第1の実施形態に係る半導体モジュール10を、図1〜11を用いて説明する。図1は、半導体モジュール10を示す斜視図である。半導体モジュール10は、例えば、インバータの一部を構成する。
図2は、図1に示すF2−F2線断面に沿って示す、半導体モジュール10の断面図である。図2は、1つの半導体装置60とその近傍の断面図を示している。
図1,2に示すように、半導体モジュール10は、冷却器20と、冷却器20上に設けられるコレクタ配線30と、冷却器20上に設けられるエミッタ配線40と、冷却器20上に設けられる接合層50と、接合層50上に固定される複数の半導体装置60とを有している。なお、本実施形態では、半導体モジュール10は、一例として、4つの半導体装置60を有している。
冷却器20は、冷却板21と、冷却板21上に設けられる絶縁層22とを有している。冷却板21は、熱伝導率の高い材料で形成されており、一例として、金属製である。また、本実施形態では、金属の一例として、アルミニウムが用いられている。冷却板21は、一例として、平板形状であり、両主面が互いに平行な平面である。
絶縁層22は、冷却板21の一方の主面上に形成されている。絶縁層22は、絶縁性を有する材料で形成されており、本実施形態では、一例として、絶縁性の樹脂材料で形成されている。
絶縁層22の冷却板21に接合されない方の主面23は、平面である。絶縁層22には、第1の溝24と、第2の溝25とが形成されている。第1の溝24と第2の溝25とは、各々直線状に延びており、互いに平行である。第1の溝24と第2の溝25とは、主面23に開口している。第1の溝24の深さは、一定である。第2の溝25の深さは、一定である。
コレクタ配線30は、例えば、厚みが一定の板形状である。コレクタ配線30は、4つの半導体装置60の後述されるコレクタ板63が電気的に接続可能な長さを有している。コレクタ配線30は、第1のコレクタ配線用主面31と、第2のコレクタ配線用主面32とを有している。第1のコレクタ配線用主面31と第2のコレクタ配線用主面32とは、互いに平行な平面である。
コレクタ配線30は、第1のコレクタ配線用主面31を絶縁層22の主面23側に向けた姿勢で、第1の溝24内に収容されている。コレクタ配線30の厚みは、第1の溝24の深さと同じである。このため、第1のコレクタ配線用主面31は、絶縁層22の主面23と面一となる。また、コレクタ配線30は、第1の溝24内に嵌合する形状である。このため、第1の溝24内は、コレクタ配線30によって埋められる。
エミッタ配線40は、例えば、厚みが一定の板形状である。エミッタ配線40は、4つの半導体装置60の後述するエミッタ板65が電気的に接続可能な長さを有している。エミッタ配線40は、第1のエミッタ配線用主面41と、第2のエミッタ配線用主面42とを有している。第1のエミッタ配線用主面41と第2のエミッタ配線用主面42とは、互いに平行な平面である。
エミッタ配線40は、第1のエミッタ配線用主面41を絶縁層22の主面23側に向けた姿勢で、第2の溝25内に収容されている。エミッタ配線40の厚みは、第2の溝25の深さと同じである。このため、エミッタ配線40の第1のエミッタ配線用主面41は、絶縁層22の主面23と面一となる。また、エミッタ配線40は、第2の溝25内に嵌合する形状である。第2の溝25内は、エミッタ配線40によって埋められる。
このため、絶縁層22の厚み部分のうち、第1の溝24と第2の溝25との間の部分は、第1の溝24と第2の溝25とを仕切る仕切壁部26となる。また、仕切壁部26は、第1の溝24と第2の溝25とを仕切ることによって、コレクタ配線30とエミッタ配線40とが互いに接触することを防止する。
絶縁層22の主面23上において、半導体装置60が設置される範囲の各々には、接合層50が設けられている。接合層50は、コレクタ配線30の第1のコレクタ配線用主面31上に設けられる第1の導電性接合部51と、エミッタ配線40の第1のエミッタ配線用主面41上に設けられる第2の導電性接合部52と、仕切壁部26上に設けられる第1の絶縁性接合部53と、第1の溝24の縁部において仕切壁部26と対向する部分24aに設けられる第2の絶縁性接合部54と、第2の溝25の縁部において仕切壁部26と対向する部分25aに設けられる第3の絶縁性接合部55とを有している。
なお、部分24aは、具体的に説明すると、第1の溝24の長手方向に沿う部分である。部分25aは、具体的に説明すると、第2の溝25の長手方向に沿う部分である。
第1の導電性接合部51は、導電性材料で形成されている。本実施形態では、第1の導電性接合部51は、一例として、内部に金属製のフィラーを含むことによって導電性を有している。第1の導電性接合部51は、一例として、Agフィラーを含んでいる。
第1の導電性接合部51は、コレクタ配線30の第1のコレクタ配線用主面31の全域に積層されている。第1の導電性接合部51は、第1のコレクタ配線用主面31に固定可能に形成されている。また、第1の導電性接合部51は、後述される半導体装置60のコレクタ板63に固定可能に形成されている。
第2の導電性接合部52は、導電性材料で形成されている。本実施形態では、一例として、第2の導電性接合部52は、内部に金属製のフィラーを含むことによって導電性を有している。第2の導電性接合部52は、一例として、Agフィラーを有している。
第2の導電性接合部52は、エミッタ配線40の第1のエミッタ配線用主面41の全域に積層されている。第2の導電性接合部52は、第1のエミッタ配線用主面41に固定可能に形成されている。また、第2の導電性接合部52は、後述される半導体装置60のエミッタ板65に固定可能に形成されている。
第1の絶縁性接合部53は、絶縁性の材料で形成されている。本実施形態では、第1の絶縁性接合部53は、一例として、絶縁性の樹脂材料で形成されている。第1の絶縁性接合部53は、仕切壁部26の先端面の全域に積層されており、第1の導電性接合部51と第2の導電性接合部52とに挟まれている。このため、第1の絶縁性接合部53は、第1の導電性接合部51と第2の導電性接合部52とが互いに接触することを防止している。第1の絶縁性接合部53は、仕切壁部26に固定可能に形成されている。また、第1の絶縁性接合部53は、後述される半導体装置60の設置面69に固定可能に形成されている。
第2の絶縁性接合部54は、絶縁性の材料で形成されている。本実施形態では、第2の絶縁性接合部54は、一例として、絶縁性の樹脂材料で形成されている。第2の絶縁性接合部54は、半導体装置60が固定される範囲において第1の溝24の縁部の部分24aの全域に積層されている。このため、第2の絶縁性接合部54は、第1の導電性接合部51に隣接している。第2の絶縁性接合部54は、第1の溝24の縁部の部分24aに固定可能に形成されている。また、第2の絶縁性接合部54は、後述する半導体装置60の設置面69に固定可能に形成されている。
第3の絶縁性接合部55は、絶縁性の材料で形成されている。本実施形態では、第3の絶縁性接合部55は、一例として、絶縁性の樹脂材料で形成されている。第3の絶縁性接合部55は、半導体装置60が固定される範囲において第2の溝25の縁部の部分25aの全域に積層されている。このため、第3の絶縁性接合部55は、第2の導電性接合部52に隣接して配置されている。第3の絶縁性接合部55は、第2の溝25の縁部の部分25aに固定可能に形成されている。また、第3の絶縁性接合部55は、後述する半導体装置60の設置面69に固定可能に形成されている。
複数の半導体装置60は、接合層50上に固定されている。これら半導体装置60は、互いに同じ構造を有している。半導体装置60は、半導体チップ61と、コレクタ板63と、エミッタ板65と、接続端子67と、これら、半導体チップ61とコレクタ板63とエミッタ板65と接続端子67とを内部に収容するモールド樹脂(周壁部)68とを有している。
半導体チップ61は、一対のスイッチング素子とダイオードとを有している。半導体チップ61は、第1の主面61aと第2の主面61bとを有している。第1の主面61aには、スイッチング素子のエミッタ電極62と接続電極66とが設けられている。第2の主面61bには、スイッチング素子のコレクタ電極64が設けられている。
コレクタ板63は、一例として、直方体であり、半導体チップ61のスイッチング素子のコレクタ電極64に接続される第1の電極面63aと、第1の導電性接合部51に接合される第1の導電面63bとを有している。第1の導電面63bは、第1の電極面63aに対して垂直な平面である。
エミッタ板65は、一例として、直方体であり、半導体チップ61のスイッチング素子のエミッタ電極62に接続される第2の電極面65aと、第2の導電性接合部52に接合される第2の導電面65bとを有している。第2の導電面65bは、第2の電極面65aに対して垂直な平面である。
コレクタ板63エミッタ板65とは、第1の電極面63aと第2の電極面65aとが互いに対向する姿勢で、モールド樹脂68内に収容されている。また、半導体チップ61は、第1の電極面63aと第2の電極面65aとの間に配置されている。接続端子67は、半導体チップ61のスイッチング素子の接続電極66に接続されている。
モールド樹脂68は、下端面が設置面69となっている。設置面69は、平面である。コレクタ板63の第1の導電面63bは、設置面69に露出している。エミッタ板65の第2の導電面65bは、設置面69に露出している。
具体的には、設置面69は、コレクタ板63の第1の電極面63aが露出する第1の開口69aと、エミッタ板65の第2の導電面65bが露出する第2の開口69bとを有している。接続端子67は、モールド樹脂68の上端部から外部に突出している。
第1の導電面63bの幅は、コレクタ配線30の幅と同じ長さである。ここで言う幅とは、コレクタ板63とエミッタ板65とが並ぶ方向の長さであり、言い換えると、コレクタ配線30とエミッタ配線40とが並ぶ方向の長さである。第2の導電面65bの幅は、エミッタ配線40の幅と同じ長さである。
半導体装置60は、設置面69が接合層50に固定される。具体的には、第1の開口69aから露出するコレクタ板63の第1の導電面63bが第1の導電性接合部51に固定される。第2の開口69bから露出するエミッタ板65の第2の導電面65bが第2の導電性接合部52に固定される。
設置面69の第1の開口69aと第2の開口69bとの間に配置され、第1の開口69aと第2の開口69bとを仕切る間の仕切部分69cは、第1の絶縁性接合部53に固定される。第1の開口69aの縁部において部分24aに対向する部分69dは、第2の絶縁性接合部54に固定される。第2の開口69bの縁部において部分25aに対向する部分69eは、第3の絶縁性接合部55に固定される。
共通のコレクタ配線30及びエミッタ配線40に接合層50を介して接続される半導体装置60は、図1に示すように、コレクタ配線30とエミッタ配線40とに沿って並んでいる配置されている。本実施形態では、半導体モジュール10は、一例として、共通のコレクタ配線30及びエミッタ配線40に接合層50を介して接続される4つの半導体装置60を有している。他の例としては、異なるコレクタ配線30及びエミッタ配線40に接合層50を介して接続される半導体装置60の列を複数有してもよい。または、共通のコレクタ配線30及びエミッタ配線40に接続される半導体装置60の数は、4つに限定されない。共通のコレクタ配線30及びエミッタ配線40に接続される半導体装置60の数は、1つまたは複数であってもよい。
次に、半導体モジュール10の製造工程について、図3〜11を用いて説明する。まず、冷却器20とコレクタ配線30とエミッタ配線40との一体物を製造する工程について説明する。図3に示すように、冷却板21上に、絶縁層22を形成する、絶縁性の絶縁性材料70を供給する。絶縁性材料70は、供給された状態では、比較的やわらかく、荷重が入力されると変形することが可能である。
次に、図4に示すように、冷却板21上に供給された絶縁性材料70上に、コレクタ配線30とエミッタ配線40とを配置する。次に、図5に示すように、コレクタ配線30とエミッタ配線40とを、型80で絶縁性材料70に向かって押し付ける。型80は、押し付け面81を有している。押し付け面81は、平面である。
絶縁性材料70が変形可能であることによって、コレクタ配線30とエミッタ配線40とは、型80の押し付け面81で押さえつけられることによって、絶縁性材料70内に埋め込まれる。型80は、押し付け面81によって絶縁性材料70の表面が平らに均される位置まで、絶縁性材料70に向かって押し付けられる。
図6に示すように、平面である押し付け面81が押し付けられることによって、絶縁性材料70の表面71は平面に均される。また、コレクタ配線30の第1のコレクタ配線用主面31と、エミッタ配線40の第1のエミッタ配線用主面41とが、絶縁性材料70の表面71と面一となる。
その後、型80が絶縁性材料70から離される。そして、絶縁性材料70の温度が低下するなどして絶縁性材料70が硬化することによって、絶縁性材料70が絶縁層22となる。このように、第1の溝24は、コレクタ配線30が押し込まれることによって形成される。第2の溝25は、エミッタ配線40が押し込まれることによって形成される。
次に、半導体装置60の製造工程について説明する。図7は、コレクタ板63とエミッタ板65とが半導体チップ61に接合され、かつ、接続端子67が半導体チップ61に接合された状態を示している。図7に示すように、まず、コレクタ板63とエミッタ板65と半導体チップ61と接続端子67との一体物を構成する。
次に、図8に示すように、コレクタ板63とエミッタ板65と半導体チップ61と接続端子67との一体物を樹脂封止することによって、この一体物を覆うモールド樹脂68を形成する。このとき、コレクタ板63の全て及びエミッタ板65の全ては、モールド樹脂68内に収容されるように、樹脂封止される。
次に、図9に示すように、半導体装置60の下端部を切削することによって、半導体装置60の下端に設置面69を形成する。この切削によって、コレクタ板63の下端部の一部が切削されて、平面である第1の導電面63bが形成される。同様に、エミッタ板65の下端部の一部が切削されて、平面である第2の導電面65bが形成される。また、第1の導電面63bと第2の導電面65bとが設置面69内に露出する。この切削作業が完了すると、半導体装置60が完成する。
次に、冷却器20とコレクタ配線30とエミッタ配線40との一体物に、半導体装置60を固定する工程を説明する。まず、接合層50を形成する接着剤を、冷却器20上に供給する。図10は、接着剤が供給された冷却器20の主面23の一部を示す平面図である。なお、図10中には、モールド樹脂68の外郭と、コレクタ板63の外郭と、エミッタ板65の外郭とを2点鎖線で示している。
図10に示すように、冷却器20の主面23において、半導体装置60が設置される範囲に、第1の導電性接合部51を形成する導電性接着剤(第1の接合材料)91と、第2の導電性接合部52を形成する導電性接着剤(第2の接合材料)91と、第1の絶縁性接合部53を形成する絶縁性接着剤(第3の接合材料)92と、第2の絶縁性接合部54を形成する絶縁性接着剤92と、第3の絶縁性接合部55を形成する絶縁性接着剤92とを供給する。
具体的には、コレクタ配線30の第1のコレクタ配線用主面31上に、導電性接着剤91を供給する。エミッタ配線40の第1のエミッタ配線用主面41上に、導電性接着剤91を供給する。仕切壁部26上に絶縁性接着剤92を供給する。第1の溝24の縁部の部分24aに絶縁性接着剤92を供給する。第2の溝25の縁部の部分25aに絶縁性接着剤92を供給する。
上記の各種接着剤は、冷却器20の主面23において半導体装置60が設置される範囲ごとに配置されている。図10では、一例として、1つの半導体装置60が設置される範囲に供給される接着剤を示しているが、他の半導体装置60が配置される範囲にも、同様に、接着剤が供給される。
つまり、本実施形態では、導電性接着剤91と絶縁性接着剤92とは、1つの半導体装置60ごとに設けられており、複数の半導体装置60で用いられる導電性接着剤91と絶縁性接着剤92とは、互いに連続していない。言い換えると、互いに隣接して配置される一方の半導体装置60を固定するための導電性接着剤91と、他方の半導体装置60を固定するための導電性接着剤91とは、つながっていない。同様に、一方の半導体装置60を固定するための絶縁性接着剤92と、他方の半導体装置60を固定するための絶縁性接着剤92とは、つながってない。
導電性接着剤91と絶縁性接着剤92とが供給されると、次に、半導体装置60を、冷却器20に押し付ける。図11は、冷却器20に固定される直前の半導体装置60と、冷却器20とを示す断面図である。図11に示すように、半導体装置60は、コレクタ配線30と第1の導電面63bとが互いに対向し、エミッタ配線40と第2の導電面65bとが互いに対向し、設置面69の仕切部分69cが仕切壁部26と対向する姿勢で、冷却器20に押し付けられる。
半導体装置60が押し付けられることによって、コレクタ配線30の第1のコレクタ配線用主面31上に供給された導電性接着剤91が、第1のコレクタ配線用主面31と第1の導電面63bとの間で押しつぶされることによって広がり、第1の導電性接合部51を形成する。第1の導電性接合部51は、第1のコレクタ配線用主面31と第1の導電面63bとに電気的に接続されるとともに固定される。
エミッタ配線40の第1のエミッタ配線用主面41上に供給された導電性接着剤91は、第1のエミッタ配線用主面41と第2の導電面65bとの間で押しつぶされることによって広がり、第2の導電性接合部52を形成する。第2の導電性接合部52は、第1のエミッタ配線用主面41と第2の導電面65bとに電気的に接続されるとともに固定される。
仕切壁部26上に供給された絶縁性接着剤92は、設置面69の仕切部分69cと仕切壁部26との間で押しつぶされることによって広がり、第1の絶縁性接合部53を形成する。第1の絶縁性接合部53は、仕切壁部26と仕切部分69cとに固定される。
第1の溝24の縁部の部分24aに供給された絶縁性接着剤92は、設置面69の第1の開口69aの縁部の部分69dと第1の溝24の縁部の部分24aとの間で押しつぶされて広がり、第2の絶縁性接合部54を形成する。第2の絶縁性接合部54は、部分24a,69dに固定される。
第2の溝25の縁部の部分25aに供給された絶縁性接着剤92は、設置面69の第2の開口69bの縁部の部分69eと第2の溝25の縁部の部分25aとの間で押しつぶされて広がり、第3の絶縁性接合部55を形成する。第3の絶縁性接合部55は、部分25a,69eに固定される。
全ての半導体装置60は、同様に、固定される。
なお、導電性接着剤91の供給量と、絶縁性接着剤92の供給量と、半導体装置60の冷却器20に対する押し付け力とは、例えば、第1のコレクタ配線用主面31上に供給された導電性接着剤91が、押し広げられることによって半導体装置60が固定される範囲において第1の導電面63bの全域を覆うように、かつ、第1のエミッタ配線用主面41上に供給された導電性接着剤91が、押し広げられることによって半導体装置60が固定される範囲において第2の導電面65bの全域を覆うように設定される。
このように構成される半導体モジュール10では、コレクタ配線30のインダクタンス及びエミッタ配線40のインダクタンスを低くすることができる。この点について、具体的に説明する。コレクタ配線30のインダクタンスとエミッタ配線40のインダクタンスとは、コレクタ配線30とエミッタ配線40とを、冷却器20の冷却板21に近づけることによって、低下する。
本実施形態では、半導体装置60は、設置面69に第1の導電面63bと第2の導電面65bとが露出する構造を有し、かつ、冷却器20は、絶縁層22の主面31にコレクタ配線30とエミッタ配線40とが設けられる構造を有する。このため、コレクタ配線30とエミッタ配線40とを、冷却器20の冷却板21に近接して配置することができる。このため、コレクタ配線30のインダクタンスとエミッタ配線40のインダクタンスとを低くすることができる。
また、半導体モジュール10をコンパクトに構成することができる。この点について、具体的に説明する。例えば、半導体装置60が、コレクタ配線30に接続される電極とエミッタ配線40に接続される電極とを、半導体装置60の設置面69以外の周面から外に突出する構造であると、半導体装置60が大型化する。
しかしながら、本実施形態では、半導体装置60は、コレクタ配線30に電気的に接続される第1の導電面63bが設置面69内に露出し、エミッタ配線40に電気的に接続される第2の導電面65bが設置面69内に露出する。このように、コレクタ配線30に接続される電極とエミッタ配線40に接続される電極とが設置面69以外の周面から突出することがないので、半導体装置60をコンパクトにすることができる。半導体装置60をコンパクトに構成することができることによって、半導体モジュール10をコンパクトに構成することができる。
また、半導体装置60の製造工程を、簡単にすることができる。この点について、具体的に説明する。半導体装置60が、コレクタ配線30に接続される電極とエミッタ配線40に接続される電極とを、設置面69とは異なる周面から突出する構造であると、樹脂封止工程と、切削工程とがさらに必要となる。
具体的には、樹脂封止された、コレクタ板63とエミッタ板65と半導体チップ61と接続電極66との一体物を、図9に示すように、コレクタ板63の下面とエミッタ板65の下面とを同一平面内に配置するために切削加工をした後、コレクタ板63の下面とエミッタ板65の下面とを絶縁するために、半導体装置60の下端面を樹脂封止する。この樹脂封止工程は、2回目の樹脂封止工程となる。
さらに、2回目の樹脂封工程の後、冷却器20に設置するための設置面を形成するために、2回の樹脂封止工程によって樹脂モールドされた下端部を、コレクタ板63とエミッタ板65とが露出しないように、再度、切削する。この工程が、2回目の背作工程となる。
このように、本実施形態の半導体装置60の製造工程に加えて、さらに、樹脂封止工程と、切削工程とが必要となる。このため、本実施形態では、半導体装置60の製造工程を簡単にすることができる。
また、接合層50は、第1の導電性接合部51と第2の導電性接合部52との間に、第1の絶縁性接合部53を有しており、第1の導電性接合部51と第2の導電性接合部52とは、第1の絶縁性接合部53によって仕切られる。このため、第1の導電性接合部51と第2の導電性接合部52とが互いに電気的に接続することが防止されるので、コレクタ板63とエミッタ板65とが互いに電気的に接続することを防止できる。
また、接合層50が第2の絶縁性接合部54と第3の絶縁性接合部55とを有することによって、例えば半導体装置60の列を複数有する場合、互いに異なる列に配置される半導体装置60の導電性接合部51,52は、絶縁性接合部54,55によって仕切られる。
このため、半導体装置60の列を複数有する場合では、互いに隣接する列に配置される半導体装置60の導電性接合部51,52が、互いに電気的に接続することを防止できる。
なお、ここで言う列とは、図1に示すように、共通のコレクタ配線30及びエミッタ配線40に接続される複数の半導体装置60が並ぶことによって形成される列である。
また、本実施形態では、仕切壁部26は、絶縁層22の一部によって形成されている。他の例としては、例えば、絶縁層22とは異なる材料によって仕切壁部26を形成してもよい。
次に、第2の実施形態に係る半導体モジュール10Aを、図12〜15を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、仕切壁部26の構造が、第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同じである。上記異なる点について、具体的に説明する。
図12は、本実施形態の半導体モジュール10Aを、図2と同様に切断した状態を示す断面図である。図13は、本実施形態の半導体モジュール10Aの一部を示す平面図である。なお、図13では、半導体装置60は、2点鎖線で示されている。
図12,13に示すように、本実施形態では、仕切壁部26の先端部26aは、半導体装置60が設置される範囲において、接合層50に向かって、コレクタ配線30の第1のコレクタ配線用主面31及びエミッタ配線40の第1のエミッタ配線用主面41よりも、突出している。
先端部26aは、設置面69に突き当てられており、それゆえ、本実施形態では、第1の絶縁性接合部53は、薄く形成される。
次に、本実施形態の、冷却器20とコレクタ配線30とエミッタ配線40との一体物を製造する工程を、図14,15を用いて説明する。
本実施形態では、型80に代えて、型100が用いられる。型100は、平面である押し付け面101と、貫通孔102とを有している。貫通孔102は、型100を貫通しており、直線状に延びている。貫通孔102は、仕切壁部26の形状に対応して形成されている。
図14は、供給された絶縁性材料70上に配置されたコレクタ配線30とエミッタ配線40とが、型100によって押し付けられる直前の状態を示す断面図である。図14に示すように、型100は、貫通孔102が、絶縁性材料70において仕切壁部26を形成すべき位置と重なる姿勢で、コレクタ配線30とエミッタ配線40とに押し付けられる。具体的には、型100は、貫通孔102が、コレクタ配線30とエミッタ配線40との間に対向する姿勢で、コレクタ配線30とエミッタ配線40とに押し付けられる。
図15に示すように、型100が、押し付け面101によって絶縁性材料70の表面が平らに均される位置まで押し付けられると、絶縁性材料70において貫通孔102と対向してない部分は、押し付け面101によって、平面に均される。
型100が押し付けられることによって貫通孔102内に入り込んだ絶縁性材料70は、仕切壁部26を形成する。このことによって、仕切壁部26は、コレクタ配線30の第1のコレクタ配線用主面31及びエミッタ配線40の第1のエミッタ配線用主面41よりも、突出する形状に形成される。
半導体装置60は、仕切壁部26の先端が設置面69に突き当たるように押し付けられる。このため、仕切壁部26と設置面69の仕切部分69cとの間に設けられる第1の絶縁性接合部53は、薄く形成される。
本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、仕切壁部26が第1のコレクタ配線用主面31及び第1のエミッタ配線用主面41よりも接合層50に向かって突出することによって、接合層50の厚さを、仕切壁部26において第1のコレクタ配線用主面31及び第1のエミッタ配線用主面41に対して突出する部分である先端部26aの高さ分、確保することができる。
さらに、第1の導電性接合部51と第2の導電性接合部52との間に位置する仕切壁部26を、第1のコレクタ配線用主面31及び第1のエミッタ配線用主面41よりも高くすることによって、第1の導電性接合部51と第2の導電性接合部52とが互いに接続することを防止することができる。
また、貫通孔102が形成された型100を、コレクタ配線30及びエミッタ配線40に押し付けることによって、簡単に、コレクタ配線30及びエミッタ配線40よりも接合層50側に突出する仕切壁部26を形成することができる。
なお、本実施形態では、先端部26aと第1の絶縁性接合部53とは、絶縁層22に設けられてコレクタ配線30及びエミッタ配線40よりも設置面69側に突出して設置面69に接触するとともにコレクタ配線30及びエミッタ配線40の延設方向に延びる突出壁部の一例を構成している。
次に、第3の実施形態に係る半導体モジュール10Bを、図16〜19を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、第1の溝24の深さと第2の溝25の深さとが、第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同じである。上記異なる点について、具体的に説明する。
図16は、本実施形態の半導体モジュール10Bを、図2と同様に切断した状態を示す断面図である。図16に示すように、本実施形態では、第1の溝24の深さD1は、コレクタ配線30の厚みT1よりも大きい。なお、第1の溝24の深さD1は、一定である。第2の溝25の深さD2は、エミッタ配線40の厚みT2よりも大きい。なお、第2の溝25の深さD2は、一定である。
絶縁層22の主面23は、設置面69に突き当てられている。このため、接合部51,52,53,54,55は、薄く形成されている。
次に、本実施形態の、冷却器20とコレクタ配線30とエミッタ配線40との一体物の製造工程を、図17,18を用いて説明する。図17は、絶縁性材料70上に配置されたコレクタ配線30とエミッタ配線40とに型110を押し付ける直前の状態を示す断面図である。図17に示すように、本実施形態では、型80に代えて、型110が用いられる。型110は、平面である押し付け面111と、第1の凸部112と、第2の凸部113とを有している。
第1の凸部112及び第2の凸部113は、押し付け面111に対して突出している。第1の凸部112と第2の凸部113との位置関係は、第1の凸部112をコレクタ配線30の第1のコレクタ配線用主面31に接触させると、第2の凸部113がエミッタ配線40の第1のエミッタ配線用主面41に接触するようになる位置関係である。
型110を、第1の凸部112を第1のコレクタ配線用主面31に接触させ、かつ、第2の凸部113を第1のエミッタ配線用主面41に接触させた状態で、押し付け面111によって絶縁性材料70の表面が平に均される位置まで、絶縁性材料70に押し付ける。図18に示すように、押し付け面111が絶縁性材料70に押し付けられることによって、絶縁性材料70の表面71が平面に均される。
さらに、第1の溝24は、押し付け面111に対する第1の凸部112の高さ分、深くなる。言い換えると、コレクタ配線30の第1のコレクタ配線用主面31は、絶縁層22の主面23に対して、第1の凸部112の高さ分、低くなる。
第2の溝25は、押し付け面111に対する第2の凸部113の高さ分、深くなる。言い換えると、エミッタ配線40の第1のエミッタ配線用主面41は、絶縁層22の主面23に対して、第2の凸部113の高さ分、低くなる。
図19は、冷却器20とコレクタ配線30とエミッタ配線40との一体物を示す斜視図である。図19に示すように、コレクタ配線30とエミッタ配線40とを押し付けることによって溝24,25を形成するため、第1の溝24は、同列に配置される半導体装置60、言い換えると、1つのコレクタ配線30と1つのエミッタ配線40とを共通して用いる複数の半導体装置60が配置される範囲にわたって、コレクタ配線30の厚みよりも深く形成される。同様に、第2の溝25は、1つのコレクタ配線30と1つのエミッタ配線40とを共通して用いる複数の半導体装置60が配置される範囲にわたって、エミッタ配線40の厚みよりも深く形成される。
また、第1の溝24は、その延びる方向の両端が開口している。同様に、第2の溝25は、その延びる方向の両端が開口している。
本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、第1の溝24がコレクタ配線30の厚みよりも深く、第2の溝25がエミッタ配線40の厚みよりも深く形成されることによって、コレクタ配線30の第1のコレクタ配線用主面31上に供給された導電性接着剤91と、エミッタ配線40の第1のエミッタ配線用主面41上に供給された導電性接着剤91とは、半導体装置60が押し付けられた際に、溝24,25に沿って広がるようになる。溝24,25に沿って広がった導電性接着剤91は、溝24,25において、隣接する半導体装置60間の部分にたまる。
このため、第1の溝24内に供給された導電性接着剤91と第2の溝25内に供給された導電性接着剤91とが互いに接触することが防止される。
また、型110を用いることによって、簡単に、第1の溝24の深さを、コレクタ配線30の厚みよりも深くし、第2の溝25の深さを、エミッタ配線40の厚みよりも深くすることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求範囲に記載された発明を付記する。
[1]
冷却板と、前記冷却板上に設けられた絶縁層とを具備する冷却器と、
前記絶縁層上に設けられたコレクタ配線と、
前記絶縁層上に設けられたエミッタ配線と、
前記コレクタ配線上に設けられて導電性を有する第1の導電性接合部と、
前記エミッタ配線上に設けられて導電性を有する第2の導電性接合部と、
半導体チップと、前記半導体チップに電気的に接続されたコレクタ板と、前記半導体チップに電気的に接続されたエミッタ板と、設置面を有し、前記半導体チップを内部に収容するとともに前記コレクタ板及び前記エミッタ板を前記設置面内に露出した状態で収容する絶縁性の周壁部と、前記周壁部の前記設置面に対して反対側から突出する接続端子とを具備し、前記コレクタ板が前記第1の導電性接合部に接合され、かつ、前記エミッタ板が前記第2の導電性接合部に接合される半導体装置と、
前記第1の導電性接合部と前記第2の導電性接合部との間に設けられて前記第1の導電性接合部と前記第2の導電性接合部とを絶縁する絶縁性を有する絶縁部と
を具備することを特徴とする半導体モジュール。
[2]
前記絶縁部は、前記絶縁層に設けられて前記コレクタ配線及び前記エミッタ配線よりも前記設置面側に突出して前記設置面に接触するとともに前記コレクタ配線及び前記エミッタ配線の延設方向に延びる突出壁部である
ことを特徴とする[1]に記載の半導体モジュール。
[3]
前記突出壁部の前記設置面側の先端部は、前記設置面に接合される絶縁性接合部である
ことを特徴とする[2]に記載の半導体モジュール。
[4]
前記絶縁層に、前記コレクタ配線及び前記第1の導電性接合部を収容し、前記コレクタ配線の延びる方向に開口する第1の溝部と、前記エミッタ配線及び前記第2の導電性接合部を収容し、前記エミッタ配線の延びる方向に開口する第2の溝部とが設けられる
ことを特徴とする[1]に記載の半導体モジュール。
[5]
絶縁性材料上に設けられるコレクタ配線上に導電性の第1の接合材料を供給し、
前記絶縁性材料上に設けられるエミッタ配線上に導電性の第2の接合材料を供給し、
前記絶縁材料の前記コレクタ配線と前記エミッタ配線との間に絶縁性の第3の接合材料を供給し、
半導体チップと、前記半導体チップに電気的に接続されたコレクタ板と、前記半導体チップに電気的に接続されたエミッタ板と、設置面を有し、前記半導体チップを内部に収容するとともに前記コレクタ板及び前記エミッタ板を前記設置面内に露出した状態で収容する絶縁性の周壁部と、前記周壁部の前記設置面に対して反対側から突出する接続端子とを具備する半導体装置を、前記コレクタ板の前記設置面から露出する部分が前記第1の接合材料に対向し、かつ、前記エミッタ板の前記設置面から露出する部分が前記第2の接合材料に対向する姿勢で、前記第1の接合材料と前記第2の接合材料と前記第3の接合材料とに押し付けることによって、前記コレクタ配線と前記第1の接合材料とを電気的に接合し、前記エミッタ配線と前記第2の接合材料とを電気的に接合し、前記設置面の前記コレクタ配線と前記エミッタ配線との間の部分と前記第3の接合材料とを接合する
ことを特徴とする半導体モジュールの製造方法。