JP6324180B2 - 回転電機または風力発電システム - Google Patents

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Description

本発明は回転電機または風力発電システムに関するものであり、特にニュートラルリングへ加わる応力を低減するものである。
風力発電機の発電電力量は、風速によって大きく変動する。そのため、年間平均風速が大きい場所へ設置されるが、常時、良い風が吹いている訳ではなく、その日の気象状態による影響が大きい。このため、回転電機を風力発電機として用いた場合、他の回転電機に比べて、回転速度の変化や繰り返し頻度が予想しにくく、回転部となる回転子は、遠心力による繰り返し応力により疲労する可能性がある。一般に、材料の寿命は、応力の大きさと、その繰り返し数によって決定される。応力の繰り返し数は風況次第であることから、更なる長寿命化を図るためには、回転子にかかる応力の大きさを低減する必要がある。
回転子の材料の大部分は鉄(鉄心)と銅(コイル)により構成されており、鉄心内部にコイルを施している。この部分は銅よりも強度が高い鉄により覆われていることから十分な強度を有する。しかしながら、鉄心外部のコイルはニュートラルリング(例えば銅材料で形成)により、各コイルを接続しており、強度補強等となる部材は無い。このため、ニュートラルリングとコイルを接続した構造体にて、応力を低減することで、更なる長寿命化が可能となる。
ニュートラルリングに関する技術として例えば特許文献1または2に記載されたものがある。特許文献1では、ニュートラルリングを、回転子鉄心を端部で支持するロータエンドプレートに支持固定されるリング状剛体内に設置している。また、特許文献2では、ニュートラルリングを回転子コイルの支えに埋め込み支持している。
特開昭63−249440号公報 実開昭51−121701号公報
上記各特許文献ではニュートラルリングを部材内に埋め込むことで支持しているが、部材内に埋め込んで支持する場合、熱が籠りやすくなる。特に特許文献2においては、回転子コイル支えに埋め込むことで界磁巻線と部材を介して接触し、ニュートラルリングの温度が上昇する。
また、特許文献1の様にニュートラルリングを、回転子鉄心を端部で支持するロータエンドプレートに支持固定されるリング状剛体内に設置する場合、ニュートラルリングと界磁巻線が電気的に接続されるための接続線に流れる電流が作る漏れ磁束によって、渦電流が流れ、生じた発熱がロータエンドプレートやリング状剛体を介してニュートラルリングに加わり、温度が上昇する。
本発明では信頼性を向上させることができる回転電機を提供すること等を目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明に係る回転電機は、回転子鉄心に設けられた界磁巻線と、前記界磁巻線とは独立して支持されるニュートラルリングとを備え、前記界磁巻線と前記ニュートラルリングは接続線を介して電気的に接続され、前記ニュートラルリングは前記回転子鉄心に対して空間を介して配置され、前記接続線は、遠心力付加時における前記界磁巻線と前記ニュートラルリングの応力差を吸収することを特徴とする。
本発明によれば、信頼性を向上させることができる回転電機を提供すること等が可能になる。
交流励磁型同期回転電機の一部断面図である。 本発明の一実施例になる交流励磁型同期回転電機の一部断面図(第1の実施形態)である。 図2に示す実施例の第1の変形例になる交流励磁型同期回転電機の回転子端部の一部断面図である。 図2に示す実施例の第2の変形例になる交流励磁型同期回転電機の回転子端部の一部断面図である。 図2に示す実施例の第3の変形例になる交流励磁型同期回転電機の回転子端部の一部断面図である。 本発明の他の実施例になる交流励磁型同期回転電機の回転子端部の一部断面図(第2の実施形態)である。 本発明の他の実施例になる交流励磁型同期回転電機の回転子端部の一部断面図(第3の実施形態)である。 図7に示す実施例の第1の変形例になる交流励磁型同期回転電機の回転子端部の一部断面図である。 本発明の他の実施例になる交流励磁型同期回転電機の回転子端部の一部断面図(第4の実施形態)の変形例である。 図9に示す実施例の第1の変形例になる交流励磁型同期回転電機の回転子端部の一部断面図である。 本発明の他の実施例になる交流励磁型同期回転電機の回転子端部の一部断面図(第5の実施形態)の変形例である。 図11に示す実施例の第1の変形例になる交流励磁型同期回転電機の回転子端部の一部断面図である。 実施例6に係る風力発電システムを説明する図である。
以下、本発明の実施例を図面に従い詳細に説明するが、本発明においては複数の実施例を提案している。したがって参照番号が同一のものは同一の構成要件或いは類似の機能を備えた構成要件を示している。なお下記実施例では、交流励磁型同期回転電機(DFIG)の場合を例にして説明しているが、巻線型の回転電機であれば適用可能である。特に、本発明に係る回転電機は、遠心力が大きくなる大型の回転電機(例えばMW級またはそれ以上)として用いることが好適である。尚、下記はあくまでも実施例に過ぎず、本発明の実施態様が下記具体的態様に限定されることを意図する趣旨ではない。
図1は交流励磁型同期回転電機の上半分を軸方向に断面した部分断面図である。図1において、固定子11は軸方向に連続的に形成された固定子スロット12を内周部に設け、かつ電磁鋼板等の薄鋼板を軸方向に沿って複数枚積層された固定子鉄心13と、固定子スロット12に巻装された固定子巻線14を備えている。
固定子11と空隙を介して同心軸上の内周側に位置する回転子1は、軸方向に連続的に形成された回転子スロット2を外周部に設け、かつ電磁鋼板等の薄鋼板を軸方向に沿って複数枚積層された回転子鉄心3と、回転子スロット2に巻装された界磁巻線4を備えており、かつ軸方向を長手方向とした回転子鉄心3の内周側に配置されたシャフト8と、回転子鉄心3とシャフト8との間に周方向に所定の間隔を持って配設されたシャフトアーム9を備えている。界磁巻線4は回転子スロット2に巻装されて支持される。
図2は、図1の交流励磁型同期回転電機の回転子端部の部分断面図である。回転子1の端部においては、界磁巻線4を固定するために、外周側にはバインドテープ7が巻かれ、かつ各相の界磁巻線4から電気的な中性点を引き出すためのコイル接続線5を備えており、かつコイル接続線5を接続して各相を短絡するための導体からなるニュートラルリング6を備えており、かつニュートラルリング6はシャフト8に周方向に所定の間隔を持って接続された支持部10によって支持されている。即ち、回転子スロット2に巻装されて支持される界磁巻線4とは独立してニュートラルリング6は(特に径方向に動作しない様に)支持される。具体的には、本実施例ではシャフト8に接続された支持部10に支持される。尚、ニュートラルリング6はこの様な形状の支持部10に支持されなくとも良い。該図に示す様に、支持部10は回転子のシャフト8に対して固定されており、回転軸方向について回転子鉄心3とニュートラルリング6の間に配置されている。本実施例においては支持部10が周方向に間隔をおいてニュートラルリング6を部分的に支持している。支持部10は、回転子のシャフトの軸方向内側から外側に向かってニュートラルリング6を支持する。なお、コイル接続線5は、ニュートラルリング6と界磁巻線4にロウ付け等の方法によってそれぞれ接合されており、図2に示す界磁巻線4とコイル接続線5が接続される箇所を接続箇所20aとし、ニュートラルリング6とコイル接続線5が接続される箇所を接続箇所20bとする。コイル接続線5は、接続箇所20aと接続箇所20b間において、配置される。各実施例においては、ニュートラルリング6側の接続箇所20bは、隣接する支持アーム10がニュートラルリングを支持する部位の丁度中間になる様に図示しているが、丁度中間でなくとも良く、よりいずれかの支持部に近い位置に接続箇所を設けても良い。丁度中間点近傍となる場合には、支持部10に支持されていないのでニュートラルリング変形の余地が大きく、より効果的になることは考えられる。ニュートラルリング6は少なくとも支持部10の軸方向幅分、回転子鉄心の軸方向端部から空間を介して配置される。更に、本実施例では支持部10と回転子鉄心の軸方向端部の間にも空間が設けられており、その分、ニュートラルリング6と回転子鉄心の軸方向幅は長くなっている。ニュートラルリング6と回転子鉄心が空間を介して配置されることで、コイル接続線5を流れる電流が発生させた磁界によって回転子鉄心(またはその端部支持材を含む)内に生じた渦電流に伴う発熱がニュートラルリング6に直接伝わらず、ニュートラルリング6の温度上昇を生じさせない。これは熱応力発生の防止に繋がる。また、そもそもニュートラルリング6が何らかの支持部材に埋め込んで支持されていない、或いはニュートラルリング6が支持部材に覆って支持されない様にしており、熱が生じても生じた熱が籠らない様にもなる。
交流励磁型同期回転電機において、回転子1の回転時に、電力変換器を介して界磁巻線4に電力を供給するためにスリップリング、ブラシを設け、回転するスリップリングにブラシを接触させて励磁電流を流して給電し、回転子1を電磁石にしている。例えば、風力発電用の風車のように回転速度が常に変化する動力で回転子1を回転させた場合でも、界磁巻線4に流れる励磁電流の周波数を制御することで、発電周波数を一定に保つことが可能としている。
この回転子1の回転時に、界磁巻線4、ニュートラルリング6、バインドテープ7、等の回転子1に備わる各部材には遠心力がかかる。特に、界磁巻線4は、ニュートラルリング6よりも重量が重く、かつ回転子1の最外径側に位置するため、大きな遠心力がかかり、外径方向へ膨らむ変形をすることで外径方向への変位が生じる。この時、界磁巻線4とニュートラルリング6は、コイル接続線5を介して、機械的応力が伝達される様に(直接的に)接続されているため、界磁巻線4の外径方向への変位は、ニュートラルリング6にも影響を及ぼすことになる。多くの場合、界磁巻線4はニュートラルリング6に比べて剛性が高いため、ニュートラルリング6から見ると界磁巻線4の変位は強制的なものとして考えることができる。このことから、ニュートラルリング6と界磁巻線4の接続箇所20b付近では、界磁巻線4の変位によって外径方向へ引っ張られ、ニュートラルリング6にひずみが生じて応力がかかる。このニュートラルリング6にかかる応力の大きさと、その繰り返し数の関係によって疲労破壊するため、この応力を低減する必要がある。
本実施例では、図2に示すように界磁巻線4側における接続位置20aとニュートラルリング6側における接続位置20bとの間のコイル接続線5の長さを、当該接続位置20aと接続位置20bの間の直線距離hよりも長くする。これによって、コイル接続線5は少なくとも弛みを有することになる。即ち、回転子1の回転時に遠心力によって界磁巻線4が外径方向に膨らんで変位した場合でも、コイル接続線5の弛み部分が伸長する変形をするため、コイル接続線5を介してニュートラルリング6に伝わる変位量を低減でき、ニュートラルリング6にかかる応力を低減する効果が得られる。即ち、界磁巻線4とニュートラルリング6が各々独立して支持され、個別に動作し得る状況下で、両者が弛みなどを持ったコイル接続線を介して接続される様にすることで、運転時、界磁巻線4が遠心力により外径方向に移動した場合でも、コイル接続線が直線状になるまでは、コイル接続線が変位差を吸収出来るので、ニュートラルリング6を外径方向へ引っ張ることがない。これは、埋め込み式で各部材を強固に固定する場合と比較し、むしろ遠心力で変形が生じることを前提としており、但し、その変形が生じる部分をコイル接続線に分担させ、そのコイル接続線に変形の余地を残したものである。この意味合いにおいて、各部材が動かない様にする従来技術とは特に一線を画すものである。
さらに、コイル接続線5の板厚を薄くすれば、コイル接続線5の剛性は小さくなるため、界磁巻線4の変位に対してより柔軟に伸長でき、ニュートラルリング6にかかる応力の低減効果は大きくなる。コイル接続線5の板厚を薄くする場合は、コイル接続線5を一様に薄くしても良いが、一部を薄くすることでも応力低減効果は得られる。
または、コイル接続線5の材質を、例えば弾性係数が100[GPa]程度以下の小さい導体にして、可撓性を有する様にし、界磁巻線4の変位量を弾性域で吸収するようにしても良い。
なお、本実施例では界磁巻線4の外径方向への変位量をδ1とし、ニュートラルリング6の外径方向への変位量をδ2とした場合、δ1>δ2と仮定して説明している。これは、仮にδ1<δ2の場合においても、ニュートラルリング6の外径方向への変位に対してコイル接続線5の弛みは収縮する変形をするため、界磁巻線4にかかる応力を軽減できることは言うまでもない。
また、界磁巻線4への通電時には、界磁巻線4やニュートラルリング6には導通損失が生じる。この導通損失による導体の温度上昇によって、界磁巻線4とニュートラルリング6は外径方向へ熱膨張する。両者の熱膨張の大きさに差が生じると(変位量に差が生じると)、界磁巻線4とニュートラルリング6にひずみが生じるが、これに対しても、本実施ではコイル接続線5の伸縮作用によって膨張量の差による変位量を低減できるため、遠心力による応力と同様に、ニュートラルリング6にかかる応力を低減する効果が得られる。
図3乃至図5は、本発明の一実施例による交流励磁型同期回転電機の回転子1の端部における部分断面拡大図(第1の実施形態)の変形例を示したものである。図3、図4に示すように、接続箇所20aと接続箇所20bを結ぶ直線距離hよりもコイル接続線5の長さが長くなる範囲内であれば、例えばコイル接続線5が湾曲形状や、コイル接続線5が界磁巻線4側とニュートラルリング6側で同じ周方向側に伸び、その後径方向へ曲げられる構造(コの字形状または逆コの字形状)になった場合でも、界磁巻線4とニュートラルリング6間で径方向に生じる変位差をコイル接続線5の伸縮作用で吸収する機能を果たすため、ニュートラルリング6にかかる応力を低減する効果が得られる。図3に示すように、コイル接続線5の弛みの数を増やすことで、伸縮の程度を表わすばね定数を調整でき、適切な撓み量にすることが可能である。弛みの数をnとした場合には、ばね定数Ktotalは次式(1)にて表わされる。

total = Σ[a=1〜n](1/Ka)・・・(1)

ただし、式(1)において、Kaはコイル接続線が1箇所弛んでいる場合のばね定数である。これは、図4のコイル接続線5をコの字形状とした場合も同様である。
図2乃至図4では、接続箇所20aと接続箇所20b間において、コイル接続線5が回転中心から見て周方向及び径方向に対して曲げ部分を有することで、弛みを持つ場合を示したが、図5に示すように、コイル接続線5が軸方向に対して曲げ部分を有し、弛みを持つ場合においても、同様の原理で応力低減効果を得ることができる。ただし、図3乃至図5に示している形状は、変形例の一例であり、必ずしもこれらの形状に限定されるものではない。
以上より、本実施例によればコイル接続線5が、遠心力付加時における界磁巻線4とニュートラルリング6の応力差を吸収することが出来る様にしており、界磁巻線4がニュートラルリング6を引っ張らない様にしている。応力差を吸収することに関し、一具体策としては、界磁巻線4側における接続位置20aとニュートラルリング6側における接続位置20bとの間のコイル接続線5の長さを、当該接続位置20aと接続位置20bの間の直線距離hよりも長くすることが挙げられる。より具体的には、コイル接続線5が弛みを有する様にするものである。また、他の具体策としては、コイル接続線5が、可撓性を有する様にすることが挙げられる。さらに他の具体策としては、これらを組み合わせることも可能である。即ち、コイル接続線5が可撓性を有する場合でも、例えば弛みを有する様にしても良い。尚、これらはあくまでも例示であり、コイル接続線5が、遠心力付加時における界磁巻線4とニュートラルリング6の応力差を吸収することが出来るものについて、上記具体策以外を排除するものでないことは勿論である。界磁巻線4がニュートラルリング6を引っ張らない様になるので、ニュートラルリング6にかかる応力を低減でき、より長寿命な交流励磁型同期回転電機を提供できる。
本実施例では、特許文献1や特許文献2に記載される様に、ニュートラルリングを埋め込む構造としておらず、ニュートラルリングの埋め込み作業等で作業工数の増加することがない。また、埋め込み部材を設ける場合、当該部材を設けること自体による重量の増加や、特許文献2の様に回転子コイル支えを軸方向に長くする必要が生じることで、間接的に回転子重量の増加を引き起こすことにも繋がり得る。埋め込み部材を設けないでも応力を低減できることで、そうした重量増加も防止できる。
また、回転子コイル支えに埋め込む場合、界磁巻線と接触することになるため、ニュートラルリングの温度上昇増加に伴い熱応力が増加することも考えられるが、やはり本実施例に示す構造によれば、埋め込む必要がなく熱応力増加も低減できる。
本実施例に示す構造によれば、ニュートラルリングにかかる応力を構造体の剛性を高めることでなく、コイル接続線の変形を利用し、ニュートラルリングにかかる応力を低減するという異なる着眼点での発想を採用している。即ち本実施例では、ニュートラルリング6を強固に支持するための余計な部材を用いずにかつ、遠心力によってニュートラルリング6にかかる応力を低減するため、回転子1の重量を増加させず、また、電流密度の低減による効率向上効果、発熱抑制による熱応力の低減効果を得ることもできる。さらに、ニュートラルリング6の埋め込み作業や、細線を配する必要もなく(リード線などの細線の場合、リード線を押さえるためのリード押さえや、リング状の支持体を設ける必要があるが、本実施例における構造ではコイル接続線にリード線と言った細線を利用していない。MW級の大容量通電を行う場合、電流密度を小さくし、損失を減らす観点から、より径が大きい線を用いることが好ましい)、作業工数も増加させない。
図6は、本発明の一実施例による交流励磁型同期回転電機の回転子の端部における部分断面拡大図(第2の実施形態)を示したものである。本実施例の一例として、図6に示すように、導体から成る円弧状の部品を、ニュートラルリング6に接続箇所20cで接合することでは片持ち梁部を備える、かつニュートラルリング6の片持ち梁部にコイル接続線5が接続箇所20bによって接合される点で実施例1と異なる。尚、上述した内容と重複する内容については、ここでの説明を省略する。
本実施例では、実施例1で述べた効果に加えて、コイル接続線5の弛み部分の伸縮で軽減しきれなかった界磁巻線4の変位量を、ニュートラルリング6の片持ち梁部が撓むことで吸収できる。片持ち梁の撓み量を計算する式より、界磁巻線4が強制的に変位するものとして考えると、ニュートラルリング6かかる力Pは次式(2)にて表わせる。

P = 3EIY/L3 ・・・(2)

ただし、Eはニュートラルリング6のヤング率、Iはニュートラルリング6の断面二次モーメント、Yは界磁巻線4の強制変位量、Lはニュートラルリング6の梁部の長さとする。つまり、接続箇所20cを可能な限り接続箇所20bに対して離れた位置に設けることで、その距離となるLの3乗に応じた応力低減効果を得ることができる。つまり、このニュートラルリング6の梁は長ければ長いほど良い。ただし、他の構成部材との配置の都合上、その接合距離は限られる場合が多い。交流励磁型同期回転電機のコイル接続線5の本数をmとすると、ニュートラルリング6の外径をRとした時、ニュートラルリング6の梁部の長さLは次式(3)で限定されることになる。

L < 2πR/m・・・(3)

また、ニュートラルリング6の形状を改良するだけで大きな応力低減効果が得られるため、従来の交流励磁型同期回転電機を基に改良することも可能である。具体的には、円環状のニュートラルリング6を一度切断して、導体の円弧部品を継ぎ足して接合することで、本実施例を適用することも可能である。なお、本実施例ではニュートラルリング6を導体から成る複数の円弧形状の部品を接合して製造した場合について記述しているが、ニュートラルリング6をダイカスト等の一体成型によって製造した場合でも本発明の範囲内である。また片持ち梁部の中でも特に支持される側とは反対の先端側に接続箇所を設けることで、変形量を大きくできる。
以上より、本実施例によればコイル接続線5の伸縮作用並びに、ニュートラルリング6の片持ち梁部の撓み変形によって、ニュートラルリング6にかかる応力を低減でき、より長寿命な交流励磁型同期回転電機を提供できる。
図7は、本発明の一実施例による交流励磁型同期回転電機の回転子の端部における部分断面拡大図(第3の実施形態)を示したものである。本実施例では、コイル接続線5とニュートラルリング6の接続箇所20bが、コイル接続線5を有する界磁巻線4の接続箇所20aに向かって回転中心から径方向に伸ばした線上に対して、周方向にずらした位置となる点で実施例2と異なる。尚、上述した内容と重複する内容については、ここでの説明を省略する。
本実施例では、コイル接続線5の接続箇所20bを周方向位置にずらすことで、ニュートラルリング6に対して、コイル接続線5を接合面に対して並行にすることができる。これによって、ロウ付け等で接合する接続箇所20bの接合面積を実施例2よりも増加することができ、接続箇所20bの接合をより強固にすることができる。異なる言い方をすると、コイル接続線5は、ニュートラルリング6に沿った部分を有し、当該ニュートラルリング6に沿った部分でニュートラルリング6に接続する。この様にすることで、コイル接続線5の長手方向をニュートラルリング6と界磁巻線4の接続に用いることができ、接続距離を長くすることが出来る。また、出力がMW級の交流励磁型同期回転電機においては、界磁巻線4からニュートラリング6に流れる電流が大きく、電流密度の低減も技術的な課題の1つとなる。これに対して、本実施例によれば接触面積が増加することで、接合部の電流密度を低減する効果も得られ、導通損失の低減による交流励磁型同期回転電機の高効率化や、発熱抑制にも繋がる。
さらに、コイル接続線5はニュートラルリング6の円周に対して垂直ではなく、斜めに接合されるため、実施例1よりも直線距離hを長くすることが可能となる。これによって、コイル接続線5に実施例1と同量の弛みを持たせる場合には、直線距離hが長くなった分だけ弛みをより緩やかにすることができ、コイル接続線5の製造が容易になる。
図8に、本発明の一実施例による交流励磁型同期回転電機の回転子1の端部における部分断面拡大図(第3の実施形態)の変形例を示したものである。図8では、コイル接続線5をクランク形状(階段形状)としている。これによって、図7で示した曲線部にて弛みを作るコイル接続線5の形状よりも、角を作って直線部を設けるクランク形状の方が製造時の寸法精度を出しやすく、設計通りの変形量にし易い利点がある。さらには、コイル接続線5の両端の接続箇所20a、20bにおいて、接合する面同士を並行にすることができ、図5よりも強固な固定が可能となる。
以上より、本実施例によれば接合箇所20a、20bの接合面積を増加させ、長寿命化、高効率化が図れ、製造時の作業性も向上する交流励磁型同期回転電機を提供できる。
図9は、本発明の一実施例による交流励磁型同期回転電機の回転子1の端部における部分断面拡大図(第4の実施形態)を示したものである。本実施例では、コイル接続線5は、界磁巻線4側における接続箇所20aから回転中心に向かって直線状に伸び、かつ一箇所のみ直角状の曲げ部を有し、更にニュートラルリング6に接続される箇所においてニュートラルリング6に対し、周方向に沿って配置されて接続される点で実施例3と異なる。尚、上述した内容と重複する内容については、ここでの説明を省略する。本実施例では、コイル接続線5をL字形状とし、コイル接続線5の曲げ部分が1箇所のみとなるため、実施例1乃至実施例3に比べて構成がシンプルであり、製造時の加工が非常に容易になる利点がある。構成はシンプルであるが、界磁巻線4が遠心力によって外径方向へ変位した場合に、コイル接続線5のニュートラルリング6と接触しているが接合されていない部分には曲げモーメントがかかって変形をすることで、ニュートラルリング6に与える変位量を小さくし、ニュートラルリング6にかかる応力を低減する効果が得られる。あくまでも、コイル接続線5は接続箇所20aと接続箇所20bを結ぶ直線距離hよりも長くする必要がある。
図10に、本発明の一実施例による交流励磁型同期回転電機の回転子の端部における部分断面拡大図(第4の実施形態)の変形例を示したものである。本変形例は、本実施例と実施例2を組み合わせたものであり、限られた空間内において(2)式における梁の長さLを実施例3よりも長くすることができ、界磁巻線4の変位に対してより柔軟に撓むことが可能となり、相乗効果により大きな応力低減効果を得ることができる。更に、応力を低減するために十分な梁の長さを得ることができるため、その余剰分の長さを接合箇所11の接合面の拡大に充てることもでき、より強固な接合によって更なる信頼性の向上や、電流密度の低減による高効率化や発熱抑制の効果が得られる。
以上より、本実施例によれば回転子1の端部の構成を簡素化しつつ応力低減効果も得られるため、製造コストが安価でより長寿命な交流励磁型同期回転電機を提供できる。
図11は、本発明の一実施例による交流励磁型同期回転電機の回転子1の端部における部分断面拡大図(第5の実施形態)を示したものである。本実施例では、各相でのコイル接続線5が複数本によってニュートラルリング6に接続される点で異なる。尚、上述した内容と重複する内容については、ここでの説明を省略する。コイル接続線5が断線した場合には、電気的な三相不平衡状態が生じ、界磁巻線4には過電流が流れ、界磁巻線4の焼損などを引き起こす可能性がある。本実施例では、図11に示すように、複数のコイル接続線5によってニュートラルリング6を接続することで、仮に、1本が断線した場合においても、他方のコイル接続線5では導通が可能なため、コイル接続線5の断線に対するリスクを低減できる。更には、コイル接続線5が複数になることで、力の作用点も複数となり、ニュートラルリング6の応力集中を緩和することができる。また、コイル接続線5を複数にすることで、製作時における僅かな製造誤差が撓み量に与える影響も分散できるため、製造時のロバスト性を低減し、設計通りの撓み量とすることができる。
図12に、本発明の一実施例による交流励磁型同期回転電機の回転子の端部における部分断面拡大図(第5の実施形態)の変形例を示したものである。本変形例は、本実施例と、実施例1の変形例(図5)を組み合わせたものである。図12は、回転中心から見た径方向及び周方向のどちらの方向に対しても対称な構造であるため、界磁巻線4とニュートラルリング6間の径方向及び周方向の両方向に対して、コイル接続線5は同一の変形が可能である。これによって、図11よりも製造誤差によるロバスト性を小さくし、設計通りの撓み量とすることができる。
以上より、本実施例によれば、製造誤差によるロバスト性を改善し、断線時のリスクを低減できる高信頼な交流励磁型同期回転電機を提供できる。
本実施例では、上述した交流励磁型同期回転電機を、風力発電システムに適用した例について図13を用いて説明する。本実施例に係る風力発電システムは、風を受けて回転するブレード(羽根)32と、主軸を介してブレード32に接続される増速機31と、増速機31に接続される回転電機33と、増速機31及び回転電機33を内部に収納するナセル30と、ナセル30を支持するタワー34と、タワー34内に収納される電力変換器35とを備えている。タワー34は基礎36上に支持される。回転電機33は電力変換器35に接続される。本実施例における回転電機33には、上述した交流励磁型同期回転電機を用いることが出来る。回転電機33は電力変換器35と接続され、電力変換器35は図示しないが、電力系統などと接続される。
風力発電システムでは、動力が風力であり、回転速度は常に変動しているため、回転数の変動によって生じる応力の繰り返し数が多く、繰り返し力により疲労する可能性がある。また、ナセル内の交流励磁型同期発電機が一旦不具合を起こした場合には、ナセル内という狭小空間内でメンテナンス作業をするか、大型クレーンを用いてナセル内から降ろしてメンテナンス作業を行う必要が生じるため、強度信頼性を向上し、更なる長寿命化が重要である。
一方で、風力発電システムを建設する際には、交流励磁型同期発電機をナセルまでクレーンで持ち上げるが、大型の風車ではナセルの高さが100[m]以上にもなり、交流励磁型同期回転電機の重さで風車の支柱の強度や太さも決まる。風力発電用システムでは、他の発電システムよりも交流励磁型同期回転電機の軽量化も重視されている。
例えば各特許文献に記載される様にニュートラルリングを埋め込み式に支持した場合、ニュートラルリングを周状に亘って覆う部材が必要になるので、重量が増大してしまうが、上記のように、交流励磁型同期回転電機の重量は増加させずに、応力を低減することが要求される。これに対して、本発明の実施例1乃至実施例5に記載した構成によれば、コイル接続線5の伸縮効果を利用するため、剛性を高めるための余計な保持部材を用いることなくニュートラルリング6にかかる応力を低減し、更なる長寿命化が可能である。
本実施例によれば、交流励磁型同期発電機の重量増加を抑えながら、ニュートラルリング6にかかる応力を低減する効果を得られ、より長寿命な風力発電システムを提供できる。
1…回転子、2…回転子スロット、3…回転子鉄心、4…界磁巻線、5…コイル接続線、6…ニュートラルリング、7…バインドテープ、8…シャフト、9…シャフトアーム、10…支持部、11…固定子、12…固定子スロット、13…固定子鉄心、14…固定子巻線、20a…界磁巻線4とコイル接続線5の接続部、20b…界磁巻線4とニュートラルリング6の接続部、20c…ニュートラルリング6の接続部、30…ナセル、31…増速機、32…ブレード、33…回転電機、34…タワー、35…電力変換器、36…基礎。

Claims (15)

  1. 回転子鉄心に設けられた界磁巻線と、
    前記界磁巻線とは独立して支持されるニュートラルリングとを備え、
    前記界磁巻線と前記ニュートラルリングは接続線を介して電気的に接続され、
    前記ニュートラルリングは前記回転子鉄心に対して空間を介して配置され、
    前記接続線は、遠心力付加時における前記界磁巻線と前記ニュートラルリングの応力差を吸収することを特徴とする回転電機。
  2. 請求項1に記載の回転電機において、
    前記接続線のうち、前記界磁巻線側における接続位置と前記ニュートラルリング側における接続位置との間の長さは、前記界磁巻線側における接続位置と前記ニュートラルリング側における接続位置との間の直線距離よりも長いことを特徴とする回転電機。
  3. 請求項2に記載の回転電機であって、
    前記接続線は弛みを有することを特徴とする回転電機。
  4. 請求項1ないし3のいずれか一つに記載の回転電機において、
    前記接続線は可撓性を有することを特徴とする回転電機。
  5. 請求項1ないし4のいずれか一つに記載の回転電機であって、
    前記ニュートラルリングは径方向に動作しない様に、前記界磁巻線とは独立して支持されることを特徴とする回転電機。
  6. 請求項5に記載の回転電機であって、
    前記ニュートラルリングは回転子のシャフトに対して固定される支持部によって、径方向に動作しない様に支持されることを特徴とする回転電機。
  7. 請求項6に記載の回転電機であって、
    前記支持部が、回転軸方向について前記回転子鉄心と前記ニュートラルリングの間に配置されることを特徴とする回転電機。
  8. 請求項1ないし7のいずれか一つに記載の回転電機であって、
    前記ニュートラルリングに電気的に接続されると共に、前記ニュートラルリングに一端が支持される片持ち梁部を備え、
    前記接続線は前記片持ち梁部に接続されることを特徴とする回転電機。
  9. 請求項8に記載の回転電機であって、
    前記片持ち梁部の長さLは、前記ニュートラルリングの外径Rと前記接続線の本数mに対して、L<2πR/mを満たすことを特徴とする回転電機。
  10. 請求項1ないし9のいずれか一つに記載の回転電機であって、
    前記接続線は、前記ニュートラルリングに沿った部分を有し、該ニュートラルリングに沿った部分で前記ニュートラルリングに接続されることを特徴とする回転電機。
  11. 請求項10に記載の回転電機であって、
    前記接続線は階段状に形成されることを特徴とする回転電機。
  12. 請求項1ないし11のいずれか一つに記載の回転電機であって、
    前記接続線は、前記界磁巻線側における接続位置から回転中心に向かって直線状に伸び、かつ一箇所のみ直角状の曲げ部を有し、更に前記ニュートラルリングに接続される箇所において前記ニュートラルリングに対し、周方向に沿って配置されて接続されることを特徴とする回転電機。
  13. 請求項1ないし12のいずれか一つに記載の回転電機であって、
    前記接続線は周方向について対称となる曲げ部を有することを特徴とする回転電機。
  14. 請求項13に記載の回転電機であって、
    前記接続線は、各相の界磁巻線から複数本引き出されており、かつ前記接続線が複数本引き出される当該界磁巻線から回転中心に向かって伸びる直線に対して、線対称に前記ニュートラルリングと前記接続線が配置されることを特徴とする回転電機。
  15. 請求項1ないし14のいずれか一つに記載の回転電機を備える風力発電システムであって、
    前記回転電機は、交流励磁型同期発電機であって、界磁巻線には電力変換器を介して励磁電流が供給され、
    該交流励磁型同期発電機の回転子は風を受けて羽根が回転することによって回転し、
    該交流励磁型同期発電機はタワー上に支持されるナセルの内部に収納されることを特徴とする風力発電システム。
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