図1は、本発明の演奏装置の好適な実施例であるカラオケ装置10の構成を例示するブロック線図である。この図1に示すように、本実施例のカラオケ装置10は、中央演算処理装置であるCPU12と、読出専用メモリであるROM14と、随時書込読出メモリであるRAM16と、記憶装置であるハードディスク18と、グラフィックスチップ(グラフィックスボード)等の映像処理部20と、サウンドチップ(サウンドボード)等の音声処理部22と、操作パネル24と、表示制御部26及び入力制御部28を介して前記CPU12に接続されたタッチパネルディスプレイ30と、通信インターフェイス36と、LANインターフェイス38と、無線通信部40と、ビデオ出力端子42を介して前記映像処理部20に接続された映像表示装置であるディスプレイ44と、オーディオ入力端子46を介して前記音声処理部22に接続された音声入力装置であるマイクロフォン48と、オーディオ出力端子50を介して前記音声処理部22に接続された音声増幅装置であるアンプ52と、そのアンプ52に備えられた音声出力装置であるスピーカ54と、オーディオ入力端子72を介して前記音声処理部22に接続されたサウンドエフェクタ74とを、備えて構成されている。
前記CPU12は、前記RAM16の一時記憶機能を利用しつつ前記ROM14に予め記憶された所定のプログラムに基づいて電子情報を処理・制御する所謂マイクロコンピュータであり、前記カラオケ装置10における各種制御を実行する。すなわち、前記操作パネル24、タッチパネルディスプレイ30、或いは電子早見本装置68等により所定の楽曲(カラオケ演奏曲)が選曲入力された場合、その選曲入力された楽曲を前記RAM16等に設けられた予約曲テーブルに登録する選曲予約制御、その予約曲テーブルの演奏順に従って前記ハードディスク18から前記RAM16に選曲されたカラオケ演奏曲の演奏情報及び歌詞情報(楽曲データ)を読み出す楽曲データ読出制御、楽曲の演奏進行に応じてそのRAM16から前記音声処理部22へ演奏情報を送信する演奏出力制御、その演奏出力制御に際して前記RAM16に展開された歌詞情報に基づいて歌詞文字映像を生成して前記映像処理部20へ送信する歌詞文字映像出力制御、前記演奏出力制御に際して前記映像処理部20を制御して所定の背景映像を再生させる背景映像出力制御、及びカラオケ演奏が行われていない間すなわち曲間において、新譜情報、選曲ランキング、店舗広告等の曲間情報を出力させる曲間情報出力制御等の基本的な制御に加え、後述する本実施例の音階判定制御及び演奏評価制御等の各種制御を実行する。本実施例においては、前記CPU12が前記カラオケ装置10の制御装置に対応する。
前記映像処理部20は、前記ディスプレイ44に表示される画面(映像)の描画に係る各種制御を行う。例えば、前記CPU12から供給されるデータに基づいてグラフィックスメモリにそのデータを書き込み、そのデータを読み出すことによって前記ビデオ出力端子42を介して前記ディスプレイ44に所定の画面を表示させる制御を行う。具体的には、前記カラオケ装置10による楽曲の演奏出力(カラオケ演奏)に際して、前記CPU12において生成された歌詞文字映像等の文字映像(テロップ)を出力させたり、前記ハードディスク18に記憶されたMPEG(Moving Picture Experts Group)データ等の背景映像情報に基づいて所定の背景映像を再生(デコード)させたり、その背景映像の前面側に前記歌詞文字映像を合成させて前記ディスプレイ44に表示させたり、その歌詞文字映像を前記楽曲の演奏進行に応じて順次色替わり表示させる等の各種表示制御を行う。
前記音声処理部22は、FM音源やPCM音源等の各種音源を備え、前記カラオケ装置10による音声出力に係る各種制御を行う。好適には、電子回路により音を合成し、各種音色を発生させるシンセサイザ(synthesizer)を備えている。このシンセサイザは、前記ハードディスク18から読み出されて送られて来るカラオケ演奏曲の演奏情報に基づいて楽器の演奏信号等の音楽信号を生成する。前記シンセサイザは、好適には、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)端子を備えたものであり、前記演奏情報は、例えばMIDI形式のデータである。そのMIDIデータに基づいて前記シンセサイザにより生成された音楽信号は、前記マイクロフォン48から前記オーディオ入力端子46を介して入力される利用者(演奏者)の歌声とミキシングされ、前記オーディオ出力端子50を介して前記アンプ52に供給されてそのアンプ52により増幅されて前記スピーカ54から出力される。すなわち、本実施例において、前記マイクロフォン48は、前記カラオケ装置10に接続可能とされる入力装置(音声入力装置)に対応する。
前記操作パネル24は、前記カラオケ装置10の利用者が歌いたい楽曲を選択したり、楽曲の演奏出力に係る音程を調整したり、演奏と歌との音量バランスを調整したり、その他、エコー、音量、トーン等の各種調整を行うための操作ボタン(スイッチ)或いはつまみを備えた入力装置である。また、前記タッチパネルディスプレイ30は、画像(映像)を表示させると共に利用者の操作に応じて前記カラオケ装置10への操作入力を行う装置であり、そのタッチパネルディスプレイ30に所定の画像(映像)を表示させる表示装置32と、利用者の指や図示しない備え付けのペン等による前記タッチパネルディスプレイ30への接触により入力を行うタッチパネル34とを、備えている。前記表示制御部26は、前記CPU12から供給される情報に基づいて前記表示装置32に表示される画面(映像)の描画を制御する映像処理部である。前記入力制御部28は、前記タッチパネル34により入力される操作入力情報を前記CPU12等に供給する入力処理部である。以上の構成を備えていることで、前記タッチパネルディスプレイ30は、前記ディスプレイ44とは別に第2の映像表示装置として機能すると共に、前記カラオケ装置10の利用者が歌いたい楽曲を選択したり、楽曲の演奏出力に係る音程を調整したり、演奏と歌との音量バランスを調整したり、その他、エコー、音量、トーン等の各種調整を行うための入力装置として機能する。
前記カラオケ装置10は、前記通信インターフェイス36及びネットワーク接続端子56を介して通信回線60に接続されており、同様にその通信回線60に接続された他の機器との相互間でその通信回線60を介して情報の通信が可能とされている。前記通信回線60は、例えば公衆電話回線、ADSL回線、或いは光ファイバ回線等から構成されるWWW(World Wide Web)等のインターネットに接続された広域情報通信網である。前記カラオケ装置10は、好適には、前記通信回線60を介して図示しないサーバ(ホスト装置)に接続されており、そのサーバから楽曲データ(カラオケデータ)、背景映像情報、及び曲間情報等のデジタルコンテンツ(Digital Contents)の配信を受け付けるものである。すなわち、前記カラオケ装置10は、好適には、所定の通信回線に接続されてサーバとの間で各種情報の送受信を行う通信カラオケ装置であるが、斯かる通信回線に接続されない非通信型のカラオケ装置等にも本発明は好適に適用される。
前記LANインターフェイス38は、前記カラオケ装置10をLAN接続端子62を介してLAN(local area network)64に接続するための接続器であり、そのように前記LAN64に接続されることで、前記カラオケ装置10は、同様に前記LAN64に接続された電子早見本装置68等の他の機器との間で情報の送受信が可能とされる。また、前記カラオケ装置10が設置される店舗等に複数台のカラオケ装置が備えられている場合において、同様に前記LAN64に接続されたカラオケ装置相互間において情報の送受信が可能とされる。例えば、前記LAN64に接続されたアクセスポイント66を介して受信される電子早見本装置68からの選曲入力を受け付けて前記RAM16に設けられた予約曲テーブルに記憶したり、そのアクセスポイント66を介して前記カラオケ装置10から電子早見本装置68へ所定の情報を送信したりというように、電波を介して前記カラオケ装置10と電子早見本装置68との間における相互の情報のやりとりが実行される。
前記無線通信部40は、前記カラオケ装置10と前記電子早見本装置68等の入力装置との間の無線通信を行う。例えば、前記電子早見本装置68等の入力装置から送信されるリモコン信号を受信するリモコン受信部として機能する。前記カラオケ装置10と電子早見本装置68との対応付け(くくりつけ)処理は、好適には、斯かるリモコン信号(赤外線信号)により前記無線通信部40を介して行われる。すなわち、前記電子早見本装置68は、それぞれ個別のシリアル番号を有しており、前記対応付け処理においては、例えばそのシリアル番号(例えば、下4桁)及び所定の接続コードを含む信号が接続通知として前記カラオケ装置10へ送信され、前記無線通信部40によりその接続信号を受信したカラオケ装置10に対して前記電子早見本装置68が対応付けられる。そのようにして前記カラオケ装置10に対応付けられた電子早見本装置68は、そのカラオケ装置10の入力装置(遠隔操作装置)として機能し、その電子早見本装置68から送信される信号が前記CPU12に供給されることで、前記カラオケ装置10の利用者が歌いたい楽曲を選択したり、楽曲の演奏出力に係る音程を調整したり、演奏と歌との音量バランスを調整したり、その他、エコー、音量、トーン等の各種調整を行うための入力が受け付けられるようになっている。なお、前記対応付け処理が行われた後、前記電子早見本装置68と前記カラオケ装置10との間の通信は、前記LAN64及びアクセスポイント66等を介したLAN通信により行われる。また、本実施例においては、前記カラオケ装置10に対応付け処理の行われた電子早見本装置68等の入力装置もそのカラオケ装置10の一部を構成するものであるとして以下の説明を行う。
前記サウンドエフェクタ74は、外部装置であるエレキギターやベースギター(エレキベースギター)等の電気楽器(電子楽器)76に接続され、その電気楽器76から入力される信号を前記オーディオ入力端子72を介して前記音声処理部22へ供給する楽器入力装置である。好適には、外部装置である電気楽器76とシールド等を介して接続され、その電気楽器76から入力される信号(演奏に応じた演奏音に対応する楽器演奏信号)を前記オーディオ入力端子72を介して前記音声処理部22へ供給する。すなわち、本実施例において、前記電気楽器76は、前記カラオケ装置10に接続可能とされる入力装置に対応する。このサウンドエフェクタ74からの信号は、直接前記アンプ52に入力されるものであってもよい。また、好適には、前記サウンドエフェクタ74には、前記電気楽器76に対応して複数のサウンドエフェクトが予め記憶されて設定可能とされたものであり、前記電気楽器76から入力される信号に予め設定された複数のサウンドエフェクトを反映させて前記音声処理部22へ供給する。また、前記MIDIデータに基づくカラオケ演奏時に前記電気楽器76からの入力信号を受け付けることも可能である。斯かる態様において、前記MIDIデータに基づいて前記シンセサイザにより生成された音楽信号は、前記サウンドエフェクタ74から前記オーディオ入力端子72を介して入力される前記電気楽器76の演奏音とミキシングされ、前記オーディオ出力端子50を介して前記アンプ52に供給されてそのアンプ52により増幅されて前記スピーカ54から出力される。
図2に示すように、前記ハードディスク18には、楽曲データベース78及び音階データベース80をはじめとする各種データベースが設けられている。この音階データベース80については、本実施例の音階判定制御の説明と併せて後述する。前記楽曲データベース78は、前記カラオケ装置10により前記楽曲の演奏出力(カラオケ演奏)を行うための多数(例えば、数万曲)の楽曲データ(カラオケデータ)を記憶する。前記カラオケ装置10において出力される各楽曲に対応して前記楽曲データベース78に記憶された楽曲データは、例えば、メタデータ、演奏情報としてのMIDIデータ、及び歌詞情報としてのテロップデータを含んでいる。このメタデータは、例えば、各楽曲データの識別情報としての曲番号(選曲番号)、曲名、歌手名、登録日時等の情報を含んでいる。前記テロップデータは、前記映像処理部20を介して各楽曲の歌詞文字映像表示制御を行うための情報であり、例えば、前記楽曲データに対応する楽曲(演奏曲)の歌詞を複数に区分した各区分に相当するブロックデータを含んでいる。前記MIDIデータは、前記音声処理部22を介して各楽曲の演奏出力制御を行うための情報であり、複数種類の楽器にそれぞれ対応する複数のトラック(チャンネル)を備え、各トラックにおいて対応する楽器の演奏音の出力タイミングが定められている。
前記MIDIデータには、ヘッダ(ヘッダチャンク)が定められると共に、前記複数のトラック(トラックチャンク)としてコンダクタトラック、トラック1、トラック2、トラック3、・・・、トラックn(例えば、n=16)が定められている。前記ヘッダには、データ長、フォーマット、トラック数、及び時間単位等の情報が記憶されている。この時間単位は、4分音符の長さを示すものであり、前記MIDIデータの分解能に対応する。前記コンダクタトラックには、前記MIDIデータのテンポが定められている。前記トラック1〜16には、各トラックにそれぞれ対応して演奏出力に係る楽器(演奏音)の種類と、出力される演奏音の音程及び音長等を定める楽譜情報とが定められている。例えば、前記トラック2が「ピアノ」、トラック3が「エレキギター」、トラック4が「ベースギター」、・・・、というように、各トラック毎に対応する楽器(演奏音)の種類が定められており、その楽器の楽譜情報として出力タイミング(デルタタイム)、音程、音量(Volume)等の情報が各トラック毎に定められている。前記MIDIデータには、好適には、楽曲の調に対応するキーデータが定められている。また好適には、楽曲の演奏の区分となる各小節毎に、その小節で利用されている和音に対応するコードデータ(コード進行)が定められている。ここで、必ずしも1小節毎に1コードが対応付けられているわけではなく、1小節に複数のコードが含まれている場合もある。これらキーデータ及びコードデータについては、本実施例の音階判定制御の説明と併せて後述する。
図2は、前記カラオケ装置10のCPU12に備えられた制御機能の要部について説明する機能ブロック線図である。換言すれば、本発明の一実施例であるプログラムにより、前記CPU12が図2に示す各制御手段として機能させられる。図2に示す楽曲演奏制御手段82は、前記カラオケ装置10による楽曲の演奏(再生)を制御する。具体的には、前記楽曲データベース78に記憶された楽曲データに基づくカラオケ演奏において、前記RAM16等の予約曲テーブルにおける上位の予約曲から順に(すなわち入力順に)、その予約曲テーブルに記憶された予約曲の選曲番号に対応する楽曲データを前記ハードディスク18の楽曲データベース78から読み出し、その楽曲データに含まれる演奏情報に基づいて演奏曲の出力を制御する。例えば、演奏情報としてのMIDIデータに基づいて、前記音声処理部22に備えられたシンセサイザによりそのMIDIデータにおける楽譜情報としての各トラックに対応する楽器の演奏音(音楽情報)を出力させ、前記アンプ52等を介して前記スピーカ54から出力させる。また、楽曲データに含まれる歌詞情報に基づいて演奏曲に係る歌詞文字映像の出力を制御する。すなわち、歌詞情報に基づいて歌詞文字映像を生成し、前記映像処理部20を介してその歌詞文字映像を前記ディスプレイ44に表示させる。また、カラオケ演奏の進行に伴い、そのディスプレイ44に表示された歌詞文字映像を切替表示させると共に、歌詞色替情報に基づいて歌詞文字映像を順次色替え表示させる。
ピッチデータ抽出手段84は、前記カラオケ装置10に接続された入力装置から受信(入力)された音信号に対応するピッチデータを抽出する。好適には、前記楽曲演奏制御手段82による所定の楽曲の演奏と併行して、前記入力装置から受信された音信号に対応するピッチデータを抽出する。本実施例において、ピッチデータとは、例えば、前記入力装置から受信された音信号に対応する音程(音高)を時系列で記憶した情報をいう。すなわち、前記ピッチデータは、換言すれば、前記カラオケ装置10に接続された入力装置から受信された音信号に対応する音程(音高)の時間変化に関する情報である。好適には、前記オーディオ入力端子46を介して前記カラオケ装置10に接続された音声入力装置としての前記マイクロフォン48から受信(入力)される、利用者(歌唱者)の歌唱音声に係る音信号である歌唱音声信号に対応するピッチデータを抽出する。また好適には、前記オーディオ入力端子72を介して前記カラオケ装置10に接続された入力装置としての前記電気楽器76から受信(入力)される、利用者(演奏者)による前記電気楽器76の演奏に係る音信号である楽器演奏信号に対応するピッチデータを抽出する。
音階判定手段86は、前記楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じた音階を判定する。好適には、前記楽曲演奏制御手段82による演奏(再生)の対象となる楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じた音階を判定する。本実施例において、音階とは、楽曲において用いられる音を音程(音高)により昇順或いは降順にならべたものであり、一般にはスケール(scale)と呼び習わされる。換言すれば、楽曲において用いられ得る音(楽音)はスケールに応じて定まり、スケールを逸脱する音は通常、楽曲における音としては用いられない。スケールの例としては、メジャースケール(major scale)が挙げられる。このメジャースケールとは、教会旋法からスケールを抽出し、20世紀になって新たにスケールとして使用されるようになったものであり、ジャズ、ポピュラー音楽等、現代の音楽では欠かせないものとなっている。以下、スケールが楽曲の音階に相当するものとして説明を行う。
和音判定手段88は、前記楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じた和音を判定する。好適には、前記楽曲演奏制御手段82による演奏(再生)の対象となる楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じた和音を判定する。本実施例において、和音とは、楽曲において音程(音高)が異なる複数のピッチクラスの楽音が同時に響く音の組み合わせのことであり、一般にはコード(chord)と呼び習わされる。コードの例としては、三和音、四和音、五和音等が挙げられる。三和音とは、根音と、根音の3度上の音と、根音の5度上の音の3音から成る和音をいい、長三和音、短三和音、増三和音、減三和音がある。四和音とは、三和音に、根音の7度上の音(第7音という)を加えた和音をいう。五和音とは、四和音に、根音の9度上の音(第9音という)を加えた和音をいう。以下、コードが楽曲の和音に相当するものとして説明を行う。
前記和音判定手段88は、例えば、前記楽曲データに対応する楽曲の演奏の区分となる各小節毎のコードを判定する。好適には、各小節に用いられている楽音に基づいてその楽曲データに対応する楽曲におけるコードを判定する。すなわち、各小節に対応して、各トラックに定められた楽器の演奏音の音程(音高)を参照し、それらの演奏音の組み合わせから前記楽曲データに対応する楽曲におけるコードを判定する。ここで、前述のように、好適には、前記楽曲データ(MIDIデータ)には、楽曲の演奏の区分となる各小節毎に、その小節で利用されている和音に対応するコードデータ(コード進行)が定められている。斯かる態様すなわち楽曲データからコード進行を割り出す必要がない場合、前記和音判定手段88は、必ずしも設けられなくともよい。すなわち、前記楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じたコードを、その楽曲データから読み出して(抽出して)以下の制御に用いるものであってもよい。
調判定手段90は、前記楽曲データに対応する楽曲の調を判定する。好適には、前記楽曲演奏制御手段82による演奏(再生)の対象となる楽曲データに対応する楽曲の調を判定する。本実施例において、調とは、まとまりのある音階の種類をいい、旋律(メロディ)や和音が所定の中心音と関連付けられて構成されているとき、その音楽は調性があるという。伝統的な西洋音楽においては、調性のある音組織はキー(key)と呼び習わされる。キーの例としては、長調及び短調等が挙げられる。楽曲に対応するキーは、楽曲を通して(演奏開始から演奏終了まで)変わらないこともあれば、楽曲の途中で変更される(所謂転調)ことも考えられる。以下、キーが楽曲の調に相当するものとして説明を行う。
前記調判定手段90は、例えば、前記楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じたコードに基づいてその楽曲のキーを判定する。すなわち、好適には、前記和音判定手段88により判定される、前記楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じたコード(コード進行)に基づいてその楽曲のキーを判定する。例えば、対象となる楽曲に用いられている複数のコードに基づいて、可及的に多くのコードに対応するキーを前記楽曲のキーとして判定する。この判定の詳細については、図9、図10等を用いて後述する。ここで、前述のように、好適には、前記楽曲データ(MIDIデータ)には、楽曲に対応するキーデータが定められている。斯かる態様すなわち楽曲で利用されているコードからキーを割り出す必要がない場合、前記調判定手段90は、必ずしも設けられなくともよい。すなわち、前記楽曲データに対応する楽曲のキーをその楽曲データから読み出して(抽出して)以下の制御に用いるものであってもよい。
図3は、前記楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じたコードに基づいてその楽曲のキーを判定する制御の一例について説明する図である。図3においては、楽曲において用いられているコードをグレーで示している。すなわち、図3の表外に示すように、対象となる楽曲においてはコード「D」、「G」、「A7」、「Em」、及び「Cm」が用いられている。図3に示す例では、複数のコードが「D」のキーで用いられるコードであるため、楽曲のキーは「D」と判断される。ここで、楽曲にはコード「Cm」が用いられており、このコードはキー「D」に対応するコードではないが、このコード「Cm」は例外的に用いられているものとして楽曲のキーを「D」と判定する。このように、前記調判定手段90は、好適には、対象となる楽曲に用いられている複数のコードに基づいて、可及的に多くのコードに対応するキーを前記楽曲のキーとして判定する。なお、図3に示す制御は、前記楽曲データに対応するキーが予めその楽曲データに定められている場合には実行されなくともよい。
図4は、楽曲におけるスケール、コード、及びキーについて、それらが関連を有することを概念的に示す図である。この図4に示すように、前記カラオケ装置10による演奏対象となる楽曲をはじめとする楽曲一般において、スケール、コード、及びキーはそれぞれが関連を持っている。
図5は、楽曲におけるスケール、コード、及びキーの関連についての具体例を示す図である。この図5及び前述した図4に示すように、楽曲においてキー、コード、及びスケールは相互に関連があり、キー及びコードの少なくとも一方が定まると、それに対応するスケールが定まる。すなわち、このキーのときはこのスケールで演奏すると調和的である、このコードのときはこのスケールで演奏すると調和的である、といったルールが存在する。換言すれば、スケール自体は、キー及びコードの少なくとも一方に対応した音階である。図5に示す例において、例えば、キー「C」の「アイオニアン」スケールは、「C D E F G A B」となる。キー「D」の「リディアン」スケールは、「C E F♯ G♯ A B C♯」となる。
前記音階判定手段86は、好適には、前記楽曲データに定められた楽譜情報に対応するコード及びキーの少なくとも一方に基づき、前記楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じたスケールを判定する。本実施例において、例えば、前記楽曲データに含まれる演奏情報(MIDIデータ)が前記楽譜情報に対応する。具体的には、前記音階判定手段86は、前記楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じたスケールの判定において、前記和音判定手段88により判定されたその楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じたコード、及び前記調判定手段90により判定されたその楽曲データに対応する楽曲のキーの少なくとも一方に基づき、前記楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じたスケールを判定する。以下、図6〜図10等を参照して、前記音階判定手段86によるコード及びキーの少なくとも一方に基づくスケールの判定について説明する。
図6〜図8は、コード及びキーに対して利用できるスケールを例示する表であり、前記音階データベース80の内容を例示するものである。図6は、キーに対して利用できるスケールを例示している。図7は、コードに対して利用できるスケールを例示している。図8は、各スケールに対応する音度記号を例示している。これら図6〜図8に示すように、前記音階データベース80には、コード及びキーの少なくとも一方に対して利用できるスケールが記憶されている。また、各スケールに含まれる楽音(音度記号)が記憶されている。これらの情報は、1つのデータベースに統合的に記憶されるものであってもよいし、図6〜図8に示す情報がそれぞれ個別のデータベースに記憶されるものであってもよい。更に、前記通信回線60等を介して前記カラオケ装置10との間で相互に情報の送受信可能に接続されたサーバに、図6〜図8に示す情報に対応するデータベースが設けられ、前記カラオケ装置10から適宜そのサーバにアクセスが行われて必要な情報が読み出されて用いられるものであってもよい。
図9及び図10は、前記楽曲のコード進行に基づきその楽曲に対応するキー及びスケールを判定する制御の一例について説明する図である。図6に示すように、前記音階データベース80には、キーに対して利用できるスケールが定められている。前記音階判定手段86は、前記音階データベース80に記憶された情報に基づいて、楽曲で利用されていないコードのスケールはその楽曲のスケールとして判定しない(楽曲で利用されていないコードのスケールは利用しない)。前記音階判定手段86は、好適には、前記楽曲の中心となるコードのスケールを利用する。好適には、楽曲のコード進行における前のコードから共通点のあるスケールを最適なスケールと判定する。例えば、前記楽曲のコード進行が図9に示すようなものである場合には、「D」が中心のコード進行と判断されるため、図6に示す関係から楽曲のスケールは例えば「Dイオニアン」と判定される。前記楽曲のコード進行が図10に示すようなものである場合には、「G」が中心のコード進行と判断されるため、図6に示す関係から楽曲のスケールは例えば「Gリディアン」と判定される。
図11は、前記楽曲のキー及びコード進行に基づきその楽曲に対応するスケールを判定する制御の一例について説明する図である。この図11においては、対象となる楽曲の構造(構成)として、キーが「C」である楽曲を例示している。また、楽曲の演奏進行に対応する演奏の区分となる小節100a、100b、100c、100d(以下、特に区別しない場合には単に小節100という)それぞれに対応するコード(コード進行)が「C」、「Am」、「F」、「G」である楽曲を例示している。楽曲のキーが「C」である場合、図11における「キー:C」の下欄に示す一連のコードが、楽曲の演奏を通してそのキーに対応するコードとして利用できる。すなわち、図11に示す例では、キー「C」に対応するコードとして、「C」、「F」、「G」、「Am」、「Dm」、及び「Em」を利用できる。
前記音階判定手段86は、好適には、(i)前記楽曲のキーに対応するスケール、及び(ii)前記楽曲のコード進行に対応するスケールを、前記楽曲の演奏進行に応じたスケールとして判定する。図11に示す例においては、楽曲に対応するキーが「C」であるため、(i)そのキー「C」に対応するコード「C」、「F」、「G」、「Am」、「Dm」、及び「Em」に基づくスケールは、楽曲の演奏を通して(演奏進行によらず)利用できるスケールとして判定される。また、(ii)各小節100のコードに対応するスケールは、その小節100において利用できるスケールとして判定される。例えば、図11に示す小節100bにおいては、(i)楽曲のキー「C」に対応するコード「C」、「F」、「G」、「Am」、「Dm」、及び「Em」に基づくスケールと、(ii)小節100bのコード「Am」に基づくスケールとが、その小節100bに係る演奏において利用できるスケールとして判定される。
図2に示す演奏評価手段92は、前記楽曲データに基づく楽曲の演奏出力と併行して前記入力装置から受信した音信号が、その楽曲の演奏進行に応じて前記音階判定手段86により判定されたスケールに合致するか否かを判定する。本実施例において、前記入力装置から受信された音信号が、前記音階判定手段86により判定されたスケールに合致するとは、前記入力装置から受信された音信号に対応する楽音、すなわち前記ピッチデータ抽出手段84によりその音信号から抽出されたピッチデータに対応する音程が、前記音階判定手段86により判定されたスケールにおいて演奏してよい音程として定められたものであることをいう。例えば、図8に示すスケール「イオニアン」において、音度記号「1」、「2」、「3」、「4」、「5」、「6」、「7」に対応する楽音はスケール「イオニアン」に合致するが、音度記号「♭3」に対応する楽音等はスケール「イオニアン」に合致しない。
前記演奏評価手段92は、好適には、前記楽曲データに基づく楽曲の演奏出力と併行して前記入力装置から受信された音信号が、その楽曲の演奏進行に応じて前記音階判定手段86により判定されたスケールに合致するか否かを、前記楽曲の演奏の区分となる各小節毎100に判定する。例えば、前記楽曲データに基づく楽曲の演奏出力と併行して前記入力装置から受信された音信号が、(i)前記楽曲のキーに対応するスケール、及び(ii)前記楽曲のコード進行に対応するスケールの少なくとも一方に合致するか否かを、コードの切り替わりタイミングで判定する。
前記演奏評価手段92は、前記判定結果に基づいて、前記楽曲データに基づく楽曲の演奏出力と併行して前記入力装置から受信された音信号に係る演奏評価を行う。すなわち、前記楽曲データに基づく楽曲の演奏出力と併行して前記入力装置から受信された音信号が、その楽曲の演奏進行に応じて前記音階判定手段86により判定されたスケールに合致するか否かに基づいて、前記入力装置から受信された音信号に対応する演奏を評価する。図12は、本実施例のカラオケ装置10による演奏評価制御の一例の要部を、従来の演奏評価制御との対比において概念的に示す図である。本実施例のカラオケ装置10による演奏評価制御では、前記マイクロフォン48或いは前記電気楽器76等の入力装置から音信号が受信(入力)された場合、前記ピッチデータ抽出手段84によりその音信号からピッチデータが抽出される。
図12に示す本実施例の演奏評価制御(新しい採点)では、前記ピッチデータ抽出手段84により抽出されたピッチデータが、楽曲の演奏進行に応じて前記音階判定手段86により判定されたスケールに合致するか否かが評価される。例えば、前記ピッチデータ抽出手段84により抽出されたピッチデータ(音程)が、そのピッチデータに対応する音信号の受信タイミングにおける小節に対応して前記音階判定手段86により判定されたスケールに合致する(対象となる音程がスケールに含まれる)場合には肯定的な評価(例えば、加点)とされるが、合致しない場合には否定的な評価(例えば、減点)とされる。例えば、図12に破線で囲繞して示すピッチデータの音程は、お手本データにおける同タイミングの音程とは一致しないが、同タイミングにおける小節に対応するスケールには合致する(そのスケールにおいて使っていい音である)ため、肯定的な評価とされる。すなわち、本実施例に演奏評価制御では、お手本データに定められた音程でない音信号が入力された場合であっても、その音信号がスケールに照らして調和的である場合には肯定的な評価とされるため、ボーカルのフェイクやアドリブ、間奏時におけるスキャット、或いはギターソロにおけるアドリブ等の即興的な演奏の適切な評価が可能となる。
前記演奏評価手段92による演奏評価の態様としては、例えば、百点満点中何点というように数値的に採点を行うものであってもよいし、20段階評定の何れに当てはまるかを判定するというように簡易なものであってもよい。また、斯かる演奏評価制御は、演奏と併行して各区分毎(例えば、小節毎)に複数回行われた評価を、演奏終了時に集計するものであってもよいし、前記RAM16等に入力音声情報を記録しておき、演奏終了時にそれを対象となる演奏曲の演奏情報に基づいて評価するものであってもよい。また、前記音階判定手段86により判定されたスケールを評価基準とする本実施例の演奏評価制御は、例えばギターソロ部分といった楽曲の一部においてのみ実行されるものであってもよいし、楽曲を通して(演奏開始から演奏終了まで)継続して実行されるものであってもよい。
前記演奏評価手段92は、好適には、入力装置(音声入力装置)としての前記マイクロフォン48から受信される、利用者(歌唱者)の歌唱音声に対応する歌唱音声信号が、前記楽曲の演奏進行に応じて前記音階判定手段86により判定された音階に合致するか否かを判定する。具体的には、前記マイクロフォン48から受信される歌唱音声信号に対応して、前記ピッチデータ抽出手段84により抽出されるピッチデータ(音程)が、そのピッチデータに対応する歌唱音声信号の受信タイミングにおける小節に対応して前記音階判定手段86により判定されたスケールに合致する(対象となる音程がスケールに含まれる)か否かを判定する。好適には、先ず、前記マイクロフォン48から受信される歌唱音声信号に対応して、前記ピッチデータ抽出手段84により抽出されるピッチデータ(音程)が、そのピッチデータに対応する音信号の受信タイミングにおけるお手本データ(音程)と一致するか否かを判定し、一致しない場合に前記スケールに基づく判定を行う。すなわち、お手本データに基づく演奏評価の結果、お手本データと一致しなかった歌唱音声信号を抽出し、その歌唱音声信号がスケールに合致するか否かを判定する。斯かる判定の結果、例えば、前記歌唱音声信号に対応するピッチデータ(音程)が、そのピッチデータに対応する歌唱音声信号の受信タイミングにおけるスケールに合致する(対象となる音程がスケールに含まれる)場合には、適切なアドリブ演奏が行われたと判定し、減点対象とはしない。或いは逆に加点の対象とするものであってもよい。お手本データと一致せず、対応するスケールにも合致しないピッチデータについては、減点対象とする。或いは少なくとも加点対象とはしない。元々お手本データがない部分(例えば、歌詞のない間奏部分等)に受信された歌唱音声信号に関しては、お手本データに基づく判定は行わず、その歌唱音声信号の受信タイミングにおけるスケールに基づく前記判定(演奏評価)を行う。すなわち、本実施例の演奏評価手段92は、必ずしもお手本データに基づく演奏評価を行わなくともよく、専ら前記スケールに基づく演奏評価を行うものであってもよい。
図13は、前記マイクロフォン48から受信される歌唱音声信号に係る、本実施例の演奏評価制御について説明する図である。この図13に示す例では、演奏進行に伴いコードが「D」、「G」、「D」、「Cm」と推移する楽曲に係る演奏評価を例示している。また、この楽曲のキーに基づいて判定されるスケールは「Dイオニアン」である。この図13に示す例においては、コード進行によらず、楽曲のキーによるスケールとして「Dイオニアン」が判定され、小節100e〜100gにおいて前記のように演奏評価の基準とされる。一方、コード(コード進行)が「Cm」である小節100hは、斯かるキーによるスケールの例外となるため、キーによるスケール「Dイオニアン」は演奏評価の基準とされない。例えば、コード(コード進行)が「G」である小節100fにおいては、(i)楽曲のキーに対応するスケール「Dイオニアン」、及び(ii)楽曲のコード進行「G」に対応するスケール「Gイオニアン」、「Gリディアン」、「Gミクソリディアン」、「Gペンタトニック」が演奏評価の基準とされる。すなわち、図14に破線で囲繞して示すピッチデータのように、お手本データ(ガイドメロディ)との比較においては一致しないが、基準となるスケールすなわち「Dイオニアン」、「Gイオニアン」、「Gリディアン」、「Gミクソリディアン」、「Gペンタトニック」の何れかに合致する音程であれば、スケール内の楽音として減点対象とはしない。或いは逆に加点の対象とする。コード(コード進行)が「Cm」である小節100hにおいては、(i)楽曲のキーに対応するスケール「Dイオニアン」は演奏評価の基準とされず、(ii)楽曲のコード進行「Cm」に対応するスケール「Cドリアン」、「Cフリジアン」、「Cエイオリアン」、「Cmペンタトニック」、「Cハーモニックマイナー」、「Cメロディックマイナー」が演奏評価の基準とされる。すなわち、図14に破線で囲繞して示すピッチデータのように、お手本データ(ガイドメロディ)との比較においては一致しないが、基準となるスケールすなわち「Cドリアン」、「Cフリジアン」、「Cエイオリアン」、「Cmペンタトニック」、「Cハーモニックマイナー」、「Cメロディックマイナー」の何れかに合致する音程であれば、スケール内の楽音として減点対象とはしない。或いは逆に加点の対象とする。一方、楽曲のキーによるスケール「Dイオニアン」に合致したとしても減点対象となる。或いは、少なくとも加点対象とはしない。一方、図14に黒丸で示すピッチデータのように、対応するスケールに合致しないピッチデータについては、減点対象とする。或いは少なくとも加点対象とはしない。
図13は、前記電気楽器76から受信される楽器演奏信号に係る、本実施例の演奏評価制御について説明する図でもある。図13を用いて前述した例と同様、演奏進行に伴いコードが「D」、「G」、「D」、「Cm」と推移する楽曲に係る演奏評価を例示している。また、この楽曲のキーに基づいて判定されるスケールは「Dイオニアン」である。図13に示す例においては、前述した例と同様、コード進行によらず、楽曲のキーによるスケールとして「Dイオニアン」が判定され、小節100e〜100gにおいて前記のように演奏評価の基準とされる。コード(コード進行)が「Cm」である小節100hは、斯かるキーによるスケールの例外となるため、キーによるスケール「Dイオニアン」は演奏評価の基準とされないことも同様である。
前記演奏評価手段92は、好適には、入力装置としての前記電気楽器76から受信される、その電気楽器76の演奏に係る楽器演奏信号が、前記楽曲の演奏進行に応じて前記音階判定手段86により判定された音階に合致するか否かを判定する。具体的には、前記電気楽器76から受信される楽器演奏信号に対応して、前記ピッチデータ抽出手段84により抽出されるピッチデータ(音程)が、そのピッチデータに対応する楽器演奏信号の受信タイミングにおける小節に対応して前記音階判定手段86により判定されたスケールに合致する(対象となる音程がスケールに含まれる)か否かを判定する。例えば、前記楽器演奏信号に対応するピッチデータ(音程)が、そのピッチデータに対応する楽器演奏信号の受信タイミングにおけるスケールに合致する(対象となる音程がスケールに含まれる)場合には、適切なアドリブ演奏が行われたと判定し、減点対象とはしない。或いは逆に加点の対象とするものであってもよい。対応するスケールに合致しないピッチデータについては、減点対象とする。或いは少なくとも加点対象とはしない。斯かる判定に加え、例えば前記電気楽器76がエレキギターである場合には、前記ピッチデータ抽出手段84により抽出されるピッチデータからチョーキング(ギターの特殊奏法のひとつであり、右手で弦を弾いた後、左手でその弦をフレットに沿って押し上げ或いは引き下げて弦の緊張を高め、音程を上げる奏法)に相当する演奏や、ビブラート(弦を押さえる左指を細かく震わせる奏法)に相当する演奏が判定された場合には、加点の対象とするものであってもよい。更に、前記楽曲データに、楽器演奏に係るお手本データが定められている場合には、図13及び図14を用いて前述した歌唱音声信号の評価と同様、前記スケールに基づく判定の前段階においてお手本データに基づく採点を行ってもよい。
図15は、前記カラオケ装置10のCPU12による演奏評価制御の一例の要部について説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、前記RAM16等に記憶された予約曲テーブルの演奏順となる等して、所定の楽曲データに対応するカラオケ演奏が開始されるか否かが判断される。このS1の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、S1の判断が肯定される場合には、S2において、演奏開始に係る楽曲データが前記楽曲データベース78から読み出される。次に、S3において、S2にて読み出された楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じたコード(コード進行)が判定(抽出)される。次に、S4において、S2にて読み出された楽曲データに対応する楽曲のキーが判定(抽出)される。次に、S5において、前記音階データベース80に記憶された情報から、S3にて判定された楽曲のコード進行及びS4にて判定された楽曲のキーに基づいて、その楽曲の演奏進行に応じたスケールが判定される。次に、S6において、前記マイクロフォン48又は前記電気楽器76等、前記カラオケ装置10に接続された入力装置から音信号が受信されたか否かが判断される。このS6の判断が否定される場合には、S11以下の処理が実行されるが、S6の判断が肯定される場合には、S7において、前記カラオケ装置10に接続された入力装置から受信された音信号に対応するピッチデータが抽出される。次に、S8において、S7にて抽出されたピッチデータが、前記楽曲データに定められたS6のタイミングにおけるお手本データに一致するか否かに基づいて演奏評価が行われる。このS8の処理は、必ずしも実行されなくともよい。次に、S9において、S7にて抽出されたピッチデータが、S5にて判定されたS6のタイミングにおけるスケールに合致するか否かに基づいて演奏評価が行われる。次に、S10において、S8及びS9の演奏評価に基づいて、S6のタイミングで受信された音信号の演奏評価が行われる。次に、S11において、演奏に係る楽曲データが最後まで演奏される等して、楽曲データに対応する演奏が終了させられるか否かが判断される。このS11の判断が否定される場合には、S6以下の処理が再び実行されるが、S11の判断が肯定される場合には、S12において、各音信号に係るS10の演奏評価結果に基づいて、演奏終了に係る楽曲を通しての演奏評価(総合評価)が行われた後、それをもって本ルーチンが終了させられる。
以上の制御において、S1、S2、及びS11が前記楽曲演奏制御手段82の動作に、S7が前記ピッチデータ抽出手段84の動作に、S5が前記音階判定手段86の動作に、S3が前記和音判定手段88の動作に、S4が前記調判定手段90の動作に、S6〜S10、及びS12が前記演奏評価手段92の動作に、それぞれ対応する。
このように、本実施例によれば、前記楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じた音階(スケール)を判定する音階判定手段86(S5)と、前記楽曲データに基づく楽曲の演奏出力と併行して入力装置としてのマイクロフォン48又は電気楽器76等から受信された音信号が、その楽曲の演奏進行に応じて前記音階判定手段86により判定された音階に合致するか否かを判定する演奏評価手段92(S6〜S10、及びS12)とを、備えたものであることから、評価基準として楽曲の演奏進行に応じた音階を用いることで、ボーカルのフェイクやアドリブ、或いはギターソロにおけるアドリブ等の即興的な演奏を正しく評価できる。すなわち、即興的な演奏を評価し得る新たな演奏評価を実現する演奏装置としてのカラオケ装置10を提供することができる。
前記演奏装置は、前記マイクロフォン48又は前記電気楽器76等と接続可能なカラオケ装置10であるため、即興的な演奏を評価し得る新たな演奏評価を実現するカラオケ装置10を提供することができる。
前記音階判定手段86は、前記楽曲データに定められた楽譜情報に対応する和音(コード)及び調(キー)の少なくとも一方に基づき、前記楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じた音階(コード)を判定するものであるため、前記楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じた音階を実用的な態様で好適に判定することができる。
前記入力装置は、歌唱音声信号が入力される音声入力装置としてのマイクロフォン48であり、前記演奏評価手段92は、前記マイクロフォン48から受信される歌唱音声信号が、前記楽曲の演奏進行に応じて前記音階判定手段86により判定された音階(スケール)に合致するか否かを判定するものであるため、前記演奏装置を用いた歌唱において、歌唱者(ボーカル)のフェイクやアドリブ等の即興的な演奏を正しく評価できる。
前記演奏評価手段92は、入力装置としての電気楽器76から受信される楽器演奏信号が、前記楽曲の演奏進行に応じて前記音階判定手段86により判定された音階(スケール)に合致するか否かを判定するものであるため、前記演奏装置を用いた楽器の演奏において、例えばギターソロにおけるアドリブ等の即興的な演奏を正しく評価できる。
本実施例によれば、多数の楽曲データのうちから選択される楽曲データに基づいて楽曲の演奏出力を行うと共に、入力装置としてのマイクロフォン48又は電気楽器76等から受信される音信号を出力させる演奏装置であるカラオケ装置10の制御装置としてのCPU12を、前記楽曲データに対応する楽曲の演奏進行に応じた音階(スケール)を判定する音階判定手段86、及び、前記楽曲データに基づく楽曲の演奏出力と併行してマイクロフォン48又は電気楽器76等から受信された音信号が、その楽曲の演奏進行に応じて前記音階判定手段86により判定された音階(スケール)に合致するか否かを判定する演奏評価手段92として機能させることを特徴とするプログラムであるため、評価基準として楽曲の演奏進行に応じた音階を用いることで、ボーカルのフェイクやアドリブ、或いはギターソロにおけるアドリブ等の即興的な演奏を正しく評価できる。すなわち、即興的な演奏を評価し得る新たな演奏評価を実現するプログラムを提供することができる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
例えば、前述の実施例においては、マイクロフォン48や電気楽器76等の入力装置に接続される演奏装置の一例として、多数の楽曲データのうちから選択される楽曲データの演奏出力を行うと共に、その楽曲の歌詞文字映像を映像表示装置に表示させるカラオケ装置10に本発明が適用された例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、別の形態の演奏装置にも適用され得る。例えば、専らバンド演奏を練習するために用いられる楽器演奏練習装置や、所謂音ゲー等のゲームを実行する家庭用ゲーム機或いはパーソナルコンピュータ等にも、本発明は好適に適用されるものである。また、所謂スマートフォン等の携帯電話機や、タブレット端末が演奏装置として用いられる場合にも、本発明は好適に適用されるものである。また、前記音階判定手段86及び演奏評価手段92等による本実施例の実質的な制御は、前記通信回線60を介して演奏装置に接続されたサーバの制御装置において実行されるものであってもよい。本発明のプログラムが、例えば所定のサーバから前記通信回線60を介して前記カラオケ装置10等の演奏装置へ配信されるものであってもよい。
前述の実施例においては、マイクロフォン48や電気楽器76等の入力装置がオーディオ入力端子を介して接続される演奏装置としてのカラオケ装置10に本発明が適用された例を説明したが、入力装置は演奏装置に内蔵されたものであってもよい。例えば、演奏装置としてのスマートフォンに本発明が適用される場合には、スマートフォンのタッチパネルディスプレイにギターの弦やピアノの鍵盤が表示される等して、そのタッチパネルディスプレイに対する接触入力操作に応じて楽器演奏信号が入力されることが考えられる。斯かる態様において、本発明は、前記スマートフォンによる楽曲データに基づく楽曲の演奏出力と併行して、そのスマートフォンのタッチパネルディスプレイを介して入力される楽器演奏信号に係る演奏評価に好適に適用される。更に、前記カラオケ装置10において、前記電子早見本装置68のタッチパネルディスプレイにギターの弦やピアノの鍵盤が表示される等して、そのタッチパネルディスプレイに対する接触入力操作に応じて楽器演奏信号が入力される態様が考えられる。斯かる態様において、本発明は、前記カラオケ装置10による楽曲データに基づく楽曲の演奏出力と併行して、前記電子早見本装置68のタッチパネルディスプレイを介して入力される楽器演奏信号に係る演奏評価に好適に適用される。
前述の実施例において、前記演奏評価手段92は、前記ピッチデータ抽出手段84により抽出されたピッチデータが、(i)前記楽曲のキーに対応するスケール、及び(ii)前記楽曲のコード進行に対応するスケールの少なくとも一方に合致するか否かに基づいて前記ピッチデータに対応する音信号の演奏評価を行うものであったが、(i)前記楽曲のキーに対応するスケール、及び(ii)前記楽曲のコード進行に対応するスケールの何れか一方に基づいて前記演奏評価を行うものであってもよい。例えば、前記ピッチデータ抽出手段84により抽出されたピッチデータが、専ら前記楽曲のコード進行に対応するスケールに合致するか否かに基づいて前記ピッチデータに対応する音信号の演奏評価を行うものであり、前記楽曲のキーに対応するスケールは評価基準として用いない態様も考えられる。また、前記楽曲のキーに対応するスケールと、前記楽曲の演奏進行に応じたコードに対応するスケールとで、演奏評価に傾斜をかけるものであってもよい。例えば、前記ピッチデータ抽出手段84により抽出されたピッチデータが、前記楽曲の演奏進行に応じたコードに対応するスケールに合致する場合には、前記楽曲のキーに対応するスケールに合致する場合よりも評価を高くする等の演奏評価を行うものであってもよい。
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。