JP6316537B2 - 分岐ヒアルロン酸及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は分岐ヒアルロン酸及びその製造方法に関する。
ヒアルロン酸は牛の眼球、鶏冠、動物の緩衝組織、胎盤、癌細胞及び皮膚などの生体組織に多量に含まれているもので、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとがβ1,3結合とβ1,4結合で交互に結合した直鎖状の多糖であり、分子量が105〜106Daの高分子量のグルコサミノグリカンである。ヒアルロン酸は、粘度が高く、高い保湿効果を有し、物理的摩擦に対する潤滑効果及び細菌などの侵入に対する保護効果が優れているという性質を持つ。
ヒアルロン酸はこれらの性質を持つので、化粧品添加剤、関節炎治療剤、創傷被覆剤、眼科手術用手術補助剤及び外科手術後の癒着阻止剤などの医薬品として広範囲に使用されている。
ヒアルロン酸の特性の一つである保湿性を向上させるためには、ヒアルロン酸の分子量を大きくすることが有効である(特許文献1)。しかしながら、分子量を大きくすると、ヒアルロン酸の粘度が高くなり、化粧品等を製造する際、他の成分との配合の自由度が制約される、ベタツキ感がでるという問題がある。
したがって、ヒアルロン酸の粘度を上げずに、保湿性を向上する必要がある。
国際公開第2006/072243号
本発明は、粘度を上げずに保湿性を向上した分岐ヒアルロン酸を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記(条件1)〜(条件5)を満たす水可溶性の分岐ヒアルロン酸;下記一般式(3)〜(6)のいずれかで表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を合計3つ以上有する化合物(S’)、ウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンに、ウリジン二リン酸を下記化合物(K)に変換する活性を有するウリジン二リン酸変換酵素(B)の存在下でヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させる分岐ヒアルロン酸の製造方法である。
下記(条件1)〜(条件5)を満たす水可溶性の分岐ヒアルロン酸。
(条件1)分岐ヒアルロン酸は下記構造単位(α)と下記構造単位(β)とからなる;
(条件2)構造単位(α)は、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を合計3つ以上有する化合物(S)から少なくとも3つの水素原子を除いた残基である;
(条件3)構造単位(α)において、化合物(S)から除いた水素原子が、一般式(1)で表される基の1位の炭素に結合する水酸基と、一般式(2)で表される基の1位の炭素に結合する水酸基と、一般式(3)で表される基の4位の炭素に結合する水酸基と、一般式(4)で表される基の3位の炭素に結合する水酸基とにおける水素原子である;
(条件4)構造単位(β)は、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとがβ1,3−グルコシド結合とβ1,4−グルコシド結合とで交互に結合した縮合重合体のいずれか一方の末端から水酸基を除いた残基である;
(条件5)構造単位(β)において、末端から除いた水酸基が、グルクロン酸単位の4位の炭素に結合した水酸基、又はN−アセチルグルコサミン単位の3位の炭素に結合した水酸基である;
本発明の分岐ヒアルロン酸は、保湿性の機能を向上しているにもかかわらず粘度が低い。また、本発明の分岐ヒアルロン酸の製造方法は、保湿性の機能を向上した粘度の低い分岐ヒアルロン酸を製造することができる。
本発明の分岐ヒアルロン酸は、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種を合計3つ以上有する化合物(S)にグルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとをβ1,3結合及びβ1,4結合で交互に脱水縮合させた分岐ヒアルロン酸である。分岐ヒアルロン酸としては、分岐ヒアルロン酸分子中のカルボキシル基のプロトンの一部又は全部がアルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)イオン及び/又はアルカリ土類金属(カルシウム等)イオンで置換された分岐ヒアルロン酸塩を含む。
化合物(S)は、上記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を合計3つ以上有する化合物である。すなわち、(1)〜(4)のいずれかで表される基の1種の官能基を3つ以上有してもよいし、複数種の官能基を合計3つ以上有しても良い。(S)には、下記(S1)〜(S4)が含まれる。
(S1)グルクロン酸及び/又はN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS1)に化合物(T)を反応させたもの。
(S2)グルクロン酸が2〜10,000個結合したもの又はグルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとが合計2〜10,000個結合したもの(SS2)に化合物(U)を反応させたもの。
(S3)グルクロン酸及び/又はN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS3)に化合物(V)を反応させて反応性単量体(V’)とし、(V’)を重合したもの。
(S4)グルクロン酸が2〜10,000個結合したもの又はグルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS4)に化合物(W)を反応させて反応性単量体(W’)とし、(W’)を重合したもの。
化合物(S)の分子中の上記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される基の数は、合計3つ以上であるが、保湿能及び粘度の観点から、4〜1,000,000が好ましく、さらに好ましくは6〜1,000,000である。
化合物(T)としては、グルクロン酸及び/又はN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS1)の分子中のヒドロキシル基と反応する官能基を2個以上有する化合物が含まれ、有機ポリイソシアネート化合物(T1)、多価カルボン酸(無水物)(T2)、多官能エポキシ樹脂(T3)、アルデヒド基含有化合物(T4)及びジビニルスルホン(T5)が含まれる。
(T1)としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物が含まれ、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基及びオキサゾリドン基含有変性物等)及びこれらの2種以上の混合物が含まれる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く;以下のポリイソシアネートも同様)が6〜16の芳香族ジイソシアネート、炭素数6〜20の芳香族トリイソシアネート及びこれらのイソシアネートの粗製物等が挙げられる。具体例としては、ジエチルベンゼンジイソシアネート、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗製MDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート並びにトリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート及びビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート等が挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、炭素数4〜16の脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香脂肪族イソシアネートとしては、炭素数8〜12の芳香脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
変性ポリイソシアネートの具体例としては、カルボジイミド変性MDI等が挙げられる。
有機ポリイソシアネート化合物(T1)としては、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
(T2)としては、非環式多価カルボン酸(無水物)、芳香族多価カルボン酸(無水物)及び脂環式多価カルボン酸(無水物)が含まれる。
なお、カルボン酸(無水物)とはカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物を意味する。
非環式多価カルボン酸(無水物)としては、炭素数2〜20の2価又は3価以上のカルボン酸(無水物)が挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びこれらの無水物等が挙げられる。
芳香族多価カルボン酸(無水物)としては、炭素数8〜20の2価又は3価以上のカルボン酸(無水物)が挙げられ、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物等が挙げられる。
脂環式多価カルボン酸(無水物)としては、炭素数8〜20の2価又は3価以上のカルボン酸(無水物)が挙げられ、具体的には、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、メチルヘキサヒドロフタル酸及びこれらの無水物等が挙げられる。
多価カルボン酸(無水物)(T2)としては、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
(T3)としては、炭素数5〜100のエポキシ基を2個以上有する化合物が含まれ、具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂及び複素環型エポキシ樹脂等が挙げられる。
多官能エポキシ樹脂(T3)としては、1種単独でも、2種以上を併用してもいい。
(T4)としては、炭素数1〜100のアルデヒド基を1個以上有する化合物が含まれ、具体的には、ホルムアルデヒド、炭素数2〜4のアルキル及び/又はアルケニル基を有する脂肪族アルデヒド(アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、メチル−n−プロピルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、ビニルアセトアルデヒド及びα−メチルアクロレイン等)、炭素数7〜100の芳香族アルデヒド(ベンズアルデヒド及びシンナムアルデヒド等)、並びに炭素数4〜100の脂環式アルデヒド(シクロプロパンアルデヒド、シクロブチルホルムアルデヒド、シクロペンタンアルデヒド、3−メチルシクロペンタンアルデヒド、1−フェニルシクロペンタンアルデヒド、2−フェニルシクロペンタンアルデヒド、1−シクロペンテンアルデヒド、シクロペンチルアセトアルデヒド、2−シクロペンテニルアセトアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、1−シクロヘキセンアルデヒド、2,6,6−トリメチル−1,3−シクロヘキサンジエンアルデヒド、シクロヘキシリデンアセトアルデヒド、シクロヘキセニルアセトアルデヒド、シクロヘプタンアルデヒド、2,2,6−トリメチルシクロヘプタンアルデヒド、1−シクロヘプテンアルデヒド、3,3,4−トリメチル−1−シクロヘプテンアルデヒド、4,4−ジメチル−1−シクロヘプテンアルデヒド、1,4,4−トリメチル−2−シクロヘプテンアルデヒド及びシクロオクタンアルデヒド等)等が挙げられる。
アルデヒド基含有化合物(T4)としては、1種単独でも、2種以上を併用してもいい。
(S1)において、(SS1)と化合物(T)とを結合させる場合において、化合物(T)の結合量は、保湿能の観点から、(SS1)分子中のグルクロン酸単位及びN−アセチルグルコサミン単位の合計モル数を基準として、0.0001〜100モル%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜30モル%である。
化合物(T)の使用量を多くすれば、分岐の数を増やすことができ、少なくすれば分岐の数を少なくすることができる。
(S1)は、グルクロン酸及び/又はN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS1)と上記化合物(T)とを反応させることにより得ることができる。反応条件は、ヒドロキシル基を有する化合物と上記化合物(T)とを反応させる際の一般的な条件と同じでよく、特に限定されない。
(S1)における、グルクロン酸及び/又はN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS1)において、1分子当たりのグルクロン酸単位とN−アセチルグルコサミン単位の合計数は、保湿性及び粘度の観点から、2〜1,000個であることが好ましく、さらに好ましくは2〜100個、次にさらに好ましくは2〜30個である。
化合物(U)としては、グルクロン酸が2〜10,000個結合したもの又はグルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS2)の分子中のカルボキシル基と反応する官能基を2個以上有する化合物が含まれ、多価アルコール(U1)、1級及び/又は2級アミノ基を2個以上有する化合物(U2)、アミノアルコール(U3)及びチオール基を2個以上有する化合物(U4)が含まれる。
(U1)としては、脂肪族多価アルコール及び脂環式多価アルコールが含まれる。
脂肪族多価アルコールとしては、炭素数2〜20の2価又は3価以上のアルコール及びこれらのアルキレンオキサイド(以下、AOと略記する)付加物が挙げられ、具体的には、エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−、1,3−、2,3−又は1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−、1,4−、1,5−又は2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−、1,5−、1,6−又は2,5−ヘキサンジオール、2−又は3−メチルペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−又は3−メチルヘキサンジオール、2−、3−又は4−メチルヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−、3−又は4−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリアルカノールアミン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール及びこれらのAO付加物等が挙げられる。
AOとしては、炭素数2〜6の1,2−AO、例えば、エチレンオキサイド(以下、EOと略す)、炭素数3以上の1,2−AO{1,2−プロピレンオキサイド(以下、POと略す)及び1,2ブチレンオキサイド}等が挙げられる。AOは2種以上を併用(ランダム付加及び/又はブロック付加)してもいい。
脂環式多価アルコールとしては、炭素数6〜20の2価又は3価以上のアルコール及びこれらのAO付加物が挙げられ、具体的には、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、スピログリコール、ジヒドロキシメチルトリシクロデカン及びこれらのAO付加物等が挙げられる。
AOとしては、炭素数2〜6の1,2−AO、例えば、EO、炭素数3以上の1,2−AO{PO及び1,2ブチレンオキサイド}等が挙げられる。AOは2種以上を併用(ランダム付加及び/又はブロック付加)してもいい。
多価アルコール(U1)としては、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
(U2)としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及びジエチレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン及びその他特公昭55−21044号公報記載の複素環式ポリアミン;ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン;フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジフェニルエ−テルジアミン及びポリフェニルメタンポリアミン等の芳香族ポリアミン;ポリアミドポリアミン[例えばジカルボン酸(ダイマー酸等)と過剰の(酸1モル当り2モル以上の)ポリアミン(上記アルキレンジアミン及びポリアルキレンポリアミン等)との縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミン];ポリエーテルポリアミン[ポリエーテルアルコール(ポリアルキレングリコール等)のシアノエチル化物の水素化物];シアノエチル化ポリアミン[例えばアクリロニトリルとポリアミン(上記アルキレンジアミン及びポリアルキレンポリアミン等)との付加反応により得られるシアノエチル化ポリアミン。例えばビスシアノエチルジエチレントリアミン等]等が挙げられる。
1級及び/又は2級アミノ基を2個以上有する化合物(U2)としては、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
(U3)としては、アルカノールアミン、例えばモノ−、ジ−及びトリ−アルカノールアミン(モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、モノブタノールアミン、トリエタノールアミン及びトリプロパノールアミン等);これらのアルキル(炭素数1〜4)置換体〔N,N−ジアルキルモノアルカノールアミン(N,N−ジメチルエタノールアミン及びN,N−ジエチルエタノールアミン等)及びN−アルキルジアルカノールアミン(N−メチルジエタノールアミン及びN−ブチルジエタノールアミン等)〕;及びこれらのジメチル硫酸又はベンジルクロリド等の4級化剤による窒素原子4級化物等が挙げられる。
アミノアルコール(U3)としては、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
(U4)としては、炭素数2〜20の2〜8価の多価チオールが挙げられる。具体的にはエチレンジチオール、プロピレンジチオール、1,3−ブチレンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1、6−ヘキサンジチオール及び3−メチルペンタンジチオール等が挙げられる。
チオール基を2個以上有する化合物(U4)としては、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
(S2)は、グルクロン酸が2〜10,000個結合したもの又はグルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS2)と化合物(U)とを反応させたものである。反応条件は、カルボキシル基を有する化合物と上記化合物(U)とを反応させる際の一般的な条件と同じでよく、特に限定されない。
(S2)において、グルクロン酸が2〜10,000個結合したもの又はグルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS2)と化合物(U)とを結合させる場合の化合物(U)の結合量は、保湿能及び粘度の観点から、(SS2)分子中のグルクロン酸単位のモル数を基準として、0.00001〜50モル%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜20モル%である。
化合物(U)の使用量を多くすれば、分岐の数を増やすことができ、少なくすれば分岐の数を少なくすることができる。
(S2)において、グルクロン酸が2〜10,000個結合したもの又はグルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS2)における、1分子当たりのグルクロン酸単位及びN−アセチルグルコサミン単位の合計数は、保湿性及び粘度の観点から、2〜1,000個であることが好ましく、さらに好ましくは2〜100個、次にさらに好ましくは2〜30個である。
化合物(V)としては、グルクロン酸及び/又はN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合した分子中のヒドロキシル基と反応する官能基を1個以上有し、重合性官能基を1個以上有する化合物が含まれ、不飽和カルボン酸(V1)、不飽和エポキシド(V2)、不飽和ハイドロカルビル基を有するハライド(V3)及び不飽和イソシアネート(V4)が含まれる。
(V1)としては、重合性不飽和基を1個有する不飽和モノカルボン酸及び不飽和ジカルボン酸(無水物)を含む。なお、本発明において不飽和ジカルボン酸(無水物)は、不飽和ジカルボン酸及び/又は不飽和ジカルボン酸無水物を意味する。
不飽和モノカルボン酸としては、炭素数3〜12の不飽和モノカルボン酸が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸及びクロトン酸等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸(無水物)としては、炭素数4〜30のものが挙げられ、例えば脂肪族のもの(炭素数4〜24、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸及びこれらの無水物等)、並びに脂環式のもの(炭素数8〜24、例えばシクロへキサンジカルボン酸及びシクロヘプテンジカルボン酸等)等が挙げられる。
不飽和カルボン酸(V1)は1種単独でも、2種以上を併用してもいい。
(V2)としては、重合性不飽和基を1個有する不飽和エポキシが含まれ、不飽和ハイドロカルビル基を有するグリシジルエーテル(例えば、ビニルグリシジルエーテル、プロペニルグリシジルエーテル、(メタ)アリルグリシジルエーテル及びp−ビニルフェニルグリシジルエーテル等);不飽和モノカルボン酸アシル基を有するグリシジルエステル(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等)等が挙げられる。
不飽和エポキシド(V2)は1種単独でも、2種以上を併用してもいい。
(V3)としては、炭素数2〜20の不飽和ハイドロカルビル基を有するハライド(クロライド及びブロマイド等)が含まれ、例えば、ビニルクロライド、プロペニルクロライド及び(メタ)アリルクロライド等が挙げられる。
不飽和ハイドロカルビル基を有するハライド(V3)としては、1種単独でも、2種以上を併用してもいい。
(V4)としては、炭素数3〜20の不飽和イソシアネートが含まれ、例えば、(メタ)アリルイソシアネート;不飽和モノカルボン酸アシル基を有するイソシアネート(例えば、(メタ)アクリロイロキシアルキル(C2〜6)イソシアネート[2−(メタ)アクリロイロキシエチルイソシアネートなど]等)等が挙げられる。
不飽和イソシアネート(V4)としては、1種単独でも、2種以上を併用してもいい。
(S3)は、グルクロン酸及び/又はN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS3)と上記化合物(V)とを反応させて得られた反応性単量体(V’)を重合したものである。グルクロン酸及び/又はN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS3)と上記化合物(V)とを反応させる反応条件としては、ヒドロキシル基を有する化合物と上記化合物(V)とを反応させる際の一般的な条件と同じでよく、特に限定されないが、グルクロン酸及び/又はN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS3)と上記化合物(V)とを等モル量反応させることが好ましい。また、反応性単量体(V’)の重合反応の反応条件としては、重合性不飽和基を有する化合物を重合反応させる際の一般的な条件と同じでよく、特に限定されない。また、(S3)としては、(V’)を1種重合させたものでもよく、2種以上共重合させたものでもよく、重合したものを混合してもいい。
(S3)において、グルクロン酸及び/又はN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS3)において、1分子当たりのグルクロン酸単位及びN−アセチルグルコサミン単位の合計数は、保湿性の観点から、2〜1,000個であることが好ましく、さらに好ましくは2〜100個、次にさらに好ましくは2〜30個である。
化合物(W)としては、グルクロン酸が2〜10,000個結合したオリゴマー又はグルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合した分子中のカルボキシル基と反応する官能基を1個以上有する化合物が含まれ、不飽和アルコール(W1)及び不飽和アミン(W2)等が挙げられる。
(W1)としては、不飽和アルコール及び不飽和アルコールのAO付加物が含まれる。
不飽和アルコールとしては、炭素数3〜20の不飽和アルコールが含まれ、例えば、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン1−オール及びプロパルギルアルコール等;不飽和ハイドロカルビレンジオール(アルケンジオール、例えば2−ブテン1,4−ジオール等);これらの(ポリ)オキシアルキレンエーテル(アルキレン基はC2〜4、重合度1〜100)、例えば2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等;水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、例えばヒドロキシアルキル(C2〜4)(メタ)アクリレート[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等]、ポリオキシアルキレン(アルキレン基はC2〜4、重合度2〜100)(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等];並びに水酸基含有(メタ)アクリルアミド、例えばN−もしくはN,N−ヒドロキシアルキル(C1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等]が挙げられる。
AOとしては、炭素数2〜12のAOが含まれ、具体的には、EO、PO及びブチレンオキサイド等が挙げられる。AOは2種以上を併用(ランダム付加及び/又はブロック付加)してもいい。
(W1)としては、1種単独でも、2種以上を併用してもいい。
(W2)としては、炭素数2〜20の不飽和アミンが含まれ、具体的には、不飽和ハイドロカルビルモノアミン(例えば、(メタ)アリルアミンおよびクロチルアミン);N−不飽和ハイドロカルビル置換ポリアミン[炭素数2〜20の脂肪族,脂環式,脂肪芳香族または芳香族ポリアミンのN−ビニル、プロペニルもしくは(メタ)アリル置換体](例えば、(メタ)アリルフェニレンジアミン);アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド(例えば、アミノアルキル(炭素数2〜4)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレートなど]、アミノアルキル(炭素数2〜4)(メタ)アクリルアミド[アミノエチル(メタ)アクリルアミドなど]及びこれらのN−アルキル(炭素数1〜4)置換体[t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど])等が挙げられる。
(W2)としては、1種単独でも、2種以上を併用してもいい。
(S−4)は、グルクロン酸が2〜10,000個結合したもの又はグルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS4)と化合物(W)とを反応させて得られた反応性単量体(W’)を重合したものである。グルクロン酸が2〜10,000個結合したもの又はグルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS4)と化合物(W)とを反応させる反応条件としては、カルボキシル基を有する化合物と上記化合物(W)とを反応させる一般的な条件と同じでよく、特に限定されないが、グルクロン酸が2〜10,000個結合したもの又はグルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS4)と化合物(W)とを等モル量反応させることが好ましい。。また、反応性単量体(W’)の重合反応の反応条件としては、重合性不飽和基を有する化合物を重合反応させる際の一般的な条件と同じでよく、特に限定されない。また、(S4)としては、(W’)を1種重合させたものでもよく、2種以上共重合させたものでもよく、重合したものを混合してもいい。
(S4)において、グルクロン酸が2〜10,000個結合したもの又はグルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS4)において、1分子当たりのグルクロン酸単位及びN−アセチルグルコサミン単位の合計数は、保湿性及び粘度の観点から、2〜100個であることが好ましく、さらに好ましくは2〜30個である。
上記化合物(S)のうち、製造の容易性及び保湿性の観点から、(S1)及び(S2)が好ましい。
本発明の分岐ヒアルロン酸は、上記化合物(S)にグルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとをβ1,3結合及びβ1,4結合で交互に脱水縮合させた分岐ヒアルロン酸である。
本発明の分岐ヒアルロン酸は、化合物(S)が上記一般式(1)で表される基を有する場合は、上記一般式(1)の1位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とN−アセチルグルコサミンの3位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とが脱水縮合によりエーテル結合を形成し(β1,3結合)、さらに、このN−アセチルグルコサミンの1位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とグルクロン酸の4位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とが脱水縮合によりエーテル結合を形成し(β1,4結合)、同様にN−アセチルグルコサミンとグルクロン酸とがβ1,3結合及びβ1,4結合で交互に結合したものである。
また、化合物(S)が上記一般式(2)で表される基を有する場合は、上記一般式(2)の1位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とグルクロン酸の4位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とが脱水縮合によりエーテル結合を形成し(β1,4結合)、さらに、このグルクロン酸の1位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とN−アセチルグルコサミンの3位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とが脱水縮合によりエーテル結合を形成し(β1,3結合)、同様にグルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとがβ1,4結合及びβ1,3結合で交互に結合したものである。
また、化合物(S)が上記一般式(3)で表される基を有する場合は、上記一般式(3)の4位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とN−アセチルグルコサミンの1位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とが脱水縮合によりエーテル結合を形成し(β1,4結合)、さらに、このN−アセチルグルコサミンの3位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とグルクロン酸の1位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とが脱水縮合によりエーテル結合を形成し(β1,3結合)、同様にN−アセチルグルコサミンとグルクロン酸とがβ1,4結合及びβ1,3結合で交互に結合したものである。
また、化合物(S)が上記一般式(4)で表される基を有する場合は、上記一般式(4)の3位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とグルクロン酸の1位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とが脱水縮合によりエーテル結合を形成し(β1,3結合)、さらに、このグルクロン酸の4位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とN−アセチルグルコサミンの1位の炭素原子に結合しているヒドロキシル基とが脱水縮合によりエーテル結合を形成し(β1,4結合)、同様に、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとがβ1,3結合及びβ1,4結合で交互に結合したものである。
本発明の分岐ヒアルロン酸において、化合物(S)の有する基(上記一般式(1)〜(4)のそれぞれ)1つ当たりに交互に結合させるグルクロン酸単位及びN−アセチルグルコサミン単位の合計数は、保湿性の観点から、10〜1,000,000個が好ましく、さらに好ましくは100〜1,000,000個である。
また、本発明の分岐ヒアルロン酸の重量平均分子量は、保湿性の観点から、1〜10,000,000kDaが好ましく、さらに好ましくは10〜1,000,000kDaである。
本発明の分岐ヒアルロン酸は、上記化合物(S)にグルクロン酸とN−アチルグルコサミンとがβ1,3結合及びβ1,4結合で交互に脱水縮合したものであればよく、特に限定されない。
また、上記分岐ヒアルロン酸を合成することができれば製造方法は特に限定されないが、例えば、後述する分岐ヒアルロン酸の製造方法により製造することができる。
本発明の分岐ヒアルロン酸は、同じ数のグルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンが直線上に結合した通常のヒアルロン酸と比較して、分岐構造を有していることにより、保湿性は同程度以上であるものの、粘度が低くなる。
また、本発明の分岐ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸の優れた性質を保持しつつ、分岐の数を調整することにより、ヒアルロン酸の粘度を調整することができる。したがって、本発明の分岐ヒアルロン酸は、化粧品、医薬部外品、関節炎治療剤、創傷被覆剤、眼科手術用手術補助剤及び外科手術後の癒着阻止剤などの医薬品、医療機器として広範囲に使用できる。
本発明の分岐ヒアルロン酸の製造方法は、下記一般式(3)〜(6)のいずれかで表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を合計3つ以上有する化合物(S’)、ウリジン二リン酸−グルクロン酸並びにウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンにヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させる分岐ヒアルロン酸の製造方法である。
醗酵生産後のヒアルロン酸を化学的に架橋して分岐ヒアルロン酸とした場合、ゲル化してしまい目的の分岐ヒアルロン酸を得ることができないが、本発明の分岐ヒアルロン酸の製造方法によれば、保湿性の機能を向上させた、粘度の低い分岐ヒアルロン酸を、ゲル化させずに生産率高く製造することができる。
本発明の製造方法において、化合物(S’)は上記一般式(3)で表される基及び/又は上記一般式(4)で表される基を合計3つ以上有する化合物(S’1)、上記一般式(5)で表される基及び/又は(6)で表される基を合計3つ以上有する化合物(S’2)、並びに上記一般式(3)で表される基及び/又は(4)で表される基と上記一般式(5)で表される基及び/又は(6)で表される基とを合計3つ以上有する化合物(S’3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
化合物(S’)として、化合物(S’1)を用いる場合は、後述するクラスIIのヒアルロン酸合成酵素を用いることで分岐ヒアルロン酸を製造することができる。また、化合物(S’2)を用いる場合は、後述するクラスIのヒアルロン酸合成酵素を用いることで分岐ヒアルロン酸を製造することができる。また、(S’3)を用いる場合は、クラスIのヒアルロン酸合成酵素及びクラスIIのヒアルロン酸合成酵素を用いることで、分岐ヒアルロン酸を製造することができる。
化合物(S’1)は、上述の(S)において、上記一般式(3)及び/又は(4)で表される基を合計3つ以上有する化合物である。
化合物(S’1)として好ましいものは上記(S)と同様である。
化合物(S’2)は、ウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンにヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させてグルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとがβ1,3結合又はβ1,4結合で結合したヒアルロン酸を製造することで、末端が上記一般式(5)及び/又は(6)で表される基であるヒアルロン酸が得られ、このヒアルロン酸を化合物(SS1)〜(SS4)の代わりに用いて、上記(T)〜(W)を用いて反応させることで、化合物(S’2)を製造することができる。
(S’2)において、末端が上記一般式(5)及び/又は(6)で表される基であるヒアルロン酸の好ましいものについては、(SS1)〜(SS4)におけるグルクロン酸単位及びN−アセチルグルコサミン単位の好ましい合計結合数、(T)〜(W)の結合量の好ましい範囲と同じである。
化合物(S’3)は、上記化合物(S’2)と同様にして製造することができ、好ましいものも同様である。
化合物(S’)としては、反応特異性の観点から、(S’2)が好ましい。
本発明において、ウリジン二リン酸−グルクロン酸とは、ウリジン二リン酸のリン酸基にグルクロン酸が結合した化合物である。ウリジン二リン酸−グルクロン酸は、例えば、ウリジン三リン酸とグルクロン酸一リン酸から合成することができる。また、ウリジン二リン酸−グルコースの酸化によって得ることができる。さらに、ウリジン二リン酸−グルコースの酸化を行うウリジン二リン酸デヒドロゲナーゼを過剰発現した微生物を用いた微生物培養方法によっても生産可能である。
ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンとは、ウリジン二リン酸のリン酸基にN−アセチルグルコサミンが結合した化合物である。ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンは、例えば、ウリジン三リン酸とN−アセチルグルコサミン一リン酸からウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンピロホスホリラーゼによって合成することができる。
ヒアルロン酸合成酵素(A)とは、ウリジン二リン酸−グルクロン酸とウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンとからヒアルロン酸を合成するヒアルロン酸合成活性を有する酵素である。ヒアルロン酸合成活性は、具体的には、ウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンを糖供与体として、グルクロン酸がβ1,3結合でN−アセチルグルコサミンに結合した二糖単位の、β1,4結合による繰り返し構造を有するオリゴ糖を合成する能力をいう。
ヒアルロン酸合成酵素(A)としては、従来のヒアルロン酸合成酵素を使用でき、ヒアルロン酸合成活性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、非特許文献(The Journal of Biological Chemistry,2007,Vol.282,No.51,P36777−36781)に記載されているクラスI及びクラスIIのヒアルロン酸合成酵素が挙げられる。クラスI及びクラスIIは、酵素のアミノ酸配列の相同性によって分類されたものである。
クラスIのヒアルロン酸合成酵素には、ストレプトコッカスピロジェネシスやストレプトコッカスエクイシミリス及び藻類ウイルス由来のヒアルロン酸合成酵素等が含まれ、上記化合物(S’2)及び(S’3)中の上記一般式(5)及び/又は(6)で表される基におけるウリジン二リン酸基と、ウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンにおけるウリジン二リン酸基を脱離させながらグルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンを1,3結合及び1,4結合させる反応を触媒する酵素である。
また、クラスIIのヒアルロン酸合成酵素には、パスツレラ・ムルトシダ由来のヒアルロン酸合成酵素等が含まれ、上記化合物(S’1)及び(S’3)中の上記一般式(3)及び/又は(4)で表される基に、ウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンにおけるウリジン二リン酸基を脱離させながらグルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンを1,3結合及び1,4結合させる反応を触媒する酵素である。
ヒアルロン酸合成酵素(A)のうち、反応特異性の観点から、クラスIのヒアルロン酸合成酵素が好ましい。
本発明の分岐ヒアルロン酸合成酵素の製造方法において、反応特異性の観点から、化合物(S’)として(S’2)を用いて、クラスIのヒアルロン酸合成酵素を用いた製造方法が好ましい。
本発明の製造方法は、化合物(S’)、ウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンにヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させる製造方法であるが、ヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させる際、ウリジン二リン酸を下記化合物(K)に変換する活性を有するウリジン二リン酸変換酵素(B)の存在下でヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させることが好ましい。(B)の存在下でヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させることにより、分岐ヒアルロン酸をさらに効率よく製造することができる。
化合物(J):ウラシル、ウリジン、ウリジン一リン酸、ウリジン三リン酸、ポリウリジル酸、デオキシウリジン二リン酸及びウリジン二リン酸−糖からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物。
ウリジン二リン酸変換酵素(B)には、下記(B−1)〜(B−7)が含まれる。
(B−1)ウリジン二リン酸をウラシルに変換する活性を有する酵素
(B−2)ウリジン二リン酸をウリジンに変換する活性を有する酵素
(B−3)ウリジン二リン酸をウリジン一リン酸に変換する活性を有する酵素
(B−4)ウリジン二リン酸をウリジン三リン酸に変換する活性を有する酵素
(B−5)ウリジン二リン酸をポリウリジル酸に変換する活性を有する酵素
(B−6)ウリジン二リン酸をデオキシウリジン二リン酸に変換する活性を有する酵素
(B−7)ウリジン二リン酸をウリジン二リン酸−糖に変換する活性を有する酵素
(B−2)は、リボヌクレオチド中の糖とリン酸との間のリン酸エステル結合を加水分解して、ヌクレオシドとリン酸にする反応を触媒する酵素である。(B−2)として、具体的には、ヌクレオチダーゼ及びアピラーゼ等が挙げられる。
(B−3)は、ウリジン二リン酸等のリン酸ジエステルを加水分解してリン酸モノエステルとする反応を触媒する酵素である。(B−3)として、具体的には、アデノシン2リン酸(ADP)特異的ホスホフルクトキナーゼ及びヌクレオチダーゼ等が挙げられる。
(B−4)は、リン酸基を有する化合物から、ウリジン二リン酸等のリボヌクレオシド二リン酸にリン酸基を転移させる反応を触媒する酵素である。(B−4)として、具体的には、ヌクレオシド二リン酸キナーゼ、ポリリン酸キナーゼ、アルギニンキナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、カルバミン酸キナーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ及びホスホクレアチンキナーゼ等が挙げられる。
ヌクレオシド二リン酸キナーゼは、ヌクレオシド三リン酸からヌクレオシド二リン酸にリン酸基を転移する酵素である。ヌクレオシド二リン酸キナーゼとして、具体的には、生物由来のもの{動物由来のもの(例えば、ヒト由来、ウシ由来及びラット由来のもの等)、植物由来のもの(例えば、シロイヌナズナ由来及びコメ由来のもの等)及び微生物由来のもの(例えば、エシェリヒア(Escherichia)属由来、サッカロマイセス(Saccharomyces)属由来、バシルス(Bacillus)属由来及びサーマス(Thermus)属由来のもの等)等}、生物由来のものを化学修飾したもの(例えば、カルボジイミド化合物、無水コハク酸、ヨード酢酸及びイミダゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種をを作用させて化学修飾したもの等)及び生物由来のものを遺伝子的に修飾したもの{例えば、Smithらの方法(The Journal of Biological Chemistry,1978,Vol.253,No.18,P6551−6560)を用いて遺伝子を改変して得たもの等}等が挙げられる。
ポリリン酸キナーゼは、リボヌクレオシド二リン酸とポリリン酸とから、リボヌクレオシド二リン酸と、重合度の1つ少ないポリリン酸とを生成する活性を有する酵素である。ポリリン酸キナーゼとして、具体的には、生物由来のもの{植物由来のもの(例えば、タバコ由来のもの等)及び微生物由来のもの(エシェリヒア(Escherichia)属由来、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属由来、シュードモナス(Pseudomonas)属由来及びサーマス(Thermus)属由来のもの等)等}、生物由来のものを化学修飾したもの(例えば、カルボジイミド化合物、無水コハク酸、ヨード酢酸及びイミダゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種をを作用させて化学修飾したもの等)並びに生物由来のものを遺伝子的に修飾したもの{例えば、Smithらの方法(The Journal of Biological Chemistry,1978,Vol.253,No.18,P6551−6560)を用いて遺伝子を改変して得たもの等}等が挙げられる。
アルギニンキナーゼは、リボヌクレオシド二リン酸とω−ホスホノ−L−アルギニンからリボヌクレオシド三リン酸とL−アルギニンを生成する活性を有する酵素である。アルギニンキナーゼとして、具体的には、生物由来のもの{動物由来のもの(例えば、ショウジョウバエ由来、エビ由来及びノミ由来のもの等)、植物由来のもの(例えば、ケヤリ由来のもの等)及び微生物由来のもの(例えば、バシルス(Bacillus)属由来のもの等)等}、生物由来のものを化学修飾したもの(例えば、カルボジイミド化合物、無水コハク酸、ヨード酢酸及びイミダゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種をを作用させて化学修飾したもの等)並びに生物由来のものを遺伝子的に修飾したもの{例えば、Smithらの方法(The Journal of Biological Chemistry,1978,Vol.253,No.18,P6551−6560)を用いて遺伝子を改変して得たもの等}等が挙げられる。
ピルビン酸キナーゼは、リボヌクレオシド二リン酸とホスホエノールピルビン酸からリボヌクレオシド三リン酸とピルビン酸を生成する活性を有する酵素である。ピルビン酸キナーゼとして、具体的には、生物由来のもの{動物由来のもの(例えば、ヒト由来、ウシ由来及びラット由来のもの等)、植物由来のもの(例えば、シロイヌナズナ由来及びトウゴマ由来のもの等)及び微生物由来のもの(例えば、エシェリヒア(Escherichia)属由来及びサッカロマイセス(Saccharomyces)属由来のもの等)等}、生物由来のものを化学修飾したもの(例えば、カルボジイミド化合物、無水コハク酸、ヨード酢酸及びイミダゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種をを作用させて化学修飾したもの等)並びに生物由来のものを遺伝子的に修飾したもの{例えば、Smithらの方法(The Journal of Biological Chemistry,1978,Vol.253,No.18,P6551−6560)を用いて遺伝子を改変して得たもの等}等が挙げられる。
カルバミン酸キナーゼは、カルバモイルリン酸とリボヌクレオシド二リン酸からリボヌクレオシド三リン酸、二酸化炭素、及びアンモニアを生成する活性を有する酵素である。カルバミン酸キナーゼとして、具体的には、生物由来のもの{動物由来のもの(例えば、ラット由来のもの等)及び微生物由来のもの(例えば、ピロコッカス(Pyrococcus)属由来、及びラクトバチルス(Lactobacillus)属由来のもの等)等}、生物由来のものを化学修飾したもの(例えば、カルボジイミド化合物、無水コハク酸、ヨード酢酸及びイミダゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種をを作用させて化学修飾したもの等)並びに生物由来のものを遺伝子的に修飾したもの{例えば、Smithらの方法(The Journal of Biological Chemistry,1978,Vol.253,No.18,P6551−6560)を用いて遺伝子を改変して得たもの等}等が挙げられる。
ホスホグリセリン酸キナーゼは、3−ホスホグリセロールリン酸とリボヌクレオシド二リン酸からリボヌクレオシド三リン酸及び3−ホスホグリセリン酸を生成する活性を有する酵素である。ホスホグリセリン酸キナーゼとして、具体的には、生物由来のもの{動物由来のもの(例えば、ラット由来のもの等)及び微生物由来のもの(例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属由来のもの等)等}、生物由来のものを化学修飾したもの(例えば、カルボジイミド化合物、無水コハク酸、ヨード酢酸及びイミダゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種をを作用させて化学修飾したもの等)並びに生物由来のものを遺伝子的に修飾したもの{例えば、Smithらの方法(The Journal of Biological Chemistry,1978,Vol.253,No.18,P6551−6560)を用いて遺伝子を改変して得たもの等}等が挙げられる。
ホスホクレアチンキナーゼは、ホスホクレアチンとリボヌクレオシド二リン酸からリボヌクレオシド三リン酸及びクレアチンを生成する活性を有する酵素である。ホスホクレアチンキナーゼとして、具体的には、生物由来のもの{動物由来のもの(例えば、ラット由来のもの等)等}、生物由来のものを化学修飾したもの(例えば、カルボジイミド化合物、無水コハク酸、ヨード酢酸及びイミダゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を作用させて化学修飾したもの等)並びに生物由来のものを遺伝子的に修飾したもの{例えば、Smithらの方法(The Journal of Biological Chemistry,1978,Vol.253,No.18,P6551−6560)を用いて遺伝子を改変して得たもの等}等が挙げられる。
ウリジン二リン酸変換酵素(B)として(B−4)を用いる場合、必要により、ウリジン二リン酸にリン酸基を与えるリン酸基含有化合物(b−4)を用いてもいい。(b−4)としては、例えば、ホスホエノールピルビン酸、カルバモイルリン酸、3−ホスホグリセロールリン酸、ホスホクレアチン、トリアミノホスフィンオキシド、リン酸化したアミノ酸(例えばω−ホスホノ−L−アルギニン等)、ポリリン酸及びヌクレオシド三リン酸(例えばウリジン三リン酸及びグアノシン三リン酸等)等が挙げられる。(B−4)と(b−4)の好ましい組み合わせは上述の通りである。
(B−5)は、ウリジン二リン酸等のリボヌクレオシド2リン酸をリボヌクレオシド1リン酸の共重合物及び無機リン酸とする反応を触媒する酵素である。(B−5)として、具体的には、ポリリボヌクレオチドヌクレオチジルトランスフェラーゼ等が挙げられる。
(B−6)は、ウリジン二リン酸等のリボヌクレオチドを還元してデオキシリボヌクレオチドとする反応を触媒する酵素である。(B−6)として、具体的には、リボヌクレオシドジホスホリダクターゼ等が挙げられる。
ウリジン二リン酸変換酵素(B)として(B−6)を用いる場合、還元剤(b−6)を用いる必要がある。(b−6)としては、電子伝達タンパク質を用いることができ、例えば、還元型チオレドキシン等が挙げられる。
(B−7)は、ウリジン二リン酸等のリボヌクレオシド2リン酸と糖リン酸とから糖核酸を合成する反応を触媒する酵素である。(B−7)として、具体的には、スクロースシンターゼ及びN−アシルニューラミネートシチジリルトランスフェラーゼ等が挙げられる。
ウリジン二リン酸変換酵素(B)として(B−7)を用いる場合、糖核酸の原料である糖リン酸(b−7)を用いる必要がある。(b−7)は、単糖又はオリゴ糖の水酸基にリン酸が結合した化合物であり、例えば、グルクロン酸1リン酸(1−ホスホ−α−D−グルクロン酸等)、N−アセチルグルコサミン1リン酸(N−アセチル−D−グルコサミン−1−ホスファート等)等が挙げられる。
上記ウリジン二リン酸変換酵素(B)のうち、分岐ヒアルロン酸を効率よく製造する観点及び工業化しやすいという観点から、(B−2)、(B−3)、(B−4)、(B−5)及び(B−7)が好ましく、さらに好ましくは(B−4)である。
本発明において、ウリジン二リン酸変換酵素(B)を用いる場合、下記酵素活性Vmax1及び下記酵素活性Vmax2を用いて下記数式(1)から算出した酵素活性比(Y)が、分岐ヒアルロン酸を効率よく製造する観点及び基質(ウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン)を有効利用する観点から、0.1以上であることが好ましく、さらに好ましくは10以上である。
酵素活性比(Y)=Vmax1/Vmax2 (1)
酵素活性Vmax1:ウリジン二リン酸変換酵素(B)のウリジン二リン酸に対する酵素活性。
酵素活性Vmax2:ウリジン二リン酸変換酵素(B)のウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンに対する酵素活性。
なお、酵素活性Vmax1及びVmax2は下記酵素活性Vmaxの測定法により測定できる。
<酵素活性Vmaxの測定法>
一定量の基質(ウリジン二リン酸、ウリジン二リン酸−グルクロン酸又はウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン)、ウリジン二リン酸変換酵素(B)、pH調整剤(K)及び水を含む、一定の温度及び一定のpHに調製した酵素反応溶液(II)を作成する。酵素反応溶液(II)中に、(B)が(B−4)である場合は必要によりリン酸基含有化合物(b−4)を添加し、(B)が(B−6)である場合は還元剤(b−6)を添加し、(B−7)である場合は糖核酸の原料(b−7)を添加する。
酵素反応溶液(II)を作成後、静置し、1分〜100時間酵素反応させる。次に、反応後の反応生成物量(X)を測定して酵素反応初速度vを求める。同様に、基質の濃度が異なる酵素反応溶液(II)を用いて、酵素反応初速度vを求める。得られた酵素反応初速度vと基質の濃度とからラインウェバー−バークプロットを作成し、酵素活性Vmaxを求める。
ここで、酵素反応溶液(II)の温度は、0〜100℃の範囲内で、(B)の活性が失活せず、活性がある温度で、酵素反応溶液(II)作成時から測定終了までの間、一定温度に保つことができればいい。
酵素反応溶液(II)のpHは、pH3〜12の範囲内であればいい。ヒアルロン酸合成酵素(A)の最適pHがわかっている場合は最適pHであることが好ましい。
酵素反応溶液(II)に用いるpH調整剤(K)は、扱いやすさ及び(B)の安定性の観点から、HEPESバッファー、MESバッファーなどのGoodバッファーが好ましい。酵素反応溶液(II)中のpH調整剤(K)の濃度(モル濃度)は、25〜500mMである。
酵素反応溶液(II)中の(B)の濃度(モル濃度)は、使用する(B)の種類によって適宜選択されるが、後述する反応生成物量(X)を縦軸に、時間hを横軸にプロットした場合、プロットが一次関数となる濃度を選ぶ。
(B)が(B−4)であり、リン酸基含有化合物(b−4)を添加する場合、酵素反応溶液(II)中の(b−4)の濃度(モル濃度)は、1nM〜10Mである。また、(b−4)の濃度は、(b−4)の濃度を2倍又は1/2倍に変化させても、反応速度が変化しない程度の濃度とする。
(B)が(B−6)である場合、酵素反応溶液(II)中の還元剤(b−6)の濃度(モル濃度)は、1nM〜10Mである。また、(b−6)の濃度は、(b−6)の濃度を2倍又は1/2倍に変化させても、反応速度が変化しない程度の濃度とする。
(B)が(B−7)である場合、酵素反応溶液(II)中の糖リン酸(b−7)の濃度(モル濃度)は、1nM〜10Mである。また、(b−7)の濃度は、(b−7)の濃度を2倍又は1/2倍に変化させても、反応速度が変化しない程度の濃度とする。
酵素反応溶液(II)中の基質の濃度(モル濃度)は、経時的に反応生成物量(X)を観測できる最小の基質濃度から最大の基質濃度の間で3点以上選べばよい。
反応時間は、短すぎると、反応生成物量(X)の正確な値が測定できない。また、反応時間が長すぎると、酵素が失活したり基質が枯渇するという問題が存在する。したがって、反応時間は反応生成物量(X)を縦軸に、時間を横軸にプロットした場合、プロットが一次関数となる反応時間とする。
反応生成物量(X)は、反応生成物の量を定量的に測定する目的で適切な条件下でHPLCを用いて解析を行うことにより求める。ここにおいて、反応生成物とは、ウリジン二リン酸変換酵素(B)が有する活性により基質が変換されて生成したものである。
酵素活性Vmax(M/s)はミカエリスメンテン式から派生したラインウェバー−バーク(Lineweaver−Burk)プロットを用いて求める。ラインウェバー−バークプロットは、横軸(x軸)にそれぞれの基質の濃度の逆数(1/[S])、縦軸(y軸)にそれぞれの基質濃度での酵素反応初速度の逆数(1/v)をプロットしたものであり、プロットの近似直線とy軸との交点が酵素活性Vmaxの逆数(1/Vmax)である。
上記測定において、基質としてウリジン二リン酸を用いて求めたものがVmax1である。また、基質としてウリジン二リン酸−グルクロン酸又はウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンをそれぞれ用いてVmax2をそれぞれ求めて、算出した酵素活性比(Y)のうち少なくとも1つが0.1以上であることが好ましく、さらに好ましくは、算出した酵素活性比(Y)の全てが0.1以上であることである。
本発明の分岐ヒアルロン酸の製造方法は、化合物(S’)を用いる以外は、従来のウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンにヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させるヒアルロン酸の製造方法と同様でいい。例えば、下記工程(i)〜(iii)により製造する方法が含まれる。
(i)所定量の化合物(S’)、ウリジン二リン酸−グルクロン酸、ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン、溶剤(D)及びヒアルロン酸合成酵素(A)を混合して反応溶液(L)とし、所定の温度、所定のpHに調整する。必要により、ウリジン二リン酸変換酵素(B)を加えてもいい。また、本工程では、必要により攪拌してもいい。
上記工程においては、化合物(S’)、ウリジン二リン酸−グルクロン酸、ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン及び溶剤(D)を混合し、温度及びpHを調整した後、ヒアルロン酸合成酵素(A)を添加してもいい。さらに、ヒアルロン酸合成酵素(A)は、そのまま添加してもよく、溶剤(D)で希釈してから添加してもいい。
また、反応溶液(L)中には(B)を含んでもいい。(B)が(B−4)である場合は、(b−4)を含んでもいい。使用する(B)が(B−6)である場合は、(b−6)を含む。使用する(B)が(B−7)である場合は、(b−7)を含む。
さらに、反応溶液(L)中には、脂質(M)、糖類(N)及びオリゴ糖(O)を含んでもいい。
(ii)反応溶液(L)の温度を調整しながら、所定の時間、化合物(S’)、ウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンにヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させる。本工程では、必要により攪拌してもいい。
(iii)生成した分岐ヒアルロン酸を精製する。分岐ヒアルロン酸の精製方法としては、適量のアルコール(炭素数1〜10のアルコール)などの溶剤(D)を加えて沈殿させる方法や膜(具体的には、セラミック膜等)を用いて溶液交換をする方法等が挙げられる。
反応溶液(L)中の化合物(S’)の含有量(重量%)は、分岐ヒアルロン酸を効率よく製造する観点及びヒアルロン酸合成酵素(A)を効率よく作用させる観点から、0.000001〜1重量%が好ましい。
反応溶液(L)中のウリジン二リン酸−グルクロン酸の含有量(モル濃度)は、分岐ヒアルロン酸を効率よく製造する観点及びヒアルロン酸合成酵素(A)を効率よく作用させる観点から、0.1mM〜2Mが好ましい。
反応溶液(L)中のウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンの含有量(モル濃度)は、分岐ヒアルロン酸を効率よく製造する観点及びヒアルロン酸合成酵素(A)を効率よく作用させる観点から、0.1mM〜2Mが好ましい。
反応溶液(L)中のヒアルロン酸合成酵素(A)の含有量(ユニット/L)は、分岐ヒアルロン酸を効率よく製造する観点及びヒアルロン酸合成酵素(A)を効率よく作用させる観点から、0.1〜1,000,000ユニット/Lが好ましい。
1ユニットとは、1分間に1μmolのウリジン二リン酸−グルクロン酸及び1μmolのウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンからヒアルロン酸を合成する活性を1ユニットと定義する。
溶剤(D)としては、水、有機溶剤及びこれらの混合物が含まれる。水としては、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、イオン交換水、蒸留水及び逆浸透水等が挙げられる。また、水中にpH調整剤(K)を含むバッファー水溶液等が挙げられる。
pH調整剤(K)としては、従来のpH調整剤が使用でき、ホウ酸バッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー、Trisバッファー、HEPESバッファー、硫酸、塩酸、クエン酸、乳酸、ピルビン酸、蟻酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等が挙げられる。
有機溶剤としては、アルコール(炭素数1〜18のアルコールが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリン等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、環状エーテル等)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等)、脂肪族または脂環式炭化水素(n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等)及びふっ素含有化合物(テトラフルオロエチレン等)等が挙げられる。これらの溶剤(D)のうち、タンパク質の安定性の観点からバッファー水溶液が好ましい。
反応溶液(L)の温度は、酵素(A)及び(B)の安定性並びに反応速度の観点から0〜100℃が好ましい。
反応溶液(L)のpHは、反応の至適条件の観点から、pH3〜12が好ましい。
上記工程(i)及び(ii)において、上記ウリジン二リン酸−グルクロン酸、ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン及びヒアルロン酸合成酵素(A)以外に、分岐ヒアルロン酸を効率よく製造する観点から、ウリジン二リン酸変換酵素(B)を用いてもいい。また、(B)として(B−4)を用いる場合は(b−4)を用いてもよく、(B)として(B−6)を用いる場合は(b−6)を用いる必要があり、(B)として(B−7)を用いる場合は(b−7)を用いる必要がある。
ウリジン二リン酸変換酵素(B)を用いる場合、反応溶液(L)中の(B)の含有量(ユニット/L)は、分岐ヒアルロン酸を効率よく製造する観点及びヒアルロン酸合成酵素(A)を効率よく作用させる観点から、0.1〜1,000,000ユニット/Lが好ましい。
1ユニットとは、1分間に1μmolのウリジン二リン酸を化合物(J)に変換する活性を1ユニットと定義する。
反応溶液(L)中の(b−4)、(b−6)又は(b−7)の含有量(モル濃度)は、分岐ヒアルロン酸を効率よく製造する観点及びヒアルロン酸合成酵素(A)を効率よく作用させる観点から、0.01nM〜10Mが好ましい。
また、上記以外に、酵素の安定化及び酵素の活性化の観点から、脂質(M)、糖類(N)及びオリゴ糖(O)を用いてもよい。
脂質(M)としては、例えば、カルディオピン及びオレイン酸等が挙げられる。
糖類(N)としては、例えば、グリセリン等が挙げられる。
オリゴ糖(O)としては、例えば、オリゴヒアルロン酸等が挙げられる。
反応溶液(L)中の脂質(M)の含有量(重量%)は、酵素の安定化及び酵素の活性化の観点から、0〜1重量%が好ましい。
反応溶液(L)中の糖類(N)の含有量(重量%)は、酵素の安定化及び酵素の活性化の観点から、0〜30重量%が好ましい。
反応溶液(L)中のオリゴ糖(O)の含有量(重量%)は、酵素の安定化及び酵素の活性化の観点から、0〜1重量%が好ましい。
工程(ii)において、ヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させる時間は、ヒアルロン酸合成酵素(A)の活性、反応溶液(L)の温度、ヒアルロン酸合成酵素(A)、ウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンの量比等によって異なる。反応溶液(L)の温度を、ヒアルロン酸合成酵素(A)の活性が高く、反応速度が速い温度に調整すれば、反応時間を短くすることができる。また、反応溶液(L)中のウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンに対するヒアルロン酸合成酵素(A)の量が多いほど、反応は早くなり、反応時間は短くなる。
本発明の分岐ヒアルロン酸の製造方法としては、分岐ヒアルロン酸を効率よく製造する観点から、下記工程(1)〜(3)を(1)、(2)、(3)及び(1)の順に含む又は下記工程(1)〜(3)を同時に行う分岐ヒアルロン酸の製造方法が好ましく、さらに好ましくは下記ミカエリス定数Kmが下記阻害濃度IC50の100倍未満である製造方法である。
工程(1):上記化合物(S’)、ウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンにヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させて(A)、分岐ヒアルロン酸及びウリジン二リン酸を含む組成物(Z’)を得る工程。
工程(2):ウリジン二リン酸とリン酸基含有化合物(b−4)とにウリジン二リン酸変換酵素(B−4)を作用させてウリジン三リン酸を得る工程。
工程(3):ウリジン三リン酸と1−ホスホ−グルクロン酸とにウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)を作用させてウリジン二リン酸−グルクロン酸を得る工程。
ミカエリス定数Km:ウリジン二リン酸を基質とし、ウリジン二リン酸変換酵素(B−4)を酵素とし、リン酸基含有化合物(b−4)を作用させてウリジン三リン酸を合成する反応におけるミカエリス定数。
阻害濃度IC50:ヒアルロン酸合成酵素(A)をウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンに作用させる際の(A)の濃度において、基質としてウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンを用いて、阻害剤としてウリジン二リン酸を用いて求めた、(A)の酵素活性が半減するときのウリジン二リン酸の濃度。
上記製造方法において、下記ミカエリス定数Kmは下記阻害濃度IC50の100倍未満であることが好ましい。
ミカエリス定数Km:ウリジン二リン酸を基質とし、ウリジン二リン酸変換酵素(B−4)を酵素とし、リン酸基含有化合物(b−4)を作用させてウリジン三リン酸を合成する反応におけるミカエリス定数。
阻害濃度IC50:ヒアルロン酸合成酵素(A)をウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンに作用させる際の(A)の濃度において、基質としてウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンを用いて、阻害剤としてウリジン二リン酸を用いて求めた、(A)の酵素活性が半減するときのウリジン二リン酸の濃度。
2種以上の(B−4)を用いる場合は、それぞれの(B−4)についてKmを求め、全ての(B−4)についてKmがIC50の100倍未満であることが好ましい。
また、2種以上の(A)を用いる場合は、それぞれの(A)についてIC50を求め、Kmが、求めたIC50の中で最も大きいIC50の100倍未満であることが好ましい。
ミカエリス定数Kmは、Agarwalらによって報告された方法(Methods of enzymology,1978,Vol.51,P483−491に記載の方法)で酵素反応初速度の基質濃度依存性を求めることによって求められる。ミカエリス定数Kmの測定に用いる(B−4)の形態としては、精製酵素を用いる。
阻害濃度IC50は、酵素反応初速度の阻害剤に対する濃度依存性を求めることによって求められる。具体的には、下記阻害濃度IC50の測定法によって求めたものである。阻害濃度IC50の測定に用いる(A)の形態としては、精製酵素を用いる。
阻害濃度IC50は、上記の製造方法において、(A)を作用させる際の濃度と同様の(A)の濃度、温度及びpHの条件下において、下記測定方法によって求められる。
<(A)の酵素活性が半減するときのウリジン二リン酸の濃度である阻害濃度IC50の測定方法>
一定量のヒアルロン酸合成酵素(A)、ウリジン二リン酸、ウリジン二リン酸−グルクロン酸、ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン、pH調整剤(K)及び水を含む一定の温度及びpHに調製した液量1mL以下の酵素反応溶液(III)を作成する。
酵素反応溶液(III)の温度は、分岐ヒアルロン酸を製造する際に(A)を作用させる温度と同じの温度を選ぶ。
酵素反応溶液(III)のpHは、分岐ヒアルロン酸を製造する際に(A)を作用させるpHと同じのpHを選ぶ。
酵素反応溶液(III)中のヒアルロン酸合成酵素(A)のモル濃度は、分岐ヒアルロン酸を製造する際に(A)を作用させる濃度に調整する。
酵素反応溶液(III)中のウリジン二リン酸の含有量(モル濃度)は、ウリジン二リン酸が0Mの酵素反応溶液(III)、及びウリジン二リン酸の濃度が0Mからヒアルロン酸合成酵素(A)の活性が0になる(ヒアルロン酸の生成が観測できなくなる)ウリジン二リン酸の濃度との間で、ウリジン二リン酸の濃度が異なる4種類以上の酵素反応溶液(III)、合計5種類以上の酵素反応溶液(III)を作成すればいい。また、類似のヒアルロン酸合成酵素に対するウリジン二リン酸の阻害定数Kiが分かっている場合は、ウリジン二リン酸の濃度が0Mのもの、類似ヒアルロン酸合成酵素の0より大きくKi未満の濃度範囲で2種類以上、Ki以上及びKiの10倍以下の濃度範囲で2種類以上、合計5種類以上作成すればいい。
酵素反応溶液(III)中のウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンの含有量は、経時的なピーク面積変化を観測できる点を1点選べばよい。測定に使用する(A)と類似のヒアルロン酸合成酵素のミカエリス定数Kmが分かっている場合は、Km以上及びKmの5倍以下の濃度範囲の間で選べばよい。
酵素反応溶液(III)に用いるpH調整剤(K)は、扱いやすさ及び酵素の安定性の観点から、リン酸塩、ホウ酸塩、HEPESバッファー及びMESバッファー等のGoodバッファーが好ましい。酵素反応溶液(III)中の(K)の含有量(モル濃度)は、100〜500mMである。
酵素反応溶液(III)について、(III)を作成直後及び一定時間(例えば5分)ごとに溶液の一部(例えば100μL)を取り出し、取り出したものを100℃で1分間熱処理し、酵素反応を停止する。液体クロマトグラフィーを用いて取り出した反応溶液中のヒアルロン酸の量を定量する。酵素反応溶液(III)を作成直後のピーク面積をP0、h時間後のピーク面積をPhとし、ピーク面積の変化ΔP(ΔP=Ph−P0)とヒアルロン酸のピーク面積に対する検量線を用いて酵素反応初速度v(M/s)を算出する。
さらに、ウリジン二リン酸の濃度が異なる酵素反応溶液(III)を用いて、同様に測定し、酵素反応初速度vを算出する。
阻害濃度IC50は、横軸に(x軸)にそれぞれのウリジン二リン酸の濃度、縦軸(y軸)にウリジン二リン酸濃度が0の時の酵素反応初速度vを100(%)としたときの相対活性をプロットする。プロットを直線でつなぎ、y=50(%)となるときのウリジン二リン酸濃度を阻害濃度IC50とする。
分岐ヒアルロン酸を効率よく生産する観点から、ミカエリス定数Kmは、阻害濃度IC50の100倍未満であることが好ましく、さらに好ましくは10倍以下であることである。
ウリジン二リン酸の(B−4)に対するミカエリス定数Kmが、ウリジン二リン酸のヒアルロン酸合成酵素(A)に対する阻害濃度IC50の100倍未満であることで、ウリジン二リン酸がウリジン二リン酸変換酵素(B−4)に触媒されてウリジン三リン酸を合成する活性が高く、効率よくウリジン三リン酸が合成され、ウリジン三リン酸からウリジン二リン酸−グルクロン酸、しいては分岐ヒアルロン酸を効率良く製造できる。また、ウリジン二リン酸がヒアルロン酸合成酵素(A)との結合で消費されることなく、ウリジン二リン酸を効率よく再利用できる。
例えば、無精製のウリジン二リン酸−グルクロン酸とウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンとにヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させる際に、KmがIC50の100倍(Km=100×IC50)であるウリジン二リン酸変換酵素(B−4)とヒアルロン酸合成酵素(A)とが等モル量存在している場合、ウリジン二リン酸変換酵素(B−4)に触媒されるウリジン二リン酸のモル量は、ヒアルロン酸合成酵素(A)と結合するウリジン二リン酸のモル量のおよそ100分の1程度であると推察される。
上記分岐ヒアルロン酸の製造方法において、工程(3)で用いる1−ホスホ−グルクロン酸は、グルクロン酸の1位のヒドロキシル基がリン酸でリン酸エステル化されたものである。
工程(3)で用いるウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)は、ウリジン三リン酸と1−ホスホ−グルクロン酸とからウリジン二リン酸−グルクロン酸を生成する活性を有する酵素であれば特に限定されない。動物起源の動物ウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C−1)、植物起源の植物ウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C−2)、微生物起源の微生物ウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C−3)及び(C−1)〜(C−3)が化学的に修飾された変異体(C−4)及び(C−1)〜(C−3)が遺伝子的に修飾された変異体(C−5)が含まれる。
動物ウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C−1)としては、例えば、ブタ由来のもの等が挙げられる。
植物ウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C−2)としては、例えば、シロイヌナズナ由来、エンドウマメ由来、オオムギ由来のもの等が挙げられる。
微生物ウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C−3)としては、例えば、サーマス(Thermus)属由来のもの等が挙げられる。
化学的に修飾したウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C−4)として、例えば上記ウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼにカルボジイミド化合物、無水コハク酸、ヨード酢酸及びイミダゾール化合物等を作用させて化学修飾したもの等が挙げられる。
遺伝子的に修飾したウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C−5)として、Smithらの方法(The Journal of Biochemistry,1998,Vol.253,No.18,P6551−6560)で上記ウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼの遺伝子を改変してアミノ酸を置換したもの等が挙げられる。
上記ウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)のうち、ウリジン二リン酸−グルクロン酸を合成する活性の高さの観点から、(C−2)が好ましく、さらに好ましくはシロイヌナズナ由来のヌクレオシド−2−リン酸キナーゼである。
また、ウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)は、2種以上を用いてもいい。
本発明の分岐ヒアルロン酸の製造方法に使用する(A)、(B)及び(C)の酵素は、前記の活性を有するものであれば、どのような形態であっても良い。具体的には、酵素を含む細胞(細胞には菌体を含む)を、破砕(ホモジナイザー、フレンチプレス、ワーリングブレンダー及び乳鉢等)、凍結融解、自己消化、乾燥、酵素処理、超音波処理若しくは化学処理(酸、アルカリ及び海面活性剤等)等の一般的処理法に従って処理して得られる処理物、精製酵素(処理物を、塩析、等電点沈殿、有機溶媒沈殿、透析又は各種クロマトグラフィー等により精製した酵素)、膜結合型タンパク(細胞の細胞壁若しくは細胞膜の変性物)及び固定化触媒(酵素を一般的な包括法、架橋法、担体結合法等で固定化したもの。固定化する際の固定化担体の例としては、ガラスビーズ、シリカゲル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カラギーナン、アルギン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。)等が挙げられる。
上記分岐ヒアルロン酸の製造方法において、上記工程(1)は、化合物(S’)、ウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンにヒアルロン酸合成酵(A)を作用させて(A)、分岐ヒアルロン酸及びウリジン二リン酸を含む組成物(Z’)を得ることができれば制限なく実施できる。工程(1)の具体的な一例としては、ウリジン二リン酸−グルクロン酸、ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン、ヒアルロン酸合成酵素(A)及び溶剤(D)を混合して反応溶液(E)とし、所定の温度、所定のpHに調整し、反応を行うものである。
反応溶液(E)中のウリジン二リン酸−グルクロン酸の含有量(モル濃度)は、分岐ヒアルロン酸を効率よく製造する観点から、0.0001mM〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.001mM〜500mMである。
反応溶液(E)中のウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンの含有量(モル濃度)は、分岐ヒアルロン酸を効率よく製造する観点から、0.0001mM〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.001mM〜500mMである。
反応溶液(E)中のヒアルロン酸合成酵素(A)の含有量(ユニット/mL)は、反応効率の観点から、0.00001ユニット/mL〜10,000ユニット/mLが好ましく、さらに好ましくは0.001ユニット/mL〜1,000ユニット/mLである。
1ユニットとは、1分間に1μmolのウリジン二リン酸−グルクロン酸及び1μmolのウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンをヒアルロン酸にする酵素量である。
反応溶液(E)の温度は、ヒアルロン酸合成酵素(A)の酵素活性の安定性の観点から、0℃〜100℃が好ましく、さらに好ましくは30℃〜70℃である。
反応溶液(E)のpHは、ヒアルロン酸合成酵素(A)の酵素活性の安定性の観点から、pH2〜12が好ましく、さらに好ましくはpH4〜9である。
反応溶液(E)において、ヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させる時間は、(A)の酵素活性の安定性の観点から、1分〜1,000時間が好ましい。
上記工程(2)は、ウリジン二リン酸とリン酸基含有化合物(b−4)とにウリジン二リン酸変換酵素(B−4)を作用させてウリジン三リン酸を得ることができれば制限なく実施できる。工程(2)の具体的な一例としては、工程(1)での反応後の反応溶液(E)、リン酸基含有化合物(b−4)及びウリジン二リン酸変換酵素(B−4)を混合して反応溶液(F)とし、所定の温度、所定のpHに調整し、反応を行うものである。
反応溶液(F)中のリン酸基含有化合物(b−4)の含有量(モル濃度)は、反応しやすさの観点から、0.0001mM〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.001mM〜500mMである。
反応溶液(F)中のウリジン二リン酸変換酵素(B−4)の含有量(ユニット/mL)は、ウリジン三リン酸を合成する反応を触媒しやすさの観点から、0.00001ユニット/mL〜10,000ユニット/mLが好ましく、さらに好ましくは0.001ユニット/mL〜1,000ユニット/mLである。
1ユニットとは、1分間に1μmolのウリジン二リン酸及び1μmolのリン酸基含有化合物(b−4)をウリジン三リン酸にする酵素量である。
反応溶液(F)の温度は、(B−4)の酵素活性の安定性の観点から、0℃〜100℃が好ましく、さらに好ましくは30℃〜70℃である。
反応溶液(F)のpHは、(B−4)の酵素活性の安定性の観点から、pH2〜12が好ましく、さらに好ましくはpH4〜9である。
反応溶液(F)において、ウリジン二リン酸変換酵素(B−4)を作用させる時間は、(B−4)の酵素活性の安定性の観点から、10分〜1,000時間が好ましい。
反応溶液(F)中には、ピロリン酸分解酵素を含有してもいい。工程(2)では副生成物としてピロリン酸が生成し、ピロリン酸が(B−4)の活性を阻害してしまう場合がある。ピロリン酸分解酵素を用いると、ピロリン酸が分解され、ピロリン酸が(B−4)の酵素活性の阻害することを緩和することができる。
ピロリン酸分解酵素としては、EC3.1.3及びEC3.6.1に分類される酵素が挙げられ、具体的にはアルカリホスファターゼ、アピラーゼ、フィターゼ及びジホスファターゼ等が挙げられる。
ピロリン酸分解酵素としては、反応生成物(ウリジン三リン酸及び分岐ヒアルロン酸)を分解しにくいという観点から、ジホスファターゼが好ましい。
反応溶液(F)中のピロリン酸分解酵素の含有量(ユニット/mL)は、反応生成物(ウリジン三リン酸及び分岐ヒアルロン酸)を分解せずにピロリン酸を分解する観点から、0.00001〜100ユニット/mLが好ましい。
ピロリン酸分解酵素において、ユニットは、1分間に1μmolのピロリン酸を分解する酵素量である。
上記工程(3)は、ウリジン三リン酸と1−ホスホ−グルクロン酸とにウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)を作用させてウリジン二リン酸−グルクロン酸を得ることができれば制限なく実施できる。工程(3)の具体的な一例としては、工程(2)での反応後の反応溶液(F)、1−ホスホ−グルクロン酸及びウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)を混合して反応溶液(G)とし、所定の温度、所定のpHに調整し、反応を行うものである。
反応溶液(G)中の1−ホスホ−グルクロン酸の含有量(モル濃度)は、ウリジン二リン酸−グルクロン酸を効率よく製造する観点から、0.0001mM〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.001mM〜500mMである。
反応溶液(G)中のウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)の含有量(ユニット/mL)は、ウリジン二リン酸−グルクロン酸を効率よく製造する観点から、0.00001ユニット/mL〜10,000ユニット/mLが好ましく、さらに好ましくは0.001ユニット/mL〜1,000ユニット/mLである。
反応溶液(G)の温度は、(C)の酵素活性の安定性の観点から、0℃〜100℃が好ましく、さらに好ましくは30℃〜70℃である。
反応溶液(G)のpHは、(C)の酵素活性の安定性の観点から、pH2〜12が好ましく、さらに好ましくはpH4〜9である。
反応溶液(G)において、ウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)を作用させる時間は、(C)の酵素活性の安定性の観点から、10分〜1,000時間が好ましい。
反応溶液(G)中には、ピロリン酸分解酵素を含有してもいい。工程(3)では副生成物としてピロリン酸が生成し、ピロリン酸が(C)の活性を阻害してしまう場合がある。ピロリン酸分解酵素を用いると、ピロリン酸が分解され、ピロリン酸が(C)の酵素活性の阻害することを緩和することができる。
ピロリン酸分解酵素として好ましいものは上述と同様である。
反応溶液(G)中のピロリン酸分解酵素の含有量(ユニット/mL)は、反応生成物(ウリジン二リン酸−グルクロン酸)を分解せずにピロリン酸を分解する観点から、0.00001〜100ユニット/mLが好ましい。
ピロリン酸分解酵素において、ユニットは、1分間に1μmolのピロリン酸を分解する酵素量である。
反応後の反応溶液(G)に、必要により、ウリジン二リン酸−グルクロン酸、ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン及びヒアルロン酸合成酵素(A)等を追加して、反応溶液(E)とし、工程(1)の反応を行う。
また、反応後の反応溶液(G)に、上記に加えて、さらに必要によりリン酸基含有化合物(b−4)及びウリジン二リン酸変換酵素(B−4)を添加して反応溶液(F)とし、工程(1)及び(2)の反応を同時に行ってもいい。
上記工程(1)、(2)、(3)及び(1)の順に含んでいれば上記工程(1)〜(3)は何回含んでもいい。また、(1)、(2)、(3)及び(1)の間に別の工程が入ってもいい。
また、上記工程(1)〜(3)を同時に行ってもいい。
上記工程(1)〜(3)を同時に行う製造方法は、工程(1)〜(3)の反応を同じ反応溶液中で行っていれば特に制限なく実施できる。具体的一例としては、リン酸基含有化合物(b−4)、ウリジン二リン酸変換酵素(B−4)、1−ホスホ−グルクロン酸、ウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)、ウリジン二リン酸−グルクロン酸、ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン、ヒアルロン酸合成酵素(A)及び溶剤(D)を仕込んで反応溶液(H)として、分岐ヒアルロン酸を製造するものである。
反応溶液(H)中のウリジン二リン酸−グルクロン酸の含有量(モル濃度)は、分岐ヒアルロン酸の合成効率の観点から、0.0001mM〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.01mM〜1mMである。
反応溶液(H)中のウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンの含有量(モル濃度)は、分岐ヒアルロン酸の合成効率の観点から、0.0001mM〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.01mM〜1mMである。
反応溶液(H)中のヒアルロン酸合成酵素(A)の含有量(ユニット/mL)は、分岐ヒアルロン酸を効率よく製造する観点から、0.00001ユニット/mL〜10,000ユニット/mLが好ましく、さらに好ましくは0.001ユニット/mL〜1,000ユニット/mLである。
反応溶液(H)中のリン酸基含有化合物(b−4)の含有量(モル濃度)は、ウリジン二リン酸変換酵素(B−4)との結合しやすさの観点から、0.0001mM〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.01mM〜10mMである。
反応溶液(H)中のウリジン二リン酸変換酵素(B−4)の含有量(ユニット/mL)は、ウリジン二リン酸を効率よくウリジン三リン酸に変換する観点から、0.00001ユニット/mL〜10,000ユニット/mLが好ましく、さらに好ましくは0.001ユニット/mL〜1,000ユニット/mLである。
反応溶液(H)中の1−ホスホ−グルクロン酸の含有量(モル濃度)は、ウリジン二リン酸−グルクロン酸に変換されやすくする観点から、0.0001mM〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.01mM〜100mMである。
反応溶液(H)中のウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)の含有量(ユニット/mL)はウリジン二リン酸―グルクロン酸の変換効率を良くする観点から、0.00001ユニット/mL〜10,000ユニット/mLが好ましく、さらに好ましくは0.001ユニット/mL〜1,000ユニット/mLである。
1ユニットとは、1分間に1μmolのウリジン三リン酸及び1μmolの1−ホスホ−グルクロン酸をウリジン二リン酸−グルクロン酸にする酵素量である。
反応溶液(H)の温度は、酵素{(C)、(B−4)及び(A)}の安定性の観点から、0℃〜100℃が好ましく、さらに好ましくは30℃〜70℃である。
反応溶液(H)のpHは、酵素{(C)、(B−4)及び(A)}の安定性の観点から、pH2〜12が好ましく、さらに好ましくはpH4〜9である。
反応溶液(H)中にはピロリン酸分解酵素を用いてもいい。副生成物としてピロリン酸が生成し、ピロリン酸が酵素{(C)、(B−4)及び(A)}の活性を阻害してしまう場合がある。ピロリン酸分解酵素を用いると、ピロリン酸を分解し、ピロリン酸が(C)、(B−4)及び(A)の酵素活性を阻害することを緩和することができる。
好ましいピロリン酸分解酵素としては、上記反応溶液(F)に用いるピロリン酸分解酵素と同様である。
反応溶液(H)中のピロリン酸分解酵素の含有量(ユニット/mL)は、反応生成物(ウリジン三リン酸、ウリジン二リン酸−グルクロン酸及び分岐ヒアルロン酸)を分解せずにピロリン酸を分解する観点から、0.00001〜100ユニット/mLが好ましい。
反応溶液(H)を作成する場合、上記原料{(b−4)、1−ホスホ−グルクロン酸、ウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン}並びに酵素{(B−4)、(C)及び(A)}を同時に仕込んで反応溶液(H)を作成してもよく、逐次的に投入して反応溶液(H)としてもいい。
反応溶液(H)において、ウリジン二リン酸変換酵素(B−4)、ウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)及びヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させる時間は、それぞれの酵素活性、反応溶液(H)の温度、原料の量比等によって異なる。反応溶液(H)の温度を、全て酵素の活性が高く、反応速度が速い温度に調整すれば、反応時間を短くすることができる。また、反応溶液(H)中のそれぞれの基質に対する酵素の量が多いほど、反応は早くなり、反応時間は短くなる。
反応溶液(H)において、反応時間は、酵素の安定性の観点から、10分〜1,000時間が好ましい。
本発明の分岐ヒアルロン酸の製造方法によれば、新規な分岐ヒアルロン酸を得ることができる。また、本発明の製造方法により得られた分岐ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸の優れた性質を保持しつつ、分岐の数を調整する事により、ヒアルロン酸の粘度を調整することができる。したがって、本発明の製造方法により得られる分岐ヒアルロン酸は、化粧品、医薬部外品、関節炎治療剤、創傷被覆剤、眼科手術用手術補助剤及び外科手術後の癒着阻止剤などの医薬品、医療機器として広範囲に使用できる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<製造例1>
○ヒアルロン酸合成酵素(A−1)の製造
パスツレラ・ムルトシダ由来のヒアルロン酸合成酵素(配列番号1)にFLAGタグを融合した遺伝子をpKK223−3に組み込んだプラスミドを大腸菌E.coliSUREに形質転換して、培養し、培養液の濁度(濁度計:島津社製「UV−1700」、1mlの石英セル)が0.5に達したところで、発現誘導した後、遠心分離機[KUBOTA社製「5922」(以下同じ)、4℃、6000×g、15分間]を用いて大腸菌を回収した。回収した大腸菌を、緩衝液A{100mMリン酸緩衝液(pH7.0)、100mM塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、10mMドデシルマルトシド、5mMオレイン酸}に再懸濁して、超音波破砕(130W、10分)を行った。その後、抗FLAG抗体カラムで精製を行い、ヒアルロン酸合成酵素(A−1)の水溶液を得た。
<製造例2>
○ヒアルロン酸合成酵素(A−2)の製造
製造例1において、「パスツレラ・ムルトシダ由来のヒアルロン酸合成酵素(配列番号1)」に代えて「ストレプトコッカス・ピオジェネシス由来のヒアルロン酸合成酵素(配列番号2)」を用いた以外は同様にして、ヒアルロン酸合成酵素(A−2)の水溶液を得た。
<ヒアルロン酸合成酵素(A−1)の水溶液の濃度測定>
水溶液Z{1mM ウリジン二リン酸−グルクロン酸(14Cでラベルした放射性同位体を含むウリジン二リン酸−グルクロン酸、放射能300mCi/mmol)、1mM ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)、100mM塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、10mMドデシルマルトシド、5mMオレイン酸}1mLに、製造例1で得たヒアルロン酸合成酵素(A−1)の水溶液を10μL加えて、反応溶液(1−1)とし、30℃で1時間反応を行った。ろ紙を用いたペーパークロマトグラフィー法で未反応の基質とヒアルロン酸を分離した後、原点部を切り出し、液体シンチレーションカクテルに浸漬させた後、液体シンチレーションカウンターを用いて放射性同位体を測定し、14Cでラベルしたグルクロン酸の取り込み量からヒアルロン酸の合成量を算出した。その結果から、ヒアルロン酸合成酵素(A−1)の水溶液中の濃度を求めたところ1ユニット/mLであった。
上記ヒアルロン酸合成酵素(A−1)の水溶液の濃度測定において、ヒアルロン酸合成酵素(A−1)の水溶液に代えてヒアルロン酸合成酵素(A−2)の水溶液を用いて、ヒアルロン酸合成酵素(A−2)の水溶液の濃度を測定したところ、1ユニット/mLであった。
<ヒアルロン酸合成酵素(A−1)の阻害濃度IC50の測定>
1.5mL容量のチューブ中で940μLの水溶液1[5mMの塩化マグネシウムと0.05mMのウリジン二リン酸ナトリウムを含む50mMのリン酸緩衝液(pH7.5、25℃)]に、製造例1で得たヒアルロン酸合成酵素水溶液(A−1)を20μL溶解し、恒温水槽を用いてチューブを40℃で20分静置した。ここに、40℃に温調した基質溶液[1−1][ウリジン二リン酸−グルクロン酸ナトリウム塩及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンを緩衝液B{50mMのリン酸緩衝液(pH7.5、25℃)}に溶解してそれぞれ20mMの濃度にしたもの]を50μL添加し、酵素反応溶液(III−1)とした。(III−1)を作成直後及び5分おきに100μLずつ取り出し、取り出した溶液は、100℃で2分間加熱して酵素反応を停止した。酵素反応を停止した溶液について、遠心分離器(4℃、12,000×g、10分)を用いて遠心し、不純物を沈殿させた。上清80μLを下記条件でHPLCにより分析し、ヒアルロン酸のピーク面積を記録した。
<HPLCの測定条件>
以下において、HPLCの測定条件は全て同じである。
装置:ACQUITY UPLCシステム
カラム:Shodex OHpak SB−806M HQ
移動相:0.1M NaO3
流速:1.0ml/min
検出器:ACQUITY UPLC RID検出器
温度:40℃
水溶液1において、ウリジン二リン酸ナトリウムの濃度が異なる溶液{0mM(水溶液2)、0.15mM(水溶液3)、3mM(水溶液4)、1mM(水溶液5)及び3mM(水溶液6)}を作成した。水溶液1に代えて水溶液2〜6を用いる以外は同様にして酵素反応溶液(III−2)〜(III−6)を作成した。酵素反応溶液(III−2)〜(III−6)についても、酵素反応溶液(III−1)の場合と同様にして、ヒアルロン酸のピーク面積を記録した。
ヒアルロン酸ナトリウム(フナコシ社製、「ヒアロース」、分子質量:175kDa)を緩衝液Bに溶解し、それぞれ0.001μg/mL、0.01μg/mL、0.1μg/mL及び5μg/mLの濃度にしたものを作成し、ヒアルロン酸標準溶液(1)〜(4)とした。(1)〜(4)を、HPLCにより分析し、ヒアルロン酸のピーク面積をそれぞれ記録した。横軸(x軸)にそれぞれのヒアルロン酸濃度(μg)、縦軸(y軸)にそれぞれのピーク面積Pをプロットし、直線の傾き「k」を算出した。
(III−1)〜(III−6)を作成直後のウリジン二リン酸のピーク面積をP0、「m」分後のピーク面積をPhとし、それぞれピーク面積の変化ΔP(ΔP=Ph−P0)と上記直線の傾きを用いて下記数式(1)からそれぞれの酵素反応初速度v(μg/s)を算出した。
v=ΔP/(k×m×60)(1)
酵素反応溶液(III−2)を用いて測定した酵素反応初速度vを100%とし、酵素反応溶液(III−1)及び(III−3)〜(III−6)を用いて測定した酵素反応初速度の相対値(%)を算出した。算出した相対値を用いて、横軸(x軸)にそれぞれのウリジン二リン酸濃度[S]、縦軸(y軸)に酵素反応溶液(III−1)〜(III−6)での酵素反応初速度vの相対値をプロットした。プロットの近似曲線と直線y=50(%)との交点でのウリジン二リン酸の濃度が阻害濃度IC50であり、阻害濃度IC50は0.2mMであった。
また、上記において、「ヒアルロン酸合成酵素水溶液(A−1)を20μL」に代えて「ヒアルロン酸合成酵素水溶液(A−1)を200μL」とする以外は同様にして、阻害濃度IC50を測定したところ、0.2mMであった。
「ヒアルロン酸合成酵素(A−1)の阻害濃度IC50の測定」において、「ヒアルロン酸合成酵素水溶液(A−1)」に代えて「ヒアルロン酸合成酵素水溶液(A−2)」を用いる以外は同様にして阻害濃度IC50を測定したところ、共に0.11mLであった。
<製造例3>
○ピルビン酸キナーゼの製造
製造例1において、「パスツレラ・ムルトシダ由来のヒアルロン酸合成酵素(配列番号1)」に代えて「大腸菌由来のピルビン酸キナーゼ(配列番号3)」を用いる以外は同様にして、ピルビン酸キナーゼ(B−4)の水溶液を得た。
<ピルビン酸キナーゼ(B−4)の水溶液の濃度測定>
水溶液{50mMリン酸緩衝液(pH7.0)、100mM塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mMウリジン二リン酸}1mLに、1Mホスホエノールピルビン酸1カリウム10μL、ピルビン酸キナーゼ(B−4)の水溶液を10μL加えて、反応溶液とし、30℃で5、10、15分反応を行った。反応生成物(ウリジン三リン酸)の量は、TLC(Sidma社、PEI−Celluroseプレート)で展開して(展開溶媒、1M LiCl、1M ギ酸)、UV(260nm)で検出して求めた。ウリジン三リン酸の生成量から、ピルビン酸キナーゼ(B−4)の水溶液の濃度を計算したところ、8ユニット/mlであった。
<製造例3で得られたピルビン酸キナーゼ(B−4)の酵素活性Vmax1、Vmax2、酵素活性比(Y)の測定>
100mMの塩化ナトリウム及び10mMの塩化マグネシウムを含む50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)1mLに、溶液中の濃度が0.5mMとなるように基質(ウリジン二リン酸)を加え、ホスホエノールピルビン酸1カリウム(和光純薬社製)を溶液中の濃度が100mMとなるように加え、製造例3で得たピルビン酸キナーゼ(B−4)の水溶液を1μL加えて酵素反応溶液(II−1)とし、反応を開始した。酵素反応溶液(II−1)を30℃で静置し、HPLCを用いて反応生成物(ウリジン二リン酸−グルコース)の量を5分毎に測定しながら30分酵素反応させ、酵素反応初速度vを算出した。さらに、酵素反応溶液(II−1)中のウリジン二リン酸の濃度が0.3mM、0.1mM、0.05mMのもの(II−2)〜(II−4)について、同様に酵素反応初速度vを算出した。
横軸(x軸)にそれぞれ酵素反応溶液(II−1)〜(II−4)の基質(ウリジン二リン酸)の濃度の逆数(1/[S])、縦軸(y軸)にそれぞれの基質濃度での酵素反応初速度の逆数(1/v)をプロットしたLinewaver−Burkプロットを作成した。プロットの近似直線とy軸との交点から、酵素活性Vmax1の逆数(1/Vmax1)を求めた。
基質として、「ウリジン二リン酸」に代えて「ウリジン二リン酸−グルクロン酸」を用いる以外は同様にしてVmax2を求めた。求めたVmax1及びVmax2から酵素活性比(Y)を算出したところ、10以上であった。
また、基質として、「ウリジン二リン酸」に代えて「ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン」を用いる以外は同様にしてVmax2を求めた。求めたVmax1及びVmax2から酵素活性比(Y)を算出したところ、10以上であった。
<製造例3で得たピルビン酸キナーゼ(B−4)を用いたウリジン三リン酸を合成する反応におけるミカエリス定数Km測定>
製造例3で得たピルビン酸キナーゼ(B−4)の水溶液10μLを、1.5mLのチューブ中で890μLの水溶液7[5mMの塩化マグネシウム、100mMのホスホエノールピルビン酸1カリウムを含む50mMのリン酸緩衝液(pH7.5、25℃)]に溶解し、恒温水槽を用いてチューブを30℃で3分静置した。ここに、30℃に温調した基質溶液[2−1](ウリジン二リン酸ナトリウムを緩衝液Bに溶解して10mMの濃度にしたもの)を100μL添加し、酵素反応溶液(IV−2−1)とした。(IV−2−1)を作成直後及び1分おきに100μLずつ取り出し、取り出した溶液を100℃で2分間加熱して酵素反応を停止した。遠心分離器(4℃、12,000×g、10分)を用いて遠心し、不純物を沈殿させた。上清80μLをHPLCで分析し、ウリジン三リン酸のピーク面積を記録した。
基質溶液[2−1]において、ウリジン二リン酸ナトリウムのモル濃度を5mM(基質溶液[2−2])、2mM(基質溶液[2−3])、1mM(基質溶液[2−4])及び0.3mM(基質溶液[2−5])に変更した溶液を作成した。酵素反応溶液(IV−2−1)において、基質溶液[2−1]に代えて基質溶液[2−2]〜[2−5]を用いる以外は同様にして酵素反応溶液(IV−2−2)〜(IV−2−5)を作成した。酵素反応溶液(IV−2−2)〜(IV−2−5)についても、酵素反応溶液(IV−2−1)と同様にして、ウリジン三リン酸のピーク面積を記録した。
ウリジン三リン酸ナトリウム(和光純薬社製)を緩衝液Bに溶解し、0.005mM、0.1mM、1mM及び5mMの濃度にしたものを作成し、ウリジン三リン酸標準溶液(M−1)〜(M−4)とした。(M−1)〜(M−4)を80μL、上記と同条件のHPLCで分析し、ウリジン三リン酸のピーク面積をそれぞれ記録した。横軸(x軸)にそれぞれのウリジン三リン酸濃度(mM)、縦軸(y軸)にそれぞれのピーク面積Pをプロットし、直線の傾き「k’」を算出した。
酵素反応溶液(IV−2−1)〜(IV−2−5)を作成直後のウリジン三リン酸のピーク面積をP0、「m’」分後のピーク面積をPhとし、それぞれピーク面積の変化ΔP(ΔP=Ph−P0)と上記直線の傾き「k’」を用いて下記数式(5)からそれぞれの酵素反応初速度v(mM/s)を算出した。
v=ΔP/(k’×m’×60)(5)
算出した酵素反応初速度vを用いて、横軸(x軸)にそれぞれの基質濃度[S]、縦軸(y軸)にそれぞれの基質濃度での酵素反応初速度の逆数[S]/vをプロットし、Hanes−Woolfプロットを作成した。プロットの近似直線とx軸との交点(−Km)から、ミカエリス定数Kmは6mMであった。
<製造例4>
製造例1において、「パスツレラ・ムルトシダ由来のヒアルロン酸合成酵素(配列番号1)」に代えて「シロイヌナズナ由来の遺伝子(配列番号4)」を用いる以外は同様にしてウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)の水溶液を得た。
100mMの塩化ナトリウム、10mMの塩化マグネシウム、10mMのウリジン三リン酸及び10mMのグルクロン一リン酸を含む50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)1mLに、製造例4で得たウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)の水溶液を10μL加えて、反応溶液としたものを3つ作成し、それぞれ30℃で5分、10分、15分反応を行った。生成したウリジン二リン酸−グルクロン酸の定量はHPLCを用いて、UVライト(260nm)で検出して求めた。ウリジン二リン酸−グルクロン酸の生成量から、ウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)のウリジン二リン酸−グルクロン酸を生成させる活性を求めたところ、5ユニット/mlであった。
<製造例5>
○分子量1,000〜10,000のオリゴヒアルロン酸(SS11)の製造
ヒアルロン酸ナトリウム(株式会社資生堂製、品名:バイオヒアルロン酸ナトリウムHA9N)を、酸性条件下で加熱還流を行い加水分解した後、Sephadex G−10(GEヘルスケア社製)で脱塩し、さらに凍結乾燥した。凍結乾燥品を水に溶解して、以下の測定条件下でサイズ排除クロマトグラフィー法を用いて、分子量1,000未満のもの、分子量1,000〜10,000のもの及び分子量10,000より大きいもに分けた。
検出器:示差屈折率計
カラム:SB−802.5HQ
カラム温度:40℃
移動相:0.2M NaCl
流量:0.4mL/min
注入量:200μL
クロマトグラフィーで得られたヒアルロン酸ナトリウムのうち、分子量が1,000〜10,000のヒアルロン酸ナトリウム(オリゴヒアルロン酸ナトリウム)を、PD MidiTrap G−10(GEヘルスケア社製)を用いて脱塩後、凍結乾燥を行い、オリゴヒアルロン酸(SS11)とした。
<製造例6>
○分子量1,000〜10,000の上記一般式(5)及び/又は(6)の基を有するオリゴヒアルロン酸(SS12)の製造
1mM ウリジン二リン酸−グルクロン酸、1mM ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)、1M塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、10mMドデシルマルトシド及び5mMオレイン酸を含む溶液1mLに、製造例2で得たヒアルロン酸合成酵素(A−2)の水溶液を10μL加えて、反応溶液とし、30℃で1時間反応を行った。その後、反応溶液をSephadex G−10(GEヘルスケア社製)で脱塩し、さらに凍結乾燥し、上記一般式(5)及び/又は(6)の基を有するオリゴヒアルロン酸を得た。凍結乾燥品を水に溶解して、以下の測定条件下でサイズ排除クロマトグラフィー法を用いて、分子量1,000未満のもの、分子量1,000〜10,000のもの及び分子量10,000より大きいもに分けた。
検出器:示差屈折率計
カラム:SB−802.5HQ
カラム温度:40℃
移動相:0.2M NaCl
流量:0.4mL/min
注入量:200μL
分子量が1,000〜10,000のものを、PD MidiTrap G−10(GEヘルスケア社製)を用いて脱塩後、凍結乾燥を行い、分子量1,000〜10,000の上記一般式(5)及び/又は(6)の基を有するオリゴヒアルロン酸(SS12)とした。
なお、オリゴヒアルロン酸(SS12)中のグルクロン酸単位、N−アセチルグルコサミン単位及びウリジン二リン酸単位のモル比をNMRで確認したところ、10:10:1であった。
<製造例7>
○化合物(S’1−1)の合成
精製水1800μLに、2N NaOH水溶液200μL、及びジビニルスルホン(和光純薬工業(株)製、25℃、比重1.0177g/mL)2μL(添加するオリゴヒアルロン酸(SS11)中のグルクロン酸単位及びN−アセチルグルコサミン単位の合計モル数に対して0.7モル%相当)を加え、さらに製造例5で得たオリゴヒアルロン酸(SS11)0.5gを添加した。この混合物を、室温で5分間攪拌混合した後、PD MidiTrap G−10(GEヘルスケア社製)を用いて脱塩後、凍結乾燥を行い、化合物(S’1−1)を得た。
<製造例8>
○化合物(S’2−1)の合成
精製水1800μLに、2N NaOH水溶液200μL、及びジビニルスルホン(和光純薬工業(株)製、25℃、比重1.0177g/mL)4μL(添加するオリゴヒアルロン酸(SS12)中のグルクロン酸単位及びN−アセチルグルコサミン単位の合計モル数に対して1.6モル%相当)を加え、さらに製造例6で得たオリゴヒアルロン酸(SS12)0.5gを添加した。この混合物を、室温で5分間攪拌混合した後、PD MidiTrap G−10(GEヘルスケア社製)を用いて脱塩後、凍結乾燥を行い、化合物(S’2−1)を得た。
<製造例9>
○化合物(S’2−2)の合成
精製水1800μLに、2N NaOH水溶液200μL、及びジビニルスルホン(和光純薬工業(株)製、25℃、比重1.0177g/mL)8μL(添加するオリゴヒアルロン酸(SS12)中のグルクロン酸単位及びN−アセチルグルコサミン単位の合計モル数に対して3.1モル%相当)を加え、さらに製造例6で得たオリゴヒアルロン酸(SS12)0.5gを添加した。この混合物を、室温で5分間攪拌混合した後、PD MidiTrap G−10(GEヘルスケア社製)を用いて脱塩後、凍結乾燥を行い、化合物(S’2−2)を得た。
<製造例10>
○化合物(S’2−3)の合成
精製水1800μLに、2N NaOH水溶液200μL、及びジビニルスルホン(和光純薬工業(株)製、25℃、比重1.0177g/mL)16μL(添加するオリゴヒアルロン酸(SS12)中のグルクロン酸単位及びN−アセチルグルコサミン単位の合計モル数に対して6.3モル%相当)を加え、さらに製造例6で得たオリゴヒアルロン酸(SS12)0.5gを添加した。この混合物を、室温で5分間攪拌混合した後、PD MidiTrap G−10(GEヘルスケア社製)を用いて脱塩後、凍結乾燥を行い、化合物(S’2−3)を得た。
<製造例11>
○化合物(S’2−4)の合成
精製水1800μLに、2N NaOH水溶液200μL、及びジビニルスルホン(和光純薬工業(株)製、25℃、比重1.0177g/mL)1μL(添加するオリゴヒアルロン酸(SS12)中のグルクロン酸単位及びN−アセチルグルコサミン単位の合計モル数に対して0.4モル%相当)を加え、さらに製造例6で得たオリゴヒアルロン酸(SS12)0.5gを添加した。この混合物を、室温で5分間攪拌混合した後、PD MidiTrap G−10(GEヘルスケア社製)を用いて脱塩後、凍結乾燥を行い、化合物(S’2−4)を得た。
<製造例12>
○化合物(S’2−5)の合成
精製水1800μLに、2N NaOH水溶液200μL、及びジビニルスルホン(和光純薬工業(株)製、25℃、比重1.0177g/mL)0.5μL(添加するオリゴヒアルロン酸(SS12)中のグルクロン酸単位及びN−アセチルグルコサミン単位の合計モル数に対して0.2モル%相当)を加え、さらに製造例6で得たオリゴヒアルロン酸(SS12)0.5gを添加した。この混合物を、室温で5分間攪拌混合した後、PD MidiTrap G−10(GEヘルスケア社製)を用いて脱塩後、凍結乾燥を行い、化合物(S’2−5)を得た。
<製造例13>
○化合物(S’2−6)の合成
精製水1800μLに、2N NaOH水溶液200μL、及びジビニルスルホン(和光純薬工業(株)製、25℃、比重1.0177g/mL)2μL(添加するオリゴヒアルロン酸(SS12)中のグルクロン酸単位及びN−アセチルグルコサミン単位の合計モル数に対して0.8モル%相当)を加え、さらに製造例6で得たオリゴヒアルロン酸(SS12)0.5gを添加した。この混合物を、室温で5分間攪拌混合した後、PD MidiTrap G−10(GEヘルスケア社製)を用いて脱塩後、凍結乾燥を行い、化合物(S’2−6)を得た。
<製造例14>
製造例7において、「ジビニルスルホン2μL」に代えて「ジビニルスルホン8μL(添加するオリゴヒアルロン酸(SS11)中のグルクロン酸単位及びN−アセチルグルコサミン単位の合計モル数に対して2.7モル%相当)」とする以外は同様にして化合物(S’1−2)を得た。
<実施例1>
製造例7で得た化合物(S’1−1)0.1gをMilliQ水1mlに溶かした水溶液10μlを、反応液R{20mM ウリジン二リン酸−グルクロン酸、20mM ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)、100mM塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、10mMドデシルマルトシド、5mMオレイン酸、10mMホスホエノールピルビン酸}8mLに加え、ピルビン酸キナーゼ(B−4)の水溶液(製造例3で得たもの)100μlを加え、さらに製造例1で得たヒアルロン酸合成酵素(A−1)の水溶液を0.2mL加えて、30℃で1時間反応を行った。その後、PD MidiTrap G−10(GEヘルスケア社製)を用いて脱塩後、凍結乾燥を行い分岐ヒアルロン酸(H−1)を2mg得た。
<実施例2〜7>
実施例1において、化合物(S’1−1)に代えて表1に記載の化合物を用いて、「製造例1で得たヒアルロン酸合成酵素(A−1)」に代えて「製造例2で得たヒアルロン酸合成酵素(A−2)」を用いる以外は同様にして、分岐ヒアルロン酸(H−2)〜(H−7)を得た。得られた分岐ヒアルロン酸の量を表1に記載した。
<実施例8>
実施例1において、化合物(S’1−1)に代えて表1に記載の化合物を用いる以外は同様にして、分岐ヒアルロン酸(H−8)を得た。得られた分岐ヒアルロン酸の量を表1に記載した。
<実施例9>
実施例1において、ピルビン酸キナーゼ(B−4)の水溶液を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして分岐ヒアルロン酸(H−9)を得た。得られた分岐ヒアルロン酸の量を表1に記載した。
<実施例10>
製造例7で得た化合物(S’1−1)0.1gをMilliQ水1mlに溶かした水溶液10μlを、反応液RR{20mM ウリジン二リン酸−グルクロン酸、20mM ウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミン、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)、100mM塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、10mMドデシルマルトシド、5mMオレイン酸、10mMホスホエノールピルビン酸、100mM グルクロン酸一リン酸、100mM N−アセチルグルコサミン一リン酸}8mLに加え、ピルビン酸キナーゼ(B−4)の水溶液(製造例3で得たもの)とウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)(製造例4で得たもの)をそれぞれ100μlを加え、さらに製造例1で得たヒアルロン酸合成酵素(A−1)の水溶液を0.2mL加えて、30℃で1時間反応を行った。その後、PD MidiTrap G−10(GEヘルスケア社製)を用いて脱塩後、凍結乾燥を行い分岐ヒアルロン酸(H−10)を3mg得た。
<比較例1>
実施例1において、「製造例7で得た化合物(S’1−1)」に代えて「製造例5で得たオリゴヒアルロン酸(SS11)」を用いる以外は同様にして、直鎖ヒアルロン酸(H’−1)を合成した。得られた直鎖ヒアルロン酸の量を表1に記載した。
<比較例2>
実施例1において、「製造例7で得た化合物(S’1−1)」に代えて「製造例5で得たオリゴヒアルロン酸(SS11)」を用いて、ヒアルロン酸合成酵素(A−1)の水溶液を「0.2mL」に代えて「2mL」用いる以外は同様にして、直鎖ヒアルロン酸(H’−2)を合成した。得られた直鎖ヒアルロン酸の量を表1に記載した。
<比較例3>
実施例1において、「製造例7で得た化合物(S’1−1)」に代えて「製造例6で得たオリゴヒアルロン酸(SS12)」を用いて、「製造例1で得たヒアルロン酸合成酵素(A−1)の水溶液を0.2mL」に代えて「製造例2で得たヒアルロン酸合成酵素(A−2)の水溶液を0.2mL」用いる以外は同様にして、直鎖ヒアルロン酸(H’−3)を合成した。得られた直鎖ヒアルロン酸の量を表1に記載した。
<比較例4>
実施例1において、「製造例7で得た化合物(S’1−1)」に代えて「製造例6で得たオリゴヒアルロン酸(SS12)」を用いて、「製造例1で得たヒアルロン酸合成酵素(A−1)の水溶液を0.2mL」に代えて「製造例2で得たヒアルロン酸合成酵素(A−2)の水溶液を2mL」用いる以外は同様にして、直鎖ヒアルロン酸(H’−4)を合成した。得られた直鎖ヒアルロン酸の量を表1に記載した。
<重量平均分子量の測定>
文献{Anal Biochem、2006、352(2)、p243−251}に記載のSEC−MALLS法に準じて測定した。結果を表1に記載した。
<粘度測定>
実施例1〜10及び比較例1〜4で得た分岐ヒアルロン酸(H−1)〜(H−10)及びヒアルロン酸(H’−1)〜(H’−4)をそれぞれ蒸留水に溶解して0.1重量%水溶液を作成し粘度測定を行った。
粘度は、JISZ8803(B型粘度計、測定温度:25℃)に準じて測定した。結果を表1に記載した。
<保湿量測定>
23歳から35歳の女性60人をクレンジングミルクと洗顔フォームで洗顔後60分してから、任意に15グループに分けて、それぞれのグループに、実施例1〜10及び比較例1〜4で得た分岐ヒアルロン酸(H−1)〜(H−10)及び直鎖ヒアルロン酸(H’−1)〜(H’−4)をそれぞれ蒸留水に溶解して0.05重量%水溶液としたもの1mL又は蒸留水1mLを塗布し、室温28℃、湿度40%に設定し2時間安静にした。その後、コルネオメーターCM825(インテグラル社製)を用いて(H−1)〜(H−10)、(H’−1)〜(H’−4)及び蒸留水の塗布部の肌水分量測定を行った。各グループの平均値を算出し、蒸留水のみを塗布したグループの肌水分量の平均値に対する相対値で表1に示した。
表1の結果から、比較例2及び4で得た直鎖ヒアルロン酸(H’−2)及び(H’−4)は、保湿性は高いものの、粘度が高いことがわかる。また、比較例1及び3で得た直鎖ヒアルロン酸(H’−1)及び(H’−3)は、粘度は低いものの、保湿性が低いことがわかる。
一方、実施例1及び7で得た分岐ヒアルロン酸(H−1)及び(H−7)は、分子量が比較例2及び4で得た直鎖ヒアルロン酸と同程度であるにもかかわらず、粘度は比較例2及び4の粘度よりも低く、粘度が比較例1及び3で得た直鎖ヒアルロン酸と同程度であるにもかかわらず、保湿性が高い。つまり、本発明の分岐ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸の粘度を上げずに保湿性を向上させることができることがわかる。
また、実施例1〜10から、本発明の分岐ヒアルロン酸は、分子量を高くしても、粘度が高くなりにくく、ヒアルロン酸の粘度を上げずに保湿性を向上させることができることがわかる。
さらに、実施例1と実施例9とを比較した場合、ピルビン酸キナーゼ(B−4)を用いることで、得られる分岐ヒアルロン酸が多くなることが分かる。また、実施例1と実施例10とを比較した場合、ピルビン酸キナーゼ(B−4)及びウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)をさらに用いることで、得られる分岐ヒアルロン酸が多くなることがわかる。
本発明の分岐ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸の優れた性質を保持しつつ、分岐の数を調整することにより、ヒアルロン酸の粘度を調整することができる。したがって、本発明の分岐ヒアルロン酸は、化粧品、医薬部外品、医薬品(関節炎治療剤、創傷被覆剤、眼科手術用手術補助剤、外科手術後の癒着阻止剤など)及び医療機器として広範囲に使用できる。また、本発明の分岐ヒアルロン酸の製造方法によれば、分岐したヒアルロン酸誘導体を製造でき、本発明の製造方法により得られたヒアルロン酸誘導体は、化粧品のみならず医薬部外品、医薬品及び医療機器にも用いることができる。

Claims (5)

  1. 下記(条件1)〜(条件5)を満たす水可溶性の分岐ヒアルロン酸。
    (条件1)分岐ヒアルロン酸は下記構造単位(α)と下記構造単位(β)とからなる;
    (条件2)構造単位(α)は、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を合計3つ以上有する化合物(S)から少なくとも3つの水素原子を除いた残基である;
    (条件3)構造単位(α)において、化合物(S)から除いた水素原子が、一般式(1)で表される基の1位の炭素に結合する水酸基と、一般式(2)で表される基の1位の炭素に結合する水酸基と、一般式(3)で表される基の4位の炭素に結合する水酸基と、一般式(4)で表される基の3位の炭素に結合する水酸基とにおける水素原子である;
    (条件4)構造単位(β)は、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとがβ1,3−グルコシド結合とβ1,4−グルコシド結合とで交互に結合した縮合重合体のいずれか一方の末端から水酸基を除いた残基である;
    (条件5)構造単位(β)において、末端から除いた水酸基が、グルクロン酸単位の4位の炭素に結合した水酸基、又はN−アセチルグルコサミン単位の3位の炭素に結合した水酸基である。
  2. 前記化合物(S)が、下記化合物(S1)〜(S4)のいずれかを含む請求項1に記載の分岐ヒアルロン酸。
    (S1)グルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS1)に有機ポリイソシアネート化合物(T1)、多価カルボン酸(無水物)(T2)、多官能エポキシ樹脂(T3)、アルデヒド基含有化合物(T4)及びジビニルスルホン(T5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(T)を反応させたもの;
    (S2)グルクロン酸が2〜10,000個結合したもの又はグルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとが合計2〜10,000個結合したもの(SS2)に多価アルコール(U1)、1級及び/又は2級アミノ基を2個以上有する化合物(U2)、アミノアルコール(U3)及びチオール基を2個以上有する化合物(U4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(U)を反応させたもの;
    (S3)グルクロン酸及び/又はN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS3)に不飽和カルボン酸(V1)、不飽和エポキシド(V2)、不飽和ハイドロカルビル基を有するハライド(V3)及び不飽和イソシアネート(V4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(V)を反応させて反応性単量体(V’)とし、(V’)を重合したもの;
    (S4)グルクロン酸が2〜10,000個結合したもの又はグルクロン酸及びN−アセチルグルコサミンが合計2〜10,000個結合したもの(SS4)に不飽和アルコール(W1)及び/又は不飽和アミン(W2)を反応させて反応性単量体(W’)とし、(W’)を重合したもの。
  3. 下記一般式(3)〜(6)のいずれかで表される基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を合計3つ以上有する化合物(S’)、ウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンに、ウリジン二リン酸を下記化合物(K)に変換する活性を有するウリジン二リン酸変換酵素(B)の存在下でヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させる分岐ヒアルロン酸の製造方法。
    化合物(K):ウラシル、ウリジン、ウリジン一リン酸、ウリジン三リン酸、ポリウリジル酸、デオキシウリジン二リン酸及びウリジン二リン酸−糖からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物。
  4. 下記酵素活性Vmax1及び下記酵素活性Vmax2を用いて下記数式(1)から算出した酵素活性比(Y)が0.1以上である請求項3に記載の分岐ヒアルロン酸の製造方法。
    酵素活性比(Y)=Vmax1/Vmax2 (1)
    酵素活性Vmax1:ウリジン二リン酸変換酵素(B)のウリジン二リン酸に対する酵素活性。
    酵素活性Vmax2:ウリジン二リン酸変換酵素(B)のウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンに対する酵素活性。
  5. 下記工程(1)〜(3)を(1)、(2)、(3)及び(1)の順に含む又は下記工程(1)〜(3)を同時に行う分岐ヒアルロン酸の製造方法であり、下記ミカエリス定数Kmが下記阻害濃度IC50の100倍未満である請求項3又は4に記載の分岐ヒアルロン酸の製造方法。
    工程(1):上記化合物(S’)、ウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンにヒアルロン酸合成酵素(A)を作用させて(A)、分岐ヒアルロン酸及びウリジン二リン酸を含む組成物(Z’)を得る工程。
    工程(2):ウリジン二リン酸とリン酸基含有化合物(b−4)とにウリジン二リン酸変換酵素(B−4)を作用させてウリジン三リン酸を得る工程。
    工程(3):ウリジン三リン酸と1−ホスホ−グルクロン酸とにウリジン三リン酸−モノサッカリド−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(C)を作用させてウリジン二リン酸−グルクロン酸を得る工程。
    ミカエリス定数Km:ウリジン二リン酸を基質とし、ウリジン二リン酸変換酵素(B−4)を酵素とし、リン酸基含有化合物(b−4)を作用させてウリジン三リン酸を合成する反応におけるミカエリス定数。
    阻害濃度IC50:ヒアルロン酸合成酵素(A)をウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンに作用させる際の(A)の濃度において、基質としてウリジン二リン酸−グルクロン酸及びウリジン二リン酸−N−アセチルグルコサミンを用いて、阻害剤としてウリジン二リン酸を用いて求めた、(A)の酵素活性が半減するときのウリジン二リン酸の濃度。
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