JP6333573B2 - 造水装置及び造水方法 - Google Patents

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Description

本発明は、造水装置及び造水方法に関する。
従来、海水から飲料用水を生成する造水方法として、海水を蒸発させて淡水を生成する蒸留法や、逆浸透膜を透過させて淡水を生成する逆浸透膜法があるが、淡水を生成する過程で必然的に濃縮海水が発生する。
この生成された濃縮海水を、そのまま放流すると、塩分濃度が高いために、放流される海域の塩分濃度が高まり生態系に悪影響を与えるおそれがあった。
このため、例えば特許文献1の造水装置では、塩化ナトリウムを含む被処理水を蒸発濃縮させると共に、発生した水蒸気を凝縮させることにより濃縮塩水及び凝縮水を生成する蒸発装置と、この蒸発装置で生成された濃縮塩水及び当該濃縮塩水よりも塩化ナトリウム濃度の低い希釈水が導かれる半透膜透過器と、希釈水からの水によって希釈された濃縮塩水を、蒸発装置に被処理水として還流させる還流手段とを備え、濃縮塩水を還流させることによって、外部に排出しないようにしている。
特開2008−307447号公報
上記特許文献1の半透膜透過器では、蒸発装置で生成された濃縮塩水が有する正浸透圧エネルギーによって、希釈水の水を吸引して濃縮塩水の水量を増加させてその塩分濃度を低下させるので、蒸発装置では、濃縮塩水を高い濃度まで蒸発濃縮して正浸透圧エネルギーの高い濃縮塩水として半透膜透過器に供給する必要がある。
しかしながら、半透膜透過器によって希釈されて塩分濃度が低下した塩水を、蒸発装置によって正浸透圧エネルギーの高い高濃度まで蒸発濃縮するためには、蒸発装置で消費する蒸気量が多量となり、蒸発装置でのエネルギー消費が大きくなって、造水効率が低下するいう課題がある。
本発明は、上述のような点に鑑みてなされたものであって、濃縮塩水等を外部に排出することなく、造水効率を高めることを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
(1)本発明の造水装置は、被処理溶液であるドロー溶液を蒸発濃縮させると共に、発生した水蒸気を凝縮させることにより濃縮ドロー溶液及び凝縮水を生成する蒸発装置と、
正浸透膜によって仕切られる第1室及び第2室を有し、前記第1室に、前記蒸発装置からの前記濃縮ドロー溶液が供給される一方、前記第2室に、前記第1室の前記濃縮ドロー溶液よりも浸透圧の低い希釈水が供給され、前記第2室から前記正浸透膜を透過した透過水によって前記第1室の濃縮ドロー溶液を希釈する正浸透膜処理手段と、
前記正浸透膜処理手段の前記第1室から供給される、希釈された前記濃縮ドロー溶液を、逆浸透膜によって、透過水と濃縮ドロー溶液とに分離する逆浸透膜処理手段とを備え、
前記逆浸透膜処理手段によって分離された前記濃縮ドロー溶液を、前記被処理溶液として前記蒸発装置に還流させるものであり、
前記希釈された前記濃縮ドロー溶液を、前記逆浸透膜処理手段に供給する供給管路には、前記逆浸透膜処理手段を介することなく、前記希釈された前記濃縮ドロー溶液を、前記蒸発装置に供給する分岐管路が連結され、
前記分岐管路には、前記蒸発装置に供給する前記希釈された前記濃縮ドロー溶液の流量を制御する流量制御弁が設けられる
本発明によると、蒸発装置で濃縮された濃縮ドロー溶液を正浸透膜処理手段によって希釈増量した後、逆浸透膜処理手段によって濃縮し、この濃縮された濃縮ドロー溶液を、蒸発装置に被処理溶液として還流して繰返し利用するので、蒸発装置や逆浸透膜処理手段で生成された濃縮ドロー溶液を、外部、例えば海に放流して廃棄することなく、蒸発装置からの凝縮水及び逆浸透膜処理手段からの透過水として飲料用等の淡水を製造することが可能になる。
しかも、蒸発装置では、逆浸透膜処理手段によって、濃縮された高濃度の濃縮ドロー溶液を蒸発濃縮するので、正浸透膜処理手段で希釈された濃縮ドロー溶液をそのまま蒸発濃縮するの比べて、蒸発装置で消費する蒸気量を大幅に低減することが可能となり、逆浸透膜処理手段による電力消費が生じるものの、全体としてのエネルギー消費を低減することができ、造水効率を高めることができる。
(2)本発明の他の実施態様では、前記ドロー溶液が、塩化ナトリウムを含む溶液であり、前記希釈水が、海水である。
この実施態様によると、正浸透膜処理手段では、第2室に供給される希釈水としての海水に含まれる水が、正浸透膜を透過して第1室の濃縮ドロー溶液としての濃縮塩水を希釈増量し、この希釈増量された濃縮塩水を、逆浸透膜処理手段及び蒸発装置によって濃縮する一方、淡水を生成するので、希釈水としての海水から淡水を効率的に製造することができる。
)本発明の一実施態様では、前記ドロー溶液が、食塩水である。
この実施態様によると、蒸発装置、正浸透膜処理手段、及び、逆浸透膜処理手段を還流する濃縮されたドロー溶液が、濃縮された食塩水であり、蒸発装置の伝熱管等の表面に、硫酸カルシウム等のスケールが析出するのを防止することができる。これによって、蒸発装置を高温で運転することが可能となり、効率よく大量の淡水を製造することができる。
)本発明の他の実施態様では、前記蒸発装置、前記正浸透膜処理手段、及び、前記逆浸透膜処理手段を流通する濃縮ドロー溶液の流通管路には、前記濃縮ドロー溶液の一部を排出する排出管路が連結される一方、前記流通管路へドロー溶液を補給する補給管路が連結される。
この実施態様によると、蒸発装置、正浸透膜処理手段、及び、逆浸透膜処理手段を循環する濃縮ドロー溶液に、例えば正浸透膜処理手段の正浸透膜を透過した不要物質が混入しても、排出管路を介して濃縮ドロー溶液の一部を廃棄する一方、補給管路を介してドロー溶液を補給することができるので、不要物質の濃度が高まるのを防止することができる。
)本発明の好ましい実施態様では、前記補給管路を介して食塩水が、前記流通管路へ補給される。
この実施態様によると、蒸発装置、正浸透膜処理手段、及び、逆浸透膜処理手段を循環する塩化ナトリウムを含む濃縮ドロー溶液の一部を廃棄する一方、硫酸カルシウム等のスケール成分を含まない食塩水を補給するので、蒸発装置の伝熱管等の表面に、スケールが析出するのを防止することができる。
)本発明の他の実施態様では、前記補給管路を介してナノ濾過膜処理手段によって、スケール成分が除去された海水が、前記流通管路へ補給される。
この実施態様によると、ナノ濾過膜処理手段によって、海水に含まれるスケール成分を除去して流通管路に補給するので、食塩水を調製して補給する必要がない。
)本発明の更に他の実施態様では、前記蒸発装置の駆動蒸気として、発電設備で生成される蒸気を導入する。
この実施態様によると、発電設備でタービンを回転させるために生成される蒸気を、蒸発装置の駆動蒸気として利用することができる。
)本発明の他の実施態様では、前記発電設備が、太陽熱発電設備であって、前記蒸発装置の駆動蒸気として、太陽熱発電設備の蒸気タービンから排出される蒸気を導入する。
この実施態様によると、太陽熱発電設備の蒸気タービンを回転させるために使用され、前記蒸気タービンから排出される蒸気を、蒸発装置の駆動蒸気として利用するので、太陽熱発電設備と造水装置とからなるシステムのエネルギー効率を高めることができる。
)本発明の造水方法は、蒸発装置で被処理溶液であるドロー溶液を蒸発濃縮して濃縮ドロー溶液を生成する濃縮ドロー溶液生成ステップと、
前記蒸発濃縮によって発生した水蒸気を凝縮することにより凝縮水を生成する凝縮水生成ステップと、
前記蒸発装置で生成された濃縮ドロー溶液を、正浸透膜を透過した透過水によって希釈する希釈ステップと、
希釈された濃縮ドロー溶液を、逆浸透膜によって透過水と濃縮ドロー溶液とに分離する分離ステップと、
前記逆浸透膜によって分離された濃縮ドロー溶液を、前記蒸発装置に前記被処理溶液として還流させる還流ステップと
前記希釈ステップで希釈された濃縮ドロー溶液の一部を分岐させて、前記逆浸透膜を介することなく前記蒸発装置に前記被処理液として還流させる分岐ステップとを備え、
前記分岐ステップは、分岐させる前記希釈された濃縮ドロー溶液の流量を制御する流量制御ステップを含む。
本発明によると、蒸発装置で被処理溶液であるドロー溶液を蒸発濃縮して濃縮ドロー溶液及び凝縮水を生成し、正浸透膜によって濃縮ドロー溶液を希釈した後、逆浸透膜によって濃縮ドロー溶液を分離し、逆浸透膜によって濃縮された濃縮ドロー溶液を、蒸発装置に被処理溶液として還流して繰返し利用するので、蒸発装置や逆浸透膜処理手段で生成された濃縮ドロー溶液を、外部、例えば海に放流して廃棄することなく、凝縮水生成ステップ及び分離ステップで飲料用等の淡水を製造することが可能になる。
しかも、蒸発装置では、逆浸透膜で濃縮された濃縮ドロー溶液を蒸発濃縮するので、正浸透膜で希釈された濃縮ドロー溶液を蒸発濃縮するのに比べて、蒸発装置での消費エネルギーを低減することができ、造水効率を高めることができる。
このように本発明によれば、蒸発装置や逆浸透膜処理手段において生成される高濃度の濃縮ドロー溶液を外部に排出することなく飲料用等の淡水を生成することができると共に、正浸透膜処理手段で希釈された濃縮ドロー溶液を、そのまま蒸発装置で蒸発濃縮するのではなく、逆浸透膜処理手段によって、高濃度に濃縮した後に、蒸発装置で蒸発濃縮するので、蒸発装置で消費する蒸気量を大幅に低減することが可能となり、逆浸透膜処理手段による電力消費が生じるものの、全体としてのエネルギー消費を低減して、造水効率を高めることができる。
図1は、本発明の一実施形態の造水装置の概略構成図である。 図2は、従来例の設計例を説明するための概略構成図である。 図3は、実施形態の設計例を説明するための概略構成図である。 図4は、本発明の他の実施形態の造水装置の概略構成図である。 図5は、本発明の更に他の実施形態の造水装置の概略構成図である。 図6は、本発明の他の実施形態の造水装置の概略構成図である。
以下、図面によって本発明の実施形態について詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態に係る造水装置1の概略構成図である。
この実施形態の造水装置1は、逆浸透膜処理手段としての逆浸透膜(Reverse Osmosis Membrane:RO膜)装置4からの濃縮されたドロー溶液(駆動溶液:draw solution)としての濃縮塩水を蒸発濃縮して淡水(凝縮水)及び濃縮塩水を生成する蒸発装置2と、この蒸発装置2からの濃縮塩水を希釈する正浸透膜処理手段としての正浸透膜(forward osmosis Membrane:FO膜)装置3と、この正浸透膜装置3で希釈化された濃縮塩水を、淡水と濃縮塩水とに分離する前記逆浸透膜装置4とを備えている。
この実施形態の蒸発装置2は、多重効用の蒸発装置であり、複数の蒸発缶を直列的に並設し、例えばボイラ等からの駆動蒸気が、蒸気導入管路31を介して導入される初段の蒸発缶で、逆浸透膜装置4からの被処理溶液である濃縮塩水を加熱し、発生した蒸気を次段の蒸発缶の加熱蒸気として使用し、これを順次繰り返して濃縮塩水を加熱蒸発させるものであり、各蒸発缶は、加熱された濃縮塩水が蒸発するように減圧されている。
各蒸発缶には、加熱蒸気が導入される複数の水平伝熱管が配置され、濃縮塩水を、上方の散布ノズルから前記水平伝熱管に散布し、一部が蒸発して蒸気となって次段の蒸発缶の水平伝熱管に供給される一方、残部の濃縮塩水が下方に貯留され、次段の蒸発缶の散布ノズルに供給される。
蒸発装置2の最終段の蒸発缶からの蒸気を、凝縮部で冷却して淡水を生成する一方、最終段の蒸発缶の下部に貯留される濃縮塩水が、正浸透膜装置3へ供給される。また、最終段の蒸発缶の凝縮水は、凝縮水排出管路32を介して排出される。
この実施形態では、蒸発装置2には、海水30が、ポンプ5によって、海水供給管路6を介して、凝縮部の冷却水として導入される。
蒸発装置2の凝縮部で蒸気との熱交換によって加熱された海水は、海水移送管路7,8を介して正浸透膜装置3に移送される。海水移送管路7は、前記海水移送管路8と分岐して海水排出管路25となり、正浸透膜装置3から海水排出管路9,10を介して排出される海水と混合されて海へ戻される。
正浸透膜装置3は、プレート型の正浸透膜3aによって内部空間が仕切られており、一方の空間が第1室3bを構成し、他方の空間が第2室3cを構成している。
第1室3bには、蒸発装置2において生成される濃縮塩水が、ポンプ11によって塩水供給管路12を介して供給され、第2室3cには、第1室3bに導かれる濃縮塩水よりも塩分濃度(塩化ナトリウム濃度)が低く、浸透圧が低い海水が、上記のように蒸発装置2から海水移送管路7,8を介して供給される。
正浸透膜3aは、水を透過させる性質を有する膜であり、セルロース膜やポリアミド膜などの高分子膜を例示することができる。このような構成により、第2室3cに導かれた海水中の水分が、第1室3b内の濃縮塩水が有する正浸透圧エネルギーによって吸引されて正浸透膜3aを透過して第1室3bに流入し、濃縮塩水の水量を増加させてその塩分濃度を低下させる。
この実施形態では、蒸発装置2の凝縮部で蒸気との熱交換によって加熱された海水を、正浸透膜装置3の第2室3cに供給するので、温度上昇によって海水の粘度が低下し、透過速度が上昇するので、正浸透膜装置3の効率が向上する。なお、本発明の他の実施形態として、正浸透膜装置3の第2室3cには、海水30を、蒸発装置2の凝縮部の冷却用の海水とは別経路で、直接供給できるようにしてもよい。
逆浸透膜装置4には、正浸透膜装置3で希釈されて塩分濃度が低下した濃縮塩水が、ポンプ13によって塩水供給管路14を介して導入され、逆浸透膜装置4の逆浸透膜を透過して淡水化されて取出される一方、逆浸透膜装置4の逆浸透膜を透過せず、濃縮された濃縮塩水は、塩水供給管路15を介して蒸発装置2へ被処理溶液として還流される。
逆浸透膜装置4へ濃縮塩水を供給する塩水供給管路14には、濃縮塩水の一部を、逆浸透膜装置4を介することなく、蒸発装置2へ直接供給することができるように、蒸発装置2へ濃縮塩水を供給する塩水供給管路15に連通する分岐管路34が接続されている。この分岐管路34には、蒸発装置2へ供給する濃縮塩水の流量を制御する流量制御弁33が設けられている。この流量制御弁33の開度を制御することによって、逆浸透膜装置4で製造される淡水と、蒸発装置2で製造される淡水との水量のバランスを調整することができる。例えば、この流量制御弁33を通常は閉止状態とし、海水の塩分濃度や蒸発装置2における沸点上昇などの運転条件の変化に応じて、その開度を調整して適切な運転状態に制御することができる。
以上のように構成された造水装置1によって海水30から飲料用等の淡水を製造する方法について以下説明する。予め、正浸透膜装置3の第1室3bに被処理溶液であるドロー溶液を収容しておき、ポンプ13を駆動して逆浸透膜装置4に供給する一方、正浸透膜装置3の第2室3cには、希釈水である海水を供給する。
逆浸透膜装置4の逆浸透膜を透過せず、濃縮された濃縮塩水を蒸発装置2に供給する一方、例えば、ボイラ等により生成された駆動蒸気を蒸発装置2に供給する。
正浸透膜装置3の第1室3bに予め収容する被処理溶液であるドロー溶液として、この実施形態では、食塩水(塩化ナトリウム水溶液)を採用する。この食塩水の塩分濃度(塩化ナトリウム濃度)は、正浸透膜装置3の第2室3cに供給される海水の塩分濃度により適宜変更されるが、例えば、蒸発装置2において蒸発濃縮され、正浸透膜装置3の第1室3bに導かれる濃縮塩水の塩分濃度が、例えば、3〜26%(30g/L〜260g/L)となるように設定する。
蒸発装置2の最終段の蒸発缶からの蒸気は、海水供給管路6を介して凝縮部に供給される冷却用の海水によって冷却されて淡水に変換され、逆浸透膜装置4からの淡水と混合されて取出される。蒸発装置2の凝縮部で蒸気との熱交換によって加熱された冷却用の海水は、希釈水として正浸透膜装置3の第2室3cに供給される。
また、蒸発装置2の最終段の蒸発缶に貯留される高濃度の濃縮塩水は、ポンプ11によって塩水供給管路12を介して正浸透膜装置3の第1室3bに供給される。正浸透膜装置3の第2室3cには、第1室3bに導かれる濃縮塩水よりも塩分濃度が低い海水が供給されているので、濃縮塩水と海水との浸透圧差により、正浸透膜3aを介して、海水中の水のみが第1室3b側に浸透する。この結果、第1室3bに供給された濃縮塩水は、希釈増量されて、その塩分濃度が低下する。
一方、第2室3cに供給された海水は、当該海水中の一部の水が正浸透膜3aを介して第1室3b側に透過された後、海水排出管路9,10を介して海に排出される。なお、排出される海水は、塩分濃度が高められた状態になっているが、正浸透膜装置3の第2室3cを通過する海水の流量を適宜調整することにより、海水が放流される海域の生態系に悪影響を与えない範囲となるように、放流される海水の塩分濃度を設定する。第2室3cを通過する海水の流量は、例えば、海水の10%〜30%の水分が、正浸透膜3aを介して第1室3bに透過されるように設定することが好ましい。
希釈増量されて塩分濃度が低下した濃縮塩水は、逆浸透膜装置4の逆浸透膜を透過した淡水と、逆浸透膜を透過せず、濃縮された濃縮塩水とに分離され、濃縮塩水は、被処理溶液として、蒸発装置2の初段の蒸発缶における散布ノズルに還流され、再び蒸発装置2において蒸発濃縮されて飲料用等の淡水が製造される。
上述のように、本実施形態に係る造水装置1によれば、蒸発装置2で濃縮された濃縮塩水を正浸透膜装置3において希釈増量した後、逆浸透膜装置4によって濃縮し、蒸発装置2へ被処理溶液として還流して繰り返し再利用できるように構成されているので、蒸発装置2や逆浸透膜装置4において生成された濃縮塩水を外部に排出することなく(例えば、海に放流して廃棄することなく)、飲料用等の淡水を製造することが可能になる。
しかも、蒸発装置2では、逆浸透膜装置4によって、濃縮された濃縮塩水を蒸発濃縮するので、正浸透膜装置3で希釈された濃縮塩水を、そのまま蒸発濃縮するのに比べて、蒸発装置2で消費する蒸気量を大幅に低減することが可能となり、逆浸透膜装置4のポンプ13等による電力消費が生じるものの、全体としてのエネルギー消費を低減することができ、造水効率を高めることができる。
また、正浸透膜装置3においては、海水中の水のみを正浸透膜3aを介して、蒸発装置2等を循環する濃縮塩水に移動させており、海水に含まれるカルシウムイオンCa2+や硫酸イオンSO4 2-のようなスケール成分が、蒸発装置2の濃縮塩水中に移動することがない。つまり、蒸発装置2、正浸透膜装置3及び逆浸透膜装置4を循環するドロー溶液が、食塩水であることを維持することができる。その結果、蒸発装置2の各蒸発缶の伝熱管の表面等に硫酸カルシウム等のスケールが析出することを確実に防止できるので、熱交換効率が低下することがなく、海水から淡水を効率よく製造することが可能になる。また、スケールの析出を防止できるので、蒸発装置2に供給される駆動蒸気の温度をより一層高めて、各蒸発缶を更に高温の作動温度条件下で駆動することが可能になり、効率よく大量の淡水を製造することができる。
また、蒸発缶の伝熱管の表面等にスケールが析出することを確実に防止できる結果、海水からスケール成分を予め除去するためのナノ濾過膜装置や、スケール析出抑制のための薬品添加装置、脱炭酸塔設備等のスケール析出防止対策装置を設ける必要がなく、造水装置1のコンパクト化・低コスト化を図ることができる。更に、酸添加も不要になるので、蒸発缶における腐食を防止することもできる。
次に、従来例と本実施形態との省エネルギー効果の比較を設計値に基づいて、説明する。
図2は、従来例の概略構成図であり、上記特許文献1に開示されているように、蒸発装置2と正浸透膜装置(半透膜透過器)3とを備えている。
蒸発装置2は、正浸透膜装置3からの食塩水を蒸発濃縮させて正浸透膜装置3へ供給する一方、発生した水蒸気を凝縮させることによって淡水を製造する。この蒸発装置2には、水蒸気を凝縮させるための冷却水として、海水が導入される。
正浸透膜装置3は、蒸発装置2からの濃縮塩水を、正浸透膜を透過する海水中の水によって希釈し、塩分濃度を低下させて蒸発装置2へ供給する。正浸透膜装置3には、海水を、蒸発装置2で加熱することなく、直接供給する。
かかる従来例では、正浸透膜装置3及び蒸発装置2を循環する被処理溶液には、海水に含まれるカルシウムイオンCa2+や硫酸イオンSO4 2-のようなスケール成分が混入しないので、蒸発装置2の伝熱管の表面等に硫酸カルシウム等のスケールが析出するのを防止できる。これによって、蒸発装置2に供給される駆動蒸気の温度を高めて、高温の作動温度条件下で駆動することが可能になり、GORを高めることができ、この例では、GOR=20としている。
この場合、蒸発装置2から10000m3/日の淡水を製造するためには、20.8t/hの蒸気が必要になる。また、取水する海水量は、蒸発装置2の冷却水も含めて61000m3/日が必要になる。
図3は、実施形態に対応する概略構成図であり、蒸発装置2と正浸透膜装置3と逆浸透膜装置4を備えている。
蒸発装置2は、逆浸透膜装置4からの食塩水を蒸発濃縮させて正浸透膜装置3へ供給する一方、発生した水蒸気を凝縮させることによって淡水を製造する。この蒸発装置2には、水蒸気を凝縮させるための冷却水として、海水が導入される。
正浸透膜装置3は、蒸発装置2からの濃縮塩水を、正浸透膜を透過する海水中の水によって希釈し、塩分濃度を低下させて逆浸透膜装置4へ供給する。正浸透膜装置3には、海水を、蒸発装置2で加熱することなく、直接供給する。
逆浸透膜装置4では、正浸透膜装置3から供給される塩分濃度が低下した濃縮塩水を、逆浸透膜を透過させることによって、淡水を製造する一方、逆浸透膜を透過せず、濃縮された濃縮塩水が、蒸発装置2へ供給される。
この実施形態でも、従来例と同様に、正浸透膜装置3、逆浸透膜装置4及び蒸発装置2を循環する濃縮塩水には、海水に含まれるカルシウムイオンCa2+や硫酸イオンSO4 2-のようなスケール成分が混入しないので、蒸発装置2では、高温の作動温度条件下で駆動することが可能になり、GOR=20としている。
逆浸透膜装置4で生産される淡水のエネルギーコストは、一般に、約3kW/m3程度であり、蒸気のエネルギーコストである約38kW程度に比べて大幅に低く、この設計例では、淡水の生産量10000m3/日の半量である5000m3/日を逆浸透膜装置4で生産し、残りの半量を蒸発装置2で生産する。
このため、蒸発装置2で必要とされる蒸気量は、10.4t/hとなり、上記従来例の蒸気量20.8t/hに比べて、1/2に低減することができる。これに伴って、蒸発装置2で冷却水として使用される海水量も少なくなり、取水する海水量は、49000m3/日となり、図2の従来例の取得海水量61000m3/日に比べて、約20%低減することができる。
以上のように、従来例に比べて、蒸発装置2で使用する蒸気量を半減させることができ、逆浸透膜装置4でエネルギーが必要となるものの、そのエネルギーコストは、約3kW/m3と低いので、全体としてエネルギー消費を低減することが可能となる。
更に、取得する海水量、排出する海水量も低減することが可能となり、環境負荷も低減することができる。
上記の設計例では、逆浸透膜装置4で生産する淡水と、蒸発装置2で生産する淡水の水量を同じとしたけれども、この水量の割合は、任意であり、逆浸透膜装置4で生産する淡水の水量を、蒸発装置2で生産する淡水の水量よりも多くしてもよいし、少なくしてもよい。
(実施形態2)
図4は、本発明の他の実施形態の概略構成図であり、図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
この実施形態の造水装置1aでは、蒸発装置2、正浸透膜装置3及び逆浸透膜装置4を循環する濃縮塩水の一部を、必要に応じて捨てる(ブローダウン)ために、蒸発装置2と正浸透膜装置3との間の流通管路である塩水供給管路12には、塩水排出管路16が連結されている。
また、捨てた濃縮塩水を補給するために、食塩水タンク17を設けており、この食塩水タンク17で水に塩化ナトリウムを投入して攪拌装置18で攪拌して食塩水を調製する。この食塩水タンク17の食塩水を、ポンプ19によって、正浸透膜装置3と逆浸透膜装置4との間の流通管路である塩水供給管路14に補給するために、塩水供給管路14には、塩水補給管路26が連結されている。
この実施形態によれば、正浸透膜装置3において、海水に含まれる水以外の不要物質の微少量が、正浸透膜3aを透過して濃縮塩水に混入しても、必要に応じて、塩水排出管路16を介して濃縮塩水の一部を廃棄する一方、食塩水タンク17からの食塩水を、塩水補給管路26を介して補給するので、濃縮塩水に含まれる不要物質の濃度が高まるのを防止することができる。
その他の構成及び作用効果は、上述の実施形態1と同様である。
(実施形態3)
図5は、本発明の更に他の実施形態の概略構成図であり、図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
上述の実施形態2では、食塩水タンク17で食塩水を調製して、ブローダウンで捨てた濃縮塩水を補給するようにしたけれども、この実施形態では、食塩水を調製することなく、海水によって補給するようにしている。
すなわち、この実施形態では、取得した海水30を供給する海水供給管路6には、分岐管路20が連結され、この分岐供給管路20のポンプ21によって海水30が供給されるナノ濾過膜処理手段としてのナノ濾過膜(Nanofiltration Membrane)装置22を備えている。このナノ濾過膜装置22のナノ濾過膜(NF膜)を透過したスケール成分等が除去された海水を、正浸透膜装置3と逆浸透膜装置4との間の流通管路である塩水供給管路14に塩水補給管路27を介して補給し、ナノ濾過膜を透過しなかった海水は、海水排出管路23を介して海へ戻される。
この実施形態によれば、食塩水を調製する必要もなく、また、ナノ濾過膜装置22によって、カルシウムイオンCa2+や硫酸イオンSO4 2-のようなスケール成分を除去して補給するので、蒸発装置2の各蒸発缶の伝熱管の表面等に硫酸カルシウム等のスケールが析出することを確実に防止できる
なお、蒸発装置2においてスケールの析出を防止できる範囲で、ナノ濾過膜装置22を介することなく、海水を直接取り込むようにしてもよい。
その他の構成及び作用効果は、上述の実施形態1と同様である。
(実施形態4)
図6は、本発明の他の実施形態の概略構成図であり、図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
この実施形態の造水装置1は、太陽熱発電設備35の排熱を、蒸発装置2の熱源に用いると共に、太陽熱発電設備35の発電電力を、逆浸透膜装置4のポンプ13等の駆動電力として用いるものである。
太陽熱発電設備35は、集熱装置36と、集熱装置36によって加熱された溶融塩等の熱媒体が循環する循環管路37と、この循環管路37に設けられて、熱媒体の熱によって給水を加熱して蒸気を発生する蒸気発生器38と、この蒸気発生器38で発生した蒸気によって駆動される蒸気タービン39と、蒸気タービン39に連結された発電機40を備えている。
集熱装置36は、太陽熱を集熱して熱媒体を加熱するものであり、例えば、曲面鏡(集熱鏡)を用いて、鏡の前に設置されたパイプに太陽光を集中させ、パイプ内を流れる熱媒体を加熱するトラフ式の集熱装置などを使用することができる。
集熱装置36と蒸気発生器38との間の循環管路37には、循環ポンプ41が設けられると共に、蓄熱用の高温タンク42及び低温タンク43が、それぞれ連結される。高温タンク42には、昼間に太陽熱によって加熱された高温の熱媒体を貯留して蓄熱し、夜間には、貯留した熱媒体によって蒸気発生器38で蒸気を発生させ、温度が低下した熱媒体を低温タンク43に貯留する。
蒸気発生器38には、循環管路37の熱媒体が循環する一方、造水装置1の蒸発装置2からの凝縮水が、給水ポンプ44によって導入される。この蒸気発生器38では、熱媒体と凝縮水との熱交換によって、凝縮水が蒸気となる。発生した蒸気は、蒸気タービン39に導入され、蒸気タービン39が駆動される。
この実施形態では、蒸気タービン39から排出された蒸気を、造水装置1の蒸発装置2の駆動蒸気として、エジェクター45を介して供給する。このエジェクター45には、蒸発装置2の最終段の蒸発缶からの蒸気の一部が吸引される。蒸発装置2の最終段の蒸発缶からの凝縮水が、上記の給水ポンプ44によって太陽熱発電設備35の蒸発発生器38に供給される。
蒸気タービン39に連結された発電機40から発電出力は、造水装置1の駆動電力、例えば、逆浸透膜装置4のポンプ13等の駆動電力として利用される。
このように太陽熱発電設備35の蒸気タービン39で使用された蒸気を、造水装置1の蒸発装置2の熱源として利用するので、より効率的な造水が可能となる。
しかも、太陽熱発電設備35で発電した電力を、造水装置1の逆浸透膜装置4のポンプ13等の駆動電力として利用するので、一層効率的な造水が可能となる。
(その他の実施形態)
上記実施形態では、被処理溶液であるドロー溶液として、塩化ナトリウムを含む溶液を用いたけれども、これに限らず、硝酸カリウム、塩化カルシウム、あるいは、炭酸水素ナトリウムと水酸化アンモニウムの混合物やその他の溶液を用いてもよい。
上記実施形態においては、プレート型の正浸透膜3aを用いた正浸透膜装置3について説明したが、プレート型に限らず、例えば、中空糸型、スパイラル型又は管状型等種々の正浸透膜を用いた正浸透膜装置であってもよい。
上記実施形態では、正浸透膜装置3の第1室3bに予め食塩水を収容して造水装置1の駆動を開始する構成について説明したが、食塩水の代わりに所定の加熱運転温度と所定の塩分濃度でスケールが析出しないように予めスケール成分を除去した海水を供給して造水装置1の駆動を開始してもよい。
また、上記実施形態においては、蒸発装置2として多重効用型の蒸発装置について説明したが、例えば、単一の蒸発缶を備える単缶型の蒸発装置であってもよいし、あるいは、多段フラッシュ蒸発型の蒸発装置であってもよい。
上記実施形態では、太陽熱発電設備に適用して説明したけれども、発電設備は、太陽熱発電設備に限らず、太陽光発電設備、火力発電設備あるいは原子力発電設備やその他の発電設備であってもよい。
1,1a,1b 造水装置
2 蒸発装置
3 正浸透膜装置
3a 正浸透膜
3b 第1室
3c 第2室
4 逆浸透膜装置
22 ナノ濾過膜装置
35 太陽熱発電設備
39 蒸気タービン
40 発電機

Claims (9)

  1. 被処理溶液であるドロー溶液を蒸発濃縮させると共に、発生した水蒸気を凝縮させることにより濃縮ドロー溶液及び凝縮水を生成する蒸発装置と、
    正浸透膜によって仕切られる第1室及び第2室を有し、前記第1室に、前記蒸発装置からの前記濃縮ドロー溶液が供給される一方、前記第2室に、前記第1室の前記濃縮ドロー溶液よりも浸透圧の低い希釈水が供給され、前記第2室から前記正浸透膜を透過した透過水によって前記第1室の濃縮ドロー溶液を希釈する正浸透膜処理手段と、
    前記正浸透膜処理手段の前記第1室から供給される、希釈された前記濃縮ドロー溶液を、逆浸透膜によって、透過水と濃縮ドロー溶液とに分離する逆浸透膜処理手段とを備え、
    前記逆浸透膜処理手段によって分離された前記濃縮ドロー溶液を、前記被処理溶液として前記蒸発装置に還流させるものであり、
    前記希釈された前記濃縮ドロー溶液を、前記逆浸透膜処理手段に供給する供給管路には、前記逆浸透膜処理手段を介することなく、前記希釈された前記濃縮ドロー溶液を、前記蒸発装置に供給する分岐管路が連結され、
    前記分岐管路には、前記蒸発装置に供給する前記希釈された前記濃縮ドロー溶液の流量を制御する流量制御弁が設けられる、
    ことを特徴とする造水装置。
  2. 前記ドロー溶液が、塩化ナトリウムを含む溶液であり、前記希釈水が、海水である、
    請求項1に記載の造水装置。
  3. 前記ドロー溶液が、食塩水である、
    請求項1または2に記載の造水装置。
  4. 前記蒸発装置、前記正浸透膜処理手段、及び、前記逆浸透膜処理手段を流通する濃縮ドロー溶液の流通管路には、前記濃縮ドロー溶液の一部を排出する排出管路が連結される一方、前記流通管路へドロー溶液を補給する補給管路が連結される、
    請求項2または3に記載の造水装置。
  5. 前記補給管路を介して食塩水が、前記流通管路へ補給される、
    請求項に記載の造水装置。
  6. 前記補給管路を介してナノ濾過膜処理手段によって、スケール成分が除去された海水が、前記流通管路へ補給される、
    請求項に記載の造水装置。
  7. 前記蒸発装置の駆動蒸気として、発電設備で生成される蒸気を導入する、
    請求項1ないし6のいずれかに記載の造水装置。
  8. 前記発電設備が、太陽熱発電設備であって、前記蒸発装置の駆動蒸気として、太陽熱発電設備の蒸気タービンから排出される蒸気を導入する、
    請求項に記載の造水装置。
  9. 蒸発装置で被処理溶液であるドロー溶液を蒸発濃縮して濃縮ドロー溶液を生成する濃縮ドロー溶液生成ステップと、
    前記蒸発濃縮によって発生した水蒸気を凝縮することにより凝縮水を生成する凝縮水生成ステップと、
    前記蒸発装置で生成された濃縮ドロー溶液を、正浸透膜を透過した透過水によって希釈する希釈ステップと、
    希釈された濃縮ドロー溶液を、逆浸透膜によって透過水と濃縮ドロー溶液とに分離する分離ステップと、
    前記逆浸透膜によって分離された濃縮ドロー溶液を、前記蒸発装置に前記被処理溶液として還流させる還流ステップと、
    前記希釈ステップで希釈された濃縮ドロー溶液の一部を分岐させて、前記逆浸透膜を介することなく前記蒸発装置に前記被処理液として還流させる分岐ステップとを備え、
    前記分岐ステップは、分岐させる前記希釈された濃縮ドロー溶液の流量を制御する流量制御ステップを含む、
    ことを特徴とする造水方法。
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