JP6358616B2 - アンテナ性能評価装置及び到来波角度プロファイル推定装置 - Google Patents
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Description
従って、通信環境の変化にかかわらず必要な通信品質を確保することができるダイバーシチアンテナを得るためには、アンテナの配置や通信環境に応じて変化するダイバーシチ効果を定量的に評価し、その評価結果に基づき、通信環境の変化や車両の方向の変化に対して安定してダイバーシチ効果を得ることのできるアンテナ配置を設計する必要がある。
第2の到来波の中心角度を
とした場合、アンテナの位置における到来波角度プロファイルS(Φ)を以下の式により算出する到来波角度プロファイル算出手段と、を備える。
このように構成された本発明によれば、実験やシミュレーションを実施しなくても、アンテナの前方にある構造物のエッジで回折されてアンテナに到達する回折波によるピークと、アンテナの側方にある構造物の側面で反射されてアンテナに到達する反射波によるピークとの2つのピークを持つ、車車間通信環境(例えば市街地交差点)に特有の到来波角度プロファイルを精度よく推定することができ、ダイバーシチ効果を高精度に評価することができる。
このように構成された本発明によれば、任意の方向で配置されたダイバーシチアンテナにおける受信電力分布を、アンテナの設置領域における平均受信電力や到来波角度プロファイルの形状が同一の特性に従う下で導出することができ、これにより、任意の方向で配置されたダイバーシチアンテナのダイバーシチ効果を定量的に比較評価することができる。
通信の伝送方式により決定されるホワイトガウスノイズ環境下での信号対雑音比と平均パケット誤り率の固有の関係を表す関数をPER(γ)、確率密度関数で表した信号対雑音比の空間分布を
とした場合、アンテナのダイバーシチ効果として、アンテナの位置における平均パケット誤り率
を以下の式により算出する。
反射波の中心角度を
とした場合、受信点における到来波角度プロファイルを以下の式により算出する到来波角度プロファイル算出手段と、を有することを特徴とする。
まず、図1乃至図5により、受信性能の評価対象となるアンテナが使用される車車間通信の概要を説明する。図1は、車車間通信が行われる環境(車車間通信環境)の一例として市街地交差点を示した概念図であり、図2は、市街地交差点で車車間通信を行った場合の電波の伝搬経路を示す斜視図であり、図3は、市街地交差点における車車間通信のレイトレースシミュレーション結果に基づき導出した、受信点における到来波電力の角度分布特性を示す線図であり、図4は、本発明者らによりモデル化された車車間通信環境における到来波角度プロファイルを示す線図であり、図5は、モデル化した到来波角度プロファイルとレイトレースシミュレーション結果に基づく到来波角度プロファイルとを比較した線図である。
この車車間通信では、交差点の形状や、交差点周辺において通信に影響を及ぼし得る各種要素(建造物、車両、歩行者等)等の周辺環境、あるいは、車車間通信を行う車両の移動により、通信環境が変化し、これに伴い、通信品質(具体的には、例えば、他車両から送信されたパケットを自車両が受信できる確率)が時々刻々と変化するが、どのような通信環境においても、車車間通信を利用するサービスに必要な通信品質及び通信エリアを達成することが求められる。従って、車車間通信を行うために車両に搭載するアンテナには、高い受信性能が要求される。
図3に示すように、モデル化した市街地交差点で車車間通信を行った場合の受信点における到来波角度プロファイルは、約2.8radと約4.2radを中心とする2つのピークを持っている。図2に示した電波の伝搬経路を考慮すると、到来波角度プロファイルにおける2つのピークの内、約2.8radのピークは回折波に起因し、約4.2radのピークは反射波に起因するものであると考えることができる。このような到来波角度プロファイルは、従来知られている到来波角度プロファイル、例えばセルラー方式の陸上移動通信における基地局側受信時の到来波角度プロファイル(ラプラス分布として扱われる)又は移動局側の到来波角度プロファイル(一様分布として扱われる)とは大きく異なるものであり、市街地交差点に代表される車車間通信環境に特有のものであると考えられる。
このように2つのラプラス分布の和としてモデル化した車車間通信環境における到来波角度プロファイルS(Φ)は、受信車両Rxのアンテナに到達する回折波及び反射波のそれぞれの受信電力ピークの中心角度、ピークの拡がり、及びピーク電力をパラメータとして、以下の式(1)及び(2)により算出することができる。
は回折波の中心角度であり、
は反射波の中心角度である。
上記式(1)、(2)における各パラメータを、車車間通信が行われる市街地交差点の形状や、交差点周辺において通信に影響を及ぼし得る各種要素(建造物、車両、歩行者等)等の周辺環境、車車間通信を行う送信車両Tx及び受信車両Rxの位置等に基づいて適宜決定することにより、実験やシミュレーションを実施しなくても、車車間通信環境に特有の到来波角度プロファイルを精度よく推定することができる。
とすることにより、図5に示すように、モデル化した到来波角度プロファイル(図5において実線により示す)を、レイトレースシミュレーション結果に基づく到来波角度プロファイルに良く一致させることができる。
そこで、本発明者らは、上述のようにモデル化した到来波角度プロファイルを用いることによって車車間通信環境における空間ダイバーシチの効果を定量的に評価することができるアンテナ性能評価装置を想到した。
本実施形態のアンテナ性能評価装置1は、車両に搭載された空間ダイバーシチ方式のアンテナの受信性能を定量的に評価する。図6に示すように、アンテナ性能評価装置1は、車車間通信環境においてアンテナに到達する回折波及び反射波のそれぞれの受信電力ピークの中心角度、ピークの拡がり、及びピーク電力をパラメータとして取得するパラメータ取得部2と、パラメータ取得部2により取得された各パラメータに基づき、アンテナの位置における到来波角度プロファイルを算出する到来波プロファイル算出部4と、到来波プロファイル算出部4により算出された到来波角度プロファイルに基づき、アンテナの設置領域における受信電力分布を算出する受信電力分布算出部6と、受信電力分布算出部6により算出された受信電力分布及びアンテナの設置領域内に設置されたアンテナの配置に基づき、アンテナの空間ダイバーシチの効果を算出するダイバーシチ効果算出部8とを有する。
これらの各構成要素は、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータにより構成される。
具体的には、到来波プロファイル算出部4は、ステップS1で取得したアンテナの配置に基づき、グローバル座標系の座標軸とアンテナ座標系の座標軸との成す角度θを特定し、グローバル座標系における到来波角度プロファイルSG(Φ)を、角度軸方向に沿って−θだけ平行移動させることにより、任意のアンテナ座標系における到来波角度プロファイルSA(Φ)を算出することができる。
これらの図8(a)、(b)に示すように、いずれのアンテナ配置の空間相関特性(図8において実線で示す)も、レイトレースシミュレーション結果に基づく空間相関特性(図8において点線で示す)と良く一致している。即ち、本実施形態では、2つのラプラス分布の和としてモデル化した到来波角度プロファイルを用いることにより、レイトレースシミュレーションや実験を行った場合と同等の精度で、車車間通信環境における任意の配置のダイバーシチアンテナの空間相関特性を導出することができる。
なお、到来波角度プロファイルをラプラス分布や一様分布として扱った場合において、既知の方法により空間相関特性を算出した場合、図8に示すように、レイトレースシミュレーション結果に基づく空間相関特性に一致しない(図8においては、ラプラス分布及び一様分布に基づく空間相関特性を、それぞれ、破線及び一点鎖線により示す)。
なお、受信電力分布を、従来知られているラプラス分布や一様分布による到来波角度プロファイルに基づき上記の式(4)により算出した結果(図10(c)、(d))は、受信電力分布をレイトレースシミュレーションにより取得した結果と一致しない
このステップS7において、ダイバーシチ効果算出部8は、受信車両のアンテナ位置における平均SNR(Signal to Noise Ratio)の関数として平均パケット誤り率(PER:Packet Error Ratio)を算出する(PER−SNR特性)。このPER−SNR特性により、車車間通信に要求されるPER(例えば1%以下)を達成するために必要となるSNRを、アンテナのダイバーシチ効果の定量的な指標として得ることができる。
右辺のPER(γ)はホワイトガウスノイズ環境下でのSNRとPERの固有の関係を表す関数であり、変調方式、パケット構成、誤り訂正方式等の通信機の伝送方式(本実施形態では、変調方式:16QAM、パケット長:100Byte、誤り訂正方式:畳み込み符号化(k=7,R=12))により決定される。また、
は、SNRの空間分布を確率密度関数で表したものであり、ステップS6で算出した受信電力分布とステップS1で取得したアンテナの配置に基づいて算出される。例えば、ダイバーシチ効果算出部8は、ステップS6において受信電力分布を算出したアンテナ設置領域内の各点の中から、アンテナ座標系の横軸方向においてステップS1で取得したアンテナ間の距離だけ離れた2点を、ダイバーシチアンテナを構成する2本のアンテナとして選択する。そして、これらの2点のうち受信電力が高い方を、ダイバーシチアンテナの受信電力として決定する(選択合成方式)。同様に、アンテナ設置領域の中から選択可能な2点の組み合わせの全てについて、選択合成方式によるダイバーシチアンテナの受信電力を求め、それらの受信電力群からSNR及び平均SNRを算出し、
を算出する。あるいは、アンテナ設置領域の中から選択可能な2点の組み合わせの全てについて、最大比合成方式によるダイバーシチアンテナの受信電力を求め、それらの受信電力群からSNR及び平均SNRを算出し、
を算出してもよい。
ステップS7の後、アンテナ性能評価装置1はアンテナ性能評価処理を終了する。
上述した実施形態では、パラメータ取得部2が、アンテナの前方にある構造物のエッジで回折されてアンテナに到達する回折波と、アンテナの側方にある構造物の側面で反射されてアンテナに到達する反射波との、それぞれのピーク電力、角度拡がり、及び中心角度をパラメータとして取得すると説明したが、パラメータ取得部2は、別の経路を経由して異なる角度からアンテナに到達する2つの回折波のそれぞれのピーク電力、角度拡がり、及び中心角度をパラメータとして取得してもよく、あるいは、別の経路を経由して異なる角度からアンテナに到達する2つの反射波のそれぞれのピーク電力、角度拡がり、及び中心角度をパラメータとして取得してもよい。これらの何れの場合においても、到来波角度プロファイル算出部は、取得されたパラメータを用いて、上記式(1)及び(2)によりアンテナの位置における到来波角度プロファイルを算出することができる。
2 パラメータ取得部
4 到来波プロファイル算出部
6 受信電力分布算出部
8 ダイバーシチ効果算出部
Tx 送信車両
Rx 受信車両
Claims (7)
- 車両に搭載された空間ダイバーシチ方式のアンテナの受信性能を定量的に評価するアンテナ性能評価装置であって、
上記アンテナの位置における到来波角度プロファイルを取得する到来波角度プロファイル取得手段と、
上記到来波角度プロファイルに基づき、上記アンテナの設置領域における受信電力分布を算出する受信電力分布算出手段と、
上記受信電力分布と、上記設置領域内に設置された上記アンテナの配置とに基づき、そのアンテナのダイバーシチ効果を算出するダイバーシチ効果算出手段とを有し、
上記受信電力分布算出手段は、上記アンテナの位置における到来波角度をΦ、上記到来波の波長をλ、上記設置領域内の座標(x,y)における複素振幅をH(x,y)、上記設置領域内の基準位置における複素振幅をA0、上記アンテナの位置における到来波角度プロファイルをS(Φ)とした場合、以下の式により上記受信電力分布を算出することを特徴とするアンテナ性能評価装置。
- 上記到来波角度プロファイル取得手段は、
上記アンテナの前方にある構造物のエッジで回折され、又は、上記アンテナの側方にある構造物の側面で反射されて上記アンテナに到達する第1の到来波と、上記アンテナの前方にある構造物のエッジで回折され、又は、上記アンテナの側方にある構造物の側面で反射されて、上記第1の到来波とは異なる経路で上記アンテナに到達する第2の到来波との、それぞれのピーク電力、角度拡がり、及び中心角度をパラメータとして取得するパラメータ取得手段と、
上記第1の到来波のピーク電力をA1、上記第2の到来波のピーク電力をA2、上記第1の到来波のピークの角度拡がりをσ1、上記第2の到来波のピークの角度拡がりをσ2、上記第1の到来波の中心角度を
上記第2の到来波の中心角度を
とした場合、上記アンテナの位置における到来波角度プロファイルS(Φ)を以下の式により算出する到来波角度プロファイル算出手段と、を備える請求項1に記載のアンテナ性能評価装置。
- 上記第1の到来波は、上記アンテナの前方にある構造物のエッジで回折されて上記アンテナに到達する回折波であり、上記第2の到来波は、上記アンテナの側方にある構造物の側面で反射されて上記アンテナに到達する反射波である、請求項2に記載のアンテナ性能評価装置。
- 上記パラメータ取得手段は、上記アンテナの位置を原点とするグローバル座標系により表された上記パラメータを取得し、
上記到来波角度プロファイル算出手段は、上記グローバル座標系により表された上記パラメータに基づいて算出した到来波角度プロファイルを、上記アンテナの配置方向に応じて座標軸の方向が決定されたアンテナ座標系による到来波角度プロファイルに変換し、
上記受信電力分布算出手段は、上記アンテナ座標系による到来波角度プロファイルに基づき、上記アンテナの設置領域における受信電力分布を算出する、請求項2又は3に記載のアンテナ性能評価装置。 - 車車間通信環境における受信点の到来波角度プロファイルを推定する到来波角度プロファイル推定装置であって、
上記受信点の前方にある構造物のエッジで回折され、又は、上記受信点の側方にある構造物の側面で反射されて上記受信点に到達する第1の到来波と、上記受信点の前方にある構造物のエッジで回折され、又は、上記受信点の側方にある構造物の側面で反射されて、上記第1の到来波とは異なる経路で上記受信点に到達する第2の到来波との、それぞれのピーク電力、角度拡がり、及び中心角度をパラメータとして取得するパラメータ取得手段と、
上記第1の到来波のピーク電力をA1、上記第2の到来波のピーク電力をA2、上記第1の到来波のピークの角度拡がりをσ1、上記第2の到来波のピークの角度拡がりをσ2、上記第1の到来波の中心角度を
上記第2の到来波の中心角度を
とした場合、上記受信点における到来波角度プロファイルを以下の式により算出する到来波角度プロファイル算出手段と、を有することを特徴とする到来波角度プロファイル推定装置。
- 上記第1の到来波は、上記受信点の前方にある構造物のエッジで回折されて上記受信点に到達する回折波であり、上記第2の到来波は、上記受信点の側方にある構造物の側面で反射されて上記受信点に到達する反射波である、請求項6に記載の到来波角度プロファイル推定装置。
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