次に、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、連接水系の構成例を示す模式図である。連接水系では、例えば河川Rから取水する貯水施設と当該貯水施設から放流される水を用いて発電を行う発電施設とを1組とする構成が、1つの河川Rに2組以上設けられている。図1では、第1貯水施設10と第1発電施設15とが1組を構成する。また、第2貯水施設20と第2発電施設25とが1組を構成する。第1発電施設15、第2発電施設25は、水力発電施設である。本実施形態の水力発電施設は、ダム式又はダム水路式の水力発電施設である。
第1貯水施設10は、第2貯水施設20に対して相対的に河川Rの上流側で取水された水を貯留する。第1貯水施設10が取水する水量は、河川Rに設けられた第1ゲートG1の開度に応じるか,又は,直接,貯水施設へ流入する河川Rの全流量である。第1貯水施設10に貯留された水は、例えば、第1放流部11、第2放流部12、第3放流部13等、複数の放流部のいずれかを介して放流される。第1放流部11は、発電に用いられない無効放流を行うために第1貯水施設10から河川Rに水を放流するための弁、流水路等を有する。第2放流部12は、第1発電施設15の発電に用いられる水を第1発電施設15に放流するための弁、流水路等を有する。第2放流部12から放流された水は、第1発電施設15を介して河川Rに流される。第3放流部13は、無効放流以外の理由で、第1貯水施設10から河川Rに水を放流するための弁、流水路等を有する。無効放流以外の理由として、例えば第1貯水施設10内の砂を排出するための排砂放流等が挙げられる。
第1放流量D1は、第1放流部11を介して放流される水量を表す。第2放流量Q1は、第2放流部12を介して放流され、第1発電施設15で発電に用いられる水量を表す。第3放流量Ds1は、第3放流部13を介して放流される水量を表す。
第2貯水施設20は、第1貯水施設10に対して相対的に河川Rの下流側で取水された水を貯留する。第2貯水施設20が取水する水量は、河川Rに設けられた第2ゲートG2の開度に応じるか,又は直接,貯水施設へ流入する河川Rの全流量である。ここで、第2ゲートG2は、第1放流部11、第2放流部12及び第3放流部13を介して放流された水が河川Rに合流する位置よりも下流側に位置する。すなわち、第2貯水施設20は、上流側の貯水施設である第1貯水施設10から放流された水が合流する河川Rから取水された水を貯留する。
第2貯水施設20に貯留された水は、例えば、第1放流部21、第2放流部22、第3放流部23等、複数の放流部のいずれかを介して放流される。第1放流部21は、発電に用いられない無効放流を行うために第2貯水施設20から河川Rに水を放流するための弁、流水路等を有する。第2放流部22は、第2発電施設25の発電に用いられる水を第2発電施設25に放流するための弁、流水路等を有する。第2放流部22から放流された水は、第2発電施設25を介して河川Rに流される。第3放流部23は、無効放流以外の理由で、第2貯水施設20から河川Rに水を放流するための弁、流水路等を有する。無効放流以外の理由として、例えば第2貯水施設20内の砂を排出するための排砂放流等が挙げられる。
第1放流量D2は、第1放流部21を介して放流される水量を表す。第2放流量Q2は、第2放流部22を介して放流され、第2発電施設25で発電に用いられる水量を表す。第3放流量Ds2は、第3放流部23を介して放流される水量を表す。以下、第1放流量D1と第1放流量D2のいずれか一方を指す場合、第1放流量Dと記載することがある。また、第2放流量Q1と第2放流量Q2のいずれか一方を指す場合、第2放流量Qと記載することがある。また、第3放流量Ds1と第3放流量Ds2のいずれか一方を指す場合、第3放流量Dsと記載することがある。
貯水施設には、貯水量及び水位の少なくとも一方を検知するための構成が設けられている。本実施形態では、第1水位検知部14が第1貯水施設10に設けられている。また、第2水位検知部24が第2貯水施設20に設けられている。第1水位検知部14、第2水位検知部24は、例えば貯水施設に貯留されている水の水位を測定する。
貯水施設と発電施設とを1組とする構成は、1つの河川に3組以上設けられていてもよい。例えば、第2貯水施設20と第2発電施設25の下流側に、さらに別の貯水施設と発電施設との組が設けられていてもよい。この場合、第2貯水施設20と第2発電施設25は、この別の貯水施設と発電施設との組に対して上流側の貯水施設と発電施設との組になる。また、第1貯水施設10と第1発電施設15の上流側に、さらに別の貯水施設と発電施設との組が設けられていてもよい。この場合、第1貯水施設10と第1発電施設15は、この別の貯水施設と発電施設との組に対して下流側の貯水施設と発電施設との組になる。
図2は、本実施形態による連接水系の運用支援システムの構成例を示す図である。連接水系の運用支援システムは、例えば予測装置30と算出装置40とを備える。予測装置30と算出装置40とは、例えば通信回線Nを介して接続されている。また、本実施形態の予測装置30と算出装置40は、通信回線Nを介して第1水位検知部14、第2水位検知部24と通信可能に接続されている。第1水位検知部14、第2水位検知部24は、例えば、通信回線Nを介して、測定した水位を示す情報を算出装置40に送信する。
予測装置30は、上流側の貯水施設及び下流側の貯水施設に所定期間に流入する水量の予測値を取得する。具体的には、予測装置30は、例えば図1に示す第1貯水施設10と第2貯水施設20に所定期間に流入する水量の予測値を取得する。所定期間は、例えば10日間であるがこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
算出装置40は、上流側の貯水施設から放流される単位時間あたりの水量のうち、発電に用いられない第1放流量D及び発電に用いられる第2放流量Qを個別に算出する。具体的には、算出装置40は、発電に用いられない第1放流量Dとして、例えば図1に示す第1貯水施設10の第1放流部11を介して放流される第1放流量D1を算出する。また、算出装置40は、発電に用いられない第1放流量Dとして、例えば図1に示す第2貯水施設20の第1放流部21を介して放流される第1放流量D2を算出する。算出装置40は、発電に用いられる第2放流量Qとして、例えば図1に示す第1貯水施設10の第2放流部12を介して放流される第2放流量Q1を算出する。また、算出装置40は、発電に用いられる第2放流量Qとして、例えば図1に示す第2貯水施設20の第2放流部22を介して放流される第2放流量Q2を算出する。
図3は、予測装置30の構成例を示すブロック図である。予測装置30は、例えば、演算部51、記憶部52、入力部53、出力部54、通信部55等を有する所謂情報処理装置である。
演算部51は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置である。記憶部52は、例えばハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリーその他の記憶装置のうち少なくとも1つを有し、演算部51によって読み出される各種のデータを記憶する。本実施形態の記憶部52は、予測処理用プログラム52aを記憶している。予測処理用プログラム52aは、演算部51が読み出して実行処理することで、予測装置30を第1水量取得部31、第2水量取得部32及び第3水量取得部33(図5参照)として機能させるためのソフトウェア・プログラムである。
入力部53は、例えばキーボード、マウス等を有し、予測装置30の管理者による入力操作を受け付ける。出力部54は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置を有し、予測装置30の処理内容に応じた出力を行う。通信部55は、例えばNIC(Network interface controller)を有し、通信回線Nを介した予測装置30と他の機器との通信に関する処理を行う。
図4は、算出装置40の構成例を示すブロック図である。算出装置40は、例えば、演算部61、記憶部62、入力部63、出力部64、通信部65等を有する所謂情報処理装置である。
演算部61は、例えばCPU等の演算装置である。記憶部62は、例えばハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリーその他の記憶装置のうち少なくとも1つを有し、演算部61によって読み出される各種のデータを記憶する。本実施形態の記憶部62は、算出処理用プログラム62a、第1貯水施設データ62b、第2貯水施設データ62c等を記憶している。算出処理用プログラム62aは、演算部61が読み出して実行処理することで、算出装置40を貯水量範囲設定部41、現貯水量取得部42、基準日時決定部43、運用計画算出部44及び例外処理部45として機能させるためのソフトウェア・プログラムである。
第1貯水施設データ62bは、第1貯水施設10の貯水量として適正な水量の範囲を示すデータである。具体的には、第1貯水施設データ62bは、例えば第1貯水施設10の上限水位と下限水位とを含む。第2貯水施設データ62cは、第2貯水施設20の貯水量として適正な水量の範囲を示すデータである。具体的には、第1貯水施設データ62bは、例えば第2貯水施設20の上限水位と下限水位とを含む。第1貯水施設10と第2貯水施設20の上限水位と下限水位は、通常、個別であるが、第1貯水施設10と第2貯水施設20とが同じ形状及び容積の貯水施設である場合には上限水位と下限水位を共通化してもよい。以下、第1貯水施設10と第2貯水施設20のいずれか一方の上限水位、下限水位を指す場合、上限水位(HH)、下限水位(HL)と記載することがある。上限水位(HH)に対応する貯水量(CwH)と下限水位(HL)に対応する貯水量(CwL)は、第1貯水施設データ62b、第2貯水施設データ62cに含まれていてもよいし、水位に対応する貯水量を導出可能な演算処理内容が算出処理用プログラム62aに含まれていてもよい。なお、貯水施設と発電施設との組が3組以上である場合、3組目以降の貯水施設の貯水施設データが記憶部に記憶される。
入力部63は、例えばキーボード、マウス等を有し、算出装置40の管理者による入力操作を受け付ける。出力部64は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置を有し、算出装置40の処理内容に応じた出力を行う。通信部65は、例えばNICを有し、通信回線Nを介した算出装置40と他の機器との通信に関する処理を行う。
図5は、第1貯水施設10に関する処理と第2貯水施設20に関する処理との関係の一例を示す図である。予測装置30は、例えば、第1水量取得部31、第2水量取得部32、第3水量取得部33として機能する。第1水量取得部31は、河川等の水源に生じる水量の変動に関する情報を取得する。具体的には、第1水量取得部31は、例えば降水量、気温、湿度その他の気象条件に基づいて変動する、貯水施設に流入する水量の予測値を取得する。
図6は、貯水施設に流入する水量(流入量)の変動パターン例を示すグラフである。流入量は、例えば実線Lが示すように、雨雪等の降水がない場合、時間の経過とともに漸減する傾向を示す。仮に、図6に示す全期間で降水がない場合、破線L1が示すように、流入量は漸減し続ける。一方、雨が降った場合、気温の上昇によって既存の積雪、氷河等が融解した場合等、気象条件の変動によって水がもたらされることで、実線L2が示すように、流入量が増加する。流入量の上昇点T1は、例えば降雨による流入量の上昇があった場合を模式的に示している。流入量の上昇点T2は、例えば融雪による流入量の上昇があった場合を模式的に示している。第1水量取得部31は、図6を参照して説明した例が示すように、気象条件に基づいた流入量の予測値を取得する。
第2水量取得部32は、上流側の貯水施設から放流された第2放流量Qを取得する。第3水量取得部33は、上流側の貯水施設から放流された第2放流量Q以外の放流量を取得する。具体的には、第3水量取得部33は、上流側の貯水施設から放流された第1放流量D及び第3放流量Dsの値示す情報を、当該上流側の貯水施設の第1放流量Dを算出し、第3放流量Dsを決定した算出装置40から取得する。
第1水量取得部31は、取得した予測値を第1水量Ruとして算出装置40に出力する。第2水量取得部32は、取得した上流側の貯水施設の第2放流量Qを第2水量Quとして算出装置40に出力する。第3水量取得部33は、取得した上流側の貯水施設の第1放流量D及び第3放流量Dsの合算値を第3水量Duとして算出装置40に出力する。
降水量等の気象条件に基づいて変動する水量は、その一部が直接貯水施設に流入する可能性がある。このため、第1水量取得部31が取得した予測値は、貯水施設の貯水量を変動させる情報として用いられる。また、降水量等の気象条件に基づいて変動する水量は、取水源の河川Rの水量を変動させる可能性がある。また、本実施形態では、図1で例示するように、上流側の貯水施設(例えば、第1貯水施設10)から放流された水は、河川Rに合流したうえで、その一部又は全部が下流側の貯水施設によって取水される。すなわち、第2水量取得部32、第3水量取得部33が取得した第1放流量D、第2放流量Q等が下流側の貯水施設に取得される水量の増加に直接反映されるわけでない。従って、第1水量取得部31が取得した予測値、第2水量取得部32、第3水量取得部33が取得した第1放流量D、第2放流量Q等は、取水源である河川Rを流れる水量の予測に関する情報として用いられる。河川Rを流れる水量が少ないほど、貯水施設が取水可能な水量は必然的に河川R流れる水量によって制限されやすくなるが、河川Rを流れる水量が多いほど、この制限が緩和されるためである。
本実施形態では、第1貯水施設10よりも上流側の貯水施設がない。このため、第1貯水施設10に関する処理では、第2水量取得部32の第2水量Qu及び第3水量取得部33の第3水量Duは、0として算出される。一方、本実施形態では、第2貯水施設20に対して上流側に第1貯水施設10がある。このため、第2貯水施設20に関する処理では、第2水量取得部32の第2水量Quは、第1貯水施設10の第2放流量Q1に応じた値になる。また、第3水量取得部33の第3水量Duは、第1貯水施設10の第1放流量D1、第3放流量Ds1に応じた値になる。このように、下流側の貯水施設に対する流入量は、上流側の貯水施設からの放流量の影響を受ける。予測装置30は、このような差異を有する上流側の貯水装置に対する流入量の予測値と下流側の貯水装置に対する流入量の予測値とを個別に算出装置40に出力する。なお、図2に示すように、本実施形態では1つの予測装置30が設けられている。予測装置30は、図5に示すように、第1貯水施設10に関する処理と第2貯水施設20に関する処理とに個別のパラメータ(例えば、貯水施設10の第1水量Ru1と第2貯水施設20の第1水量Ru2等)を用いて、貯水施設毎の予測値を算出して出力する。予測装置30は、貯水施設毎に個別に設けられてもよい。
算出装置40は、例えば、貯水量範囲設定部41、現貯水量取得部42、基準日時決定部43、運用計画算出部44、例外処理部45として機能する。なお、図2に示すように、本実施形態では1つの算出装置40が設けられているが、算出装置40は、貯水施設毎に個別に設けられてもよい。
貯水量範囲設定部41は、貯水施設の貯水量として許容される水量の範囲を貯水施設毎に設定する。具体的には、貯水量範囲設定部41は、例えば第1貯水施設10の水位の上限と下限とを設定する。これによって、水位によって表される第1貯水施設10の貯水量の範囲を管理可能になる。また、貯水量範囲設定部41は、例えば第2貯水施設20の水位の上限と下限とを設定する。これによって、水位によって表される第2貯水施設20の貯水量の範囲を管理可能になる。本実施形態では、貯水量範囲設定部41は、第1貯水施設10と第2貯水施設20の水量の範囲に関する情報を含んでいるが、少なくとも1つの貯水施設の水量の範囲に関する情報を含んでいればよい。また、貯水量範囲設定部41は、上限と下限の両方を示す情報を含んでいるが、少なくとも上限を示す情報を含んでいればよい。
現貯水量取得部42は、貯水施設の現在の貯水量を取得する。具体的には、現貯水量取得部42は、例えば第1水位検知部14、第2水位検知部24から送信される水位を示す情報を取得することで、これらの水位が示す第1貯水施設10、第2貯水施設20の現在の貯水量の情報を取得する。
基準日時決定部43は、運用計画算出部44の処理において用いられる基準日時(DHn)の設定に関する処理を行う。運用計画算出部44は、予測装置30の予測値に基づいて、所定期間における貯水施設の第1放流量D及び第2放流量Qを算出する。すなわち、運用計画算出部44は、所定期間における貯水施設の第1放流量D及び第2放流量Qを算出することで、貯水施設に貯留される水の運用計画を導出する。運用計画算出部44は、貯水施設毎に第1放流量D及び第2放流量Qを算出する。すなわち、本実施形態の場合、運用計画算出部44は、第1貯水施設10の第1放流量D1及び第2放流量Q1と、第2貯水施設20の第1放流量D2及び第2放流量Q2とを個別に算出する。
例外処理部45は、第3放流量Dsを決定する。本実施形態の第3放流量Dsは、予測装置30による予測値との関連性が必ずしも反映されず、法的な理由等に基づいて放流される水量が決定されるパラメータである。例外処理部45は、予定を示すデータ等に基づいて、第1貯水施設10の第3放流量Ds1と、第2貯水施設20の第3放流量Ds2とを個別に決定する。
図7は、第1水量取得部31の機能構成例を示すブロック図である。第1水量取得部31は、例えば、実績モデル記憶部311、流入モデル設定部312、予想温湿度取得部313、予想降水量取得部314、流入変動量推定部315、水量予測部316等の各種機能により構成される。これらの機能は、予測処理用プログラム52aが実行処理されることで実現される。
実績モデル記憶部311は、第1貯水施設10、第2貯水施設20等、貯水施設が設けられている場所を含む地域における過去の流水量の変動実績をモデル化したデータを記憶する。当該データは、予測処理用プログラム52aに含まれる。実績モデル記憶部311は、例えば過去の年月日時の気象条件と流水量との関係を示すデータであってもよいし、複数年における同一年月日時の気象条件と流水量との関係を平均化する等、より一般化されたデータであってもよい。
流入モデル設定部312は、実績モデル記憶部311に記憶されているデータに基づいて、所定期間における貯水施設の流入量の予測モデルを設定する。具体的には、流入モデル設定部312は、現在日時を取得し、実績モデル記憶部311から読み出したデータのうち現在日時を開始日時とした所定期間のデータを抽出して予測モデルとして採用する。また、流入モデル設定部312は、例えば所定期間内を所定の単位時間で区切り、単位時間毎の流入量の変動を示すデータを予測モデルとして設定する。単位時間は、例えば1時間であるがこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
予想温湿度取得部313は、第1貯水施設10、第2貯水施設20等、貯水施設が設けられている場所を含む地域における現在日時から所定期間の予想気温、予想湿度等の気象に関する情報を取得する。予想降水量取得部314は、第1貯水施設10、第2貯水施設20等、貯水施設が設けられている場所を含む地域における現在日時から所定期間の降水量に関する情報を取得する。当該降水量は、雨に限らず、雪、霰、雹等、水の流入をもたらしうる気象現象によるものを含む。具体的には、予想温湿度取得部313、予想降水量取得部314は、例えば通信回線Nを介して接続された外部の気象情報提供装置から配信される降水確率その他の気象に関する情報を受信することで、これらの情報を取得する。
流入変動量推定部315は、予想温湿度取得部313、予想降水量取得部314により取得された情報に基づいて推定される、流入モデル設定部312により設定された予測モデルが示す単位時間毎の流入量の変動量を算出する。具体的には、流入変動量推定部315は、例えば予想温湿度取得部313、予想降水量取得部314により取得された所定期間の降水確率その他の気象に関する情報と、実績モデル記憶部311に記憶されている過去の所定期間における気象条件との差異に基づいて、予測モデルが示す流入量を基準として推定される変動量を算出する。例えば、予想温湿度取得部313、予想降水量取得部314により取得された所定期間の降水確率その他の気象に関する情報が、実績モデル記憶部311に記憶されている過去の所定期間よりも降雨日が多くなることを示している場合、流入変動量推定部315は、降雨による流入量の増加分を算出する。
水量予測部316は、流入モデル設定部312が示す予測モデルに流入変動量推定部315が算出した変動量を反映して所定期間の流入量を、第1水量Ruとして算出装置40に出力される。
第1水量取得部31による第1水量Ruの出力は、第1貯水施設10と第2貯水施設20とで個別に行われる。なお、図5では、貯水施設毎に異なる第1水量Ruとして、第1貯水施設10の第1水量Ru1と第2貯水施設20の第1水量Ru2とを例示しているが、第1貯水施設10と第2貯水施設20に共通の第1水量Ruを採用するようにしてもよい。例えば、第1貯水施設10の立地と第2貯水施設20の立地との関係に基づいて、第1貯水施設10と第2貯水施設20とが気象条件的に同一の地域にあるとみなして差し支えない場合、第1水量取得部31は、共通の第1水量Ruを採用するようにしてもよい。
図8は、発電用水量と発電効率との関係の一例を示すグラフである。貯水施設からの第2放流量Q、すなわち、発電施設で発電に用いられる発電用水として機能する水の量(発電用水量)は、貯水施設と組になっている発電施設のスペックによって単位時間あたりの最大水量(Q(max))が決定されている。
一方、図8で例示するように、本実施形態の発電施設において、単位時間あたりの発電効率が最高(max)になる最適水量Q(η)は、最大水量(Q(max))未満の水量である。最適水量Q(η)は、例えば最大水量(Q(max))の85[%]から90[%]の範囲内の水量である。このため、発電用水量を他の水量(例えば、最大水量(Q(max)))とする必然がない限り、発電用水量は最適水量Q(η)又は最適水量Q(η)により近似する水量であることが望ましい。
本実施形態の算出装置40は、所定期間の発電用水量を最適水量Q(η)にすることができる場合、所定期間の発電用水量を最適水量Q(η)にするよう第2放流量Qを算出する。なお、最大水量(Q(max))及び最適水量Q(η)は、通常、発電施設毎に個別であるが、同じスペックである複数の発電施設がある場合には当該複数の発電施設で最大水量(Q(max))及び最適水量Q(η)を共通化してもよい。
なお、図8における曲線P2は、貯水施設の水位が上限である場合の発電用水量と発電効率との関係を示す。また、曲線P3は、貯水施設の水位が下限である場合の発電用水量と発電効率との関係を示す。このように、ダム式又はダム水路式では、貯水施設の水位に応じて発電効率も変動し得るので、算出装置40による第2放流量Qの制御では、水位と発電効率との関係の変動をパラメータに加えてもよい。また、曲線P1が示すように、貯水施設の水位が下限より高く、上限より低い水位である場合の発電用水量と発電効率との関係を一律で採用することで処理を簡略化するようにしてもよい。図8で例示している最適水量Q(η)は、曲線P1の最適水量Q(η)である。
図9は、貯水施設における貯水量の時系列に沿った変動パターンの一例を示すグラフである。図9に示すように、基準日時(DHn)まで漸減する見込みの貯水量が基準日時(DHn)以降の降水等によって増加する傾向が予測された場合を想定する。基準日時(DHn)は、所定期間内の日時であり、本実施形態において、所定期間を2つの期間に分割する分割タイミングとして機能する。所定期間は、分割タイミングの前後で第1期間と第2期間とに分けられる。
基準日時(DHn)以降の貯水量の増加の度合いによっては、無効放流を行わない限り、貯水量が上限(CwH)を超えてしまうことがある。そこで、運用計画算出部44は、必要に応じて無効放流を行うための第1放流量Dを算出する。これによって、上限(CwH)を超えた超過水量ODが生じる貯水量の変動パターンSPE1が生じることが抑制され、例えば超過水量ODが生じない貯水量の変動パターンSP1のように貯水量が制御される。第1放流量Dに0より大きい値が設定される場合、第1放流量Dの値は、超過水量OD分を放流し、貯水量を上限(CwH)以下にするための値になり、予測された貯水量の増加の度合いに応じる。
本実施形態では、無効放流を行うことはできるだけ避けるべきものとして扱われる。このため、運用計画算出部44は、まず、第2放流量Qを最大水量(Q(max))にすることで、上限(CwH)を超えた超過水量ODが生じないようにすることができるかを判定する。ここで、無効放流をさらに行わなければ超過水量ODが生じてしまうと判定された場合、運用計画算出部44は、無効放流を行うための第1放流量Dを算出する。無効放流が行われる貯水施設では、無効放流と同時に放流される第2放流量Qは、最大水量(Q(max))になる。
また、基準日時(DHn)以降の貯水量の増加の度合いによっては、無効放流が必要ないだけでなく、第2放流量Qを最適水量Q(η)にしても貯水量を上限(CwH)以下に保つことができる。この場合、運用計画算出部44は、第1放流量Dを0にするとともに、第2放流量Qを最適水量Q(η)にする。例えば、基準日時(DHn)前から第2放流量Qを最適水位にすることが可能な場合、貯水量の変動パターンSP2のように、変動パターンSP1に比して基準日時(DHn)前の貯水量の漸減の度合いが緩やかになる。
図10は、貯水施設における貯水量の時系列に沿った変動パターンの別の一例を示すグラフである。第2放流量Qの大きさによっては、貯水量が下限(CwL)を下回ることが予測される場合がある。このような、貯水量が下限(CwL)を下回る貯水量の変動パターンSPE2を避ける目的で、運用計画算出部44は、第2放流量Qを適宜減少させる。これによって、例えば貯水量の変動パターンSP3のように、貯水量を上限(CwH)と下限(CwL)の範囲内に収めることができる。
図11は、分割タイミングの決定に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。基準日時決定部43は、貯水施設毎に、分割タイミングの決定に係る処理を行う。
基準日時決定部43は、1つの発電施設と組になっている1つの貯水施設からの発電用水量を最大水量(Q(max))と仮定する(ステップS1)。基準日時決定部43は、予測装置30から出力された所定期間の予測値に基づいて、貯水施設の水位の変動を推定する(ステップS2)。基準日時決定部43は、ステップS2の処理において、予測値が示す当該1つの貯水施設への流入量による増加分と、発電用水量を最大水量(Q(max))としていることによる当該1つの貯水施設からの放流量による減少分の両方を参照する。基準日時決定部43は、ステップS2の処理において、現在日時から所定期間内に変動し得る水位を単位時間単位で算出する。なお、予測装置30から出力される、1つの貯水施設(例えば、第1貯水施設10又は第2貯水施設20)に所定期間に流入する水量の予測値とは、当該1つの貯水施設の上流側の貯水施設の第1水量Ruと、第3水量Duと、第2水量Quとを合わせた値である。第1水量Ru、第3水量Du及び第2水量Quは例えば、単位時間あたりの値であるものとする。なお、上流側の貯水施設がない場合、第2水量Qu及び第3水量Duは0である。
基準日時決定部43は、ステップS2の処理の結果、以下の関係式(1)を満たすタイミングがあるか判定する(ステップS3)。すなわち、基準日時決定部43は、ステップS3の処理によって、最大水量(Q(max))である第2放流量Qと第3放流量Dsの合算値以上の予測値が出ているタイミングが所定期間内にあるか判定する。
Ru+Du+Qu≧Q(max)+Ds…(1)
関係式(1)を満たすタイミングがあると判定された場合(ステップS3;Yes)、基準日時決定部43は、関係式(1)が満たされる至近のタイミングを基準日時(DHn)とする(ステップS4)。至近のタイミングとは、例えば、単位時間単位で、関係式(1)が満たされる直前の日時である。つまり、最大水量(Q(max))である第2放流量Qと第3放流量Dsの合算値を考慮した場合、基準日時(DHn)前には貯水量が漸減し、基準日時(DHn)後には貯水量が増加する。一方、関係式(1)を満たすタイミングがないと判定された場合(ステップS3;No)、基準日時決定部43は、現在日時から(10−x)日後のタイミングを基準日時(DHn)とする(ステップS5)。ステップS5の処理におけるxの値は予め定められており、例えば、1から9の範囲内の自然数である。このxの値は、所定期間が10日間である場合の例であり、所定期間の具体的な値に応じてxの値も適宜変更可能である。
図12から図19は、1つの貯水施設の第1放流量D及び第2放流量Qの算出に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。1つの貯水施設とは、1つの発電施設と1組を構成する1つの貯水施設であり、例えば第1貯水施設10又は第2貯水施設20のいずれか一方である。図12から図19を参照して説明する処理は、基準日時決定部43により決定された基準日時(DHn)を前提とする。運用計画算出部44は、貯水施設毎に、第1放流量D及び第2放流量Qの算出に係る処理を行う。
運用計画算出部44は、基準日時(DHn)後の第1放流量Dに0を設定する(ステップS11)。運用計画算出部44は、基準日時(DHn)後、第2放流量Qを最大水量(Q(max))にして放流した場合における第2期間の経過後(又は、x日後)の貯水量(Cwi)を以下の式(2)を用いて算出する(ステップS12)。基準日時(DHn)から第2期間の経過後とは、すなわち、所定期間の開始時(例えば、現在日時)を基準として、所定期間の経過後である。式(2)等、1つの貯水施設の第1放流量D及び第2放流量Qの算出に係る処理における第1水量Ru、第3水量Du及び第2水量Qu並びに第3放流量Dsは、当該1つの貯水施設の上流側の貯水施設の第3放流量Dsである。
運用計画算出部44は、所定期間の開始から基準日時(DHn)までの期間、第2放流量Qを最大水量(Q(max))にして放流した場合における所定期間後の貯水量(Cwd(max))を以下の式(3)を用いて算出する(ステップS13)。
運用計画算出部44は、式(3)で求めた貯水量(Cwd(max))が、1つの貯水施設における貯水量の下限(CwL)を下回るか否か判定する(ステップS14)。ここで、貯水量の下限(CwL)を下回ると判定された場合(ステップS14;Yes)の処理については後述する。貯水量の下限(CwL)、後述する処理で用いられる水位の上限(HH)等は、例えば第1貯水施設データ62b、第2貯水施設データ62c等の情報を貯水量範囲設定部41が読み出すことで得られる。
ステップS14において貯水量の下限(CwL)以上であると判定された場合(ステップS14;No)、運用計画算出部44は、基準日時(DHn)前の第1期間の第2放流量Qを最大水量(Q(max))とする(ステップS15)。
運用計画算出部44は、所定期間の開始から基準日時(DHn)までの貯水量の変動量(ΔCw1)を、以下の式(4)を用いて算出する(ステップS16)。
ΔCw1=Cwi−Cwd(max)…(4)
運用計画算出部44は、現在の貯水量(Cwo)と、ステップS16の処理で求められた貯水量の変動量(ΔCw1)に基づいて、基準日時(DHn)における貯水量(Cwn1)を以下の式(5)を用いて算出し、算出された貯水量に対応する水位(Hn1)を求める第1水位推定処理を行う(ステップS17)。現在の貯水量(Cwo)は、例えば第1水位検知部14、第2水位検知部24等、貯水量及び水位の少なくとも一方を検知するための構成から送信される情報を現貯水量取得部42が取得することで得られる。
Cwn1=Cwo+ΔCw1…(5)
運用計画算出部44は、基準日時(DHn)から第2期間の経過後(又は、x日後)までの毎時間水位(H)を第1水量Ru、第3水量Du、第2水量Qu、最大水量(Q(max))及び第3放流量Dsに基づいた貯水量の変動から求め、その期間に1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn)になることがあるか否か判定する(ステップS18)。ステップS18において、基準日時(DHn)における水位は、ステップS17の処理で求められた水位(Hn1)である。ここで、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn)になると判定された場合(ステップS18;Yes)、運用計画算出部44は、無効放流を行うための第1放流量Dを算出する。すなわち、運用計画算出部44は、第1放流量Dに0より大きい値を設定するための無効放流量の算出を行い(ステップS19)、処理を終了する。この場合、第1放流量Dの値は、上記の通り、超過水量OD分を放流し、貯水量を上限(CwH)以下にするための値になる。
このように、運用計画算出部44は、所定期間における1つの貯水施設の第1放流量Dを0とし、かつ、所定期間における1つの貯水施設の第2放流量Qを最大水量(Q(max))とする前提において、予測値に基づいた1つの貯水施設の貯水量が上限を上回る超過予想が成立した場合、1つの貯水施設の貯水量が上限以下となる第1放流量Dを算出する。また、運用計画算出部44は、超過予想が成立しない場合、所定期間における1つの貯水施設の第1放流量Dを0とする。ここで、超過予想が成立する場合とは、例えばステップS18において1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn)になると判定された場合(ステップS18;Yes)である。また、超過予想が成立しない場合とは、ステップS18において1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn2)にならないと判定された場合(ステップS18;No)である。
ステップS18において1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn2)にならないと判定された場合(ステップS18;No)、運用計画算出部44は、基準日時(DHn)後、第2放流量Qを最適水量Q(η)にして放流した場合における第2期間の経過後(又は、x日後)の貯水量(Cwi)を以下の式(6)を用いて算出する(ステップS20)。
運用計画算出部44は、所定期間の開始から基準日時(DHn)まで、第2放流量Qを最適水量Q(η)にして放流した場合における所定期間後の貯水量(Cwd(η))を以下の式(7)を用いて算出する(ステップS21)。
運用計画算出部44は、式(7)で求めた貯水量(Cwd(η))が、1つの貯水施設における貯水量の下限(CwL)を下回るか否か判定する(ステップS22)。ここで、貯水量の下限(CwL)を下回ると判定された場合(ステップS22;Yes)の処理については後述する。
ステップS22において貯水量の下限(CwL)以上であると判定された場合(ステップS22;No)、運用計画算出部44は、基準日時(DHn)前の第1期間の第2放流量Qを最適水量Q(η)とする(ステップS23)。
運用計画算出部44は、所定期間の開始から基準日時(DHn)までの貯水量の変動量(ΔCw2)を、以下の式(8)を用いて算出する(ステップS24)。
ΔCw2=Cwi−Cwd(η)…(8)
運用計画算出部44は、現在の貯水量(Cwo)と、ステップS24の処理で求められた貯水量の変動量(ΔCw2)に基づいて、基準日時(DHn)における貯水量(Cwn2)を以下の式(9)を用いて算出し、算出された貯水量に対応する水位(Hn2)を求める第1水位推定処理を行う(ステップS25)。
Cwn2=Cwo+ΔCw2…(9)
運用計画算出部44は、基準日時(DHn)から第2期間の経過後(又は、x日後)までの毎時間水位(H)を第1水量Ru、第3水量Du、第2水量Qu、最適水量Q(η)及び第3放流量Dsに基づいた貯水量の変動から求め、その期間に1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn)になることがあるか否か判定する(ステップS26)。ステップS26において、基準日時(DHn)における水位は、ステップS25の処理で求められた水位(Hn2)である。ここで、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn)にならないと判定された場合(ステップS26;No)、運用計画算出部44は、基準日時(DHn)後の第2期間の第2放流量Qを最適水量Q(η)とし(ステップS27)、処理を終了する。
このように、運用計画算出部44は、第1放流量Dを0として、所定期間における1つの貯水施設の第2放流量Qを最適水量Q(η)とする前提において、予測値に基づいた1つの貯水施設の貯水量が上限と下限の範囲内に収まる所定条件が成立する場合、1つの貯水施設の第2放流量Qを最適水量Q(η)とする。本実施形態では、運用計画算出部44は、所定期間のうち第1期間の第2放流量QをステップS23の処理で最適水量Q(η)とし、第2期間の第2放流量QをステップS27の処理で最適水量Q(η)としている。これによって、運用計画算出部44は、所定期間の第2放流量Qを最適水量Q(η)としている。所定条件に収まることの判定は、例えばステップS22の判定及びステップS26の判定による。
一方、ステップS26において、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn)になると判定された場合(ステップS26;Yes)、運用計画算出部44は、基準日時(DHn)後の第2期間の第2放流量Qを、現在設定されている水量から所定割合分だけ増加させる(ステップS28)。ここで、所定割合分とは、例えば1つの貯水施設と組になっている発電施設の最大水量(Q(max))を定格とした割合である。本実施形態では、1回のステップS28の処理で定格の2%だけ第2放流量Qが増加される。ステップS28の処理が1度も行われていない時点での第2放流量Qは、最適水量Q(η)である。
運用計画算出部44は、ステップS28の処理後の第2放流量Qが最大水量(Q(max))以下であるか判定する(ステップS29)。ステップS28の処理後の第2放流量Qが最大水量(Q(max))以下であると判定された場合(ステップS29;Yes)、運用計画算出部44は、基準日時(DHn)から第2期間の経過後(又は、x日後)までの毎時間水位(H)を第1水量Ru、第3水量Du、第2水量Qu、ステップS28の処理後の第2放流量Q及び第3放流量Dsに基づいた貯水量の変動から求め、その期間に1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn)になることがあるか否か判定する(ステップS30)。ここで、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn)になると判定された場合(ステップS30;Yes)、ステップS28の処理に移行する。一方、ステップS30において1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn)にならないと判定された場合(ステップS30;No)、運用計画算出部44は、その時点の第2放流量Qを基準日時(DHn)後の第2期間の第2放流量Qとし(ステップS31)、処理を終了する。
このように、運用計画算出部44は、第1放流量Dを0として、所定期間における1つの貯水施設の第2放流量Qを最適水量Q(η)とする前提において、所定条件が成立しない場合、所定期間を第1期間と第2期間とに分割タイミングで分け、第2期間において、1つの貯水施設の第2放流量Qを、最適水量Q(η)よりも大きく最大水量(Q(max))以下である単位時間あたりの水量である調節水量とすることで所定条件が成立するか判定する第1再試行処理を行う。調節水量の設定は、例えばステップS28の処理によって最適水量Q(η)から増加された水量である。当該調節水量が最大水量(Q(max))以下であることは、ステップS29の判定によって確認されている。第1再試行処理は、例えばステップS30の判定による。
また、運用計画算出部44は、第1再試行処理において所定条件が成立する場合、第1期間において、例えばステップS31の処理のように、第2放流量Qを最適水量Q(η)とし、第2期間において、第2放流量Qを調節水量とする。
なお、ステップS29において、ステップS28の処理後の第2放流量Qが最大水量(Q(max))を超えると判定された場合(ステップS29;No)、運用計画算出部44は、ステップS32の処理、ステップS33の判定を順次行う。ステップS32の処理は、ステップS13の処理と同様である。ステップS33の判定は、ステップS14の判定と同様である。
ステップS33において貯水量の下限(CwL)以上であると判定された場合(ステップS33;No)、運用計画算出部44は、基準日時(DHn)前の第1期間の第2放流量Qを最大水量(Q(max))とする(ステップS34)。その後、運用計画算出部44は、ステップS35及びステップS36の処理を行う。ステップS35の処理は、ステップS16の処理と同様である。ステップS36の処理は、ステップS17の処理と同様である。
なお、算出装置40がステップS13の処理で求められた貯水量(Cwd(max))等、一連の処理で算出された値を保持している場合、運用計画算出部44は、ステップS32からステップS36の処理を省略してもよい。
運用計画算出部44は、基準日時(DHn)から第2期間の経過後(又は、x日後)までの毎時間水位(H)を第1水量Ru、第3水量Du、第2水量Qu、最適水量Q(η)及び第3放流量Dsに基づいた貯水量の変動から求め、その期間に1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn)になることがあるか否か判定する(ステップS37)。ステップS37において、基準日時(DHn)における水位は、ステップS36の処理又はステップS17の処理で求められた水位(Hn1)である。ここで、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn)にならないと判定された場合(ステップS37;No)、運用計画算出部44は、基準日時(DHn)後の第2期間の第2放流量Qを最適水量Q(η)とし(ステップS38)、処理を終了する。
このように、運用計画算出部44は、第1再試行処理において所定条件が成立しない場合、第1期間における1つの貯水施設の第2放流量Qを最大水量(Q(max))とし、第2期間における1つの貯水施設の第2放流量Qを最適水量Q(η)としたときに所定条件が成立するか判定する第2再試行処理を行う。本実施形態では、運用計画算出部44は、所定期間のうち第1期間の第2放流量QをステップS34の処理で最大水量(Q(max))としている。第2再試行処理は、例えばステップS37の判定による。
また、運用計画算出部44は、第2再試行処理において所定条件が成立する場合、例えばステップS38の処理のように、第1期間において、第2放流量Qを最大水量(Q(max))とし、第2期間において、第2放流量Qを最適水量Q(η)とする。
一方、ステップS37において、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn)になると判定された場合(ステップS37;Yes)、運用計画算出部44は、ステップS39の処理を行う。ステップS39の処理は、ステップS28の処理と同様である。
運用計画算出部44は、ステップS39の処理後の第2放流量Qが最大水量(Q(max))以下であるか判定する(ステップS40)。ステップS39の処理後の第2放流量Qが最大水量(Q(max))以下であると判定された場合(ステップS40;Yes)、運用計画算出部44は、基準日時(DHn)から第2期間の経過後(又は、x日後)までの毎時間水位(H)を第1水量Ru、第3水量Du、第2水量Qu、ステップS39の処理後の第2放流量Q及び第3放流量Dsに基づいた貯水量の変動から求め、その期間に1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn)になることがあるか否か判定する(ステップS41)。ここで、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn)になると判定された場合(ステップS41;Yes)、ステップS39の処理に移行する。一方、ステップS41において1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位(Hn)にならないと判定された場合(ステップS41;No)、運用計画算出部44は、その時点の第2放流量Qを基準日時(DHn)後の第2期間の第2放流量Qとし(ステップS42)、処理を終了する。
このように、運用計画算出部44は、第2再試行処理において所定条件が成立しない場合、例えばステップS41の判定によるように、第2期間の1つの貯水施設の第2放流量Qを調節水量とすることで所定条件が成立するか判定する第3再試行処理を行う。
また、運用計画算出部44は、第3再試行処理において所定条件が成立する場合、例えばステップS42の処理のように、第1期間において、第2放流量Qを最大水量(Q(max))とし、第2期間において、第2放流量Qを調節水量とする。
なお、ステップS40において、ステップS39の処理後の第2放流量Qが最大水量(Q(max))を超えると判定された場合(ステップS40;No)、運用計画算出部44は、所定のエラー処理を行う(ステップS43)。所定のエラー処理とは、例えばステップS11からの処理を再度開始する処理である。運用計画算出部44は、ステップS11からの処理を所定回数繰り返しても所定のエラー処理に到達する場合、処理を中止するようにしてもよい。
次に、ステップS14、ステップS22、ステップS33において貯水量の下限(CwL)を下回ると判定された場合(ステップS14;Yes、ステップS22;Yes、ステップS33;Yes)の処理について、図17から図19のフローチャートを参照して説明する。
運用計画算出部44は、基準日時(DHn)前の第1期間に貯水量の下限(CwL)を下回らず発電に使用することができる水量(Cwd(lim))を、以下の式(10)を用いて算出する(ステップS51)。
運用計画算出部44は、基準日時(DHn)前の第1期間に最大水量(Q(max))を放流可能な時間(Tng(max))を、以下の式(11)を用いて算出する(ステップS52)。
Tng(max)=Cwd(max)/Q(max)…(11)
運用計画算出部44は、所定期間の開始から基準日時(DHn)までの時間(Tn)を前提として、以下の関係式(12)が成立するか判定する(ステップS53)。
Tng(max)/Tn≧Q(η)/Q(max)…(12)
ステップS53において、関係式(12)が成立すると判定された場合(ステップS53;Yes)、運用計画算出部44は、基準日時(DHn)前の第1期間における第2放流量Qを、以下の式(13)を用いて算出される値(Qa)とする(ステップS54)。
Qa=Cwd(lim)/Tn…(13)
その後、運用計画算出部44は、ステップS51の処理が開始されたきっかけとなった判定の2ステップ後の処理に移行する。例えば、ステップS14において貯水量の下限(CwL)を下回ると判定され(ステップS14;Yes)、ステップS51の処理が開始された場合、ステップS16の処理に移行する。また、ステップS22において貯水量の下限(CwL)を下回ると判定され(ステップS22;Yes)、ステップS51の処理が開始された場合、ステップS24の処理に移行する。また、ステップS33において貯水量の下限(CwL)を下回ると判定され(ステップS33;Yes)、ステップS51の処理が開始された場合、ステップS35の処理に移行する。
一方、ステップS53において、関係式(12)が成立しないと判定された場合(ステップS53;No)、運用計画算出部44は、基準日時(DHn)よりも前に最適水量Q(η)を放流可能な時間(Td(η))を、以下の式(14)を用いて算出する(ステップS55)。ここで、暫定設定日時(DHdi)は、基準日時(DHn)からステップS55の処理で求められた時間(Td(η))だけ溯った日時として設定される。
Td(η)=Cwd(lim)/Q(η)…(14)
運用計画算出部44は、第1期間のうち、暫定設定日時(DHdi)から基準日時(DHn)までの時間(Td(η))、第2放流量Qを最適水量Q(η)とし、第1期間のうちそれ以外の期間の第2放流量Qを0とした場合を前提とする。この前提で、運用計画算出部44は、第1期間における第1水量Ru、第3水量Du、第2水量Qu、第2放流量Q及び第3放流量Dsに基づいた貯水量の変動によって、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位が発生するか判定する(ステップS56)。ここで、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位が発生しないと判定された場合(ステップS56;No)、運用計画算出部44は、第1期間において暫定設定日時(DHdi)までは第2放流量Qを0とし、暫定設定日時(DHdi)から基準日時(DHn)までの第2放流量Qを最適水量Q(η)とする(ステップS57)。その後、運用計画算出部44は、ステップS51の処理が開始されたきっかけとなった判定の2ステップ後の処理に移行する。
一方、ステップS56において、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位が発生すると判定された場合(ステップS56;Yes)、運用計画算出部44は、所定の演算子(N)の初期値を1として設定する(ステップS58)。運用計画算出部44は、現在日時(DHo)を取得し(ステップS59)、以下の関係式(15)が成立するか判定する(ステップS60)。
DHdi−DHo≧N…(15)
関係式(15)が成立すると判定された場合(ステップS60;Yes)、運用計画算出部44は、暫定設定日時(DHdi)のN時間前から第2放流量Qを最適水量Q(η)としたパターンを算出する(ステップS61)。すなわち、運用計画算出部44は、ステップS56の処理における前提で「暫定設定日時(DHdi)から基準日時(DHn)までの時間(Td(η))、第2放流量Qを最適水量Q(η)とする」点を、「暫定設定日時(DHdi)のN時間前から基準日時(DHn)までの時間(Td(η))、第2放流量Qを最適水量Q(η)とする」に変更する。
ステップS61の処理で変更されたパターンを前提として、運用計画算出部44は、第1期間における第1水量Ru、第3水量Du、第2水量Qu、第2放流量Q及び第3放流量Dsに基づいた貯水量の変動によって、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位が発生するか判定する(ステップS62)。ここで、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位が発生すると判定された場合(ステップS62;Yes)、運用計画算出部44は、演算子(N)の値に1を加算する(ステップS63)。その後、ステップS60の処理に移行する。
一方、ステップS62において、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位が発生しないと判定された場合(ステップS62;No)、運用計画算出部44は、第1期間において暫定設定日時(DHdi)のN時間前までは第2放流量Qを0とし、暫定設定日時(DHdi)のN時間前から基準日時(DHn)までの第2放流量Qを最適水量Q(η)とする(ステップS64)。その後、運用計画算出部44は、ステップS51の処理が開始されたきっかけとなった判定の2ステップ後の処理に移行する。
なお、ステップS60において、関係式(15)が成立しないと判定された場合(ステップS60;No)、運用計画算出部44は、演算子(N)をリセットし、初期値(N=1)に戻す(ステップS65)。運用計画算出部44は、ステップS56において、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位が発生すると判定される原因となった、第1期間内において1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位が発生する日時を、直近日時(DHf)として設定する(ステップS66)。運用計画算出部44は、以下の関係式(16)が成立するか判定する(ステップS67)。
DHf−DHo≧N…(16)
関係式(16)が成立すると判定された場合(ステップS67;Yes)、運用計画算出部44は、現在日時(DHo)から直近日時(DHf)のN時間前まで第2放流量Qを最適水量Q(η)とし、直近日時(DHf)のN時間前から直近日時(DHf)までのN時間、第2放流量Qを最大水量(Q(max))とし、その後、基準日時(DHn)まで第2放流量Qを最適水量Q(η)としたパターンを算出する(ステップS68)。
ステップS68のパターンを前提として、運用計画算出部44は、第1期間における第1水量Ru、第3水量Du、第2水量Qu、第2放流量Q及び第3放流量Dsに基づいた貯水量の変動によって、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位が発生するか判定する(ステップS69)。ここで、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位が発生すると判定された場合(ステップS69;Yes)、運用計画算出部44は、演算子(N)の値に1を加算する(ステップS70)。その後、ステップS67の処理に移行する。
一方、ステップS69において、1つの貯水施設の上限水位(HH)を上回る水位が発生しないと判定された場合(ステップS69;No)、運用計画算出部44は、現在日時(DHo)から直近日時(DHf)のN時間前まで第2放流量Qを最適水量Q(η)とし、直近日時(DHf)のN時間前から直近日時(DHf)までのN時間、第2放流量Qを最大水量(Q(max))とし、その後、基準日時(DHn)まで第2放流量Qを最適水量Q(η)とする(ステップS71)。その後、運用計画算出部44は、ステップS51の処理が開始されたきっかけとなった判定の2ステップ後の処理に移行する。
なお、ステップS67において関係式(16)が成立しないと判定された場合(ステップS67:No)、運用計画算出部44は、所定のエラー処理を行う(ステップS72)。
以上、図12から図19を参照して、運用計画算出部44が行う処理の流れの一例を説明したが、当該処理の実施タイミングは任意である。例えば、運用計画算出部44は、単位時間毎に当該処理を行ってもよいし、気象条件に関する情報等の更新に応じて当該処理を行ってもよい。
以上、本実施形態によれば、0を超える第1放流量Dによる無効放流が生じる場合を、発電に用いられる第2放流量Qを最大流量にしてもなお1つの貯水施設の貯水量が上限を上回る場合に限定することができる。また、相対的に下流側の貯水施設が、上流側の貯水施設から放流された水が合流する河川から取水された水を貯留することを前提とするので、予測装置30による予測値の取得において、例えば上流側の貯水施設の第1放流量D、第2放流量Q、第3放流量Dsを考慮した第3水量Du、第2水量Quをパラメータに含めることができる。このように、本実施形態によれば、上流側の貯水施設と下流側の貯水施設との関係を考慮することができる。
また、超過予想が成立せず、第1放流量Dを0とすることができる場合に第2放流量Qを最適水量Q(η)とすることで、発電効率をより高めることができる。
また、所定期間の全てにおいて第2放流量Qを最適水量Q(η)とすることができない場合に、第2期間の第2放流量Qを調節水量とすることができるか判定することで、可能な限り高い発電効率を実現する可能性について検討することができる。
また、第2期間の第2放流量Qを調節水量とすることで、所定期間の全てにおいて第2放流量Qを最適水量Q(η)とすることができない場合であっても、所定条件が成立する範囲内で可高い発電効率を実現することができる。
また、所定期間の全てにおいて第2放流量Qを最適水量Q(η)とすることができず、第2期間の第2放流量Qを調節水量としただけでは所定条件が成立しない場合に、第1期間の第2放流量Qを最大水量(Q(max))として第2期間の第2放流量Qを最適水量Q(η)とすることができるか判定することで、可能な限り高い発電効率を実現する可能性について検討することができる。
また、第1期間の第2放流量Qを最大水量(Q(max))として第2期間の第2放流量Qを調節水量とすることで、所定期間の全てにおいて第2放流量Qを最適水量Q(η)とすることができない場合であっても、所定条件が成立する範囲内で可高い発電効率を実現することができる。
また、第1期間の第2放流量Qを最大水量(Q(max))として第2期間の第2放流量Qを調節水量としても所定条件が成立しない場合に、第1期間の第2放流量Qを最大水量(Q(max))として第2期間の第2放流量Qを調節水量とすることができるか判定することで、可能な限り高い発電効率を実現する可能性について検討することができる。
また、第1期間の第2放流量Qを最大水量(Q(max))として第2期間の第2放流量Qを調節水量とすることで、所定期間の全てにおいて第2放流量Qを最適水量Q(η)とすることができない場合であっても、所定条件が成立する範囲内で可高い発電効率を実現することができる。
なお、上記の実施形態はあくまで一例であり、本発明の技術的特徴を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。例えば、算出装置40により算出された第1貯水施設10、第2貯水施設20の第1放流量D及び第2放流量Qを実際に第1貯水施設10、第2貯水施設20の運用に適用してもよいし、算出装置40の処理結果を事前のシミュレーションに用いるようにしてもよい。
また、貯水量範囲設定部41によって設定されている貯水量の範囲(例えば、上限水位(HH)、下限水位(HL))は固定でなくてもよい。貯水量の範囲は、例えば、季節等の変動要因を考慮し、現在日時DHoに応じて変更されるよう設けられていてもよい。