サービスは以下の具体例に限られるものではない。
まず、第1の例として、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせと、「薬効」との関連性を導き出し、これを医薬品の処方に活用する例を説明する。
図29及び図30は、本実施形態における二次利用サービスの一例(第1の例)を説明するための図である。上述したように、大規模ゲノム・コホートデータベース114aは、各個人のPHRデータであるライフログ情報等が日々新たに蓄積されるとともに、新たな個人のPHRデータが新たな運用管理の対象として蓄積されることで、その規模を日々拡大している。
PHRビッグデータ解析部121は、特定の医薬品の薬効という解析の目的の入力を受け付け、大規模ゲノム・コホートデータベース114aに蓄積されたPHRビッグデータを対象にコホート分析を行い、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせと、特定の医薬品の薬効との関連性を導き出す。例えば、PHRデータには、電子カルテ情報が含まれており、電子カルテ情報には、当該個人に処方された医薬品の情報や、その後の経過を表す情報が含まれている。また、PHRデータには、ライフログ情報が含まれており、ライフログ情報には、医薬品が処方された後の当該個人の体調変化を表す情報や、当該個人の生活状況を表す情報が含まれている。
そこで、PHRビッグデータ解析部121は、これらの情報を含むPHRビッグデータを対象にコホート分析を行うことで、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせと、薬効及び副作用との関連性を導き出す。そして、PHRビッグデータ解析部121は、図29に示すように、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせを、薬効及び副作用の有無によって分類する。
例えば、PHRビッグデータ解析部121は、特定の要因に曝露された集団(特定のゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせにあてはまる集団)と曝露されていない集団(その組み合わせにあてはまらない集団)とを一定期間追跡し、薬効及び副作用の有無を比較することで、要因(特定のゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせ)と、薬効及び副作用との関連性を導き出す。そして、PHRビッグデータ解析部121は、導き出した関連性に基づいて、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせを、「薬効(−)、副作用(+)」、「薬効(−)、副作用(−)」、「薬効(+)、副作用(+)」、及び「薬効(+)、副作用(−)」の各グループに分類する。
ここで、「薬効(−)、副作用(+)」及び「薬効(−)、副作用(−)」のグループに分類された型の組み合わせを有する者に対しては、その医薬品を処方することは不可である。また、「薬効(+)、副作用(+)」のグループに分類された型の組み合わせを有する者に対しては、その医薬品を処方することができるが、副作用を考慮する必要がある。また、「薬効(+)、副作用(−)」のグループに分類された型の組み合わせを有する者に対しては、その医薬品を処方することができる。この情報を医師に提供することで、医師は、患者に対して医薬品を処方する前に、その患者の型の組み合わせに応じた判断を行うことができる。
そこで、例えば、二次利用サービス提供部123は、医療機関との間で予め交わされた契約に基づいて、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせと、薬効及び副作用との関連性を活用するための二次利用サービスを、医療機関の医師に対して提供する。その提供の手法としては様々な手法が考えられるが、以下では、図30を用いて1つの手法を説明する。
図30に示すように、例えば、二次利用サービス提供部123は、ヘルスケアクラウド10上に二次利用サービス用のポータルサイト14eを立ち上げ、医療機関の医師に対してポータルサイト14eへのアクセスを許可する。また、二次利用サービス提供部123は、医師に対して各個人のPHRデータへのアクセスを許可するとともに、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせの分類結果へのアクセスを許可する。すると、医師は、ポータルサイト14eを介して、例えば、患者BのPHRデータを閲覧し、患者Bのゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせを確認する。また、医師は、ポータルサイト14eを介して、分類結果を確認する。そして、医師は、患者Bのゲノムの型及びライフスタイルの型と、分類結果とを照合し、この患者Bに、特定の医薬品を処方すべきか否か、あるいは処方にあたり副作用を考慮する必要があるか否かを判断する。そして、医師は、この判断に基づいて、患者Bに対する処方箋を作成する。
なお、二次利用サービスの提供の手法は、上述した手法に限られるものではない。二次利用サービス提供部123は、例えば、個人のゲノムの型及びライフスタイルの型の情報を含む実名リストと、特定の医薬品に関する分類結果とを作成し、これらを、医療機関等に送信してもよい。また、実名リストや分類結果は、オフラインで提供されてもよい。
続いて、第2の例として、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせと、「食品・サプリメントの効果」との関連性を導き出し、これを食品・サプリメントの販売や宣伝等に活用する例を説明する。
図31は、本実施形態における二次利用サービスの一例(第2の例)を説明するための図である。PHRビッグデータ解析部121は、特定の健康飲料に含まれる成分(若しくは、その類似成分)による効果との関連性を導き出すという解析の目的の入力を受け付け、大規模ゲノム・コホートデータベース114aに蓄積されたPHRビッグデータを対象にコホート分析を行い、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせと、特定の健康飲料との関連性を導き出す。例えば、PHRデータには、ライフログ情報が含まれており、ライフログ情報には、当該個人の体調を表す情報や、食品・サプリメントの摂取状況を表す情報が含まれている。
そこで、PHRビッグデータ解析部121は、これらの情報を含むPHRビッグデータを対象にコホート分析を行うことで、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせと、特定の健康飲料との関連性を導き出す。例えば、PHRビッグデータ解析部121は、特定の要因に曝露された集団(特定のゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせにあてはまる集団)と曝露されていない集団(その組み合わせにあてはまらない集団)とを一定期間追跡し、解析の対象とする特定の健康飲料に含まれる成分(若しくは、その類似成分)による効果の有無を比較することで、要因(特定のゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせ)と、特定の健康飲料との関連性を導き出す。
そして、PHRビッグデータ解析部121は、導き出した関連性に基づいて、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせを、特定の健康飲料に含まれる成分(若しくは、その類似成分)に対する効果を有するグループと、効果を有しないグループとに分類する。更に、PHRビッグデータ解析部121は、効果を有するグループを、摂取中の食品・サプリメントとの食べ合わせに鑑みて、2つのグループに分類する。
即ち、特定の健康飲料に対して効果を有しないグループに分類された型の組み合わせを有する者に対しては、その健康飲料を販売することは推奨されない。また、特定の健康飲料に対して効果を有するグループのうち、摂取中の食品・サプリメントとの食べ合わせに留意しなければならないグループに分類された型の組み合わせを有する者に対しては、その健康飲料を販売することは可能であるが、摂取にあたって食べ合わせの留意点を伝えることが望ましい。また、残りのグループに分類された型の組み合わせを有する者に対しては、その健康飲料を販売することが推奨される。
そこで、例えば、二次利用サービス提供部123は、食品・サプリメント販売会社との間で予め交わされた契約に基づいて、ゲノムの型及びライフスタイルの型の組み合わせと、健康飲料との関連性を活用するための二次利用サービスを、食品・サプリメント販売会社15aに対して提供する。その提供の手法としては様々な手法が考えられるが、以下では、図31を用いて1つの手法を説明する。
図31に示すように、例えば、二次利用サービス提供部123は、PHRデータの提供者であるユーザ群の中から、特定の健康飲料を販売することが可能、若しくは推奨されるグループに分類された型の組み合わせを有するユーザを抽出する。そして、二次利用サービス提供部123は、これらのユーザについて、留意点を含む実名リストを作成し、この実名リストを食品・サプリメント販売会社15aに送信する。なお、実名リストは、ポータルサイト経由の閲覧で提供されてもよいし、オフラインで提供されてもよい。すると、図31に示すように、食品・サプリメント販売会社15aは、この実名リストを用いて、ダイレクトメール(Direct Mail:DM)等による販売促進活動を行う。また、食品・サプリメント販売会社15aは、販売促進活動において、必要に応じて留意点に言及する。
次に、例えば、二次利用サービス提供部123は、特定の健康飲料を販売することが可能、若しくは推奨されるグループに分類された型の組み合わせを有するユーザに対応するPHRデータを一定期間追跡する。そして、二次利用サービス提供部123は、ライフログ情報を用いて、この特定の健康飲料を購入したであろうユーザを割り出し、購入ユーザのPHRデータを、食品・サプリメント販売会社15aに送信する。なお、購入ユーザのPHRデータは、ポータルサイト経由の閲覧で提供されてもよいし、オフラインで提供されてもよい。
すると、図31に示すように、食品・サプリメント販売会社15aは、PHRデータを用いて健康飲料の効果を検証する。例えば、食品・サプリメント販売会社15aは、効果を示す定量的な数値を算出する。そして、食品・サプリメント販売会社15aは、特定の健康飲料を販売することが可能、若しくは推奨されるグループに分類された型の組み合わせを有するユーザのうち、非購入ユーザに対して、算出した数値を根拠とする効果のフィードバックを行う。
なお、上述した例では、二次利用サービス提供部123は、PHRデータを用いて特定の健康飲料を購入したであろうユーザを割り出し、購入ユーザのPHRデータ自体を、食品・サプリメント販売会社15aに提供する例を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。
例えば、二次利用サービス提供部123は、特定の健康飲料を購入したであろうユーザを割り出すとともに、そのPHRデータを解析して、実際に効果が得られたユーザを絞り込み、絞り込んだユーザの実名リストを、食品・サプリメント販売会社15aに提供することもできる。例えば、食品・サプリメント販売会社15aが、顕著に効果が現れるユーザにターゲットを絞って販売活動を行うことを望む場合には、このような絞り込みが有効である。また、例えば、二次利用サービス提供部123は、実際に効果が得られたユーザのライフスタイルの型を絞り込み、効果に結び付くライフスタイルを特定する。そして、二次利用サービス提供部123は、特定したライフスタイルの情報を、食品・サプリメント販売会社15aに提供することもできる。この場合、食品・サプリメント販売会社15aは、販売時にライフスタイルの提案を併せて行うことができる。
また、例えば、二次利用サービス提供部123は、特定の医薬品を利用しているユーザのPHRデータを解析して、当該医薬品の有効性や副作用、長期的な効果などを見つけ出し、製薬会社に提供することもできる。これにより、例えば、製薬会社は、医薬品開発において、ライフスタイルの型や、ゲノムの型ごとに医薬品の有効性、副作用、長期的な効果を見つけ出し、それぞれのユーザに合った医薬品を効率的に開発することができる。
続いて、第3の例として、ユーザから送信されたPHRデータ自体を、遠く離れた家族の家族見守りサービス等に活用する例を説明する。
図32は、本実施形態における二次利用サービスの一例(第3の例)を説明するための図である。図32に示すように、例えば、二次利用サービス提供部123は、PHRデータを提供する各ユーザとの間で予め、利用許諾を受け付ける。この利用許諾は、例えば、ライフログ情報のうちどの項目について開示を許諾するか(開示項目)、また、その開示相手は誰か(開示先)、という内容である。
例えば、二次利用サービス提供部123は、ユーザE用のポータルサイト14f上で、高齢者のユーザEから利用許諾を受け付ける。例えば、図32の例では、ライフログ情報のうち、血圧や心拍数について、家族見守りサービスへの二次利用を許諾すること、そして、情報の開示相手は、娘のユーザAや、息子のユーザDであることが示されている。同様に、ライフログ情報のうち、運動量や睡眠量について、家族見守りサービスへの二次利用を許諾すること、そして、情報の開示相手は、娘のユーザAや、息子のユーザDであることが示されている。一方、ライフログ情報のうち、位置情報については、家族見守りサービスへの二次利用を許諾しないことが示されている。
二次利用サービス提供部123は、二次利用に関して受け付けたこのような利用許諾の情報を、PHR蓄積部110に伝える。すると、PHR蓄積部110は、ユーザEから送信されたPHRデータに対して、上述した内容が記述された利用許諾の情報を付帯させた上で記憶する。なお、利用許諾情報の付帯のさせ方は、PHRデータ全体に対して付帯させる手法でもよいし、あるいは、各細分化項目のデータそれぞれに対して付帯させる手法でもよい。このPHRデータを利用する側でこの利用許諾情報を確認可能な付帯のさせ方であれば、任意の手法を採用することができる。
また、二次利用サービス提供部123は、このように提供されたPHRデータを家族見守りサービスに適した形態に加工する等して、家族見守りサービスを提供するセキュリティ会社15bに提供する。例えば、二次利用サービス提供部123は、1週間分の血圧や心拍数、運動量や睡眠量について、1週間の傾向を容易に把握できるように、各値を時系列順にプロットしたグラフ等の形態に加工し、加工後のPHRデータを、セキュリティ会社15bに提供する。なお、提供の手法は、オンライン若しくはオフラインのいずれでもよい。なお、二次利用サービス提供部123は、該当のPHRデータ自体をセキュリティ会社15bに提供してもよい。この場合、上述した加工は、必要に応じて、セキュリティ会社15bが行う。
例えば、セキュリティ会社15bは、家族見守りサービスを運用している。例えば、家族見守りサービスの加入者は、高齢者ユーザEの娘のユーザAである。ユーザAは、セキュリティ会社15bとの契約の中で、高齢者ユーザEが見守りの対象であること、また、自分の他に、ユーザEの息子であるユーザDも、このサービスを利用したいこと等を決める。なお、この家族見守りサービスの加入者と、PHR処理装置100側で提供するサービスのユーザとは必ずしも一致しなくてもよい。
こうして、例えば、セキュリティ会社15bは、高齢者のユーザE用の見守りポータルサイト14gを、自らのサイトに立ち上げる。この見守りポータルサイト14gへのアクセスは、ユーザA及びユーザDに対してのみ許可されている。そして、ユーザAやユーザDは、見守りポータルサイト14g上で、例えば、この1週間における母親の健康状態や、運動の様子、睡眠の状況等を確認することができる。
上述したように、第3の例において、二次利用サービス提供部123は、ユーザから送信されたPHRデータに対して、開示項目及び開示先に関する利用許諾を受け付ける。そして、二次利用サービス提供部123は、受け付けた利用許諾に従って、ユーザのPHRデータ若しくはこのPHRデータの加工情報を出力する。こうして、遠くに離れた家族のライフログ情報に基づいて、離れていても家族の状況がわかるサービスを提供することができる。また、その際に、特定の相手にだけ、ライフログ情報の中でも指定した情報のみを開示できる仕組みを実現することができる。また、各ライフログ情報には、利用許諾の情報が付帯されており、特定の相手には開示してもよい旨の印をつけることが可能なデータの持ち方になっている。
以上、PHRビッグデータの二次利用として、第1、第2及び第3の例を説明してきた。このような二次利用が進むことで、PHRデータの提供者に対して単に将来の健康リスク評価結果を返すための支援サービスのみならず、流通や商品販売・サービス提供、ライフスタイル設計、地域通貨として使用できるポイント還元制度等、個人や自治体、社会に種々の経済的なメリットも返ってくる新たなビジネスモデル構築が可能となる。
上述してきたように、本実施形態は、参加者や規模が増大するにつれ、検証サイクルやエビデンスの蓄積がなされ、より確実性と信頼性の高いシステムとして性能が向上する。また、多様なデータから構成されるためにその有用性も高い。これらのデータベースを加工し、産業への二次利用を様々な形で推進することで、今まで蓄積される一方で価値を十分に見出せなかったライフログ・ビッグデータやゲノム情報に基づく基礎データに、新しい画期的な価値を持たせることが可能となり、それらを活用した新たな革新的な産業創出が可能となる。
(PHRデータ収集のためのインセンティブ)
さて、これまで、PHRデータの一次利用サービスの一例として、日常人間ドックや、週刊元気予報を説明してきた。また、PHRデータの二次利用サービスについても、具体例を挙げて説明してきた。いずれの場合も、一次利用や二次利用に必要なデータ量や種類を満たすPHRデータが、各個人から継続的に送信されることが望ましい。そこで、本実施形態において、PHR処理装置100は、各個人に対してPHRデータを継続的に送信させるためのインセンティブの仕組みも更に構築する。
仕組みその1は、二次利用サービスとの連携である。各ユーザが送信したPHRデータは、当該ユーザの許諾が得られた場合には、二次利用サービスにも提供される。そこで、PHR処理装置100は、例えば、この二次利用サービスに関連してデータ信託会社11にて得られた収益金に基づいて、ポイント制度(ポイント、マイレージ、分配金等)等、何らかの形で各ユーザにフィードバックする仕組みを構築する。
仕組みその2は、ユーザ間の競争である。各ユーザは、友人や家族等の競争相手との間で勝ち負けを競うことで、健康への意欲を高めることができる。そこで、PHR処理装置100は、例えば、PHRデータのデータ量や種類の数、あるいは、体重や血圧等の生体情報、一日に歩いた距離や歩数等の行動情報に関して、競争相手同士で比較し、勝ち負けを競う仕組みを構築する。なお、この競争相手は、仮想的に設定された、仮想の友人、恋人や家族等でもよい。
仕組みその3は、上述した実施形態で既に説明した、元気予報である。即ち、各ユーザは、PHRデータをPHR処理装置100に提供することで、このPHRデータに基づいて推定された自らの将来の健康リスクを元気予報として受け取ることができる。上述したように、元気予報は、様々な形で将来の健康リスクを提示する。例えば、ユーザは、今週、今月、今年や、過去1日、過去1週間、過去1ヶ月、過去1年等、推定対象期間に応じた推定を行うこともできれば、将来の時点として、1日後、1週間後、1ヶ月後、1年後、5年後、10年後、20年後等、任意の時点を選択して推定することもできる。
それでは、以下では、上述した仕組みその1及び仕組みその2を、詳細に説明する。
図33は、本実施形態におけるインセンティブの仕組みその1を説明するための図である。図33に示すように、一次利用サービス提供部122は、インセンティブ処理部122a(「提示部」とも呼ばれる)を備える。インセンティブ処理部122aは、所定のユーザのPHRデータを評価し、評価の結果を当該所定のユーザに提示する。例えば、インセンティブ処理部122aは、二次利用サービス提供部123と連携し、PHRデータの二次利用を許諾した所定のユーザに関して、二次利用サービス提供部123から、二次利用に活用されたPHRデータのデータ量、種類、種類の数、及びこのPHRデータが活用された二次利用サービスの有用性等の活用情報を受け取る。そして、インセンティブ処理部122aは、これらの活用情報に基づいてポイントを算出し、算出したポイントに関する情報(例えば、ポイント自体、ポイントに応じてユーザに還元されるサービス、分配金の金額等)をユーザに提示する。
例えば、インセンティブ処理部122aは、ユーザAのポータルサイト14hに、公募情報を提示する。この公募情報には、例えば、「医薬品の開発にご協力をお願いします。」といった二次利用の目的の概要や、ポイントの値、その目的のために必要とされるPHRデータのデータ量(例えば、送信頻度、送信期間等)及び種類(例えば、生体情報や行動情報の具体的な項目等)が記載される。例えば、ユーザAは、この公募情報を閲覧し、応募(利用許諾)の手続を行う。また、ユーザAは、公募情報に記載のPHRデータの規定に従い、PHRデータを、PHR処理装置100に向けて、日々送信する。
こうして、PHR処理装置100に送信され、蓄積されたユーザAのPHRデータは、その利用許諾に従い、やがて上述した目的の二次利用に提供されることになる。そして、上述したように、インセンティブ処理部122aは、二次利用サービス提供部123から活用情報を受け取り、これらの活用情報に基づいてポイントを算出し、算出したポイントに関する情報をユーザに提示する。例えば、インセンティブ処理部122aは、図33に示すように、ポータルサイト14iに、「ユーザAさんの獲得ポイント○○○pts」を表示する。なお、ポイントの算出は、必ずしも二次利用後である必要はなく、二次利用に提供される前に行われてもよい。
このポイント制度は、データ信託会社11によって運用管理されており、データ信託会社11が、ポイントに基づいた具体的な還元をユーザAに対して行う。例えば、データ信託会社11がこの二次利用サービスに関連して収益金を得ている場合、データ信託会社11は、この収益金をもとに企業や商店と提携しており、ユーザAが、この提携先の企業や商品からポイント還元を受けるようにする。ポイント還元は、例えば、サービスや景品等、どのような形態であってもよい。あるいは、データ信託会社11は、収益金の一部を分配金という形でユーザAに送金してもよい。
ところで、ポイントは、二次利用サービスの有用性にも基づいて算出されると述べた。この点について補足説明を行う。二次利用サービスの目的には、医薬品の開発や、薬事法上の承認を得るために行われる臨床試験(治験)、医薬品の長期投与による真の有効性や効果の事後(市販後)評価のように、社会的意義の高いものがある一方で、例えば、映画や番組の視聴者から身体に現れた生体情報を集めるといったように、単なるマーケティングの一環として行われるものもある。どのような目的を有用性が高い目的であるとし、またどのような目的を有用性が低い目的であるとするかは、データ信託会社11側で任意に設定可能であるが、例えば、医療目的は有用性が高く、マーケティング目的は有用性が低いといった設定をすることができる。又は、データ信託会社11は、実際に得られた収益金(若しくは、得られるであろう見込みの収益金)の全体の収益金に対する比率に応じて、有用性を設定してもよい。
なお、上述した例においては、ユーザから送信されたPHRデータが二次利用サービスにも提供されることを前提に、この二次利用サービスに関連して、ポイント制度等何らかの形で各ユーザにフィードバックが行われる仕組みを説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。インセンティブ処理部122aによるポイント制度は、二次利用サービスとは切り離して、単にユーザから送信されたPHRデータのデータ量、種類、種類の数に基づいて運用されてもよい。この場合、例えば、インセンティブ処理部122aは、各ユーザのPHRデータについて、データ量、種類、及び種類の数のうち、少なくとも1つに基づいてポイントを算出し、算出したポイントに関する情報をユーザに提示する。
また、上述した例においては、PHRデータのデータ量、種類、種類の数、及びこのPHRデータが活用された二次利用サービスの有用性等に基づいてポイントを算出する例を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。インセンティブ処理部122aは、PHRデータの送信状況を評価するための何らかの基準に基づいてポイントを算出すればよい。
次に、図34は、本実施形態におけるインセンティブの仕組みその2を説明するための図である。仕組みその2においても、インセンティブ処理部122aは、所定のユーザのPHRデータを評価し、評価の結果を当該所定のユーザに提示する。例えば、図34に示すように、インセンティブ処理部122aは、PHRデータを送信している複数のユーザ間に競争関係を設定し、そのユーザ間で、ライフログ情報に関する比較を行う。そして、インセンティブ処理部122aは、競争関係にあるユーザそれぞれにその結果を提示する。
例えば、インセンティブ処理部122aは、ユーザAから、競争相手としてユーザCを設定する旨の申請を受け付ける。すると、インセンティブ処理部122aは、ユーザAとユーザCとの間で競争を行うためのポータルサイト14jをヘルスケアクラウド10上に設定するとともに、ユーザA及びユーザCのポータルサイトそれぞれにこの競争用のポータルサイト14jへのリンク付けを行う。こうして、ユーザA及びユーザCのそれぞれは、自らのポータルサイトを経由して、2人の競争用のポータルサイト14jを閲覧することができる。
また、例えば、インセンティブ処理部122aは、ユーザA及びユーザCからの希望に応じた頻度(例えば、毎日、週に1回、月に1回、年に1回等)で、2人の競争用のポータルサイト14jの更新を行う。例えば、ユーザA及びユーザCからの希望が、週に1回の頻度であったとする。すると、インセンティブ処理部122aは、週に1回、過去1週間分のユーザAのPHRデータから、予め競争対象として指定された競争項目の情報を抽出し、同様に、ユーザCのPHRデータから、予め競争対象として指定された競争項目の情報を抽出する。そして、インセンティブ処理部122aは、それぞれのPHRデータから抽出した競争項目の情報を比較し、勝ち負けを判定する。
図34の例でいうと、例えば、インセンティブ処理部122aは、各ユーザのPHRデータについて、そのデータ量や種類の数を特定するとともに、ライフログ情報から、体重情報や血圧情報、1日の平均歩数等を得る。図34の例では、ユーザAは、1週間のうち、7日間PHRデータの送信を行い、また、20項目について送信を行っている。ユーザAは、0.5kgの減量に成功し、血圧は普通であり、1日の平均歩数は7,500歩と多い。一方、ユーザCは、1週間のうち、5日間PHRデータの送信を行い、また、19項目について送信を行っている。ユーザCは、1.0kgの体重が増えており、血圧は普通であり、1日の平均歩数は5,000歩と少なめである。
インセンティブ処理部122aは、これらの情報を予め定めた基準で評価し、勝ち負けを判定する。そして、インセンティブ処理部122aは、その判定結果を、例えば、図34に示すように、勝ち負けを視覚的に表現したマークや、文字情報等で表示する。また、図34の例では、インセンティブ処理部122aは、この競争の結果に対してもポイントを付与している。なお、ここで説明した競争項目や競争の基準、競争用のポータルサイト14jのGUI、競争の結果のフィードバック法等は、いずれも任意に変更することが可能である。例えば、インセンティブ処理部122aは、競争の結果をそれぞれのユーザのメールアドレスに送付してもよい。
(PHR処理装置100の詳細な構成)
これまで、本実施形態において提供される「日常人間ドック」サービスやPHRデータの「二次利用サービス」を詳細に説明してきた。また、PHR処理装置100の基本的な構成を説明してきたが、以下では、PHR処理装置100の構成をより詳細に説明する。なお、以下に説明するPHR蓄積部110、PHRビッグデータ解析部121、一次利用サービス提供部122、二次利用サービス提供部123は、いずれも、上述した実施形態において説明した、PHR蓄積部110、PHRビッグデータ解析部121、一次利用サービス提供部122、二次利用サービス提供部123に、それぞれ対応する。また、PHR処理装置100は、必ずしも以下に説明する各部を備えなければならないものではなく、適宜装備を省略することができる。また、PHR処理装置100は、他の部を更に備えることもできる。
図35は、本実施形態に係るPHR処理装置100の機能ブロック図である。PHR処理装置100は、1つ又は複数の汎用コンピュータによって実現されることが可能であり、プロセッサ(processor)、メモリ(memory)、入出力インタフェースを備える。図35に示す各部は、プロセッサ、メモリ、入出力インタフェースに、適宜割り当てられる。
PHR処理装置100は、PHR蓄積部110と、PHR運用管理部120と、システム制御部130とを備える。システム制御部130は、PHR処理装置100の全体制御を行う。例えば、システム制御部130は、データ信託会社11のオペレータの操作を受け付け、PHRデータの管理対象となるユーザや、その家族、主治医のアカウント登録、二次利用サービスの提供を受ける医療機関や各種企業等のアカウント登録を行う。
PHR蓄積部110は、セキュリティ機能部111と、データフォーマット変換・正規化部112と、非構造化データ処理部113と、PHRデータ蓄積部114とを備える。
セキュリティ機能部111は、PHRデータのセキュリティを確保するための各種処理を行う。PHRデータは、極めてセンシティブな取り扱いが求められる個人情報である。このため、セキュリティ機能部111は、PHRデータの入出力インタフェース(API:Application Programming Interface)として、接続先の認証、及び、アクセス権限の認可を行う。また、セキュリティ機能部111は、個人を特定できない処理を施した上で利活用に提供するために、必要に応じて、PHRデータの匿名化を行う。また、セキュリティ機能部111は、匿名化を行わないPHRデータについては、適切に管理された暗号鍵による暗号化を行う。また、セキュリティ機能部111は、PHRデータをヘルスケアクラウド10外に提供する場合には、不正侵害等に対する耐久性のあるデータ配信を行う。
また、セキュリティ機能部111は、システム管理者、PHRビッグデータを解析する研究者、及び、PHRデータを登録し、参照する個人ユーザ等、全てのデータアクセスユーザに対し、適切な個人認証を行う機能を提供する。ヘルスケアクラウド10上では、センシティブな個人の健康情報を扱うため、セキュリティ機能部111は、ID/パスワード認証以上のセキュリティを担保できる多要素認証技術を提供する。また、セキュリティ機能部111は、様々なデバイスやシステムから入力されるデータの所有者を識別・特定するための名寄せの機能を提供する。
データフォーマット変換・正規化部112は、PHRデータが、デバイスにより様々なデータフォーマットで送信されることに柔軟に対応するため、データ変更・正規化の機能及び、変換された正規化データを所定のシステムへ配送するサービスバス機能を提供する。また、本実施形態において、PHR蓄積部110は、個人の医療・健康に関わる解析のため、ソーシャルメディア等の画像、つぶやきテキスト情報、また、スマートフォンアプリ等からの音声、画像、テキスト情報等の補完情報を収集する。このため、非構造化データ処理部113は、インタフェース機能を有し、またそれらの非構造化データを処理するための、音声認識、自然言語解析、画像認識、データマイニングといった機能を有する。
PHRデータ蓄積部114は、PHRビッグデータが蓄積された大規模ゲノム・コホートデータベース114aである。
一方、PHR運用管理部120は、PHRビッグデータ解析部121と、一次利用サービス提供部122と、二次利用サービス提供部123とを備える。また、PHRビッグデータ解析部121は、解析エンジン部121aと、分散処理データベース121bと、イベント処理部121cとを備える。解析エンジン部121aは、PHRデータ蓄積部114に蓄積されたPHRビッグデータを対象に、コホート分析等を行う。解析エンジン部121aによる解析は、分散処理技術を用いて行われる場合がある。この場合には、PHRデータ蓄積部114と、分散処理データベース121bとが連携し、解析エンジン部121aは、分散処理データベース121bに蓄積されたPHRビッグデータを処理の対象とする。また、イベント処理部121cは、解析エンジン部121aによる分散処理に対応してイベント処理を行う。
一次利用サービス提供部122は、一次利用サービスとして、「日常人間ドック」サービスを提供する。また、一次利用サービス提供部122は、インセンティブ処理部122aを備える。個人のユーザがセンサを着用し、自身の健康情報やその補完情報の入力を長期にわたって続けるには、インセンティブが重要となる。インセンティブ処理部122aは、インセンティブとなり得るポイント制度や各種ランキング、ゲーム要素、広告モデルの機能を提供する。二次利用サービス提供部123は、二次利用サービスを提供する。
(ハードウェア構成)
図36は、本実施形態におけるPHR処理装置100(又はPHR表示装置200)のハードウェア構成を示す図である。PHR処理装置100(又はPHR表示装置200)は、CPU(Central Processing Unit)310と、ROM(Read Only Memory)320と、RAM(Random Access Memory)330と、表示部340と、入力部350とを備える。また、PHR処理装置100(又はPHR表示装置200)では、CPU310、ROM320、RAM330、表示部340、及び入力部350が、バスライン301を介して接続されている。
上述した実施形態における各種処理を行うPHR処理プログラム(又はPHR表示プログラム)は、ROM320内に格納されており、バスライン301を介して、RAM330へロードされる。CPU310は、RAM330内にロードされたPHR処理プログラム(又はPHR表示プログラム)を実行する。例えば、PHR処理装置100(又はPHR表示装置200)では、操作者による入力部350からの指示入力に従って、CPU310が、ROM320内からPHR処理プログラム(又はPHR表示プログラム)を読み出してRAM330内のプログラム格納領域に展開し、各種処理を実行する。CPU310は、この各種処理に際して生じる各種データをRAM330内に形成されるデータ格納領域に一時的に記憶させておく。
PHR処理装置100(又はPHR表示装置200)で実行されるPHR処理プログラム(又はPHR表示プログラム)は、PHRビッグデータ解析部121、一次利用サービス提供部122、及び二次利用サービス提供部123(又は、表示制御部210)を含むモジュール構成となっており、これらが主記憶装置上にロードされ、これらが主記憶装置上に生成される。
(その他の実施形態)
実施形態は、上述した実施形態に限られるものではない。
(構成)
上述した実施形態では、クラウド上にPHR処理装置100が構築される構成を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。PHR処理装置100は、その機能の全部若しくは一部を、例えば、データ信託会社11内のネットワーク上に構築することもできる。また、PHR処理装置100は、必ずしも1つの拠点に構築されなければならないものではない。複数の拠点に分散配置された機能が連携することで、PHR処理装置100を実現してもよい。
また、上述した実施形態で例示した物理的な構成は、あくまで一例に過ぎない。上述した実施形態で例示した各部は、運用の形態や負荷に応じて適宜統合若しくは分散される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。