JP6303796B2 - 貯留槽内低温液体の混合方法及び装置 - Google Patents
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Description
貯留槽中の低温液体に、成分の違いから密度が異なる低温液体を混入すると、密度の高い方の低温液体はタンクの下層に沈降し、一方、密度の低い方の低温液体は上層に遊離することになり、貯留槽内の低温液体が比重の軽い液(上層)と、比重の重い液(下層)とに層状化される。
しかし、貯留槽内で低温液体に層状化が生じた場合、上層の液は自由液面から蒸発できるため温度上昇しないが、下層の液は蒸発できる自由液面を持たないため入熱分が層内に蓄積され温度が上昇していく。すなわち、上層は軽質成分が蒸発して密度が大きくなっていき、逆に下層は温度上昇により密度が小さくなっていく。この上層と下層の密度差がある限界値より小さくなった時、層状化が保てなくなり上層と下層の液が混合しつつ、下層の液が自由液面に達するようになる。下層の液が自由液面に達すると、それまで蓄積されていた入熱分のエネルギーが解放され、蒸発量が急増する。
このように、貯留槽内での低温液体の層状化は、蒸発量の急増という危険な現象を伴うため、層状化を確実に防止できる手段が求められている。その手段の一つとして、貯留槽内の低温液体を攪拌して均一に混合することが行われている。
「低温液化ガスタンクの内底面上方位置に、下端を液吸込口とし上端を液流出口とする液上昇管を直立状態に且つタンク内底面と液吸込口との間に空間部が形成されるようにして設置し、該液上昇管の下端部に、低温液化ガスタンクに備えられているBOG圧縮機の下流側より分岐させた圧縮BOG配管を連通させ、圧縮BOGを液上昇管内に下端部より噴出させて該液上昇管内に液を導搬させるようにした構成を有することを特徴とする低温液化ガスタンク内の層状化防止装置。」(特許文献1の請求項1参照)
しかし、低温液化ガスタンク内の液位は一定ではない。満液時の液位に対して大きく変化するものであり、大きいタンクではその変化量は数十メートルにも達する。液上昇管の上端を満液時の高さ近傍になるように設置すると、低液位の状態では液上昇管の下端部にBOGを吹き込んだとしても、液上昇管の上端から液を流出させることができず、吹き込んだBOGのみが液上昇管内を上昇していくこととなる。すなわち、循環混合効果が発揮できなくなる。
貯槽内の液位が高い場合、噴流が到達しない領域の混合が不十分となるため、中間高さに他のノズルを設置している。
しかし、貯槽の高さが高い場合や密度差が大きい場合には、噴流の到達高さを確保するために循環ポンプの所要動力が大きくなると同時に、ノズルを2本設けても十分でない場合もあり得、また、液位や成層界面位置に応じてノズルを切り替える複雑な制御が必要となるという問題がある。
前記貯留槽から抜き出して低温液体を加熱する低温液体加熱工程と、加熱された低温液体を液ポンプで圧送して前記貯留槽内の低温液体中に噴出することで減圧沸騰させて気液二相流として噴出させる気液二相流噴出工程とを有し、
前記低温液体加熱工程は、加熱済み低温液体の圧力及び温度を検知し、これに基づいて気液二相流噴出工程で減圧沸騰するように加熱量を調節することを特徴とするものである。
本実施の形態に係る貯留槽内低温液体混合装置1(以下、単に「混合装置1」という)は、貯留槽3の低温液体5を抜き出す低温液体抜出し管7と、低温液体抜出し管7に設けられて貯留槽3内の低温液体5を圧送する液ポンプ9と、低温液体抜出し管7から抜き出された低温液体5を加熱する加熱器11と、加熱器11によって貯留槽3内よりも温度上昇した低温液体(加熱済み低温液体)を貯留槽3内の低温液体5中に導入する低温液体導入管13と、低温液体導入管13に設けられて低温液体導入管13によって導入された低温液体(加熱済み低温液体)を噴出することで減圧沸騰させて気液二相流として噴出させる気液二相流噴出ノズル15とを備えたものである。
以下、各構成を詳細に説明する。
貯留槽3は、例えば液化天然ガス(LNG)等の低温液体5を貯留するものである。
低温液体抜出し管7は、貯留槽3の低温液体5を抜き出す管である。低温液体抜出し管7には、加熱器11に低温液体5を圧送するための液ポンプ9が設けられている。
低温液体抜出し管7は、図1に示すように、低温液体5を外部へ供給するための低温液体送出管19から分岐させるようにしてもよいし、低温液体送出管19とは別に設けてもよい。
低温液体抜出し管7を低温液体送出管19から分岐させる場合には、図1に示すように、分岐部の近傍に第1開閉弁21を設けるようにする。
低温液体抜出し管7における、加熱器11の近傍(低温液体送出管19よりも加熱器11に近い位置)には第2開閉弁27が設けられている。
加熱器11は、低温液体抜出し管7から抜き出された低温液体5を加熱するものである。
加熱器11の態様としては、図1に示すように、低温液体5が通流する経路である低温液体抜出し管7に巻き回された電気ヒータ11aと、電気ヒータ11aに供給する加熱電力量を調節する電力調整部11bによって構成されるものが挙げられる。
液体抜出し管7における電気ヒータ11aが巻き回された部位を通過する低温液体5は、電気ヒータ11aから熱を受けて温度が上昇する。
なお、上記の上限温度以下でも、貯留槽3内の液相に対して過飽和な状態まで低温液体5を昇温することが可能である。従って、上記上限温度以下でも十分な割合の気相を貯留槽3内に噴出でき、液単相流に比べて貯留槽3内の混合撹拌を促進できる。
低温液体導入管13は、加熱器11によって貯留槽3内よりも温度上昇した加熱済み低温液体を貯留槽3内の低温液体5中に導入するものである。
低温液体導入管13における加熱器11の近傍には、内部を通流する加熱済み低温液体の圧力を検知する圧力検出器23と、内部を通流する加熱済み低温液体の温度を検知する温度検出器25が設けられている。
また、加熱器11の上流側と加熱器11の下流側とを連結するバイパス管29が設置され、バイパス管29には第3開閉弁31が設けられている。
気液二相流噴出ノズル15は、低温液体導入管13の先端部に設けられて低温液体導入管13によって導入された加熱済み低温液体を貯留槽3内の低温液体5中に噴出することで減圧沸騰させて気液二相流として噴出させるものである。
気液二相流噴出ノズル15は低温液体導入管13から供給される加熱済み低温液体を高速で噴出するために、吐出口15aの口径が縮径されている。
制御部17は、圧力検出器23及び温度検出器25の検知情報を入力して、これに基づいて電力調整部11bを制御することで電気ヒータ11aの加熱電力量を調整する。
加熱器11における昇温量が多いほど、気液二相流噴出ノズル15から吐出される際の気相の量が多くなり、貯留槽3内の混合撹拌力は向上する。そこで、貯留槽3の混合の様子を監視しながら、昇温量を調整するのが好ましい。
貯留槽3の混合の様子を監視する方法としては、例えば貯留槽3内の高さ方向に複数点設置された温度計もしくは密度計(図示せず)により貯留槽3内の高さ方向の温度分布や密度分布を計測する。
加熱器11による加熱後に気液二相流の状態となった場合、加熱器11から気液二相流噴出ノズル15へ向かう低温液体導入管13は下降流となる場合が多く、気液二相流の状態での下降流は、流動が不安定となったり、圧力損失が大きくなったりするためである。そのため、加熱器11による昇温量は、上述の通り、加熱器11を通過後に飽和液の状態になるまでが上限となる。
貯留槽内低温液体の混合を行わない場合には、第1開閉弁21を開、第2開閉弁27と第3開閉弁31を閉にする。これによって、貯留槽3内の低温液体5は液ポンプ9によって低温液体送出管19を介して使用側に必要量が供給される。
これによって、貯留槽3内の低温液体5は液ポンプ9によって低温液体抜出し管7を介して加熱器11に供給される。
加熱器11では、電気ヒータ11aが巻き回された流通経路を低温の低温液体5が通過することで、低温液体は貯留槽3内の温度よりも高い温度の加熱済み低温液体になる(低温液体加熱工程)。
加熱済み低温液体は、液相状態で低温液体導入管13を介して気液二相流噴出ノズル15に供給される。
気液二相流噴出ノズル15に供給された加熱済み低温液体は気液二相流噴出ノズル15から高速で噴出することで減圧沸騰して気液二相流として低温液体5中に噴出される(気液二相流噴出工程)。
また、噴流が拡散した後でも、気泡の上昇流に随伴される液相の上昇流が形成され、攪拌混合効果が増大する。
なお、攪拌混合能力があまり要求されないような条件においては、第2開閉弁27を閉、第3開閉弁31を開にすることによって、液単相噴流により貯留槽3内を攪拌混合することも可能である。
また、本実施の形態では、低温液体抜出し管7を既設の低温液体送出管19から分岐して設けたので、既設の配管に容易に取り付けることができ、改造費用等を低減することができる。
また、液相を圧送する液ポンプ9、噴出ノズルは既設のものを使用できるので、大規模な改修工事も必要としない。これらのことから、加熱器11および液相配管系統の追加設置は、相対的に小規模な工事で済み、既設のシステムにも適用可能となる。
さらに、本実施の形態の加熱器11は、加熱量の調整が容易にできるので、貯留槽3内の混合の様子を監視しながら、昇温量を調整して、必要な撹拌能力となるようにすることができる。
またさらに、本実施の形態では、加熱器11によって加熱した低温液体5が液相状態を維持するようにしているので、加熱器11から気液二相流噴出ノズル15への供給を安定して行うことができ、また気液二相流噴出ノズル15へ供給するための液ポンプ9の動力を小さくすることができる。
貯留槽3外に抜き出した低温液体5は低温であるため、常温の空気や海水を用いた熱交換器でも本発明の効果を得るのに十分な加熱が可能となり、これを加熱するための特別な熱源は必要としない。
3 貯留槽
5 低温液体
7 低温液体抜出し管
9 液ポンプ
11 加熱器
11a 電気ヒータ
11b 電力調整部
13 低温液体導入管
15 気液二相流噴出ノズル
15a 吐出口
17 制御部
19 低温液体送出管
21 第1開閉弁
23 圧力検出器
25 温度検出器
27 第2開閉弁
29 バイパス管
31 第3開閉弁
33 加熱器
33a 熱交換器
33b 流量調節部
Claims (5)
- 貯留槽内に貯留された低温液体を混合する貯留槽内低温液体の混合方法であって、
前記貯留槽から抜き出して低温液体を加熱する低温液体加熱工程と、加熱された低温液体を液ポンプで圧送して前記貯留槽内の低温液体中に噴出することで減圧沸騰させて気液二相流として噴出させる気液二相流噴出工程とを有し、
前記低温液体加熱工程は、加熱済み低温液体の圧力及び温度を検知し、これに基づいて気液二相流噴出工程で減圧沸騰するように加熱量を調節することを特徴とする貯留槽内低温液体の混合方法。 - 前記低温液体加熱工程は、加熱後の低温液体が飽和状態になるよりも低い温度まで加熱することを特徴とする請求項1記載の貯留槽内低温液体の混合方法。
- 貯留槽の低温液体を抜き出す低温液体抜出し管と、該低温液体抜出し管に設けられて貯留槽内の低温液体を圧送する液ポンプと、前記低温液体抜出し管から抜き出された低温液体を加熱する加熱器と、該加熱器によって前記貯留槽内よりも温度上昇した低温液体を前記貯留槽内の低温液体中に導入する低温液体導入管と、該低温液体導入管に設けられて該低温液体導入管によって導入された低温液体を噴出することで減圧沸騰させて気液二相流として噴出させる気液二相流噴出ノズルと、前記加熱器の出側に設けられて加熱後の低温液体の圧力を検出する圧力検出器と、前記加熱器の出側に設けられて加熱後の低温液体の温度を検出する温度検出器と、該温度検出器の検出値と、前記圧力検出器の検出値を入力して、前記気液二相流噴出ノズルの噴射の際に減圧沸騰するように加熱器による加熱量を調整する制御部とを備えたことを特徴とする貯留槽内低温液体混合装置。
- 前記加熱器は電気ヒータ又は、気体又は液体による熱交換器であることを特徴とする請求項3記載の貯留槽内低温液体混合装置。
- 前記制御部は、前記温度検出器の検出値と、前記圧力検出器の検出値を入力して、前記低温液体が飽和状態になるよりも低温になるように加熱器による加熱量を調整することを特徴とする請求項3又は4に記載の貯留槽内低温液体混合装置。
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