以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1に、本実施形態における車両用空調装置1の全体構成を示し、図2に、この車両用空調装置1の電気制御部の構成を示す。本実施形態では、この車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用している。
まず、本実施形態のハイブリッド車両について説明する。本実施形態のハイブリッド車両は、車両停止時に外部電源(商用電源)から供給された電力を図1のバッテリ81に充電することのできる、いわゆるプラグインハイブリッド車両として構成されている。このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停止時に外部電源からバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量が予め定められた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する(以下、この運転モードをEV運転モードという)。
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量が走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する(以下、この運転モードをHV運転モードという)。このように、EV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。
また、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、図1の発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。車両用空調装置1は、図1に示す室内空調ユニット10と、図2に示す空調制御装置50とを備えている。
図1に示すように、室内空調ユニット10は、空調ケース11、送風機12、蒸発器13、ヒータコア14、およびPTCヒータ15等を備え、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。そして、室内空調ユニット10は、その外殻を形成する空調ケース11内に送風機12、蒸発器13、ヒータコア14、PTCヒータ15等を収容したものである。
空調ケース11は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。空調ケース11内の送風空気流れの最上流側には、内気(すなわち、車室内空気)と外気(すなわち、車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱20が配置されている。
より具体的には、内外気切替箱20には、空調ケース11内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。
したがって、内外気切替ドア23は、空調ケース11内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。
より具体的には、内外気切替ドア23は、内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
ここで、吸込口モードとしては、例えば、内気モード、外気モード、内外気混入モードがある。内気モードは、内外気切替ドア23によって内気導入口21を全開とするとともに外気導入口22を全閉として、内気および外気のうち内気を空調ケース11内へ導入するモードである。つまり、内気モードは、外気導入率(%)を零%とするように内外気切替ドア23を制御する吸込口モードである。
外気導入率(%)は、内気導入口21および外気導入口22から空調ケース11に導入される空気量のうち、外気が占める比率を示す百分率である。外気モードは、内気および外気のうち主に外気を空調ケース11内へ導入するモードである。本実施形態の外気モードは、内外気切替ドア23によって内気導入口21を全閉とするとともに外気導入口22を全開として、内気および外気のうち外気を空調ケース11内へ導入するモードである。つまり、外気モードは、外気導入率(%)を100%とするように内外気切替ドア23を制御する吸込口モードである。
内外気混入モードは、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を調整することにより、内気および外気を共に導入しつつ内気と外気との導入比率(すなわち、外気導入率(%))を調整するモードである。例えば、外気導入率(%)を50%とする吸込口モードを半内気モードという。
このため、空調ケース11は、内気導入口21、および外気導入口22のうち少なくとも一方の導入口から導入した空気を吹出開口部24、25、26に向けて吹き出す空気流通を構成することになる。
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機(ブロワ)12が配置されている。この送風機12は、ブロワモータ121と遠心多翼ファン(シロッコファン)122とを備え、遠心多翼ファン122をブロワモータ121にて駆動する電動の送風装置である。本実施形態のブロワモータ121としては、直流モータが用いられている。送風機12は、空調ケース11に形成された吹出開口部24〜26から、温度調整された空調空気を吹き出させる。送風機12は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
送風機12の空気流れ下流側には、蒸発器13が配置されている。蒸発器13は、圧縮機(コンプレッサ)31、凝縮器32、気液分離器33、および膨張弁34等とともに、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置30を構成している。
車両用空調装置1は、圧縮機31、凝縮器32、気液分離器33、および膨張弁34等も備えている。
圧縮機31は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル装置30において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構31aを電動モータ31bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ31bは、インバータ61(図2参照)から出力される交流電流によって、その作動(回転数)が制御される三相交流同期型のモータである。
ここで、図2の空調制御装置50は、圧縮機31の目標回転数Nctを示す制御信号をインバータ61へ出力し、インバータ61は、その制御信号に応じた周波数の交流電圧を電動モータ31bに出力する。これにより、電動モータ31bの回転数の制御が実施される。そして、この回転数の制御によって、圧縮機31から吐出される冷媒量が変更される。その一方で、インバータ61は、圧縮機31の消費電力Wcpを示す信号を空調制御装置50へ出力する。
図1の凝縮器32は、エンジンルーム内に配置されて、圧縮機31から吐出される高温高圧冷媒と、室外送風機としての送風ファン35から送風された車室外空気(外気)との間で熱交換させることにより、高圧冷媒を冷却・凝縮させるものである。送風ファン35は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
気液分離器33は、凝縮器32によって冷却・凝縮される冷媒を気相冷媒と液相冷媒に分離して液相冷媒を膨張弁34に供給する。膨張弁34は、気液分離器33から供給される液相冷媒を減圧膨張する。
蒸発器13は、膨張弁34によって減圧膨張された冷媒を蒸発させ、その冷媒と送風空気との間で熱交換させることにより送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
また、図1の空調ケース11内において、蒸発器13の空気流れ下流側には、蒸発器13を通過した空気を流す加熱用冷風通路16、冷風バイパス通路17といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17から流出した空気を混合させる混合空間18が形成されている。
加熱用冷風通路16には、蒸発器13を通過した送風空気、すなわち蒸発器13で冷却された送風空気を加熱する加熱装置としてのヒータコア14およびPTCヒータ15が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。
ヒータコア14は、車両走行用駆動力を出力するエンジンEGの冷却水(温水)と蒸発器13を通過した空気(冷風)との間で熱交換させて、蒸発器13を通した空気を加熱する加熱用熱交換器である。
具体的には、ヒータコア14とエンジンEGとの間に冷却水流路41が設けられており、ヒータコア14とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための電動ウォータポンプ42が設置されている。電動ウォータポンプ42は、空調制御装置50から出力される制御信号によって回転数(すなわち、冷却水循環量)、および運転/停止が制御される電動式の水ポンプである。
また、PTCヒータ15は、PTC素子(正特性サーミスタ素子)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア14を通過した空気を加熱する補助暖房手段としての電気ヒータである。本実施形態のPTCヒータ15は、複数のPTCヒータから構成されている。具体的には、第1PTCヒータ15a、第2PTCヒータ15b、および第3PTCヒータ15cから構成されている。空調制御装置50は、スイッチ切替え等により、通電するPTCヒータ15の本数を変化させ、それによって複数のPTCヒータ15全体としての加熱能力が制御される。
上述したように蒸発器13は空調ケース11内を流れる送風空気を冷却する一方で、ヒータコア14およびPTCヒータ15はその送風空気を加熱するので、蒸発器13、ヒータコア14、およびPTCヒータ15は全体として、吹出開口部24〜26から吹き出される空気を調温する温度調節機構として機能する。そして、この温度調節機構によって調温された空調空気は吹出開口部24〜26から車室内へ吹き出される。
図1中の冷風バイパス通路17は、蒸発器13を通過した空気を、ヒータコア14およびPTCヒータ15を通過させることなく、混合空間18に導くための空気通路である。したがって、混合空間18にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路16を通過する空気および冷風バイパス通路17を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、蒸発器13の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17の入口側に、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア19を配置している。エアミックスドア19は、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。エアミックスドア19は、混合空間18内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。
さらに、空調ケース11の送風空気流れ最下流部には、混合空間18から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出開口部24〜26が配置されている。この吹出開口部24〜26としては、具体的には、車室内の乗員の上半身に向けて空調空気を吹き出すフェイス吹出開口部24、乗員の足元に向けて空調空気を吹き出すフット吹出開口部25、および、車両前面窓ガラス74の内側面74aに向けて空調空気を吹き出すデフロスタ吹出開口部26が設けられている。
また、フェイス吹出開口部24、フット吹出開口部25、およびデフロスタ吹出開口部26の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出開口部24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出開口部25の開口面積を調整するフットドア25a、デフロスタ吹出開口部26の開口面積を調整するデフロスタドア26aが配置されている。
これらのフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aは、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回動操作される。この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。このように、フェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26a、および電動アクチュエータ64は、吹出開口部24、25、26の開口面積をそれぞれ調整する吹出口調整装置を構成している。
また、吹出口モードとしては、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、およびデフロスタモードがある。
フェイスモードは、フェイス吹出開口部24を全開してフェイス吹出開口部24から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。
バイレベルモードは、フェイス吹出開口部24とフット吹出開口部25の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出開口部25を全開するとともにデフロスタ吹出開口部26を小開度だけ開口して、フット吹出開口部25から主に空気を吹き出す吹出口モードである。デフロスタモードは、フット吹出開口部25を小開度だけ開口して、デフロスタ吹出開口部26を全開して、フット吹出開口部25およびデフロスタ吹出開口部26の双方から空気を吹き出す吹出口モードである。フットデフロスタモードは、フット吹出開口部25およびデフロスタ吹出開口部26を同程度開口して、フット吹出開口部25およびデフロスタ吹出開口部26の双方から空気を吹き出す吹出口モードである。
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される電子制御装置である。空調制御装置50は、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
空調制御装置50の出力側には、送風機12、圧縮機31の電動モータ31b用のインバータ61、室外ファンとしての送風ファン35、内外気切替ドア(内外気切替ドアダンパ)23用の電動アクチュエータ62、吹出口モードドア(吹出口ダンパ)24a、25a、26a用の電動アクチュエータ64、各PTCヒータ15a、15b、15c、および電動ウォータポンプ42等が接続されている。
また、車両用空調装置1は、電気ヒータでステアリングを加熱するステアリングヒータ66と、車両シートにおいて乗員の臀部および背中に接触するシート表皮から空気を吹き出すシート送風装置68と、運転席に着座している運転者の膝へ向けて輻射熱を発する膝輻射ヒータ70と、電気ヒータで車両シートを加熱するシート暖房装置72とを有している。これらの装置66、68、70、72は、乗員が車室内の空調に対して感じる空調感を補うための空調補助機器(言い換えれば、補助冷暖房装置)として設けられている。そして、これらの空調補助機器66、68、70、72は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ(室内空気温度センサ)51、外気温Tamを検出する外気センサ(車室外空気温度センサ)52、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、および、圧縮機31の吐出冷媒圧力Pcを検出する冷媒圧力センサである吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)等のセンサ群が接続されている。
また、空調制御装置50の入力側には、これらの図2に示すセンサ群の他に、圧縮機31の吐出冷媒温度Tcを検出する吐出温度センサ(吐出温度検出手段)、蒸発器13からの吹き出される空気温度(蒸発器温度)Teを検出する蒸発器温度センサ(蒸発器温度検出手段)、圧縮機31に吸入される冷媒の温度Tsiを検出する吸入温度センサ、および、エンジンEGから流出したエンジン冷却水の冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ(冷却水温度検出手段)等の不図示のセンサ群も接続されている。
なお、上記蒸発器温度センサは、具体的に蒸発器13の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、その蒸発器温度センサは、蒸発器13のその他の部位の温度を検出してもよいし、蒸発器13を流通する冷媒自体の温度を直接検出してもよい。或いは、上記蒸発器温度センサは、蒸発器13を通過した空気温度を検出してもよい。
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60には、各種空調操作スイッチとして、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(図示せず)、エアコンのオン・オフ(具体的には圧縮機31のオン・オフ)を切り替えるエアコンスイッチ60a、オートモード60b、ユーザのマニュアル操作で吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ60c、エコモード等の運転モードを切り替えるエコノミースイッチ(図示せず)、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ(図示せず)、送風機12の風量設定スイッチ(図示せず)、乗員の操作によって車室内の空気温度の目標温度である設定温度Tsetを設定する車室内温度設定スイッチ(図示せず)等が設けられている。オートモード60bは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定手段である。吸込口モードスイッチ60cは、ユーザのマニュアル操作で吸込口モードを切り替えるためのスイッチである。また、操作パネル60には、車室内のユーザに向けて各種の情報を表示するための表示パネル60cも設けられている。
また、空調制御装置50は、エンジンEGの作動を制御するエンジンコンピュータであるエンジン制御装置90に電気的に接続されており、空調制御装置50およびエンジン制御装置90は互いに電気的に通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50がエンジン制御装置90へエンジンEGの作動要求信号を出力することによって、エンジンEGを作動させることができる。また、空調のためにエンジンEGが作動している場合には、空調制御装置50がエンジンEGの作動要求信号を出力しないことによって、エンジンEGを停止させることができる。
なお、空調制御装置50およびエンジン制御装置90は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。例えば、空調制御装置50のうち、PTCヒータ15の作動と停止との切り替えを制御する構成がPTCヒータ制御手段を構成している。
次に、空調制御装置50による空調制御処理を、図3〜図7を用いて説明する。図3は、空調制御装置50の空調制御処理の一例を示したフローチャートである。
まず、イグニッションスイッチがオンされて、空調制御装置50にバッテリからイグニッションスイッチを通して直流電力が供給されると、予めメモリに記憶されている制御プログラムが実行される。イグニッションスイッチがオンされた時は、ユーザの操作によって車両が駐車状態から走行可能な走行状態になった時である。
ステップ1では、空調制御装置50内部のマイクロコンピュータに内蔵されたデータ処理用メモリの記憶内容等を初期化(イニシャライズ)する。
次に、ステップ2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップ3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内目標温度Tsetの設定信号、オートモード60bの操作信号、吸込口モードスイッチ60cの操作信号等がある。
次に、ステップ3では、各種センサからのセンサ信号を読み込む。なお、ステップ2、S3では、各種データがデータ処理用メモリに読み込みこまれる。センサ信号としては、例えば、内気センサ51が検知する内気温度(車室内温度)Tr、外気センサ52が検知する外気温度Tam、日射センサ53が検知する日射量Ts、蒸発器後温度センサが検知する蒸発器後温度Te、および冷却水温センサが検知するエンジンの冷却水温度Twがある。
次に、ステップ4では、予め記憶している下記の数式F1に入力データを代入して目標吹出温度TAOを演算する。目標吹出温度TAOは、外気温度や日射量の変動にかかわらず、内気センサ51の検出温度が設定温度Tsetを維持するのに必要となる吹出開口部24、25、26の吹き出し空気温度である。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C …(F1)
ここで、Tsetは、温度設定スイッチにて設定された設定温度、Trは内気温度、Tamは外気温度、Tsは日射量である。また、Kset、Kr、KamおよびKsは各ゲインであり、Cは全体にかかる補正用の定数である。
これに加えて、目標吹出温度TAO、蒸発器後温度Te、およびエンジンの冷却水温Twを数式F2に代入して混合率SW(%)を求める。混合率SW(%)は、冷風バイパス通路17を流れる冷風と加熱用冷風通路16から吹き出される温風との比率を示す百分率である。
SW=(TAO−Te)/(Tw−Te)×100 …(F2)
ここで、エアミックスドア19の目標位置は、混合率SW(%)を実現するために設定される。そこで、本実施形態では、エアミックスドア19の目標位置を示すエアミックスドア用アクチュエータの制御信号を算出する。
さらに、目標吹出温度TAOおよび上記各種センサからの信号により、電動ウォータポンプ42の目標回転数を示す制御値を算出する。
次に、ステップ5では、バッテリからブロワモータ121に印加されるブロワ電圧を決定する処理を実施する。ブロワ電圧は、ブロワモータ121の回転数、すなわち、送風機12の送風量を制御する役割を果たす。
例えば、オートモード(すなわち、自動空調制御モード)が設定されている場合は、目標吹出温度TAOに基づきブロワ電圧を決定する。目標吹出温度TAOが中間温度域に入っているときには、ブロワ電圧が最低電圧になり、目標吹出温度TAOが中間温度域から高くなるほど、ブロワ電圧が最低電圧から徐々に大きくなる。目標吹出温度TAOが中間温度域から低くなるほど、ブロワ電圧が最低電圧から徐々に大きくなる。なお、本実施形態では、オートモードは、ユーザがオートモード60bを操作することにより、設定される。
一方、ユーザがマニュアル操作により風量設定スイッチに対して送風機12の送風量の設定値を設定した場合には、風量設定スイッチによって設定された設定値に対応する電圧をブロア電圧として決定する。
このように目標吹出温度TAOや風量設定スイッチの設定値に応じてブロア電圧を決定する。
次に、ステップ6では、吸込口モード決定処理を実行する。これにより、室内空調ユニット10の内外気切替箱20内に空気を取り込む吸込口(すなわち、吸込口モード)を決定する。なお、吸込口モード決定処理の詳細については後述する。
次のステップ7では、吹出口モード決定処理を実施する。これにより、空調ケース11の吹出開口部24〜26のうち空気を車室内に吹き出す吹出開口部を決める。
例えば、オートモードが設定されている場合は、目標吹出温度TAOに基づきフェイスモード(FACE)、バイレベルモード(B/L)、フットモード(FOOT)のうちいずれか1つの吹出口モードを決定する。目標吹出温度TAOが中間温度域に入っているときには、吹出口モードとしてバイレベルモードを決定する。目標吹出温度TAOが中間温度域よりも低い場合には、吹出口モードとしてフェイスモードを決定する。目標吹出温度TAOが中間温度域よりも高い場合には、吹出口モードとしてフットモードを決定する。これにより、目標吹出温度TAOに基づき、車室内に空調風を吹き出す吹出口を決定する。
一方、ユーザがマニュアル操作により吹出口モードスイッチに対して吹出口モードを設定した場合には、吹出口モードスイッチに設定された設定モードを吹出口モードとして決める。
このように目標吹出温度TAOや吹出口モードスイッチに設定される設定モードによって吹出口モードを決める。
次のステップ8では、後述する圧縮機回転数決定処理を実施する。なお、圧縮機回転数決定処理の詳細は後述する。
次のステップ9では、電気ヒータを構成するPTCヒータ15(単にPTCともいう)の作動本数を決定する処理を行う。例えば、PTCヒータ15の作動本数は、予め設定されたマップにしたがって決定され、エンジン冷却水温Twが低いほど多くされる。また、ステップ9では、ステアリングヒータ66等の空調補助機器66、68、70、72を作動させるか否かを決定する処理も行う。
次に、ステップ10では、要求水温決定処理を実施する。要求水温決定処理は、エンジン冷却水を暖房および防曇等の熱源にするため、目標吹出温度TAO等に基づきエンジン冷却水の要求水温を決定する。そして、そのエンジン冷却水の要求水温に基づいて、エンジン制御装置90に対してエンジンEGの始動を要求するエンジンオン要求の要否を決定する。
次に、ステップ11では、電動ウォータポンプ作動決定処理を実施する。電動ウォータポンプ作動決定処理は、エンジン冷却水温Tw等に基づいて、電動ウォータポンプ42(図1参照)のオンオフを決定する処理である。なお、電動ウォータポンプ作動決定処理の詳細については後述する。
次に、ステップ12では目標蒸発器温度TEO(図3中目標エバポレータ温度TEOと記す)を決定する。この目標蒸発器温度TEOは、蒸発器温度Teの目標温度である。なお、目標蒸発器温度TEOの決定処理の詳細については、後述する。
次に、ステップ13では、上記各ステップ4〜S12で、算出或いは決定された各制御状態が得られるように、各種アクチュエータ12、61、35、62、64、15a、15b、15c、42、表示パネル60cおよびエンジン制御装置90等に対して制御信号を出力する。
次に、ステップ14では、上記ステップ2を開始したから経過した時間(以下、経過時間という)が制御周期T(すなわち、一定時間)よりも長いか否かを判定する。制御周期Tは、予め決められた一定時間である。例えば、経過時間が制御周期Tよりも長い場合には、ステップ14でYESと判定してステップ2に進む。
一方、経過時間が制御周期Tよりも短い場合には、ステップ14でNOと判定してステップ14を繰り返す。このことにより、経過時間が制御周期Tよりも長くなるまで待機することになる。その後、経過時間が制御周期Tよりも長くなると、ステップ14でYESと判定してステップ2に進む。このようなステップ14により、ステップ2、S3、S4・・・S14の各処理は、繰り返し一定周期毎に実行される。なお、本実施形態では、制御周期Tを250msとしている。
次に、空調制御装置50の各ステップの詳細に関して更に詳しく説明する。
まず、吸込口モード決定処理(図3のステップ6)に関して説明する。図3のステップ6は、具体的には、図4にしたがって実行される。図4に示すように、ステップ600にて吸込口制御としてオートモードが設定されているか否かを判定する。この吸込口制御としてオートモードが設定されているか否かは、ユーザによる操作パネル60のオートモード60bへのスイッチ操作に基づいて判定される。
オートモードが設定されている場合、ステップ601にて、目標吹出温度TAOに応じて吸込口モードを決定する。吸込口モードは、内外気切替ドア23の位置によって内気導入口21の開口面積および外気導入口22の開口面積の比率を決める制御モードである。
目標吹出温度TAOが中間温度域に入っているときには、吸込口モードとして半内気モードを決定する。半内気モードは、内外気切替ドア23によって内気導入口21の開口面積と外気導入口22の開口面積とを同一にして、外気導入率を50%とする制御モードである。外気導入率(%)は、上述の如く、内気導入口21および外気導入口22から空調ケース11に導入される空気量のうち、外気が占める比率を示す百分率である。
目標吹出温度TAOが中間温度域より高いときには、吸込口モードとして外気モード(外気導入モード)を決定する。外気モードは、内外気切替ドア23によって内気導入口21を全閉して外気導入口22を全開にして、外気導入率を100%とする吸込口モードである。
目標吹出温度TAOが中間温度域より低いときには、吸込口モードとして内気モード(内気循環モード)を決定する。内気モードは、内外気切替ドア23によって内気導入口21を全開して外気導入口22を全閉にして、外気導入率を0%とする吸込口モードである。
このように吸込口制御としてオートモードが設定されている場合には、目標吹出温度TAOに基づいて、外気モード、内気モード、および半内気モードのうちいずれか1つの吸込口モードを自動的に決定する。
上記ステップ600にて吸込口制御としてオートモードが設定されていないとしてNOと判定した場合には、次のステップ602において、マニュアルフレッシュモード(図中マニュアルFRSと記す)が設定されているか否かを判定する。すなわち、ユーザが吸込口モードとして外気モードを指令するために吸込口モードスイッチ60cを操作しているか否かを判定する。
このとき、ユーザが吸込口モードとして内気モードを指令するために吸込口モードスイッチ60cをマニュアル操作している場合には、ステップ602において、NOと判定する。つまり、マニュアル内気モードが吸込口モードとして設定されていると判定する。
これに伴い、ステップ603において、表示パネル60cに表示させる表示情報を、「吸込口モードとして内気モードを実行している旨を示す表示情報」として決定する。次に、ステップ604で、吸込口モードとして内気モードを決定する。
また、上記ステップ602において、マニュアルフレッシュモードが設定されているときには、YESと判定する。つまり、ユーザが吸込口モードとして外気モードを指令するために吸込口モードスイッチ60cを操作しているときには、マニュアル外気モードが設定されているとして、YESと判定する。
すると、次のステップ605において、表示パネル60cに表示させる表示情報を、「吸込口モードとして外気モードを実行している旨を示す表示情報」として決定する。これに伴い、次のステップ606で、吸込口モードとして外気モードを決定する。これにより、空調開始時の車室内の熱気、CO2(二酸化炭素)、煙草臭を車室外に放出することができる。
次に、ステップ607において、デフロスタモード(図中DEFと記す)およびフットデフロスタモード(図中F/Dと記す)のうちいずれか一方の吹出口モードが設定されているか否かを判定する。
このとき、デフロスタモード(図中DEFと記す)およびフットデフロスタモード(図中F/Dと記す)のうちいずれか一方の吹出口モードが設定されているときには、YESと判定して、次のステップ608において、吸込口モードとして外気モードを決定する。これにより、デフロスタ吹出開口部26を開口する吹出口モードが設定されている場合には、車両前面窓ガラス74の内側面74aの曇りの発生を防止する防曇性を確保することになる。
また、ステップ607において、デフロスタモードおよびフットデフロスタモード以外の他の吹出口モードが設定されているときには、NOと判定する。他の吹出口モードとしては、吹出開口部24、25、26のうちデフロスタ吹出開口部26以外の他の開口部を開口する吹出口モードであって、フェイスモード、バイレベルモード、フットモードが用いられる。
次に、ステップ609において、車室内の空調が開始されてから所定時間TSを経過したか否かを判定する。
ここで、車室内の空調は、送風機12の送風に伴って吹出開口部24〜26から車室内に吹き出される空調風によって行われる。そこで、本実施形態では、図3の空調制御処理の実行を開始後に最初に制御信号出力処理(ステップ13)を実行して制御信号を送風機12に出力してから所定時間経過したか否かを判定することにより、車室内の空調が開始されてから所定時間経過したか否かを判定する。
つまり、図3の空調制御処理の実行を開始後に最初に送風機12の送風を開始させるように送風機12を制御してから、所定時間TSを経過したか否かを判定することにより、車室内の空調が開始されてから所定時間TSを経過したか否かを判定することになる。
本実施形態では、上記所定時間TSとして、車室内の空調が開始されてから車室内空気の入れ替えが実質的に終了するのに要すると推定できる一定の時間が採用されている。すなわち、上記所定時間は、車室内の空調が開始されてから車室内の換気が実質的に行われたと判断できる時間である。所定時間TSとして、例えば、3分を用いることができる。
なお、車室内の空気の入れ替え(すなわち、換気)は、外気導入口22、乗降用ドアの通気用開口部、および車両の隙間などを通して行われる。乗降用ドアの通気用開口部は、乗降用ドアのうち窓ガラスが配置される開口部である。窓ガラスが通気用開口部を開いた状態で通気用開口部を通して車室内外で通気が行われる。車両の隙間としては、車両のうち乗降用ドアの通気用開口部を形成する開口部形成部と窓ガラスとの間の隙間、および車両のうち乗降用開口部を形成する乗降用開口形成部と乗降用ドアとの間の隙間がある。
上記ステップ609において、車室内の空調が開始されてから経過した時間が所定時間TSよりも短い場合には、車室内の空調が開始されてから車室内の空気の入れ替えが終了していないとして、NOと判定する。この場合、次のステップ610に進んで、外気導入率を100%とする外気モードを吸込口モードとして維持することを決定する。
一方、車室内の空調が開始されてから経過した時間が所定時間TSよりも長い場合には、車室内の空調が開始されてから車室内の空気の入れ替えが終了したとして、上記ステップ609においてYESと判定して、次のステップ611に進んで、外気導入率を外気センサ52の検出温度に応じて決める。
すなわち、外気センサ52の検出温度に応じて、内外気切替ドア23の位置を規定することにより、内気導入口21の開口面積および外気導入口22の開口面積をそれぞれ規定する。
具体的には、外気センサ52の検出温度が第1外気温度(例えば、23℃)未満であるときには、外気導入率を100%とする。外気センサ52の検出温度が第1外気温度よりも高い第2外気温度(例えば、30℃)よりも高い場合には、外気導入率をおおよそ50%とする。外気センサ52の検出温度が第1外気温度よりも高く、かつ第2外気温度(例えば、30℃)よりも低い場合には、外気センサ52の検出温度が高くなるほど、外気導入率を100%からおおよそ50%に向けて徐々に低くする。
「おおよそ50%」とは、外気導入率が厳密に50%である場合に限らず、内外気切替ドア23の制御誤差が起因して外気導入率に若干の誤差が生じている場合も含むことを意味している。
ここで、第1外気温度は、本発明の所定温度に対応するもので、蒸発器13に吸い込まれる空気温度が車室内の空気温度よりも高くなるときに車室外の空気温度が到達していると推定される温度である。第2外気温度は、第1外気温度よりも高く設定されている温度である。
このように外気センサ52の検出温度によって外気導入率、すなわち、内外気切替ドア23の位置に基づく内気導入口21および外気導入口22のそれぞれの開口面積が決められる。
次に、圧縮機回転数決定処理(ステップ8)に関して説明する。ステップ8は、具体的には、図7にしたがって実行される。図7に示すように、まず、ステップ801では、圧縮機31の回転数変化量Δf_cを求める。
回転数変化量Δf_cは、蒸発器13の着霜を防止しつつ、目標蒸発器温度TEOと蒸発器温度Teとの偏差(=TEO−Te)を零に近づけるように設定される値である。回転数変化量Δf_cは、今回のステップ807で演算される圧縮機回転数N(n)と前回のステップ807で演算される圧縮機回転数N(n−1)との差分を示している。nおよび(n−1)は、ステップ2〜13の実行回数を示す整数である。nは、今回のステップ2〜13の実行回数を示し、(n−1)は、前回のステップ2〜13の実行回数を示している。
図7のステップ801には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、前回のステップ12(図3参照)で決定した目標蒸発器温度TEO(n−1)と蒸発器温度Te(n)との偏差En(En=TEO(n−1)−Te(n))と、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率EDOT(EDOT=En−(En−1))とに基づいて求められている。
目標蒸発器温度TEO(n−1)は、(n−1)回目のステップ12で算出される目標蒸発器温度TEOである。蒸発器温度Te(n)は、n回目のステップ3で蒸発器温度センサから読み込まれる蒸発器温度Teである。偏差En−1は、目標蒸発器温度TEO(n−2)と蒸発器温度Te(n−1)との偏差(=TEO(n−2)−Te(n−1))である。目標蒸発器温度TEO(n−2)は、(n−2)回目のステップ12で算出される目標蒸発器温度TEOである。蒸発器温度Te(n−1)は、(n−1)回目のステップ3で蒸発器温度センサから読み込まれる蒸発器温度Teである。
続くステップ802では、車両用空調装置1の作動モードがエコモードであるか否かを判定する。具体的には、操作パネル60に設けられたエコノミースイッチがオンに操作されている場合には、作動モードがエコモードに設定されていると判定する。逆に、エコノミースイッチがオフに操作されている場合には、作動モードがエコモードに設定されていないと判定する。エコモードとは、車両用空調装置1の省エネルギ運転を行う運転モードであり、エコモードの設定およびその解除は、操作パネル60のエコノミースイッチのスイッチ操作により切り替えられる。
車両用空調装置1の作動モードがエコモードであると判定した場合、ステップ804にて、MAX回転数を7000rpmに決定してステップ805へ進む。一方、車両用空調装置1の作動モードがエコモードでないと判定した場合、ステップ803にて、MAX回転数を10000rpmに決定してステップ805へ進む。MAX回転数は、圧縮機回転数の上限値である。これにより、エコモード時には、圧縮機回転数の上限値を低く設定して、空調用電力を減少させる。
続くステップ805では、空調使用許可電力から圧縮機消費電力(電動コンプレッサ消費電力とも呼ぶ)を減算した値、すなわち「空調使用許可電力−圧縮機消費電力」の値に基づいて、予め空調制御装置50に記憶された図5の制御マップを参照して、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)を決定する。
空調使用許可電力は、「車両全体で使用可能な電力のうち、空調用に使用が許可された電力」であり、不図示の電力制御装置から空調制御装置50へ出力される。その電力制御装置は、空調制御装置50と互いに通信可能接続されており、車両外部の電源から供給される電力やバッテリ81に蓄えられた電力に応じて、車両における各種電気機器に配分する電力の決定等を行う。
本実施形態では、空調使用許可電力は次のように算出される。まず、仮の空調使用許可電力と空調使用可能電力とが算出され、仮の空調使用許可電力および空調使用可能電力のうち小さい方の値が空調使用許可電力とされる。
仮の空調使用許可電力は次のように算出される。エコモードでなく且つバッテリ81の蓄電残量SOCが20%を下回っていない場合、仮の空調使用許可電力が8000Wと決定される。エコモードである場合、またはバッテリ81の蓄電残量SOCが20%を下回っている場合、仮の空調使用許可電力が4000Wと決定される。
空調使用可能電力は、次の数式F3により算出される。
空調使用可能電力=最大供給電力−空調以外の消費電力 …(F3)
最大供給電力は、バッテリ81が供給できる最大の電力のことであり、空調以外の消費電力は、空調以外の用途で消費される電力のことである。
ステップ805では、具体的には、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)を次のように決定する。図5のステップ805に示すように、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の極小域(本実施形態では、−1000W以下)では、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)が負の値(本実施形態では、−300rpm)に決定される。
また、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の極大域(本実施形態では、1000W以上)では、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)が正の値(本実施形態では、+300rpm)に決定される。
また、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の中間域(本実施形態では、−1000W以上、1000W以下)では、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の上昇に応じて回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)を増加させる。
続くステップ806では、圧縮機31の回転数変化量Δfを次の数式F4により算出して、ステップ807へ進む。
Δf=MIN(Δf_c、f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)) …(F4)
数式F4のMIN(Δf_c、f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力))とは、Δf_cとf(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)とのうち小さい方の値を意味している。
続くステップ807では、今回の圧縮機回転数(コンプレッサ回転数)を次の数式F5により算出する。
今回の圧縮機回転数=MIN{(前回の圧縮機回転数+Δf)、MAX回転数}…(F5)
前回の圧縮機回転数とは、(n−1)回目のステップ807で演算される圧縮機回転数を意味している。今回の圧縮機回転数とは、n回目のステップ807で演算される圧縮機回転数を意味している。数式F5のMIN{(前回の圧縮機回転数+Δf)、MAX回転数}とは、前回の圧縮機回転数+ΔfとMAX回転数とのうち小さい方の値を意味している。
これにより、ステップ806の実行毎に、(前回の圧縮機回転数+Δf)およびMAX回転数のうち小さい方の値を選択する。
ここで、ΔfとしてΔf_cを選択したときには、蒸発器13の着霜を防止しつつ、目標蒸発器温度TEOと蒸発器温度Teとの偏差を零に近づけるように今回の圧縮機回転数(すなわち、n回目のステップ807の圧縮機回転数)を演算することができる。
一方、Δfとしてf(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)を選択することにより、圧縮機31の冷媒吐出能力を低下させて圧縮機消費電力を減少させることができ、ひいては空調用電力を減少させることができる。
次に、電動ウォータポンプ作動決定処理(図3のステップ11)に関して説明する。ステップ11は、具体的には、図6にしたがって実行される。図6に示すように、本制御がスタートすると、ステップ1101にて、冷却水温センサによって検出されるエンジン冷却水温(水温)Twが蒸発器温度Teより高いか否かを判定する。エンジン冷却水温Twが、蒸発器温度Te以下であるとしてNOと判定されると(Tw<Te)、ステップ1102で電動ウォータポンプ42をオフする要求、すなわち電動ウォータポンプOFF要求を決定し、本制御を終了する。
ステップ1101にて、冷却水温センサによって検出される冷却水温Twが比較的低く、エンジン冷却水温Twが蒸発器温度Te以下であると判定されると、エンジン冷却水をヒータコア14に流した時、かえって吹出温度を低くしてしまうため、ステップ1102で電動ウォータポンプ42をオフするのである。
一方、ステップ1101でエンジン冷却水温Twが、蒸発器後温度Teよりも高いとしてYESと判定すると、ステップ1103にて、図1の送風機12をオン(運転)した状態であるか否かを判定する。送風機12が停止した状態(すなわち、送風機12がオンしていない状態)であれば、NOと判定してステップ1102に進み、電動ウォータポンプOFF要求を決定し、本制御を終了する。送風機12が運転した状態(すなわち、送風機12がオンした状態)であれば、ステップ1104に進み、電動ウォータポンプ42をオンする要求、すなわち電動ウォータポンプON要求を決定し、本制御を終了する。
つまり、エンジン冷却水温Twが比較的高い時に送風機12がオフ(停止)の時は、省燃費のため、電動ウォータポンプ42をオフする。一方、送風機12が運転した時は、電動ウォータポンプON要求を行う。これにより、エンジンオフの時でも、エンジン冷却水が持っている熱量を空調に利用することができる。したがって、吹出温度が上がり、吹出温度を目標吹出温度TAOに近づけることができるので、エンジンオフの状態でも室温が下がるのを緩和できる。
次に、目標蒸発器温度TEOの決定処理(図3のステップ12)に関して説明する。ステップ12は、具体的には、図7にしたがって実行される。図7に示すように、本制御がスタートすると、ステップ1201において、ステップ4(図3参照)で決定した目標吹出温度TAOに基づき、図7に示す制御マップを参照して、f(TAO)の値を決定する。このf(TAO)の値はそのまま目標蒸発器温度TEOとされる。この図7の制御マップは、空調制御装置50に予め記憶されている。
具体的に、図7の制御マップに示すように、目標吹出温度TAOの極低温域では、目標蒸発器温度TEO(TEO=f(TAO))を低温にする。目標吹出温度TAOの極高温域では、目標蒸発器温度TEOを高温にする。目標吹出温度TAOの中間温度域では、目標吹出温度TAOの上昇に応じて目標蒸発器温度TEOを上昇させる。なお、図9の制御マップは、目標蒸発器温度TEOが、蒸発器13に流入する空気の露点温度以下の温度となるように設定されている。
なお、上述した図3〜7の各ステップでの処理は、それぞれの機能を実現する手段を構成している。後述する図8、図9のフローチャートでも同様である。
次に、本実施形態の車両用空調装置1の作動の概略について説明する。
まず、空調制御装置50は、上述の如く、目標吹出温度TAO、蒸発器後温度Te、およびエンジンの冷却水温Twに基づいて混合率SW(%)を求める。さらに、空調制御装置50は、混合率SW(%)を実現するためのエアミックスドア19の目標位置を算出し、この算出した目標位置を示す制御信号をエアミックスドア用アクチュエータに出力する。これにより、エアミックスドア19は、エアミックスドア用アクチュエータにより制御されて、目標位置まで回転駆動される。
空調制御装置50は、上述した図3中のステップ11にて電動ウォータポンプON要求を決定したときには、電動ウォータポンプ42を運転させるための運転制御信号を電動ウォータポンプ42に出力する。このとき、空調制御装置50は、電動ウォータポンプ42の回転数を制御する。このため、電動ウォータポンプ42が運転してヒータコア14とエンジンEGとの間で冷却水流路41を通して冷却水を循環させることができる。
空調制御装置50は、上述した図3中のステップ11にて電動ウォータポンプOFF要求を決定したときには、電動ウォータポンプ42を停止させるための停止制御信号を電動ウォータポンプ42に出力する。このため、電動ウォータポンプ42が停止して冷却水の循環を停止させることができる。
空調制御装置50は、上述した図3中のステップ5で決定されるブロワ電圧を示す制御信号をブロワモータ121に出力する。このため、ブロワモータ121は、空調制御装置50によって制御されて、ブロワモータ121の回転数が目標回転数に近づくことになる。これにより、送風機12がブロワ電圧に応じた送風量を発生させることができる。
空調制御装置50は、上述した図3中のステップ6で決定される吸込口モードを示す制御信号を電動アクチュエータ62に出力する。このため、電動アクチュエータ62は、空調制御装置50によって制御されて、内外気切替ドア23を駆動する。なお、内外気切替ドア23の作動の詳細の説明は、後述する。
空調制御装置50は、上述した図3中のステップ7で決定される吹出口モードを示す制御信号を電動アクチュエータ64に出力する。このため、電動アクチュエータ64は、空調制御装置50によって制御されて、フェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aのうち上記決定される吹出口モードに必要なモードドアを駆動する。これにより、上述した図3中のステップ7で決定される吹出口モードが実施される。
空調制御装置50は、上述した図3中のステップ8(具体的には、S807)で演算される今回の圧縮機回転数を目標回転数として、この目標回転数を示す制御信号をインバータ61に出力する。このため、インバータ61は、空調制御装置50によって制御されて、目標回転数を実現するための交流電流を電動モータ31bに出力する。したがって、電動モータ31bは、目標回転数にて圧縮機構31aを回転させることができる。これにより、空調制御装置50は、圧縮機31の回転数を制御することにより、蒸発器13に流れる冷媒量(すなわち、蒸発器13の冷却能力)を制御することになる。
ここで、圧縮機31は、蒸発器13の冷媒出口側から冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。凝縮器32は、圧縮機31から吐出される高温高圧冷媒を冷却・凝縮させる。すると、気液分離器33は、凝縮器32によって冷却・凝縮される冷媒を気相冷媒と液相冷媒に分離する。膨張弁34は、気液分離器33から供給される液相冷媒を減圧膨張する。蒸発器13は、膨張弁34によって減圧膨張された冷媒を蒸発させ、その冷媒と送風空気との間で熱交換させることにより送風空気を冷却する。
空調制御装置50は、図3中のステップ9で決定した作動本数のPTCヒータ15を駆動するための制御信号をPTCヒータ15に出力する。このため、PTCヒータ15が発熱する。
このように空調制御装置50が、エアミックスドア用アクチュエータ、電動ウォータポンプ42、電動アクチュエータ62、64、圧縮機31、およびPTCヒータ15を制御する。
すると、送風機12は、内外気切替箱20および外気導入口22のうち少なくとも一方から内外気切替箱20に空気を吸い込んで、この吸い込んだ空気を吹出開口部24〜26側(すなわち、車室内側)に吹き出す。この吹き出された空気は、蒸発器13により冷却される。このとき、空調制御装置50が圧縮機31の回転数を制御することにより、蒸発器13に流れる冷媒量を制御する。これにより、蒸発器13から吹き出される空気温度が制御されて、蒸発器13から吹き出される空気温度(すなわち、蒸発器温度センサの検出温度)が目標蒸発器温度TEOに近づくことになる。
これに伴い、蒸発器13から冷風が吹き出されることになる。この蒸発器13から吹き出される冷風のうち一部は、冷風バイパス通路17を通過する。蒸発器13から吹き出される冷風のうち残りの冷風は、加熱用冷風通路16に流れる。加熱用冷風通路16を通過する冷風は、ヒータコア14およびPTCヒータ15により加熱される。これにより、加熱用冷風通路16から温風が吹き出される。
このとき、冷風バイパス通路17を通過する冷風と加熱用冷風通路16から吹き出される温風との比率は、エアミックスドア19の目標位置(すなわち、混合率SW)で制御される。
このように加熱用冷風通路16から吹き出される温風と冷風バイパス通路17から吹き出される冷風が混合空間18で混合されて空調風として、吹出開口部24、25、26のうち開口した吹出開口部から車室内に吹き出される。
ここで、エアミックスドア19の回転位置は、ステップ4で算出される混合率SW(%)を実現するために設定されている。このため、エアミックスドア19は、その回転位置によって、吹出開口部24、25、26から車室内に吹き出される空気温度を制御する。これにより、吹出開口部24、25、26から車室内に吹き出される空気温度を目標吹出温度TAOに近づけることができる。以上により、吹出開口部24、25、26から吹き出される空気により、車室内を空調することができる。
次に、本実施形態の特徴である内外気切替ドア23の作動の詳細について説明する。
まず、空調制御装置50は、上述した図3中のステップ6で決定される吸込口モードに基づいて、電動アクチュエータ62を介して内外気切替ドア23を制御する。
例えば、空調制御装置50は、ステップ600にて吸込口制御としてオートモードが設定されている場合、ステップ601にて、目標吹出温度TAOに応じて吸込口モードを決定する。この決定した吸込口モードを実現するめの制御信号を内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62に出力する。このため、内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62によって内外気切替ドア23が駆動される。これにより、内気モード、外気モード、および半内気モードのうち、目標吹出温度TAOに対応する吸込口モードが実現される。
一方、空調制御装置50は、ユーザが吸込口モードとして内気モードを指令するために吸込口モードスイッチ60cをマニュアル操作したときには(ステップ602:NO)、表示パネル60cの表示情報を、「吸込口モードとして内気モードを実行している旨を示す表示情報」として決定する(ステップ603)。
空調制御装置50は、この決定した表示情報を含む制御信号を表示パネル60cに出力することにより、「吸込口モードとして内気モードを実行している旨」を表示パネル60cに表示させる。これに加えて、空調制御装置50は、吸込口モードとして内気モードを決定する(ステップ604)。これに伴い、空調制御装置50は、吸込口モードとして内気モードを実行するために制御信号を電動アクチュエータ62に出力する(ステップ13)。このため、電動アクチュエータ62が空調制御装置50によって制御されて、内外気切替ドア23を駆動する。これにより、吸込口モードとしてマニュアル内気モードが実行される。
本実施形態のマニュアル内気モードは、ユーザが吸込口モードスイッチ60cに対して内気モードを指令するためにマニュアル操作した際に実行される内気モードである。
また、空調制御装置50は、ユーザが吸込口モードとして外気モードを指令するために吸込口モードスイッチ60cをマニュアル操作したときには(ステップ602:YES)、マニュアル外気モードが設定されているとして、表示パネル60cの表示情報を、「吸込口モードとして外気モードを実行している旨を示す表示情報」として決定する(ステップ605)。
本実施形態のマニュアル外気モードは、ユーザが吸込口モードスイッチ60cに対して外気モードを指令するために操作した際に、実施される外気モードである。
空調制御装置50は、この決定した表示情報を含む制御信号を表示パネル60cに出力することにより、「吸込口モードとして外気モードを実行している旨」を表示パネル60cに表示させる。これに加えて、吸込口モードとして外気モードを決定する(ステップ605)。
ここで、空調制御装置50は、デフロスタモードおよびフットデフロスタモードのうちいずれか一方の吹出口モードが設定されている場合に(ステップ608:YES)には、吸込口モードとして外気モードを決定する(ステップ608)。
これに伴い、空調制御装置50は、吸込口モードとして外気モードを実行するために制御信号を電動アクチュエータ62に出力する(ステップ13)。このため、電動アクチュエータ62が空調制御装置50によって制御されて、内外気切替ドア23を駆動する。これにより、吸込口モードとしてマニュアル外気モードが実行される。
空調制御装置50は、上記ステップ607において、デフロスタモードおよびフットデフロスタモード以外の他の吹出口モード(具体的には、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード)が設定され、かつ、車室内の空調が開始されてから経過した時間が所定時間TSよりも短い場合には、吸込口モードとして外気導入率を100%とする外気モードを決定する(ステップ610)。これに伴い、空調制御装置50は、吸込口モードとして外気モードを実行するために制御信号を電動アクチュエータ62に出力する(ステップ13)。このため、電動アクチュエータ62が空調制御装置50によって制御されて、内外気切替ドア23を駆動する。これにより、吸込口モードとしてマニュアル外気モードが実行される。
空調制御装置50は、上記ステップ607において、フェイスモード、バイレベルモード、フットモードのうちいずれか1つの吹出口モードが設定され、かつ、車室内の空調が開始されてから経過した時間が所定時間TSよりも長い場合には、外気導入率を外気センサ52の検出温度Tamに応じて決める(ステップ611)。
つまり、マニュアル外気モードが実行されて、かつフェイスモード、バイレベルモード、フットモードのうちいずれか1つの吹出口モードが設定され、さらに車室内の空気の入れ換えが実質的に終えたと判定してときには、外気導入率を外気センサ52の検出温度Tamに応じて決める。
空調制御装置50は、この決められた外気導入率を実現するための制御信号を電動アクチュエータ62に出力する(ステップ13)。このため、電動アクチュエータ62が空調制御装置50によって制御されて、内外気切替ドア23を駆動する。これにより、上記決定された外気導入率を実現するための吸込口モードが実行される。
例えば、外気センサ52の検出温度が第1外気温度(例えば、23℃)未満であるときには、外気導入率が100%になる。外気センサ52の検出温度が第1外気温度よりも高い第2外気温度(例えば、30℃)よりも高い場合には、外気導入率が50%になる。外気センサ52の検出温度が第1外気温度よりも高く、かつ第2外気温度(例えば、30℃)よりも低い場合には、外気センサ52の検出温度が高くなるほど、外気導入率が100%から50%に向けて徐々に低くなる。
以上説明した本実施形態によれば、空調制御装置50は、マニュアル外気モードを実行した場合に、かつフェイスモード、バイレベルモード、フットモードのうちいずれか1つの吹出口モードを設定し、さらに車室内の空気の入れ換えが実質的に終えたと判定し、外気センサ52の検出温度が第2外気温度よりも高いときには、外気導入率をおおよそ50%にするように電動アクチュエータ62を介して内外気切替ドア23を制御する。これにより、マニュアル外気モードが実行されているときに、外気センサ52の検出温度が第2外気温度以上であるときには、内気および外気をおおよそ半分ずつ空調ケース11内に導入させることができる。
ここで、内気と外気とをおおよそ半分ずつ空調ケース11内に導入させることは、外気導入率を厳密に50%にする場合に限らず、内外気切替ドア23の若干の制御誤差が生じて外気導入率が50%から若干ずれている場合をも含むことを意味する。
以上により、夏期において、マニュアル外気モードが実施されているときであっても、外気温度が高く、車室内の空調負荷が高い高負荷時には、外気導入率がおおよそ50%になる半内気モードにすることで、蒸発器13に吸い込まれる吸込み温度を低下させることができる。このため、蒸発器13において空気から吸熱する熱量を減らすことができる。よって、冷凍サイクル装置30で冷媒を循環させることに必要である圧縮機31の負荷(エネルギー)を減らすことができる。これにより、臭いを悪化させることもなく、圧縮機31を駆動するための動力(すなわち、電気エネルギー)を低減できる。さらに、半内気モードにより、空調ケース11に導入される空気量のうち半分が外気になるため、ユーザが気にする煙草の煙を排出することができ、さらにはCO2の濃度上昇も抑制できる。
なお、本実施形態において、半分内気にする場合、乗員上半身には外気を吹き出し、下半身には内気を吹き出される2相流型の室内空調ユニット10を用いることが換気や防曇の面から望ましい。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、車室内の空調が開始されてから車室内の空気の入れ替えが実質的に終えるのに要すると判断される所定時間TSとして、予め決められた一定時間を用いる例について説明したが、これに代えて、本実施形態では、車室内の空調が開始されてから車室内の空気の入れ替えが実質的に終えるのに要すると判断される所定時間を外気温Tamと車室内温度Trとの差分ΔSで変化させる例について説明する。
図8に本発明の本実施形形態の吸込口モード決定処理を示すフローチャートを示す。空調制御装置50は、図4に代わる図8のフローチャートにしたがって、吸込口モード決定処理を実行する。図8のフローチャートは、図4においてステップ609に代わるステップ620、S621が用いられている。図8において、図4と同一符号は、同一ステップを示し、その説明を省略する。
まず、空調制御装置50は、ステップ620において、次のステップ621で用いる所定時間TSを、内気センサ51の検出温度(内気温度)Trと外気センサ52の検出温度(外気温度)Tamとの差分ΔS(=Tr−Tam)によって決める。
本実施形態では、車室内の空調が開始されてから車室内の空気の入れ替えが実質的に終えて車室内の空気温度を所定温度まで低くするのに要すると判断される時間を所定時間TSとしている。
ここで、差分ΔSは、内気センサ51の検出温度Trから外気センサ52の検出温度Tamを引いた値(=車室内の空気温度(室温)Tr−外気温Tam)である。
差分ΔSが第1温度差(例えば、零度)よりも小さいときには、所定時間TSを第1時間(例えば、零分)とする。差分ΔSが、第1温度差よりも大きい第2温度差(例えば、5度)よりも大きいときには、所定時間TSを第2時間(例えば、3分)とする。特に、内気センサ51の検出温度Trが外気センサ52の検出温度Tamよりも高い場合において、差分ΔSが、第1温度差よりも大きく、かつ第2温度差よりも小さい場合には、差分ΔSが大きくなるほど、第1時間から第2時間に向けて所定時間TSを徐々に長くする。
このように、第1温度差<差分ΔS<第2温度差であるときには、内気センサ51の検出温度から外気センサ52の検出温度を引いた差分ΔS(ΔS>0)が大きいほど、所定時間TSを長くする。
次に、空調制御装置50は、ステップ621において、空調が開始されてから所定時間TSを経過したか否かを判定する。
具体的には、図4中ステップ609と同様、図3の空調制御処理の実行を開始後に最初に送風機12の送風を開始させるように送風機12を制御してから、所定時間TS経過したか否かを判定することにより、車室内の空調が開始されてから所定時間TS経過したか否かを判定することになる。
このとき、車室内の空調が開始されてから経過した時間が所定時間TSよりも短い場合には、車室内の空調が開始されてから車室内の空気の入れ換えが終了していないとして、上記ステップ621において、NOと判定して、次のステップ610に進む。
一方、車室内の空調が開始されてから経過した時間が所定時間TSよりも長い場合には、車室内の空調が開始されてから車室内の空気の入れ換えが終了したとして、上記ステップ621において、YESと判定して、次のステップ611に進む。
以上説明した本実施形態によれば、ステップ621で用いる所定時間TSを、
「内気センサ51の検出温度から外気センサ52の検出温度を引いた差分ΔS」によって決める(ステップ620)。このため、所定時間TSを一定時間とする場合に比べて、車室内の空調が開始されてから車室内の空気の入れ替えが実質的に終了したか否かを正確に判定することができる。これにより、外気導入率を低くする吸込口モードを実施する処理(ステップ611)を早期に実施することができる。
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、車室内の空調が開始されてから経過した時間が所定時間TSよりも長くなると、車室内の空気の入れ替えが実質的に終了したと判定した例について説明したが、これに代えて、本実施形態では、マニュアル外気モード(マニュアルフレッシュモード)が開始されてから経過した時間が所定時間TSよりも長くなると、車室内の空気の入れ替えが実質的に終了したと判定する例について説明する。
図9に本発明の本実施形形態の吸込口モード決定処理を示すフローチャートを示す。空調制御装置50は、図4に代わる図9のフローチャートにしたがって、吸込口モード決定処理を実行する。図9のフローチャートは、図4においてステップ609に代わるステップ630が用いられている。図9において、図4と同一符号は、同一ステップを示し、その説明を省略する。
空調制御装置50は、ステップ630において、マニュアル外気モードが開始されてから所定時間TPを経過したか否かを判定する。本実施形態の所定時間TPとして、マニュアル外気モードが開始されてから車室内の空気の入れ替えが実質的に終了するのに要すると判断(推定)される一定時間が採用されている。つまり、ステップ630では、マニュアル外気モードが開始されてから、車室内の空気の入れ替えが実質的に終了したか否かを判定する。
このとき、マニュアル外気モードが開始されてから経過した時間が所定時間TPよりも短い場合には、車室内の空気の入れ替えが実質的に終了していないとして、上記ステップ621においてNOと判定して、次のステップ610に進む。
一方、マニュアル外気モードが開始されてから経過した時間が所定時間TPよりも長い場合には、車室内の空気の入れ替えが実質的に終了したとして、上記ステップ621においてYESと判定して、次のステップ611に進む。
以上説明した本実施形態によれば、マニュアル外気モードが開始されてから経過した時間が所定時間TPよりも長くなると、車室内の空気の入れ替えが実質的に終了したと判定して、上記第1実施形態と同様、外気センサ52の検出温度に応じて、外気導入率を下げる吸込口モードを実施する(ステップ611)。このため、上記第1実施形態と同様、蒸発器13において空気から吸熱する熱量を減らして、圧縮機31の負荷を減らすことができる。このことにより、マニュアル外気モードが実行された場合でも、空調ケース11に導入した空気を蒸発器13によって冷却するのに要するエネルギを低減することができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。
図10は、本実施形態における車両用空調装置1の全体構成を示した図であり、図1に相当する図である。本実施形態では、車両用空調装置1を、内燃機関を有さず走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車に適用している。そのため、図1に示すように、エンジンEG(図1参照)等に代えて、水加熱ヒータ82が設けられている。その水加熱ヒータ82は、不図示の電源から電力供給を受けて、ヒータコア14を循環する熱媒体を加熱する。その熱媒体は、上記第1実施形態のエンジン冷却水に相当する液体である。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、第1実施形態とは異なり、電動アクチュエータ64は、デフロスタドア26aと機械的に連結されていない。すなわち、電動アクチュエータ64は、フェイスドア24aおよびフットドア25aと機械的に連結されており、それらのドア24a、25aを開閉作動させる。そのため、車両用空調装置1は、電動アクチュエータ64に対して独立した電動アクチュエータ65を備えている。その電動アクチュエータ65は、デフロスタドア26aと機械的に連結されており、空調制御装置50から出力される制御信号にしたがってデフロスタドア26aを開閉作動させる。したがって、デフロスタドア26aは、フェイスドア24aおよびフットドア25aに対して独立して開閉作動させられる。このため、空調制御装置50は、フットモード、デフロスタモード、フットデフロスタモードを実施する際に、電動アクチュエータ65によってデフロスタドア26aを駆動する。
以上説明した本実施形態では、車両用空調装置1には、デフロスタドア26aを駆動するために電動アクチュエータ64に代わる電動アクチュエータ65と、ヒータコア14を循環する熱媒体を加熱するために、エンジンEGに代わる水加熱ヒータ82とが設けられている。そして、本実施形態の車両用空調装置1のうち電動アクチュエータ65および水加熱ヒータ82以外の他の構成は上記第1実施形態と同様である。このため、上記第1実施形態に、マニュアル外気モードが実行された場合でも、空調ケース11に導入した空気を蒸発器13によって冷却するのに要するエネルギを低減することができる。
(他の実施形態)
(1)上述の第1〜第4の実施形態において、室内空調ユニット10はPTCヒータ15を備えているが、PTCヒータ15は無くても差し支えない。
(2)上述の第1〜第4の実施形態において、車両用空調装置1が搭載される車両はハイブリッド車両であるが、走行用電動モータを備えていない単なるエンジン車両であっても差し支えない。
また、車両用空調装置1が搭載される車両が上記エンジン車両であれば、圧縮機31は電動である必要はなく、エンジンEGにより駆動されてもよい。この場合には、エンジンEGから圧縮機31に付与される動力が空調ケース11に導入した空気を冷却するために用いられる。
(3)上述の第1〜第4の実施形態において、図3〜図9のフローチャートに示す各ステップの処理はコンピュータプログラムによって実現されるものであるが、ハードロジックで構成されるものであっても差し支えない。
(4)上述の第1〜第4の実施形態において、図4、図8、図9中のステップ607において、デフロスタモードおよびフットデフロスタモードのうちいずれか一方の吹出口モードが設定されているときに、YESと判定した例について説明したが、これに代えて、次のようにしてもよい。
すなわち、デフロスタモード、フットデフロスタモード、フットモードのうちいずれか1つの吹出口モードが設定されているときに、ステップ607において、YESと判定する。
デフロスタモード、フットデフロスタモード、フットモード以外の他の吹出口モードとして、フェイスモードおよびバイレベルモードが設定されているときには、ステップ607において、YESと判定する。
本実施形態のフットモードは、デフロスタ吹出開口部26を小開度だけ開口する吹出口モードであるので、外気モードを維持することにより、防曇性を確保することができる。
(5)上述の第1〜第4の実施形態において、ユーザが吸込口モードスイッチ60cをマニュアル操作することにより、マニュアル内気モード、およびマニュアル外気モードを設定する例について説明したが、これに代えて、ユーザの音声入力によりマニュアル内気モード、およびマニュアル外気モードを設定するようにしてもよい。
(6)上述の第1〜第4の実施形態において、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置30を構成する凝縮器32を本発明の冷却用熱交換器とした例について説明したが、これに代えて、本発明の冷却用熱交換器として、ペルティエ素子等の素子を用いてもよい。或いは、吸収式冷凍機や吸着式冷凍機により冷却される冷媒により空気を冷却する熱交換器を本発明の冷却用熱交換器としてもよい。
(7)上述の第1〜第4の実施形態において、本発明の車両用空調装置1において、蒸発器13、ヒータコア14、およびPTCヒータ15を備える室内空調ユニット10を用いた例について説明したが、これに代えて、蒸発器13、ヒータコア14、およびPTCヒータ15のうち蒸発器13(冷却用熱交換器)のみを備える冷房専用の室内空調ユニット10を用いてもよい。
(8)上述の第1、第2の実施形態において、車室内の空調が開始されてから経過した時間が所定時間TSよりも長くなったときに、ステップ611の処理に進む例について説明したが、これに代えて、車室内の空調が継続して実施された期間が所定時間TSよりも長くなったときに、ステップ611の処理に進むようにしてもよい。
つまり、車室内の空調が継続して実施された期間が所定時間TSよりも長くなると、車室内の空気の入れ換えが実質的に終了したと判定する。
(9)上述の第3実施形態において、マニュアル外気モード(マニュアルFRSモード)が開始されてから経過した時間が所定時間よりも長くなったときに、ステップ611の処理に進む例について説明したが、これに代えて、マニュアル外気モード(マニュアルFRSモード)が継続して実施された期間が所定時間TPよりも長くなったときに、ステップ611の処理に進むようにしてもよい。
つまり、マニュアル外気モードが継続して実施された期間が所定時間TPよりも長くなると、車室内の空気の入れ換えが実質的に終了したと判定する。
(10)上述の第1〜第4の実施形態において、外気導入率が100%になる吸込口モードを外気モードとした例について説明したが、これに代えて、次の(a)、(b)、(c)のようにしてもよい。
(a)外気導入率が90%になる吸込口モードを外気モードとする。
(b)外気導入率が50%以上で、かつ外気導入率が100%以下になる吸込口モードを外気モードとする(50%<外気導入率≦100%)。
(c)外気導入率が70%以上、かつ外気導入率が100%以下になる吸込口モードを外気モードとする(70%≦外気導入率≦100%)。
(11)上述の第1〜第4の実施形態では、ユーザが吸込口モードスイッチ60cに対して外気モードを指令するように操作したときに空調制御装置50が電動アクチュエータ62によって内外気切替ドア23を制御してマニュアル外気モードを実施した例について説明したが、これに代えて、次のようにしてもよい。
すなわち、ユーザが吸込口モードスイッチ60cに対して外気モードを指令するために吸込口モードスイッチ60cを操作した際に、ユーザが吸込口モードスイッチ60cを操作する操作力を、吸込口モードスイッチ60cからリンク機構等を介して内外気切替ドア23に与えることにより、内外気切替ドア23を駆動する。
つまり、ユーザが吸込口モードスイッチ60cを操作した操作力によって内外気切替ドア23を制御して、外気モードを実施する。
(12)上述の第1〜第3の実施形態では、回転位置によって吹出開口部24、25、26から車室内に吹き出される空気温度を調整するエアミックスドア19を用いて本発明の温度調節機構を構成した例について説明したが、これに代えて、次のようにしてもよい。
すなわち、ヒータコア14から発生する熱量を変化させる温度調節機構を用いる。この場合、温度調節機構は、蒸発器13を通過した冷風に対してヒータコア14から与える熱量を変化させることにより、ヒータコア14から吹き出される温風温度を調整する。これによれば、エアミックスドア19の回転位置を一定位置(例えば、冷風バイパス通路17を全閉)にした状態で、吹出開口部24、25、26から車室内に吹き出される空気温度を調整することができる。
例えば、ヒータコア14としては、エンジンEGの冷却水を熱源とする熱交換器に限らず、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成する冷却器を用いてもよい。つまり、圧縮機から吐出される高温高圧冷媒を冷却する冷却器をヒータコア14としてもよい。ヒータコア14を電気ヒータとしてもよいことは当然である。
さらに、上述の第4実施形態では、ヒータコア14および水加熱ヒータ82の間で冷却水流路41を循環する熱媒体に対して、水加熱ヒータ82から与える熱量を変化させてもよい。これにより、ヒータコア14から加熱用冷風通路16に与える熱量を変化させることができる。このため、ヒータコア14を通過して吹出開口部24、25、26から車室内に吹き出される空気温度を水加熱ヒータ82によって調整することができる。
(13)上述の第1〜第4の実施形態では、図3のステップ8では、目標蒸発器温度TEOと蒸発器温度Teとの偏差を零に近づけるようにファジールール表に基づいてΔf_cを決定し、この決定されたΔf_cを用いて圧縮機回転数を算出した例について説明したが、これに限らず、次のようにしてもよい。
すなわち、図3のステップ8において、目標蒸発器温度TEOと蒸発器温度Teとの偏差を零に近づけるように圧縮機回転数を決定するのであれば、どのような手法で、圧縮機回転数を決定してもよい。
(14)上記第3実施形態では、図9のステップ630において、マニュアル外気モードが開始されてから車室内の空気の入れ替えが実質的に終了したか否かを判定するのに用いる所定時間TPを一定時間とした例について説明したが、これに代えて、図8のステップ620と同様、内気センサ51の検出温度(内気温度)Trと外気センサ52の検出温度(外気温度)Tamとの差分ΔS(=Tr−Tam)によって所定時間TPを決めてもよい。
差分ΔSが第1温度差(例えば、零度)よりも小さいときには、所定時間TPを第1時間(例えば、零分)とする。差分ΔSが、第1温度差よりも大きい第2温度差(例えば、5度)よりも大きいときには、所定時間TPを第2時間(例えば、3分)とする。特に、内気センサ51の検出温度Trが外気センサ52の検出温度Tamよりも高い場合において、差分ΔSが、第1温度差よりも大きく、かつ第2温度差よりも小さい場合には、差分ΔSが大きくなるほど、第1時間から第2時間に向けて所定時間TPを徐々に長くする。
(15)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
(16)また、上記第1〜第4実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
(17)また、上記第1〜第4実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
以下に、特許請求の範囲と上記第1〜第4の実施形態の構成要素との対応関係を示します。
すなわち、ステップ8、12、13は、冷却制御手段を構成している。フェイス吹出開口部24、フット吹出開口部25、およびデフロスタ吹出開口部26は、吹出開口部に対応している。ステップ611は、外気温判定手段および半内気制御手段をそれぞれ構成している。ステップ630が第1時間判定手段を構成している。ステップS609、S621が第2時間判定手段を構成している。ステップ13が表示制御手段を構成している。ステップ4が算出手段を構成している。ステップ620が時間設定手段に対応している。ヒータコア14、PTCヒータ15、加熱用冷風通路16、冷風バイパス通路17、混合空間18、およびエアミックスドア19が温度調節機構を構成している。ステップ4、9、13が自動温度制御手段を構成している。ステップ6、13が自動内外気制御手段を構成している。