以下、燃料改質機構、流体改質機構、燃料改質機構を備えるジェットエンジン、燃料改質機構の製造方法に関して、添付図面を参照して説明する。
以下において、流体改質機構の一例として、流路を構成する壁の内壁面に燃料改質触媒が適用された燃料改質機構について説明を行う。しかし、実施形態は、燃料改質機構ではない任意の流体改質機構に対しても適用可能である。実施形態を、任意の流体改質機構に適用する場合には、本明細書における「燃料」、「燃料改質機構」および「燃料改質触媒」は、それぞれ、「流体」、「流体改質機構」および「流体改質触媒」に読み替えられる。
(燃料改質機構の概要)
図1Aは、燃料改質機構1の概略斜視図である。燃料改質機構1は、複数の燃料流入口3と、複数の燃料流出口5と、複数の燃料流路10を備える。各燃料流路10は、燃料改質機構1の壁30によって囲まれた流路である。
燃料改質機構1は、例えば、高炭素数の炭化水素を主成分として含む液体燃料(例えば、JetA−1燃料のようなジェット燃料、炭素数10以上15以下のケロシン、ドデセン、または、これらの組み合わせを含む液体燃料)を熱分解して、低炭素数の炭化水素を主成分として含む気体の改質燃料(例えば、水素、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、または、これらの組み合わせを含む改質燃料)を生成する。熱分解において必要とされる熱は、熱源から供給される。熱源は、例えば、燃料改質機構1に接触する燃焼室、あるいは、ヒーター等である。なお、上記熱分解は、吸熱反応である。このため、燃料改質機構1が燃焼室に接触している場合には、吸熱反応によって、燃焼室の壁が効果的に冷却される。
図1Bは、図1Aに記載された燃料改質機構1の断面S1における概略断面図である。各燃料流路10の内壁面32には、燃料改質触媒50が適用されている。燃料改質触媒50は、例えば、高炭素数の液体燃料を熱分解して低炭素数の気体燃料を生成する反応を促進する触媒である。代替的に、あるいは、付加的に、燃料改質触媒50は、燃料からの炭素の析出を抑制するアルカリ触媒(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等を含む)であってもよい。炭素の析出、すなわち、コーキング(coking)を抑制することにより、燃料流路10における流体(燃料)の背圧の上昇、あるいは、燃料流路10の閉塞が効果的に抑制される。なお、燃料改質触媒50の種類は、燃料改質の目的に応じて、任意に選択される。
(発明者によって認識された課題)
図2A乃至図2Cは、発明者によって認識された課題を説明するための図である。図2A乃至図2Cは、燃料流路10の内壁面に燃料改質触媒を適用する工程の一例を示す。図2Aは、燃料改質機構を構成する第1部材7の概略斜視図である。図2Bは、図1Aに記載された第1部材7の断面S2における断面図である。
第1工程において、複数の溝8を備える第1部材7が準備される(図2Aを参照。)。第2工程において、各溝8の内面に燃料改質触媒50が適用される(図2Bを参照。)。第3工程において、第1部材7と、蓋部材である第2部材9とが接合される(図2Cを参照。)。
第2工程において、各溝8の内面に燃料改質触媒50を適用する場合、各溝8の幅W1が広いほど、燃料改質触媒50の各溝8の内面への適用が容易である。特に、燃料改質触媒50が、ペースト状態で各溝8の内面に適用される場合等には、各溝8の幅W1は、十分に広いことが要求される。これに対し、各溝8の幅W1が狭い場合には、燃料と壁面との接触面積(換言すれば、燃料と燃料改質触媒との接触面積)を大きくすることが可能となる。その結果、燃料の改質性能が向上する。したがって、各溝8の幅W1を決定するにあたっては、燃料改質触媒50の各溝8の内面への適用の容易性と、燃料の改質性能の向上とのトレードオフについて考慮する必要がある。なお、幅W1は、例えば、3mm以上20mm以下である。
なお、図2A乃至図2Cに記載された例は、発明者によって認識された課題を説明するために便宜的に使用された例である。よって、図2A乃至図2Cに記載された例は、本願出願前の公知の従来技術を示すものではない。
いくつかの実施形態においては、燃料改質触媒50の各溝8の内面への適用の容易性が確保されるとともに、燃料の改質性能の向上が図られる。以下、具体例について説明する。
(燃料改質機構の具体例)
図3Aおよび図3Bは、燃料改質機構1の一例を示す概略断面図である。図3Aは、第1部材60と第2部材70とが接合される前の状態を示す。
図3Aは、第1部材60または第2部材70の長手方向(すなわち、後述の第1部材溝、または、後述の第2部材溝の長手方向)に垂直な断面における概略断面図である。第1部材60は、例えば、第1部材の長手方向に沿って、断面形状が一定である部材である。第2部材70は、例えば、第2部材の長手方向に沿って、断面形状が一定である部材である。
第1部材60は、底壁61と、複数の第1部材側壁(62−1乃至62−5)と、複数の第1部材溝(64−1乃至64−4)とを備える。なお、図3Aには、第1部材側壁が5個であり、第1部材溝が4個である例が記載されているが、第1部材側壁の個数は任意であり、第1部材溝の個数も任意である。
複数の第1部材側壁(62−1乃至62−5)と、複数の第1部材溝(64−1乃至64−4)とは、底壁61上に交互に配置されている。換言すれば、複数の第1部材側壁(62−1乃至62−5)のうちの隣接する2つの第1部材側壁と底壁61によって、各第1部材溝が形成されている。複数の第1部材側壁(62−1乃至62−5)は、第1側壁62−1と、第2側壁62−2と、第3側壁62−3と、第4側壁62−4と、第5側壁62−5とを含む。複数の第1部材溝(64−1乃至64−4)は、第1溝64−1と、第2溝64−2と、第3溝64−3と、第4溝64−4とを含む。底壁61と第1側壁62−1と第2側壁62−2とによって、第1溝64−1が構成されている。また、底壁61と第2側壁62−2と第3側壁62−3とによって、第2溝64−2が構成されている。また、底壁61と第3側壁62−3と第4側壁62−4とによって、第3溝64−3が構成されている。また、底壁61と第4側壁62−4と第5側壁62−5とによって、第4溝64−4が構成されている。
第2部材70は、第1部材60とは別の部材である。第2部材70は、頂壁71と、複数の第2部材側壁(72−6乃至72−9)と、複数の第2部材溝(74−5乃至74−7)とを備える。なお、図3Aには、第2部材側壁が4個であり、第2部材溝が3個である例が記載されているが、第2部材側壁の個数は任意であり、第2部材溝の個数も任意である。
複数の第2部材側壁(72−6乃至72−9)と、複数の第2部材溝(74−5乃至74−7)とは、頂壁71上に交互に配置されている。換言すれば、複数の第2部材側壁(72−6乃至72−9)のうちの隣接する2つの第2部材側壁と頂壁71によって、各第2部材溝が形成されている。複数の第2部材側壁(72−6乃至72−9)は、第6側壁72−6と、第7側壁72−7と、第8側壁72−8と、第9側壁72−9とを含む。複数の第2部材溝(74−5乃至74−7)は、第5溝74−5と、第6溝74−6と、第7溝74−7とを含む。頂壁71と第6側壁72−6と第7側壁72−7とによって、第5溝74−5が構成されている。また、頂壁71と第7側壁72−7と第8側壁72−8とによって、第6溝74−6が構成されている。また、頂壁71と第8側壁72−8と第9側壁72−9とによって、第7溝74−7が構成されている。
燃料改質触媒は、複数の第1部材側壁(62−1乃至62−5)の少なくとも一部の領域、または、複数の第2部材側壁(72−6乃至72−9)の少なくとも一部の領域に設けられている。以下において、第1部材60に設けられた燃料改質触媒を、第1燃料改質触媒50−1といい、第2部材70に設けられた燃料改質触媒を、第2燃料改質触媒50−2といい、第1燃料改質触媒50−1と第2燃料改質触媒50−2とを併せて、燃料改質触媒という。
図3Aの例では、第1燃料改質触媒50−1は、各第1部材側壁(62−1乃至62−5)の第1側面または第2側面のいずれか一方、あるいは、第1側面および第2側面の両方に設けられている。より詳細には、第1部材60の一方の側端に位置する第1側壁62−1の第1側面に第1燃料改質触媒50−1が施工され、第2側壁62−2の第1側面および第2側面に第1燃料改質触媒50−1が施工され、第3側壁62−3の第1側面および第2側面に第1燃料改質触媒50−1が施工され、第4側壁62−4の第1側面および第2側面に第1燃料改質触媒50−1が施工され、第1部材60の他方の側端に位置する第5側壁の第2側面に第1燃料改質触媒50−1が施工されている。
また、図3Aの例では、底壁61の上面にも、第1燃料改質触媒50−1が施工されている。ただし、底壁61のうち、第2部材側壁の底面(例えば、第1底面77−1、第2底面77−2、第3底面77−3、または、第4底面77−4)と接合される接合領域(例えば、第1接合領域65−1、第2接合領域65−2、第3接合領域65−3、または、第4接合領域65−4)には、第1燃料改質触媒50−1が施工されていない。
各第1部材溝(64−1乃至64−4)の幅W2は、例えば、図2Bにおける溝の幅W1と等しい。このため、第1部材60の各第1部材溝(64−1乃至64−4)の内面(換言すれば、各第1部材溝を構成する壁の内壁面)への、第1燃料改質触媒50−1の適用(例えば、ペースト状の第1燃料改質触媒50−1の塗布)は容易である。なお、各第1部材溝(64−1乃至64−4)の内面のうち、第1燃料改質触媒50−1を適用しない領域(例えば、第1接合領域65−1、第2接合領域65−2、第3接合領域65−3、または、第4接合領域65−4)には、予め、マスキング部材を施しておけばよい。
図3Aの例では、第2燃料改質触媒50−2は、各第2部材側壁(72−6乃至72−9)の第1側面または第2側面のいずれか一方、あるいは、第1側面および第2側面の両方に設けられている。より詳細には、第6側壁72−6の第1側面および第2側面に第2燃料改質触媒50−2が施工され、第7側壁72−7の第1側面および第2側面に第2燃料改質触媒50−2が施工され、第8側壁72−8の第1側面および第2側面に第2燃料改質触媒50−2が施工され、第9側壁72−9の第1側面および第2側面に第2燃料改質触媒50−2が施工されている。
また、図3Aの例では、頂壁71の下面にも、第2燃料改質触媒50−2が施工されている。ただし、頂壁71のうち、第1部材側壁の頂面(例えば、第1頂面67−1、第2頂面67−2、第3頂面67−3、第4頂面67−4、または、第5頂面67−5)と接合される接合領域(例えば、第5接合領域75−5、第6接合領域75−6、第7接合領域75−7、第8接合領域75−8、または、第9接合領域75−9)には、第2燃料改質触媒50−2が施工されていない。
各第2部材溝(74−5乃至74−7)の幅W3は、例えば、図2Bにおける溝の幅W1と等しい。このため、各第2部材溝(74−5乃至74−7)の内面(換言すれば、各第2部材溝を構成する壁の内壁面)への、第2燃料改質触媒50−2の適用は容易である。なお、各第2部材溝(74−5乃至74−7)の内面のうち、第2燃料改質触媒50−2を適用しない領域(例えば、第5接合領域75−5、第6接合領域75−6、第7接合領域75−7、第8接合領域75−8、または、第9接合領域75−9)には、予め、マスキング部材を施しておけばよい。
図3Bは、第1部材60と第2部材70とが接合された後の状態を示す。
図3Bは、燃料改質機構1の燃焼流路の長手方向に垂直な断面における概略断面図である。燃料改質機構1は、複数の燃料流路(10−1乃至10−8)を備える。
第2部材70のうちの少なくとも1つの接合領域は、第1部材60のうちの少なくとも1つの接合領域と接合されている。第2部材70のうちの少なくとも1つの接合領域と、第1部材60のうちの少なくとも1つの接合領域とは、例えば、溶接、ろう付け等によって接合されている。第1部材60の接合領域は、例えば、第1接合領域65−1、第2接合領域65−2、第3接合領域65−3、第4接合領域65−4、第1頂面67−1、第2頂面67−2、第3頂面67−3、第4頂面67−4、第5頂面67−5のうちの少なくとも1つである。第2部材70の接合領域は、例えば、第5接合領域75−5、第6接合領域75−6、第7接合領域75−7、第8接合領域75−8、第9接合領域75−9、第1底面77−1、第2底面77−2、第3底面77−3、第4底面77−4のうちの少なくとも1つである。
複数の燃料流路(10−1乃至10−8)は、第1流路10−1と、第2流路10−2と、第3流路10−3と、第4流路10−4と、第5流路10−5と、第6流路10−6と、第7流路10−7と、第8流路10−8とを含む。図3Bには、燃料流路の数が8個である例が記載されているが、燃料流路の数は任意である。
第1流路10−1乃至第8流路10−8の各々の燃料流路は、底壁61と、頂壁71と、2つの側壁とによって囲まれた流路である。図3Bに記載の例では、第1流路10−1乃至第8流路10−8の各々の燃料流路は、底壁61と、頂壁71と、第1部材60を構成する1つの側壁と、第2部材70を構成する1つの側壁とによって囲まれた流路である。例えば、第1流路10−1は、底壁61と、頂壁71と、第1側壁62−1と、第6側壁72−6とによって囲まれた流路である。第2流路10−2は、底壁61と、頂壁71と、第6側壁72−6と、第2側壁62−2とによって囲まれた流路である。第8流路10−8は、底壁61と、頂壁71と、第9側壁72−9と、第5側壁62−5とによって囲まれた流路である。
複数の第1部材側壁(62−1乃至62−5)のうちの1つの第1部材側壁は、複数の第2部材溝(74−5乃至74−7)のうちの1つの第2部材溝内に配置されている。図3Aおよび図3Bに記載の例では、第1部材60の側端(一方側の側端、または、他方側の側端)に位置しない複数の第1部材側壁(62−2乃至62−4)は、それぞれ、対応する複数の第2部材溝(74−5乃至74−9)内に配置されている。
複数の第2部材側壁(72−6乃至72−9)のうちの1つの第2部材側壁は、複数の第1部材溝(64−1乃至64−4)のうちの1つの第1部材溝内に配置されている。図3Aおよび図3Bに記載の例では、第2部材の側端(一方側の端、または、他方側の端)に位置しない複数の第2部材側壁(72−6乃至72−9)は、それぞれ、対応する複数の第1部材溝(64−1乃至64−4)内に配置されている。
図3Bに記載の例において、各燃料流路(10−1乃至10−8)の内壁には、第1燃料改質触媒50−1と、第2燃料改質触媒50−2とが施工されている。
各燃料流路(10−1乃至10−8)の幅W4は、各第1部材溝(64−1乃至62−4)の幅W2よりも小さい。また、各燃料流路(10−1乃至10−8)の幅W4は、各第2部材溝(74−5乃至74−7)の幅W3よりも小さい。例えば、各燃料流路(10−1乃至10−8)の幅W4は、幅W2の半分より小さく、幅W3の半分より小さい。このため、各燃料流路の体積に対する燃料改質触媒が適用された領域の面積の割合を大きくすることが可能となる。したがって、燃料の改質性能が向上する。なお、幅W4は、例えば1mm以上10mm以下である。
(燃料改質機構の第1変形例)
図4Aおよび図4Bは、燃料改質機構1’の一例を示す概略断面図である。図4Aは、第1部材60と第2部材70’とが接合される前の状態を示す。図4Bは、第1部材60と第2部材70’とが溶接またはろう付け等により接合された後の状態を示す。図4Aおよび図4Bに記載の例では、第2部材70’の構成が、図3Aおよび図3Bに記載の第2部材70と異なっている。図4Aおよび図4Bに記載の第1部材60は、図3Aおよび図3Bに記載の第1部材60と同様である。
図4Aは、第1部材60または第2部材70’の長手方向(第1部材溝の長手方向または第2部材溝の長手方向)に垂直な断面における概略断面図である。第1部材60については、図3Aおよび図3Bに記載の第1部材60と同様であるので説明を省略する。
第2部材70’は、第1部材60とは別の部材である。第2部材70’は、頂壁71’と、複数の第2部材側壁(72’−6乃至72’−9)と、複数の第2部材溝(74’−5乃至74’−7)とを備える。なお、図4Aには、第2部材側壁が4個であり、第2部材溝が3個である例が記載されているが、第2部材側壁の個数は任意であり、第2部材溝の個数も任意である。
図4Aの例では、複数の第2部材側壁(72’−6乃至72’−9)の少なくとも一部の領域に、燃料の流れを乱流にする凹凸面80(例えば、粗面)が形成されている。より詳細には、第6側壁(72’−6)の少なくとも一部の領域に凹凸面が設けられ、第7側壁(72’−7)の少なくとも一部の領域に凹凸面が設けられ、第8側壁(72’−8)の少なくとも一部の領域に凹凸面が設けられ、第9側壁(72’−9)の少なくとも一部の領域に凹凸面が設けられている。また、図3Aの例では、頂壁71’の下面にも、凹凸面が設けられている。
図4Bは、燃料改質機構1’の燃焼流路の長手方向に垂直な断面における概略断面図である。燃料改質機構1’は、複数の燃料流路(10’−1乃至10’−8)を備える。
各燃料流路(10’−1乃至10’−8)には、第1燃料改質触媒50−1が配置されている。また、各燃料流路(10’−1乃至10’−8)の内壁面には、凹凸面が設けられている。このため、各燃料流路(10’−1乃至10’−8)を通過する燃料の流れは、凹凸面の存在によって、乱流となる。その結果、燃料が効果的に撹拌され、燃料の第1燃料改質触媒50−1への接触機会が増加する。燃料の第1燃料改質触媒50−1への接触機会の増加に伴い、燃料の改質性能が向上する。
なお、図4Aおよび図4Bに記載の例では、第2部材70’上に、第2燃料改質触媒が施工されていない。代替的に、第2部材70’に凹凸面を設けることに加えて、第2部材70’の少なくとも一部の領域(例えば、複数の第2部材側壁のうちの少なくとも一部の領域)に、第2燃料改質触媒を施工してもよい。また、図4Aおよび図4Bに記載の例では、第1部材60上に、乱流を生成する凹凸面が設けられていない。代替的に、第1部材60に第1燃料改質触媒50−1を設けることに加えて、第1部材60の少なくとも一部の領域(例えば、複数の第1部材側壁のうちの少なくとも一部の領域)に、乱流を生成する凹凸面を設けてもよい。
(燃料改質機構の第2変形例)
図5Aおよび図5Bは、燃料改質機構1’’の一例を示す概略断面図である。図5Aは、第1部材60と第2部材70’’とが接合される前の状態を示す。図5Bは、第1部材60と第2部材70’’とが溶接またはろう付け等により接合された後の状態を示す。図5Aおよび図5Bに記載の例では、第2部材70’’の構成が、図3Aおよび図3Bに記載の第2部材70の構成と異なっている。図5Aおよび図5Bに記載の第1部材60は、図3Aおよび図3Bに記載の第1部材60と同様である。
図5Aは、第1部材60または第2部材70’’の長手方向(第1部材溝の長手方向または第2部材溝の長手方向)に垂直な断面における概略断面図である。第1部材60については、図3Aおよび図3Bに記載の第1部材60と同様であるので説明を省略する。
第2部材70’’は、第1部材60とは別の部材である。第2部材70’は、頂壁71と、複数の第2部材側壁(72’’−6乃至72’’−9)と、複数の第2部材溝(74’’−5乃至74’’−7)とを備える。なお、図5Aには、第2部材側壁が4個であり、第2部材溝が3個である例が記載されているが、第2部材側壁の個数は任意であり、第2部材溝の個数も任意である。
図5Aに記載の例では、各第2部材側壁(72’’−6乃至72’’−9)の高さ(頂壁に垂直な方向における長さ)が、図3Aに記載の各第2部材側壁(72−6乃至72−9)の長さよりも短い。
図5Bは、燃料改質機構1’’の燃焼流路の長手方向に垂直な断面における概略断面図である。燃料改質機構1’’は、複数の燃料流路(10’’−1乃至10’’−4)を備える。
図5Bに記載の例では、各第2部材側壁(72’’−6乃至72’’−9)は、第1部材60に接触していない。換言すれば、各第2部材側壁(72’’−6乃至72’’−9)は、第1部材60の底壁61から離間して配置されている。
第1流路10’’−1乃至第4流路10’’−4の各々の燃料流路は、底壁61と、頂壁71と、2つの側壁とによって囲まれた流路である。図5Bに記載の例では、第1流路10’’−1乃至第4流路10’’−4の各々の燃料流路は、底壁61と、頂壁71と、第1部材60を構成する2つの側壁とによって囲まれた流路である。例えば、第1流路10’’−1は、底壁61と、頂壁71と、第1側壁62−1と、第2側壁62−2とによって囲まれた流路である。第4流路10’’−4は、底壁61と、頂壁71と、第4側壁62−4と、第5側壁62−5とによって囲まれた流路である。各燃料流路(10’’−1乃至10’’−4)の長手方向に垂直な断面の形状は、略U字形状である。
図5Bに記載の例では、各燃料流路の体積に対する燃料改質触媒が適用された領域の面積の割合を、図2Bおよび図2Cに記載の例と比較して、大きくすることが可能となる。したがって、燃料の改質性能が向上する。また、図5Bに記載の例では、燃料流路の数は、図3Bに記載の例における燃料流路の数よりも少ない。このため、複数の燃料流路の各燃料流入口に燃料を供給する配管の配置が複雑化しない。また図5Bに記載の例では、図3B及び図4Bに記載の例と比較して、溶接またはろう付け等により接合する箇所が少ない。このため、燃料改質機構の製造性が向上する。
なお、図5Bに記載の例では、各第2部材側壁(72’’−6乃至72’’−9)は、第1部材60の底壁61から離間して配置されている。代替的に、複数の第2部材側壁(72’’−6乃至72’’−9)のうちの少なくとも1つの第2部材側壁が底壁61から離間して配置され、複数の第2部材側壁(72’’−6乃至72’’−9)のうちの少なくとも1つの第2部材側壁が底壁61と接触して配置されてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、複数の第1部材側壁(62−1乃至62−5)のうちの少なくとも1つの第1部材側壁が第2部材70’’の頂壁71から離間して配置され、複数の第1部材側壁(62−1乃至62−5)のうちの少なくとも1つの第1部材側壁が頂壁71と接触して配置されてもよい。
図5Aおよび図5Bに記載の第2変形例は、図4Aおよび図4Bに記載の変形例と組み合わせることが可能である。すなわち、複数の第2部材側壁(72’’−6乃至72’’−9)のうちの少なくとも1つの第2部材側壁を第1部材60の底壁61から離間して配置するのに加えて、複数の第2部材側壁(または、複数の第1部材側壁)の少なくとも一部の領域に、乱流を生成する凹凸面を設けてもよい。
(燃料改質機構の第3変形例)
図6Aおよび図6Bは、燃料改質機構10’’’の一例を示す概略断面図である。図6Aは、第1部材60’’’と第2部材70とが接合される前の状態を示す。図6Bは、第1部材60’’’と第2部材70とが溶接またはろう付け等によって接合された後の状態を示す。図6Aおよび図6Bに記載の例では、第1部材60’’’の構成が、図3Aおよび図3Bに記載の第1部材60の構成と異なっている。図6Aおよび図6Bに記載の第2部材70は、図3Aおよび図3Bに記載の第2部材70と同様である。
図6Aは、第1部材60’’’または第2部材70の長手方向(第1部材溝の長手方向または第2部材溝の長手方向)に垂直な断面における概略断面図である。第2部材70については、図3Aおよび図3Bに記載の第2部材70と同様であるので説明を省略する。
第1部材60’’’は、第2部材70とは別の部材である。第1部材60’’’は、底壁61と、複数の第1部材側壁(62’’’−1乃至62’’’−5)と、複数の第1部材溝(64’’’−1乃至64’’’−4)とを備える。なお、図6Aには、第1部材側壁が5個であり、第1部材溝が4個である例が記載されているが、第1部材側壁の個数は任意であり、第1部材溝の個数も任意である。
図6Aに記載の例における各第1部材側壁(62’’’−1乃至62’’’−5)の形状は、図3Aに記載の各第1部材側壁(62−1乃至62−5)の形状と異なる。図6Aに記載の例では、各第1部材側壁(62’’’−1乃至62’’’−5)の根元側は、各第1部材側壁(62’’’−1乃至62’’’−5)の先端側よりも太い。換言すれば、各第1部材側壁(62’’’−1乃至62’’’−5)の根元側の厚さ(長手方向に垂直、かつ、底壁61に平行な方向における厚さ)は、各第1部材側壁(62’’’−1乃至62’’’−5)の先端側の厚さ(長手方向に垂直、かつ、底壁61に平行な方向における厚さ)よりも大きい。図6Aに記載の例では、各第1部材側壁(62’’’−1乃至62’’’−5)は、根元側から先端側に向かって徐々に先細る先細り形状を有する。より具体的には、図6Aに記載の例では、各第1部材側壁(62’’’−1乃至62’’’−5)の長手方向(第1部材溝の長手方向)に垂直な断面は、先細りテーパ形状を有する。
なお、図6Aに記載の例では、各第1部材側壁(62’’’−1乃至62’’’−5)の根元側は、各第1部材側壁(62’’’−1乃至62’’’−5)の先端側よりも太い。しかし、複数の第1部材側壁(62’’’−1乃至62’’’−5)のうちの少なくとも1つの第1部材側壁の根元側の太さを先端側の太さよりも太くするとともに、複数の第1部材側壁(62’’’−1乃至62’’’−5)のうちの少なくとも1つの第1部材側壁の根元側の太さを先端側の太さと等しくしてもよい。
図6Bは、燃料改質機構1’’’の燃焼流路の長手方向に垂直な断面における概略断面図である。
次に、少なくとも1つの第1部材側壁の根元側を、先端側よりも太くすることにより得られる効果について説明する。
図6Cは、図6Aにおける領域S3を拡大した図である。図6Cにおいて、底壁61の底面側には、燃焼室等の熱源が存在するものとする。矢印a乃至矢印fは、熱源から伝達される熱の流れを模式的に示している。第4側壁62’’’−4の先端領域Aに伝達される熱の流れは、矢印cおよび矢印dで示されている。第4側壁62’’’−4の中央領域Bに伝達される熱の流れは、矢印bおよび矢印eで示されている。第4側壁62’’’−4の基端領域Cに伝達される熱の流れは、矢印aおよび矢印fで示されている。図6Cを参照すると、先端領域Aおよび中央領域Bに熱を効果的に伝達させる場合、基端領域Cを通過する熱の流れの量が多くなることが把握される。熱の流れの量を多くするためには、当該熱の流れが通過する部材の太さを太くすればよい。
図6Cに記載の例では、基端領域Cが先端領域Aよりも太いため、中央領域Bおよび先端領域Aに、熱が効果的に伝達される。よって、先端領域Aまたは中央領域Bに設けられた第1燃料改質触媒50−1が、伝達される熱によって、効果的に活性化される。
図6Dに、図6Aに記載の例に対する変形例を示す。図6Dに記載の例では、各第1部材側壁(62’’’−1乃至62’’’−5)の根元側の一部のみに先細りテーパ部が設けられている。図6Dに記載の例は、図6Aに記載の例と比較して、先端領域への熱伝達の効果は小さい。他方、図6Dに記載の例は、図6Aに記載の例と比較して、各燃料流路の断面積を大きくすることが可能である。
図6A乃至図6Dに記載の第3変形例は、図4Aおよび図4Bに記載の第1変形例と組み合わせることが可能である。図6A乃至図6Dに記載の第3変形例は、図5Aおよび図5Bに記載の第2変形例と組み合わせることが可能である。また、図6A乃至図6Dに記載の第3変形例は、第1変形例および第2変形例と組み合わせることが可能である。
(燃料改質機構の第4変形例)
図7Aおよび図7Bは、燃料改質機構1’’’’の一例を示す概略断面図である。図7Aは、第1部材60’’’’と第2部材70’’’’とが接合される前の状態を示す。図7Bは、第1部材60’’’’と第2部材70’’’’とが溶接またはろう付け等により接合された後の状態を示す。図7Aおよび図7Bに記載の例では、第1部材60’’’’の底壁61’’’’に複数の第1部材凹部(68−1乃至68−4)が設けられ、第2部材70’’’’の頂壁71’’’’に複数の第2部材凹部(78−5乃至78−9)が設けられている点で、図3Aおよび図3Bに記載の例とは異なる。複数の第1部材凹部(68−1乃至68−4)は、複数の第1部材補助溝ということもできる。同様に、複数の第2部材凹部(78−5乃至78−9)は、複数の第2部材補助溝ということもできる。
図7Aは、第1部材60’’’’または第2部材70’’’’の長手方向(第1部材溝の長手方向または第2部材溝の長手方向)に垂直な断面における概略断面図である。
図7Aに記載の例では、複数の第1部材凹部(68−1乃至68−1)は、第1凹部68−1と、第2凹部68−2と、第3凹部68−3と、第4凹部68−4とを含む。また、複数の第2部材凹部(78−5乃至78−9)は、第5凹部78−5と、第6凹部78−6と、第7凹部78−7と、第8凹部78−8と、第9凹部78−9とを含む。
第1凹部68−1、第2凹部68−2、第3凹部68−3、第4凹部68−4は、それぞれ、第1溝64−1、第2溝64−2、第3溝64−3、第4溝64−4の底壁61’’’’側に設けられている。そして、第1凹部68−1、第2凹部68−2、第3凹部68−3、第4凹部68−4は、それぞれ、第1溝64−1、第2溝64−2、第3溝64−3、第4溝64−4と連通している。また、第6凹部78−6、第7凹部78−7、第8凹部78−8は、それぞれ、第5溝74−5、第6溝74−6、第7溝74−7の頂壁’’’’側に設けられている。そして、第6凹部78−6、第7凹部78−7、第8凹部78−8は、それぞれ、第5溝74−5、第6溝74−6、第7溝74−7と連通している。
図7Bは、燃料改質機構1’’’’の燃焼流路の長手方向に垂直な断面における概略断面図である。
第1凹部68−1には、第2部材70’’’’の第6側壁72−6が挿入されている。より詳細には、例えば、第1凹部68−1と、第6側壁72−6とは、互いに嵌合している。同様に、第2凹部68−2には、第7側壁72−7が挿入され、第3凹部68−3には、第8側壁72−8が挿入され、第4凹部68−4には、第9側壁72−9が挿入されている。
第5凹部78−5には、第1部材60’’’’の第1側壁62−1が挿入されている。より詳細には、例えば、第5凹部78−5と、第1側壁62−1とは、互いに嵌合している。同様に、第6凹部78−6には、第2側壁62−2が挿入され、第7凹部78−7には、第3側壁62−3が挿入され、第8凹部78−8には、第4側壁62−4が挿入され、第9凹部78−9には、第5側壁62−5が挿入されている。
図7Aおよび図7Bの例では、複数の第1部材側壁(62−1乃至62−5)が、それぞれ、対応する複数の第2部材凹部(78−5乃至78−9)に挿入されている。また、複数の第2部材側壁(72−6乃至72−9)が、それぞれ、対応する複数の第1部材凹部(68−1乃至68−4)に挿入されている。このため、第1部材60’’’’と第2部材70’’’’とを接合する際に、第1部材60’’’’と第2部材70’’’’との間の位置決めをより正確に行うことが可能となる。
複数の第1部材側壁(62−1乃至62−5)が、それぞれ、対応する複数の第2部材凹部(78−5乃至78−9)に、溶接またはろう付け等によって接合されてもよい。また、複数の第2部材側壁(72−6乃至72−9)が、それぞれ、対応する複数の第1部材凹部(68−1乃至68−4)に、溶接またはろう付け等によって接合されてもよい。
図7Aおよび図7Bに記載の例では、第1部材60’’’’に第1燃料改質触媒50−1を施工した後、各第1部材凹部(68−1乃至68−4)を形成することが可能である。各第1部材凹部(68−1乃至68−4)の形成によって、第1燃料改質触媒50−1の一部が除去される、このため、各第1部材凹部(68−1乃至68−4)には、第1燃料改質触媒50−1が存在しない。このため、第1部材凹部と、第2部材側壁との接合が強固となる。同様に、第2部材70’’’’に第2燃料改質触媒50−2を施工した後、各第2部材凹部(78−5乃至78−9)を形成することが可能である。各第2部材凹部(78−5乃至78−9)の形成によって、第2燃料改質触媒50−2の一部が除去される、このため、各第2部材凹部(78−5乃至78−9)には、第2燃料改質触媒50−2が存在しない。このため、第2部材凹部と、第1部材側壁との接合が強固となる。
図7Aおよび図7Bに記載の第4変形例は、図4Aおよび図4Bに記載の第1変形例、図5Aおよび図5Bに記載の第2変形例、または、図6A乃至図6Dに記載の第3変形例と組み合わせることが可能である。また、第4変形例は、第1変形例乃至第3変形例のうちの2以上の変形例の組み合わせと組み合わせることが可能である。
(燃料改質機構の第5変形例)
図8は、燃料改質機構1’’’’’の一例を示す概略断面図である。図8は、第1部材60’’’’’と第2部材70’’’’’とが接合される前の状態を示す。
図8に記載の例では、第1部材60’’’’’の形状と、第2部材70’’’’’の形状とが一致している。すなわち、図8に記載の第1部材60’’’’’を、仮想的に回転移動あるいは平行移動させると、図8に記載の第1部材60’’’’’を図8に記載の第2部材70’’’’’に一致させることが可能である。
図8に記載の例では、第1部材60’’’’’の形状と、第2部材70’’’’’の形状とが一致しているため、第1部材と第2部材を製造する際の製造コストが低減される。
第5変形例は、第1変形例、第2変形例、第3変形例、または、第4変形と組み合わせることが可能である。また、第5変形例は、第1変形例乃至第4変形例のうちの2以上の変形例の組み合わせと組み合わせることが可能である。
(燃料改質触媒の種類)
上述の各実施形態または各変形例において、第1燃料改質触媒50−1の種類と、第2燃料改質触媒50−2の種類とは同じであってもよい。代替的に、第1燃料改質触媒50−1と、第2燃料改質触媒50−2とは、互いに異なる種類の燃料改質触媒であってもよい。
第1燃料改質触媒50−1と第2燃料改質触媒50−2とを、互いに異なる種類の燃料改質触媒とする場合、ある種類の燃料改質触媒(第1燃料改質触媒50−1)を第1部材に適用し、別の種類の燃料改質触媒(第2燃料改質触媒50−2)を第2部材に適用するだけでよい。このため、複数種類の燃料改質触媒を1つの燃料流路内に配置することを、極めて容易に実行することが可能である。
複数種類の燃料改質触媒を1つの燃料流路内に配置する具体例について説明する。第1燃料改質触媒50−1として、高炭素数の液体燃料を、低炭素数の気体燃料に改質する熱分解反応を促進させる触媒を用いる。触媒は、例えば、固体酸触媒である。高炭素数の液体燃料を、低炭素数の気体燃料に改質する熱分解反応は、比較的高温下の条件で進行する。第2燃料改質触媒50−2として、前記熱分解反応に付随する炭素析出を抑制するアルカリ触媒(アルカリ金属、アルカリ土類金属を含む)を用いる。第1部材60の底壁61を熱源(例えば、燃焼室)の壁部に接触して設ける場合、相対的に高温である底壁61に近い領域において、第1部材60に施工された第1燃料改質触媒50−1によって、高炭素数の液体燃料の熱分解反応が効果的に促進される。また、相対的に低温である頂壁71に近い領域において、第2部材70に施工された第2燃料改質触媒50−2によって、炭素の析出(すなわち、コーキング)が効果的に抑制される。
なお、第1燃料改質触媒50−1の種類は、上記の例に限定されず任意である。また、第2燃料改質触媒50−2の種類は、上記の例に限定されず任意である。
(燃料改質機構の適用例)
図9A乃至9Cに、燃料改質機構の適用例を示す。図9Aは、燃料供給システムの構成例を示す概略ブロック図である。図9Bは、図9AのD−D矢視断面図である。図9Cは、飛しょう体の概略斜視図である。
図9Aおよび図9Bは、燃料改質機構を、燃料供給システムに適用した例を示す。燃料供給システム100は、燃料改質機構101に加え、燃料タンク210と、燃焼室220と、燃料噴射器224と、第1配管230と、第2配管240とを備える。
燃料改質機構101は、上述の燃料改質機構1、燃料改質機構1’、燃料改質機構1’’、燃料改質機構1’’’、燃料改質機構1’’’’、燃料改質機構1’’’’’のいずれかである。
燃料タンク210は、高炭素数の液体燃料を貯留する。液体燃料は、第1配管230を介して燃料改質機構101に供給される。第1配管230は、燃料タンク210の燃料排出口と、燃料改質機構101の燃料流入口103とを接続する配管である。
燃料改質機構101は、供給された液体燃料を燃焼室220からの熱で熱分解して気体の改質燃料を生成する。
燃焼室220は、液体燃料と燃焼室の壁部との熱交換によって冷却される。また、液体燃料の熱分解は吸熱反応であるため、当該吸熱反応により燃料改質機構101および燃焼室220は冷却される。燃料を用いて燃焼室を冷却することは、再生冷却と称されることがある。
気体の改質燃料は、第2配管240を介して燃焼室220(より具体的には、燃料噴射器224)に供給される。第2配管240は、燃料改質機構101の燃料流出口105と燃料噴射器224とを接続する配管である。燃料噴射器224は、気体の改質燃料Gを、燃焼室220の内部に向けて噴射する。噴射された改質燃料Gは、燃焼室内で燃焼する。
図9Bは、図9AのD−D矢視断面図である。燃料改質機構101の第1部材の底壁61は、燃焼室220の壁222と接触配置されている。代替的に、壁222を省略して、第1部材の底壁61が、燃焼室220の壁の機能を果たすようにしてもよい。
実施形態の燃料改質機構101を、燃料供給システム100に適用する場合、燃料の改質性能の向上に伴い、燃料の燃焼効率が向上するとともに、燃料の安定的な燃焼が可能となる。また、燃焼室の冷却性能が向上する。
図9Cは、実施形態の燃料改質機構101を搭載したジェットエンジン300、および、ジェットエンジン300を搭載した飛しょう体400を示す。燃料改質機構101は、ジェットエンジン300の内部に設けられている。ジェットエンジン300は、例えば、ラムジェットエンジンあるいはスクラムジェットエンジンである。ジェットエンジン300は、インレット310から取り入れた空気と、燃料タンクから供給された燃料との混合気体を燃焼室内で燃焼させる。燃焼ガスは、ジェットエンジン300のノズル320から排出される。飛しょう体400は、燃焼ガスのノズル320からの排出によって、推力を得る。
実施形態の燃料改質機構101を、ジェットエンジン300を適用する場合、燃料の改質性能の向上に伴い、燃焼室内における改質燃料の燃焼を安定化させることが可能となる。その結果、ジェットエンジン300の信頼性が向上する。
(燃料改質機構の製造方法)
図10乃至図13Bを参照して、燃料改質機構の製造方法について説明する。図10は、燃料改質機構の製造工程を説明するフローチャートである。
第1工程S1において、底壁61と、底壁上に交互に配置された複数の第1部材側壁62および複数の第1部材溝64とを備える第1部材60が準備される。図11Aに、準備された第1部材60の概略断面図を示す。第1工程S1は、第1部材60を準備する工程である。
第2工程S2において、第1部材60のうち、燃料改質触媒が適用されるべきでない領域に、マスキング部材66が適用される。図11Bは、第2工程S2を実行した後の状態を示す概略断面図である。第2工程S2は、マスキング部材を適用する工程である。
第3工程S3において、第1部材60の第1部材溝64の内面69に第1燃料改質触媒50−1が適用される。図11Cは、第3工程S3を実行中の状態を示す概略断面図である。第3工程S3は、複数の第1部材溝64のうちの少なくとも1つの第1部材溝の内面69に、第1燃料改質触媒を適用する工程である。なお、第1燃料改質触媒は、例えば、ペースト状態で、第1部材溝の内面に塗布される。塗布されたペースト状の第1燃料改質触媒は、熱を適用することにより、焼結して固化される。
第4工程S4において、第1部材60からマスキング部材66が除去される。図11Dは、第4工程S4を実行中の状態を示す概略断面図である。また、図11Eは、第4工程S4を実行後の状態を示す概略断面図である。第4工程S4は、マスキング部材を除去する工程である。
なお、第2工程S2、および、第4工程S4を省略するとともに、第3工程S3の後に、次の第5工程を実行してもよい。第5工程S5は、第1部材60に、第1部材凹部68を形成する工程である。第1部材凹部68の形成に伴い、第1燃料改質触媒50−1の一部は除去される。このため、第1部材凹部68には、第1燃料改質触媒50−1が存在しない。図11Fは、第5工程S5を実行後の状態を示す概略断面図である。
なお、第2工程S2、および、第4工程S4を省略することなく、第5工程S5を付加的に実行することも可能である。この場合、第5工程S5は、例えば、第3工程S3または第4工程S4の後に実行される。
第6工程S6において、頂壁71と、頂壁71上に交互に配置された複数の第2部材側壁72および複数の第2部材溝74とを備える第2部材70が準備される。図12Aに、準備された第2部材70の概略断面図を示す。第6工程S6は、第2部材70を準備する工程である。
第7工程S7において、第2部材70のうち、燃料改質触媒が適用されるべきでない領域に、マスキング部材76が適用される。図12Bは、第7工程S7を実行した後の状態を示す概略断面図である。第7工程S7は、マスキング部材を適用する工程である。
第8工程S8において、第2部材70の第2部材溝74の内面79に第2燃料改質触媒50−2が適用される。図12Cは、第8工程S8を実行中の状態を示す概略断面図である。第8工程S8は、複数の第2部材溝74のうちの少なくとも1つの第2部材溝の内面79に、第2燃料改質触媒を適用する工程である。なお、第2燃料改質触媒は、例えば、ペースト状態で、第2部材溝の内面に塗布される。塗布されたペースト状の第2燃料改質触媒は、熱を適用することにより、焼結して固化される。
第9工程S9において、第2部材70からマスキング部材76が除去される。図12Dは、第9工程S9を実行中の状態を示す概略断面図である。また、図12Eは、第9工程S9を実行後の状態を示す概略断面図である。第9工程S9は、マスキング部材を除去する工程である。
なお、第7工程S7、および、第9工程S9を省略するとともに、第8工程S8の後に、次の第10工程を実行してもよい。第10工程S10は、第2部材70に、第2部材凹部78を形成する工程である。第2部材凹部78の形成に伴い、第2燃料改質触媒50−2の一部は除去される。このため、第2部材凹部78には、第2燃料改質触媒50−2が存在しない。図12Fは、第10工程S10を実行後の状態を示す概略断面図である。
なお、第7工程S7、および、第9工程S9を省略することなく、第10工程S10を付加的に実行することも可能である。この場合、第10工程S10は、例えば、第8工程S8または第9工程S9の後に実行される。
なお、第6工程乃至第10工程は、第1工程乃至第5工程の後に実行してもよい。代替的に、第6工程乃至第10工程は、第1工程乃至第5工程の前に実行してもよい。代替的に、第6工程乃至第10工程は、第1工程乃至第5工程と並行して実行してもよい。
第11工程S11は、第1部材60と第2部材70とを接合する工程である。第11工程S11において、第1部材60の少なくとも1つの接合領域(65、67)と、第2部材70の少なくとも1つの接合領域(75、77)とが接合される。図13Aおよび図13Bは、第11工程S11を実行後の状態を示す概略断面図である。図13Aは、図11Eに記載の第1部材60と、図12Eに記載の第2部材70とを接合した後の状態を示す。また、図13Bは、図11Fに記載の第1部材60と、図12Fに記載の第2部材70とを接合した後の状態を示す。第1部材60と第2部材70との接合により、複数の燃料流路10を備えた燃料改質機構が提供される。
第11工程S11は、複数の第1部材側壁62のうちの1つの第1部材側壁が、複数の第2部材溝74のうちの1つの第2部材溝内に配置された状態で実行される。また、第11工程S11は、複数の第2部材側壁72のうちの1つの第2部材側壁が、複数の第1部材溝64のうちの1つの第1部材溝内に配置された状態で実行される。
実施形態における燃料改質機構の製造方法は、上述の燃料改質機構1、燃料改質機構1’、燃料改質機構1’’、燃料改質機構1’’’、燃料改質機構1’’’’、燃料改質機構1’’’’’のいずれかを製造する製造方法である。
実施形態における燃料改質機構の製造方法では、第1部材60の第1部材溝64の幅が比較的広いため、第3工程S3において、第1部材溝64の内面69に第1燃料改質触媒50−1を適用することが容易である。また、第2部材70の第2部材溝74の幅が比較的広いため、第8工程S8において、第2部材溝74の内面79に第2燃料改質触媒50−2を適用することが容易である。また、第1部材60と第2部材70とを接合することによって提供される燃料改質機構において、複数の燃料流路10の各燃料流路の幅は比較的狭い。このため、各燃料流路の体積に対する燃料改質触媒が適用された領域の面積の割合を大きくすることが可能となる。したがって、燃料の改質性能が向上する。
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態又は変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態又は変形例にも適用可能である。