JP6346552B2 - 近赤外吸収フィルタ用ガラス - Google Patents
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Description
上記のような近赤外吸収フィルタに用いられるフィルタ用ガラスが持つべき分光特性として、800 nm以上の波長域での吸収特性が高く、400〜700 nmの波長域での透過特性が高いことが挙げられる。
このような特性を持つフィルタ用ガラス(以下、「近赤外吸収フィルタ用ガラス」又は「フィルタ用ガラス」という。)は、P2O5を主成分としたガラス(リン酸塩ガラス)にCuOを含有させ、銅イオンの価数を制御してCu2+とすることにより実現するものがある。ただし、P2O5を主成分とするリン酸塩ガラスは、吸湿性が高く、通常の使用に対して十分な耐候性や、耐水性を得ることが非常に困難であり、長時間使用すると表面が変質して光学特性が劣化するという問題があった。
特許文献1の技術は、リン酸塩ガラス中にAl2O3を多量に含有させることによって耐候性を改善したものである。特許文献2及び3の技術は、リン酸塩ガラスにAl2O3, ZnOを加えることで、耐候性の向上を図ったものである。特許文献4の技術は、Al2O3の増量ではなく、P2O5の含有量を減少させ、ZnOを加えることで耐候性の改善を図ったものである。
また、特許文献2及び3の技術では、リン酸塩ガラスの表面ヤケの原因となるアルカリ金属元素を含有することが必須の要件となるため、長期間での耐候性は期待できないという問題があった。
さらに、特許文献4の技術では、アルカリ金属を使わない組成を提案しており、ガラスの表面ヤケ等については発生しない。しかしながら、近年、撮影機器の小型化・薄型化・軽量化のために、近赤外線吸収フィルタにも極端な薄型化が求められており、これを満たすためには従来よりもガラス組成のCuOの含有量をより多くしなければならないという事情があり、アルカリ金属を用いず、P2O5を減少させ、ZnOを加えるという特許文献4の技術では、CuO含有量を増加させた場合に、リン酸塩ガラス融液は不安定化し(以後、「製造時の融液の不安定化」という。)、結晶が析出するため、目的とするガラスが得られない状態になり、実用的な製造が難しい、という問題があった。
例えば、特許文献5〜7には、リン酸塩ガラスに比べて耐侯性の優れるフツリン酸塩ガラスにCuOを含有させることにより、所望の耐候性及び分光特性を実現した近赤外吸収フィルタ用ガラスが開示されている。
さらに、溶融雰囲気によりCu2+が還元されてCu+イオンになりやすく、分光特性が悪化しやすいという欠点があった。
1.質量%で、
P2O5:32.0〜52.0%、
Al2O3:1.5〜4.0%、
MgO:0〜3.0%、
CaO:0〜10.0%、
SrO:0〜7.0%、
BaO:27.0〜40%、
(ただしMgO、CaO、SrO及びBaOの合計量が40.0〜47.0%である。)
ZnO:1.0〜5.0%、
Y2O3:0.25〜5.0%、
La2O3:0.25〜5.0%及び
Ta2O5:0.1〜2.0%
を含有した基礎ガラス成分、並びに、
該基礎ガラス成分100質量部に対して4.5〜7.5質量部のCuO
を含み、且つ、以下の式を満足することを特徴とする近赤外吸収フィルタ用ガラス。
3.0<[%P2O5]/([%Y2O3]+[%La2O3]+[%Ta2O5])<27.0
0.4<[%CuO]/([%Y2O3]+[%La2O3]+[%Ta2O5])<3.6
ただし、[%M]は、ガラス中のM元素の含有量(質量%)を示す。
Gd2O3:3.0%以下、
B2O3: 5.0%以下及び
Nb2O5:5.0%以下
を含有することを特徴とする請求項1に記載の近赤外吸収フィルタ用ガラス。
本発明の近赤外吸収フィルタ用ガラスは、質量%で、
P2O5:32.0〜52.0%、
Al2O3:1.5〜4.0%、
MgO:0〜3.0%、
CaO:0〜10.0%、
SrO:0〜7.0%、
BaO:27.0〜40%、
(ただしMgO、CaO、SrO及びBaOの合計量が40.0〜47.0%である。)
ZnO:1.0〜5.0%、
Y2O3:0.25〜5.0%、
La2O3:0.25〜5.0%及び
Ta2O5:0.1〜2.0%
を含有した基礎ガラス成分、並びに、
該基礎ガラス成分100質量部に対して4.5〜7.5質量部のCuO
を含む。
P2O5は、本発明におけるリン酸塩ガラスの主成分である。P2O5の含有量が32.0 %以下ではガラス形成が難しくなり、52.0 %を超えると耐候性が著しく低下するため、含有量を32.0〜52.0 %とする。同様の観点から、P2O5の好ましい含有量は45.0〜50.0 %であり、より好ましくは48.0〜49.8 %である。
Al2O3は、耐候性を改善するための成分であり、その含有量は1.5〜4.0%である。Al2O3の含有量が4.0 %以上加えると溶解性及び製造時の融液の安定性が悪化し、1.5 %未満では耐候性が低下するためである。同様の観点から、好ましいAl2O3の含有量は1.5〜2.7 %であり、さらに好ましくは1.7〜2.5 %である。
MgOは、耐候性を改善する成分であり、その含有量は0〜3.0%である。MgOの含有量が 3.0 %を超えると、製造時の融液の安定性が悪化する傾向があるためである。同様の観点から、好ましいMgOの含有量は2.0 % 以下であり、より好ましくは1〜1.8 %である。
CaOについてもMgOと同様に耐候性を改善する成分であり、その含有量は0〜10.0%である。CaOの含有量が10.0 %を超えると製造時の融液の安定性が悪化するためである。同様の観点から、好ましいCaOの含有量は5.5 %〜8.0 %であり、より好ましくは6.5 %〜7.5 %である。
SrOについてもMgO及びCaOと同様に耐候性を改善する成分であり、その含有量は0〜7.0%である。SrOの含有量が7.0 %を超えると製造時の融液の安定性が悪化するためである。同様の観点から、好ましいSrOの含有量は2.0 %〜5.0%, より好ましくは2.5 %〜3.5 %である。
BaOは製造時の融液の安定化および分光特性を改善する成分であり、その含有量は27.0 ~ 40.0 %である。安定性および分光特性に関して、27.0 %未満であると、効果は不充分であり、40.0 %を超えると製造時の融液の安定性の悪化を招くためである。同様の観点から、好ましい範囲は30.0〜37.0 %であり、より好ましい範囲は31.0〜35.0 %である。
ZnOは、製造時の融液の安定性及び耐候性を改善する成分であり、その含有量は1.0〜5.0%である。ZnOの含有量が5.0 %を超えると融液の安定性及び分光特性が悪化し、1.0 %未満であると耐候性が低下するためである。同様の観点から、ZnOの含有量の好ましい範囲は1.0〜4.0 %であり、より好ましい範囲は1.5〜3.5 %である。
Y2O3は、製造時の融液の安定性及び耐候性を改善する成分であり、その含有量は0.25〜5.0%である。Y2O3の含有量が5.0%を超えると、分光特性の悪化を招き、0. 25%未満であると、製造時の融液の安定性及び耐候性が低下するためである。同様の観点から、Y2O3の好ましい範囲は0.25〜3.5%であり、より好ましくは0.4〜1.5%である。
La2O3は、前記Y2O3と同様に、製造時の融液の安定性及び耐候性を改善する成分であり、その含有量は0.25〜5.0%である。La2O3の含有量が5.0%を超えると、分光特性の悪化を招き、0. 25%未満であると、製造時の融液の安定性及び耐候性が低下するためである。同様の観点から、La2O3の好ましい範囲は0.25〜3.5%であり、より好ましくは0.4〜1.5%である。
Ta2O5は、前記Y2O3及びLa2O3と同様に、製造時の融液の安定性及び耐候性を改善する成分であり、その含有量は0.1〜2.0%である。Ta2O5の含有量が2.0 %を超えると、溶融温度を高くする必要が生じ、可視域での分光特性の悪化を招き、0.1 %未満では、製造時の融液の安定性と耐候性が低下するためである。同様の観点から、La2O3の好ましい範囲は0.1〜1.0%であり、より好ましくは0.25〜0.50%である。
Gd2O3は、任意成分であり、前記基礎ガラス成分中に3.0%以下含有することが好ましい。Gd2O3はガラス製造時の融液の安定性を改善する働きをするが、含有量が3.0 %を超える場合には、分光特性が悪化するおそれもあるためである。同様の観点からは、1.0〜2.0%であることがより好ましい。
B2O3は、任意成分であり、前記基礎ガラス成分中に5.0%以下含有することが好ましい。B 2O3はガラス製造時の融液の安定性を改善する働きをするが、含有量が5.0%を超える場合には、耐候性が悪化するおそれもあるためである。同様の観点からは、1.0〜3.0 %であることがより好ましい。
Nb2O5は、任意成分であり、前記基礎ガラス成分中に5.0%以下含有することが好ましい。Nb2O5はガラス製造時の融液の安定性を改善する働きをするが、含有量が5.0%を超える場合には、分光特性が悪化するおそれもあるためである。同様の観点からは、1.0〜2.0 %であることがより好ましい。
CuO:基礎ガラス成分100質量部に対して4.5〜7.5質量部
CuOは、ガラスに近赤外吸収特性を付与する成分であり、前記基礎ガラス成分100重量部に対して、4.5〜7.5質量部添加される。実際には、使用されるフィルタの厚さと所望の分光特性に応じて、添加される量が選択されるが、その添加量が、基礎ガラス成分100重量部に対して4.5 質量部未満であると、実用的な耐候性が得られず、7.5質量部を超えると製造時の融液の安定性が低下し、製品化が難しくなる。同様の観点から、CuOの添加量は、基礎ガラス成分100重量部に対して、好ましくは4.5〜6.8質量部、より好ましくは4.8〜6.4質量部である。
3.0<[%P2O5]/([%Y2O3]+[%La2O3]+[%Ta2O5])<27.0
0.4<[%CuO]/([%Y2O3]+[%La2O3]+[%Ta2O5])<3.6
上述した、Y2O3、La2O3及びTa2O5を加えると、これらが望ましい分光特性を保った上で、製造時の融液の安定性と耐侯性の良化に効果を示すことができるものの、実際には、P2O5及びCuOの量との関係が非常に重要であり、製造時の融液の安定化及び耐侯性について十分な効果が得られない場合がある。そのため、本発明では、P2O5及びCuOそれぞれの量とY2O3、La2O3及びTa2O5の合計量とを、上記関係式を満たすようにすることで、従来の技術よりも確実に、製造時の融液の安定化及び耐侯性を実現できる。
なお、[%M]は、ガラス中のM元素の含有量(質量%)を示す。
本発明の近赤外吸収フィルタ用ガラスは、原料として、正リン酸、五酸化二リン、あるいはメタリン酸塩などの化合物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物など、通常の光学ガラスで使用される一般のガラス原料、並びに、上述した各成分を用いて通常のガラス製造方法に従って製造できる。例えば、溶融温度を900〜1300 ℃程度にして、白金坩堝を用いて、十分に溶融したガラス融液を型に流し込み、ガラス転移温度付近でアニールすることにより、近赤外吸収フィルタ用ガラスを製造できる。
原料として、各々相当するメタリン酸塩、酸化物、炭酸塩、硝酸塩等を使用し、ガラス化後に表1及び2に示した成分組成となるように秤量、混合後、白金坩堝に投入し、電気炉中900〜1300 ℃の温度にて2〜3時間溶融した。その後、溶融した原料を攪拌により均質化、清澄した後、金型に流しだし、除歪することにより均質な近赤外線吸収フィルタ用ガラスのサンプル1〜33を得た。
各サンプルの、基礎ガラス成分の組成(質量%)、CuOの添加量(基礎ガラス成分100質量部に対する質量部)、[%P2O5]/([%Y2O3]+[%La2O3]+[%Ta2O5])(表1及び2では式Xと示す。)の値、及び、[%CuO]/([%Y2O3]+[%La2O3]+[%Ta2O5])(表1及び2では式Yと示す。)の値について、表1及び2に示す。
近赤外線吸収フィルタ用ガラスの各サンプルについて、以下の評価を行った。
(1)製造時の融液の安定性
製造時の融液の安定性の評価として、各サンプルの製造時、溶融した原料について、坩堝ごと炉外へ出した後、溶融した原料を攪拌し、失透が生じるまでの時間を測定した。なお、失透とは、ガラス融液中の成分が複数集まり、熱力学的に安定な結晶を析出し、透明性が失われることであり、失透までの時間が長いほど、融液の安定性が高いことを示す。
以下の基準に従って評価を行い、評価結果を表1及び2に示す。
×:1分未満で失透
△:2分以上撹拌は可能であるが着色が強い(製品化できない)
○:1分〜2分で失透するが着色はない
◎:2分を超えて失透せず着色はない
得られた各サンプルのガラスブロックについて、20 mm ×20 mm ×0.15 〜 0.30 mm(縦×横×厚さ)に加工し、両面光学研磨によって、透過率測定のサンプルを作製した。
各サンプルの透過率について、厚さの異なるガラスを二枚測定し、内部透過率の算出を、シミュレーションにより導出した。図1に、サンプル21及びサンプル33を用いた場合の、分光透過率のシミュレーションデータを示す。
そして、透過率測定の各サンプルについて、温度:85℃、湿度:85%の条件下で200時間放置した(耐候性試験を行った)後、再度透過率をシミュレーションにより導出した。
以下の基準に従って評価を行い、評価結果を表1及び2に示す。
×:耐候性試験の前後で透過率の変化あり
○:耐候性試験の前後で透過率の変化なし
比較のサンプル29〜32に比べて、本発明例のサンプル1〜25は、全て製造時の融液の安定性の点で優れていた。また、耐候性に関しても、本発明例の各サンプルは、比較例の各サンプルと同等以上の結果を示した。
また、比較例のサンプル26及び27に関しては、各成分の含有量については本発明例と同様であるものの、X式の条件を満たさない組成である。サンプル26ではY2O3、La2O3、Ta2O5の割合が多くなり、ガラス溶解時の温度が高くなる結果、可視域で良好な透過率を持つ実用的なフィルタガラスを得ることができなかった。一方、サンプル27に関しては、P2O5の割合が多くなるので、実用的な耐候性を得ることが難しいことがわかった。さらに、比較例のサンプル28及び29は、各成分の含有量については本発明例と同様であるものの、Y式の条件を満たさない組成である。サンプル28では、多量のY2O3、La2O3、Ta2O5によりガラス融液の安定性は向上する傾向があるものの、溶解に高温を擁するため、色の悪化が起こり、結果として製造時の融液の安定性が低く、実用化は難しいことがわかった。他方、サンプル29では、Y2O3、La2O3、Ta2O5の割合が小さく、ガラス融液は不安定であるため、溶解できないことがわかった。
以上のことから、各成分の含有量だけでなく、式:3.0<[%P2O5]/([%Y2O3]+[%La2O3]+[%Ta2O5])<27.0、及び、式:0.4<[%CuO]/([%Y2O3]+[%La2O3]+[%Ta2O5])<3.6を満足することも非常に重要であることがわかった。
Claims (2)
- 質量%で、
P2O5:32.0〜52.0%、
Al2O3:1.5〜4.0%、
MgO:0〜3.0%、
CaO:0〜10.0%、
SrO:0〜7.0%、
BaO:27.0〜40%、
(ただしMgO、CaO、SrO及びBaOの合計量が40.0〜47.0%である。)
ZnO:1.0〜5.0%、
Y2O3:0.25〜5.0%、
La2O3:0.25〜5.0%及び
Ta2O5:0.1〜2.0%
を含有した基礎ガラス成分、並びに、
該基礎ガラス成分100質量部に対して4.5〜7.5質量部のCuO
を含み、且つ、以下の式を満足することを特徴とする近赤外吸収フィルタ用ガラス。
3.0<[%P2O5]/([%Y2O3]+[%La2O3]+[%Ta2O5])<27.0
0.4<[%CuO]/([%Y2O3]+[%La2O3]+[%Ta2O5])<3.6
ただし、[%M]は、ガラス中のM元素の含有量(質量%)を示す。 - 前記基礎ガラス成分は、さらに、質量%で、
Gd2O3:3.0%以下、
B2O3: 5.0%以下及び
Nb2O5:5.0%以下
を含有することを特徴とする請求項1に記載の近赤外吸収フィルタ用ガラス。
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