以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1に示す第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1を例に採り、説明をする。助手席用エアバッグ装置M1は、図1に示すように、車両における助手席の前方において、インストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)1の後上端1a側の内部に配置されるミッドマウントタイプとされている。なお、実施形態において、前後・上下の方向は、折り畳まれたエアバッグ15を収納させる収納部位としてのケース12の軸方向に沿った方向を上下方向とし、ケース12の後述する底壁部12aに沿って前後方向に沿った方向を前後方向としている。左右方向は、車両の左右方向と一致している。
第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1は、図1,2に示すように、折り畳まれた助手席用エアバッグ(以下、単に「エアバッグ」と省略する)15と、エアバッグ15に膨張用ガスを供給するインフレーター7と、エアバッグ15及びインフレーター7を収納保持する収納部位としてのケース12と、エアバッグ15及びインフレーター7をケース12に取り付けるためのリテーナ9と、折り畳まれたエアバッグ15の上方(図1における後上方)を覆うエアバッグカバー5と、を備えて構成されている。
エアバッグカバー5は、実施形態の場合、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されるとともに、エアバッグ15の展開膨張時に押し開かれる2枚の扉部5a,5bを、配設させて構成されている。扉部5a,5bは、前後方向側で並設されている。扉部5a,5bは、実施形態の場合、周囲に、上方から見て略H字形状の破断予定部5cを配置させて、エアバッグ15の展開膨張時に、膨張するエアバッグ15に押されて、破断予定部5cを破断させつつ、前後に開く構成とされている。また、エアバッグカバー5における扉部5a,5bの周囲には、ケース12に連結される連結壁部5dが、形成されている。
インフレーター7は、図1,2に示すように、複数のガス吐出口7bを有した略円柱状の本体部7aと、インフレーター7をケース12に取り付けるためのフランジ部7cと、を備えて構成されている。
収納部位としてのケース12は、上端側に長方形状の開口を有した板金製の略直方体形状に形成され、インフレーター7を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部12aと、底壁部12aの外周縁から上方に延びてエアバッグカバー5の連結壁部5dを係止する周壁部12bと、を備えて構成されている。実施形態の場合、エアバッグ15とインフレーター7とは、エアバッグ15内に配置させたリテーナ9の各ボルト9aを取付手段として、エアバッグ15におけるガス流入口18の周縁部位19からなる取付部位、ケース12の底壁部12a、及び、インフレーター7のフランジ部7cを、貫通させて、ナット10止めすることにより、ケース12の底壁部12aに取り付けられている。実施形態の場合、ケース12は、底壁部12aを、前端側を僅かに車両前方側に向けるように、鉛直方向に対して僅かに傾斜させるようにして、配置されている。また、ケース12の底壁部12aには、車両のボディ側に連結される図示しないブラケットが、配設されている。
エアバッグ15は、先端15b側(膨張完了時の下端側)にガス流入口18を配置させて、膨張完了時に、ガス流入口18から後方に離隔して配置される領域を、乗員拘束面15aとして構成されるもので、実施形態の場合、単体で膨張させた状態での膨張完了形状を、図3,4に示すように、略円錐形状とされて、先端15b側に、ガス流入口18を配置させている。エアバッグ15は、図3,4に示すように、ガス流入口18から離隔して配置される離隔側壁部16と、離隔側壁部16から収束するように延びて略円錐形状とされる周壁部17と、を備えており、実施形態の場合、単体で膨張させた状態において、上端側に離隔側壁部16を配置させ、周壁部17における下端側前面側に、ガス流入口18を配置させている。ガス流入口18の周縁部位19には、リテーナ9のボルト9aを挿通させるための4つの取付孔20が、形成されており、実施形態のエアバッグ15は、このガス流入口18の周縁部位19を取付部位として、収納部位としてのケース12の底壁部12aに取り付けられる構成である。また、周壁部17における左右の側面側の部位には、それぞれ、余剰の膨張用ガスを排気するベントホール21,21が、形成されている。
実施形態の場合、エアバッグ15は、単体で膨張させた状態では、図3,4に示すように、上端側に離隔側壁部16を配置させ、ガス流入口18を、下端側前面側に配置させる構成であるが、車両搭載状態においては、図13に示すように、膨張完了時の上端側をウィンドシールド3によって押えられつつ、ウィンドシールド3とインパネ1との間の隙間を埋めるように、上方に向かって大きく突出するように膨張することとなる。そして、この実施形態では、エアバッグ15は、膨張完了時の後面側となる周壁部17の一部から離隔側壁部16の一部にかけての領域を、乗員拘束面15aとされることとなる(図3,4,13参照)。
エアバッグ15は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて袋状に構成されるもので、実施形態の場合、図5に示すように、周壁部17の部位を構成する周壁パネル23と、離隔側壁部16の部位を構成する離隔側パネル24と、ガス流入口18の周縁を補強する補強布25と、から構成されている。周壁パネル23,離隔側パネル24,補強布25は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。そして、実施形態のエアバッグ15は、補強布25を結合させた状態の周壁パネル23の外周縁と、離隔側パネル24の外周縁と、を、結合(縫着)させることにより、袋状とされている。
次に、この実施形態のエアバッグ15の折り畳みについて、説明をする。エアバッグ15は、実施形態の場合、予備折りエアバッグ28を形成する予備折り工程と、予備折りエアバッグ28を折って左右縮小折りエアバッグ32を形成する左右縮小折り工程と、左右縮小折りエアバッグ32を折って折り完了体39を形成する前後縮小折り工程と、を経て、折り畳まれる。
まず、取付孔20からボルト9aを突出させるようにして、内部にリテーナ9を収納させた状態のエアバッグ15を、予備折りする。具体的には、予備折り工程においては、周壁部17の部位に折目をつけるようにして、離隔側壁部16をガス流入口18に接近させるように、エアバッグ15を平らに展開させつつ、ガス流入口18を中心とした略左右対称形に折り畳んで、予備折りエアバッグ28を形成している。実施形態の場合、予備折りエアバッグ28は、図6,7に示すように、離隔側壁部16の後端付近をガス流入口18の上方側に重ねるようにして、離隔側壁部16を略平らに展開した状態で、折り畳まれるもので、ガス流入口18の前方側及び後方側にそれぞれ延びる前側部位29と後側部位30と、を、長さ寸法を異ならせるように、構成されている。詳細には、実施形態の場合、前側部位29が、長尺状部位として、短尺状部位である後側部位30よりも長さ寸法を大きくするように、構成されている。さらに詳細には、実施形態の場合、前側部位29と後側部位30との長さ寸法は、前後縮小折り工程において、左右縮小折りエアバッグ32の前側部位33の先端33a側を折り畳んで形成される折塊部35の形成後に、折塊部35とガス流入口18側の部位(詳しくは、取付部位(周縁部位)19における折塊部35側の部位)との間の領域である連通部36の平らに展開した状態の長さ寸法L1を、平らに展開した状態の左右縮小折りエアバッグ32の後側部位34(短尺状部位)の長さ寸法L2(詳しくは、後側部位34の先端34aと、取付部位(周縁部位)19における後側部位34側の部位と、の間の寸法)と略同一とするように、設定されている(図9のA参照)。具体的には、予備折りエアバッグ28は、周壁部17に、前後方向あるいは左右方向に沿う谷折りの折目を付けて折り畳むことにより、形成されている。
次に、予備折りエアバッグ28を、左右縮小折りする。左右縮小折り工程においては、予備折りエアバッグ28を、左縁28a側と右縁28b側との部位を、それぞれ、ガス流入口18側に接近させるように折って、左右方向の幅寸法をケース12内に収納可能に縮められた左右縮小折りエアバッグ32を、形成する(図8のA,B参照)。実施形態の場合、左右縮小折り工程では、予備折りエアバッグ28は、左縁28a側と右縁28b側との部位に、それぞれ、前後方向に沿った折目を付けて、ガス流入口18から離れた壁部側で蛇腹折りされる折畳部位32a,32bを形成するように、折り畳まれることとなる。左右縮小折りエアバッグ32は、左右対称形とされている。この左右縮小折り工程では、予備折りエアバッグ28は、左右方向の幅寸法を縮められるのみであり、左右縮小折りエアバッグ32において、ガス流入口18から前方側と後方側とに延びる前側部位33,後側部位34は、それぞれ、長さ寸法を、予備折りエアバッグ28における前側部位29,後側部位30と同一とされ、前側部位33は、長尺状部位として、短尺状部位である後側部位34よりも長さ寸法を大きくして、構成されている。
次いで、左右縮小折りエアバッグ32を、前後縮小折りする。前後縮小折り工程においては、まず、図8のB及び図9のAに示すように、左右縮小折りエアバッグ32において、ガス流入口18から前方に延びる前側部位33(長尺状部位)の先端33a(前端)側の部位を、先端33a側をガス流入口18側の壁部側に向かってロール折りするように折り畳み、折塊部35を形成する。この折塊部35形成後において、前側部位33(長尺状部位)におけるガス流入口18から折塊部35に連なる連通部36(ガス流入口18と折塊部35との間の部位)は、長さ寸法L1を、ガス流入口18から後方に延びる後側部位34(短尺状部位)の長さ寸法L2と略同一とされることとなる。次いで、この前側部位33(長尺状部位)を、連通部36の部位で折り返すようにして、折塊部35を、乗員拘束面15aを介在させた状態で、ガス流入口18上に重ねて配置させる(図9のB参照)。その後、図10のAに示すように、二つ折りするようにして配置される前側部位33(長尺状部位)の連通部36を、下側折り重ね部37を形成するように、折塊部35上に折り重ね、次いで、後側部位34(短尺状部位)を、先端34a(後端)側を連通部36側に向けるように二つ折りしつつ、連通部36上に折り重ねて、上側折り重ね部38を形成しつつ、前後方向の幅寸法をケース12内に収納可能に縮めれば、図10のB,Cに示すように、折り完了体39を形成することができる。
その後、折り完了体39の周囲を、折り崩れしないように、破断可能な図示しないラッピングシートによりくるむ。次いで、折り完了体39をケース12の底壁部12aに載置させる。インフレーター7の本体部7aを、底壁部12aの下方からケース12内に挿入させるとともに、底壁部12aから下方に突出している各ボルト9aを、インフレーター7のフランジ部7cに挿通させる。その後、インフレーター7のフランジ部7cから突出した各ボルト9aにナット10を締結させれば、ケース12に、折り畳んだエアバッグ15(折り完了体39)とインフレーター7とを取り付けることができる。
そして、車両に搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー5の連結壁部5dに、ケース12の周壁部12bを係止させ、ケース12の図示しないブラケットを、車両のボディ側に固定させれば、助手席用エアバッグ装置M1を車両に搭載することができる。
助手席用エアバッグ装置M1の車両への搭載後、車両の前面衝突時、インフレーター7のガス吐出口7bから膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ15が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、エアバッグカバー5の扉部5a,5bを押し開かせることとなる。そして、エアバッグ15は、エアバッグカバー5の扉部5a,5bを押し開いて形成される開口を経て、ケース12から上方に突出するとともに、車両後方側に向かって突出しつつ展開膨張して、図1の二点鎖線及び図13に示すように、膨張を完了させることとなる。
そして、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、エアバッグ15を予備折りして形成される予備折りエアバッグ28が、ガス流入口18の前方側及び後方側にそれぞれ延びて、長さ寸法を異ならせて構成される長尺状部位としての前側部位29と短尺状部位としての後側部位30とを有し、予備折りエアバッグ28を収納部位としてのケース12に収納可能に折り畳んで形成される折り完了体39では、前側部位33(29)は、先端33a側を折り畳んで形成される折塊部35を、乗員拘束面15aを介在させてガス流入口18上に重ね、ガス流入口18から折塊部35に連なる連通部36を、折塊部35上に折り重ねて、配置させるように、折り畳まれている。すなわち、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、エアバッグ15を折り畳んで形成される折り完了体39において、折塊部35よりもガス流入口18側、換言すれば、膨張用ガスの流れの上流側に位置する連通部36が、折塊部35に折り重ねられるようにして、配置されることとなる。このように折り畳んだエアバッグ15では、膨張初期において、ガス流入口18から内部に流入する膨張用ガスは、乗員拘束面15aを介してガス流入口18上に重ねられる折塊部35をケース12外に突出させるとともに(図11のA参照)、まず、折塊部35に折り重ねられている連通部36を、折りを解消するように展開させつつ、膨張させることとなり、その後、膨張する連通部36によって、折塊部35が、後方に向かって押し出されつつ、折りを解くように展開することとなる。
また、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、予備折りエアバッグ28における短尺状部位としての後側部位34(30)も、折塊部35に折り重ねられるようにして、配置されることから、この後側部位34(30)も、エアバッグ15の膨張初期に膨張して、折塊部35を押し出すこととなる。すなわち、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、エアバッグ15の膨張初期に、まず、折塊部35に折り重ねられている連通部36と後側部位34(上側折り重ね部38,下側折り重ね部37)とが、内部に膨張用ガスを流入させて折りを解くように展開しつつ膨張し、その後、相互に反力板のような作用を奏することとなって、協働して、折塊部35の前後(上下)の両縁側を後方側へ押圧しつつ、折塊部35を押し出すことから、折塊部35を、前後上下でバランスよく、後方に押し出すことができる。そのため、折塊部35の突出方向を安定させることができ、エアバッグ15の膨張挙動を安定させて、円滑に乗員を保護することができる。
したがって、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、エアバッグ15の膨張初期段階において、エアバッグ15の大部分の領域を折り畳んでいる折塊部35の突出方向を容易に調整することができる。なお、連通部がなければ、折塊部は、上向きに向かって突出することとなる。
具体的には、第1実施形態では、ミッドマウントタイプの助手席用エアバッグ装置M1を例に採り説明しており、この第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、エアバッグ15におけるガス流入口18の周縁部位19を取り付けるケース12の底壁部12aは、鉛直方向に対して僅かに傾斜させ、換言すれば、鉛直方向に略沿わせて配置されている。そして、第1実施形態では、折塊部35に折り重ねられている連通部36と後側部位34(上側折り重ね部38,下側折り重ね部37)とが、平らに展開した状態においての長さ寸法を略同一に設定されていることから、内部に膨張用ガスを流入させつつ膨張する連通部36と後側部位34とが、図11のBに示すように、略同等の力で、折塊部35を押圧するような態様となり、折塊部35は、前後両側から略同等の力で後方に向かって押し出されることとなる。そして、折塊部35は、後方に向かって押し出された後は、ロール折りの折りを解くように上方に向かって展開することから、図11のB及び図12に示すように、ケース12から、ケース12の軸方向から後上方に向かって突出するように、展開膨張することとなる。すなわち、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、エアバッグ15の膨張初期に、折塊部35を、前後のどちらか一方に向かうような偏向を抑制して、ケース12の開口から後方に突出させることができ、折塊部35を、迅速にロール折りを解くように展開させることができる。そのため、折塊部35を上下にぶれることを抑制して後方に突出させつつ、上下にバランスよく膨張させることができる。
また、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、折塊部35を、ロール折りにより形成していることから、折塊部35は、エアバッグ15の膨張初期には、蛇腹折り等の折り畳みと比較して、ロール折りの解消を抑制されることとなる。そのため、折塊部35は、折りの解消を抑制された状態で、突出方向をばらつかせず、反力板として作用する連通部36及び短尺状部位としての後側部位30により、安定して所定の方向に突出することが可能となる。特に、実施形態のエアバッグ15では、折塊部35を、前側部位33の先端33a側をガス流入口18側の壁部側に向かって巻くようなロール折りによって折り畳んでいることから、ロールを解くように展開する際に、垂れ下るように展開することを防止でき、また、乗員側となる後方に大きく突出することを抑制できる。なお、折塊部の折畳形状は実施形態に限られるものではなく、折塊部は、左右方向に沿った複数の折目を付けて折り畳む蛇腹折りにより折り畳んでもよく、また、前側部位の先端側をガス流入口から離れた側の壁部側に向かって巻くようなロール折りによって折り畳んでもよい。
さらに、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、連通部36を、折塊部35上に折り重ね、後側部位34(30)を、連通部36上に折り重ねる構成としていることから、折塊部35の上面側を連通部36によって押えることができて、エアバッグ15の折り畳み作業時に、折塊部35の折り崩れを抑制できる。なお、このような点を考慮しなければ、後側部位を折塊部上に折り重ね、連通部を後側部位上に折り重ねる構成としてもよい。
さらにまた、第1実施形態の助手席用エアバッグ装置M1では、エアバッグ15は、前後縮小折りを、左右縮小折り後に、行なうようにして、折り畳まれていることから、エアバッグ15は、膨張初期に、まず、前後縮小折りによる折りを解消するように展開しつつ、その後、左右縮小折りによる折りを解消するように展開しつつ膨張することから、エアバッグを、膨張初期に、前後方向に広く迅速に展開させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、エアバッグを、前後縮小折り後に、左右縮小折りするようにして、折り畳む構成としてもよい。
次に、本発明の第2実施形態の助手席用エアバッグ装置M2について、説明をする。第2実施形態の助手席用エアバッグ装置M2は、図14に示すように、トップマウントタイプとされている。
助手席用エアバッグ装置M2は、図14に示すように、インパネ1Aの上面の内部に配置されている。この助手席用エアバッグ装置M2は、図14,15に示すように、上述の助手席用エアバッグ装置M1と同様に、エアバッグ15A、インフレーター7A、ケース12A、リテーナ9A、及び、エアバッグカバー5A、を備えて構成されるもので、搭載位置以外は、前述の助手席用エアバッグ装置M1と同様の構成であることから、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「A」を付して、詳細な説明を省略する。
エアバッグ15Aは、図16,17に示すように、前述の助手席用エアバッグ装置M1に使用されるエアバッグ15と同一形状のものを、ケース12Aの底壁部12aに取り付ける向きを変えて、使用している。この助手席用エアバッグ装置M2では、エアバッグ15Aは、前述の助手席用エアバッグ装置M1におけるエアバッグ15を、上下で反転させるようにした状態で、ケース12Aに取り付けられる構成である。なお、この助手席用エアバッグ装置M2では、エアバッグ15のガス流入口18Aの周縁部位19A(取付部位)を取り付けるケース12Aの底壁部12aは、図14,15に示すように、前端側を僅かに車両上方側に向けるように、水平方向に対して僅かに傾斜させるようにして、配置されている。そして、このエアバッグ15Aは、車両搭載状態における膨張完了時には、ケース12Aから後方に大きく突出して配置されることとなり、膨張完了時の前端側下面側をケース12の底壁部12aに取り付けられて、乗員拘束面15aを構成する離隔側壁部16Aを、後端側において、上下方向に略沿わせるように配置させることとなる(図25参照)。
次に、この助手席用エアバッグ装置M2のエアバッグ15Aの折り畳みについて説明をする。エアバッグ15Aも、前述のエアバッグ15と同様に、予備折りエアバッグ42を形成する予備折り工程と、予備折りエアバッグ42を折って左右縮小折りエアバッグ46を形成する左右縮小折り工程と、左右縮小折りエアバッグ46を折って折り完了体55を形成する前後縮小折り工程と、を経て、折り畳まれる。
予備折りエアバッグ42は、前述の予備折りエアバッグ28と同様に、まず、取付孔20からボルト9aを突出させるようにして内部にリテーナ9Aを収納させた状態から、周壁部17Aの部位に折目をつけるようにして、離隔側壁部16Aをガス流入口18Aに接近させるように、エアバッグ15Aを平らに展開させつつ、ガス流入口18Aを中心とした略左右対称形に折り畳んで、形成される。実施形態の場合、予備折りエアバッグ42は、図18,19に示すように、離隔側壁部16Aをガス流入口18Aの後方側に位置させるように上方側から重ねて、離隔側壁部16の後端付近をガス流入口18の上方側に重ねるようにして、ガス流入口18Aの前方側に延びる前側部位43(短尺状部位)を、前述の予備折りエアバッグ28における後側部位34(長尺状部位)より短くするように、構成されている。すなわち、この予備折りエアバッグ42では、ガス流入口18Aの前方側に延びる前側部位43が、短尺状部位として、ガス流入口18Aの後方側に延びる長尺状部位としての後側部位44よりも長さ寸法を小さくするように、構成されて、前側部位43と後側部位44とが、長さ寸法を異ならせるように、構成されている。さらに詳細には、実施形態の場合、この予備折りエアバッグ42では、前側部位43の長さ寸法を、大きくするように折り畳まれており、前側部位43と後側部位44との長さ寸法は、前後縮小折り工程において、左右縮小折りエアバッグ46の後側部位48の先端48a側を折り畳んで形成される折塊部50の形成後に、折塊部50とガス流入口18A側の部位との間の領域である連通部51の平らに展開した状態の長さ寸法L3を、平らに展開した状態の左右縮小折りエアバッグ46の前側部位47(短尺状部位)の長さ寸法L4より小さくするように、設定されている(図21のA参照)。具体的には、予備折りエアバッグ42は、周壁部17Aに、前後方向あるいは左右方向に沿う谷折りの折目を付けて折り畳むことにより、形成されている。
次に、予備折りエアバッグ42を、左右縮小折りする。左右縮小折り工程においては、前述のエアバッグ15における左右縮小折り工程と同様に、予備折りエアバッグ42を、左縁42a側と右縁42b側との部位を、それぞれ、ガス流入口18A側に接近させるように折って、左右方向の幅寸法をケース12A内に収納可能に縮められた左右縮小折りエアバッグ46を、形成する(図20のA,B参照)。この左右縮小折り工程においても、予備折りエアバッグ42は、左右方向の幅寸法を縮められるのみであり、左右縮小折りエアバッグ46において、ガス流入口18Aから前方側と後方側とに延びる前側部位47,後側部位48は、それぞれ、長さ寸法を、予備折りエアバッグ42における前側部位43,後側部位44と同一とされ、前側部位47は、短尺状部位として、長尺状部位である後側部位48よりも長さ寸法を小さくして、構成されている。左右縮小折りエアバッグ46は、左右対称形とされている。
次いで、左右縮小折りエアバッグ46を、前後縮小折りする。前後縮小折り工程においては、まず、図20のB及び図21のAに示すように、左右縮小折りエアバッグ46において、ガス流入口18Aから後方に延びる後側部位48(長尺状部位)の先端48a(前端)側の部位を、先端48a側をガス流入口18A側の壁部側に向かってロール折りするように折り畳み、折塊部50を形成する。この折塊部50形成後において、後側部位48(長尺状部位)におけるガス流入口18Aから折塊部50に連なる連通部51(ガス流入口18A(詳しくは、取付部位(周縁部位)19Aにおける折塊部50側の部位)と折塊部50との間の部位)は、長さ寸法L3を、ガス流入口18Aから前方に延びる前側部位47(短尺状部位)の長さ寸法L4(詳しくは、前側部位47の先端47aと、取付部位(周縁部位)19Aにおける前側部位47側の部位と、の間の寸法)より小さく設定されることとなる。次いで、この後側部位48(長尺状部位)を、連通部51の部位で折り返すようにして、折塊部50を、乗員拘束面15a(離隔側壁部16A)を介在させた状態で、ガス流入口18A上に重ねて配置させる(図21のB参照)。その後、図22のAに示すように、二つ折りするようにして配置される後側部位48(長尺状部位)の連通部51を、下側折り重ね部52を形成するように、折塊部50上に折り重ね、次いで、前側部位47(短尺状部位)を、先端47a(後端)側を連通部51側に向けるように二つ折りしつつ、連通部51上に折り重ねて、上側折り重ね部53を形成しつつ、前後方向の幅寸法をケース12A内に収納可能に縮めれば、図22のB,Cに示すように、折り完了体55を形成することができる。
この第2実施形態の助手席用エアバッグ装置M2においても、エアバッグ15Aを予備折りして形成される予備折りエアバッグ42が、ガス流入口18Aの前方側及び後方側にそれぞれ延びて、長さ寸法を異ならせて構成される長尺状部位としての後側部位44と短尺状部位としての前側部位43とを有し、予備折りエアバッグ42を収納部位としてのケース12Aに収納可能に折り畳んで形成される折り完了体55では、後側部位48(44)は、先端48a側を折り畳んで形成される折塊部50を、乗員拘束面15a(離隔側壁部16A)を介在させてガス流入口18A上に重ね、ガス流入口18Aから折塊部50に連なる連通部51を、折塊部50上に折り重ねて、配置させるように、折り畳まれている。すなわち、第2実施形態の助手席用エアバッグ装置M2においても、エアバッグ15Aを折り畳んで形成される折り完了体55において、折塊部50よりもガス流入口18A側、換言すれば、膨張用ガスの流れの上流側に位置する連通部51が、折塊部50に折り重ねられるようにして、配置されることとなる。このように折り畳んだエアバッグ15Aでは、膨張初期において、ガス流入口18Aから内部に流入する膨張用ガスは、図23のAに示すように、乗員拘束面15a(離隔側壁部16A)を介してガス流入口18A上に重ねられる折塊部50をケース12A外に突出させるとともに、まず、折塊部50に折り重ねられている連通部51を、折りを解消するように展開させつつ、膨張させることとなり、その後、膨張する連通部51によって、折塊部50が、ケース12Aから後方に向かって押し出されつつ、折りを解くように展開することとなる。
また、第2実施形態の助手席用エアバッグ装置M2においても、予備折りエアバッグ42における短尺状部位としての前側部位47(43)も、折塊部50に折り重ねられるようにして、配置されることから、この前側部位47(43)も、エアバッグ15Aの膨張初期に膨張して、折塊部50を押し出すこととなる。すなわち、第2実施形態の助手席用エアバッグ装置M2においても、エアバッグ15Aの膨張初期に、まず、折塊部50に折り重ねられている連通部51と前側部位47(上側折り重ね部53,下側折り重ね部52)とが、内部に膨張用ガスを流入させて折りを解くように展開しつつ膨張し、その後、相互に反力板のような作用を奏することとなって、協働して、折塊部50の前後(上下)の両縁側を後方側へ押圧しつつ、折塊部50を押し出すことから、折塊部50を、前後上下でバランスよく、後方に押し出すことができる。そのため、折塊部50の突出方向を安定させることができ、エアバッグ15Aの膨張挙動を安定させて、円滑に乗員を保護することができる。
したがって、第2実施形態の助手席用エアバッグ装置M2においても、エアバッグ15Aの膨張初期段階において、エアバッグ15Aの大部分の領域を折り畳んでいる折塊部50の突出方向を容易に調整することができる。なお、連通部がなければ、折塊部は、より下方に向かって突出するように展開することとなる。
さらにまた、第2実施形態の助手席用エアバッグ装置M2では、折塊部50形成後の左右縮小折りエアバッグ46において、連通部51と、短尺状部位としての前側部位47と、が、長さ寸法を異ならせるように構成されている。具体的には、エアバッグ15Aでは、前側部位47の長さ寸法L4は、連通部51の長さ寸法L3よりも大きく設定されている。そのため、反力板の大きさを調整できるような態様となって、エアバッグ15Aの膨張初期において、膨張する前側部位47による折塊部50の押出量を、膨張する連通部51による折塊部50の押出量よりも大きくすることができ、長さ寸法を大きく設定される前側部位47が、折塊部50をより強い力で押し出すこととなる(図23のB参照)。そのため、ケース12Aから突出する折塊部50は、膨張する前側部位47によって押されて、後下方に向かって突出するような態様となり、折塊部50は、上方への突出を抑制された状態で、後下方に向かって突出しつつ、ロール折りの折りを解くように、展開しつつ膨張することとなる(図24参照)。そのため、展開するエアバッグ15Aを、インパネ1と乗員との間に迅速に進入させることができ、エアバッグ15Aを迅速に膨張させることができる。
このように、連通部と、短尺状部位と、を、平らに展開した状態においての長さ寸法を異ならせるように、構成して、膨張するこれらの部位による折塊部の押出量を調節することにより、折塊部の突出方向を容易にコントロールすることができる。そのため、膨張完了形状を設計変更しなくとも、連通部と短尺状部位との長さ寸法を調整することにより、搭載する車両の内装の形状や、搭載位置に応じて、エアバッグの展開膨張時の突出態様を適宜変更することができる。また、実施形態では、ミッドマウントタイプの助手席用エアバッグ装置M1と、トップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置M2と、に、取り付ける向きを変えることにより、同一のエアバッグ15,15Aを使用しており、インパネやウィンドシールドの外形形状の異なる車両に搭載する場合や、ミッドマウントタイプやトップマウントタイプ等、搭載位置の異なる助手席用エアバッグ装置に、同一のエアバッグを使用しても、取り付ける向きや折畳形状を変更することにより、充分な乗員保護性能を得ることができる。そのため、異なる車両や、異なる搭載位置に使用する場合でも、エアバッグを共用化することができて、製造コストの増大を抑制できる。