JP6350277B2 - ガラスフィルムの製造方法及び電子デバイスの製造方法 - Google Patents
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Description
そして、これらのフラットパネルディスプレイにおいては、更なる薄型化へのニーズが存在している。
特に、有機ELディスプレイは、折りたたんだり、巻き取ったりすることが可能であるという特性を有しており、持ち運びを容易にするとともに、平面だけでなく曲面にも使用することが可能であるため、様々な用途への活用が期待されている。
従って近年、これらのデバイスに使用される基板やカバーガラスには、更なる薄化と高い可撓性を実現することへのニーズが高まっている。
しかしながら、ガラス基板は、樹脂フィルムとは異なり可撓性が低く、ガラス基板を曲げることによりガラス基板表面に引っ張り応力が作用すると容易に破損に至るため、可撓性が要求されるような用途にはガラス基板を採用することが困難であった。
下記特許文献1には、厚み200μm以下のガラスフィルムが提案されており、斯かる極めて薄いガラスフィルムは、例えば、有機ELディスプレイへの使用が可能な程度の可撓性を有している。
ところが、これら電子デバイスに使用されるガラス基板を薄化すると、ガラスは脆性材料であるため、多少の応力変化により破損に至り、上述した各種電子デバイス製造関連処理を行う際に、取扱いが大変困難であるという問題がある。
加えて、厚み200μm以下のガラスフィルムは可撓性に富むため、処理を行う際に位置決めを行い難く、パターニング時にずれ等が生じるという問題もある。
これによれば、単体では強度や剛性のないガラスフィルムを用いても、支持ガラスの剛性が高いため、処理の際にガラスフィルム積層体全体として位置決めが容易となる。
また、処理終了後は、ガラスフィルムを破損することなく速やかに支持ガラスから剥離することが可能となっている。
ガラスフィルム積層体の厚みを従来のガラス基板の厚みと同一とすれば、従来のガラス基板用の電子デバイス製造ラインを共用して、電子デバイスを製造することも可能になる。
加熱を伴う処理を行った場合、直接積層している支持ガラスとガラスフィルムとの固着力が増すため、支持ガラスからガラスフィルムを剥離することが困難になるという問題が生じる。
従って、加熱を伴う電子デバイス製造関連処理後に、ガラスフィルム積層体から支持ガラスとガラスフィルムとを品質を劣化させることなく簡便かつ安価な方法で剥離することが、望まれている。
これにより、加熱を伴う処理が施されたガラスフィルムと支持ガラスを、より確実に、破損することなく剥離することができる。
これにより、剥離時にガラスフィルムが破損することをより確実に防止して、ガラスフィルムの歩留まりを高めることができる。
これにより、ガラスフィルムと支持ガラスの界面において、加水分解反応を起こさせて、ガラスフィルムと支持ガラスの剥離をより容易にすることができる。
これにより、ガラスフィルムと支持ガラスの剥離をより効率的に行うことができる。
また、本実施形態では、ガラスフィルム11と支持ガラス12の相互に接触する側の表面粗さRaを夫々2.0nm以下としている。
ガラスフィルム11にアルカリ成分が含有されていると、表面において陽イオンの脱落が発生し、いわゆるソーダ吹きの現象が生じ、構造的に粗となる。この場合、ガラスフィルム11を湾曲させて使用していると、経年劣化により粗となった部分から破損する可能性がある。
尚、ここでいう無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分が3000ppm以下のガラスのことである。
本発明で用いる無アルカリガラスのアルカリ成分の含有量は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは300ppm以下である。
これにより、ガラスフィルム11の厚みをより薄くして、適切な可撓性を付与することができる。
厚みをより薄くしたガラスフィルム11は、ハンドリング性が困難で、かつ、位置決めミスやパターニング時の撓み等の問題が生じやすいが、後述する支持ガラス12を使用することで電子デバイス製造関連処理等を容易に行うことができる。
尚、ガラスフィルム11の厚みが5μm未満であると、ガラスフィルム11の強度が不足がちになり、支持ガラス12からガラスフィルム11を剥離し難くなるおそれがある。
支持ガラス12については、ガラスフィルム11との30〜380℃における熱膨張係数の差が、5×10−7/℃以内のガラスを使用することが好ましい。
これにより、電子デバイス製造関連処理の際に熱処理を伴ったとしても、膨張率の差による熱反りやガラスフィルム11の割れ等を生じ難くすることができ、ガラスフィルム積層体1の安定した積層状態を維持することが可能になる。
そして、膨張率の差を抑える観点から、支持ガラス12とガラスフィルム11とは、同一の組成を有するガラスを使用することが最も好ましい。
支持ガラス12の厚みは、400μm以上であることが好ましい。支持ガラス12の厚みが400μm未満であると、支持ガラス12を単体で取り扱う場合に、強度の面で問題が生じるおそれがある。支持ガラス12の厚みは、400〜700μmであることが好ましく、500〜700μmであることが最も好ましい。
これにより、支持ガラス12でガラスフィルム11を確実に支持することが可能となるとともに、支持ガラス12からガラスフィルム11を剥離する際に生じ得るガラスフィルム11の破損を効果的に抑制することが可能となる。
尚、電子デバイス製造関連処理時に、図示しないセッター上に、ガラスフィルム積層体1を載置する場合は、支持ガラス12の厚みは400μm未満(例えば300μm等、ガラスフィルム11と同一の厚み)でも良い。
特に、図2に示すオーバーフローダウンドロー法は、成形時にガラス板の両面が、成形部材と接触しない成形法であり、得られたガラス板の両面(透光面)には傷が生じ難く、研磨しなくても高い表面品位を得ることができる。無論、本発明に使用されるガラスフィルム11及び支持ガラス12は、フロート法やスロットダウンドロー法、ロールアウト法、アップドロー法、リドロー法等によって成形されたものであってもよい。
図2に示すオーバーフローダウンドロー法において、断面が楔型の成形体8の下端部81から流下した直後のガラスリボンGは、冷却ローラ82によって幅方向の収縮が規制されながら下方へ引き伸ばされて所定の厚みまで薄くなる。次に、前記所定厚みに達したガラスリボンGを図示しない徐冷炉(アニーラ)で徐々に冷却し、ガラスリボンGの熱歪を除き、ガラスリボンGを所定寸法に切断することにより、ガラスフィルム11及び支持ガラス12が夫々成形される。
ガラスフィルム11の支持ガラス12との接触面11aと、支持ガラス12のガラスフィルム11との接触面12aの表面粗さRaが2.0nmを超えると、接触面11aと接触面12aの密着性が低下し、ガラスフィルム11と支持ガラス12とを接着剤無しでは強固に積層することが困難となるおそれがある。
ガラスフィルム11と支持ガラス12とを接着剤無しで強固に積層するためには、本発明において使用するガラスフィルム11及び支持ガラス12の夫々の接触面11a、12aの表面粗さRaは、夫々1.0nm以下であることが好ましく、0.5nm以下であることがより好ましく、0.2nm以下であることが最も好ましい。
この場合、ガラスフィルム11の支持ガラス12からの食み出し量は、1〜20mmであることが好ましく、1〜10mmであることがより好ましく、1〜5mmであることが最も好ましい。
ガラスフィルム11の食み出し量が1mm程度であったとしても、ガラスフィルム11の端部を剥離の起点とすることができる一方、ガラスフィルム11の食み出し量が20mmを超えるとガラスフィルム11の破損や垂れ下がりの原因となるおそれがある。ガラスフィルム11が支持ガラス12から食み出している部分は、ガラスフィルム積層体1の4辺全てでも良く、対向する2辺のみや1辺のみでも良い。
一方、ガラスフィルム11の端部を保護する観点から、支持ガラス12がガラスフィルム11から食み出すように積層されていてもよい。また、支持ガラス12がガラスフィルム11から食み出すように積層させることで、吹き付けられた流体の圧が剥離の開始起点として効率的に作用することができる。また、図1に示すように流体を支持ガラス12とガラスフィルム11の積層面から傾けて吹き付けるとさらに効率的である。
この場合、支持ガラス12のガラスフィルム11からの食み出し量は、0.5〜10mmであることが好ましく、0.5〜1mmであることがより好ましい。
支持ガラス12の食み出し量を少なくすることで、ガラスフィルム11の有効面11bの面積をより広く確保することができる。
また、ガラスフィルム積層体1においては、4辺全てにおいて、支持ガラス12がガラスフィルム11から食み出していることが好ましく、さらに、1辺のみガラスフィルム11が支持ガラス12から食み出しており、残りの3辺においては支持ガラス12がガラスフィルム11から食み出している形態がより好ましい。
第2の工程における加熱を伴う電子デバイス製造関連処理としては、例えば、CVD法やスパッタリング等による成膜処理等が挙げられる。
ガラスフィルム11の有効面11b上に形成される素子としては、液晶素子、有機EL素子、タッチパネル素子、太陽電池素子、圧電素子、受光素子、リチウムイオン2次電池等の電池素子、MEMS素子、半導体素子等が挙げられる。
これにより、作製された電子デバイス5の周辺環境の温度が変化したとしても、膨張率の差による熱反りやガラスフィルム11及びカバーガラス2の割れ等が生じ難く、破損し難い電子デバイス5とすることが可能となる。
そして、膨張率の差を抑える観点から、カバーガラス2とガラスフィルム11とは、同一の組成を有するガラスを使用することが最も好ましい。
ガラスフィルム11の有効面11b上にCVD法やスパッタリング等の公知の成膜方法により、陽極層52a、正孔輸送層52b、発光層52c、電子輸送層52d、陰極層52eの順に積層して素子51の一例である有機EL素子52の形成を行う。
その後に、公知のレーザー封止等を使用してカバーガラス2とガラスフィルム11とを接着することにより、有機EL素子52を封止し、支持ガラス付電子デバイス3(ここでは支持ガラス付有機ELパネル)を作製する。
尚、図4に示す形態では、カバーガラス2とガラスフィルム11とを直接接着しているが、適宜公知のガラスフリットやスペーサ等を使用してカバーガラス2とガラスフィルム11とを接着しても良い。
ここでは、界面13に吹き付ける流体を液体4としているが、界面13に吹き付ける流体の形態は、粒状、霧状、湯気状等その形状は問わない。
また、流体としては水やアルコール等、またはそれら複数の液体を混合した液体だけでなく、空気、窒素ガス、炭酸ガス、希ガス等の気体を使用することができる。ガラスフィルムに形成したデバイスや各種配線、封着剤などが液体によりダメージを受けやすい場合は気体を好ましく利用できる。また、気体は液体よりも吹き付けられた圧が分散されやすく、ダメージを与えにくい利点がある。また、液体を高圧で吹き付けた場合に生じるキャビテーション効果の発生を防ぐ効果もある。一方で、液体を使用した場合は、気体よりも剥離効果が高く、ガラスフィルム11と支持ガラス12の接着力が高い場合により好ましい。液体の場合は静電気を発生しにくい効果がある。液体4と前記気体との気液混合体を使用することも可能である。
本発明に係る第3の工程では、水や水を含む液体をウォータージェットの手法により吹き付けるのが好ましい。ここでいうウォータージェットとは、一般的に、水を高速、高圧の水流にして対象物に対して噴射する方法である。また、水を湯気状に吐出するスチーム噴射出機を用いて圧力を持ったスチームを対象物に噴出することも可能である。スチームの供給手段として、水を高温・高圧に維持した配管にノズルを接続し、ノズルからスチームを噴射することが出来る。さらには空気を噴射する穴を複数有したエアーブレードを用いて空気を対象物に噴射することも可能である。空気の供給手段として、コンプレッサー等の空気源に接続された空気配管を採用することができる。空気は相対湿度が10%以上で噴射圧が0.1MPa以上であると好ましい。
これにより、加熱を伴う電子デバイス製造関連処理を行ったとしても、円滑にガラスフィルム11と支持ガラス12とを剥離することが可能となる。ガラスフィルム11と支持ガラス12とが水を含む液体4を吹き付けることでとりわけ良好に剥離できるのは、詳細には解明されていないが、以下の理由によると推察されている。
図5(a)に示すように、ガラスフィルム11の表面(接触面11a)と支持ガラス12の表面(接触面12a)に形成された水酸基同士の水素結合により引き付けあうと考えられる。あるいは、図5(b)のようにガラスフィルム11と支持ガラス12の界面13に存在する水分子を介在して水素結合が形成されることによりガラスフィルム11と支持ガラス12とが互いに固着することもあると考えられている。
Si−OH + HO−Si → Si−O−Si+ H2O
の脱水反応が起こり、共有結合が増えることでガラスフィルム11と支持ガラス12の固着力が強くなると考えられる。
上述の電子デバイスの作製工程では、成膜処理等の加熱を伴うデバイス製造関連処理工程を有するため、少なくとも100℃以上の加熱工程を伴って製造される。
例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイのTFT作製工程では、アモルファスシリコンTFTの場合300℃以上に加熱され、低温ポリシリコンTFTの場合、少なくとも400℃以上に加熱される。インジウム・ガリウム・亜鉛・酸素から構成されるTFTの場合、少なくとも300℃以上に加熱される。また、タッチセンサー基板の製造プロセスでは少なくとも150℃以上に加熱される。
そこで本発明者らは、加熱を伴った製造関連処理を経た後のガラスフィルム11と支持ガラス12を破壊することなく剥離するための方法を確立するべく研究をし、鋭意努力を重ねた結果、加熱を伴った電子デバイス製造関連処理を経たガラスフィルム積層体1に、ガラスフィルム11と支持ガラス12との界面13に少なくとも水を含む液体を付与した状態で剥離を行うと、ガラスフィルム11と支持ガラス12とを容易に剥離することができることを見出して本発明に至った。
Si−O−Si + H2O → Si−OH + HO−Si
の加水分解反応を促進し、ガラスフィルム11と支持ガラス12とを剥離し易くすることができると考えられている。
即ち、液晶ディスプレイや有機EL素子などの製造においては、ガラスフィルム上にフォトレジストやカラーフィルター等が形成されるが、これらの有機系材料がガラスフィルム積層体の端部に意図せず残ったり、積層面の内部に入り込み、固着してしまう場合がある。
そして、ウォータージェットの手法により液体4を吹き付ける方法は、このような原因による固着であっても、液体4を吹き付けることで固着成分を取り除き、ガラスフィルムを剥離することができる。
そして、本発明の一実施形態に係る電子デバイスの製造方法によれば、粘着剤等を使用せずにガラスフィルム11と支持ガラス12を直接固定した場合においても、加熱を伴う処理が施されたガラスフィルム11と支持ガラス12を、破損することなく剥離することを可能としている。
図6では、第1の基板保持機構31と第2の基板保持機構32を用いて、支持ガラス付電子デバイス3のガラスフィルム11を基板保持機構32の真空吸着パッド32a・32a・・・で固定し、支持ガラス12を基板保持機構31の真空吸着パッド31a・31a・・・で引っ張りながら、界面13に液体4を吹き付けて剥離する過程を示している。
このように支持ガラス12を引っ張らないと、一度剥離した支持ガラス12とガラスフィルム11が再接着してしまう問題が生じる。つまり、剥離した支持ガラス12とガラスフィルム11の間に隙間を維持することが好ましい。隙間を設けることで、液体4の噴流を深部まで送り込むことができる。また、一方のガラスを引っ張ることで、ウォータージェットの手法による剥離をさらに促進することができる。
吹き付ける液体4の圧を高めていくと剥離効果は大きくなるが、支持ガラス12とガラスフィルム11が破損しやすくなる。
そのため、液体4の圧は剥離性と基板やデバイスへのダメージを考慮して、0.1〜150MPaが好ましい。より好ましくは1〜50MPaである。尚、ここでの液体4の圧はノズル41内における液体4の静圧である。
また、支持ガラス12は厚み0.7mm以下、ガラスフィルム11は厚み0.3mm以下を使用するため、液体4を噴出させるノズル41の径は少なくとも1.0mm以下が好ましく、例えば0.05〜0.3mmの径のノズル41を使用することができる。
さらに、図7(c)に示すように、ノズル41を回転軸43に取り付けて、該ノズル41を平面上で首振り可能とすることも可能である。
例えば、液体4の噴射開始時において、剥離が始まるまではノズル41の角度を接触面11aに対して、傾いた角度とし、液体4が界面13のより深部に届くように、ガラスフィルム11の接触面11aと平行な角度に近づけるように、ノズル41の角度を変更するようにしてもよい。
例えば、剥離開始前は、ノズル径の細いものを使用し、剥離開始後から、剥離を促進さるために太めの径を使用してもよい。
さらに、液体4の圧も剥離の進行に応じて刻一刻と変化させることができる。
例えば、液体4の噴射開始時において、剥離が始まるまでは圧を高めにして、剥離の開始を促進させることができる。例えば、ガラスフィルムの積層体の端部にフォトレジストやカラーフィルターなどの有機成分が固着した場合は圧を高めにすることで剥離の開始が起こりやすくなる。次いで、剥離開始後に基板やデバイスにダメージを与えないために圧を下げ、剥離が深部に進行するのに伴って、再び圧を上げることも可能である。
例えば、剥離した支持ガラス12とガラスフィルム11の間隔は少なくともノズル41の径以上の隙間があると好ましい。ただし、隙間を大きくしすぎるとガラスに加わる引っ張り応力が大きくなり破損しやすくなる。
真空吸着パッド31aは例えばエアシリンダと連結して、引っ張り張力を調整することが可能である。真空吸着パッド31aやエアシリンダ等の駆動機構は、真空ポンプ等の減圧機構や、圧縮空気を送り込むことで減圧するエジェクター機能を有する機構等を採用することができる。
真空吸着パッド31aの形状は円形のものが使用できるが、ガラスフィルム11や支持ガラス12が吹き付けた流体で不当に浮き上がり破損することを防止するために、長円形状や略矩形のパッドを使用して基板端部が浮き上がらないように固定することも可能である。
特に、ガラスフィルム積層体1を水平に保った状態で取り扱う場合は、基板が撓みやすいため、プレート状の真空吸着機構を使用するのが好ましい。また、ガラスフィルム上にデバイスを形成したことによりプレートで平面状に固定することが困難な場合には真空吸着パッドを用いるのが好ましい。
また、デバイス表面に形成された配線やデバイスの封着剤などが、液体4から受ける圧力や真空吸着パッドの接触によりダメージを受けることが懸念される場合は、ダメージを回避したい部位に保護フィルムを貼ってもよい。また、封着剤の外周に液体4の浸入防止層を設けてもよい。
換言すれば、加熱を伴う処理が施される前のガラスフィルム11と支持ガラス12を直接積層してガラスフィルム積層体1を作製した場合において、そのガラスフィルム積層体1に加熱を伴う処理を施した場合でも、本発明に係る方法によれば、加熱処理後のガラスフィルム11と支持ガラス12とを剥離して、容易に加熱処理が施されたガラスフィルム11を製造することができる。
そして、本発明の一実施形態に係るガラスフィルムの製造方法によれば、加熱を伴う処理が施されたガラスフィルム11と支持ガラス12を、簡便かつ安価に、破損することなく剥離することができる。
このため、前述したガラスフィルムの製造方法は、電子デバイスの製造方法として適用するのに非常に適している。
そして、このような構成により、ガラスフィルム11と支持ガラス12の界面13に水を付与することができ、これにより、ガラスフィルム11と支持ガラス12の界面13において、加水分解反応を起こさせて、ガラスフィルム11と支持ガラス12の剥離をより容易にすることができるのである。
そして、このような構成により、ガラスフィルム11と支持ガラス12の界面13に付与する応力を高めることができ、これにより、ガラスフィルム11と支持ガラス12の剥離をより効率的に行うことができるのである。
図8に示す実施形態が、上述の実施形態と異なる点は、カバーガラス2がキャリアガラス21上に積層されている点である。
キャリアガラス21は、ガラスフィルム11に対する支持ガラス12の関係と同様に、カバーガラス2の取り扱い性等を確保するために、カバーガラス2に対して積層されるガラス板である。
例えば、電子デバイス5として液晶パネルを製造する場合は、ガラスフィルム11側にTFT処理を行い、カバーガラス2側にカラーフィルターを形成した後に、スペーサを介して、キャリアガラス21に積層されたカバーガラス2で素子51(液晶素子)を封止することができる。
この場合、支持ガラス付電子デバイス3は、キャリアガラス21も備える構成となっている。
このように、ガラスフィルム11がカバーガラス2で封止されており、カバーガラス2がキャリアガラス21に積層されている場合は、カバーガラス2を固定することでガラスフィルム11を平面状に固定してもよい。
ガラスフィルム11がカバーガラス2より大きく食み出ている場合は、ガラスフィルム11を直接固定してもよく、ガラスフィルム11とカバーガラス2の両方を固定してもよい。
キャリアガラス21は、前述したガラスフィルム11、カバーガラス2や支持ガラス12と同様の材質、支持ガラス12と同様の厚みのガラスを使用することが好ましい。キャリアガラス21とカバーガラス2とは、同一のガラス材質のものを使用することが好ましい。
本実施形態において、第3の工程により、支持ガラス付電子デバイス3から支持ガラス12とキャリアガラス21を剥離することで、最終的に所望の電子デバイス5を製造することができる。
第3の工程で剥離した支持ガラス12とキャリアガラス21は再度第1の工程でガラスフィルム11とカバーガラス2に積層して再利用することができる。
第3の工程での剥離時に、支持ガラス12とガラスフィルム11との界面13やキャリアガラス21とカバーガラス2の界面22に固体の楔を挿入した場合は、支持ガラス12やキャリアガラス21が楔と擦れ、傷がつくため、積層基板として再利用することができないが、流体たる液体4(ここでは水)を吹き付けて剥離することで傷つけることなく、平滑な表面を維持することができる。
また、本発明に係る電子デバイスの製造方法は、第1の工程から第3の工程まで連続して行う構成には限定されず、例えば、第1の工程後に製造されたガラスフィルム積層体1を梱包、出荷し、別途電子デバイス製造関連処理施設において、第2の工程及び第3の工程を行う構成であっても良い。
勿論、第2の工程後に製造された支持ガラス付電子デバイス3を梱包、出荷して、別途の施設で第3の工程を行うことにより、支持ガラス12やキャリアガラス21を剥離して、電子デバイス5を製造しても良い。
そして、本発明の一実施形態に係る電子デバイスの製造方法によれば、電子デバイス5を保護するカバーガラス2がキャリアガラス21と積層されている場合において、加熱を伴う処理が施されたカバーガラス2とキャリアガラス21を、破損することなく剥離することができる。
この実験は、剥離方法(より詳しくは、ガラスフィルム積層体の固定方法、引っ張り方法および剥離に用いる楔体の種類)に差異を設けて、剥離方法の差異が剥離結果に及ぼす影響を確認したものであり、本発明に係る電子デバイスの製造方法による実施例1〜実施例3の場合と、ガラスフィルムの剥離にステンレス製の楔を用いた場合の比較例1と、を比較している。
実施例1〜実施例3と比較例1では、以下に示すように、使用するガラスフィルム、カバーガラス、キャリアガラス等の仕様を共通としており、ガラスフィルム積層体に対して施す電子デバイス製造関連処理の内容も共通としている。
このガラスフィルム積層体におけるガラスフィルムに対して、スパッタリングにより透明導電膜として錫添加インジウム酸化物(ITO)を膜厚150nmで成膜した。尚、成膜時における基板(ガラスフィルム積層体)の処理温度は300℃とした。
また、このITO付き基板をパターニングした後、真空蒸着装置で正孔注入層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極電極を順次成膜し、有機EL素子を作製した。
その後、厚み100μm、幅678mm、長さ878mmのカバーガラス(日本電気硝子株式会社製 ガラスコードOA−10G)で封止して有機ELデバイスを作製した。
このカバーガラスは厚み0.5mm、幅680mm、長さ880mmのキャリアガラスに積層してある。尚、支持ガラスとキャリアガラスについても、日本電気硝子株式会社製のガラスフィルム(ガラスコードOA−10G)を使用した。
また本実験では、径φ0.1mmのノズルを使用し、ノズル内の静圧を10MPaとしてウォータージェットの手法により界面に向けて液体たる水を噴射した。
支持ガラスとノズルの距離は10mmとし、ノズルを速度25mm/秒の速度でガラスフィルム積層体の界面の長さ878mmの1辺に水流を当てながら走査させた。
このノズルの走査を繰り返し行い、支持ガラスを剥離させた。
また、剥離した支持ガラスとガラスフィルムの間隔、キャリアガラスとカバーガラスの間隔は3mmとなるようにした。
実施例1の場合には、初めにキャリアガラスを第2の基板保持機構の真空吸着プレートで固定することでガラスフィルムを平面状に固定し、支持ガラスをガラスフィルムから離反する向きに第1の基板保持機構の真空吸着パッドで引っ張りながら、ガラスフィルムと支持ガラスの界面にウォータージェットの手法により水を吹き付けて、支持ガラスを剥離した。
また、剥離した支持ガラス及びキャリアガラスを再度ガラスフィルム及びカバーガラスに積層させると、良好なガラスフィルム積層体が得られ、再利用が可能であった。
実施例2の場合には、初めに支持ガラスを第1の基板保持機構の真空吸着プレートで平面状に固定し、キャリアガラスを支持ガラスから離反する向きに第2の基板保持機構の真空吸着パッドで引っ張りながら、ガラスフィルムと支持ガラスの界面にウォータージェットの手法により水を吹き付けて、支持ガラスを剥離した。
即ち、実施例2は、初めに平面状に固定する対象が支持ガラスであり、引っ張る対象がガラスフィルムである点が、実施例1の場合と異なっている。
即ち、実施例2は、支持ガラスの剥離後に平面状に固定する対象がキャリアガラスであり、引っ張る対象がガラスフィルムである点も、実施例1の場合と異なっている。
また、支持ガラス、キャリアガラスを再度ガラスフィルムとカバーガラスに積層させると、良好なガラスフィルム積層体が得られ、再利用をすることができた。
実施例3の場合には、初めに支持ガラスとキャリアガラスの両方を第1および第2の各基板保持機構の真空吸着パッドで互いに離反する方向に引っ張りながら、ガラスフィルムと支持ガラスの界面にウォータージェットの手法により水を吹き付けて、支持ガラスを剥離した。
即ち、実施例3は、支持ガラスやガラスフィルム等を平面状に固定することなく剥離を行う点が、実施例1、2の場合と異なっている。
即ち、実施例3は、支持ガラスの剥離後において、ガラスフィルムやキャリアガラス等を平面状に固定することなく剥離を行う点も、実施例1、2の場合と異なっている。
実施例4の場合には、初めにキャリアガラスを第2の基板保持機構の真空吸着プレートで固定することでガラスフィルムを平面状に固定し、支持ガラスをガラスフィルムから離反する向きに第1の基板保持機構の真空吸着パッドで引っ張りながら、ガラスフィルムと支持ガラスの界面にスチーム吐出機を用いてスチームを吹き付けて、支持ガラスを剥離した。
また、剥離した支持ガラス及びキャリアガラスを再度ガラスフィルム及びカバーガラスに積層させると、良好なガラスフィルム積層体が得られ、再利用が可能であった。
実施例5の場合には、初めに支持ガラスを第1の基板保持機構の真空吸着プレートで平面状に固定し、キャリアガラスを支持ガラスから離反する向きに第2の基板保持機構の真空吸着パッドで引っ張りながら、ガラスフィルムと支持ガラスの界面にスチームを吹き付けて、支持ガラスを剥離した。
即ち、実施例5は、初めに平面状に固定する対象が支持ガラスであり、引っ張る対象がガラスフィルムである点が、実施例4の場合と異なっている。
即ち、実施例5は、支持ガラスの剥離後に平面状に固定する対象がキャリアガラスであり、引っ張る対象がガラスフィルムである点も、実施例4の場合と異なっている。
また、支持ガラス、キャリアガラスを再度ガラスフィルムとカバーガラスに積層させると、良好なガラスフィルム積層体が得られ、再利用をすることができた。
実施例6の場合には、初めに支持ガラスとキャリアガラスの両方を第1および第2の各基板保持機構の真空吸着パッドで互いに離反する方向に引っ張りながら、ガラスフィルムと支持ガラスの界面にスチームを吹き付けて、支持ガラスを剥離した。
即ち、実施例6は、支持ガラスやガラスフィルム等を平面状に固定することなく剥離を行う点が、実施例5、4の場合と異なっている。
即ち、実施例6は、支持ガラスの剥離後において、ガラスフィルムやキャリアガラス等を平面状に固定することなく剥離を行う点も、実施例5、4の場合と異なっている。
実施例7の場合には、初めにキャリアガラスを第2の基板保持機構の真空吸着プレートで固定することでガラスフィルムを平面状に固定し、支持ガラスをガラスフィルムから離反する向きに第1の基板保持機構の真空吸着パッドで引っ張りながら、ガラスフィルムと支持ガラスの界面にエアーナイフを用いて圧縮空気を吹き付けて、支持ガラスを剥離した。
また、剥離した支持ガラス及びキャリアガラスを再度ガラスフィルム及びカバーガラスに積層させると、良好なガラスフィルム積層体が得られ、再利用が可能であった。
実施例8の場合には、初めに支持ガラスを第1の基板保持機構の真空吸着プレートで平面状に固定し、キャリアガラスを支持ガラスから離反する向きに第2の基板保持機構の真空吸着パッドで引っ張りながら、ガラスフィルムと支持ガラスの界面にエアーナイフを用いて圧縮空気を吹き付けて、支持ガラスを剥離した。
即ち、実施例8は、初めに平面状に固定する対象が支持ガラスであり、引っ張る対象がガラスフィルムである点が、実施例7の場合と異なっている。
即ち、実施例8は、支持ガラスの剥離後に平面状に固定する対象がキャリアガラスであり、引っ張る対象がガラスフィルムである点も、実施例7の場合と異なっている。
また、支持ガラス、キャリアガラスを再度ガラスフィルムとカバーガラスに積層させると、良好なガラスフィルム積層体が得られ、再利用をすることができた。
実施例9の場合には、初めに支持ガラスとキャリアガラスの両方を第1および第2の各基板保持機構の真空吸着パッドで互いに離反する方向に引っ張りながら、ガラスフィルムと支持ガラスの界面にエアーナイフの手法により空気を吹き付けて、支持ガラスを剥離した。
即ち、実施例9は、支持ガラスやガラスフィルム等を平面状に固定することなく剥離を行う点が、実施例7、8の場合と異なっている。
即ち、実施例9は、支持ガラスの剥離後において、ガラスフィルムやキャリアガラス等を平面状に固定することなく剥離を行う点も、実施例7、8の場合と異なっている。
また、支持ガラス、キャリアガラスを再度ガラスフィルムとカバーガラスに積層させると、良好なガラスフィルム積層体が得られ、再利用することができた。
比較例1の場合には、上記仕様の有機ELデバイスにおける支持ガラスとガラスフィルムの界面に厚み0.5mmのステンレス製の楔を挿入して剥離した。
この時、支持ガラスを基板保持機構の真空吸着プレートで平面状に固定し、キャリアガラスを支持ガラスから離反する向きに基板保持機構の真空吸着パッドで引っ張りながらステンレス楔を挿入して、支持ガラスを剥離した。
また、比較例1の場合には、剥離に要する時間も実施例1〜実施例9の場合に比して長くなった。
即ち、比較例1に係る方法では、剥離後の支持ガラス及びキャリアガラスを再利用することが困難であることが確認できた。
そして、本発明の一実施形態に係る電子デバイスの製造方法及びガラスフィルムの製造方法は、ガラスフィルム11及び支持ガラス12のいずれかを平面状に保つことで、ガラスフィルム11及び支持ガラス12の界面13に対して、確実に流体たる液体4を吹き付けることができ、これにより、加熱を伴う処理が施されたガラスフィルム11と支持ガラス12を、より確実に、破損することなく剥離することを可能にしている。
そして、本発明の一実施形態に係る電子デバイスの製造方法及びガラスフィルムの製造方法は、ガラスフィルム11を平面状に保持することによって、剥離時にガラスフィルム11に対して余計な応力が作用するのを防止して、これにより、剥離時にガラスフィルム11が破損することをより確実に防止して、ガラスフィルム11および電子デバイス5の歩留まりを高めることを可能としている。
2 カバーガラス
3 支持ガラス付電子デバイス
4 液体
5 電子デバイス
11 ガラスフィルム
12 支持ガラス
21 キャリアガラス
Claims (8)
- 製造関連処理前のガラスフィルムであるガラスフィルム基材と支持ガラスとを積層してガラスフィルム積層体を作製する第1の工程と、
前記ガラスフィルム積層体における前記ガラスフィルム基材への加熱を伴う製造関連処理を行う第2の工程と、
前記製造関連処理後の前記ガラスフィルム積層体を、前記ガラスフィルム基材に前記製造関連処理を施して得たガラスフィルムと前記支持ガラスとに分離する第3の工程と、
を有するガラスフィルムの製造方法であって、
前記第3の工程において、
前記ガラスフィルム積層体における前記ガラスフィルムと前記支持ガラスとの界面にウォータージェットの手法により水を含有する液体を付与しながら、前記ガラスフィルム及び前記支持ガラスのいずれか一方から他方を引き剥がす、
ことを特徴とするガラスフィルムの製造方法。 - 前記第3の工程において、
前記ガラスフィルム及び前記支持ガラスのいずれか一方を平面状に保持しつつ、他方に一方から離間する方向への張力を付与して、一方から他方を引き剥がす、
ことを特徴とする請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。 - 前記第3の工程において、
前記ガラスフィルムを平面状に保持しつつ、前記支持ガラスに前記ガラスフィルムから離間する方向への張力を付与する、
ことを特徴とする請求項2に記載のガラスフィルムの製造方法。 - 前記液体の噴射開始時において、前記ウォータージェットのノズルの角度を前記界面に対して傾いた角度とし、その後、前記界面と平行な角度に近づけるように、前記ノズルの角度を変更する、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のガラスフィルムの製造方法。 - 前記液体の噴射開始時において、前記ウォータージェットの噴射圧を相対的に高めとし、次いで、前記分離の開始後に前記ウォータージェットの噴射圧を相対的に下げる、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のガラスフィルムの製造方法。 - 前記ガラスフィルム基材と前記支持ガラスの互いに接触する側の面の表面粗さRaが、それぞれ2.0nm以下である、
ことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のガラスフィルムの製造方法。 - 電子デバイス製造関連処理前のガラスフィルムであるガラスフィルム基材と支持ガラスとを積層してガラスフィルム積層体を作製する第1の工程と、
前記ガラスフィルム積層体における前記ガラスフィルム基材への加熱を伴う電子デバイス製造関連処理を行うことで前記ガラスフィルム積層体の前記ガラスフィルム基材上に素子を形成し、封止基板で前記素子を封止して支持ガラス付電子デバイスを作製する第2の工程と、
前記支持ガラス付電子デバイスにおける電子デバイス製造関連処理後のガラスフィルム基材であるガラスフィルムと前記支持ガラスとの界面にウォータージェットの手法により水を含有する液体を付与しながら、前記ガラスフィルム及び前記支持ガラスのいずれか一方から他方を引き剥がして電子デバイスを製造する第3の工程と、
を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。 - 前記封止基板は、カバーガラスであり、
該カバーガラスは、キャリアガラスに積層されており、
前記第3の工程において、
前記カバーガラスと前記キャリアガラスとの界面にウォータージェットの手法により水を含有する液体を付与しながら、前記カバーガラス及び前記キャリアガラスのいずれか一方から他方を引き剥がす、
ことを特徴とする請求項7に記載の電子デバイスの製造方法。
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