(第1実施形態)
以下、本発明にかかる電力変換装置を非接触給電システムに適用した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、非接触給電システムは、移動体である車両の外部(地上側)に設けられた送電システムPSと、車両に設けられた受電システムPRとを備えている。
送電システムPSは、交流電源10(系統電源)から出力された交流電圧が入力されるPFC回路11、DCDCコンバータ12、インバータ13、送電側フィルタ回路14、及び送電パッド15を備えている。PFC回路11は、入力された交流電圧を直流電圧に整流しつつ、入力電圧及び入力電流の力率改善を行う。PFC回路11は、例えば、ダイオードブリッジからなる全波整流回路と、非絶縁型の昇圧チョッパ回路とを備えている。DCDCコンバータ12は、PFC回路11から出力された直流電圧を所定の直流電圧に変換して出力する。DCDCコンバータ12は、例えば、非絶縁型の降圧チョッパ回路である。
インバータ13は、電圧制御形のインバータである。詳しくは、インバータ13は、第1上アームスイッチSXp及び第1下アームスイッチSXnの直列接続体と、第2上アームスイッチSYp及び第2下アームスイッチSYnの直列接続体と、入力電圧を平滑化するコンデンサ13aとを備えるフルブリッジインバータである。第1上アームスイッチSXpには、第1上アームダイオードDXpが逆並列に接続され、第1下アームスイッチSXnには、第1下アームダイオードDXnが逆並列に接続されている。第2上アームスイッチSYpには、第2上アームダイオードDYpが逆並列に接続され、第2下アームスイッチSYnには、第2下アームダイオードDYnが逆並列に接続されている。本実施形態では、各スイッチSXp,SXn,SYp,SYnとして、電圧制御形の半導体スイッチを用いており、具体的には、IGBTを用いている。
第1上アームスイッチSXpのコレクタには、インバータ13の第1端子T1を介してDCDCコンバータ12の正極側の出力端子が接続されている。第1上アームスイッチSXpのエミッタには、第1下アームスイッチSXnのコレクタが接続されている。第1下アームスイッチSXnのエミッタには、インバータ13の第2端子T2を介してDCDCコンバータ12の負極側の出力端子が接続されている。第2上アームスイッチSYpのコレクタには、インバータ13の第1端子T1が接続され、第2上アームスイッチSYpのエミッタには、第2下アームスイッチSYnのコレクタが接続されている。第2下アームスイッチSYnのエミッタには、インバータ13の第2端子T2が接続されている。
インバータ13は、さらに、第1サブスイッチSs1、第1サブダイオードDs1、第2サブスイッチSs2、第2サブダイオードDs2、第1保護用ダイオードDp1、第2保護用ダイオードDp2、及びサブリアクトル13bを備えている。本実施形態では、各サブスイッチSs1,Ss2として、電圧制御形の半導体スイッチを用いており、具体的には、IGBTを用いている。
第1サブスイッチSs1には、第1サブダイオードDs1が逆並列に接続され、第2サブスイッチSs2には、第2サブダイオードDs2が逆並列に接続されている。第1上アームスイッチSXpと第1下アームスイッチSXnとの接続点には、第1サブスイッチSs1のエミッタが接続され、第1サブスイッチSs1のコレクタには、サブリアクトル13bの第1端が接続されている。サブリアクトル13bの第2端には、第2サブスイッチSs2のコレクタが接続され、第2サブスイッチSs2のエミッタには、第2上アームスイッチSYpと第2下アームスイッチSYnとの接続点が接続されている。第1サブスイッチSs1及び第2サブスイッチSs2は、これらがオフ操作されることにより、第1サブスイッチSs1のエミッタ側から第2サブスイッチSs2のエミッタ側へと向かう方向の電流の流通と、第2サブスイッチSs2のエミッタ側から第1サブスイッチSs1のエミッタ側へと向かう方向の電流の流通との双方を阻止する機能を有する。
第1サブスイッチSs1とサブリアクトル13bとの接続点には、第1保護用ダイオードDp1のアノードが接続され、第1保護用ダイオードDp1のカソードには、第1端子T1が接続されている。第2サブスイッチSs2とサブリアクトル13bとの接続点には、第2保護用ダイオードDp2のアノードが接続され、第2保護用ダイオードDp2のカソードには、第1端子T1が接続されている。第1端子T1には、コンデンサ13aの第1端が接続され、コンデンサ13aの第2端には、第2端子T2が接続されている。
第1上アームスイッチSXpと第1下アームスイッチSXnとの接続点には、送電側フィルタ回路14を介して送電パッド15の第1端が接続され、送電パッド15の第2端には、送電側フィルタ回路14を介して第2上アームスイッチSYpと第2下アームスイッチSYnとの接続点が接続されている。なお、本実施形態では、送電側フィルタ回路14として、バンドパスフィルタを用いている。送電側フィルタ回路14は、送電側第1,第2リアクトル14a,14bの直列接続体と、送電側第3,第4リアクトル14d,14eの直列接続体と、各直列接続体の接続点を接続する送電側コンデンサ14cとを備えている。
送電パッド15は、送電側コイル15a、第1共振コンデンサ15b、及び第2共振コンデンサ15cを備えている。送電側コイル15aの第1端には、第1共振コンデンサ15bを介して送電パッド15の第1端が接続されている。送電側コイル15aの第2端には、第2共振コンデンサ15cを介して送電パッド15の第2端が接続されている。送電パッド15は、LC直列共振回路を構成する。送電パッド15は、電磁誘導によって受電システムPRの備える受電パッド20に電力を送るための回路である。なお、本実施形態において、送電側コイル15aが「メインコイル」に相当し、各共振コンデンサ15b,15cが「送電側共振コンデンサ」に相当する。
一方、受電システムPRは、受電パッド20、受電側フィルタ回路21、及び整流回路22を備えている。受電パッド20は、受電側コイル20a、第3共振コンデンサ20b、及び第4共振コンデンサ20cを備えている。受電側コイル20aの第1端には、第3共振コンデンサ20bを介して受電パッド20の第1端が接続されている。受電側コイル20aの第2端には、第4共振コンデンサ20cを介して受電パッド20の第2端が接続されている。受電パッド20は、LC直列共振回路を構成する。なお、本実施形態において、各共振コンデンサ20b,20cが「受電側共振コンデンサ」に相当する。
受電パッド20には、受電側フィルタ回路21を介して整流回路22が接続されている。なお、本実施形態では、受電側フィルタ回路21として、バンドパスフィルタを用いている。受電側フィルタ回路21は、受電側第1,第2リアクトル21a,21bの直列接続体と、受電側第3,第4リアクトル21d,21eの直列接続体と、各直列接続体の接続点を接続する受電側コンデンサ21cとを備えている。整流回路22は、受電パッド20から出力された交流電圧を直流電圧に変換して出力する。整流回路22は、例えば、ダイオードブリッジから構成される全波整流回路や、4つのスイッチング素子(例えばMOSFET)から構成される同期整流回路を用いることができる。整流回路22から出力された直流電圧は、車載バッテリを含む車載電気負荷23に供給される。なお、本実施形態において、バッテリは、車載主機としての図示しない回転機(モータジェネレータ)の電力供給源となる。
インバータ13には、第1〜第4電流センサ17a〜17dが備えられている。第1電流センサ17aは、第1上アームスイッチSXpのコレクタ電流と、第1上アームダイオードDXpの順方向電流とを検出可能な位置に設けられている。第2電流センサ17bは、第1下アームスイッチSXnのコレクタ電流と、第1下アームダイオードDXnの順方向電流とを検出可能な位置に設けられている。第3電流センサ17cは、第2上アームスイッチSYpのコレクタ電流と、第2上アームダイオードDYpの順方向電流とを検出可能な位置に設けられている。第4電流センサ17dは、第2下アームスイッチSYnのコレクタ電流と、第2下アームダイオードDYnの順方向電流とを検出可能な位置に設けられている。
DCDCコンバータ12には、その出力電圧を検出する図示しない出力電圧センサが備えられている。本実施形態では、出力電圧センサによって検出された出力電圧をインバータ13の入力電圧VDC(第1,第2端子T1,T2の間の電位差)として用いる。なお、こうした構成に限らず、例えば、インバータ13にその入力電圧を検出する入力電圧センサを備えてもよい。
本実施形態において、送電システムPSは送電側制御装置16をさらに備えている。送電側制御装置16は、送電側コイル15a及び受電側コイル20aの間で非接触で電力授受を行う。特に本実施形態では、送電側コイル15aから受電側コイル20aへと電力を供給することにより、車両を充電対象とした充電処理を行う。送電側制御装置16は、第1〜第4電流センサ17a〜17dの検出値や、DCDCコンバータ12から出力されたインバータ13の入力電圧VDCを取り込む。送電側制御装置16は、これら検出値を用いたり、受電システムPRの備える図示しない受電側制御装置と情報のやりとりをしたりすることで、PFC回路11や、DCDCコンバータ12、インバータ13を操作する。
送電側制御装置16は、第1上アームスイッチSXp及び第2下アームスイッチSYnの組と、第1下アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpの組とを、デッドタイムを挟みつつ交互にオン操作する。これにより、極性を交互に反転させた矩形波電圧を送電パッド15に供給する。なお、送電側制御装置16は、DCDCコンバータ12の出力電圧を目標電圧に制御すべく、DCDCコンバータ12を操作する。目標電圧は、送電側と受電側とのインピーダンスマッチングを行うことで高効率の非接触給電を実現可能な値に可変設定される。具体的には例えば、目標電圧は、受電パッド20の受電電力に基づいて可変設定される。ちなみに、本実施形態において、送電側制御装置16が「メイン操作手段」及び「サブ操作手段」に相当する。
ここで、本実施形態では、第1上アームスイッチSXpに第1スナバコンデンサ18aが並列接続され、第1下アームスイッチSXnに第2スナバコンデンサ18bが並列接続されている。また、第2上アームスイッチSYpに第3スナバコンデンサ18cが並列接続され、第2下アームスイッチSYnに第4スナバコンデンサ18dが並列接続されている。各スナバコンデンサ18a〜18dの設置を可能としたのは、本実施形態にかかる特徴的構成であるサブリアクトル13b及び各サブスイッチSs1,Ss2をインバータ13に備えたためである。
また、本実施形態では、各サブスイッチSs1,Ss2の操作手法にも特徴がある。以下、サブリアクトル13b及び各サブスイッチSs1,Ss2について説明した後、各サブスイッチSs1,Ss2の操作手法について説明する。
<1.サブリアクトル13b及び各サブスイッチSs1,Ss2について>
図2(a)は、送電側コイル15aに流れる共振電流(以下、1次側電流Ip)と送電側コイル15aの印加電圧(以下、1次側電圧Vp)との推移を示し、図2(b)は、第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnの操作状態の推移を示し、図2(c)は、第1下アームスイッチSXn,第2上アームスイッチSYpの操作状態の推移を示す。なお、図2(a)において、第1上アームスイッチSXp及び第1下アームスイッチSXnの接続点から第2上アームスイッチSYp及び第2下アームスイッチSYnの接続点へと向かう方向に流れる1次側電流Ipを正と定義している。また、図2(a)において、送電側コイル15aの両端のうち、第2上アームスイッチSYp及び第2下アームスイッチSYnの接続点側の電位に対して第1上アームスイッチSXp及び第1下アームスイッチSXnの接続点側の電位が高くなる場合の1次側電圧Vpを正と定義している。さらに、図2では、デッドタイムの図示を省略している。
図示されるように、本実施形態では、各スイッチSXp,SXn,SYp,SYnのスイッチング周期Tswと1次側電流Ipの基本波電流の周期とが同一に設定されている。こうした設定において、理想的には、1次側電流Ipは、1次側電圧Vpが正の場合に正の値となり、1次側電圧Vpが負の場合に負の値となる。この場合、非接触給電システムの送電側の力率は高い水準とされる。しかしながら、非接触給電システムでは、送電パッド15の共振回路の共振周波数等が変化する。この要因としては、例えば、送電パッド15及び受電パッド20の相対位置関係の変化による各コイル15a,20a間の結合係数の変化や、送電パッド15及び受電パッド20の間の送受電電力の変化、共振回路の共振特性を決定するリアクトルやコンデンサ等の部品の初期特性ばらつき、温度変化に伴う共振特性のドリフトが挙げられる。
共振回路の共振周波数等の変化により、1次側電圧Vpに対して1次側電流Ipの位相が進む現象が生じ得る。詳しくは、この現象は、1次側電圧Vpが正となる期間を2分した場合の後の期間において1次側電流Ipが負となり、1次側電圧Vpが負となる期間を2分した場合の後の期間において1次側電流Ipが正となる現象である。
なお、上記要因により、1次側電圧Vpに対して1次側電流Ipの位相が遅れる現象が生じ得る。詳しくは、この現象は、1次側電圧Vpが正となる期間を2分した場合の前の期間において1次側電流Ipが負となり、1次側電圧Vpが負となる期間を2分した場合の前の期間において1次側電流Ipが正となる現象である。
ここで、1次側電流Ipの位相が進む現象が生じると、比較技術において各ダイオードDXp,DXn,DYp,DYnにリカバリ電流が流れることにより、リカバリ損失が生じる。ここで、比較技術とは、先の図1に示した構成から、サブリアクトル13b、各サブスイッチSs1,Ss2、各保護用ダイオードDp1,Dp2、及び各スナバコンデンサ18a〜18dを除去した構成のことである。以下、リカバリ損失の発生について、図2〜図9を用いて説明する。なお、図3〜図5及び図7〜図9では、送電側フィルタ回路14等の図示を省略している。
時刻t1〜t2のMODE1においては、図3に示すように、第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnの組がオン操作され、第1下アームスイッチSXn,第2上アームスイッチSYpの組がオフ操作されている。MODE1では、第1端子T1側から、第1上アームスイッチSXp、送電側コイル15a、及び第2下アームスイッチSYnを介して、第2端子T2側へと電流が流れる。
その後、時刻t2〜t31のMODE2においては、図4に示すように、1次側電流Ipの位相進みにより、電流は、第2端子T2側から、第2下アームダイオードDYn、送電側コイル15a、及び第1上アームダイオードDXpを介して、第1端子T1側へと流れる。ここで、MODE2の途中の時刻t3において、第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnの組がオフ操作に切り替えられ、第1下アームスイッチSXn,第2上アームスイッチSYpの組がオン操作に切り替えられる。なお、その後、各スイッチSXp,SXn,SYp,SYnが全てオフ操作されるデッドタイム期間(時刻t3〜t31)においても、図4に示す電流流通経路となる。このため、本実施形態では、このデットタイム期間もMODE2に含めている。
その後、時刻t31直後のMODE3においては、図5に示すように、第1上アームダイオードDXpのアノードの電位が第2端子T2の電位(0)となり、カソードの電位が第1端子T1の電位VDCとなる。このため、第1上アームダイオードDXpに逆電圧が印加され、第1上アームダイオードDXpにリカバリ電流が流れることとなる。すなわち、第1端子T1側から第1上アームダイオードDXp及び第1下アームスイッチSXnを介して第2端子T2側へと電流が流れることとなる。また、第2下アームダイオードDYnにも逆電圧が印加され、第2下アームダイオードDYnにリカバリ電流が流れることとなる。すなわち、第1端子T1側から第2上アームスイッチSYp及び第2下アームダイオードDYnを介して第2端子T2側へと電流が流れることとなる。リカバリ電流が流れることにより、リカバリ損失が生じる。
ここで、図6を用いて、リカバリ電流の流通態様をさらに詳しく説明する。図6(a)は、第1上アームダイオードDXpに流れる電流Idxpの推移を示し、図6(b)は、第1下アームスイッチSXnに流れる電流Isxnの推移を示し、図6(c)は、第1下アームスイッチSXnのエミッタ電位に対する第1上,下アームスイッチSXp,SXnの接続点の電位(以下、第1中間電圧Vx)の推移を示す。図6(d)は、第1上アームスイッチSXpの操作状態の推移を示し、図6(e)は、第1下アームスイッチSXnの操作状態の推移を示す。なお、図6では、第1上アームダイオードDXpに流れる順方向の電流Idxpを負と定義し、第1下アームスイッチSXnのエミッタ電位に対して第1上,下アームスイッチSXp,SXnの接続点の電位が高い場合の第1中間電圧Vxを正と定義する。
図示されるように、1次側電流Ipの位相進みにより、第1上アームダイオードDXpに順方向電流が流れている。こうした状況下、時刻t3において、第1上アームスイッチSXpがオフ操作に切り替えられ、時刻t3からデッドタイムが経過した時刻t31において、第1下アームスイッチSXnがオン操作に切り替えられる。これにより、第1上アームダイオードDXpの順方向電流Idxpが徐々に減少するとともに、第1下アームスイッチSXnに流れるコレクタ電流Isxnが徐々に増加する。その後、時刻t32において第1上アームダイオードDXpにリカバリ電流が流れ始める。時刻t33において、リカバリ電流がピークとなることで、第1下アームスイッチSXnに流れるコレクタ電流Isxnもピークとなる。その結果、リカバリ損失が増大する。なお、その後時刻t34において、リカバリ電流の流通が停止されることで、第1中間電圧Vxが0とされる。
時刻t34〜t4のMODE4においては、図7に示すように、第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnの組がオフ操作され、第1下アームスイッチSXn,第2上アームスイッチSYpの組がオン操作されている。MODE4では、第1端子T1側から、第2上アームスイッチSYp、送電側コイル15a、及び第1下アームスイッチSXnを介して、第2端子T2側へと電流が流れる。
その後、時刻t4〜t51のMODE5においては、図8に示すように、1次側電流Ipの位相進みにより、電流は、第2端子T2側から、第1下アームダイオードDXn、送電側コイル15a、及び第2上アームダイオードDYpを介して、第1端子T1側へと流れる。ここで、MODE5の途中の時刻t5において、第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnの組がオン操作に切り替えられ、第1下アームスイッチSXn,第2上アームスイッチSYpの組がオフ操作に切り替えられる。なお、その後、各スイッチSXp,SXn,SYp,SYnが全てオフ操作されるデッドタイム期間(時刻t5〜t51)においても、図8に示す電流流通経路となる。このため、本実施形態では、このデットタイム期間もMODE5に含めている。
その後、時刻t51直後のMODE6においては、図9に示すように、第2上アームダイオードDYp及び第1下アームダイオードDXnに逆電圧が印加され、第2上アームダイオードDYp及び第1下アームダイオードDXnにリカバリ電流が流れることとなる。このため、リカバリ損失が生じる。
ここで、1次側電流Ipの位相進みが生じる場合に各スイッチSXp〜SYnに各スナバコンデンサ18a〜18dを並列接続すると、各スイッチSXp〜SYnに大きな電流が流れ、各スイッチSXp〜SYnの信頼性が低下し得る。以下、第1上アームスイッチSXpを例にして説明する。各スナバコンデンサ18a〜18dが各スイッチSXp〜SYnに並列接続されている場合、先の図8のMODE5において、第2端子T2側から第1下アームダイオードDXnを介して流れてくる電流によって第1スナバコンデンサ18aが充電される。その後、MODE5から図9に示すMODE6に移行すると、第1スナバコンデンサ18aに蓄積された電荷が放電される。第1下アームダイオードDXnのリカバリ電流に加えて、第1スナバコンデンサ18aの放電電流が第1上アームスイッチSXpに流れることに起因して、第1上アームスイッチSXpの信頼性が低下し得る。このように、1次側電流Ipの位相進みが生じる場合、各スナバコンデンサ18a〜18dを設置することにより、設置しない場合と比較して各スイッチSXp〜SYnに大きな電流が流れる。このため、各スナバコンデンサ18a〜18dを設置できない。しかしながら、各スナバコンデンサ18a〜18dは、1次側電流Ipの位相遅れが生じる場合には、各スイッチSXp〜SYnのターンオフ損失の低減に寄与する。このため、1次側電流Ipの位相遅れを考えると、各スナバコンデンサ18a〜18dの設置が望まれる。
そこで、本実施形態では、サブリアクトル13bと、送電側制御装置16によって操作される各サブスイッチSs1,Ss2とをインバータ13に備えた。以下、これについて、図10〜図12を用いて説明する。
図10(a)は、第1上アームダイオードDXpに流れる電流Idxp,第2下アームダイオードDYnに流れる電流Idynの推移を示し、図10(b)は、第1下アームスイッチSXnに流れる電流Isxn,第2上アームスイッチSYpに流れる電流Isypの推移を示す。図10(c)は、サブリアクトル13bに流れる電流ICLの推移を示す。図10(e),(f)は、各スイッチSXp〜SYnの操作状態の推移を示し、図10(g)は、第1,第2サブスイッチSs1,Ss2の操作状態の推移を示す。なお、図10(d)は、先の図6(c)に対応している。また、図10において、第1上アームスイッチSXp及び第1下アームスイッチSXnの接続点から第2上アームスイッチSYp及び第2下アームスイッチSYnの接続点へと向かう方向に流れる電流ICLを正と定義する。
MODE2の期間のうち第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnのオフ操作切替タイミングよりも前の時刻taにおいて、第1,第2サブスイッチSs1,Ss2をオン操作する。これにより、第1上アームダイオードDXp及び第2下アームダイオードDYnに流れていた順方向電流の一部がサブリアクトル13bに流れ始める(図11参照)。このため、上記順方向電流は徐々に減少し、サブリアクトル13bに流れる電流ICLは徐々に増加する。これにより、その後、第1上アームスイッチSXp及び第2下アームスイッチSYnをオフ操作に切り替える時刻t3におけるリカバリ電流を低減することができる。その後、時刻tbにおいて第1中間電圧Vxが0になり、時刻t31において、第1下アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpがオン操作に切り替えられる。なお、その後、時刻tcにおいて第1,第2サブスイッチSs1,Ss2がオフ操作に切り替えられ、時刻tdにおいてサブリアクトル13bに流れる電流が0となる。
その後、MODE5の期間のうち第1下アームスイッチSXn,第2上アームスイッチSYpのオフ操作切替タイミングよりも前のタイミングにおいて、第1,第2サブスイッチSs1,Ss2をオン操作する。これにより、第1下アームダイオードDXn及び第2上アームダイオードDYpに流れていた順方向電流の一部がサブリアクトル13bに流れ始める(図12参照)。このため、上記順方向電流は徐々に減少し、サブリアクトル13bに流れる電流ICLは徐々に増加する。これにより、その後、第1下アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpをオフ操作に切り替えるタイミングにおけるリカバリ電流を低減することができる。その後、第1上アームスイッチSXp及び第2下アームスイッチSYnがオン操作に切り替えられた後、第1,第2サブスイッチSs1,Ss2がオフ操作に切り替えられる。
このように、各サブスイッチSs1,Ss2は、オン操作されることにより、ダイオードに流れる順方向電流をサブリアクトル13bに流して上記順方向電流を減少させた後、第1上,下アームスイッチSXp,SXn及び第2上,下アームスイッチSYp,SYnのうち、上記順方向電流を減少させたダイオードに逆並列に接続されたスイッチに流れる電流を増加可能なように設けられている。こうしたサブリアクトル13b及び各サブスイッチSs1,Ss2の設置により、リカバリ電流を低減することができる。また、上述したように、例えば、MODE5からMODE6に移行する状況下において、第1スナバコンデンサ18aに蓄積された電荷の放電を回避でき、第1上アームスイッチSXpに第1スナバコンデンサ18aの放電電流が流れることを回避できる。このため、各スナバコンデンサ18a〜18dを設置することができる。
<2.各サブスイッチSs1,Ss2の操作手法について>
本実施形態では、各サブスイッチSs1,Ss2のオン操作開始タイミングを可変設定する。これは、インバータ13の出力電圧に含まれる高周波成分を低減するためである。非接触給電システムのインバータ13においては、スイッチング損失低減のため、電圧や電流の変化速度を高めて損失の低減を図ることが要求される。しかしながら、変化速度を高めることは、インバータ13から出力される矩形波電圧の立ち上がりや立ち下がりの傾きを急峻にすることにつながる。その結果、インバータ13の出力電圧に高周波成分が含まれることとなる。高周波成分が含まれた出力電圧は、送電側フィルタ回路14に印加される。ここで、本実施形態では、上記高周波成分の周波数帯域が、共振回路である送電パッド15や送電側フィルタ回路14の通過帯域となる。これは、共振回路や送電側フィルタ回路14を構成するリアクトルの巻線間の寄生容量が上記高周波成分の周波数帯域において増加することにより、上記高周波成分の周波数帯域における共振回路や送電側フィルタ回路14のインピーダンスが過度に低くなるためである。
このため、インバータ13の出力電圧に含まれる高周波成分を除去しきれず、EMCに悪影響を及ぼす懸念がある。こうした問題に対処するには、例えば、上記高周波成分を除去可能な高周波フィルタを別途追加することも考えられる。ただし、この場合、高周波フィルタにおける損失が増加したり、システムの体格が増加したりする。
そこで、本実施形態では、第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnの組がオフ操作に切り替えられた後の第1中間電圧Vxの低下速度と、第2下アームスイッチSYnのエミッタ電位に対する第2上,下アームスイッチSYp,SYnの接続点の電位(以下、第2中間電圧Vy)の上昇速度とを、上記高周波成分の周波数帯域が共振回路や送電側フィルタ回路14の阻止帯域に含まれるような速度に調整する。また、第1下アームスイッチSXn,第2上アームスイッチSYpの組がオフ操作に切り替えられた後の第1中間電圧Vxの上昇速度及び第2中間電圧Vyの低下速度を、上記高周波成分の周波数帯域が共振回路や送電側フィルタ回路14の阻止帯域に含まれるような速度に調整する。こうした調整により、上記高周波成分がEMCに及ぼす影響を抑制し、高周波フィルタを不要とする。これにより、高周波フィルタにおける損失低減による発熱量の低減、システムの体格の低減、及び共振回路や送電側フィルタ回路14の周波数特性の設計の容易化を実現する。
なお、本実施形態では、第2下アームスイッチSYnのエミッタ電位に対して第2上,下アームスイッチSYp,SYnの接続点の電位が高い場合の第2中間電圧Vyを正と定義する。また、第1上アームスイッチSXp及び第2下アームスイッチSYnの組がオン操作されてかつ第1下アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpの組がオフ操作されている場合の各サブスイッチSs1,Ss2のオン操作切替タイミングを第1オン操作切替タイミングと称すこととする。さらに、第1上アームスイッチSXp及び第2下アームスイッチSYnの組がオフ操作されてかつ第1下アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpの組がオン操作されている場合の各サブスイッチSs1,Ss2のオン操作切替タイミングを第2オン操作切替タイミングと称すこととする。
まず、図13を用いて、第1オン操作切替タイミングについて説明する。ここで、図13(a)は第1,第4電流センサ17a,17dによって検出可能な電流の推移を示し、図13(b)は第2,第3電流センサ17b,17cによって検出可能な電流の推移を示し、図13(c)〜図13(g)は、先の図10(c)〜(g)に対応している。
図13の実線で示された波形に着目して説明する。第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnの組がオン操作されてかつ第1下アームスイッチSXn,第2上アームスイッチSYpの組がオフ操作されている状況下、時刻t1b以前において、電流の位相進みによって第1上アームダイオードDXp,第2下アームダイオードDYnに順方向電流Idxp,Idynが流れている。その後、時刻t1bにおいて、第1,第2サブスイッチSs1,Ss2がオン操作に切り替えられる。これにより、サブリアクトル13bに流れる電流ICLが徐々に増加するとともに、第1上アームダイオードDXp,第2下アームダイオードDYnに流れる順方向電流Idxp,Idynが徐々に減少する。順方向電流Idxp,Idynが減少して0になった後、第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnに流れる電流Isxp,Isynが徐々に増加する。
その後、時刻t2において、第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnの組がオフ操作に切り替えられる。このため、第1端子T1側から流れてくる電流によって第1,第4スナバコンデンサ18a,18dが充電される。これにより、第1,第4スナバコンデンサ18a,18dの端子間電圧は徐々に上昇する。この際、第1スナバコンデンサ18aの端子間電圧が上昇するに連れて、図13(d)に示すように、第1中間電圧Vxは低下して0に近づく。また、第4スナバコンデンサ18dの端子間電圧が上昇するに連れて、第2中間電圧Vyは上昇して入力電圧VDCに近づく。第1中間電圧Vxが0となるタイミング以降のタイミングを第1下アームスイッチSXnのオン操作切替タイミングになるように調整し、第2中間電圧Vyが入力電圧VDCとなるタイミング以降のタイミングを第2上アームスイッチSYpのオン操作切替タイミングになるように調整する。これにより、これらスイッチSXn,SYpのオン操作への切替をゼロ電圧スイッチング(ZVS)とすることができる。ここで、図13では、ZVSのための理想的なオン操作切替タイミングを時刻t3bにて示した。
ここで、時刻t2の後、第1中間電圧Vxの低下速度及び第2中間電圧Vyの上昇速度は、第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnがオフ操作に切り替えられた後の第1,第4スナバコンデンサ18a,18dの充電電流Ioffが大きいほど高くなる。図13(a),(c),(d),(f)には、充電電流Ioffが理想的な値よりも大きい場合の各波形の推移を一点鎖線にて示し、充電電流Ioffが理想的な値よりも小さい場合の各波形の推移を破線にて示した。図13(f)には、各サブスイッチSs1,Ss2の理想的なオン操作切替タイミングと第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnのオフ操作切替タイミング(時刻t2)との理想的な時間差を「Tonb」にて示した。そして、理想的なオフ操作切替タイミングに設定した場合において、時刻t2から第1中間電圧Vxが0となるまでの理想時間を「Tswb」にて示した。なお、理想時間Tswbは、例えば、サブリアクトル13bのインダクタンス及び各スナバコンデンサ18a〜18dの静電容量によって定まる共振回路の共振周期の「1/4」である。
第1中間電圧Vxを例にして説明すると、各サブスイッチSs1,Ss2のオン操作切替タイミング(時刻t1a)と時刻t2との時間差Tonaが理想的な時間差Tonbよりも長い場合、第1スナバコンデンサ18aの充電電流が理想的な充電電流よりも大きくなる。その結果、時刻t2から第1中間電圧Vxが0になるタイミング(時刻t3a)までの時間Tswaが、理想的な時間Tswbよりも短くなる。一方、各サブスイッチSs1,Ss2のオン操作切替タイミング(時刻t1c)と時刻t2との時間差Toncが理想的な時間差Tonbよりも短い場合、第1スナバコンデンサ18aの充電電流が理想的な充電電流よりも小さくなる。その結果、時刻t2から第1中間電圧Vxが0になるタイミング(時刻t3c)までの時間Tswcが、理想的な時間Tswbよりも長くなる。これは、以下に説明する理由による。
サブリアクトル13bのインダクタンス及び第1,第2スナバコンデンサ18a,18bの静電容量によって定まる共振回路において、ソフトスイッチングに必要な最小限の電流Iminは、下式(eq1)で表される。
上式(eq1)では、サブリアクトル13bのインダクタンスを「Ls」とし、第1,第2スナバコンデンサ18a,18bのそれぞれの静電容量を「Csnb/2」とした。上式(eq1)は、最小限の電流Iminが流れるサブリアクトル13bに蓄積されているエネルギ「1/2×Ls×Imin×Imin」が、第1,第2スナバコンデンサ18a,18bの静電容量「Csnb」を充電するために必要なエネルギ「1/2×Csnb×VDC×VDC」になるとの関係から導かれる。第1スナバコンデンサ18aの充電電流Isnbが最小限電流Iminよりも十分大きい場合、先の図13の時刻t2から第1中間電圧Vxが0となるまでの時間T0は、下式(eq2)で表される。
上式(eq2)は、コンデンサの静電容量C、端子間電圧V及び蓄積電荷Qの関係「Q=CV」から導かれるものである。上式(eq2)は、スナバコンデンサの充電電流Isnbが大きいほど、上記時間T0が短くなる(すなわち、第1中間電圧Vxの低下速度が高くなる)ことを示している。このため、充電電流Isnbを最適値に調整することにより、低下速度を適切な速度とすることができる。ここで、充電電流Isnbは、各サブスイッチSs1,Ss2のオン操作時間が長いほど大きくなる。また、第1上アームスイッチSXp及び第2下アームスイッチSYnがオン操作されている期間における第1上アームダイオードDXp及び第2下アームダイオードDYnの順方向電流が大きいほど、各スイッチSXp,SYnのオフ操作切替タイミングに対して、第1オン操作切替タイミングを早めることが要求される。上記順方向電流は、電流位相の進み度合いや、1次側電流Ipの振幅が変化することで変化する。
続いて、第2オン操作切替タイミングについて説明する。この切替タイミングも、第1操作切替タイミングの設定手法と同様の手法によって設定できる。詳しくは、第1下アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpがオン操作されている期間における第1下アームダイオードDXn及び第2上アームダイオードDYpの順方向電流が大きいほど、各スイッチSXn,SYpのオフ操作切替タイミングに対して、第2オン操作切替タイミングを早めることが要求される。
図14及び図15を用いて、電流位相の進み度合いや1次側電流Ipの振幅に応じて、上記順方向電流が変化することを説明する。なお、図14及び図15において、(a)は1次側電流Ip,1次側電圧Vpの推移を示し、(b)は第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnの操作状態の推移を示し、(c)は第1下アームスイッチSXn,第2上アームスイッチSYpの操作状態の推移を示す。
図14に示すように、第1下アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpをオフ操作に切り替える時刻t1における1次側電流Ipは、電流位相の進み度合いが大きいほど大きくなる。1次側電流Ipが大きくなると、第1下アームダイオードDXn及び第2上アームダイオードDYpに流れる順方向電流も大きくなる。この場合、第2,第3スナバコンデンサ18b,18cの充電電流を、第1中間電圧Vxの上昇速度及び第2中間電圧Vyの低下速度を適切な速度とする最適値に調整するために、第2オン操作切替タイミングを早めることが要求される。一方、第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnをオフ操作に切り替える時刻t2における1次側電流Ipも、電流位相の進み度合いが大きいほど大きくなる。このため、第1,第4スナバコンデンサ18a,18dの充電電流を、第1中間電圧Vxの低下速度及び第2中間電圧Vyの上昇速度を適切な速度とする最適値に調整するために、第1オン操作切替タイミングを早めることが要求される。
また、図15に示すように、第1下アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpをオフ操作に切り替える時刻t1における1次側電流Ipは、1次側電流Ipの振幅が大きいほど大きくなる。その結果、第1下アームダイオードDXn及び第2上アームダイオードDYpに流れる順方向電流が大きくなる。一方、第1上アームスイッチSXp及び第2下アームスイッチSYnをオフ操作に切り替える時刻t2における1次側電流Ipも、1次側電流Ipの振幅が大きいほど大きくなる。
図16を用いて、第1オン操作切替タイミングの設定処理を含むインバータ13の操作処理について説明する。なお、図16に示す処理は、送電側制御装置16によって例えば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS10において、第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnがオン操作されて、かつ第1下アームスイッチSXn,第2上アームスイッチSYpがオフ操作されているか否かを判断する。
ステップS10において肯定判断した場合には、ステップS11に進み、第1の電流検出タイミングであるか否かを判断する。本実施形態において、第1の電流検出タイミングは、第1上アームスイッチSXp及び第2下アームスイッチSYnがオフ操作に切り替えられる第1基準タイミングから、第1,第3スナバコンデンサ18a,18cの充電電流を最適値に調整するために要求される第1,第2サブスイッチSs1,Ss2のオン操作時間の最大値よりも長い時間遡ったタイミングに設定されている。ステップS11において肯定判断した場合には、ステップS12に進み、第1電流センサ17a又は第4電流センサ17dにより、第1上アームダイオードDXp又は第2下アームダイオードDYnに流れる順方向電流を検出する。以下、第1電流センサ17a又は第4電流センサ17dによって検出された電流を第1電流値I1と称すこととする。
続くステップS13では、第1電流値I1の絶対値と、インバータ13の入力電圧VDCとに基づき、第1規定時間ΔTr1を可変設定する。第1規定時間ΔTr1は、第1オン操作切替タイミングを定めるものである。詳しくは、上記第1基準タイミングから第1規定時間ΔTr1遡ったタイミングを第1オン操作切替タイミングとする。本実施形態では、第1電流値I1の絶対値が大きかったり、入力電圧VDCが高かったりするほど、第1規定時間ΔTr1を長く設定する。ここで、入力電圧VDCが高いほど第1規定時間ΔTr1を長く設定するのは、以下の理由による。上式(eq2)において、入力電圧VDCが高いほど時間T0が長くなる。この時間T0が長くなると、第1中間電圧Vxが0になったり、第2中間電圧Vyが入力電圧VDCになったりするタイミングが、第1上アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpのオン操作切替タイミングを超えることとなる。その結果、各スイッチSXn,SYpのオン操作への切替をZVSとすることができなくなる懸念がある。こうした問題に対処すべく、第1規定時間ΔTr1の設定に入力電圧VDCを用いる。なお、本実施形態において、本ステップの処理が「第1設定手段」に相当する。
続くステップS14では、第1規定時間ΔTr1に基づき、第1オン操作切替タイミングであるか否かを判断する。ステップS14において肯定判断した場合には、ステップS15に進み、第1,第2サブスイッチSs1,Ss2をオン操作に切り替える。
続くステップS16では、第1上アームスイッチSXp及び第2下アームスイッチSYnのオフ操作切替タイミングであるか否かを判断する。ステップS16において肯定判断した場合には、ステップS17に進み、各スイッチSXp,スイッチSYnをオフ操作に切り替える。続くステップS18では、第1上アームスイッチSXp及び第2下アームスイッチSYnのオフ操作への切替からデッドタイムを挟んで第1下アームスイッチSXn,第2上アームスイッチSYpのオン操作切替タイミングであるか否かを判断する。ステップS18において肯定判断した場合には、ステップS19に進み、各スイッチSXn,SYpをオン操作に切り替える。
続くステップS20では、第1,第2サブスイッチSs1,Ss2のオフ操作切替タイミングであるか否かを判断する。ステップS20において肯定判断した場合には、ステップS21に進み、各サブスイッチSs1,Ss2をオフ操作に切り替える。なお、上記ステップS10において否定判断した場合や、ステップS21の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
図17を用いて、第2オン操作切替タイミングの設定処理を含むインバータ13の操作処理について説明する。図17に示す処理は、送電側制御装置16によって例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図17において、先の図16に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
この一連の処理では、まずステップS30において、第1下アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpがオン操作されて、かつ第1上アームスイッチSXp及び第2下アームスイッチSYnがオフ操作されているか否かを判断する。
ステップS30において肯定判断した場合には、ステップS31に進み、第2の電流検出タイミングであるか否かを判断する。本実施形態において、第2の電流検出タイミングは、第1下アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpがオフ操作に切り替えられる第2基準タイミングから、第2,第4スナバコンデンサ18b,18dの充電電流を最適値に調整するために要求される第1,第2サブスイッチSs1,Ss2のオン操作時間の最大値よりも長い時間遡ったタイミングに設定されている。ステップS31において肯定判断した場合には、ステップS32に進み、第2電流センサ17b又は第3電流センサ17cにより、第1下アームダイオードDXn又は第2上アームダイオードDYpに流れる順方向電流を検出する。以下、第2電流センサ17b又は第3電流センサ17cによって検出された電流を第2電流値I2と称すこととする。
続くステップS33では、第2電流値I2の絶対値と入力電圧VDCとに基づき、第2規定時間ΔTr2を可変設定する。第2規定時間ΔTr2は、第2オン操作切替タイミングを定めるものである。詳しくは、上記第2基準タイミングから第2規定時間ΔTr2遡ったタイミングを第2オン操作切替タイミングとする。本実施形態では、第2電流値I2の絶対値が大きかったり、入力電圧VDCが高かったりするほど、第2規定時間ΔTr2を長く設定する。なお、本実施形態において、本ステップの処理が「第2設定手段」に相当する。
続くステップS14、S15の後、ステップS34では、第1下アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpのオフ操作切替タイミングであるか否かを判断する。ステップS34において肯定判断した場合には、ステップS35に進み、各スイッチSXn,SYpをオフ操作に切り替える。続くステップS36では、第1下アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpのオフ操作への切替からデッドタイムを挟んで第1上アームスイッチSXp及び第2下アームスイッチSYnのオン操作切替タイミングであるか否かを判断する。ステップS36において肯定判断した場合には、ステップS37に進み、各スイッチSXp,SYnをオン操作に切り替える。その後、ステップS20に進む。なお、上記ステップS10において否定判断した場合や、ステップS21の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)第1上アームスイッチSXp及び第2下アームスイッチSYnの組がオン操作される期間のダイオードDXp,DYnに流れる順方向電流の検出値が大きかったり、インバータ13の入力電圧VDCが高かったりするほど、これらスイッチSXp,SYnの組のオフ操作切替タイミングに対して第1オン操作切替タイミングを早めた。また、第1下アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpの組がオン操作される期間のダイオードDXn,DYpに流れる順方向電流の検出値が大きかったり、入力電圧VDCが高かったりするほど、各スイッチSXn,SYpの組のオフ操作切替タイミングに対して第2オン操作切替タイミングを早めた。これにより、第1,第2中間電圧Vx,Vyの変化速度を適切な速度とすることができ、ひいてはインバータ13の出力電圧に含まれる高周波成分を好適に低減することができる。
(2)第1保護用ダイオードDp1及び第2保護用ダイオードDp2をインバータ13に備えた。サブリアクトル13bに電流が流れている状態で、第1サブスイッチSs1が誤作動によってオフ操作されると、第1サブスイッチSs1の両端にサージ電圧が印加され、第1サブスイッチSs1の信頼性が低下する懸念がある。ここで、第1保護用ダイオードDp1を設けることにより、第1サブスイッチSs1とサブリアクトル13bとの接続点の電位を第1端子T1の電位で制限できる。このため、第1サブスイッチの両端の電位差をインバータ13の入力電圧VDC以下におさめることができ、第1サブスイッチSs1の信頼性の低下を回避することができる。なお、第2保護用ダイオードDp2は、第2サブスイッチSs2の信頼性の低下を回避するためのものである。第2保護用ダイオードDp2の動作原理は、第1保護用ダイオードDp1の動作原理と同じである。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図18に示すように、電流センサの設置位置を変更する。なお、図18において、先の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付している。
図示されるように、インバータ13は、第1〜第4電流センサ17a〜17dに代えて、第5電流センサ19aと、第6電流センサ19bとを備えている。第5電流センサ19aは、サブリアクトル13b,各サブスイッチSs1,Ss2に流れる電流を検出可能な位置に設けられている。第6電流センサ19bは、インバータ13の出力電流(1次側電流Ip)を検出可能な位置に設けられている。
ここで、本実施形態では、第1,第2オン操作切替タイミングの設定に用いる第1,第2電流値I1,I2を、第6電流センサ19bの検出値から第5電流センサ19aの検出値を減算することで算出する。以上説明した本実施形態によれば、第1,第2オン操作切替タイミングを定めるための電流センサの数を削減することができる。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図19に示すように、インバータ13に備えられるサブスイッチ及びサブリアクトルの接続手法を変更する。なお、図19において、先の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付している。
図示されるように、インバータ13は、第1サブスイッチSsα、第1サブダイオードDsα、第2サブスイッチSsβ、第2サブダイオードDsβ、第1保護用ダイオードDpα、第2保護用ダイオードDpβ、及びサブリアクトル13cを備えている。本実施形態では、各サブスイッチSsα,Ssβとして、電圧制御形の半導体スイッチを用いており、具体的には、IGBTを用いている。
第1サブスイッチSsαには、第1サブダイオードDsαが逆並列に接続され、第2サブスイッチSsβには、第2サブダイオードDsβが逆並列に接続されている。第1上アームスイッチSXpと第1下アームスイッチSXnとの接続点には、第1サブスイッチSsαのコレクタが接続され、第1サブスイッチSsαのエミッタには、第2サブスイッチSsβのエミッタが接続されている。第2サブスイッチSsβのコレクタには、サブリアクトル13cの第1端が接続されている。サブリアクトル13bの第2端には、第2上アームスイッチSYpと第2下アームスイッチSYnとの接続点が接続されている。なお、各サブスイッチSsα、Ssβは、オフ操作されている場合、各サブスイッチSsα,Ssβの直列接続体の一対の端子(コレクタ)のうち一方から他方への電流の流通を阻止する機能を有する。
第2サブスイッチSsβとサブリアクトル13cとの接続点には、第1保護用ダイオードDpαのカソードと、第2保護用ダイオードDpβのアノードとが接続されている。第1保護用ダイオードDpαのアノードには、第2端子T2が接続され、第2保護用ダイオードDpβのカソードには、第1端子T1が接続されている。第1保護用ダイオードDpαは、第1サブスイッチSsαを保護するために設けられ、第2保護用ダイオードDpβは、第2サブスイッチSsβを保護するために設けられている。詳しくは、第1上アームスイッチSXp側から第2下アームスイッチSYn側へとサブリアクトル13cに電流が流れている状態で、各サブスイッチSsα,Ssβが誤作動によってオフ操作されると、第1サブスイッチSsαの両端にサージ電圧が印加される。第1保護用ダイオードDpαは、このサージ電圧から第1サブスイッチSsαを保護する。一方、第2下アームスイッチSYn側から第1上アームスイッチSXp側へとサブリアクトル13cに電流が流れている状態で、各サブスイッチSsα,Ssβが誤作動によってオフ操作されると、第2サブスイッチSsβの両端にサージ電圧が印加される。第2保護用ダイオードDpβは、このサージ電圧から第2サブスイッチSsβを保護する。
以上説明した本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果を得られる。
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図20に示すように、インバータの回路構成を変更する。なお、図20において、先の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付している。
図示されるように、インバータ13は、第1〜第4サブスイッチSsa〜Ssdと、第1,第2サブリアクトル13d,13eとを備えている。本実施形態では、各サブスイッチSsa〜Ssdとして、フリーホイールダイオードが逆並列に接続された電圧制御形の半導体スイッチを用いており、具体的には、IGBTを用いている。各サブスイッチSsa〜Ssdは、送電側制御装置16によって操作される。
第2サブスイッチSsbのエミッタには、第1サブスイッチSsaのコレクタが接続されている。第2サブスイッチSsbのコレクタには、第1上アームスイッチSXpのコレクタが接続され、第1サブスイッチSsaのエミッタには、第1下アームスイッチSXnのエミッタが接続されている。第1サブスイッチSsaと第2サブスイッチSsbとの接続点には、第1サブリアクトル13dを介して、第1上アームスイッチSXp及び第1下アームスイッチSXnの接続点が接続されている。
第4サブスイッチSsdのエミッタには、第3サブスイッチSscのコレクタが接続されている。第4サブスイッチSsdのコレクタには、第2上アームスイッチSYpのコレクタが接続され、第3サブスイッチSscのエミッタには、第2下アームスイッチSYnのエミッタが接続されている。第3サブスイッチSscと第4サブスイッチSsdとの接続点には、第2サブリアクトル13eを介して、第2上アームスイッチSYp及び第2下アームスイッチSYnの接続点が接続されている。
続いて、本実施形態にかかる各サブスイッチSsa〜Ssdの操作手法について説明する。本実施形態では、先の図16のステップS14、S15、S20、S21において操作対象とするサブスイッチを、第1,第3サブスイッチSsa,Sscのみとする。一方、先の図17のステップS14、S15、S20、S21において操作対象とするサブスイッチを、第2,第4サブスイッチSsb,Ssdのみとする。
以上説明した本実施形態によれば、上記第1実施形態の効果に準じた効果を得ることはできる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・送電側フィルタ回路14、送電パッド15、受電パッド20及び受電側フィルタ回路21を図21のように変更してもよい。詳しくは、送電側コイル15aには、第5共振コンデンサ15dが並列接続されている。すなわち、送電側コイル15aと第5共振コンデンサ15dとによってLC並列共振回路が構成されている。送電側フィルタ回路14は、送電側第1コンデンサ14f及び送電側第5リアクトル14gの直列接続体と、送電側第2コンデンサ14h及び送電側第6リアクトル14iの直列接続体とを備えている。受電側コイル20aには、第6共振コンデンサ20dが並列接続されている。受電側フィルタ回路21は、受電側第1コンデンサ21f及び受電側第5リアクトル21gの直列接続体と、受電側第2コンデンサ21h及び受電側第6リアクトル21iの直列接続体とを備えている。なお、図21において、先の図1に示した部材と同一の部材には、同一の符号を付している。
・先の図1や図19に示した構成において、各保護用ダイオードDp1,Dp2を除去してもよい。
・上記実施形態において、DCDCコンバータ12を除去してもよい。
・上記実施形態において、各スイッチSXp,SXn,SYp,SYnのスイッチング周期Tswを1次側電流Ipの基本波電流の周期よりも短く設定してもよい。
・インバータ13を構成するスイッチとしては、IGBTに限らず、例えばMOSFETであってもよい。この場合、各スイッチに逆並列に接続されるフリーホイールダイオードとしては、外付けのダイオードに限らず、MOSFETのボディダイオードであってもよい。
・上記第1実施形態の図16のステップS11、S13に関して、第1基準タイミングを、第1上アームスイッチSXp及び第2下アームスイッチSYnのオフ操作切替タイミングよりも後の第1下アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpのオン操作切替タイミングとしてもよい。また、上記第1実施形態の図17のステップS31、S33に関して、第2基準タイミングを、第1上アームスイッチSXp,第2下アームスイッチSYnのオン操作切替タイミングとしてもよい。
・第1,第2中間電圧Vx,Vyの変化速度を適切な速度とすることは、インバータ13の負荷電流の位相が進んだ場合に限らない。スナバコンデンサの値を、電流の位相が最大に遅れた場合(例えば、ターンオフスイッチング電流が最大となりスナバコンデンサが最も早く充電される場合)などにインバータ13から出力される矩形波電圧の電圧変化率(傾き)が適切な電圧変化率になる値に設計しておく。こうした構成において、設計時よりも電流の位相遅れが少ない場合や、さらに遅れが減少して電流の位相が進んだ場合にサブスイッチのオン操作時間を長く制御するようにする。これにより、電流の位相遅れ領域から電流の位相進み領域までの全領域で電圧変化率を好適に制御することができる。
・上記各実施形態において、各スイッチSXp〜SYnに並列接続されるコンデンサとしては、各スイッチSXp〜SYnの端子間(具体的には、コレクタ及びエミッタ間)の寄生容量(寄生コンデンサ)や、各スイッチに逆並列に接続されたダイオードDXp〜DYnの端子間(具体的には、アノード及びカソード間)の寄生容量であってもよい。
・インバータの出力電圧が印加されるコイルとしては、非接触給電システムを構成する送電側コイルに限らない。例えば、高周波誘導加熱装置を構成するコイルや、電磁調理器を構成するコイルであってもよい。この場合であっても、コイルに流れる電流の位相が進む現象が生じるなら、リカバリ損失を低減できる本発明の適用が有効である。