JP6319164B2 - 積分系プロセス動特性自動同定装置 - Google Patents
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Description
操業上の観点から、
(1)ステップ応答試験は、プラントの操業に影響を与えるため、頻繁に試験を実施することは難しい。
(2)無駄時間や整定時間(出力が定常値の許容誤差範囲内に達するまでの時間)が長いプロセス制御系では応答データの取得に時間がかかるため、プラントの操業に影響を与える。
(3)プラントの安全操業問題により、ステップ応答試験を実施することが出来ないケースも多い。
また、人的な観点から、
(4)24時間連続運転の過去運転データから人間が目視でステップ応答と近似しているデータを捉えることは現実的ではない。
(5)ステップ応答試験の応答データからパラメータ(プロセス定数)を決定するに際し、個人の技量によって精度にバラツキが生じる。
[実施の形態1のシステム構成]
本実施の形態に係るプラントやプロセスは限定されるものではないが、一つの具体例として、プラントは火力発電所である。プロセスは火力発電所のボイラー、プロセスの入力は石炭流量、プロセスの出力は主蒸気圧力である。
運転データ入力部1は、過去運転データをファイル入力する。過去運転データは、プロセスの過去の入出力実データであり、新たな過去運転データが逐次追加される。運転データ入力部1は、過去運転データから一部期間のデータ(入力実データ、出力実データ)を抽出する。入力実データは、過去にプロセスに入力されたデータであり、所定間隔の時刻と入力値(操作値)との関係を定めた操作データである。入力実データに対応する出力実データは、過去にプロセスから出力されたデータであり、所定間隔の時刻と出力値(応答値)との関係を定めた応答データである。ファイル形式は、一般的なCSVに限られるものではなく、DATA形式のテキストであってもよい。このファイルの保存場所は制限されず、パスが指定されればデータが自動的にロードされる。
データ標準化処理部2は、入力実データ(操作データ)と、出力実データ(応答データ)を入力する。データ標準化処理部2は、操作データと応答データを共に0〜100のレンジに標準化(正規化、無次元化)する。標準化することにより、適用対象のプロセスに依存することなく本発明に係る処理を適用することができる。
ステップ信号検索フィルター3は、データ標準化処理部2において標準化された入力実データ(操作データ)から、ステップ信号と近似する操作データを探し出す機能を有する。図2は、ステップ信号検索フィルター3の動作の一例を説明するための図である。ステップ信号検索フィルター3は、微粉炭発電所での「1:50〜2:01」の時間帯における石炭流量を標準化した入力実データ(操作データ)を入力する。
応答信号検索フィルター4は、ステップ信号検索フィルター3においてステップ入力と判定された入力実データ(操作データ)に応答する出力実データ(応答データ)を探し出す機能である。図3は、応答信号検索フィルター4の動作の一例を説明するための図である。
(1)まず、上述の基準量として、平穏状態基準値PVstを算出する。ここで、PVst=1/3×ΔPVmaxとする。この数式は経験的なものである。
(2)ΔPVのデータリストの絶対値を算出し、PVstと比較する。
(3)|ΔPV|<PVstであれば、その時刻におけるΔPVの状態は、平穏状態であると判定する。
(4)|ΔPV|≧PVstであれば、その時刻におけるΔPVの状態は、急激変化状態であると判定する。
動特性自動計算部5は、ステップ信号検索フィルター3および応答信号検索フィルター4の出力に基づいて、動特性(K,T,L)を自動計算する機能を有する。ステップ信号検索フィルター3および応答信号検索フィルター4により、過去運転データの一部期間のデータから、ステップ応答試験と近似するデータが抽出され、動特性自動計算部5はこのデータに基づいて動特性を自動計算する。
(1)無駄時間Lは、急激な操作値変化時刻Mtと応答変化開始時刻Pt(図3)に基づいて算出される。具体的には、L=Pt−Mtである。図2および図3に示す例では、Mt=1:54、Pt=1:57であり、L=3分である。
(2)ゲインKは、K=ΔPV(V)/ΔMV(V)により算出される。ここで、ΔMV(V)は、MV値データの急激変化状態の最終値と開始値との差である(ΔMVmax)。ΔPV(V)は、PV値データの急激変化状態の最終値と開始値との差である。図2および図3に示す例では、ΔPV(V)=69.4、ΔMV(V)=46.3、K=1.5である。
(3)積分時間Tは、T=ΔPV(V)/Δt、Δtは応答値データの急激変化状態の経過時間(過渡期間)である。図3の例では、急激変化状態の時間帯は「1:57〜2:04」であるため、Δt=8分、T=8.7である。
動特性決定部6は、動特性自動計算部5で算出した動特性(K,L,T)を出力する。出力した動特性は、式(1)に示す伝達関数のパラメータに代入される。
2 データ標準化処理部
3 ステップ信号検索フィルター
4 応答信号検索フィルター
5 動特性自動計算部
6 動特性決定部
K ゲイン
L 無駄時間
Mt 操作値変化時刻
MV 入力値(操作値)
Pt 応答変化開始時刻
PV 出力値(応答値)
T 積分時間
ΔMV 操作変化値
ΔPV 応答変化値
Δt 過渡期間
Claims (5)
- 積分要素を含む伝達関数で表わされるプロセスの動特性を同定する積分系プロセス動特性自動同定装置であって、
前記プロセスの過去の入出力実データから抽出された一部期間のデータのうち、所定間隔の時刻と入力値との関係を定めた入力実データから、時刻毎の入力値の変化量ΔMVを算出し、最大入力変化量ΔMVmaxが得られた時刻Mtの直前の所定時刻範囲および直後の所定時刻範囲における入力値の変化幅が、前記最大入力変化量ΔMVmaxよりも小さい許容変化幅以下である場合に、前記入力実データをステップ入力と判定するステップ入力判定手段と、
前記入力実データがステップ入力と判定される場合に、前記一部期間のデータのうち前記所定間隔の時刻と出力値との関係を定めた出力実データから、時刻毎の出力値の変化量ΔPVを算出し、最大出力変化量ΔPVmaxが得られた時刻の直前および直後の期間であって変化量ΔPVが前記最大出力変化量ΔPVmaxよりも小さい基準量以上である過渡期間Δtと、前記過渡期間Δtの間に変化した期間出力変化量ΔPV(V)とを取得するステップ応答取得手段と、
前記最大入力変化量ΔMVmax、前記期間出力変化量ΔPV(V)、前記過渡期間Δt、前記過渡期間Δtの開始時刻Pt、前記時刻Mtに基づいて、前記伝達関数のパラメータを算出する動特性自動計算手段と、
を備えることを特徴とする積分系プロセス動特性自動同定装置。 - 前記ステップ入力判定手段において前記入力実データがステップ入力と判定されない場合に、前記過去の入出力実データから前記一部期間のデータとは異なる一部期間のデータを抽出し、再度前記ステップ入力判定手段を実行する手段、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の積分系プロセス動特性自動同定装置。 - 前記許容変化幅は、前記入力実データにおける最大の入力値の20%から40%までの間の所定幅であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積分系プロセス動特性自動同定装置。
- 前記基準量は、前記最大出力変化量ΔPVmaxの4分の1以上から半分以下までの間の所定量であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積分系プロセス動特性自動同定装置。
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