JP6329855B2 - 焼成器具 - Google Patents

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Description

本発明は、焼成される部品を炉内で収容又は支持する焼成器具に関する。
従来、この種の焼成器具として、黒鉛板同士を結合してなる箱形の焼成容器が知られている。この焼成容器では、結合対象となる2つの黒鉛板にそれぞれピン孔が形成されていて、炭化接着剤が塗布されているピンが2つの黒鉛板のピン孔に跨がるように挿入されることで黒鉛板同士が結合されていた(例えば、特許文献1参照)。
実開平4−74296号公報(請求項1、図1、図5)
上述した従来の焼成器具では、黒鉛板の熱変形や搬送時の衝撃等によってピンが剪断破壊されてしまうことがある。また、黒鉛製のピン及び黒鉛板は硬質であるため、ピンに振動を伝達し易い。そのため振動により炭化接着剤が破壊され、ピンが抜け落ちる問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来と比較して耐久性が高い焼成器具の提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の焼成される部品を炉内で収容又は支持する焼成器具は、少なくとも2つ以上の黒鉛製の器具構成部品と、それら器具構成部品同士を結合する少なくとも1つの黒鉛製のピンと、前記ピンで結合される2つの前記器具構成部品に跨がって形成され、前記ピンを収容するピン収容孔とで構成されており、前記ピンと前記ピン収容孔の内面との間に、前記器具構成部品同士の間の相対的な動きを許容する孔内隙間を有することを特徴とする、焼成される部品を炉内で収容又は支持する焼成器具である。
ピンとピン収容孔の内面との間に、器具構成部品同士の間の相対的な動きを許容する孔内隙間を有するように構成すれば、熱膨張や反り、振動などによって器具構成部品間に生じるピンに剪断力を与える動きに対して、ピンが孔内隙間を動くことで剪断力が緩和され、ピンの剪断破壊が抑制される。
本発明の焼成器具は、直方体状の内部空間を囲むように配置されて互いに前記ピンで結合されている4つの前記器具構成部品を有することが好ましい。器具構成部品で内部空間を囲むように構成すれば、内部空間内の熱が逃げ難くなる。
本発明の焼成器具は、前記器具構成部品の外面に開口して前記ピン収容孔の一端部に連通すると共に前記ピン収容孔より段付き状に狭くなり、前記ピンが前記ピン収容孔に収容されるときに通過するピン通過孔を有することが好ましい。器具構成部品の外面に開口してピン収容孔の一端部に連通したピン通過孔を設ければ、器具構成部品の外面よりピンを差し込んでピン収容孔に収容することができる。また、ピン通過孔をピン収容孔より段付き上に狭くすれば、ピン収容孔内に収容されたピンが振動などにより動いた場合に、ピンがピン通過孔から外部へ抜け難くなる。
本発明の焼成器具の前記ピン通過孔は、内面が円筒形状の丸孔であることが好ましい。ピン通過孔の内面を円筒形上にすれば、応力集中が起こり難くなり、クラックの発生が抑制される。
本発明の焼成器具の前記ピン収容孔は、前記ピン通過孔から離れるに従って拡径するテーパー孔であることが好ましい。ピン収容孔をピン通過孔から離れるに従って拡径するテーパー孔にすれば、器具構成部品同士がピン収容孔の軸と垂直な方向にずれる場合のピンの可動範囲が広がる。
本発明の焼成器具の前記ピン収容孔は、その内面が円筒形状の丸孔であることが好ましい。ピン収容の内面を円筒形上にすれば、応力集中が起こり難くなり、クラックの発生が抑制される。
本発明の焼成器具の前記ピン収容孔は、テーパー孔であることが好ましい。ピン収容孔をピン通過孔から離れるに従って拡径するテーパー孔にすれば、器具構成部品同士がピン収容孔の軸と垂直な方向にずれる場合のピンの可動範囲が広がる。また、ピン収容孔をピン通過孔から離れるに従って縮径するテーパー孔にすれば、ピンを収容するときの器具構成部品同士の位置ずれの許容範囲が広がる。
本発明の焼成器具の前記ピン収容孔は、断面が軸方向と直交する方向に長くなっている長孔であることが好ましい。ピン収容孔を断面が軸方向と直交する方向に長くなっている長孔にすれば、その長手方向のピンの可動範囲が広がる。
本発明の焼成器具には、2つの前記器具構成部品に跨がって複数の前記ピン収容孔が形成されていることが好ましい。ピン収容孔を複数形成すれば、器具構成部品同士の結合力が向上する。また、1つのピン収容孔のピンが破損しても、他のピン収容孔のピンによって器具構成部品同士の結合が保たれる。
本発明の焼成器具の1つの前記ピン収容孔には、複数の前記ピンが収容されていることが好ましい。複数のピンを収容すれば、ピンが剪断力によって破損し難くなる。また、ピンが1つ破損しても、他のピンによって器具構成部品同士の結合が保たれる。
本発明の焼成器具は、前記ピンで結合されている2つの前記器具構成部品の一方と他方とに分けて形成され、相互にスライド係合してスライド方向と交差する方向で2つの前記器具構成部品を分離不能に結合するスライド係合突部及びスライド係合溝と、前記スライド係合突部と前記スライド係合溝の内面の間に設けられて、2つの前記器具構成部品の相対的な動きを許容する溝内隙間とを有していることが好ましい。器具構成部品をスライド係合で結合すれば、1点への応力集中が起こり難くなり、また、ピンにかかる力の方向が限定される。さらに、スライド係合突部とスライド係合溝の内面の間に溝内隙間を有するように構成すれば、器具構成部品間の熱膨張や反り、振動などによって生じるスライド係合部への応力が緩和される。
本発明の焼成器具の前記ピン収容孔は、前記スライド係合突部と、前記スライド係合溝を囲む前記器具構成部品の壁部とに跨がって形成されていることが好ましい。ピン収容孔をスライド係合突部とスライド係合溝を囲む器具構成部品の壁部とに跨がって形成すれば、器具構成部品同士をずらそうとする動きに対して、ピンとスライド係合部とに分散して応力がかかるので、ピンに加わる応力が緩和される。
本発明の焼成器具の前記スライド係合突部は、一方の前記器具構成部品の表裏の一方の面から突出し、前記ピン収容孔は、前記スライド係合突部内をそのスライド係合突部の突出方向に延び、前記一方の器具構成部品の他方の面に開口して前記ピン収容孔に連通すると共に前記ピン収容孔より段付き状に狭くなり、前記ピンが前記ピン収容孔に収容されるときに通過するピン通過孔を有することが好ましい。ピン収容孔をスライド係合突部内のそのスライド係合突部の突出方向に延びるように構成すれば、ピン収容孔に収容されたピンによって器具構成部品同士のスライド係合方向へのずれが抑制される。
本発明の第1実施形態に係る焼成器具の斜視図 焼成器具の分解斜視図 黒鉛板同士の結合部分の断面図 第2実施形態の黒鉛板同士の結合部分の断面図 第3実施形態の黒鉛板同士の結合部分の断面図 第4実施形態の黒鉛板同士の結合部分の断面図 第5実施形態の黒鉛板同士の結合部分の断面図 第6実施形態の黒鉛板同士の結合部分の斜視図 第6実施形態の黒鉛板同士の結合部分の断面図 第7実施形態の黒鉛板同士の結合部分の断面図 第8実施形態の黒鉛板同士の結合部分の斜視図 第9実施形態の黒鉛板同士の結合部分の斜視図 第10実施形態の黒鉛板同士の結合部分の斜視図 第10実施形態の黒鉛板同士の結合部分の断面図
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。図1には、本実施形態の焼成器具10が示されている。この焼成器具10は、4つの帯状の黒鉛板を結合して枠形構造にしたものであり、内側に本発明に係る「直方体状の内部空間」を備えている。焼成器具10を構成する4つの黒鉛板は、本発明の「器具構成部品」に相当し、第1の水平方向で互いに対向する第1黒鉛板11と、第2の水平方向で互いに対向する第2黒鉛板12とからなり、互いに対向する第1黒鉛板11の間に第2黒鉛板12が挟まれた状態に配置されている。
図2に示すように、互いに対向する第2黒鉛板12の相互の対向した内面12Nには、長手方向の両端寄り位置から両端に亘って徐々に板厚が大きくなるように肉盛部13が形成されている。そして、各肉盛部13によって幅が広くなった第2黒鉛板12の各端面12Aに、上下方向に延びたスライド係合溝14が形成されている。本実施形態のスライド係合溝14は、一般にアリ溝と呼ばれる構造をなし、第2黒鉛板12における溝開口から奥側に向かうに従って溝幅が徐々に大きくなっていて、スライド係合溝14を上下方向から見た形状は左右対称な台形になっている。
一方、両第1黒鉛板11の相互に対向した内面11Nにおける横方向の両端部には、第2黒鉛板12のスライド係合溝14にスライド係合するスライド係合突部15がそれぞれ形成されている。スライド係合突部15は、第1黒鉛板11から離れるに従って幅が大きくなっていて、スライド係合突部15を上下方向から見た形状もスライド係合溝14と同様の左右対称な台形になっている。
そして、第1黒鉛板11又は第2黒鉛板12の何れか一方を他方に対して上下方向でずらし、スライド係合溝14の一端部からスライド係合突部15の一端部を挿入して、スライド係合溝14とスライド係合突部15とがスライド係合されている。そして、スライド係合溝14とスライド係合突部15とがスライド係合した状態で、スライド係合溝14の内面とスライド係合突部15との間には隙間が形成されるようになっている。
具体的には、図3に示すように、スライド係合突部15を上下方向から見た形状である台形(以下、「突部台形D1」という)の左右対称となる中心線とスライド係合溝14を上下方向から見た形状である台形(以下、「孔台形D2」という)の左右対称となる中心線とを重ね、かつ、第2黒鉛板12の端面12Aを第1黒鉛板11の内面11Nに面当接させた状態で、突部台形D1の2つの斜辺S1及び底辺T1と孔台形D2の2つの斜辺S2及び底辺T2とがそれぞれ平行になり、斜辺S1,S2とを結んだ直線が垂直になる間隔L1と、底辺T1,T2とを結んだ直線が垂直になる間隔L2とを有している。即ち、スライド係合突部15とスライド係合溝14の内面の間に、第1と第2の黒鉛板11,12の相対的な動きを許容する溝内隙間20が形成されている。
間隔L1及びL2は、黒鉛板の反りなどによる相対的な動きを許容するように適宜決めることができ、間隔L1は0.05〜5[mm]が望ましく、0.05〜2.5[mm]がさらに望ましく、特には0.05〜1.5[mm]が望ましい。間隔L1が0.05[mm]より小さい場合、黒鉛板の結合部に発生する反り等の相対的な動きを許容できなくなり、黒鉛板の結合箇所が破損してしまう。また、5[mm]よりも大きい場合、黒鉛板の結合箇所に大きな隙間を作るため、ピンに曲げ応力がかかり、ピンが破断してしまう。間隔L2は0.05〜10[mm]が望ましく、0.05〜5[mm]がさらに望ましく、特には0.05〜2.5[mm]が望ましい。間隔L2が0.05[mm]より小さい場合、黒鉛板の結合部に発生する反り等の相対的な動きを許容できなくなり、黒鉛板の結合箇所が破損してしまう。間隔L2が5[mm]より大きい場合、黒鉛板の結合箇所に大きな隙間を作るため、ピンに曲げ応力がかかり、ピンが破断してしまう。
図2に示すように、第1黒鉛板11の各スライド係合突部15の横方向の両端部には、上下方向の中央にピン孔16がそれぞれ形成されている。図3に示すように、ピン孔16は、各スライド係合突部15の幅方向の中央において、第1黒鉛板11の外面11Gからスライド係合突部15の先端面に亘って貫通した断面円形の孔であって、途中で内径が段付き状に拡径されている。即ち、ピン孔16は、途中に段差面16Dを備え、その段差面16Dより第1黒鉛板11の外面11G側が内径が比較的小さいピン通過孔16Aをなす一方、スライド係合突部15側が内径が比較的大きなピン収容孔16Bになっている。
また、第2黒鉛板12には、スライド係合溝14における前記孔台形D2の中心とスライド係合突部15における前記突部台形D1の中心とを一致させた状態で第1黒鉛板11のピン収容孔16Bの同軸延長線上となる位置にピン収容孔17が形成されている。そのピン収容孔17は、第1黒鉛板11のピン収容孔16Bと同一径をなし、一端がスライド係合溝14の奧面に開口して第1黒鉛板11側のピン収容孔16Bと連通する一方、他端が閉塞されている。
ピン収容孔16B,17には、黒鉛製のピン18が収容されている。ピン18は、断面円形の丸棒であり、その外径は、ピン収容孔16Bの内径と略同一になっている。ピン収容孔16B,17の内径は、ピン18の外径に対して、0.1〜20%大きくなっており、この差は、好ましくは0.5〜15%であり、1〜10%が特に好ましい。また、ピン通過孔16Aの内径は、ピン18の外径に対して、0.01〜10%大きくなっており、この差は、好ましくは0.01〜5%であり、0.01〜2%が特に好ましい。そして、ピン通過孔の内径は、ピン収容孔の内径よりも小さくし、前記範囲内にて調整する。これにより、ピン18とピン収容孔16B,17の内面とに間には、第1黒鉛板11と第2黒鉛板12との相対的な動きを許容する孔内隙間19が形成される。ピン収容孔の内径とピンの外径との差が、ピンの外径の0.1%より小さい場合、ピン収容孔内でピンが動けなくなり、ピンが破壊され易く、20%を超える場合、器具構成部品の相対移動が大きくなるので、ピンには曲げ応力が大きく加わり折損してしまう。また、ピン通過孔の内径とピンの外径との差が、ピンの外径の0.01%よりも小さい場合、ピン通過孔をピンが通過する際に、ピン通過孔内面から受ける摩擦力などによりピンが破損し、20%を超える場合、ピン収容孔にあるピンがピン通過孔を通って外部へと抜ける。
また、第2黒鉛板12の端面12Aを第1黒鉛板11の内面11Nに面当接させた状態で、ピン孔16の段差面16Dからピン収容孔17の奧面までの全長が、ピン18の全長に対して1〜20%大きくなっており、この差は、好ましくは2〜15%であり、特には3〜7%が好ましい。ピン18の全長や外形寸法は適宜決めればよいが、全長15〜50[mm]で外径寸法2〜10[mm]が好ましい。
そして、ピン18は、第1黒鉛板11のスライド係合突部15と第2黒鉛板12のスライド係合溝14とがスライド係合され、ピン孔16とピン収容孔17とが同軸上に配置された状態でピン通過孔16A側からピン収容孔16B,17に挿入される。ピン18は、ピン通過孔16Aを通過すると、ピン収容孔16B,17内でピン通過孔16Aの中心からずれた位置に納まり、抜け止めされる。
なお、上記した第1及び第2の黒鉛板11,12は、コークス粒子、ピッチ、コールタールの混練物を成形、焼成して黒鉛にしてから、後述するスライド係合溝14及びスライド係合突部15を切削加工し、かつ、ピン孔16及びピン収容孔17をルーターで穿孔して製造される。また、ピン18は、第1及び第2の黒鉛板11,12と同様にコークス粒子、ピッチ、コールタールの混練物を成形、焼成して黒鉛にしてなる。そして、例えば、1つの第2黒鉛板12の両側のスライド係合溝14に、2つの第1黒鉛板11の一端のスライド係合突部15がスライド係合される。次いで、残りの第2黒鉛板12が両第1黒鉛板11の間に挿入され、その第2黒鉛板12のスライド係合溝14と両第1黒鉛板11の他端側のスライド係合突部15とがスライド係合される。そして、各ピン孔16にピン通過孔16A側からピン18が挿入され、ピン18より細いシャフトでピン通過孔16Aを通過する位置までピン18が押し込まれてピン収容孔16B,17に収容される。この際、ピン18は、従来のように炭化接着剤を使用せずに済むので、歩留まりがよく、また、組み付け作業を容易に行うことができる。全てのピン18がそれぞれピン収容孔16B,17に収容されると各スライド係合突部15とスライド係合溝14とがスライド係合した状態で維持され、焼成器具10が完成する。
本実施形態の焼成器具10の構成に関する説明は、以上である。次に、焼成器具10の作用効果について説明する。
焼成器具10は、図示しない黒鉛製のトレイの上に配置されて内部に焼成対象物を収容し、上方から図示しない黒鉛製の蓋板を乗せられた状態で焼成炉内に配置され、内部の焼成対象物を焼成するために使用される。焼成器具10を構成する第1と第2の黒鉛板11,12及びピン18は黒鉛製なので、高温環境下でも利用でき、さらに、熱で生じた変形による応力に対して耐えることが可能な強度を有する。なお、焼成炉の高温環境下において焼成器具10内は焼成器具の熱伝導や輻射熱により、焼成器具10外に比べて高温環境を維持し易く、かつ、温度分布が均一になり、これにより焼成対象物の品質が向上する。
ところで、焼成器具10は、搬送等により様々な振動を受ける。また、焼成器具10がトレイの上に配置されるときなどのハンドリング時に、衝撃を受ける。さらには、第1と第2の黒鉛板11,12と焼成対象物とが部分的に反応し、黒鉛とその反応物との熱膨張率との違いによって、第1と第2の黒鉛板11,12が反るよう熱変形する。しかしながら、本実施形態の焼成器具10では、ピン18とピン収容孔16B,17の内面との間に第1と第2の黒鉛板11,12の間の相対的な動きを許容する孔内隙間19が形成されているので、ピン18はピン収容孔16B,17内で力を緩和するように移動することができる。そのため、振動等によってピン18が第1と第2の黒鉛板11,12から大きな剪断力を受けるようなことはなく、ピン18の破損が防がれる。また、本実施形態の焼成器具10では、スライド係合突部15とスライド係合溝14の内面の間にも、第1と第2の黒鉛板11,12の相対的な動きを許容する溝内隙間20が形成されているので、熱変形の反りで第1と第2の黒鉛板11,12の間に生じる熱応力を緩和でき、スライド係合突部15の破損も防がれると共に、第1と第2の黒鉛板11,12の板状の本体部分の破損も防がれる。また、ピン18は、収容孔16B、17内を移動するだけでピン18の外径と略同径となっているピン通過孔16Aへは移動しないため、振動によってピン18が抜け落ちるようなこともなくなる。
ところで、直進以外に左右など、ひとつの方向以上へ連続的に搬送するベルトコンベアーにおいて搬送物を方向移動させる際には、ガイドなどに搬送物を接触させ、ガイドに沿って方向移動させる。そのようなベルトコンベアーを用いて焼成器具10を移動させる場合でも、本実施形態の焼成器具10は直方体状なので、安定してガイドに沿って移動させることができ、ベルトコンベアー上の位置ずれをなくすことができる。
さらに、ピン通過孔16A及び、収容孔16B、17は円筒形状なので、応力集中が起こり難く、クラックの発生を抑制することができる。それに加えて、ピン18は断面円形の丸棒なので、ピン18がピン通過孔16A及び、収容孔16B、17に接触したときにそれぞれの内面の欠損や破壊が起こり難い。上述したように、本実施形態の焼成器具10は、従来と比較して耐久性が高くなり、取り扱いが容易になる。
[第2実施形態]
本実施形態は、図4に示されており、スライド係合突部15とスライド係合溝14との間に、第1実施形態の溝内隙間20が設けられていない構成になっている。本実施形態の構成によれば、孔内隙間19とピン収容孔16B,17の内面との間に形成されている孔内隙間19によって、ピン18の剪断が防がれると共に、孔内隙間19の範囲で第1及び第2の黒鉛板11,12が相対的に上下にずれることが可能になるので、それら第1及び第2の黒鉛板11,12への負荷を逃がすことができる。
[第3実施形態]
第3実施形態は、図5に示されており、ピン収容孔16C,17Vがピン通過孔16Aから離れるに従って徐々に拡径するテーパー孔になっている。
[第4及び第5の実施形態]
第4実施形態は、図6に示されており、ピン収容孔16E,17Wがピン通過孔16Aから離れるに従って徐々に縮径するテーパー孔になっている。また、第5実施形態は、図7に示されており、第2黒鉛板12のピン収容孔17Xがピン通過孔16Aから離れるに従って徐々に縮径するテーパー孔になっていると共に、そのピン収容孔17Xにおける第1の黒鉛板11側の開口が、第1の黒鉛板11のピン収容孔16Bの開口より大きくなっている。これら第4及び第5の実施形態の構成によれば、ピン18の挿入作業が容易になると共にピン18の抜け止めが強化される。なお、図7に示した構造において、ピン収容孔17Xを単にピン収容孔16Bより内径が大きな均一径の孔にしてもよい。
[第6実施形態]
第6実施形態は、図8及び図9に示されている。この実施形態の焼成器具10Vの第2黒鉛板22には、横方向の端部における上下方向の中央部分が角溝状に切除されて角形凹部22Bが形成されている。一方、第1黒鉛板21には、横方向の端部における上下方向の中央に角形突部21Aが備えられている。そして、角形凹部22Bに角形突部21Aが嵌合されて、第1黒鉛板21と第2黒鉛板22とが直交した状態に結合されている。
また、第2黒鉛板22には、角形凹部22Bの両側の角柱部22Aに跨がってピン孔23が形成されている。ピン孔23は、上側の角柱部22Aを上下に貫通して、下側の角柱部22Aの上下方向の中間位置まで延びている。また、ピン孔23は、上側の角柱部22Aの中間位置に段差面23Dを備え、段差面23Dより上側が比較的内径が小さいピン通過孔23Aをなし、段差面23Dより下側が比較的内径が大きいピン収容孔23Bになっている。また、第1黒鉛板21の角形突部21Aには、ピン孔23の同軸上にピン収容孔24が貫通形成され、そのピン収容孔24の内径は、ピン収容孔23Bの内径と略同一になっている。そして、角形凹部22Bに角形突部21Aが嵌合した状態でピン通過孔23Aからピン18が挿入されてそのピン通過孔23Aを通過し、ピン収容孔23B,24にピン18が収容されている。本実施形態の構成によっても第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
[第7実施形態]
第7実施形態は、図10に示されており、前記第6実施形態のピン孔23及びピン収容孔24を複数備えた構造になっている。この構成によれば、第1と第2の黒鉛板21,22の結合力が向上する。
[第8実施形態]
第8実施形態の焼成器具10Wは、図11に示されており、前記第6実施形態のうちピン収容孔23B及びピン収容孔24が第2黒鉛板22の横方向に長くなった長孔構造になっている。断面が軸方向と直行する方向に長くなっている長孔であることで、その長手方向のピンの可動範囲が広がる。
[第9実施形態]
第9実施形態の焼成器具10Xは、図12に示されており、前記第6実施形態のうちピン収容孔23B及びピン収容孔24に複数のピン18が収容されている。なお、第8実施形態の構造において、ピン収容孔23B及びピン収容孔24に複数のピン18を収容してもよい。複数のピンを収容することで、焼成器具の結合強度が向上する。また、ピンの不良や衝撃等により、ピンが1つ破損しても、他のピンによって器具構成部品同士の結合が保たれ、焼成器具の形状を確保できる。
[第10実施形態]
第10実施形態の焼成器具10Yは、図13及び図14に示されており、複数のピン18だけで隣り合った黒鉛板25同士が結合されている。即ち、黒鉛板25の横方向の両端の端面が45度の傾斜面25Sになっていて、隣り合った黒鉛板25の傾斜面25S同士が面当接した状態になっている。そして、一方の黒鉛板25の外面25Gから傾斜面25Sに複数のピン孔26が貫通し、それらピン孔26の同軸線上で他方の黒鉛板25にピン収容孔27が形成されている。ピン孔26は、黒鉛板25の外面25G側のピン通過孔26Aと、その反対側のピン収容孔26Bとからなる。また、それらピン孔26及びピン収容孔27とは上下方向でずれた位置に、他方の黒鉛板25の外面25Gから傾斜面25Sに複数のピン孔26が貫通し、それらピン孔26の同軸線上で一方の黒鉛板25にピン収容孔27が形成されている。そして、互いに連通したピン収容孔26B,27に跨がってピン18が収容されている。
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更や組合せをして実施することができる。
(1)前記実施形態のピン収容孔の軸方向に対する断面形状は、円形や長円形であったが、例えば、楕円形や多角形など、異なる形状であってもよい。また、前記実施形態のピン収容孔の軸方向と垂直な方向に対する断面形状は、長方形や台形であったが、例えば、長円形や楕円形など、異なる形状であってもよい。
(2)前記実施形態のピン18は断面円形の丸棒であったが、例えば、断面多角形の棒や板状の部材など、他の形状であってもよい。また、ピン通過孔とピンの断面形状は、異なっていてもよい。
(3)前記実施形態のピン孔は、黒鉛板に垂直な方向、あるいは平行な方向に形成されていたが、黒鉛板の垂直方向又は平行方向、あるいはその両方向に対して斜めの角度をもたせてピン孔が形成されていてもよい。
(4)前記第1〜第5実施形態では、第1黒鉛板11の上下方向の中央にピン孔16が形成されていたが、ピン孔16は上下方向の中央になくてもよいし、上下方向にピン孔16が複数形成されていてもよい。
(5)前記第1〜第5実施形態のスライド係合突部15とスライド係合溝14の断面形状は台形であったが、例えば、三角形や略円形など、異なる形状であってもよい。
(6)前記実施形態の焼成容器10を上下方向から見た形状は長方形であったが、例えば、多角形や円形など、異なる形状であってもよい。また、焼成容器は平板上の黒鉛板を組み合わせて構成してもよいし、例えば、湾曲した板状など、平板以外の形状の黒鉛製部品を組み合わせて構成してもよい。
10,10V,10W,10X,10Y 焼成器具
11,12,21,22,25 黒鉛板(器具構成部品)
14 スライド係合溝
15 スライド係合突部
16,23,26 ピン孔
16B,16C,16E,17,17V,17W,17X,23B,24,26B,27 ピン収容孔
16A,23A,26A ピン通過孔
18 ピン
19 孔内隙間
20 溝内隙間

Claims (13)

  1. 少なくとも2つ以上の黒鉛製の器具構成部品と、
    それら器具構成部品同士を結合する少なくとも1つの黒鉛製のピンと、
    前記ピンで結合される2つの前記器具構成部品に跨がって形成され、前記ピンを収容するピン収容孔とで構成された焼成される部品を炉内で収容又は支持する焼成器具であって、
    前記ピンと前記ピン収容孔の内面との間に、前記器具構成部品同士の間の相対的な動きを許容する孔内隙間を有することを特徴とする焼成器具。
  2. 直方体状の内部空間を囲むように配置されて互いに前記ピンで結合されている4つの前記器具構成部品を有する請求項1に記載の焼成器具。
  3. 前記器具構成部品の外面に開口して前記ピン収容孔の一端部に連通すると共に前記ピン収容孔より段付き状に狭くなり、前記ピンが前記ピン収容孔に収容されるときに通過するピン通過孔を有する請求項1又は2に記載の焼成器具。
  4. 前記ピン通過孔は、内面が円筒形状の丸孔である請求項3に記載の焼成器具。
  5. 前記ピン収容孔は、前記ピン通過孔から離れるに従って拡径するテーパー孔である請求項3又は4に記載の焼成器具。
  6. 前記ピン収容孔は、その内面が円筒形状の丸孔である請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の焼成器具。
  7. 前記ピン収容孔は、テーパー孔である請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の焼成器具。
  8. 前記ピン収容孔は、断面が軸方向と直交する方向に長くなっている長孔である請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の焼成器具。
  9. 前記ピンで結合される前記2つの器具構成部品に跨がって複数の前記ピン収容孔が形成されている請求項1乃至8の何れか1の請求項に記載の焼成器具。
  10. 1つの前記ピン収容孔に複数の前記ピンが収容されている請求項1乃至9の何れか1の請求項に記載の焼成器具。
  11. 前記ピンで結合されている2つの前記器具構成部品の一方と他方とに分けて形成され、相互にスライド係合してスライド方向と交差する方向で2つの前記器具構成部品を分離不能に結合するスライド係合突部及びスライド係合溝と、
    前記スライド係合突部と前記スライド係合溝の内面の間に設けられて、2つの前記器具構成部品の相対的な動きを許容する溝内隙間とを有している請求項1乃至10の何れか1の請求項に記載の焼成器具。
  12. 前記ピン収容孔は、前記スライド係合突部と、前記スライド係合溝を囲む前記器具構成部品の壁部とに跨がって形成されている請求項11に記載の焼成器具。
  13. 前記スライド係合突部は、一方の前記器具構成部品の表裏の一方の面から突出し、
    前記ピン収容孔は、前記スライド係合突部内をそのスライド係合突部の突出方向に延び、
    前記一方の器具構成部品の他方の面に開口して前記ピン収容孔に連通すると共に前記ピン収容孔より段付き状に狭くなり、前記ピンが前記ピン収容孔に収容されるときに通過するピン通過孔を有する請求項12に記載の焼成器具。
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