JP6334756B1 - シールチェーン - Google Patents

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Abstract

【課題】ブシュとローラとの間に配置された潤滑剤を長期に亘って効果的にシールすることができるシールチェーンを提供する。【解決手段】シールチェーン11は、一対の内リンクプレート12と、一対の内リンクプレート12に両端部がそれぞれ接合されるブシュ17と、ブシュ17に挿入されるピン20と、ブシュ17が挿入されてブシュ17によって支持されるローラ18と、一対の内リンクプレート12を外側から挟むように配置されてピン20の両端部がそれぞれ接合される一対の外リンクプレートと、内リンクプレート12の内周面12aにブシュ17を囲むように形成された凹部50と、凹部50内に収まるように凹部50の底面50aとローラ18の端面18aとの間に配置されてブシュ17とローラ18との間に配置された潤滑剤G1をシールするシール部19とを備える。【選択図】図2

Description

本発明は、ブシュとローラとの間に配置される潤滑剤が外部へ漏れ出すことを抑制するシール構造を備えたシールチェーンに関する。
従来、この種のシールチェーンとしては、例えば特許文献1に示すものが知られている。このようなシールチェーンでは、内リンクプレートの内側面にブシュを中心とした円形の凹部が形成され、この凹部の底面にブシュを中心とした円環状の凹溝が形成されている。この凹溝にはゴムなどの弾性体からなるOリングが嵌め込まれ、Oリングは自然長状態で凹溝から所定量だけ突出している。
ローラの両端面にはその外周側が削られることで円環状のボス部が形成され、このボス部にリング(ワッシャ)状のシールプレートが内リンクプレートの内側面の凹部内に収まるように回転自在に遊嵌されている。そして、Oリングがシールプレートに圧接することで、ブシュとローラとの間に配置した潤滑剤をシールしている。そして、上述のようなシールチェーンでは、ブシュとローラとの間に配置した潤滑剤が、通常、ローラのボス部の先端面側から漏れ出す。
特開2005−282813号公報
しかし、上述のようなシールチェーンでは、潤滑剤をシールするためのOリング及びシールプレートが内リンクプレートの内側面の凹部内におけるローラのボス部の径方向の外側に配置されている。すなわち、Oリング及びシールプレートは、内リンクプレートの内側面の凹部内において、ブシュとローラとの間に配置した潤滑剤が漏れ出すローラのボス部の先端面側の位置から離れた位置に配置されている。
このため、Oリング及びシールプレートがスプロケットと接触することによって摩耗することはないが、ブシュとローラとの間に配置された潤滑剤をシールする上では、改善の余地を残すものとなっている。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、ブシュとローラとの間に配置された潤滑剤を長期に亘って効果的にシールすることができるシールチェーンを提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するシールチェーンは、互いに対向して離れて配置される一対の内リンクプレートと、前記一対の内リンクプレートに両端部がそれぞれ接合される筒状のブシュと、前記ブシュに回転可能に挿入されるピンと、前記ブシュが挿入されて前記ブシュによって回転可能に支持される筒状のローラと、前記一対の内リンクプレートを外側から挟むように配置されて前記ピンの両端部がそれぞれ接合される一対の外リンクプレートと、前記内リンクプレートの内側面に前記ブシュを囲むように形成された凹部と、前記凹部内に収まるように前記凹部の底面と前記ローラの端面との間に配置されて前記ブシュと前記ローラとの間に配置された潤滑剤をシールするシール部と、を備える。
この構成によれば、ブシュとローラとの間に配置された潤滑剤をシールするシール部が凹部内に収まるように凹部の底面とローラの端面との間に配置されているため、シール部がスプロケットと接触することを抑制しつつ、ブシュとローラとの間に配置した潤滑剤が漏れ出す位置か当該位置に近い位置で潤滑剤がシール部によってシールされる。したがって、シール部がスプロケットとの接触によって短期間で摩耗することはないので、ブシュとローラとの間に配置された潤滑剤を長期に亘って効果的にシールすることができる。
上記シールチェーンにおいて、前記シール部は、前記ブシュを囲む環状に形成され、その内周面が前記ブシュの外周面に接触していることが好ましい。
この構成によれば、ブシュとローラとの間に配置された潤滑剤がシール部の内周面とブシュの外周面との間から漏れ出すことを効果的に抑制できる。
上記シールチェーンにおいて、前記シール部は、前記ローラの端面に接触する自己潤滑性を有する材料によって構成された第1層と、前記第1層及び前記凹部の底面の両方に面接触する弾性発泡体によって構成された第2層と、を備えることが好ましい。
この構成によれば、第1層は第2層と面接触しているため、第2層を従来の特許文献1に記載のOリングで構成する場合に比べて第1層が第2層から受ける面圧を低減できる。このため、第1層のローラに対する接触圧力を従来(特許文献1に記載の構成)よりも低く抑えることができる。したがって、第1層の自己潤滑性も手伝ってローラの回転時におけるローラと第1層との摺動抵抗を効果的に低減できるので、第1層によってローラの回転が妨げられることを抑制できる。よって、ブシュとローラとの間に配置した潤滑剤をシールしつつ、ローラの回転を妨げることを抑制できる。
上記シールチェーンにおいて、前記第2層は、相対的に反発性の低い低反発層と、相対的に反発性の高い高反発層とを備え、前記低反発層は、前記第1層と前記高反発層との間に配置されていることが好ましい。
この構成によれば、例えば低反発層が潤滑剤に対する耐性が高く且つ高反発層が潤滑剤に対する耐性が低い場合には、低反発層によって高反発層を潤滑剤から保護しながら、高反発層の反発力によりシール部のローラに対する追随性を高めることができる。
上記シールチェーンにおいて、前記第2層は、独立気泡発泡体によって構成されていることが好ましい。
この構成によれば、第2層を連続気泡発泡体によって構成する場合に比べて、シール部の反発性を高めることができる。
上記シールチェーンにおいて、前記内リンクプレートの厚さは前記外リンクプレートの厚さよりも厚くなっており、前記内リンクプレートにおける前記凹部が形成された部分の厚さは前記外リンクプレートの厚さ以上であることが好ましい。
この構成によれば、内リンクプレートにおける凹部が形成された部分の強度を外リンクプレートの強度と同じ以上にすることができる。
上記シールチェーンにおいて、前記内リンクプレートの高さは前記外リンクプレートの高さよりも高くなっていることが好ましい。
この構成によれば、内リンクプレートの厚さを厚くしない場合においても凹部の形成によって内リンクプレートの強度が低下することを抑制できる。
本発明によれば、ブシュとローラとの間に配置された潤滑剤を長期に亘って効果的にシールすることができる。
第1実施形態のシールチェーンの一部を示す一部破断平面図。 図1の要部拡大図。 図1の側面図。 図2の要部拡大図。 第2実施形態のシールチェーンの要部拡大断面図。 図5の要部拡大図。
(第1実施形態)
以下、シールチェーンの第1実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、シールチェーン11は、鋼材によって構成され、互いに幅方向Yで対向して離れて配置される一対の内リンクプレート12を各々有した複数の内リンク13と、一対の内リンクプレート12を幅方向Yの外側から挟むように配置される一対の外リンクプレート14を各々有した複数の外リンク15とを備えている。
内リンク13の内リンクプレート12及び外リンク15の外リンクプレート14は、シールチェーン11が幅方向Yと直交する長手方向の一方側から引っ張られて移動する場合の移動方向ともなる直列方向Xに沿って延びる略矩形板状をなしており、直列方向Xの両端部が丸みを帯びている。
図1及び図2に示すように、内リンクプレート12の直列方向Xにおける両端部には、それぞれ円形のブシュ挿入孔16が内リンクプレート12の厚さ方向ともなる幅方向Yに貫通するように形成されている。内リンク13において対向する一対の内リンクプレート12間には、これら一対の内リンクプレート12間の距離を保つように円筒状のブシュ17が2つ組み付けられる。
ブシュ17は、その両端部が一対の内リンクプレート12のブシュ挿入孔16に対してそれぞれ回転不能に嵌合(接合)されている。ブシュ17は、円筒状のローラ18に挿入されることでローラ18を回転可能に支持している。すなわち、ブシュ17は、ローラ18に遊嵌されている。
ブシュ17の外周面17aとローラ18の内周面18bとの間には、潤滑剤G1が配置されている。一対の内リンクプレート12の内側面12aには、円環状の凹部50がブシュ17を囲むように形成されている。凹部50内には、潤滑剤G1をシールする円環板状のシール部19がブシュ17を囲むように配置されている。この場合、シール部19は、凹部50内に収まるように凹部50の底面50aとローラ18の端面18aとの間に配置される。凹部50の外径及びシール部19の外径は、ローラ18の外径よりも大きくなるように設定されている。
外リンクプレート14の直列方向Xにおける両端部には、それぞれブシュ17の内径よりも若干小さい外径を有した円柱状のピン20が挿嵌される円形のピン挿入孔21が外リンクプレート14の厚さ方向ともなる幅方向Yに貫通するように形成されている。ピン20の先端部には貫通孔22が形成され、貫通孔22にはピン20がピン挿入孔21から抜けないようにするための抜止ピン23が挿入されている。抜止ピン23は、自身が貫通孔22から抜けないように、先端部が屈曲されている。
一対の外リンクプレート14は、一対の内リンクプレート12を幅方向Yの外側から挟むように配置された状態で、ピン20及びブシュ17を介して一対の内リンクプレート12に対して回動自在に連結される。この場合、ピン20は、両端部以外の中間部が内リンク13の一対の内リンクプレート12間に組み付けられたブシュ17に回転可能に挿入された状態で、両端部が外リンク15の一対の外リンクプレート14のピン挿入孔21に対して回転不能に嵌合(接合)されている。
したがって、ピン20の両端部は一対の外リンクプレート14をそれぞれ貫通しており、直列方向Xで隣り合う内リンク13の内リンクプレート12と外リンク15の外リンクプレート14とが直列方向Xの端部同士でピン20及びブシュ17を介して回動自在に連結されている。
ブシュ17の両端部は、一対の内リンクプレート12における幅方向Yの外側に若干突出している。ブシュ17の両端面17bは、一対の外リンクプレート14の内側面14aにそれぞれ接触している。ブシュ17の内周面17cとピン20の外周面20aとの間には、潤滑剤G2が配置されている。
内リンクプレート12の外側面12bと外リンクプレート14の内側面14aとの間には、潤滑剤G2をシールする円環板状のシール部材51がブシュ17を囲むように配置されている。シール部材51の内周面は、ブシュ17の外周面17aに接触している。幅方向Yにおけるシール部材51の両側面は、内リンクプレート12の外側面12b及び外リンクプレート14の内側面14aにそれぞれ接触している。
潤滑剤G1,G2としては、固体潤滑剤(例えば、粉末のグラファイトや粉末の二硫化モリブデンなどを円筒状に圧縮成形したもの)やグリースなどを用いることができる。潤滑剤G1及び潤滑剤G2は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。本実施形態では、潤滑剤G1,G2にグリースが採用されている。
図2及び図3に示すように、内リンクプレート12の厚さは外リンクプレート14の厚さよりも厚くなっている。内リンクプレート12における凹部50が形成された部分の厚さTは、外リンクプレート14の厚さと同じになるように設定されている。内リンクプレート12の高さH1は、外リンクプレート14の高さH2よりも高くなっている。すなわち、内リンクプレート12における直列方向X及び幅方向Yの両方と直交する方向である高さ方向Zの長さは、外リンクプレート14の高さ方向Zの長さよりも長くなっている。なお、シールチェーン11の使用時には、各対の内リンクプレート12間に位置するローラ18がスプロケット52と噛合する。
次に、シール部19の構成について詳述する。
図4に示すように、シール部19は、ローラ18の端面18aに摺動可能に面接触する自己潤滑性を有する材料によって構成された第1層31と、第1層31におけるローラ18側とは反対側の面及び内リンクプレート12の凹部50の底面50aの両方に面接触する弾性発泡体によって構成された第2層32とを備えた二層構造になっている。
第1層31を構成する材料としては、自己潤滑性を有した、合成樹脂、金属、焼結材、及びこれら3種のうちの少なくとも2種を組み合わせたものなどを用いることができる。例えば、第1層31は、金属ベースのものに孔をあけて、その孔に合成樹脂を充填したもので構成してもよい。あるいは、第1層31は、より潤滑性を有する表面処理(例えば、コーティングや研磨など)を施した金属によって構成してもよい。本実施形態では、第1層31が自己潤滑性を有する合成樹脂によって構成されている。
円環板状をなす第1層31及び第2層32は、内径及び外径が同じになっており、いずれもブシュ17を囲んでいる。本実施形態では第1層31の厚さが第2層32の厚さの半分程度になるように設定されている。第1層31及び第2層32のそれぞれの内周面31a及び内周面32aは、ブシュ17の外周面17aに接触している。すなわち、シール部19の内周面は、ブシュ17の外周面17aに接触している。
第1層31の外周面31bと凹部50の内周面50bとの間には、僅かな隙間が形成されている。第2層32の外周面32bと凹部50の内周面50bとの間には、僅かな隙間が形成されている。第1層31におけるローラ18の端面18aと接触する面は、内リンクプレート12の内側面12aとほぼ面一になっている。
第1層31を構成する合成樹脂としては、ポリアミド(ナイロン)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのエンジニアリングプラスチックを用いることができる。本実施形態の第1層31を構成する合成樹脂には、摺動性及び耐摩耗性に優れたポリアミド6,6(PA6,6;ナイロン6,6)が採用されている。
第2層32を構成する弾性発泡体としては、ニトリルゴム(NBR)や天然ゴム(NR)などの独立気泡発泡体を用いることができる。本実施形態の第2層32を構成する弾性発泡体には、耐油性を有するニトリルゴムスポンジが採用されている。第2層32は、その内周面32aが自身の弾性力によりブシュ17の外周面17aに圧接している。第2層32は、第1層31におけるローラ18側とは反対側の面、凹部50の底面50a、及びブシュ17の外周面17aに密着し、且つ少し圧縮された状態で配置されている。
次に、シールチェーン11の使用時におけるシール部19の作用について説明する。
シールチェーン11は、物品を垂直搬送する例えばバケットエレベーターに使用される。シールチェーン11をバケットエレベーターに使用する場合、シールチェーン11には粉体などの物品を収容する複数の容器が取り付けられる。この複数の容器が取り付けられたシールチェーン11は、無端状に形成されて鉛直方向に延びるように配置される。シールチェーン11の上端部と下端部の湾曲部分には、それぞれスプロケット52が噛合される。
そして、シールチェーン11の上端部に位置するスプロケット52を回転駆動させてシールチェーン11を循環移動させると、特にスプロケット52との噛合部分に位置するローラ18が回転され、潤滑剤G1によってローラ18とブシュ17との間が潤滑される。このとき、潤滑剤G1は、シール部19の第1層31の内周面31aとブシュ17の外周面17aとの間を通ってシール部19の第2層32の内周面32aとブシュ17の外周面17aとの間に流れ込もうとするが、内周面32aは外周面17aに圧接状態で密着しているため、第2層32によって潤滑剤G1がブロックされる。したがって、潤滑剤G1が外部へ漏れ出すことが第2層32によって効果的に抑制される。
加えて、第2層32は、第1層31及び内リンクプレート12の内側面12aに面接触した状態で密着しているため、第2層32と第1層31との間や第2層32と内側面12aとの間に外部から粉塵などの異物が進入することが抑制される。このため、異物の噛み込みによるシール部19の損傷が抑制されるとともに、異物がローラ18とブシュ17との間に進入することが抑制される。
また、ローラ18が回転する際には、ローラ18がシール部19における自己潤滑性を有した第1層31に対して摺動する。このとき、第1層31は圧縮弾性変形した第2層32と面接触しているため、第2層32を従来(特許文献1に記載の構成)のOリングで構成する場合に比べて第1層31が第2層32から受ける面圧が低減される。このため、第1層31のローラ18に対する接触圧力が従来(特許文献1に記載の構成)よりも低く抑えられる。したがって、第1層31の自己潤滑性も手伝ってローラ18の転動時の摺動抵抗が効果的に低減されるので、第1層31(シール部19)によってローラ18の回転が妨げられることが抑制される。
また、ローラ18が幅方向Yに振れる場合にはシール部19が第2層32の弾力性によってローラ18の動きに追随するので、シール部19によるシール性が低下することが抑制される。すなわち、ローラ18が幅方向Yの一方側に振れた場合には、ローラ18の振れた側にあるシール部19の第2層32の圧縮弾性変形量がローラ18の振れた分だけ増加するとともに、ローラ18の振れた側とは反対側にあるシール部19の第2層32の圧縮弾性変形量がローラ18の振れた分だけ減少する。したがって、ローラ18が振れた場合でも、ローラ18ががたつくことが抑制される。
また、シール部19は、内リンクプレート12の凹部50内に収まるように凹部50の底面50aとローラ18の端面18aとの間に配置されているため、スプロケット52と接触し難い状態で、ブシュ17とローラ18との間に配置した潤滑剤G1が漏れ出す位置か当該位置に近い位置で潤滑剤G1をシールする。したがって、シール部19(第1層31)は、スプロケット52との接触によって短期間で摩耗しないので、ブシュ17とローラ18との間に配置された潤滑剤G1を長期に亘って効果的にシールする。
このように、シール部19は、第2層32の弾力性によってシール性とローラ18に対する追随性とを発揮する一方で、第1層31の自己潤滑性によってローラ18に対する高い摺動性を発揮する。加えて、シール部19は、スプロケット52と接触し難い凹部50内に配置されているため、スプロケット52との接触による摩耗がほとんどない。したがって、シール部19は、ローラ18の回転を妨げることを抑制しつつ、ブシュ17とローラ18との間に配置した潤滑剤G1を長期に亘って効果的にシールする。
以上詳述した第1実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1−1)シールチェーン11において、ブシュ17とローラ18との間に配置された潤滑剤G1をシールするシール部19は、凹部50内に収まるように凹部50の底面50aとローラ18の端面18aとの間に配置されている。このため、シール部19がスプロケット52と接触することを抑制しつつ、ブシュ17とローラ18との間に配置した潤滑剤G1が漏れ出す位置か当該位置に近い位置で潤滑剤G1をシール部19によってシールすることができる。したがって、シール部19がスプロケット52との接触によって短期間で摩耗することを回避できるので、ブシュ17とローラ18との間に配置された潤滑剤G1を長期に亘って効果的にシールすることができる。
(1−2)シールチェーン11において、シール部19の第2層32は、ブシュ17を囲む円環状に形成され、その内周面32aがブシュ17の外周面17aに接触している。このため、第2層32の弾性により、シール部19のローラ18に対するブシュ17の軸方向ともなる幅方向Yにおける追随性だけでなく、シール部19のローラ18に対するブシュの軸方向と交差する方向(例えば、直列方向Xや高さ方向Z)における追随性を発揮することができる。したがって、ブシュ17とローラ18との間に配置された潤滑剤G1がシール部19の第2層32の内周面32aとブシュ17の外周面17aとの間から漏れ出すことを効果的に抑制できる。
(1−3)シールチェーン11において、シール部19は、ローラ18の端面18aに接触する自己潤滑性を有した第1層31と、第1層31及び内リンクプレート12の両方に面接触する弾力性を有した第2層32とを備える。このため、第1層31と第2層32との面接触により、第2層32を従来(特許文献1に記載の構成)のOリングで構成する場合に比べて第1層31が第2層32から受ける面圧を低減できるので、第1層31のローラ18に対する接触圧力を従来(特許文献1に記載の構成)よりも低く抑えることができる。したがって、第1層31の自己潤滑性も手伝ってローラ18の回転時におけるローラ18と第1層31との摺動抵抗を効果的に低減できるので、第1層31によってローラ18の回転が妨げられることを抑制できる。よって、ブシュ17とローラ18との間に配置した潤滑剤G1をシールしつつ、ローラ18の回転を妨げることを抑制できる。
(1−4)シールチェーン11において、第2層32は、気泡が連続していない独立気泡発泡体によって構成されている。このため、第2層32を気泡が連続した連続気泡発泡体によって構成する場合に比べて、シール部19の反発性を高めることができるとともに、潤滑剤G1及び粉塵などを漏れにくくすることができる。
(1−5)シールチェーン11において、内リンクプレート12の厚さは外リンクプレート14の厚さよりも厚くなっており、内リンクプレート12における凹部50が形成された部分の厚さTは外リンクプレート14の厚さと同じになっている。このため、内リンクプレート12における凹部50が形成された部分の強度を外リンクプレート14の強度と同じにすることができる。すなわち、内リンクプレート12における凹部50の形成によって強度が低下した部分の強度を、外リンクプレート14の強度並に確保することができる。
(1−6)シールチェーン11において、内リンクプレート12の高さ(高さ方向Zの長さ)は、外リンクプレート14の高さ(高さ方向Zの長さ)よりも高くなっている。このため、凹部50の形成によって内リンクプレート12の強度が低下することを抑制できる。すなわち、凹部50の形成によって低下した内リンクプレート12の強度を補うことができる。
(1−7)シールチェーン11において、シール部19の第2層32は、第1層31及び内リンクプレート12の内側面12aに面接触した状態で密着しているため、第2層32と第1層31との間や第2層32と内側面12aとの間に外部から粉塵などの異物が進入することを抑制できる。このため、異物の噛み込みによってシール部19が損傷することを抑制できるとともに、異物がローラ18とブシュ17との間に進入することを抑制できる。
(1−8)シールチェーン11において、シール部19は、従来(特許文献1に記載の構成)よりも体積を大きくすることができるので、摩耗による早期の脱落が発生しにくい。このため、シール部19の脱落によって潤滑剤G1が消失されることを抑制できるので、潤滑剤G1による潤滑効果を長期間維持できる。したがって、ブシュ17及びローラ18の摩耗寿命を延ばすことができる。
(1−9)シールチェーン11において、シール部19の第2層32は、ローラ18に直接接触しないので、第2層32が摩耗することを抑制できる。したがって、シール部19の長寿命化に貢献することができる。
(1−10)シールチェーン11において、シール部19は、ブシュ17とローラ18との間の潤滑剤G1をシールするので、潤滑剤G1の外部への漏出を長期間抑制できるとともに、ブシュ17とローラ18との間への外部からの異物の進入を長期間抑制することができる。したがって、シールチェーン11を、潤滑剤G1を補充することなく(無給油で)使用することができる。
(1−11)シールチェーン11において、シール部19は、オイルシールなどのメカニカルシールを使用しないので、その構造を簡単にすることができるとともに精密な加工も不要にすることができる。
(1−12)シールチェーン11において、シール部19の第2層32はニトリルゴムスポンジによって構成されているため、第2層32をソリッドゴムによって構成する場合に比べて反発力を小さくすることができる。したがって、第2層32による第1層31のローラ18側への付勢力を、第2層32をソリッドゴムによって構成する場合に比べて、低く抑えることができるので、第1層31のローラ18に対する接触圧力が低減されて円滑なローラ18の回転を得ることができる。
(第2実施形態)
次に、シールチェーンの第2実施形態を図面に従って説明する。
この第2実施形態は、上記第1実施形態のシールチェーン11におけるシール部19を図5及び図6に示すシール部40に変更したものであり、その他の点では第1実施形態と同じであるため、同一の部材については同一符号を付すことによって重複した説明は省略する。
図5及び図6に示すように、シール部40は、上記第1実施形態のシール部19(図4参照)における第2層32を、相対的に反発性の低い低反発層41と、相対的に反発性の高い高反発層42とを積層した二層構造にしたものである。すなわち、シール部40は、第1層31、低反発層41、及び高反発層42を備えた三層構造になっている。本実施形態では、第1層31、低反発層41、及び高反発層42の厚さがそれぞれほぼ同じになるように設定されている。
低反発層41は、円環板状の弾性発泡体によって構成され、第1層31におけるローラ18側とは反対側の面及び高反発層42の両方に面接触するように配置されている。低反発層41を構成する弾性発泡体としては、ニトリルゴム(NBR)や天然ゴム(NR)などの独立気泡発泡体を用いることができる。本実施形態の低反発層41を構成する弾性発泡体には、耐油性を有するニトリルゴムスポンジが採用されている。
低反発層41は、ブシュ17を囲んでおり、その内周面41aが自身の弾性力によりブシュ17の外周面17aに圧接している。すなわち、低反発層41は、第1層31におけるローラ18側とは反対側の面、高反発層42、及びブシュ17の外周面17aに密着し、且つ少し圧縮された状態で配置されている。つまり、低反発層41は、第1層31と高反発層42との間に配置されている。
高反発層42は、円環板状の弾性発泡体によって構成され、低反発層41における第1層31側とは反対側の面及び内リンクプレート12の凹部50の底面50aの両方に面接触するように配置されている。高反発層42を構成する弾性発泡体としては、各種のウレタンスポンジなどの独立気泡発泡体を用いることができる。本実施形態の高反発層42を構成する弾性発泡体には、各種のウレタンスポンジの中でも比較的反発性の高い高弾性ウレタンスポンジが採用されている。
高反発層42は、ブシュ17を囲んでおり、その内周面42aが自身の弾性力によりブシュ17の外周面17aに圧接している。すなわち、高反発層42は、低反発層41における第1層31側とは反対側の面、内リンクプレート12の凹部50の底面50a、及びブシュ17の外周面17aに密着し、且つ少し圧縮された状態で配置されている。
次に、シールチェーン11の使用時におけるシール部40の作用について説明する。
シールチェーン11は、物品を垂直搬送する例えばバケットエレベーターに使用される。シールチェーン11をバケットエレベーターに使用する場合、シールチェーン11には粉体などの物品を収容する複数の容器が取り付けられる。この複数の容器が取り付けられたシールチェーン11は、無端状に形成されて鉛直方向に延びるように配置される。シールチェーン11の上端部と下端部の湾曲部分には、それぞれスプロケット52が噛合される。
そして、シールチェーン11の上端部に位置するスプロケット52を回転駆動させてシールチェーン11を循環移動させると、特にスプロケット52との噛合部分に位置するローラ18が回転され、潤滑剤G1によってローラ18とブシュ17との間が潤滑される。
このとき、潤滑剤G1は、シール部40の第1層31の内周面31aとブシュ17の外周面17aとの間を通ってシール部40の低反発層41の内周面41aとブシュ17の外周面17aとの間に流れ込もうとするが、内周面41aは外周面17aに圧接状態で密着しているため、低反発層41によって潤滑剤G1がブロックされる。
したがって、潤滑剤G1が低反発層41の内周面41aとブシュ17の外周面17aとの間、高反発層42の内周面42aとブシュ17の外周面17aとの間、及び高反発層42と凹部50の底面50aとの間を通って外部へ漏れ出すことが低反発層41によって効果的に抑制される。
このため、高反発層42が潤滑剤G1に晒されることが抑制される。この場合、高反発層42を構成する高弾性ウレタンスポンジは油を含む潤滑剤G1に対する耐性が低いが、低反発層41を構成するニトリルゴムスポンジは油を含む潤滑剤G1に対する耐性(耐油性)が高いため、低反発層41によって油を含む潤滑剤G1から高反発層42が保護される。
また、ローラ18が幅方向Yに振れる場合にはシール部40が低反発層41及び高反発層42の弾力性によってローラ18の動きに追随するので、シール部40によるシール性が低下することが抑制される。すなわち、ローラ18が幅方向Yの一方側に振れた場合には、ローラ18の振れた側にあるシール部40の低反発層41及び高反発層42の圧縮弾性変形量がローラ18の振れた分だけ増加するとともに、ローラ18の振れた側とは反対側にあるシール部40の低反発層41及び高反発層42の圧縮弾性変形量がローラ18の振れた分だけ減少する。
このとき、高反発層42を構成する高弾性ウレタンスポンジは、低反発層41を構成するニトリルゴムスポンジに比べて格段に反発性が高い。すなわち、高反発層42は、弾性変形に対する復元速度が低反発層41よりも格段に速い。このため、シール部40におけるローラ18に対する追随性が高反発層42によって高められる。つまり、高反発層42は、シール部40にローラ18に対する追随性を発揮させる上で、低反発層41を補助する役割を果たす。したがって、ローラ18が振れた場合でも、シール部40における特に高反発層42の反発力によってローラ18ががたつくことが効果的に抑制される。
以上詳述した第2実施形態によれば、上記(1−1)〜(1−12)の効果に加えて、次のような効果が発揮される。
(2−1)シールチェーン11において、第2層32は、相対的に反発性の低い低反発層41と、相対的に反発性の高い高反発層42とを備え、低反発層41は、第1層31と高反発層42との間に配置されている。このため、低反発層41によって高反発層42を潤滑剤G1から保護しながら、高反発層42の反発力によりシール部40のローラ18に対する追随性をより一層高めることができる。
(2−2)シールチェーン11において、シール部40は、高反発層42を構成する高弾性ウレタンスポンジと低反発層41を構成するニトリルゴムスポンジとを備えているため、ブシュ17及びローラ18間で発生する摺動音を物理的に遮音するだけでなく、吸音することもできる。したがって、シールチェーン11の騒音低減に貢献できる。
(変更例)
なお、上記各実施形態は次のように変更してもよい。
・シールチェーン11において、内リンクプレート12の高さ(高さ方向Zの長さ)は、必ずしも外リンクプレート14の高さ(高さ方向Zの長さ)よりも高くする必要はない。すなわち、内リンクプレート12の高さを外リンクプレート14の高さ以下となるようにしてもよい。
・シールチェーン11において、内リンクプレート12の厚さは、必ずしも外リンクプレート14の厚さよりも厚くする必要はない。すなわち、内リンクプレート12の厚さを外リンクプレート14の厚さ以下となるようにしてもよい。
・シールチェーン11において、内リンクプレート12における凹部50が形成された部分の厚さTは、必ずしも外リンクプレート14の厚さと同じにする必要はない。すなわち、内リンクプレート12における凹部50が形成された部分の厚さTは、外リンクプレート14の厚さより厚くてもよいし薄くてもよい。
・シールチェーン11において、第2層32は、必ずしも独立気泡発泡体によって構成する必要はない。例えば、第2層32を連続気泡発泡体によって構成してもよい。
・シールチェーン11において、シール部19は、必ずしもブシュ17を囲む円環状に形成する必要はない。
・シールチェーン11において、シール部19は、必ずしも第1層31と第2層32とを備える必要はない。
・シールチェーン11において、シール部19の内周面は、必ずしもブシュ17の外周面17aに接触させる必要はない。
・第1層31及び第2層32は、必ずしも内径及び外径が同じである必要はない。
・第1層31におけるローラ18の端面18aと接触する面は、必ずしも内リンクプレート12の内側面12aと面一になっている必要はない。
11…シールチェーン、12…内リンクプレート、14…外リンクプレート、17…ブシュ、18…ローラ、18a…ローラ18の端面、19,40…シール部、20…ピン、31…第1層、32…第2層、41…低反発層、42…高反発層、50…凹部、50a…凹部50の底面、G1,G2…潤滑剤、H1…内リンクプレート12の高さ、H2…外リンクプレート14の高さ、T…内リンクプレート12における凹部50が形成された部分の厚さ。

Claims (6)

  1. 互いに対向して離れて配置される一対の内リンクプレートと、
    前記一対の内リンクプレートに両端部がそれぞれ接合される筒状のブシュと、
    前記ブシュに回転可能に挿入されるピンと、
    前記ブシュが挿入されて前記ブシュによって回転可能に支持される筒状のローラと、
    前記一対の内リンクプレートを外側から挟むように配置されて前記ピンの両端部がそれぞれ接合される一対の外リンクプレートと、
    前記内リンクプレートの内側面に前記ブシュを囲むように形成された凹部と、
    前記凹部内に収まるように前記凹部の底面と前記ローラの端面との間に配置されて前記ブシュと前記ローラとの間に配置された潤滑剤をシールするシール部と、
    を備え
    前記シール部は、
    前記ローラの端面に接触する自己潤滑性を有する材料によって構成された第1層と、
    前記第1層及び前記凹部の底面の両方に面接触する弾性発泡体によって構成された第2層と、を備えることを特徴とするシールチェーン。
  2. 前記シール部は、前記ブシュを囲む環状に形成され、その内周面が前記ブシュの外周面に接触していることを特徴とする請求項1に記載のシールチェーン。
  3. 前記第2層は、相対的に反発性の低い低反発層と、相対的に反発性の高い高反発層とを備え、
    前記低反発層は、前記第1層と前記高反発層との間に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシールチェーン。
  4. 前記第2層は、独立気泡発泡体によって構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のシールチェーン。
  5. 前記内リンクプレートの厚さは前記外リンクプレートの厚さよりも厚くなっており、
    前記内リンクプレートにおける前記凹部が形成された部分の厚さは前記外リンクプレートの厚さ以上であることを特徴とする請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載のシールチェーン。
  6. 前記内リンクプレートの高さは前記外リンクプレートの高さよりも高くなっていることを特徴とする請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載のシールチェーン。
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