以下の記載は、例示的な方法、パラメーターなどを示す。しかし、かかる記載は、本開示の範囲に対する限定として意図されてはおらず、その代り、例示的な実施形態の説明として提供されていることを認識すべきである。
一般に、本開示は、心臓および心血管系に影響を与える疾患および状態、例えば、駆出率低下心不全および駆出率保持心不全ならびに心房細動と関連する少なくとも1つの症状を処置または予防または軽減するための方法を提供する。
心不全を有する患者における死は、主に、心臓の心室性不整脈および/またはポンピング不全(pumping failure)によって引き起こされる。心室性不整脈およびポンピング不全は共に、心臓線維症の程度および有害な心室リモデリング(肥大または心室拡張(chamber dilatation))と関連し得る。しかし、心臓線維症は、心不全の間の心機能障害および異常な心室リモデリングの重要な決定因子である。
マウスにおける経大動脈狭窄(transaortic constriction)(TAC)は、心臓の左心室の圧力過剰負荷を引き起こして、マウスにおいて肥大をもたらし、最終的に心不全をもたらす。これは、心臓に対する高血圧または大動脈弁狭窄症の圧効果を模倣する。さらに、TACによって引き起こされる肥大、線維症および心室拡張などの心病理学は、高血圧、大動脈弁狭窄症または遺伝子変異によって引き起こされる心筋症のものと似ている。従って、TACモデルは、ヒトの心筋症および心不全を模倣するための適切な動物モデルとして機能する。TACを実施した後、心臓は、軽度の肥大、線維症および拡張機能障害(diastolic dysfunction)を示し始めるが、心室拡張または収縮機能不全(contractile dysfunction)の心エコー的証拠は伴わない。心肥大、線維症および拡張機能障害は、時間と共に増加し続け、TAC後4週目の最後までに、心臓は、心室拡張および駆出率低下を伴う、心収縮機能障害(systolic dysfunction)の心エコー的証拠を示す。圧力過剰負荷された心臓の機能は、TAC手順後10〜12週間の観察期間を通じて、時間をわたり増悪し続ける。従って、14日目の時点は、早期段階の有害な心臓リモデリング、および代償性心機能から心不全への移行を示す。
心不全は、増加した細胞外マトリックス(ECM)リモデリング、著明な心筋線維症、および増加した心筋の硬さとも関連する。任意の特定の理論に束縛されることは望まないが、心不全の間および他の心血管状態において誘導される酸化的ストレスおよび低酸素は、リジルオキシダーゼ様2(LOXL2)発現を増加させることが企図される。LOXL2は、コラーゲンのリシンまたはヒドロキシリシン残基の酸化的脱アミノ化を触媒し、コラーゲン架橋および心筋の硬さをもたらす。LOXL2は、筋線維芽細胞活性化を持続させる重要な線維形成性サイトカイン、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)の産生を生じる種々の細胞シグナル伝達経路を増大させることによって、心筋線維症の発症における心筋線維芽細胞の活性化に寄与することがさらに企図される。
種々の実施形態では、心不全、特発性拡張型心筋症(IDCM)、心不整脈および心臓線維症が含まれるがこれらに限定されない心血管傷害を標的化する治療的組成物および方法が、提供される。
特定の実施形態では、線維症の程度を低減させるため、心筋リモデリングを低減させるため、心不全の間の心筋の硬さ、心房細動を低減させるため、心筋線維芽細胞活性化を低減させるためのいずれかのために、心臓線維症を標的化する、または収縮期および拡張期の心機能を改善する、治療的組成物および方法が、提供される。
ある特定の実施形態では、治療的組成物は、LOXおよび/またはLOXL酵素の発現および/または活性を減少または低減させる1つまたは複数の薬剤を含む。
I.一般的定義
特記しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で参照される全ての特許、出願、公開された出願および他の刊行物は、その全体が参照によって組み込まれる。このセクションに示される定義が、参照によって本明細書に組み込まれる特許、出願、公開された出願および他の刊行物中に示される定義と反するまたは他の方法で不一致である場合、このセクションに示される定義が、参照によって本明細書に組み込まれる定義に優先する。本明細書に提供される見出しは、便宜上に過ぎず、本発明を決して限定しない。
本明細書で使用する場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」とは、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味する。
本明細書で使用する場合、用語「約」または「およそ」とは、参照の分量(quantity)、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量、長さ、アミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列に対して、30、25、20、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%も、変動する、分量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量、長さ、アミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列を指す。特定の実施形態では、用語「約」または「およそ」は、数値に先行する場合、値プラスまたはマイナス15%、10%、5%または1%の範囲を示す。
用語「実質的に」とは、参照の分量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量、長さ、アミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列と、少なくとも約60%、65%、75%、80%85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一な、分量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量、長さ、アミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列を指す。
本明細書を通じて、文脈が他を要求しない限り、単語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含むこと」は、述べられたステップもしくは要素、またはステップもしくは要素の群を含むことを含意するが、任意の他のステップもしくは要素、またはステップもしくは要素の群の排除を含意しないと理解される。「〜からなる」とは、語句「〜からなる」の後に続く全てを含み、それらに限定されることを意味する。従って、語句「〜からなる」は、列挙された要素が必要とされるまたは義務的であること、および他の要素が存在することができないことを示す。「〜から本質的になる」とは、語句の後に列挙された任意の要素を含み、列挙された要素について本開示において特定された活性または作用を妨害することもそれらに寄与することもない他の要素に限定されることを意味する。従って、語句「〜から本質的になる」は、列挙された要素が必要とされるまたは義務的であることを示すが、任意選択である他の要素が存在せず、列挙された要素の活性または作用にそれらが影響を与えるか否かに依存して、他の要素が存在してもしなくてもよいことを示す。
本明細書を通じて、「一実施形態」、「実施形態」、「別の実施形態」、「特定の一実施形態」、「関連の一実施形態」、「ある特定の一実施形態」、「追加的な一実施形態」もしくは「さらなる一実施形態」またはそれらの組み合わせに対する言及は、実施形態と関連して記載される特定の特色、構造または特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態中に含まれることを意味する。従って、本明細書を通じた種々の場所における上述の語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特色、構造または特徴は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適切な様式で組み合わされ得る。
本明細書で使用する場合、用語「促進すること」、「増強すること」、「刺激すること」または「増加させること」とは、一般に、ビヒクルまたは対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、より大きい生理学的応答(即ち、測定可能な下流の効果)を生じるまたは引き起こす、本明細書で企図された組成物の能力を指す。生理学的応答は、正常、未処置または対照処置した被験体において測定された応答と比較して、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%またはそれを超えて増加され得る。「増加した」または「増強された」応答または特性は、典型的には、「統計的に有意」であり、正常、未処置または対照処置した被験体によって生じた、1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍のまたはそれを超える(例えば、500、1000倍)(それらの間および1を超える全ての整数および小数点、例えば、1.5、1.6、1.7.1.8などを含む)増加を含み得る。
本明細書で使用する場合、用語「減少させる」または「低下させる」または「減らす」または「低減させる」または「減弱させる」とは、一般に、ビヒクルまたは対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、より小さい生理学的応答(即ち、下流の効果)を生じるまたは引き起こす、企図された組成物の能力を指す。「減少」または「低減された」応答は、典型的には、「統計的に有意」な応答であり、正常、未処置または対照処置した被験体によって生じた応答の、1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30分の1またはそれ未満(例えば、500、1000分の1)(それらの間および1を超える全ての整数および小数点、例えば、1.5、1.6、1.7.1.8などを含む)である減少を含み得る。
II.リジルオキシダーゼ(LOX)およびリジルオキシダーゼ様(LOXL)タンパク質
LOXおよびLOXLタンパク質の発現は、異なる疾患において変動する。これは、いくつかの理由、例えば、組織分布、プロセシング、ドメイン、活性の調節における差異、ならびにタンパク質間の他の差異に起因し得る。例えば、LOXおよびLOXLの両方が、線維症性エリア周囲の筋線維芽細胞において高度に発現されるので、LOXおよびLOXLは、線維症性疾患に関連付けられる(Kagen、Pathol. Res. Pract. 190巻:910〜919頁(1994年);Murawakiら、Hepatology 14巻:1167〜1173頁(1991年);Siegelら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75巻:2945〜2949頁(1978年);Jourdan Le−Sauxら、Biochem. Biophys. Res. Comm. 199巻:587〜592頁(1994年);Kimら、J. Cell Biochem. 72巻:181〜188頁(1999年))。
リジルオキシダーゼは、コラーゲン中のペプチジルリシンおよびヒドロキシリシン残基ならびにエラスチン中のペプチジルリシン残基の酸化的脱アミノ化を触媒する。得られたペプチジルアルデヒドは、自発的に縮合し、酸化反応を受けて、細胞外マトリックスの正常な構造的完全性に必要なリシン由来の共有結合性架橋を形成する。その基質とのリジルオキシダーゼの反応では、過酸化水素(H2O2)およびアンモニウムが、ペプチジルアルデヒド産物と共に化学量論的な分量で放出される。例えば、Kaganら、J. Cell. Biochem. 88巻:660〜72頁(2003年)を参照のこと。
リジルオキシダーゼは、細胞外環境中に分泌され、次いでそこで、タンパク分解性切断によって、機能的30kDa酵素および18kDaプロペプチドへとプロセシングされる。30kDaのリジルオキシダーゼは、酵素的に活性であるが、50kDaのプロ酵素はそうではない。プロコラーゲンC−プロテイナーゼは、プロ−リジルオキシダーゼをその活性形態へとプロセシングし、Bmp1、TII1およびTII2遺伝子の産物である。酵素の局在は主に細胞外であるが、プロセシングされたリジルオキシダーゼは、細胞内および核内にも局在する。プロペプチドをコードする配列は、LOXおよびLOXLタンパク質の間で中程度に(60〜70%)保存されているが、活性部位が位置するプロ酵素のC末端30kDa領域をコードする配列は、高度に保存されている(およそ95%)。Kaganら、J. Cell Biochem. 59巻:329〜38頁(1995年)を参照のこと。
5つの異なるリジルオキシダーゼ、LOXおよび4つのLOX関連、またはLOX様タンパク質(LOXL1、LOXL2、LOXL3、LOXL4)が、ヒトおよびマウスの両方に存在することが公知である。LOXおよびLOX様タンパク質は、本開示の目的のために、「LOX/LOXL」または「リジルオキシダーゼ型酵素」と集合的に称される。5つの形態のリジルオキシダーゼは、5つの異なる染色体上に存在する。これらのファミリーメンバーは、構造および機能においてある程度の重複を示すが、別個の機能もまた有するようである。例えば、LOXの主要な活性は、細胞の外側のコラーゲンおよびエラスチン中の特定のリシン残基の酸化であるが、LOXは、細胞内でも作用し得、そこで遺伝子発現を調節し得る。さらに、LOXは、単球、線維芽細胞および平滑筋細胞の走化性を誘導する。さらに、ノックアウトマウスにおけるLOXの欠失は、分娩時に致死のようであるが(Hornstraら、J. Biol. Chem. 278巻:14387〜14393頁(2003年))、LOXL欠損は、重症の発生表現型を引き起こさない(Bronsonら、Neurosci. Lett. 390巻:118〜122頁(2005年))。
LOXの主要な活性は、細胞の外側のコラーゲンおよびエラスチン中の特定のリシン残基の酸化であるが、LOXは、細胞内でも作用し得、そこで遺伝子発現を調節し得る(Liら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94巻:12817〜12822頁(1997年)、Giampuzziら、J. Biol. Chem. 275巻:36341〜36349頁(2000年))。さらに、LOXは、単球、線維芽細胞および平滑筋細胞の走化性を誘導する(Lazarusら、Matrix Biol. 14巻:727〜731頁(1995年)、Nelsonら、Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 188巻:346〜352頁(1988年))。LOX自体は、いくつかの増殖因子およびステロイド、例えば、TGF−β、TNF−αおよびインターフェロンによって誘導される(Csiszar、Prog. Nucl. Acid Res. 70巻:1〜32頁(2001年))。最近の研究は、多様な生物学的機能、例えば、発生調節、腫瘍抑制、細胞運動性および細胞老化において、他の役割をLOXに帰属させている。LOXの多様な役割、およびその最近発見されたアミノオキシダーゼファミリー、LOX様(LOXL)は、それらの細胞内および細胞外局在と共に、重要な役割を果たし得る。
本明細書で使用する場合、用語「リジルオキシダーゼ」とは、以下の反応を触媒する酵素を指す:ペプチジル−L−リジル−ペプチド+O2+H2O→ペプチジル−アリジル(allysyl)−ペプチド+NH3+H2O2。リジルオキシダーゼ(EC1.4.3.13)についての他の同義語には、タンパク質−リシン6−オキシダーゼおよびタンパク質−L−リシン:酸素6−オキシドレダクターゼ(脱アミノ化する)が含まれる。例えば、Harrisら、Biochim. Biophys. Acta 341巻:332〜44頁(1974年);Raytonら、J. Biol. Chem. 254巻:621〜26頁(1979年);Stassen、Biophys. Acta 438巻:49〜60頁(1976年)を参照のこと。その活性中心においてチロシルキノンのリジル付加物を有する銅含有キノプロテイン(quinoprotein)、LOXは、ペプチジルリシンの酸化を触媒して、ペプチジルアルファ−アミノアジピン酸−デルタ−セミアルデヒドの形成を生じる。一旦形成されると、このセミアルデヒドは、隣接アルデヒドまたは他のリジル基と自発的に縮合して、鎖内および鎖間架橋を形成し得る。例えば、Ruckerら、Am. J. Clin. Nutr. 67巻:996S〜1002S頁(1998年)を参照のこと。
リジルオキシダーゼまたはリジルオキシダーゼ様タンパク質の一例には、以下の配列のうち1つから発現または翻訳されるポリペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を有する酵素が含まれる:EMBL/GenBank受託番号:M94054(配列番号23);AAA59525.1(配列番号24);S45875(配列番号25);AAB23549.1(配列番号26);S78694(配列番号27);AAB21243.1(配列番号28);AF03929I(配列番号29);AAD02130.1(配列番号30);BC074820(配列番号31);AAH74820.1(配列番号32);BC074872(配列番号33);AAH74872.1(配列番号34);M84150(配列番号35);AAA59541.1(配列番号36)。LOXの一実施形態は、アミノ酸配列(配列番号19)を有する、ヒトリジルオキシダーゼ(hLOX)プレプロタンパク質、配列番号20などの、シグナルペプチドの切断後の分泌型hLOX、または配列番号21などの、タンパク分解性プロセシング後の成熟hLOXである。一実施形態では、LOXLは、ヒトLOXL2、例えば、配列番号22である。
LOXは、ヒト、マウス、ラット、ニワトリ、魚類およびDrosophilaを含むいくつかの種において保存された、高度に保存されたタンパク質ドメインを有する。ヒトLOXファミリーは、205アミノ酸のLOX触媒ドメインを含有する、高度に保存されたC末端領域を有する。保存された領域は、銅結合(Cu)、保存されたサイトカイン受容体様ドメイン(CRL)、およびリジル−チロシルキノン補因子部位(LTQ)を含有する。予測された細胞外シグナル配列は、斜線付きの四角によって示される(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第60/963,249号の図7を参照のこと)。12個のシステイン残基もまた、同様に保存されており、そのうち2個は、プレプロペプチド領域内に存在し、10個は、LOXの触媒的に活性なプロセシングされた形態中に存在する(Csiszar、Prog. Nucl. Acid Res. 70巻:1〜32頁(2001年))。保存された領域は、フィブロネクチン結合ドメインもまた含む。
LOXのプレプロペプチド領域は、シグナルペプチドを含有し、Cys21−Ala22の間にあると予測された切断部位において切断されて、シグナル配列ペプチド、およびなおも不活性であるLOXの48kDaアミノ酸プロペプチド形態を生成する。プロペプチドは、ゴルジを介した通過の間にN−グリコシル化され、細胞外環境中に分泌され、そこで、プロ酵素またはプロペプチドは、メタロエンドプロテアーゼ、Bmp1、TII1およびTII2遺伝子の産物であるプロコラーゲンC−プロテイナーゼによって、Gly168−Asp169の間で切断される。BMP I(骨形成タンパク質I)は、プロペプチドをプロセシングして機能的30kDa酵素および18kDaプロペプチドを生じる、プロコラーゲンC−プロテイナーゼである。プロペプチドをコードする配列は、中程度に(60〜70%)保存されているが、活性部位が位置するプロ酵素のC末端30kDa領域をコードする配列は、高度に保存されている(およそ95%)(KaganおよびLi、J. Cell. Biochem. 88巻:660〜672頁(2003年);Kaganら、J. Cell Biochem. 59巻:329〜38頁(1995年))。N−グリコシル単位もまた、引き続いて除去される。LOXは、プロセシングされていないおよび/またはプロセシングされた(成熟)形態で存在する。LOXの成熟形態は、典型的には活性であるが、一部の実施形態では、プロセシングされていないLOXもまた活性である。
LOXL酵素またはタンパク質の特定の例は、Molnarら、Biochim Biophys Acta. 1647巻:220〜24頁(2003年);Csiszar、Prog. Nucl. Acid Res. 70巻:1〜32頁(2001年);および2001年11月8日に公開されたWO01/83702中に記載されており、それらは全て、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる(これら3つの刊行物中では、「LOXL1」は「LOXL」と呼ばれるが、本発明では、「LOXL」は、LOXL1だけではなく、リジルオキシダーゼ様タンパク質を一般に指すために使用されていることに留意されたい)。これらの酵素には、GenBank/EMBL BC015090;AAH15090.1において寄託されたmRNAによってコードされるLOXL1;GenBank/EMBL U89942において寄託されたmRNAによってコードされるLOXL2;GenBank/EMBL AF282619;AAK51671.1において寄託されたmRNAによってコードされるLOXL3;およびGenBank/EMBL AF338441;AAK71934.1において寄託されたmRNAによってコードされるLOXL4が含まれる。
LOXについて上記したものと類似した潜在的シグナルペプチドが、LOXL、LOXL2、LOXL3およびLOXL4のアミノ末端において予測されている。予測されたシグナル切断部位は、LOXLについてはGly25−Gln26の間、LOXL2についてはAla25−Gln26の間、およびLOXL3についてはGly25−Ser26の間にある。プロ−コラーゲンおよびプロ−LOX中のBMP−1切断のためのコンセンサスは、Ala/Gly−Aspの間にあり、その後に酸性残基または荷電残基が続く場合が多い。活性LOXLを生成するための潜在的切断部位は、Gly303−Asp304であるが、その後には、非定型的Proが続く。LOXL3は、Gly447−Asp448においても潜在的切断部位を有し、その後にAspが続き、この部位におけるプロセシングは、活性LOXと類似したサイズの活性ペプチドを生じ得る。BMP−Iの潜在的切断部位もまた、残基Ala569−Asp570において、LOXL4内で同定された(Kimら、J. Biol. Chem. 278巻:52071〜52074頁(2003年))。LOXL2もまた、LOXLファミリーの他のメンバーと同様に、タンパク分解的に切断され、分泌され得る(Akiriら、Cancer Res. 63巻:1657〜1666頁(2003年))。
用語「LOX」および「LOXL」は、リジル残基の脱アミノ化を触媒する酵素活性を実質的に保持する、機能的断片または誘導体もまた包含する。典型的には、機能的断片または誘導体は、そのリジル酸化活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%を保持する。LOXまたはLOXL2タンパク質は、その活性を実質的に変更しない保存的アミノ酸置換を含み得ることもまた意図される。アミノ酸の適切な保存的置換は、当業者に公知であり、得られた分子の生物学的活性を変更することなしに一般に行われ得る。当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換が、生物学的活性を実質的に変更しないことを認識している。例えば、Watsonら、Molecular Biology of the Gene、第4版、1987年、The Benjamin/Cummings Pub. Co.、224頁を参照のこと。保存的および非保存的アミノ酸置換は、上記されている。
LOXおよびLOXLタンパク質の間で共通していないことが知られている特色は、スカベンジャー受容体システインリッチ(SRCR)ドメインである。LOXおよびLOXLは、SRCRドメインを欠くが、LOXL2、LOXL3およびLOXL4は各々、N末端に4つのSRCRドメインを有する。SRCRドメインは、分泌型、膜貫通または細胞外マトリックスタンパク質において見出される。SRCRドメインはまた、いくつかの分泌型および受容体タンパク質においてリガンド結合を媒介することが公知である(Hohenesteら、Nat. Struct. Biol. 6巻:228〜232頁(1999年);Sasakiら、EMBO J. 17巻:1606〜1613頁(1998年))。LOXLに独自の別のドメインは、プロリンリッチドメインの存在である(Molnarら、Biochimica Biophsyica Acta 1647巻:220〜224頁(2003年))。
III.上皮間充織転換
上皮間充織転換(EMT)とは、上皮細胞(即ち、特定のタンパク質、因子および分子を発現する)の遺伝子発現/表現型特徴を有する細胞が、遺伝子またはそれらの発現レベルを変化または変更させて、発現された遺伝子における変更または変化によって示されるような細胞の表現型における変化を生じる、プロセスを指す。
上皮細胞および間充織細胞は、各細胞型に特異的な属性を与える独自の遺伝子発現プロファイルを各々が有する、別個の系譜を示す。上皮細胞の間充織細胞への変換は、形態学、細胞アーキテクチャー、接着および/または遊走能における変更を必要とする。EMTを示す分子的および形態学的特色は、線維症と相関する。
IV.LOXおよびLOXLの発現および/または活性を減少させる薬剤
種々の実施形態では、1つまたは複数の薬剤、例えば、LOX/LOXLの発現および/または活性を低減させる治療剤を投与するステップを含む、心不全、特発性拡張型心筋症(IDCM)および心臓線維症と関連する1つまたは複数の症状を処置または予防または軽減する方法が提供される。本明細書で使用する場合、用語「薬剤」および「治療剤」は、特定の実施形態では、相互交換可能に使用され得る。本明細書で企図される薬剤には、小分子;siRNA、shRNA、miRNA、piRNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれるがこれらに限定されない阻害性ポリヌクレオチド;ならびに抗体およびその抗原結合性断片が含まれるがこれらに限定されない阻害性ポリペプチド、が含まれるがこれらに限定されない。
特定の実施形態では、LOX/LOXLの発現および/または活性を低減させる1つまたは複数の薬剤を投与するステップを含む、線維症の程度、心筋リモデリング、心不全の間の心筋の硬さ、心筋線維芽細胞活性化を低減させる方法が提供される。
特定の実施形態では、LOX/LOXLの発現および/または活性を低減させる1つまたは複数の薬剤を投与するステップを含む、収縮期および拡張期の心機能を改善する方法が提供される。
LOX/LOXL酵素の活性を低減、減少または阻害する薬剤には、LOX、LOXL1、LOXL2、LOXL3およびLOXL4の、小分子ベースの、ポリヌクレオチドベースのおよびポリペプチドベースの阻害剤ならびにアンタゴニストが含まれるがこれらに限定されない。かかる薬剤は、治療剤と呼ばれる。薬剤は、種々のスクリーニングアッセイを使用することによって選択され得る。一実施形態では、阻害剤は、試験化合物がリジルオキシダーゼ型酵素に結合するかどうかを決定することによって同定され得;結合が生じている場合、化合物は候補モジュレーターである。任意選択で、さらなる試験が、かかる候補モジュレーターに対して実施され得る。あるいは、候補化合物は、リジルオキシダーゼ型酵素と接触させられ、リジルオキシダーゼ型酵素の生物学的活性がアッセイされ得る;リジルオキシダーゼ型酵素の生物学的活性を変更する化合物は、リジルオキシダーゼ型酵素のモジュレーターである。一般に、リジルオキシダーゼ型酵素の生物学的活性を低減させる化合物は、酵素の阻害剤である。
一実施形態では、LOX/LOXL阻害剤は、LOXL2阻害剤である。
リジルオキシダーゼ型酵素の活性のモジュレーターを同定する方法は、1つまたは複数のリジルオキシダーゼ型酵素を含有する細胞培養物中で候補化合物をインキュベートするステップ、および細胞の1つまたは複数の生物学的活性または特徴をアッセイするステップを含む。培養物中の細胞の生物学的活性または特徴を変更する化合物は、リジルオキシダーゼ型酵素の活性の潜在的モジュレーターである。アッセイされ得る生物学的活性には、例えば、リシン酸化、過酸化物産生、アンモニア産生、リジルオキシダーゼ型酵素のレベル、リジルオキシダーゼ型酵素をコードするmRNAのレベル、および/またはリジルオキシダーゼ型酵素に特異的な1つもしくは複数の機能、が含まれる。上述のアッセイの追加的な実施形態では、候補化合物との接触の非存在下で、1つまたは複数の生物学的活性または細胞特徴は、1つまたは複数のリジルオキシダーゼ型酵素のレベルまたは活性と相関する。例えば、生物学的活性は、細胞機能、例えば、遊走、走化性、上皮間充織転換または間充織上皮転換であり得、変化は、1つまたは複数の対照または参照試料(複数可)との比較によって検出される。例えば、陰性対照試料には、候補化合物が添加される、減少したレベルのリジルオキシダーゼ型酵素を有する培養物;または試験培養物と同じ量のリジルオキシダーゼ型酵素を有するが候補化合物の添加を伴わない培養物、が含まれ得る。一部の実施形態では、異なるレベルのリジルオキシダーゼ型酵素を含有する別々の培養物が、候補化合物と接触させられる。生物学的活性における変化が観察される場合、および変化が、より高いレベルのリジルオキシダーゼ型酵素を有する培養物においてより大きい場合、化合物は、リジルオキシダーゼ型酵素の活性のモジュレーターとして同定される。化合物がリジルオキシダーゼ型酵素の活性化因子であるか阻害剤であるかの決定は、化合物によって誘導された表現型から明らかであり得、または1つもしくは複数のリジルオキシダーゼ型酵素の酵素活性に対する化合物の効果の試験などの、さらなるアッセイを必要とし得る。
生化学的または組換え的のいずれかによってリジルオキシダーゼ型酵素を取得するための方法、ならびに上記のようなリジルオキシダーゼ型酵素の活性のモジュレーターを同定するための細胞培養および酵素アッセイのための方法は、当該分野で公知である。
リジルオキシダーゼ型酵素の構造は、例えば、小分子、ペプチド、ペプチド模倣物(peptide mimetics)および抗体などの薬剤の選択を導くために調査され得る。リジルオキシダーゼ型酵素の構造的特性は、リジルオキシダーゼ型酵素に結合する、またはリジルオキシダーゼ型酵素のリガンド、基質、結合パートナーもしくは受容体として機能する、天然または合成の分子を同定する助けになり得る。例えば、Engleman(1997年)J. Clin. Invest. 99巻:2284〜2292頁を参照のこと。例えば、リジルオキシダーゼ型酵素の構造的モチーフのフォールディングシミュレーションおよびコンピューター再設計は、適切なコンピュータープログラムを使用して実施され得る。Olszewski(1996年)Proteins 25巻:286〜299頁;Hoffman(1995年)Comput. Appl. Biosci. 11巻:675〜679頁。タンパク質フォールディングのコンピューターモデリングは、詳細なペプチドおよびタンパク質構造のコンフォメーション的およびエネルギー的分析のために使用され得る。Monge(1995年)J. Mol. Biol. 247巻:995〜1012頁;Renouf(1995年)Adv. Exp. Med. Biol. 376巻:37〜45頁。適切なプログラムは、相補的ペプチド配列に関するコンピューター補助された検索を使用した、リガンドおよび結合パートナーと相互作用する、リジルオキシダーゼ型酵素上の部位の同定のために使用され得る。Fassina(1994年)Immunomethods 5巻:114〜120頁。タンパク質およびペプチドの設計のためのさらなるシステムは、例えば、Berry(1994年)Biochem. Soc. Trans. 22巻:1033〜1036頁;Wodak(1987年)、Ann. N.Y. Acad. Sci. 501巻:1〜13頁;およびPabo(1986年)Biochemistry 25巻:5987〜5991頁に記載されている。上記構造分析から得られた結果は、例えば、1つまたは複数のリジルオキシダーゼ型酵素の活性のモジュレーターとして機能する有機分子、ペプチドおよびペプチド模倣物の調製のために使用され得る。
リジルオキシダーゼ型酵素の阻害剤は、競合的阻害剤、不競合的阻害剤、混合型阻害剤または非競合的阻害剤であり得る。競合的阻害剤は、基質に対する構造的類似性を有する場合が多く、通常は活性部位に結合し、より低い基質濃度でより有効である。見かけのKMは、競合的阻害剤の存在下で増加される。不競合的阻害剤は、一般に、酵素−基質複合体に、または基質が活性部位に結合し、活性部位を歪ませ得た後に利用可能となる部位に、結合する。見かけのKMおよびVmaxの両方が、不競合的阻害剤の存在下で減少され、基質濃度は、阻害に対してほとんどまたは全く効果を有さない。混合型阻害剤は、遊離酵素および酵素−基質複合体の両方に結合することが可能であり、従って、基質結合および触媒活性の両方に影響を与える。非競合的阻害は、阻害剤が等しいアビディティで酵素および酵素−基質複合体を結合し、阻害が基質濃度によって影響されない、混合型阻害の特別な場合である。非競合的阻害剤は、一般に、活性部位の外側の領域で酵素に結合する。酵素阻害に関するさらなる詳細については、例えば、Voetら(2008年)上記を参照のこと。その天然の基質(例えば、コラーゲン、エラスチン)は通常、in vivoに大過剰で存在する(in vivoで達成され得る任意の阻害剤の濃度と比較して)リジルオキシダーゼ型酵素などの酵素については、阻害は基質濃度に依存しないので、非競合的阻害剤が有利である。
リジルオキシダーゼ型酵素の酵素活性は、いくつかの異なる方法によってアッセイされ得る。例えば、リジルオキシダーゼ酵素活性は、過酸化水素、アンモニウムイオンおよび/もしくはアルデヒドの産生を検出および/もしくは定量化することによって、リシン酸化および/もしくはコラーゲン架橋をアッセイすることによって、または細胞浸潤能、細胞接着、細胞成長もしくは転移成長を測定することによって、評価され得る。例えば、Trackmanら(1981年)Anal. Biochem. 113巻:336〜342頁;Kaganら(1982年)Meth. Enzymol. 82巻A:637〜649頁;Palamakumburaら(2002年)Anal. Biochem. 300巻:245〜251頁;Albiniら(1987年)Cancer Res. 47巻:3239〜3245頁;Kamathら(2001年)Cancer Res. 61巻:5933〜5940頁;米国特許第4,997,854号および米国特許出願公開第2004/0248871号を参照のこと。
小分子
特定の実施形態では、薬剤は、LOX/LOXL酵素の活性を低減、減少または阻害する1つまたは複数の小分子を含む。「小分子」とは、約5kD未満、約4kD未満、約3kD未満、約2kD未満、約1kD未満または約.5kD未満の分子量を有する薬剤を指す。小分子には、核酸、ペプチド模倣物(peptidomimetics)、ペプトイド、炭水化物、脂質または他の有機もしくは無機分子が含まれるがこれらに限定されない。化学的および/または生物学的混合物のライブラリー、例えば、真菌、細菌または藻類抽出物は、当該分野で公知であり、ある特定の実施形態では、小分子の供給源として使用され得る。特定の実施形態では、小分子は、10,000ダルトン未満、例えば、8000、6000、4000、2000ダルトン未満、例えば、50〜1500、500〜1500、200〜2000、500〜5000ダルトンの間の分子量を有する。
特定の実施形態では、小分子は、10,000ダルトン未満、例えば、8000、6000、4000、2000ダルトン未満、例えば、50〜1500、500〜1500、200〜2000、500〜5000ダルトンの間の分子量を有する。分子ライブラリーの合成のための方法の例は、以下に見出すことができる:(Carellら、1994年a;Carellら、1994年b;Choら、1993年;DeWittら、1993年;Gallopら、1994年;Zuckermannら、1994年)。化合物のライブラリーは、溶液中(Houghtenら、1992年)またはビーズ上(Lamら、1991年)、チップ上(Fodorら、1993年)、細菌、胞子(Ladnerら、米国特許第5,223,409号、1993年)、プラスミド(Cullら、1992年)またはファージ上(Cwirlaら、1990年;Devlinら、1990年;Feliciら、1991年;Ladnerら、米国特許第5,223,409号、1993年;ScottおよびSmith、1990年)に提示され得る。
本発明の目的のために有用なライブラリーには、以下が含まれるがこれらに限定されない:(1)化学的ライブラリー、(2)天然産物ライブラリー、ならびに(3)ランダムなペプチド、オリゴヌクレオチドおよび/または有機分子から構成されるコンビナトリアルライブラリー。
化学的ライブラリーは、公知の化合物、または天然産物スクリーニングを介して「ヒット」もしくは「リード」と同定された化合物の構造的アナログからなる。天然産物ライブラリーは、以下によって、スクリーニングのための混合物を創出するために使用される微生物、動物、植物または海洋生物の収集物から導出される:(1)土壌由来のブロス、植物もしくは海洋微生物の発酵および抽出、または(2)植物もしくは海洋生物の抽出。天然産物ライブラリーには、ポリケチド、非リボソームペプチドおよびそれらのバリアント(天然に存在しない)が含まれる。総説については、Cane, D. E.ら(1998年)Science 282巻:63〜68頁を参照のこと。コンビナトリアルライブラリーは、混合物として、多数のペプチド、オリゴヌクレオチドまたは有機化合物から構成される。それらは、伝統的な自動化合成方法、PCR、クローニングまたは特許化された合成方法によって、比較的容易に調製される。
抗体
種々の実施形態では、LOXL2の発現および/または活性を低減させる1つまたは複数の薬剤は、抗体を含み、かかる方法において有用な抗原結合性断片は、例えば、LOXまたはLOXL2に特異的に結合するものである。例えば、米国特許出願第20090053224号および同第20090104201号を参照されたいが、全ての抗LOX、抗LOXL1、抗LOXL2、抗LOXL3および抗LOXL4抗体の配列(CDR、重鎖および軽鎖配列を含む)、抗体を作製する方法、ならびに抗体バリアントを含むそれらの開示は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
本明細書で使用する場合、用語「抗体」とは、抗原性エピトープに特異的に結合するペプチド配列(例えば、可変領域配列)を含む、単離されたまたは組換えのポリペプチド結合性作用物質を意味する。用語は、その最も広い意味で使用され、それらが所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ナノボディ、ダイアボディ(diabody)、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ならびにFv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFab2が含まれるがこれらに限定されない抗体断片を、具体的に包含する。用語「ヒト抗体」とは、可能な非ヒトCDR領域を除いて、ヒト起源の配列を含有する抗体を指し、免疫グロブリン分子の完全構造が存在することを含意せず、抗体がヒトにおいて最小の免疫原性効果を有する(即ち、それ自体に対する抗体の産生を誘導しない)ことのみを含意する。
「抗体断片」は、全長抗体の一部分、例えば、全長抗体の抗原結合性領域または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体(Zapataら(1995年)Protein Eng. 8巻(10号):1057〜1062頁);単鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合性部位を有する「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合性断片、ならびに、容易に結晶化する能力を反映する名称である残りの「Fc」断片を生じる。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、抗原を架橋することがなおも可能なF(ab’)2断片を生じる。
「Fv」は、完全な抗原認識部位および抗原結合性部位を含有する最小の抗体断片である。この領域は、1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインが緊密に非共有結合で会合したダイマーからなる。この構成では、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH−VLダイマーの表面上の抗原結合性部位を規定する。集合的に、6つのCDRが、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に対して特異的な6つのCDRのうち3つのみを含む単離されたVHもしくはVL領域)であっても、抗原を認識および結合する能力を有するが、一般に、完全Fv断片のものよりも低い親和性においてである。
「Fab」断片は、重鎖および軽鎖可変領域に加えて、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)もまた含有する。Fab断片は、抗体のパパイン消化後に元々観察されていた。F(ab’)断片が、抗体ヒンジ領域由来の1つまたは複数のシステインを含め、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端におけるいくつかのさらなる残基を含有するという点で、Fab’断片はFab断片とは異なる。F(ab’)2断片は、ヒンジ領域の近傍でジスルフィド結合によって連結された2つのFab断片を含有し、抗体のペプシン消化後に元々観察されていた。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’断片についての、本明細書での名称である。抗体断片の他の化学的カップリングもまた公知である。
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと呼ばれる2つの明確に別個の型のうち1つに割り当てられ得る。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMに割り当てられ得、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2へとさらに分割され得る。
「単鎖Fv」または「sFv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。一部の実施形態では、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、sFvが抗原結合のために望ましい構造を形成するのが可能になる。sFvの総説については、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻(RosenburgおよびMoor編)Springer−Verlag、New York、269〜315頁(1994年)を参照のこと。
用語「ダイアボディ」とは、2つの抗原結合性部位を有する小さい抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖中に、軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH−VL)。同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合するように強いられ、それによって、2つの抗原結合性部位を創出する。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161およびHollingerら(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:6444〜6448頁に、さらに記載されている。
「単離された」抗体は、同定され、かつその天然環境の構成要素から分離および/または回収された抗体である。その天然環境の構成要素には、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が含まれ得る。一部の実施形態では、単離された抗体は、(1)Lowry法によって決定されるように、抗体の95重量%超、例えば、99重量%超まで、(2)例えば、スピニングカップシーケネーター(spinning cup sequenator)の使用によって、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を取得するのに十分な程度まで、または(3)クマシーブルーもしくは銀染色による検出を用いて、還元条件もしくは非還元条件下でのゲル電気泳動(例えば、SDS−PAGE)によって均質まで、精製される。抗体の天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在しないので、用語「単離された抗体」には、組換え細胞内のin situの抗体が含まれる。ある特定の実施形態では、単離された抗体は、少なくとも1回の精製ステップによって調製される。
一部の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体である。ヒト化抗体には、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれる。従って、ヒト化形態の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小の配列を含有するキメラ免疫グロブリンである。非ヒト配列は、可変領域中、特に相補性決定領域(CDR)中に、主に位置する。一部の実施形態では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にも、移入されたCDRまたはフレームワーク配列中にも見出されない残基もまた含み得る。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインのうち実質的に全てを含み、ここで、CDRの全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク領域の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。本開示の目的のために、ヒト化抗体は、免疫グロブリン断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合性部分配列(subsequence)もまた含み得る。
ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部分もまた、含み得る。例えば、Jonesら(1986年)Nature 321巻:522〜525頁;Riechmannら(1988年)Nature 332巻:323〜329頁;およびPresta(1992年)Curr. Op. Struct. Biol. 2巻:593〜596頁を参照のこと。
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該分野で公知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からその中に導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」または「ドナー」残基と呼ばれる場合が多く、これらは、典型的には、「移入」または「ドナー」可変ドメインから得られる。例えば、ヒト化は、げっ歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに使用することによって、Winterおよび共同研究者らの方法に本質的に従って実施され得る。例えば、Jonesら、上記;Riechmannら、上記およびVerhoeyenら(1988年)Science 239巻:1534〜1536頁を参照のこと。従って、かかる「ヒト化」抗体には、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号)が含まれ、ここで、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ないドメインが、非ヒト種由来の対応する配列で置換されている。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、一部のCDR残基および任意選択で一部のフレームワーク領域残基が、げっ歯類抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体)中の同様の部位由来の残基によって置換された、ヒト抗体である。
ヒト抗体は、例えば、ファージディスプレイライブラリーを使用することによっても、産生され得る。Hoogenboomら(1991年)J. Mol. Biol、227巻:381頁;Marksら(1991年)J. Mol. Biol. 222巻:581頁。ヒトモノクローナル抗体を調製するための他の方法は、Coleら(1985年)「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、Alan R. Liss、77頁およびBoernerら(1991年)J. Immunol. 147巻:86〜95頁によって記載されている。
ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されたトランスジェニック動物(例えば、マウス)中に、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによって作製され得る。免疫学的チャレンジの際に、ヒト抗体産生が観察され、これは、遺伝子再配列、アセンブリおよび抗体レパートリーを含む全ての点において、ヒトにおいて見られるものと密接に似ている。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、ならびに以下の科学刊行物:Marksら(1992年)Bio/Technology 10巻:779〜783頁(1992年);Lonbergら(1994年)Nature 368巻:856〜859頁;Morrison(1994年)Nature 368巻:812〜813頁;Fishwaldら(1996年)Nature Biotechnology 14巻:845〜851頁;Neuberger(1996年)Nature Biotechnology 14巻:826頁;およびLonbergら(1995年)Intern. Rev. Immunol. 13巻:65〜93頁に記載されている。
抗体は、上記のような公知の選択および/または変異誘発方法を使用して、親和性成熟され得る。一部の実施形態では、親和性成熟された抗体は、成熟された抗体が調製される出発抗体(一般に、マウス、ウサギ、ニワトリ、ヒト化またはヒト)のものよりも、5倍もしくはそれ超、10倍もしくはそれ超、20倍もしくはそれ超または30倍もしくはそれ超の、親和性を有する。
抗体はまた、二重特異性抗体であり得る。二重特異性抗体は、モノクローナルであり、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するヒトまたはヒト化抗体であり得る。本発明の場合では、2つの異なる結合特異性は、2つの異なるリジルオキシダーゼ型酵素に、または単一のリジルオキシダーゼ型酵素上の2つの異なるエピトープに向けられるものであり得る。
本明細書に開示される抗体はまた、イムノコンジュゲートであり得る。かかるイムノコンジュゲートは、レポーターなどの第2の分子にコンジュゲートされた抗体(例えば、リジルオキシダーゼ型酵素に対するもの)を含む。イムノコンジュゲートは、細胞傷害剤、例えば、化学療法剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、またはそれらの断片)または放射性同位体(即ち、放射性コンジュゲート(radioconjugate))にコンジュゲートされた抗体もまた含み得る。
特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープ「に特異的に結合する」または「に特異的な」抗体は、任意の他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合することなしに、その特定のポリペプチドまたはエピトープに結合する抗体である。一部の実施形態では、本開示の抗体は、約4℃、25℃、37℃または42℃の温度で測定された、モノクローナル抗体、scFv、Fabまたは他の形態の抗体の形態で;100nMと等しいもしくはそれ未満の、任意選択で10nM未満の、任意選択で1nM未満の、任意選択で0.5nM未満の、任意選択で0.1nM未満の、任意選択で0.01nM未満の、または任意選択で0.005nM未満の解離定数(Kd)で、その標的に特異的に結合する。
ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、リジルオキシダーゼ型酵素中の1つまたは複数のプロセシング部位(例えば、タンパク分解性切断の部位)に結合し、それによって、触媒的に活性な酵素へのプロ酵素またはプレプロ酵素のプロセシングを有効に遮断し、それによって、リジルオキシダーゼ型酵素の活性を低減させる。
ある特定の実施形態では、本開示に従う抗体は、他のリジルオキシダーゼ型酵素、例えば、LOX、LOXL1、LOXL3およびLOXL4へのその結合親和性よりも高い結合親和性、例えば、少なくとも10倍、少なくとも100倍、またはさらには少なくとも1000倍高い結合親和性で、ヒトLOXL2に結合する。
ある特定の実施形態では、本開示に従う抗体は、リジルオキシダーゼ型酵素の触媒活性の非競合的阻害剤である。ある特定の実施形態では、本開示に従う抗体は、リジルオキシダーゼ型酵素の触媒ドメインの外側を結合する。ある特定の実施形態では、本開示に従う抗体は、LOXL2のSRCR4ドメインに結合する。ある特定の実施形態では、LOXL2のSRCR4ドメインに結合し、非競合的阻害剤として機能する抗LOXL2抗体は、共有に係る米国特許出願公開第2009/0053224号および同第2009/0104201号に記載されたAB0023抗体であり、全ての抗LOX、抗LOXL1、抗LOXL2、抗LOXL3および抗LOXL4抗体の配列(CDR、重鎖および軽鎖配列を含む)、抗体を作製する方法、ならびに抗体バリアントを含むそれらの開示は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、LOXL2のSRCR4ドメインに結合し、非競合的阻害剤として機能する抗LOXL2抗体は、共有に係る米国特許出願公開第2009/0053224号および同第2009/0104201号に記載されるAB0024抗体(AB0023抗体のヒトバージョン)である。さらなる例示された抗LOXL2抗体またはその抗原結合性断片は、米国特許出願公開第2012/0309020号、同第2013/0324705号、同第2014/0079707号および同第2011/0200606号中に見出され得る;それらは各々、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、抗LOXL2抗体またはその抗原結合性断片は、以下を含む:(i)配列番号37、38、39、40もしくは41として示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;(ii)配列番号42、43、44もしくは45として示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;(iii)配列番号37、38、39、40もしくは41として示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)、CDR1、CDR2およびCDR3;ならびに/または(iv)配列番号42、43、44もしくは45として示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR、CDR1、CDR2およびCDR3。ある特定の他の一実施形態では、抗LOXL2抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号37、38、39、40または41として示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号42、43、44または45として示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、AB0024は、配列によって言及され得、ここで、重鎖可変領域は、配列番号37、38、39、40もしくは41として示されるアミノ酸配列を含み;および/または軽鎖可変領域は、配列番号42、43、44もしくは45として示されるアミノ酸配列を含む。
特定の実施形態では、本開示に従う抗体は、リジルオキシダーゼ型酵素に結合するだけでなく、例えば、インテグリンベータ1または他の細胞受容体もしくはタンパク質を介した、リジルオキシダーゼ型酵素の取り込みまたは内部移行を低減または阻害する。かかる抗体は、例えば、細胞外マトリックスタンパク質、細胞受容体および/またはインテグリンに結合し得る。
リジルオキシダーゼ型酵素を認識する例示的な抗体、およびリジルオキシダーゼ型酵素に対する抗体に関するさらなる開示は、共有に係る米国特許出願公開第2009/0053224号および同第2009/0104201号中に提供されており、全ての抗LOX、抗LOXL1、抗LOXL2、抗LOXL3および抗LOXL4抗体の配列(CDR、重鎖および軽鎖配列を含む)、抗体を作製する方法、ならびに抗体バリアントを含むそれらの開示は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
LOX/LOXLを標的化するポリヌクレオチド
リジルオキシダーゼ型酵素の阻害は、転写レベルまたは翻訳レベルのいずれかにおいて、リジルオキシダーゼ酵素の発現を下方調節することによってもたらされ得る。モジュレーションの1つのかかる方法は、リジルオキシダーゼ型酵素をコードするmRNA転写物と配列特異的に結合することが可能なアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの使用を含む。
特定の実施形態では、本開示のポリヌクレオチド阻害剤は、LOXまたはLOXLの取り込みまたは内部移行を低減または阻害し得る。かかるポリヌクレオチド阻害剤は、EMTを低減させ得、従って、本明細書に開示される適用にとって有用であることが企図される。
ある特定の実施形態では、本開示のポリヌクレオチド阻害剤は、LOXまたはLOXLのリジルオキシダーゼ酵素活性を低減または阻害し得る。かかるポリヌクレオチド阻害剤は、EMTを低減させ得、従って、本明細書に開示される適用にとって有用であることが企図される。
アンチセンスオリゴヌクレオチド
標的mRNA分子へのアンチセンスオリゴヌクレオチド(またはアンチセンスオリゴヌクレオチドアナログ)の結合は、細胞内RNase Hによるハイブリッドの酵素的切断をもたらし得る。ある特定の場合には、アンチセンスRNA−mRNAハイブリッドの形成は、正確なスプライシングを妨害し得る。両方の場合において、翻訳に適切なインタクトな機能的標的mRNAの数は、低減または排除される。他の場合には、標的mRNAへのアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドアナログの結合は、リボソーム結合を(例えば、立体障害によって)防止でき、それによって、mRNAの翻訳を防止する。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、任意の型のヌクレオチドサブユニットを含み得、例えば、これらは、DNA、RNA、アナログ、例えばペプチド核酸(PNA)、または前述の混合物であり得る。RNAオリゴヌクレオチドは、標的mRNA分子とより安定な二重鎖を形成するが、ハイブリダイズしていないオリゴヌクレオチドは、他の型のオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドアナログよりも、細胞内での安定性がより低い。これは、この目的のために設計されたベクターを使用して細胞の内側でRNAオリゴヌクレオチドを発現させることによって相殺され得る。このアプローチは、例えば、豊富で長寿命のタンパク質をコードするmRNAを標的化することを試みる場合に、使用され得る。
以下を含むさらなる検討事項が、アンチセンスオリゴヌクレオチドを設計する場合に考慮され得る:(i)標的配列への結合における十分な特異性;(ii)溶解度;(iii)細胞内および細胞外ヌクレアーゼに対する安定性;(iv)細胞膜に浸透する能力;ならびに(v)生物を処置するために使用される場合、低い毒性。
標的mRNAおよびオリゴヌクレオチドの両方における構造的変更のエネルギーを説明する熱力学的サイクルに基づいて、それらの標的mRNAに対する最も高い予測された結合親和性を有するオリゴヌクレオチド配列を同定するためのアルゴリズムが、利用可能である。例えば、Waltonら(1999年)Biotechnol. Bioeng. 65巻:1〜9頁は、ウサギβ−グロビン(RBG)およびマウス腫瘍壊死因子−アルファ(TNFα)転写物に向けられるアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計するために、かかる方法を使用した。同じ研究グループは、細胞培養物における、3つのモデル標的mRNA(ヒト乳酸デヒドロゲナーゼAおよびBならびにラットgp130)に対する、合理的に選択されたオリゴヌクレオチドのアンチセンス活性が、ほぼ全ての場合に有効であることが証明されたこともまた報告している。これは、ホスホジエステルおよびホスホロチオエート化学の両方によって作製されたオリゴヌクレオチドを使用した、2つの細胞型における3つの異なる標的に対する試験を含んだ。
さらに、in vitroの系を使用して、特異的オリゴヌクレオチドを設計し、その効率を予測するためのいくつかのアプローチが利用可能である。例えば、Matveevaら(1998年)Nature Biotechnology 16巻:1374〜1375頁を参照のこと。
本開示に従うアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド、例えば、10と15との間、15と20との間、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも22、少なくとも25、少なくとも30、またはさらには少なくとも40ヌクレオチドの、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログを含む。かかるポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログは、リジルオキシダーゼ型酵素、例えば、LOXまたはLOXL2をコードするmRNAと、in vivoで、生理学的条件下で、アニールまたはハイブリダイズする(即ち、塩基相補性に基づいて二本鎖構造を形成する)ことができる。
本開示に従うアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞または組織に投与される核酸構築物から発現され得る。任意選択で、アンチセンス配列の発現は、誘導性プロモーターによって制御され、その結果、アンチセンス配列の発現は、細胞または組織において、スイッチがオンおよびオフにされ得る。あるいは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、化学的に合成され、例えば、医薬組成物の一部として、細胞または組織に直接投与され得る。
アンチセンステクノロジーは、高度に正確なアンチセンス設計アルゴリズムおよび広範な種々のオリゴヌクレオチド送達系の生成をもたらしており、それによって、公知の配列の発現を下方調節するのに適切なアンチセンスアプローチを設計および実行することが、当業者に可能となっている。アンチセンステクノロジーに関するさらなる情報については、例えば、Lichtensteinら、Antisense Technology: A Practical Approach、Oxford University Press、1998年を参照のこと。
低分子RNAおよびRNAi
リジルオキシダーゼ型酵素の活性の阻害のための別の方法は、標的mRNAと相同であってその分解をもたらす二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)分子を利用するアプローチ、RNA干渉(RNAi)である。Carthew(2001年)Curr. Opin. Cell. Biol. 13巻:244〜248頁。
RNA干渉は、典型的には、2ステップのプロセスである。開始ステップと呼ばれる第1のステップでは、インプットdsRNAは、ATP依存的様式で二本鎖RNAを切断するRNase IIIファミリーの二本鎖特異的リボヌクレアーゼのメンバーDicerの作用によっておそらくは、21〜23ヌクレオチド(nt)の低分子干渉RNA(siRNA)へと消化される。インプットRNAは、例えば、直接、または導入遺伝子もしくはウイルスを介して送達され得る。各々2ヌクレオチドの3’オーバーハングを有する二重鎖(siRNA)による逐次的な切断事象が、RNAを19〜21へと分解する。Hutvagnerら(2002年)Curr. Opin. Genet. Dev. 12巻:225〜232頁;Bernstein(2001年)Nature 409巻:363〜366頁。
第2のエフェクターステップでは、siRNA二重鎖は、ヌクレアーゼ複合体に結合して、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を形成する。siRNA二重鎖のATP依存的巻き戻しが、RISCの活性化に必要である。次いで、活性RISC(単一のsiRNAおよびRNaseを含有する)は、塩基対合相互作用によって相同な転写物を標的化し、典型的には、siRNAの3’末端から始まるおよそ12ヌクレオチドの断片へと、mRNAを切断する。Hutvagnerら、上記;Hammondら(2001年)Nat. Rev. Gen. 2巻:110〜119頁;Sharp(2001年)Genes. Dev. 15巻:485〜490頁。
RNAiおよび関連する方法は、Tuschl(2001年)Chem. Biochem. 2巻:239〜245頁;Cullen(2002年)Nat. Immunol. 3巻:597〜599頁;およびBrantl(2002年)Biochem. Biophys. Acta. 1575巻:15〜25頁にも記載されている。
リジルオキシダーゼ型酵素の活性の阻害剤としての、本開示での使用に適切なRNAi分子の合成のための例示的な戦略は、AAジヌクレオチド配列について、開始コドンの下流の適切なmRNA配列をスキャンすることである。各AA+下流の(即ち、3’に隣接する)19ヌクレオチドは、潜在的なsiRNA標的部位として記録される。コード領域中の標的部位が好ましい。なぜなら、mRNAの非翻訳領域(UTR)、および/または翻訳開始複合体において結合するタンパク質が、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨害し得るからである。Tuschl(2001年)上記。しかしながら、GAPDH遺伝子の5’UTRに指向されるsiRNAが、細胞GAPDH mRNAにおける約90%の減少を媒介し、タンパク質レベルを完全に消失させた場合において実証されたように、非翻訳領域に指向されるsiRNAもまた有効であり得ると理解される(www.ambion.com/techlib/tn/91/912.html)。潜在的標的部位のセットが上記のように取得されると、潜在的標的の配列は、配列アラインメントソフトウェア(例えば、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてNCBIから入手可能なBLASTソフトウェア)を使用して、適切なゲノムデータベース(例えば、ヒト、マウス、ラットなど)と比較される。他のコード配列に対して顕著な相同性を示す潜在的標的部位は、棄却される。
適格な標的配列は、siRNA合成のための鋳型として選択される。選択された配列は、低いG/C含量を有する配列を含み得る。なぜなら、これらが、55%よりも高いG/C含量を有する配列と比較して、遺伝子サイレンシングを媒介することにおいてより有効であることが示されているからである。いくつかの標的部位が、評価のために、標的遺伝子の長さに沿って選択され得る。選択されたsiRNAのより良い評価のために、陰性対照が併せて使用される。陰性対照siRNAは、試験siRNAと同じヌクレオチド組成を有するが、ゲノムに対する顕著な相同性を欠く配列を含み得る。従って、例えば、siRNAのスクランブルヌクレオチド配列が使用され得るが、ただし、これは、任意の他の遺伝子に対するいかなる顕著な相同性も示さないことを条件とする。
本開示のsiRNA分子は、宿主細胞中に導入されるとsiRNA転写物の安定な発現を促進し得る発現ベクターから転写され得る。これらのベクターは、遺伝子特異的サイレンシングを実行することが可能なsiRNA分子へとin vivoでプロセシングされる低分子ヘアピンRNA(shRNA)を発現させるように操作される。例えば、Brummelkampら(2002年)Science 296巻:550〜553頁;Paddisonら(2002年)Genes Dev. 16巻:948〜958頁;Paulら(2002年)Nature Biotech. 20巻:505〜508頁;Yuら(2002年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99巻:6047〜6052頁を参照のこと。
低分子ヘアピンRNA(shRNA)は、二本鎖ヘアピンループ構造を形成する一本鎖ポリヌクレオチドである。二本鎖領域は、リジルオキシダーゼ型酵素をコードするポリヌクレオチド(例えば、LOXまたはLOXL2 mRNA)などの標的配列にハイブリダイズ可能な第1の配列、および第1の配列と相補的な第2の配列から形成される。第1および第2の配列は、二本鎖領域を形成する;一方、第1の配列と第2の配列との間に存在する塩基対合していないリンカーヌクレオチドは、ヘアピンループ構造を形成する。shRNAの二本鎖領域(ステム)は、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含み得る。
shRNA分子は、任意選択のヌクレオチドオーバーハング、例えば、2bpオーバーハング、例えば、3’UUオーバーハングを有し得る。バリエーションが存在し得るものの、ステム長さは、典型的には、およそ15〜49、およそ15〜35、およそ19〜35、およそ21〜31bpまたはおよそ21〜29bpの範囲であり、ループのサイズは、およそ4〜30bp、例えば、約4〜23bpの範囲であり得る。
細胞内でのshRNAの発現のために、プロモーター(例えば、RNAポリメラーゼIII H1−RNAプロモーターまたはU6 RNAプロモーター)、shRNAをコードする配列の挿入のためのクローニング部位、および転写終結シグナル(例えば、4〜5のアデニン−チミジン塩基対のストレッチ)を含有するプラスミドベクターが、用いられ得る。ポリメラーゼIIIプロモーターは、一般に、十分に規定された転写開始および終結部位を有し、それらの転写物は、ポリ(A)テイルを欠く。これらのプロモーターのための終結シグナルは、ポリチミジントラクトによって規定され、転写物は、典型的には、コードされた2番目のウリジンの後ろで切断される。この位置における切断は、発現されたshRNA中に、合成siRNAの3’オーバーハングと類似した3’UUオーバーハングを生成する。哺乳動物細胞においてshRNAを発現させるためのさらなる方法は、上で引用した参考文献中に記載されている。
適切なshRNA発現ベクターの一例は、pSUPER(商標)(Oligoengine,Inc.、Seattle、Wash.)であり、これは、十分に規定された転写開始部位および5つの連続するアデニン−チミジン対からなる終結シグナルと共に、ポリメラーゼ−III H1−RNA遺伝子プロモーターを含む。Brummelkampら、上記。転写産物は、(終結配列によってコードされる5つのうちの)2番目のウリジンの後ろの部位において切断されて、これもまたヌクレオチドオーバーハングを含有する合成siRNAの末端と似た転写物を生じる。shRNAへと転写される配列は、かかるベクター中にクローニングされ、その結果、これらは、第1の配列の逆相補体を含む第2の配列から短いスペーサーによって分離された、mRNA標的(例えば、リジルオキシダーゼ型酵素をコードするmRNA)の一部分と相補的な第1の配列を含む転写物を生成する。得られた転写物は、それ自体折り畳まれて、RNA干渉(RNAi)を媒介するステム−ループ構造を形成する。
別の適切なsiRNA発現ベクターは、別々のpol IIIプロモーターの調節下で、センスおよびアンチセンスsiRNAをコードする。Miyagishiら(2002年)Nature Biotech. 20巻:497〜500頁。このベクターによって生成されたsiRNAもまた、5チミジン(T5)終結シグナルを含む。
siRNA、shRNAおよび/またはそれらをコードするベクターは、種々の方法、例えばリポフェクションによって、細胞中に導入され得る。ベクター媒介性の方法もまた開発されている。例えば、siRNA分子は、レトロウイルスを使用して細胞中に送達され得る。レトロウイルスを使用したsiRNAの送達は、ある特定の状況において利点を提供し得る。なぜなら、レトロウイルス送達が、効率的、均一であり得、安定な「ノックダウン」細胞について即座に選択するからである。Devroeら(2002年)BMC Biotechnol. 2巻:15頁。
最近の科学刊行物は、標的mRNA発現を阻害することにおけるかかる短い二本鎖RNA分子の効力を検証しており、従って、かかる分子の治療上の能力を明らかに実証している。例えば、RNAiは、C型肝炎ウイルスに感染した細胞(McCaffreyら(2002年)Nature 418巻:38〜39頁)、HIV−1感染細胞(Jacqueら(2002年)Nature 418巻:435〜438頁)、子宮頚がん細胞(Jiangら(2002年)Oncogene 21巻:6041〜6048頁)および白血病細胞(Wildaら(2002年)Oncogene 21巻:5716〜5724頁)において、阻害のために利用されている。
V.組成物
本明細書で企図されるLOX/LOXL阻害剤またはアンタゴニストは、薬学的に許容される担体または賦形剤と組み合わせた場合、組成物として使用され得る。特定の実施形態では、企図された医薬組成物は、in vivo、in vitroまたはex vivoでの、心不全、特発性拡張型心筋症(IDCM)および心臓線維症と関連する少なくとも1つの症状を処置、予防または軽減するための、被験体への投与のために有用である。
一実施形態では、LOX/LOXL阻害剤は、LOXL2阻害剤である。
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、線維症の程度、心筋リモデリング、心不全の間の心筋の硬さ、心不整脈、心筋線維芽細胞活性化を低減させるため、ならびに/または収縮期および拡張期の心機能を改善するために使用される。
薬学的に許容される担体は、投与される患者にとって生理学的に許容されるものであり、それと共に投与される抗体またはペプチドの治療特性を保持する。薬学的に許容される担体およびそれらの製剤化は、例えば、Remington’ pharmaceutical Sciences(第18版、A. Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、Pa. 1990年)中に一般に記載されている。1つの例示的な薬学的担体は、生理食塩水である。語句「薬学的に許容される担体」とは、本明細書で使用する場合、1つの臓器または身体の一部の投与部位から、別の臓器または身体の一部へと、対象の抗体またはペプチドを運搬または輸送することに関与する、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクル、例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、患者にとって傷害性でないという意味で、「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体はまた、アンタゴニストの比活性を変更すべきではない。例示的な担体および賦形剤は、本明細書の他の場所に提供されている。
一実施形態では、薬学的投与と適合性の、溶媒(水性または非水性)、溶液、エマルジョン、分散媒、コーティング、等張性および吸収促進または遅延剤を含む薬学的に許容されるまたは生理学的に許容される組成物が、企図される。従って、医薬組成物または医薬製剤とは、被験体における薬学的使用に適切な組成物を指す。医薬組成物および製剤は、ある量の本発明の化合物、例えば、有効量の本発明のアンタゴニスト、および薬学的または生理学的に許容される担体を含む。
医薬組成物は、全身または局所の、投与の特定の経路と適合性であるように製剤化され得る。従って、医薬組成物は、種々の経路による投与に適切な、担体、希釈剤または賦形剤を含む。
さらなる一実施形態では、本明細書で企図される組成物は、組成物中のアンタゴニストの安定性を改善するため、および/または組成物の放出速度を制御するために、薬学的に許容される添加剤を含む。本発明の薬学的に許容される添加剤は、対象アンタゴニストの比活性を変更しない。好ましい薬学的に許容される添加剤は、糖、例えば、マンニトール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、トレハロース、ソルボース、スクロース、ガラクトース、デキストラン、デキストロース、フルクトース、ラクトースおよびそれらの混合物である。本発明の薬学的に許容される添加剤は、薬学的に許容される担体および/または賦形剤、例えばデキストロースと組み合わされ得る。別の実施形態では、好ましい薬学的に許容される添加剤は、ペプチドの安定性を増加させ、薬学的溶液のゲル化を減少させるための、界面活性剤(surfactant)、例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80である。界面活性剤は、溶液の0.01%〜5%の量で、組成物に添加され得る。かかる薬学的に許容される添加剤の添加は、貯蔵中の組成物の安定性および半減期を増加させる。
製剤化および送達の方法は、一般に、処置される部位および疾患に従って適合される。例示的な製剤には、ミセル、リポソームまたは薬物放出カプセル中にカプセル化された製剤(低速放出のために設計された生体適合性コーティング内に取り込まれた活性薬剤);摂取可能な製剤;外用使用のための製剤、例えば、クリーム剤、軟膏剤およびゲル剤;ならびに他の製剤、例えば、吸入剤、エアロゾル剤およびスプレー剤が含まれる、非経口投与、例えば、静脈内、動脈内、筋内または皮下投与に適切なものが含まれるがこれらに限定されない。本発明の化合物の投薬量は、処置の必要性の程度および重症度、投与される組成物の活性、被験体の全体的な健康および当業者に周知の他の考慮事項に従って変動する。
製剤または経腸(経口)投与は、錠剤(コーティングありまたはコーティングなし)、カプセル(硬または軟)、ミクロスフェア、エマルジョン、粉末、顆粒、結晶、懸濁液、シロップまたはエリキシル中に含有され得る。例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムを含む、従来の非毒性の固体担体が、固体製剤を調製するために使用され得る。補助的活性化合物(例えば、防腐剤、抗菌剤、抗ウイルス剤および抗真菌剤)もまた、製剤中に取り込まれ得る。液体製剤は、経腸投与のためにも使用され得る。担体は、石油、動物、植物または合成、例えば、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油を含む種々の油から選択され得る。適切な薬学的賦形剤には、例えば、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールが含まれる。
経腸、非経口または経粘膜送達のための医薬組成物は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ハンクス溶液、リンゲル溶液、デキストロース/食塩水およびグルコース溶液を含む。製剤は、例えば緩衝剤、張度調整剤、湿潤剤、洗剤などの、生理学的条件に近づけるための補助物質を含有し得る。添加剤は、さらなる活性成分、例えば、殺菌剤または安定剤もまた含み得る。例えば、溶液は、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレートまたはオレイン酸トリエタノールアミンを含有し得る。さらなる非経口製剤および方法は、Bai(1997年)J. Neuroimmunol. 80巻:65〜75頁;Warren(1997年)J. Neurol. Sci. 152巻:31〜38頁;およびTonegawa(1997年)J. Exp. Med. 186巻:507〜515頁に記載されている。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製の、アンプル、使い捨てシリンジまたは複数用量バイアル中に封入され得る。
皮内または皮下投与のための医薬組成物は、無菌希釈剤、例えば、水、食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、グルタチオンまたは亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および張度の調整のための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースを含み得る。
注射のための医薬組成物は、無菌の注射可能な溶液または分散液の即時調製のための、水性溶液(水溶性の場合)または分散液および無菌粉末を含む。静脈内投与のために、適切な担体には、生理食塩水、静菌性水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール(polyetheylene glycol)など)およびそれらの適切な混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。抗菌剤および抗真菌剤には、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸およびチメロサールが含まれる。等張剤(isotonic agent)、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール(manitol)、ソルビトール、および塩化ナトリウムが、組成物中に含まれ得る。得られた溶液は、そのままでの使用のために包装、または凍結乾燥され得る;凍結乾燥された調製物は、後に投与前に無菌溶液と合わされ得る。
薬学的に許容される担体は、吸収またはクリアランスを安定化、増加または遅延させる化合物を含有し得る。かかる化合物には、例えば、炭水化物、例えば、グルコース、スクロースまたはデキストラン;低分子量タンパク質;ペプチドのクリアランスまたは加水分解を低減させる組成物;あるいは賦形剤または他の安定剤および/もしくは緩衝液が含まれる。吸収を遅延させる薬剤には、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンが含まれる。洗剤もまた、リポソーム担体を含む医薬組成物の吸収を、安定化、または増加もしくは減少させるために使用され得る。消化から保護するために、化合物は、酸性加水分解および酵素的加水分解に対してその化合物を抵抗性にするために、組成物と複合体化され得、または化合物は、リポソームなどの適切に抵抗性の担体中で複合体化され得る。消化から化合物を保護する手段は、当該分野で公知である(例えば、治療剤の経口送達のための脂質組成物を記載する、Fix(1996年)Pharm Res. 13巻:1760〜1764頁;Samanen(1996年)J. Pharm. Pharmacol. 48巻:119〜135頁;および米国特許第5,391,377号を参照のこと)。
経粘膜または経皮投与のために、障壁を透過するのに適切な浸透剤が、製剤中で使用される。かかる浸透剤は、当該分野で一般に公知であり、これには、例えば、経粘膜投与のためには、洗剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、経鼻スプレーまたは坐剤を介してであり得る(例えば、Sayani(1996年)「Systemic delivery of peptides and proteins across absorptive mucosae」Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 13巻:85〜184頁を参照のこと)。経皮投与のために、活性化合物は、当該分野で一般に公知のように、軟膏剤、塗擦剤(salve)、ゲル剤またはクリーム剤へと製剤化され得る。経皮送達系は、パッチ剤を使用しても達成され得る。
吸入送達のために、医薬製剤は、エアロゾルまたはミストの形態で投与され得る。エアロゾル投与のために、製剤は、界面活性剤および噴霧体と共に、微細に分割された形態で供給され得る。別の実施形態では、呼吸器組織へ製剤を送達するためのデバイスは、その中で製剤が気化するものである。当該分野で公知の他の送達系には、乾燥粉末エアロゾル、液体送達系、吸入器、エアジェットネブライザーおよび噴霧体系が含まれる(例えば、Patton(1998年)Biotechniques 16巻:141〜143頁;Dura Pharmaceuticals、San Diego、Calif.;Aradigm、Hayward、Calif.;Aerogen、Santa Clara、Calif.;およびInhale Therapeutic Systems、San Carlos、Calif.を参照のこと)。
生分解性の生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸が、使用され得る。かかる製剤の調製のための方法は、当業者に公知である。材料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に取得され得る。リポソーム懸濁液(抗体またはウイルスコートタンパク質を使用して細胞または組織に標的化されるリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用され得る。これらは、当該分野で公知の方法に従って、例えば、米国特許第4,235,871号;同第4,501,728号;同第4,522,811号;同第4,837,028号;同第6,110,490号;同第6,096,716号;同第5,283,185号;同第5,279,833号;Akimaru(1995年)Cytokines Mol. Ther. 1巻:197〜210頁;Alving(1995年)Immunol. Rev. 145巻:5〜31頁;およびSzoka(1980年)Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9巻:467頁)に記載されるように、調製され得る。ペプチドを含む小分子の持続性送達が可能な生分解性ミクロスフェアもしくはカプセルまたは他の生分解性ポリマー構成は、当該分野で公知である(例えば、Putney(1998年)Nat. Biotechnol. 16巻:153〜157頁を参照のこと)。本発明の化合物は、ミセル内に取り込まれ得る(例えば、Suntres(1994年)J. Pharm. Pharmacol. 46巻:23〜28頁;Woodle(1992年)Pharm. Res. 9巻:260〜265頁を参照のこと)。アンタゴニストは、脂質単層または二重層の表面に付着され得る。例えば、アンタゴニストは、ヒドラジド−PEG−(ジステアロイルホスファチジル)エタノールアミン含有リポソームに付着され得る(例えば、Zalipsky(1995年)Bioconjug. Chem. 6巻:705〜708頁を参照のこと)。あるいは、任意の形態の脂質膜、例えば、平面脂質膜またはインタクトな細胞、例えば赤血球の細胞膜が使用され得る。リポソームおよび脂質含有製剤は、例えば、静脈内、経皮(例えば、Vutla(1996年)J. Pharm. Sci. 85巻:5〜8頁を参照のこと)、経粘膜または経口投与を含む、任意の手段によって送達され得る。
本明細書で企図される組成物は、本明細書に提供される他の治療的部分または画像化/診断的部分と組み合わされ得る。治療的部分および/または画像化部分は、別々の組成物として、またはコンジュゲートした部分として、提供され得る。リンカーが、必要に応じて、コンジュゲートした部分のために含まれ得、本明細書の他の場所に記載されている。
本明細書に開示される抗体は、イムノリポソーム(immunoliposome)としても製剤化され得る。抗体を含有するリポソームは、Epsteinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、82巻:3688頁(1985年);Hwangら、Proc. Natl Acad. Sci. USA、77巻:4030頁(1980年);ならびに米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載されるような、当該分野で公知の方法によって調製される。増強された循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いて、逆相蒸発法によって生成され得る。リポソームは、所望の直径を有するリポソームを得るために、規定された孔サイズのフィルターを通じて押し出される。本発明の抗体のFab’断片は、ジスルフィド交換反応を介して、Martinら、J. Biol. Chem.、257巻:286〜288頁(1982年)に記載されるように、リポソームにコンジュゲートされ得る。化学療法剤(例えばドキソルビシン)は、リポソーム内に任意選択で含有される。Gabizonら、J. National Cancer Inst.、81巻(19号):1484頁(1989年)を参照のこと。
リポフェクションまたはリポソームは、抗LOX抗体または抗体断片を細胞中に送達するためにも使用され得る。抗体断片が使用される場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最も小さい阻害性断片が、使用され得る。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するペプチド分子が設計され得る。かかるペプチドは、化学的に合成および/または組換えDNAテクノロジーによって産生され得る。例えば、Marascoら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:7889〜7893頁(1993年)を参照のこと。本明細書の製剤はまた、例えば、互いに有害に影響を与えない補完的活性を有するものを含む、処置されている特定の適応症にとって必要な場合、1よりも多い活性化合物を含有し得る。あるいは、またはさらに、組成物は、その機能を増強する薬剤、例えば、細胞傷害剤、サイトカイン、化学療法剤または成長阻害剤などを含み得る。かかる分子は、意図した目的のために有効な量で組み合わされて、適切に存在する。活性成分はまた、それぞれコロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中またはマクロエマルジョン中の、例えばコアセルベーション技術によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に捕捉されていてもよい。かかる技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、上記に開示されている。
in vivo投与のための製剤は、無菌である。滅菌は、無菌濾過膜を介した濾過によって容易に達成され得る。
持続放出調製物が調製され得る。持続放出調製物の適切な例には、固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、これらのマトリックスは、造形品、例えばフィルム、またはマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドから構成される注射可能なミクロスフェア)、ならびにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。ポリマー、例えば、エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸は、100日間超にわたる分子の放出を可能にするが、ある特定のヒドロゲルは、より短い期間タンパク質を放出する。カプセル化された抗体が長期間身体中に保持される場合、それらは、37℃での湿気への曝露の結果として、変性または凝集し得、生物学的活性の喪失および免疫原性における可能な変化を生じる。合理的戦略が、関与する機構に依存して、安定化のために考案され得る。例えば、凝集機構が、チオ−ジスルフィド交換を介した分子間S−S結合形成であることが発見された場合、安定化は、スルフヒドリル残基を改変すること、酸性溶液から凍結乾燥させること、含水量を制御すること、適切な添加剤を使用すること、および特定のポリマーマトリックス組成物を開発することによって、達成され得る。
種々の他の医薬組成物ならびにそれらの調製および使用のための技術は、本開示に照らせば、当業者に公知である。適切な薬理学的組成物および関連の管理技術の詳細な列挙については、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 第20版(Lippincott、Williams & Wilkins 2003年)などのテキストによってさらに補足され得る、本明細書の詳細な教示を参照できる。
本発明によって企図される医薬組成物は、上に記載されている。本発明の一実施形態では、医薬組成物は、ヒト患者への投与のために許容可能であるように、発熱物質を含まないように製剤化され得る。発熱物質について医薬組成物を試験し、発熱物質を含まない医薬組成物を調製することは、当業者に十分に理解される。
本発明の一実施形態は、本発明の障害を処置するための医薬を作製するための、本発明の医薬組成物のいずれかの使用を企図する。医薬は、処置を必要としている患者/被験体の身体的特徴に基づいて製剤化され得、がん性組織の病期に基づいて単一または複数の製剤で製剤化される。本発明の医薬は、病院および診療所への配布のための適切なラベルを有する適切な医薬品パッケージ中に包装され得、ラベルは、被験体における本明細書に記載される障害の処置を示すためのものである。医薬は、単一または複数の単位として包装され得る。本発明の医薬組成物の投薬量および投与についての指示書が、以下に記載される医薬品パッケージおよびキットと共に含まれ得る。
IX.治療方法
本明細書で企図される医薬製剤は、心血管傷害と関連する少なくとも1つの症状を処置、予防または軽減するために使用され得る。本明細書で使用する場合、用語「心血管系」または「心血管」とは、心臓、ならびに身体中に血液を輸送する動脈、静脈および毛細血管のネットワークを指す。「心血管傷害」は、心臓、動脈、静脈または毛細血管に対する傷害である。本明細書で企図される組成物および方法を用いて処置するために適切な心血管傷害の例示的な例には、心不全、例えば、拡張期心不全および収縮期心不全;心房細動;特発性拡張型心筋症(IDCM);ならびに心臓線維症が含まれるがこれらに限定されない。
好ましい一実施形態では、本明細書で企図される組成物は、心不全またはIDCMと関連する少なくとも1つの症状を処置、予防または軽減するために、被験体に投与される。一部の実施形態では、本明細書で企図される組成物は、心房細動と関連する少なくとも1つの症状を処置、予防または軽減するために、被験体に投与される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、線維症の程度、心筋リモデリング、心不全の間の心筋の硬さ、心筋線維芽細胞活性化を低減させるため、ならびに/または収縮期および拡張期の心機能を改善するために、使用される。種々の実施形態では、本明細書で企図される、1つまたは複数の薬剤、例えば、抗LOXもしくは抗LOXL抗体、またはLOXもしくはLOXLに対して指向される小分子もしくは阻害性核酸を投与するステップを含む、心不全、IDCMまたは心臓線維症を有する被験体において、LOXまたはLOXLの発現または酵素活性を低減または減少させる方法が提供される。種々の実施形態では、本明細書で企図される、1つまたは複数の薬剤、例えば、抗LOXもしくは抗LOXL抗体、またはLOXもしくはLOXLに対して指向される小分子もしくは阻害性核酸を投与するステップを含む、心房細動を有する被験体において、LOXまたはLOXLの発現または酵素活性を低減または減少させる方法が提供される。一実施形態では、LOX/LOXL阻害剤は、LOXL2阻害剤である。他の実施形態では、それを必要とする被験体に、治療有効量の抗LOXL2抗体またはその抗原結合性断片を投与する、心不全、IDCM、心臓線維症または心房細動と関連する少なくとも1つの症状を処置、予防または軽減する方法が、提供される。一部の他の実施形態では、抗LOXL2抗体またはその抗原結合性断片は、以下を含む:(i)配列番号37、38、39、40もしくは41として示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;(ii)配列番号42、43、44もしくは45として示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;(iii)配列番号37、38、39、40もしくは41として示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)、CDR1、CDR2およびCDR3;ならびに/または(iv)配列番号42、43、44もしくは45として示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR、CDR1、CDR2およびCDR3。ある特定の他の一実施形態では、抗LOXL2抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号37、38、39、40または41として示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号42、43、44または45として示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
LOXまたはLOXLの阻害は、被験体において1つまたは複数の効果、例えば、線維症の程度を低減させる、心筋リモデリングを低減させる、心不全の間の心筋の硬さを低減させる、心筋線維芽細胞活性化を低減させる、ならびに/または収縮期および拡張期の心機能を改善するなどを有し得る。一実施形態では、LOX/LOXL阻害剤は、LOXL2阻害剤である。
本発明の医薬組成物は、任意の医療的処置に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比で、ある程度の所望の治療効果を生じるのに有効な治療有効量で、投与される。ヒト患者への本発明の医薬組成物の投与のために、本発明の医薬組成物は、炎症応答を誘導しないように、発熱物質を実質的に含まないように、当業者に公知の方法論によって製剤化され得る。
用語「処置すること」、「処置」などは、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを一般に意味するために、本明細書で使用される。効果は、疾患を完全もしくは部分的に予防する観点からは、予防的であり得、ならびに/または疾患についての部分的もしくは完全な治癒(cure)および/または疾患に帰せられ得る有害な効果の観点からは、治療的であり得る。「処置」は、本明細書で使用する場合、哺乳動物における疾患の任意の処置を包含し、これには以下:疾患の素因があり得るがそれを有するとはまだ診断されていない被験体において、疾患が生じるのを予防すること;疾患を阻害すること、即ち、その発症を抑止すること;または疾患を緩和すること、即ち、疾患の退縮を引き起こすことが含まれる。治療剤は、疾患または傷害の発生の前、その間、またはその後に投与され得る。処置が患者の望ましくない臨床症状を安定化または低減させる場合、進行中の疾患の処置は、特に重要である。予想された無増悪生存期間は、再発の数、疾患の病期および他の因子を含む予後因子に依存して、数ヶ月間〜数年間測定され得る。生存を延長することには、限定なしに、少なくとも1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約2年、少なくとも約3年またはそれ超の時間が含まれる。全生存もまた、数ヶ月間〜数年間測定され得る。患者の症状は、静的のままであり得るか、または減少し得る。
本明細書で使用する場合、語句「〜の少なくとも1つの症状を軽減すること」とは、被験体が処置されている疾患または状態の1つまたは複数の症状を減少させることを指す。特定の実施形態では、処置されている疾患または状態は、心不全、心房細動、特発性拡張型心筋症(IDCM)および心臓線維症であり、軽減される1つまたは複数の症状には、線維症の程度を低減させること、心筋リモデリングを低減させること、心不全の間の心筋の硬さを低減させること、心筋線維芽細胞活性化を低減させること、ならびに/または収縮期および拡張期の心機能を改善することが含まれるがこれらに限定されない。
本明細書で使用する場合、用語「量」とは、臨床結果を含む、有益なまたは所望の予防的または治療的結果を達成するのに十分な、細胞の「有効な量」または「有効量」を指す。一実施形態では、有効量とは、本明細書で企図される疾患を予防するのに、その1つの症状を軽減するのに、またはその疾患を処置するのに十分な、治療剤の量を指す。
本明細書で使用する場合、用語「治療有効量」または「有効量」とは、単独で、または別の治療剤と組み合わせて、細胞、組織または被験体に投与される場合に、疾患状態または疾患の進行を予防または軽減するのに有効である、治療剤の量を指す。治療有効用量とは、さらに、症状の軽減、例えば、関連する医学的状態の処置、治癒(healing)、予防もしくは軽減、またはかかる状態の処置、治癒、予防もしくは軽減の速度における増加を生じるのに十分な、化合物の量を指す。単独で投与される個々の活性成分に適用される場合、治療有効用量とは、その成分単独を指す。組み合わせに適用される場合、治療有効用量とは、組み合わせて投与されるのであれ、逐次的に投与されるのであれ、同時に投与されるのであれ、治療効果を生じる、活性成分の組み合わされた量を指す。例えば、抗LOX/抗LOXL2抗体のin vivo投与が用いられる場合、通常の投薬量は、投与の経路に依存して、1日当たり哺乳動物の体重1kg当たり約10ngから最大で100mgまたはそれ超まで、好ましくは約1μg/kg/日から50mg/kg/日まで、任意選択で約100μg/kg/日から20mg/kg/日まで、500μg/kg/日から10mg/kg/日まで、または1mg/kg/日から10mg/kg/日まで、変動し得る。
当該分野の通常の技量を有する医師または獣医師は、必要とされる医薬組成物の有効量(ED50)を容易に決定および処方できる。例えば、医師または獣医師は、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで、医薬組成物において用いられる本発明の化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を段階的に増加させることができる。
本明細書で使用する場合、用語「被験体」は、哺乳動物被験体を意味する。例示的な被験体には、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヤギおよびヒツジが含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、被験体は、心臓疾患または心血管傷害を有し、以下に記載されるように本発明の薬剤を用いて処置され得る。一部の他の実施形態では、被験体は、心房細動を有し、以下に記載されるように本発明の薬剤を用いて処置され得る。用語「それを必要とする被験体」または「それを必要とする患者」とは、本明細書に記載される処置から利益を得る、疾患もしくは障害もしくは状態を有し得る、それを有すると診断される、またはそれを有する疑いがある、被験体または患者を指す。ある特定の実施形態では、被験体または患者は、(i)いずれの処置も受けていない、(ii)以前の処置を受けており、かつ応答性でないか、もしくは改善を示さなかった、または(iii)再発している、もしくは以前の処置に対して抵抗性である。
選択された投与の経路にかかわらず、適切に水和された形態で使用される本発明の化合物、および/または本発明の医薬組成物は、以下に記載されるように、または当業者に公知の他の従来の方法によって、薬学的に許容される投薬形態へと製剤化される。
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に対して毒性であることなしに、特定の患者、組成、および投与の様式について、所望の治療応答を達成するのに有効である活性成分の量を得るために、変動され得る。
選択された投薬量レベルは、用いられる本発明の特定の化合物の活性、投与の経路、投与の時間、用いられている特定の化合物の排泄の速度、処置の持続時間、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/もしくは材料、処置されている患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康および以前の病歴、ならびに医学分野において周知の同様の因子を含む、種々の因子に依存する。
一実施形態では、本明細書で企図される治療剤の投与は、被験体の状態の改善を生じる。別の態様では、抗体の投与は、被験体の状態が悪化することを予防し、および/または患者の生存を延長させる。
患者は、哺乳動物、例えば、ヒトまたは非ヒトであり得る。かかる患者は、症候性または無症候性であり得る。
組成物は、本明細書に提供される任意の適切な経路によって、局所的、領域的または全身的に投与され得る。
LOXまたはLOXLの阻害剤の有効量を被験体に投与することを含む、被験体において心不全、IDCM、心不整脈または心臓線維症と関連する疾患を処置または予防するための、方法、組成物およびキットもまた、本明細書に提供される。LOXまたはLOXLの阻害剤の有効量を被験体に投与することを含む、被験体においてAFと関連する疾患を処置または予防するための、方法、組成物およびキットもまた、本明細書に提供される。
一実施形態では、患者の1つまたは複数の症状が軽減される。軽減は、例えば、疼痛における低減、線維症の阻害、心筋リモデリングを低減させること、心不全の間の心筋の硬さを低減させること、心筋線維芽細胞活性化を低減させること、ならびに/または収縮期および拡張期の心機能を改善することとして、顕在化し得る。
LOXまたはLOXLの阻害剤は、活性LOXまたはLOXLの阻害剤であり得る。活性LOXまたはLOXLは、タンパク分解性のプロセシングまたは切断後の、LOXまたはLOXLの成熟形態であり得る。LOXLの例には、LOXL1、LOXL2、LOXL3およびLOXL4が含まれるがこれらに限定されない。LOXまたはLOXLの阻害剤は、活性LOX、LOXL2またはLOXL4の阻害剤であり得る。一部の実施形態では、LOXまたはLOXLの阻害剤は、活性LOXおよび活性LOXL2の両方を阻害する。
このLOXまたはLOXL阻害剤は、LOXまたはLOXLに対する抗体、LOXまたはLOXLに対する小分子阻害剤、siRNA、shRNAまたはアンチセンスポリヌクレオチドであり得る。
特異的リジルオキシダーゼの発現は、炎症応答の異なる段階、および心不全、IDCM、心不整脈、例えばAF、または心臓線維症後の創傷治癒と、関連し得る。下流の線維症性応答と関連する特定のリジルオキシダーゼ(複数可)を特異的に阻害することによって、即座の傷害後修復/治癒プロセスを生じさせつつ、心臓リモデリングおよび創傷治癒の有害な結果が回避され得る。
傷害後治癒応答は、LOX/LOXLの発現を誘導し得るが、このプロセスがチェックされずに継続する場合、過剰な架橋が、心機能障害を生じる細胞外マトリックス心筋リモデリングまたは心臓線維症をもたらす。マトリックスおよび架橋されたコラーゲンまたはエラスチンを分解する酵素は、より緩徐にまたはより効率悪く機能するようであり、架橋事象によって追い越される。LOX/LOXLは、上皮間充織転換(EMT)においても役割を果たすので、これは、マトリックスリモデリングに加えて、心筋細胞リモデリングおよび心筋細胞肥大にさらに寄与する。
一実施形態では、抗LOX/LOXL処置は、それらの間の全ての整数および時間を含む、心損傷(cardiac insult)またはその診断の、2、4、6、8、10、12、14、16、16、20、22、24、36、48時間またはそれを超えた時間後に開始され得る。さらに、抗LOX/LOXL処置は、心損傷またはその診断の、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日またはそれを超えた日数後に開始され得る。同様に、血圧における増加(高血圧)は、心組織において、増加したコラーゲン沈着および低減されたタンパク質分解を生じる(Berkら、J. Clin. Invest.、117巻(3号):568〜575頁(2007年))。心不全、IDCMまたは心臓線維症の診断および/または確立後に開始される抗LOX/LOXL処置は、心筋リモデリング、心不全の間の心筋の硬さ、心筋線維芽細胞活性化を予防、低減もしくは軽減、ならびに/または収縮期および拡張期の心機能を改善し得る。かかる抗LOX/LOXL処置は、心不全、IDCMまたは心臓線維症と関連する1つまたは複数の症状が診断または検出された、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日またはそれを超えた日数後に開始される。
一部の実施形態では、バイオマーカーは、不適切なレベルの架橋がいつ生じ得るかを決定するために使用され得る:LOXレベルは、一般に使用されるバイオマーカー、C反応性タンパク質(CRP)と相関することが示されており、処置は、CRPレベルが適切な正常レベルを上回って上昇される場合に始まり得る。より直接的には、尿または血液中の架橋されたコラーゲンテロペプチドの放出を測定するための方法および試験キットが存在する。上昇したレベルのこれらのコラーゲン断片は、修復性線維症(reparative fibrosis)から反応性(非適応性)線維症への移行を示し得る。さらに、心室の効率的収縮と関連するものを含む、心機能および心拍出量の測定が、行われ得る。
一部の実施形態では、限定的な持続時間の処置が想定される。処置は、典型的には、反応性線維症を予防または減弱させ、心不全、IDCM、心不整脈または心臓線維症と関連する1つまたは複数の症状を予防または低減させるのに十分な長さだけ、持続されるべきである。例えば、より短い持続時間の処置が所望される場合、短寿命Fab抗体断片が使用される。あるいは、血清中でのより長い半減期を有する全長抗体が、それらの間の全ての日数を含む、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週間またはそれを超える週数にわたる限定的な投薬で、使用され得る。心機能の標準的な試験は、上で議論された関連するバイオマーカーの評価と共に、必要に応じて進行をモニタリングし、投薬を調整するために、使用され得る。限定的な持続時間の処置が、このアプローチの安全性に加わる。
LOXまたはLOXL酵素の発現および/または活性を阻害する治療剤の使用に加えて、治療剤および抗線維化剤(anti−fibrotic agent)を含む組み合わせ治療もまた、企図される。
一実施形態では、心不全、IDCM、心不整脈または心臓線維症と関連する1つまたは複数の症状を予防、処置または軽減する方法は、抗LOX抗体もしくは抗LOXL2抗体、またはLOXもしくはLOXL2にハイブリダイズする阻害性核酸、および抗線維化剤の投与を含む。
例示的な抗線維化剤には、β−アミノプロピオニトリル(β−aminoproprionitrile)(BAPN)などの化合物、ならびに表題「Inhibitors of lysyl oxidase, relating to inhibitors of lysyl oxidase and their use in the treatment of diseases and conditions associated with the abnormal deposition of collagen」の、1990年10月23日に発行された、Palfreymanらに対する米国特許第4,965,288号に開示された化合物;種々の病理学的線維性状態の処置のためにLOXを阻害する化合物に関する、表題「Anti−fibrotic agents and methods for inhibiting the activity of lysyl oxidase in situ using adjacently positioned diamine analogue substrate」の、1991年3月5日に発行された、Kaganらに対する米国特許第4,997,854号に開示された化合物が含まれるがこれらに限定されず、これらは、参照によって本明細書に組み込まれる。さらなる例示的な阻害剤は、2−イソブチル−3−フルオロ−、クロロ−またはブロモ−アリルアミンなどの化合物に関する、表題「Inhibitors of lysyl oxidase」の、1990年7月24日に発行された、Palfreymanらに対する米国特許第4,943,593号;ならびに、例えば、米国特許第5,021,456号;米国特許第5,5059,714号;米国特許第5,120,764号;米国特許第5,182,297号;米国特許第5,252,608号(2−(1−ナフチルオキシメチル)−3−フルオロアリルアミンに関する);および米国特許出願第2004/0248871号に記載されており、これらは、参照によって本明細書に組み込まれる。例示的な抗線維化剤には、リジルオキシダーゼの活性部位のカルボニル基と反応する第一級アミン、およびより具体的には、カルボニルと結合した後に、共鳴によって安定化される生成物を生成するもの、例えば、以下の第一級アミンもまた含まれる:エチレンジアミン、ヒドラジン、フェニルヒドラジンおよびそれらの誘導体、セミカルバジド、ならびに尿素誘導体、アミノニトリル、例えば、ベータ−アミノプロピオニトリル(BAPN)、または2−ニトロエチルアミン、不飽和もしくは飽和ハロアミン、例えば、2−ブロモ−エチルアミン、2−クロロエチルアミン、2−トリフルオロエチルアミン、3−ブロモプロピルアミン、p−ハロベンジルアミン、セレノホモシステインラクトン。別の実施形態では、抗線維化剤は、細胞に浸透するまたは浸透しない銅キレート剤である。さらなる例示的な化合物には、リジルオキシダーゼによるリジルおよびヒドロキシリジル残基の酸化的脱アミノ化に由来するアルデヒド誘導体を遮断する化合物などの間接的阻害剤、例えば、チオールアミン、特に、D−ペニシラミン、またはそのアナログ、例えば、2−アミノ−5−メルカプト−5−メチルヘキサン酸、D−2−アミノ−3−メチル−3−((2−アセトアミドエチル)ジチオ)ブタン酸、p−2−アミノ−3−メチル−3−((2−アミノエチル)ジチオ)ブタン酸、ナトリウム−4−((p−1−ジメチル−2−アミノ−2−カルボキシエチル)ジチオ)ブタンスルフィネート、2−アセトアミドエチル−2−アセトアミドエタンチオールスルファネート、ナトリウム−4−メルカプトブタンスルフィネート三水和物が含まれる。
本明細書で企図される方法は、例えば、in vitroもしくはex vivoで、培養物中の細胞に対して実施され得、または例えばin vivo治療プロトコールの一部として、被験体中に存在する細胞に対して実施され得る。治療レジメンは、ヒトまたは他の動物被験体に対して実施され得る。本明細書で企図される抗LOX抗体もしくは抗LOX2抗体または阻害性核酸は、抗線維化剤に対して任意の順序で投与され得る。時には、阻害性のLOX/LOX2剤および抗線維化剤および薬剤は、同時にまたは逐次に投与される。これらは、異なる部位において、および異なる投薬レジメンで、投与され得る。本明細書で企図されるものの組み合わせ治療の増強された治療有効性は、抗線維化剤の高度に毒性の従来のレジメンに対する有望な代替法を示す。
X.診断方法
本開示は、異なる形態のLOXL2を認識する薬剤を使用することによって、上記疾患を診断、モニタリング、病期分類または検出するための方法もまた、提供する。例えば、上記のように、異なる形態のLOXL2、プレプロタンパク質、分泌型、成熟形態に対する抗体が、これらの目的のために使用され得る。
上記のように、成熟LOXL2は、切断され、免疫組織化学(IHC)などの種々の検出方法を使用することによる細胞局在と共に、分子量(イムノブロット)における変化を理由として、または未切断形態のLOXL2 対 切断形態のLOXL2を検出する抗体の使用によって、検出され得る。
心不全および/または他の心血管疾患と関連する少なくとも1つの症状を有する個体由来の試料が、収集され、不活性もしくは活性LOXL2のレベルまたは異なる形態のLOX/LOXLのレベルを決定することによって、分析され得る。特定の実施形態では、心不全、心房細動またはIDCMを有する被験体由来の試料が、収集され、不活性もしくは活性LOXL2のレベルまたは異なる形態のLOX/LOXLのレベルを決定することによって、分析され得る。分析は、リジルオキシダーゼ特異的治療を使用する処置の開始の前に、実施され得る。かかる診断分析は、細胞、細胞のタンパク質または膜抽出物、生物学的流体、例えば、痰、血液、血清、血漿もしくは尿、または生物学的試料、例えば、組織試料、ホルマリン固定もしくは凍結組織切片が含まれるがこれらに限定されない、任意の試料を使用して実施され得る。
不活性および/または活性LOXL2の検出および分析のための任意の適切な方法が用いられ得る。本明細書で使用する場合、用語「試料」とは、ヒト、動物由来の試料、または研究試料、例えば、細胞、組織、臓器、流体、ガス、エアロゾル、スラリー、コロイドもしくは凝固した材料を指す。試料は、例えば、ヒトもしくは動物からの取り出しなしに、in vivoで試験され得、またはin vitroで試験され得る。試料は、組織学的方法によって、加工処理、I.後に試験され得る。用語「試料」は、ヒトもしくは動物から新たに採取される、細胞、組織、臓器もしくは流体、または加工処理もしくは貯蔵される、細胞、組織、臓器もしくは流体もまた指し得る。
一実施形態では、心血管傷害を有する疑いがある被験体において、心不全または心房細動を診断するための方法であって、被験体の血清における活性LOXL2のレベルまたは活性を評価するステップを含み、それによって、参照試料と比較して、血清における活性LOXL2のレベルまたは活性における増加が、被験体が心不全または心房細動を有することを示す、方法が提供される。
一実施形態では、心血管傷害を有すると診断された被験体において、心不全または心房細動をモニタリングするための方法であって、血清における活性LOXL2のレベルまたは活性を評価するステップを含み、それによって、参照試料と比較して、被験体の血清における活性LOXL2のレベルまたは活性における増加が、心不全または心房細動が悪化していることを示す、方法が提供される。対照的に、参照試料と比較して、被験体の血清における減少されたLOXL2のレベルまたは活性は、心不全または心房細動が改善していることを示す。
一部の実施形態では、モニタリングは、抗LOXL2処置レジメンに対する患者の応答を評価するために実施され得る。
参照試料は、同じ被験体に由来し得るか、異なる時点において同じ腫瘍から採取され得るかもしくは身体の他の部位から採取され得るか、または別の個体から採取され得る。
活性LOXL2レベルの測定は、タンパク質に対する抗体、例えば、活性または分泌型LOXL2に特異的に結合する抗体を用いた、活性LOXL2タンパク質の存在を検出する免疫学的アッセイの形態をとり得る。
イムノアッセイもまた、レーザー誘起蛍光(例えば、SchmalzingおよびNashabeh、Electrophoresis 18巻:2184〜93頁(1997年));Bao、J. Chromatogr. B. Biomed. Sci. 699巻:463〜80頁(1997年)を参照のこと、これらは各々、参照によって本明細書に組み込まれる)と併せて使用され得る。リポソームイムノアッセイ、例えば、フローインジェクションリポソームイムノアッセイおよびリポソームイムノセンサー(Rongenら、J. Immunol. Methods 204巻:105〜133頁(1997年)もまた、本開示の方法に従って活性LOXまたはLOXLのレベルを決定するために使用され得る)。イムノアッセイ、例えば、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)は、本明細書に提供される方法において有用である。ラジオイムノアッセイもまた、試料が活性LOXL2について陽性であるかどうかを決定するため、または活性LOXL2のレベルを決定するために、有用であり得る。例えば、ヨウ素−125標識された二次抗体を使用するラジオイムノアッセイが、使用され得る。
さらに、活性LOXL2の活性を測定し、従って、不活性酵素の量を無視することができる。活性LOXL2の酵素活性は、標識されたリシンを基質として用いて、可溶性エラスチンまたは可溶性コラーゲンを使用して、いくつかの方法で測定され得る。活性アッセイの詳細は、Royceら、Biochem J. 1982年2月15日;202巻(2号):369〜371頁中に与えられる。発色性アッセイが使用され得る。1つは、Palamakumburaら、Anal Biochem. 2002年1月15日;300巻(2号):245〜51頁に記載されている。
本明細書中で引用される全ての刊行物、特許出願および発行された特許は、各個々の刊行物、特許出願または発行された特許が、その全体が参照によって組み込まれると具体的かつ個々に示されるかのように、参照によって本明細書に組み込まれる。
前述の発明は、理解の明確さを目的として、例示および例としていくらか詳細に記載されてきたが、ある特定の変化および改変が、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなしにそれに対してなされ得ることは、本発明の教示に照らせば、当業者に容易に明らかである。以下の実施例は、例示のみとして提供されるのであって、限定として提供されるわけではない。当業者は、本質的に類似の結果を得るために変化または改変され得る種々の重大でないパラメーターを、容易に認識する。
(実施例1)
この研究は、心臓線維症および心筋リモデリングに対する抗LOXL2抗体の効果を特徴付けた。経大動脈狭窄(TAC)を使用して、心臓に圧力過剰負荷をかけて、心不全(HF)を誘導した。引き起こされた圧力負荷を、心エコー法を使用して、大動脈狭窄を横切る圧力勾配(>30mmHg)によって検証した。TACまたはシャムのいずれかによる外科手順の2週間後に、マウスに、抗IgG1抗体または抗LOXL2抗体AB0023(30mg/kg、1週間に2回)のいずれかを腹腔内投与した。10匹のマウスを、各群において使用した:シャム/IgG1、シャム/AB0023、TAC/IgG1およびTAC/AB0023。各群(n=10)を、1週間あけて実施した手術について、2つの下位群(n=5)に分けた。
心機能を、2週間毎に心エコー法を使用してモニタリングし、カテーテル法によってin vivoで、TACの10週間後に測定した。研究の終了時に、圧−容積ループデータを収集し、左心室組織、心房および血液/血清を収集した。心室試料を秤量して、肥大についての心室/体重比を計算し、LOXL2、コラーゲンI、α−平滑筋アクチン−マーカー(αSMA)および心臓線維症のレベルを特徴付けた。さらに、心房試料を収集して、LOXL2、コラーゲンI、αSMAおよび他の線維症性遺伝子のレベルを特徴付けた。血液を収集し、室温で凝血させた。血清を、3000rpm(Beckman 6r遠心分離機)によって4℃で10分間分離し、バイオマーカーアッセイに使用した。
試験した被験体の心機能および心室(chamber)サイズを特徴付けるために、心エコー法を使用して、短縮率および収縮末期/拡張末期心室直径を測定した。また、心カテーテル法およびPVループを使用して、駆出率、心室サイズ、左室圧、心拍出量、収縮性、および心臓の硬さのパラメーターを測定した。免疫組織化学またはqPCRを使用して、LOXL2、コラーゲンI、αSMAまたは他の線維症性遺伝子のレベルを試験した。また、トリクローム染色を使用して、心臓線維症を測定し、コラーゲンアッセイを使用して、総コラーゲン、可溶性コラーゲンおよび不溶性コラーゲンを測定した。BNP、TIMP−1、IL6、PICPまたはTGFβの血漿レベルを、ELISAを使用して決定した。
心エコー装置からの結果は、抗LOXL2抗体が、TACによって誘導された心機能障害の進行を低減させたことを示した。効果は、処置の2週間以内に観察された。また、研究の終了時(TACの10週間後)に、AB0023で処置したマウスは、TACの2週間後と類似したレベルの左室内径短縮率(left ventricular fractional shortening)を有した。TACの10週間後に、IgG1で処置したマウスは、心室/体重比の81%の増加、収縮末期LV内径(LVIDs)の88%の増加、拡張末期LV内径(LVIDd)の39%の増加、および左室内径短縮率の49%の低減を伴って、重症の心肥大を発症した。対照的に、AB0023で処置したマウスは、かなり低い心機能障害を発症した。IgG1処置群と比較して、抗LOXL2処置群は、心室/体重比の13%の減少(p=0.059)、左室内径短縮率の51%の増加(p<0.01)、ならびに13%のLVIDdの減少(p<0.05)および25%(p<0.05)のLVIDsの減少を示した。これは、LOXL2抗体処置が、TACによって誘導される心不全からマウスを保護することを示唆している。
さらに、心臓の機械的特性を、in vivoカテーテル法によって測定した。AB0023で処置したTACマウスは、駆出率(EF)を107%(p<0.01)、一回拍出量(SV)を73%(p=0.01)、一回仕事量(SW)を48%(p=0.01)、および心拍出量(CO)を70%(p=0.01)増加させた。また、AB0023で処置したTACマウスは、48%低減された拡張末期圧(EDP)(p<0.01)、43%低減された収縮末期容積(ESV)(p<0.001)、19%低減された拡張末期容積(EDV)(p<0.01)、および42%低減されたTau(p=0.01)を示した。さらに、拡張期パラメーター(EDP、Tauおよび拡張期dp/dt)および血清バイオマーカー(BNPおよびTIMP)のレベルは、AB0023によって正常化した。これらの結果は、LOXL2抗体処置が、左心室収縮期/拡張期機能の両方を改善し、心臓の収縮期および拡張期の両方の不全に対して治療効果を提供することを示唆している。
他の研究では、特発性拡張型心筋症(IDCM)を有するHF患者におけるLOXL2のレベルを試験した。免疫組織化学およびqPCRを使用して、IDCM患者由来の左心室(LV)試料におけるLOXL2、コラーゲンIおよびコラーゲンIIIの発現を決定した。IDCMヒトおよびTACマウスでは、LOXL2、コラーゲンIおよびコラーゲンIIIについてのmRNAおよびタンパク質のレベルは、対照と比較して増加した。
IDCM患者由来の左心室(LV)試料の罹患した心筋では、LOXL2発現は、心筋細胞間で検出され、DDR2共免疫蛍光染色によって決定されるように、線維芽細胞に局在化した。コラーゲンI発現について評価した連続切片は、LOXL2染色に対応するエリアにおける、コラーゲンI陽性線維芽細胞および細胞外マトリックスとの関連もまた示した。同様に、TACマウス由来の罹患した心筋組織は、対照と比較して増加したLOXL2およびコラーゲンIの発現を有した。qRT−PCRを使用して、対照心筋組織と比較して、TAC心筋組織におけるLOXL2(2倍)およびコラーゲンI(4倍)の増加したmRNAレベルもまた検出された。合わせると、これらの結果は、ヒトIDCMおよび心筋症のTACマウスモデルにおけるLOXL2発現を示している。
TACマウスでは、LOXL2レベルにおける増加は、総コラーゲンおよび架橋コラーゲンの増加、血管周囲および間質性線維症、心肥大、ならびに収縮機能障害および拡張機能障害の重症度と関連した。結果は、抗LOXL2抗体AB0023で処置した群が、低減された心肥大を示し、駆出率および心収縮性を改善し、拡張機能障害を排除し、LV拡張を消失させたことを示した。これは、LOXL2抗体処置が、圧力過剰負荷された心臓における正常化された一回仕事量および心拍出量、正常化された心拡張期パラメーター(拡張末期圧およびLV弛緩時間定数(LV relaxation time constant))および血漿バイオマーカー(BNPおよびTIMP−1)を生じることを示している。合わせると、心臓におけるLOXL2およびコラーゲンのレベルは、ヒトIDCMおよびTACマウスにおいて上方調節される。抗LOXL2抗体による処置は、TACマウスにおいて、心筋リモデリングを低減させ、収縮期および拡張期の両方の心機能を改善し、これは、LOXL2阻害が、HFに対する潜在的な治療を提供することを示唆している。
(実施例2)
心不全は、増加した細胞外マトリックス(ECM)リモデリング、顕著な心筋線維症および増加した心筋の硬さと関連する。リジルオキシダーゼ様2(LOXL2)は、コラーゲンのリシンまたはヒドロキシリシン残基の酸化的脱アミノ化を触媒して、コラーゲン架橋および心筋の硬さをもたらす。この実験の目的は、心筋線維症の発症と関連する心筋線維芽細胞の活性化におけるLOXL2の役割を決定することであった。
ヒト初代心線維芽細胞におけるLOXL2のRNA干渉媒介性ノックダウンは、多重イムノアッセイによって測定されたように、培養培地中でのTGF−β2の産生を低減させたが、TGF−β1の産生もTGF−β3の産生も低減させなかった。LOXL2のノックダウンは、Smadリン酸化の低減、ならびにECM合成および筋線維芽細胞活性化のコラーゲンIおよびαSMAを含む、TGF−βによって制御される遺伝子発現の下方調節によって明らかな、損なわれたTGF−βシグナル伝達ももたらした。機能喪失研究と一致して、心線維芽細胞におけるLOXL2の過剰発現は、TGF−β2の産生を増加させたが、TGF−β1の産生もTGF−β3の産生も増加させなかった。さらなる分析により、LOXL2が、シグナル伝達を活性化して、AKT、4E−BP1およびp70s6kの増加したリン酸化によって明らかなように、TGF−β2の産生を増強させることが明らかになった。
これらの結果は、LOXL2が、線維芽細胞のTGF−β2シグナル伝達を持続させることによって、心筋線維芽細胞およびECM合成を活性化したことを示している。かかるLOXL2によって持続されるTGF−β2シグナル伝達は、心臓線維症の発症において生じる、筋線維芽細胞の持続性の活性化に寄与した。
(実施例3)
心不全および心房細動を有する患者由来の血清試料ならびに対応する対照試料を、LOXL2タンパク質発現についてアッセイした(Vitek Immuno Diagnostic Assay System)。
患者血清試料を、アッセイストリップにアリコートした。自動化様式で、固相受容体(SPR)は、SPR上に固定化された特異的抗体によって、試料中のLOXL2を捕捉した。捕捉および洗浄ステップの後、アルカリホスファターゼにコンジュゲートした抗LOXL2検出抗体が結合し、サンドイッチを形成した。次いで、基質試薬を添加して、機器によって検出される蛍光反応を開始させた。試料中のLOXL2のレベルを、検出された相対的蛍光単位の量と相関させた。2つのLOXL2アッセイデバイスを開発した。
以下の試料を、駆出率<35%を有するクラスII〜IV心不全症状を示す収縮期心不全(SHF)患者;駆出率>50%を有するクラスII〜IV心不全症状を示す拡張期心不全(DHF)患者;ならびに抗不整脈薬、電気除細動またはRFアブレーション治療に対して不応性の、1年超にわたって慢性AFを示す永続性心房細動(AF)患者、から収集した。
試料は、以下の疾患のいずれかを有した患者は含まなかった:IPF、肝臓疾患(肝炎、脂肪肝疾患など)、がん、強皮症または腎不全。さらに、心不全を有する患者を、永続性AFおよび対照収集物(CON)から排除し、永続性AFを示す患者を、SHF、DHFおよび対照収集物から排除した。
結果を、表1および図1にまとめた。結果は、永続性(PERM)AF、DHFおよびSHF患者の試料における血清中の増加したLOXL2レベルを示した(表1、図1)。従って、心不全または永続性AFを有する患者は、彼らの血清において増加したレベルのLOXL2タンパク質を示し、これは、LOXL2が、種々の心臓疾患状態においてバイオマーカーとして適切であり得ることを示唆している。
(実施例4)
対照およびSHF患者の左心室(LV)におけるLOXファミリーおよびBNPの遺伝子発現レベルを、リアルタイムRT−PCRを使用して決定した。
LOXL2遺伝子発現は、対照と比較して、最大で平均3.8±0.6倍まで、SHF患者のLVにおいて有意に増加した。対照的に、SHFのLVにおける他のLOXファミリーメンバー、LOX、LOXL1、LOXL3およびLOXL4の発現レベルは、対照と比較して有意には異ならなかった。LOXL2の発現レベルは、全ての試料において、心不全バイオマーカーBNPの発現レベルと有意に相関した(r=0.56、p=0.01)。
SHF患者および対照におけるNT−proBNP、ST−2およびTIMP−1の血漿濃度を、ELISAを使用して測定した。血清LOXL2を、上記のように測定した。心不全バイオマーカーNT−pro−BNPおよび線維症性メディエーターTIMP−1の血漿濃度は、対照と比較して、SHF患者において有意に増加した。血清LOXL2とNT−pro−BNPとの間、LOXL2とTIMP−1との間、およびLOXL2と別のHFバイオマーカーST−2との間に、有意な正の相関が存在した(それぞれ、r=0.5、0.6および0.6;p<0.05)。
一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、本明細書および特許請求の範囲に開示された具体的な実施形態に特許請求の範囲を限定すると解釈すべきではないが、かかる特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の完全な範囲と共に、全ての可能な実施形態を含むと解釈すべきである。従って、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
活性リジルオキシダーゼまたはリジルオキシダーゼ様タンパク質の阻害剤の有効量を被験体に投与するステップを含む、心臓の疾患または状態と関連する少なくとも1つの症状を処置、予防または軽減するための方法。
(項目2)
前記心臓の疾患または状態が、心不全、駆出率保持心不全(HFpEF)、駆出率低下心不全(HFrEF)、心不整脈および特発性拡張型心筋症(IDCM)、心臓線維症、心房細動(AF)、またはIDCM、HFpEF、HFrEF、心不整脈および心臓線維症によって引き起こされる心血管傷害からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
1つまたは複数の前記症状を軽減することが、線維症の程度を低減させること、心筋リモデリングを低減させること、心不全の間の心筋の硬さを低減させること、心筋線維芽細胞活性化を低減させることならびに/または収縮期および拡張期の心機能を改善することを含む、項目1〜2のいずれかに記載の方法。
(項目4)
前記LOXまたはLOXL阻害剤が、LOXまたはLOXLに対する抗体、LOXまたはLOXLに対する小分子阻害剤、siRNA、shRNAまたはアンチセンスポリヌクレオチドである、項目1〜3のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記LOXまたはLOXL阻害剤が、配列番号1〜22から選択されるアミノ酸配列を有するLOXまたはLOXLの領域に特異的に結合する抗体である、項目1〜4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記LOXまたはLOXL阻害剤が、前記被験体に非経口投与される、項目1〜5のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記LOXまたはLOXL阻害剤が、心血管傷害の部位に局所投与される、項目1〜5のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記LOXまたはLOXL阻害剤が、ステントを介して投与される、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記LOXまたはLOXL阻害剤が、前記ステント上にコーティングされる、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記LOXまたはLOXL阻害剤が、カテーテルを介して心血管傷害の部位に局所投与される、項目1〜5のいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記LOXまたはLOXL阻害剤が、前記心血管傷害の発生または診断の前に投与される、項目1〜10のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記LOXまたはLOXL阻害剤が、前記心血管傷害の発生または診断の後に投与される、項目1〜10のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記阻害剤または抗LOXL2抗体もしくはその抗原結合性断片が、配列番号37、38、39、40もしくは41として示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号42、43、44もしくは45として示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目1〜12のいずれかに記載の方法。
(項目14)
前記LOXL2阻害剤または前記抗LOXL2抗体もしくはその抗原結合性断片が、配列番号37、38、39、40または41として示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)、CDR1、CDR2およびCDR3、ならびに配列番号42、43、44または45として示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR、CDR1、CDR2およびCDR3を含む、項目1〜13のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記LOXL2阻害剤または前記抗LOXL2抗体もしくはその抗原結合性断片が、配列番号46〜48に示されるCDR1〜3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、項目1〜13のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記LOXL2阻害剤または前記抗LOXL2抗体もしくはその抗原結合性断片が、配列番号49〜51に示されるCDR1〜3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目1〜13のいずれかに記載の方法。
(項目17)
特発性拡張型心筋症(IDCM)、心不全、心房細動および心臓線維症からなる群より選択される心血管傷害と関連する少なくとも1つの症状の処置、予防または軽減において使用するための、活性リジルオキシダーゼまたはリジルオキシダーゼ様タンパク質の阻害剤。
(項目18)
特発性拡張型心筋症(IDCM)、心不全、心房細動および心臓線維症からなる群より選択される心血管傷害と関連する少なくとも1つの症状の処置、予防または軽減において使用するための、リジルオキシダーゼの阻害剤、リジルオキシダーゼ様タンパク質の阻害剤および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
(項目19)
被験体において心不全または心房細動を診断するための方法であって、
個体から取得された血清試料を、抗LOXL2抗体と接触させるステップ;
抗LOXL2抗体/LOXL2複合体への前記抗LOXL2抗体の結合を検出するステップ
を含み;
参照試料と比較した抗LOXL2抗体/LOXL2複合体のレベルにおける増加が、前記被験体における心不全または心房細動の存在を示す、方法。
(項目20)
前記被験体が、心不全を有する疑いがある、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記心不全が拡張期心不全である、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記心不全が収縮期心不全である、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記被験体が、心房細動を有する疑いがある、項目19に記載の方法。
(項目24)
被験体において心不全または心房細動をモニタリングするための方法であって、
個体から取得された血清試料を、抗LOXL2抗体と接触させるステップ;
抗LOXL2抗体/LOXL2複合体への前記抗LOXL2抗体の結合を検出するステップ
を含み;
参照試料と比較した抗LOXL2抗体/LOXL2複合体のレベルにおける増加が、前記被験体における心不全もしくは心房細動の悪化を示す、または
参照試料と比較した抗LOXL2抗体/LOXL2複合体のレベルにおける減少が、前記被験体における心不全もしくは心房細動の改善を示す、方法。
(項目25)
前記抗LOXL2抗体/LOXL2複合体への前記抗LOXL2抗体の結合が、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)によって検出される、項目24に記載の方法。