図1は、インクジェットプリンタ(以下、プリンタと略記する)1の概略的な構成を示すブロック図である。プリンタ1は、印刷部2、通信部3a、画像メモリ3b、操作部4、表示部5、温度検出部6、及び電源システム100等を備えている。電源システム100は、電源部10と制御装置50とから構成される。電源部10は交流電源AC(図2参照)から、印刷部2、通信部3a、画像メモリ3b、操作部4、表示部5、温度検出部6、及び制御装置50等の各部に供給される電源電圧を生成する。尚、印刷部2の動作電圧は主に31Vであり、通信部3a、画像メモリ3b、及び制御装置50の動作電圧は主に3.3Vである。また、制御装置50には、印刷部2、通信部3a、画像メモリ3b、操作部4、表示部5、及び温度検出部6等が接続される。
印刷部2は、複数色に対応した複数のインクカートリッジ2a、インクカートリッジ2aのインクを噴射するノズル群を有するインクヘッド2b、及びインクヘッド2bを移動させる移動部2c等を含む。
通信部3aはPC等の情報端末装置(不図示)との間で通信を行うものであり、情報端末装置から印刷指示や印刷データを受信する機能を担う。画像メモリ3bは、情報端末装置から受信した印刷データを一時記憶するものである。
操作部4は、複数のボタンを有する。ユーザはこれらのボタンを押圧すること等により各種の操作を行うことが可能である。表示部5は液晶ディスプレイ等を有し、印刷等の設定画面や装置の動作状態等を表示させることが可能である。温度検出部6は、インクヘッド2bの周辺の環境温度を検出する。
制御装置50は、ASIC(特定用途向けIC)60、RTC(リアルタイムクロック)回路70、ROM51、及びRAM52等を含む。ROM51には印刷部2の動作を実行するためのプログラム等が記憶されている。RAM52は制御装置50が各種の処理を実行するための主記憶装置として用いられる。
印刷処理において、通信部3aが情報端末装置(不図示)から印刷指示を受けて印刷データを受信すると、制御装置50は印刷部2を制御し、記録媒体に印刷データを印刷する。
ところで、プリンタ1は、動作モードとして通常モードとOFFモードとを有する。通常モードとは、プリンタ1が印刷指示に応答して印刷処理を実行できるモードである。OFFモードとは、省電力のため、プリンタ1が休止状態にあるモードである。通常モードでは、電源部10が動作し、プリンタ1の各部に電源が供給される。これに対し、OFFモードでは、電源部10の一部が動作し、プリンタ1の一部に電源が供給される。
図2は、実施形態における電源部10の構成を示す回路図である。電源部10は、スイッチング電源20、小容量電源30、DC−DCコンバータ41、DC−DCコンバータ42、DC−DCコンバータ43、及びリニアレギュレータ44等を含む。
通常モードにおいて、電源部10は、+31Vの直流電圧(以下、「DC31V」と記載する)を出力端子OUT1から出力し、+3.3Vの直流電圧(以下、「DC3.3V」と記載する)を出力端子OUT2から出力し、+1.2Vの直流電圧(以下、「DC1.2V」と記載する)を出力端子OUT3から出力する。また、通常モード及びOFFモードにおいて、電源部10は、+1.2Vの直流電圧(以下、「DC1.2V」と記載する)を出力端子OUT4から出力し、+3.3Vの直流電圧(以下、「DC3.3V」と記載する)を出力端子OUT5から出力する。
スイッチング電源20は、整流平滑回路21、制御IC22、電圧発生回路23、トランス24、トランジスタQ1、整流平滑回路25、及び電圧検出回路26等を含む。
スイッチング電源20は、交流電源ACの交流電圧Vacを整流平滑化し、DC31Vを生成して出力端子OUT1に出力する。また、スイッチング電源20の後段には、DC−DCコンバータ41及びDC−DCコンバータ42が接続されている。DC−DCコンバータ41は、DC31VからDC3.3Vを生成する。DC−DCコンバータ42は、DC3.3からDC1.2Vを生成する。尚、通常モードにおいて、スイッチング電源20はDC31Vの電圧生成を行う。従って、DC−DCコンバータ41及びDC−DCコンバータ42も通常モードにおいて、電圧生成を行う。
整流平滑回路21は、いわゆるコンデンサインプット型であり、交流電源ACの交流電圧Vacを整流するブリッジダイオードおよび整流後の電圧を平滑化するコンデンサを含む。整流平滑回路21の出力は、トランス24の一次コイルに印加される。
トランジスタQ1はNMOSFETである。通常モードにおいて、制御IC22のOUT端子から出力されるPWM信号が、トランジスタQ1のゲート端子に入力される。これにより、トランジスタQ1はオン・オフ動作を繰り返す。そして、トランス24の一次側が発振して、トランス24の二次コイルに電圧が誘起される。
また、トランス24の一次側には電圧発生回路23が設けられている。電圧発生回路23は、トランス24の一次側に設けられた補助コイルに誘起される電圧を整流平滑化して、制御IC22用の電源電圧Vccを生成する。
整流平滑回路25はトランス24の二次コイルに誘起された電圧を整流平滑化してDC31Vを生成して出力する。
電圧検出回路26は、フォトカプラPC1を含む。整流平滑回路25の出力電圧であるDC31Vに応じて、フォトカプラPC1の発光ダイオードLED1が発光する。そして、発光ダイオードLED1の光を受光するフォトカプラPC1のフォトトランジスタPT1は、制御IC22のFB端子に接続されている。これにより、整流平滑回路25の出力電圧が制御IC22にフィードバックされる。
制御IC22は、出力モードと停止モードを有し、各モードに対応してOUT端子からの出力を変更する。具体的には、出力モードにおいて、制御IC22はPWM信号を出力する。これにより、トランス24は駆動され、電源部10の出力端子OUT1〜OUT3から所定の直流電圧が出力される。一方、停止モードにおいては、制御IC22はPWM信号を出力しない。これにより、電源部10の出力端子OUT1〜OUT3から所定の直流電圧は出力されない。即ち、プリンタ1の通常モードにおいて、制御IC22は出力モードで動作し、プリンタ1のOFFモードにおいて、制御IC22は停止モードで動作する。尚、EN端子にパルス信号Scp2が入力されると、出力モードから停止モードへ、あるいは停止モードから出力モードへ、制御IC22のモードが切替えられる。
小容量電源30は、スイッチング電源20の電源容量より小さい電源容量を有している。小容量電源30は、通常モード及びOFFモードにおいてDC1.2Vを生成し、出力端子OUT4へ出力する。
小容量電源30は、コンデンサC1、コンデンサC2、整流回路31、平滑回路32、及びリニアレギュレータ33等を含む。
コンデンサC1の第1電極C1p1は交流電源ACの一端に接続され、コンデンサC1の第2電極C1p2は整流回路31に接続される。コンデンサC2の第1電極C2p1は交流電源ACの他端に接続され、コンデンサC2の第2電極C2p2は整流回路31に接続される。コンデンサC1の第1電極C1p1とコンデンサC2の第1電極C2p1との間に交流電圧Vacが印加されると、容量結合により、コンデンサC1の第2電極C1p2とコンデンサC2の第2電極C2p2との間に交流電圧が発生する。
整流回路31は、コンデンサC1の第2電極C1p2とコンデンサC2の第2電極C2p2との間に接続される。そして、コンデンサC1の第2電極C1p2とコンデンサC2の第2電極C2p2との間に発生した交流電圧を整流する。整流回路31は、4個のダイオードD1、D2、D3、及びD4からなるブリッジ回路によって構成される。ダイオードD1及びダイオードD2のカソードは接続点Nd1において接続される。ダイオードD1のアノードはコンデンサC1の第2電極C1p2に接続される。ダイオードD2のアノードはコンデンサC2の第2電極C2p2に接続される。また、ダイオードD3及びダイオードD4のアノードは接続点Nd2において接続される。ダイオードD3のカソードはコンデンサC1の第2電極C1p2に接続される。ダイオードD4のカソードはコンデンサC2の第2電極C2p2に接続される。接続点Nd2は、接地電圧Vgdに接続される。
平滑回路32は、整流回路31に接続され、整流された交流電圧を平滑して平滑電圧Vsmを生成する。平滑回路32は、平滑蓄電コンデンサC3及びツェナーダイオードZD1を含む。ツェナーダイオードZD1は、交流電源ACの交流電圧Vacが上昇した場合に、平滑電圧Vsmの上昇を抑制するためのものである。ツェナーダイオードZD1のツェナー電圧は、例えば5Vとされ、平滑電圧Vsmは略5Vとなる。平滑蓄電コンデンサC3は、平滑電圧Vsmによって充電される。
リニアレギュレータ33の入力端子は整流回路31の接続点Nd1に接続され、出力端子は出力端子OUT4に接続される。リニアレギュレータ33は、平滑電圧VsmからDC1.2Vを生成する。
また、整流回路31の後段にはリニアレギュレータ44が接続される。リニアレギュレータ44の入力端子は整流回路31の接続点Nd1にダイオードD5を介して接続される。リニアレギュレータ44の出力端子は出力端子OUT5に接続される。リニアレギュレータ44は、略+5Vの直流電圧からDC3.3Vを生成し、出力端子OUT5へ出力する。
また、DC−DCコンバータ43の入力端子は電源部10の出力端子OUT1に接続され、出力端子はリニアレギュレータ44の入力端子に接続される。そして、通常モードにおいて、DC−DCコンバータ43はDC31Vから+5Vの直流電圧(以下、「DC5V」と記載する)を生成する。これにより、通常モードにおいてはDC−DCコンバータ43からリニアレギュレータ44にDC5Vが供給される。一方、OFFモードにおいては平滑電圧VsmからダイオードD5を介してリニアレギュレータ44に略+5Vの直流電圧が供給される。
また、リニアレギュレータ44の出力端子には蓄電用コンデンサC4の一端子が接続されている。蓄電用コンデンサC4の他端子は接地電圧Vgdに接続される。蓄電用コンデンサC4は、リニアレギュレータ44から出力されるDC3.3Vによって充電される。尚、後述する温度検出処理の際、蓄電用コンデンサC4に蓄電された電力が温度検出部6及びRTC回路70に供給される。
図3は、実施形態における制御装置50及び温度検出部6の構成を示すブロック図である。制御装置50は、ASIC60、RTC回路70、及び発振制御部53等を含む。ASIC60には、電源部10の出力端子OUT2からDC3.3Vが供給され、電源部10の出力端子OUT3からDC1.2Vが供給される。一方、RTC回路70には、電源部10の出力端子OUT4からDC1.2Vが供給され、電源部10の出力端子OUT5からDC3.3Vが供給される。ここで、OFFモードでは、スイッチング電源20が停止しているので、電源部10の出力端子OUT1、出力端子OUT2、及び出力端子OUT3から所定の直流電圧は出力されない。そのため、OFFモードにおいては、電源が供給されず、ASIC60は停止状態となる。一方、RTC回路70は、OFFモードにおいても、小容量電源30から電源が供給されて動作する。電源部10の出力端子OUT4及び出力端子OUT5から、所定の直流電圧が出力されるからである。
ASIC60は、ADコンバータ62及びシステム制御部64を含む。ADコンバータ62は、温度検出部6以外の検出部等に接続されている。そして、これらの検出部からアナログ信号を受信し、デジタル値へ変換する処理を行う。システム制御部64は、各機能ブロックに指令を出し、印刷部2を制御し、印刷処理及びパージ処理(後述)等を実行する。
温度検出部6は、トランジスタQ3、抵抗6A、及びサーミスタ6Bを含む。サーミスタ6Bは、例えばNTCサーミスタであり、インクヘッド2bの周辺に設置される。トランジスタQ3はPNPバイポーラトランジスタであり、エミッタ端子は電源部10の出力端子OUT5に接続され、DC3.3Vが印加される。そして、トランジスタQ3のベース端子は温度制御部72(後述)の出力端子T1に接続される。抵抗6Aとサーミスタ6Bとは、トランジスタQ3のコレクタ端子と接地電圧Vgd間に直列接続される。そして、その接続点はADコンバータ73(後述)の入力端子に接続される。温度制御部72(後述)の出力端子T1からLのサーミスタ電圧制御信号S1が出力されると、トランジスタQ3はオンする。そして、抵抗分圧により、サーミスタ6Bにかかる電圧(サーミスタ電圧Vd)がADコンバータ73(後述)へ入力される。
RTC回路70は、RTC制御部71、温度制御部72、ADコンバータ73、及び電源制御部74を含む。
RTC制御部71は、RTC制御部71の内蔵回路に水晶振動子Qzが接続されることにより時刻を刻む、所謂リアルタイムクロックの機能を持つ。また、温度管理処理(後述)においてRTC制御部71が最新の温度検出指令(後述)を送信してからの経過時間を計数するタイマを備える。OFFモードにおいて、サーミスタ電圧Vdがデジタル値に変換されたデジタルサーミスタ電圧VDd(後述)に基づき、RTC制御部71は温度検出処理(後述)を行うタイミングを決定する。そして、温度検出処理(後述)を行うタイミングになると、温度検出処理(後述)を行う指令(以下、温度検出指令と記載する)を温度制御部72へ送信する。
RTC制御部71から温度検出指令を受信すると、温度制御部72は、出力端子T1からトランジスタQ3のベース端子に入力するサーミスタ電圧制御信号S1をLにする。そして、ADコンバータ73(後述)に温度検出指令を出力端子T2より送信する。また、ADコンバータ73から送信されるデジタルサーミスタ電圧VDd(後述)を時間情報とともに記憶部(レジスタ)72A(以下、記憶部72Aと略記する)に記憶する。即ち、デジタルサーミスタ電圧VDdがインクヘッド2b周辺の環境温度に対応する電圧値である。
ADコンバータ73は、温度制御部72の出力端子T2から温度検出指令を受信すると、温度検出部6からアナログ値であるサーミスタ電圧Vdを取得し、例えば8bitのデジタル値であるデジタルサーミスタ電圧VDdに変換する。そして、デジタルサーミスタ電圧VDdを温度制御部72に送信する。
電源制御部74は、RTC制御部71から後述するスイッチング電源停止指令もしくはスイッチング電源開始指令を受信すると、発振制御部53へパルス信号Scp1を送信する。これにより、スイッチング電源20の動作・停止状態が切り替わる。
発振制御部53は、フォトカプラPC2、トランジスタQ2を含む。フォトカプラPC2の発光ダイオードLED2のアノードは電源部10の出力端子OUT4に接続されている。トランジスタQ2はNPNバイポーラトランジスタである。トランジスタQ2のコレクタ端子は抵抗素子を介してフォトカプラPC2の発光ダイオードLED2のカソードに接続されている。そして、トランジスタQ2のエミッタ端子は接地電圧Vgdに接続され、トランジスタQ2のベース端子は電源制御部74の出力端子に接続されている。また、フォトカプラPC2のフォトトランジスタPT2のコレクタ端子は制御IC22のEN端子に接続されている(図2参照)。トランジスタQ2のベース端子にパルス信号Scp1が入力されると、トランジスタQ2はオンし、フォトカプラPC2の発光ダイオードLED2は発光する。そして、発光ダイオードLED2の光を受光するフォトカプラPC2のフォトトランジスタPT2はオンし、制御IC22のEN端子の電圧は変化する。つまり、制御IC22のEN端子にパルス信号Scp2が入力される。
次に、プリンタ1のパージ処理について説明する。インクヘッド2bのインクを噴射する吐出口からインクが吐出されない状況が続くと、吐出口近傍のインクの水分が蒸発して粘性が増加し、吐出口に目詰まりが生じる場合がある。そこで、印刷処理でのインクの噴射とは別に、インクを噴射させるパージ処理を行い、目詰まりの発生を抑制する。ただし、パージ処理ではインクが消費され、また電力を消費するため、必要最小限行うことが求められる。そこで、温度検出処理(後述)を定期的に行い、取得したデジタルサーミスタ電圧VDdに基づいて、パージ処理を行うタイミングを決定する。これは、インクに含まれる水分の蒸発量は、インクヘッド2bの周辺の環境温度に依存するためである。具体的には、インクヘッド2bの周辺の環境温度が高い程、インクヘッド2b内の空気が膨張し、インクの水分の蒸発が進む。そのため、環境温度が高い程、パージ処理をより頻繁に行う。また、OFFモードにおいても、プリンタ1は定期的に温度検出処理(後述)を行い、必要に応じてパージ処理を行う。
以下では、省電力を維持しながらパージ処理を行うタイミングを最適化する方法について説明する。これにより、インクの消費を抑制しつつ、インクヘッドの噴射性能を良好な状態に維持することができる。
電源がONされるとプリンタ1は通常モードで動作を開始する。そして、例えば、印刷指示が所定時間受信されない場合等に、プリンタ1は通常モードからOFFモードに切替わる。OFFモードにおいて、プリンタ1は温度検出処理(後述)を複数回繰り返した後の所定のタイミングでパージ処理を行う。
図4は、電源がONされてから通常モードで動作を開始するまでの初期処理を示すフローチャートである。
ユーザによって操作部4の電源ボタンがONされると(S2)、システム制御部64はRTC回路70の初期設定を行う(S4)。また、システム制御部64は、ROM51に格納されているOFFモード制御パラメータを、温度制御部72の記憶部72AにRTC制御部71を介して書き込む。OFFモード制御パラメータには、後述する、温度取得インターバル時間TIの初期値(TIi)、サーミスタ電源ONタイミング及びAD取得タイミング、環境判定値(A、B)、及び異常判定値(X、Y)等がある。また、温度取得インターバル時間TIを温度取得インターバル時間の初期値(TIi)に設定する(TI=TIi)。ここで、初期値(TIi)とは、例えば3時間である。その後、プリンタ1は通常モードで動作を開始する。
図5は、通常モードからOFFモードへの切替え処理を示すフローチャートである。例えば、印刷指示が所定時間受信されない場合、あるいはユーザにより操作ボタンが押圧された場合等に行われる。尚、この処理は、OFFモードでの温度検出処理(後述)の後に行うパージ処理(後述)及び異常処理(後述)が終了した場合にも行われる。
まず、OFFモードへの移行に先立って、ADコンバータ73は、サーミスタ6Bによる検出温度に応じて得られるサーミスタ電圧Vdを取得しデジタルサーミスタ電圧VDdに変換し、温度制御部72に送信する。そして、温度制御部72はデジタルサーミスタ電圧VDdを記憶部72Aに記憶する(S12)。次に、OFFモード復帰累積値KPfの算出を行う(S14)。OFFモード復帰累積値KPfは、パージ処理を行うタイミングを決定するのに使用される。なお、以下の説明では、説明の都合上、デジタルサーミスタ電圧VDdを検出された環境温度として記載する場合がある。
ここで、OFFモード復帰累積値KPfとは、OFFモードにおいて次にパージ処理を行うタイミングを決定する値である。パージ処理は、例えば4日〜1ヶ月毎に行われる。パージ処理のタイミングは、インクヘッド2b周辺の環境温度と前回のパージ処理からの時間経過に基づいて決定される。温度検出処理(後述)を周期的に複数回行い、その結果に基づいてパージ処理が行われる。以下、詳細に説明する。
まず、OFFモードにおいて、N番目の温度検出処理(後述)で取得した環境温度をOFFモード温度TEf(N)とする。そして、OFFモード温度TEf(N)に温度取得インターバル時間TIを乗じた値をN番目(以下、サイクル(N)と記載する)のOFFモード区間値Pf(N)とする。そして、OFFモード区間値Pf(N)を累積した値(以下、OFFモード区間累積値CPf(N)と記載する)が所定値(すなわち、OFFモード復帰累積値KPf)に達するとパージ処理を行う。つまり、温度取得インターバル時間TIにOFFモード温度TEf(N)に応じた重み付けを行い累積することで、環境温度を反映して、パージ処理を行うタイミングを管理する。これによれば、OFFモード温度TEf(N)が高い程、パージ処理を行う間隔は短くなる。尚、温度取得インターバル時間TIはOFFモード復帰におけるパージ処理(図8参照)及び異常処理(図9参照)において変更される場合がある。また、OFFモード復帰累積値KPfは予め定められており、各種の処理において変更されることはない。
実施形態では、OFFモード復帰累積値KPfを4200(168×25)と設定する。これは、OFFモード温度TEf(N)が25℃に維持される場合、OFFモードにおいて、168時間(7日)毎にパージ処理を行う設定である。また、温度取得インターバル時間TIの初期値TIiは、例えば3時間である。OFFモード温度TEf(N)が25℃に維持され、且つ温度取得インターバル時間TIが変更されず、3時間である場合、温度検出処理(後述)を56(168÷3)回行った後、パージ処理を行うことになる。
次に、RTC制御部71は電源制御部74に、スイッチング電源停止指令を送信する(S16)。すると、電源制御部74は発振制御部53にパルス信号Scp1を送信する。これにより、フォトカプラPC2が動作し、制御IC22のEN端子にパルス信号Scp2が入力される。そして、制御IC22は停止モードに切替わり、制御IC22のOUT端子からPWM信号は出力されず、スイッチング電源20は停止し、電源部10の出力端子OUT1〜OUT3から所定の電圧は出力されない(S18)。OFFモードでプリンタ1の動作が開始され、ステップS22(図6)へ進む。
図6は、OFFモードにおける温度監視処理のフローチャートである。図7は、OFFモードにおける温度監視処理のステップが行われる際のタイミングチャートである。
RTC制御部71のタイマは、RTC制御部71が最新の温度検出指令(後述)を送信してからの経過時間ΔTI(N)を計数している(S22)。RTC制御部71は、経過時間ΔTI(N)が温度取得インターバル時間TIであるかを判定する(S24)。そして、経過時間ΔTI(N)が温度取得インターバル時間TIでない場合(S24:NO)、まだ温度取得インターバル時間TIが経過していないのでステップS24に戻り、温度取得インターバル時間TIが経過するまで待機する。一方、経過時間ΔTI(N)が温度取得インターバル時間TIである場合(S24:YES)、温度取得のタイミングであると判断し、RTC制御部71は、温度制御部72に温度取得のタイミングであることを送信する。温度制御部72はADコンバータ73に温度検出指令を送信する。そして、ADコンバータ73が起動する(S26、図7のt1)。図7(a)に示すように、温度検出指令とはH/Lの2値信号であり、温度検出指令がHの期間、ADコンバータ73は動作する(図7(b))。
次に、サーミスタ6Bへの電源供給を行うタイミングとして、温度制御部72はサーミスタ電圧制御信号S1(図7(c))をHからLにする(S28、図7のt2)。これにより、温度検出部6のサーミスタ6Bに電流が流れ、サーミスタ電圧Vdが出力される。図7に示すように、ADコンバータ73が動作を開始してから所定時間(インターバル時間1)経過した後に、サーミスタ電圧制御信号S1をHからLにする。これは、ADコンバータ73の動作が安定するのに、所定時間(インターバル時間1)かかるためである。次に、AD取得タイミングとして、ADコンバータ73はサーミスタ電圧Vdを取得し、デジタルサーミスタ電圧VDdに変換する(S30、図7のt3〜t4)。ここで、図7に示すように、サーミスタ電圧制御信号S1がLになり、サーミスタ6Bに電流が流れ始めてから所定時間(インターバル時間2)経過した後に、ADコンバータ73はサーミスタ電圧Vdを取得する。これは、サーミスタ電圧Vdが安定するのに、所定時間(インターバル時間2)かかるためである。尚、図7(d)に示すように、t3〜t4の期間が、ADコンバータ73のAD変換期間である。
その後、温度制御部72はサーミスタ電圧制御信号S1をLからHにする(S32、t4)。次に、温度制御部72は、受信したデジタルサーミスタ電圧VDd(OFFモード温度TEf(N))を記憶部72Aに記憶する(S34)。その後、RTC制御部71は温度検出指令をLにする。そして、ADコンバータ73は停止する(S36、図7のt5)。
次に、RTC制御部71は、温度制御部72に記憶されたOFFモード温度TEf(N)に温度取得インターバル時間TIを乗じて、OFFモード区間値Pf(N)を算出する(S38)。次に、温度制御部72は、OFFモード区間値Pf(N)を記憶部72Aに記憶する(S40)。次に、OFFモード温度TEf(N)が正しく検出されているか否かを判断するため、サイクル(N)の算出値であるOFFモード区間値Pf(N)とサイクル(N‐1)の算出値であるOFFモード区間値Pf(N−1)との差分の絶対値であるOFFモード区間値差ΔPf(N)が、異常判定値Xより大きいか否かを判断する(S42)。
ここで、ステップS42について説明する。サーミスタ6BがNTCサーミスタの場合、環境温度が高いほど、サーミスタ6Bの抵抗値は小さくなりサーミスタ電圧Vdは低下する。このため、OFFモード区間値差ΔPf(N)が異常判定値Xより大きくなりOFFモード温度TEf(N)が大きく上昇する場合には、サーミスタ6Bの抵抗値の減少から蓄電用コンデンサC4から供給される電流が増大する。これにより、蓄電用コンデンサC4の放電が大きくなり次の動作のための充電が不十分になってしまうおそれがある。OFFモードにおいては、蓄電用コンデンサC4から温度検出部6及びADコンバータ73に電力が供給されるので蓄電用コンデンサC4の充電が不十分であれば、温度検出部6のトランジスタQ3を介して抵抗6A及びサーミスタ6Bに十分な電流が流れない。その結果、サーミスタ電圧Vdが本来の電圧値より低下するおそれがある。また、ADコンバータ73の動作が不十分になりAD変換が正常に行われないおそれもある。そこで、異常判定値Xを用いて、OFFモード温度TEf(N)があらかじめ定められた以上に上昇した場合を抽出し、蓄電用コンデンサC4の充電が十分か否かを確認する。実施形態では、異常判定値Xを30(3×10)とする。これは、温度取得インターバル時間TIを3時間とした場合、この間にOFFモード温度(N)が10℃上昇する場合に相当する値である。
そして、OFFモード区間値差ΔPf(N)が異常判定値Xより大きい場合(S42:YES)、蓄電用コンデンサC4の充電が充分行われているか否かを確認するため、ステップS82に進む(図9)。ステップS82以降の処理については後述する。OFFモード区間値差ΔPf(N)が異常判定値X以下の場合(S42:NO)、蓄電用コンデンサC4の充電が十分行われており、OFFモード温度TEf(N)は正しく検出されていると判断し、ステップS44へ進む。ステップS44では、パージ処理を行うタイミングであるかを判断するため、記憶部72Aに記憶されているOFFモード区間値Pf(N)を累積したOFFモード区間累積値CPfがOFFモード復帰累積値KPfより大きいか否かを判定する(S44)。OFFモード区間累積値CPfがOFFモード復帰累積値KPfより大きいと判定された場合(S44:YES)、パージ処理を行うタイミングであると判断し、ステップS52に進む(図8)。ステップS52以降の処理については後述する。OFFモード区間累積値CPfがOFFモード復帰累積値KPf以下であると判定された場合(S44:NO)、まだパージ処理を行うタイミングではないとして、サイクル(N)をサイクル(N+1)に更新し(S46)、サイクル(N+1)の温度検出処理(後述)をステップS22から開始する。
ここで、ステップS22からステップS36までが、OFFモードにおける温度検出処理である。
図8は、OFFモードでの温度検出処理に応じてパージ処理を行うフローチャートである。OFFモードにおける温度監視処理(図6)で、パージ処理を行うタイミングであると判断した場合(図6、S44:YES)に行う。
RTC制御部71は電源制御部74に、スイッチング電源開始指令を送信する(S52)。すると、電源制御部74はパルス信号Scp1を発振制御部53に送信する。これにより、フォトカプラPC2が動作し、制御IC22のEN端子にパルス信号Scp2が入力される。そして、制御IC22は出力モードに切り替わり、制御IC22のOUT端子からPWM信号を出力し、スイッチング電源20は動作を開始する(S54)。そして、電源部10の出力端子OUT1〜OUT3から所定の電圧が出力され、ASIC60が動作を開始する(S56)。尚、通常モードでの動作と異なり、例えば、表示部5の液晶ディスプレイ等は表示されない。これにより、ユーザは通常モードではないと認識することができる。
次に、システム制御部64は、サイクル(1)からサイクル(N)までのN個のOFFモード温度TEf(N)を温度制御部72の記憶部72Aから読み出し、温度履歴を確認する(S58)。次に、N個のOFFモード区間値Pf(N)を温度制御部72の記憶部72Aから読み出し、RAM52に記憶する(S60)。次に、システム制御部64は、ROM51から読み出したプログラムに従ってパージ処理を実施する(S62)。システム制御部64は、パージ処理を終了すると(S64)、環境温度の変化量を確認するため、OFFモード区間値差ΔPf(N)が環境判定値Aより小さいか否かを判断する(S66)。このときのOFFモード区間値差ΔPf(N)は最新の値、すなわち、サイクル(N)とサイクル(N―1)との差である。OFFモード区間値差ΔPf(N)が環境判定値A以上の場合(S66:NO)、環境温度の変化量が大きいと判断し、温度取得インターバル時間TIは変更せずステップS12(図5)へ進む。サイクル(N+1)におけるOFFモードを継続する。OFFモード区間値差ΔPf(N)が環境判定値Aより小さい場合(S66:YES)、さらに環境温度の変化量を確認するため、OFFモード区間値差ΔPf(N)が環境判定値Bより小さいか否かを判断する(S68)。ここで、環境判定値Bは環境判定値Aよりも小さな値である。OFFモード区間値差ΔPf(N)が環境判定値B以上の場合(S68:NO)、即ち、OFFモード区間値差ΔPf(N)が環境判定値Aより小さく環境判定値B以上の場合、温度取得インターバル時間TIに1を加算して(S70)、ステップS12(図5)へ進む。サイクル(N+1)におけるOFFモードを継続する。OFFモード区間値差ΔPf(N)が環境判定値Bより小さい場合(S68:YES)、温度取得インターバル時間TIに2を加算して(S72)、ステップS12(図5)へ進む。サイクル(N+1)におけるOFFモードを継続する。
ステップS66及びステップS68では、環境温度の変化量を場合分けし、変化量の大きさに応じて、以後の温度取得インターバル時間TIを設定する。環境温度の変化量が小さければ、温度検出処理を頻度に行う必要はないからである。この場合は、温度取得インターバル時間TIを長く設定し、温度検出処理の頻度を落とす。これにより、温度検出処理による消費電力を抑制し省電力化を図ることができる。
例えば、温度取得インターバル時間TIを初期値(TIi)の3時間として処理を行っている場合、環境判定値Aを6(3×2)、環境判定値Bを3(3×1)とする。これは、環境温度の変化量に換算すると、例えば、2℃(環境判定値A)、1℃(環境判定値B)に相当する。環境温度の変化量が2℃以上の場合は温度取得インターバル時間TIを初期値(TIi)の3時間のままとし、2℃より小さく1℃以上場合は温度取得インターバル時間TIを4時間に、そして、1℃より小さい場合は温度取得インターバル時間TIを5時間に設定する。尚、最大の温度取得インターバル時間TIとして、例えば6時間まで延長できるものとする。
図9は、OFFモードでの温度検出処理に応じて異常処理を行うフローチャートである。OFFモードでの温度監視処理(図6)で、OFFモード区間値差ΔPf(N)が異常判定値Xより大きい場合(S42:YES)に行う。図8と同じステップには同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
RTC制御部71は電源制御部74に、スイッチング電源開始指令を送信する(S52)。すると、制御IC22はOUT端子からPWM信号を出力し、スイッチング電源20は動作を開始する(S54)。そして、電源部10の出力端子OUT1〜OUT3から所定の電圧が出力され、ASIC60が動作を開始する(S56)。尚、通常モードでの動作と異なり、例えば、表示部5の液晶ディスプレイ等は表示されない。これにより、ユーザは通常モードではないと認識することができる。次に、システム制御部64は、N個のOFFモード温度TEf(サイクル(1)〜サイクル(N))を温度制御部72の記憶部72Aから読み込み、温度履歴を確認する(S58)。
次に、ADコンバータ73は、復帰時の温度(復帰温度TEr(N))に応じたサーミスタ電圧Vdを取得し、デジタルサーミスタ電圧VDdに変換する(S82)。この時、スイッチング電源20から電圧が供給されているため、温度検出部6及びADコンバータ73にはDC−DCコンバータ43を介して所定値(DC3.3V)の電源電圧が確実に印加されている。そして、温度制御部72は、受信したデジタルサーミスタ電圧VDdを復帰温度TEr(N)として記憶部72Aに記憶する。RTC制御部71は、復帰温度TEr(N)と温度取得インターバル時間TIに基づいて復帰区間値Pr(N)を算出する。そして、OFFモードで検出したOFFモード温度TEf(N)が正しいか否かを確認するため、直前のOFFモード区間値Pf(N)と復帰区間値Pr(N)との差分の絶対値である区間値差ΔPm(N)が、異常判定値Yより大きいか否かを判定する(S84)。区間値差ΔPm(N)が、異常判定値Y以下であると判定した場合(S84:NO)、OFFモード温度TEf(N)は正しいと判断し、ステップS12(図5)へ進む。サイクル(N+1)におけるOFFモードを継続する。区間値差ΔPm(N)が、異常判定値Yより大きいと判定した場合(S84:YES)、蓄電用コンデンサC4の充電が不十分であると判断し、温度取得インターバル時間TIが3時間以下であるかを判断する(S86)。温度取得インターバル時間TIが3時間より長いと判断した場合(S86:NO)、温度取得インターバル時間TIが十分に長く蓄電用コンデンサC4への充電時間が充分に確保されているにも関わらず正しく温度が検出されないのは異常であるとして、マシンエラーを出力して終了する(S88)。これは、ADコンバータ73等の電気回路やその他の箇所に異常があり、サーミスタ電圧Vdからデジタルサーミスタ電圧VDdへの変換が正しく行われていないと判断されるためである。一方、温度取得インターバル時間TIが3時間以下であると判断した場合(S86:YES)、温度取得インターバル時間TIに1を加算して、ステップS12(図5)へ進む。サイクル(N+1)におけるOFFモードを継続する。
ここで、ステップS86及びステップS90について説明する。図7(e)のOUT5(3.3V)電圧は、OFFモードでの温度検出処理における、電源部10の出力端子OUT5の電圧の推移を示している。ここで、電源部10の出力端子OUT5の電圧は温度検出部6及びADコンバータ73の電源電圧であり、蓄電用コンデンサC4に充電されている電力が供給される。ADコンバータ73がサンプリングしている期間(t3〜t4)、ADコンバータ73の動作により、電源電圧は低下する。ADコンバータ73の動作による電流消費により蓄電用コンデンサC4に充電されている電力が消費されるためである。そして、次の温度検出までに蓄電用コンデンサC4は充電され電源電圧が回復する。しかし、温度取得インターバル時間TIが短いと充電期間が短いため蓄電用コンデンサC4の充電が十分には行われず、電源電圧が回復しない場合がある。特に充電期間が3時間以下であると期間が短く充電が十分行われないことが考えられるので、充電時間を4時間に増やす(S90)。充電時間が長ければ蓄電用コンデンサC4の充電が十分行われる。尚、温度検出部6及びADコンバータ73の電源電圧は低下すると説明したが、詳しくは、ADコンバータ73のAD変換の期間に徐々に低下する。このため、電源電圧の低下に伴い、サーミスタ電圧Vdも低下するが、低下量は僅かであり実際の環境温度と検出温度との差は僅かである。
図10は、OFFモードから通常モードへの切替え処理を示すフローチャートである。例えば、ユーザによりOFFモードが解除される場合等にこの処理が行われる。図9と同じステップには同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
まず、ユーザにより操作ボタンを押圧等されると、OFFモード解除指令がRTC制御部71に送信される(S102)。RTC制御部71は電源制御部74にスイッチング電源開始指令を送信する(S52)。制御IC22はOUT端子からPWM信号を出力し、スイッチング電源20は動作を開始する(S54)。電源部10の出力端子OUT1〜OUT3から所定の電圧が出力され、ASIC60が動作を開始する(S56)。次にシステム制御部64は、N個のOFFモード温度TEf(サイクル(1)〜サイクル(N))を温度制御部72の記憶部72Aから読み込み、温度履歴を確認する(S58)。次に、ADコンバータ73はサーミスタ電圧Vdを取得し、デジタルサーミスタ電圧VDdに変換する(S82)。そして、通常モードでの動作を開始する。
ここで、RTC回路70は制御回路の一例であり、温度検出部6はセンサの一例であり、パルス信号Scp1は第1切替信号の一例であり、電源制御部74は第1切替回路の一例であり、ADコンバータ73は第1AD変換器の一例であり、RTC制御部71は許可回路の一例である。また、トランジスタQ3はセンサ駆動回路の一例である。また、コンデンサC4は充電回路の一例である。また、DC−DCコンバータ43及びダイオードD5は第2切替回路の一例である。ADコンバータ62は第2AD変換器の一例である。また、コンデンサC1は第1コンデンサの一例であり、コンデンサC2は第2コンデンサの一例である。
以上、上記した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
上記の電源システム100では、RTC回路70に備えられる電源制御部74から出力されるパルス信号Scp1に応じて、スイッチング電源20の状態が動作状態と停止状態とで切り替えられる。停止状態はスイッチング電源20の停止により直流電圧の出力が停止された状態である。いわゆる、当該電源システム100に接続されるASIC60に電力が供給されないOFFモードと称される休止状態となる。一方、当該電源システム100では、OFFモードであっても小容量電源30から平滑電圧Vsmが出力される。平滑電圧Vsmは、OFFモードにおいてRTC回路70に電力を供給する。RTC回路70では、OFFモードにおいても、電源制御部74の他、タイマを備えるRTC制御部71に電力が供給される。RTC制御部71のタイマにより計時された時間が温度取得インターバル時間TIになるごとに、RTC制御部71がADコンバータ73の動作を許可する。ADコンバータ73は、温度検出部6からのサーミスタ電圧Vdをデジタルサーミスタ電圧VDdに変換する。
これにより、OFFモードにおいて、RTC制御部71のタイマによる温度取得インターバル時間TIの計時ごとに、サーミスタ電圧Vdをデジタルサーミスタ電圧VDdに変換する限られた期間のあいだ、ADコンバータ73を動作させることができる。OFFモードにおいて、温度検出部6から出力されるサーミスタ電圧Vdを温度取得インターバル時間TIごとにデジタルサーミスタ電圧VDdに変換して取得する際の電力消費を必要最小限に抑制することができる。
また、上記の電源システム100では、サーミスタ電圧Vdを取得するために温度検出部6に供給される電力はトランジスタQ3から供給される。トランジスタQ3は、OFFモードでは、小容量電源30が出力する平滑電圧Vsmにより電力が供給される。このため、OFFモードでは、温度検出部6へ小容量電源30から電力が供給される。この場合、RTC制御部71によるトランジスタQ3への電力を供給する動作の許可を、ADコンバータ73によるAD変換の開始前に開始(図7のt2)し、ADコンバータ73の動作終了後に終了する(図7のt4)タイミングで行う。
これにより、OFFモードにおいて、ADコンバータ73の動作開始から動作終了までを含む限られた時間のあいだ、トランジスタQ3が温度検出部6に電力を供給することができる。OFFモードにおいて、トランジスタQ3から供給される電力消費を必要最小限に抑制しながら、ADコンバータ73はサーミスタ電圧Vdを確実にAD変換することができる。
更に、トランジスタQ3による電力の供給動作の許可を、ADコンバータ73の動作開始後であってADコンバータ73によるAD変換の開始前に開始し、ADコンバータ73によるAD変換の終了後であってADコンバータ73の動作終了前に終了することもできる。これにより、ADコンバータ73がサーミスタ電圧Vdを確実にAD変換する際の電力供給を、更に小さくすることができる。
また、上記の電源システム100では、平滑電圧Vsmのうち、ADコンバータ73およびトランジスタQ3に電力を供給するものに対してはコンデンサC4を備えており、コンデンサC4に充電された電力により、ADコンバータ73およびトランジスタQ3に電力を供給する。これにより、小容量電源30の電源容量が限られたものであったとしても、小容量電源30から出力される平滑電圧Vsmの電力をコンデンサC4において充電することができる。ADコンバータ73およびトランジスタQ3に必要となる電源容量を確保することができる。
また、上記の電源システム100では、RTC制御部71は、スイッチング電源20の動作状態において、ADコンバータ73の動作を許可する。これにより、ADコンバータ73は、OFFモードであるか否かに関わらず、AD変換に利用することができる。
また、上記の電源システム100では、DC−DCコンバータ43及びダイオードD5の働きにより、OFFモードでは小容量電源30から出力される平滑電圧Vsmにより電力が供給されるADコンバータ73およびトランジスタQ3は、OFFモードが解除されるとスイッチング電源20から出力される直流電圧により電力が供給される。また、OFFモードが解除された場合、RTC制御部71は、OFFモードの場合に比して長い時間の動作をADコンバータ73に許可する。これにより、OFFモードが解除された場合、十分な電源容量により電力が供給されることで、ADコンバータ73およびトランジスタQ3の動作に係る限定が解除される。また、OFFモードが解除された場合、より長い時間、ADコンバータ73の動作が許可される。これにより、ADコンバータ73およびトランジスタQ3は必要に応じて自在に動作を行うことができる。温度検出部6から出力されるサーミスタ電圧VdをOFFモード時より頻繁にデジタルサーミスタ電圧VDdに変換できると共に、その他の信号をデジタル値に変換することもできる。
また、上記の電源システム100では、スイッチング電源20から電力が供給されることにより、電力の供給が十分な状態でのADコンバータ73における動作を確保することができる。
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、通常モードにおいて、サーミスタ電圧制御信号S1を常時Lにすると説明したが、これに限定されるものではない。OFFモードと比較して長い時間Lとする、としてもよい。例えば、インクヘッド2bの環境温度の変化量が少ない時は、サーミスタ電圧制御信号S1をHとすれば、省電力になる。また、実施形態では、トランジスタQ3(図3)はPNPバイポーラトランジスタであるとして説明したがNPNトランジスタとすることもできる。この場合、トランジスタQ3のベース端子に入力されるサーミスタ電圧制御信号S1は、実施形態とは反対の論理レベルで出力される論理信号とすることは言うまでもない。
また、通常モードにおいて、ADコンバータ73を常時動作すると説明したが、これに限定されるものではない。OFFモードと比較して長い時間動作する、としてもよい。例えば、インクヘッド2bの環境温度の変化量が少ない時は、ADコンバータ73を停止すれば、省電力になる。
また、パージ処理を行うタイミングをOFFモード温度TEf(N)と温度取得インターバル時間TIとの積であるOFFモード区間値Pf(N)で決定すると説明したが、これに限定されるものではない。例えば、OFFモード温度TEf(N)に代えて、温度に対応した係数を用いてもよい。この場合、高温であるほど、係数を大きくすることが好ましい。
実施形態では、検知対象をインクヘッド2bの周辺の環境温度とする例を示したが、これに限られない。検知対象は、例えば、湿度であってもよいし、温度および湿度であってもよい。
ADコンバータ62は温度検出部6以外の検出部等に接続されると説明したが、これに限定されるものではない。通常モードにおいて、ADコンバータ62を温度検出部6に接続する構成としてもよい。すなわち、通常モードにおいては、ADコンバータ73に代えて、あるいはADコンバータ73と共にADコンバータ62がサーミスタ電圧Vdをデジタルサーミスタ電圧VDdに変換する構成とすることもできる。
また、小容量電源30の構成は、図2に示されたものに限られない。例えば、整流回路31は半波整流回路とする構成であってもよい。また、接続点Nd2は接地されなくてもよく、基準電位とされてもよい。すなわち、プリンタ1は、フレーム接地されなくてもよい。また、蓄電用コンデンサC4は省略されてもよい。
実施形態では、制御装置50をASIC60とRTC回路70とに分けて構成する例を示したが、これに限られない。例えば、ASIC60およびRTC回路70は、1個のASICで構成されてもよい。あるいは、ASIC60およびRTC回路70は、2個のCPUと、複数のロジック回路によって構成されてもよい。また、制御装置50に含まれる構成として、ASIC60およびRTC回路70に含まれる各構成は、任意である。
実施形態では、ASIC60にシステム制御部64を備える場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。システム制御部64はCPUでもよいし、複数のCPUを備えてもよい。さらに、CPUとASICの組み合わせによって構成されてもよい。
実施形態では、交流電源ACからの電源供給を受けて、スイッチング電源20及び小容量電源30が所定の電圧を出力する場合について説明したが、本願はこれに限定されるものではない。交流電源ACに代えて太陽電池などの直流電源を電源とすることも可能である。
実施形態では、電源システム100をインクジェットプリンタに適用した例を説明したが、これに限定されるものではない、電源システム100による電力の供給の態様として通常モードとOFFモードとを有し、温度等の検知対象を検出する必要のある、あらゆる装置に適用できる。例えば、電源システム100は、レーザプリンタ等の電子複写式画像装置にも適応することができる。