JP6313921B2 - 抵抗スポット溶接方法 - Google Patents

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Description

本発明は、重ね抵抗溶接法の一種である抵抗スポット溶接方法に関し、特に、引張強さTSが590MPa以上である高強度鋼板を含む板組を、短い時間で高い強度を有する継手に形成する抵抗スポット溶接方法に関するものである。
近年、自動車車体の安全性向上と、COの排出削減を目的とした車体重量の軽減の両立を達成するため、自動車用鋼板の高強度化と薄肉化が進められている。自動車の車体の組み立てには、抵抗スポット溶接が広く用いられている。この抵抗スポット溶接は、図1に示すように、重ね合わせた2枚以上の鋼板(図1では、下側の鋼板1と上側の鋼板2の2枚)の板組3を、上下一対の電極チップ(下側の電極チップ4と上側の電極チップ5)で挟持し、加圧、通電することで、鋼板を発熱させて溶融し、必要サイズの大きさのナゲット6を形成して、継手を形成する溶接方法である。
上記抵抗スポットで得られた溶接継手の品質は、要求通りのナゲット径や溶け込みが得られているか否か、目標とする剪断引張強さ(溶接継手を剪断方向に引張試験をしたときの強さ、「TSS」ともいう)や十字引張強さ(十字型に溶接した継手を剥離方向に引張試験をしたときの強さ、「CTS」ともいう)、疲労強度などが得られているか否かによって評価され、特に、剪断引張強度や十字引張強度を代表とする静的強度は、溶接継手の品質を示す指標として重要視されている。
ところで、スポット溶接部の引張剪断強さは、鋼板の引張強さの増加とともに増加する傾向にあるが、十字引張強さは、鋼板の引張強度の増加にかかわらずほとんど増加せず、逆に減少する。その原因は、高強度鋼板は、その目標強度を得るために多量の合金元素を含有しているため、下記式などで表される炭素当量Ceqが大きくならざるを得ないことに加えて、抵抗スポット溶接では、急熱急冷を受けるため、溶接部および熱影響部(HAZ)の硬さが上昇し、靭性が低下するためと考えられている。
Ceq=C+1/24×Si+1/6×Mn
(ここで、上記各元素記号は、それぞれの元素の含有量(mass%)を示す。)
高強度鋼板を使用する際、溶接継手の強度を確保するためには、溶接方法上の観点からは、打点数の増加やナゲット径の拡大が考えられる。しかし、打点数の増加は、溶接スペースが必要であったり、作業時間が増加し、生産性を低下させたりする。また、ナゲット径を拡大するには、電極を大きくしたり、溶接金属の飛散(チリ)を防ぐために加圧力を増加させたりしなければならないため、装置面からの制約を受ける他、熱影響部が拡大するため、母材の引張強さが焼戻しによって低下するという欠点もある。
そこで、打点数やナゲット径を従来と同じあるいはそれ以下の条件とした場合でも強度を確保する方法として、従来から、ナゲットを形成する通電(本通電)の後に、さらに通電を行う後熱通電方法が検討されている。この後熱通電は、大きく2つに分類され、溶接部を一旦冷却し、再加熱するマルテンサイトテンパー方式と、溶接部の冷却途中で再通電するオーステンパー方式とがある。このうち、オーステンパー方式は、溶接材料の恒温変態曲線を予め知る必要があり、また、後熱通電処理に長時間を要することもあるため、安定した効果を得ることが難しい。そのため、薄鋼板の分野では、マルテンサイトテンパー方式が主流となっている。
なお、マルテンサイトテンパー方式の原理は、溶接部を凝固、変態させた後、再加熱し、ナゲットおよびHAZ部分を軟化させてやることによって、ナゲットやHAZの靭性向上や溶接部近傍の応力集中緩和をはかり、溶接継手の強度向上を実現するものである。この技術としては、例えば、特許文献1には、テンパー通電電流Iと溶接通電電流Iの比の2乗(I/Iおよびテンパー通電時間Tと溶接通電時間Tの比(T/T)の積が0.25〜0.82の範囲となる条件でテンパー通電することで、溶接継手の強度を改善する技術が開示されている。
また、非特許文献1には、1.05mmの鋼板に対してテンパー通電(後熱通電)することで溶接継手の静的強度が向上するが、その効果を得るためには、保持時間を0.4秒、テンパー通電時間を0.5秒、合計で0.9秒の後熱通電が必要であるとしている。
また、近年では、非特許文献2に見られるように、一定の冷却の後、極短時間の通電を行ってテンパー通電と同じ効果を得るSpike−Temperingという方法も提案されている。この文献によれば、テンパー通電に必要な時間は40サイクル(0.8秒)程度であるとされている。
また、後熱通電は、上記のような溶接継手の強度確保のためだけではなく、溶け込み量の確保などにも用いられる。特に、薄い鋼板とそれよりも厚い2枚の鋼板とを組み合わせた板組においては、薄板と厚板との間に溶融部が形成され難いという問題がある。そこで、このような3枚以上を重ねた板組に対する技術として、特許文献2には、本通電後に休止した後、さらに、通電と休止を繰り返して行うパルセーション通電を行うことで、十分な大きさのナゲット径を得る技術が開示されている。
特開昭58−003792号公報 特開2008−093726号公報
1st International Conference Super−high Strength Steels Proceedings,G.Shiら,Techniques for Improving the Weldability of Trip Steel Using Resistance Spot Welding,2005年 AISI/DOE Technology Roadmap Program,DE−FC36−97ID13554,B.Girvinら,Development of Appropriate Spot Welding Practice for Advanced High−Strength Steels,2004年
しかしながら、上記特許文献1および非特許文献1に記載されているような通電方法は、本通電の電流値以下で後熱通電するため、抵抗発熱に利用可能な電流範囲はごく狭い範囲に限られ、僅かな通電電流や通電時間の変化で効果が大きく変化する。そのため、様々な外乱要因が存在する溶接現場においては、安定的に上記技術を実施することが難しいという問題がある。加えて、本通電以下の低電流で発熱させるためには、十分な通電時間が必要であり、(例えば、非特許文献1の技術では、少なくとも0.5秒が必要)、本通電の保持時間と合わせた総溶接時間(最初の本通電が開始してから、最後の後熱通電が完了するまでの時間)が増加するという問題もある。
また、非特許文献1や非特許文献2に開示された技術におけるマルテンサイトテンパー方式の通電方法は、十分な冷却時間の後に通電して焼き戻しを行っている。そのため、これらの技術では、少なくとも20サイクル(0.4秒)の保持時間が必要であり、より安定的な効果を得たい場合や、板厚を増す場合には、20サイクル(0.4秒)より長い保持時間が必要とされ、総溶接時間が長くなるという問題がある。
さらに、特許文献2の技術は、3枚以上重ねた板組に対して溶融部を確保する方法、すなわち、本通電で形成されたナゲットを後熱通電によってさらに拡大することを目的としている。これは、従来、ナゲット径と溶接継手の強度との間には密接な関係があることから、後熱通電の有無に拘わらず、最終的なナゲット径に対して溶接継手の強度を整理し、評価してきたからである。しかし、溶融状態から従来と同様に冷却したのでは、ナゲットやHAZを急冷するため、溶接継手の強度を向上させることはできない。また、前述したように、この技術では、特定のナゲット径で強度を向上させることにはならない。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高強度鋼板を含む板組の抵抗スポット溶接において、より短い溶接時間で、より高い強度の溶接継手を得ることができる抵抗スポット溶接方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題を解決するため、高張力鋼板を含む板組の抵抗スポット溶接継手における十字引張強さの向上方法について鋭意検討した。その結果、本通電でナゲットを形成した後、所定の時間保持し、さらに、5サイクル以下の通電と5サイクル以下の休止を2回以上繰り返して、ナゲットおよびHAZを焼き戻しすることにより、十字引張強さを大きく向上させることができることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、引張強さが590MPa以上の鋼板を少なくとも1枚含む、2枚以上の鋼板を重ね合せた板組を、一対の溶接電極で挟持し、加圧しながら通電して溶接する抵抗スポット溶接方法であって、通電により所定の径のナゲットを形成する本通電と、200〜360msの保持時間後、100ms以下の通電と100ms以下の休止を繰返し2回以上行う後熱通電の2つの工程からなることを特徴とする抵抗スポット溶接方法である。
また、本発明の抵抗スポット溶接方法は、上記後熱通電における電流値を、本通電の電流値の1〜3倍とすることを特徴とする。
本発明によれば、少なくとも1枚の高張力鋼板を含む2枚以上の板組に対して、本通電でナゲットを形成した後、適正な条件で後熱通電する抵抗スポット溶接を施すことにより、従来の抵抗スポット溶接よりも短い時間で、十字引張強さに優れる溶接継手を得ることができるので、産業上格段の効果を奏する。
2枚の板組を抵抗スポット溶接する方法を説明する図である。 後熱通電の電流値が溶接部の温度履歴に及ぼす影響を示す図である。 本発明の溶接方法における通電パターンの一例を示す模式図である。 本通電後の保持時間に及ぼす板組の総厚の影響を示すグラフである。 実施例に用いたDR型電極を説明する図である。
本発明の技術思想について説明する。
一般に、マルテンサイトの焼戻しによる硬さの変化は、炭化物の析出やマルテンサイト組織の回復や再結晶などによって起こるが、温度と時間によって大きく影響されることが知られており、例えば、HollomonとJaffeが提案した焼戻しパラメータ(「レスリー鉄鋼材料学」(丸善))によれば、焼戻し後のマルテンサイト相の硬さHは、下記式;
H=f[T(C+logt)]
(ここで、C:材料などから決められる定数、T:焼戻し温度(K)、t:焼戻し時間(hr)を示す。)
で表されるとされている。
上記式からわかるように、焼戻し効果に及ぼす温度と時間の関係は、おおよそ反比例の関係がある。したがって、短時間で焼戻しの効果を得ようとする場合には、高温で焼戻しを行う必要があることになる。
しかしながら、過度の高温に加熱した場合には、ナゲットやHAZの組織がオーステナイトに戻るが、その後の急冷で再びマルテンサイトに変態するため、焼戻し後の硬さに大きな変化がない。さらに、抵抗スポット溶接では、板組の中央部に熱エネルギーが急速に発生するため、中央部とその周囲との温度差が大きく、広い範囲で焼き戻しの効果を得ようとする場合には、十分な後熱通電時間を確保して溶接継手部を加熱してやらなければならない。そのため、従来のマルテンサイトテンパー方式では、ナゲットやHAZを十分に加熱するために、後熱通電を長時間行う必要がある。例えば、特許文献1では、テンパー通電として30サイクルの通電を行っており、非特許文献1でも、十分な軟化を得るためには25サイクルの通電が必要であるという結果が示されている。また、非特許文献2は、通電時間こそ短いものの、十分な冷却を確保してチリの発生を抑制するために、40サイクル程度の冷却時間を設けている。
従来のテンパー通電条件において、上記の通電時間と同時に問題となるのは、後熱通電条件、特に利用可能な電流範囲が狭いということである。すなわち、電流値が高過ぎる場合には、高温まで加熱されるものの、その後の急冷で硬化し、一方、電流値が低い場合は焼き戻しの効果が得られないという問題である。この現象について、シミュレーションした結果の一例を図2に示す。この図は、C:0.13mass%、Si:1.4mass%、Mn:2.2mass%を含有する板厚:1.6mmの鋼板を2枚重ねた板組を、加圧力:3.5kNを負荷した状態で、6kAで14サイクルの本通電によりナゲットを形成し、50サイクルの時間保持して冷却した後、下記A〜Cの3条件で後熱通電を施したときの、ナゲットとHAZの境界かつ板組の中央付近の節点(図1中のP点)における温度履歴を50Hzの電源を仮定してシミュレーションしたものである。なお、図に示した20msは1サイクルに相当する(以下、図4も同様)。

条件A:本通電のみ(後熱通電なし)
条件B:5.4kAで25サイクルの後熱通電
条件C:3.6kAで25サイクルの後熱通電
図2(a)は、本通電のみの条件Aにおける温度履歴を、図2(b)は、本通電後、条件Bで後熱通電したときの温度履歴を、および、図2(c)は、本通電後、条件Cで後熱通電したときの温度履歴を示したものである。これらの図から、電流値が5.4kAの後熱通電では、温度が急速に上昇し、かつ、最高温度も非常に高い温度となるのに対して、電流値が3.6kAでは、温度の上昇が遅く、最高温度も低い、すなわち、ナゲットやHAZの焼戻しを行うには、電流値が5.4kAでは高過ぎ、一方、3.6kAでは低過ぎることがわかる。
発明者らは、本通電の6kAのときのような急速加熱を有効に活用しつつも、最高温度が上がりすぎない後熱通電方法について検討した。
前述したように、3.6kAで連続して通電する後熱通電の場合には、発熱部の温度の上昇が緩やかであるため、発熱部とその周囲との温度差は大きいままと考えられるが、5.4kAを連続して通電した場合にも、発熱部の温度は高温になるものの、周囲の温度はまだ低いままであると考えられる。その理由は、発熱部とその周囲の温度差を縮めるためには、発生した熱が周囲の低温域に伝わる時間が必要であるからである。
そこで、発明者らは、従来のような一定電流値での後熱通電方式に代えて、通電と休止を繰り返す通電方式で後熱通電する、すなわち、短時間の通電と短時間の休止を繰り返してやることで、上記問題点を解消できるのでは、と考えた。
そこで、上記シミュレーションに加えて、下記条件Dで後熱通電を行ったときの温度履歴をシミュレーションし、その結果を、図2(d)として示した。

条件D:(8.4kAで3サイクルの通電+8サイクル休止)を3回繰り返す後熱通電
図2(d)から、条件Dで後熱通電することで、急速な加熱を達成し、かつ、最高温度が高温となることを抑制しつつも、焼戻しに適した温度に長時間に亘って保持することができること、すなわち、短時間の通電と短時間の休止を繰り返して行うことで、発熱部の熱を周囲の低温部にも伝える時間を確保することができ、発熱部と周囲との温度差が縮めることができるので、発熱部の過度の温度上昇を抑制しつつ十分な焼戻し効果が得られることがわかる。
本発明は、上記の検討結果に基いてなされたものである。
次に、本発明の抵抗スポット溶接方法について具体的に説明する。
本発明の抵抗スポット溶接方法は、引張強さが590MPa以上の鋼板を少なくとも1枚含む、2枚以上の鋼板を重ね合せた板組を一対の溶接電極で挟持し、加圧しながら通電して溶接する抵抗スポット溶接方法である。
ここで、本発明の抵抗スポット溶接方法における板組が、引張強さが590MPa以上の鋼板を少なくとも1枚含むことが必要な理由は、引張強度が590MPa未満の鋼板のみで構成される板組では、通常の抵抗スポット溶接で、十分な溶接継手の強度が得られるからである。したがって、本発明は、引張強さが590MPa以上の高強度鋼板を少なくとも1枚含む板組に対して適用するのが望ましく、特に引張強さが980MPa以上の高強度鋼板を含む板組において著しい効果を得ることができる
また、本発明の抵抗スポット溶接方法に使用可能な溶接装置は、図1に示したように、上下一対の電極チップを備え、一対の電極チップで、溶接する部分を挟み、加圧、通電でき、溶接中に加圧力、溶接電流をそれぞれ任意に制御可能な加圧力制御装置および溶接電流制御装置を有していれば、加圧機構(エアシリンダやサーボモータ等)や電流制御機構(交流や直流等)、形式(定置式、ロボットガン等)等はとくに限定されない。
また、本発明の抵抗スポット溶接方法は、通電により所定の径のナゲットを形成する本通電と、所定の保持時間後、短時間の通電と短時間の休止を繰返し2回以上行う後熱通電の2つの工程からなるものであり、図3は、本発明の溶接条件(通電パターン)の一例を模式図として示したものである。
最初の、本通電は、加圧力Pを負荷した状態で、通電電流Iaと通電時間Taを所定の大きさのナゲット径が得られる値に設定して本通電し、ナゲットを形成する工程である。この本通電の上記設定条件は、通常公知の条件で行えばよく、特に制限はない。
ただし、ナゲット径を大きくするためには、大電流を流す必要があるが、過度に電流を高くすると、熱影響部(HAZ)の拡大およびそれに伴う溶接部強度の低下を招く場合がある。この問題を回避するためには、板組を構成する鋼板の中で、最も板厚が薄い鋼板の板厚をt(mm)とした場合、ナゲット径dが、
ナゲット径d(mm)=3×√t〜6×√t
の範囲となるよう本通電の電流値Iaを設定するのが好ましい。なお、溶接施工上、ナゲットを形成する本通電が多段で制御されていたとしても、ナゲット形成に対して中心的な役割を担う通電を本通電の電流値をIaとすればよい。
上記本通電の後は、溶接で溶融した部分を冷却し凝固させるとともに、溶接部で発生した熱を周囲に拡散させて温度差を縮めるための時間を確保するため、加圧状態のままで所定の保持時間Thを設ける必要がある。
ここで、上記保持時間Thは10〜30サイクルの範囲とする必要がある。その理由は、本発明の溶接方法における後熱通電は、マルテンサイトを焼き戻す処理であることから、本通電後の保持時間において、少なくともマルテンサイト変態が開始し、かつ、ある程度のマルテンサイトが生成していることが必要である。そこで、C:0.13mass%、Si:1.4mass%、Mn:2.2mass%を含有する鋼板を2枚重ねた板組が本通電でナゲット形成した後、マルテンサイト変態開始温度までの冷却時間と、ある程度のマルテンサイト変態が進行する100℃までの冷却時間を計算したところ、図4に示したように、200〜600msの範囲、すなわち、10〜30サイクルの範囲にあるからである。保持時間Thが長すぎると、溶接継手全体が過度に冷却されて、後熱通電で再加熱することが難しくなる。なお、図4から、板組の総厚が5mm程度までなら、保持時間Thは20サイクル以下(400ms以下)とするのが望ましい。
記の10〜30サイクルの保持時間を経過後、溶接継手の十字引張強さを高めるため、ナゲットおよびHAZを焼き戻す後熱通電を施す。この後熱通電は、5サイクル以下の通電時間Tbと5サイクル以下の休止時間Tcを2回以上繰り返して行う必要がある。上記各時間が5サイクル以上となると、加熱温度が上がり過ぎたり、総溶接時間の延長をもたらしたりするからである。後熱通電は2回以上繰り返すことが必要であるが、繰り返し回数を多くし過ぎても、その効果が飽和したり、総溶接時間の延長につながったりすることから、上限は6回程度とするのが好ましい。なお、繰り返し回数の決定に当っては、板組の総厚を考慮するのが望ましく、総厚が厚くなるほど溶接後の冷却が遅くなるので、繰り返し回数を少なくするのが好ましい。
また、後熱通電における電流Ibは、溶接部を加熱し過ぎず、かつ、焼き戻し効果が得られる範囲とすることが必要であり、そのためには上記電流値Ibは、本通電の電流値Iaの1〜3倍の範囲に設定するのが望ましい。後熱通電の電流値Ibが本電流値Iaに対して1倍未満では、急速加熱して焼戻しに必要な温度まで上昇させることができず、一方、3倍を超えると、加熱温度が急速となって適正な焼戻温度に制御できなくなり、却って十字引張強さを低下させるからである。
なお、後熱通電を繰り返して行う際の電流値Ib、通電時間Tbおよび休止時間Tcの決定に当っては、鋼板の固有抵抗は温度の低下に伴い減少することや、板組の総厚、電極先端の形状、本通電後の保持時間Thなどを考慮して設定してやる必要がある。
また、前述した本発明の技術思想から、本発明の効果を得るためには、後熱通電における電流値Ib、通電時間Tbおよび休止時間Tcは必ずしも同じ条件で繰り返す必要がない。例えば、1回目の通電で十分な加熱を得るために、1回目の通電電流値Ibを高めに設定し、2回目以降は温度が上がりすぎないようにそれよりも低めにすることや、1回目の休止時間Tcを短くしたり、通電時間Tbを長くし、2回目の休止時間Tcを長くしたり、後熱通電時間Tbを短くしたりしてもよく、後熱通電の電流値Ib、通電時間Tb、休止時間Tcを個々に変更することは、本発明の趣旨から外れるものではない。
C:0.125〜0.135mass%、Si:1.3〜1.5mass%、Mn:2.1〜2.3mass%、P:0.005〜0.02mass%、S:0.0001〜0.002mass%%を含有する板厚:1.6mmの1180MPa級二相組織の高強度鋼板を、図1に示したように、2枚重ねた板組について、Cタイプの溶接ガンを有するサーボモータ加圧式で単相交流(50Hz)の抵抗溶接機を用いて抵抗スポット溶接し、溶接継手を作製した後、その溶接継手の十字引張試験をJIS Z3137に準拠して行った。
上記抵抗スポット溶接は、上下一対の電極チップには、図5に示すように、先端の曲率半径R:40mm、先端径:6mmのアルミナ分散銅製DR型電極を用い、本通電を、加圧力Pa:3.5kN、通電電流Ia:6kA、通電時間Ta:14サイクルの一定条件で行い、その後の休止保持時間Thおよび後熱通電条件(後熱通電電流Ib、後熱通電時間Tb、後熱通電間の休止時間Icおよび後熱通電の繰り返し数)は、表1に示した条件で行った。なお、通電終了後ガンが開き、加圧力が0になるまでのホールドタイムは1サイクルに設定し、スクイズ時間およびスロープ時間については特に設定しなかった。
なお、表1には、本通電のみで、後熱通電を行わない例を比較例1、および、一般的なテンパー通電(6kA×25サイクル)を行った例を、比較例2として示した。
Figure 0006313921
表1に、溶接条件と共に、十字引張試験の結果を示した。なお、溶接時間の評価は、本通電が終了してから最後の後熱通電が終了するまでの総後熱時間が0.7秒未満である場合を○、0.7秒以上1秒未満である場合を△、1秒以上である場合を×とした。また、溶接継手の十字引張強さCTSの評価は、後熱通電を行わない比較例1の十字引張強さに対する強度上昇量が1kN以上である場合を〇、上昇量が0〜1kN未満である場合を△、強度が下回る場合を×とした。
表1から、本発明の条件を満たす発明例および参考例は、比較例(1)に比べて、十字引張強さがすべて1kN以上上昇している。また、総後熱時間についても、従来のテンパー通電を行う比較例2は1秒を超えているのに対して、発明例および参考例では、保持時間や繰返し通電回数を多くとったものは長くなる傾向があるものの、全て1秒未満に短縮されていることがわかる。
1、2:鋼板
3:板組
4、5:電極
6:ナゲット
d:ナゲット径
Ia:主通電の通電電流
Ta;主通電の通電時間
Th:保持時間
Ib:後熱通電の通電電流
Tb:後熱通電の通電時間
Tc:後熱通電の休止時間
N:後熱通電の繰り返し数
P:節点

Claims (2)

  1. 引張強さが590MPa以上の鋼板を少なくとも1枚含む、2枚以上の鋼板を重ね合せた板組を、一対の溶接電極で挟持し、加圧しながら通電して溶接する抵抗スポット溶接方法であって、
    通電により所定の径のナゲットを形成する本通電と、
    200〜360msの保持時間後、100ms以下の通電と100ms以下の休止を繰返し2回以上行う後熱通電の2つの工程からなることを特徴とする抵抗スポット溶接方法。
  2. 上記後熱通電における電流値を、本通電の電流値の1〜3倍とすることを特徴とする請求項1に記載の抵抗スポット溶接方法。
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