本発明の一実施形態は、少なくとも基材および機能性層を有するフィルムをフィルムロールから送り出す工程(1)と、送り出し後のフィルムの帯電を−10〜10kVに除電して、フィルムロールから送り出されたフィルムを搬送する工程(2)と、ハードコート層形成用塗布液を前記除電後のフィルムに塗布する工程(3)と、ハードコート層が形成されたフィルムをフィルムロールで巻き取る工程(4)と、を有する、機能性フィルムの製造方法である。なお、本発明の機能性フィルムは、工程(1)〜(4)をこの順に有する。以下、本実施形態を第一実施形態とも称する。
本発明者は、ロールツーロール(Roll to Roll)方式によりハードコート層を形成するための塗布液(以下、単にハードコート層形成用塗布液とする)を、機能性層と基材との積層体に塗布する際に微少なはじきが生じるという問題点を見出した。はじきとは、塗布液を塗布した際に塗布液の一部が弾かれて塗布されない、もしくは塗布厚みが小さいことを指し、はじきに起因して、小さなピンホール、突起またはへこみが生じ、塗膜欠陥が起こる。
本発明者がこの現象について検討したところ、機能性層と基材との積層体をロール状態から巻き出す際に、剥離帯電により過大に静電気が発生し、発生した静電気がハードコート層形成前の搬送過程で放電していることが分かった。基材上に設けられる機能性層は、基材を構成する成分とは異なるため、ロール状態からフィルムが剥離する際に剥離帯電が発生するものと考えられる。
そして、放電部分をマーキングして、ハードコート液を塗布したところ、マーキング部分にはじきがあるのが観察されたため、この静電気の放電が、塗布ムラ(はじき)の原因であることが分かった。放電が起きたフィルム部分は局部的に親水化し、表面の濡れ性の異なる部分が生じたため、はじきが生ずるものと考えられる。
ハードコート層形成用塗布液は、一般的に粘度が低いため、粘度の高い粘着層塗布液などと比較して、はじきによる塗布ムラが生じやすく、塗布欠陥につながりやすい。そして、ハードコート塗布液が熱/紫外線により硬化する際に収縮が発生するが、その際に塗れ性の変わった部分があると、その収縮力により、塗れ性の悪い部分の塗膜が引っ張られ、塗膜抜けが発生する。このため、ハードコート層形成用塗布液の場合、塗布面の濡れ性が局所的に異なると、はじきが特に発生しやすく、塗布故障につながりやすい。
したがって、ハードコート層形成用塗布液塗布前で、フィルム内の帯電が放電する前に、フィルムの帯電の絶対値を10kV以下に除電することによって、ハードコート層塗布前の塗布面の濡れ性が均一となり、これにより塗布液のはじきが低減され、塗布故障が少なく、均一な膜面のハードコート層を形成することができると考えられる。
以下、本発明について説明する。本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」及び「重量部」と「質
量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
図1は、第一実施形態の機能性フィルムを製造する際に用いられるハードコート層形成装置の一例を示す概略図である。
図1は、ハードコート層を形成する際に用いる装置の一例を示す概略図である。図1に示すハードコート層形成装置30は、いわゆるロールツーロール方式の装置である。ハードコート層形成装置30は、送り出しローラー32aと、搬送ローラー33a、33b、33c、33d、33eと、ハードコート層形成用塗布液塗布装置34と、加熱乾燥部35と、搬送ローラー36と、紫外線照射装置37と、巻取りローラー32bとを備えている。
以下、各工程について説明する。
<基材および機能性層を有するフィルムをフィルムロールから送り出す工程(1)>
送り出しローラー32aから基材および機能性層を有するフィルム31が送り出される。
用いられる基材としては、特に制限されるものではないが、屈曲性などの観点から樹脂基材であることが好ましく、透明であっても不透明であってもよい。自動車用途など、意匠性の点から可視光で透明であることが求められる用途では、可視光領域において透明であることが好ましい。
樹脂基材としては、例えば、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。ポリエステルの中でも透明性機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの2種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
基材の厚みとしては、10〜300μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましい。また、基材は、2枚以上重ねたものであっても良く、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。
樹脂基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。樹脂基材は、未延伸フィルムでもよく、一方に延伸された延伸フィルム、または二軸延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。
基材上に形成される機能性層は、基材上の何かしらの機能を付与する薄膜であればどのような機能性層であってもよい。機能性層としては、例えば、特定の光線を透過または反射吸収する光学フィルム(例えば、反射防止フィルム、赤外遮蔽フィルム、紫外線遮蔽フィルムなど)、酸素および/または水蒸気の透過を抑制するバリア性フィルム、偏光フィ
ルム、位相差フィルム、感光性フィルム、などが挙げられる。
ここで、基材および機能性層を有するフィルムは、基材および機能性層を有していれば足り、基材上に直接機能性層を設ける形態のみならず、基材に他の中間層が設けられ、該中間層上に機能性層を設ける形態や、基材の機能性層との反対面に他の中間層を有する形態、機能性層上に他の中間層を含む形態なども含む。また、フィルム31は後述の補助フィルムを有していてもよい。さらに、機能性層は1層であっても、複数層存在していてもよく、機能性層が複数層存在する場合には、各機能性層が隣接して積層されている形態のみならず、物理的に離れた位置に存在していてもよい。
機能性層の形成方法として特に限定されるものではなく、蒸着(抵抗加熱法、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー)法、イオンプレーティング法、スパッタ法等などの物理気相蒸着;熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法などの化学気相蒸着;コーティング法;共押出法;ラミネートおよびこれらの組み合わせなどにより形成することができる。
機能性層を構成する材料としては、目的の機能性層により適宜選択される。例えば、アルミ、シリカ、ジルコニア、酸化タンタル、酸化チタン、酸化錫、錫をドープした酸化インジウムなどの金属酸化物、酸窒化ケイ素などの金属酸窒化物、銀、金、銅などの金属、フッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、ポリマー、ポリチオフェンなどの導電性ポリマーなどが挙げられる。導電性が低く、本発明の効果がより得られやすいことから、機能性層はポリマーを含むことが好ましい。
機能性層には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることが出来る。具体的には、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤;ポリカルボン酸アンモニウム塩、アリルエーテルコポリマー、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、グラフト化合物系分散剤、ポリエチレングリコール型ノニオン系分散剤などの分散剤;pH調整剤;消泡剤などの公知の各種添加剤を含有していてもよい。
機能性層の厚みとしては、求められる機能を満たすように適宜設定されるが、例えば、10nm〜100μm程度である。
機能性層が誘電多層膜など複数層から構成される場合、層界面が多くなるため、発生した静電気がたまりやすい。このため、本発明の効果がより発揮されるという点からは、機能性層が多層構造であることが好ましく、中でも、積層数が比較的多いことから、機能性層が誘電多層膜であることが好ましい。
(誘電多層膜)
誘電多層膜は、屈折率の異なる層の積層体であるが、高屈折率層および低屈折率層が交互に積層された積層体であることが好ましい。
「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、隣接した2層の屈折率差を比較した場合に、屈折率が高い方の屈折率層を高屈折率層とし、低い方の屈折率層を低屈折率層とすることを意味する。したがって、「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、フィルムを構成する各屈折率層において、隣接する2つの屈折率層に着目した場合に、各屈折率層が同じ屈折率を有する形態以外のあらゆる形態を含むものである。
隣接した層界面での反射は、層間の屈折率比に依存するのでこの屈折率比が大きいほど、反射率が高まる。また、単層膜でみたとき層表面における反射光と、層底部における反射光の光路差を、n・d=波長/4、で表される関係にすると位相差により反射光を強め
あうよう制御出来、反射率を上げることができる。ここで、nは屈折率、またdは層の物理膜厚、n・dは光学膜厚である。この光路差を利用することで、反射を制御出来る。この関係を利用して、各層の屈折率と膜厚を制御して、可視光や、近赤外光の反射を制御する。即ち、各層の屈折率、各層の膜厚、各層の積層のさせ方で、特定波長領域の反射率をアップさせることができる。
したがって、誘電多層膜を有する機能性フィルムは、赤外線遮蔽能、紫外線遮蔽能等の光学反射特性を有する光学反射フィルムであることが好ましい。
誘電多層膜の厚さは、用いられる誘電多層膜および所望の機能が発揮されるように適宜設計されるが、通常、1〜100μm程度である。
誘電多層膜を形成する材料としては従来公知の材料を用いることができ、例えば、金属酸化物材料、ポリマー、その他の添加剤およびこれらの組み合わせ等などが挙げられる。
金属酸化物材料には、高屈折率材料として、TiO2、ZrO2、Ta2O5等が挙げられ、低屈折率材料としてSiO2、MgF2等が挙げられ、中屈折率材料としてAl2O3等が挙げられる。これらの金属酸化物材料を、蒸着法、スパッタなどのドライ製膜法によって製膜させることができる。
また、誘電多層膜としては、ポリマーを用いて各層の屈折率差を調整して誘電多層膜としてもよい。誘電多層膜に含まれるポリマーには特に制限はなく、誘電多層膜を形成できるポリマーであれば特に制限されない。
例えば、ポリマーとしては、特表2002−509279号公報に記載の樹脂を用いることができ、具体的には、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびその異性体(例えば、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−、および2,3−PEN)、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリイミド(例えば、ポリアクリル酸イミド)、ポリエーテルイミド、アタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリレート(例えば、ポリイソブチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、およびポリメチルメタクリレート)、ポリ(メタ)アクリレート(例えば、ポリブチルアクリレートおよびポリメチルアクリレート)、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸セルロースブチレート、および硝酸セルロース)、ポリアルキレンポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、およびポリ(4−メチル)ペンテン)、フッ素化ポリマー(例えば、パーフルオロアルコキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレン−プロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、およびポリクロロトリフルオロエチレン)、塩素化ポリマー(例えば、ポリ塩化ビニリデンおよびポリ塩化ビニル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエーテルアミド、アイオノマー樹脂、エラストマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびネオプレン)、ならびにポリウレタンが挙げられる。コポリマー、例えば、PENのコポリマー(例えば、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−、および/または2,3−ナフタレンジカルボン酸あるいはそれらのエステルと、(a)テレフタル酸もしくはそのエステル、(b)イソフタル酸もしくはそのエステル、(c)フタル酸もしくはそのエステル、(d)アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール)、(e)シクロアルキレングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノールジオール)、(f)アルカンジカルボン酸、および/または(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、1,4−、1,2−シクロヘキ
サンジカルボン酸)とのコポリマー)、ポリアルキレンテレフタレートのコポリマー(例えば、テレフタル酸もしくはそのエステルと、(a)ナフタレンジカルボン酸もしくはそのエステル、(b)イソフタル酸もしくはそのエステル、(c)フタル酸もしくはそのエステル、(d)アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール)、(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノール)、(f)アルカンジカルボン酸、および/または(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)とのコポリマー)、スチレンコポリマー(例えば、スチレン−ブタジエンコポリマーおよびスチレン−アクリロニトリルコポリマー)、ならびに4,4’−二安息香酸およびエチレングリコールのコポリマーなども利用できる。更に、個々の層にはそれぞれ、2つ以上の上記のポリマーまたはコポリマーのブレンド(例えば、ポリアルキレンテレフタレートのコポリマーとPENのコポリマーとのブレンド)が含まれていてもよい。さらに、ポリマーとして、特開2010−184493号に記載のポリマーを用いてもよい。具体的には、ポリエステル(以下、ポリエステルAとする)と、エチレングリコール、スピログリコールおよびブチレングリコールの少なくとも3種のジオール由来の残基を含んでいるポリエステル(以下、ポリエステルBとする)とを、用いることができる。ポリエステルAは、ジカルボン酸成分とジオール成分とが重縮合して得られる構造を有するものであれば特に限定されない。また、上記ポリエステルBは、エチレングリコール、スピログリコールおよびブチレングリコールの少なくとも3種のジオール由来の残基を含んでいる。
上記ポリマーを、米国特許第6049419号に記載のように、ポリマーの溶融押出しおよび延伸により、誘電多層膜を形成することができる。
一実施形態として、各屈折率層材料を100〜400℃で押出しに適当な粘度になるように溶融させ、必要に応じて各種添加剤を添加し、両方のポリマーを交互に二層になるように押出し機によって押し出すことができる。次に、押し出された積層膜を、冷却ドラムにより冷却固化し、積層体を得る。その後、この積層体を加熱してから二方向に延伸し、誘電多層膜を得ることができる。
フィルム搬送方向またはフィルム搬送方向に直交する方向に延伸する場合は、1.5〜5.0倍の倍率で延伸することが好ましく、より好ましくは2.0〜4.0倍の範囲である。
また、延伸に引き続き熱加工することもできる。熱加工手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。熱加工されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。冷却する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。
ポリマーの溶融押出し、延伸により得られる機能性フィルムの屈折率層は、10〜5000層であることが好ましく、より好ましくは20〜2000層である。
上記樹脂の同時押し出しにより高屈折率層および低屈折率層の積層体を形成後、該積層体を延伸してフィルムを形成した後、熱圧着や接着剤を用いた接着により、機能性層を基材上に形成することができる。
その他、ポリマーとして水溶性高分子を用いることも好ましい。水溶性高分子は、有機溶剤を用いない水系塗布が可能であるため、環境負荷が少なく、また、柔軟性が高いため、屈曲時の膜の耐久性が向上するため好ましい。水溶性高分子としては、例えば、ポリビ
ニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩などの合成水溶性高分子;ゼラチン、増粘多糖類などの天然水溶性高分子などが挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、製造時のハンドリングと膜の柔軟性の点から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン類及びそれを含有する共重合体、ゼラチン、増粘多糖類(特にセルロース類)が挙げられる。これらの水溶性高分子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用して用いてもよい。
ポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、変性ポリビニルアルコールも含まれる。変性ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール系ポリマーが挙げられる。
ポリビニルアルコールの具体的例示としては、国際公開第2013−054912号の[0075]〜[0079]の記載のものが挙げられる。
また、ポリビニルアルコールを硬化させるための硬化剤を使用してもよい。適用可能な硬化剤としては、例えば、ホウ酸及びその塩が好ましい。その他の硬化剤の具体例としては、国際公開第2013−054912号の[0091]〜[0096]に記載のものが挙げられる。
ゼラチンとしては、石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンを使用してもよく、さらにゼラチンの加水分解物、ゼラチンの酵素分解物を用いることもできる。また、国際公開第2013−054912号の[0081]〜[0082]に記載の硬膜剤を用いてもよい。
増粘多糖類としては、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類及び合成複合多糖類に挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
誘電多層膜は、ポリマーに加えて金属酸化物粒子を含有していてもよい。金属酸化物粒子は、誘電多層膜を構成するいずれかの膜に含有させればよいが、好適な形態は、少なくとも高屈折率層が金属酸化物粒子を含み、より好適な形態は高屈折率層および低屈折率層のいずれもが金属酸化物粒子を含む形態である。
金属酸化物粒子としては、金属酸化物を構成する金属が、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi及び希土類金属からなる群より選ばれる1種または2
種以上の金属である金属酸化物を用いることができる。
金属酸化物粒子は、平均粒径が好ましい順に100nm以下、4〜50nm、4〜30nmであることが好ましい。ここで、平均粒径は、一次平均粒径を指す。金属酸化物粒子の平均粒径は、金属酸化物粒子が被覆処理されている場合(例えば、シリカ付着酸化チタン等)、金属酸化物粒子の平均粒径とは母体(シリカ付着酸化チタンの場合は、処理前の酸化チタン)の平均粒径を指すものとする。
各屈折率層における金属酸化物粒子の含有量は、屈折率層の全重量に対して、20〜90重量%であることが好ましく、40〜75重量%であることがより好ましい。
低屈折率層においては、金属酸化物粒子として二酸化ケイ素(シリカ)を用いることが好ましく、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることが特に好ましい。
高屈折率層に含有される金属酸化物としては、透明でより屈折率の高い高屈折率層を形成するために、チタン、ジルコニア等の高屈折率金属酸化物微粒子、すなわち、酸化チタン微粒子、酸化ジルコニア微粒子であることが好ましく、ルチル型(正方晶形)酸化チタン微粒子であることがより好ましい。
また、酸化チタン粒子としては、水系の酸化チタンゾルの表面を変性して分散状態を安定にしたものを用いてもよい。
酸化チタンゾルとしては、特開2008−266043号公報に記載の、酸化チタンゾル粒子を核とし、そのまわりにケイ素,スズおよびアンチモンの各水和酸化物よりなる複数の被覆層を有し、アンチモンの水和酸化物が最外側被覆層である透明酸化チタンゾルを用いてもよい。また、酸化チタンゾルとしては、国際公開2009/044879号に記載の、酸化チタン−酸化スズ−酸化ジルコニウム−酸化タングステン複合コロイド粒子を核として、酸性酸化物のコロイド粒子により粒子表面が被覆された酸性酸化物被覆酸化チタン−酸化スズ−酸化ジルコニウム−酸化タングステン複合コロイド粒子、並びにこれらの複合コロイド粒子が分散されたゾルを用いてもよい。
また、高屈折率層に含まれる金属酸化物粒子としては、公知の方法で製造されたコアシェル粒子を用いることもできる。
水溶性高分子を誘電多層膜が含む場合には、水系塗布が可能となる。誘電多層膜の形成方法としては、上記溶融押出、延伸による形成方法の他、水溶性高分子および水系溶剤を用いた逐次重層塗布法;国際公開第2013−054912号[0144]〜[0156]に記載の同時重層塗布法;などの方法が挙げられる。
<送り出し後のフィルム帯電を−10〜10kVに除電して、フィルムロールから送り出されたフィルムを搬送する工程(2)>
得られた基材−機能性層の積層体31は、送り出しローラー32aから送り出される。そして、ローラー送り出し後のフィルムの帯電の絶対値が10kV以下となるように、除電が行われる。フィルム帯電の制御(除電)は除電手段を用いて行われる。ここで、送り出し後とは、帯電したフィルムからの放電が始まる前であればいずれの段階でもよく、装置により適宜除電手段をフィルム搬送経路に設ければよいが、確実に除電が行われることから、フィルムが送り出しローラー32aから離接した直後に除電手段を設け、除電を行う形態が好ましい。また、「ローラー送り出し後のフィルムの帯電が−10〜10kVに除電」とは、フィルム除電を行った後の帯電量の絶対値が10kV以下となることを意味する。
なお、本実施形態においては、剥離帯電によって生じた帯電の絶対値を除電により10kV以下とすることから、除電しない場合のローラー送り出し後のフィルムの帯電の絶対値は10kVを超えることとなる。
除電手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、除電ブラシ、除電紐、イオン風、接地(アース)、イオン生成方式(光電離:Photoionization)を利用した光イオン化システムなどが挙げられる。これらの除電手段は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。
除電ブラシは、金属片に多数の金属性または導電性ブラシ繊維が取付けられたものである。ブラシ繊維としては、金属材料(例えばステンレス、アルミ、銅など)、または導電性材料(例えば導電性アクリル、導電性ポリアミド、導電性アセテート、導電性ポリエステル、および、これらの材料に銅イオンを吸着させた銅イオン繊維やカーボン材を混入した炭素繊維など)から構成される繊維などが挙げられる。一般的なブラシ繊維の繊維径は、通常1〜100μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。また、その線長は、通常1〜100mmが好ましい。
除電ブラシを用いた除電における帯電量の制御は、ブラシ繊維材料の選択、繊維数などの除電ブラシ自体の選択、除電ブラシからフィルムまでの距離(接触を含む)、本数などを適宜設定することにより行うことができる。
除電紐は、除電紐と帯電物との間に少し隙間を作る自己放電式であっても、接地(アース)した除電紐を帯電物に接触させ、溜った静電気を漏洩電流として取り出し、除電する接地漏洩法を採用してもよい。除電紐は、導電性繊維を紐状としたものであり、例えば、硫化銅を含む導電性材料をアクリル繊維に混合した混紡糸や、ステンレス繊維とポリエステル繊維との混紡糸等が挙げられる。
除電紐を用いた除電における帯電量の制御は、構成される材料の選択などの除電紐自体の選択、除電紐からフィルムまでの距離(接触を含む)、本数、配置などを適宜設定することにより行うことができる。
イオン風を発生させる手段/イオン生成方式(光電離:Photoionization)を利用した光イオン化システムとしてはイオナイザを用いることができる。イオナイザは、空気あるいは他のガス中でイオンを生成し、このイオンによって帯電電荷を中和する。イオナイザの種類については特に制限はなく、イオン発生方式は、軟X線照射式、コロナ放電式のいずれでもよく、コロナ放電式の場合、電圧の印加方法はDC、AC、パルスDC、パルスACのいずれでもよく、また、バータイプ、ブロワータイプ、ノズルタイプ、ガンタイプのいずれであってもよいがインラインで行えるため、ブロワータイプまたはガンタイプであることがより好ましい。
イオナイザを用いた除電における帯電量の制御は、イオナイザの印加電圧の周波数、イオナイザのエミッタからフィルムまでの距離、イオナイザの除電速度、除電時間、設置台数などを適宜設定することにより行うことができる。
接地は、接地(例えば、大地)に電気的に接続し、溜った静電気を漏洩電流として取り出し、除電する方法である。かかる除電の際に取り出された漏洩電流は、接地(アース)を通じて大地に流される。
これらは、先述の除電ブラシや除電紐を介して設置する。
フィルムの除電面はハードコート層形成用塗布液塗布面であっても、ハードコート層形成用塗布液塗布面の反対側の面のいずれであってもよい。好適にはハードコート層形成用塗布液塗布面である。
上記除電手段により、ローラー送り出し後のフィルムの帯電を−10〜10kV、好ましくは−8〜8kV、より好ましくは−5〜5kVに制御する。
本実施形態においては、除電後のフィルム帯電を規定しているため、上記除電手段の下流に帯電量測定手段を設けることが好ましい。具体的には、除電後のフィルムの帯電量は、スタチロンTH(シシド電気社製)を用いて測定することができる。また、除電後のフィルム帯電量はハードコート塗布面を測定した値を採用する。
上記除電手段によりフィルム帯電が制御された基材−機能性層の積層体31は次工程のハードコート層形成用塗布液塗布装置まで搬送される。
基材および/または機能性層上には、補助フィルムを貼付してもよい。補助フィルムは、ロールツーロール方式によりフィルムを製造する際に、特に基材厚みが薄い場合に、搬送張力によりフィルムが損傷することを避けるために用いられる。補助フィルムは工程(3)のハードコート層形成前に剥離される。補助フィルムを剥離する際にも剥離帯電が生ずるため、補助フィルムを剥離(デラミネーション)後、工程(3)の前に、フィルムの除電を行うことが好ましい。フィルムの除電手段は、上記工程(2)の欄に記載した除電手段を用いることができる。また、フィルム帯電が10kV以下となるように除電することが好ましい。
補助フィルムとしては、上記樹脂基材と同様の材料を用いることができる。補助フィルムの厚みとしては、10〜200μm程度であることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。
補助フィルムは粘着剤を用いて基材および/または機能性層と貼付することができる。用いられる粘着剤は特に限定されないが、アクリル系粘着剤は耐久性、透明性、粘着特性の調整の容易さなどの観点から好ましい。アクリル系粘着剤は、アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これに極性単量体成分を共重合したアクリル系ポリマーを用いたものである。上記アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルであって、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。アクリル系粘着剤は、架橋剤と配合してアクリルポリマーを架橋し得る組成として用いることができる。架橋剤としては、例えば、アジリジン系、金属キレート系、エポキシ系等の各種架橋剤や、さらには、脂肪族系ジイソシアネート、芳香族系ジイソシアネート、芳香族系トリイソシアネートのようなイソシアネート系化合物等が用いられる。架橋剤の配合量は架橋剤の種類、用途に応じて適宜調整することができるが、粘着剤の樹脂に対し、0.1〜10重量%の範囲で用いることができる。
また、市販の粘着層(易接着層)付き樹脂フィルムを、そのまま補助フィルムとして用いてもよい。
<ハードコート層形成用塗布液を除電後のフィルムに塗布する工程(3)>
ハードコート層形成用塗布液には、ハードコート層を形成するための硬化樹脂材料、溶
媒、場合により、光重合開始剤、金属酸化物、界面活性剤、その他添加剤が含まれる。
硬化樹脂材料としては、熱硬化樹脂や活性エネルギー線硬化樹脂が挙げられる。成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化樹脂が好ましい。かような硬化樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。また、硬化樹脂は市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
活性エネルギー線硬化樹脂とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することによって硬化させて活性エネルギー線ハードコート層が形成される。活性エネルギー線硬化樹脂としては紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化型樹脂が好ましい。活性エネルギー線硬化樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
紫外線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート樹脂が好ましい。
紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号公報に記載の、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂としては、市販品を用いてもよく、市販品としては、ビームセット(登録商標)575、577(荒川化学工業株式会社製)、紫光(登録商標)UVシリーズなどを挙げることができる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることにより形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート樹脂としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート樹脂としては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。紫外線硬化型ポリオールアクリレート樹脂としては、市販品を用いてもよく、市販品としては、サートマーSR295、S
R399(サートマー社製)などを挙げることができる。
また、紫外線硬化型樹脂と組み合わせて(または単独で)、重合性シリコーン化合物を用いてもよい。該重合性シリコーン化合物は、上記紫外線硬化型樹脂と組み合わせて用いることが好ましい。
重合性シリコーン化合物は、分子内にシロキサン結合による主骨格(シリコーン骨格)と重合性基を有する化合物である。
重合性基は、上記紫外線硬化型樹脂と重合可能な基であり、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等の重合性の二重結合を有する基が挙げられる。好ましくは(メタ)アクリロイル基である。したがって、好ましい重合性シリコーン化合物は、シリコーン(メタ)アクリレートまたはシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、併せてシリコーン(メタ)アクリレートという。)であることが好ましい。
また、重合性シリコーン化合物は、上述の紫外線硬化型樹脂との相溶性を向上させるという点から、分子内に紫外線硬化性樹脂との相溶性を向上する部位を含有する有機変性重合性シリコーン化合物であることが好ましい。このような有機変性重合性シリコーン化合物としては、例えば、ウレタン変性、アミノ変性、アルキル変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシ・ポリエーテル変性またはポリエーテル変性した重合性シリコーン化合物が挙げられる。
例えば、紫外線硬化型樹脂が、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を含む場合には、重合性シリコーン化合物は、ウレタン変性シリコーン(メタ)アクリレートであることが好ましい。ウレタン変性シリコーン(メタ)アクリレートは、たとえば両末端がOHであるシリコーン化合物に多価イソシアネートを反応させ、末端イソシアナートシリコーン化合物を得て、末端イソシアナートシリコーン化合物と前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得られる。
重合性シリコーン化合物は、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、EBECRYL1360、EBECRYL350、KRM8495(ダイセル・オルネクス社製)、CN9800、CN990(アルケマ社製)などが挙げられる。
なお、重合性シリコーン化合物も重合物が形成されるため、樹脂の重合性成分となる。
紫外線硬化型樹脂は、光重合開始剤(ラジカル重合開始剤)を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、ペンゾイン、べンゾインメチルエーテル、べンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、べンジルメチルケタールなどのべンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのアセトフェノン類;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4,4−ビスメチルアミノべンゾフェノンなどのベンゾフェノン類およびアゾ化合物等を用いることができる。これらは単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。加えて、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン;2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体等の光開始助剤などと組み合わせて使用することができる。光重合開始剤は市販品を用いてもよく、例えばイルガキュア
(登録商標)−184、819、907、651、1700、1800、819、369、261、DAROCUR−TPO(BASFジャパン株式会社製)、ダロキュア(登録商標)−1173(メルク株式会社製)、エザキュア−KIP150、TZT(DKSHジャパン株式会社製)、カヤキュア(登録商標)BMS、DMBI(日本化薬株式会社製)等が挙げられる。これら光重合開始剤の使用量は、樹脂の重合性成分100重量部に対して好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは1〜25重量部である。
熱硬化性樹脂としては、ポリシロキサン系ハードコートが挙げられる。
ポリシロキサン系ハードコートは、一般式RmSi(OR’)nで示されるものが出発原料である。RおよびR’は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、mおよびnは、m+n=4の関係を満たす整数である。出発原料中のメトキシ基、エトキシ基などの加水分解性基が水酸基に置換した状態のものが、一般的にポリオルガノシロキサン系ハードコートといわれている。これを塗布し、加熱硬化させることで、脱水縮合反応が促進し、硬化・架橋することで、ハードコートが製膜される。
ポリオルガノシロキサン系ハードコートとしては、市販品を用いることもでき、サーコートシリーズ(動研製)、SR2441(東レ・ダウコーニング社)、KF−86(信越シリコーン社)、Perma‐New(登録商標)6000(California Hardcoating Company)などを利用することができる。
なお、ポリシロキサン系ハードコートの場合、塗布後、溶剤を乾燥させた後、該ハードコートの硬化・架橋を促進するため、50℃以上、150℃以下の温度で30分〜数日間の熱処理を必要とする。塗布基材の耐熱性やロールにした時の基材の安定性を考慮して、40℃以上80℃以下で2日間以上処理することが好ましい。
ハードコート層形成用塗布液中の硬化性樹脂(上記重合性シリコーン化合物を含む)の配合量は、ハードコート層の合計100重量%(固形分換算)に対して、40〜90重量%であることが好ましく、50〜85重量%であることがより好ましい。
ハードコート層形成用塗布液に、含まれる溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、またはこれらを混合し利用できる。
ハードコート層形成用塗布液中の溶媒の配合量は、上記硬化樹脂を溶解、分散できる量において適宜設定されるが、塗布液100重量%に対して、20〜80重量%程度である。
ハードコート層形成用塗布液は、ハードコート層に赤外遮蔽機能を持たせる、機械的強度を向上させるなどの目的で、金属酸化物粒子を含むことが好ましい。
ハードコート層に金属酸化物粒子を配合した系では、金属酸化物粒子の凝集ムラによる着色が観察される場合があった。本発明者が検討したところ、かような凝集ムラは、塗布液に分散している金属酸化物粒子が、濡れ性が不均一なフィルムに接触することによって生ずることがわかった。このため、ハードコート層に金属酸化物粒子を含有した系において、送り出し後の除電を行うことにより、ハードコート塗布面の濡れ性が均一となり、金属酸化物に起因するフィルム色ムラの低減も図ることできる。ハードコート層が金属酸化物を含有する場合、金属酸化物による色ムラ低減の観点からは、工程(2)において送り
出し後のフィルム帯電を8kV以下、より好ましくは5kV以下に除電することが好ましい。
金属酸化物粒子はナノ微粒子であることが好ましい。ナノ微粒子とは、平均(一次)粒径が1000nm未満の粒子を指し、平均粒径が1〜500nmの範囲にあるものがより好ましく、1〜100nmの範囲にあるものがさらに好ましい。粒径は、透過型電子顕微鏡などの観察手段を用いて観察される粒子(観察面)の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち最大の距離を意味する。また、本明細書でいう(一次)平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その平均を求めた値である。金属酸化物粒子がナノ微粒子であることで、ハードコート層の可視光線の透過性が確保される。
金属酸化物粒子としては、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化セシウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタンまたは酸化セリウム、および他の金属でドープされたこれらの化合物、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
上記他の金属でドープされた化合物とは、化合物中に他の金属が混合されている状態、または化合物と他の金属(酸化物)とが結合している状態の双方を指す。他の金属でドープされた化合物としては、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)または酸化インジウムスズ(ITO)、アンチモンドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛(インジウム亜鉛複合酸化物:IZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(ガリウム亜鉛複合酸化物:GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(アルミニウム亜鉛複合酸化物:AZO)、複合タングステン酸化物(セシウムドープ酸化タングステン:Cs0.33WO3)(タングステンセシウム複合酸化物)などが挙げられる。好適な金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セシウム、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化インジウムスズ(ITO)、タングステンドープ酸化セシウムなどが挙げられ、特に特開2013−173642号記載の複合タングステン酸化物を好ましく用いることができる。
金属酸化物粒子のハードコート層形成用塗布液中の配合量は、固形分全体に対して、30〜80重量%であることが好ましい。
ハードコート層形成用塗布液には、界面活性剤を添加して、レベリング性、撥水性、滑り性等を付与することができる。界面活性剤の種類として、特に制限はなく、アクリル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を用いることができる。特にレベリング性、撥水性、滑り性という観点で、フッ素系界面活性剤を用いることが好ましい。フッ素系界面活性剤の例としては、例えば、DIC株式会社製のメガファック(登録商標)Fシリーズ(F−430、F−477、F−552〜F−559、F−561、F−562等)、DIC株式会社製のメガファック(登録商標)RSシリーズ(RS−76−E等)、AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロン(登録商標)シリーズ、OMNOVA SOLUTIONS社製のPOLYFOXシリーズ、株式会社T&K TOKAのZXシリーズ、ダイキン工業株式会社製のオプツールシリーズ、ネオス社製のフタージェント(登録商標)シリーズ(602A、650A等)等の市販品を使用することができる。
界面活性剤のハードコート層形成用塗布液中の配合量は、固形分全体に対して、0.001〜0.5重量%であることが好ましい。
その他添加剤としては、ホウ素化ランタン、ニッケル錯体系化合物、イモニウム系、フタロシアニン系、アミニウム系化合物などの赤外線吸収剤、染料、顔料などが挙げられる
。
ハードコート層形成用塗布液の製造方法は特に限定されず、溶媒に各成分を添加し、適宜混合することによって得られる。添加順序、添加方法は特に限定されず、攪拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、攪拌しながら一度に添加し混合してもよい。
準備されたハードコート層形成用塗布液は、フィルムに塗布する前に、除電することが好ましい。すなわち、本発明の好適な一実施形態は、ハードコート層形成用塗布液を前記フィルムに塗布する工程(3)の前に、ハードコート層形成用塗布液を除電する工程(3’)を含む、機能性フィルムの製造方法である。
ハードコート層の塗布部直前にはフィルム帯電の放電による爆発を防ぐために、一般的に塗布部の直前に除電機構が付いていた。しかしながら、機能性フィルムを長尺塗布すると塗布ムラが発生することがあった。本発明者が塗布部の高速度カメラによって解析したところ、何らかの力によって、フィルム表面でハードコート層形成用塗布液の液付き乱れが観測され、解析を進めると、塗布液が帯電し、その帯電により塗布液の液付きが乱れ、それが乾燥されることにより塗布ムラが発生することが分かった。
このため、ハードコート層形成用塗布液をフィルム塗布前に除電することによって、塗布ムラがさらに低減し、得られるフィルムの塗布故障がさらに低減する。
また、上記のようなハードコート層が金属酸化物を含有する系において、ハードコート層形成用塗布液をフィルム塗布前に除電することによって、金属酸化物の凝集ムラに起因すると考えられるフィルムの色ムラが低減される。これは、塗布液の帯電を低減することで、電気的反発による金属酸化物の凝集が抑制され、色ムラの低減が図れるものと考えられる。
ハードコート層形成用塗布液の除電に用いられる除電手段は、フィルム巻出し後の除電に用いられる方法と同様であり、また、フィルム巻出し後の除電に用いられる方法と同じであっても異なってもよく、特に限定されるものではないが、例えば、除電ブラシ、除電紐、イオナイザ、接地(アース)などが挙げられる。
準備されたハードコート層形成用塗布液は、塗布液塗布装置34によって機能性層上または基材上に塗布される。塗布液塗布装置34としては、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、コンマコーターなどが挙げられる。
ハードコート層形成用塗布液が塗布された基材は、搬送ローラー33b、33cを経て、加熱乾燥部35(以下、単に乾燥部とも称する)に搬送される。乾燥部では、塗布液中の溶媒を乾燥させる。乾燥手段としては特に限定されず、温風乾燥、赤外乾燥、マイクロ波乾燥が用いられる。なお、図1においては、加熱乾燥部35に乾燥装置が4つ記載されているが、かように複数の乾燥装置を用いて乾燥を行う形態に限られず、1つの乾燥装置のみで乾燥してもよい。この際の乾燥温度としては、用いられる溶媒を除去できる温度で適宜設定されるが、通常70〜120℃である。
ハードコート層形成用塗布液が塗布された基材は、搬送ローラー33dを経て、紫外線照射装置37による紫外線照射のため搬送される。紫外線照射装置37では、紫外線硬化樹脂が照射された紫外線により硬化する。紫外線照射装置としては、例えば、高圧UVランプ(高圧水銀ランプ)、メタルハライドランプなどの紫外線ランプを用いることができる。図1においては、紫外線照射装置を図示したが、用いられる硬化樹脂によって、加熱装置など他の硬化用装置が用いられる。ポリシロキサン系ハードコート材料の場合、塗布
後、溶剤を乾燥させた後、該ハードコート材料の硬化・架橋を促進するため、50〜150℃の温度範囲内で30分〜数日間の熱処理を行うことが好ましい。
活性エネルギー線硬化樹脂を用いる場合、活性エネルギー線の照射波長、照度、光量によってその反応性が変わるため、使用する樹脂によって最適な条件を選択する必要がある。例えば、活性エネルギー線として紫外線ランプを用いる場合、その照度は50〜1500mW/cm2が好ましく、照射エネルギー量は50〜1500mJ/cm2が好ましい。
上記紫外線照射処理により、基材または機能性層上にハードコート層が形成される。形成されたハードコート層の厚みは0.1〜20μmが好ましく、1〜15μmがより好ましく、3〜10μmであることがさらに好ましい。0.1μm以上であればハードコート性が向上する傾向にあり、20μm以下であればハードコート層のカールが小さく、耐屈曲性が維持される傾向にある。
なお、上記においては、ハードコート層を基材または機能性層上に形成する形態について説明したが、該形態に限定されず、ハードコート層はその他の中間層などの上に形成されてもよい。
<ハードコート層が形成されたフィルムをフィルムロールで巻き取る工程(4)>
ハードコート層が形成された機能性フィルム38は、搬送ローラー33eを経て、巻取りローラー32bによって巻き取られる。
各層(ハードコート層、機能性層)および基材の間には中間層が存在していてもよい。該中間層としては、粘着剤層、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層(接着層)、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、本発明の高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)などが挙げられる。
本発明の製造方法によって製造された機能性フィルムの用途としては、機能性層の種類によって適宜に利用できる。例えば、特定の波長域の光線を透過する、または反射吸収することを目的とした光学フィルム;自動車や建物などの窓に貼合し、断熱や遮光、破損時の破片飛散防止などを目的としたウインドウフィルム;食品、化粧品、工業用品、医薬品などの物品の密封包装容器や液晶表示素子、光電変換素子、有機エレクロトルミネッセンス素子などの電子デバイスにも使用され、対象物を酸素や水蒸気などから保護することを目的としたバリア性フィルム;偏光フィルム、位相差フィルム、感光性フィルムなどが挙げられる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)、湿度50%RHで行われる。なお、本発明は以下実施例に限定されるものではない。
(比較例1−1)
図2の真空成膜装置を用いて、PETフィルム(東洋紡社製、商品名A4300、厚さ50μm)支持体(基材)上に、膜厚60nmのアルミナ膜を機能性層として成膜した。
図2の真空成膜装置について説明すると、真空成膜装置10は、いわゆるロールツーロール方式の装置であり、送り出しローラー12aと、搬送ローラー13a、13b、13
c、13dと、真空成膜室16と、巻き取りローラー12bと、を備えている。真空成膜室16内に、真空成膜手段としてのスパッタ15、および支持/搬送の役割を有するドラム14が設置されている。送り出しローラー12aから連続的に長尺な基材11が送り出され、搬送ローラー13aおよび13bによって真空成膜室16に搬送される。真空成膜室において基材上にアルミナが蒸着される。
次に、メチルエチルケトン55重量部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社製 サートマーSR399R)20重量部、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製 イルガキュア651)5重量部を混合して、ハードコート層形成用塗布液1を調製した。
図1の装置を用い、基材上に塗布された機能性層と反対の基材上面に、ハードコート層形成用塗布液1を塗設した。フィルムを巻出した際の巻出し部分の帯電量はスタチロンTH(シシド電機社製)をフィルムから5mmの位置において測定したところ、45kVだった。
加熱乾燥部35においては、温風乾燥により80℃で乾燥させた。その後、紫外線照射装置37においては、高圧水銀ランプを用い、照度400mW/cm2に設定して、紫外線照射を行って、機能性フィルムを得た。図1のハードコート層形成装置30において、搬送速度を35m/minに設定した。得られたハードコート層の膜厚は4μmであった。
(比較例1−2)
フォトイオナイザL12645(浜松ホトニクス社製)1台を(フィルム搬送方向と垂直方向にフィルムロールとフィルムとが離れる位置からの)距離150cmに設置することでフィルムの巻出し直後のフィルム帯電量を30kVにまで除電したこと以外は比較例1−1と同様にして機能性フィルムを得た。以下の実施例および比較例において、同様である。また、光イオン化システムは、フィルムを搬送しているときは常に稼働させていた。また、除電後のフィルムの帯電量は同様にスタチロンTH(シシド電機社製)を用いて測定した。
(比較例1−3)
フォトイオナイザを距離120cmに2台設置することでフィルムの巻出し直後のフィルム帯電を17kVにまで除電したこと以外は比較例1−1と同様にして機能性フィルムを得た。
(比較例1−4)
フォトイオナイザ2台を距離150cmに設置することでフィルムの巻出し直後のフィルム帯電を13KVにまで除電したこと以外は比較例1−1と同様にして機能性フィルムを得た。
(実施例1−1)
フォトイオナイザ2台を距離120cmに設置することでフィルムの巻出し直後のフィルム帯電を10kVにまで除電したこと以外は比較例1−1と同様にして機能性フィルムを得た。
(実施例1−2)
フォトイオナイザ3台を距離120cmに設置することでフィルムの巻出し直後のフィルム帯電を8kVにまで除電したこと以外は比較例1−1と同様にして機能性フィルムを得た。
(実施例1−3)
フォトイオナイザ3台を距離90cmに設置することで用いてフィルムの巻出し直後のフィルム帯電を5kVにまで除電したこと以外は比較例1−1と同様にして機能性フィルムを得た。
(評価方法)
上記実施例および比較例で得られた機能性フィルムについて、仕上がったハードコート層側の膜面を観察し、1m2あたりのハードコート層の故障の数を評価した。ここで故障とは、ハードコート面のピンホール、突起、へこみなどの塗膜の欠陥をいう。
結果を下記表1に示す。
上記結果より、フィルム送り出し後の帯電量を10kV以下に除電することにより、故障の数の低減を図ることができた。
(比較例2−1)
図2のハードコート層形成用塗布液塗布装置34中の塗布液にアースを取った金属棒を差し込んだこと以外は、比較例1−1と同様にして機能性フィルムを得た。
(比較例2−2〜4、実施例2−1〜3)
以下、同様にイオナイザの設置台数と距離を変え巻出しの帯電量を測定、故障の数を測定した。結果を表2に示す。
上記結果より、さらに、ハードコート塗布液の除電を行うことにより、故障の数をさらに低減することができた。
(比較例3−1)
グリコール成分としてエチレングリコールおよびシクロヘキサンジメタノール(重量比7:3)、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(ジカルボン酸成分:グリコール成分=1:1(モル比))を用いたポリアルキレンテレフタレート、ならびに、ジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(重量比7:3)、グリコール成分としてエチレングリコール(ジカルボン酸成分:グリコール成分=1:1(モル比))を用いたPENのコポリマーを、320℃に溶融し、200層の重層押し出しダイスから、ポリアルキレンテレフタレートから形成される層を、片面側1640nmからもう片面側が2460nmになるように傾斜をかけ押し出し、PENのコポリマーから形成される層を片面側1230nmからもう片面側が1840mmになるように傾斜をかけ、交互に押し出し、押出されたフィルムを縦約3.3倍、横約3.3倍に延伸した後、熱固定、冷却を行って、波長1000nmに反射波長の中心がある反射フィルム(厚さ:72μm)を作製した。
上記得られた反射フィルムを、PETフィルム(東洋紡社製、商品名A4300、厚さ50μm)支持体に熱圧着させ、機能性層としての反射層を形成した。なお、熱圧着の温度を130℃とし、圧着力が500N/cm2とし、圧着速度は5m/minとした。
赤外線吸収剤としてのセシウム酸化タングステン(YMF−02A:住友金属鉱山株式会社分散液)30重量部、紫外線硬化型樹脂としての、紫光UV−7600B(日本合成化学社製、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂)30重量部およびビームセット(登録商標)575(荒川化学工業社製、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂)10重量部、ならびに溶媒としてのメチルイソブチルケトン29.2重量部を混合させた。さらに、フッ素系界面活性剤(フタージェント650A、株式会社ネオス製)を0.1重量部、および光重合開始剤(イルガキュア184、BASFジャパン株式会社製)0.7重量部を添加し、30分間攪拌させ、ハードコート層形成用塗布液2を調製した。
図2の装置を用い、基材上の反射フィルム(機能性層)とは反対面に、ハードコート層形成用塗布液2を塗設した。フィルムを巻出した際の巻出し部分の帯電量を前述のスタチロンTH(シシド電機)を用いて測定したところ、50kVだった。
加熱乾燥部35においては、温風乾燥により80℃で乾燥させた。その後、紫外線照射装置37においては、高圧水銀ランプを用い、照度400mW/cm2に設定して、紫外線照射を行って、機能性フィルムを得た。図1のハードコート層形成装置30において、搬送速度を35m/minに設定した。得られたハードコート層の膜厚は4μmであった。
(実施例3−1〜3、および比較例3−2〜3)
フィルムの巻出し直後のフィルム帯電を、実施例1と同様にイオナイザの設置台数と距離をかえ、帯電量を測定した。
上記実施例3−1〜3、および比較例3−1〜3で得られた機能性フィルムについて、上記評価方法に記載の方法により故障の数を測定した。結果を表3に示す。
上記結果より、フィルム送り出し後の帯電量を10kV以下に除電することにより、故障の数の低減を図ることができた。
帯電量が9Vの実施例3−1について、フィルムを広げ詳細に全体を確認するとハードコート層が着色しているため色ムラが観察された。これは、目視では確認できない塗布ムラにより金属酸化物が凝集し、色ムラが観察されたためであると考えられる。帯電量が5kV、3kVである実施例3−2および3−3について色ムラは観察されなかった。実施例3−1において、ハードコート層形成用塗布液にアースをとった金属棒を差し込んで塗布を再開したところ、色調ムラが解消された。このため、ハードコート塗布液に金属酸化物粒子を含有する系における金属酸化物の凝集ムラに起因する色ムラについても、送り出し後のフィルムの除電および塗布液の除電効果があることがわかった。