JP6307109B2 - 金属成品の表面処理方法及び金属成品 - Google Patents

金属成品の表面処理方法及び金属成品 Download PDF

Info

Publication number
JP6307109B2
JP6307109B2 JP2016101655A JP2016101655A JP6307109B2 JP 6307109 B2 JP6307109 B2 JP 6307109B2 JP 2016101655 A JP2016101655 A JP 2016101655A JP 2016101655 A JP2016101655 A JP 2016101655A JP 6307109 B2 JP6307109 B2 JP 6307109B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
metal product
spray
processing region
dimple
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016101655A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017206761A (ja
Inventor
間瀬 恵二
恵二 間瀬
正三 石橋
正三 石橋
祐介 近藤
祐介 近藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fuji Manufacturing Co Ltd
Original Assignee
Fuji Manufacturing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Manufacturing Co Ltd filed Critical Fuji Manufacturing Co Ltd
Priority to JP2016101655A priority Critical patent/JP6307109B2/ja
Priority to KR1020187036593A priority patent/KR102173928B1/ko
Priority to US16/084,356 priority patent/US20190076987A1/en
Priority to EP17799342.5A priority patent/EP3460090A4/en
Priority to PCT/JP2017/018229 priority patent/WO2017199918A1/ja
Priority to CN201780030919.7A priority patent/CN109154057B/zh
Publication of JP2017206761A publication Critical patent/JP2017206761A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6307109B2 publication Critical patent/JP6307109B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B24GRINDING; POLISHING
    • B24CABRASIVE OR RELATED BLASTING WITH PARTICULATE MATERIAL
    • B24C1/00Methods for use of abrasive blasting for producing particular effects; Use of auxiliary equipment in connection with such methods
    • B24C1/10Methods for use of abrasive blasting for producing particular effects; Use of auxiliary equipment in connection with such methods for compacting surfaces, e.g. shot-peening
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C21METALLURGY OF IRON
    • C21DMODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
    • C21D7/00Modifying the physical properties of iron or steel by deformation
    • C21D7/02Modifying the physical properties of iron or steel by deformation by cold working
    • C21D7/04Modifying the physical properties of iron or steel by deformation by cold working of the surface
    • C21D7/06Modifying the physical properties of iron or steel by deformation by cold working of the surface by shot-peening or the like
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B24GRINDING; POLISHING
    • B24CABRASIVE OR RELATED BLASTING WITH PARTICULATE MATERIAL
    • B24C1/00Methods for use of abrasive blasting for producing particular effects; Use of auxiliary equipment in connection with such methods
    • B24C1/02Methods for use of abrasive blasting for producing particular effects; Use of auxiliary equipment in connection with such methods for sharpening or cleaning cutting tools, e.g. files
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22FCHANGING THE PHYSICAL STRUCTURE OF NON-FERROUS METALS AND NON-FERROUS ALLOYS
    • C22F1/00Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working
    • C22F1/04Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working of aluminium or alloys based thereon
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22FCHANGING THE PHYSICAL STRUCTURE OF NON-FERROUS METALS AND NON-FERROUS ALLOYS
    • C22F1/00Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working
    • C22F1/04Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working of aluminium or alloys based thereon
    • C22F1/043Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working of aluminium or alloys based thereon of alloys with silicon as the next major constituent
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22FCHANGING THE PHYSICAL STRUCTURE OF NON-FERROUS METALS AND NON-FERROUS ALLOYS
    • C22F1/00Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22FCHANGING THE PHYSICAL STRUCTURE OF NON-FERROUS METALS AND NON-FERROUS ALLOYS
    • C22F1/00Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working
    • C22F1/002Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working by rapid cooling or quenching; cooling agents used therefor

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Thermal Sciences (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Description

本発明は,金属成品の表面処理方法及び前記方法で表面処理された金属成品に関し,より詳細には,金属成品に所定の条件で微粒子を噴射することにより,該金属成品の表面付近の結晶構造をナノ結晶組織とすることにより金属成品の表面強化を行う表面処理方法及び前記方法で表面が強化された金属成品に関する。
金属材料の強度が結晶粒径の平方根の逆数に比例して増大することは,ホールペッチ(Hall-Petch)の関係として知られており,このような効果をもたらす結晶粒径の微細化は,金属成品の表面強化においても利用されている。
特に,表面付近の結晶粒径をナノレベルにまで微細化した金属成品では,表面硬度が飛躍的に上昇するだけでなく,耐摩耗性や耐食性の向上が得られるとの報告もされている。
このような表面強化を可能とする金属成品のナノ結晶化方法としては,ボールミリング,落錘加工,粒子衝突加工,ショットピーニングによる成功例が報告されており,特にショットピーニングによるナノ結晶化は,低コストかつ簡易な方法として注目されている。
なお,ショットピーニングによるナノ結晶組織の生成原理については依然として十分な解明が成されていないが,後掲の特許文献1及び非特許文献1には,軟質材料であるSS400鋼〔HV1.20GPa(HV122)〕に対し平均粒子径45μmの高速度鋼(SKH59)製ショットを0.5MPaにて30sec噴射した表面処理の例と,硬質材料であるSCr420浸炭焼入鋼〔初期硬さHV7.55GPa(HV770)〕に対し同一条件でショットピーニングを行った表面処理の例が紹介されていると共に,両例で形成されたナノ結晶組織の構造に大きな相違があることが記載されている(特許文献1,非特許文献1)。
なお,本明細書において,HV(GPa)とHV(無記号)間の換算は,「HV(無記号)≒HV(GPa)×102」として計算した〔JIS R 1610(2003)の付表1〕。
特開2007−297651号公報
高木眞一,熊谷正夫「FPB処理による表面ナノ結晶化」(精密工学会誌Vol.72.No.9.2006:1079−1082頁)
前述したように,ショットピーニングによって金属成品の表面組織をナノ結晶化しようとした場合,処理対象とする金属成品が軟質材料である場合に生成されるナノ結晶組織(層状加工組織)と,硬質材料から成る金属成品に生成されるナノ結晶組織(層状加工組織を伴わないもの)とで,構造に顕著な相違があることが前掲の特許文献1及び非特許文献1において報告されている。
このうち,硬質材料(SCr420浸炭焼入れ鋼)の金属成品の表面に生成されるナノ結晶組織は,表面から所定の深さ範囲に,表面に沿って均一に形成され,理想的な状態でナノ結晶組織が生成されたことが報告されている。
しかし,軟質材料(SS400鋼)の金属成品では,図1に示すようにショットピーニングの初期段階において噴射粒体の衝突により表面に著しい凹凸が形成され,その後,後続の噴射粒体の衝突によって形成された凹凸のうちの凸部が折畳まれて材料内部に向かって侵入していき,更に後続の衝突によって更なる凹凸の形成と凸部の折畳みが繰り返されることで,多数の層が折り重なってできた積層構造を有する層状加工組織が形成され,この層状加工組織では転移密度が著しく増加し,ある臨界点を越えるとナノ結晶化するものと考察されている。
このような層状加工組織を伴うナノ結晶組織は,金属成品の表面に沿って連続的に分布するものではなく,周辺の加工効果領域が表面に露出する場合や,層状加工組織(ナノ結晶組織)が加工硬化領域よりも深い位置に侵入している場合があると共に,折畳みの際の接合が十分でなかった層間に割れが生じた,不均一な組織となっており,ナノ結晶組織が形成されていない表面部分や割れの生じた部分に応力集中が生じる等して,ショットピーニングによるナノ結晶化によりかえって金属成品の疲労特性が劣化するおそれもある。
このように,軟質材料を加工対象とする場合には層状加工組織を伴ったナノ結晶組織が生成されてしまい,表面強化を行うことができない点に鑑み,前掲の特許文献1では,処理対象とする金属成品を初期硬さがHV7.0GPa(HV714)を越える硬質鋼のみに限定するものとしており,軟質材料に対し均一なナノ結晶組織を表面に沿って連続して形成する方法を開示していない。
そこで,本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,本発明の第1の目的は,軟質材料製の金属成品に対しても,前述した層状加工組織を形成することなく,均一なナノ結晶組織を,金属成品の表面に沿って連続して形成することができる金属成品の表面処理方法を提供することを目的とする。
また,本発明の第2の目的は,処理対象とする金属成品の母材硬度に拘わらず,軟質材料から硬質材料に至る全ての金属成品に対し共通に適用でき,かつ,均一なナノ結晶組織層を金属成品の表面に沿って連続して形成することのできる金属成品の表面処理方法を提供することを目的とする。
なお,切削工具を使用して行う切削加工では,切削工具の刃先によって被加工物の表面を物理的に切り込み,割り裂いて被加工物の一部を削り取り,この削り取りによって生じた切りくず(切り子)を排除しながら刃先を連続的に押し進めることによって切削を行うことから,切り子と切削工具のすくい面との間に生じる高い圧力と大きな摩擦抵抗及び切削熱によって切り子の一部が物理的,化学的変化により刃先の前方部分に凝着し,この凝着した切り子によって切削工具の刃先に,本来の刃先とは異なる「構成刃先」と呼ばれる凝着物が形成される。
この構成刃先の形成は,切削工具の刃先を鈍化して加工精度の低下等を招くものであるために望ましくない。
このような構成刃先に代表される被加工材の凝着は,ドリル,エンドミル,ホブ,ブローチ,フライス等の切削工具のみならず,パンチ等の打抜工具等のように,切削や切断のための刃先(エッジ)を備えた機械加工工具の刃先部全般においても生じ得るものである。
しかし,本発明の発明者らは試みにこのような機械加工工具の刃先部に対し本発明の表面処理方法を適用したところ,刃先部分の硬度上昇や耐摩耗性の向上等といった機械的特性が向上しただけでなく,構成刃先の生成が抑制される等,刃先部分に対する被加工材の凝着を防止できることが確認された。
また,摺動部材に対しては,粒体の噴射,衝突に伴い形成されるディンプルの油溜り効果で摺動性が向上することが一般に知られている。しかし従来の処理方法ではこの処理によって形成されたディンプルは研磨材の衝突により金属が押し分けられ,ディンプル外輪が凸状に大きく盛り上がってしまう。
このディンプル外輪の凸部は,摺動部材に対して初期摩耗を高めてしまう結果,初期摩耗により削れた金属の凝着,アブレーシブ摩耗など摺動性を劣化させる要因となってしまうため望ましくない。
このような現象はベアリング,シャフト,歯車など摺動部材全般に生じる得るものである。
そこで,摺動部材に対し本発明の処理を適用したところ硬度や残留応力が付与されるだけでなく,摺動性が向上すること,従って摺動部材の初期摩耗を高めるディンプル外輪の凸部を生じさせ難い処理方法であることが確認された。
従って,本発明は,このような機械加工工具の刃先部に対する被加工材の凝着防止のための表面処理方法としての利用,及び摺動部材の硬度上昇や残留応力の付与並びに摺動性の向上のための表面処理方法としての利用についても,その目的に含む。
上記目的を達成するための,本発明の金属成品の表面処理方法は,
金属成品に対し,メディアン径d50が1〜20μmで空気中での落下時間が10sec/m以上の略球状の噴射粒体を,0.05MPa〜0.5MPaの噴射圧力で噴射して,前記金属成品の表面に沿って表面から一定の深さの範囲を連続して均一に平均結晶粒径が300nm以下のナノ結晶に微細化させたナノ結晶組織層を形成すると共に,前記金属成品の表面に圧縮残留応力を付与したことを特徴とする(請求項1)。
なお,ここで「メディアン径d50」とは,累積質量50%径,すなわち,粒子群をある粒子径から2つに分けたとき,大きい側の粒子群の積算粒子量と,小さい側の粒子群の積算粒子量が等量となる径をいい,JIS R 6001(1987)における「累積高さ50%点の粒子径」と同義である。
前述した金属成品の表面処理方法において,前記噴射粒体の噴射速度を80m/sec以上とすることが好ましい(請求項2)。
また,前記金属成品の材質を,アルミニウム又はアルミニウム合金とすることができ,この場合,前記ナノ結晶組織層の結晶粒径を,100nm以下に微細化させることができる(請求項3)。
更に,前記金属成品を機械加工工具とし,その刃先(エッジ)と,該刃先近傍,好ましくは刃先から少なくとも1mm,より好ましくは少なくとも5mmの範囲を処理領域とし,
前記処理領域に,前記噴射粒体の噴射により相当径が1〜18μm,好ましくは1〜12μm,深さが0.02〜1.0μm以下のディンプルを,該ディンプルの投影面積が前記処理領域の表面積の30%以上となるように形成するものとしても良い(請求項4)。
または,前記金属成品をベアリング,シャフト,歯車などの他部材と摺接して使用される摺動部材とし,該摺動部材の少なくとも摺動部を処理領域とし,
前記処理領域に,前記噴射粒体の噴射により相当径が1〜18μm,好ましくは1〜12μm,深さが0.02〜1.0μm以下のディンプルを,該ディンプルの投影面積が前記処理領域の表面積の30%以上となるように形成するものとしても良い(請求項5)。なお,本発明において「相当径」とは,処理領域に形成された1個のディンプルの投影面積(本明細書において「投影面積」とは,前記ディンプルの外郭の面積をいう)を,円形の面積に換算して測定したときの前記円形の径をいう。
た,本発明の金属成品は,母材硬度がHV714(HV7.0GPa)以下で,表面に沿って表面から一定の深さの範囲が連続して均一に平均結晶粒径が300nm以下のナノ結晶に微細化したナノ結晶組織層を有すると共に,表面に圧縮残留応力が付与されていることを特徴とし,この金属成品は,これを機械加工工具とし,その刃先と該刃先近傍から成る処理領域の表面に前記ナノ結晶組織層が形成されていると共に,相当径が1〜18μm,深さが0.02〜1.0μm以下のディンプルが,該ディンプルの投影面積が前記処理領域の表面積の30%以上となるように形成されたものであっても良い(請求項)。
更に,本発明の金属成品は,母材硬度がHV714(HV7.0GPa)以下で,表面に沿って表面から一定の深さの範囲が連続して均一に平均結晶粒径が300nm以下のナノ結晶に微細化したナノ結晶組織層を有すると共に,表面に圧縮残留応力が付与されていることを特徴とし,この金属成品は,これを摺動部材とし,この摺動部材の摺動部表面に前記ナノ結晶組織層が形成されていると共に,相当径が1〜18μm,深さが0.02〜1.0μm以下のディンプルが,該ディンプルの投影面積が前記摺動部の表面積の30%以上となるように形成されたものであっても良い(請求項)。
以上で説明した本発明の表面処理方法で表面処理を行うことで,従来,層状加工組織が形成されてしまうことで連続した均一なナノ結晶組織層を形成することができなかった軟質材料から成る金属成品に対しても,連続した均一なナノ結晶組織層を形成することができると共に,比較的粒径の大きな噴射粒体を高い噴射圧力で噴射した場合と同等以上の高い圧縮残留応力を付与することができた。
すなわち,メディアン径が1〜20μmと小さく,空気中での落下時間が10sec/m以上の噴射粒体は,質量が小さく,金属成品の表面付近に応力が集中して深部まで至らず,衝突時における金属成品の表面変形も小さくすることができる一方,このような噴射粒体は,気流に乗り易いことから,気流の速度に近い速度で飛翔させることができ,噴射ノズル内を流れる気流の流速と同程度,一例として80m/sec以上の高速で噴射することが可能となる。
その結果,0.05MPa程度の比較的低い噴射圧力で噴射しても,ナノ結晶組織を得るに必要な衝突エネルギーを得ることができ,噴射圧力0.1MPa程度で金属成品の表面硬度を上昇させる効果は略飽和状態となって,0.1MPa以上の噴射圧力で噴射しても更なる硬度上昇が殆ど見られず,0.5MPa以下の比較的弱い噴射圧力であっても,金属成品の母材硬度に拘わらずナノ結晶組織層を得ることができると共に,従来技術として説明した50μm以上の噴射粒体を高圧で噴射した場合と同程度の圧縮残留応力を付与することができた。
また,0.05MPaでも0.1MPaの噴射圧力における約60%の硬度と圧縮残留応力が確保できる。
その結果,アルミニウム合金などの軟質材料製の金属成品であっても図1を参照して説明したような層状加工組織を形成することなく,従って,均一かつ連続したナノ結晶組織層を形成することができると共に,硬質材料製の金属成品に対しても,先行技術文献で示されている圧力よりも低い噴射圧力で均一かつ連続したナノ結晶組織層を形成することができたものと考えられる。
しかも,前述したように金属成品の母材硬度に拘わらず,同一の加工条件で金属成品の表面処理を行うことができたことで,被処理対象とする金属成品の硬度等を事前に把握することなくナノ結晶化が可能であり,材質等の異なる複数種類の金属成品が搬送される搬送ライン等において連続して表面処理を行うことも可能である。
更に,本願の表面処理方法では金属材料の中でも特に硬度が低いアルミニウム又はアルミニウム合金製の金属成品に対しても前述した層状加工組織を形成することなく,均一のナノ結晶組織層を表面に沿って連続して形成することができると共に,アルミニウム又はアルミニウム合金を処理対象とすることで,形成されるナノ結晶組織層の結晶粒径を100nm以下という,より微細なものとすることができ,より高い表面強化の効果を得ることができた。
更に,切削工具等の機械加工工具の刃先(エッジ)と,該刃先近傍を処理領域とし,この処理領域に対し前記噴射粒体の噴射により相当径が1〜18μm,好ましくは1〜12μm,深さが0.02〜1.0μm以下のディンプルを,該ディンプルの投影面積が前記処理領域の表面積の30%以上となるように形成した例では,刃先に対する構成刃先の生成が防止される等,処理対象とした機械加工工具の刃先が強化されるだけでなく,刃先に対し被加工材の凝着を防止することができた。
摺動部材についても本発明の方法で処理することで,形成されるディンプル外輪の凸部高さを抑制することができ,初期摩耗の軽減によるアブレーシブ摩耗や摩耗粉の凝着など防止することで摺動性を改善することができた。
軟質材料に対する層状加工組織の形成原理を示した説明図。 機械加工工具の刃先部に対する適用例の説明図であり,(A)は処理前の状態,(B)は処理後の状態。 噴射粒体の衝突時に圧縮力が掛かる部分(受圧面)の説明図。 FEMによるフォンミーゼス応力の解析画像(噴射粒体5μm)。 FEMによるフォンミーゼス応力の解析画像(噴射粒体10μm)。 FEMによるフォンミーゼス応力の解析画像(噴射粒体20μm)。 FEMによるフォンミーゼス応力の解析画像(噴射粒体50μm)。 FEMによるフォンミーゼス応力の解析画像(噴射粒体100μm)。 噴射粒体の粒径と応力の関係を示したグラフ。 噴射粉体の粒径と最大応力発生深さの関係を示したグラフ。 噴射圧力とダイナミック硬さの関係を示したグラフ。 プリハードン鋼(大同特殊鋼製「NAK80」)のSIM像であり,(A)は処理前,(B)は本願の表面処理後の状態。 合金工具鋼(SKD11)のSIM像であり,(A)は処理前,(B)は本願の表面処理後の状態。 アルミニウム合金(A7075)のSIM像であり,(A)は処理前,(B)は本願の表面処理後の状態。 本発明の方法で処理したプリハードン鋼(大同特殊鋼製「NAK80」)の結晶粒径分布図。 本発明の方法で処理した合金工具鋼(SKD11)の結晶粒径分布図。 プリハードン鋼(大同特殊鋼製「NAK80」)の残留応力の測定結果を示したグラフ。 合金工具鋼(SKD11)の残留応力の測定結果を示したグラフ。 アルミニウム合金(A7075)の残留応力の測定結果を示したグラフ。 経過時間に対するフリクション変化を測定したグラフ。
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
〔処理対象〕
本発明の表面処理方法において処理対象とする金属成品としては,金属製のものであれば鉄系金属の他,非鉄金属及びその合金製の金属成品に対しても適用可能である。
また,処理対象とする金属成品は,その母材硬度に制限はなく,アルミニウムやその合金,及びプリハードン鋼(HV400:大同特殊鋼製「NAK80」)等のようにHV20〜400程度の比較的軟質な金属から,SKD11(HV697)等の高硬度鋼に対しても適用可能である。
特に,本発明の方法では,従来,図1を参照して説明した層状加工組織が形成されるために均質かつ連続したナノ結晶組織層の形成ができないとされていた軟質材料製の金属成品に対する処理が可能であり,このような軟質材料中,特に硬度が低いアルミニウム及びアルミニウム合金製の金属成品を対象とした処理では,形成されるナノ結晶組織層の結晶粒径が100nm以下という極めて微細な結晶粒径とすることができることが確認されており,その結果,大きな表面強化効果を得ることができる。
なお,処理対象とする金属成品の用途についても特に限定されず,表面強化が必要な各種用途の金属成品に対し適用可能であるが,切削工具等の機械加工工具の刃先及びその近傍に対し本発明の表面処理方法を適用する場合には,刃先部分の強化が行えるだけでなく,刃先に対する被加工材の凝着についても防止できるものとなる点で好ましい。
このように,機械加工工具の刃先を処理対象とする場合,図2に示すように切削や切断時におけるせん断の起点となる刃先(エッジ)の部分と,この刃先に対し,少なくともmmの範囲,好ましくは少なくともmmの範囲(刃先から図中,二点鎖線で示した範囲)を,後述する噴射粒体を噴射・衝突させる処理領域として後述する噴射粒体の噴射を行い,この部分の表面にナノ結晶組織層を形成すると共に,図2(B)に示すようにこの領域にディンプルを形成する。
本実施形態では,刃先を中心に,その両側の傾斜面をいずれとも処理領域とするが,処理領域は,切削時により大きな摩擦抵抗を受け,被切削材の凝着が生じる側の面のみに設けるものとしても良い。
更に,本発明の表面処理方法を,ベアリング,シャフト,歯車などの他部材と摺接させて使用する摺動部材の表面強化と摺動性の向上を目的として行う場合には,摺動部材のうち,少なくとも他部材との摺動部を前述した加工領域とする。
なお,処理対象とする金属成品の表面は,バリが付着した状態や,ツールマークなどの加工痕が形成されたままの状態のものであっても良いが,予め算術平均粗さ(Ra)で3.2μm以下の表面粗さに研磨する,事前研磨を行っておくことが好ましい。
このような事前研磨の方法は,特に限定されず,手作業によるラッピングやバフ掛けによる研磨によって行うものとしても良いが,このような事前研磨を,弾性研磨材を使用したブラスト加工によって行うものとしても良い。
ここで,弾性研磨材とは,ゴムやエラストマー等の弾性体に砥粒を分散させ,又は弾性体の表面に砥粒を担持させた研磨材で,このような弾性研磨材は,これを斜めに噴射等することで金属成品の表面上を滑動させることができ,これにより比較的簡単に金属成品の表面を鏡面,あるいはこれに近い状態に研磨することができる。
なお,弾性研磨材の弾性体に分散し,あるいは担持させる砥粒としては,金属成品の表面状態等に応じて適宜選択可能であるが,一例として,♯1000〜♯10000の炭化ケイ素やダイヤモンド砥粒を使用することができる。
〔表面処理〕
前述した金属成品の表面のうち,表面強化を行う領域に対し,略球状の噴射粒体を噴射して前述した領域に衝突させる。
この表面処理に使用する噴射粒体,噴射装置,噴射条件を一例として以下に示す。
(1)噴射粒体
本発明の表面処理方法で使用する略球状の噴射粒体における「略球状」とは,厳密に「球」である必要はなく,一般に「ショット」として使用される,角のない形状の粒体であれば,例えば楕円形や俵型等の形状のものであっても本発明で使用する「略球状の噴射粒体」に含まれる。
噴射粒体の材質としては,金属系,セラミックス系のいずれのものも使用可能であり,一例として,金属系の噴射粒体の材質としては,合金鋼,鋳鉄,高速度工具鋼(ハイス鋼)(SKH),タングステン(W),ステンレス鋼(SUS),ボロン(B),クロムボロン鋼(FeCrB)等を挙げることができ,また,セラミックス系の噴射粒体の材質としては,アルミナ(Al),ジルコニア(ZrO),ジルコン(ZrSiO),硬質ガラス,ガラス,炭化ケイ素(SiC)等を挙げることができる。
使用する噴射粒体の粒径は,メディアン径(d50)で1〜20μmの範囲のものが使用可能で,鉄系のものであればメディアン径(d50)で1〜20μm,好ましくは5〜20μm,セラミックス系のものであればメディアン径(d50)で1〜20μm,好ましくは4〜16μmの範囲のものを使用する。
なお,メディアン径1〜20μmという微粉の噴射粒体では,噴射粒体の材料密度の選択により,空気中における落下時間が長い(空気中を浮遊する)性質を付与することができ,このような性質を持った噴射粒体は,気流に乗り易く,気流の流速と同程度の速度で飛翔させることが可能となる。
そこで,本願の表面処理方法では,使用する噴射粒体を,無風状態の空気中における落下時間が10sec/m以上のものを使用し,ブラスト加工装置の噴射ノズルから噴射される気流の流速と略同じ速度で噴射できるようにした。
この落下速度は,粒径が同一であれば噴射粒体を構成する材料の密度が低いもの程,落下時間が長くなり,密度7.85の鉄系の噴射粉体では,粒径20μmで10.6sec,粒径10μmで41.7secであり,密度3.2のセラミックス系の噴射粒体では,粒径20μmで26.3sec,粒径10μmで100secである。
なお,使用する噴射粒体は,処理対象とする金属成品の母材に対し同等以上の硬度を有する材質の噴射粒体を使用することが好ましく,セラミックス系の噴射粒体を使用する場合,略全ての金属成品に対し高硬度となると共に,セラミックス系の噴射粒体は密度が低く,前述した落下時間が長くなるため,高速の噴射速度が得られる点で好ましい。
(2)噴射装置
前述した噴射粒体を処理領域の表面に向けて噴射する噴射装置としては,圧縮気体と共に研磨材の噴射を行う既知のブラスト加工装置を使用することができる。
このようなブラスト加工装置としては,圧縮気体の噴射により生じた負圧を利用して研磨材を噴射するサクション式のブラスト加工装置,研磨材タンクから落下した研磨材を圧縮気体に乗せて噴射する重力式のブラスト加工装置,研磨材が投入されたタンク内に圧縮気体を導入し,別途与えられた圧縮気体供給源からの圧縮気体流に研磨材タンクからの研磨材流を合流させて噴射する直圧式のブラスト加工装置,及び,上記直圧式の圧縮気体流を,ブロワーユニットで発生させた気体流に乗せて噴射するブロワー式ブラスト加工装置等が市販されているが,これらはいずれも前述した噴射粒体の噴射に使用可能である。
(3)処理条件
以上で説明した金属成品に対し,前述した材質等からなるメディアン径d50が1〜20μmで空気中での落下時間が10sec/m以上の略球状の噴射粒体を,0.05MPa以上,0.5MPa以下の噴射圧力で噴射することにより行う。
〔最適条件の確認〕
(1)噴射粒体の粒径
(1-1) 着想点
前述したように,軟質材料製の金属成品に対しても均一なナノ結晶組織層を表面に沿って連続して形成するためには,図1を参照して説明した層状加工組織の生成を抑制する必要があり,このような層状加工組織の生成を抑制するためには,噴射粉体が衝突した際に生じる,金属成品表面の変形を抑制することが必要となる。
一方,ナノ結晶組織を生成するためには,金属成品の表面付近に,臨界値を越える歪みを付与することが必要で,臨界値を越える歪みを与えるためには,噴射粒体の衝突により金属成品の表面に大きな衝撃力を与える必要があると考えられていた。
しかし,金属成品の表面に与える衝撃力を大きくすればする程,金属成品の表面の変形量が大きくなって図1を参照して説明した層状加工組織が生成され易くなり,このことが軟質材料製の金属成品に対し,層状加工組織を伴わない均一な,表面に沿って連続したナノ結晶組織層を生成することを困難にする。
そこで,本発明の発明者らは,噴射粒体の衝突時に金属成品表面が受ける衝撃力を減少させて金属成品の表面が変形することを抑制しながら,ナノ結晶組織の生成に必要な,臨界値を越える歪みを付与するという,相反する要求を満足させることのできる処理条件を検討した。
(1-2)衝突による変形量
噴射粒体が衝突したときに生じる金属製品表面の変形量を検討した。
メディアン径d50が20μmと40μmの粒体を衝突させ,形状解析レーザー顕微鏡でその表面の凸部体積を測定し,その凸部体積が折り畳みにより形成される層状加工組織の生成されやすさとして比較した。凸部体積が大きいほど粒体が衝突したときの折り畳める量が大きくなると考えられるためである。
測定方法は形状解析レーザー顕微鏡(キーエンス社製 VK-X250)を使用し,測定倍率1000倍で表面を測定した。
測定したデータを,マルチファイル解析アプリケーション(キーエンス社製)を用いて解析を行った。
マルチファイル解析アプリケーションとは,レーザー顕微鏡で測定したデータを用いて,表面粗さ,平面計測,プロファイル計測,体積・面積計測などの各種計測を行うためのソフトである。
測定は,まず「画像処理」機能を用いて基準面設定を行い(但し,表面形状が曲面の場合には面形状補正を用いて曲面を平面に補正した後に基準面設定を行う)次に,アプリケーションの「体積・面積計測」の機能から計測モードを凸部に設定して,設定された「基準面」に対する凸部を計測させ,凸部の計測結果から「体積」の結果の平均値をディンプル凸部体積とした。
基準面とは,高さデータから最小二乗法を用いて算出したものである。
下表(表1)がその結果である。本発明の領域の粒体径20μmは従来技術の径40μmと比較すると凸部体積は約70%減少する結果となった。
この極めて小さな変形量こそが均一なナノ結晶組織形成の要因となると考えられる。
(1-3) 衝撃力Fの検討
上記処理条件を検討に際し,噴射粒体(1粒)の衝突により金属成品の表面に与える衝撃力Fを算出するための計算式に基づき,衝撃力Fと噴射粒体の粒径との関係を再検討した。
ここで,噴射粒体(1粒)の質量をm(kg),噴射粒体の衝突前の速度をv1(m/sec),衝突後の速度をv2(m/sec)とし,衝突時の跳ね返り係数εを1.0と仮定すると,噴射粒体の衝突前の運動量M1と,衝突後の運動量M2は,それぞれ,
M1=m・v1(kgm/s)・・・式1
M2=m・v2=-m・v1(kgm/s)・・・式2
となる。
従って,噴射粒体の衝突前後における運動量の変化ΔMは,
ΔM=M1-M2=m・v1-(-m・v1)=2m・v1(kgm/s)・・・式3
となる。
ここで,運動量の変化ΔMは,力積FΔtに等しく(Δtは力積時間),
FΔt=ΔM・・・式4
となる。
従って,噴射粒体(1粒)が,金属成品の表面に衝突した際に与える衝撃力Fは,
F=ΔM/Δt=2mv1/Δt(N) ・・・式5
となる。
上記衝撃力Fの式(式5)より,衝撃力Fは,噴射粒体の質量mに比例して変化するため,噴射粒体の粒径が大きくなればなる程,大きくなる。
(1-4) 噴射粒体の粒径と受圧面
前述したように衝撃力Fは,噴射粒体の粒径が大きくなればなる程,大きくなる。そして,使用する噴射粒体の粒径が大きく衝撃力Fが大きくなれば,金属成品の表面に衝突した際に,金属成品の表面に対し変形を及ぼす部分の面積(図3中の符号Sで示した部分)も増大する。
そこで,このような噴射粒体の粒径変化に対し,金属成品の表面中,圧縮力が掛かる面積(受圧面S)がどのように変化するかを検討した。
ここで,噴射粒体との干渉が生じる金属成品の表面(円形の水平面)を受圧面Sとすると,
受圧面Sの半径a,噴射粒体の半径r,及び窪みの深さX間には,
a2+(r-X)2=r2 ・・・式6
a2=r2-(r-X)2=r2-(r2-2rX+X2)=2rX-X2・・・式7
という関係が成立する。
ここで,噴射粒体の直径dに対する窪みの深さXの比率をαとすると,
X=2rα ・・・式8
となる。
従って,上記式7のXに,式8を代入すると,
a2=2r(2rα)-(2rα)2 ・・・式8
2r=d より,
a2=d2α-d2α2=d2α(1-α)・・・式9
従って,受圧面の面積S(m2)は,
S=πa2=πd2α(1-α) ・・・式10
となり,受圧面Sの面積は,噴射粒体の直径の自乗に比例して増加する。
ここで,図1を参照して説明した層状加工組織は,衝突時に凹凸が形成され,このうちの凸部が折り畳まれることにより形成されるが,この凸部は,図3を参照して説明した窪み部(図3中の斜線部分)にあった母材が,噴射粒体が衝突した際に押し出されることにより形成されたものである。
従って,前述した受圧面Sの面積が大きくなる程,形成される凸部が大きくなり,層状加工組織が形成され易くなるものと推測される。
(1-5) 噴射粒体の粒径と噴射速度
なお,前掲の衝撃力Fの式(式5)より,衝撃力Fは,噴射粒体の質量mの増大に伴って増大するだけでなく,噴射速度v1の増加によっても増大する。
そこで,噴射粒体の粒径変化に対し,噴射速度がどのように変化するかを論文:小川,浅野ら「空気噴射式ショットピーニングにおける粒子速度の測定と解析」(日本機械学会論文集C編,60巻571号,1994-3)の噴射速度計算式を参照して噴射速度を算出した。
(1-6)噴射粒体の最適粒径予測
以上の計算式等を使用し,一例としてスチール製の噴射粒体(密度7.85)の粒径の変化に対する衝突条件の変化を下記の表2及び表3にまとめた。
上記の表2及び表3から明らかなように,噴射粒体の粒径を大きくすればする程,衝撃力Fは増加するが,これに伴い,受圧面積Sも増加するため,噴射粒体の衝突に伴い金属成品の表面に大きな凸部が形成される結果,この凸部が折り畳まれることによって生じるものと考えられる層状加工組織が生成され易くなるものと考えられる。
しかも,噴射粒体の粒径を大きくする程,衝撃力Fの値は大きくなるが,前述したように受圧面Sの面積は噴射粒体の直径dの自乗に比例して増加することから,この衝撃力Fを,受圧面Sの単位面積あたり(衝撃力F/受圧面積S)で考えた場合,単位面積あたりに加わる力は小さなものとなる。
また,各粒径における衝突エネルギーは表1の0.5MPaで各粒子を噴射させた場合,粒径d50=50μmの衝突エネルギーを1とするとd50=10μm,20μmでは約2〜3倍の大きなエネルギーを表面に投入することができる。
このことから,粒径の大きな噴射粒体の使用は,金属成品の表面を変形させ易く,図1を参照して説明した層状加工組織を生成し易いだけでなく,ナノ結晶組織を得るために必要な,臨界値を越えた歪みを得難くしていることが予想される。
そこで,上記表2及び表3に示す計算値に基づき,有限要素法(Finite Element Method:FEM)による解析(以下,「FEM解析」という)によりフォンミーゼス(Von Mises)応力のシミュレーションを行った。その結果を図4〜図8に示す。
また,上記シミュレーションの結果から得られた,噴射粒体の粒径と応力の変化の関係を示したグラフを図9に,噴射粒体の粒径と最大応力の発生深さの関係を示したグラフを図10にそれぞれ示す。
ここで,FEM解析は,数値解析手法の1つであり,複雑形状モデルなど解析的手法で解くことが困難な場合,領域を微小要素に分割し要素単位で単純方程式を立て要素間を補間関数で近似して領域全体の解を得る手法であり,ここでは解析用のソフトウェアとして,「Femap with NX NASTRAN」(株式会社エヌ・エス・ティ製)を使用した。
また,「フォンミーゼス応力」とは,せん断ひずみエネルギー説に基づく相当応力のことで,方向を持たないスカラー値として表現されるもので荷重が多方向から複雑にかかるような応力場で,1軸の引張りまたは圧縮応力へ投影した値である。
このフォンミーゼス応力を参照することで,この材料が降伏するかどうかを判断する指標となり,降伏応力との比較の際に,他方向に応力を見る必要がなく,フォンミーゼス応力一つで判断し得るものである点に鑑み,これを利用して,噴射粒体の衝突によって生じる応力をシミュレートした。
シミュレーション結果より,噴射粒体の粒径と,応力の入る深さの関係を見ると,噴射粒体の粒径が小さい程,表面の非常に浅い層に強い応力が入り,粒径が大きくなると応力はより深い層まで入るが,その応力は小さくなっていることが判る。
特に,噴射粒体の粒径20μmを境として,金属成品の表面に対し入る応力の深さと強さが変化し,20μmを越えると,応力の強さが大幅に小さくなっていることが,図4〜図8において明らかとなっている。
すなわち,図4〜図8に示す等値線図(コンター図)において,三日月型に見える部分の中心が応力の最も強く入っている部分を表しているが,20μm以下の噴射粒体によるシミュレーションでは表層付近の一部分に非常に強い応力が加わっているが,粒子径が大きくなると,応力が広く,深く分散するため,応力の強度は弱くなる(図9,図10参照)。
以上の結果から,20μm以下の噴射粒体の使用は,金属成品の表面に,図1を参照して説明したように層状加工組織の形成原因となる凹凸(特に凸部)を形成させ難く,しかも,ナノ結晶組織を生成するに必要な,臨界値を越えた組成歪みを,金属成品の表面近くに集中して生じさせる効果があるものと考えられる。
(2)噴射圧力の決定
合金工具鋼(SKD11),プリハードン鋼(大同特殊鋼製「NAK80」),アルミニウム合金(A7075)製の試験片中の6mm×5mmの領域に対し,メディアン径d50が20μmの鉄合金の噴射粒体を噴射して,各試験片の表面硬度(ダイナミック硬さ)の変化を測定した。
硬質材料,軟質材料のいずれにも適用可能な噴射圧力を導き出すために,材料毎に異なる噴射圧力で加工した試験片をそれぞれ作成し,各試験片中の6mm×5mmの領域における30点でダイナミック硬さを測定して求めた硬度を,各試験片の表面硬さ(ダイナミック硬さ)とした。
この測定結果をグラフにしたものを図11に示す。
なお,ダイナミック硬さ(DHT)は,圧子押し込みにより硬度を測定するもので,その測定を下記の条件で行った。
使用機器:島津製作所製ダイナミック超微小硬度計「DUH−W210」
押込荷重:3gf(A7075),5gf(「NAK80」),10gf(SKD11)
保持時間:5秒
圧子形状:三角錐ダイヤモンド圧子(115°)
算出方法:DHT=α×P÷(D2)
なお,上記の式において,DHTはダイナミック硬さ,αは圧子形状係数(3.8584),Pは押込荷重(mN),Dは押込深さである。
従来,ショットピーニングにより金属成品の表面に強い応力を与えようとした場合,噴射圧力を高めることが有効と考えられていた。
しかし,図11に示した上記ダイナミック硬さ(DHT)の測定結果から,本願で使用するメディアン径20μm以下の噴射粒体にあっても,噴射圧力が0〜0.1MPaの範囲では,噴射圧力の上昇に応じて金属成品の表面硬度(ダイナミック硬さ)が上昇することが確認されたが,0.1MPaを越えると,高硬度及び低硬度のいずれの材質の試験片においても,表面硬度の更なる上昇が見られなくなっており,噴射圧力0.1MPa付近で,硬度を向上させる効果が飽和していることが確認された。
従って,本発明の方法では,噴射圧力が0.05MPa以上であれば処理対象とする金属成品の表面に対し硬度を上昇させる(従って,ナノ結晶化させる)ために必要なエネルギーを付与できていると考えられ,0.5MPa以下の比較的低い噴射圧力によって硬質材料,軟質材料共に表面処理を行うことが可能であることが確認された。
また,このように微小な噴射粒体を使用して比較的低い噴射圧力で加工が可能となることで,軟質材料製の金属成品を処理対象とした場合であっても,金属成品表面の変形を最小に抑えることで,図1を参照して説明した層状加工組織の生成を抑制することができるものと考えられる。
このように,本発明の方法において低い噴射圧力を適用できるのは,一般に粒子を空気中で重力沈降させる場合,粒子径が大きいと重力(外力)により落下するが,粒子径が小さい場合気流に乗り易いため沈降し難いという性質によるものと考えられる。
すなわち,このような粒子径が小さい噴射粒体では,質量が小さく慣性力の影響が小さいため,これを動かすために大きな力を必要とせず,搬送気体の圧力が低くても噴射粒体は噴射気流に乗りやすく,最高速度に至る距離は短くなるため,噴射粒体は,容易に噴射ノズルから噴射される圧縮気体の速度に近付けることができる。
その結果,前述したように気流に乗り易い噴射粒体を使用することで,噴射圧力を0.1MPaとした場合と,0.5MPaとした場合とで噴射粒体の噴射速度には大きな差がなくなり,噴射圧力を0.1MPaとした場合であっても,0.5MPaとした場合と同様の硬度上昇が得られたものと考えられる。
また,0.05MPaの圧力においてもその硬度は0.1MPaにおける60%以上の硬度を付与できる。
但し,メディアン径が20μm以下の噴射粉体であっても,質量が大きなものは慣性力の影響を受け易くなり,気流に乗り難く,最大速度に至る前に金属成品の表面に到達することとなる。
ここで,上記試験で使用したメディアン径20μmの鉄系の噴射粒体は,空気中における落下時間(ストークスの式における終端速度の逆数)が,10.6(sec/m)であり,この噴射粒体を使用した試験では,噴射圧力0.05MPa以上,0.5MPa以下の範囲において,いずれも良好な表面硬度(ダイナミック硬さ)の向上が得られている。
従って,この噴射粒体よりも空気中における落下時間が長く,気流に乗り易いものであれば,必要な噴射速度を得ることができ,金属成品の表面をナノ結晶化させることができるものと考えられる。
上記の結果より,本発明の方法で使用する噴射粒体を,メディアン径が20μm以下で,空気中における落下時間が10sec/m以上のものとした。
なお,前述した粒径20μmの鉄系の噴射粉体の噴射速度は,表2及び表3より80m/sec以上であり,本願の表面処理方法では,噴射粒体を噴射速度80m/sec以上で噴射することが好ましい。
〔効果確認試験〕
(1)試験の目的
前述した処理条件を導き出すための試験及びシミュレーションの結果得られた処理条件でショットピーニングを行うことで,硬質材料製の金属成品と軟質材料製の金属成品のいずれに対しても,均一なナノ結晶組織層を表面に沿って連続して形成することができ,かつ,金属成品の表面に高い残留応力を付与できることを確認する。
(2)試験方法
プリハードン鋼(大同特殊鋼製「NAK80」),合金工具鋼(SKD11)及びアルミニウム合金(A7075)製の試験片に対し,本発明の方法で表面処理を行った。
表面処理条件を下記の表4に示す。
(3)観察方法
上記条件で表面処理を行った各試験片を,以下の方法で観察した。
(3-1) SIMによる観察
走査イオン顕微鏡(Scanning Ion Microscope:SIM 日立ハイテクサイエンス製「SMI3050SE」)を使用して,各試験片の表面付近の結晶構造の変化を観察した。
(3-2) EBSDによる観察
後方散乱電子解析(Electron Back Scatter Diffraction TSLソリューションズ製)により,各試験片の表面付近の結晶組織における,結晶粒径と結晶粒分布を観察した。
(3-3) 残量応力測定
ポータブル型X線残留応力測定装置(パルテック工業製「μ−X360」)を使用して,各試験片の最表面における残留応力を測定した。
(4)試験結果
(4-1) SIMによる観察結果
各試験片のSIM像を図12〜図14に示す。図12はプリハードン鋼(NAK80),図13は合金工具鋼(SKD11),図14はアルミニウム合金(A7075)のSIM像であり,各図の(A)は処理前,(B)は処理後の試験片をそれぞれ撮影したものである。
いずれの材質の試験片においても,本発明の方法により表面処理を行った後のものでは表層から約3μmの領域の金属組織が明らかに微細化していることが確認でき,微細化後の結晶粒は,いずれもナノ結晶組織となっていることが確認された。
このナノ結晶組織は,SIM像の視野(約10μm)内において試験片の表面に沿って連続して形成されており,連続したナノ結晶組織層が形成されていることが確認された。
また,このナノ結晶組織は,軟質材料であるアルミニウム合金(A7075)を処理対象とした試験片においても,図1を参照して説明した層状加工組織を伴うことなく,また,組織中に割れ等を伴わない均一なナノ結晶組織が形成されていることが確認された。
なお,これらの試験片では,表層から3μmの範囲に微結晶(ナノ結晶)化が顕著な領域が確認されているが,表層からの深さが更に深い領域においても結晶の微細化が見られ,特に,アルミニウム合金製の試験片における微細化が顕著である。
このように,SIMによる観察結果から,本発明の表面処理方法では,硬質材料製の試験片と,軟質材料製の試験片のいずれに対しても表面から所定深さ(約3μm)の範囲に,層状加工組織を伴わない,均一なナノ結晶組織層を,表面に沿って連続して形成できるものであることが確認された。
なお,このようにして表面付近にナノ結晶組織層が形成された試験片は,図11を参照して説明したように,未処理のもの(図11中の噴射圧力0MPa)に比較して表面硬度(ダイナミック硬度)が約100〜200上昇しており,軟質材料から硬質材料に至るまで,あらゆる材料で形成された金属成品に対する表面強化方法として有効であることが確認されている。
(4-2) EBSDによる観察結果
EBSDによる解析の結果得られた,プリハードン鋼(NAK80)試験片の表面付近における結晶粒の粒度分布を図15に,合金工具鋼(SKD11)試験片の表面付近における結晶粒の粒度分布を図16にそれぞれ示す。
EBSDによる観察結果より,プリハードン鋼(NAK80)では,ナノ結晶組織層の結晶粒径が100〜500nmの範囲であることが確認でき,また,結晶粒分布(図15参照)より,このナノ結集組織層の平均結晶粒径は240nmであった。
また,合金工具鋼(SKD11)では,ナノ結晶組織層の結晶粒径が100〜500nmの範囲であることが確認でき,また,結晶粒分布(図16参照)より,このナノ結集組織層の平均結晶粒径は223nmであった。
なお,アルミニウム合金(A7075)試験片では,生成された結晶粒径がEBSDの分解能に対し大幅に小さなものとなっていたため,EBSDによる結晶解析を行うことはできなかったが,EBSDの最高分解能が30nmであったこと,SIM像より試験片中,最も微細な結晶粒が観察されていることから,アルミニウム合金(A7075)の表面に形成されたナノ結晶組織層では,結晶粒の多くがEBSDの最高分解能である30nmよりも小さなものとなっていることが合理的に推測でき,従って,アルミニウム合金(A7075)の表面に形成されたナノ結晶組織層の結晶粒径は100nm以下であると考えられる。
(4-3) 残量応力の測定結果
各試験片の最表面の残留応力の測定結果をグラフにまとめたものを図17〜19に示す。
いずれの試験片においても,未加工の状態では+の値(引張応力)となっていた残留応力が,−の値(圧縮応力)に転じており,本発明の表面処理方法を行うことで,高い圧縮残留応力を付与できることが確認できた。
このうち,図17に示すプリハードン鋼(NAK80)の応力と,図19に示すアルミニウム合金(A7075)の応力では,噴射圧力の変化に対する変化が殆ど見られず,前述したように噴射圧力0.1MPa以上であれば,0.5MPa以下の比較的低い噴射圧力で噴射した場合であっても,十分な圧縮残留応力付与することができることが確認された。
なお,アルミニウム合金(A7075)の残留応力を記載した図19のグラフ中,比較例として表示したグラフは,噴射圧力0.5MPaで,本願の範囲よりも大きいメディアン径40μmの噴射粒体を噴射した際の残留応力の測定結果を表示したものである。
このように,本願で使用する噴射粒体に比較して粒径の大きな噴射粉体を使用した例(比較例)では,圧縮残留応力を付与することはできているものの,本願の方法によって付与される残留応力に対し1/5以下の残留応力しか付与できておらず,本発明の方法で表面処理を行う場合には,より高い表面強化の効果が得られている。
なお,合金工具鋼(SKD11)に対する試験結果(図18参照)では,噴射圧力の増加に従い残留応力の増加が見られたが,最も低い噴射圧力(0.1MPa)で噴射した場合でも,十分な残留応力の付与が行われている。
また,噴射圧力0.1MPaで本願の表面処理を行った例では,比較例(噴射粒体のメディアン径40μm,噴射圧力0.5MPa)に比較して,残留応力が若干低くなっているものの,噴射圧力0.3MPa,0.5MPaでは,比較例と同等以上の残留応力の付与が行われている。
〔機械加工工具の刃先に対する適用〕
(1)試験方法
本発明の表面処理方法で刃先部の処理を行ったSKD11製の打ち抜き工具(実施例1,2)と,未処理のSKD11製の打ち抜き工具(未処理品),及び本願の処理条件から外れた処理条件で表面処理を行ったSKD11製の打ち抜き工具(比較例1)をそれぞれ使用して打ち抜きプレス加工を行い,加工後の刃先部の状態を観察した。
(2)表面処理条件
SKD11製の打ち抜き加工用パンチ(長さ3cm,直径0.5cm)の刃先部分(刃先及び刃先から5mmの範囲)に対し,下記の表5に示す条件で表面処理を行った。
なお,上記の表5中,「噴射方式」における「SF」は,サクション噴射方式を示し,本試験例ではブラスト加工装置として,株式会社二製作所製の「SFK-2」を使用した。
(3)打ち抜き加工条件及び観察方法
実施例1,実施例2,および比較例1それぞれの方法で表面処理したパンチと,未処理品をそれぞれ使用し,SS鋼材製の被加工物に対し,打ち抜きプレス加工を9000回連続して実施し,この打ち抜きプレス加工後の各パンチの表面状態を目視及び顕微鏡により消耗具合を観察した。
(4) 観察結果
上記打ち抜きプレス加工後の各パンチの表面状態は,下記の表6に示す通りである。
(5)考察
本発明ではSKD11製のパンチに対し本発明の表面処理を行ったことにより,未処理の表面硬度約750Hvに対し,実施例1の処理では表面処理後の硬度が約950Hvにまで上昇しており,約21%の硬度上昇が見られた。
また,実施例2の処理では硬度が約870Hvまで上昇しており,約16%の硬度上昇がみられた。
このような硬度上昇は,前述したナノ結晶組織層の形成によってもたらたれたものと考えられる。
また,本発明の方法で表面処理を行ったパンチ(実施例1,2)では,前述したように刃先に対する被加工材の凝着についても防止できるものとなっており,このことが,長期に亘る良好な打抜性能を発揮してパンチの寿命を向上させる一因となったものと考えられる。
このような被切削材の凝着が防止される効果が得られる原理は必ずしも明らかではないが,本発明の方法で表面処理を行った金属成品の表面には,相当径が1〜18μm,深さが0.02〜1.0μm以下の微細なディンプル〔図2(B)参照〕が,このディンプルの投影面積が前記処理領域の表面積の30%以上形成されており,このディンプルが油溜まりとなることで,被切削材の凝着を防止する効果が得られたものと考えられる。
なお,ディンプルの径(相当径)と深さは,形状解析レーザー顕微鏡(キーエンス社製「VK−X250」)を使用して測定した。金属成品表面を直接測定可能な場合には直接,直接測定できない場合には,アセチルセルロースフィルムに酢酸メチルを滴下して金属成品の表面に馴染ませた後,乾燥後剥離して,アセチルセルロースフィルムに反転転写させたディンプルに基づいて測定した。測定は,形状解析レーザー顕微鏡で撮影した表面画像のデータ(但し,アセチルセルロースフィルムを使用した測定では撮影した画像を反転処理した画像データ)を「マルチファイル解析アプリケーション(キーエンス社製 VK-H1XM)」を使用して解析することにより行った。
ここで,「マルチファイル解析アプリケーション」とは,レーザー顕微鏡で測定したデータを用いて,表面粗さ,線粗さ,高さや幅などの計測,円相当径や深さなどの解析や基準面設定,高さ反転などの画像処理を行うことのできるアプリケーションである。
測定は,先ず「画像処理」機能を使用して基準面設定を行い(但し,表面形状が曲面の場合には面形状補正を用いて曲面を平面に補正した後に基準面設定を行う),次いで,アプリケーションの「体積・面積計測」の機能から計測モードを凹部に設定して,設定された「基準面」に対する凹部を計測させ,凹部の計測結果から「平均深さ」,「円相当径」の結果の平均値をディンプルの深さ,及び相当径とした。
なお,前述の基準面は,高さデータから最小二乗法を用いて算出した。
また,前述の「円相当径」又は「相当径」は,凹部(ディンプル)として測定された投影面積を,円形の投影面積に換算して測定したときの前記円形の径として測定した。
なお,前述の「基準面」とは,高さデータの中で,計測のゼロ点(基準)とする平面を指し,深さや高さなど主に垂直方向の計測に使用される。
[摺動部材に対する適用]
(1)試験方法
40×40mm,厚み2mmのSUS304平板に本発明の処理(実施例3),鏡面状態の未処理(比較例2),従来技術(比較例3)の3種類を用意し摩擦摩耗試験による摺動性評価を行った。
(2)評価方法
上記条件で加工した後のSUS304板に対し摩擦係数2.0に達するまでボールオンディスク試験を行い,その時の測定時間を比較することで摺動性の評価を行った。
ボールオンディスク方式の摩擦摩耗試験機を使用した。ボール径は,3/16インチ,SUS304製を用いた。
(3)評価結果
経過時間に対するフリクション変化を測定したグラフを図20に示す。
この測定結果から判るように,実施例3の条件で処理を行ったものは,未処理(比較例2)及びに対して約5倍,比較例3の条件で処理したものに対し約3倍の耐久性があった。
(4)考察
比較例2に対し約5倍,比較例3に対し約3倍の耐久性が得られたということは,それだけ低摩擦で試験を行えたと推測できる。そのため,本発明の処理を行うことで約3倍の摺動性を得られたと考えられる。

Claims (7)

  1. 金属成品に対し,メディアン径d50が1〜20μmで空気中での落下時間が10sec/m以上の略球状の噴射粒体を,0.05MPa〜0.5MPaの噴射圧力で噴射して,前記金属成品の表面に沿って表面から一定の深さの範囲を連続して均一に平均結晶粒径が300nm以下のナノ結晶に微細化させたナノ結晶組織層を形成すると共に,前記金属成品の表面に圧縮残留応力を付与したことを特徴とする金属成品の表面処理方法。
  2. 前記噴射粒体の噴射速度を80m/sec以上としたことを特徴とする請求項1記載の金属成品の表面処理方法。
  3. 前記金属成品の材質がアルミニウム又はアルミニウム合金であり,前記ナノ結晶組織層の結晶粒径を,100nm以下に微細化させたことを特徴とする請求項1又は2記載の金属成品の表面処理方法。
  4. 前記金属成品が機械加工工具であり,該機械加工工具の刃先と,該刃先近傍を処理領域とし,
    前記処理領域に,前記噴射粒体の噴射により相当径が1〜18μm,深さが0.02〜1.0μm以下のディンプルを,該ディンプルの投影面積が前記処理領域の表面積の30%以上となるように形成することを特徴とする請求項1又は2記載の金属成品の表面処理方法。
  5. 前記金属成品が摺動部材であり,該摺動部材の少なくとも摺動部を処理領域とし,
    前記処理領域に,前記噴射粒体の噴射により相当径が1〜18μm,深さが0.02〜1.0μm以下のディンプルを,該ディンプルの投影面積が前記処理領域の表面積の30%以上となるように形成することを特徴とする請求項1又は2記載の金属成品の表面処理方法。
  6. 母材硬度がHV714以下で,表面に沿って表面から一定の深さの範囲が連続して均一に平均結晶粒径が300nm以下のナノ結晶に微細化したナノ結晶組織層を有すると共に,表面に圧縮残留応力が付与されており,
    刃先と該刃先近傍から成る処理領域の表面に前記ナノ結晶組織層が形成されていると共に,相当径が1〜18μm,深さが0.02〜1.0μm以下のディンプルが,該ディンプルの投影面積が前記処理領域の表面積の30%以上となるように形成された機械加工工具であることを特徴とする金属成品。
  7. 母材硬度がHV714以下で,表面に沿って表面から一定の深さの範囲が連続して均一に平均結晶粒径が300nm以下のナノ結晶に微細化したナノ結晶組織層を有すると共に,表面に圧縮残留応力が付与されており,
    他部材と摺接される摺動部の表面に前記ナノ結晶組織層が形成されていると共に,相当径が1〜18μm,深さが0.02〜1.0μm以下のディンプルが,該ディンプルの投影面積が前記摺動部の表面積の30%以上となるように形成された摺動部材であることを特徴とする金属成品。
JP2016101655A 2016-05-20 2016-05-20 金属成品の表面処理方法及び金属成品 Active JP6307109B2 (ja)

Priority Applications (6)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016101655A JP6307109B2 (ja) 2016-05-20 2016-05-20 金属成品の表面処理方法及び金属成品
KR1020187036593A KR102173928B1 (ko) 2016-05-20 2017-05-15 금속 제품의 표면 처리 방법 및 금속 제품
US16/084,356 US20190076987A1 (en) 2016-05-20 2017-05-15 Surface treatment method for metal product and metal product
EP17799342.5A EP3460090A4 (en) 2016-05-20 2017-05-15 SURFACE TREATMENT METHOD FOR METAL PRODUCT AND METAL PRODUCT
PCT/JP2017/018229 WO2017199918A1 (ja) 2016-05-20 2017-05-15 金属成品の表面処理方法及び金属成品
CN201780030919.7A CN109154057B (zh) 2016-05-20 2017-05-15 金属制品的表面处理方法及金属制品

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016101655A JP6307109B2 (ja) 2016-05-20 2016-05-20 金属成品の表面処理方法及び金属成品

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017206761A JP2017206761A (ja) 2017-11-24
JP6307109B2 true JP6307109B2 (ja) 2018-04-04

Family

ID=60325177

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016101655A Active JP6307109B2 (ja) 2016-05-20 2016-05-20 金属成品の表面処理方法及び金属成品

Country Status (6)

Country Link
US (1) US20190076987A1 (ja)
EP (1) EP3460090A4 (ja)
JP (1) JP6307109B2 (ja)
KR (1) KR102173928B1 (ja)
CN (1) CN109154057B (ja)
WO (1) WO2017199918A1 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6840637B2 (ja) * 2017-07-28 2021-03-10 株式会社不二製作所 硬脆性材料表面に対する微小ディンプルの形成方法
JP6892415B2 (ja) * 2018-07-20 2021-06-23 株式会社不二機販 食品接触部材の表面処理方法
JP6773342B2 (ja) * 2019-03-06 2020-10-21 株式会社不二製作所 Dlc被覆部材の表面処理方法
CN112372514B (zh) * 2020-09-29 2022-12-27 广东工业大学 一种刀具刃口加工方法

Family Cites Families (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002036115A (ja) * 2000-07-31 2002-02-05 Sintokogio Ltd ショットピ−ニング処理方法及びその被処理品
JP3879059B2 (ja) * 2002-01-07 2007-02-07 財団法人理工学振興会 ナノ結晶構造金属材料の製造方法及びナノ結晶構造金属材料
JP2005001088A (ja) * 2003-06-13 2005-01-06 Osg Corp 硬質被膜被覆部材、およびその製造方法
CN100463769C (zh) * 2004-01-21 2009-02-25 国立大学法人丰桥技术科学大学 晶体层生成方法、具有该晶体层的机械部件及其制造方法
JP2007297651A (ja) 2006-04-27 2007-11-15 Fuji Wpc:Kk 硬質金属表面における結晶粒微細化方法
JP5225596B2 (ja) * 2007-03-15 2013-07-03 株式会社不二Wpc 熱間金型用合金鋼の強化方法及び該方法による熱疲労き裂の発生を抑止して成る熱間金型用合金鋼
JP5171082B2 (ja) * 2007-03-23 2013-03-27 株式会社不二製作所 被膜形成部の下地処理方法
JP5086756B2 (ja) * 2007-10-05 2012-11-28 三菱重工業株式会社 金属部材の補修方法
JP3150048U (ja) * 2008-12-10 2009-04-30 株式会社不二機販 ステンレス,チタン又はチタン合金から成る高耐食性金属部品
JP5338647B2 (ja) * 2009-12-14 2013-11-13 大豊工業株式会社 摺動部材の製造方法と摺動部材
JP5749026B2 (ja) * 2010-04-09 2015-07-15 山陽特殊製鋼株式会社 ショットピーニング用高硬度投射材
US8893538B2 (en) * 2010-12-08 2014-11-25 Fuji Kihan Co., Ltd. Instantaneous heat treatment method for metal product
JP6274743B2 (ja) * 2013-04-30 2018-02-07 山陽特殊製鋼株式会社 高い圧縮残留応力を得るショットピーニング方法

Also Published As

Publication number Publication date
CN109154057A (zh) 2019-01-04
JP2017206761A (ja) 2017-11-24
WO2017199918A1 (ja) 2017-11-23
KR102173928B1 (ko) 2020-11-04
KR20190007052A (ko) 2019-01-21
EP3460090A1 (en) 2019-03-27
CN109154057B (zh) 2021-08-13
US20190076987A1 (en) 2019-03-14
EP3460090A4 (en) 2019-11-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Melentiev et al. Recent advances and challenges of abrasive jet machining
JP6307109B2 (ja) 金属成品の表面処理方法及び金属成品
Malakizadi et al. Post-processing of additively manufactured metallic alloys–A review
Schulze Modern mechanical surface treatment: states, stability, effects
Wang et al. A study of abrasive waterjet cutting of metallic coated sheet steels
Huang et al. Mechanisms of damage initiation in a titanium alloy subjected to water droplet impact during ultra-high pressure plain waterjet erosion
Yuvaraj et al. Cutting of aluminium alloy with abrasive water jet and cryogenic assisted abrasive water jet: A comparative study of the surface integrity approach
Prevéy et al. FOD resistance and fatigue crack arrest in low plasticity burnished IN718
Barriuso et al. Roughening of metallic biomaterials by abrasiveless waterjet peening: Characterization and viability
Liao et al. Dual-processing by abrasive waterjet machining—A method for machining and surface modification of nickel-based superalloy
Pal et al. Identification of the role of machinability and milling depth on machining time in controlled depth milling using abrasive water jet
Yuvaraj et al. Study and evaluation of abrasive water jet cutting performance on AA5083-H32 aluminum alloy by varying the jet impingement angles with different abrasive mesh sizes
Sangid et al. Process characterization of vibrostrengthening and application to fatigue enhancement of aluminum aerospace components—part II: Process visualization and modeling
Canals et al. Effect of vibratory peening on the sub-surface layer of aerospace materials Ti-6Al-4V and E-16NiCrMo13
Prakash et al. Surface nanocrystallization of aluminium alloy by controlled ball impact technique
Melentiev et al. Tailoring of surface topography for tribological purposes by controlled solid particle impacts
Li Monitoring the abrasive waterjet drilling of Inconel 718 and steel: a comparative study
Wang et al. Experimental investigation into the effect of process parameters on the Inconel 718 surface integrity for abrasive waterjet peening
Grinspan et al. A novel surface modification technique for the introduction of compressive residual stress and preliminary studies on Al alloy AA6063
Siahpour et al. Ultrasonic pulsed waterjet peening of commercially-pure titanium
Avcu et al. Dry sliding wear behaviour of shot peened TI6AL4V alloys at different peening times
Bławucki et al. The effect of the aluminium alloy surface roughness on the restitution coefficient
Thakur et al. Experimental investigation on surface topography in submerged abrasive waterjet cutting of Ti6Al4V
Dai et al. Effects of different contact film thicknesses on the surface roughness evolution of LY2 aluminum alloy milled surface subjected to laser shock wave planishing
Denkena et al. Material removal and chip formation mechanisms of UHC-steel during grinding

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20171102

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180116

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20180130

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180221

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180309

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6307109

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250