以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図9は、本実施の形態による有価媒体処理装置を示す図である。このうち、図1は、本実施の形態における有価媒体処理装置の内部構成の概略を模式的に示す概略構成図であり、図2は、図1に示す有価媒体処理装置の制御系の構成を示す機能ブロック図である。また、図3は、図1に示す有価媒体処理装置の印刷部により商品券に印刷される消し込み印に係る印刷パターンの設定項目および印刷内容を示す図である。また、図4および図5は、図1に示す有価媒体処理装置の印刷部により商品券に印刷される消し込み印の様々な例を示す図である。また、図6は、図1に示す有価媒体処理装置による紙葉類の入金処理方法を示すフローチャートである。また、図7および図8は、図1に示す有価媒体処理装置において印刷部による印刷内容を設定するときの表示・操作部の表示画面を示す図であり、図9は、図1に示す有価媒体処理装置において初期設定を行うときの表示・操作部の表示画面を示す図である。
図1および図2に示すように、本実施の形態による有価媒体処理装置100は、紙幣や商品券を含む紙葉類が投入される投入部10と、投入された紙葉類の各々を識別する識別部20と、識別された紙葉類を搬送しながら4種別に分類する搬送分類機構30と、分類された紙葉類が一時的に集積される4つの集積部41〜44と、4つの集積部41〜44の一部である2つの集積部43、44にそれぞれ対応して設けられた2つの収納部53、54とを備えている。
投入部10は、紙葉類ホッパとして構成されており、投入された紙葉類(紙幣/商品券)を受け入れて1枚ずつ繰出するようになっている。
識別部20は、イメージセンサを有しており、紙幣/商品券の区別の他、各紙幣の金種や、各商品券の種別等を識別するようになっている。商品券の種別の識別とは、当該店舗(およびそのチェーン店舗)で発行された商品券/他社で発行された商品券の区別や、当該店舗において処分可能な商品券/他の管理センターへの回収が必要な商品券の区別や、使用期限内の有効な商品券/使用期限切れの無効な商品券の区別等である。
搬送分類機構30は、紙葉類を搬送する搬送ベルト機構35と、搬送路を切り換えるための3つの切換機構31〜33と、これらの搬送ベルト機構35や3つの切換機構31〜33を制御する紙幣制御部36とを有している。そして、紙幣制御部36が識別部20による識別結果に基づいて3つの切換機構31〜33を制御することによって、識別された紙葉類をそれぞれ対応する4つの集積部41〜44に分類して搬送するようになっている。
第1の集積部41は、紙葉類リジェクト部として構成されており、リジェクト対象の紙葉類が集積されるようになっている。第1の集積部41(紙葉類リジェクト部)は、常時外部に開放されており、常時外部からリジェクト対象の紙葉類を取り出し可能となっている。
第2の集積部42は、紙葉類スタッカ部として構成されており、100枚程度までの紙葉類が集積されるようになっている。第2の集積部42(紙葉類スタッカ部)は、シャッタ42sを介して外部からアクセス可能となっており、シャッタ42sの開放時に外部から紙葉類を取り出し可能となっている。もっとも、シャッタ42sの設置を省略することも可能である。その場合は、第1の集積部41(紙葉類リジェクト部)と同様に、常時外部からアクセス可能(紙葉類を取り出し可能)となる。
第3の集積部43および第4の集積部44は、それぞれ紙葉類一時保留部A、Bとして構成されており、100枚程度の紙葉類が集積されるようになっている。そして、有価媒体処理装置100の操作者による承認の後には、紙葉類一時保留部A、Bの底面が開放されるようになっており、一時保留されていた紙葉類が対応する収納部53、54に送り込まれるようになっている。また、有価媒体処理装置100の操作者によって非承認とされた後には、紙葉類一時保留部A、Bが有価媒体処理装置100の前方へ引き出し可能となっており、一時保留されていた紙葉類を有価媒体処理装置100の前方から取り出し可能となっている。
2つの収納部53、54は、2つの集積部43、44に対応して設けられており、紙葉類を収納可能なカセットから構成されている。各カセットは、収納された紙葉類の回収条件を個別に設定可能となっており、設定された回収条件が満たされた場合にのみ有価媒体処理装置100の外部からアクセス可能となっている。
例えば、2つの収納部53、54の少なくとも一つに対して設定される回収条件は、有価媒体処理装置100が設置される店舗(の操作者)が紙葉類の回収を許可されているという条件とされ、2つの収納部53、54の少なくとも他の一つに対して設定される回収条件は、紙葉類の回収業務を委託される警送業者が紙葉類の回収を許可されているという条件とされ得る。このように回収条件が設定されることにより、店舗自身による回収作業と、警送業者による回収作業とを、それぞれ個別に設定して管理することが可能である。
本実施の形態による有価媒体処理装置100では、各収納部53、54への有価媒体処理装置100の外側からのアクセスを制限する構成として、図1および図2に示すように、公知のロック機構63、64と、当該ロック機構63、64を制御するロック制御部65とが用いられるようになっている。ロック制御部65には、ターミナル70に内蔵された全体制御部73を介してICカードリーダ71が接続されており、店舗所属の操作者が保有するICカードをICカードリーダ71が読み取ったときに、店舗が紙葉類の回収を許可されていると判断し、そのような回収条件が設定されている収納部53、54に対するアクセスが解放される(すなわち、ロックが解放されて、収納部53、54が機外へ取出し可能となる)。一方、警送業者所属の操作者が保有するICカードをICカードリーダ71が読み取ったときに、当該警送業者が紙葉類の回収を許可されていると判断し、そのような回収条件が設定されている収納部53、54に対するアクセスが解放される(すなわち、ロックが解放されて、収納部53、54が機外へ取出し可能となる)。
ターミナル70には、全体制御部73とICカードリーダ71とに加えて、タッチパネル等で構成された表示・操作部72が設けられている。表示・操作部72は、操作ガイダンスや入金処理時の取引データ等を表示するとともに、操作者の指示入力を受け付けるようになっている。
また、本実施の形態による有価媒体処理装置100の搬送分類機構30において、紙葉類の搬送方向における識別部20の下流側には、商品券を無効化するための消し込みの印刷処理を行う印刷部75が設けられている。印刷部75は例えばインクジェットプリンタから構成されており、様々な印刷パターンにより商品券に対して消し込みの印刷処理を行うことができるようになっている。このような印刷部75により商品券に対して行われる消し込みの印刷処理の詳細については後述する。印刷部75は、有価媒体処理装置100の操作面に近接する位置に配置されており、図示されないカバーを開放することにより、インクカートリッジの交換を容易に行うことができる。
また、本実施の形態による有価媒体処理装置100は、硬貨が投入される硬貨投入部110と、投入された硬貨の各々を識別する硬貨識別部120と、識別された硬貨を搬送しながら3種別に分類する硬貨搬送分類機構130と、分類された硬貨が一時的に集積される3つの硬貨集積部141〜143と、3つの硬貨集積部141〜143の一部である2つの硬貨集積部142、143にそれぞれ対応して設けられた2つの硬貨収納部152、153とを備えている。
硬貨投入部110は硬貨ホッパとして構成されており、投入された硬貨を受け入れて1枚ずつ繰出するようになっている。
硬貨識別部120は磁気センサ等を有しており、硬貨の真偽の区別の他、各硬貨の金種を識別するようになっている。
硬貨搬送分類機構130は、硬貨制御部136によって制御されるソレノイド付き選別部材を有する強制選別機構によって構成されており、選別された硬貨を3つの硬貨集積部141〜143に分類して搬送するようになっている。ここで、硬貨搬送分類機構130は、振り分ける硬貨の種別を任意に設定できるようになっている。
第1の硬貨集積部141は硬貨リジェクト部として構成されており、リジェクト対象の硬貨が集積されるようになっている。第1の硬貨集積部141(硬貨リジェクト部)に集積された硬貨は、常時外部から取り出し可能となっている。
第2の硬貨集積部142および第3の硬貨集積部143は、それぞれ硬貨一時保留部として構成されており、それぞれに100枚程度までの硬貨が集積されるようになっている。そして、有価媒体処理装置100の操作者による承認の後には、硬貨一時保留部の枠体が移動されるようになっており、一時保留されていた硬貨が対応する硬貨収納部152、153に送り込まれるようになっている。また、有価媒体処理装置100の操作者によって非承認とされた後には、硬貨一時保留部の底板が退避し、一時保留されていた硬貨が当該硬貨一時保留部の下方の硬貨返却箱144、145に送り込まれ、当該硬貨返却箱144、145を介して硬貨が取り出し可能となっている。
2つの硬貨収納部152、153は、2つの硬貨集積部142、143に対応して設けられており、硬貨を収納可能なカセットから構成されている。各硬貨カセットは、収納された硬貨の回収条件を個別に設定可能となっており、設定された回収条件が満たされた場合にのみ有価媒体処理装置100の外側からアクセス可能となっている。
例えば、2つの硬貨収納部152、153の少なくとも一つに対して設定される回収条件は、有価媒体処理装置100が設置される店舗(の操作者)が硬貨の回収を許可されているという条件とされ、2つの硬貨収納部152、153の少なくとも他の一つに対して設定される回収条件は、硬貨の回収業務を委託される警送業者が硬貨の回収を許可されているという条件とされ得る。このように回収条件が設定されることにより、店舗自身による回収作業と、警送業者による回収作業とを、それぞれ個別に設定して管理することが可能である。
各硬貨収納部152、153への有価媒体処理装置100の外側からのアクセスを制限する構成として、図1および図2に示すように、公知のロック機構162、163と、当該ロック機構162、163を制御するロック制御部65とが用いられるようになっている。前述のように、ロック制御部65にはICカードリーダ71が接続されており、店舗所属の操作者が所有するICカードをICカードリーダ71が読み取ったときに、店舗が硬貨の回収を許可されていると判断し、そのような回収条件が設定されている硬貨収納部152、153に対するアクセスが解放される(すなわち、ロックが解放されて、硬貨収納部152、153を機外へ取出し可能となる)。一方、警送業者所属の操作者が所有するICカードをICカードリーダ71が読み取ったときに、警送業者が硬貨の回収を許可されていると判断し、そのような回収条件が設定されている硬貨収納部152、153に対するアクセスが解放される(すなわち、ロックが解放されて、硬貨収納部152、153を機外へ取出し可能となる)。
本実施の形態による有価媒体処理装置100では、下部ユニットの引出操作に対するロック機構165と、当該ロック機構165を制御するロック制御部65とが用いられている。すなわち、ロック制御部65は、5つのロック機構63、64、162、163、165を制御するようになっている。
また、本実施の形態による有価媒体処理装置100には、識別された紙葉類ないし硬貨の各集積部41〜44ないし各硬貨集積部141〜143への分類条件(分類パターン)を記憶しておく記憶部80がターミナル70内に設けられている。記憶部80に記憶された分類条件は、搬送分類機構30による紙葉類の搬送ないし分類を制御するための紙幣制御部36、および硬貨搬送分類機構130による硬貨の搬送ないし分類を制御するための硬貨制御部136に適時に読み出されるようになっている。
記憶部80は、各収納部53、54および各硬貨収納部152、153に対して設定される回収条件も記憶するようになっており、各収納部53、54および各硬貨収納部152、153への有価媒体処理装置100の外側からのアクセスの制限/許容を判別して制御するためにロック制御部65に適時に読み出されるようになっている。
さらに、記憶部80は、識別部20による紙葉類の識別のための詳細情報(例えば、識別処理に用いる辞書データ等)を記憶しており、識別部20に適時に読み出されるようになっている。
また、本実施の形態による有価媒体処理装置100には、入金処理時の取引データや、締め時/回収時等における集計データをプリントアウトするプリンタ装置95が設けられている。
さらに、本実施の形態による有価媒体処理装置100には、外部機器(管理コンピュータ)等と通信可能であり、識別情報や分類条件(分類パターン)を取得したり、入金結果等を送信可能なインターフェース部96も設けられている。
次に、印刷部75により商品券に対して行われる消し込みの印刷処理の詳細について以下に説明する。前述したように、本実施の形態では、印刷部75は例えばインクジェットプリンタから構成されており、様々な印刷パターンにより商品券の表裏両面に対して消し込みの印刷処理を行うことができるようになっている。より詳細には、記憶部80には、印刷部75による複数の印刷パターン情報を紙葉類の種類に対応して記憶するようになっている。具体的には、記憶部80には、印刷パターン情報として、印刷部75によって行われる消し込みの印刷内容および印刷位置の少なくとも一方のものが記憶されるようになっている。このような印刷パターン情報の詳細については後述する。また、紙幣制御部36は、識別部20による紙葉類の識別結果に基づいて、記憶部80に記憶された複数の印刷パターン情報のうち紙葉類の種類に対応する印刷パターン情報により紙葉類のうち商品券に消し込みの印刷処理を行うよう印刷部75を制御するようになっている。
ここで、紙幣制御部36は、識別部20による紙葉類の識別結果に基づいて、印刷部75により紙葉類に消し込みの印刷処理を行うか否かの制御を行うことができるようになっている。具体的には、識別部20により識別が行われた紙葉類が紙幣である場合には、当該紙幣に対して印刷部75による印刷処理は行われないようになっている。一方、識別部20により識別が行われた紙葉類が商品券である場合には、当該商品券に対して印刷部75により印刷処理が行われるようになっている。なお、識別部20により識別が行われた紙葉類が商品券である場合にも、記憶部80に記憶された印刷対象外条件(例えば、有効期限切れ券、もぎり券、受け付け対象外券等)に一致するときには、当該商品券に対して印刷部75による消し込みの印刷処理を行わないようになっている。一方、識別部20により識別が行われた紙葉類が商品券である場合において、記憶部80に記憶された印刷対象条件に一致するときには、記憶部80に記憶された複数の印刷パターン情報のうちこの商品券の種類に対応する印刷パターン情報により当該商品券に対して印刷部75により消し込みの印刷処理が行われる。具体的には、商品券の発行元によって印刷部75により商品券に印字される消し込み印の印字内容が異なるようになる(例えば、A社が発行する商品券には消し込み印として「×」印が印刷部75により印字され、B社が発行する商品券には消し込み印として「使用済」という文字が印刷部75により印字される)。
記憶部80に記憶される印刷パターン情報の詳細について図3を用いて説明する。図3は、印刷部75により商品券に印刷される消し込み印に係る印刷パターンの設定項目および印刷内容を示す図である。図3に示すように、印刷パターンの設定項目として、A:消し込み印の印字の有無、B:消し込み印の印字面、C:消し込み印の印字位置、D:消し込み印の印字文字の濃さ、E:消し込み印の印字方向、F:消し込み印の印字の色、G:消し込み印の印字の文言、H:消し込み印の印字文字のサイズ、I:消し込み印の印字文字のフォント、J:消し込み印の印字文字の飾り、があり、各々の設定項目に対して印刷内容が設定されるようになっている。このような印刷パターンは、紙葉類の各々の種類に対応して設定されるようになっている。例えば、A社が発行する商品券とB社が発行する商品券とで互いに異なる印刷パターン情報を設定することができる。また、記憶部80には、紙葉類の各々の種類に対応して、K:紙葉類の搬送収納先、L:有効期限切れ券の搬送収納先がそれぞれ記憶されるようになっている。
印刷パターンの設定項目における「A:消し込み印の印字の有無」について具体的に説明すると、紙幣に対しては「印字無し」が設定されるとともに、商品券に対しては「印字有り」が設定されるようになっている。なお、商品券における有効期限切れ券、もぎり券、受け付け対象外券については「印字無し」が設定されるようになっている。このように、紙幣制御部36は、識別部20により識別が行われた紙葉類が商品券である場合でも、予め記憶される印刷対象外条件(上述した有効期限切れ券、もぎり券、受け付け対象外券等)に一致するときには、当該紙葉類に印刷部75による消し込みの印刷処理を行わないようになっている。
また、図2に示すように、全体制御部73には月日情報取得部82が接続されている。月日情報取得部82はカレンダー機能を有しており、有価媒体処理装置100により有価媒体が処理される月日に関する情報を取得するようになっている。本実施の形態では、印刷パターンの設定項目として、月日情報取得部82により取得された月日に関する情報を印刷部75が商品券に印刷するか否かの設定が行われるようになっていてもよい。
ここで、記憶部80に記憶された複数の印刷パターン情報のうち紙葉類の種類に対応する印刷パターン情報によって印刷部75により商品券に印刷された消し込み印の様々な例を図4に示す。図4(a)に示す消し込み印に係る印刷パターン情報は、印字の文言が「回収済」であり、印字の色が黒色であり、印字文字のフォントがゴシック体であり、印字文字のサイズが中であり、消し込み印の印字方向が縦であり、消し込み印の位置が中央であり、印字文字の飾りが太字であり、印字文字の濃さが100%となっている。また、図4(b)に示す消し込み印に係る印刷パターン情報は、印字の文言が「済」であり、印字の色が赤色(図4の紙面では黒色となっているが実際は赤色)であり、印字文字のフォントが明朝体であり、印字文字のサイズが大であり、消し込み印の印字方向が縦であり、消し込み印の位置が左であり、印字文字の飾りが斜字であり、印字文字の濃さが75%となっている。
また、図4(c)に示す消し込み印に係る印刷パターン情報は、印字の文言が「済・済・済」であり、印字の色が黒色であり、印字文字のフォントがゴシック体であり、印字文字のサイズが小であり、消し込み印の印字方向が横であり、消し込み印の位置が中央であり、印字文字の飾りが下線であり、印字文字の濃さが25%となっている。なお、図4(c)に示す消し込み印に係る印刷パターン情報では、「済・済・済」という文言の他に、月日情報取得部82により取得された、有価媒体処理装置100により商品券の処理が行われる月日に係る情報も印刷部75により印刷されるようになっている。また、図4(d)に示す消し込み印に係る印刷パターン情報は、印字の文言が「△△デパート」であり、印字の色が黒色であり、印字文字のフォントがゴシック体であり、印字文字のサイズが小であり、消し込み印の印字方向が横であり、消し込み印の位置が右であり、印字文字の飾りが白抜きであり、印字文字の濃さが100%となっている。
また、図5も、印刷部75により商品券に印刷される消し込み印の例を示す図である。図5に示すような中央に様々な文字が印刷された商品券に対して消し込み印の印字を行う際に、インクローラにより消し込み印を印字するような従来の方法では印字位置が商品券の中央に固定されているときに消し込み印が見難くなってしまうおそれがあった。これに対し、本実施の形態による消し込みの印刷処理では印字位置を商品券の中央ではなく左右(図5に示す例では右側)に設定することができるため、商品券に元々印刷されている文字と消し込み印(具体的には、「回収済」という文字)とが重複することがなくなり、消し込み印をより確実に判別することができるようになる。
次に、上述した印刷パターン情報の設定方法について図7乃至図9を用いて説明する。図7は、有価媒体処理装置100が待機状態にあるときの表示・操作部72の表示画面である。図7に示すような表示・操作部72の表示画面には、メニューとして「商品券選別」「回収」「交換」「在高」「電子ジャーナル」「ユーザー設定」「オフ入金」「機器メンテナンス」の各選択肢が表示されている。このような表示・操作部72の表示画面において操作者がメニューの中から「ユーザー設定」を選択すると、「接続機器設定」「システム設定」「設定一覧印字」の各選択肢が表示・操作部72の表示画面に表示されるようになる。そして、「システム設定」を選択すると、表示・操作部72の表示画面が図7に示す画面から図8に示す画面に切り替わる。図8に示す表示・操作部72の表示画面において、「商品券消込印字濃度」を選択すると、消込印字濃度を「薄い」「標準」「濃い」の中から選択することができるようになる。
また、図9は、有価媒体処理装置100において初期設定を行うときの表示・操作部72の表示画面を示す図である。図9に示すような表示・操作部72の表示画面でも上述した印刷パターン情報の設定を行うことができるようになっている。例えば、「5.商品券消込文字」のメニューにおいて、消し込み印の印字の有無や印字文字の文字内容の設定を行うことができるようになっている。なお、図9に示すような表示・操作部72の表示画面では、消し込み印の文字内容を複数の候補の中から選択することができるようになっている。
次に、本実施の形態の有価媒体処理装置100による紙葉類の入金処理方法について図6に示すフローチャートを用いて説明する。
有価媒体処理装置100において操作者が表示・操作部72により入金処理開始の指令を入力した後に投入部10に紙葉類を投入すると(STEP1の「YES」)、投入部10から紙葉類が1枚ずつ有価媒体処理装置100の機体内に繰り出され(STEP2)、搬送分類機構30により搬送される紙葉類は識別部20により識別される(STEP3)。ここで、識別部20により識別された紙葉類が商品券である場合には、当該商品券の計数データ(種類別の入金枚数、合計金額等)が加算される(STEP5)。また、識別部20による商品券の識別結果に対応する印刷パターンの設定が印字有りの設定である場合には(STEP6の「YES」)、印刷部75により商品券に対して消し込みの印刷処理が行われる(STEP7)。この際に、記憶部80に記憶された複数の印刷パターン情報のうち識別部20により識別された商品券の種類に対応する印刷パターン情報により商品券に対して消し込みの印刷処理が行われる。また、印刷部75としてインクジェットプリンタ等のプリンタを用いることにより、毎秒3枚以上、具体的には例えば毎秒7枚程度の商品券に消し込みの印刷処理を行うことができるようになり、従来技術のようにインクローラにより消し込み印を紙葉類に印字する方法(消し込み速度は毎秒1枚)と比較して紙葉類に対する消し込み処理に要する時間を短縮することができるようになる。一方、識別部20により識別された商品券が有効期限切れ券、もぎり券、受け付け対象外券等であり印刷対象外条件に一致することにより、識別部20による商品券の識別結果に対応する印刷パターンの設定が印字無しの設定である場合には(STEP6の「NO」)、商品券に対して消し込みの印刷処理は行われない。また、印刷部75を通過した商品券は、記憶部80に記憶された搬送収納先に係る情報に基づいて、対応する集積部41〜44へ振り分けられる(STEP9)。
一方、識別部20により識別された紙葉類が紙幣である場合には、当該紙幣の計数データ(金種別の入金枚数、合計金額等)が加算される(STEP8)。なお、識別部20により識別された紙葉類の種類が紙幣であるときの印刷部75による印刷パターンの設定が印字無しの設定となっていることにより、紙幣に対して消し込みの印刷処理は行われない。また、識別部20により識別された紙幣は、記憶部80に記憶された搬送収納先に係る情報に基づいて、対応する集積部41〜44へ振り分けられる(STEP9)。また、識別部20により識別された紙葉類が正常な紙幣や商品券ではないリジェクト券である場合には、当該リジェクト券の計数データは加算されることなく、また、当該リジェクト券に対して消し込みの印刷処理が行われることなく、紙葉類リジェクト部としての集積部41に送られるようになる(STEP10)。
投入部10に紙葉類が残っている場合には(STEP11の「YES」)、図6のSTEP2〜STEP10に示す動作が繰り返し行われるようになる。一方、投入部10に投入された紙葉類が全て有価媒体処理装置100の機体内に繰り出された後(STEP11の「NO」)、操作者によって表示・操作部72により承認入力が行われると(STEP12の「YES」)、集積部43、44に一時保留されていた紙葉類が対応する収納部53、54に送り込まれて収納される(STEP13)。一方、操作者によって表示・操作部72により承認入力が行われず代わりに返却入力が行われると(STEP12の「NO」)、集積部43、44が有価媒体処理装置100の前方へ引き出し可能となり、これらの集積部43、44に一時保留されていた紙葉類を有価媒体処理装置100の前方から取り出し可能となる(STEP14)。このようにして、有価媒体処理装置100における一連の紙葉類の入金処理が完了する。
以上のような構成からなる本実施の形態の有価媒体処理装置100および有価媒体処理方法によれば、記憶部80は印刷部75による複数の印刷パターンを紙葉類(有価媒体)の種類に関連付けて記憶するようになっており、紙幣制御部36は、識別部20による紙葉類の識別結果に基づいて、記憶部80に記憶された複数の印刷パターン情報のうち紙葉類の種類に対応する印刷パターン情報により紙葉類に消し込みの印刷処理を行うよう印刷部75を制御するようになっている。このことにより、紙葉類(具体的には、商品券)の様々なデザインに応じて消し込み印を効果的に印字することができるとともに、従来技術のようにインクローラにより消し込み印を紙葉類に印字する方法と比較して紙葉類に対する消し込み処理に要する時間を短縮することができるようになる。
とりわけ、インクジェットプリンタ等のプリンタからなる印刷部75により紙葉類に消し込みの印刷処理を行うような有価媒体処理装置100では、紙幣および商品券を混合状態で投入部10に投入したときにも、毎秒3枚以上、具体的には例えば毎秒7枚の商品券に消し込みの印刷処理を行うことができるようになる。これに対し、従来技術のようにインクローラにより消し込み印を紙葉類に印字する方法では、紙幣および商品券を混合状態で投入部10に投入したときには、商品券に対してはインクローラを接触させるが紙幣に対してはインクローラを離間させる必要がありインクローラが頻繁に移動するようになるため、消し込み処理に時間がかかるとともにインクローラの駆動部の消耗が早くなるという問題がある。
また、本実施の形態の有価媒体処理装置100においては、上述したように、紙幣制御部36は、識別部20による紙葉類の識別結果に基づいて、印刷部75により紙葉類に消し込みの印刷処理を行うか否かの制御を行うことができるようになっている。具体的には、紙幣制御部36は、識別部20により識別が行われた紙葉類が紙幣である場合には、当該紙幣に印刷部75による印刷処理を行わないようになっている。また、紙幣制御部36は、識別部20により識別が行われた紙葉類が商品券である場合には、紙葉類の種類に関連付けて記憶される印刷パターン情報に基づいて、印刷部75により商品券に消し込みの印刷処理を行うようになっている。ここで、紙幣制御部36は、識別部20により識別が行われた商品券が商品券である場合でも、予め記憶される印刷対象外条件(例えば、有効期限切れ券、もぎり券、受け付け対象外券等)に一致するときには、当該紙葉類に印刷部75による消し込みの印刷処理を行わないようになっている。
また、本実施の形態の有価媒体処理装置100においては、上述したように、記憶部80には、印刷パターン情報として、印刷部75によって行われる消し込みの印刷内容および印刷位置のうち少なくとも一方のものが記憶されるようになっている。
また、本実施の形態の有価媒体処理装置100においては、上述したように、記憶部80には、紙葉類の種類と搬送分類機構30による紙葉類の搬送先との関係(図3の設定項目K参照)が紙葉類の種類毎に記憶されるようになっており、紙幣制御部36は、識別部20による紙葉類の識別結果に基づいて、識別部20により識別が行われた紙葉類を、記憶部80に記憶された紙葉類の種類に対応する搬送先に搬送するよう搬送分類機構30を制御するようになっている。
また、本実施の形態の有価媒体処理装置100においては、上述したように、有価媒体処理装置100により紙葉類が処理される月日に関する情報を取得する月日情報取得部82が設けられており、紙幣制御部36は、月日情報取得部82により取得された日付に関する情報(図4(c)参照)を紙葉類に印刷するよう印刷部75を制御するようになっていてもよい。
なお、本実施の形態による有価媒体処理装置100および有価媒体処理方法は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
例えば、紙幣制御部36ではなく全体制御部73が印刷部75の制御を行うことにより、識別部20による紙葉類の識別結果に基づいて、記憶部80に記憶された複数の印刷パターン情報のうち紙葉類の種類に対応する印刷パターン情報により紙葉類に消し込みの印刷処理を行うようになっていてもよい。
また、紙幣制御部36は、処理される紙幣や商品券等の紙葉類が持ち込まれたレジや店舗を特定する店舗等特定情報、紙葉類を受け付けた担当者を特定する受付担当者情報、あるいは紙葉類を有価媒体処理装置100で処理する担当者を特定する操作担当者情報の少なくとも一つを、紙葉類(具体的には、商品券)に印刷するよう印刷部75を制御するようになっていてもよい。なお、店舗等特定情報とは、レジや店舗の名前やレジID、店舗ID等のことをいう。また、受付担当者情報とは、レジで紙葉類を受け付けたレジ係の名前や担当者IDのことをいう。また、操作担当者情報とは、有価媒体処理装置100で紙葉類の入金処理を行った担当者の名前や担当者IDのことをいう。このような店舗等特定情報、受付担当者情報、操作担当者情報は、紙葉類の入金処理開始前に、操作者が保有するICカードをICカードリーダ71により読み取らせることにより取得されるようになっている。すなわち、ICカードリーダ71は、店舗等特定情報、受付担当者情報あるいは操作担当者情報の少なくとも一つを入力するための入力手段として機能するようになっている。
また、図6に示すフローチャートでは、識別部20により識別された紙葉類が正常な紙幣や商品券ではないリジェクト券である場合には、当該リジェクト券に対して印刷部75により消し込みの印刷処理が行われることなく、紙葉類リジェクト部としての集積部41に送られるようになっているが、このような態様に限定されることはない。変形例に係る有価媒体処理装置100では、識別部20により識別された紙葉類が正常な紙幣や商品券ではないリジェクト券である場合にも、当該リジェクト券に対して印刷部75により消し込みの印刷処理が行われるようになっていてもよい。この場合には、集積部41に送られた紙葉類が再び投入部10にセットされて識別部20により再識別が行われたときに、印刷部75により再び消し込みの印刷処理が行われることはない。
また、印刷部75はインクジェットプリンタ以外のプリンタから構成されていてもよい。例えば、印刷部75はレーザープリンタから構成されていてもよい。なお、印刷部75が紙葉類の片面に印刷する機能しか備えていない場合には、裏向きの商品券はリジェクトし、表裏を反転させて再投入することで、表(おもて)面に印字処理を施すことができる。
また、図1等に示す有価媒体処理装置100では紙葉類用の2つの収納部53、54と硬貨用の2つの硬貨収納部152、153とがそれぞれ設けられているが、これらの収納部の数を更に増やしてもよい。また、紙葉類スタッカ部としての第2の集積部42の数を2つ以上としてもよい。この場合、分類パターンが増えて、多岐にわたる分類条件を設定することができる。また、硬貨一時保留部としての硬貨集積部142、143や硬貨返却箱144、145、硬貨収納部152、153を金種毎に複数の領域に区分けしてもよい。例えば、硬貨集積部142、143や硬貨返却箱144、145、硬貨収納部152、153をそれぞれ、1円硬貨、5円硬貨、10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、500円硬貨の各々が収納される6つの領域に区分けしてもよい。
また、上述した有価媒体処理装置100は、紙幣、硬貨、商品券の入金処理を行う入金機として用いられる態様として説明したが、本発明はこのような態様に限定されることはない。本発明による有価媒体処理装置は、入金処理のみならず出金処理も行うことができる入出金機として用いられるものであってもよい。この場合には、有価媒体処理装置における紙幣や商品券等の紙葉類の処理を行う紙葉類処理部および硬貨の処理を行う硬貨処理部には、それぞれ紙幣や硬貨を受け入れて収納するとともに払出すことが可能な紙幣リサイクル部や硬貨リサイクル部が設置されるようになり、これらの紙幣リサイクル部や硬貨リサイクル部により、釣銭準備金としての紙幣や硬貨が有価媒体処理装置の機体外に投出されるようになる。また、このような有価媒体処理装置では、貨幣の両替処理も行うことができるようになっていてもよい。
また、本実施の形態の有価媒体処理装置100は、紙幣や商品券等の紙葉類の処理を行う紙葉類処理部および硬貨の処理を行う硬貨処理部を有するものとして説明したが、硬貨処理部の設置が省略され、有価媒体処理装置100が紙幣や商品券等の紙葉類のみの処理を行うようになっていてもよい。また、本実施の形態による有価媒体処理装置100が、紙幣のみの入金処理を行う紙幣入金装置や、商品券のみの入金処理を行う商品券入金装置として用いられるようになっていてもよい。
変形例に係る有価媒体処理装置における、硬貨の処理を行う硬貨処理部の構成について図10乃至図13を用いて説明する。図10は、変形例に係る有価媒体処理装置における硬貨処理部の硬貨搬送分類機構、硬貨一時保留部、硬貨返却箱、硬貨収納部等の構成を示す構成図であり、図11は、図10に示す硬貨処理部の硬貨搬送分類機構の上面図である。また、図12は、図10および図11に示す硬貨搬送分類機構における選別部材の構成の詳細を示す上面図であり、図13は、図10乃至図12に示す硬貨搬送分類機構の側面図である。なお、図12および図13において、硬貨搬送分類機構により搬送される硬貨を参照符号Cで示している。
図10乃至図13に示す硬貨処理部には、硬貨が投入される硬貨投入部210と、投入された硬貨の各々を識別する硬貨識別部220と、識別された硬貨を搬送しながら分類する硬貨搬送分類機構230と、硬貨識別部220によりリジェクト対象の硬貨であると識別された硬貨が送られる硬貨リジェクト部241と、分類された硬貨が一時的に集積される硬貨一時保留部としての硬貨集積部242と、硬貨を返却する硬貨返却箱244と、硬貨集積部242から送られた硬貨を収納する2つの硬貨収納部(硬貨カセット)252、253とがそれぞれ設けられている。
硬貨投入部210は硬貨ホッパとして構成されており、投入された硬貨を受け入れて1枚ずつ繰出するようになっている。
硬貨識別部220は磁気センサ等を有しており、真偽の区別の他、各硬貨の金種を識別するようになっている。
図11に示すように、硬貨搬送分類機構230には、硬貨を一層一列状態で搬送する循環ベルト231が設けられている。また、循環ベルト231には、硬貨を押動するピン231aが等間隔で複数設けられている(図13参照)。この循環ベルト231が図11における反時計回りの方向(すなわち、図11における矢印方向)に循環移動することにより、硬貨投入部210から繰り出された硬貨が各ピン231aにより図11における右方向に押動されるようになっている。
硬貨搬送分類機構230には、当該硬貨搬送分類機構230による硬貨の搬送方向(図10および図11における右向き方向)に沿って直列に配置された7つのソレノイド付き選別部材230a〜230gが設けられている。これらのソレノイド付き選別部材230a〜230gにより、硬貨を強制的に選別する強制選別機構が構成されている。ここで、各選別部材230a〜230fにより選別される硬貨の金種としてそれぞれ1円硬貨、5円硬貨、10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、500円硬貨が割り当てられている。また、選別部材230gは、硬貨識別部220によりリジェクト対象であると識別された硬貨を選別するものである。また、このような硬貨搬送分類機構230では、各選別部材230a〜230fにより選別する硬貨の金種を任意に設定できるようになっている。
また、図12および図13に示すように、硬貨搬送分類機構230による硬貨の搬送方向における選別部材230a〜230gの各々の上流側には、それぞれ、タイミングセンサ234および鋼球236が設けられている。タイミングセンサ234は発光素子および受光素子を有する光センサからなり、発光素子から発せられた光が硬貨により遮光されて受光素子に到達しなくなったときに硬貨が到達したことを検知するようになっている。また、鋼球236は図示しないバネ等の弾性部材により硬貨の搬送面232(図13参照)からわずかに上方に間隔をあけるよう吊り下げられており、循環ベルト231により搬送される硬貨はこの鋼球236により停止させられるようになっている。そして、図13(b)に示すように鋼球236により停止させられた硬貨は、循環ベルト231に設けられたピン231aにより押動されることにより、図13(c)に示すように鋼球236を持ち上げて当該鋼球236の下にもぐるようになる。このようにして、タイミングセンサ234により硬貨が検知される際にこの硬貨はピン231aにより確実に押動された状態となり、硬貨搬送分類機構230において搬送される硬貨の間隔が一定の大きさとなる。また、タイミングセンサ234により硬貨が到達したことが検知されると、各選別部材230a〜230gに割り当てられている硬貨の金種が硬貨識別部220により識別された硬貨の金種と一致する場合には各選別部材230a〜230gが開くことにより当該硬貨は選別されて下方に落下するようになる。
硬貨リジェクト部241は、常時外部からリジェクト対象の硬貨を取り出し可能となっている。
図10等に示すように、硬貨一時保留部としての硬貨集積部242は4つの領域に区分けされている。具体的には、硬貨集積部242には、10円硬貨を集積する10円硬貨集積領域242c、50円硬貨を集積する50円硬貨集積領域242d、100円硬貨を集積する100円硬貨集積領域242e、500円硬貨を集積する500円硬貨集積領域242fがそれぞれ設けられている。また、硬貨集積部242の各集積領域242c〜242fの上部および底部は開口しているとともに、各集積領域242c〜242fの底部の開口を塞ぐ底板242pが設けられている。ここで、硬貨集積部242の各集積領域242c〜242fには、硬貨識別部220により10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、500円硬貨であると識別されて硬貨搬送分類機構230の選別部材230c〜230fにより選別された硬貨が送られるようになっている。
また、硬貨返却箱244は6つの領域に区分けされている。具体的には、硬貨返却箱244には、1円硬貨を収納する1円硬貨収納領域244a、5円硬貨を収納する5円硬貨収納領域244b、10円硬貨を収納する10円硬貨収納領域244c、50円硬貨を収納する50円硬貨収納領域244d、100円硬貨を収納する100円硬貨収納領域244e、500円硬貨を収納する500円硬貨収納領域244fがそれぞれ設けられている。ここで、硬貨返却箱244の1円硬貨収納領域244aおよび5円硬貨収納領域244bには、硬貨識別部220により1円硬貨、5円硬貨であると識別されて硬貨搬送分類機構230の選別部材230a、230bにより選別された硬貨が直接送られるようになっている。一方、硬貨返却箱244の10円硬貨収納領域244c、50円硬貨収納領域244d、100円硬貨収納領域244e、500円硬貨収納領域244fには、硬貨集積部242が図10に示す位置から左方向に移動した後に底板242pが退避することにより各集積領域242c〜242fから10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、500円硬貨がそれぞれ送られるようになっている。なお、硬貨集積部242が図10に示す位置から左方向に移動するのは、硬貨集積部242に硬貨が一時保留された後、有価媒体処理装置の操作者による承認が行われずに返却指令が与えられたときである。
2つの硬貨収納部252、253は、それぞれ、硬貨を収納可能なカセットから構成されている。各硬貨カセットは、収納された硬貨の回収条件を個別に設定可能となっており、設定された回収条件が満たされた場合にのみ有価媒体処理装置の外側からアクセス可能となっている。ここで、硬貨集積部242に硬貨が一時保留された後、有価媒体処理装置の操作者による承認が行われると、硬貨集積部242が図10に示す位置から右方向に移動した後に底板242pが退避することにより、当該硬貨集積部242の各集積領域242c〜242fに一時保留された10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、500円硬貨が各硬貨収納部252、253に送られるようになる。
ここで、従来の硬貨処理部における硬貨搬送分類機構では、各金種の硬貨の大きさに対応する開口を硬貨の搬送路に沿って直列に設け、直径の小さい硬貨から順に選別していたが、このような従来の硬貨搬送分類機構では、6金種の硬貨(具体的には、1円硬貨、5円硬貨、10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、500円硬貨)に対応して6つの開口を設けなければならず、また、硬貨一時保留部も6金種の硬貨に対応して6つの領域に区分けする必要があった。また、搬送路には直径の小さい硬貨の順(具体的には、1円硬貨、50円硬貨、5円硬貨、100円硬貨、10円硬貨、500円硬貨の順)に6つの開口が設けられていたため、硬貨の分類パターンが固定されてしまうという問題があった。
これに対し、本実施の形態では、ソレノイド付き選別部材230a〜230gを有する硬貨搬送分類機構230を用いることにより、硬貨搬送分類機構230の各選別部材230a〜230gにより選別される硬貨の金種を任意で変更できるようになる。例えば金額の小さい1円硬貨、5円硬貨を常時硬貨返却箱244により返却するような運用を行う場合には硬貨搬送分類機構230により選別された1円硬貨、5円硬貨を硬貨返却箱244に直接送るようにすることにより硬貨一時保留部としての硬貨集積部242の小型化を図ることができるようになる。すなわち、硬貨一時保留部としての硬貨集積部242には、それぞれ10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、500円硬貨が集積される4つの集積領域242c〜242fを設けるだけでよく、従来技術のように硬貨一時保留部を6金種の硬貨に対応して6つの領域に区分けする必要がなくなる。このことにより、硬貨集積部242の小型化が図られるとともに当該硬貨集積部242の可動範囲も小さくなるため、硬貨集積部242の動作時間を短縮することにより硬貨処理部における入金処理に必要な時間を短縮することができ、また、硬貨処理部全体の省スペース化を図ることができるようになる。また、硬貨搬送分類機構230により選別される硬貨の金種を任意で変更できるため、硬貨返却箱244の各収納領域244a〜244fや硬貨収納部252、253に収納される硬貨の金種を自由に設定することができるようになり、操作者にとっての利便性を向上させることができるようになる。
図10乃至図13に示すような硬貨処理部による硬貨の分類パターンを図14の表に示す。図14に示す表では、硬貨返却箱244の各収納領域244a〜244fをそれぞれ硬貨返却箱A〜Fで示しており、また、硬貨収納部252、253をそれぞれ硬貨カセットA、Bで示している。図10乃至図13に示すような硬貨処理部では、図14に示すように硬貨搬送分類機構230により選別される硬貨の金種を任意で変更できるため、図14における分類パターンa〜fのような様々な硬貨の分類パターンを設定することができるようになる。
また、本発明による有価媒体処理装置として、店舗のフロント領域(レジが配置される領域)に設置される紙幣釣銭機を適用することができる。このような紙幣釣銭機の構成について図15および図16を用いて説明する。
店舗のフロント領域の精算所に設置されたレジユニットは、POSレジスタ300と、硬貨釣銭機301と、紙幣釣銭機302とを備えており、硬貨釣銭機301および紙幣釣銭機302は、それぞれ硬貨や紙幣の入出金処理を行うようになっている。なお、紙幣釣銭機302は、商品券等の紙幣以外の紙葉類の処理も行うことができるようになっている。
紙幣釣銭機302の構成について図16を用いて説明する。紙幣釣銭機302は、筐体310と、この筐体310内の略中央部に設けられた環状の周回搬送部303aとを備えている。また、紙幣受入部314、3つの紙幣収納部306、紙幣払出部316、出金リジェクト部304、および紙幣回収カセット307が、周回搬送部303aを外側から取り囲むように配置されている。
また、紙幣釣銭機302の筐体310の内部には、紙幣受入部314、各紙幣収納部306、紙幣払出部316、出金リジェクト部304、および紙幣回収カセット307と、周回搬送部303aとの間をそれぞれ接続する複数の接続搬送部303bが形成されている。また、周回搬送部303aには紙幣識別部311が設けられており、この紙幣識別部311は、当該紙幣識別部311を通過する紙幣の識別を行うようになっている。
また、周回搬送部303aと各接続搬送部303bとの間で紙幣の搬送経路を切り換える経路切換部(図示せず)が、周回搬送部303aに沿って配置されている。
図15および図16に示すように、筐体310の前面には、紙幣受入部314の紙幣受入口314aと、紙幣払出部316の紙幣取出口316aとがそれぞれ設けられている。また、紙幣回収カセット307は筐体310に対して着脱可能に設置されている。
紙幣受入部314は、投入された紙幣を検知すると駆動され、紙幣受入口314aに挿入された入金紙幣を一括で取り込んで、周回搬送部303a側へ1枚ずつ繰り出すようになっている。各紙幣収納部306は、紙幣識別部311の識別結果に基づいて紙幣を金種別に収納する。紙幣払出部316は、各紙幣収納部306から周回搬送部303aに繰り出された紙幣を紙幣取出口316aより筐体310の外部へ放出するようになっている。
出金リジェクト部304は、紙幣収納部306から繰り出された紙幣のうち、斜行等の搬送異常により紙幣識別部311で識別することができない紙幣を出金リジェクト紙幣として収納する。また、紙幣受入部314から機体内に取り込まれた紙幣のうち、汚損等により紙幣識別部311で識別することができない紙幣は入金リジェクト紙幣として紙幣払出部316に返却されるようになっている。
紙幣回収カセット307は筐体310の前面から引き出すことにより当該筐体310の外部に取り出すことができるようになっている。
また、図16に示すように、周回搬送部303aには、商品券を無効化するための消し込みの印刷処理を行う印刷部375が設けられている。印刷部375は例えばインクジェットプリンタから構成されており、様々な印刷パターンにより商品券に対して消し込みの印刷処理を行うことができるようになっている。
また、図15に示すレジユニットには、印刷部375による複数の印刷パターン情報を紙葉類の種類に関連付けて記憶する記憶部と、紙幣識別部311による紙葉類の識別結果に基づいて、記憶部に記憶された複数の印刷パターン情報のうち紙葉類の種類に対応する印刷パターン情報により紙葉類に消し込みの印刷処理を行うよう印刷部375を制御する制御部(図示せず)とがそれぞれ設けられている。これらの記憶部や制御部は紙幣釣銭機302に設けられていてもよく、あるいはPOSレジスタ300に設けられていてもよい。ここで、図15に示すレジユニットに設けられた制御部は、図1乃至図9に示す有価媒体処理装置100に設けられた紙幣制御部36等と同様の制御方法により印刷部375の制御を行うようになっている。このことにより、紙幣釣銭機302でも、紙葉類(具体的には、商品券)の様々なデザインに応じて消し込み印を効果的に印字することができるとともに、従来技術のようにインクローラにより消し込み印を紙葉類に印字する方法と比較して紙葉類に対する消し込み処理に要する時間を短縮することができるようになる。
また、上述した有価媒体処理装置では、紙葉類における商品券に対して消し込みの印刷処理が行われるようになっているが、本発明はこのような態様に限定されることはない。本発明に係る有価媒体処理装置および有価媒体処理方法において印刷処理が行われる有価媒体は、商品券以外のもの、具体的には例えば小切手等であってもよい。