JP6327187B2 - 冷延鋼板の製造方法及び冷延鋼板 - Google Patents

冷延鋼板の製造方法及び冷延鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、冷延鋼板間における引張強度のバラツキを抑えることができる冷延鋼板の製造方法及び当該製造方法で製造された冷延鋼板に関する。
連続焼鈍ラインにおいて水焼入れのような急冷を行って製造される、フェライト相と硬質な第二相からなる冷延鋼板では、特殊な合金元素を添加することなく引張強度が980MPa以上の高強度化が可能である。しかし、高強度になるほど、必要な機械特性を得るためのフェライト相の生成量のコントロールが困難となり、製造された各冷延鋼板の強度変動(冷延鋼板間の引張強度のバラツキ)が大きくなる問題がある。そのため、厳しい形状にプレス加工される自動車部品用の冷延鋼板においては、加工後の寸法制度の変動を低減させるために、機械特性のバラツキを抑えることが求められている。
そこで、例えば、特許文献1には、板厚、炭素当量、焼入れ開始温度と引張強度の関係を求めておき、所望の引張強度に応じた焼入れ開始温度を算出し、求めた焼入れ開始温度で焼入れすることを特徴とする高強度冷延鋼板の製造方法が提案されている。
また、特許文献2には、板厚、炭素含有量、リン含有量、焼入れ開始温度、焼入れ停止温度および焼入れ後の焼き戻し温度と引張強度の関係を求めておき、所望の引張強度に応じた焼入れ開始温度を算出し、求めた焼入れ開始温度で焼入れすることを特徴とする高強度冷延鋼板の製造方法が提案されている。
また、特許文献3には、鋼種成分および焼鈍条件を狭レンジ管理することにより、強度変動の小さい980MPa以上の引張強度を有する高強度冷延鋼板の製造方法が提案されている。
特開2000−192137号公報 特開2003−277832号公報 特開2010−111910号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載された冷延鋼板の製造方法では、980MPa以上の引張強度レベルで、高精度なTS制御は困難である。980MPaレベルで高精度なTS制御を行うためには、特許文献1、2で扱うパラメータのみでは不足であると考えられるが、どのようなパラメータをどのように考慮すればよいかについては開示されていない。
また、特許文献3の実施例では、鋼種の成分組成のバラツキについて検証されていない。引張強度のバラツキを抑えた冷延鋼板を安定的に供給するためには、成分組成のバラツキを考慮した製造条件の決定が必要であると考えられるが、どのような成分をどのように考慮すればよいかについては開示されていない。
本発明は上記課題を解決するために完成されたものであって、その目的は、980MPa以上の引張強度レベルで、得られる冷延鋼板間の引張強度のバラツキを抑えることが可能な、冷延鋼板の製造方法およびその方法で製造された冷延鋼板を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、成分をCeq(C+Si/24+Mn/6)で考慮するとともに、用いるパラメータを冷延鋼板の板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)及び平均ライン速度(mpm)とし、これらと引張強度を用いた重回帰分析により導出された相関関係を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
[1]連続焼鈍ラインで冷延鋼板を製造する冷延鋼板の製造方法であって、前記冷延鋼板の板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)、平均ライン速度(mpm)及び前記冷延鋼板の引張強度(MPa)を用いて重回帰分析により導出された相関関係に基づいて、所望の引張強度に応じて、板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)及び平均ライン速度(mpm)の少なくとも一種を調整して調整製造条件を決定し、該調整製造条件で冷延鋼板を製造する冷延鋼板の製造方法。
Ceq=C+Si/24+Mn/6とし、該式中の元素記号は冷延鋼板における各元素の含有量(質量%)を意味する。
[2]質量%で、C:0.100〜0.20%、Si:0.3〜2.3%、Mn:1.00〜2.80%、P:0.05%以下、S:0.005%以下を含有する成分組成を有し、板厚は1.0〜2.0mmであり、引張強度が980MPa以上の冷延鋼板を、平均ライン速度が40〜110mpmの連続焼鈍ラインで製造する冷延鋼板の製造方法であって、冷間圧延された鋼板を、800〜860℃の焼鈍温度で30〜1000s保持後、20℃/s以下の平均冷却速度で焼入れ開始温度:600〜700℃まで冷却する焼鈍工程と、前記焼鈍工程後、500℃/s以上の平均冷却速度で焼入れ停止温度:50℃以下に冷却する焼入れ工程と、前記焼入れ工程後に、350〜450℃で焼き戻し処理を行う焼戻し工程と、を有する[1]に記載の冷延鋼板の製造方法。
[3]前記相関関係を下記(1)式で表したときに、aが0.4〜2.0であり、bが−80〜−20であり、cが−4.0×10〜−1.0×10であり、dが0.4〜2.0であり、eが−2.0〜−0.5であり、fが400〜1600である[2]に記載の冷延鋼板の製造方法。
[Tq]=a×[TS]+b×[t]+c×[Ceq]+d×[Twq]+e×[S]+f (1)
(1)式において、[TS]を引張強度、[t]を冷延鋼板の板厚、[Ceq]をC当量、[Tq]を焼入れ開始温度、[Twq]を焼入れ停止温度、[S]を平均ライン速度とし、a〜fは重回帰分析により定まる定数とする。
[4]引張強度(MPa)が[TS]−α〜[TS]+βになるように、前記調整製造条件を決定する[1]〜[3]のいずれかに記載の冷延鋼板の製造方法。
ただし、α≦50であり、β≦50とする。
[5][1]〜[4]に記載の製造方法で製造された冷延鋼板の引張強度の実績値と、前記相関関係から算出される引張強度の算出値との差に基づいて、該差が小さくなるように、板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)及び平均ライン速度(mpm)の少なくとも一種を調整して修正製造条件を決定し、該修正製造条件で冷延鋼板を製造する冷延鋼板の製造方法。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の方法で製造された冷延鋼板。
本発明によれば、焼入れ手段および焼き戻し手段を備えた連続焼鈍ラインを用いて、引張強度が980MPa以上の冷延鋼板を、冷延鋼板間のバラツキを抑えて製造できる。
従来法の結果を示す図である。 従来法と本発明の結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
本発明は、連続焼鈍ラインで冷延鋼板を製造する冷延鋼板の製造方法である。本発明の特徴は、冷延鋼板の板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)、平均ライン速度(mpm)及び冷延鋼板の引張強度(MPa)を用いて重回帰分析により導出された相関関係を用いる点にある。なお、Ceq=C+Si/24+Mn/6であり、式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を意味する。
従来法では、得られる冷延鋼板間の引張強度のバラツキが大きかったが、本発明では、成分をCeqで考慮するとともに、用いるパラメータを、冷延鋼板の板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)及び平均ライン速度(mpm)とし、これらと引張強度を用いた重回帰分析により導出された相関関係を用いることで、得られる冷延鋼板間の引張強度のバラツキを抑えることができる。
先ず、相関関係について説明する。相関関係が予め得られていない場合には、以下のようにして相関関係を求める。
相関関係を重回帰分析により求めるためには、板厚、C当量、焼入れ開始温度、焼入れ停止温度、平均ライン速度、引張強度を一組とする複数のデータが必要である。複数のデータは、上記条件を変更しながら実験により集めてもよいし、シミュレーション等の実験以外の手段で集めてもよい。また、過去の製造実績のデータから抽出してもよい。
集めたデータを用いて重回帰分析を行い、相関関係を導出する。用いるデータの数は特に限定されないが、多いほど、より正確な相関関係が得られ、本発明の効果が高まる。本発明では90以上のデータ数とすることが好ましい。一方、多くのデータを集めるのに時間が掛かる等の場合には、簡便に本発明を実施するために、用いるデータ数を抑えることが好ましい。
重回帰分析を行う際の目的変数と説明変数の決め方は特に限定されない。本発明では、板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)及び平均ライン速度(mpm)の少なくとも一種を調整して、所望の引張強度になるようにするため、例えば、調整に重要な条件を目的関数とすればよい。本発明では、焼入れ開始温度を調整して、所望のTSになるように調整することが好ましいため、例えば、焼入れ開始温度を目的変数、その他を説明変数とする重回帰分析を行って相関関係を求めればよい。
また、本発明で焼入れ開始温度を調整して引張強度を調整することが好ましい理由は、板厚、C当量、焼入れ停止温度及び平均ライン速度の少なくとも1つで、引張強度を調整しようとしても、これらは変更可能な条件範囲が狭い場合があるか、引張強度に与える影響が小さい場合があるため、所望の引張強度に適切に調整できない場合があるからである。
目的変数を焼入れ開始温度、その他を説明変数として、重回帰分析を行うと、下記(1)式の相関関係が得られる。
[Tq]=a×[TS]+b×[t]+c×[Ceq]+d×[Twq]+e×[S]+f (1)
(1)式において、引張強度を[TS]、冷延鋼板の板厚を[t]、C当量を[Ceq]、焼入れ開始温度を[Tq]、焼入れ停止温度を[Twq]、平均ライン速度を[S]とし、a〜fは重回帰分析により定まる定数とする。
上記のようにして得た相関関係か、予め導出された相関関係を用いて、所望の引張強度になるように、板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)及び平均ライン速度(mpm)の少なくとも一種を調整して調整製造条件を決定する。具体的には、所望の引張強度と、所望の引張強度からの許容できるズレを決定して、下記の不等式(2)を満たす範囲から板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)及び平均ライン速度(mpm)の少なくとも一種を調整して調整製造条件を決定する。
a×([TS]−α)+b×[t]+c×[Ceq]+d×[Twq]+e×[S]+f≦[Tq]≦a×([TS]+β)+b×[t]+c×[Ceq]+d×[Twq]+e×[S]+f (2)
不等式(2)中のα、βは、所望の引張強度からの許容できるズレを表す(α、βは同じ値でも異なる値であってもよい)。即ち、不等式(2)を用いて、引張強度が[TS]−α〜[TS]+βの範囲になるように、板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)及び平均ライン速度(mpm)の少なくとも一種を調整して調整製造条件を決定する。
不等式(2)の範囲から任意に板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)及び平均ライン速度(mpm)の少なくとも一種を調整して決定した調整製造条件で冷延鋼板を製造すれば、冷延鋼板の引張強度は[TS]−α〜[TS]+βの範囲内になる傾向にある。即ち、本発明によれば、製造された各冷延鋼板間で引張強度のバラツキが小さい。
また、本発明では冷延鋼板間の引張強度のバラツキを抑えられるため、許容できるズレを表すαやβを広く取ることができる。具体的には、α、βともに50以下であることが好ましい。
上記のようにして決定した調整製造条件を採用して、冷延鋼板の製造を行う。本発明の製造方法は、様々な冷延鋼板の製造に適用できるが、引張強度が980MPa以上の高強度化された冷延鋼板であっても、冷延鋼板間の引張強度のバラツキを小さく製造できることが本発明の特徴である。「バラツキが小さい」とは設定したTSに対して、2σのバラツキで±40MPaを意味する。なお、様々な冷延鋼板において、想定される板厚は1.0〜2.0mmである。
また、一般的な、引張強度が980MPa以上の高強度化された冷延鋼板は、質量%で、C:0.100〜0.20%、Si:0.3〜2.3%、Mn:1.00〜2.80%、P:0.05%以下、S:0.005%以下を含有するする。なお、各成分の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
C:0.100〜0.20%
Cは、強度向上に寄与する元素である。水焼入れを用いて鋼板の強度を980MPa以上にするために、C含有量を0.100%以上にする。しかし、C含有量が0.20%を超えると溶接性が劣化する。このため、C含有量は0.100%以上0.20%以下とする。
Si:0.3〜2.3%
Siは、延性をさほど劣化させることなく、あるいは延性を向上させて、強度向上に寄与する元素である。この効果を得るためにSi含有量は0.3%以上とする。なお、加工性をより向上させるためには、Si含有量は1.0%以上とすることが好ましい。しかし、Si含有量が2.3%を超えると溶接性が劣化し、Siの表層濃化により表面性状も劣化する。このため、Si含有量は0.3〜2.3%以下とする。
Mn:1.00〜2.80%
Mnは、強度向上に寄与する元素である。水焼入れを用いて鋼板の強度を980MPa以上にするために、Mn含有量は1.00%以上とする。しかし、Mn含有量が2.80%を超えると溶接性が劣化する。このため、Mn含有量は1.00〜2.80%以下とする。
P:0.05%以下
Pは固溶強化元素でもあり鋼板の強化に有効である。しかし、P含有により延性を下がるため、P含有量は0.05%以下とする。
S:0.005%以下
Sは、鋼に不可避的に含有される不純物であり、曲げ性および溶接性の観点から低いほど好ましい。このため、S含有量は0.005%以下とする。
以上の成分の他に、引張強度が980MPa以上の高強度化された冷延鋼板は、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、solAl:2.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Nb:0.2%以下、Ti:0.2%以下、V:0.2%以下、B:0.010%以下、Sb:0.010%以下から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。更には、Sn、Co、W、Ca、Na、Mgなどの元素も、本発明の作用効果を害さない微量な範囲で、下記不可避的不純物として含有してもよい。
上記必須成分、任意成分以外の残部はFe及び不可避的不純物である。
続いて、引張強度が980MPa以上の高強度化された冷延鋼板の製造条件について説明する。
先ず、上記の成分組成を有する鋼を溶製する。Ceqを用いて所望の引張強度になるように調整する場合には、ここでCeqが所望の引張強度に必要な値になるように調整する。溶製方法については、転炉法あるいは電炉法のいずれでもよく、特に限定されない。溶製後の鋼は、造塊法や連続鋳造法で鋼素材(スラブ)とされる。マクロ偏析などの不均一な組織を軽減するには連続鋳造法が好ましい。その後、スラブは熱間圧延されるが、その条件は特に限定されず、常法に従って行えばよい。熱間圧延後は、酸洗してスケールを除去後、冷間圧延されるが、それらも常法に従って行えばよい。板厚を用いて所望の引張強度になるように調整する場合には、ここで板厚が所望の引張強度に必要な値になるようにスラブ厚みを決定したり、熱間圧延や冷間圧延の条件を設定したりする。次いで、連続焼鈍ラインで、以下の条件にて焼鈍工程、焼入れ工程、焼戻し工程が行われる。ライン速度を用いて所望の引張強度になるように調整する場合には、ここでライン速度を所望の引張強度に必要な条件に設定する。なお、連続焼鈍ラインの平均ライン速度は通常40〜110mpmであり、引張強度が980MPa以上の高強度化された冷延鋼板の製造条件においても同様である。
焼鈍工程とは、冷間圧延後の鋼板を800〜860℃の焼鈍温度で30〜1000s保持後、20℃/s以下の平均冷却速度で焼入れ開始温度:600〜700℃まで冷却する工程である。
焼鈍温度が800℃未満では、十分な量のオーステナイト相が生成されないため、急冷後に980MPa以上の引張強度を達成するために必要なマルテンサイト相を得ることができない。一方、焼鈍温度が860℃を超えるとオーステナイト単相域で焼鈍されることになり、水冷開始時のフェライト相の量を制御することが困難である。このため、焼鈍温度は800〜860℃とする。
保持時間が30s以下では未溶解炭化物が残存する可能性が高くなり、オーステナイト相の生成量が少なくなり、急冷後に高強度を達成するために必要なマルテンサイト相を得ることができない。一方、保持時間が1000sを超えると結晶粒が粗大化し、加工性が低下する。このため、保持時間は30〜1000sとする。
焼鈍温度から焼入れ開始温度までの平均冷却速度が20℃/sを超えるとフェライト相の生成量の制御が困難となり、機械特性の変動が大きくなる。このため、上記平均冷却速度は20℃/s以下とする。なお、この冷却における冷却停止温度は、上記の通り焼入れ開始温度:600〜700℃である。焼入れ開始温度の技術的意義は下記の焼入れ工程で説明する。
焼入れ工程とは、上記焼鈍工程後、焼入れ開始温度:600〜700℃から、500℃/s以上の平均冷却速度で焼入れ停止温度:50℃以下に冷却する工程である。
焼入れ開始温度が600℃未満では急冷後のマルテンサイト相の量が少なく、980MPa以上の引張強度を確保することができない。また、焼入れ開始温度が700℃を超えるとマルテンサイト量が多くなり、加工性が低下する。よって、焼入れ開始温度は600〜700℃とする。焼入れ開始温度を用いて所望の引張強度になるように調整する場合には、ここで焼入れ開始温度を所望の引張強度に必要な条件に設定する。
焼入れ工程の冷却の上記開始温度からの平均冷却速度が500℃/s未満ではフェライト相の生成が多くなるため、マルテンサイト相の量が少なく、980MPa以上の引張強度を確保することができない。よって、上記冷却の平均冷却速度は500℃/s以上とする。
焼入れ停止温度が50℃以下であることは、980MPa以上の引張強度を確保するためのマルテンサイト相の生成という理由から必要である。焼入れ停止温度を用いて所望の引張強度になるように調整する場合には、ここで焼入れ停止温度を所望の引張強度に必要な条件に設定する。
焼戻し工程とは、上記焼入れ工程後に、上記焼入れ停止温度から、350〜450℃で焼き戻し処理を行う工程である。
焼き戻し処理温度が350℃未満ではマルテンサイト相の焼き戻しが不十分となり、所望の強度を有する焼き戻しマルテンサイト相を得ることができず、加工性が劣化する。一方、焼き戻し温度が450℃を超えるとマルテンサイト相の軟化による強度の急激な低下が起こり、980MPa以上の引張強度を確保できない。よって、焼き戻し処理温度は350〜450℃とする。
以上のような、引張強度が980MPa以上の高強度化された冷延鋼板に本発明は好ましく適用できる。自動車用構造部材の製造に用いられる冷延鋼板の板厚は1.0〜2.0mmであるが、この程度の厚みでも本発明は十分に実施することができる。
また、本発明で、上記調整製造条件は、上記相関関係に基づいて、所望の引張強度が得られる範囲から決められる必要がある。980MPa以上に高強度化された冷延鋼板の製造においては、上記(1)式の係数a〜fは、aが0.4〜2.0、bが−80〜−20、cが−4.0×10〜−1.0×10、dが0.4〜2.0、eが−2.0〜−0.5、fが400〜1600になる傾向にある。
さらに、冷延鋼板間の引張強度のバラツキを抑えたい場合には、以下のようにして、冷延鋼板間の引張強度のバラツキをより抑えることができる。
冷延鋼板間の引張強度のバラツキを抑えたい場合、冷延鋼板の引張強度の実績値と、上記相関関係から算出される引張強度の算出値との差を小さくするように、板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)及び平均ライン速度(mpm)の少なくとも一種を調整して修正製造条件を決定し、該条件で冷延鋼板を製造することが好ましい。
ここで、上記差がγであるとすると、(1)式を変形した[TS]=a×[Tq]+b×[t]+c×[Ceq]+d×[Twq]+e×[S]+f(a〜fは重回帰分析により定まる定数)の係数を考慮して、[TS]−γになるように、板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)及び平均ライン速度(mpm)の少なくとも一種を変更することで、TSの調整がより正確になる。
まず、成分組成、板厚、焼入れ開始温度、焼入れ停止温度、平均ライン速度が以下の範囲から選ばれる3000通りの製造条件で、冷延鋼板を製造し、引張強度を測定した。この3000通りのデータを用いて、相関関係式を導出するための重回帰分析を行った。その結果、[Tq]=0.9457×[TS]−36.33×[t]−1.711×10×[Ceq]+0.7143×[Twq]−1.002×[S]+744.2が得られた。これを(3)式とする。
成分組成:質量%で、C:0.100〜0.20%、Si:0.3〜2.3%、Mn:1.00〜2.80%、P:0.05%以下、S:0.005%以下を含有し、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、solAl:2.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Nb:0.2%以下、Ti:0.2%以下、V:0.2%以下、B:0.010%以下、Sb:0.010%以下から選ばれる少なくとも1種を含有する成分組成(一部の製造条件においては、さらに、Sn、Co、W、Ca、Na、Mgなどの元素が微量な範囲で含まれる。また、下限を特定していない成分については含まれない場合もある。)
板厚:1.0〜2.0mm
焼入れ開始温度:600〜700℃
焼入れ停止温度:50℃以下
平均ライン速度:40〜110mpm
次に、表1に示す成分組成の鋼を転炉により溶製し、連続鋳造法でスラブとした。このスラブに熱間圧延を行い、次いで、酸洗後、冷間圧延し、表1に示す板厚の冷延板とした。これらの冷延板を、水焼入れ装置が配置された連続焼鈍ラインで、800〜860℃の焼鈍温度で30〜1000s保持後、20℃/s以下の平均冷却速度で焼入れ開始温度:600〜700℃まで冷却する焼鈍を実施した。そして、各鋼板から圧延方向と直角方向にJIS5号引張試験片を採取し、引張試験を行って、引張強度を測定した。表1には、実績の引張強度と式(3)より求めた予測引張強度を合わせて示す。なお、引張強度として、2つの試験片の結果を平均したものを記載した。
また、表1には従来法(特許文献1に記載の方法)を用いて算出した予測引張強度を合わせて示す。
表1から、予測値と実績値との差が、本発明では−3.9〜10.8MPaであるのに対して、従来法では8.8〜42.2MPaである。したがって、本発明によれば冷延鋼板間の引張強度のバラツキを抑えることができる。
本発明の効果を確認するために、以下の実験を行った。
成分組成、板厚、焼入れ開始温度、焼入れ停止温度、平均ライン速度が上記の範囲から選ばれる3000通りの製造条件で、従来法による実績値と予測値との差を確認した。結果を図1に示す。また、同じ3000通りの製造条件で、従来法による実績値と予測値との差を確認した。結果を図2に示す(図2の灰色が従来法、黒色が本発明)。図2には図1の結果も示している。
図1によれば、実績値と従来法で求めた予測値との差は、2σのバラツキで、±50MPa程度である。図2によれば、本発明の、実績値と予測値との差は2σのバラツキで±40MPa程度となる。このように、本発明によれば、得られる冷延鋼板間の引張強度のバラツキの少なくできる。この結果から、従来法による予測式では、本発明で考慮している焼入れ停止温度[Twq](℃)および平均ライン速度[S](mpm)を考慮していないため引張強度の予測精度が悪いと考えられる。
また、表1の鋼板No.7において、予測値と実績値との差は10.8MPaである。予測値と実績値との差が小さくなるように、焼入れ開始温度を677℃に変更したところ、実績値と予測値との差は10.8MPaから0.3MPaまで小さくなった。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.100〜0.20%、Si:0.3〜2.3%、Mn:1.00〜2.80%、P:0.05%以下、S:0.005%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物である成分組成を有し、板厚は1.0〜2.0mmであり、引張強度が980MPa以上の冷延鋼板を、平均ライン速度が40〜110mpmの連続焼鈍ラインで製造する冷延鋼板の製造方法であって、
    冷間圧延された鋼板を、800〜860℃の焼鈍温度で30〜1000s保持後、20℃/s以下の平均冷却速度で焼入れ開始温度:600〜700℃まで冷却する焼鈍工程と、
    前記焼鈍工程後、500℃/s以上の平均冷却速度で焼入れ停止温度:50℃以下に冷却する焼入れ工程と、
    前記焼入れ工程後に、350〜450℃で焼き戻し処理を行う焼戻し工程と、を有し、
    前記冷延鋼板の板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)、平均ライン速度(mpm)及び前記冷延鋼板の引張強度(MPa)を用いて重回帰分析により導出された下記(1)式で表される相関関係に基づいて、所望の引張強度に応じて、板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)及び平均ライン速度(mpm)の少なくとも一種を調整して調整製造条件を決定し、該調整製造条件で冷延鋼板を製造する冷延鋼板の製造方法。
    ただし、Ceq=C+Si/24+Mn/6とし、該式中の元素記号は冷延鋼板における各元素の含有量(質量%)を意味する。
    [Tq]=a×[TS]+b×[t]+c×[Ceq]+d×[Twq]+e×[S]+f (1)
    (1)式において、[TS]を引張強度、[t]を冷延鋼板の板厚、[Ceq]をC当量、[Tq]を焼入れ開始温度、[Twq]を焼入れ停止温度、[S]を平均ライン速度とし、a〜fは重回帰分析により定まる定数とし、aが0.4〜2.0であり、bが−80〜−20であり、cが−4.0×10 〜−1.0×10 であり、dが0.4〜2.0であり、eが−2.0〜−0.5であり、fが400〜1600である。
  2. 引張強度(MPa)が[TS]−α〜[TS]+βになるように、前記調整製造条件を決定する請求項1に記載の冷延鋼板の製造方法。
    ただし、α≦50であり、β≦50とする。
  3. 前記成分組成は、さらに、質量%で、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、solAl:2.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Nb:0.2%以下、Ti:0.2%以下、V:0.2%以下、B:0.010%以下、Sb:0.010%以下から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1又は2に記載の冷延鋼板の製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の製造方法で製造された冷延鋼板の引張強度の実績値と、前記相関関係から算出される引張強度の算出値との差に基づいて、該差が小さくなるように、板厚(mm)、C当量(Ceq(質量%))、焼入れ開始温度(℃)、焼入れ停止温度(℃)及び平均ライン速度(mpm)の少なくとも一種を調整して修正製造条件を決定し、該修正製造条件で冷延鋼板を製造する冷延鋼板の製造方法。
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