JP6329072B2 - 細胞外核酸の安定化および単離 - Google Patents

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Description

本明細書に開示の技術は、細胞含有試料、特に血液試料中の細胞外核酸集団を安定化するのに適した方法および組成物、ならびにそれぞれに安定化された生体試料から細胞外核酸を単離する方法に関する。
本発明を成すに至った研究は、助成契約第222916号の下で欧州共同体の第7次フレームワークプログラム(FP7/2007〜2013年)から資金援助を受けている。
細胞外核酸は、血液、血漿、血清および他の体液において同定されている。それぞれの試料に見出される細胞外核酸は、ヌクレアーゼから保護されていることに起因して(例えば、プロテオリピド複合体の形態で分泌され、タンパク質に結合し、または小胞に含有されているので)、分解に対してある程度の耐性がある。多くの病状、悪性腫瘍および感染過程において高レベルで存在するDNAおよび/またはRNAなどの細胞外核酸は、中でも、スクリーニング、診断、予後、疾患進行の監視、潜在的治療標的の同定、および治療応答のモニタリングの対象となる。さらに、母体血における胎児DNA/RNAの上昇は、例えば性別識別を決定し、染色体異常を評価し、妊娠関連合併症をモニタするために使用されている。したがって、細胞外核酸は、特に非侵襲的な診断および予後において有用であり、非侵襲的な出生前遺伝的試験、腫瘍学、移植医療または多くの他の疾患などの多くの適用分野において、例えば診断マーカーとして使用することができ、したがって診断に関連するものである(例えば、胎児または腫瘍由来の核酸)。しかし細胞外核酸は、健康なヒトにも見出される。細胞外核酸の一般的な適用および分析方法は、例えば特許文献1、特許文献2、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5に記載されている。
従来、血液などの細胞含有生体試料から細胞外核酸を単離する第1のステップは、前記試料の本質的に無細胞の画分、例えば血液の場合には血清または血漿のいずれかを得ることである。次に、前記無細胞画分、血液試料を処理する場合には一般に血漿から、細胞外核酸を単離する。しかし、試料の本質的に無細胞の画分を得るには、問題を伴う場合があり、細胞の破壊中に放出される細胞核酸により細胞外核酸を汚染するおそれがある遠心分離中には、細胞が破壊されないように注意深く制御された条件を使用することが重要であるため、分離は、しばしば長ったらしく時間のかかる多段階過程となる。さらに、すべての細胞を除去することは、しばしば困難である。したがって、血漿または血清などの「無細胞」としばしば一般に分類される、処理済みの多くの試料は、実際には分離過程中に除去されなかった残存量の細胞を依然として含有している。考慮すべき別の重要な事項は、典型的には採血を行ってから相対的に短時間内に、エクスビボ(ex vivo)でのインキュベーション中に細胞が破壊されることに起因して、試料に含有されている細胞から細胞核酸が放出されてしまうということである。細胞溶解が始まると、溶解細胞がさらなる核酸を放出し、それらが細胞外核酸と混合され、試験のために細胞外核酸を回収することがますます困難になる。これらの問題は、従来技術で論じられている(例えば、非特許文献6、非特許文献5および特許文献3参照)。さらに分解に起因して、利用可能な細胞外核酸の量および回収可能性が、ある期間にわたって実質的に低下するおそれがある。
例えば腫瘍細胞または胎児に由来する哺乳動物の細胞外核酸に加えて、細胞含有試料は、細胞には含まれていないが対象となる他の核酸を含む場合もある。重要な非限定的な例が、ウイルス核酸などの病原体核酸である。輸送および取扱い中に、特に血液被験物などの細胞含有試料中のウイルス核酸の完全性を保存することは、その後の分析およびウイルス負荷モニタリングにとっても極めて重要である。
先に論じた問題は、特に、例えば全血試料を用いる場合のように、試料が多量の細胞を含む場合に課題となる。したがって、前述の問題を回避し、それぞれに低減するために、基本的には試料を得た直後に、試料に含有されている細胞から、試料の本質的に無細胞の画分を分離するのが一般的である。例えば、細胞外核酸の完全性を保存し、含有細胞から放出される細胞内核酸によって細胞外核酸集団が汚染されるのを回避するために、基本的には採血直後に全血から血漿を得、かつ/または全血および/もしくは得られた血漿もしくは血清を冷却することが推奨される。しかし、例えば血液から血漿を直接分離する必要がある場合、採血を行う多くの施設(例えば診療所)が、血漿を効率的に分離できる遠心分離機を備えていないので、大きな不利益となる。さらに、通常条件で得られた血漿は、しばしば残存量の細胞を含んでおり、したがってそれらの細胞が損傷を受ける場合もあり、または試料の取扱い中に死滅する場合もあり、それによって前述の通り、細胞内核酸、特にゲノムDNAが放出される。これらの残存細胞は、取扱い中に損傷を受ける危険性もあり、その結果、それらの核酸内容物、特にゲノム(核)DNAおよび細胞質性RNAが、細胞外の循環核酸画分に混ざり込み、それによってその画分を汚染し、それぞれに希釈するおそれがある。これらの残存する汚染性細胞を除去し、前述の問題を回避/低減するために、第2の遠心分離ステップをより高速で実施することが知られている。しかしやはり、このような強力な遠心分離機は、血液を得る施設では利用可能でないことが多い。さらに、血漿が採血直後に得られるとしても、核酸を直接単離できない場合には、血漿に含有されている核酸を保存するために−80℃で凍結させることが推奨される。このことも、例えば血漿試料を凍結させて輸送しなければならないため、試料の処理時に実用的な制約を課す。これにより費用が増大し、さらに、低温流通体系が中断される場合には、試料が損なわれる危険性がある。
現在、血液試料は、通常はスプレー乾燥させたまたは液体のEDTAを含有する採血管(例えば、BDバキュテイナK2EDTA)に収集されている。EDTAは、マグネシウム、カルシウムおよび他の二価の金属イオンをキレートし、それによって、例えば凝血またはDNaseによるDNA分解などの酵素反応を阻害する。しかしEDTAは、効率的な抗凝固剤であっても、放出された細胞内核酸によって細胞外核酸集団が希釈され、それぞれに汚染されるのを効率的に防止するものではない。したがって、試料の無細胞部分に見出される細胞外核酸集団は、貯蔵中に変化してしまう。したがってEDTAでは、特に採血後に、試料の運搬および貯蔵中の細胞分解および細胞不安定性によって生じる、例えばゲノムDNA断片による細胞外核酸集団の汚染を回避できないため、細胞外核酸集団を十分に安定化することができない。
従来技術では、特に、全血に含有されている循環核酸を安定化することを目的とした方法が知られている。ある方法では、ホルムアルデヒドを用いて細胞膜を安定化し、それによって細胞溶解を低減する。さらに、ホルムアルデヒドはヌクレアーゼを阻害する。それぞれの方法は、例えば特許文献4および特許文献5に記載されている。しかし、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド放出物質の使用には、核酸分子同士、またはタンパク質と核酸との間に架橋を誘発することによって、細胞外核酸の単離効率を損なうおそれがあるという欠点がある。血液試料を安定化する代替方法は、例えば特許文献6および特許文献7に記載されている。かなり最近になって開発されたこれらの方法は、細胞含有生体試料を安定化して、例えばこのような試料に含有されている細胞外核酸を効率的に回収することができる手段を提供する必要性が高いことを実証している。
しかし、かなり最近のこうした開発にもかかわらず、生体試料、特に細胞を含有すると疑われる試料を含む細胞含有試料、特に全血、血漿または血清に含まれている細胞外核酸集団を安定化し、それによってこのような試料の取扱い、それぞれに処理をより容易にし(例えば、全血から血漿を直接分離する、または単離された血漿を冷却もしくはさらには凍結する必要を回避することによって)、それによってこのような試料に含有されている細胞外核酸の単離および試験を、より信頼性が高いものにし、それによって結果的に、細胞外核酸の診断および予後能力を改善する試料処理技術の開発が、依然として継続的に必要とされている。特に、例えば出生前試験および/または新生物、特に前悪性疾患もしくは悪性疾患のスクリーニングのために、全血試料中の細胞外核酸を保存するための解決策が、継続的に必要とされている。
国際公開第97/035589号パンフレット 国際公開第97/34015号パンフレット 米国特許出願公開第2010/0184069号明細書 米国特許第7,332,277号明細書 米国特許第7,442,506号明細書 米国特許出願公開第2010/0184069号明細書 米国特許出願公開第2010/0209930号明細書
スワラップ(Swarup)ら, エフイービーエス レターズ(FEBS Letters) 581 (2007)795-799 フライシュハッカー(Fleischhacker) アンナルズ オブ ザ ニューヨーク アカデミー オブ サイエンス(Ann. N.Y. Acad. Sci.) 1075: 40-49 (2006) フライシュハッカーおよびシュミット(Fleischhacker and Schmidt), ビオキミカ エト ビオフィジカ アクタ(Biochmica et Biophysica Acta) 1775 (2007)191-232 ロマドニコワ(Hromadnikova)ら(2006)DNAと細胞生物学(DNA and Cell biology), Volume 25, Number 11 pp 635-640 ファン(Fan)ら(2010), 臨床化学(Clinical Chemistry) 56:8 チュウ(Chiu)ら(2001), 臨床化学(Clinical Chemistry) 47:9 1607-1613
本発明の目的は、従来技術の試料安定化方法の欠点の少なくとも1つを克服することである。したがって本発明の一目的は、中でも細胞含有試料、特に全血を安定化することができる方法を提供することである。特に、本発明の一目的は、生体試料に含有されている細胞外核酸集団を安定化し、特に、ゲノムDNA、特に断片化ゲノムDNAによる細胞外核酸集団の汚染を回避することである。さらに、特に本発明の一目的は、生体試料、好ましくは全血試料を、室温でも、好ましくは少なくとも2日間、好ましくは少なくとも3日間にわたって安定化するのに適した方法を提供することである。さらに、本発明の一目的は、生体試料、特に試料に含まれている細胞外核酸集団を有効に安定化することができる試料収集容器、特に採血管を提供することである。
本発明は、驚くべきことには、いくつかの添加剤が、細胞外核酸を含む細胞含有生体試料、特に全血試料または例えば血漿などの全血に由来する試料を安定化するのに有効であると見出したことに基づく。これらの添加剤は、細胞外核酸集団を安定化するのに効率が高く、特にゲノムDNA、特に断片化ゲノムDNAによる汚染を回避し、または少なくとも著しく低減できることが見出された。
第1の態様によれば、試料を、
a)少なくとも1種のアポトーシス阻害剤、
b)試料に含まれている細胞を安定化する少なくとも1種の高張剤、および/または
c)少なくとも1種の式1の化合物
[式中、R1は、水素残基またはアルキル残基、好ましくはC1〜C5アルキル残基、より好ましくはメチル残基であり、R2およびR3は、直鎖または分岐状に配列した炭素原子1〜20個の鎖長を有する、同じまたは異なる炭化水素残基であり、R4は、酸素、硫黄またはセレン残基である]
と接触させる、細胞含有試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するのに適した方法が提供される。
第1の従属態様によれば、試料を少なくとも1種のアポトーシス阻害剤と接触させる、細胞含有試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するのに適した方法が提供される。好ましくは、細胞含有試料は、全血、血漿または血清から選択される。驚くべきことに、アポトーシス阻害剤は、試料に含有されている細胞から生じる、例えば損傷細胞または死滅細胞から生じる細胞内核酸、特に断片化ゲノムDNAによる細胞外核酸集団の汚染を低減することが見出された。さらに本発明者らは、アポトーシス阻害剤が、試料中に存在する核酸の分解を低減することを見出した。したがって、アポトーシス阻害剤を使用する本発明による安定化には、生体試料を得、それぞれに収集した時点で、その試料に含有されている細胞外核酸集団が示す状態で、それらが実質的に保存されるという効果がある。
第2の従属態様によれば、試料を、試料に含まれている細胞を安定化することができる少なくとも1種の高張剤と接触させる、細胞含有試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するのに適した方法が提供される。驚くべきことには、穏やかな高張効果(浸透)によって誘発される細胞収縮は、細胞の安定性をかなり増大することが見出された。高張剤は、細胞の安定性を増大することによって、特に細胞内核酸、特にゲノムDNAが、それを含有する細胞から試料の細胞外の部分または区画に放出されるのを低減する。したがって、高張剤を使用する本発明による安定化には、生体試料を得、それぞれに収集した時点で、その試料に含有されている細胞外核酸集団が示す状態で、それらが実質的に保存されるという効果がある。
本発明の第3の従属態様によれば、試料を、少なくとも1種の式1の化合物
[式中、R1は、水素残基またはアルキル残基、好ましくはC1〜C5アルキル残基、より好ましくはメチル残基であり、R2およびR3は、直鎖または分岐状に配列した炭素原子1〜20個の鎖長を有する、同じまたは異なる炭化水素残基であり、R4は、酸素、硫黄またはセレン残基である]
と接触させる、細胞含有試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するのに適した方法が提供される。それぞれの化合物を添加することは、細胞外核酸集団に対して有利な安定化効果があることが見出された。
第4の従属態様によれば、試料を、
a)少なくとも1種のアポトーシス阻害剤、および
b)試料に含まれている細胞を安定化する少なくとも1種の高張剤
と接触させる、細胞含有試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するのに適した方法が提供される。
これらの安定化剤(および任意選択によりさらなる添加剤)の組合せは、細胞内核酸、特にゲノムDNAが、それを含有する細胞から試料の細胞外部分に放出されるのを阻害するのに著しく有効であることが見出された。さらに、試料中に存在する核酸の分解が、高効率で防止されることが示された。特に、それぞれに安定化された試料では、見出される断片化ゲノムDNAが少ない。したがって、この安定化添加剤の組合せを使用する本発明による安定化には、生体試料を得、それぞれに収集した(例えば、血液の場合には採血した)時点で、その試料に含有されている細胞外核酸集団が示す状態で、それらが実質的に有効に保存され、特に、断片化ゲノムDNAによる細胞外核酸集団の汚染が低減されるという効果がある。
また本発明の一目的は、細胞外核酸の安定化効果を強化するために、細胞含有試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するための安定化剤のさらなる組合せを提供することである。それぞれの組合せは、少なくとも1種のアポトーシス阻害剤、少なくとも1種の高張剤および/または先に定義の少なくとも1種の式1の化合物、例えば(1)少なくとも1種のアポトーシス阻害剤および先に定義の少なくとも1種の式1の化合物の組合せ、(2)少なくとも1種の高張剤および少なくとも1種の式1の化合物の組合せ、または(3)3種すべての安定化剤、すなわち少なくとも1種のアポトーシス阻害剤、少なくとも1種の高張剤および少なくとも1種の式1の化合物の組合せを含むことができる。それぞれの組合せは、例えばキレート剤などの安定化効果を強化する追加の添加剤を含むこともできる。試料が血液または血液由来の試料である場合、通常は抗凝固剤も添加される。この目的では、例えばEDTAなどのキレート剤が適している。それぞれの安定化剤の組合せは、本発明の第1の態様に従って細胞含有試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するのに適した方法で有利に使用される、第5の従属態様に従うことができる。
第2の態様によれば、生体試料から細胞外核酸を単離する方法が提供され、前記方法は、
a)本発明の第1の態様に定義の方法に従って、試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するステップと、
b)細胞外核酸を前記試料から単離するステップと
を含む。
ステップa)における安定化は、例えば、前述の本発明の第1の態様の5つの従属態様の1つに従って達成することができる。先に論じた通り、本発明の安定化には、生体試料を得、それぞれに収集した時点で、その試料に含有されている細胞外核酸集団が示す状態で、それらが実質的に保存されるという効果がある。したがって、それぞれに安定化された試料から得られた細胞外核酸は、安定化されていない試料から得られる細胞外核酸と比較して、例えば試料に含まれている崩壊細胞から生じる細胞内核酸、特に断片化ゲノムDNAによる汚染が少ない。細胞外核酸集団の実質的な保存は、この安定化/保存が任意のその後の試験の精度を強化するので、重要な利点である。細胞外核酸集団の実質的な保存により、細胞外核酸集団の単離およびその後の分析が標準化され、それによって細胞外核酸画分に基づく診断または予後の適用が、より信頼性が高いものになり、使用される貯蔵/取扱い条件との独立性がより高まる。それによって、それぞれに単離された細胞外核酸の診断および予後の適用性が改善される。特に、本開示の教示は、特定の細胞外核酸分子の比が、試料を収集した時点の比と比較して、実質的に一定に保持され得るという利点を有する。安定化は、細胞内核酸が細胞内に実質的に保持され、細胞外核酸が実質的に安定化されると達成される。
第3の態様によれば、細胞含有生体試料を安定化するのに適した組成物が提供され、その組成物は、
a)少なくとも1種のアポトーシス阻害剤、好ましくはカスパーゼ阻害剤、および/または
b)試料に含まれている細胞を安定化するのに適した少なくとも1種の高張剤;好ましくはヒドロキシル化有機化合物;および/または
c)先に定義の少なくとも1種の式1の化合物;および/または
d)任意選択により少なくとも1種の抗凝固剤、好ましくはキレート剤
を含む。
それぞれの安定化組成物は、細胞含有生体試料、特に全血、血漿および/または血清に含まれている細胞および細胞外核酸集団を安定化することによって、前記試料を安定化するのに特に有効である。好ましくは、a)〜c)に定義の安定化剤の少なくとも2種、より好ましくはa)〜c)に定義の安定化剤のすべてが、安定化組成物中に存在する。それぞれの安定化組成物により、試料の質、それぞれにその試料に含有されている細胞外核酸集団の質を実質的に損なわずに、試料、例えば全血を、室温で少なくとも2日間または好ましくは3日間にわたって貯蔵し、かつ/または取り扱い、例えば輸送することができる。したがって、本発明による安定化組成物を使用すると、試料収集、例えば採血と、核酸抽出との間の時間は、試料に含有されている細胞外核酸集団に対して実質的な効果を及ぼさずに変わり得る。このことは、様々な取扱い手順に起因し得る細胞外核酸集団の変動性を低減するので、重要な利点である。
第4の態様によれば、細胞含有生体試料、好ましくは血液試料を収集するための、本発明の第3の態様による組成物を含む容器が提供される。安定化組成物を含むそれぞれの容器、例えば試料収集管を提供することには、試料がそれぞれの容器に収集されるとすぐに安定化されるという利点がある。さらに、それぞれの試料収集容器、特に採血管は、血液細胞および細胞外核酸、ならびに任意選択により血液試料または血液由来の試料に含有されているウイルス、それぞれにウイルス核酸を安定化することができる。それによって、さらなる問題が克服された。
第5の態様によれば、患者から生体試料、好ましくは血液を、本発明の第4の態様による容器のチャンバに直接収集し、好ましくは採血するステップを含む方法が提供される。
第6の態様によれば、組成物の構成成分が混合され、好ましくは溶液内で混合される、本発明の第3の態様による組成物を生成する方法が提供される。用語「溶液」は、本明細書で使用される場合、特に液体組成物、好ましくは水性組成物を指す。溶液は、一相だけからなる均質な混合物であってもよいが、本発明の範囲には、例えば沈殿物などの固体構成成分を含むことも含まれる。
本願の他の目的、特徴、利点および態様は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から当業者には明らかとなる。しかし、以下の説明、添付の特許請求の範囲および具体例は、本願の好ましい実施形態を示すものであり、単に例示的であることを理解されたい。開示の本発明の精神および範囲に含まれる様々な変更および改変は、以下を読むことによって当業者には容易に明らかとなる。
カスパーゼ阻害剤で処理した試料から単離したDNAに、チップ電気泳動法を施した後のゲルの写真である(実施例1)。 血漿中のリボソーム18S DNAの増加に対する、カスパーゼ阻害剤の効果を示す図である(実施例1)。 異なる濃度のカスパーゼ阻害剤Q−VD−OPHで処理した試料から単離したDNAに、チップ電気泳動法を施した後のゲルの写真である(実施例2)。 異なる濃度のカスパーゼ阻害剤Q−VD−OPHとグルコースとの組合せの、血漿中のリボソーム18S DNAの増加に対する効果を示す図である(実施例2)。 様々な緩衝液に溶解したジヒドロキシアセトンで処理した血液細胞について、フローサイトメトリーによって測定した血液細胞の完全性を示す図である(実施例3)。 様々な緩衝液に溶解したジヒドロキシアセトンで処理した試料から単離したDNAに、チップ電気泳動法を施した後のゲルの写真である(実施例3)。 リボソーム18S DNAの増加に対する、ジヒドロキシアセトンの効果を示す図である(実施例3)。 異なる濃度のジヒドロキシアセトンで処理した血液細胞について、フローサイトメトリーによって測定した血液細胞の完全性を示す図である(実施例4)。 様々な濃度のジヒドロキシアセトンで処理した試料から単離したDNAに、チップ電気泳動法を施した後のゲルの写真である(実施例4)。 リボソーム18S DNAの増加に対する、様々なジヒドロキシアセトン濃度の効果を示す図である(実施例4)。 高濃度のK2EDTA、Q−VD−OPHおよびDHAの組合せで処理した血液細胞について、フローサイトメトリーによって測定した血液細胞の完全性を示す図である(実施例5)。 18S DNAの増加に対する、EDTA、DHAおよびQ−VD−OPHの組合せの効果を示す図である(実施例5)。 血漿中の遊離循環mRNAの転写レベルに対する、EDTA、DHAおよびQ−VD−OPHの組合せの効果を示す図である(実施例6)。 血漿中のリボソーム18S DNAの増加に対する、異なる濃度のDMAAの効果を示す図である。 18S rDNAの増加に対する様々な糖アルコールの影響を示す図である(実施例8)。 18S rDNAの増加に対する物質の影響を示す図である(実施例9)。 18S rDNAの増加に対する物質の影響を示す図である(実施例10)。 18S rDNAの増加に対する物質の影響を示す図である(実施例11)。 18S rDNAの増加に対する物質の影響を示す図である(実施例11)。 18S rDNAの増加に対する物質の影響を示す図である。 37℃で最長6日間インキュベートした全血の血漿画分中のccfDNAの増加を示す図である(実施例13)。 37℃で最長6日間インキュベートした全血の血漿画分中のccfDNAの増加を示す図である(実施例13) スパイクインしたDNA断片のヒット率(%)を示す図である(実施例14)。 平均コピー数を示す図である(実施例14)。 BDバキュテイナK2Eと比較した18Sの百分率を示す図である(実施例14)。 全血において37℃でインキュベートし、血漿から精製したHIVの減少を示す図である(実施例15)。 全血において37℃でインキュベートし、血漿から精製したHCVの減少を示す図である(実施例15)。 18S rDNA増加ドナー1に対するプロピオンアミドの影響を示す図である(実施例16)。 18S rDNA増加ドナー2に対するプロピオンアミドの影響を示す図である(実施例16)。
本発明は、細胞含有生体試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するのに適した方法、組成物およびデバイスを対象とし、したがってそれに適した技術を対象とする。本明細書に開示の安定化技術により、細胞外核酸集団が、例えば試料に含有されている損傷細胞および/または死滅細胞に由来する、例えばそれから放出される細胞内核酸、特に断片化ゲノムDNAによって汚染される危険性が低減する。したがって、本発明は、試料を安定化することを達成し、したがって試料に含まれている細胞外核酸集団を、含有細胞の溶解なしに安定化することを達成する。さらに正確には、試料に含有されている細胞が安定化され、それによって細胞内核酸の放出が実質的に防止または低減される。本発明の方法および組成物によって達成される注目すべき安定化により、試料の質、それぞれにその試料に含有されている細胞外核酸の質を危険にさらすことなく、安定化された試料を室温で長期間貯蔵し、かつ/または取り扱うことができる。細胞外核酸集団の組成物は、本発明の教示を使用することによって試料を得た時点で安定化され、したがって実質的に保存されるので、試料収集と核酸抽出との間の時間は、細胞外核酸集団の組成に対して著しく大きい作用を及ぼさずに変わり得る。このことにより、試料の取扱い/貯蔵における変動が、細胞外核酸集団の質、それぞれに組成に対して影響が少ないので、例えば診断または予後の細胞外核酸分析を標準化することができ、それによって従来技術の方法を上回る重要な利点を提供する。したがって試料も、それぞれに安定化された試料から得られる細胞外核酸もそれぞれに、より同等になる。さらに、本発明の教示では、普通なら崩壊細胞から放出される細胞内核酸、特に断片化ゲノムDNAによって細胞外核酸が汚染されるのを回避し、それぞれに低減するために、試料に含有されている細胞を、試料の無細胞部分から直接分離するという必要がなくなる。この利点により、試料の取扱い、特に全血試料の取扱いが大幅に簡素化される。例えば、診療所で得られ、本発明の教示に従って安定化された全血試料は、室温で輸送することができ、好都合には、細胞外核酸を含有する血漿は、それを受け取る臨床研究室で分離することができる。しかし、本発明の教示は、細胞が欠乏している生体試料、または一般に「無細胞」と呼ばれる試料、例えば血漿または血清などを処理する場合にも有利である。細胞欠乏または「無細胞」のそれぞれの生体試料は、ゲノムDNAを含む残存細胞、特に白血球細胞を依然として含む場合があり(使用される分離過程にもよる)、したがってそれにより(潜在的に)残存している細胞が輸送または貯蔵過程中に損傷または死滅する場合には、細胞外核酸集団が細胞内核酸、特に断片化ゲノムDNAで徐々に汚染される危険性がある。この危険性は、本発明によって教示される安定化方法を使用すると、大幅に低減される。本発明の技術により、試料を収集し、安定化剤と接触させた時点で、試料の細胞外核酸集団を効率的に保存することができるので、前記試料は、それを受け取る施設で細胞外核酸を前記試料から単離するために適切に後処理され得ると同時に、細胞外核酸集団が細胞内核酸によって汚染されるのを実質的に回避し、それぞれに低減することができる。試料を受け取る施設、例えば研究室などは、通常、細胞欠乏試料に存在し得る残存細胞を含む、例えば血漿などの試料に含まれている細胞を効率的に除去するのに必要な装置、例えば高速遠心分離機(または他の手段、下記も参照)なども備えている。このような装置は、試料が得られる施設には備えられていないことが多い。したがって、本発明は、多量の細胞を含む生体試料、例えば全血試料などを安定化する場合に多くの利点を有するだけでなく、ごく少量の細胞を含むか、または細胞を含有していると単に疑われ得る生体試料、例えば血漿、血清、尿、唾液、滑液、羊水、涙液、膿漿、リンパ液、髄液、脳脊髄液などを安定化する場合にも重要な利点を有する。
第1の態様によれば、試料を、
a)少なくとも1種のアポトーシス阻害剤、および/または
b)試料に含まれている細胞を安定化する少なくとも1種の高張剤、および/または
c)少なくとも1種の式1の化合物
[式中、R1は、水素残基またはアルキル残基、好ましくはC1〜C5アルキル残基、より好ましくはメチル残基であり、R2およびR3は、直鎖または分岐状に配列した炭素原子1〜20個の鎖長を有する、同じまたは異なる炭化水素残基であり、R4は、酸素、硫黄またはセレン残基である]
と接触させる、細胞含有試料、好ましくは血液試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するのに適した方法が提供される。
それによって、含有細胞から生じる、例えば損傷細胞もしくは死滅細胞から生じる細胞内核酸、特に断片化ゲノムDNAによって細胞外核酸集団が汚染される危険性が低減し、および/または試料中に存在する核酸の分解が低減され、それぞれに阻害される。このことは、前記試料に含まれている細胞外核酸集団の組成が、実質的に保存され、それぞれに安定化されるという効果を有する。
用語「複数の細胞外核酸」または「1個の細胞外核酸」は、本明細書で使用される場合、特に、細胞には含有されていない核酸を指す。それぞれの細胞外核酸は、無細胞核酸と呼ばれることも多い。これらの用語は、本明細書では同義語として使用される。したがって、細胞外核酸は、通常は試料中の1つまたは複数の細胞の外部に存在する。用語「細胞外核酸」は、例えば細胞外RNAならびに細胞外DNAを指す。生体試料、例えば血漿などの体液の無細胞画分(それぞれに部分)に見出される典型的な細胞外核酸の例には、それに限定されるものではないが、哺乳動物の細胞外核酸、例えば腫瘍関連または腫瘍由来の細胞外DNAおよび/またはRNA、他の疾患に関係する細胞外DNAおよび/またはRNA、後成的に修飾されたDNA、胎児のDNAおよび/またはRNA、低分子干渉RNA、例えばmiRNAおよびsiRNAなど、ならびに非哺乳動物の細胞外核酸、例えば原核生物(例えば細菌)、ウイルス、真核生物の寄生虫または真菌などから細胞外核酸集団に放出されたウイルス核酸、病原体核酸などが含まれる。一実施形態によれば、細胞外核酸は、細胞含有生体試料としての体液、例えば血液、血漿、血清、唾液、尿、髄液、脳脊髄液、喀痰、涙液、汗、羊水またはリンパ液などから得られ、それぞれにそれらに含まれる。本明細書では、循環体液から得られる細胞外核酸は、循環細胞外核酸または循環無細胞核酸と呼ばれる。一実施形態によれば、細胞外核酸という用語は、特に、哺乳動物の細胞外核酸、好ましくは疾患関連もしくは疾患由来の細胞外核酸、例えば腫瘍関連もしくは腫瘍由来の細胞外核酸、炎症もしくは傷害、特に外傷に起因して放出された細胞外核酸、他の疾患に関係し、かつ/もしくはそれに起因して放出された細胞外核酸、または胎児に由来する細胞外核酸を指す。用語「複数の細胞外核酸」または「1個の細胞外核酸」は、本明細書に記載の通り、他の試料、特に体液以外の生体試料から得られた細胞外核酸も指す。通常、2個以上の細胞外核酸が試料に含まれる。通常、試料は、2つ以上の種類またはタイプの細胞外核酸を含む。用語「細胞外核酸集団」は、本明細書で使用される場合、特に、細胞含有試料に含まれている様々な細胞外核酸の集合体を指す。細胞含有試料は、通常、特徴的であり、したがってユニークな細胞外核酸集団を含む。したがって、特定の試料の細胞外核酸集団に含まれている1つまたは複数の細胞外核酸のタイプ、種類および/または量は、試料の重要な特徴である。したがって先に論じた通り、前記細胞外核酸集団を安定化し、したがってそれを組成物として実質的に保存することが重要であり、かつ/または試料の細胞外核酸集団に含まれている1個もしくは複数の細胞外核酸の量は、医療、予後または診断分野において有益な情報を提供することができる。特に、試料を収集した後に細胞内核酸によって、特にゲノムDNAによって細胞外核酸集団が汚染され、したがって希釈されるのを低減することが重要である。本発明の安定化技術によって細胞外核酸集団の実質的な保存が達成され得ることにより、試料中の細胞外核酸集団を、試料を安定化した時点の細胞外核酸集団と比較して、安定化期間にわたって実質的に未変化のままにすることができる。少なくとも、含まれている細胞外核酸の量、質および/または組成に関する細胞外核酸集団の変化、特に、放出されたゲノムDNAの増加に起因し得る変化は、安定化されていない試料と比較して、または例えば血液試料もしくは血液由来の試料の場合にはEDTAによって安定化されている対応試料と比較して、安定化期間にわたって大幅に(好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%)低減される。
第1の態様の第1の従属態様によれば、試料を安定化するために、少なくとも1種のアポトーシス阻害剤が使用される。提供した実施例によって示される通り、アポトーシス阻害剤だけでも、細胞含有試料を安定化し、特に断片化ゲノムDNAによる汚染から生じるその組成の変化から、細胞外核酸集団を実質的に保存するのに有効である。試料は、例えばアポトーシス阻害剤を試料に添加するか、またはその逆によって、アポトーシス阻害剤と接触させることができる。得られた混合物中に存在する少なくとも1種のアポトーシス阻害剤は、試料に含有されている細胞の安定化を支持し、試料に含まれている核酸の分解を阻害し、それによって細胞外核酸集団を実質的に保存する。
用語「アポトーシス阻害剤」は、本明細書で使用される場合、特に、細胞含有生体試料中に存在することにより、細胞のアポトーシス過程を低減、予防かつ/もしくは阻害し、かつ/またはアポトーシス性の刺激に対する細胞の耐性を増大する化合物を指す。アポトーシス阻害剤には、それに限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、またはタンパク質様もしくはペプチド様の分子、有機および無機分子が含まれる。アポトーシス阻害剤には、代謝阻害剤、核酸分解、それぞれに核酸経路の阻害剤、酵素阻害剤、特にカスパーゼ阻害剤、カルパイン阻害剤、およびアポトーシス過程に関与する他の酵素の阻害剤として作用する化合物が含まれる。それぞれのアポトーシス阻害剤を、表1の一覧にする。好ましくは、細胞含有生体試料を安定化するために使用される少なくとも1種のアポトーシス阻害剤は、代謝阻害剤、カスパーゼ阻害剤およびカルパイン阻害剤からなる群から選択される。各クラスに適した例を、それぞれの分類により表1の一覧にする。好ましくは、アポトーシス阻害剤は、細胞透過性である。
本発明の範囲には、同じまたは異なるクラスのアポトーシス阻害剤のいずれかの、様々なアポトーシス阻害剤の組合せを使用すること、それぞれに同じまたは異なる作用機序のいずれかによってアポトーシスを阻害する様々なアポトーシス阻害剤の組合せを使用することも含まれる。
本発明の有利な一実施形態では、アポトーシス阻害剤は、カスパーゼ阻害剤である。カスパーゼ遺伝子ファミリーのメンバーは、アポトーシスにおいて著しく大きい役割を果たす。個々のカスパーゼの基質に対する優先性または特異性が、うまく競合してカスパーゼと結合するペプチドの開発に利用されてきた。カスパーゼに特異的なペプチドを、例えばアルデヒド、ニトリルまたはケトン化合物にカップリングさせることによって、カスパーゼ活性化の可逆的または不可逆的な阻害剤を創出することが可能である。例えば、Z−VAD−FMKなどのフルオロメチルケトン(FMK)誘導体化ペプチドは、細胞傷害作用を加えることなく有効な不可逆的阻害剤として作用する。N末端およびOメチル側鎖がベンジルオキシカルボニル基(BOC)で合成された阻害剤は、細胞透過性が強化される。さらに適切なカスパーゼ阻害剤は、C末端がフェノキシ基で合成されたものである。一例がQ−VD−OPhであり、これは、Z−VAD−FMKよりもアポトーシスを防止するのにさらにより有効な、細胞透過性の不可逆的な広範なカスパーゼ阻害剤である。
一実施形態によれば、カスパーゼ阻害剤は、汎カスパーゼ阻害剤であり、したがって広範なカスパーゼ阻害剤である。一実施形態によれば、カスパーゼ阻害剤は、カスパーゼに特異的な修飾ペプチドを含む。好ましくは、前記カスパーゼに特異的なペプチドは、アルデヒド、ニトリルまたはケトン化合物によって修飾されている。好ましい一実施形態では、カスパーゼに特異的なペプチドは、好ましくは、カルボキシル末端がO−フェノキシまたはフルオロメチルケトン(FMK)基で修飾されている。一実施形態によれば、カスパーゼ阻害剤は、Q−VD−OPhおよびZ−VAD(OMe)−FMKからなる群から選択される。一実施形態では、汎カスパーゼ阻害剤であるZ−VAD(OMe)−FMKが使用され、これは不可逆的な競合的ペプチド阻害剤であり、カスパーゼ−1ファミリーおよびカスパーゼ−3ファミリー酵素を阻止する。好ましい一実施形態では、カスパーゼの広範な阻害剤であるQ−VD−OPhが使用される。Q−VD−OPhは細胞透過性であり、アポトーシスによる細胞死を阻害する。Q−VD−OPhは、極度に高い濃度でも細胞に毒性がなく、アミノ酸のバリンおよびアスパラギン酸にコンジュゲートしたカルボキシ末端フェノキシ基からなる。Q−VD−OPhは、カスパーゼ−9およびカスパーゼ−3と、カスパーゼ−8およびカスパーゼ−10と、カスパーゼ−12とによって媒介される、3つの主なアポトーシス経路によるアポトーシスを防止するのに等しく有効である(カゼルタ(Caserta)ら、2003)。さらなるカスパーゼ阻害剤を、表1の一覧にする。一実施形態によれば、細胞含有試料を安定化するためにアポトーシス阻害剤として使用されるカスパーゼ阻害剤は、細胞の細胞内細胞死経路の下流に位置する、カスパーゼ−3などの1つまたは複数のカスパーゼに対して作用する阻害剤である。本発明の一実施形態では、カスパーゼ阻害剤は、カスパーゼ−3、カスパーゼ−8、カスパーゼ−9、カスパーゼ−10およびカスパーゼ−12からなる群から選択される1つまたは複数のカスパーゼのための阻害剤である。本発明の範囲には、カスパーゼ阻害剤の組合せを使用することも含まれる。
生体試料を少なくとも1種のアポトーシス阻害剤と接触させた後に得られる混合物は、アポトーシス阻害剤(またはアポトーシス阻害剤の組合せ)を、少なくとも0.01μM、少なくとも0.05μM、少なくとも0.1μM、少なくとも0.5μM、少なくとも1μM、少なくとも2.5μM、または少なくとも3.5μMの群から選択される濃度で含むことができる。当然のことながら、より高い濃度を使用することもできる。アポトーシス阻害剤(複数可)の適切な濃度範囲には、細胞含有生体試料と混合される場合、それに限定されるものではないが、0.01μM〜100μM、0.05μM〜100μM、0.1μM〜50μM、0.5μM〜50μM、1μM〜40μM、より好ましくは1μM〜30μM、または2.5μM〜25μMが含まれる。濃度が高いほどより有効であることが見出されたが、低濃度でも良好に安定化されるという結果が得られた。したがって、効率的な安定化は、特にアポトーシス阻害剤が高張剤と併用される場合、例えば0.1μM〜10μM、0.5μM〜7.5μM、または1μM〜5μMから選択される範囲の低濃度でも達成される(以下参照)。前述の濃度は、単一のアポトーシス阻害剤の使用にも、カスパーゼ阻害剤の組合せの使用にも適用される。カスパーゼ阻害剤の組合せが使用される場合、アポトーシス阻害剤の組合せの全体的濃度が前述の特徴を満たすならば、アポトーシス阻害剤の前記混合物において使用される個々のアポトーシス阻害剤の濃度は、前述の濃度未満であってもよい。細胞をなおも効率的に安定化し、かつ/または試料中に存在する核酸の分解を低減する低濃度を使用することには、安定化のための費用を抑えることができるという利点がある。低濃度は、例えばアポトーシス阻害剤が本明細書に記載の1種または複数種の安定剤と併用される場合に、使用することができる。前述の濃度は、カスパーゼ阻害剤、特にQ−VD−OPhおよび/またはZ−VAD(OMe)−FMKなどのカスパーゼに特異的な修飾ペプチドをアポトーシス阻害剤として使用する場合に、特に適している。前述の濃度は、例えば全血、特に血液10mlを安定化するのに非常に適している。他のアポトーシス阻害剤および/または他の細胞含有生体試料に適した濃度範囲は、当業者が日常的な実験を使用して、例えば実施例に記載した試験アッセイにおいて、アポトーシス阻害剤、それぞれにその異なる濃度を試験することによって決定することができる。
一実施形態によれば、有効量のアポトーシス阻害剤は、細胞含有生体試料におけるアポトーシスを、それぞれのアポトーシス阻害剤を含有していない対照試料と比較して、少なくとも25パーセント、少なくとも30パーセント、少なくとも40パーセント、少なくとも50パーセント、好ましくは少なくとも75パーセント、より好ましくは少なくとも85パーセント低下または低減する。
本発明の第1の態様の第2の従属態様によれば、試料を安定化するために、少なくとも1種の高張剤が使用され、ここで使用される高張剤は、試料中に含まれる細胞を安定化する。提供した実施例によって示される通り、高張剤だけでも、細胞含有試料を安定化し、試料に含まれている細胞外核酸集団の組成を実質的に保存するのに有効である。高張剤は、穏やかな高張効果(浸透)によって細胞収縮を誘発し、それによって細胞の安定性を増大する。したがって細胞は、例えば機械的に誘発される細胞損傷を受けにくくなる。試料は、例えば高張剤を試料に添加するか、またはその逆によって、高張剤と接触させることができる。得られた混合物中に存在する高張剤は、特に、試料に含有されている細胞を安定化し、それによって損傷細胞から放出される細胞内核酸、特にゲノムDNAの量を低減するのに適している。それによって、細胞外核酸集団は、実質的に保存され、細胞外核酸が、細胞内核酸、特にゲノムDNAによって汚染され、それぞれに希釈される危険性が低減する。
一実施形態によれば、高張剤は、細胞収縮を誘発するのに十分に浸透活性が高いが(細胞が水を放出する)、細胞に傷害を与えず、すなわち細胞溶解、それぞれに細胞破裂を誘発または促進しない。したがって、高張剤は、好ましくは穏やかな浸透圧効果を有する。さらに、高張剤と試料との間の相互作用は、基本的には望ましくない副作用を回避するために、主に細胞安定化効果に限定されることが望ましい。したがって、一実施形態によれば、非荷電高張剤が使用される。非荷電高張剤を使用することには、細胞が高張剤の浸透圧効果によってそれぞれに安定化されるとしても、高張剤と試料に含まれる他の化合物との間の相互作用が、荷電高張剤を使用する場合と比較して制限されるという利点がある。
有利な一実施形態によれば、高張剤は、ヒドロキシル化有機化合物であり、したがって少なくとも1個のヒドロキシル基を担持する。一実施形態によれば、ヒドロキシル化有機化合物は、少なくとも2個のヒドロキシル基を含む。一実施形態によれば、ヒドロキシル化有機化合物は、ポリオールである。一実施形態によれば、ポリオールは、2〜10個のヒドロキシル基、好ましくは3〜8個のヒドロキシル基を含む。ヒドロキシル化有機化合物は、2〜12個、好ましくは3〜8個の炭素原子を含むことができ、環式または直鎖、分枝状または非分枝状の分子であってよく、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であってよい。一実施形態によれば、ヒドロキシル化有機化合物は、ヒドロキシカルボニル化合物である。ヒドロキシカルボニル化合物は、1つまたは複数のヒドロキシ(OH)基および1つまたは複数のカルボニル基を有する化合物である。ヒドロキシル化有機化合物には、それに限定されるものではないが、ヒドロキシル化ケトン化合物および炭水化物、またはそれに由来する化合物が含まれ得る。一実施形態によれば、ヒドロキシル化有機化合物は、多価アルコール、特に糖アルコールである。したがって、ヒドロキシル化有機化合物には、それに限定されるものではないが、炭水化物、例えばグルコース、ラフィノース、スクロース(succrose)、フルクトース、アルファ−d−ラクトース一水和物、イノシトール、マルチトール、マンニトール、ジヒドロキシアセトン、アルコール、例えばグリセロール、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、ボレミトールまたは糖アルコールが含まれる。適切な例を、やはり以下の表の一覧にする。本発明の範囲には、それぞれのヒドロキシル化有機化合物の組合せを使用することも含まれる。
一実施形態によれば、先の一覧のポリオールおよび糖アルコールは、ヒドロキシル基が少ないアルコール(例えば、ヘキサン−1,2,3,4,5−ペントール、ペンタン−1,2,3,4−テトラオール)によって置き換えることができる。一実施形態によれば、ヒドロキシル化有機化合物は、1〜5個の炭素原子を有し、ヒドロキシル基を1個だけ担持するアルコールではない。一実施形態によれば、ヒドロキシル基を1個だけ有するアルコールは、ヒドロキシル化有機化合物から除外される。本発明の安定剤として使用できるヒドロキシル化有機化合物は、好ましくは水溶性であり、安定化される生体試料に含まれる細胞に対して非毒性である。好ましくは、ヒドロキシル化有機化合物は、生体試料に含有されている細胞の溶解を誘発または支持せず、したがって、好ましくは洗浄剤または細胞膜溶解剤としては機能しない。本発明の適切なヒドロキシル化有機化合物は、例えば実施例部分で記載したアッセイによって試験され得る通り、細胞外核酸集団の組成の保存を改善することによって、細胞含有試料を安定化する効果を達成する。
ヒドロキシル化有機化合物を、例えば全血などの細胞含有生体試料に添加すると、無細胞部分、それぞれに画分(例えば血漿)中の前記ヒドロキシル化有機化合物の濃度が増大し、したがって浸透圧(高張)効果の結果として、血液細胞が水を血漿中に放出する。一実施形態によれば、細胞の代謝産物に密接に関係するが、好ましくは細胞が利用できないヒドロキシル化有機化合物が使用される。
好ましい一実施形態では、生体試料に含有されている細胞は、安定化するのに使用される高張剤にとって本質的に不透過性である。したがって、好ましくは先に詳説したヒドロキシル化有機化合物である高張剤は、本質的に細胞不透過性である。これに関して、本質的に細胞不透過性とは、特に、好ましくはヒドロキシル化有機化合物である高張剤の濃度が、本発明の教示に従って安定化される生体試料に含有されている細胞内よりも、試料の細胞外部分において実質的に高いことを意味する。好ましい一実施形態では、好ましくはヒドロキシル化有機化合物である高張剤は、非毒性であり、したがって細胞生存率は損なわれない。このことは、細胞代謝を妨害する影響を回避するのに好ましい。
一実施形態によれば、高張剤は、ジヒドロキシアセトン(DHA)である。DHAは炭水化物であり、通常、セルフタンニングローションにおける日焼け物質として働く。実施例によって実証される通り、DHAは、驚くべきことには、細胞含有生体試料、特に全血試料および血漿または血清などの全血に由来する試料に対して注目すべき安定化効果を有する。DHAのリン酸エステル、ジヒドロキシアセトンリン酸、解糖の中間産物以外のDHAは、哺乳動物細胞において自然には生じない。したがってDHAは、血液細胞中に活性に運搬または拡散されないと予想される。一実施形態によれば、高張剤は、ジヒドロキシアセトンリン酸ではない。
細胞含有生体試料を少なくとも1種の高張剤と接触させて得られる混合物は、高張剤または高張剤混合物を、少なくとも0.05M、好ましくは0.1M、好ましくは少なくとも0.2M、より好ましくは少なくとも0.25Mの濃度で含むことができる。当然のことながら、より高い濃度を使用することもできる。高張剤に適した濃度範囲は、0.05M〜2M、0.1M〜1.5M、0.15M〜0.8M、0.2M〜0.7M、または0.1M〜0.6Mから選択される。それぞれの濃度は、ヒドロキシル化有機化合物、例えばジヒドロキシアセトンなどの炭水化物を高張剤として使用する場合に、特に適している。前述の濃度は、例えば全血、特に血液10mlを安定化するのに非常に適している。他の高張剤および/または他の細胞含有生体試料に適した濃度範囲は、当業者が日常的な実験を使用して、例えば実施例に記載した試験アッセイにおいて、高張剤、それぞれにその異なる濃度を試験することによって決定することもできる。
本発明の第1の態様の第3の従属態様によれば、細胞含有試料中の細胞外核酸集団を安定化するために、少なくとも1種の式1の化合物が使用される
[式中、R1は、水素残基またはアルキル残基、好ましくはC1〜C5アルキル残基、より好ましくはメチル残基であり、R2およびR3は、直鎖または分岐状に配列した炭素原子1〜20個の鎖長を有する、同じまたは異なる炭化水素残基であり、R4は、酸素、硫黄またはセレン残基である]。
提供した実施例によって示される通り、前述の式1の化合物は、注目すべき安定化効果を達成し、安定化した試料中の細胞外核酸集団の組成を実質的に保存するのに有効である。式1の1つまたは複数の化合物の混合物も、安定化のために使用することができる。
炭化水素残基R2および/またはR3は、短鎖アルキルおよび長鎖アルキルを含むアルキル、アルケニル、アルコキシ、長鎖アルコキシ、シクロアルキル、アリール、ハロアルキル、アルキルシリル、アルキルシリルオキシ、アルキレン、アルケンジイル、アリーレン、カルボキシレート、ならびにカルボニルを含む群から互いに独立に選択することができる。一般的な基、例えばアルキル、アルコキシ、アリール等は、本説明および特許請求の範囲に特許請求され、記載されている。好ましくは、本発明の範囲に含まれる、一般に記載される基に含まれる以下の基が使用される。
(1)アルキル、好ましくは短鎖アルキル、特に直鎖および分岐C1〜C5アルキルまたは長鎖アルキル、直鎖および分岐C5〜C20アルキル、
(2)アルケニル、好ましくはC2〜C6アルケニル、
(3)シクロアルキル、好ましくはC3〜C8シクロアルキル、
(4)アルコキシ、好ましくはC1〜C6アルコキシ、
(5)長鎖アルコキシ、好ましくは直鎖および分岐C5〜C20アルコキシ、
(6)アルキレン、好ましくは2〜18個の炭素原子を有し、任意選択によりヘテロ原子を含有する、二価の直鎖または分岐脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素残基、例えばメチレン、1,1−エチレン、1,1−プロピリデン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、2,2−プロピリデン、ブタン−2−オール−1,4−ジイル、プロパン−2−オール−1,3−ジイル、1,4−ブチレン、1,4−ペンチレン、1,6−へキシレン、1,7−ヘプチレン、1,8−オクチレン、1,9−ノニレン、1,10−デシレン、1,11−ウンデシレン、1,12−ドデシレン(docedylene)、シクロヘキサン−1,1−ジイル、シクロヘキサン−1,2−ジイル、シクロヘキサン−1,3−ジイル、シクロヘキサン−1,4−ジイル、シクロペンタン−1,1−ジイル、シクロペンタン−1,2−ジイル、およびシクロペンタン−1,3−ジイルを含む群から選択されるもの、
(7)アルケンジイル、好ましくは1,2−プロペンジイル、1,2−ブテンジイル、2,3−ブテンジイル、1,2−ペンテンジイル、2,3−ペンテンジイル、1,2−ヘキセンジイル、2,3−ヘキセンジイル、および3,4−ヘキセンジイルを含む群から選択されるもの、
(8)
に等しいアルキンジイル、
(9)アリール、好ましくは300Da未満の分子量を有する芳香族から選択されるもの、
(10)アリーレン、好ましくは1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,2−ナフタレニレン(1,2-naphtthalenylene)、1,3−ナフタレニレン(1,3-naphtthalenylene)、1,4−ナフタレニレン(1,4-naphtthalenylene)、2,3−ナフタレニレン(2,3-naphtthalenylene)、1−ヒドロキシ−2,3−フェニレン、1−ヒドロキシ−2,4−フェニレン、1−ヒドロキシ−2,5−フェニレン、1−ヒドロキシ−2,6−フェニレンを含む群から選択されるもの、
(11)カルボキシレート、好ましくは−C(O)OR基[式中、Rは、水素、C1〜C6アルキル、フェニル、C1〜C6アルキル−C6H5、Li、Na、K、Cs、Mg、Caから選択される]、
(12)カルボニル、好ましくは−C(O)R基[式中、Rは、水素、C1〜C6アルキル、フェニル、C1〜C6アルキル−C6H5、および−NR’2基から選択されるアミン(アミドをもたらす)から選択され、各R’は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルキル−C6H5およびフェニルから独立に選択され、Rの両方(Rs)がC1〜C6アルキルを表す場合、それらは、NC3〜NC5複素環を形成することができ、その環のアルキル置換基は、他のアルキル鎖を形成する]、
(13)アルキルシリル、好ましくは−SiR1R2R3基[式中、R1、R2およびR3は、水素、アルキル、長鎖アルキル、フェニル、シクロアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、長鎖アルコキシから互いに独立に選択される]、
(14)アルキルシリルオキシ、好ましくは−O−SiR1R2R3基[式中、R1、R2およびR3は、水素、アルキル、長鎖アルキル、フェニル、シクロアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、長鎖アルコキシから互いに独立に選択される]。
R2および/またはR3の鎖長nは、特に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20の値を有することができる。好ましくはR2およびR3は、1〜10の炭素鎖長を有する。この場合、鎖長nは、特に1、2、3、4、5、6、7、8、9および10の値を有することができる。好ましくは、R2およびR3は、1〜5の炭素鎖長を有し、この場合、鎖長は、特に1、2、3、4および5の値を有することができる。R2およびR3について特に好ましいのは、1または2の鎖長である。
R1の鎖長nは、好ましくは1、2、3、4または5の値を有する。R1について特に好ましいのは、1または2の鎖長である。
R4は、好ましくは酸素である。
好ましい一実施形態では、式1の化合物は、N,N−ジアルキル−カルボン酸アミドである。好ましいR1、R2、R3およびR4基は、既に記載されている。一実施形態によれば、化合物は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジエチルホルムアミドからなる群から選択される。実施例に示す通り、N,N−ジメチルプロパンアミドなどのN,N−ジアルキルプロパンアミドも適している。好ましくは、式1の物質は、N,N−ジメチルアセトアミド(N,N-dimethlylacetamide)(DMAA)である。好ましい化合物の構造式は、以下の通りである。
R4として酸素の代わりに硫黄を含むそれぞれのチオ類似体も適している。
細胞含有生体試料を、式1の化合物またはそれぞれの化合物の混合物と接触させて得られる混合物は、前記化合物または化合物混合物を、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも0.75%、少なくとも1%、少なくとも1.25%、または少なくとも1.5%の最終濃度で含むことができる。適切な濃度範囲には、それに限定されるものではないが、0.1%〜50%が含まれる。好ましい濃度範囲は、0.1%〜30%、0.1%〜20%、0.1%〜15%、0.1%〜10%、0.1%〜7.5%、0.1%〜5%、1%〜30%、1%〜20%、1%〜15%、1%〜10%、1%〜7.5%、1%〜5%、1.25%〜30%、1.25%〜20%、1.25%〜15%、1.25%〜10%、1.25%〜7.5%、1.25%〜5%、1.5%〜30%、1.5%〜20%、1.5%〜15%、1.5%〜10%、1.5%〜7.5%、および1.5%〜5%からなる群から選択することができる。それぞれの濃度は、N,N−ジアルキル−カルボン酸アミド、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルホルムアミド(N,N-diemethylformamide)またはN,N−ジメチルプロパンアミドを安定剤として使用する場合に、特に適している。前述の濃度は、例えば、全血または血漿などの血液製剤を安定化するのに非常に適している。他の式1の化合物および/または他の細胞含有生体試料に適した濃度範囲は、当業者が日常的な実験を使用して、例えば実施例に記載した試験アッセイにおいて、化合物、それぞれにその異なる濃度を試験することによって決定することもできる。
好ましくは、式1の化合物は、細胞含有試料を安定化するためのキレート剤と併用される。特にキレート剤は、血液試料、または例えば血漿もしくは血清などの血液由来の試料を安定化する場合に、抗凝固剤として使用することができる。適切なキレート剤および濃度範囲を、以下に提示する。
好ましい第4の従属態様によれば、試料を、
a)少なくとも1種のアポトーシス阻害剤、および
b)試料に含まれている細胞を安定化する少なくとも1種の高張剤
と接触させる、細胞含有試料、好ましくは血液試料を安定化するのに適した方法が提供される。
したがって、この好ましい実施形態によれば、細胞含有試料を安定化するのに共に単独で既に有効であったアポトーシス阻害剤および高張剤(先および実施例を参照)が併用される。それによって、安定化効果を増大することができ、かつ/または個々の構成成分(アポトーシス阻害剤および/または高張剤)の濃度を低減しながらも、試料中の細胞外核酸集団を効率的に保存し、特に試料に含有されている損傷細胞もしくは崩壊細胞から放出される細胞内核酸、特に断片化ゲノムDNAによる汚染を回避し、それぞれに低減することができる。実施例に示す通り、それぞれの組合せを使用することは、細胞含有試料、さらには全血試料などの非常に複雑な試料を安定化するのに特に有効である。本発明の範囲には、様々なアポトーシス阻害剤を、様々な高張剤と組み合せた混合物を使用することも含まれる。アポトーシス阻害剤および高張剤の適切な好ましい実施形態、ならびに試料の効率的な安定化を達成するのに適したそれぞれの薬剤の好ましい濃度は、細胞含有生体試料を安定化するのにアポトーシス阻害剤または高張剤のいずれかを使用する実施形態と共に先に詳説されている。先の開示が参照され、その開示も、アポトーシス阻害剤を高張剤と併用する実施形態に適用される。好ましくは、少なくとも1種のカスパーゼ阻害剤、好ましくはカスパーゼに特異的な修飾されたペプチド、好ましくはQ−VD−OPhなどのC末端がO−フェノキシ基で修飾されたペプチドが、高張剤としての少なくとも1種のヒドロキシル化有機化合物、例えばジヒドロキシアセトンまたはポリオールなどの炭水化物と併用される。実施例によって実証される通り、それぞれの組合せは、細胞含有生体試料、特に全血試料を、室温で3日間を超えて、さらには6日間にわたって安定化するのに著しく有効である。
一実施形態によれば、少なくとも1種のアポトーシス阻害剤、少なくとも1種の高張剤および/または先に定義の少なくとも1種の式1の化合物を含む安定化剤の組合せが使用される。それぞれの組合せの例には、(1)少なくとも1種のアポトーシス阻害剤および先に定義の少なくとも1種の式1の化合物の組合せ、(2)少なくとも1種の高張剤および先に定義の少なくとも1種の式1の化合物の組合せ、または(3)3種すべての安定化剤、すなわち少なくとも1種のアポトーシス阻害剤、少なくとも1種の高張剤および先に定義の少なくとも1種の式1の化合物の組合せが含まれる。それぞれの組合せは、例えば抗凝固剤およびキレート剤などの安定化効果を強化する追加の添加剤を含むこともできる。一実施形態によれば、安定化剤の組合せは、カスパーゼ阻害剤および抗凝固剤、好ましくはEDTAなどのキレート剤を含む。それぞれの組合せは、本発明の第1の態様に従って細胞含有試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するのに適した方法で有利に使用される、第5の従属態様に従うことができる。安定化剤の組合せを用いることによって観測される安定化効果は、個々の安定化剤のいずれかを単独で使用する場合に観測される効果よりも強力であり、および/またはその安定化効果によって個々の安定化剤を低濃度で使用することができ、それによって安定化剤の併用は魅力的な選択肢となる。アポトーシス阻害剤、高張剤および先に定義の式1の化合物の適切な好ましい実施形態、ならびに試料の効率的な安定化を達成するのに適したそれぞれの薬剤の適切な好ましい濃度は、細胞含有生体試料を安定化するのにアポトーシス阻害剤、高張剤または式1の化合物のいずれかを使用する実施形態と共に先に詳説されている。
本発明の背景技術で論じた通り、細胞外核酸は、通常、試料中に「裸」では存在しないが、例えば放出されないように複合体によって保護され、または小胞等に含有されることによって、ある程度安定化されている。これには、細胞外核酸が、その性質によって既にある程度安定化されており、したがって通常は、全血、血漿または血清などの細胞含有試料中のヌクレアーゼによって急速には分解されないという効果がある。したがって、生体試料に含まれている細胞外核酸の安定化が企図される場合、その主な問題の1つは、試料に含有されている損傷細胞または死滅細胞から生じる細胞内核酸、特に断片化ゲノムDNAによって細胞外核酸集団が希釈され、それぞれに汚染されることである。これについては、血漿または血清などの細胞欠乏試料(微量の細胞を含み得る場合でも、「無細胞」と説明される時がある)を処理する場合にも問題がある。本発明の安定化技術は、これに関して、試料中に存在する細胞外核酸を実質的に保存し、例えば試料に含まれている細胞外核酸の分解を阻害するだけでなく(安定化されていない試料またはEDTAで安定化された試料と比較して、安定化期間にわたって好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または最も好ましくは少なくとも95%阻害する)、さらには試料に含有されている細胞からゲノムDNAが放出されるのを効率的に低減し、かつ/またはそれぞれのゲノムDNAの断片化を効率的に低減するので、特に利点がある。一実施形態によれば、本発明の教示に従って、細胞含有試料を安定化するためにアポトーシス阻害剤、高張剤および/または式1の化合物を使用することは、試料に含有されている細胞からDNAが放出されることによるDNAの増加が、安定化されていない試料と比較して少ないという効果を有する。一実施形態によれば、前記ゲノムDNAの放出は、安定化されていない試料またはEDTAで安定化された対応する試料(特に血液試料、または血漿もしくは血清などの血液由来の試料の場合)と比較して、安定化期間にわたって少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、少なくとも17倍、または少なくとも20倍低減される。一実施形態によれば、前記ゲノムDNAの放出は、安定化されていない試料またはEDTAで安定化された対応する試料(特に血液試料、または血漿もしくは血清などの血液由来の試料の場合)と比較して、安定化期間にわたって少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%低減される。DNAの放出は、本明細書において実施例部分で記載した通り、例えばリボソーム18S DNAを定量化することによって測定することができる。例えば、標準のEDTAで安定化された血液試料は、それぞれのアッセイにおいて、例えば室温で貯蔵して6日目に測定すると、DNAが40倍増大している(図2b参照)。本発明の教示によって安定化が達成され得ることにより、このDNA放出は著しく低減され、例えば最大4倍にまでも低減される。したがって、試料に含有されている細胞外核酸集団は、標準のEDTA管内で安定化された試料と比較して大幅に安定化される。したがって、一実施形態によれば、本発明が教示する通り、アポトーシス阻害剤、高張剤および/または式1の化合物によって達成される安定化効果によって、試料に含有されている細胞からのDNAの放出が、例えば実施例に記載の18S DNAアッセイで決定され得る通り、最大10倍、好ましくは7倍、より好ましくは5倍、最も好ましくは少なくとも最大4倍まで低減される。実施例によって示される通り、細胞外核酸集団の有効な安定化は、少なくとも最長6日間にわたって達成され得る。試料の貯蔵期間が、例えば最長3日間と短い期間であれば、DNA放出は、例えば実施例に記載の18S DNAアッセイで決定され得る通り、少なくとも最大2倍まで低減され得る。したがって、DNA放出は、本説明の安定化方法を使用すると、最長3日間の保存期間では2倍以下まで低減され得る。このことは、従来技術の方法と比較して、細胞外核酸集団の安定化の注目すべき改善点である。これによって、任意のその後の試験の精度が著しく強化される。特定の場合には、例えば試料材料を、例えば室温で長距離運搬しなければならず、または長期間貯蔵しなければならない場合(例えば、いくつかの国の場合にあり得る)、本発明の方法によって、このような期間が経過した後でも、これらの試験を初めて実施することが可能となる。しかし当然のことながら、必要に応じてそれより早期に試料を処理することもできる。達成され得る安定化期間を必ずしもすべて利用する必要はない。本発明を用いて達成される安定化によって、収集した後の試料の、様々な取扱い/処理(例えば、貯蔵条件および貯蔵期間)によって生じ得る細胞外核酸集団の変動が低減される。これにより、取扱いおよび分子分析の標準化が大幅に改善される。
細胞含有試料をさらに安定化するために、アポトーシス阻害剤、高張剤および/または先に定義の式1の化合物に加えて、さらなる添加剤を使用することができる。安定化効果にも寄与し得る適切な添加剤の選択は、安定化される細胞含有試料のタイプに応じても変わり得る。例えば、細胞含有生体試料として全血を処理する場合、例えばヘパリン、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸塩、シュウ酸塩、およびその任意の組合せからなる群から選択される抗凝固剤を含むことが有利であり、一般的でもある。有利な一実施形態では、抗凝固剤はキレート剤である。キレート剤は、有機化合物の2個以上の原子を介して金属と配位結合を形成することができる有機化合物である。本発明のキレート剤には、それに限定されるものではないが、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジニトリロ四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)およびN,N−ビス(カルボキシメチル)グリシン(NTA)が含まれる。好ましい一実施形態では、EDTAが使用される。本明細書で使用される場合、用語「EDTA」は、中でもEDTA化合物の、例えばK2EDTA、K3EDTAまたはNa2EDTAなどのEDTA部分を指す。EDTAなどのキレート剤の使用には、DNaseなどのヌクレアーゼが阻害され、それによって例えばDNaseによる細胞外DNAの分解が防止されるという有利な効果もある。さらに本発明者らは、EDTAをより高濃度で使用/添加すると、細胞から細胞内核酸、特にゲノムDNAが放出されるのを低減することができ、それによってアポトーシス阻害剤、高張剤および/または少なくとも1種の式1の化合物によって達成される安定化効果が支持されることを見出した。しかし、EDTAだけでは、例えば試料に含有されている細胞から放出されるゲノムDNAの断片化を効率的に阻害することができない。したがって、EDTAでは、十分な安定化効果を達成できない。しかしEDTAは、本発明の教示と組み合せて、特にアポトーシス阻害剤、特にカスパーゼ阻害剤と組み合せて使用すると、先に論じた理由から、安定化をさらに改善することができる。さらには、RNAの化学的安定性も増大すると思われる。一実施形態によれば、前述の安定化化合物の1種または複数種と混合される生体試料中のキレート剤、好ましくはEDTAの濃度は、接触ステップの後、0.05mM〜100mM、0.05mM〜50mM、0.1mM〜30mM、1mM〜20mM、および2mM〜15mMからなる群から選択される範囲である。それぞれの濃度は、血液、血漿および/または血清試料、特に血液試料10mlを安定化する場合に、特に有効である。
また、細胞含有試料の安定化をさらに支持し、それぞれに細胞外核酸集団の保存を支持するために、追加の添加剤を使用することができる。それぞれの添加剤の例には、それに限定されるものではないが、ヌクレアーゼ阻害剤、特にリボヌクレアーゼ(RNase)およびデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)阻害化合物が含まれる。リボヌクレアーゼ(RNase)阻害剤の例には、それに限定されるものではないが、抗ヌクレアーゼ抗体またはリボヌクレオシド−バナジル複合体が含まれる。それぞれのさらなる添加剤を選択する場合、アポトーシス阻害剤、高張剤および/または式1の化合物の安定化効果を損なわず、かつ/または相殺しないように注意すべきである。したがって、添加剤は、生体試料に含有されている細胞の溶解および/もしくは分解をもたらす、もしくは支持する、かつ/または生体試料の無細胞画分に含有されている核酸の分解を支持する濃度で使用されるべきではない。
本発明の有利な一実施形態では、好ましくは血液試料、または血漿もしくは血清などの血液由来の試料である細胞含有生体試料を、
a)好ましくは濃度範囲1μM〜30μMの、アポトーシス阻害剤としての少なくとも1種のカスパーゼ阻害剤、好ましくはQ−VD−OPh、
b)任意選択により、濃度範囲0.1M〜0.6Mの、高張剤としてのジヒドロキシアセトンなどの少なくとも1種のヒドロキシル化有機化合物、および
c)任意選択により、先に定義の少なくとも1種の式1の化合物(好ましい実施形態および濃度は、先に記載されている)および/または
d)好ましくは濃度範囲4mM〜50mM、好ましくは4mM〜20mMのさらなる添加剤、好ましくはキレート剤、最も好ましくはEDTA
を接触させる。
安定化組成物の構成成分は、緩衝液、例えばMOPS、TRIS、PBSなどの生理的緩衝液等に含まれ、それぞれに溶解することができる。
アポトーシス阻害剤、高張剤および/または先に定義の式1の化合物、ならびに任意選択により存在するさらなる添加剤は、例えば、試料を収集するためのデバイス、好ましくは容器内に存在することができ、または生体試料を収集する直前に、それぞれの収集デバイスに添加することができ、または試料をデバイス内に収集した直後に収集デバイスに添加することができる。本発明の範囲には、安定剤(複数可)、および任意選択によりさらなる添加剤(複数可)を、細胞含有生体試料に別個に添加することも含まれる。しかし、取扱いを容易にするために、1つまたは複数の安定化剤、および任意選択によりさらなる添加剤が、1つの組成物で提供されるのが好ましい。さらに有利な一実施形態では、アポトーシス阻害剤、高張剤および/または前述の式1の化合物、ならびに任意選択によりさらなる添加剤(複数可)は、試料を添加する前に、収集デバイス内に存在する。これにより、細胞含有生体試料を安定剤(複数可)と接触させるとすぐに、確実に安定化することができる。安定化剤(複数可)は、容器に収集され、それぞれにその容器に含まれる量の細胞含有試料を安定化するのに有効な量で、前記容器内に存在する。前述の通り、試料はその収集後および/またはその最中に安定化剤(複数可)と直接混合され、それによって安定化された試料になる。
好ましくは、試料は、試料の収集後および/またはその最中に、安定化剤(複数可)と直接混合される。したがって好ましくは、前述の安定化剤(複数可)および添加剤は、安定化組成物の形態で提供される。好ましくは、前記安定化組成物は、液体形態で提供される。前記安定化組成物は、試料の収集中に試料がすぐに安定化されるように、例えば試料収集デバイスに予め充填することができる。一実施形態によれば、安定化組成物を、細胞含有試料と10:1〜1:20、5:1〜1:15、1:1〜1:10および1:2〜1:5から選択される体積比で接触させる。多量の試料を少量の安定化組成物によって安定化できることが、本発明の教示の特別な利点である。したがって好ましくは、安定化組成物と試料の比は、1:2〜1:7、より好ましくは1:3〜1:5の範囲に含まれる。
用語「細胞含有試料」は、本明細書で使用される場合、特に、少なくとも1個の細胞を含む試料を指す。細胞含有試料は、少なくとも2個、少なくとも10個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも250個、少なくとも500個、少なくとも1000個、少なくとも1500個、少なくとも2000個、または少なくとも5000個の細胞を含むことができる。さらに、大幅に多量の細胞を含む細胞含有試料も、前記用語に包含され、本発明の教示に従って安定化することができる。しかし、それぞれの試料は、残存細胞をしばしば含むので、用語「細胞含有試料」は、例えば血漿などの「無細胞」と一般に呼ばれる細胞欠乏試料を含む細胞欠乏試料も指し、したがって細胞欠乏試料も包含する。少なくとも、血漿などのいわゆる「無細胞」試料であっても、その試料が残存量の細胞を含み、したがってそれにより前記残存細胞から放出される細胞内核酸によって細胞外核酸集団が汚染される危険性があることを、完全には除外できないことが多い。したがって、一実施形態によれば、それぞれの細胞欠乏試料および「無細胞」試料も、用語「細胞含有試料」に包含される。したがって「細胞含有試料」は、例えば全血を用いる場合のように、多量の細胞を含み得るが、単に微量の細胞しか含まない場合もある。したがって、用語「細胞含有試料」は、細胞を含有すると単に疑われ得るか、またはその危険性を有する場合がある試料も包含する。先に論じた通り、例えば血漿などの単に微量の、それぞれに残存量の細胞しか含まない生体試料に関しても(血漿は、調製方法に応じて、通常は、一般に無細胞と呼ばれる場合でも残存する少量の細胞を含有する)、これらの残存細胞が、やはり試料に含まれる細胞外核酸の望ましくない汚染をもたらし得るので、本発明の方法にはかなり大きな利点がある。本発明の安定化技術を使用すると、残存量の細胞しか含まないか、または残存量の細胞を含むと単に疑われるか、もしくはその危険性を有するそれぞれの試料も、やはり先に詳説した通り確実に効率的に安定化される。本発明の安定化方法の使用には、試料の組成および試料に含有されている細胞の数とは無関係に、試料に含有されている細胞外核酸集団が、実質的に保存され、それぞれに安定化され、それによって試料に含有されている細胞外核酸のその後の単離および/または分析を標準化できるという利点がある。
一実施形態によれば、細胞含有生体試料は、全血、血液由来の試料、血漿、血清、喀痰、涙液、リンパ液、尿、汗、髄液(liquor)、脳脊髄液(cerebrospinal fluid)、腹水、乳、糞便、気管支洗浄液、唾液、羊水、経鼻分泌物、膣内分泌物、精液(semen)/精漿(seminal fluid)、創傷分泌物、ならびに細胞培養上清、および他のスワブ試料から得られた上清からなる群から選択される。一実施形態によれば、細胞含有生体試料は、体液、身体分泌物または身体排泄物、好ましくは体液、最も好ましくは全血、血漿または血清である。細胞含有生体試料は、細胞外核酸を含む。別の実施形態によれば、細胞含有生体試料は、例えば糞便、組織または生検試料などの、ヒトまたは動物に由来する非流体試料である。本発明の方法を用いて安定化できる細胞含有生体試料の他の例には、それに限定されるものではないが、細胞外核酸を含む生体試料である細胞懸濁液、細胞培養物、細胞培養上清等が含まれる。
前述の通り、また実施例によって実証される通り、本発明の方法を使用すると、細胞含有試料を長期間冷蔵または凍結させずに安定化することができる。したがって試料は、室温で、または例えば最大30℃もしくは最大40℃の高温でも保持することができる。一実施形態によれば、安定化効果は、室温で少なくとも2日間、好ましくは少なくとも3日間、より好ましくは少なくとも1日間〜6日間、最も好ましくは少なくとも1日間〜少なくとも7日間達成される。実施例に示す通り、本発明の方法に従って安定化された試料は、室温で3日間貯蔵しても実質的に損なわれなかった。室温でより長い期間、最長6日間、またはさらには7日間貯蔵しても、細胞外核酸集団は、安定化されていない試料と比較して、または例えばEDTA処理などの標準方法を使用して安定化された試料と比較して、実質的により安定化された。安定化効果は、経時的に低下し得るとしても、細胞外核酸集団の組成を保存して、分析および/またはさらなる処理を可能にするのに十分である。したがって、本発明の方法に従って安定化された試料は、室温で長期間貯蔵した後でも、試料に含有されている細胞外核酸を単離し、任意選択により分析するのに適していた。したがって、特に安定化剤の好ましい組合せを使用すると試料は損なわれなかったため、さらに長期間の貯蔵/輸送も考えられる。しかし通常は、通常の貯蔵時間、例えば核酸の単離および任意選択により分析が実施される実験室までの輸送時間は、通常は6日または7日を超えず、通常は2日または3日でも完了するので、それより長い期間は必要ない。実施例に示される通り、安定化効率は、この期間にわたって特に良好である。しかし、本説明の方法を用いて達成され得る、特別に長い安定化期間および特別に高い安定化効率によって、重要な安定係数が提供される。
本発明の教示に従って使用される添加剤は活性が高いので、本発明の方法および後述する組成物により、少量の物質を添加して、多量の生体試料を安定化することもできる。このことは、特に試料に含有されている細胞外核酸を単離するために自動化過程の使用が企図される場合には、試料のサイズ/体積がその後の単離手順に対して相当大きい制約を課すので、重要な利点である。さらに、細胞外核酸は、それを含有する試料中に、しばしばごく少量で含まれることを考慮しなければならない。したがって、例えば血液試料などの多量の細胞含有試料の処理には、より多量の循環核酸を試料から単離することができ、したがってその後の分析に利用できるという利点がある。
生体試料の安定化の後、核酸分析技術を直接行うことができ、または核酸を試料から精製することができる。したがって、本発明の方法に従って安定化された試料は、核酸の分析方法および/もしくは検出方法で分析することができ、かつまたはさらに処理することができる。例えば、細胞外核酸を、安定化された試料から単離することができ、次に核酸の分析方法および/もしくは検出方法で分析することができ、またはさらに処理することができる。
さらに、第2の態様によれば、細胞含有生体試料から細胞外核酸を単離する方法が提供され、その方法は、
a)本発明の第1の態様に定義の方法に従って、細胞含有試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するステップと、
b)細胞外核酸を単離するステップと、
を含む。
先に論じた通り、本発明の安定化には、生体試料を得、それぞれに収集した時点で、その試料に含有されている細胞外核酸集団が示す状態で、それらが実質的に保存されるという効果がある。特に、損傷細胞または死滅細胞から放出される細胞内核酸、特にゲノムDNA、より具体的には断片化ゲノムDNAから生じる、通常観測される核酸の多量の増加は、実施例で実証される通り効率的に低減される。したがって、それぞれに安定化された試料から得られる細胞外核酸は、安定化されていない試料と比較して、試料に含まれている分解細胞または死滅細胞から生じる細胞内核酸による汚染が少なく、特に含まれる断片化ゲノムDNAの量が少ない。さらに、ユニークな安定化ステップによって、回収可能な細胞外核酸の量を増大することができる。本発明の安定化方法は、試料の架橋なしに実施することができる。このことは、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド放出薬などの架橋剤が架橋するせいで、回収可能な細胞外核酸の量を減少するおそれがあるため、これらの試薬を使用するよりも重要な利点を有する。したがって、本発明の方法によって、細胞外核酸の診断および予後能力が改善される。さらに、前記安定化は、試料に含有されている細胞を分離する前および/またはステップb)で試料に含まれている細胞外核酸を単離する前に、室温でも長期間試料を貯蔵し、かつ/または取り扱い、例えば運搬することができる。安定化の詳細については、先の開示が参照され、その開示はここでも適用される。
一実施形態によれば、例えば全血試料などの、細胞含有生体試料は、先に詳説した通り、ステップa)で、少なくとも1種のアポトーシス阻害剤、少なくとも1種の高張剤および/または前述の少なくとも1種の式1の化合物を使用して、好ましくは少なくとも2種のこれらの安定化剤および任意選択によりさらなる添加剤を使用して安定化される。適切な好ましい実施形態は、既に記載した。全血試料を安定化するのに特に好ましいのは、カスパーゼ阻害剤を、前述の抗凝固剤、好ましくはキレート剤と併用することである。
例えば全血を用いる場合のように、試料が多量の細胞を含む場合には、細胞外核酸を含む試料の無細胞画分、それぞれに細胞が少ない画分または細胞欠乏画分を得るために、細胞を残りの試料から分離する。したがって、一実施形態によれば、ステップa)とステップb)との間で、細胞含有試料から細胞を除去する。この中間ステップは、単に任意選択であり、例えば単に微量の、例えば血漿または血清などの残存細胞を含む試料を処理する場合には使用できない。しかし結果を改善するためには、それぞれの残存細胞(または潜在的な残存細胞)も、単離中に細胞外核酸集団を汚染するおそれがあるため、除去することが好ましい。残存細胞を含む細胞は、試料のタイプに応じて、例えば遠心分離、好ましくは高速遠心分離によって、または遠心分離ステップを回避すべき場合には、例えば濾過、沈降もしくは(任意選択により磁気)粒子表面との結合などの、遠心分離以外の手段を使用することによって分離し、除去することができる。それぞれの細胞除去ステップは、自動化された試料調製プロトコルにも容易に含まれ得る。それぞれに除去された細胞を、さらに処理することもできる。細胞は、例えば貯蔵することができ、および/または例えば核酸もしくはタンパク質などの生体分子を、除去された細胞から単離することができる。
さらに、本発明の範囲には試料を後処理するためのさらなる中間ステップも含まれる。
次に、細胞外核酸は、ステップb)で、例えば無細胞画分、それぞれに細胞欠乏画分、例えば上清、血漿および/または血清から単離される。細胞外核酸を単離するために、それぞれの試料から、それぞれに細胞欠乏試料から核酸を単離するのに適した、任意の公知の核酸単離方法を使用することができる。それぞれの精製方法の例には、それに限定されるものではないが、抽出、固相抽出、シリカに基づく精製、磁気粒子に基づく精製、フェノール−クロロホルム抽出、クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー(アニオン交換表面を使用する)、電気泳動法、濾過、沈殿、クロマチン免疫沈降、およびその組合せが含まれる。本発明の範囲には、例えば配列特異的な結合を可能にし、固体支持体に結合する適切なプローブを使用することによって、特異的標的である細胞外核酸を特異的に単離することも含まれる。当業者に公知の任意の他の核酸単離技術を使用することもできる。一実施形態によれば、核酸は、カオトロピック剤および/またはアルコールを使用して単離される。好ましくは、核酸は、固相、好ましくはシリカまたはアニオン交換官能基を含む固相に結合させることによって単離される。適切な方法およびキットは、QIAamp(登録商標)循環核酸キット(Circulating Nucleic Acid Kit)(キアゲン(QIAGEN))、ケマジック循環NAキット(Chemagic Circulating NA Kit)(ケマゲン(Chemagen))、ヌクレオスピン プラズマ XSキット(NucleoSpin Plasma XS Kit)(マケリー−ナゲル(Macherey-Nagel))、血漿/血清循環DNA精製キット(Plasma/Serum Circulating DNA Purification Kit)(ノルゲン ビオテック(Norgen Biotek))、血漿/血清循環RNA精製キット(Plasma/Serum Circulating RNA Purification Kit)(ノルゲン ビオテック(Norgen Biotek))、ハイピュア ウイルス核酸 高容量キット(High Pure Viral Nucleic Acid Large Volume Kit)(ロシュ(Roche))、および循環核酸を抽出し、精製するのに適した他の市販キットなどで市販されている。
一実施形態によれば、ステップa)の後、または任意選択により中間ステップで細胞が除去された後に得られる試料に含まれるすべての核酸は、単離され、例えば無細胞画分、それぞれに細胞欠乏画分から単離される。例えば、核酸全体を血漿または血清から単離することができ、細胞外核酸は、抽出したこれらの核酸に一部として含まれる。細胞が効率的に除去されると、単離された核酸全体は、主に細胞外核酸を含み、またはさらには細胞外核酸からなる。本発明の範囲には、少なくとも主に特異的標的核酸を単離することも含まれる。標的核酸は、例えば特定のタイプの核酸、例えばmRNA、マイクロRNA、他の非コード核酸、後成的修飾核酸、および他の核酸を含むRNAまたはDNAであってよい。本発明の範囲には、例えば単離後にヌクレアーゼを使用して非標的核酸を消化することも含まれる。標的核酸という用語は、特定の種類の核酸、例えば特定の疾患マーカーであることが知られている特異的細胞外核酸も指す。先に論じた通り、細胞外核酸の単離は、例えば適切な捕獲プローブを使用することによって、それぞれの標的核酸を特異的に単離することを含む場合もある。標的核酸という用語は、一定の長さを有する核酸、例えば2000nt以下、1000nt以下または500nt以下の長さを有する核酸も指す。細胞外核酸は、通常、2000nt未満、通常1000nt未満、しばしば500nt未満という小さいサイズを有することが知られているので、より小さいそれぞれの標的核酸を単離することが有利な場合がある。本明細書に示したサイズ、それぞれにサイズ範囲は、鎖長を指す。すなわちDNAの場合、鎖長はbpを指す。それぞれの小核酸の単離、それぞれに精製に焦点を合わせると、単離された核酸において得られる細胞外核酸部分を増大することができる。本発明の安定化方法によって、特に細胞内ゲノムDNAの断片化が阻害されることに起因して、例えば核酸抽出手順の最中に、断片化細胞外核酸集団からこのような高分子量ゲノムDNAをより効率的に分離することができる。ゲノム核酸と循環核酸との間の実質的なサイズの差異は、本発明の安定化技術を使用して本質的に保存されるので、ゲノムDNAは、例えば、DNAのサイズ選択的な回収によって、それぞれ安定化されていない場合よりも効率的に除去することができる。例えば高分子量ゲノムDNAを欠乏させることによって、細胞外核酸集団のそれぞれの選択的単離を達成するのに適した方法は、従来技術では周知であり、したがってここでこれ以上説明する必要はない。例えば、1,000〜10,000のヌクレオチドまたは塩基対の任意の核酸の試料を欠乏させるサイズ選択的な方法を使用すれば十分であると思われる。本発明に従って安定化された試料中の、ゲノム核酸(通常10,000bpを超える)と細胞外核酸(通常1000bp未満)とのサイズの差異は、効率的な安定化に起因して通常は相対的に大きいので(その差異は、例えば1000〜10,000bpの範囲に含まれ得る)、細胞外核酸を生体試料から選択的に単離するための公知の方法を適用することができる。このことにより、単離された細胞外核酸集団中の細胞内核酸の量を低減するためのさらなる好機も提供される。例えば、核酸抽出プロトコル中のゲノムDNAの除去は、残存細胞を除去するために核酸抽出を開始する前の、血漿試料の別個の高重力遠心分離を補完し、またはさらには置き換えることもできる。前記残存細胞から放出されるゲノムDNAは、本発明の安定化に起因して、大量には分解されず、したがって、サイズ選択的な単離プロトコルによって除去することができる。この選択肢は、多くの臨床研究室が、このような高重力遠心分離を実施することができる遠心分離機または特に微量の残存細胞を除去するための他の手段を備えていないので、特に利点がある。
次に、単離された核酸を、ステップc)で適切なアッセイおよび/または分析方法を使用して、分析および/またはさらに処理することができる。例えば、単離された核酸を、同定し、修飾し、少なくとも1種の酵素と接触させ、増幅し、逆転写し、クローン化し、配列決定し、プローブと接触させ、検出し(それらの有無)、かつ/または定量化することができる。それぞれの方法は、従来技術で周知であり、細胞外核酸を分析するために、一般に医療、診断および/または予後分野において適用される(発明を実施するための形態も参照)。したがって、細胞外核酸を、任意選択により核酸全体、RNA全体および/またはRNA全体として単離した(先を参照)後に分析して、それに限定されるものではないが、多数の新生物疾患、特に様々な形態の癌などの前悪性腫瘍および悪性腫瘍を含む病状の有無または重症度を同定することができる。例えば、単離された細胞外核酸は、それに限定されるものではないが、非侵襲性の出生前遺伝的試験、それぞれにスクリーニング、疾患スクリーニング、病原体スクリーニング、腫瘍学、癌スクリーニング、初期段階の癌スクリーニング、癌療法モニタリング、遺伝的試験(遺伝子型解析)、感染症試験、傷害診断、外傷診断、移植医療、または多くの他の疾患を含む多くの適用分野で、診断および/または予後マーカー(例えば、胎児由来のまたは腫瘍由来の細胞外核酸)を検出するために分析することができ、したがって診断および/または予後に関連する。一実施形態によれば、単離された細胞外核酸を分析して、疾患または胎児の特徴を同定し、かつ/または特徴を決定する。したがって先に論じた通り、本明細書に記載の単離方法は、ステップc)核酸の分析および/または処理をさらに含むことができる。したがって、一実施形態によれば、単離された細胞外核酸をステップc)で分析して、疾患および/または胎児の少なくとも1つの特徴を同定し、検出し、スクリーニングし、モニタし、または除外する。核酸の分析/さらには処理は、それに限定されるものではないが、増幅技術、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、等温増幅、逆転写ポリメラーゼ鎖反応(RT−PCR)、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)、デジタルPCR、ゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、質量分析、蛍光検出、紫外線分光法、ハイブリダイゼーションアッセイ、DNAもしくはRNA配列決定、制限分析、逆転写、NASBA、対立遺伝子特異的ポリメラーゼ連鎖反応、ポリメラーゼサイクリングアセンブリ(PCA)、非対称ポリメラーゼ連鎖反応、指数関数後線形(linear after the exponential)ポリメラーゼ連鎖反応(LATE−PCR)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、ホットスタートポリメラーゼ連鎖反応、配列間(intersequence)特異的ポリメラーゼ連鎖反応(ISSR)、逆ポリメラーゼ連鎖反応、ライゲーション媒介ポリメラーゼ連鎖反応、メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応(MSP)、多重ポリメラーゼ連鎖反応、ネステッドポリメラーゼ連鎖反応、固相ポリメラーゼ連鎖反応、またはその任意の組合せを含む任意の核酸分析/処理方法を使用して実施することができる。それぞれの技術は当業者に周知であり、したがってここでこれ以上説明する必要はない。
一実施形態によれば、単離または分析ステップb)およびc)のいずれかまたは両方は、試料を収集し、それぞれに本発明の教示に従って安定化してから少なくとも1日から7日までに行われる。本発明の方法を使用して、試料、特に血液試料、それぞれに試料に含有されている細胞外核酸集団を安定化し得るのに適した期間も先に記載されており、ここでも適用される。一実施形態によれば、単離ステップは、試料を収集し、本発明の方法に従って安定化してから少なくとも1日後、少なくとも2日後、少なくとも3日後、少なくとも4日後、少なくとも5日後、または少なくとも6日後に実施される。一実施形態によれば、単離または分析ステップのいずれかまたは両方は、細胞含有生体試料を保存するために試料を凍結させずに、かつ/またはホルムアルデヒドを使用せずに行われる。生体試料は、好ましくはEDTAのような抗凝固剤などのさらなる添加剤と組み合せて、アポトーシス阻害剤、高張剤および/または先に定義の式1の化合物と接触させた後に安定化される。抗凝固剤は、好ましくは、血液または血液由来の試料を安定化する場合に使用される。それぞれに安定化された試料は、室温で取り扱い、例えば貯蔵かつ/または輸送することができる。
さらに、本発明の第3の態様によれば、生体試料中の細胞外核酸集団を安定化するのに適した組成物が提供され、その組成物は、
a)少なくとも1種のアポトーシス阻害剤、好ましくはカスパーゼ阻害剤、および/または
b)試料に含まれている細胞を安定化する少なくとも1種の高張剤、好ましくはジヒドロキシアセトン;および/または
c)先に定義の少なくとも1種の式1の化合物;および
d)任意選択により少なくとも1種の抗凝固剤、好ましくはキレート剤
を含む。
先に論じた通り、それぞれの安定化組成物は、試料に含まれている細胞および試料に含まれている細胞外核酸を安定化し、それによって細胞外核酸集団を実質的に保存し、それぞれに安定化することによって、細胞含有生体試料、特に全血、血漿および/または血清を安定化するのに特に有効である。それぞれの安定化組成物によって、好ましくは全血である試料を、試料の質、それぞれにその試料に含有されている細胞外核酸集団の質を実質的に損なうことなく、室温で少なくとも2日間、好ましくは少なくとも3日間にわたって貯蔵し、かつ/または取り扱い、例えば輸送することができる。当然のことながら、安定化に可能な期間をすべて利用することは必須ではなく、必要に応じてそれより早期に試料を処理することもできる。生体試料を安定化組成物と接触させることによって、室温で試料を貯蔵し、かつまたは取り扱い、例えば輸送した後に、試料に含有されている循環核酸を単離し、任意選択により分析かつ/または処理することができる。したがって、試料の収集または安定化と、核酸抽出との間の時間は、集団、それぞれに試料に含有されている細胞外核酸集団の組成に実質的に影響を及ぼさずに変わり得る。特に、細胞内核酸、特に断片化ゲノムDNAによる希釈、それぞれに汚染は低減される。好ましくは、試料を収集した直後またはその最中に、安定化組成物を試料と接触させる。好ましくは、血液試料を安定化する場合、組成物は、前述の通り、少なくとも1種のカスパーゼ阻害剤および少なくとも1種の抗凝固剤、好ましくはキレート剤を含む。組成物はまた、本明細書に記載のさらなる安定化剤を含むことができる。
アポトーシス阻害剤、高張剤および/または式1の化合物の適切な好ましい実施形態、ならびにそれぞれの化合物の適切な好ましい濃度は、安定化方法と共に先に詳説されている。先の開示が参照され、その開示も安定化組成物に対して適用される。好ましくは、少なくとも1種のカスパーゼ阻害剤、好ましくはカスパーゼに特異的な修飾ペプチド、好ましくはQ−VD−OPhなどのC末端がO−フェノキシ基で修飾されたペプチドが、少なくとも1種の高張剤、好ましくはジヒドロキシアセトンなどのヒドロキシル化有機化合物と併用される。他の適切なヒドロキシル化有機化合物も先に記載されており、それぞれの開示が参照される。実施例によって実証される通り、それぞれの組合せは、細胞含有生体試料、特に血液試料を安定化するのに著しく有効である。
好ましくは、少なくとも1種の式1の化合物は、N,N−ジアルキル−カルボン酸アミドである。好ましいR1、R2、R3およびR4基は、先に記載されている。一実施形態によれば、化合物は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、およびN,N−ジメチルプロパンアミドからなる群から選択される。前記化合物はまた、アポトーシス阻害剤、好ましくはカスパーゼ阻害剤(好ましい実施形態は、先に記載されており、先の開示が参照される)および/または高張剤、好ましくはヒドロキシカーボン(hydrxycarbon)化合物(好ましい実施形態は、先に記載されており、先の開示が参照される)と併用することができる。
さらに、安定化組成物が、特に全血、血漿または血清を安定化するのに使用される場合、その組成物は、さらなる添加剤、例えばキレート剤などの抗凝固剤を含むことが好ましい。
一実施形態によれば、安定化組成物は、言及した安定剤および任意選択の添加剤、および任意選択により緩衝剤から本質的になる。安定化組成物は、試料を安定化するものであり、したがって試料に含有されている細胞の溶解および/または破壊を促進するものではない。安定化組成物は、例えば実施例部分に記載のアッセイ方法によって決定され得る通り、試料に含まれている細胞の損傷を低減することができる。
組成物は、固体形態で提供することができる。このことは、例えば、安定化される生体試料が、固体を溶解するための液体(例えば、細胞を含有する体液、培地中の細胞、尿など)を含有している場合、または液体、例えば水を試料に添加して固体を溶解する場合に、適切な選択肢となる。固体の安定化組成物を使用する利点は、固体が通常は化学的により安定であるということである。しかし、液体組成物を使用することもできる。液体組成物には、しばしば、安定化される試料と急速に混合することができ、それによって、基本的には試料が液体の安定化組成物と接触してすぐに即時的な安定化効果を提供できるという利点がある。好ましくは、液体の安定化組成物中に存在する安定化剤(複数可)は、溶液中で安定なままであり、例えば限られた可溶性の沈殿物を溶解するなどの使用者による前処理は、安定化効率を変動させる危険性があるため、この種の前処理は必要ない。
生体試料と混合した本発明の安定化組成物を含む混合物も、提供される。生体試料の適切な好ましい例、ならびに生体試料と混合される場合の安定剤(複数可)の適切な濃度は、安定化方法と共に先に記載されている。先の開示が参照され、その開示はここでも適用される。好ましくは、安定化組成物は、試料が、収集中にすぐに安定化されるように、試料収集デバイスに予め充填されている。一実施形態によれば、安定化組成物を、生体試料と10:1〜1:20、5:1〜1:15、1:1〜1:10および1:2〜1:5から選択される体積比で接触させる。多量の試料を少量の安定化組成物によって安定化できることが、本発明の安定化組成物の特別な利点である。したがって好ましくは、安定化組成物と試料の比は、1:2〜1:7、より好ましくは1:3〜1:5の範囲に含まれる。
本発明の第3の態様による安定化組成物を使用して、細胞含有試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化することができる。さらに、本発明の第3の態様による安定化組成物は、試料に含有されている細胞を安定化するのに使用することもできる。前述の通り、安定化組成物は、中でも崩壊細胞から生じるゲノムDNAが細胞から放出されるのを低減する。したがって、それぞれの使用も有利であり、本発明の教示によって提供される。
また、本発明の第3の態様による組成物を製造する方法が提供され、ここで組成物の構成成分は、好ましくは水溶液中で混合される。
本発明の組成物はまた、試料収集デバイス、特に採血アセンブリに組み込むことができ、それによってこのようなデバイスの新しい有用な型を提供する。このようなデバイスには、典型的に開口端および閉端を有する容器が含まれる。容器は、好ましくは採血管である。容器のタイプは、収集される試料によっても変わり、他の適切な型式を、以下に記載する。
さらに本発明は、細胞含有生体試料、好ましくは血液試料を収集するための、本発明の安定化組成物を含む容器を提供する。本発明の安定化組成物を含むそれぞれの容器、例えば試料収集管を提供することには、試料がそれぞれの容器に収集されるときに急速に安定化されるという利点がある。安定化組成物に関する詳細は既に記載されており、先の開示が参照され、その開示はここでも適用される。
一実施形態によれば、生体試料を受け入れ、収集するための収集容器が提供され、その容器は、
a)試料が収集されるときに、得られる混合物中のアポトーシス阻害剤もしくは2種以上のアポトーシス阻害剤の組合せの濃度が、少なくとも0.01μM、少なくとも0.05μM、少なくとも0.1μM、少なくとも0.5μM、少なくとも1μM、少なくとも2.5μMもしくは少なくとも3.5μMから選択され、好ましくは0.01μM〜100μM、0.05μM〜100μM、0.1μM〜50μM、1μM〜40μM、1.0μM〜30μMもしくは2.5μM〜25μMから選択される濃度範囲で存在するような、少なくとも1種のアポトーシス阻害剤、および/または
b)試料が収集されるときに、得られる混合物中の高張剤もしくは2種以上のアポトーシス阻害剤の組合せの濃度が、少なくとも0.05M、少なくとも0.1M、好ましくは少なくとも0.25Mであり、好ましくは0.05M〜2M、0.1M〜1.5M、0.15M〜0.8M、0.2M〜0.7Mもしくは0.1M〜0.6Mの濃度範囲で存在するような、少なくとも1種の高張剤;および/または
c)試料が収集されるときに、式1の化合物が、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも0.75%、少なくとも1%、少なくとも1.25%もしくは少なくとも1.5%の濃度で含まれ、もしくは0.1%〜50%、0.1〜30%、1%〜20%、1%〜10%、1%〜7.5%および1%〜5%から選択される濃度範囲で含まれるような、先に定義の少なくとも1種の式1の化合物;および/または
d)容器が血液もしくは血液製剤を収集するためのものである場合には、任意選択により少なくとも1種のさらなる添加剤、好ましくはキレート剤、好ましくはEDTAなどの抗凝固剤、
を含む。適切な濃度は、先に記載されており、好ましくは4mM〜50mM、より好ましくは4mM〜20mMの範囲に含まれる。
予め充填される構成成分a)、b)、c)および/またはd)は、液体または乾燥形態で提供することができる。全血を安定化するには、少なくとも構成成分a)およびd)を使用することが好ましい。好ましくは、安定化構成成分は、安定化組成物として提供される。乾燥形態は、例えば、安定化される生体試料が、固体を溶解するための液体(例えば、細胞を含有する体液、培地中の細胞、尿など)を含有している場合、または液体、例えば水を試料に添加して固体を溶解する場合に、適切な選択肢となる。固体の安定化組成物を使用する利点は、固体が通常は液体よりも化学的に安定であるということである。一実施形態によれば、容器の内壁は、本発明の安定化組成物で処理/被覆される。前記組成物は、例えばスプレー乾燥法を使用して内壁に適用することができる。実質的に固体状態の保護性組成物を得るために、安定化組成物に液体除去技術を施すことができる。液体除去条件は、分注した液体の安定化組成物の元の量の少なくとも約50重量%、少なくとも約75重量%、または少なくとも約85重量%を除去するような条件であってよい。液体除去条件は、得られる組成物が、フィルム、ゲル、または他の実質的に固体の層もしくは非常に粘性の層の形態になるように十分な液体が除去されるような条件であってよい。例えば、その条件によって、実質的に不動のコーティング(好ましくは血液製剤試料である細胞含有試料と接触させると、好ましくは再溶解するか、またはそれ以外では分散し得るコーティング)を得ることができる。実質的に固体形態(例えば、1つまたは複数のペレットの形態)の保護剤を実現するのに、凍結乾燥または他の技術を用い得ることも可能である。したがって液体除去条件は、考慮される試料(例えば全血試料)との接触時に保護剤が試料中に分散し、試料中の構成成分(例えば細胞外核酸)を実質的に保存する材料をもたらすような条件であってよい。液体除去条件は、残りの組成物が、結晶化度を実質的にもたなくなり、周囲温度で実質的に不動になるのに十分に高い粘度を有するようになり、またはその両方になるような条件であってよい。
しかし、液体組成物を使用することもできる。液体組成物には、しばしば、安定化される試料と急速に混合することができ、それによって、基本的には試料が液体の安定化組成物と接触してすぐに即時的な安定化効果を提供できるという利点がある。好ましくは、液体の安定化組成物中に存在する安定化剤(複数可)は、溶液中で安定なままであり、例えば限られた可溶性の沈殿物を溶解するなどの使用者による前処理は、安定化効率を変動させる危険性があるため、この種の前処理は必要ない。
安定化組成物は、容器に収集される試料の量を安定化するのに有効な量で、前記容器に含まれる。一実施形態によれば、液体の安定化組成物を、生体試料と10:1〜1:20、5:1〜1:15、1:1〜1:10および1:2〜1:5から選択される体積比で接触させる。多量の試料を少量の安定化組成物によって安定化できることが、本発明の安定化組成物の特別な利点である。したがって好ましくは、安定化組成物と試料の比は、1:2〜1:7、より好ましくは1:3〜1:5の範囲に含まれる。
一実施形態によれば、容器は脱気される。脱気は、好ましくは、特定の体積の流体試料を内部に引き入れるのに有効である。それによって、正確な量の試料を、容器に含まれる予め充填された量の安定化組成物と確実に接触させられるので、効率的な安定化が確実に得られる。一実施形態によれば、容器は、開口を有し、かつセプタムで封止される管を含む。例えば容器は、固体または液体形態いずれかの規定量の安定化組成物で予め充填されており、規定の真空が提供され、セプタムで封止される。セプタムは、標準のサンプリング付属品(例えばカニューレ等)と適合するように構築される。例えばカニューレとつなぐと、真空によって所定量の試料が容器に収集される。それぞれの実施形態は、採血するのに特に有利である。適切な容器は、例えば米国特許第6,776,959号明細書に開示されている。
本発明の容器は、ガラス、プラスチックまたは他の適切な材料から製造することができる。プラスチック材料は、酸素不透過材料であってよく、または酸素不透過層を含有することができる。あるいは、容器は、水透過性および空気透過性のプラスチック材料から製造することができる。本発明の容器は、好ましくは透明材料から製造される。適切な透明な熱可塑性材料の例には、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタラートが含まれる。容器は、収集される必要がある生体試料の体積に従って選択される適切な寸法を有することができる。前述の通り、好ましくは容器は、大気圧未満の内圧まで脱気される。このような一実施形態は、全血などの体液を収集するのに特に適している。圧力は、好ましくは所定体積の生体試料を容器に引き入れるように選択される。このような真空管に加えて、非真空管、機械的分離管、またはゲルバリア管も、特に血液試料を収集するための試料容器として使用することができる。適切な容器およびキャッピングデバイスの例は、米国特許第5,860,397号明細書および米国特許出願公開第2004/0043505号明細書に開示されている。細胞含有試料を収集するための容器として、さらなる収集デバイス、例えばシリンジ、蓄尿デバイスまたは他の収集デバイスを使用することもできる。容器のタイプは、収集される試料のタイプによって変わる場合もあり、適切な容器が、やはり当業者によって利用され得る。
有利な一実施形態では、容器、それぞれにデバイスは、少なくとも1種のアポトーシス阻害剤、好ましくはカスパーゼ阻害剤、少なくとも1種の高張剤、好ましくは先に詳説した少なくとも1種のヒドロキシル化有機化合物、例えばジヒドロキシアセトン、および任意選択により抗凝固剤、好ましくはキレート剤、より好ましくはEDTAなどのさらなる添加剤で充填され、または予め充填されている。好ましくはヒドロキシル化有機化合物、例えばジヒドロキシアセトンなどの炭水化物である少なくとも1種の高張剤、および少なくとも1種のカスパーゼ阻害剤、好ましくはQ−VD−OPHの混合物は、予想外に全血、血漿または血清中の細胞外核酸を安定化し、特にこのような試料に含有されている白血球細胞から細胞核酸が放出されるのを防止する。したがって、細胞外核酸集団は、採血時に示した状態で保存される。容器、それぞれにデバイスが、安定剤として先に定義した少なくとも1種の式1の化合物で充填され、または予め充填されている場合にも、有益な結果が得られる。好ましくは、式1の化合物に加えて抗凝固剤も包含される。抗凝固剤は、好ましくはEDTAなどのキレート剤である。さらに、容器に含まれている安定化組成物は、アポトーシス阻害剤、好ましくはカスパーゼ阻害剤および/または少なくとも1種の高張剤、好ましくは先に詳説した少なくとも1種のヒドロキシル化有機化合物、例えばジヒドロキシアセトン、および任意選択によりさらなる添加剤を含むこともできる。一実施形態によれば、容器に含まれている安定化組成物は、カスパーゼ阻害剤および抗凝固剤を含む。
一実施形態によれば、容器は、開口上部、底部、およびその間に広がってチャンバを画定する側壁を有し、ここで本発明の安定化組成物は、そのチャンバに含まれる。本発明の安定化組成物は、液体または固体形態で容器に含まれ得る。一実施形態によれば、容器は管であり、底部は閉じた底部であり、容器はさらに、開口上部に蓋を含み、チャンバは減圧状態にされる。チャンバ内を減圧する利点は、既に記載した。好ましくは、蓋は、針またはカニューレで穿通することができ、減圧度は、特定体積の液体試料をチャンバに引き入れるように選択される。一実施形態によれば、チャンバは、特定体積の液体試料をチャンバに引き入れるように選択された減圧状態にされ、安定化組成物は液体であり、安定化組成物と特定体積の細胞含有試料の体積比が、10:1〜1:20、5:1〜1:15、1:1〜1:10および1:2〜1:5から選択されるようにチャンバ内に分注される。関連する利点は、既に記載した。
好ましくは、容器は、患者から採血するためのものである。
第5の態様によれば、患者から試料を収集して、本発明の第4の態様による容器のチャンバに直接入れるステップを含む方法が提供される。容器および試料に関する詳細は、既に記載した。それぞれの開示が参照される。一実施形態によれば、血液試料が収集され、好ましくは患者から採血される。
本明細書に開示の方法および組成物は、細胞外核酸を効率的に保存および単離すると同時に、生体試料に含まれている細胞から生じ、損傷細胞、それぞれに細胞溶解に起因して生体試料に入り込むおそれがある核酸、特に断片化ゲノムDNAと混合される可能性を低減することができる。本発明の方法、ならびに組成物および開示のデバイス(例えば収集容器)は、細胞外核酸の分解を低減し、細胞溶解および/またはゲノム核酸、特に断片化ゲノムDNAの放出を低減し、したがって、試料に含有されている細胞外核酸は細胞内核酸で汚染されず、それぞれの汚染が本発明の教示によってそれぞれに低減される。先に論じた通り、細胞外核酸と細胞核酸、特に断片化ゲノムDNAとが混ざり合うことにより、生体試料中の細胞外核酸の量の任意測定の精度が低下するおそれがある。先に論じた通り、本発明の重要な利点は、試料に含有されている細胞(特に、全血、血漿または血清の場合は白血球細胞)および細胞外核酸の両方を本質的に同時に安定化する可能性があるということである。このことは、細胞外核酸の構造的完全性を維持しながら、ゲノムDNAなどの細胞核酸が、試料の無細胞部分に放出されるのを防止し、さらには試料に含まれている対象となる細胞外核酸(および関連するバイオマーカー)が希釈されるのを防止する一助になる。本明細書で論じる通り、全血または血漿などの細胞含有生体試料を、安定化剤(複数可)と接触させることによって、細胞外核酸を単離するまで長期間試料を貯蔵することができる。より好ましくは、細胞含有生体試料、例えば血液または血漿を、ある場所(例えば医療施設)で採血し、安定化剤(複数可)と接触させ、後に核酸の単離および試験過程のために、様々な遠隔地(例えば実験室)まで運搬することができる。
さらに、本発明による試料の安定化は、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド放出薬などの架橋試薬等を使用しないので、本明細書に開示の安定化試薬は、このような架橋試薬を使用する公知の最先端の安定化試薬を上回る利点を提供する。架橋試薬は、核酸分子同士、または核酸とタンパク質との間に分子間または分子内共有結合を引き起こす。この作用により、安定化され部分的に架橋されたこのような核酸が、複雑な生体試料から精製または抽出された後の回収量が減少する場合がある。例えば、全血試料中の循環核酸の濃度は、相対的に既に低いので、このような核酸の収率をさらに低下する任意の手段は、開示されるべきである。このことは、悪性腫瘍に由来する、または妊娠初期の三半期に発育中の胎児に由来する非常に希少な核酸分子を検出し分析する場合に、特に重要になり得る。したがって、一実施形態によれば、安定化組成物にホルムアルデヒド放出薬は含まれず、さらには、安定化するのにもそれぞれに使用されることはない。一実施形態によれば、本発明の方法および/または組成物で使用されるアポトーシス阻害剤は、アウリントリカルボン酸、フェニルメチルスルホニルフッ化物(PMSF)、ロイペプチンおよびNα−トシル−Lysクロロメチルケトン塩酸塩(TLCK)からなる群からは選択されない。一実施形態によれば、アポトーシス阻害剤は、特に追加の安定剤としての高張剤と併用されなくても、前記群からは選択されない。
本発明は、本明細書に開示の例示的な方法および材料によって制限されず、本明細書に記載の方法および材料に類似のまたは等価な任意の方法および材料も、本発明の実施形態を実施または試験するのに使用することができる。数値範囲は、その範囲を規定する数の両端を含む。本明細書に提示の見出しは、本明細書を全体として参照することによって読み取ることができる本発明の様々な態様または実施形態を限定するものではない。
用語「溶液」は、本明細書で使用される場合、特に液体組成物、好ましくは水性組成物を指す。溶液は、一相だけからなる均質な混合物であってもよいが、本発明の範囲には、例えば沈殿物などの固体添加剤を含むことも含まれる。
本明細書でヌクレオチドntに言及して示したサイズ、それぞれにサイズ範囲は、鎖長を指し、したがって一本鎖および二本鎖分子の長さを説明するために使用される。二本鎖分子では、前記ヌクレオチドは対を成している。
一実施形態によれば、本方法の場合にいくつかのステップを含むもの、または本組成物、溶液および/もしくは緩衝液の場合にいくつかの成分を含むものとして本明細書に記載されている主題は、それぞれのステップまたは成分からなる主題を指す。本明細書に記載の好ましい実施形態を選択し、組み合わせることが好ましく、好ましい実施形態のそれぞれの組合せから生じる特定の主題も、本開示に属する。
以下の実施例では、本発明の材料および方法を提示する。これらの実施例は、単に例示目的であり、いかようにも本発明を制限するものと解釈されるべきでないことを理解されたい。
I.材料および方法
細胞含有生体試料、ここでは全血試料を、室温(RT)で最長6日間または7日間インキュベートする試験系を設計した。その試験系では、本発明の添加剤の試料安定化特性を、0日目、3日目、および6/7日目に試料で試験した。試料を、適用できる場合には以下のプロトコルに従って処理した(詳細については、結果部分の具体例も参照されたい)。
1.蛍光活性化細胞分類(FACS)による血液細胞の完全性の測定
1.1.赤血球の溶解
−血液試料2mlを新しい15mlのFalcon管に移す
−5倍緩衝液EL(キアゲン(QIAGEN))を添加する
−試料を反転させる(10×)
−氷上でインキュベートする(10分)
−400×gおよび4℃で10分間、遠心分離処理を施す
−上清を破棄する
−2倍緩衝液EL(キアゲン(QIAGEN))を白血球細胞ペレットに添加する
−わずかにボルテックスすることによって、ペレットを緩衝液EL(キアゲン(QIAGEN))に再溶解させる
−400×gで10分間、遠心分離処理を施す
−上清を破棄する
−FACS Flow(ベクトン ディッキンソン、プリマウス、UK(Becton、Dickinson Plymouth、UK))500μlを白血球細胞ペレットに添加する
−わずかにボルテックスすることによって、ペレットをFACS Flowに再溶解させる
−FACS Flow 1mlを新しいFACS管に移す
−再溶解させたペレット100μlをFACS管に移す
赤血球の量が多いことにより、明白な細胞集団(例えばゲノムDNAを放出し得る)をFACS分析で区別できないので、赤血球を溶解する。
1.2.フローサイトメトリーによる細胞完全性の測定
測定を、製造者の指示(FACSCalibur、ベクトン ディッキンソン、プリマウス、UK(Becton、Dickinson Plymouth、UK))に従って実施した。
2.血漿の分離
全血から血漿を分離するために、血液試料を5000rpmで15分間、遠心分離処理し、得られた血漿試料を、16,000×gで4℃において10分間、再び遠心分離処理した。
得られた血漿を、それに含有されている核酸を単離するために使用した。
3.核酸の精製
QIAamp(登録商標)循環NA(Circulating NA)キット(ハンドブックに従う)を使用して、得られた血漿試料から循環細胞外核酸を精製した。簡潔には以下の通りであった。
−試料投入量10ml、
−溶解。プロテイナーゼK1mlおよび緩衝液ACL(キアゲン(QIAGEN))8ml
−結合。緩衝液ACB(キアゲン(QIAGEN))18ml
−洗浄ステップ。変更なし、ハンドブックに従う
−緩衝液AVE(キアゲン(QIAGEN))60μl中で溶出
4.溶出液の分析
3に従って得た溶出液を、すべての試料(6/7日目の試料を含む)が精製されるまで−20℃で貯蔵した。後に、同じ条件による溶出液をプールし、以下の通り処理した。
4.1.チップゲル電気泳動法(2100 バイオアナライザ アジレント テクノロジーズ インク USA(Bioanalyzer、Agilent Technologies,Inc.、USA))を使用して、製造者の指示(ハンドブック アジレント(Agilent)DNA7500およびDNA12000キットガイドを参照されたい)に従ってDNAサイズ分布を決定することにより、血液細胞の安定性/DNA放出を測定した。ただし、1μlの代わりに1.5μlの試料をウェルに移した。
4.2.DNA分解に対して感度が高いリアルタイムPCRアッセイによるDNAの定量化(標的は500および66bp長のリボソーム18S DNAコード配列)。
DNA二本鎖アッセイを、以下を適用してQuantiTect(登録商標)多重PCRハンドブック(キアゲン(QIAGEN))に従って実施した。
−プライマー濃度を8μmから16μmまで拡大した。
−アニーリング/伸長ステップを、1分から2分まで延長した。
(試料を、1:10希釈した後に増幅した)
4.3.無細胞循環RNAレベル(標的は18S rRNA、IL8、c−fosおよびp53)の変動に対して感度が高いリアルタイムPCRアッセイを使用してRNAを検出。RNAアッセイを、表2〜4に記載の条件に従って実施した。
II.実施実験および結果
引き続き、実施試験の詳細を説明する。実施例で使用した方法の詳細は、Iで既に記載した。
実施例1.カスパーゼ阻害剤の添加による安定化
広範なカスパーゼ阻害剤として作用する2つの異なるオリゴペプチド、Q−VD−OPhおよびZ−Val−Ala−Asp(OMe)−FMKを試験した。
試験した各カスパーゼ阻害剤を、全血試料に添加した(血液10ml中、最終濃度20μM。BDバキュテイナK2E管に採血した)。全血試料を、セクションIに記載した通りに処理した。2(血漿の調製)および3(核酸の単離)を参照されたい。
チップゲル電気泳動法の結果
溶出した無細胞循環DNAを、チップゲル電気泳動法(その方法の詳細については、先のI、4.1を参照されたい)を使用して、サイズによって分離した。図1aは、得られた結果を示す。DMSO対照およびK2E血液(本発明の教示に従って処理していない)は、同じはしご状のバンドパターンを示す。このパターンは、アポトーシスが生じる試料で発生する。アポトーシス中に、エンドヌクレアーゼがヌクレオソーム間リンカー領域でゲノムDNAを分解し、約180bpまたは180bpの倍数のDNA断片を産生する。したがって、アポトーシスは、明確なはしご状のパターンを示す試料で発生する。さらに、パターン強度(濃い)が明白である。バンドが濃くなるにつれて、多くのゲノムDNAが細胞から放出された。したがって細胞外核酸集団を汚染する。
図1a)は、DMSO対照およびK2E血液試料が、既に3日目で強いはしご状のパターンを示し、このパターンが、7日目にはさらに強力になることを示している。したがって、ゲノムDNAが、試料に含有されている細胞から放出され、やはり分解された。放出され分解されたこのDNAは、試料に含有されている無細胞核酸を汚染する。したがって、これらの試料では許容される安定化が達成されない。
それとは対照的に、Z−Val−Ala−Asp(OMe)−FMKで処理した全血試料は、対照と比較すると、特に7日目にはしご状のパターンが少なくなっており、このことは、アポトーシスによって引き起こされるゲノムDNA、それぞれに断片化ゲノムDNAの放出が阻害されていることを示す。この効果は、図1b)に示す結果によって確認される(以下参照)。この効果は、Q−VD−OPhで処理した血液試料においてさらにより顕著であり、この試料では、既に3日目でも、また7日目でも、はしご状のパターンが著しく少なくなっている。したがって、ゲノムDNAの放出および分解は、カスパーゼ阻害剤Q−VD−OPhを添加することによって有効に防止され、それぞれに低減される。
DNA定量化の結果
溶出した無細胞循環DNAも、DNA分解に対して感度が高いリアルタイムPCRアッセイで定量化した(その方法の詳細については、先のI、4.2を参照されたい)。図1b)は、RTにおける7日間の貯蔵期間中の細胞外核酸集団の安定化に対する、試験したカスパーゼ阻害剤の効果、ここではDNAの増加について示す(18S DNA二本鎖アッセイ)。
定量的リアルタイムPCRによるリボソーム18S DNAの検出により、0日目から3日目または7日目までのDNAのx倍増加を算出することが可能になる(3(または7)日目のコピー数を0日目のコピー数で割って算出)。驚くべきことに、図1b)に示した結果は、カスパーゼ阻害剤、特にQ−VD−OPhを全血試料に添加すると、DNA増加が低減されたことを実証している。Z−Val−Ala−Asp(OMe)−FMKの安定化効果は、標準試料と比較して7日目でより顕著であった。それによって図1a)に示した結果が確認される。
概要
リアルタイムPCRおよびゲル電気泳動法の結果をまとめると、Q−VD−OPhまたはZ−Val−Ala−Asp(OMe)−FMKの添加により、DNA断片化が阻害され、さらには血漿へのゲノムDNAの放出が低減されることが実証された。したがって、カスパーゼ阻害剤を全血に添加することは、試料、特に細胞外核酸集団を安定化するのに室温でも有効である。したがって、本発明の安定化方法を使用すると、試料の質を危険にさらすことなく、室温でも全血試料を輸送することができる。また、より長い貯蔵期間にわたってゲノムDNAの放出を完全に防止するために、Q−VD−OPhの濃度を増大することもできる。
実施例2.血液の安定性に対する低濃度のカスパーゼ阻害剤Q−VD−OPhの影響
この実施例では、低濃度のカスパーゼ阻害剤Q−VD−OPhを、グルコースと組み合せて試験し、グルコースを組合せパートナーとして添加して、血液細胞が生き延びるのを支持した(細胞損傷を防止することによって)。21.4mMのグルコースおよび4μM、1μMまたは0μMのQ−VD−OPhを、BDバキュテイナ管に採血した血液10mlに添加し、室温で最長7日間貯蔵した。全血試料を、セクションIに記載の通り処理した。2(血漿の調製)および3(核酸の単離)を参照されたい。
チップゲル電気泳動法の結果
溶出したDNAを、チップゲル電気泳動法(その方法の詳細については、先のI、4.1を参照されたい)を使用して、サイズによって分離した。図2aは、カスパーゼ阻害剤を添加しなかった対照試料と比較して、1μMのカスパーゼ阻害剤でも、7日目のゲノムDNA放出/断片化が著しく低減されたことを示している。この効果は、4μMのカスパーゼ阻害剤を使用すると改善される。したがってカスパーゼ阻害剤は、非常に低濃度でも、特に炭水化物と組み合わせると、血液試料を安定化するのに有効である。
DNA定量化の結果
図2bは、21mMのグルコースと組み合わせた試験濃度のカスパーゼ阻害剤Q−VD−OPhの、RTにおける7日間の貯蔵期間中の血漿中ゲノムDNA増加に対する効果を示している(18S DNA二本鎖アッセイ)。Q−VD−OPhをグルコースと組み合せて添加すると、血漿へのゲノムDNAの放出が著しく低減する。図2bは、安定化のために1μMのQ−VD−OPHを全血試料に添加するだけでも、7日間の貯蔵期間中のゲノムDNAはわずかしか増加しなかったことを示している。4μMのQ−VD−OPhを添加すると、血漿へのゲノムDNAの放出は、最大4倍まで阻害される。それとは対照的に、本発明による安定化なしに全血をK2E管中に採血すると、血漿中DNAは約40倍増加する。
したがって、図2b)によっても、カスパーゼ阻害剤が、低濃度でも全血に対して安定化効果を有することが確認される。
実施例3.浸透圧効果による血液細胞の安定化
驚くべきことに、本発明者らはまた、全血中で高張媒体として作用する試薬を添加することによって、血液細胞を安定化できることを見出した。例えばヒドロキシル化有機化合物(複数可)を全血に添加することによって高張媒体を生成すると、全血に含有されている血液細胞からの水の放出が微量まで抑えられ、細胞収縮によって安定性が増大する。前記細胞収縮は、機械力に対して細胞を安定化すると想定される。
ジヒドロキシアセトン(DHA)は、フルクトース代謝の中間産物であり、そのジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)由来のリン酸は、解糖系の一部となる。DHAを高張剤として試験した。この試薬の添加は、血液細胞に損傷を与えずに、血液細胞を良好な感度で収縮させる。まず、DHAをPBS(シグマ−アルドリッチ(SIGMA-Aldrich) Kat.No.D8537から購入)または3×MOPS(1リットルの10×MOPS、200mMのMOPS、50mMのNaAc、10mMのEDTA、pH5で希釈した。酸性媒体により、ccfRNAも安定化されると想定される)に溶解し、4.2Mの溶解DHAを得た。次に、緩衝液PBSまたは緩衝液3×MOPSに溶解した4.2MのDHA2mlを、血液10mlに添加して、全血中、最終濃度0.7MのDHAを得た。DHAの2つの異なる溶媒を、DNA安定化用の最先端の採血管であるPAXgene(登録商標)DNA採血管(キアゲン(QIAGEN))と比較した。
FACS分析の結果
血液細胞の完全性を、FACSを使用して分析した(その方法の詳細については、先のI、1を参照されたい)。図3は、フローサイトメトリーによって測定した血液細胞の完全性を示す。ドットプロットは、3種の異なる細胞集団、顆粒球(1)、単球(2)およびリンパ球(3)を可視化している。プロットの左下領域の雲(4)は、主に赤血球の溶解によって生じた破片を表す。
図3の結果は、PAXgene(登録商標)DNA採血管に収集し貯蔵した血液細胞が、互いに区別がつかず、貯蔵期間の6日目には破片が生じたことを示している。DHAを添加すると、これらの細胞が細胞収縮した結果小さくなるとしても、貯蔵期間の6日目には血液細胞の亜集団を識別することができる。このことは、試料に含有されている細胞が、DHAの添加によって安定化されたことを示している。
チップゲル電気泳動法の結果
また図4aに提示した結果は、DHAで処理した試料では、PAXgene(登録商標)DNA採血管で貯蔵した試料よりもゲノムDNAの放出が著しく低減されるので、DHAの添加によって血液試料が安定化されることを示している。さらに、図4aから明らかなように、DHAで安定化された試料は、はしご状の分解パターンを示さず、このことは、アポトーシス、それぞれにDNAの分解が効率的に防止されることを示唆している。
DNA定量化の結果
図4bは、RTでの6日間の貯蔵期間にわたる、DNAの増加に対するDHAの効果を示す(18S DNA二本鎖アッセイ)。リボソーム18S DNAのレベルは、貯蔵して3日目まで一定のままであるように見えたため、3×MOPSに溶解したDHAによって最良の結果を得た。
短いアンプリコンコピー数を長いアンプリコンコピー数で割ると(66bp/500bp)、検出される短いまたは長いアンプリコンが、経時的に同様に変化するかどうかが示される。この比の減少は、短いDNA分子よりも、長いDNA分子の方が強力に放出されることを暗示しており、血液細胞から高分子量ゲノムDNAが放出されていると解釈することができる。図4bに示す図は、3つのすべての条件に関するゲノムDNAの放出を示している。この結果は、DHAの存在により、この過程が緩徐することを示している。したがって、この実験も、DHAをEDTA全血に添加すると血液細胞が安定化され、したがって無細胞血漿画分中のccfDNA集団が保存され、例えば機械的破壊に起因して試料に含有されている細胞から放出されるDNAによる汚染が回避されることを示している。
実施例4.異なる濃度のジヒドロキシアセトンの試験
この実施例では、異なる濃度(0.7M、0.5Mおよび0.2M)のDHAの安定化効果を試験した。
FACS分析の結果
図5は、フローサイトメトリーによって測定した血液細胞の完全性を示す。ドットプロットは、3種の異なる細胞集団、顆粒球(1)、単球(2)およびリンパ球(3)を可視化している。プロットの左下領域の雲は、主に赤血球の溶解によって生じた破片を表す。
DHAを全血に添加すると、DHA濃度に関わらず、貯蔵期間の6日目でも異なる細胞集団を区別することができる。フローサイトメトリー分析の結果(図5)では、異なる濃度のDHA間の細胞完全性の差異は示されていない。
チップゲル電気泳動法の結果
図6aに提示の結果も、異なる濃度のDHAを添加することによってゲノムDNAの放出およびDNAの分解が効率的に防止されるので、血液試料が安定化されることを示している。
DNA定量化の結果
図6bは、RTでの6日間の貯蔵期間中の、DNAの増加に対する異なるDHA濃度の効果を示している(18S DNA二本鎖アッセイ)。図6bに示した通り、全血中0.5MのDHAは、ゲノムDNAの放出を最も効率的に防止する。さらに、短いアンプリコンコピー数と長いアンプリコンコピー数の比は、3日目まで一定のままであり、6日目までにごくわずかに低下する。これらの結果は、全血の安定化に対する高張剤DHAの効果が注目に値することを実証している。
実施例5.アポトーシス阻害剤、浸透活性化合物および抗凝固剤の組合せ
採血管中のEDTAを増大すると、PAXgene(登録商標)DNA採血管について知られている通り、マイクロクロット(microclotting)およびマクロクロット(macroclotting)が阻害される。したがって、より高濃度のEDTAは、血液細胞および血漿中の細胞外核酸の安定化を支持することができる。さらに、先に提示の実験は、カスパーゼ阻害剤、特にQ−VD−OPhおよび浸透活性化合物DHAの、血液細胞損傷に対する阻害作用を示しており、特に、細胞外核酸集団中のゲノムDNA、特に断片化ゲノムDNAの増加が効率的に低減されることを示している。驚くべきことに、試験したカスパーゼ阻害剤も、無細胞(血漿)画分へのゲノムDNAの漏出を防止/阻害した。したがって、これらの試薬の組合せにより、全血中の細胞外核酸、特に細胞外DNAの安定化が改善され、その安定性が少なくとも6日間継続し、さらには血液細胞が効率的に安定化され、それによって、安定化されなければ血漿中の天然細胞外核酸レベルを希釈するはずのゲノムDNAの放出が防止される。
この実施例では、DHAを3×MOPS2ml(3×MOPS2ml中3MのDHA)に溶解し、K2EDTA50mgおよび5nMのQ−VD−OPh2.4μlを添加し、次にK2E管に収集した全血10mlに移し入れた。血漿試料を、16,000×gにおいて4℃で10分間、遠心分離処理し、次にQIAamp(登録商標)循環NA(Circulating NA)キット(キアゲン(QIAGEN))を使用して精製した(詳細は、先のセクションIに記載されている)。
FACS分析の結果
図7aは、フローサイトメトリーによって測定した血液細胞の完全性を示す。ドットプロットは、3種の異なる細胞集団、顆粒球(1)、単球(2)およびリンパ球(3)を可視化している。プロットの左下領域の雲は、主に残存する赤血球の溶解によって生じた破片を表す。
カスパーゼ阻害剤、高張剤および錯化剤を全血に添加すると、6日間の貯蔵期間が経過した後、血液細胞集団のパターンを区別することができた。したがって、血液試料に含有されている細胞は、効率的に安定化された。
DNA定量化の結果
図7bは、EDTA、DHAおよびカスパーゼ阻害剤Q−VD−OPHの組合せの、RTにおける6日間の貯蔵期間中のDNAの増加に対する効果を示す(18S DNA二本鎖アッセイ)。この結果は、EDTA、DHAおよびQ−VD−OPHの組合せによって、血漿中の細胞外DNAが著しく強力に安定化され(測定した18S rDNAのレベルは、6日目まで一定のままである)、3日間の貯蔵期間が経過するまで、血液細胞からのゲノムDNAの放出が強力に防止される(短いアンプリコンコピー数と長いアンプリコンコピー数の比は、一定のままである)ことを示している。血漿中ゲノムDNAがごくわずかに増大したことが、3日間の貯蔵期間と6日間の貯蔵期間との間で明白である。
したがって、試験した安定化剤の組合せは、全血試料を安定化するのに特に効率的である。
実施例6.全血中の遊離循環RNAに対するアポトーシス阻害剤、浸透活性化合物および防止剤の効果
2EDTA、Q−VD−OPhおよびDHAの組合せは、全血中の遊離循環DNAおよび血液細胞の完全性に対して注目すべき安定化効果を示したので、遊離循環RNAに対するこれらの薬剤の安定化能も分析した。血漿において一定レベルの遊離循環RNAを保存するために(採血時に提示のものとして)、安定化試薬(複数可)は、RNAが分解しないように保護し、RNAが崩壊血液細胞から放出されないように防止するだけでなく、その代謝経路を阻害するべきであり、それぞれに代謝経路の変化が細胞外DNA血漿レベルに影響を及ぼさない効果を有するべきであり、それぞれの作用をそれぞれに低減すべきである。したがって、実験5を反復し、mRNAレベルをリアルタイムRT−PCRによって測定した。
図8は、EDTA、DHAおよび試験したカスパーゼ阻害剤の組合せの、6日間の貯蔵期間中の血漿の転写レベルに対する効果を示す図である。RNAレベルの変動を測定するために、p53、IL8またはc−fosと内部標準(18S rRNA)との間のΔCtを算出して、標的mRNAを参照標的(18S rRNA)と呼んだ。3日目または6日目の試料のΔCtから0日目の試料のΔCtを減算することによって、mRNA転写レベルの相対的な減少(−値)または増加(+値)を可視化するΔΔCtが規定される。IL8およびc−fosは、採血後に転写が誘発される遺伝子である。したがって、これらの標的の転写レベルは、細胞がそれらの内容物を放出するときに劇的に上昇し得る。本発明の好ましい実施形態による安定化溶液(高濃度のEDTA、ジヒドロキシアセトン、カスパーゼ阻害剤Q−VD−OPhの組合せ)を添加すると、3日間の貯蔵期間が経過するまで、核酸が血液細胞から放出されるのが強力に防止される。しかし先の図のデータは、驚くべきことには、6日間の貯蔵期間が経過するまで、c−fosおよびIL8のmRNAが著しく増大しないことを示している。したがって明らかに、安定化によって、RNA(p53)の分解もmRNA(IL8/c−fos)の放出も防止される。
p53の転写は、採血後に代謝が継続している間にも抑制され、したがってp53mRNAの分解または下方制御は、(−)ΔΔctの減少をもたらし得る。しかし結果は、試験したQGN安定化溶液が、最長6日間の全血の貯蔵期間中、p53mRNAレベルの低下を防止することを示している。
この実験により、高濃度のEDTA、ジヒドロキシアセトン、カスパーゼ阻害剤Q−VD−OPhの組合せを、新しく採血した全血に添加すると、採血時に存在していた循環血漿のmRNA集団を保存するように作用し、mRNA濃度におけるmRNAに特異的な変化を低減することが実証された。このことは、血漿中の循環mRNAを分析し、例えば潜在的に腫瘍特異的なmRNA種を同定し、その特徴を決定するのに特に重要である。このような試験では、血漿中mRNA集団が、採血時と、核酸の抽出および分析時との間で実質的に不変のままであることが必要である。
実施例7.ジメチルアセトアミド(DMAA)の添加による安定化
2種の異なる濃度のDMAAを、K2EDTAと共に試験し、EDTA単独と比較した(K2E BD、K2EDTA18mg)。
DMAAを、全血試料の複写物に添加した(血液10ml中、最終濃度0.75%および1.5%。血液をBDバキュテイナK2E管に収集した)。
血液試料を、室温で最長6日間インキュベートした。0日目、3日目および6日目に、全血試料を1912×gにおいて室温で15分間、遠心分離処理し、その後血漿試料を16,000×gにおいて4℃で10分間、遠心分離処理した。DNAを単離するために、材料および方法のセクションで記載したプロトコルに従って、投入試料1mlを使用した。DNAを、EB緩衝液80μlで溶出させ、I、4.2に記載のRT PCRアッセイを用いて定量化した。
DNA定量化の結果
図11は、血漿中ゲノムDNAの増大に対する、DMAAの試験濃度の効果を示している。DMAAの添加は、血漿へのゲノムDNAの放出を著しく低減する。多量のDMAAを全血に添加するほど、放出されるDNAが減少する。1.5%DMAAを全血試料に添加すると、6日間の貯蔵期間中、無細胞DNAの増加はわずかしか観測されなかった。さらに、1.5%DMAAを添加すると、0.75%の場合よりも効率的に全血試料中の無細胞DNAレベルが安定化され、測定した短い18S DNAコピー数と長い18S DNAコピー数の比は、0日目から6日目まで減少するので、DMAA濃度が1.5%よりも高いと、より効率的な安定化効果を得ることができる。
つまり、DMAAの添加は、血漿へのゲノムDNAの放出を低減する。したがって、DMAAを血液試料に添加することは、室温でも試料を安定化するのに有効である。
実施例8.全血中のccfDNA状態の保存に対する糖アルコールの影響
まず、2人のドナーの全血試料10mlを、BDバキュテイナK2E−EDTA(4.45mMのEDTA=参照)に収集した。後に、以下の安定化溶液2mlを添加した(示した濃度は、安定化された血液溶液中の最終濃度を表す)。
それぞれに安定化された試料を、室温で最長6日間インキュベートした。0日目、3日目および6日目に、複写物を以下の通り処理した。血漿を収集するために、試料を、3,000rpmにおいて室温で10分間、遠心分離処理した。収集した血漿を、16,000×gにおいて4℃で10分間、遠心分離処理した。除去された血漿画分を収集し、QIAamp Circulating核酸キット(投入材料1ml、溶出体積60μl)を使用して細胞外核酸を単離した。結果を、0日目の試験と比較した相対的な変化として、図10に示す(X日目のコピー数/0日目のコピー数)。1に近い値は、ccfDNAの保存レベルが高いことを暗示する。この値が高いほど、達成される安定化が低下する。試験した糖アルコールでは、DHA(0.5M)によって非常に良好な結果が達成された。ここで、血漿画分中のccfDNAレベルの増大が最小であったことが観測された。他の適切な代替は、例えば0.05Mの濃度のイノシトール、および0.01M以下の濃度のマルチトールである。さらに、マンニトールでも3日間にわたって安定化効果が見られた。
実施例9.ccfDNAレベルに対するDMAA、DHAおよびグリシンの影響
まず、3人のドナーの全血試料10mlを、BDバキュテイナK2E−EDTA(4.45mMのEDTA=参照)に収集した。後に、以下の溶液2mlを添加した(示した濃度は、安定化された血液溶液中の最終濃度を表す)。
試料を、実施例8に記載の通り処理した。その結果および試験条件を、図11に示す。図に見られる通り、DHAだけでも、最長3日間にわたってccfDNAレベルが安定化する(ドナー1参照)。QGN混合物を使用すると、特に安定なccfDNAレベルが得られた。DMAAを、例えばEDTA濃度を増大し、カスパーゼ阻害剤を添加することと組み合わせて試料に添加すると、QGN混合物と同等の結果を得ることができた。
実施例10.カスパーゼ阻害剤および濃度を増大したEDTAと組み合わせた糖アルコールのccfDNAレベルに対する影響
まず、2人のドナーの全血試料10mlを、BDバキュテイナK2E−EDTA(4.45mMのEDTA=参照)に収集した。次に、以下の溶液2mlを添加した(示した濃度は、安定化された血液溶液中の最終濃度を表す)。
1.0.5MのDHA、1μMのOPH、14mMのEDTA(QGN混合物)、
2.QGN混合物中0.5Mのイノシトール(DHAなし)、
3.QGN混合物中0.01Mのマルチトール(DHAなし)。
次に、試料を、実施例8に記載の通り処理した。その結果を図12に示す。最良の結果が、QGN混合物で得られた。糖アルコールとQGN混合物の組合せも、EDTAで安定化された試料と比較して高い安定化効果を示した。
実施例11.ccfDNAレベルに対するDMAAの濃度およびOPH(カスパーゼ阻害剤)の濃度の組合せの影響
まず、全血試料10mlを、BDバキュテイナK2E−EDTA(4.45mMのEDTA=参照)に収集した。次に、以下の溶液2mlを添加した(示した濃度は、安定化された血液溶液中の最終濃度を表す)。各条件を、異なるドナーからの6つの管で試験した。
1.EDTA参照(BDバキュテイナK2E)、
2.QGN混合物、
3.EDTA50mg、1μMのOPH、
4.EDTA50mg、2μMのOPH、
5.EDTA50mg、1μMのOPH、5%DMAA、
6.EDTA50mg、1μMのOPH、10%DMAA、
7.EDTA50mg、2μMのOPH、5%DMAA、
8.EDTA50mg、2μMのOPHおよび10%DMAA。
試料のインキュベーション、血漿の単離、および除去された血漿画分からの核酸の単離を、実施例8に記載の通り実施した。しかし、3,000rpmで第1の遠心分離ステップを行った後、同じ安定化条件による血漿試料をプールした後、血漿を除去するための第2の遠心分離ステップ(16,000×g)を実施した。その結果を図13に示す。図に見られる通り、様々なDMAA濃度と様々なOPH濃度の組合せは、QGN混合物と同等の結果を示す。図14は、ccfDNAレベルに対するDMAAの濃度およびOPHの濃度の組合せの影響を示す(参照データの囲い込みに起因する様々なスケーリング)。
実施例12.ccfDNAレベルに対するQGN混合物と糖アルコールの組合せの影響
まず、全血試料10mlを、BDバキュテイナK2E−EDTA(4.45mMのEDTA=参照)に収集した。後に、以下の溶液2mlを添加した(示した濃度は、安定化された血液溶液中の最終濃度を表す)。各条件を、6つの管、したがって6人の異なるドナーで試験した。
1.EDTA参照(BDバキュテイナK2E);
2.QGN混合物(0.01MのDHA、14mMのEDTA、1μMのOPH);
3.0.01MのDHA;
4.5%DMAA、14mMのEDTA、1μMのOPH;
5.0.01MのDHA、3%DMAA、1μMのOPH、14mMのEDTA;
6.1μMのOPH、14mMのEDTA、0.01MのDHA、0.01Mのマルチトール;
7.1μMのOPH、14mMのEDTA、0.01MのDHA、0.05Mのイノシトール;
8.1μMのOPH、14mMのEDTA、0.01MのDHA、0.05Mのイノシトール、0.01Mのマルチトール。
試料を、実施例11に記載の通り処理した。ただし試料を、室温ではなく、その代わりに37℃で貯蔵した。その結果を図15に示す。図に見られる通り、特に、5%DMAAを14mMのEDTAおよび1μMのOPHと組み合わせて添加すると、ccfDNAの安定なレベルが達成された。したがって予想外に、高温(37℃)でも、全血においてccfDNAの非常に良好な安定化を達成することができた。
実施例13.37℃におけるインキュベーション−単一ドナー試料の分析
6人の異なるドナーから、全血試料をBDバキュテイナK2Eに収集し、次に全血10ml当たり以下の安定化溶液2mlを添加した(示した濃度は、安定化された血液溶液中の最終濃度を表す)。
1.2μMのOPH、14mMのEDTA、5%DMAA、
2.1μMのOPH、14mMのEDTA、3%DMAA、
3.1μMのOPH、14mMのEDTA、0.01MのDHA、3%DMAA。
試料を、最長6日間にわたって37℃でインキュベートした。それ以外は、実施例8と同じ手順に従った。結果を図16および17に示す。図に見られる通り、6人すべてのドナーについて、異なる濃度のDMAAをOPHおよびEDTAと組み合わせて血液試料に添加すると、図に示したレベルのccfDNAが保存された。したがって、本発明の方法によって、効率的な安定化を達成することができる。
実施例14.検出限界(LoD)
細胞外核酸は、試料中にしばしば非常に少量で含まれる。したがって、安定化された試料中の細胞外核酸を効率的に保存するだけでなく、さらにその後、安定化された試料から細胞外核酸を高収率で単離することもできる安定化手順を得ることが重要である。実施例14は、安定化された試料から細胞外核酸をより高収率で単離することができるという点で、本発明の安定化方法が、従来技術の安定化方法よりも優れていることを実証している。本発明の安定化方法は、有利には検出限界を低減し、したがって細胞外核酸集団内の希少な標的核酸も確実に測定することができる。
以下の安定化溶液/安定化管を比較した。
1.無細胞RNA BCT(Streck社、カタログ番号218976。安定剤としてホルムアルデヒド放出薬を含む)
2.BDバキュテイナK2E(BD、カタログ番号367525。EDTAを含む)=参照
3.安定化用QGN(5%DMAA、14mMのEDTA、2μMのOPH(カスパーゼ阻害剤))
全血試料を、無細胞RNA BCTおよびBDバキュテイナK2E管に収集した。BD管に収集した血液の半分に、QGN安定化溶液を添加した。したがって、本発明に従って安定化された試料は、追加量のEDTAを含み、このEDTAはBDバキュテイナの安定化に寄与する。試料を3,000×rpmで10分間、遠心分離処理し、得られた血漿を等分して複写物1.5mlに添加した。後に、試料1つ当たり以下の量のDNAスパイクイン対照(1,000bp)を添加した。コピー数1,000、コピー数5000、コピー数100、コピー数50およびコピー数10。
コピー数500〜10の8種類の複写物/試料、コピー数1,000の4種類の複写物/試料、およびコピー数5/試料を調製した。試料を、室温で3日間インキュベートした。キアシンフォニー(QIAsymphony) SP自動化系により、血漿試料から細胞外核酸を単離することができるキアシンフォニー ウイルス/細菌無細胞1000アプリケーション(QIAsymphony virus/bacteria Cell-free 1000 application)を使用して、試料の調製を行った。核酸を60μlで溶出させ、その後PCRを三重に実施した。
その結果を図18に示す。図に見られる通り、BD EDTA管または本発明の安定化溶液のいずれかを使用すると、試料1つ当たりコピー数1,000以上の100%ヒットが得られた。このことは、本発明の安定化溶液を使用すると核酸の単離が損なわれないことを示している。それとは対照的に、ホルムアルデヒド放出薬(Streck)の使用に基づく安定化は、核酸の単離を強力に阻害する。図に見られる通り、コピー数500またはさらにはコピー数1,000をスパイクインした試料でも、それぞれの試料から単離される核酸を著しく低減することができた。さらに図18は、本発明に従って安定化された試料によって最良の感度が得られたことを示している。試料1つ当たりわずかコピー数10をスパイクインした実施形態についても、13%ものPCR陽性ヒットが得られた。したがって、本発明の方法は、血液試料などの試料を効率的に安定化するだけでなく、さらにその後、非常に少量の細胞外核酸でも回収することができる。このことにより、本方法は、診断適用、および例えば腫瘍に由来する細胞外核酸または胎児の核酸などの希少な標的細胞外核酸の検出に、特に適したものになるため、重要な利点である。特に、コピー数が小さい方が、ホルムアルデヒド放出薬の使用に基づく安定化溶液は、性能が非常に低く、最も高い検出限界を示した。
このことは、以下の表によっても確認される。
前記の表に見られる通り、1,000bpの断片については、EDTA試料および本発明の安定化溶液で達成された結果は同等である。したがって、本発明による安定化は、その後の核酸の単離を損なうことはない。ホルムアルデヒド放出薬を使用する安定化は、最も高い検出限界を示し、したがってその後の核酸の単離が強力に損なわれたことが実証された。したがって、本発明による安定化は、最新技術の方法を使用しても達成されない希少なccfDNA標的の高感度な検出に適している。
このことは、図19および20に示した結果によっても確認される。図に見られる通り、EDTAで安定化された試料、および本発明の方法を使用して安定化された試料では、同等のccfDNA収量が得られる(18S rDNAのqPCRによって測定)。しかし、ホルムアルデヒド放出薬(Streck管)を使用する安定化では、ccfDNA収量が低減した。ホルムアルデヒドで安定化された試料の収率は、EDTAで安定化された試料と比較して約50%低減した。それとは対照的に、本発明の安定化試薬には、従来の核酸単離方法を使用すると生じるccfDNA収率に対する有害作用がない。このことは、本発明の安定化方法を、既存の核酸単離手順およびワークフローに統合することができるので、重要な利点である。
実施例15.3人のドナーの全血試料への104IU/mlのHIV、HCVのスパイクイン
全血試料をBDバキュテイナ2KE管に収集した。後に、以下の安定化溶液2mlを添加した(示した濃度は、安定化された血液溶液中の最終濃度を表す)。次にHIVおよびHCVを、104IU/mlで全血試料に添加した。
1.5%DMAA、EDTA50mg、1μMのOPH、0.05Mイノシトール、
2.5%DMAA、EDTA50mg、1μMのOPH、0.01Mマルチトール、
3.5%DMAA、EDTA50mg、1μMのOPH、0.05Mイノシトール、0.01Mのマルチトール、
4.2%イノシトール、4%ソルビトール。
再び、BDバキュテイナK2Eで安定化された試料は、参照として役立つ。
試料を37℃で最長6日間にわたって室温にてインキュベートした。0日目および3日目に、複写物を以下の通り処理した。試料を、3,000rpmにおいて室温で15分間、遠心分離処理して、血漿を収集した。次に、得られた血漿を、16,000×gにおいて4℃で10分間、再び遠心分離処理した。除去された血漿上清から得られた細胞外核酸を、キアシンフォニー ウイルス/細菌無細胞1000プロトコール(QIAsymphony virus/bacteria Cell-free 1000 protocol)を使用して精製した。投入材料として血漿1mlを使用し、溶出のために体積60μlを使用した。その結果を図21に示す。図に見られる通り、DMAA、EDTAおよびOPHを糖アルコールと組み合わせると、ウイルス核酸レベルを37℃で最長3日間にわたって安定化することができる。したがって、本発明の方法は、診断適用に特に適しており、潜在的に冷蔵施設が利用できない環境において、試料を安定化するのにも適している。0日目と3日目との間のΔCtは、EDTA血液参照と比較して小さい(ΔCt約2.5対ΔCt約1)。さらに、ソルビトールをイノシトールと組み合わせると、安定化効果が見られた(ΔCt約1〜1.4)。
図22は、37℃でインキュベートした全血においてHCVが低下したことを示す。再び、DMAA、EDTAおよびOPHを糖アルコールと組み合わせると、ウイルスRNAレベルの緩慢な低下によって示される通り、HCV核酸レベルが37℃で3日間にわたって安定化されることが示される。0日目と3日目との間のΔCt(ΔCt約1)は、EDTA血液参照(ΔCt約2〜3)と比較して小さい。さらに、ソルビトールとイノシトールの組合せにでも、良好な安定化効果が達成された。
実施例16.N,Nジメチルプロパンアミドおよびカスパーゼ阻害剤による安定化
2人の異なるドナーからの血液を、10mlのK2EDTA管(BD)に収集した。それぞれに収集した血液4.5mlを、それぞれK2EDTA34.2mg、キノリン−Val−Asp−CH2−OPH(カスパーゼ阻害剤)溶液(DMSO388μlに1mgを溶解した)1.2mlおよびN,Nジメチルプロパンアミド0.15gもしくは0.3gもしくは0.45g、またはDMAA0.3mlを含有する安定化溶液0.9ml(安定化溶液1ml当たり)と混合した。それによって、以下の通り、血液/安定化混合物中、それぞれ以下の最終濃度を得た。K2EDTA5.7mg、1μMのキノリン−Val−Asp−CH2−OPH(カスパーゼ阻害剤)および2.5%、5%もしくは7.5%(w/v)のN,Nジメチルプロパンアミド、または5%(v/v)DMAA。
安定化されたすべての血液試料を、一条件および一試験時点について三重に設定した。0時点(参照)において、安定化溶液と血液を混合した直後に血漿を得、ccfDNAを抽出した。残りの血液試料を、室温で3日間および6日間貯蔵した。対照としてEDTAで安定化された血液試料も、3日間および6日間貯蔵した。血液含有管を4回反転することによって、安定化された血液試料および安定化されていない(EDTA)血液試料から血漿を得た。次に、管を3,000rpm/1912×gで15分間、遠心分離処理した。血漿画分2.5mlを、新しい15mlのfalcon管に移し、16,000×gで10分間、遠心分離処理した。QIAamp循環核酸キットを使用して細胞外核酸を単離するために、それぞれに除去された血漿2mlを使用した。
その結果を図23および24に示す。0時点に対するDNAの増加を、2.5%、5%および7.5%N,Nジメチルプロパンアミドまたは5%DMAAにより、様々なアンプリコン長の18SrRNA遺伝子を使用して示す。バーは、一条件および一試験時点当たりの三重試料の平均を示す。本発明のすべての溶液は、安定化されていないEDTA血液と比較して、室温で3日間および6日間貯蔵した後に放出されるDNA量の著しい低下を示す。

Claims (25)

  1. 試料を、カスパーゼ阻害剤、及び
    少なくとも1種の式1の化合物

    [式中、R1は、水素残基またはアルキル残基であり、R2およびR3は、直鎖または分岐状に配列した炭素原子1〜20個の鎖長を有する、同じまたは異なる炭化水素残基であり、R4は、酸素、硫黄またはセレン残基である]
    と接触させることによって、細胞含有試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化する方法。
  2. 前記試料を、前記試料に含まれている前記細胞を安定化する少なくとも1種の高張剤と接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記高張剤が、以下の特徴:
    i)非荷電であること;
    ii)細胞収縮を誘発することによって、前記試料に含まれている前記細胞を安定化すること;
    iii)細胞不透過性であること;
    iv)水溶性であること;
    v)ヒドロキシル化有機化合物であること;
    vi)ポリオールであること;
    vii)ヒドロキシカルボニル化合物であること;
    viii)炭水化物もしくは糖アルコールであること;および/もしくは
    ix)ジヒドロキシアセトンであること、
    の1つもしくは複数を有する、請求項1に記載の方法。
  4. 安定化に起因して、前記試料に含有されている細胞からのゲノムDNAの、前記試料の無細胞部分への放出が低減され、かつ/または前記試料中に存在する核酸の分解が低減される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
  5. a)前記カスパーゼ阻害剤が、以下の特徴:
    i)カスパーゼ特異的ペプチドであること;
    ii)アルデヒド、ニトリルまたはケトン化合物によって修飾されたカスパーゼ特異的ペプチドであること;
    iii)汎カスパーゼ阻害剤(Pancaspase)であること;および/もしくは
    iv)Q−VD−OPhおよびZ−Val−Ala−Asp(OMe)−FMKからなる群から選択されること、
    の1つもしくは複数を有し、
    ならびに/または
    b)前記式1の化合物が、以下の特徴:
    i)R1が、C1〜C5アルキル残基から選択されること;
    ii)R1が、メチル残基であること;
    iii)R1、R2およびR3が、1〜5個の炭素原子を含むこと;
    iv)R1、R2およびR3が、1個または2個の炭素原子を含むこと;
    v)R4が、酸素であること;
    vi)Ν,Ν−ジアルキル−カルボン酸アミドであること;
    vii)Ν,Ν−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、Ν,Ν−ジメチルホルムアミドおよびΝ,Ν−ジエチルホルムアミドからなる群から選択されること;および/もしくは
    viii)N,N−ジメチルプロパンアミドであること、
    の1つもしくは複数を有する、
    請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記試料を、少なくとも1種の抗凝固剤とさらに接触させる、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記抗凝固剤は、以下の特徴:
    i)キレート剤であること、
    ii)EDTAであること、
    の1つもしくは複数を有する、請求項6に記載の方法。
  8. 前記試料を、前記カスパーゼ阻害剤、前記高張剤、式1の前記化合物および/または前記抗凝固剤と接触させた後に得られる混合物が、以下の特徴:
    a)前記カスパーゼ阻害剤を、少なくとも0.01μM、少なくとも0.05μM、少なくとも0.1μM、少なくとも0.5μM、少なくとも1μM、少なくとも2.5μMもしくは少なくとも3.5μMから選択される濃度で含むこと;
    b)前記カスパーゼ阻害剤を、0.01μM〜100μM、0.05μM〜100μM、0.1μM〜50μM、1μM〜40μM、1μM〜30μMもしくは2.5μM〜25μMから選択される濃度範囲で含むこと;
    c)前記高張剤を、少なくとも0.05M、少なくとも0.1M、少なくとも0.25M、もしくは少なくとも0.5Mの濃度で含むこと;
    d)前記高張剤を、0.05M〜2M、0.1〜1.5M、0.15M〜0.8M、0.2M〜0.7Mもしくは0.1M〜0.6Mから選択される濃度範囲で含むこと;
    e)式1の前記化合物を、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも0.75%、少なくとも1%、少なくとも1.25%もしくは少なくとも1.5%の濃度で含むこと;
    f)式1の前記化合物を、0.1%〜50%、0.5%〜25%、0.75%〜20%、1%〜15%、もしくは1%〜10%から選択される濃度範囲で含むこと;および/または
    g)前記抗凝固剤を、0.05mM〜100mM、0.05mM〜50mM、0.1mM〜30mM、1mM〜20mMもしくは2mM〜15mMから選択される濃度範囲で含むこと、
    の1つまたは複数を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記試料を安定化するために、
    a)カスパーゼ阻害剤としての少なくとも1種の汎カスパーゼ阻害剤、
    b)少なくとも1種の高張剤、および
    c)少なくとも1種の式1の化合物、および
    d)任意選択により、抗凝固剤、
    と接触させ、
    a)〜d)の前記化合物が安定化組成物に含まれる、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記高張剤がヒドロキシル化有機化合物、式1の化合物がN,N−ジアルキル−カルボン酸アミド、及び/または抗凝固剤がキレート剤である、請求項9に記載の方法。
  11. 前記試料が、以下の特徴:
    a)細胞外核酸を含むこと;
    b)全血、血液、血漿、血清、リンパ液、尿、髄液、脳脊髄液、腹水、乳、糞便、気管支洗浄液、唾液、羊水、精液/精漿、スワブ/スメア、体液、身体分泌物、鼻分泌物、膣分泌物、創傷分泌物および排泄物に由来する試料、ならびに細胞培養上清からなる群から選択されること;
    )細胞を含有する体液であること;
    d)全血、血漿および/もしくは血清から選択されること;ならびに/または
    e)全血であること、
    の1つまたは複数を有する、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記細胞外核酸集団の安定化が、冷蔵されずに、
    a)少なくとも2日;
    b)少なくとも3日;
    c)少なくとも1日〜3日;
    d)少なくとも1日〜6日;および/または
    e)少なくとも1日〜7日、
    から選択される期間にわたって達成可能である、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 次の1つまたは複数の特徴を有する、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
    a)前記カスパーゼ阻害剤及び式1の化合物、および任意選択によりさらなる添加剤が、安定化組成物に含まれ、前記安定化組成物の前記細胞含有試料に対する体積比が、10:1〜1:20、5:1〜1:15、1:1〜1:10および1:2〜1:5から選択され;
    b)前記安定化された試料に、核酸の分析方法および/または検出方法を適用し;
    c)前記安定化された試料から、細胞外核酸を単離し;
    d)前記安定化された試料から、細胞外核酸を単離し、前記単離された核酸を、分析かつ/または検出し;
    e)前記安定化された試料に含まれている細胞を除去し;
    f)前記安定化された試料に含まれている細胞を除去した後、単離、分析および/または検出ステップを実施し;
    g)請求項12に記載の安定化期間が経過した後に、核酸単離ステップを実施し;
    h)(i)前記安定化された試料、(ii)細胞が除去された、前記安定化された試料、および/もしくは(iii)前記試料から除去された細胞を貯蔵し;
    i)前記安定化された試料から除去された細胞を廃棄し;または
    j)前記安定化された試料から除去された細胞から、核酸を単離す
  14. 血液試料をカスパーゼ阻害剤および抗凝固剤と接触させることを含む、前記血液試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するための方法であって、安定化に起因して、前記血液試料に含有されている細胞からのゲノムDNAの、前記血液試料の無細胞部分への放出が低減され、かつ前記試料中に存在する核酸の分解が低減される、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 生体試料から細胞外核酸を単離する方法であって、
    a)請求項1から14のいずれか1項に記載の方法に従って、細胞含有試料中の前記細胞外核酸集団を安定化するステップと;
    b)細胞外核酸を単離するステップと、
    を含む、方法。
  16. 以下のステップ:
    )ステップa)とステップb)との間で、前記細胞含有試料から細胞を除去し、ステップb)で無細胞もしくは細胞が欠乏している部分から細胞外核酸を単離するステップ;
    ii)請求項13に定義のステップb)〜j)の1つもしくは複数を実施するステップ;ならびに/または
    iii)請求項15に記載のステップb)で、抽出、固相抽出、核酸結合性固相を使用する単離方法、シリカ材料を使用する単離方法、アニオン交換基を含む固相の使用に基づく単離方法、磁気粒子に基づく精製、フェノール−クロロホルム抽出、アルコールおよび/もしくはカオトロピック剤(複数可)に基づく核酸単離方法、クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換粒子に基づく単離、電気泳動法、濾過、沈殿、標的核酸に特異的な単離方法、ならびにその組合せを含む群から選択される単離方法を使用して、細胞外核酸を単離するステップ、
    の1つまたは複数を含む、請求項15に記載の方法。
  17. 前記単離された核酸を処理かつ/または分析する、ステップc)をさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
  18. 前記単離された核酸が、
    i)修飾され;
    ii)少なくとも1種の酵素と接触され;
    iii)増幅され;
    iv)逆転写され;
    v)クローン化され;
    vi)配列決定され;
    vii)プローブと接触され;
    viii)検出され;
    ix)定量化され;かつ/または
    ix)同定される、
    請求項17に記載の方法。
  19. a)細胞含有生体試料が血液試料であること、
    ならびに/または
    b)前記安定化された試料の無細胞部分から単離され、かつ/または請求項15に記載のステップb)で単離した後に得られる前記細胞外核酸集団が、以下の特徴:
    i)単離された前記核酸全体に、一部として含まれること;
    ii)主にDNAを含むこと;
    iii)主にRNAを含むこと;
    iv)細胞外循環核酸を含むこと;
    v)疾患関連核酸を含むこと;
    vi)腫瘍関連もしくは腫瘍由来の核酸を含むこと;
    vii)炎症関連核酸を含むこと;
    viii)胎児核酸を含むこと;
    ix)ウイルス核酸を含むこと;
    x)病原体核酸を含むこと;
    xi)哺乳動物の細胞外核酸を含むこと;および/もしくは
    xii)DNAとRNAとの混合物であること、
    の1つもしくは複数を有し、
    ならびに/または
    c)ステップc)で、分析され、かつ/またはさらに処理される前記細胞外核酸が、以下の特徴:
    i)DNAであること;
    ii)RNAであること;
    iii)細胞外循環核酸であること;
    iv)疾患関連核酸を含むこと;
    v)腫瘍関連または腫瘍由来の核酸を含むこと;
    vi)炎症関連核酸を含むこと;
    vii)胎児核酸であること;
    viii)ウイルス核酸であること;
    ix)病原体核酸であること;
    x)哺乳動物の細胞外核酸であること;および/もしくは
    xi)DNAとRNAとの混合物であること、
    の1つもしくは複数を有する、
    請求項15から18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 細胞含有生体試料中の細胞外核酸集団を安定化する組成物であって、
    a)少なくとも1種のカスパーゼ阻害剤、および
    b)少なくとも1種の式1の化合物

    [式中、R1は、水素残基またはアルキル残基、R2およびR3は、直鎖または分岐状に配列した炭素原子1〜20個の鎖長を有する、同じまたは異なる炭化水素残基であり、R4は、酸素、硫黄またはセレン残基である];
    を含む、組成物。
  21. 以下のc)およびd)
    c)前記試料に含まれている細胞を安定化する少なくとも1種の高張剤;
    d)少なくとも1種の抗凝固剤、
    から選択される少なくとも1種のさらなる化合物を含む、請求項20に記載の組成物。
  22. 式1の化合物が以下の特徴:
    i)R1が、C1〜C5アルキル残基から選択されること;
    ii)R1が、メチル残基であること
    の1つまたは複数を有する、請求項20または請求項21に記載の組成物。
  23. 以下の特徴:
    a)血液試料中の細胞外核酸集団を安定化するのに適すること;
    b)前記試料に含有されている細胞からのゲノムDNAの、前記試料の無細胞部分への放出を低減できること;
    c)前記試料中に存在する核酸の分解を低減できること;
    d)前記試料中に存在するゲノムDNAの分解を低減できること;
    e)前記カスパーゼ阻害剤が、請求項5に記載の特徴の1つもしくは複数を有すること;
    f)請求項5に記載の少なくとも1種の高張剤を含むこと;
    g)請求項5に記載の少なくとも1種の式1の化合物を含むこと;
    h)生体試料と混合した後に得られる混合物が、前記カスパーゼ阻害剤、前記高張剤、式1の前記化合物および/もしくは前記キレート剤を、請求項8に記載の濃度で含むこと;
    i)血液、血漿もしくは血清と混合した後に得られる混合物が、前記カスパーゼ阻害剤、前記高張剤、式1の前記化合物および/もしくは前記キレート剤を、請求項8に記載の濃度で含むこと;
    j)固体形態で提供されること;
    k)液体形態で提供されること;ならびに/または
    l)前記試料に含有されている前記細胞外核酸集団を、室温で少なくとも3日間にわたって安定化できること、
    m)前記試料に含有されている前記細胞外核酸集団を、室温で少なくとも6日間にわたって安定化できること、
    の1つまたは複数を有する、請求項20から22のいずれか1項に記載の組成物。
  24. 前記安定化組成物が、細胞含有生体試料との混合物として提供され、前記細胞含有生体試料が、以下の特徴:
    a)細胞外核酸を含むこと;
    b)全血、血漿、血清、リンパ液、尿、髄液、脳脊髄液、腹水、乳、糞便、気管支洗浄液、唾液、羊水、精液/精漿、スワブ/スメア、体液、身体分泌物、鼻分泌物、膣分泌物、創傷分泌物および排泄物、ならびに細胞培養上清からなる群から選択されること;
    )細胞を含有する体液であること;
    d)全血、血漿および/もしくは血清から選択されること;ならびに/または
    e)全血であること、
    の1つまたは複数を有する、請求項20から23のいずれか1項に記載の組成物。
  25. 前記安定化組成物の前記細胞含有試料に対する体積比が、10:1〜1:20、5:1〜1:15、1:1〜1:10および1:2〜1:5から選択される、請求項24に記載の組成物。
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