JP6355658B2 - 溶液製膜方法及び装置 - Google Patents

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Description

本発明は、溶液製膜方法及び装置に関する。
ポリマーフィルム(以下、フィルムと称する)を製造する方法のひとつとして溶液製膜方法がある。溶液製膜方法は、ポリマーを溶媒に溶解したポリマー溶液からフィルムをつくる方法である。溶液製膜方法で長尺のフィルムを製造する場合には、走行する支持体へポリマー溶液を流延ダイから連続的に流出して流延膜を形成し、この流延膜を支持体から剥ぎ取って乾燥する。支持体として用いられるベルトは、環状に形成されており、複数のローラに掛け渡されて長手方向に走行する。これにより、ベルトは、ポリマー溶液が流延される流延位置と、流延膜が剥ぎ取られる剥取位置とを循環する。また、ベルトの素材としては、例えばオーステナイト系のステンレス鋼が用いられている。
フィルムには平滑性、すなわちフィルム面が平滑であることが求められる。ベルトのポリマー溶液が流延される流延面はフィルムの平滑性に影響を与えるので、できるだけ平滑にされる。また、ベルトの素材にオーステナイト系のステンレス鋼を用いた場合には、マルテンサイト変態によりフィルムの平滑性を損なうことがある。そこで、例えば特許文献1は、前述の流延面の凹凸の程度を特定したベルトを用いる溶液製膜方法及び装置を提案しており、これによりマルテンサイト変態が抑えられている。
ところで、長尺のフィルムを製造する場合の溶液製膜方法においては、フィルムに例えば光学機能等の特定の機能を発現させるために、製膜過程のフィルムに対して幅方向での延伸処理を施すことがある。また、液晶ディスプレイ等の表示装置の薄手化に伴い、表示装置に用いるフィルムに対してもさらなる薄手化が求められている。
特開2007−083451号公報
しかしながら特許文献1の方法によっても、場合によっては長手方向において周期的なへこみ部がフィルムに認められることがある。このへこみ部は、50μm以下の厚みのフィルムを製造する場合において、製膜過程における幅方向での延伸処理を経ることで認められるようになる。50μm以下の厚みのフィルムを製造する場合であっても、製造過程における幅方向での延伸処理前のフィルムや、幅方向での延伸処理を経ることなく製造されたフィルムには認められない。また、50μmよりも厚いフィルムを製造する場合にも認められない。このへこみ部は、長さが40mm以上50mm以下程度、幅が10mm以上20mm以下程度という非常に小さな細長い溝が、フィルムの長手方向と交差する方向に複数並んだものであり、個々の溝の長手方向はフィルムの長手方向に概ね一致している。
そこで、本発明は、幅方向での延伸処理を施して50μm以下という薄い長尺のフィルムを製造する場合に、長手方向において周期的な上記のへこみ部が抑制される溶液製膜方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明の溶液製膜方法は、金属製の長尺のベルト材の一端と他端との溶接により環状に形成され、一対のローラに巻き掛けられて長手方向へ走行するベルト上に、ポリマーが溶媒に溶解したポリマー溶液を流延ダイから連続的に流出することにより流延膜を形成する流延工程と、流延膜をベルトから剥がすことによりフィルムを形成する剥離工程と、フィルムの各側部を保持した状態でフィルムを長手方向に搬送し、搬送中のフィルムを加熱により乾燥しながら、幅方向に延伸する延伸工程とを有し、製造するフィルムは50μm以下の厚みであり、ベルトの流延膜が形成される流延面の温度は一対のローラの少なくとも一方の周面温度の調節により調整され、ベルトの裏面における溶接部は、3μm以上30μm以下の範囲内の高さにされており、ベルトの裏面における深さが3μm以上300μm以下の範囲内の窪みが存在した場合には、窪みの表面の最大傾斜度が0.1μm/mm以上1.5μm/mm以下の範囲内であることを特徴として構成されている。
本発明の溶液製膜装置は、ポリマーが溶媒に溶解したポリマー溶液を連続的に流出する流延ダイと、環状に形成され、長手方向に走行することで流延ダイから流出したポリマー溶液により流延膜を形成し、裏面における溶接部が3μm以上30μm以下の範囲内の高さにされている金属製のベルトと、ベルトが巻き掛けられて少なくとも一方が周方向に回転することによりベルトを走行させ、少なくとも一方の周面温度の調節により、ベルトの流延膜が形成される流延面の温度を調整する一対のローラと、ベルトから流延膜を剥がして形成されたフィルムの各側部を保持した状態でフィルムを長手方向へ搬送し、搬送中のフィルムを加熱により乾燥しながら、幅方向に延伸するテンタとを備え、製造するフィルムは50μm以下の厚みであり、ベルトの裏面における深さが3μm以上300μm以下の範囲内の窪みが存在した場合には、窪みの表面の最大傾斜度が0.1μm/mm以上1.5μm/mm以下の範囲内であることを特徴として構成されている。
上記窪みは円錐形状であることが好ましい。上記最大傾斜度は、上記窪みの表面における接線のうち上記裏面に対する角度θ(ただし、0°≦θ≦90°)が最も大きい接線を斜辺とし、かつ、上記裏面上の直線と、この裏面上の直線に下した上記接線からの垂線とで形成される直角三角形において、上記垂線の長さをL1μmとし、上記裏面上の直線の長さをL2mmとするときに、L1/L2で算出する傾斜度であることが好ましい。
ベルトの流延面における溶接部は非溶接部に対して0.1℃以上1.0℃以下の範囲内の温度差とされていることが好ましい。フィルムを5%以上40%以下の範囲内の延伸倍率で延伸する場合に、上記の溶液製膜方法及び溶液製膜装置は特に有効である。
本発明によれば、長手方向において周期的な上記のへこみ部の発生が抑制され、幅方向での延伸処理が施された50μm以下という薄い長尺のフィルムを製造することができる。
溶液製膜装置の概略図である。 ベルトの平面図である。 図2の(III)−(III)線に沿うベルトの断面図である。 ベルトの流延面における温度差の求め方の説明図である。 ベルトの裏面の窪みの説明図である。 ベルトの裏面の窪みの説明図である。 テンタの概略図である。
図1に示す溶液製膜装置10は、ドープ11からフィルム12を連続的に製造するためのものである。フィルム12は、厚みが50μm以下のものであり、本実施形態では厚みが10μm以上50μm以下の範囲内としている。ドープ11は、ポリマーが溶媒に溶解したポリマー溶液である。本実施形態では、ポリマーとしてセルローストリアセテート(TAC,triacetylcellulose)、溶媒としてジクロロメタンとメタノールとの混合物を用いているが、ポリマー及び溶媒はこれらに限定されない。本発明で用いることができるポリマー及び溶媒の詳細については後述する。ドープ11には、可塑剤、紫外線吸収剤、レタデーション制御剤等の各種添加剤や、フィルム同士の貼り付きを防止するためのマット剤が含まれていてもよい。
溶液製膜装置10は、流延ユニット15と、テンタ16と、ローラ乾燥機17と、巻取機18とを、上流側から順に備える。流延ユニット15は、環状に形成されたベルト21と、ベルト21を周面で支持して長手方向Z1へ走行させる一対のローラ22,23と、流延ダイ24と、剥取ローラ25とを備える。なお、フィルム12の長手方向にも符号Z1を付す。一対のローラ22,23の少なくとも一方は周方向に回転し、この回転により、巻き掛けられたベルト21は長手方向Z1へ連続走行する。本実施形態においては、ローラ22とローラ23との両方を周方向に駆動回転させている。ベルト21の詳細については別の図面を用いて後述する。流延ダイ24は、この例ではローラ22の上方に配しているが、ローラ22とローラ23との間のベルト21の上方に配してもよい。
流延ダイ24は、供給されてきたドープ11を、ベルト21に対向する流出口24aから連続的に流出する。走行中のベルト21上にドープ11を連続的に流出することにより、ドープ11はベルト21上で流延され、ベルト21上に流延膜26が形成される。図1においては、ドープ11がベルト21に接触して流延膜26が形成され始める位置(以下、流延位置と称する)に、符号PCを付す。
ローラ22,23は、周面温度を調節する温度コントローラ22a,23a(図4参照)を備える。周面温度を調節したローラ22,23により、ベルト21を介して流延膜26は温度を調整される。
本実施形態は、乾燥ゲル化方式により流延膜26を固めている。乾燥ゲル化方式は、流延膜26を加熱して乾燥を促進することにより固める(ゲル化する)ものである。ローラ22からローラ23へ向かうベルト21に対向して送風部27、ローラ23からローラ22へ向かうベルト21に対向して送風部28を設けることが、流延膜26の乾燥をより促進する点で好ましく、本実施形態でもそのようにしている。送風部27,28は、ベルト21に対向する対向面に複数のノズル(図示無し)をそれぞれ有し、これらのノズルから温度が調節された空気を送り出す。
流延ダイ24からベルト21に至るドープ11、いわゆるビードに関して、ベルト21の長手方向Z1における上流には、減圧チャンバ(図示無し)が設けられてもよい。この減圧チャンバは、流出したドープ11の上流側エリアの雰囲気を吸引してこのエリアを減圧する。この減圧により、流出口24aからベルト21に向かうドープ11の形状が安定化される。
流延膜26を、テンタ16への搬送が可能な程度にまでベルト21上で固めてから、溶媒を含む状態でベルト21から剥がす。剥取ローラ25は、流延膜26をベルト21から連続的に剥ぎ取るためのものである。剥取ローラ25は、ベルト21から剥ぎ取ることで形成されたフィルム12を例えば下方から支持し、流延膜26がベルト21から剥がれる剥取位置PPを一定に保持する。剥ぎ取る手法は、フィルム12を下流側へ引っ張る手法や、剥取ローラ25を周方向に回転させる手法等のいずれでもよい。
ベルト21からの剥ぎ取りは、乾燥ゲル化方式の場合には、例えば、流延膜26の溶媒含有率が3質量%以上100質量%以下の範囲にある間に行われる。なお、本明細書においては、溶媒含有率(単位;%)は乾量基準の値であり、具体的には、溶媒含有率を求めるべき測定対象のフィルム12の質量をX、このフィルム12を完全に乾燥した後の質量をYとするときに、{(X−Y)/Y}×100で求める百分率である。なお、「完全に乾燥」とは溶媒の残留量が厳格に「0」である必要はなく、例えば本実施形態では、測定対象のフィルム12に対して、120℃以上、相対湿度10%以下の恒温槽内で3時間以上の乾燥処理を行った後の質量をYとしている。
以上のように流延ユニット15は、ドープ11からフィルム12を形成する。ベルト21は流延位置PCと剥取位置PPとを循環して走行することで、ドープ11の流延と流延膜26の剥ぎ取りとが繰り返し行われる。
流延ユニット15とテンタ16との間のフィルム12の搬送路には、フィルム12の乾燥をすすめるための送風機(図示無し)を配してもよい。剥ぎ取られて形成されたフィルム12は、テンタ16に案内される。テンタ16は、フィルム12を、長手方向Z1と直交する幅方向Z2に延伸する延伸機としての機能と、フィルム12を加熱して乾燥する第1の乾燥機としての機能とをもつ。詳細は別の図面を用いて後述するが、テンタ16では、フィルム12の各側部をそれぞれクリップ31で把持し、クリップ31をフィルム12の長手方向Z1に移動しながら、対向するクリップの間隔(以下、対向クリップ間隔という)を大きくすることによって、フィルム12を長手方向Z1に搬送しながら幅方向Z2に延伸する。
テンタ16は、エア供給部32と送風部33とを備える。エア供給部32は、各種温度に調節した乾燥した空気を送風部33に供給し、この送風部33からテンタ16内のフィルム12に空気を吹き付けて乾燥させる。また、この空気の吹き付けにより、テンタ16の後述の各区間におけるフィルム12の加熱や冷却を行っており、この加熱や冷却によりフィルム12の温度が調節される。
ローラ乾燥機17は、第2の乾燥機であり、複数のローラ34と空調機(図示無し)とを備える。各ローラ34はフィルム12を周面で支持する。フィルム12はローラ34に巻き掛けられて搬送される。空調機は、ローラ乾燥機17の内部の温度や湿度などを調節する。巻取機18は、フィルム12をロール状に巻き取るためのものである。
図2を参照しながらベルト21について説明する。ベルト21は、金属製であり、本実施形態ではオーステナイト系のステンレス鋼から形成されている。ベルト21は、圧延により長尺のベルト材とされた金属板の長手方向の一端と他端とを突き合わせて溶接し、この溶接部を研磨することでつくられる。溶接部21wは、長手方向Z1と交差する方向に延びている。溶接部21wは、ベルト21の幅方向Z2に延びていてもよいし、本実施形態のように幅方向Z2と交差する方向に延びていてもよい。なお、流延膜26とフィルム12との幅方向は、ベルト21の幅方向と一致するので、流延膜26とフィルム12との幅方向にも符号Z2を付す。流延膜26が形成されるベルト面を流延面21aと称し、流延面21aと反対側のベルト面を裏面21bと称する。溶接部21wは、流延面21aに加えて、後述のように裏面21bも研磨処理されている。
溶接部21wは、ベルト材の一端と他端とを突き合わせて溶接する場合に、加熱により溶融された領域であり、目視で特定することができる。なお、ベルト21の溶接部21wを除く領域を、以下、非溶接部21nと称する。本実施形態のベルト21の厚みT21(図3参照)は1.5mmとされている。ただしベルト21の厚みT21はこれに限定されず、0.5mm以上2.5mm以下の範囲内であるときに本発明は特に効果が大きい。ベルト21は、できるだけ均一な厚みT21になるようにつくられる。しかし、50μm以下の厚みのフィルム12を、例えばテンタ16により、幅方向で延伸して製造する場合において、フィルムに前述のへこみ部が認められる場合のベルトは、裏面において溶接部が盛り上がって凸になっており、この部分のベルトの厚みは非溶接部での厚みよりも厚くなっている。そこで、ベルト21の裏面21bは、溶接部21wの高さHが3μm以上30μm以下の範囲内とされている。裏面21bにおける溶接部21wの符号Hで示す高さを、以下、溶接部高さと称する。溶接部高さHが30μm以下である場合には、30μmよりも大きい場合に比べて、ローラ22,23から流延面21a全体への伝熱が一様になり、後述のように、流延面21aは非溶接部21nと溶接部21wとの温度差が小さくなる。また、溶接部高さHを3μm未満にすることは、研磨処理という加工の精度上難しい。溶接部高さHは、3μm以上20μm以下の範囲内であることがより好ましく、3μm以上10μm以下の範囲内であることがさらに好ましい。
溶接部高さHを上記範囲内にするためには、溶接部21wの裏面21bを研磨するとよい。本実施形態では、研磨に砥石を用いている。溶接部高さHは、裏面21bにおける非溶接部21nからの突出量であり、例えばレーザー変位計により求めることができ、本実施形態では(株)キーエンス製のLJ−V7080を用いている。レーザー変位計を用いて溶接部高さHを求める場合には、裏面21bの溶接部21wの幅方向(図3における水平方向)での中央を中心にして200mmの範囲について例えば連続的に裏面21bにおける非溶接部21nからの突出量を測定し、測定値の中の最大値を溶接部高さHとするとよい。
流延面21aにおける溶接部21wは非溶接部21nに対して0.1℃以上1.0℃以下の範囲内の温度差とされることが好ましい。すなわち、流延面21aにおいて、溶接部21wの温度をTwとし、非溶接部21nの温度をTnとするときに、|Tw−Tn|で求める温度差は0.1℃以上1.0℃以下の範囲内であることが好ましい。この温度差|Tw−Tn|は、0.1℃以上0.5以下の範囲内であることがより好ましく、0.1℃以上0.3℃以下の範囲内であることがさらに好ましい。温度差|Tw−Tn|の求め方の詳細は、別の図面を用いて後述する。
前述の温度差|Tw−Tn|の求め方について図4を参照しながら説明する。温度差|Tw−Tn|は、例えば市販の感温液晶シートを用いて求めることができる。感温液晶シートは、周知のように、温度によって色が変わる液晶をマイクロカプセル化し、このマイクロカプセルを、紙やポリマー等から形成されたフィルムに印刷などによって担持させたシートである。本実施形態では、感温液晶シートとして、日本マイクロカプセル社製のRW−25を用いている。温度差|Tw−Tn|は、感温液晶シートを用いて以下の方法で求めることができる。
まず、走行を開始する前のベルト21の流延面21aに感温液晶シート38を貼り付ける。本実施形態では、3枚の感温液晶シート38を貼り付けているが、この枚数に限定されない。各感温液晶シート38は、溶接部21wが感温液晶シート38のシート面における概ね中央を通るように貼り付ける。また、ローラ23の周面に対向して、カメラを配する。本実施形態では、ローラ23とベルト21とが接触している領域の上流端から、ローラ23の周の長さの1/8だけ下流側の位置に、カメラをベルト21に対向させて配置した。温度コントローラ22aによりローラ22の周面温度を19℃、温度コントローラ23aによりローラ23の周面温度を32℃にして、ベルト21を35m/分で走行させる。ベルト21の走行により、感温液晶シート38を、5回ローラ23上を通過させる。5回目の通過の際に、カメラで感温液晶シート38を撮影する。本実施形態では、3枚の感温液晶シート38をそれぞれ撮影しているが、これらから選ばれる1枚あるいは2枚を撮影してもよい。例えば、感温液晶シート38のうち長手方向Z1における最も上流側の1枚のみを撮影してもよい。撮影された感温液晶シート38の色から、流延面21aにおける溶接部21wの温度Twと非溶接部21nの温度Tnとを求め、その差を算出する。算出される値の絶対値が温度差|Tw−Tn|である。
図5に示すようにベルト21の裏面21bに、3μm以上300μm以下の範囲内の深さDをもつ窪み61が認められる場合には、窪み61の表面61aの傾斜度のうち最大の傾斜度(以下、最大傾斜度と称する)を0.1μm/mm以上1.5μm/mm以下の範囲内とすることが好ましく、本実施形態では例えば1.0μm/mmとしている。傾斜度は、図5に示すように、窪み61の表面61aにおける接線LCを描いたときに、接線LCを斜辺とし、この斜辺と、裏面21b上の直線と、この裏面21b上の直線に下した接線LCからの垂線(厚み方向Z3に伸びた直線)とからなる直角三角形において、垂線の長さL1(単位はμm)を、裏面21b上の直線の長さL2(単位はmm)で除した値であり、すなわちL1/L2で算出される値(単位はμm/mm)である。したがって、窪み61の表面における接線のうち、裏面21bに対する角度(ただし、この角度をθとするときに、0°≦θ≦90°とする)が最も大きい接線を斜辺としてもつ直角三角形において求めた傾斜度が最大傾斜度である。最大傾斜度は0.2μm/mm以上1.2μm/mm以下の範囲内とすることがより好ましく、0.3μm/mm以上1.0μm/mm以下の範囲内とすることがさらに好ましい。なお、傾斜度は、裏面21bに沿って区切った各区間内において、平均値としてもとめてもよく、さらに具体的な求め方は後述する。
窪み61の最大傾斜度を上記範囲内にする場合の例を以下に説明する。ベルト21には、溶接等による部分的な熱処理による変形が生じたり、流涎面21aに窪み状の欠陥が生じることがある。こうした変形や窪み状の欠陥を平らにするために、ベルト21の裏面21bに、パンチング、研削、研磨を行い、その後、流延面21a側の盛り上がった部分を削って平坦にする場合がある。パンチングは、ポンチと呼ばれる叩き部材で叩く処理であり、ベルト21の裏面21bを叩いて行う処理なのでバックパンチと呼ばれる。流延面21aを平坦にするこのような処理によって、裏面21bには、図6に示すような窪み62が残ることがある。この窪み62は、例えば、ポンチの先端の跡である急峻な傾斜の表面と、その周辺が研削による緩やかな傾斜の表面とを有する。この窪み62の最大傾斜度が1.5μm/mmよりも大きい場合には、窪み62の表面62aをさらに研削する、あるいは、ベルト21を構成する金属と同じ金属を用いて窪み62を溶接により埋め、埋めて形成された肉盛り部分を研削するなどして、最大傾斜度が0.1μm/mm以上1.5μm/mm以下である図5に示す窪み61にする。なお、研削の代わりに研磨してもよいし、研削に加えて研磨してもよい。本実施形態では、研磨に砥石を用いている。図5に示す窪み61の深さは、300μm以下であれば図6に示す窪み62の深さより深くてもよい。なお、図5に示す窪み61は、概ね円錐形状であり、すなわち概ね三角形の断面形状をもつ。この窪み61の裏面21bにおける開口の径は、図6に示す窪み62の裏面21bにおける開口の径より大きくてもよく、50mm以上600mm以下の範囲内であることが好ましい。
窪み61の形状は、例えばレーザー変位計により求めることができ、本実施形態では(株)キーエンス製のLJ−V7080を用いている。最大傾斜度を求める方法として、例えば、以下のような方法がある。まず、レーザー変位計により窪み61の最深部を通るようにベルト21の例えば幅方向Z2に沿って窪み61の断面形状を測定する。その測定した断面形状について、横軸を測定した例えば幅方向Z2での距離、縦軸を深さDとしてグラフ化する。窪み61の最深部を起点に、幅方向Z2において5mm以上20mm以下の程度の一定幅の区間毎に、傾斜度としての傾きを複数求めて、それらの平均値としての平均傾きを求める。各区間の平均傾きを窪み61の裏面21bにおける開口端である端部まで順次求める。これらの平均傾きの最大値を最大傾斜度とする。なお、平均傾きの求め方としては、上記区間毎に求めた実測値を用いる、上記区間内の曲線の傾き(微分値)を平均化する等の方法がある。最大傾斜度を求める際には、各計測エラーを除くために、複数の平均傾きの値のうち、最大値と最小値とを除くなどの方法も適用できる。
図7に示すように、テンタ16は、上述のクリップ31、エア供給部32、送風部33と、レール41,42と、チャンバ43とを有する。チャンバ43内では、搬送路は、上流側から順番に、予熱工程のための予熱区間45、延伸工程のための延伸区間46、緩和工程のための緩和区間47、冷却工程のための冷却区間48に区分されている。予熱区間45、延伸区間46、緩和区間47、冷却区間48は、送風部33(図1参照)から送り出される空気の温度と、レール41,42の設置態様とによって空間的に区分されて形成されたものであり、仕切り等による区分によって形成されたものではない。また、予熱区間45よりも上流に把持開始位置、冷却区間48よりも下流側に把持解除位置をそれぞれ設定してある。
レール41,42は、フィルム12の搬送路の両側に配されている。レール41,42には、それぞれ複数のクリップ31が設けられている。各クリップ31は、対応するレール41,42に沿って移動自在であり、その移動方向はレール41,42によって規定される。各レール41,42は、クリップ31を把持開始位置から把持解除位置に移動する往路部と、把持解除位置にまで移動したクリップ31を把持開始位置に戻す復路部とを有した環状に設けられている。クリップ31は、一定の間隔で各レール41,42の全周にあるが、図7では一部のクリップ31のみを描いてある。なお、本実施形態ではフィルム12の側部を保持する保持部材としてクリップ31を用いているが、保持部材はこれに限定されない。例えば、フィルムの側部に複数のピンを突き刺すことでフィルム12を保持するピンプレートを、クリップ31に代えて用いてもよい。
レール41,42には、それぞれ複数のクリップ31を所定の間隔で取り付けた環状のチェーン(図示無し)がレールに沿って移動自在に設けられている。チェーンは、把持開始位置よりも上流側に配されるターンホイール51と、把持解除位置よりも下流側に配されるスプロケット52に掛けられている。スプロケット52が駆動部(図示無し)によって回転することにより、チェーンがレール41,42に沿って循環移動する。このチェーンの移動により各クリップ31がレール41,42に沿って一定の速度で移動する。なお、以下では、往路部、復路部を特に明示しない場合は、レール41,42として往路部について説明する。
把持開始位置には、クリップ31にフィルム12の側端の把持を開始させる把持開始部材(図示無し)が設けられている。また、把持解除位置には、クリップ31にフィルム12の側部の把持を解除させる把持解除部材(図示無し)が設けられている。これにより、フィルム12は、各側部が把持開始位置でクリップ31に把持され、クリップ31の移動により長手方向Z1に搬送されて、予熱区間45、延伸区間46、緩和区間47、冷却区間48を順次通過する。予熱区間45、延伸区間46、緩和区間47、冷却区間48を通過する間にフィルム12は区間ごとの処理が施され、把持解除位置でクリップ31の把持が解除される。
把持開始位置から延伸区間46に至るまでは、レール41,42は、長手方向Z1と平行で、互いの間隔(以下、レール間隔という)を一定にしてある。これにより、対向したレール41上のクリップ31とレール42上のクリップ31との対向クリップ間隔を一定にした状態で、クリップ31を長手方向Z1に移動する。
予熱区間45では、延伸される前のフィルム12を加熱(以下、予熱という)する。したがって、予熱区間45ではフィルム12は、延伸しない状態で予熱される。予熱は、エア供給部32からの加熱された空気により行う。この空気の温度は、25℃以上120℃以下の範囲とすることが好ましい。
延伸区間46では、レール41,42は直線に配されているが、長手方向Z1との間で延伸角度θをなすように外向きに角度を付けて配してあり、下流に向かってレール間隔が次第に広くなる。これにより、クリップ31の移動方向を長手方向Z1に対して延伸角度θだけ外側に向け、クリップ31の長手方向Z1の移動にともなって対向クリップ間隔を漸増しフィルム12を幅方向Z2に延伸する。この延伸区間46では、延伸前の幅W1のフィルム12を幅W2にまで拡げる。なお、予熱区間45では長手方向Z1に対してレール41,42が平行であるから、延伸角度θは、予熱区間45に対する延伸区間46におけるクリップ31の移動方向の増分の角度である。延伸倍率α(単位は%)は、α=(W2/W1)×100によって求められ、例えば目標とする光学特性に基づいて設定される。延伸倍率αが大きい場合ほどへこみ部は現れやすく、延伸倍率αが5%以上40%以下の範囲内である場合に、特に顕著な効果が得られる。
延伸区間46では、エア供給部32からの加熱された空気によりフィルム12を加熱する。延伸区間46におけるフィルム12の温度は、例えば目標とする光学特性に基づいて設定される。
本実施形態では、緩和区間47,冷却区間48は、予熱区間45と同様に、レール41,42が長手方向Z1に平行でありレール間隔を一定にしてある。したがって、これらの緩和区間47,冷却区間48では、対向クリップ間隔を一定にした状態でクリップ31が移動し、フィルム12は幅W2を維持して搬送される。緩和区間47では、フィルム12を加熱し、冷却区間48では、フィルム12を冷却する。なお、緩和区間47を設けなくてもよい。緩和区間47及び冷却区間48におけるフィルム12の温度は、エア供給部32からの空気の温度を調節することにより調整される。
上記構成の作用を説明する。ドープ11は流延ダイ24から連続的に流出されて、流延位置PCと剥取位置PPとを繰り返し循環して走行するベルト21上に流延膜26が形成される(流延工程)。ベルト21の流延面21aは、ローラ22,23によって温度を調整されているから、流延膜26はベルト21を介して温度が調整され、この温度調整と送風部27,28からの空気による乾燥促進とにより固まる。なお、乾燥ゲル化方式であるこの例では、流延膜26は、ベルト21を介する加熱と、送風部27,28からの空気による加熱とにより、乾燥がすすめられ、溶媒の蒸発により固まる。
ここで、裏面21bにおける溶接部高さHが大きいほど、裏面21bの溶接部21wのローラ22,23に対する接触圧が大きくなるので裏面21bの溶接部21wにおける上記接触圧と非溶接部21nにおける上記接触圧との差である接触圧差は大きくなる。この接触圧差が大きい場合ほど、ローラ22,23から流延面21aへの伝熱が不均等になるので流延面21aにおける温度差|Tw−Tn|は大きい。製造するフィルム12が薄いほど流延膜26も薄く形成され、製造するフィルム12の厚みが50μm以下の場合には、前述の固さの差が顕著である。このように固さの差が大きすぎる場合には、後に行うテンタ16での延伸で、固さの差に起因した応力のむらが生じてしまう。この応力のむらは、フィルム12の乾燥に伴う収縮のむらの原因になり、この収縮の程度が小さいフィルム部分が前述のへこみ部となる。そして、溶接部21w上の領域に対応するフィルム部分の方が、非溶接部21n上の領域に対応するフィルム部分に比べて、延伸によって生じる応力が小さいので、乾燥に伴う収縮の程度が小さくなる。つまり、このへこみ部は、流延膜の溶接部21w上の領域に対応するフィルム領域に発生したものであると考察される。なお、本実施形態のように乾燥ゲル化方式の場合には、ローラ22,23からの伝熱の不均等は、流延膜26における乾燥の程度の差につながり、流延膜26における溶接部21w上の領域での固さと非溶接部21n上の領域での固さとの差は、乾燥の程度の差に対応する。このような乾燥の程度の差は、冷却ゲル化方式による場合と比べて、テンタ16での延伸に起因する応力を、より不均一にさせる。冷却ゲル化方式は、流延膜を冷却して固めるものである。なお、ベルト21のローラ22,23との接触圧は、例えば、プレスケール(富士フイルム(株)製、LLLW)とプレスケール解析用システム(富士フイルム(株)製、FPD−9270)により求めることができ、本実施形態でもそうしている。
この点、本実施形態のベルト21の裏面21bは、溶接部高さHが3μm以上30μm以下の範囲と小さくされているので、流延面21aにおいては温度差|Tw−Tn|が小さい。温度差|Tw−Tn|が小さいことにより、流延膜26は、全域にわたり均等に乾燥され、50μm以下のフィルム12を製造する場合であっても、流延膜26は溶接部21w上の領域と非溶接部21n上の領域との乾燥の程度の差が小さく抑えられる。このため後に行うテンタ16では、流延膜26での溶接部21w上の領域に対応するフィルム12の領域は、非溶接部21n上の領域に対応するフィルム12の領域と概ね等しく延伸される。
流延面21aにおける温度差|Tw−Tn|は0.1℃以上1.0℃以下の範囲内とされているから、流延膜26は溶接部21w上の領域と非溶接部21n上の領域との乾燥の程度の差が極めて小さく抑えられる。
裏面21bにおける3μm以上300μm以下の範囲内の深さDをもつ窪み61は、最大傾斜度が0.1μm/mm以上1.5μm/mm以下の範囲内に小さく抑えられている。そのため、ベルト21に付与した高い張力(テンション)により、ベルト21の伸びと、一対のローラ22,23の周面からの圧力との少なくともいずれか一方により、ベルト21とローラ22,23とがより確実に接触する。これにより、ローラ22,23からベルト2への伝熱がよりベルト21全域にわたり均一化し、ベルト21の温度がより均一に制御される。その結果、図6に示す窪み62に起因するフィルム12の窪みの発生が抑制される。なお、窪み62による伝熱の不均一化に起因するこのフィルム12の窪みは、長手方向に走行する環状のベルト21の周回の周期に対応して現れるものであり、例えばテンタ16を用いて延伸をし、50μm以下の厚みのフィルム12に認められるものである。そして、この窪みは、フィルム面に略円形に開口したものである。
流延膜26は、剥取ローラ25によりベルト21から剥ぎ取られ、これによりフィルム12が形成される(剥離工程)。フィルム12はテンタ16に案内され、各側部がクリップ31により把持される。フィルム12は、クリップ31により側部を把持された状態で、予熱区間45、延伸区間46、緩和区間47、冷却区間48を順次通過するように長手方向Z1に搬送され、送風部33からの空気により乾燥を進められる。把持開始位置から延伸区間46に至るまでの間では、フィルム12は延伸されることなく搬送される。予熱区間45では、フィルム12は、延伸しない状態で予熱される(予熱工程)。この予熱により、延伸区間46での延伸が迅速に開始されるようになるとともに、その延伸の際にフィルム12に対して幅方向Z2でより均一な張力が付与されるようになる。延伸区間46では、フィルム12は、加熱により乾燥されながら、幅方向Z2に延伸され、延伸前の幅W1のフィルム12を幅W2にまで拡げる(延伸工程)。この延伸は、フィルム12を加熱した状態で行われる。緩和区間47,冷却区間48では、フィルム12は幅W2を維持して搬送される。緩和区間47では、フィルム12をその幅W2を一定にした状態で加熱することにより、延伸区間46での延伸で生じた歪みを緩和する(緩和工程)。冷却区間48では、フィルム12を冷却してフィルム12の分子を固定する(冷却工程)。
把持解除位置でクリップ31の把持が解除されたフィルム12は、ローラ乾燥機17で乾燥をさらにすすめられる。このように、フィルム12の乾燥工程は、テンタ16での予熱区間45と延伸区間46と緩和区間47とによる第1乾燥工程と、ローラ乾燥機17による第2乾燥工程とを含んでいる。ローラ乾燥機17により乾燥されたフィルム12は、巻取機18により、巻芯に巻き取られてロール状にされる。
フィルム12は、例えば光学フィルムとして利用することができる。光学フィルムとしては、例えば偏光板の保護フィルムや、位相差フィルムが挙げられる。上記実施形態は、1種のドープ11を用いて単層構造のフィルム12を製造する例であるが、製造するフィルムは複層構造であってもよい。複層構造のフィルムを製造する場合には、周知の共流延により、複数種類のドープを流延すればよい。
上記実施形態は、ポリマーとしてTACを用いた例であるが、TACに代えて、TACと異なる他のセルロースアシレートや、環状ポリオレフィン等としてもよい。セルロースアシレートについて、詳細を以下に説明する。
<セルロースアシレート>
セルロースアシレートは、セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、つまりアシル基の置換度(以下、アシル基置換度と称する)が下記式(1)〜(3)の全ての条件を満足するものが特に好ましい。なお、(1)〜(3)において、A及びBはともにアシル基置換度であり、Aにおけるアシル基はアセチル基であり、Bにおけるアシル基は炭素原子数が3〜22のものである。
2.4≦A+B≦3.0・・・(1)
0≦A≦3.0・・・(2)
0≦B≦2.9・・・(3)
セルロースを構成し、β−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、このようなセルロースの水酸基の一部または全部がエステル化されて、水酸基の水素が炭素数2以上のアシル基に置換されたポリマーである。なお、グルコース単位中のひとつの水酸基のエステル化が100%されていると置換度は1であるので、セルロースアシレートの場合には、2位、3位及び6位の水酸基がそれぞれ100%エステル化されていると置換度は3となる。
ここで、グルコース単位で2位のアシル基置換度をDS2、3位のアシル基置換度をDS3、6位のアシル基置換度をDS6として「DS2+DS3+DS6」で求められる全アシル基置換度は2.00〜3.00であることが好ましく、2.22〜2.90であることがより好ましく、2.40〜2.88であることがさらに好ましい。さらに、「DS6/(DS2+DS3+DS6)」は0.32以上であることが好ましく、0.322以上であることがより好ましく、0.324〜0.340であることがさらに好ましい。
アシル基は1種類だけでもよいし、2種類以上であってもよい。アシル基が2種類以上であるときには、そのひとつがアセチル基であることが好ましい。2位、3位、及び6位の水酸基の水素のアセチル基による置換度の総和をDSAとし、2位、3位、及び6位におけるアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとするとき、「DSA+DSB」の値は、2.2〜2.86であることが好ましく、2.40〜2.80であることが特に好ましい。DSBは1.50以上であることが好ましく、1.7以上であることが特に好ましい。そして、DSBは、その28%以上が6位水酸基の置換であることが好ましいが、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは31%以上、特に好ましくは32%以上が6位水酸基の置換であることが好ましい。また、セルロースアシレートの6位の「DSA+DSB」の値が0.75以上であることが好ましく、0.80以上であることがより好ましく、0.85以上であることが特に好ましい。以上のようなセルロースアシレートを用いることにより、溶液製膜に用いられるポリマー溶液をつくるために好ましい溶解性が得られる。
炭素数が2以上であるアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定されない。例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどがあり、これらは、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、プロピオニル基、ブタノイル基が特に好ましい。
ポリマーとしてセルロースアシレートを用いる場合には、ドープ11の溶媒としては、セルロースアシレートフィルムを溶液製膜で製造する場合のドープの溶媒として公知のものを用いることができる。例えば、ジクロロメタン、各種アルコール、各種ケトン等である。これらから選ばれる複数を混合して、この混合物を溶媒として用いてもよい。
以下、本発明の実施例と、本発明に対する比較例とを挙げる。
[実施例1]〜[実施例8]
実施例1〜8では、溶液製膜装置10によりフィルム12を製造した。各実施例の条件は、表1に示す。表1において、用いたベルト21の溶接部高さHは「溶接部高さH」欄に、流延面21aにおける温度差|Tw−Tn|は「温度差|Tw−Tn|」欄に、製造したフィルム12の厚みは「フィルムの厚み」欄に示す。また、ローラ22,23の各周面温度は「ローラ22の周面温度」欄と「ローラ23の周面温度」欄とに示す。
各フィルム12について、へこみ部の有無及び程度を評価した。評価は、各フィルム12からサンプリングしたサンプルに蛍光灯で光を照射し、目視で観察した。なお、サンプリングは、各フィルム12の全幅域とし、このサンプル内に溶接部21w上で形成された箇所が含まれるように行った。目視での観察は、まず、サンプルのフィルム面から1m離れた位置で行い、へこみ部が観察されなかった場合にはフィルム面から50cm離れた位置で行った。観察結果を以下の基準で評価した。Aは合格レベルであり、B,Cは不合格レベルである。評価結果は表1に示す。なお、下記のCと評価されたフィルムを、防眩性シートや偏光板保護フィルムに用いるために塗布液を塗布したり他のフィルムと貼り合わせた場合には、塗布液の塗布むらが生じたり、変形してしまうことがある。
A:フィルム面から50cm離れた位置で観察してへこみ部が認められない
B:フィルム面から50cm離れた位置で観察してへこみ部が認められる
C:フィルム面から1m離れた位置で観察してへこみ部が認められる
Figure 0006355658
[比較例1]
表1に示される溶接部高さHのベルトを備える溶液製膜装置により、フィルムを製造し、比較例1とした。この比較例の条件は表1に示す。また、得られたフィルムについて、実施例と同じ方法及び基準で評価した。評価結果は表1に示す。
なお、比較例1で得られたフィルムにはへこみ部があり、このへこみ部は、長手方向Z1に延びた細かい溝が長手方向Z1に交差する方向に複数ならんだものであることが確認された。溝は、長さ40mm以上50mm以下の範囲内、幅が10mm以上15mm以下の範囲内の細長いものであった。
[実施例9]〜[実施例16]
溶液製膜装置10によりフィルム12を製造した。各実施例の条件は、表2に示す。表2において、用いたベルト21の裏面21bにおける窪み61の深さDは「深さD」欄に、最大傾斜度は「最大傾斜度」欄に、流延面21aにおける温度差|Tw−Tn|は「温度差|Tw−Tn|」欄に、製造したフィルム12の厚みは「フィルムの厚み」欄にローラ22,23の各周面温度は「ローラ22の周面温度」欄と「ローラ23の周面温度」欄に、製造するフィルム12の厚みを「フィルムの厚み」欄にそれぞれ示す。なお、ベルト21の溶接部高さHは、いずれも5.0μmであった。
各フィルム12について、略円形の開口をもつ窪みの抑制効果を評価した。略円形の開口をもつ窪みは、フィルム面に対してキセノンランプを用いて光を照射して目視で観察した場合に、深さが深いほど黒味が増して観察される。つまり、黒味が薄いほど、窪みの深さが浅い。そして、黒味がかった部分が認められない場合には、上記の略円形の開口をもつ窪みが無い、もしくは窪みの深さが極めて浅いことを意味する。そこで、評価は、キセノンランプにより各フィルム12に光を照射して、目視で観察する方法で行った。実施例9〜16のうち、最も黒味がかった部分が認められたものは実施例16のフィルム12であったものの、この実施例16のフィルム12でも実用上は問題ないレベルであり、合格レベルの範疇であった。この実施例16を基準とし(表2において「基準」と記載する)、以下の基準で実施例9〜15を評価した。
A;黒味がかった部分が目視で認められない。
B;黒味がかった部分はあるが、実施例16のフィルムに比べて黒味が薄く観察される。
Figure 0006355658
10 溶液製膜装置
11 ドープ
12 フィルム
15 流延ユニット
16 テンタ
17 ローラ乾燥機
18 巻取機
21 ベルト
21a 流延面
21b 裏面
21n 非溶接部
21w 溶接部
22,23 ローラ
22a,23a 温度コントローラ
24 流延ダイ
24a 流出口
25 剥取ローラ
26 流延膜
27 送風部
28 送風部
31 クリップ
32 エア供給部
33 送風部
34 ローラ
38 感温液晶シート
41,42 レール
43 チャンバ
45 予熱区間
46 延伸区間
47 緩和区間
48 冷却区間
51 ターンホイール
52 スプロケット
61 窪み
61a 表面
62 窪み
62a 表面
CL 接線
H 溶接部高さ
L1 垂線の長さ
L2 裏面21b上の直線の長さ
PC 流延位置
PP 剥取位置
T21 ベルトの厚み
Z1 長手方向
Z2 幅方向
Z3 厚み方向

Claims (10)

  1. 環状に形成され、一対のローラに巻き掛けられて長手方向へ走行する金属製のベルト上に、ポリマーが溶媒に溶解したポリマー溶液を流延ダイから連続的に流出することにより流延膜を形成する流延工程と、
    前記流延膜を前記ベルトから剥がすことによりフィルムを形成する剥離工程と、
    前記フィルムの各側部を保持した状態で前記フィルムを長手方向に搬送し、搬送中の前記フィルムを加熱により乾燥しながら、幅方向に延伸する延伸工程とを有し、
    製造するフィルムは50μm以下の厚みであり、
    前記ベルトの前記流延膜が形成される流延面の温度は前記一対のローラの少なくとも一方の周面温度の調節により調整され、
    前記ベルトの裏面における溶接部は、3μm以上30μm以下の範囲内の高さにされており、
    前記ベルトの前記裏面における深さが3μm以上300μm以下の範囲内の窪みが存在した場合には、前記窪みの表面の最大傾斜度が0.1μm/mm以上1.5μm/mm以下の範囲内であることを特徴とする溶液製膜方法。
  2. 前記窪みは円錐形状である請求項1に記載の溶液製膜方法。
  3. 前記最大傾斜度は、
    前記窪みの表面における接線のうち前記裏面に対する角度θ(ただし、0°≦θ≦90°)が最も大きい接線を斜辺とし、かつ、前記裏面上の直線と、前記裏面上の直線に下した前記接線からの垂線とで形成される直角三角形において、前記垂線の長さをL1μmとし、前記裏面上の直線の長さをL2mmとするときに、L1/L2で算出する傾斜度である請求項1または2に記載の溶液製膜方法。
  4. 前記流延面における前記溶接部は非溶接部に対して0.1℃以上1.0℃以下の範囲内の温度差とされている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の溶液製膜方法。
  5. 前記延伸工程は、前記フィルムを5%以上40%以下の範囲内の延伸倍率で延伸する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の溶液製膜方法。
  6. ポリマーが溶媒に溶解したポリマー溶液を連続的に流出する流延ダイと、
    環状に形成され、長手方向に走行することで前記流延ダイから流出した前記ポリマー溶液により流延膜を形成し、裏面における溶接部が3μm以上30μm以下の範囲内の高さにされている金属製のベルトと、
    前記ベルトが巻き掛けられて少なくとも一方が周方向に回転することにより前記ベルトを走行させ、少なくとも一方の周面温度の調節により、前記ベルトの前記流延膜が形成される流延面の温度を調整する一対のローラと、
    前記ベルトから前記流延膜を剥がして形成されたフィルムの各側部を保持した状態で前記フィルムを長手方向へ搬送し、搬送中の前記フィルムを加熱により乾燥しながら、幅方向に延伸するテンタとを備え、
    製造するフィルムは50μm以下の厚みであり、
    前記ベルトの前記裏面における深さが3μm以上300μm以下の範囲内の窪みが存在した場合には、前記窪みの表面の最大傾斜度が0.1μm/mm以上1.5μm/mm以下の範囲内であることを特徴とする溶液製膜装置。
  7. 前記窪みは円錐形状である請求項6に記載の溶液製膜装置。
  8. 前記最大傾斜度は、
    前記窪みの表面における接線のうち前記裏面に対する角度θ(ただし、0°≦θ≦90°)が最も大きい接線を斜辺とし、かつ、前記裏面上の直線と、前記裏面上の直線に下した前記接線からの垂線とで形成される直角三角形において、前記垂線の長さをL1μmとし、前記裏面上の直線の長さをL2mmとするときに、L1/L2で算出する傾斜度である請求項6または7に記載の溶液製膜装置
  9. 前記ベルトの前記流延面における前記溶接部は非溶接部に対して0.1℃以上1.0℃以下の範囲内の温度差とされる請求項6ないし8のいずれか1項に記載の溶液製膜装置。
  10. 前記テンタは、前記フィルムを5%以上40%以下の範囲内の延伸倍率で前記フィルムを延伸する請求項6ないし9のいずれか1項に記載の溶液製膜装置。
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