JP6323240B2 - 液体吐出装置、及び、ヘッドユニット - Google Patents

液体吐出装置、及び、ヘッドユニット Download PDF

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Description

本発明は、液体吐出装置、及び、ヘッドユニットに関する。
インクジェットタイプのプリンターは、キャビティ内のインクをノズルから吐出することによって印刷を行う。インクは、乾燥すると増粘する。キャビティ内のインクが増粘すると、吐出不良の原因となることがある。また、キャビティ内のインクに気泡が含まれたり、あるいは、紙粉がインクを吐出するノズルに付着すると、吐出不良の原因となることがある。よって、ノズルからのインクの吐出状態を検査することが好ましい。
特許文献1には、圧電素子を用いてキャビティ内のインクに振動を与え、その残留振動に対するインクの挙動を検知することによって、ノズルからのインクの吐出状態を判定する手法が開示されている。
特開2004−276544号公報(図31)
ところで、インクの挙動は圧電素子の起電力によって検知される。従って、インクに振動を与える工程では圧電素子に検査用の駆動信号を印加し、インクの残留振動を検査する工程では、圧電素子から起電力を取り出す必要がある。しかしながら、残留振動による圧電素子の起電力は小振幅であるため、当該圧電素子の起電力にノイズが重畳する場合には、インクの吐出状態を正確に判定できないという問題が存在した。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、残留振動に従った圧電素子の起電力の変化を正確に検出することを解決課題とする。
以上の課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、圧電素子と、内部に液体が充填され前記圧電素子の変位により当該内部の圧力が増減される圧力室と、前記圧力室に連通し前記圧力室内部の圧力の増減に応じて前記圧力室の内部に充填された液体を吐出するノズルと、前記圧力室に生じる残留振動に応じた前記圧電素子の起電力の変化を示す残留振動信号に基づいて前記ノズルからの液体の吐出状態を判定する吐出状態判定部と、前記圧電素子を駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成部と、前記駆動信号を前記圧電素子へ伝達し、前記圧電素子の起電力の変化を検出する集積回路と、前記集積回路と前記圧電素子とを電気的に接続するための第1外部配線と、前記集積回路と前記吐出状態判定部とを電気的に接続するための第2外部配線と、を備え、前記集積回路は、第1配線層に設けられ、前記圧電素子の起電力の変化を示す信号を増幅させて前記残留振動信号を生成する残留振動検出部と、第2配線層に設けられ、前記駆動信号が供給される第1内部配線と、前記第2配線層に設けられ、前記圧電素子の起電力が供給される第2内部配線と、前記第1配線層に設けられ、前記第1外部配線と前記第1内部配線との間の導通及び非導通を切り替える第1スイッチと、前記第1配線層に設けられ、前記第1外部配線と前記第2内部配線との間の導通及び非導通を切り替える第2スイッチと、前記第1配線層及び前記第2配線層の間の第3配線層に設けられ、導電性材料よりなるシールド部と、を具備し、前記第1外部配線の経路長は、前記第2外部配線の経路長よりも短い、ことを特徴とする。
この発明によれば、第1配線層と第2配線層の間の第3配線層にシールド部が設けられるため、シールド部を設けない場合と比較して、第1配線層に設けられる各種回路の発するノイズが第2配線層に設けられる第2内部配線に伝播する可能性を低く抑えることが可能となる。このため、第2内部配線に供給される圧電素子の起電力に重畳するノイズを低減することができ、圧電素子の起電力の変化に基づいてノズルからの液体の吐出状態を判定する場合において、正確な判定が可能となる。
また、この発明によれば、駆動信号の電位の変動や圧電素子の起電力の変化が、第1配線層に設けられる各種回路にノイズとして伝播する可能性を低く抑えることができるため、例えば残留振動検出部においてノイズの影響を排除した正確な動作が可能となり、ノズルからの液体の吐出状態を正確に判定することが可能となる。
さらに、第1外部配線の経路長を第2外部配線の経路長よりも短くするため、第1外部配線の経路長を第2外部配線の経路長よりも長くする場合と比較して、第1外部配線に供給される圧電素子の起電力に重畳するノイズを低減することができ、ノズルからの液体の吐出状態を正確に判定することが可能となる。
上述した液体吐出装置において、前記集積回路は、基板上に形成され、前記基板に垂直な方向から見たときに、第1部分領域を含む第1領域と、第2部分領域を含む第2領域とに区分され、前記残留振動検出部は、前記第1領域に設けられ、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、前記第2領域に設けられ、前記第2内部配線は、前記第1部分領域と前記第2部分領域とに設けられ、前記シールド部は、前記第1領域のうち少なくとも前記第1部分領域を含む領域に設けられる、ことが好ましい。
この態様によれば、残留振動検出部が発するノイズが第2内部配線に伝播する可能性を低く抑えることができ、第2内部配線に供給される圧電素子の起電力に重畳するノイズを低減することができる。また、第2内部配線に供給される圧電素子の起電力の変化がノイズとして残留振動検出部に伝播する可能性を低く抑えることができるため、残留振動検出部においてノイズの影響を排除した正確な動作が可能となる。
上述した液体吐出装置において、前記シールド部は、前記第2領域のうち少なくとも前記第2部分領域を含む領域に設けられる、ことが好ましい。
この態様によれば、第1スイッチ及び第2スイッチが発するノイズが第2内部配線に伝播する可能性を低く抑えることができ、第2内部配線に供給される圧電素子の起電力に重畳するノイズを低減することができる。
上述した液体吐出装置において、前記第1内部配線は、前記第1部分領域と前記第2部分領域とに設けられる、ことが好ましい。
この態様によれば、駆動信号の電位の変動が第1配線層に設けられる各種回路にノイズとして伝播する可能性を低く抑えることができるため、残留振動検出部においてノイズの影響を排除した正確な動作が可能となり、ノズルからの液体の吐出状態を正確に判定することが可能となる。
上述した液体吐出装置において、前記集積回路は、基板上に形成され、前記第2配線層は、前記第3配線層から見て、前記基板とは反対側の層である、ことが好ましい。
この態様によれば、駆動信号が大振幅である場合においても、駆動振動の電位の変動に連動して基板の電位が変動することを防止することができるため、基板において寄生トランジスタの発生を防止して、第1配線層に設けられる回路の誤動作を防止することができる。
また、本発明に係るヘッドユニットは、液体吐出装置に設けられるヘッドユニットであって、圧電素子と、内部に液体が充填され前記圧電素子の変位により当該内部の圧力が増減される圧力室と、前記圧力室に連通し前記圧力室内部の圧力の増減に応じて前記圧力室の内部に充填された液体を吐出するノズルと、前記圧電素子を駆動するための駆動信号を前記圧電素子に伝達し、前記圧電素子が駆動された後に前記圧力室に生じる残留振動に応じた前記圧電素子の起電力の変化を検出する集積回路と、前記集積回路と前記圧電素子とを電気的に接続する第1外部配線と、を備え、前記集積回路は、第1配線層に設けられ、前記圧電素子の起電力の変化を示す信号を増幅させた残留振動信号を生成する残留振動検出部と、第2配線層に設けられ、前記駆動信号が供給される第1内部配線と、前記第2配線層に設けられ、前記圧電素子の起電力が供給される第2内部配線と、前記第1配線層に設けられ、前記第1外部配線と前記第1内部配線との間の導通及び非導通を切り替える第1スイッチと、前記第1配線層に設けられ、前記第1外部配線と前記第2内部配線との間の導通及び非導通を切り替える第2スイッチと、前記第1配線層及び前記第2配線層の間の第3配線層に設けられ、導電性材料よりなるシールド部と、を具備する、ことを特徴とする。
この発明によれば、第1配線層と第2配線層の間の第3配線層にシールド部が設けられるため、第1配線層に設けられる各種回路の発するノイズが第2配線層に設けられる第2内部配線に伝播する可能性を、低く抑えることが可能となる。このため、圧電素子の起電力に重畳するノイズを低減することができ、圧電素子の起電力の変化に基づいてノズルからの液体の吐出状態を判定する場合において、ノズルからの液体の吐出状態を正確に判定することが可能となる。
また、この発明によれば、駆動信号の電位の変動や圧電素子の起電力の変化が、第1配線層に設けられる各種回路にノイズとして伝播する可能性を低く抑えることができるため、残留振動検出部においてノイズの影響を排除した正確な動作が可能となる。このため、圧電素子の起電力の変化に基づいてノズルからの液体の吐出状態を判定する場合において、正確な判定が可能となる。
本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンター1の概要を示す斜視図である。 インクジェットプリンター1の構成を示すブロック図である。 ヘッドユニット35の構成を説明するための説明図である。 記録ヘッド20の概略的な断面図である。 駆動信号COMの供給時における吐出部Dの断面形状の変化を説明するための説明図である。 吐出部Dにおける残留振動を表す単振動のモデルを示す回路図である。 吐出部Dにおける吐出状態が正常である場合の残留振動の実験値と計算値との関係を示すグラフである。 吐出部D内部に気泡が混入した場合の吐出部Dの状態を示す説明図である。 吐出部D内部への気泡が混入した場合の残留振動の実験値と計算値とを示すグラフである。 ノズルNZ付近のインクが固着した場合の吐出部Dの状態を示す説明図である。 ノズルNZ付近のインクが固着した場合の残留振動の実験値と計算値とを示すグラフである。 ノズルNZ付近に紙粉が付着した場合の吐出部Dの状態を示す説明図である。 ノズルNZ付近に紙粉が付着した場合の残留振動の実験値と計算値とを示すグラフである。 インクジェットプリンター1の要部を示すブロック図である。 ICチップ301とICチップ301の周辺回路とを示す回路図である。 供給部352Aの構成を示す回路図である。 残留振動検出部356Aの構成を示す回路図である。 ICチップ301の平面図である。 ICチップ301の部分断面図である。 供給部352Aの動作を示すタイミングチャートである。 供給部352Aの動作を説明するための説明図である。 供給部352Aの動作を説明するための説明図である。 供給部352Aの動作を説明するための説明図である。 計測部12の動作を示すタイミングチャートである。 判定結果信号Rsを説明するための説明図である。 第2実施形態に係る供給部352Bの構成を示す回路図である。 第2実施形態に係る残留振動検出部356Bの構成を示す回路図である。 第2実施形態に係るICチップ301の平面図である。 第2実施形態に係るICチップ301の部分断面図である。 第2実施形態の変形例に係る供給部352Cの構成を示す回路図である。 第3実施形態に係る供給部352Dの構成を示す回路図である。 供給部352Dの動作を示すタイミングチャートである。 第4実施形態に係る供給部352Eの構成を示す回路図である。 第4実施形態の変形例に係る供給部352Fの構成を示す回路図である。 変形例1に係るICチップ301の平面図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
<A.第1実施形態>
本実施形態では、インク(「液体」の一例)を吐出して記録用紙P(「媒体」の一例)に画像を形成するインクジェットプリンターを例示して、液体吐出装置を説明する。
<1.インクジェットプリンターの全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態における液体吐出装置の一種であるインクジェットプリンター1の構成を示す概略図である。以下、図1を参照しつつ、インクジェットプリンター1の構成について説明する。
なお、本実施形態では、インクジェットプリンター1が、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(CMYK)の4色のインクを吐出可能である場合を想定する。また、以下の説明では、図1において、+Z側(上側)を「上部」、−Z側(下側)を「下部」と称することがある。
図1に示すように、インクジェットプリンター1は、記録用紙Pを設置するためのトレイ91と、記録用紙Pを図において+X方向に排出する排紙口92と、操作パネル7とが設けられている。
操作パネル7は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示省略)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示省略)とを備えている。
また、インクジェットプリンター1は、図において+Y方向または−Y方向(以下、「Y軸方向」と称する)に往復動する移動体3を具備する印刷手段4と、記録用紙Pを印刷手段4に対し供給・排出する給紙手段5と、印刷手段4及び給紙手段5を制御する制御部6と、を備える。
制御部6の制御により、給紙手段5は、記録用紙Pを+X方向に一枚ずつ間欠送りする。記録用紙Pが移動体3の下部(−Z側)を通過するとき、移動体3が記録用紙Pの送り方向である+X方向と交差するY軸方向に往復移動しつつ、記録用紙Pに対してインクを吐出することで、記録用紙Pへの印刷が行われる。すなわち、移動体3の往復動の方向であるY軸方向が印刷における主走査方向であり、記録用紙Pが搬送される方向である+X方向が印刷における副走査方向である。
移動体3は、4色のインクと1対1に対応する4個のインクカートリッジ31と、4色のインクと1対1に対応する4個のヘッドユニット35と、4個のインクカートリッジ31及び4個のヘッドユニット35を搭載するキャリッジ32と、を備える。各インクカートリッジ31には、当該インクカートリッジ31に対応する色のインクが充填されている。各ヘッドユニット35には、当該ヘッドユニット35に対応する色のインクを充填するインクカートリッジ31からインクが供給される。なお、インクカートリッジ31は、キャリッジ32に搭載される代わりに、キャリッジ32の外部に設けられるものであってもよい。
印刷手段4は、移動体3の他に、移動体3を主走査方向に往復動させる駆動源となるキャリッジモーター41と、キャリッジモーター41の回転を受けて移動体3を往復動させる往復動機構42と、を備えている。往復動機構42は、その両端をフレーム(図示省略)に支持されたキャリッジガイド軸422と、キャリッジガイド軸422と略平行に延在するタイミングベルト421と、を備える。
キャリッジ32は、キャリッジガイド軸422に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト421の一部に固定されている。そして、キャリッジ32は、キャリッジモーター41がプーリを介してタイミングベルト421を正逆走行させると、キャリッジガイド軸422に案内されてY軸方向に往復動する。この往復動の際に、ヘッドユニット35が備える記録ヘッド20に設けられる複数の吐出部Dの各々からインクを吐出することで、記録用紙Pに画像を形成する印刷処理が実行される。なお、記録ヘッド20及び吐出部Dについては、後述する。
給紙手段5は、給紙手段5の駆動源である給紙モーター51と、給紙モーター51の作動により回転する給紙ローラ52とを有している。
給紙ローラ52は、記録用紙Pの搬送経路を挟んで上下に対向する従動ローラ52aと駆動ローラ52bとを含み、駆動ローラ52bは給紙モーター51に連結されている。このため、給紙ローラ52は、トレイ91に配置された記録用紙Pを印刷手段4に向かって1枚ずつ送り込み、また、印刷手段4から記録用紙Pを1枚ずつ排出したりすることができる。なお、インクジェットプリンター1は、トレイ91に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成であってもよい。
制御部6は、例えば、パーソナルコンピューターやデジタルカメラ等のホストコンピューター8から入力された印刷データImgに基づいて、インクジェットプリンター1の各部を制御して、インクジェットプリンター1に印刷処理を実行させる。
図2は、インクジェットプリンター1を概略的に示すブロック図である。インクジェットプリンター1は、上述したように、制御部6、操作パネル7、ヘッドユニット35、キャリッジモーター41、及び、給紙モーター51を備えるのに加えて、ホストコンピューター8から入力された印刷データImg等の各種データを受け取るインターフェース部9と、キャリッジモーター41を駆動するためのキャリッジモータードライバー43と、給紙モーター51を駆動するための給紙モータードライバー53と、ヘッドユニット35を駆動するための駆動信号COMを生成する駆動信号生成部33と、ヘッドユニット35が備える吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定する吐出状態判定処理を実行する吐出状態判定部10と、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が異常である場合に当該吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正常な状態に回復させるための回復処理を実行する回復機構24と、を備える。
回復機構24は、ヘッドユニット35が備える吐出部Dからインクを正常に吐出できなくなった場合、つまり、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が異常となった場合に、当該吐出部Dが正常にインクを吐出できる状態に回復させるための回復処理を実行する。
ここで、インクの吐出状態が異常である場合とは、吐出部Dからインクを吐出できない場合や、印刷データImgの示す画像を形成するために必要な量のインクを吐出部Dが吐出できない場合、吐出部Dが本来吐出すべき方向とは異なる方向にインクを吐出する場合、等を含む。
また、回復処理とは、吐出部Dに付着した紙粉等の異物をワイパーで拭き取るワイピング処理、吐出部Dからインクを予備的に吐出させるフラッシング処理、吐出部D内の増粘したインクや気泡等をチューブポンプ(図示省略)により吸引するポンピング処理等、吐出部Dのインクの吐出状態を正常に戻すための処理の総称である。
図2に示すように、制御部6は、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御することで、印刷処理、吐出状態判定処理、及び、回復処理などの各種処理の実行を制御するCPU(Central Processing Unit)61と、インクジェットプリンター1の制御プログラムや、その他の各種情報を記憶する記憶部62と、を備える。
記憶部62は、ホストコンピューター8からインターフェース部9を介して供給される印刷データImgを図示しないデータ格納領域に格納する不揮発性半導体メモリーの一種であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)と、吐出状態判定処理などを実行する際に用いる各種データを一時的に格納し、あるいは印刷処理等の各種処理を実行するための制御プログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)と、制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリーの一種であるPROMとを備えている。なお、制御部6の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
CPU61は、ホストコンピューター8から印刷データImgが供給されると、当該印刷データImgを記憶部62に格納する。そして、CPU61は、当該印刷データImgに基づいて各種制御信号を生成し、生成した制御信号を、キャリッジモータードライバー43、給紙モータードライバー53、駆動信号生成部33、ヘッドユニット35等、インクジェットプリンター1の各部に供給することで、インクジェットプリンター1の各部を制御し、これにより印刷処理の実行を制御する。
なお、上述のとおり、移動体3は、4色のインクに対応した4個のヘッドユニット35を備える。但し、図2では、図示の都合上、1個のヘッドユニット35のみを図示している。
また、上述のとおり、各ヘッドユニット35は、複数の吐出部Dを備える。詳細は後述するが、各吐出部Dは、駆動信号COMに応じて変位する圧電素子200と、内部にインクを充填し圧電素子200の変位により当該内部の圧力が増減されるキャビティ220と、キャビティ220に充填されたインクを吐出するノズルNZと、を備える。
<2.ヘッドユニットの構成>
次に、図3及び図4を参照しつつ、ヘッドユニット35と、ヘッドユニット35に設けられる吐出部Dと、について説明する。
図3は、ヘッドユニット35を概略的に示した斜視図である。この図に示すように、ヘッドユニット35は、複数の吐出部Dが設けられた記録ヘッド20と、フレキシブルケーブル300上にCOF(Chip On Film)技術を用いて実装されたIC(Integrated Circuit)チップ301と、を備える。
図3に示すように、記録ヘッド20は、複数のノズルNZが設けられたノズルプレート240を備える。すなわち、ノズルプレート240には、記録ヘッド20に設けられる複数の吐出部Dと1対1に対応するように、複数のノズルNZが形成されている。
ICチップ301には、集積回路30が実装されている。集積回路30は、記録ヘッド20が備える複数の吐出部Dの各々に対して、駆動信号生成部33が生成した駆動信号COMを供給することで、各吐出部D(厳密には、吐出部Dが具備する圧電素子200)を駆動する。
ICチップ301が実装されるフレキシブルケーブル300は、インクジェットプリンター1の本体側(例えば、制御部6、駆動信号生成部33等)から供給される駆動信号COMを含む各種信号を、ヘッドユニット35に伝送するための配線基板であり、ポリイミド等から形成された可撓性のベースフィルムと、当該ベースフィルム上に形成された配線パターンと、を備える。フレキシブルケーブル300の一端部は、記録ヘッド20の端子部(図示省略)に接続され、フレキシブルケーブル300の他端部は、インクジェットプリンター1の本体側からの信号を中継する基板(図示省略)の端子部に接続されている。
図4は、記録ヘッド20の概略的な一部断面図の一例である。なお、この図では、記録ヘッド20のうち、当該記録ヘッド20が有する複数の吐出部Dの中の1個の吐出部Dと、当該1個の吐出部Dにインク供給口260を介して連通するリザーバ250と、インクカートリッジ31からリザーバ250にインクを供給するためのインク取り入れ口270と、を示している。
図4に示すように、吐出部Dは、圧電素子200と、内部にインクが充填されたキャビティ220と、キャビティ220に連通するノズルNZと、振動板210と、を備える。吐出部Dは、圧電素子200が駆動信号COMにより駆動されて変位することにより、キャビティ220内のインクをノズルNZから吐出させる。
吐出部Dのキャビティ220は、凹部を有するような所定の形状に成形されたキャビティプレート230と、ノズルNZが形成されたノズルプレート240と、振動板210と、により区画される空間である。キャビティ220は、インク供給口260を介してリザーバ250と連通している。リザーバ250は、インク取り入れ口270を介して1つのインクカートリッジ31と連通している。
本実施形態では、圧電素子200として、例えば、図4に示すようなユニモルフ(モノモルフ)型を採用する。圧電素子200は、上部電極122と、下部電極124と、上部電極122及び下部電極124の間に設けられた圧電体201と、を有する。下部電極124が所定の基準電位VBSに設定され、上部電極122に駆動信号COMが供給されることで、上部電極122及び下部電極124の間に電圧が印加されると、当該印加された電圧に応じて圧電素子200が図において上下方向に撓み、その結果、圧電素子200が振動する。
キャビティプレート230の上面開口部には、振動板210が設置され、振動板210には、下部電極124が接合されている。このため、圧電素子200が駆動信号COMにより振動すると、振動板210も振動する。そして、振動板210の振動によりキャビティ220の容積(キャビティ220内の圧力)が変化し、キャビティ220内に充填されたインクがノズルNZより吐出される。インクの吐出によりキャビティ220内のインクが減少した場合、リザーバ250からインクが供給される。また、リザーバ250へは、インクカートリッジ31からインク取り入れ口270を介してインクが供給される。
<3.吐出部の動作と残留振動>
次に、吐出部Dからのインク吐出動作と、吐出部Dに生じる残留振動と、について、図5乃至図13を参照しながら説明する。
図5は、吐出部Dからのインク吐出動作を説明するための説明図である。図5(a)に示す状態において、吐出部Dが備える圧電素子200に対して集積回路30から駆動信号COMが供給されると、当該圧電素子200において、電極間に印加された電界に応じた歪が発生し、当該吐出部Dの振動板210は図において上方向へ撓む。これにより、図5(a)に示す初期状態と比較して、図5(b)に示すように、当該吐出部Dのキャビティ220の容積が拡大する。図5(b)に示す状態において、駆動信号COMの示す電位を変化させると、振動板210は、その弾性復元力によって復元し、初期状態における振動板210の位置を越えて図において下方向に移動し、図5(c)に示すようにキャビティ220の容積が急激に収縮する。このときキャビティ220内に発生する圧縮圧力により、キャビティ220を満たすインクの一部が、このキャビティ220に連通しているノズルNZからインク滴として吐出される。
各キャビティ220の振動板210は、この一連のインク吐出動作が終了した後、次のインク吐出動作を開始するまでの間、減衰振動、すなわち、残留振動をする。振動板210の残留振動は、ノズルNZやインク供給口260の形状あるいはインクの粘度等による音響抵抗rと、流路内のインク重量によるイナータンスmと、振動板210のコンプライアンスCmと、によって決定される固有振動周波数を有するものと想定される。
上記想定に基づく振動板210の残留振動の計算モデルについて説明する。
図6は、振動板210の残留振動を想定した単振動の計算モデルを示す回路図である。この図に示すように、振動板210の残留振動の計算モデルは、音圧pと、上述のイナータンスm、コンプライアンスCm及び音響抵抗rとで表せる。そして、図6の回路に音圧pを与えた時のステップ応答を体積速度uについて計算すると、次式が得られる。
u={p/(ω・m)}e−σt・sin(ωt)
ω={1/(m・Cm)−α}1/2
σ=r/(2m)
この式から得られた計算結果(計算値)と、別途行った吐出部Dの残留振動の実験における実験結果(実験値)とを比較する。なお、残留振動の実験とは、インクの吐出状態が正常である吐出部Dからインクを吐出させた後に、当該吐出部Dの振動板210において生じる残留振動を検出する実験である。
図7は、残留振動の実験値と計算値との関係を示すグラフである。図7に示すグラフからも分かるように、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が正常である場合、実験値と計算値の2つの波形は、概ね一致している。
吐出部Dがインク吐出動作を行ったにもかかわらず、当該吐出部Dにおけるインクの吐出状態が異常であり、当該吐出部DのノズルNZからインク滴が正常に吐出されない場合、即ち吐出異常が発生する場合がある。この吐出異常が発生する原因としては、(1)キャビティ220内への気泡の混入、(2)キャビティ220内のインクの乾燥等に起因するキャビティ220内のインクの増粘または固着、(3)ノズルNZの出口付近への紙粉付着、等が挙げられる。
上述のとおり、吐出異常とは、典型的にはノズルNZからインクを吐出できない状態となること、即ちインクの不吐出現象が現れ、その場合、記録用紙Pに印刷した画像における画素のドット抜けを生じることである。また、上述のとおり、吐出異常の場合には、ノズルNZからインクが吐出されたとしても、インクの量が過少であったり、吐出されたインク滴の飛行方向(弾道)がずれたりして適正に着弾しないので、やはり画素のドット抜けとなって現れる。このようなことから、以下の説明では、吐出異常のことを単に「ドット抜け」と称し、また、吐出異常となった吐出部Dが具備するノズルNZを「抜けノズル」と称する場合がある。
以下においては、図7に示す比較結果に基づいて、吐出部Dにおいて生じる吐出異常の原因別に、残留振動の計算値と実験値が概ね一致するように、音響抵抗r及びイナータンスmのうち少なくとも一方の値を調整する。
まず、吐出異常の原因の1つである、(1)キャビティ220内への気泡の混入について検討する。図8は、キャビティ220内に気泡が混入した場合を説明するための概念図である。図8に示すように、キャビティ220内に気泡が混入した場合には、キャビティ220内を満たすインクの総重量が減り、イナータンスmが低下するものと考えられる。また、図8に例示するように、気泡がノズルNZ付近に付着している場合には、その径の大きさだけノズルNZの径が大きくなったと看做される状態となり、音響抵抗rが低下するものと考えられる。
したがって、図7に示すようなインクの吐出状態が正常である場合と比較して、音響抵抗r及びイナータンスmを小さく設定して、気泡混入時の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図9のような結果(グラフ)が得られた。図7及び図9に示すように、キャビティ220内に気泡が混入して吐出異常が生じた場合には、吐出状態が正常である場合と比較して、残留振動の周波数が高くなる。なお、音響抵抗rの低下などにより、残留振動の振幅の減衰率も小さくなり、残留振動は、その振幅をゆっくりと下げていることも確認することができる。
次に、吐出異常の原因の1つである、(2)キャビティ220内のインクの増粘または固着について検討する。図10は、キャビティ220のノズルNZ付近のインクが乾燥により固着した場合を説明するための概念図である。図10に示すように、ノズルNZ付近のインクが乾燥して固着した場合、キャビティ220内のインクは、キャビティ220内に閉じこめられたような状況となる。このような場合、音響抵抗rが増加するものと考えられる。
したがって、図7に示すようなインクの吐出状態が正常である場合と比較して、音響抵抗rを大きく設定して、ノズルNZ付近のインクが固着または増粘した場合の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図11のような結果(グラフ)が得られた。なお、図11に示す実験値は、数日間図示しないキャップを装着しない状態で吐出部Dを放置し、ノズルNZ付近のインクが固着した状態における振動板210の残留振動を測定したものである。図7及び図11に示すように、キャビティ220内のノズルNZ付近のインクが固着した場合には、吐出状態が正常である場合と比較して、残留振動の周波数が極めて低くなるとともに、残留振動が過減衰となる特徴的な波形が得られる。これは、インクを吐出するために振動板210が+Z方向(上方)に引き寄せられることによって、キャビティ220内にリザーバからインクが流入した後に、振動板210が−Z方向(下方)に移動するときに、キャビティ220内のインクの逃げ道がないために、振動板210が急激に振動できなくなるため(過減衰となるため)である。
次に、吐出異常の原因の1つである、(3)ノズルNZの出口付近への紙粉付着について検討する。図12は、ノズルNZの出口付近に紙粉が付着した場合を説明するための概念図である。図12に示すように、ノズルNZの出口付近に紙粉が付着した場合、キャビティ220内から紙粉を介してインクが染み出してしまうとともに、ノズルNZからインクを吐出することができなくなる。ノズルNZの出口付近に紙粉が付着し、ノズルNZからインクが染み出している場合には、振動板210から見てキャビティ220内から染み出した分のインクが、吐出状態が正常の場合よりも増えることにより、イナータンスmが増加するものと考えられる。また、ノズルNZの出口付近に付着した紙粉の繊維によって音響抵抗rが増大するものと考えられる。
従って、図7に示すようなインクの吐出状態が正常である場合と比較して、イナータンスm及び音響抵抗rを大きく設定して、ノズルNZの出口付近への紙粉付着時の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図13のような結果(グラフ)が得られた。図7及び図13のグラフから分かるように、ノズルNZの出口付近に紙粉が付着した場合には、吐出状態が正常である場合と比較して、残留振動の周波数が低くなる。
なお、図11及び図13に示すグラフから、(3)ノズルNZの出口付近への紙粉付着の場合は、(2)キャビティ220内のインクの増粘の場合と比較して、残留振動の周波数が高いことが分かる。
ここで、(2)インクの増粘の場合と、(3)ノズルNZの出口付近への紙粉付着の場合とでは、いずれも、インクの吐出状態が正常である場合に比べて残留振動の周波数が低くなっている。これら2つの吐出異常の原因は、残留振動の波形、具体的には、残留振動の周波数または周期を、予め定められた閾値を持って比較することで、区別することができる。
以上の説明から明らかなように、各吐出部Dを駆動したときに生じる残留振動の波形、特に、残留振動の周波数または周期に基づいて、各吐出部Dの吐出状態を判定することができる。より具体的には、残留振動の周波数または周期に基づいて、各吐出部Dにおける吐出状態が正常であるか否かについて、及び、各吐出部Dにおける吐出状態が異常である場合に当該吐出異常の原因が上述した(1)〜(3)のうち何れに該当するかについて、判定することができる。本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、残留振動を解析して吐出状態を判定する吐出状態判定処理を実行する。
<4.集積回路の構成>
以下、図14乃至図19を参照しつつ、集積回路30の構成と、集積回路30の周辺回路と、について説明する。
図14は、吐出部Dにおけるインクの吐出状態の判定に関係するインクジェットプリンター1の要部を示すブロック図である。
この図に示すようにヘッドユニット35は、記録ヘッド20と、ICチップ301に設けられた集積回路30と、を備える。上述のとおり、記録ヘッド20には、複数の吐出部Dが設けられる。つまり、記録ヘッド20は、複数の圧電素子200を備える。以下では、各ヘッドユニット35が備える記録ヘッド20に設けられる圧電素子200の個数(吐出部Dの個数)をn個として説明する(nは2以上の自然数)。
図14に示すように、集積回路30は、供給部352Aと、制御信号生成部354と、残留振動検出部356Aと、を備える。
制御信号生成部354は、制御部6から供給される印字データSIやクロック信号等に基づいて、制御信号S(S1〜Sn、Sc)及び、制御信号A(A1〜An)を生成する。
供給部352Aは、制御信号生成部354が生成する制御信号Aに基づいて、駆動信号生成部33から供給される駆動信号COMを、各圧電素子200に供給する。
本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、駆動信号COMを圧電素子200に印加したときに、当該圧電素子200を具備する吐出部Dにおいて生じるキャビティ220内の圧力変化である残留振動を、圧電素子200の起電力の変化として検出し、当該検出結果に基づいて、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定する。
具体的には、まず、供給部352Aは、制御信号生成部354が生成する制御信号Sに基づいて、残留振動の検出対象である吐出部Dが備える圧電素子200の起電力の変化を示す出力信号OUT1を生成し、生成した出力信号OUT1を残留振動検出部356Aに対して供給する。そして、残留振動検出部356Aは、供給部352Aから供給される出力信号OUT1に基づいて、吐出部Dにおいて生じる残留振動を示す残留振動信号Vdを生成する。さらに、吐出状態判定部10は、残留振動検出部356Aが生成する残留振動信号Vdに基づいて、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定して、判定結果を示す判定結果信号Rsを出力する。
図14に示すように、吐出状態判定部10は、計測部12と、判定部14と、を備える。計測部12は、残留振動検出部356Aが生成する残留振動信号Vdに基づいて、残留振動の周期を示す周期データNTcと、周期データNTcが有効であることを示す有効性フラグFlagと、を生成する。判定部14は、周期データNTc及び有効性フラグFlagに基づいて、各吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定し、判定結果を示す判定結果信号Rsを出力する。これにより、インクジェットプリンター1は、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定することができる。
なお、駆動信号COMは、圧電素子200を駆動する必要があるため、例えば42Vの電源電圧で動作する。これに対して、残留振動検出部356Aや、吐出状態判定部10は、例えば3.3Vの電源電圧で動作する。
次に、図15を参照しつつ、ICチップ301と、ICチップ301の周辺回路とを電気的に接続する配線について説明する。
図15は、集積回路30が実装されたICチップ301と、ICチップ301の周辺回路と、を示すブロック図である。ICチップ301は、入力端子x0と、n個の接続端子x1と、出力端子x2と、を備える。
図15に示すように、入力端子x0は、内部配線により供給部352Aと電気的に接続される。また、入力端子x0には、外部配線LX0が接続されている。外部配線LX0は、集積回路30及び駆動信号生成部33を電気的に接続するための配線であり、駆動信号生成部33が出力する駆動信号COMを集積回路30に供給する。
各接続端子x1は、内部配線により供給部352Aと電気的に接続される。また、各接続端子x1には、外部配線LX1(「第1外部配線」の一例)が接続されている。外部配線LX1は、集積回路30及び圧電素子200を電気的に接続するための配線である。
出力端子x2は、内部配線により残留振動検出部356Aと電気的に接続される。また、出力端子x2には、外部配線LX2(「第2外部配線」の一例)が接続されている。外部配線LX2は、集積回路30及び吐出状態判定部10を電気的に接続するための配線であり、残留振動検出部356Aが生成する残留振動信号Vdを吐出状態判定部10に供給する。
外部配線LX0、LX1、及び、LX2は、いずれも、フレキシブルケーブル300上に形成される配線である。また、外部配線LX1の経路長は、外部配線LX0の経路長よりも短く、また、外部配線LX2の経路長よりも短い。すなわち、集積回路30が実装されるICチップ301は、フレキシブルケーブル300のうち、駆動信号生成部33や吐出状態判定部10等が設けられるインクジェットプリンター1の本体側の基板(または本体側からの信号を中継する基板)に接続される他端部よりも、記録ヘッド20に接続される一端部に近い位置に設けられる。
図16は、供給部352Aと、n個の圧電素子200との電気的な構成を示す回路図である。
図16に示すように、供給部352Aは、駆動信号COMが供給される内部配線L1(「第1内部配線」の一例)と、圧電素子200の起電力Voutが供給される内部配線L2(「第2内部配線」の一例)と、圧電素子200に駆動信号COMを供給するか否か、及び、圧電素子200の起電力Voutを内部配線L2に供給するか否かを選択するための選択回路UXと、起電力Voutに基づいて起電力Voutの変化を示す出力信号OUT1を生成するハイパスフィルターHPF1と、抵抗R3と、を備える。
図16に示すように、選択回路UXは、n個の圧電素子200と1対1に対応するn個の選択ユニットU(U1〜Un)を備える。各圧電素子200の上部電極122は、各選択ユニットUに電気的に接続される。また、各圧電素子200の下部電極124は、基準電位VBSに設定された供給ラインLvに電気的に接続される。
各選択ユニットUは、トランスファーゲートで構成された2個のスイッチを備える。例えば、図16に示すように、選択ユニットU1は、スイッチSW1(「第1スイッチ」の一例)とスイッチSW2(「第2スイッチ」の一例)とを備える。以下では、選択ユニットUとして選択ユニットU1を例示して説明するが、選択ユニットU2〜Unは、選択ユニットU1と同様に構成されている。
なお、本実施形態において、選択ユニットUが備えるスイッチを構成するトランスファーゲートは、並列に接続されたPチャネルトランジスターとNチャネルトランジスターとを備えるが、いずれか一方のチャネル型のトランジスターで構成されるものであってもよい。
図16に示すように、スイッチSW1は、制御信号A1がハイレベルでオン状態となり、圧電素子200に駆動信号COMを供給する一方、制御信号A1がローレベルでオフ状態となり、圧電素子200に駆動信号COMを供給しない。すなわち、スイッチSW1は、駆動信号COMを圧電素子200に供給するか否かを切替可能に配置されている。
スイッチSW2は、制御信号S1がハイレベルでオン状態となり、圧電素子200の起電力VoutをハイパスフィルターHPF1に供給する一方、制御信号S1がローレベルでオフ状態となり、圧電素子200の起電力VoutをハイパスフィルターHPF1に供給しない。すなわち、スイッチSW2は、圧電素子200の起電力VoutをハイパスフィルターHPF1に供給するか否かを切替可能に配置されている。
なお、詳細は後述するが、本実施形態において、スイッチSW1がオン状態になる期間と、スイッチSW2がオン状態になる期間は、一部重複するが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、スイッチSW1とスイッチSW2とは、排他的にオン状態になるものであってもよい。
図16に示すように、圧電素子200の上部電極122に電気的に接続される外部配線LX1と、スイッチSW1と、スイッチSW2と、はノードN1において電気的に接続されている。
また、内部配線L1及び内部配線L2は、抵抗R3を介して電気的に接続されている。より具体的には、内部配線L1及び抵抗R3の一方の端子は、ノードN2において電気的に接続され、また、内部配線L2及び抵抗R3の他方の端子は、ノードN3において電気的に接続されている。抵抗R3は、ノードN3に駆動信号COMの電圧を供給するバイアス抵抗として機能する。なお、供給部352Aは、ノードN3をバイアスする抵抗R3を備えているが、この抵抗R3は設けられなくてもよい。
また、スイッチSW1及び駆動信号生成部33は内部配線L1により電気的に接続され、スイッチSW2及びハイパスフィルターHPF1は、内部配線L2により電気的に接続されている。
ハイパスフィルターHPF1は、キャパシターC1と、抵抗R1と、抵抗R1と並列に設けられたスイッチSW3と、を備え、起電力Voutに基づいて出力信号OUT1を生成する。キャパシターC1の一方の端子は内部配線L2と電気的に接続され、他方の端子は抵抗R1の一方の端子と電気的に接続される。抵抗R1の他方の端子には固定電位であるアナロググランドAGNDが供給される。アナロググランドAGNDの電位は、例えば、残留振動検出部356Aの高電源電位と低電源電位との中心電位に設定されている。
スイッチSW3は、スイッチSW1と同様に、トランスファーゲートで構成される。スイッチSW3は、制御信号Scがハイレベルでオン状態となり、ローレベルでオフ状態となる。スイッチSW3をオン状態とすることで、残留振動検出部356Aの入力端子の電位をアナロググランドAGNDにクランプすることが可能となる。
圧電素子200の起電力Voutの変化は、キャビティ220内部の圧力の変化を示す。このため、残留振動の周波数帯域は、駆動信号COMの周波数帯域と比較して狭い。また、残留振動にはノイズが重畳することがある。ハイパスフィルターHPF1は、残留振動の周波数帯域よりも低域の周波数成分を減衰させる。これにより、残留振動検出部356Aで検出する残留振動の精度を向上させることができる。
ところで、本実施形態では、駆動信号COMの最大電位は42Vであるのに対し、残留振動検出部356Aの高電源電位は3.3V、低電源電位は0Vとしている。これは、圧電素子200を駆動するためには大振幅の駆動信号COMが必要となる一方、残留振動検出部356Aはアナログ信号の処理回路であり、大きなダイナミックレンジが不要だからである。すなわち、駆動信号COMの最大電位と比較して、残留振動検出部356Aの高電源電位は低い。このため、本実施形態では、ハイパスフィルターHPF1のキャパシターC1によって、起電力Voutの直流成分をカットしている。
また、詳細は後述するが、ハイパスフィルターHPF1のスイッチSW3は、残留振動を検出する期間を除いてオン状態となり残留振動検出部356Aの入力端子はアナロググランドAGNDにクランプされる。すなわち、本実施形態において、ノードN3の電位が大きく変化する期間において、スイッチSW3はオン状態となる。キャパシターC1によって直流成分がカットされても、ノードN3の電位が大きく変化すると、残留振動検出部356Aの入力端子の電位が高電源電位を超えて大きく変化する。電子回路において、このようにダイナミックレンジを超える大振幅の信号が供給されると、回路要素の各部に電荷が充電され、正常に動作するまでに長時間を要することがある。また、ダイナミックレンジを超える大振幅の信号が供給される場合、電子回路を構成するトランジスターなどの部品の耐圧を高くする必要がある。
これに対して、本実施形態では、ノードN3の電位が大きく変化する期間においてスイッチSW3をオン状態として、残留振動検出部356Aの入力端子の電位をアナロググランドAGNDにクランプする。このため、残留振動の検出期間において直ちに残留振動の検出を開始することができ、さらに残留振動検出部356Aを構成する部品の耐圧を下げることが可能となる。
図17に、残留振動検出部356Aの詳細な構成例を示す。この図に示すように、残留振動検出部356Aは、ゲイン調整部36、ローパスフィルター37、バッファ38を備える。
ゲイン調整部36は、オペアンプを用いた負帰還型のアンプであり、その出力信号を分圧する可変抵抗器Vrの中点を調整することによって、出力信号OUT1の振幅を調整することができる。
ローパスフィルター37は、出力信号OUT1の高域周波数成分を減衰させる。この例のローパスフィルター37は、オペアンプを用いた多重帰還型であるが、残留振動の周波数帯域よりも高域周波数成分を減衰させるのであれば、どのような形式であってもよい。ローパスフィルター37によって、検出する周波数範囲を限定することでノイズ成分を除去することが可能となる。
バッファ38は、インピーダンスを変換してローインピーダンスの残留振動信号Vdを出力する。この例のバッファ38は、オペアンプを用いたボルテージフォロアで構成されている。
このような残留振動検出部356Aにより、出力信号OUT1からノイズ成分を取り除き、且つ、出力信号OUT1の振幅を増幅させた残留振動信号Vdを生成することができる。このため、残留振動信号Vdに基づいて、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正確に判定することが可能となる。
集積回路30は、複数の配線層に、トランジスター等の集積回路30の各種構成要素が形成される。以下、集積回路30の配線構造について、図18及び図19を参照しつつ説明する。
図18は、集積回路30が実装されるICチップ301の一部を、当該集積回路30が形成される基板に垂直な方向から平面視したときの平面図の一例である。図19は、ICチップ301を、図18におけるE−e線で破断した部分断面図の一例である。
なお、図18では、簡単のため、内部配線L1、内部配線L2、選択回路UX、残留振動検出部356A等、集積回路30の一部の構成要素を、概略的に示している。
図19に例示するように、集積回路30を構成する各要素は、基板302上に実装される。本実施形態では、基板302としてP型半導体基板を用いる場合を例示している。なお、基板302としては、P型半導体基板以外の任意の基板、例えば、N型半導体基板等の半導体基板や、ガラス基板等を採用してもよい。
図19に例示するように、基板302には、基板302にN型の不純物を注入して形成されたNウェル303が設けられている。また、Nウェル303には、Nウェル303にP型の不純物を注入して形成された複数のP型不純物拡散層Ppが設けられている。なお、基板302には、例えば、Nウェル303が形成されていない領域において、基板302にP型の不純物を注入したPウェルが設けられ、また、当該PウェルにN型の不純物を注入して形成された複数のN型不純物拡散層が設けられていてもよい。
図19に示す例では、Nウェル303(またはPウェル)上に、アルミニウム等の金属その他の導電性材料からなる複数の配線層LY(LY1〜LY5)と、非導電性の材料からなる複数の層間絶縁層LZ(LZ1〜LZ6)と、が設けられている。なお、配線層LYとは、同一の層に設けられる1または複数の導電性の端子または配線の総称である。
そして、図18及び図19に示す例では、配線層LY1〜LY5のうち、配線層LY1及びLY2において、残留振動検出部356Aや選択回路UX等の電子回路(ロジック回路)が形成されており、配線層LY3において、導電性の材料よりなるシールド部SH(SH1、SH2)が形成されており、配線層LY5において、内部配線L1及びL2が形成されている。ここで、シールド部SHは、所定の電位(例えば、アナロググランドAGNDの電位)に設定された給電部(図示省略)に電気的に接続されている。
以下では、シールド部SHが形成される配線層LYをシールド配線層(「第3配線層」の一例)と称し、シールド配線層から見て基板302側の配線層LYを下部配線層(「第1配線層」の一例)と称し、シールド配線層から見て基板302とは反対側の配線層LYを上部配線層(「第2配線層」の一例)と称する。すなわち、本実施形態では、下部配線層は、電子回路(ロジック回路)が設けられる配線層であり、上部配線層は、内部配線L1及びL2等が設けられる配線層である。
図19では、理解を容易にするために、残留振動検出部356Aを構成する構成要素の一例として、例示的に2個のPチャネルトランジスターを示している。この図では、各トランジスターは、配線層LY1にゲート電極GTを設け、不純物拡散層Ppをソースまたはドレインとする態様を例示している。
なお、この図では、半導体基板にアクティブ層を有するMOS型トランジスターを例示しているが、電子回路を構成するトランジスターは、どのような酒類のトランジスターでもよい。例えば、薄膜トランジスターでもよいし、電界効果トランジスターでもよい。
また、図19では、シールド配線層が1層の配線層LY3からなり、下部配線層が2層の配線層LY1及びLY2からなり、上部配線層が2層の配線層LY4及びLY5からなる場合を例示しているが、シールド配線層、下部配線層、及び、上部配線層の各々は、1層以上の配線層LYからなるものであればよい。また、下部配線層は、Nウェル303(及びPウェル)、及び、不純物拡散層を含むものであってもよい。
集積回路30は、平面視したときに、耐圧の低い部品から構成される電子回路や当該電子回路に接続される配線等が下部配線層に形成される低電圧領域AR1(「第1領域」の一例)と、耐圧の高い部品から構成される電子回路や当該電子回路に接続される配線等が下部配線層に形成される高電圧領域AR2(「第2領域」の一例)と、に区分される。
本実施形態では、図18に例示するように、残留振動検出部356Aは低電圧領域AR1の下部配線層に設けられ、選択回路UXは高電圧領域AR2の下部配線層に設けられる。
また、本実施形態では、図18に例示するように、低電圧領域AR1は、部分領域AP1(「第1部分領域」の一例)を含み、高電圧領域AR2は、部分領域AP2(「第2部分領域」の一例)を含む。内部配線L1は、部分領域AP2の上部配線層に設けられ、内部配線L2は、部分領域AP1の上部配線層と部分領域AP2の上部配線層とに設けられる。
より具体的には、部分領域AP2は、部分領域AP2aと部分領域AP2bとを含む。そして、内部配線L1は、高電圧領域AR2のうち部分領域AP2bの上部配線層に設けられ、内部配線L2は、高電圧領域AR2のうち部分領域AP2aの上部配線層に設けられる。
また、本実施形態では、図18に例示するように、シールド部SHが、平面視して、部分領域AP1及び部分領域AP2を少なくとも含む領域に設けられる。
より具体的には、本実施形態において、シールド部SHは、シールド部SH1と、シールド部SH2とを含む。そして、シールド部SH1は、内部配線L1を覆うように、部分領域AP2bを含む領域に設けられ、シールド部SH2は、内部配線L2を覆うように、部分領域AP1及び部分領域AP2aを含む領域に設けられる。
なお、この図に示す例では、平面視してシールド部SH1及びSH2が離間するようにシールド部SHが設けられているが、シールド部SH1及びSH2が接続するようにシールド部SHが設けられていてもよい。つまり、この図に示す例では、シールド部SHは、2つの部分(SH1及びSH2)に区分されているが、1つの部分からなるものであってもよいし、3以上の部分に区分されていてもよい。
また、図18及び図19に示す例では、ハイパスフィルターHPF1のキャパシターC1は、低電圧領域AR1の配線層LY3及びLY4に設けられているが、キャパシターC1はいずれの配線層LYに設けられていてもよい。
以上において説明したように、本実施形態では、残留振動検出部356Aを構成する電子回路のダイナミックレンジと比較して大振幅の信号である駆動信号COMが供給される内部配線L1と、起電力Voutが供給される内部配線L2と、が上部配線層に形成される。また、残留振動検出部356Aを構成する電子回路(ロジック回路)が下部配線層に形成される。そして、下部配線層及び上部配線層の間のシールド配線層には、所定の電位に設定されたシールド部SHが、平面視して内部配線L1及びL2を覆うように設けられる。
このため、内部配線L1またはL2と電子回路(ロジック回路)の間に寄生容量が生じることを防止することができ、駆動信号COMの電位の変動または起電力Voutの電位の変動が、ノイズとして電子回路に伝播することを防止することが可能となる。これにより、残留振動検出部356A等の電子回路において、ノイズの影響を排除した正確な残留振動の検出が可能となり、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正確に判定することが可能となる。
上述のとおり、インクジェットプリンター1は、圧電素子200の起電力Voutの変化を検出し、当該検出結果に基づいて、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定する。このため、起電力Voutにノイズが重畳した場合には、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正確に判定できなく可能性が高くなる。
これに対して、本実施形態では、シールド配線層にシールド部SHを設けるため、電子回路において生じるノイズが内部配線L2に伝播する可能性を低く抑えることができる。すなわち、電子回路において生じるノイズが起電力Voutに重畳することを防止し、残留振動検出部356Aで検出する残留振動の精度を向上させることができる。
<5.供給部の動作>
次に、図20乃至図23を参照しつつ、供給部352Aの動作について説明する。図20は供給部352Aの動作を示すタイミングチャートであり、図21〜図23は、各期間におけるスイッチSW1、SW2及びSW3のオン状態及びオフ状態を示す説明図である。なお、図21〜図23に示す例は、選択ユニットU1に対応する吐出部Dにおけるインクの吐出状態を検出する場合を想定している。
まず、時刻t0から時刻t1までの期間T1では、駆動信号COMに微振動パルスP1が含まれている。微振動パルスP1が圧電素子200に印加されると、圧電素子200は微振動する。この場合、インクがノズルNZから吐出することはないが、キャビティ220内のインクを撹拌してその増粘を抑制することができる。期間T1では、制御信号A1及びS1がローレベルとなるので、スイッチSW1及びSW2がオフ状態となる。一方、期間T1では、制御信号Scがハイレベルとなるので、スイッチSW3がオン状態となる。この結果、図21(A)に示すように、ノードN4の電位はアナロググランドAGNDにクランプされる。
なお、期間T1において、制御信号A2〜Anはハイレベル、制御信号S2〜Snはローレベルになるので、検査対象以外の吐出部Dに対応する圧電素子200に微振動パルスP1が印加され、検査対象以外の吐出部Dに対応するキャビティ220内のインクについて増粘が抑制される。
次に、時刻t1から時刻t2までの期間T2は、駆動信号COMに検査パルスP2が含まれている。期間T2は、制御信号A1がハイレベルとなり、スイッチSW1がオン状態となる点を除いて、期間T1と同様である。すなわち、期間T2において、図21(B)に示すように、スイッチSW1及びSW3がオン状態となる。
スイッチSW1がオン状態となって検査パルスP2が圧電素子200に印加されると、圧電素子200は、検査パルスP2の立ち下がりに同期してインクをキャビティ220内に引き込む方向に撓み、検査パルスP2の立ち上がりに同期してインクをキャビティ220から押し出す方向に撓む。
ここで、検査パルスP2は、インクがノズルNZから吐出しないように振幅、位相及び立ち上がり時間が調整されていてもよいし、あるいは、検査パルスP2によってインクがノズルNZから吐出されてもよい。検査パルスP2が非吐出に対応する波形である場合には、印刷処理を実行している期間に吐出状態判定処理を実行し残留振動を検出することができる。一方、検査パルスP2が吐出に対応する波形である場合には、例えば、ヘッドユニット35を記録用紙Pからはずれた位置に移動させたうえで、吐出状態判定処理を実行すればよい。
次に、時刻t2から時刻t3までの期間T3においては、駆動信号COMは、所定電位Vxとなっている。期間T3では、制御信号A1、S1及びScがハイレベルとなるので、スイッチSW1、SW2及びSW3がオン状態となる。この結果、図22に示すようにノードN2の電位は所定電位Vxとなり、また、ノードN3の電位も所定電位Vxとなる。
次に、時刻t3から時刻t4までの期間T4においては、駆動信号COMは、所定電位Vxとなっている。期間T4では、制御信号S1がハイレベルを維持するので、スイッチSW2がオン状態となる。一方、制御信号A1及びScがローレベルとなるので、スイッチSW1及びSW3がオフ状態となる。この結果、図23に示すようにノードN2の電位は所定電位Vxとなり、また、ノードN3の電位は抵抗R3によってバイアスされた状態で、圧電素子200に発生する起電力VoutがハイパスフィルターHPF1を介して出力信号OUT1として取り出される。
次に、時刻t4から時刻t5までの期間T5において、駆動信号COMは、所定電位Vxとなっている。期間T5では、期間T3と同様に、制御信号A1、S1及びScがハイレベルとなるので、スイッチSW1、SW2及びSW3がオン状態となる。この結果、図22に示すようにノードN2の電位は所定電位Vxとなり、また、ノードN3の電位も所定電位Vxとなる。
次に、時刻t5から時刻t6までの期間T6は、期間T2と同様に、制御信号A1及びScがハイレベルとなるので、スイッチSW1及びSW3がオン状態となる。一方、制御信号S1がローレベルとなるので、スイッチSW2がオフ状態となる。この結果、図21(B)に示すように駆動信号COMがスイッチSW1を介して圧電素子200に印加される。また、スイッチSW3がオン状態となるので、ノードN4の電位はアナロググランドAGNDにクランプされる。
ここで、スイッチSW1がオン状態、且つスイッチSW2がオフ状態となることを第1状態、スイッチSW1がオン状態、且つスイッチSW2がオン状態となることを第2状態、スイッチSW1がオフ状態、且つスイッチSW2がオン状態となることを第3状態と称する。
このとき、制御信号生成部354は、第1状態(期間T2)→第2状態(期間T3)→第3状態(期間T4)の順に、スイッチSW1及びスイッチSW2を制御する。また、制御信号生成部354は、第3状態(期間T4)→第2状態(期間T5)→第1状態(期間T6)の順に、スイッチSW1及びスイッチSW2を制御する。
このように、第1状態から第3状態へ遷移する途中及び第3状態から第1状態へ遷移する途中に第2状態を設けたのは、スイッチSW1のオン状態とスイッチSW2のオン状態が切り替わる時点で、ノードN3の電位が変化することによってスイッチングノイズが発生しないようにするためである。
すなわち、第2状態では、ノードN3には、スイッチSW1→ノードN1→スイッチSW2の経路で駆動信号COMの所定電位Vxが供給されるとともに、ノードN2→抵抗R3の経路で駆動信号COMの所定電位Vxが供給される。
この第2状態から第3状態へ遷移すると、スイッチSW1がオフ状態に遷移するが、ノードN2→抵抗R3の経路は残され、ノードN3には抵抗R3によって駆動信号COMの所定電位Vxがバイアスされる。よって、第1状態から第3状態へ遷移する際にノードN3の電位が大きく変化しないので、スイッチングノイズを低減できる。加えて、第1状態→第2状態→第3状態といったシーケンスでスイッチSW1及びスイッチSW2を制御することにより、圧電素子200からの電流を連続的に流すことができるので、コイルの逆起電力のような切替時のサージ電圧の発生を無くすことができる。この結果、期間T4が開始されると同時に残留振動の検出を行うことが可能となる。
また、第2状態から第1状態へ遷移すると、スイッチSW2がオフ状態に遷移するが、第2状態においてもスイッチSW1を介して駆動信号COMが圧電素子200に印加されており、ノードN2の電位は駆動信号COMの所定電位Vxとなっているので、圧電素子200の印加電圧に重畳するノイズを低減することができる。
くわえて、第1状態(期間T2及び期間T6)並びに第2状態(期間T3及び期間T5)において、スイッチSW3はオン状態となるので、ノードN4の電位はアナロググランドAGNDにクランプされる。図16に示すように、駆動信号COMが供給される内部配線L1とノードN3が接続され残留振動に基づく起電力Voutが供給される内部配線L2との間には寄生容量Caが存在する。このため、期間T2においてスイッチSW2がオフ状態になっても、大振幅の検査パルスP2が寄生容量Caを介してノードN3に伝送される。本実施形態によれば、期間T2及びT3において、スイッチSW3がオン状態となり、ノードN4はアナロググランドAGNDにクランプされる。このため、検査パルスP2が残留振動検出部356Aに干渉することを防止することができる。
<6.吐出状態判定部の動作>
次に、図24及び図25を参照しつつ、吐出状態判定部10の動作について説明する。
上述のとおり、吐出状態判定部10は、計測部12と、判定部14と、を備える。
計測部12には、残留振動検出部356Aにおいて出力信号OUT1を整形した残留振動信号Vdと、制御部6が生成するマスク信号Mskと、残留振動信号Vdの振幅中心レベルの電位に定められた閾値電位Vth_cと、閾値電位Vth_cよりも高電位に定められた閾値電位Vth_oと、閾値電位Vth_cよりも低電位に定められた閾値電位Vth_uと、が供給される。計測部12は、これらの信号等に基づいて、残留振動の1周期の時間を示す周期データNTcと、当該周期データNTcが有効な値であるか否かを示す有効性フラグFlagと、を出力する。
図24は、計測部12の動作を示すタイミングチャートである。
この図に示すように、計測部12は、残留振動信号Vdの示す電位と閾値電位Vth_cとを比較して、残留振動信号Vdの示す電位が閾値電位Vth_c以上となる場合にハイレベルとなり、残留振動信号Vdの示す電位が閾値電位Vth_c未満となる場合にローレベルとなる比較信号Cmp1を生成する。
また、計測部12は、残留振動信号Vdの示す電位と閾値電位Vth_oとを比較して、残留振動信号Vdの示す電位が閾値電位Vth_o以上となる場合にハイレベルとなり、残留振動信号Vdの示す電位が閾値電位Vth_o未満となる場合にローレベルとなる比較信号Cmp2を生成する。
また、計測部12は、残留振動信号Vdの示す電位と閾値電位Vth_uとを比較して、残留振動信号Vdの示す電位が閾値電位Vth_u未満となる場合にハイレベルとなり、残留振動信号Vdの示す電位が閾値電位Vth_u以上となる場合にハイレベルとなる比較信号Cmp3を生成する。
マスク信号Mskは、残留振動検出部356Aからの残留振動信号Vdの供給が開始されてから所定の期間Tmskの間だけハイレベルとなる信号である。本実施形態では、残留振動信号Vdのうち、期間Tmskの経過後の残留振動信号Vdのみを対象として周期データNTcを生成することで、残留振動の開始直後に重畳するノイズ成分を除去した精度の高い周期データNTcを得ることができる。
計測部12は、カウンタ(図示省略)を備える。当該カウンタは、マスク信号Mskがローレベルに立ち下がった後、残留振動信号Vdの示す電位が最初に閾値電位Vth_cと等しくなるタイミングである時刻t11において、クロック信号(図示省略)のカウントを開始する。すなわち、当該カウンタは、マスク信号Mskがローレベルに立ち下がった後、比較信号Cmp1が最初にハイレベルに立ち上がるタイミング、または、比較信号Cmp1が最初にローレベルに立ち下がるタイミングのうち、早い方のタイミングである時刻t11において、カウントを開始する。そして、当該カウンタは、カウントを開始した後において、残留振動信号Vdの示す電位が、2度目に閾値電位Vth_cとなるタイミングである時刻t12においてクロック信号のカウントを終了させて、得られたカウント値を周期データNTcとして出力する。すなわち、当該カウンタは、マスク信号Mskがローレベルに立ち下がった後、比較信号Cmp1が2度目にハイレベルに立ち上がるタイミング、または、比較信号Cmp1が2度目にローレベルに立ち下がるタイミングのうち、早い方のタイミングである時刻t12において、カウントを終了する。
このように、計測部12は、時刻t11から時刻t12までの時間長を、残留振動信号Vdの1周期分の時間長として計測することで、周期データNTcを生成する。
ところで、図24において一点鎖線で示すように、残留振動信号Vdの振幅が小さい場合には、正確に残留振動信号Vdの周期を計測できない可能性が高くなる。また、残留振動信号Vdの振幅が小さい場合には、仮に周期データNTcの結果のみに基づいて吐出部Dの吐出状態が正常であると判断される場合であっても、実際には吐出異常が生じている可能性が存在する。例えば、残留振動信号Vdの振幅が小さい場合、キャビティ220にインクが注入されていないことによりインクを吐出できない状態であること等が考えられる。
そこで、本実施形態は、残留振動信号Vdの振幅が、周期データNTcの計測のために十分な大きさを有しているか否かを判定し、当該判定の結果を有効性フラグFlagとして出力する。
具体的には、計測部12は、カウンタによりカウントが実行されている期間、つまり、時刻t11から時刻t12までの期間において、残留振動信号Vdの示す電位が、閾値電位Vth_oを超え、且つ、閾値電位Vth_uを下回る場合に、有効性フラグFlagの値を、周期データNTcが有効であることを示す値「1」に設定し、それ以外の場合には「0」に設定したうえで、この有効性フラグFlagを出力する。
このように本実施形態において、計測部12は、残留振動信号Vdの1周期分の時間長を示す周期データNTcを生成するのに加え、残留振動信号Vdが周期データNTcの計測のために十分な大きさの振幅を有しているか否かを判定するため、より正確に吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定することが可能となる。
判定部14は、周期データNTc及び有効性フラグFlagに基づいて、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定し、判定結果を判定結果信号Rsとして出力する。
図25は、判定部14における判定の内容を説明するための説明図である。この図に示すように、判定部14は、周期データNTcの示す時間長を、閾値Tth1、閾値Tth1よりも長い時間長を表す閾値Tth2、及び、閾値Tth2よりも更に長い時間長を表す閾値Tth3の3つの閾値(または、これら3つの閾値うちの一部の閾値)と比較する。
ここで、閾値Tth1は、キャビティ220内部に気泡が発生して残留振動の周波数が高くなる場合における残留振動の1周期分の時間長と、吐出状態が正常である場合における残留振動の1周期分の時間長との境界を示すための値である。また、閾値Tth2は、ノズルNZ出口付近に紙粉が付着して残留振動の周波数が低くなる場合における残留振動の1周期分の時間長と、吐出状態が正常である場合における残留振動の1周期分の時間長との境界を示すための値である。また、閾値Tth3は、ノズルNZ付近におけるインクの固着または増粘により、紙粉が付着する場合よりもさらに残留振動の周波数が低くなる場合における残留振動の1周期分の時間長と、ノズルNZ出口付近に紙粉が付着した場合における残留振動の1周期分の時間長との境界を示すための値である。
図25に示すように、判定部14は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、「TTH1≦NTc≦TTH2」を満たす場合には、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が正常であると判定し、判定結果信号Rsに対して、吐出状態が正常であることを示す値「1」を設定する。
一方、判定部14は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、「NTc<TTH1」を満たす場合には、キャビティ220に生じた気泡により吐出異常が発生していると判定し、判定結果信号Rsに対して、気泡による吐出異常が発生していることを示す値「2」を設定する。また、判定部14は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、「TTH2<NTc≦TTH3」を満たす場合には、ノズルNZ出口付近に付着した紙粉により吐出異常が発生していると判定し、判定結果信号Rsに対して、紙粉による吐出異常が発生していることを示す値「3」を設定する。また、判定部14は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、「TTH3<NTc」を満たす場合には、インクの増粘により吐出異常が発生していると判定し、判定結果信号Rsに対して、インク増粘による吐出異常が発生していることを示す値「4」を設定する。また、判定部14は、有効性フラグFlagの値が「0」である場合には、判定結果信号Rsに対して、インクが注入されていない等のなんらかの原因により吐出異常が発生していることを示す値「5」を設定する。
以上のように、判定部14では、吐出部Dにおける吐出状態を判定し、判定結果を判定結果信号Rsとして出力する。このため、制御部6は、判定結果信号Rsに基づいて、各ヘッドユニット35に設けられたn個の吐出部Dの中でどの吐出部Dにおいて吐出異常が生じているかを把握することが可能となる。そして、制御部6は、吐出異常が生じている場合には、印刷処理を中断して回復処理を実行するようにインクジェットプリンター1の動作を制御することができる。これにより、吐出異常に起因する印刷品質の低下を最小限に留めることができる。
<7.第1実施形態の結論>
以上において説明したように、本実施形態では、上部配線層と下部配線層との間に、平面視して内部配線L1及びL2を覆うようにシールド部SHが設けられる。このため、内部配線L1またはL2における電位の変動が、ノイズとして電子回路に伝播することを防止することが可能となるとともに、電子回路において生じるノイズが起電力Voutに重畳することを防止することができる。これにより、ノイズの影響を排除した正確な残留振動の検出が可能となり、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正確に判定することが可能となる。
ところで、仮に、基板302の近傍に大振幅の信号が供給される配線が設けられる場合、当該配線からのノイズ等により基板302の電位が変動し、基板302上のP型の領域とN型の領域との接合部分において、寄生的なダイオード、または、寄生的なトランジスターが生じることがある。これら寄生ダイオードや寄生トランジスターが動作する場合、基板302上に形成される電子回路は、正常に動作することができなくなる。
これに対して、本実施形態では、大振幅の信号が供給される内部配線L1及びL2を上部配線層に設け、更に、上部配線層及び基板302の間にシールド部SHを設ける。このため、基板302において、寄生ダイオードや寄生トランジスターの発生を防止することができ、残留振動検出部356A等における電子回路の誤動作を防止した、正確な残留振動の検出が可能となる。
また、本実施形態では、外部配線LX1の経路長は、外部配線LX2の経路長よりも短い。このため、外部配線LX1の経路長が、外部配線LX2の経路長よりも長い場合と比較して、圧電素子200の起電力Voutに重畳するノイズの程度を低減することができ、正確な残留振動の検出が可能となる。
<B.第2実施形態>
第2実施形態に係るインクジェットプリンター1は、供給部352Aの替わりに供給部352Bを用いる点、及び、残留振動検出部356Aの替わりに残留振動検出部356Bを用いる点を除いて、第1実施形態のインクジェットプリンター1と同様に構成されている。
なお、以下に例示する第2実施形態において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する(以下で説明する変形例についても同様)。
図26は、供給部352B及びn個の圧電素子200の構成を示す回路図である。この図に示すように供給部352Bは、n個の選択ユニットU(U1〜Un)を有する選択回路UXと、抵抗R3と、ハイパスフィルターHPF1と、ハイパスフィルターHPF2と、を備える。
供給部352Bは、差動形式の出力信号OUT1及び出力信号OUT2を生成し、これを残留振動検出部356Bに供給する。このため、供給部352Bは、供給部352Aに対してハイパスフィルターHPF2が追加されている。
ハイパスフィルターHPF2は、ノードN2とノードN5との間に設けられたキャパシターC2と、一方の端子がノードN5に接続され他方の端子にアナロググランドAGNDが供給される抵抗R2と、抵抗R2に並列に接続されたスイッチSW4と、を備える。スイッチSW4は、スイッチSW1、スイッチSW2、及び、スイッチSW3と同様に、トランスファーゲートで構成される。また、スイッチSW4には制御信号Scが供給され、スイッチSW3と同じタイミングでオン状態とオフ状態とが切り替わる。
すなわち、供給部352Bは、スイッチSW2が接続される内部配線L2の信号と、駆動信号COMが供給される内部配線L1の信号とを差動形式の入力信号とし、ハイパスフィルターHPF1及びHPF2にて低域周波数成分を減衰させた出力信号OUT1及びOUT2を差動形式で残留振動検出部356Bに出力する。
図27に、残留振動検出部356Bの構成を示す。残留振動検出部356Bにおいて、
ゲイン調整部36、ローパスフィルター37、及び、バッファ38は、第1実施形態の残留振動検出部356Aと同様であり、差動増幅部39が相違する。差動増幅部39は、3個のオペアンプを用いて構成されたインスツルメンテーションアンプである。差動増幅部39のゲインGは以下の式で与えられる。
G=OUT3/(OUT1−OUT2)
=(1+2*R4/R3)*(R6/R5)
差動増幅部39は、高い同相除去比を有するので、内部配線L1と内部配線L2に同相ノイズが混入しても当該同相ノイズを抑圧して、シングルエンド形式の出力信号OUT3を生成することができる。
出力信号OUT3は、ローパスフィルター37において高域周波数成分が減衰され、ゲイン調整部36においてゲインが調整され、バッファ38においてインピーダンスが変換されて、残留振動信号Vdとして吐出状態判定部10に供給される。
このように第2実施形態では、残留振動に起因する圧電素子200の起電力Voutを差動形式で出力する供給部352Bと、差動形式の出力信号OUT1及びOUT2に含まれる同相ノイズを除去しつつシングルエンド形式の出力信号OUT3を生成する差動増幅部39を備えるので、より的確に吐出状態を判定することができる。
図28は、第2実施形態に係る集積回路30が実装されるICチップ301の一部を、当該集積回路30が形成される基板に垂直な方向から平面視したときの平面図の一例であり、図29は、図28に示すICチップ301を、図28におけるF−f線で破断した部分断面図の一例である。
図28及び29に例示するように、第2実施形態に係る集積回路30は、第1実施形態と同様に、残留振動検出部356Bが低電圧領域AR1の下部配線層に設けられ、供給部352Bの選択回路UXが高電圧領域AR2の下部配線層に設けられる。
また、内部配線L1は、部分領域AP1の上部配線層と部分領域AP2の上部配線層とに設けられる。すなわち、第2実施形態は、内部配線L1が、部分領域AP1の上部配線層に設けられている点において、第1実施形態と相違する。
より具体的には、部分領域AP1は、部分領域AP1aと部分領域AP1bとを含む。そして、内部配線L1は、低電圧領域AR1のうち部分領域AP1bの上部配線層と、高電圧領域AR2のうち部分領域AP2bの上部配線層と、に設けられ、内部配線L2は、低電圧領域AR1のうち部分領域AP1aの上部配線層と、高電圧領域AR2のうち部分領域AP2aの上部配線層と、に設けられる。
また、第2実施形態では、図28に例示するように、シールド部SHが、平面視して、部分領域AP1及び部分領域AP2を少なくとも含む領域に設けられる。
より具体的には、シールド部SHのうちシールド部SH1は、内部配線L1を覆うように、部分領域AP1b及び部分領域AP2bを含む領域に設けられ、シールド部SHのうちシールド部SH2は、内部配線L2を覆うように、部分領域AP1a及び部分領域AP2aを含む領域に設けられる。
なお、図28及び図29に例示するように、ハイパスフィルターHPF1のキャパシターC1と、ハイパスフィルターHPF2のキャパシターC2とは、低電圧領域AR1の配線層LY3及びLY4に設けられている。
以上において説明したように、第2実施形態では、内部配線L1及びL2が設けられる上部配線層と、残留振動検出部356Bを構成する電子回路が設けられる下部配線層との間のシールド配線層において、平面視して内部配線L1及びL2を覆うようにシールド部SHが設けられる。
このため、内部配線L1における電位の変動または内部配線L2における電位の変動が、ノイズとして電子回路に伝播することを防止することが可能となる。また、電子回路において生じるノイズが内部配線L2に伝播することを防止できる。これにより、残留振動検出部356B等の電子回路において、ノイズの影響を排除した正確な残留振動の検出が可能となり、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正確に判定することが可能となる。
なお、第2実施形態において、供給部352Bは、内部配線L1により供給される信号と、内部配線L2により供給される信号とを、差動形式の入力信号として取り扱ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、図30に示すように、内部配線L1または内部配線L2により供給される信号と、供給ラインLvにより供給される信号とを、差動形式の入力信号として取り扱ってもよい。
図30は、第2実施形態の変形例に係る供給部352Cの回路図である。この図に示すように、ハイパスフィルターHPF2には、基準電位VBSが供給される。この図に示す例によれば、内部配線L2と供給ラインLvとに重畳する同相ノイズを効果的に抑圧するができる。
<C.第3実施形態>
第3実施形態に係るインクジェットプリンター1は、供給部352Aの替わりに供給部352Dを用いる点、並びに、駆動信号生成部33が駆動信号COMa及び駆動信号COMbを生成する点を除いて、第1実施形態に係るインクジェットプリンター1と同様に構成されている。
図31は、供給部352D及びn個の圧電素子200の構成を示す回路図である。この図に示すように供給部352Dは、n個の選択ユニットUA(UA1〜UAn)を有する選択回路UXAと、抵抗R3と、ハイパスフィルターHPF1と、を備える。
また、第3実施形態では、内部配線L1が、内部配線L1aと内部配線L1bと、を含み、内部配線L1aには駆動信号COMaが供給され、内部配線L1bには駆動信号COMbが供給される。そして、第3実施形態では、2種類の駆動信号COMa及びCOMbを用いて圧電素子200を駆動する。このため、多様な駆動パルスを圧電素子200に印加して、大きさの異なるインク滴をノズルNZから吐出させることが可能である。
具体的には、図31に示すように、供給部352Dは、内部配線L1a及び内部配線L1bを含む内部配線L1と、内部配線L2と、内部配線L1aと抵抗R3との間に電気的に接続されるスイッチSW5と、内部配線L1bと抵抗R3との間に電気的に接続されるスイッチSW6と、を備える。
選択ユニットUA1は、スイッチSW1の代わりに、駆動信号COMa用のスイッチSW1aと、駆動信号COMb用のスイッチSW1bと、が設けられている点を除き、第1実施形態に係る選択ユニットU1と同様に構成されている。スイッチSW1aは、制御信号生成部354が生成する制御信号A1に基づいてオンオフが制御され、スイッチSW1bは、制御信号生成部354が生成する制御信号B1に基づいてオンオフが制御される。本実施形態では、スイッチSW1aと、スイッチSW1bとが「第1スイッチ」の一例である。なお、他の選択ユニットUA2〜UAnも選択ユニットUA1と同様に構成されている。
スイッチSW5は、制御信号Saがハイレベルになるとオン状態となり、制御信号Saがローレベルになるとオフ状態になる。スイッチSW6は、制御信号Sbがハイレベルになるとオン状態となり、制御信号Sbがローレベルになるとオフ状態になる。
なお、第3実施形態に係る集積回路30においては、第1実施形態と同様に、供給部352Dの選択回路UXAが、高電圧領域AR2の下部配線層に設けられ、内部配線L1a及び内部配線L1bを含む内部配線L1が、部分領域AP2(部分領域AP2b)の上部配線層に設けられ、内部配線L2が、部分領域AP1(部分領域AP1a)の上部配線層と、部分領域AP2(部分領域AP2a)の上部配線層とに設けられる(図18参照)。
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、シールド部SHが、平面視して、部分領域AP1及び部分領域AP2を少なくとも含む領域に設けられる(図18参照)。
図32は、供給部352Dの動作の一例を示すタイミングチャートである。この図に示すように、駆動信号COMaは、期間T10に検査パルスP2を含み、期間T11〜期間T13において所定電位Vxとなり、期間T14において所定電位Vxから基準電位Vrefに下降し、期間T15において基準電位Vrefを維持し、期間T16に微振動パルスP1を含み、期間T17〜期間T21において基準電位Vrefを維持する。
一方、駆動信号COMbは、期間T10に微振動パルスP1を含み、期間T11〜期間T15において基準電位Vrefを維持し、期間T16に検査パルスP2を含み、期間T17〜期間T19において所定電位Vxを維持し、期間T20において所定電位Vxから基準電位Vrefに下降し、期間T21において基準電位Vrefを維持する。
すなわち、期間T10〜期間T15からなる単位期間Taにおける駆動信号COMaの波形は、期間T16〜期間T21からなる単位期間Tbにおける駆動信号COMbの波形と略同じであり、単位期間Tbにおける駆動信号COMaの波形は、単位期間Taにおける駆動信号COMbの波形と略同じである。
図32に示す例では、単位期間Taにおいて、選択ユニットUA1に接続される圧電素子200に検査パルスP2を印加し、単位期間Taのうち期間T12において当該圧電素子200における残留振動を検出する。また、単位期間Tbにおいて、選択ユニットUA2に接続される圧電素子200に検査パルスP2を印加し、単位期間Tbのうち期間T18において当該圧電素子200における残留振動を検出する。また、他の選択ユニットUA3〜UAnに対応する圧電素子200には、単位期間Ta及び単位期間Tbにおいて微振動パルスP1が印加される。
図32に示す例において、まず、期間T10における供給部352Dの動作について検討する。期間T10では、選択ユニットUA1において、制御信号A1がハイレベルとなるため駆動信号COMa用のスイッチSW1aがオン状態となり、駆動信号COMaの検査パルスP2が圧電素子200−1に供給される。また、選択ユニットUA2において、制御信号B2がハイレベルとなるため駆動信号COMb用のスイッチSW1bがオン状態となり、駆動信号COMbの微振動パルスP1が圧電素子200−2に供給される。また、選択ユニットUA3〜UAnにおいて、制御信号B3〜Bnがハイレベルとなるため駆動信号COMb用のスイッチSW1bがオン状態となり、微振動パルスP1が圧電素子200−3〜200−nに供給される。
次に、図32に示す例では、期間T12において、制御信号S1、Saがハイレベルとなり、選択ユニットUA1のスイッチSW2と、スイッチSW5と、がオン状態になる。また、制御信号Sc、A1、B1はローレベルとなるので、選択ユニットUA1のスイッチSW1a及びSW1bと、スイッチSW3がオフ状態になる。このため、圧電素子200−1に発生する起電力Voutが、スイッチSW2→内部配線L2→キャパシターC1→ノードN4の経路で伝送され、出力信号OUT1として出力される。この際、ノードN3の電位は、抵抗R3によって駆動信号COMaの所定電位Vxにバイアスされる。
また、図32に示す例では、期間T11及び期間T13において、制御信号Sa、Sc、A1、S1がハイレベルとなる。このため、選択ユニットUA1のスイッチSW1a及びSW2がオン状態となり、スイッチSW3及びSW5がオン状態となる。このように、スイッチSW1a及びSW2を同時にオン状態にすることにより、ノードN3の電位が変動して、スイッチングノイズが発生するのを抑制することができる。また、スイッチSW3がオン状態となるので、ノードN4の電位がアナロググランドAGNDにクランプされる。これにより、スイッチングノイズが出力信号OUT1に重畳しないようにできる。
次に、図32に示す例では、期間T14において、制御信号A1がハイレベルとなり、スイッチSW1aがオン状態となるので、駆動信号COMaが圧電素子200−1に供給される。この結果、圧電素子200−1の上部電極122の電位が基準電位Vrefに戻される。
このように、図32に示す例では、単位期間Taにおいて、駆動信号COMaを用いて、圧電素子200−1に対応するヘッドの残留振動が計測される。この際、選択ユニットUA2の駆動信号COMb用のスイッチSW1bはオン状態となるので、圧電素子200−2には駆動信号COMbが供給される。
次に、図32に示す例では、単位期間Tbの期間T16〜期間T21の各々は、単位期間Taの期間T10〜期間T15の各々に対応している。具体的には、単位期間Tbの制御信号Saは単位期間Taの制御信号Sbと同じであり、単位期間Tbの制御信号Sbは単位期間Taの制御信号Saと同じであり、単位期間Tbの制御信号Scは単位期間Taの制御信号Scと同じであり、単位期間Tbの制御信号A1は単位期間Taの制御信号B2と同じであり、単位期間Tbの制御信号B1は単位期間Taの制御信号B1と同じであり、単位期間Tbの制御信号S1は単位期間Taの制御信号S2と同じであり、単位期間Tbの制御信号A2は単位期間Taの制御信号A2と同じであり、単位期間Tbの制御信号B2は単位期間Taの制御信号A1と同じであり、単位期間Tbの制御信号S2は単位期間Taの制御信号S1と同じである。
従って、単位期間Tbでは、選択ユニットUA2において駆動信号COMbを選択して、検査パルスP2を圧電素子200−2に印加し、圧電素子200−2の残留振動を検出する。
なお、第3実施形態では、期間T10では、駆動信号COMaに検査パルスP2を含ませ、駆動信号COMbに微振動パルスP1を含ませたが、微振動パルスP1の替わりにインクを吐出させる吐出パルスを含ませてもよい。この場合には、インクを吐出させるノズルNZとインクを非吐出として残留振動を検出するノズルNZとを混在させることが可能となる。
<D.第4実施形態>
第4実施形態に係るインクジェットプリンター1は、供給部352Dの替わりに供給部352Eを用いる点を除いて、第3実施形態のインクジェットプリンター1と同様に構成されている。
図33は、供給部352E及びn個の圧電素子200の構成を示す回路図である。この図に示すように供給部352Eは、上述した第3実施形態の供給部352Dに対して、ハイパスフィルターHPF2を追加した構成となっている。これによって、供給部352Eは、差動形式の出力信号OUT1及びOUT2を残留振動検出部356B(図27参照)に供給する。残留振動検出部356Bは、差動形式の出力信号OUT1及びOUT2に含まれる同相ノイズを除去しつつシングルエンド形式の出力信号OUT3を生成する差動増幅部39を備えるので、より的確に吐出状態を判定することが可能となる。
なお、第4実施形態に係る集積回路30においては、第2実施形態と同様に、供給部352Eの選択回路UXAが、高電圧領域AR2の下部配線層に設けられ、内部配線L1a及び内部配線L1bを含む内部配線L1が、部分領域AP1(部分領域AP1b)の上部配線層と、部分領域AP2(部分領域AP2b)の上部配線層に設けられ、内部配線L2が、
部分領域AP1(部分領域AP1a)の上部配線層と、部分領域AP2(部分領域AP2a)の上部配線層とに設けられる(図28参照)。
また、第4実施形態では、第2実施形態と同様に、シールド部SHが、平面視して、部分領域AP1及び部分領域AP2を少なくとも含む領域に設けられる(図28参照)。
ところで、第4実施形態において、供給部352Eは、内部配線L1により供給される信号と、内部配線L2により供給される信号とを差動形式の入力信号として取り扱ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、内部配線L1または内部配線L2により供給される信号と、供給ラインLvにより供給される信号とを差動形式の入力信号として取り扱ってもよい。
図34は、第4実施形態の変形例に係る供給部352Fの回路図である。この図に示されるように、ハイパスフィルターHPF2には、基準電位VBSが供給される。この変形例によれば、内部配線L2と供給ラインLvとに重畳する同相ノイズを効果的に抑圧することができる。
<E.変形例>
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に述べる各種の変形例が可能である。また、各変形例は、変形例同士を適宜組み合わせてもよく、更に、上述した各実施形態と適宜組み合わせてもよい。
<変形例1>
上述した実施形態において、シールド部SHは、低電圧領域AR1の部分領域AP1と、高電圧領域AR2の部分領域AP2と、を少なくとも含むように設けられたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、図35に示すように、シールド部SHは、低電圧領域AR1の部分領域AP1に設けられていればよい。
高電圧領域AR2に形成される電子回路は、大振幅の信号を処理するための回路であり、
シールド部SHを設けない場合であっても、低電圧領域AR1に形成される電子回路と比較して、内部配線L1及びL2からのノイズの影響を受け難い。よって、シールド部SHを、少なくとも、平面視して部分領域AP1を含むように、つまり、低電圧領域AR1において内部配線L1及びL2を覆うように設けることで、集積回路30を構成する電子回路の誤動作を防止することが可能となる。
<変形例2>
上述した実施形態及び変形例において、集積回路30を有するICチップ301は、フレキシブルケーブル300に実装されるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、集積回路30は記録ヘッド20に設けられてもよい。
<変形例3>
上述した実施形態及び変形例では、液体吐出装置としてヘッドの主走査方向と紙送りの副走査方向が異なるシリアルプリンタを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ヘッドの幅が用紙の幅となるラインプリンタであってもよい。残留振動による吐出状態の判定は、インクを用紙に吐出することなく実行できるので、ラインプリンタにおいて印刷中に吐出状態の検査を行うことが可能となる。
<変形例4>
上述した実施形態及び変形例において、液体吐出装置としてCMYKの4色のインクを吐出可能なインクジェットプリンターを例示して説明したが、1色以上のインクを吐出可能であればよい。つまり、上述した実施形態及び変形例では、4個のヘッドユニット35を備える場合を例示して説明したが、ヘッドユニット35の個数は1以上であればよい。
1・・・インクジェットプリンター、6・・・制御部、10・・・吐出状態判定部、20・・・記録ヘッド、30・・・集積回路、33・・・駆動信号生成部、35・・・ヘッドユニット、200・・・圧電素子、300・・・フレキシブルケーブル、301・・・ICチップ、352A・・・供給部、354・・・制御信号生成部、356A・・・残留振動検出部、D・・・吐出部、NZ・・・ノズル、L1・・・内部配線、L2・・・内部配線、LX1・・・外部配線、LX2・・・外部配線、U・・・選択ユニット、SW1・・・スイッチ、SW2・・・スイッチ、SH・・・シールド部SH。

Claims (6)

  1. 圧電素子と、
    内部に液体が充填され前記圧電素子の変位により当該内部の圧力が増減される圧力室と、
    前記圧力室に連通し前記圧力室内部の圧力の増減に応じて前記圧力室の内部に充填された液体を吐出するノズルと、
    前記圧力室に生じる残留振動に応じた前記圧電素子の起電力の変化を示す残留振動信号に基づいて前記ノズルからの液体の吐出状態を判定する吐出状態判定部と、
    前記圧電素子を駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
    前記駆動信号を前記圧電素子へ伝達し、前記圧電素子の起電力の変化を検出する集積回路と、
    前記集積回路と前記圧電素子とを電気的に接続するための第1外部配線と、
    前記集積回路と前記吐出状態判定部とを電気的に接続するための第2外部配線と、
    を備え、
    前記集積回路は、
    第1配線層に設けられ、前記圧電素子の起電力の変化を示す信号を増幅させて前記残留振動信号を生成する残留振動検出部と、
    第2配線層に設けられ、前記駆動信号が供給される第1内部配線と、
    前記第2配線層に設けられ、前記圧電素子の起電力が供給される第2内部配線と、
    前記第1配線層に設けられ、前記第1外部配線と前記第1内部配線との間の導通及び非導通を切り替える第1スイッチと、
    前記第1配線層に設けられ、前記第1外部配線と前記第2内部配線との間の導通及び非導通を切り替える第2スイッチと、
    前記第1配線層及び前記第2配線層の間の第3配線層に設けられ、導電性材料よりなるシールド部と、
    を具備し、
    前記第1外部配線の経路長は、
    前記第2外部配線の経路長よりも短い、
    ことを特徴とする液体吐出装置。
  2. 前記集積回路は、
    基板上に形成され、前記基板に垂直な方向から見たときに、第1部分領域を含む第1領域と、第2部分領域を含む第2領域とに区分され、
    前記残留振動検出部は、
    前記第1領域に設けられ、
    前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、
    前記第2領域に設けられ、
    前記第2内部配線は、
    前記第1部分領域と前記第2部分領域とに設けられ、
    前記シールド部は、
    前記第1領域のうち少なくとも前記第1部分領域を含む領域に設けられる、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
  3. 前記シールド部は、
    前記第2領域のうち少なくとも前記第2部分領域を含む領域に設けられる、
    ことを特徴とする、請求項2に記載の液体吐出装置。
  4. 前記第1内部配線は、
    前記第1部分領域と前記第2部分領域とに設けられる、
    ことを特徴とする、請求項2または3に記載の液体吐出装置。
  5. 前記集積回路は、
    基板上に形成され、
    前記第2配線層は、
    前記第3配線層から見て、前記基板とは反対側の層である、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
  6. 液体吐出装置に設けられるヘッドユニットであって、
    圧電素子と、
    内部に液体が充填され前記圧電素子の変位により当該内部の圧力が増減される圧力室と、
    前記圧力室に連通し前記圧力室内部の圧力の増減に応じて前記圧力室の内部に充填された液体を吐出するノズルと、
    前記圧電素子を駆動するための駆動信号を前記圧電素子に伝達し、前記圧電素子が駆動された後に前記圧力室に生じる残留振動に応じた前記圧電素子の起電力の変化を検出する集積回路と、
    前記集積回路と前記圧電素子とを電気的に接続する第1外部配線と、
    を備え、
    前記集積回路は、
    第1配線層に設けられ、前記圧電素子の起電力の変化を示す信号を増幅させた残留振動信号を生成する残留振動検出部と、
    第2配線層に設けられ、前記駆動信号が供給される第1内部配線と、
    前記第2配線層に設けられ、前記圧電素子の起電力が供給される第2内部配線と、
    前記第1配線層に設けられ、前記第1外部配線と前記第1内部配線との間の導通及び非導通を切り替える第1スイッチと、
    前記第1配線層に設けられ、前記第1外部配線と前記第2内部配線との間の導通及び非導通を切り替える第2スイッチと、
    前記第1配線層及び前記第2配線層の間の第3配線層に設けられ、導電性材料よりなるシールド部と、
    を具備する、
    ことを特徴とするヘッドユニット。
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