JP6303674B2 - ドアチェック装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ドアチェック装置に関する。
ドアチェック装置は、ドアの開閉動作に対する抵抗力(以下、この力を保持力と呼ぶ)を発生するように構成される。保持力よりも強い操作力をドアに入力することによりドアが開閉する。ドアチェック装置は例えば車両に搭載される。この場合、ドアチェック装置は、乗員の乗降りのための開口を有する車体と、その開口を開閉可能なように車体に取り付けられる車両ドアとの間に設けられる。車両にドアチェック装置を搭載することによって、例えば坂道上で車両ドアを所定の開度で開放している時に車両ドアが意に反して閉じてしまったり、或いは風などに煽られて車両ドアが所望の開度からさらに大きく開いてしまう等の、車両ドアの意に反する開閉動作が防止できる。
一般的なドアチェック装置は、車両ドアが所定の開度で開いているときに大きな保持力を発生し、それ以外の開度で開いているときに小さな保持力を発生するように構成される。例えば車両ドアの開度が30°および60°であるときに大きな保持力が発生するようにドアチェック装置が構成される。しかし、乗員の体格、車両の周囲環境(例えば隣接する車両との間の距離)により、大きな保持力を発生させるべき最適な開度は異なる。そこで、ユーザが車両ドアの開閉動作を停止した任意の開度位置で大きな保持力を発生させることができるドアチェック装置が求められる。
特許文献1は、ドアの開閉動作が任意の開度位置で停止しているときに大きな保持力を発生させることができるドアチェック装置(固定装置)を開示する。このドアチェック装置は、ドアの開閉に伴い軸方向移動する棒状部材と、棒状部材に形成されているラックギヤに噛合するピニオンギヤと、磁性流体が内部に封入されたハウジング部材と、回転軸を介してピニオンギヤに連結されるとともにハウジング部材内に配設されたロータと、ハウジング部材に近接配置された電磁石とを備える。ドアを開閉動作させる際には、電磁石に通電される。このため電磁石から磁力が発せられる。この磁力がハウジング部材内の磁性流体に印加されて磁性流体の粘度が増加する。磁性流体の粘度が増加すると、ハウジング部材内のロータの回転に対する抵抗力が増大する。このようにして抵抗力を増大することにより、ドアに大きな保持力を付与することができる。
特開2008−8418号公報
(発明が解決しようとする課題)
上記特許文献1に記載のドアチェック装置によれば、ハウジング部材内の磁性流体の粘度を増加させるために電磁石が用いられているため、電磁石への通電を制御するための制御装置が必要である。また、ドアの開閉時に電磁石に通電するに当たり、ドアの開閉を検知するセンサも必要である。このように、特許文献1に記載のドアチェック装置は、それを構成するための部品点数が多いために構造が複雑であるとともに、コストが高いという問題を有する。
本発明は、簡易な構成で、任意の開度位置で大きな保持力を発生させることができるように構成されたドアチェック装置を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、ドア又はドアが揺動可能に取付けられた構造体のいずれか一方に取り付けられるケースと、一方端がドアまたは構造体のいずれか他方に揺動可能に連結され、ケース内を挿通するとともに、ドアの開閉動作に伴ってケースに対して軸方向に相対移動可能にケースに支持される棒状部材と、ケース内に配設され、ケースに対する棒状部材の軸方向移動により回転させられる第1回転部材と、ケース内に固定配置されるとともに、磁力が印加されたときに粘度が増加する流体が内部に封入された内側ケースと、第1回転部材に連結されるとともに、第1回転部材の回転に連動して内側ケース内で回転するように内側ケース内に配設された第2回転部材と、ケース内にて原位置と作動位置とに移動可能に配設された保持部材と、保持部材が原位置にあるときに内側ケース内の流体に磁力が印加される位置に配置し、保持部材が作動位置にあるときに内側ケース内の流体に磁力が印加されない位置に配置するように、保持部材に保持された永久磁石と、ケース内に配設され、保持部材が原位置とは異なる位置にあるときに保持部材が原位置に戻るように保持部材に弾性力を付与する弾性部材と、保持部材に取付けられるとともに、棒状部材がケースに対して軸方向移動したときに棒状部材とともに保持部材が移動するように、棒状部材に摩擦係合する摩擦部材と、を備える、ドアチェック装置を提供する。なお、構造体とは、車体や建築物等の、ドアが取付けられる対象を言う。
本発明において、永久磁石は、保持部材が原位置にあるときに内側ケースに接触し、保持部材が作動位置にあるときに内側ケースから離れるように、保持部材に保持されるとよい。また、棒状部材にラックギヤが形成されており、第1回転部材は、ラックギヤに噛合するピニオンギアであるのがよい。また、第2回転部材は、一方端が第1回転部材に連結されるとともに他方端が内側ケース内に挿入され、第1回転部材と共に同軸回転する回転軸と、回転軸の他方端側の側周面から径方向に延設されるように回転軸に設けられたフィンと、を備えるものであるのがよい。
本発明によれば、ドアの開閉動作に伴い棒状部材がケースに対して軸方向移動し、棒状部材の軸方向移動により第1回転部材が回転し、第1回転部材の回転に連動して第2回転部材が内側ケース内で回転する。
また、保持部材がケース内の原位置にあるときは、保持部材に保持された永久磁石からの磁力が内側ケース内の流体に印加される。このため流体の粘度が増加する。このときドアを開閉動作させようとした場合、内側ケース内の流体の粘度は増加しているので、第2回転部材の回転に対して内側ケース内の流体から大きな抵抗力が第2回転部材に作用する。第2回転部材に作用した大きな抵抗力が第1回転部材を介して棒状部材に伝達され、棒状部材からさらにドアに伝達される。このためドアの開閉動作に対する大きな抵抗力(保持力)がドアに作用する。つまり、保持部材が原位置にあるときに、大きな保持力がドアに作用する。
上記した大きな抵抗力(保持力)よりも大きな操作力でドアを開閉動作させた場合、棒状部材が軸方向移動する。棒状部材の軸方向移動に伴い、第2回転部材が内側ケース内で回転するとともに、摩擦部材を介して保持部材が棒状部材とともに移動する。保持部材が原位置から作動位置まで移動した場合、保持部材に保持されている永久磁石からの磁力は内側ケース内の磁力に印加されない。このため内側ケース内の流体の粘度が低下し、それ故に内側ケース内における第2回転部材の回転に対する抵抗力が低下する。その結果、ドアに作用する保持力が小さくなって、ドアをスムーズに開閉作動させることができる。つまり、保持部材が作動位置にあるときに、ドアに作用する保持力は極めて小さい。
その後、任意の開度位置でドアの開閉動作を停止させた場合、作動位置にある保持部材が弾性部材の弾性力によって原位置に復帰する。このため再び永久磁石からの磁力が内側ケース内の流体に印加される。従って、任意の開度位置にてドアの開閉作動を開始したときに大きな保持力がドアに作用する。
このように、本発明によれば、ドアの開閉動作に伴う棒状部材の軸方向移動に連動して、永久磁石が保持された保持部材を原位置から作動位置に移動させることにより、内側ケース内の流体に永久磁石からの磁力が印加されている状態と印加されていない状態とを選択的に実現させることができる。このため電気的な制御なしに流体の粘度を変化させてドアに作用する保持力の大きさを変化させることができる。よって、簡易な構成で、任意の開度位置で大きな保持力を発生させることができるように構成されたドアチェック装置を提供することができる。
実施形態に係るドアチェック装置が搭載される車両の概略図である。 図1のA部詳細図である。 ドアチェック装置を鉛直方向に切断した断面概略図である。 内側ケースの内部構成を示す図3のIV−IV断面図である。 図4のV−V断面のうち内側ケース5付近の構成のみを示す断面図である。 車両ドアDRの開作動によって保持部材が原位置から作動位置まで移動したときのドアチェック装置の断面図を示す。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係るドアチェック装置が搭載される車両の概略図である。図1に示す車両Vは車体B(構造体)および車両ドアDRを備える。車体Bの側方部に乗降用の開口OPが形成される。開口OPの車両前方の縁部(前縁部)FEに一対のドアヒンジH,Hが上下方向に沿って取り付けられる。一対のドアヒンジH,Hを介して車両ドアDRが車体Bに揺動可能に連結される。従って、車両ドアDRは車体Bに形成された開口OPを開閉可能に車体Bに取り付けられる。
図2は図1のA部を詳細に示す図である。図2に示すように、一対のドアヒンジH,Hはそれぞれ同軸のヒンジ軸H1、H1を備える。車両ドアDRの開閉時に車両ドアDRはヒンジ軸H1,H1を中心として車体Bに対して揺動する。また、前縁部FEにブラケットBRがボルト等の締結手段により固定される。このブラケットBRにピンPを介して、本実施形態に係るドアチェック装置の構成要素である棒状部材3の一方端が揺動可能に車体Bに連結される。一方端が車体Bに揺動可能に連結された棒状部材3は、車両ドアDRの全閉時に車体Bの前縁部FEに対面する部分である車両ドアDRの前端部DEに形成された孔Sを経由して、車両ドアDR内に延出される。
図3は、ドアチェック装置1を鉛直方向に切断した断面概略図である。なお、図3において左方が車両ドアDRの前方であり、右方が車両ドアDRの後方である。ドアチェック装置1は、車体Bと車両ドアDRとの間に設けられ、車両ドアDRを開閉する際に保持力を発生する。図3に示すように、ドアチェック装置1は、ケース2と、棒状部材3と、ピニオンギア4と、内側ケース5と、羽根車6(図4参照)と、保持部材7と、永久磁石8と、一対の圧縮バネ(前側圧縮バネ9a,後側圧縮バネ9b)と、一対の摩擦部材(前側摩擦部材10a,後側摩擦部材10b)とを備える。
ケース2は樹脂により形成されており、車両ドアDRの前端部DEの内側面(後方面)に取付けられる。なお、図3において、前端部DEよりも右方部分(後方部分)が車両ドアDRの内部空間である。ケース2は、本実施形態においては、上壁部21、下壁部22、前壁部23、後壁部24及び図示しない側壁部を有する直方体形状をなし、その内部に空間が形成される。また、ケース2の前壁部23及び後壁部24にそれぞれ貫通孔2a、2bが形成される。
棒状部材3は、上記したようにその一方端にて車体Bに揺動可能に連結されるとともに、貫通孔2a,2bを経由して車両ドアDR内でケース2内を挿通する。棒状部材3は、車両ドアDRの開閉動作に応じて車体Bに対して揺動するとともに、ケース2に対して軸方向に相対移動可能にケース2に支持される。なお、棒状部材3の揺動中心位置と車両ドアDRの揺動中心位置は異なるので、車両ドアDRが開閉した場合に棒状部材3が車両ドアDRに対して揺動しながら軸方向移動する。このため、棒状部材3の車両ドアDRに対する揺動に伴ってケース2も棒状部材3とともに揺動できるように、ケース2は車両ドアDRに揺動可能に取り付けられていてもよい。また、棒状部材3の側周面には、図3に示すようにラックギア3aが形成されている。
ケース2内に、ピニオンギア4、内側ケース5、保持部材7、永久磁石8、一対の圧縮バネ9a,9b、一対の摩擦部材10a,10bが配設される。ピニオンギア4は樹脂製であり、棒状部材3に形成されたラックギア3aに噛合するようにケース2内に配設される。また、内側ケース5も樹脂製であり、ケース2の上壁部21の内面(下方面)に取付けられることにより、ケース2内に固定配置される。
図4は、内側ケース5の内部構成を示す図3のIV−IV断面図、図5は図4のV−V断面のうち内側ケース5付近の構成のみを示す図である。図4に示すように、内側ケース5内に羽根車6が配設される。羽根車6は回転軸61及び複数のフィン62を有する。回転軸61の一方端側が内側ケース5から突出してピニオンギア4と同軸回転可能にピニオンギア4に連結される。回転軸61の他方端側が内側ケース5内に挿入される。内側ケース5に挿入された回転軸61の他方端側に複数のフィン62が取付けられる。複数のフィン62は、図5に示すように、回転軸61の他方端側の側周面から径方向外方に延設されるように放射状に回転軸61に取付けられる。本実施形態では、回転軸61の側周面から4枚のフィン62が等間隔(90°間隔)に取付けられている。
また、内側ケース5内に磁性流体Fが封入される。従って、羽根車6が内側ケース5内で回転した場合、内側ケース5内に封入された磁性流体Fが羽根車6により攪拌される。本実施形態で用いる磁性流体Fは、磁力が印加されたときに粘度が増加し、磁力が印加されていないときに粘度が低下するといった特性を持つ。磁性流体以外にも、MR流体(Magnetro Rheological Fluid)を用いることができる。
図3に示すように、保持部材7は樹脂製であり、ケース2内で後述する原位置と作動位置との間を移動可能なようにケース2内に配設される。保持部材7は、ケース2内に挿通された棒状部材3の長手方向に直交する方向に延設した第1壁部71及び第2壁部72と、棒状部材3の長手方向に沿って延設した第3壁部73とを有する。第1壁部71及び第2壁部72は、棒状部材3の長手方向に間隔を開けて配設される。第1壁部71は第2壁部72よりも前方に配設される。第1壁部71の下方端と第2壁部72の下方端が第3壁部73により連結される。第1壁部71の上方端と第2壁部72の上方端との間の部分は開口しており、この開口部分に内側ケース5が配置する。
保持部材7の第1壁部71のほぼ中央部分に貫通孔71aが設けられており、この貫通孔71aの縁部分に前側摩擦部材10aが取付けられる。同様に、保持部材7の第2壁部72のほぼ中央部分に貫通孔72aが設けられており、この貫通孔72aの縁部分に後側摩擦部材10bが取付けられる。それぞれの摩擦部材10a,10bの中央部分に孔が形成されており、これらの孔を棒状部材3が貫いている。
一対の摩擦部材10a,10bは、例えば、ゴム等により構成されている。棒状部材3が一対の摩擦部材10a,10bの孔を貫通している状態において、一対の摩擦部材10a,10bが所定の弾性力でもって棒状部材3を側周から締め付ける。斯かる締め付け力を垂直抗力として、摩擦部材10a,10bが棒状部材3に摩擦係合する。従って、保持部材7は、一対の摩擦部材10a,10bを介して棒状部材3に接続される。
保持部材7の第1壁部71に前側圧縮バネ9aの一方端が係止される。前側圧縮バネ9aの他方端は、ケース2の前壁部23に係止される。一方、保持部材7の第2壁部72に後側圧縮バネ9bの一方端が係止される。後側圧縮バネ9bの他方端は、ケース2の後壁部24に係止される。前側圧縮バネ9aの弾性係数と後側圧縮バネ9bの弾性係数は等しい。従って、両圧縮バネ9a,9bの弾性力が釣り合っているときは、保持部材7は図3に示すようにケース2の中央に配置する。図3に示すような保持部材7のケース2内での位置を、「原位置」と呼ぶ。
保持部材7が原位置から図3の左方向(前方)に移動した場合、前側圧縮バネ9aの弾性力が後側圧縮バネ9bの弾性力を上回る。この場合、保持部材7に前側圧縮バネ9aの弾性力が強く作用することによって、保持部材7が原位置に戻される方向に付勢される。また、原位置から図3の右方向(後方)に保持部材7が移動した場合、後側圧縮バネ9bの弾性力が前側圧縮バネ9aの弾性力を上回る。この場合、保持部材7に後側圧縮バネ9bの弾性力が強く作用することによって、保持部材7が原位置に戻される方向に付勢される。このように、一対の圧縮バネ9a,9bは、保持部材7が原位置とは異なる位置にあるときに保持部材7が原位置に戻るように保持部材7に弾性力を付与する。
図3に示すように、永久磁石8が、保持部材7の第3壁部73に保持される。永久磁石8は、保持部材7が原位置にあるときにその上面部が内側ケース5の下面部に接触する。また、保持部材7がケース2に対して移動した場合、永久磁石8は内側ケース5から離れる。永久磁石8が内側ケース5から離れた状態における保持部材7のケース2内での位置を「作動位置」と呼ぶ。つまり、永久磁石8は、保持部材7が原位置にあるときに内側ケース5に接触する接触位置に配置し、保持部材7が作動位置にあるときに内側ケースから離れる離間位置に配置するように、保持部材7に保持される。
上記構成のドアチェック装置1において、車両ドアDRの開閉動作が開始された場合、その開閉動作に伴い棒状部材3がケース2に対して相対的に軸方向移動する。棒状部材3の軸方向移動により、棒状部材3のラックギア3aに噛合しているピニオンギア4が回転させられる。さらに、ピニオンギア4の回転動作に連動して、ピニオンギア4に連結した羽根車6が内側ケース5内で回転する。
また、保持部材7がケース2内の原位置にあるときは、保持部材7に保持された永久磁石8が内側ケース5に接触している。このため永久磁石8と内側ケース5内の磁性流体との間の距離が近い。よって、保持部材7が原位置にあるときは、内側ケース5内の磁性流体Fに永久磁石8からの磁力が印加される。磁力の印加により磁性流体Fの粘度が増加する。したがって、保持部材7がケース2内の原位置にあるときに(すなわちドアチェック装置1が図3に示す状態であるときに)車両ドアDRを開閉動作させようとした場合、羽根車6は高粘度の磁性流体Fを攪拌しなければならない。このため、羽根車6の回転に対して内側ケース5内の磁性流体Fから大きな抵抗力が羽根車6に作用する。羽根車6に作用した大きな抵抗力がピニオンギア4を介して棒状部材3に伝達され、棒状部材3からさらに車両ドアDRに伝達される。このため車両ドアDRの開閉動作に対する大きな抵抗力(保持力)が車両ドアDRに作用する。つまり、保持部材7が原位置にあるときに車両ドアDRに作用する保持力は大きい。
大きな抵抗力(保持力)よりも大きい操作力で車両ドアDRを開閉作動させた場合、棒状部材3がケース2に対して軸方向移動する。棒状部材3の軸方向移動によりピニオンギア4が回転し、さらにピニオンギア4に連結された羽根車6が内側ケース5内で回転する。また、棒状部材3には一対の摩擦部材10a,10bを介して保持部材7が接続されているので、棒状部材3の軸方向移動に伴って、保持部材7が棒状部材3とともに移動する。
棒状部材3の軸方向移動に伴い保持部材7が原位置から移動すると、保持部材7に保持されている永久磁石8も保持部材7と共に移動する。また、内側ケース5はケース2に固定されているので、永久磁石8は内側ケース5に対して相対移動する。そして、保持部材7が作動位置に達したときに永久磁石8は内側ケース5から離れる。図6には、車両ドアDRの開作動によって保持部材7が原位置から作動位置まで移動したときのドアチェック装置1の断面図を示す。
図6に示すように、保持部材7が作動位置にある場合、保持部材7に保持された永久磁石8が内側ケース5から離れており、永久磁石8と内側ケース5との間の距離が遠い。このため永久磁石8からの磁力が内側ケース5内の磁性流体Fに作用しなくなる。つまり、保持部材7が作動位置にあるときは、内側ケース5内の磁性流体Fに永久磁石8からの磁力が印加されない。そのため磁性流体Fの粘度が低下する。磁性流体Fの粘度が低下すると、内側ケース5内における羽根車6の回転に対する抵抗力が低下する。その結果、車両ドアDRに作用する保持力が小さくなって、車両ドアDRをスムーズに開閉作動させることができる。つまり、保持部材7が作動位置にあるとき、車両ドアDRに作用する保持力は小さい。
ドアチェック装置1が図6に示す状態であるときに車両ドアDRを開閉作動させ、その後に任意の開度位置で車両ドアDRの開閉作動を停止させた場合、棒状部材3の軸方向移動が停止する。このとき保持部材7は作動位置にある。保持部材7が作動位置にあるときには、図6に示すように前側圧縮バネ9aが縮められているため、前側圧縮バネ9aから大きな弾性力が保持部材7に作用する。このため前側圧縮バネ9aの弾性力が一対の摩擦部材10a,10bの摩擦力を上回る。よって、前側圧縮バネ9aの弾性力によって、作動位置にある保持部材7が原位置に向かう方向に移動する。このとき一対の摩擦部材10a,10bが棒状部材3と摺動することにより、棒状部材3に対する保持部材7の移動が許容される。
こうした保持部材7の原位置に向かう方向への移動によって永久磁石8が内側ケース5に近づく。永久磁石8が内側ケース5に近づいた場合、永久磁石8が内側ケース5内の磁性流体Fに引き寄せられる。この吸引力及び前側圧縮バネ9aの弾性力によって、保持部材7はやがて図3に示すように原位置に復帰する。保持部材7が原位置に復帰した場合、再び永久磁石8が内側ケース5に接触し、永久磁石8からの磁力が内側ケース5内の磁性流体Fに印加される。このようにして任意の開度位置にて車両ドアDRの開閉作動を停止した後に保持部材7が原位置に復帰するため、その後に車両ドアDRの開閉動作を開始したときには、再び大きな保持力が車両ドアDRに作用する。つまり、本実施形態に係るドアチェック装置1によれば、車両ドアDRの開閉作動を停止させた任意の開度位置にて、大きな保持力を車両ドアDRに作用させることができる。
以上の説明のように、本実施形態に係るドアチェック装置1は、車両ドアDRに取り付けられるケース2と、一方端が車体Bに揺動可能に連結され、ケース2内を挿通するとともに、車両ドアDRの開閉動作に伴ってケース2に対して軸方向に相対移動可能にケース2に支持される棒状部材3と、ケース2内に配設され、ケース2に対する棒状部材3の軸方向移動により回転させられるピニオンギア4と、ケース2内に固定配置されるとともに、磁力が印加されたときに粘度が増加する磁性流体Fが内部に封入された内側ケース5と、ピニオンギア4に連結されるとともに、ピニオンギア4の回転に連動して内側ケース5内で回転するように内側ケース5内に配設された羽根車6と、ケース2内にて原位置と作動位置とに移動可能に配設された保持部材7と、保持部材7が原位置にあるときに内側ケース5内の磁性流体Fに磁力が印加されるように内側ケース5に接触した接触位置に位置し、保持部材7が作動位置にあるときに内側ケース5内の磁性流体Fに磁力が印加されないように内側ケース5から離れた離間位置に位置するように保持部材7に保持された永久磁石8と、ケース2内に配設され、保持部材7が原位置とは異なる位置にあるときに保持部材7が原位置に戻るように保持部材7に弾性力を付与する一対の圧縮バネ9a,9bと、保持部材7に取付けられるとともに、棒状部材3がケース2に対して軸方向移動したときに棒状部材3とともに保持部材7が移動するように、棒状部材3に摩擦係合する一対の摩擦部材10a,10bと、を備える。
本実施形態に係るドアチェック装置1によれば、車両ドアDRの開閉動作に伴う棒状部材3の軸方向移動に連動して、永久磁石8が保持された保持部材7を原位置から作動位置に移動させることにより、内側ケース5内の磁性流体Fに永久磁石8からの磁力が印加されている状態と印加されていない状態とを選択的に実現させることができる。このため電気的な制御なしに磁性流体Fの粘度を変化させて車両ドアDRに作用する保持力の大きさを変化させることができる。よって、簡易な構成で、任意の開度位置で大きな保持力を発生させることができるように構成されたドアチェック装置1を提供することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態では、棒状部材3の軸方向移動動作をラックギア3aとピニオンギア4との噛合(すなわちラックアンドピニオン機構)によって回転動作に変換して内側ケース5内で羽根車6を回転させるように構成したが、ネジ送り機構(例えばボールネジ機構)等によって棒状部材3の軸方向移動動作を回転動作に変換してもよい。また、一対の圧縮バネ9a,9bに代えて、ゴム等の弾性体を用いても良い。さらに、本発明は、車両ドア以外のドアに保持力を付与するドアチェック装置としても利用することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
1…ドアチェック装置、2…ケース、21…上壁部、22…下壁部、23…前壁部、24…後壁部、3…棒状部材、3a…ラックギア、4…ピニオンギア(第1回転部材)、5…内側ケース、6…羽根車(第2回転部材)、61…回転軸、62…フィン、7…保持部材、71…第1壁部、72…第2壁部、73…第3壁部、8…永久磁石、9a…前側圧縮バネ(弾性部材)、9b…後側圧縮バネ(弾性部材)、10a…前側摩擦部材、10b…後側摩擦部材、B…車体、DR…車両ドア、F…磁性流体

Claims (4)

  1. ドア又はドアが揺動可能に取付けられた構造体のいずれか一方に取り付けられるケースと、
    一方端が前記ドアまたは前記構造体のいずれか他方に揺動可能に連結され、前記ケース内を挿通するとともに、前記ドアの開閉動作に伴って前記ケースに対して軸方向に相対移動可能に前記ケースに支持される棒状部材と、
    前記ケース内に配設され、前記ケースに対する前記棒状部材の軸方向移動により回転させられる第1回転部材と、
    前記ケース内に固定配置されるとともに、磁力が印加されたときに粘度が増加する流体が内部に封入された内側ケースと、
    前記第1回転部材に連結されるとともに、前記第1回転部材の回転に連動して前記内側ケース内で回転するように前記内側ケース内に配設された第2回転部材と、
    前記ケース内にて原位置と作動位置とに移動可能に配設された保持部材と、
    前記保持部材が原位置にあるときに前記内側ケース内の前記流体に磁力が印加される位置に配置し、前記保持部材が作動位置にあるときに前記内側ケース内の前記流体に磁力が印加されない位置に配置するように、前記保持部材に保持された永久磁石と、
    前記ケース内に配設され、前記保持部材が原位置とは異なる位置にあるときに前記保持部材が原位置に戻るように前記保持部材に弾性力を付与する弾性部材と、
    前記保持部材に取付けられるとともに、前記棒状部材が前記ケースに対して軸方向移動したときに前記棒状部材とともに前記保持部材が移動するように、前記棒状部材に摩擦係合する摩擦部材と、
    を備える、ドアチェック装置。
  2. 請求項1に記載のドアチェック装置において、
    前記永久磁石は、前記保持部材が原位置にあるときに前記内側ケースに接触し、前記保持部材が作動位置にあるときに前記内側ケースから離れるように、前記保持部材に保持される、ドアチェック装置。
  3. 請求項1または2に記載のドアチェック装置において、
    前記棒状部材にラックギヤが形成されており、
    前記第1回転部材は、前記ラックギヤに噛合するピニオンギアである、ドアチェック装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のドアチェック装置において、
    前記第2回転部材は、一方端が前記第1回転部材に連結されるとともに他方端が前記内側ケース内に挿入され、前記第1回転部材と共に同軸回転する回転軸と、前記回転軸の他方端側の側周面から径方向に延設されるように前記回転軸に設けられたフィンと、を備える、ドアチェック装置。
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