以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は、原則として省略する。
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことはいうまでもない。
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
(基本的概念)
複数の実施の形態について、以下に説明するが、先ず、基本的な概念について、図8を用いて説明する。ここでは、乗算型デジタルアナログ変換回路について説明する。ここで説明する乗算型デジタルアナログ変換回路(MDAC)は、例えば図9において説明したように用いることにより、サイクリック型アナログデジタル変換器を構成する。
後で、実施の形態1において説明するが、MDACは、入力信号Vinを粗く量子化する粗量子化器114と、制御部115を含む制御回路と、複数の容量素子を含む容量回路とを具備している。基本的概念を説明するために、これらの要素のうち、粗量子化器114と容量回路のみが図8に示されている。なお、容量回路は、それぞれ受動素子である複数の容量素子によって構成されるため、受動回路あるいはパッシブ回路と見なすことができる。そのため、本願明細書においては、容量回路をパッシブ回路と称することがある。
図8は、基本的概念を説明するための説明図であり、同図には、MDACが、入力信号をサンプリングするサンプリング期間における動作と、サンプリングした入力信号を増幅する残差増幅期間における動作とが模式的に示されている。サンプリング期間は、図8において、矢印の左側に示されており、残差増幅期間は、同図において矢印の右側に示されている。
サンプリング期間において、入力信号Vinは、粗量子化器114により、粗く量子化される。すなわち、粗量子化器114は、基準電圧+Vrefおよび−Vrefを受け、基準電圧+Vref、―Vrefを用いて、3個の電圧範囲を設定する。3個の電圧範囲として、例えば、(a)基準電圧+Vrefの1/4よりも大きい電圧範囲と、(b)基準電圧+Vrefの1/4と基準電圧―Vrefの1/4との間の電圧範囲と、(c)基準電圧―Vfreの1/4よりも小さい電圧範囲とを設定する。粗量子化器114は、入力信号Vinの電圧値が、これらの電圧範囲(a)〜(c)のいずれに存在するかによって、量子化を行い、デジタル信号Diとして出力する。ここでは、説明を容易にするために、デジタル信号Diは、入力信号Vinの電圧値が、上記した電圧範囲(a)〜(c)のいずれに存在しているかに従って、“1”、“0”、“−1”となるものとする。
容量回路は、容量素子C1、C2、C3aおよびC3bを具備している。サンプリング期間においては、容量素子C1、C2、C3aおよびC3bは、互いに並列に接続される。すなわち、容量素子C1、C2、C3aおよびC3bのそれぞれの第1電極P1が、互いに接続され、容量素子C1、C2、C3aおよびC3bのそれぞれの第2電極P2が、互いに接続される。また、サンプリング期間においては、入力信号Vinに対応する正相入力信号+Vinが、容量素子C1、C2、C3aおよびC3bのそれぞれの第1電極P1に供給され、正相入力信号+Vinに対して逆位相の逆相入力信号―Vinが、容量素子C1、C2、C3aおよびC3bのそれぞれの第2電極P2に供給される。同図では、図11と同様に、正相入力信号+Vinと逆相入力信号―Vinとが、互いに反転していることを明示するために、それぞれの正弦波の波形が描かれている。しかしながら、サンプリング期間において、各容量素子の第1電極P1および第2電極P2に供給される正相入力信号+Vinおよび逆相入力信号―Vinは、例えば時刻t1における値である。
すなわち、サンプリング期間においては、各容量素子の両端の電極P1、P2に、それぞれ入力差動信号の正相入力信号電圧および逆相入力信号電圧を接続した状態で、サンプリングを行う。言い換えるならば、図11に示したように、容量素子の一方の電極に正相あるいは逆相の入力信号を供給し、他方の電極に擬似的な交流グランドを供給するようにして構成した擬似的な差動サンプリング(疑似差動サンプリング)ではなく、容量素子の両方の電極P1、P2に正相信号と逆相信号を供給するようにした完全な差動サンプリング(完全差動サンプリング)である。これにより、サンプリング期間において、図11に示した検討回路における容量素子C11、C12に充電できる電荷量と、図8に示した容量回路に充電できる電荷量とを同量にする場合、容量回路内の容量素子C1、C2、C3aおよびC3bの合計容量値は、図11に示した容量素子(容量素子C11と容量素子C12とが同じ容量値Cの場合)の容量値Cの1/2で済む。また、サンプリング用のスイッチの抵抗で生じる差動熱雑音電圧(kBT/C雑音)も、図8と図11とで論理的に同量となる。
すなわち、疑似差動サンプリングではなく完全差動サンプリングを行うことによって、サンプリングを行うのに要する容量素子の総容量を、検討回路(図11)に比べて1/4に低減しても、信号対雑音比を検討回路と同程度に維持することが可能となる。これにより、容量回路によって占有される面積が増加するのを抑制することが可能となる。さらに、容量回路は、複数の容量素子C1、C2、C3aおよびC3bによって構成しているため、各容量素子を、占有面積が小さくなるように配置することも可能である。
上記したように、サンプリング期間において、入力信号Vinは、粗量子化器114によって、3値(1、0、−1)に量子化されている。残差増幅期間(図8の右側)においては、容量素子C1、C2、C3aおよびC3bのそれぞれの第1電極P1は、互いに接続され、この共通接続ノードがMDACの出力ノードNoutに該当し、出力ノードNoutから出力信号Voutが取り出される。残差増幅期間においては、容量素子C1の第2電極P2は、電源電圧Vddに接続され、容量素子C2の第2電極P2は、接地電圧(グランド)Vsに接続される。一方、容量素子C3aおよびC3bのそれぞれの第2電極P2に供給される電圧は、粗量子化器114の出力であるデジタル信号Diの値に従って変わる。すなわち、デジタル信号Diの値に従って、容量素子C3aおよびC3bのそれぞれの第2電極P2は、電源電圧Vddあるいは接地電圧Vsに接続される。図8においては、デジタル信号Diの値が、“1”の場合が、状態(a)、デジタル信号Diの値が、“0”の場合が、状態(b)、デジタル信号Diの値が、“―1”の場合が、状態(c)として示されている。
典型的には、例えば、容量素子C3aと容量素子C3bは、互いに同じ容量値を有しており、図8に示した状態(a)〜(c)より理解されるように、残差増幅期間において、デジタル信号Diの値が“―1”(状態(c))ならば、2つの容量素子C3a、C3bのそれぞれの第2電極P2は、ともに電源電圧Vddに接続され、デジタル信号Diの値が“1”(状態(a))ならば、2つの容量素子C3a、C3bのそれぞれの第2電極P2は、ともに接地電圧Vsに接続される。また、デジタル信号Diの値が“0”(状態(b))ならば、2つの容量素子C3a、C3bの内の一方である容量素子C3aの第2電極P2が電源電圧Vddに接続され、もう一つの容量素子C3bの第2電極P2が接地電圧Vsに接続される。なお、図8において、●印は、サンプリング期間と残差増幅期間において、同じ場所を示している。
ここで、MDACの出力信号Voutと入力信号Vinとの関係は、式(2)に従う。式(2)において、C1、C2は、容量素子C1、C2のそれぞれの容量値であり、C3は、容量素子C3a(あるいはC3b)の容量値であり、Vrefは、基準電圧Vrefである。ここで、基準電圧Vrefは、式(3)により表される。式(3)においても、C1,C2およびC3は、式(2)と同様である。ただし、これらの式の導出では、実際の回路は後の各実施例で見られるように、図8の構成を2つ相補的に動作させる差動回路で実現していることを用いている。
サイクリック型アナログデジタル変換器においては、先に図9において述べたように、MDACの出力信号Voutが、次のサンプリング期間において、MDACの入力信号Vinとなる。すなわち、所定回数、MDACの出力信号が、MDACの入力信号として帰還され、アナログ信号である入力信号Vinがデジタル信号Di(複数ビット)へ変換される。
式(3)から理解されるように、基準電圧Vrefは、容量回路に含まれる容量素子の容量値の比(容量比)で等価的に定めることができる。図8に示した容量回路では、容量回路に容量素子C1、C2、C3aおよびC3bが含まれており、容量素子C3aと容量素子C3bは同じ容量値C3を有している。そのため、基準電圧Vrefは、これらの容量素子の容量比(式(3))によって、等価的に定められる。また、式(2)から理解されるように、残差増幅期間において、MDACの出力電圧Voutは、粗量子化器114によって求められたデジタル値Diと基準電圧Vrefとの積を、入力電圧Vinから減算することにより求められる。この実施の形態においては、残差増幅期間において、粗量子化器114の出力に従って容量素子C3a、C3bの接続が変えられる。これにより、粗量子化器114の出力と基準電圧Vrefとが、増幅信号(増幅電圧)に反映される。
ここでの基準電圧Vrefは、数式(式(3))に表れる基準電圧であり、等価的な基準電圧である。この等価的な基準電圧の電圧値に対応する基準電圧+Vrefおよび―Vrefのそれぞれが、粗量子化器114において、正相入力信号+Vinおよび逆相入力信号―Vinを量子化する際に用いられる。粗量子化器114において用いられる基準電圧+Vrefおよび―Vrefは、この等価的な基準電圧Vrefに対応した電圧値ではあるが、その発生回路の構成は制限されない。この発生回路で発生される基準電圧の精度は、それが粗量子化に用いるものであるため、特に高精度であることは要求されない。そのため、例えば、電源電圧Vddと接地電圧Vsとの間の電圧差を抵抗分圧あるいは容量分圧によって、等価的な基準電圧Vrefに対応する基準電圧+Vrefおよび―Vrefとして発生し、用いればよい。
また、デジタル値Diは、容量素子C3aおよびC3bの第2電極を電源電圧Vddあるいは接地電圧Vsに接続することにより、増幅動作に反映される。そのため、高精度の基準電圧発生回路を必要としない。一般に、アナログデジタル変換器の基準電圧は高精度が要求されるため、基準電圧発生回路の消費電力はアナログデジタル変換器の消費電力を低減する上でのボトルネックになっていることが知られている。高精度の基準電圧発生回路を必要としないため、低消費電力化を図ることが可能となる。
なお、図8に示した基本的概念の構成においては、残差増幅期間では、デジタル信号Diの値に従って、容量素子C3aおよびC3bの第2電極P2の接続先が電源電圧Vddあるいは接地電圧Vsとなる。この観点で見た場合、残差増幅期間において、容量素子C1、C2、C3aおよびC3bにより構成される容量分圧による電源電圧Vddの電圧分圧比が、デジタル信号Diの値に従って変わり、さらに、それを相補的な動作を行う差動回路構成とすることで、等価的に基準電圧が生成されていると見ることも可能である。
図8に示した基本的概念の構成によれば、完全差動サンプリングによって、サンプリングが行われるため、容量回路の占有面積の増加を防ぐことが可能となる。また、高精度の基準電圧発生回路を必要としないため、消費電力の増加を抑制することが可能となる。
以下、複数の実施の形態を説明するが、ここでは、乗算型デジタルアナログ変換回路を用いるアナログデジタル変換器として、サイクリック型アナログデジタル変換器を例として説明する。
(実施の形態1)
図3(a)は、実施の形態1に係わるサイクリック型アナログデジタル変換器の構成を示すブロック図であり、図3(b)は、このサイクリック型アナログデジタル変換器の動作を示すタイミング図である。
図3(a)において、300は、乗算型デジタルアナログ変換回路(MDAC)である。MDAC300については、後で図1あるいは図2を用いて詳細に説明するが、先に図9(a)において述べたMDAC901と同様に、MDAC300の入力ノードNinに供給された入力信号を、逐次、対応するデジタル信号Di(i=1〜N)へ変換する。また、変換において得たデジタル信号Diに対応する電圧と入力信号の電圧との間の残差を増幅して得たところの残差増幅信号を出力ノードNoutへ出力する。MDAC300の出力ノードNoutへ伝達された残差増幅信号は、バッファ回路302を介して、スイッチ303のノード303bに供給される。スイッチ303のノード303cは、MDAC300の入力ノードNinに接続されており、スイッチ303のノード303aは、アナログ回路301の出力に接続されている。
この実施の形態1においては、アナログ回路301は、入力信号Vinに対応した正相入力信号+Vin(以下、VinPとも表す)と正相入力信号+Vinに対して逆位相を有する逆相入力信号―Vin(以下、VinNとも表す)を、スイッチ303へ供給する。アナログ回路301から正相入力信号+Vinと逆相入力信号―Vinとが出力されることを明示するために、アナログ回路301には、模式的にインバータ回路304が示されている。勿論、正相入力信号+Vinと逆相入力信号―Vinとは、インバータ回路により生成することに制限されるものではなく、通常の反転アンプを用いてよい。また、差動出力型のアンプの差動出力をそれぞれ、+Vin、−Vinとしてもよい。
スイッチ303は、入力信号Vin(アナログ信号)に対応する正相入力信号+Vinおよび逆相入力信号―Vinをデジタル信号に変換する際、すなわちアナログデジタル変換を行う際、ノード303cが、ノード303aに接続される。これにより、アナログデジタル変換をする際の入力信号Vin(正相入力信号+Vin、逆相入力信号―Vin)の電圧値が、MDAC300の入力ノードNinに供給される。一方、アナログデジタル変換を行っている期間においては、スイッチ303のノード303cは、ノード303bに接続される。これにより、アナログデジタル変換の期間においては、MDAC300の出力である残差増幅信号が、バッファ回路302およびスイッチ303を介して、MDAC300の入力ノードNinに供給されることになる。
図3(a)に示したスイッチ303が下側に移動されると、すなわち、ノード303aとノード303cとが接続されると、MDAC300は、図3(b)に示されているように、変換動作を行う。スイッチ303が下側へ移動されることにより、入力ノードNinに供給された入力信号Vin(+Vin、―Vin)は、サンプリング期間1Sにおいて、サンプリングされ、デジタル値D1が生成される。また、残差増幅期間1Aにおいて、入力信号Vin(+Vin、―Vin)とデジタル値D1に対応する電圧との間の残差が増幅される。デジタル値D1は、変換動作により得られたデジタル信号として出力される。一方、増幅された残差増幅信号は、バッファ回路302とスイッチ303を介して、入力ノードNinに供給され、次のサンプリング期間2Sにおいてサンプリングが行われ、デジタル値D2が出力され、残差増幅期間2Aにおいて増幅動作が行われる。
要求されるデジタル信号のビット数分だけ、上記した動作が繰り返される(1S、1A〜NS、NA)。その後、スイッチ303が下側へ移動され、新たな電圧値の入力信号が、入力ノードNinに伝達され、この新たな入力信号に対してアナログデジタル変換動作が行われる(1S、1N〜)。図3(b)では、1段の乗算型デジタルアナログ変換回路300によって、アナログデジタル変換が行われている。そのため、乗算型デジタルアナログ変換回路300の変換周期は、1SからNAまでとなる。
次に乗算型デジタルアナログ変換回路300について、図1を用いて説明する。図1は、乗算型デジタルアナログ変換回路(MDAC)300の構成を示す回路図である。
MDAC300は、容量回路100Pおよび100N、粗量子化器114、制御部115、電圧供給部101Pおよび101Nを具備している。容量回路100Pおよび100Nは、互いに同じ構成を有しており、電圧供給部101Pおよび101Nも、互いに同じ構成を有している。ここで、容量回路100Pと電圧供給回路101Pは、正相入力信号+Vinに関する残差信号を増幅するのに用いられ、容量回路100Nと電圧供給回路101Nは、逆相入力信号―Vinに関する残差信号を増幅するのに用いられる。容量回路100Pおよび電圧供給部101Pによって増幅された残差増幅信号は、出力ノードNoutPに伝達され、バッファ回路17Pの入力に伝達される。同様に、容量回路100Nおよび電圧供給部101Nによって増幅された残差増幅信号は、出力ノードNoutNに伝達され、バッファ回路17Nの入力に伝達される。
図1には、説明の都合上、バッファ回路17Pおよび17Nが示されているが、これらのバッファ回路17Pおよび17Nを合わせて、図3では、バッファ回路302として示されている。また、図1に示した出力ノードNoutPおよびNoutNは、これら2つの出力ノードを合わせて、図3では、出力ノードNoutとして示してある。同様に、図1に示した入力ノードNinPおよびNinNは、図3では、入力ノードNinとして示されている。
また、図3では、スイッチ303は、1個のスイッチとして示されているが、正相入力信号+Vin(VinP)をアナログ回路304あるいはバッファ回路17Pから、入力ノードNinPへ供給する第1スイッチ(図示せず)と、逆相入力信号―Vin(VinN)をアナログ回路304あるいはバッファ回路17Nから、入力ノードNinNへ供給する第2スイッチ(図示せず)とを含んでいる。
MDAC300の入力ノードNinPおよびNinNには、粗量子化器114が接続されている。粗量子化器114は、スイッチ303(図3)を介して供給された正相入力信号VinPおよび逆相入力信号VinNとの間の差電圧を、粗く量子化する。この実施の形態1においては、3値に量子化し、量子化により得たデータをデジタル値Diとして出力する。粗量子化器114から出力されたデジタル値Diは、制御部115に供給されるとともに、アナログデジタル変換の結果として出力される。この実施の形態1のMDAC300は、所謂1.5ビット変換器である。そのため、1回の変換周期で得られた複数のデジタル値Di(i=1〜N)を演算処理することにより、アナログ信号である入力信号Vinの電圧が、複数ビット(2値表現)のデジタル信号へ変換される。
制御部115は、粗量子化器114からの出力(デジタル値Di)を受け、この出力に従った制御信号p00、n00、p10、n10を生成して、電圧供給部101Pおよび101Nへ供給する。電圧供給部101Pおよび101Nは、制御部115からの制御信号に従った電圧を、残差増幅期間において、容量回路100Pおよび100Nへ供給する。そのため、制御部115と電圧供給部101P、101Nとを合わせて、容量回路に供給される電圧を制御する制御回路と見なすことができる。
容量回路100Pは、正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNとをサンプリング期間において、サンプリングし、サンプリングした正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNとの間の電圧差を、残差増幅期間において増幅する。また、この残差増幅期間において、増幅により得られた電圧には、粗量子化器114の出力(デジタル値Di)と等価的な基準電圧Vrefとが反映される。この粗量子化器114の出力と等価的な基準電圧Vrefとが反映された増幅出力は、出力ノードNoutPに表れ、バッファ回路17Pの入力に伝達される。同様に、容量回路100Nは、サンプリング期間において、逆相入力信号VinNと正相入力信号VinNとをサンプリングし、サンプリングした逆相入力信号VinNと正相入力信号VinPとの間の電圧差を、残差増幅期間において増幅する。また、この残差増幅期間において、増幅により得られた電圧には、粗量子化器114の出力(デジタル値Di)と等価的な基準電圧Vrefとが反映される。この粗量子化器114の出力と等価的な基準電圧Vrefとが反映された増幅出力は、出力ノードNoutNに表れ、バッファ回路17Nの入力に伝達される。
容量回路100Pは、入力ノードNinPと出力ノードNoutPとの間に接続されたスイッチ11Pと、それぞれの第1電極P1が出力ノードNoutPに接続された容量素子12P、13P、14Pおよび15Pを具備している。また、容量回路100Pは、容量素子12P〜15Pのそれぞれの第2電極P2と入力ノードNinNとの間に接続されたスイッチ列16Pと、容量素子12Pの第2電極P2と電源電圧Vddとの間に接続されたスイッチ18Pと、容量素子13Pの第2電極P2と接地電圧Vsとの間に接続されたスイッチ19Pとを有している。さらに、容量回路100Pは、容量素子14Pの第2電極P2と電圧供給部101Pの出力ノードNiv1との間に接続されたスイッチ111Pと、容量素子15Pの第2電極P2と電圧供給部101Pの出力ノードNiv2との間に接続されたスイッチ113Pとを具備している。
ここで、スイッチ列16Pは、スイッチa〜dを含むスイッチ群であり、スイッチaは、入力ノードNinNと容量素子12Pの第2電極P2との間に接続され、スイッチbは、入力ノードNinNと容量素子13Pの第2電極P2との間に接続されている。同様に、スイッチcは、入力ノードNinNと容量素子14Pの第2電極P2との間に接続され、スイッチdは、入力ノードNinNと容量素子15Pの第2電極P2との間に接続されている。
スイッチ11Pおよびスイッチ列16Pは、サンプリング期間(例えば、1S:図3)において、オン状態とされ、残差増幅期間(例えば、1A:図3)において、オフ状態とされる。これにより、サンプリング期間(1S)においては、容量素子12P〜15Pのそれぞれの第1電極P1は、スイッチ11Pを介して入力ノードNinPに接続され、それぞれの第2電極P2は、スイッチ列16P(スイッチa〜d)を介して入力ノードNinNに接続される。その結果として、サンプリング期間(1S)では、容量素子12P〜15Pのそれぞれに、正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNが印加されることになり、完全差動サンプリングが実施される。なお、サンプリング期間(1S)においては、スイッチ18P、19P、111Pおよび113Pのそれぞれはオフ状態にされている。
一方、サンプリング期間(1S)に続く残差増幅期間(1A)においては、スイッチ11Pおよびスイッチ列16Pのそれぞれがオフ状態とされ、スイッチ18P、19P、111Pおよび113Pのそれぞれがオン状態とされる。これにより、残差増幅期間(1A)においては、容量素子12Pの第2電極P2に、スイッチ18Pを介して電源電圧Vddが供給され、容量素子13Pの第2電極P2に、スイッチ19Pを介して接地電圧Vsが供給される。また、このとき、容量素子14Pおよび15Pのそれぞれの第2電極P2には、電圧供給部101Pの出力ノードNiv1、Niv2から、粗量子化器114の出力に従った電圧が、スイッチ111Pおよび113Pを介して供給される。
電圧供給部101Pは、特に制限されないが、インバータ回路110Pおよび112Pを具備している。インバータ回路110Pは、制御部115からの制御信号p10を受け、電圧供給部101Pの出力ノードNiv1へ、制御信号p10の電圧を反転した電圧を供給する。また、インバータ回路112Pは、制御部115からの制御信号n00を受け、電圧供給部101Pの出力ノードNiv2へ、制御信号n00の電圧を反転した電圧を供給する。ここで、電圧供給部101Pには、動作電圧として、電源電圧Vddと接地電圧Vsが給電される。この電源電圧Vddは、電源ノードNvdを介して給電され、接地電圧Vsは、電源ノードNvsを介して給電される。すなわち、インバータ回路110Pおよび112Pのそれぞれに、動作電圧として、電源電圧Vddおよび接地電圧Vsが、電源ノードNvdおよびNvsを介して給電される。
動作電圧として、電源電圧Vddおよび接地電圧Vsを受けることにより、制御信号p10、n00の電圧に従って、インバータ回路110Pおよび112Pは、容量素子14Pおよび15Pのそれぞれの第2電極P2へ、電源ノードNvdに給電された電源電圧Vdd、あるいは電源ノードNvsに給電された接地電圧Vsを供給することになる。すなわち、この実施の形態1においては、容量回路100Pに供給される電圧は、電源電圧Vddおよび接地電圧Vsであり、高精度の基準電圧は供給されていない。なお、容量素子12P〜15Pのそれぞれの第1電極P1は、サンプリング期間(1S)および残差増幅期間(1A)のいずれにおいても、出力ノードNoutPに接続されている。
容量回路100Nについても、容量回路100Pと同様な構成にされている。すなわち、容量回路100Nは、逆相入力信号VinNが供給される入力ノードNinNと出力ノードNoutNとの間に接続されたスイッチ11Nと、出力ノードNoutNに、それぞれの第1電極P1が接続された容量素子12N〜15Nと、正相入力信号VinPが供給される入力ノードNinPと各容量素子12N〜15Nのそれぞれの第2電極P2との間に接続されたスイッチ列16N(スイッチa〜d)とを具備している。また、容量回路100Nは、容量素子12Nの第2電極P2と電源電圧Vddとの間に接続されたスイッチ18Nと、容量素子13Nの第2電極P2と接地電圧Vsとの間に接続されたスイッチ19Nと、容量素子14Nの第2電極P2と電圧供給部101Nの出力ノードNiv1との間に接続されたスイッチ111Nと、容量素子15Nの第2電極P2と電圧供給部101Nの出力ノードNiv2との間に接続されたスイッチ113Nとを具備している。
容量回路100Nにおけるスイッチ11N、18N、19N、111N、113Nおよびスイッチ列16Nは、容量回路100Pにおけるスイッチ11P、18P、19P、111P、113Pおよびスイッチ列16Pにそれぞれ対応する。すなわち、スイッチ11Nおよびスイッチ列16Nは、サンプリング期間(1S)において、オン状態とされ、それに続く残差増幅期間(1A)において、オフ状態とされる。これにより、サンプリング期間(1S)においては、各容量素子12N〜15Nのそれぞれの第1電極P1および第2電極P2には、逆相入力信号VinNの電圧および正相入力信号VinPの電圧が印加されることになり、完全差動サンプリングが行われる。一方、残差増幅期間(1A)においては、スイッチ18N、19N、111Nおよび113Nのそれぞれがオン状態とされる。これにより、残差増幅期間(1A)においては、容量素子12Nの第2電極P2に電源電圧Vddが供給され、容量素子13Nの第2電極P2に接地電圧Vsが供給される。
また、残差増幅期間(1A)において、容量素子14Nおよび15Nのそれぞれの第2電極P2には、電圧供給部101Nの出力ノードNiv1およびNiv2のそれぞれから、粗量子化器114の出力に従った電圧が供給されることになる。電圧供給部101Nも、先に述べた電圧供給部101Pと同様に、この実施の形態1においては、インバータ回路110N、112Nによって構成されており、それぞれのインバータ回路110N、112Nには、電源ノードNvdを介して電源電圧Vddが給電され、電源ノードNvsを介して接地電圧Vsが給電されている。これにより、インバータ回路110Nは、残差増幅期間(1A)において、制御信号p00の電圧を反転した電源電圧Vddあるいは接地電圧Vsを出力ノードNiv1に供給する。同様に、インバータ回路112Nは、制御信号n10の電圧を反転した電源電圧Vddあるいは接地電圧Vsを出力ノードNiv2に供給する。同図から理解されるように、容量回路100Nにおいても、容量素子12N〜15Nのそれぞれの第2電極P2は、出力ノードNoutNに接続されている。
MDAC300の出力ノードNoutPおよびNoutNにおける電圧は、バッファ回路17Pおよび17Nによってバッファリングされ、バッファ回路17Pおよび17Nのそれぞれの出力信号VoutPおよびVoutNとして、スイッチ303(図3)に供給される。変換周期の間、すなわち、スイッチ303のノード303bとノード303cとが接続されている期間においては、バッファ回路17Pおよび17Nからの出力信号VoutPおよびVoutNは、次の変換動作のために、MDAC300の入力ノードNin(NinP、NinN)に、正相入力信号VinPおよび逆相入力信号VinNとして供給されることになる。
また、図1において、103は基準電圧発生回路である。この基準電圧発生回路103は、特に制限されないが、分圧用の抵抗素子あるいは容量素子を具備し、電源電圧Vddと接地電圧Vsとを受けて、電源電圧Vddと接地電圧Vsとの間の差電圧を分圧することにより形成した分圧電圧を基準電圧Vrefとして、粗量子化器114へ供給する。
この実施の形態1において、容量素子12Pおよび12Nのそれぞれは、図8において説明した容量素子C1に相当し、容量素子13Pおよび13Nのそれぞれは、図8の容量素子C2に相当する。さらに、実施の形態1における容量素子14Pおよび14Nのそれぞれは、図8の容量素子C3aに相当し、容量素子15Pおよび15Nのそれぞれは、図8の容量素子C3bに相当する。そのため、実施の形態1は、先に図8を用いて説明した基本的概念を、正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNのそれぞれの変換に適用したものと見なすことができる。MDAC300から出力される差電圧(出力ノードNoutPにおける電圧―出力ノードNoutNにおける電圧)は、バッファ回路17Pの出力信号VoutPとバッファ回路17Nの出力信号VouNとの差電圧(VoutP−VoutN)に相当する。
次に、図1に示したMDAC300の動作を説明する。入力信号Vinはアナログ信号であり、入力信号Vinの電圧変化に対応して、正相入力信号VinPの電圧は変化する。逆相入力信号VinNの電圧波形は、正相入力信号VinPに対して逆位相を有する。ここでは、コモン電圧を中心として、逆相入力信号VinNは、正相入力信号VinPに対して逆の位相の電圧波形を有するものとして説明する。
先ず、図3に示したスイッチ303を介して、入力信号Vinに対応した正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNが、MDAC300の入力ノードNin(図1では、NinPおよびNinN)に供給される。サンプリング期間(1S:図3)においては、スイッチ11P、11Nおよびスイッチ列16P、16Nのそれぞれがオン状態となっている。これにより、容量素子12P〜15Pのそれぞれの第1電極P1および容量素子12N〜15Nのそれぞれの第2電極P2に、スイッチ303を介して伝えられた正相入力信号VinPの電圧が印加される。また、このとき、容量素子12P〜15Pのそれぞれの第2電極P2と、容量素子12N〜15Nのそれぞれの第1電極P1には、スイッチ303を介して伝えられた逆相入力信号VinNの電圧が印加される。これにより、容量素子12P〜15Pおよび12N〜15Nのそれぞれは、第1電極P1に印加されている電圧と第2電極P2に印加されている電圧とによって充電される。各容量素子の第1電極P1と第2電極P2には、差動の入力信号(VinP、VinN)の電圧が印加されるため、完全差動サンプリングが行われることになる。
一方、サンプリング期間(1S)においては、スイッチ303(図3)を介して、正相入力信号VinPおよび逆相入力信号VinNが、粗量子化器114に供給されている。粗量子化器114は、入力信号を粗く量子化する。この実施の形態1においては、粗量子化器114は、供給されている正相入力信号VinPの電圧と逆相入力信号VinNの電圧との間の差電圧、すなわち、正相入力信号VinPの電圧−逆相入力信号の電圧である差電圧(VinP−VinN)が、基準電圧Vrefとの比較に基づいて、量子化が行われる。図12は、基準電圧Vrefと差電圧(VinP−VinN)との関係を示す波形図である。
図12において、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示している。基準電圧Vrefは、0を中心として、プラス側の基準電圧+Vrefとマイナス側の基準電圧―Vrefとを有する。この場合、基準電圧+Vrefの絶対値電圧は、基準電圧―Vrefの絶対値電圧と同じである。このような基準電圧+Vrefおよび−Vrefは、先に述べたように接地電圧Vsと電源電圧Vddとの間の電圧を分圧することにより、容易に発生することができる。また、基準電圧+Vref、−Vrefは、粗い量子化をおこなうための基準電圧であり、高精度は要求されない。図1においては、この基準電圧+Vrefおよび−Vrefを発生する回路として基準電圧発生回路103が示されており、同図では、これらの基準電圧+Vrefおよび−Vrefは、基準電圧Vrefとして纏めて示してある。
正相入力信号VinPの電圧波形と、逆相入力信号VinNの電圧波形は、コモン電圧を中心として対称的に変化する。そのため、入力差動信号VinPとVinNとの差電圧(VinP―VinN)は、これらの入力電圧とコモン電圧との間の電圧差が大きいほど、大きくなる。図12には、一例として差電圧(VinP−VinN)の電圧波形が、模式的に示されている。図12に示した差電圧の例は、正相入力信号VinPがコモン電圧に対してプラス側の電圧を有し、逆相入力信号VinNがコモン電圧に対してマイナス側の電圧を有する状態から、正相入力信号VinPがコモン電圧に対してマイナス側の電圧へ変化し、逆相入力信号VinNがコモン電圧に対してプラス側の電圧へ変化している場合が示されている。正相入力信号VinPおよび逆相入力信号VinNのこのような電圧変化により、差電圧(VinP―VinN)の電圧値はプラス側からマイナス側へ、時間経過にともなって変化している。なお、プラス側とは、同図において、基準電圧+Vref側を示し、マイナス側とは、基準電圧―Vref側を示している。
この実施の形態1においては、特に制限されないが、基準電圧Vref(+Vref、―Vref)の1/4の電圧をしきい値電圧として、入力差動信号の量子化を行う。すなわち、入力差動信号の差電圧(VinP−VinN)が、(a)基準電圧Vref/4よりも大きいか、(b)基準電圧Vref/4と基準電圧―Vref/4との間に存在するか、あるいは(c)基準電圧―Vref/4よりも小さいかを判定し、入力差動信号の量子化を行う。この判定を行うことにより、粗量子化器114は、入力差動信号の差電圧が、例えば(a)のとき、デジタル信号Diとして“1”を出力し、入力差動信号の差電圧が、例えば(b)のとき、デジタル信号Diとして“0”を出力し、入力差動信号の差電圧が、例えば(c)のとき、デジタル信号Diとして“−1”を出力する。
図12を例にして述べると、時刻t0において、アナログデジタル変換器が、入力信号VinPおよびVinNを取り込んだ場合、粗量子化器114は、入力差動信号の差電圧が、基準電圧Vref/4よりも大きいため、(a)と判定し、デジタル信号Di=1を出力する。また、時刻t1における入力信号VinPおよびVinNを取り込んだ場合、入力差動信号の差電圧は、基準電圧+Vref/4と−Vref/4との間に存在するため、粗量子化器114は、デジタル信号Di=0を出力する。同様に、時刻t2における入力信号VinPおよびVinNを取り込んだ場合には、差電圧が、基準電圧―Vref/4よりも小さいため、粗量子化器114は、デジタル信号Di=−1を出力する。
なお、特に制限されないが、粗量子化器114のデジタル信号Diを、2値のデジタル値へ変換する場合、デジタル信号Di=1は、2値のデジタル値“10”に対応させ、デジタル信号Di=0は、“01”に対応させ、デジタル信号Di=−1は、“00”に対応させる。これにより、所謂1.5ビット変換が行われる。
制御部115は、粗量子化器114からの出力であるデジタル信号Diを受け、デジタル値信号Diの値に従った制御信号p10、n10、p00、n00を生成する。この例では、制御信号p10は、デジタル信号Diが“1”のとき、ハイレベル(電源電圧Vdd)となり、それ以外のときには、ロウレベル(接地電圧Vs)となるように、生成される。また、制御信号n10は、デジタル信号Diが“1”のとき、ロウレベル(Vs)となり、それ以外のときには、ハイレベル(Vdd)となるように、生成される。制御信号p00は、デジタル信号Diが“―1”のとき、ハイレベル(Vdd)となり、それ以外のときには、ロウレベル(Vs)となるように、生成される。制御信号n00は、デジタル信号Diが“―1”のとき、ロウレベル(Vs)となり、それ以外のときには、ハイレベル(Vdd)となるように、生成される。
サンプリング期間(1S)に続く残差増幅期間(1A)においては、スイッチ11Pおよび11Nはオフ状態とされる。また、スイッチ列16Pおよび16Nも、オフ状態とされる。一方、残差増幅期間においては、スイッチ18P、19P、111P、113P、18N、19N、111Nおよび113Nのそれぞれが、オフ状態からオン状態へ変えられる。これにより、残差増幅期間においては、容量素子12Pおよび12Nのそれぞれの第2電極P2が電源電圧Vddに接続され、容量素子13Pおよび13Nのそれぞれの第2電極P2が接地電圧Vsに接続される。
また、残差増幅期間においては、容量素子14P、15P、14Nおよび15Nのそれぞれの第2電極P2の電圧が、電圧供給部101P、101Nによって定められる。電圧供給部101Pおよび101Nから出力される電圧は、制御部115からの制御信号によって定められるため、容量素子14P、15P、14Nおよび15Nのそれぞれの第2電極P2の電圧は、粗量子化器114からの出力(デジタル信号Di)によって定められることになる。
すなわち、デジタル信号Diが“1”のときには、制御信号p10、n00がハイレベルとなり、インバータ回路110Pおよび112Pのそれぞれからは、電源ノードNvsに給電されている接地電圧Vsに応じた接地電圧が、容量素子14Pおよび15Pのそれぞれの第2電極P2に供給される。このとき、制御信号p00、n10はロウレベルとなるため、インバータ回路110Nおよび112Nのそれぞれからは、電源ノードNvdに給電されている電源電圧Vddに応じた電源電圧が、容量素子14Nおよび15Nのそれぞれの第2電極P2に供給される。これにより、容量素子12P〜15Pの接続状態は、図8に示した状態(a)と同様になり、容量素子12N〜15Nの接続状態は、図8に示した状態(c)と同様になる。なお、先にも述べたが、容量素子12Pおよび12Nは、図8の容量素子C1に相当し、容量素子13Pおよび13Nは、図8の容量素子C2に相当する。また、容量素子14P、14Nは、図8の容量素子C3aに相当し、容量素子15P、15Nは、図8の容量素子C3bに相当する。
また、デジタル信号Diが“−1”のときには、制御信号P10、n00がロウレベルとなるため、インバータ回路110Pおよび112Pのそれぞれからは、電源ノードNvdに給電されている電源電圧Vddに応じた電源電圧が、容量素子14Pおよび15Pのそれぞれの第2電極P2に供給される。このとき、制御信号p00、n10はハイレベルとなるため、インバータ回路110Nおよび112Nのそれぞれからは、電源ノードNvsに給電されている接地電圧Vsに応じた接地電圧が、容量素子14Nおよび15Nのそれぞれの第2電極P2に供給される。これにより、容量素子12P〜15Pの接続状態は、図8に示した状態(c)と同様になり、容量素子12N〜15Nの接続状態は、図8に示した状態(a)と同様になる。
さらに、デジタル信号Diが“0”のときには、制御信号P10はロウレベル、制御信号n00はハイレベルとなるため、インバータ回路110Pからは、電源電圧Vddに応じた電源電圧が、容量素子14Pの第2電極P2に供給され、インバータ回路112Pからは、接地電圧Vsに応じた接地電圧が、容量素子15Pの第2電極P2に供給される。このとき、制御信号p00はロウレベル、制御信号n10はハイレベルとなるため、インバータ回路110Nからは、電源電圧Vddに応じた電源電圧が、容量素子14Nの第2電極P2に供給され、インバータ回路112Nからは、接地電圧Vsに応じた接地電圧が、容量素子15Nの第2電極P2に供給される。これにより、容量素子12P〜15Pの接続状態は、図8に示した状態(b)と同様になり、容量素子12N〜15Nの接続状態も、図8に示した状態(b)と同様になる。
残差増幅期間において、容量回路100Pおよび100Nのそれぞれにおける容量素子12P〜15P(12N〜15N)の接続状態は、上記したように、デジタル信号Diの出力に従って、図8に示した状態と同様に変わる。従って、容量回路100Pの出力ノードNoutP(MDAC300の出力ノードに相当)における電圧に対応する出力電圧VoutPと、容量回路100Nの出力ノードNoutN(MDAC300の出力ノードに相当)における電圧に対応する出力電圧VoutNとの差電圧Vout(VoutP−VoutN)は、上記した式(2)に従うことになる。この場合、式(2)における出力電圧VoutはVoutPとVoutNとの差電圧と読み替え、入力電圧VinはVinPとVinNとの差電圧と読み替え、基準電圧Vrefは、+Vrefあるいは−Vrefと読み替える。
実施の形態1においては、出力ノードNoutP、NoutNは、バッファ回路17P、17Nの入力に接続されている。バッファ回路17Pおよび17Nによって、バッファリングが行われるため、バッファ回路17P、17Nの出力ノードと、上記した出力ノードNoutP、NoutNとの間が電気的に分離される。これにより、出力ノードNoutP、NoutNのそれぞれにおける出力電圧が、バッファ回路17P、17Nの出力ノードに伝達されているとき、バッファ回路17P、17Nの出力ノードに存在する容量(次段のサンプリング容量と寄生容量の和)と容量回路100P、100Nに含まれる容量素子12P〜15P、12N〜15Nとの間で電荷分散が行われるのを防ぐことが可能となる。また、バッファ回路17P、17Nの入力インピーダンスが高いため、出力ノードNoutNおよびNoutPにおける出力電圧の値が変化(破壊)されるのを防ぐことが可能となり、バッファ回路17P、17Nの入力に与えられる差電圧の値を維持することが可能となる。
容量回路100P、100Nに含まれる容量素子12P〜15P、12N〜15Nは、サンプリング期間において、供給された入力信号Vin(+Vin、−Vin)に相当する電荷を保持するため、スイッチ303(図3)とMDAC300との間に、入力信号をホールドするためのホールド回路は、設けなくてもよい。勿論、容量回路100P、100Nのサンプリングタイミングと粗量子化器114の判定タイミングのずれを許容するために、ホールド回路を設けても良いことは言うまでもない。
実施の形態1によれば、図1に示したMDAC300の出力ノードNout(NoutP、NoutN)における出力信号(電圧)は、バッファ回路302(17P、17N)およびスイッチ303を介して、再び図1に示したMDAC300の入力ノードNin(NinP、NinN)に供給される。この供給された出力信号は、入力信号Vin(VinP、VinN)としてサンプリング期間(2S)において、上記した粗い量子化と、完全差動サンプリングが行われ、さらに残差増幅期間(2A)において、上記した残差の増幅が行われる。このように、サンプリング期間とそれに続く残差増幅期間とが繰り返されることにより、入力信号Vin(VinP、VinN)は、所定ビット数のデジタル信号へ変換される。なお、所謂1.5ビット変換によって得た量子化データを2値のデジタル信号へ変換する処理は、周知であるので、ここでは省略する。
また、図には示していないが、サイクリック型アナログデジタル変換器は、上記したスイッチ11P、18P、19P、111P、113P、11N、18N、19N、111N、113N、スイッチ303(図3)およびスイッチ列16P、16Nを制御するコントール回路を有している。このコントロール回路によって、サンプリング期間と残差増幅期間で、所定のスイッチおよびスイッチ列がオン/オフするように制御される。また、スイッチ303は、所定のタイミングで、入力信号がMDAC300へ供給されるように制御される。さらに、粗量子化器114および制御部115も、このコントロール回路によって制御される。粗量子化器114については、サンプリング期間において量子化を行うように制御され、制御部115については、粗量子化器114の出力に従った制御信号p10、n00、p00、n10を、残差増幅期間に電圧供給部101P、101Nに供給するように制御される。
次に、電源電圧Vdd、基準電圧Vref(+Vref、−Vref)、バッファ回路17P、17Nの入力のコモン(平均)電圧Vcm、容量回路100P(100N)に含まれる容量素子12P〜15P(12N〜15N)の各容量値との関係を示す。なお、容量素子12P(12N)は、容量素子C1とし、容量素子13P(13N)は、容量素子C2とし、容量素子14P(14N)、15P(15N)は、それぞれ容量素子C3として示す。
まず、基準電圧Vrefと容量素子C1〜C3(12P〜15P、12N〜15N)との間の関係は,既に式(3)において示してある。バッファ回路17P、17Nの入力のコモン電圧Vcmと容量素子C1〜C3の関係は、式(4)に示す通りであり、容量素子C1、C3と基準電圧Vrefとバッファ回路17P、17Nの入力のコモン電圧Vcmとの関係は、式(5)に示す通りである。また、容量素子C2、C3と基準電圧Vrefとバッファ回路17P、17Nの入力のコモン電圧Vcmとの関係は、式(6)に示す通りである。
例えば、バッファ回路17P、17Nの入力のコモン電圧Vcm、基準電圧Vrefおよび電源電圧Vddを定めることにより、容量回路に含まれる容量素子C1〜C3の容量比を、上記した式(5)および(6)を用いて定めることができる。
実施の形態1によれば、サンプリング期間において、容量回路に含まれる容量素子に完全差動サンプリングが行われる。これにより、サンプリングにより蓄積される電荷量を維持しながら、容量素子の小型化を図ることが可能となり、乗算型デジタルアナログ変換回路の占有面積が増加するのを抑制することが可能となる。その結果として、乗算型デジタルアナログ変換回路を用いたサイクリック型アナログデジタル変換器の占有面積の増加を抑制することが可能となる。さらに、残差増幅期間において、容量回路に供給される電圧としては、高精度の基準電圧を用いずに、電源電圧Vddおよび接地電圧Vsを用いることが可能となるため、高精度の基準電圧を生成するための基準電圧発生回路を設けなくても済み、消費電力が増加するのを抑制することが可能となる。また、乗算型デジタルアナログ変換回路が、受動回路である容量回路(パッシブ回路)により構成されるため、乗算型デジタルアナログ変換回路での消費電力が増加するのを抑制することが可能となる。
さらに、実施の形態1によれば、容量回路の出力が、バッファ回路によってバッファリングされることにより、容量回路に蓄積された電荷が破壊されるのを防ぐことが可能となりサイクリック型アナログデジタル変換器の占有面積が増加するのを、さらに抑制することが可能となる。
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2に係わる乗算型デジタルアナログ変換回路300とバッファ回路の構成を示す回路図である。図2に示したMDAC300は、図1に示したMDAC300と類似した構成を有している。そのため、ここでは、実施の形態1と異なる部分のみを主に説明し、MDAC300の構成および動作についての説明は省略する。
実施の形態1と実施の形態2とで、主に異なる部分は、MDAC300の出力ノードNout(NoutP、NoutN)に接続されるバッファ回路が、実施の形態1と実施の形態2との間で異なっている。実施の形態2においては、実施の形態1において用いられていたバッファ回路17Pおよび17Nのそれぞれが、ソースフォロワ回路によって構成されている。すなわち、バッファ回路17Pの代わりにソースフォロワ回路200Pが用いられ、バッファ回路17Nの代わりにソースフォロワ回路200Nが用いられている。
正相入力信号VinPのサンプリングおよび残差増幅を行う容量回路100Pの出力ノードNoutPに接続されたソースフォロワ回路200Pは、入力用の電界効果型トランジスタ(以下、MOSFETと称する)21Pと電流源用のMOSFET22Pとを含んでいる。同様に、逆相入力信号VinNのサンプリングおよび残差増幅を行う容量回路100Nの出力ノードNoutNに接続されたソースフォロワ回路200Nは、入力用のMOSFET21Nと電流源用のMOSFET22Nとを具備している。これらのMOSFET21P、22P、21Nおよび22Nは、この実施の形態においては、Nチャンネル型のMOSFETである。また、図2に示したMDAC300は、特に制限されないが、周知の半導体製造プロセスによって、1個の半導体装置に形成されている。
ソースフォロワ回路200Pにおける入力用MOSFET21Pは、そのゲート電極が対応する出力ノードNoutPに接続され、そのドレインは電源電圧Vddに接続され、そのソースSは、電流源用MOSFET22Pのドレインに接続されている。電流源用MOSFET22Pのソースは接地電圧Vsに接続され、そのゲートには所定のバイアス電圧Vbが供給されている。このソースフォロワ回路200Pの出力信号VoutPは、入力用MOSFET21PのソースSから取り出される。また、入力用MOSFET21Pおよび電流源用MOSFET22PのそれぞれのバックゲートBは、対応するMOSFETのソースに接続されている。
ソースフォロワ回路200Pと同様に、ソースフォロワ回路200Nにおける入力用MOSFET21Nは、そのゲート電極が対応する出力ノードNoutNに接続され、そのドレインは電源電圧Vddに接続され、そのソースSは、電流源用MOSFET22Nのドレインに接続されている。電流源用MOSFET22Nのソースは接地電圧Vsに接続され、そのゲートには所定のバイアス電圧Vbが供給されている。このソースフォロワ回路200Nの出力信号VoutNも、入力用MOSFET21NのソースSから取り出される。また、入力用MOSFET21Nおよび電流源用MOSFET22NのそれぞれのバックゲートBは、対応するMOSFETのソースに直接接続されている。
それぞれのソースフォロワ回路200Pおよび200Nの出力信号VoutPおよびVoutNの過渡応答波形が、残差増幅期間内で収束するように、上記した入力用MOSFET21P、21Nのゲート幅と電流源用MOSFET22P、22Nの電流値が調整される。この場合、電流源用MOSFET22P、22Nの電流値は、バイアス電圧Vbの値を調整することにより、調整できる。このように、残差増幅期間内で、それぞれの出力電圧の波形が収束するようにすることで、次のサンプリングを開始するタイミングを早くすることが可能となる。
また、入力用MOSFET21P(21N)のバックゲートBを、そのMOSFET21P(21N)のソースSに直接的に接続することにより、入力用MOSFET21P(21N)において基板バイアス効果を低減している。これにより、ソースフォロワ回路200P(200N)の電圧利得を1に近づけるようにすることができる。
このように、Nチャンネル型MOSFETを入力用MOSFET21P(21N)とし、バックゲートをソースに接続するためには、この入力用MOSFET21P(21N)を形成するためのPチャンネル型ウェルを、半導体装置の半導体基板に形成することが必要とされる場合がある。そのため、バックゲートBをソースSではなく、接地電圧Vsに接続することが考えられる。この場合には、入力用MOSFET21P(21N)に基板バイアス効果が生じ、ソースフォロワ回路200P(200N)の電圧利得が1よりも小さくなるが、通常知られているデジタル補正技術により、その影響を補償できるため、勿論、そのように実現してもよい。
また、Nチャンネル型MOSFETではなく、Pチャンネル型MOSFETを用いて、ソースフォロワ回路200P、200Nを構成することも考えられる。Pチャンネル型MOSFETは、Nチャンネル型MOSFETに比べると、応答速度が劣るが、低雑音の特性を有する。また、Pチャンネル型MOSFETを、入力用MOSFETとした場合には、周知の半導体製造プロセスを用いてNチャンネル型ウェル上に形成できるため、そのバックゲートとソースとを直接接続することが可能である。
この実施の形態2に示したように、ソースフォロワ回路200Pおよび200Nをバッファ回路として用いることにより、ソースフォロワ回路の持つ低消費電力で高速な過渡応答を利用することができ、結果としてサイクリック型アナログデジタル変換器の低消費電力化と高速性の向上を図ることが可能となる。また、この実施の形態2においても、入力用MOSFET21P(21N)のゲートとソースとの間は電気的に分離されているため、電荷分散により容量回路に保持されている電荷が破壊されるのを防ぐことが可能である。
なお、図が複雑になるのを避けるために、図2では、電源ノードNvd、Nvsは省略されている。
(実施の形態3)
図4(a)は、実施の形態3に係わるサイクリック型アナログデジタル変換器402の構成を示すブロック図である。また、図4(b)は、サイクリック型アナログデジタル変換器402の動作を示すタイミング図である。
図4(a)において、400aおよび400bは、乗算型デジタルアナログ変換回路である。この乗算型デジタルアナログ変換回路400aおよび400bのそれぞれには、図1あるいは図2に示したMDAC300が用いられる。また、同図において、301は、アナログ回路であり、図3に模式的に示したアナログ回路と同様な構成を有している。303も、図3に示したスイッチと同様な構成を有するスイッチである。
図1および図3を用いて説明した実施の形態1においては、1段のMDAC300によって、サイクリック型アナログデジタル変換器が構成されていた。これに対して、実施の形態3においては、図1あるいは図2に示したMDAC300と同様な構成および同様な動作を行うMDAC400aおよび400bが2段直列に接続されて、サイクリック型アナログデジタル変換器402が構成されている。
MDAC400aおよび400bの構成および動作は、実施の形態1あるいは実施の形態2で説明したMDAC300と同様であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
MDAC400aの入力ノードNinは、スイッチ303に接続されている。アナログ回路301から出力されるアナログ信号である入力信号VinP、VinNをデジタル信号へ変換する際、スイッチ303によって、入力信号VinP、VinNが、MDAC400aの入力ノードNinに取り込まれる。この取り込まれた入力信号VinP、VinNをデジタル信号に変換している期間では、スイッチ303のノード303Cとノード303bとが接続される。これにより、デジタル信号へ変換している期間においては、入力信号VinP、VinNに関する信号が、MDAC400a、バッファ回路401a、MDAC400bおよびバッファ回路401b、スイッチ303からなる閉ループを循環する。すなわち、入力信号VinP、VinNに関する信号を処理する観点では、これらの回路およびスイッチ303が直列に接続されている。ここで、バッファ回路401aおよび401bは、図1および図2に示したバッファ回路あるいはソースフォロワ回路である。
図4(b)には、MDAC400aおよび400bの動作タイミングが示されている。図4(b)において、上側には、MDAC400aの動作タイミングが示されており、下側には、MDAC400bの動作タイミングが示されている。それぞれのMDAC400a、400bは、図1および図3で述べたように、サンプリング期間と、それに続く残差増幅期間とで動作を行う。すなわち、サンプリング期間で、粗量子化と、完全差動サンプリングの動作を行い、残差増幅期間で、残差の増幅動作を行う。
先ず、サンプリング期間1Sにおいて、スイッチ303を介してMDAC400aが、入力信号VinP、VinNを完全差動サンプリングし、またこの期間で粗量子化を行う。サンプリング期間1Sに続く残差増幅期間1Aにおいて、MDAC400aは、残差の増幅動作を行い。増幅された残差は、出力ノードNoutからバッファ401aを介して、MDAC400bの入力ノードNinに伝達される。残差増幅期間1Aにおいても、MDAC400aの出力は、バッファ回路401aを介して、MDAC400bの入力ノードNinに伝達されるため、MDAC400bは、MDAC400aの残差増幅期間1Aと重なったときから、サンプリング期間2Sを開始する。MDAC400bは、サンプリング期間2Sで完全差動サンプリングと粗量子化を行い、続く残差増幅期間2Aにおいて、残差の増幅を行う。この残差増幅期間2Aのときから、MDAC400bの出力は、バッファ回路401bおよびスイッチ303を介して、MDAC400aの入力ノードNinに伝達される。これにより、MDAC400bの残差増幅期間2AとMDAC400aのサンプリング期間3Sとが重なっている。以降、Nビットのデジタル信号が得られるまで、サンプリング期間と残差期間が重なるように処理が行われる。すなわち、パイプライン的に処理が実行される。これにより、変換されたデジタル信号において、最上位ビットから数えて奇数番目のビットはMDAC400aで、偶数番目のビットはMDAC400bで変換処理される。この実施の形態においては、乗算型デジタルアナログ変換回路を2段で動作させることにより、変換レートを2倍にできる利点がある。
また、バッファ回路401aおよび401bによって、2段のMDAC400a、400b間の入力ノードNinと出力ノードNout間は電気的に分離されている。例えば、MDAC400aの出力ノードNoutとMDAC400bの入力ノードNinとの間は、バッファ回路401aによって電気的に分離されている。これにより、残差増幅期間とサンプリング期間とが重なっても、MDAC400aの容量回路と、MDAC400bの容量回路との間で電荷分散が発生するのを防ぐことが可能となる。例えば、残差増幅期間1Aにおいて、MDAC400aの容量回路に保持している電荷が、サンプリング期間2Sと重なっても、MDAC400bの容量回路との電荷分散が行われない。これにより、MDAC400aは、正確な電圧を、残差増幅期間1Aの間維持することが可能となり、精度の低下の抑制と、変換レートの向上が図れる。
(実施の形態4)
図5は、実施の形態4に係わる乗算型デジタルアナログ変換回路500の構成を示す回路図である。実施の形態4においては、実施の形態1あるいは実施の形態2において説明したMDAC300に比べて、高い残差増幅率Gを有する乗算型デジタルアナログ変換回路が提供される。実施の形態1あるいは2では、残差増幅率Gは、ほぼ2倍であったが、この実施の形態4によれば、ほぼ4倍の残差増幅率Gを有する乗算型デジタルアナログ変換回路が提供される。図5に示すMDAC500は、図3あるいは図4に示したサイクリック型アナログデジタル変換器に用いられる。すなわち、MDAC500は、図3の場合、MDAC300として用いられ、図4の場合、MDAC401aおよび401bとして用いられる。
図5において、MDAC500は、正相入力信号VinPおよび逆相入力信号VinNを粗く量子化する粗量子化器510と、粗量子化器510の出力に従って制御信号PC1〜PC6およびNC1〜NC6を生成する制御部511とを具備する。さらに、MDAC500は、正相入力信号VinPおよび逆相入力信号VinNをサンプリングし、増幅を行う容量回路501Pおよび501Nと、制御部511からの制御信号PC1〜PC6およびNC1〜NC6に基づいて、容量回路501Pおよび501Nへ供給される電圧を定める電圧供給部502Pおよび502Nを具備する。特に制限されないが、この実施の形態4においても、MDAC500の出力ノードNoutPおよびNoutNには、バッファ回路17Pおよび17Nの入力が接続されている。図5には、これらのバッファ回路17Pおよび17Nも、MDAC500とともに描かれている。
容量回路501Pおよび501Nは、互いに同様な構成を有しているので、容量回路501Pについて、先ず詳細に説明する。容量回路501Pは、2倍以上の残差増幅率G(この実施の形態においてはほぼ4倍の残差増幅率G)を得るために、2個の容量バンクを有している。同図では図面が複雑になるのを避けるために、特に明示していないが、2個の容量バンクの内の一方の容量バンクを第1容量バンクBK1とし、他方の容量バンクを第2容量バンクBK2として説明する。
第1容量バンクBK1は、それぞれの第1電極P1が出力ノードNoutPに接続された複数の容量素子を含み、第2容量バンクBK2は、それぞれの第1電極P1が、スイッチを介して第1容量バンクBK1内の対応する容量素子の第2電極P2に接続された複数の容量素子を含んでいる。図5に沿って説明すると、第1容量バンクBK1は、出力ノードNoutPに第1電極P1が接続された容量素子52P、61P、62P、63P、64P、65Pおよび66Pを有している。また、第2容量バンクBK2は、スイッチ41P、42P、43P、44P、45P、46Pおよび47Pをそれぞれ介して、対応する容量素子52P、61P、62P、63P、64P、65Pおよび66Pのそれぞれの第2電極P2に、それぞれ第1電極P1が接続された容量素子53P、71P、72P、73P、74P、75Pおよび76Pを有している。
第1容量バンクBK1に含まれる容量素子52P、61P、62P、63P、64P、65Pおよび66Pのそれぞれの第1電極P1は、スイッチ31Pを介して入力ノードNinPに接続され、容量素子52P、61P、62P、63P、64P、65Pおよび66Pのそれぞれの第2電極P2は、複数のスイッチ群によって構成されたスイッチ列39Pを介して入力ノードNinNに接続されている。また、第2容量バンクBK2に含まれる容量素子53P、71P、72P、73P、74P、75Pおよび76Pのそれぞれの第2電極P2は、上記した複数のスイッチ群によって構成されたスイッチ列39Pに接続されている。同図から判るように、第1容量バンクBK1に含まれる容量素子のそれぞれの第2電極P2と、第2容量バンクBK2に含まれる容量素子のそれぞれの第2電極は、スイッチ列39に含まれるスイッチ群において、互いに異なるスイッチを介して、入力ノードNinNに接続されている。
また、第2容量バンクBK2に含まれる容量素子53P、71P、72P、73P、74P、75Pおよび76Pのそれぞれの第1電極は、スイッチ32P、33P、34P、35P、36P、37Pおよび38Pを介して入力ノードNinPに接続されている。さらに、第2容量バンクBK2における容量素子53Pの第2電極P2は、スイッチ82Pを介して電源電圧Vddに接続され、容量素子71P、72P、73P、74P、75Pおよび76Pのそれぞれの第2電極P2は、それぞれスイッチ83P、84P、85P、86P、87Pおよび88Pを介して電圧供給部502Pの出力に接続されている。
さらに、容量回路501Pは、出力ノードNoutPに接続された第1電極P1と、スイッチ列39P内のスイッチを介して入力ノードNinNに接続され、スイッチ81Pを介して電源電圧Vddに接続された第2電極P2とを有する容量素子51Pを具備している。
電圧供給部501Pは、この実施の形態4においては、複数のインバータ回路91P、92P、93P、94P、95Pおよび96Pを有しており、それぞれのインバータ回路は、電源ノードNvdおよびNvsに接続され、電源ノードNvd、Nvsから給電される電源電圧Vdd、接地電圧Vsを動作電圧として動作する。すなわち、インバータ回路91P〜96Pのそれぞれは、共通の電源電圧により動作する。
インバータ回路91P〜96Pには、制御部511からの制御信号PC1〜PC6が入力される。これにより、インバータ回路91Pは、制御信号PC1の電圧に対して反転した電圧をスイッチ83Pへ供給する。この場合、インバータ回路91Pは、電源ノードNvdあるいはNvsに給電されている電源電圧VddあるいはVsをスイッチ83Pへ供給することになる。同様に、インバータ回路92Pは、制御信号PC2を反転した信号の電圧をスイッチ84Pへ供給し、インバータ回路93Pは、制御信号PC3を反転した信号の電圧をスイッチ85Pへ供給する。また、インバータ回路94Pは、制御信号PC4を反転した信号の電圧をスイッチ86Pへ供給し、インバータ回路95Pは、制御信号PC5を反転した信号の電圧をスイッチ87Pへ供給し、インバータ回路96Pは、制御信号PC6を反転した信号の電圧をスイッチ88Pへ供給する。
実施の形態1あるいは実施の形態2と同様に、入力ノードNinPには、正相入力信号VinPが供給され、入力ノードNinNには、逆相入力信号VinNが供給される。この実施の形態4において、入力ノードNinPおよびNinNは、MDAC500の入力ノードであるとともに、容量回路501Pおよび501Nの入力ノードでもある。また、出力ノードNoutPは、MDAC500の出力ノードであるとともに、容量回路501Pの出力ノードでも有り、出力ノードNoutNは、MDAC500の出力ノードであるとともに、容量回路501Nの出力ノードでも有る。
出力ノードNoutPおよびNoutNは、バッファ回路17P、17Nの入力に接続される。このバッファ回路17Pおよび17Nは、図3では、バッファ回路302に相当し、図4では、バッファ回路401aあるいは401bに相当する。入力ノードNinPに正相入力信号VinPが供給され、入力ノードNinNに逆相入力信号VinNが供給されることにより、出力ノードNoutPからは、正相入力信号VinPに応じた残差の増幅された残差増幅信号が出力され、出力ノードNoutNからは、逆相入力信号VinNに応じた残差増幅信号が出力される。これにより、出力ノードNoutP、NoutN間には、残差増幅信号の差動信号が出力されることになる。この差動信号は、バッファ回路17P、17N(例えば,図3では302が該当)を介して、スイッチ303に供給される。その後、図3の例では、MDAC500の入力ノードNinP、NinNへ帰還される。
第2容量回路501Nも、第1容量回路501Pと同様に、図示はしていないが、第1容量バンクBK1と第2容量バンクBK2を有している。第1容量バンクBK1は、出力ノードNoutNに第1電極が接続された容量素子52N、61N〜66Nを有し、第2容量バンクBK2は、スイッチ41N〜47Nを介して容量素子52N、61N〜66Nの第2電極P2に接続された容量素子53N、71N〜76Nを有している。第1容量バンクBK1の容量素子52N、61N〜66Nの第2電極P2は、複数のスイッチ群により構成されたスイッチ列39Nを介して入力ノードNinPに接続されている。また、第2容量バンクBK2の容量素子53N、71N〜76Nの第1電極P1は、スイッチ32N〜38Nを介して入力ノードNinNに接続されている。さらに、これらの容量素子53N、71N〜76Nの第2電極P2はスッチ列39Nを介して入力ノードNinPに接続され、容量素子53Nの第2電極P2は、スイッチ82Nを介して電源電圧Vddに接続され、容量素子71N〜76Nの第2電極P2は、スイッチ83N〜88Nを介して電圧供給部501Nの出力に接続されている。
また、容量回路501Nは、その第1電極P1が出力ノードNoutNに接続され、その第2電極P2が、スイッチ列39Nを介して入力ノードNinPに接続され、さらにスイッチ81Nを介して電源電圧にVddに接続された容量素子51Nを含んでいる。
電圧供給部501Nは、電圧供給部501Pと同様に、複数のインバータ回路91N〜96Nを含んでおり、それぞれの動作電源が、電源ノードNvd、Nvsから共通に給電される。これらのインバータ回路91N〜96Nには、制御部511からの制御信号NC1〜NC6が供給され、インバータ回路91N〜96Nは、制御信号NC1〜NC6に対して反転した電圧をスイッチ83N〜88Nへ供給する。なお、インバータ回路91N〜96Nのそれぞれが、スイッチ83N〜88Nのそれぞれへ供給する電圧は、電源ノードNvd、Nvsに給電される電源電圧あるいは接地電圧に相当する電圧である。
この実施の形態4において、上記した容量素子51Pおよび51Nのそれぞれの容量値をC1とし、容量素子52P、52N、53Pおよび53Nのそれぞれの容量値をC2とする。また、第1容量バンクBK1に含まれる容量素子61P〜66Pおよび61N〜66Nのそれぞれの容量値をC3とし、第2容量バンクBK2に含まれる容量素子71P〜76Pおよび71N〜76Nのそれぞれの容量値もC3とする。
次に、この実施の形態4に係わるMDAC500の動作について説明する。
このMDAC500も、実施の形態1あるいは2と同様に、サンプリング期間と残差増幅期間に分けて動作する。
サンプリング期間においては、スイッチ31P〜38P、31N〜38N、スイッチ列39Pおよび39Nがオン状態にされ、残りのスイッチ41P〜47P、41N〜47N、81P〜88Pおよび81N〜88Nのそれぞれは、オフ状態にされる。これにより、容量回路501P内の第1容量バンクBK1における容量素子52P、61P〜66Pおよび容量回路501P内の第2容量バンクBK2における容量素子53P、71P〜76Pのそれぞれの第1電極P1に正相入力信号VinPが供給され、それぞれの第2電極P2に逆相入力信号VinNが供給される。また、容量回路501P内の容量素子51Pの第1電極P1にも、正相入力信号VinPが供給され、その第2電極P2には、逆相入力信号VinNが供給される。すなわち、各容量素子の1対の電極P1、P2には、正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNとが印加されることになり、完全差動でサンプリングが行われる。
一方、このとき、容量回路501N内の第1容量バンクBK1における容量素子52N、61N〜66Nおよび第2容量バンクBK2における容量素子53N、71N〜76Nのそれぞれの第1電極P1には、逆相入力信号VinNが供給され、それぞれの第2電極P2には、正相入力信号VinPが供給される。また、このとき、容量回路501Nにおける容量素子51Nの第1電極P1には、逆相入力信号VinNが供給され、その第2電極P2には、正相入力信号VinPが供給される。すなわち、各容量素子の1対の電極P1、P2には、逆相入力信号VinNと正相入力信号VinPとが印加されることになり、完全差動でサンプリングが行われる。その結果として、各容量素子の容量値を小さくしても、保持されている電荷量は維持することが可能となり、占有面積の増加を防ぐことが可能となる。
実施の形態1および2においても、同様であるが、容量回路501Pにおいて出力ノードNoutPに、その第1電極P1が接続されている容量素子51P、52Pおよび61P〜66Pの第1電極P1には、サンプリング期間、正相入力信号VinPが供給される。これに対して、容量回路501Nにおいては、出力ノードNoutNに第1電極P1が接続された容量素子51N、52Nおよび61N〜66Nの第1電極P1には、サンプリング期間、逆相入力信号VinNが供給される。これにより、容量回路501Pは、正相入力信号VinPに関する残差増幅信号を出力ノードNoutPに出力し、容量回路501Nは、逆相入力信号VinNに関する残差増幅信号を出力ノードNoutNに出力することになる。
このサンプリング期間においては、入力ノードNinPおよびNinNに供給されている正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNに対して、粗量子化器510によって、粗い量子化が行われる。図5では、入力ノードVinP、VinNと粗量子化器510の入力とが分離しているように描かれているが、粗量子化器510の入力は、入力ノードNinP、NinPに結合されているものと理解されたい。
粗量子化器510による量子化は、実施の形態1で述べたところの粗量子化器114による量子化と類似しているが、この実施の形態4においては、7値の量子化が行われる。すなわち、実施の形態1では、正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNとの間の差電圧(VinP−VinN)が、(a)基準電圧Vref/4よりも大きいか、(b)基準電圧Vref/4と基準電圧―Vref/4との間に存在するか、あるいは(c)基準電圧―Vref/4よりも小さいかを判定し、入力信号の量子化を行っていた。
これに対して、この実施の形態4では、粗量子化器510は、入力差動信号の差電圧(VinP−VinN)が、次の電圧範囲のいずれに存在するかを判定し、量子化を行う。すなわち、差電圧(VinP−VinN)が、(a1)5Vref/8以上か、(a2)5Vref/8と3Vref/8の間に存在するか、(a3)3Vref/8とVref/8の間に存在するか、(b)Vref/8と−Vref/8の間に存在するか、(c3)−Vref/8と−3Vref/8の間に存在するか、(c2)−3Vref/8と−5Vref/8の間に存在するか、(c1)−5Vref/8以下かを判定する。
粗量子化器510は、差電圧が(a1)と判定した場合、出力するデジタル信号Diの値を“3”とし、差電圧が(a2)と判定した場合、出力するデジタル信号Diの値を“2”とし、差電圧が(a1)と判定した場合、出力するデジタル信号Diの値を“1”とする。また、粗量子化器510は、差電圧が(b)と判定した場合、出力するデジタル信号Diの値を“0”とし、差電圧が(c3)と判定した場合、出力するデジタル信号Diの値を“−1”とし、差電圧が(c2)と判定した場合、出力するデジタル信号Diの値を“−2”とし、差電圧が(c1)と判定した場合、出力するデジタル信号Diの値を“−3”とする。このような量子化により得られたデジタル信号Diは、サイクリック型アナログデジタル変換器から出力される。また、粗量子化器510から時系列的に出力される複数のデジタル信号Diに対して所定の処理を行うことにより、2値のデジタル信号へ変換される。さらに、粗量子化器510からの出力であるデジタル信号Diは、制御部511に供給される。
サンプリング期間に続く残差増幅期間においては、スイッチ31P〜38P、31N〜38N、およびスイッチ列39P、39Nがオフ状態にされる。一方、スイッチ41P〜47P、81P〜88P、スイッチ41N〜47N、および81N〜88Nがオン状態にされる。これにより、容量回路501Pにおいては、第1容量バンクBK1の容量素子52Pおよび61P〜66Pのそれぞれの第2電極P2に、第2容量バンクBK2の容量素子53Pおよび71P〜76Pのそれぞれの第1電極P1が接続されることになる。すなわち、第1容量バンクにおける容量素子と第2容量バンクBK2における容量素子とが直列接続されることになる。同様に、容量回路501Nにおいても、第1容量バンクBK1の容量素子52Nおよび61N〜66Nのそれぞれの第2電極P2に、第2容量バンクBK2の容量素子53Nおよび71N〜76Nのそれぞれの第1電極P1が接続されることになる。これにより、容量回路501Nにおいても、第1容量バンクBK1における容量素子と第2容量バンクBK2における容量素子とが直列接続されることになる。
残差増幅期間において、直列接続される容量素子の例を述べるならば、容量回路501Pでは、容量素子52Pの第2電極P2が、容量素子53Pの第1電極P1に接続され、容量素子66Pの第2電極P2が、容量素子76Pの第1電極P1に接続される。同様に、容量回路501Nでは、容量素子52Nの第2電極P2が、容量素子53Nの第1電極P1に接続され、容量素子66Nの第2電極P2が、容量素子76Nの第1電極P1に接続される。
残差増幅期間においては、スイッチ81P〜82Pおよび81N〜82Nがオン状態にされるため、容量回路501Pにおける容量素子51Pは、電源電圧Vddと出力ノードNoutPとの間に接続されることになる。また、容量回路501Pにおける容量素子52Pおよび53Pは、電源電圧Vddと出力ノードNoutPとの間に直列接続されることになる。同様に、容量回路501Nにおける容量素子51Nは、電源電圧Vddと出力ノードNoutNとの間に接続されることになる。また、容量回路501Nにおける容量素子52Nおよび53Nは、電源電圧Vddと出力ノードNoutNとの間に直列接続されることになる。
これらの容量素子51P〜53P(51N〜53N)は、出力ノードNoutP(NoutN)におけるコモン電圧Vcmを適切に設定するために、用いられる。このコモン電圧Vcmは、バッファ回路17P(17N)の動作点を考慮して定めることが望ましい。実施の形態1、2において述べた容量素子12P、13P、12N、13Nも、コモン電圧Vcmを適切に設定するために用いられる。なお、コモン電圧Vcmの調整方法は、図5に示した構成と方法以外にも様々なバリエーションが考えられ、勿論、そのいずれにおいても本発明は有効である。
残差増幅期間において、スイッチ83P〜88Pおよび83N〜88Nがオン状態にされるため、第2容量バンクBK2内の容量素子71P〜76Pのそれぞれの第2電極P2には、スイッチ83P〜88Pを介して、電圧供給部502Pからの電圧が供給される。同様に、第2容量バンクBK2内の容量素子71N〜76Nのそれぞれの第2電極P2には、スイッチ83N〜88Nを介して、電圧供給部502Nからの電圧が供給される。この実施の形態4においては、インバータ回路91P〜96Pの出力電圧が、対応する容量素子71P〜76Pの第2電極P2に印加され、インバータ回路91N〜96Nの出力電圧が、対応する容量素子71N〜76Nの第2電極P2に印加される。ここで、それぞれのインバータ回路は、供給される制御信号PC1〜PC6、PN1〜PN6に従って電源ノードNvdに給電されている電源電圧Vddあるいは電源ノードNvsに給電されている接地電圧Vsを出力電圧として、対応する容量素子の第2電極P2に印加することになる。
残差増幅期間において、制御部511は、粗量子化器510から出力されるデジタル信号Diに従って、制御信号PC1〜PC6およびNC1〜NC6を生成する。この実施の形態4においては、制御部511は、デジタル信号Diが“3”のとき(a1)、正相側の容量回路501Pにおける第2容量バンクBK2の6個の容量素子71P〜76Pのそれぞれの第2電極P2に、インバータ回路91P〜96Pから接地電圧Vs(グランド)の出力電圧が印加されるような制御信号PC1〜PC6を生成する。このとき、逆相側の容量回路501N内の第2容量バンクBK2における6個の容量素子71N〜76Nのそれぞれの第2電極P2に、インバータ回路91N〜96Nから電源電圧Vddの出力電圧が印加されるような制御信号NC1〜NC6を生成する。
また、デジタル信号Diが“2”のとき(a2)、制御部511は、容量回路501P内の第2容量バンクBK2における容量素子71P〜76Pのうち、5個の容量素子の第2電極P2に、インバータ回路から接地電圧Vsの出力が印加され、残りの1個の容量素子の第2電極P2に、インバータ回路から電源電圧Vddの出力が印加されるような制御信号PC1〜PC6を生成する。このとき、制御部511は、容量回路501Nの第2容量バンクBK2における容量素子71N〜76Nのうち、5個の容量素子の第2電極P2に、インバータ回路から電源電圧Vddの出力が印加され、残りの1個の容量素子の第2電極P2に、インバータ回路から接地電圧Vsの出力が印加されるような制御信号NC1〜NC6を生成する。
デジタル信号Diが“1”のとき(a3)、制御部511は、容量回路501P内の第2容量バンクBK2における容量素子71P〜76Pのうち、4個の容量素子の第2電極P2に、接地電圧Vsの出力がインバータ回路から印加され、残りの2個の容量素子の第2電極P2に、電源電圧Vddの出力がインバータ回路から印加されるような制御信号PC1〜PC6を生成する。このとき、容量回路501Nの第2容量バンクBK2における容量素子71N〜76Nのうち、4個の容量素子の第2電極P2に、電源電圧Vddの出力が印加され、残りの2個の容量素子の第2電極P2に、接地電圧Vsの出力が印加されるような制御信号NC1〜NC6を生成する。
デジタル信号Di=0のとき(b)、制御部511は、容量回路501P内の第2容量バンクBK2における容量素子71P〜76Pのうち、3個の容量素子の第2電極P2に、接地電圧Vsの出力がインバータ回路から印加され、残りの3個の容量素子の第2電極P2に、電源電圧Vddの出力がインバータ回路から印加されるような制御信号PC1〜PC6を生成する。このとき、容量回路501N内の第2容量バンクBK2における容量素子71N〜76Nのうち、3個の容量素子の第2電極P2に、電源電圧Vddの出力がインバータ回路から印加され、残りの3個の容量素子の第2電極P2に、接地電圧Vsの出力がインバータ回路から印加されるような制御信号NC1〜NC6を生成する。
デジタル信号Diが“−1”のとき(c3)、制御部511は、容量回路501P内の第2容量バンクBK2における容量素子71P〜76Pのうち、2個の容量素子の第2電極P2に、接地電圧Vsの出力がインバータ回路から印加され、残りの4個の容量素子の第2電極P2に、電源電圧Vddの出力がインバータ回路から印加されるような制御信号PC1〜PC6を生成する。また、このときには、容量回路501N内の第2容量バンクBK2における容量素子71N〜76Nのうち、2個の容量素子の第2電極P2に、電源電圧Vddの出力がインバータ回路から印加され、残りの4個の容量素子の第2電極P2に、接地電圧Vsの出力がインバータ回路から印加されるような制御信号NC1〜NC6を生成する。
デジタル信号Diが“−2”のとき(c2)、制御部511は、容量回路501P内の第2容量バンクBK2における容量素子71P〜76Pのうち、1個の容量素子の第2電極P2に、接地電圧Vsの出力がインバータ回路から印加され、残りの5個の容量素子の第2電極P2に、電源電圧Vddの出力がインバータ回路から印加されるような制御信号PC1〜PC6を生成する。このとき、容量回路501N内の第2容量バンクBK2における容量素子71N〜76Nのうち、1個の容量素子の第2電極P2に、電源電圧Vddの出力がインバータ回路から印加され、残りの5個の容量素子の第2電極P2に、接地電圧Vsの出力がインバータ回路から印加されるような制御信号NC1〜NC6を生成する。
最後に、デジタル信号Diが“−3”のとき(c1)、制御部511は、容量回路501P内の第2容量バンクBK2における全ての容量素子71P〜76Pの第2電極P2に、電源電圧Vddの出力がインバータ回路から印加されるような制御信号PC1〜PC6を生成する。このとき、制御部511は、容量回路501N内の第2容量バンクBK2における全ての容量素子71N〜76Nの第2電極P2に、接地電圧Vsの出力がインバータ回路から印加されるような制御信号NC1〜NC6を生成する。
この実施の形態4によれば、サンプリング期間においては、容量回路501P(501N)内の第1容量バンクBK1における容量素子61P〜66P(61N〜66N)と第2容量バンクBK2における容量素子71P〜76P(71N〜76N)とが、並列的に完全差動サンプリングによって充電される。サンプリング期間に続く残差増幅期間においては、それぞれ充電された第1容量バンクBK1における容量素子61P〜66P(61N〜66N)と第2容量バンクBK2における容量素子71P〜76P(71N〜76N)とが直列接続される。これにより、出力ノードNoutP(NoutN)における電圧を2倍以上にすることが可能となる。また、粗量子化器の出力は、電圧供給回路によって容量回路に与えられ、出力ノードNoutP(NoutN)における電圧に反映される。
上述した動作により、バッファ回路17Pの出力電圧VoutPとバッファ回路17Nの出力電圧VoutNとの差電圧Vout、すなわち、MDAC500の出力電圧Voutは式(7)に従う。ここで、MDACの利得Gは4に近い値となる。また、Vinは、正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNとの差電圧であり、Vrefは式(3)と同様にVddと各容量比で表される。
この実施の形態4においても、実施の形態1と同様に、サンプリングに用いる容量が複数の容量素子により構成され、残差増幅期間に、容量素子の第2電極P2に電源電圧Vddまたは接地電圧Vsを印加することにより、粗量子化器510の出力が反映される。このとき、基準電圧Vrefは、サンプリングに用いられる複数の容量素子の容量比によって等価的に設定される。見方を変えると、電源電圧Vddと接地電圧Vsとの間の電圧差を容量比に従った電圧分圧を行い、さらに、それを相補的な動作を行う差動回路構成とすることで、等価的に基準電圧Vrefが設定される。これにより、電圧供給部502P、502Nは、電源電圧Vddあるいは接地電圧Vsを、残差増幅期間において、サンプリングに用いる複数の容量素子へ印加すれば良く、別途、高精度の基準電圧発生回路を持つ必要が無くなり、消費電力を削減することができる。また、サンプリングは、完全差動サンプリングで行われるため、サンプリングに用いる容量素子の容量値を1/4に低減でき、占有面積の増加を抑制することが可能となる。
実施の形態4では、さらに、第1容量バンクBK1と第2容量バンクBK2とを、残差増幅期間において、直列的に接続するようにしているため、MDAC500の電圧増幅率Gを、ほぼ4倍にできる。これに対して、実施の形態1では、前記した基本概念によりほぼ2倍の増幅率が得られる。これに加え、実施の形態4では、第1容量バンクBK1と第2容量バンクBK2とを直列接続することで、更にほぼ2倍の電圧増幅率を得ることができる。その結果として、トータルでほぼ4倍(G≒4)の残差増幅率を得ることが可能となる。残差増幅期間での増幅率を高くすることにより、式(1)から理解されるように、変換回数を減らすことが可能となる。例えば、実施の形態1では、増幅率Gはほぼ2である。これに対して、この実施の形態4では、増幅率Gはほぼ4である。そのため、半分の変換回数Nで、式(1)の最終項における分数の分母の値は、実施の形態1と実施の形態4とで同じ値となる。そのため、実施の形態1(G=2)の場合と比較して、半分の変換回数Nで同程度の変換誤差を実現できる。
変換回数Nが半分で済むため、同じ変換レートであれば、各ビットの変換処理時間を2倍に拡大できる。その結果、バッファ回路17P、17Nの過渡応答時間を2倍に緩和できるため、バッファ回路の消費電力を低減でき、サイクリック型アナログデジタル変換器のさらなる電力低減が可能になる。一方で、実施の形態1は、この実施の形態に比べ、スイッチおよび容量素子等の素子数が少なく、またその構造も単純なため、占有面積をより低減できると言う効果がある。
(実施の形態5)
図6(a)は、実施の形態5に係わるサイクリック型アナログデジタル変換器600の構成を示すブロック図であり、図6(b)は、サイクリック型アナログデジタル変換器600の動作を示すタイミング図である。この実施の形態5に係わるサイクリック型アナログデジタル変換器600は、実施の形態3において示したサイクリック型アナログデジタル変換器402と類似しているので、相違点を主に説明する。
図6(a)において、601aおよび601bのそれぞれは、乗算型デジタルアナログ変換回路であり、実施の形態1、2あるいは4において述べたMDACが用いられている。同図において、17Aおよび17Bは、バッファ回路であり、それぞれのバッファ回路17A、17Bが、バッファ回路17P,17N(実施の形態1あるいは4)あるいは200P、200N(実施の形態2)を含んでいる。また、63および64は、スイッチであり、機能的には実施の形態3に示したスイッチ303に相当する。
この実施の形態では、サイクリック型アナログデジタル変換器600において入力信号Vinを受ける入力バッファ回路として、MDAC601bに付随するバッファ回路17Bが流用される。一般的に、アナログデジタル変換器はサンプリング動作にともないキックバックと呼ばれる前段回路への信号の逆流が起こる。そのため、キックバックを防止するために、入力バッファ回路がアナログデジタル変換器の直前に設けられる。
この実施の形態では、実施の形態1、2あるいは4で述べた乗算型デジタルアナログ変換回路が、MDAC601a、601bとして用いられ、バッファ回路17Aを介して直列に2段接続されている。サイクリック型アナログデジタル変換器600の基本的な動作は、実施の形態3において説明した動作と同様である。スイッチ63がオン状態とされたとき、MDAC601aおよび601bは、スイッチ603およびバッファ回路17A、17Bを介して、残差増幅信号がループを描くように帰還される。ここで、例えば、MDAC601aを初段のMDACとして見た場合、初段MDAC601a内の容量回路の出力は、出力ノードNoutからバッファ回路17Aへ供給され、次段MDAC601b内の容量回路の出力は、出力ノードNoutからバッファ回路17Bへ供給されることになる。
この実施の形態においては、次段MDAC601bに付随するバッファ回路17Bと、次段MDAC601bの出力ノードNoutとの間にスイッチ63が接続され、サイクリック型アナログデジタル変換器600の入力となる入力信号Vinと、バッファ回路17Bの入力との間にスイッチ64が接続されている。スイッチ63とスイッチ64とは、マルチプレクサ(選択回路)を構成し、バッファ回路17Bの入力には、入力信号Vinを取り込むとき、スイッチ64がオン状態とされ、スイッチ63はオフ状態とされる。一方、アナログデジタル変換の際には、スイッチ64がオフ状態とされ、スイッチ63がオン状態とされる。これにより、MDAC601bからの残差増幅信号、あるいはサイクリック型アナログデジタル変換器600への入力信号(アナログ入力電圧)Vinのいずれかが、スイッチ63、64によって選択され、バッファ回路17Bに入力される。
すなわち、図6(b)において、入力信号Vinを取り込むサンプリング期間(1S)では、スイッチ64がオン状態にされ、スイッチ63がオフ状態にされることで、当該アナログデジタル変換器600へのアナログ入力電圧がバッファ回路17Bに入力され、バッファ回路17Bを介して、初段のMDAC601aに入力される。このようにすることにより、バッファ回路17Bは、あたかも当該アナログデジタル変換器600の前段に設けられた入力バッファ回路として機能することができる。
このようなことが可能になるのは、サンプリング期間(1S)においては、MDAC601bは残差増幅を行う必要がないからである。なお、図6(b)のタイミング図では、Nビット目の残差増幅期間(NA)と、次の入力信号Vinのサンプリング期間(1S)とが重なっているが、実際は最終ビット(N)では残差増幅不要である(粗量子化の機能だけでよい)。図6(b)において、サンプリング期間(1S)以外の期間においては、スイッチ63がオン状態とされ、スイッチ64がオフ状態とされる。これにより、バッファ回路17Bは、実施の形態1、2あるいは4において述べたバッファ回路(17P、17N、200P、200N相当)として機能することができる。
実施の形態5では、別途必要としていたキックバック防止用の入力バッファをMDAC601bに付随しているバッファ回路で流用できるため、占有面積および消費電力を更に低減することが可能となる。
(実施の形態6)
図13は、実施の形態6に係わる乗算型デジタルアナログ変換回路1300の構成を示す回路図である。MDAC1300は、実施の形態1に係わるMDAC300に類似している。以下の説明では、MDAC300において対応する部分の符号を()内に示して、ここでは、対応する部分の詳しい説明は原則省略する。
図13において、乗算型デジタルアナログ変換回路1300は、正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNとを受ける粗量子化器810(114)、および粗量子化器810からの出力であるデジタル信号Diを受け、このデジタル信号Diに従った制御信号PC1、NC1を生成する制御部811(115)を具備している。さらに、MDAC1300は、正相入力信号に対応した容量回路1301P(100P)、逆相入力信号に対応した容量回路1301N(100N)、および電圧供給部1302P(101P)、1302N(101N)を具備している。同図においても、MDAC1300に付随するバッファ回路17P(17P)および17N(17N)が、示されており、バッファ回路17Pの入力は、容量回路1301Pの出力ノードNoutP(NoutP)に接続され、バッファ回路17Nの入力は、容量回路1301Nの出力ノードNoutN(NoutN)に接続されている。
容量回路1301Pは、出力ノードNoutPにそれぞれの第1電極P1が接続された容量素子802P(12P)、803P(13P)、804Pを具備しており、容量回路1301Nは、出力ノードNoutNにそれぞれの第1電極P1が接続された容量素子802N(12N)、803N(13N)、804Nを具備している。
また、容量回路1301Pは、正相入力信号VinPが供給される入力ノードNinP(NinP)と出力ノードNoutP(MDAC1300の出力ノードにも相当)との間に接続されたスイッチ801P(11P)と、入力ノードNinNと容量素子802P〜804Pのそれぞれの第2電極P2との間にそれぞれ設けられた複数のスイッチから構成されたスイッチ列805P(16P)とを有している。さらに、容量回路1301Pは、容量素子802Pの第2電極P2と電源電圧Vddとの間に接続されたスイッチ806P(18P)と、容量素子803Pの第2電極P2と接地電圧Vsとの間に接続されたスイッチ807P(19P)と、容量素子804Pの第2電極P2と電圧供給部1302Pの出力ノードとの間に接続されたスイッチ809Pとを有している。
容量回路1301Nは、逆相入力信号VinNが供給される入力ノードNinPと容量回路1301Nの出力ノードNoutNとの間に接続されたスイッチ801N(11N)と、入力ノードNinPと容量素子802N〜804Nのそれぞれの第2電極P2との間にそれぞれ設けられた複数のスイッチから構成されたスイッチ列805N(16N)とを有している。さらに、容量回路1301Nは、容量素子802Nの第2電極P2と電源電圧Vddとの間に接続されたスイッチ806N(18N)と、容量素子803Nの第2電極P2と接地電圧Vsとの間に接続されたスイッチ807N(19N)と、容量素子804Nの第2電極P2と電圧供給部1302Nの出力ノードとの間に接続されたスイッチ809Nとを有している。
この実施の形態においても、特に制限されないが、電圧供給部1302P、1302Nのそれぞれは、インバータ回路808P、808Nを有している。電圧供給部1302Pにおけるインバータ回路808Pは、電源ノードNvdに供給される電源電圧Vddと電源ノードNvsに供給される接地電圧Vsとを電源電圧として動作する。
このインバータ回路808Pは、制御部811からの制御信号PC1を受け、位相反転した信号を、スイッチ809Pを介して、容量素子804Pの第2電極P2へ供給する。すなわち、制御信号PC1を位相反転した信号に対応する電源電圧Vddあるいは接地電圧Vsをスイッチ809Pを介して容量素子804Pの第2電極P2へ給電する。同様に、電圧供給部1302Nにおけるインバータ回路808Nも、電圧ノードNvd、Nvsに供給される電源電圧Vddおよび接地電圧Vsを動作電圧として動作し、制御信号NC1を位相反転した信号に対応する電源電圧Vddあるいは接地電圧Vsを、スイッチ809Nを介して容量素子804Nの第2電極P2へ給電する。
実施の形態1と同様に、MDAC1300は、サンプリング期間と残差増幅期間とに分かれて動作する。すなわち、サンプリング期間で動作し、続いて残差増幅期間で動作する。
先ず、サンプリング期間において、正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNが、粗量子化器810により粗く量子化される。この量子化においては、正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNとの間の差電圧(VinP−VinN)が、求められる。一方、粗量子化器810においては、基準電圧Vrefに基づいて予め所定の電圧範囲が定められている。求められた差電圧(VinP−VinN)が、予め定められた電圧範囲のどこに存在するかによって、デジタル信号Diの値が決定される。この実施の形態においては、デジタル信号Diは、2値のデジタル信号であり、差電圧が正であるか負であるかによって、2値信号の“1”あるいは“−1”となる。
制御部811は、デジタル信号Diの値に従って、制御信号PC1およびNC1の電圧を定める。この場合、制御信号PC1とNC1は、相補的な電圧となる。すなわち、制御信号PC1が電源電圧Vddに相当するハイレベル(2値“1”)のとき、制御信号NC1は接地電圧Vs(“0”)となる。
また、サンプリング期間においては、スイッチ801P、801N、スイッチ列805および805Nがオン状態とされ、スイッチ806P、807P、809P、806N、807N、809Nがオフ状態とされる。これにより、容量回路1301Pにおける容量素子802P〜894Pの第1電極P1には、正相入力信号VinPが供給され、第2電極P2には、逆相入力信号VinNが供給される。この結果、容量回路1301Pにおける容量素子のそれぞれの電極間に正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNとの間の電圧差が印加され、充電される。すなわち、完全差動のサンプリングが行われる。同様に、容量回路1301Nにおける容量素子802N〜894Nの第1電極P1には、逆相入力信号VinNが供給され、第2電極P2には、正相入力信号VinPが供給される。この結果、容量回路1301Nにおける容量素子のそれぞれの電極間に逆相入力信号VinNと正相入力信号VinPとの間の電圧差が印加され、充電される。すなわち、完全差動のサンプリングが行われる。
サンプリング期間に続く残差増幅期間においては、スイッチ806P、807P、809P、806N、807Nおよび809Nがオン状態にされ、スイッチ801P、801Nおよびスイッチ列805Pおよび805Nがオフ状態にされる。これにより、入力ノードNinP、NinNと出力ノードNoutP、NoutNとが電気的に分離され、容量素子802Pおよび802Nの第2電極P2は、スイッチ806Pおよび806Nを介して電源電圧Vddに接続され、容量素子803Pおよび803Nの第2電極P2は、スイッチ807Pおよび807Nを介して接地電圧Vsに接続される。
また、残差増幅期間においては、スイッチ809P(809N)を介して、電圧供給部1302P(1302N)の出力、すなわちインバータ回路808P(808N)の出力が、容量素子804P(804N)の第2電極P2に印加される。すなわち、スイッチ809P(809N)を介して、電圧供給部1301P(1301N)の出力であるインバータ回路808P(808N)の出力が、容量素子804P(804N)の第2電極P2に印加される。実施の形態1と同様に、電圧供給部1301P、1301Nには、粗量子化器810の出力(デジタル信号Di)に従った電圧が印加される。具体的には、Di=1の時、PC1は電源電圧Vddに、NC1は接地電圧Vsに、また、Di=−1の時は、PC1は接地電圧Vsに、NC1は電源電圧Vddに設定される。これにより、出力ノードNoutP、NoutNにおける電圧は、粗量子化器810の出力が反映され、増幅された電圧値(残差増幅値)となる。
この実施の形態においても、サンプリングは、完全差動のサンプリングで行われるため、充電される電荷量を維持しつつ、容量回路1301P、1301Nにおける容量素子の小型化が可能となり、占有面積の増加を防ぐことが可能となる。また、この実施の形態においても、容量素子804Pおよび804Nのそれぞれの第2電極P2に印加される電圧は、電源電圧Vddあるいは接地電圧Vsで良いため、電圧供給部1302P、1302Nは、高精度の基準電圧発生回路を必要とせず、占有面積の増加を防ぐことが可能となり、また低消費電力化を図ることが可能である。
この実施の形態において、MDAC1300の出力は、実施の形態1と同様に、バッファ回路17P、17Nを介して伝達される。ここで、MDAC1300の出力は、バッファ回路17Pの出力電圧VoutPとバッファ回路17Nの出力電圧VoutNとの差電圧Vout(=VoutP−VoutN)であり、式(2)にしたがう。
なお、基準電圧Vrefは、実施の形態1と同様に、容量回路に含まれる複数の容量素子802P〜804P(802N〜804N)の容量比を用いて、等価的に設定される。この場合も、今まで述べた実施の形態と同様に、粗量子化器810に供給される基準電圧Vrefは、等価的に定めた基準電圧Vrefに沿った電圧値とされるが、高精度である必要はない。また、実施の形態1と同様に、図13には、上記したスイッチ等を制御するコントローラが設けられているが、同図では省略されている。また、電圧供給部1302P、1302Nと制御部811とを纏めて、制御回路と見なすことが可能であることも、実施の形態1と同様である。
(実施の形態7)
図14は、実施の形態7に係わる乗算型デジタルアナログ変換回路1400の構成を示す回路図である。このMDAC1400は、実施の形態4において述べたMDAC500に類似している。以下の説明では、MDAC500において対応する部分の符号を()内に示して、ここでは、対応する部分の詳しい説明は原則省略する。
MDAC1400は、正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNとを受ける粗量子化器910(510)と、粗量子化器910の出力に基づいて、制御信号PC1、PC2、NC1およびNC2を生成する制御部911(511)とを具備する。また、MDAC1400は、正相入力信号VinPに対応する容量回路4101P(501P)と、逆相入力信号VinNに対応する容量回路1401N(502N)とを具備している。
ここで、容量回路1401Pおよび容量回路1401Nのそれぞれは、図では明示していないが、実施の形態4と同様に、第1容量バンクBK1と第2容量バンクBK2とを有している。この実施の形態における第1容量バンクBK1および第2容量バンクBK2は、実施の形態4と異なり、それぞれの容量バンクに含まれる容量素子の数が少なくなっている。すなわち、容量回路1401Pに含まれる第1容量バンクBK1は、出力ノードNoutPに、その第1電極P1が接続された3個の容量素子907P、909Pおよび911Pを含んでおり、第2容量バンクBK2は、それぞれスイッチ902P〜904Pを介して入力ノードNinPに第1電極P1が接続された3個の容量素子908P、910Pおよび912Pを含んでいる。また、容量回路1401Nに含まれる第1容量バンクBK1は、出力ノードNoutNに、その第1電極P1が接続された3個の容量素子907N、909Nおよび911Nを含んでおり、第2容量バンクBK2は、それぞれスイッチ902N〜904Nを介して入力ノードNinNに第1電極P1が接続された3個の容量素子908N、910Nおよび912Nを含んでいる。さらに、容量回路1401Pは、容量素子906P(51P)を含み、容量回路1401Nは、容量素子906N(51N)を含んでいる。本実施例では、容量素子911P、911N、912P、912Nの容量値は、容量素子909P、909N、910P、910Nの容量値の2倍に選んでいる。
実施の形態4と同様に、容量回路1401P内の第2容量バンクBK2に含まれる容量素子の第1電極P1は、第1容量バンクBK1に含まれる容量素子の第2電極P2に、対応するスイッチ913P〜915Pを介して接続されている。また、容量回路1401N内の第2容量バンクBK2に含まれる容量素子の第1電極P1も、第1容量バンクBK1に含まれる容量素子の第2電極P2に、対応するスイッチ913N〜915Nを介して接続されている。
また、この実施の形態においては、電圧供給部1402P、1402Nのそれぞれは、2個のインバータ回路920P,921P、920N、921Nを具備している。それぞれのインバータ回路は、電源ノードNvd、Nvsに供給される電源電圧Vdd、Vsを動作電圧として動作する。
先に図5を用いて説明した実施の形態4においては、粗量子化器510において、7値に量子化をしていたが、この実施の形態においては、粗量子化器910において、4値に量子化をしている。すなわち、粗量子化器910は、それに供給されている基準電圧Vrefを用いて、4個の電圧範囲を予め定める。粗量子化器910は、正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNとの間の差電圧(VinP−VinN)が、この4個の電圧範囲のいずれに存在するかによって、それに対応したデジタル信号Diを出力する。差電圧がVdd/2以上であればDi=3、差電圧がVdd/2と0の間であればDi=1、差電圧が0と−Vdd/2の間であればDi=−1、差電圧が−Vdd/2以下であればDi=−3とする。制御部911は、粗量子化器910からの出力であるデジタル信号Diに基づいて、実施の形態4において述べたのと同様に、制御信号PC1、PC2、NC1およびNC2のそれぞれをハイレベル(Vdd)あるいはロウレベル(Vs)として、出力する。
この実施の形態7においても、MDAC1400は、サンプリング期間とそれに続く残差増幅期間とで分けて動作する。
先ず、サンプリング期間においては、スイッチ901P〜904P、901N〜904Nおよびスイッチ列905Pおよび905Nのそれぞれが、オン状態にされる。これにより、容量回路1401Pおよび容量回路1401Nのそれぞれにおける第1容量バンクBK1および第2容量バンクBK2に含まれる容量素子907P〜912Pおよび907N〜912Nのそれぞれの電極に、オン状態のスイッチを介して、正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNが供給される。また、このとき、容量素子906Pおよび906Nのそれぞれの電極にも、オン状態のスイッチを介して、正相入力信号VinPと逆相入力信号VinNが供給される。これにより、サンプリング期間においては、各容量素子に完全差動のサンプリングによる充電が行われる。なお、サンプリング期間においては、スイッチ913P〜919Pおよび913N〜919Nはオフ状態とされている。
サンプリング期間に続く残差増幅期間においては、スイッチ913P〜919Pおよび913N〜919Nがオン状態にされ、スイッチ901P〜904P、901N〜904Nおよびスイッチ列905Pおよび905Nが、オフ状態にされる。これにより、容量回路1401Pにおける容量素子906Pおよび917Pの第2電極P2には、電源電圧Vddが給電され、容量回路1401Nにおける容量素子906Nおよび917Nの第2電極P2にも、電源電圧Vddが給電される。一方、容量回路1401Pにおける第2容量バンクBK2に含まれる容量素子910Pおよび912Pのそれぞれの第2電極P2には、インバータ回路920Pおよび921Pからの電圧が印加されることになる。同様に、容量回路1401Nにおける第2容量バンクBK2に含まれる容量素子910Nおよび912Nのそれぞれの第2電極P2には、インバータ回路920Nおよび921Nからの電圧が印加されることになる。
残差増幅期間においては、実施の形態4と同様に、スイッチ913P〜915P(913N〜915N)を介して、第2容量バンクBK2に含まれる容量素子908P、910Pおよび912P(908N、910Nおよび912N)の第1電極P1が、対応する第1容量バンクBK1に含まれる容量素子907P、909Pおよび911P(907N、909Nおよび911N)の第2電極P2に接続される。すなわち、第1容量バンクBK1の容量素子と第2容量バンクBK2の容量素子とが直列に接続される。これにより、実施の形態4と同様に、出力ノードNoutP、NoutNにおける電圧は、ほぼ2倍に昇圧される。また、このとき、粗量子化器910の出力に従って、第2容量バンクBK2に印加される電圧が設定されるため、粗量子化器910の出力が、出力ノードNoutP、NoutNにおける電圧に反映され、残差増幅が行われる。例えば、Di=3の時は、PC1とPC2をともに電源電圧Vddとし、NC1とNC2をともに接地電圧Vsとする。また、Di=1の時は、PC1を接地電圧Vs、PC2を電源電圧Vddとし、NC1を電源電圧Vdd、NC2を接地電圧Vsとする。また、Di=−1の時は、PC1を電源電圧Vdd、PC2を接地電圧Vsとし、NC1を接地電圧Vs、NC2を電源電圧Vddとする。また、Di=−3の時は、PC1とPC2をともに接地電圧Vsとし、NC1とNC2をともに電源電圧Vddとする。
この実施の形態7によれば、MDAC1400の出力電圧Voutは、バッファ回路17Pの出力電圧VoutPとバッファ回路17Nの出力電圧VoutNとの差電圧(VoutP−VoutN)であり、式(7)で表される。また、基準電圧Vrefは、容量回路に含まれる複数の容量素子の容量比によって定めることができる。
実施の形態7においても、実施の形態4と同様に、占有面積の増加を抑制することが可能であり、消費電量の低減を図ることが可能である。特にこの実施の形態においては、容量素子の数を低減することが可能であり、占有面積の低減に有効である。
(実施の形態8)
図7は、実施の形態8に係わる医療診断システムを示すブロック図である。同図において、700は、超音波診断装置用プローブであり、703は、超音波診断装置である。超音波診断装置用プローブ(以下、診断用プローブと称する)700は、複数の探触子71、72と、それぞれの探触子71、72に高電圧パルスを供給し、探触子71、72からのアナログ信号(被測定信号)を処理する処理装置701とを具備している。処理装置701により処理された結果は、デジタル信号としてデジタルケーブル714を介して超音波診断装置703に供給される。超音波診断装置703においては、ケーブル714を介して受信したデジタル信号に対して処理部704において必要な処理を行う。
1個の探触子と、それに対して高電圧パルスを供給する送信系と、探触子からのアナログ信号を処理する受信系とを合わせて1チャネルとした場合、この実施の形態における診断用プローブ700には、1000を超えるチャネルが設けられている。同図では、これらのチャネルのうち、2個の探触子に対応するチャネルが、例として示されている。各チャネルは互いに同様な構成にされているため、ここでは探触子71を含む1チャネルを例にして説明する。
処理装置701は、探触子71に、スイッチ75を介して接続された送信部73と、探触子71に、スイッチ77を介して接続された受信部とを具備している。ここで、受信部は、アンプや場合によってはフィルタを有するアナログフロントエンド回路79と、アナログフロントエンド回路79に接続され、アナログ信号が供給されるアナログデジタル変換器711とを有している。実施の形態で述べたサイクリック型アナログデジタル変換器が、アナログデジタル変換器711として、用いられている。すなわち、アナログフロントエンド回路79からの信号が、先に述べた入力信号Vinとなる。
診断においては、スイッチ75がオン状態にされ、送信部73において生成された高電圧パルスが、スイッチ75を介して探触子71に送られる。探触子71は、受信した高電圧パルスを、振動に変換して、診断されるべき人体の体内に超音波として送り込む。送り込まれた超音波は、体内の臓器などで反射し、再び探触子71で受信される。受信した超音波の振動は電気信号に変換され、変換された電気信号はアナログフロントエンド回路79で増幅などの処理が行われ、入力信号Vinが生成される。このアナログ信号である入力信号Vinは、アナログデジタル変換器711でデジタル信号に変換される。
上記した処理が、各チャネル(例えば、探触子74、スイッチ76および78、アナログフロントエンド回路710およびアナログデジタル変換器712を含むチャネル等)で行われる。各チャネルにおいて、変換されたデジタル信号Diは、デジタル整相部(デジタル回路)713へ供給される。デジタル整相部713では、各チャネルのアナログデジタル変換出力に対して遅延加算処理を行うことで、体内情報を得るとともにデータ量を縮減する。デジタル整相部713の出力が、デジタルケーブル714を介して、超音波診断装置703に送られ、利用に供される。
この実施の形態においては、診断用プローブ700のうち、探触子71、72を除く処理装置701が、1個の半導体装置によって構成されている。すなわち、複数のチャネルに対応する複数の送信部73、74、複数のアナログフロントエンド回路79、710、複数のアナログデジタル変換器711、712、スイッチ73〜78およびデジタル整相部713が、1個の半導体装置に形成されている。各アナログデジタル変換器のそれぞれは、今までに述べたサイクリック型アナログデジタル変換器が用いられており、前記した電源ノードNvdおよびNvsは、各アナログデジタル変換器において、共通に接続されている。このように、電源ノードを共通にすることにより、残差増幅期間において、乗算型デジタルアナログ変換回路内の容量回路へ供給される電圧値を、互いに異なってしまうことを防ぐことができ、アナログデジタル変換の際の変換利得などのバラツキを抑制することが可能となる。また、1個の半導体装置に形成することにより、増幅率Gのバラツキも低減することができ、この点でも変換の際のバラツキを抑制することが可能となる。
先に述べた実施の形態によれば、占有面積の増加を抑制することが可能であり、また低消費電力化も可能であるため、サイズ面および消費電力による発熱面でも、1000チャネル以上を、1個の半導体装置に集積することが可能となる。アナログデジタル変換器を全チャネル分内蔵することで、診断用プローブ出力のデジタル化とさらにデータ縮減が可能になり、結果として、超音波診断装置703への伝送に必要なケーブルの重量を飛躍的に低減できる。さらに、従来のアナログケーブルを用いた伝送による信号品質の劣化を防止できるため、高画質化にも寄与する。
また、デジタルケーブル714は、有線ではなく、無線伝送によって、診断用プローブ700から超音波診断装置703へ伝送するようにしても良い。この場合には、診断用プローブ700の取り回しが容易になる。なお、図7において、702は、スイッチ73〜77等を制御するコントローラである。
MDACが、アナログ入力信号を2値のデジタル信号へ変換する実施の形態(実施の形態7)を考慮すると、本願には次に付記する発明も記載されていると理解することができる。
<付記>
入力信号が供給される入力ノードと、出力信号を供給する出力ノードと、基準電圧に基づいて、入力信号を量子化する量子化器とを有する乗算型デジタルアナログ変換回路を、1以上具備し、前記乗算型デジタルアナログ変換回路の出力信号が、前記乗算型デジタルアナログ変換回路の入力ノードあるいは他の乗算型デジタルアナログ変換回路を介して前記乗算型デジタルアナログ変換回路の入力ノードへ供給される、アナログデジタル変換器であって、
前記乗算型デジタルアナログ変換回路は、前記入力ノードに供給される入力信号をサンプリングし、増幅して、前記出力ノードへ供給する容量回路と、前記量子化器の出力に従って前記容量回路に供給される電圧を定める制御回路とを具備し、
前記容量回路は、複数の容量素子を含み、前記複数の容量素子のうちの第1容量素子は、前記出力ノードに結合され、前記入力信号をサンプリングするとき、前記入力信号に対応する正相信号が印加される第1電極と、前記正相信号に対して逆相の逆相信号が印加される第2電極とを有し、
前記基準電圧は、前記容量回路に含まれる容量素子の容量比によって、等価的に設定され、サンプリングされた入力信号を増幅するとき、前記制御回路により、前記第1容量素子の第2電極に供給される電圧を定めることにより、前記容量回路は、前記量子化器の出力を反映した増幅信号を前記出力ノードへ供給する、アナログデジタル変換器。
以上本発明者によってなされた発明を、前記実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。