JP6302855B2 - 防虫用反射材、防虫システム、および防虫方法 - Google Patents

防虫用反射材、防虫システム、および防虫方法 Download PDF

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Description

本発明は、防虫用反射材、防虫システム、および防虫方法に関する。
反射材を利用した防虫システムとして、特許文献1において、特定の波長範囲の光を反射する波長板を利用して害虫を誘引して捕獲するシステムが開示されている。特許文献2には、植物の栽培に用いる遮光性フィルムにおいて、害虫を忌避するために害虫が嫌う紫外線の反射率が高い顔料を含む層を設けることが開示されている。
特開2012−110265号公報 特開平10−136801号公報
特許文献1に記載のシステムは、害虫を誘引して捕獲する防虫方法であるため、使用場所によっては、誘引されている害虫が視野に入ることによる不快感を引き起こす。また、捕獲した害虫を廃棄する手間も必要となる。一方、特許文献2に記載のフィルムは害虫を忌避するフィルムであり、害虫を誘引して捕獲するものではない。しかし、紫外線を反射する構成となるため、反射光が日常的に人の目などに照射する環境での使用には不適切である。
上記を鑑み、本発明の課題は、汎用性の高い防虫システムおよび防虫方法を提供することである。本発明はまた、防虫用反射材として新規な反射材を提供することを課題とする。
本発明者らは、虫が嫌うが人体に無害な光を反射する反射材を、様々な状況で使用することができる構成について鋭意検討した。その結果、人体に無害な防虫効果を有するとともに、透明な窓等に貼付して使用してもその窓の光の透過性を十分に維持する構成とすることのできる汎用性の高い反射材を得て、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記の[1]〜[11]を提供するものである。
[1]570〜620nmの波長域の光を波長選択的に反射し、上記反射の反射光が円偏光である防虫用反射材。
[2]570〜620nmの波長域に反射ピークを示す反射スペクトルを与える[1]に記載の防虫用反射材。
[3]380nm〜780nmの光の透過率が50%以上である[1]または[2]に記載の防虫用反射材。
[4]上記反射ピークにおける拡散反射率が30%以上45%以下である[1]〜[3]のいずれか一項に記載の防虫用反射材。
[5]コレステリック液晶相を固定した層を含む[1]〜[4]のいずれか一項に記載の防虫用反射材。
[6]コレステリック液晶相を固定した上記層に直接隣接する層として(メタ)アクリレートモノマーを含む層を塗布硬化して得られるアクリル層を含む[5]に記載の防虫用反射材。
[7][1]〜[6]のいずれか一項に記載の防虫用反射材と照射装置とを含む防虫システム。
[8]上記照射装置の発光ピークが570〜620nmの波長域にある[7]に記載の防虫システム。
[9]上記照射装置が円偏光を照射する[7]または[8]に記載の防虫システム。
[10]上記照射装置が、発光ピークが570〜620nmの波長域にある光を発光するLED光源を含む[7]〜[9]のいずれか一項に記載の防虫システム。
[11]建物の入り口または窓に配置された[1]〜[6]のいずれか一項に記載の反射材に570〜620nmの波長の光を建物の外側から照射することを含む、上記建物への虫の侵入を防止する防虫方法。
本発明により、汎用性の高い防虫システムを提供することのできる反射材、および汎用性の高い防虫システムが提供される。
コレステリック液晶層断面をTEM観察して観測される、明部と暗部との縞模様の模式図である。 実施例で作製した反射材1の全反射率と拡散反射率を示すスペクトルを示す図である。 実施例で用いた光源の発光スペクトルを示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。 本明細書において、例えば、「45°」、「平行」、「垂直」あるいは「直交」等の角度は、特に記載がなければ、厳密な角度との差異が5度未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との差異は、4度未満であることが好ましく、3度未満であることがより好ましい。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよびメタクリレートのいずれか一方または双方」の意味で使用される。
本明細書において、「波長選択的に反射」というときは、他の波長域の光と比較して優勢に反射することを意味する。「他の波長域」は可視光領域の他の波長域を意味し、「優勢に」とは、より高い反射光量であることを意味する。特に、「570〜620nmの波長域の光を波長選択的に反射する」とは、570〜620nmの波長域の反射ピークを示す反射に基づく反射光量が、可視光領域の反射光の総光量の50%以上であることを意味する。上記反射光量は、可視光領域の反射光の総光量の60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
本明細書において、円偏光につき「選択的」というときは、照射される光の右円偏光成分または左円偏光成分のいずれかの光量が、他方の円偏光成分よりも多いことを意味する。具体的には「選択的」というとき、光の円偏光度は、0.3以上であることが好ましく、0.6以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましい。実質的に1.0であることがさらに好ましい。 ここで、円偏光度とは、光の右円偏光成分の強度をIR、左円偏光成分の強度をILとしたとき、|IR−IL|/(IR+IL)で表される値である。
なお、光の各波長の偏光状態は、円偏光板を装着した分光放射輝度計またはスペクトルメータを用いて測定することができる。この場合、右円偏光板を通して測定した光の強度がIR、左円偏光板を通して測定した光の強度がILに相当する。また、照度計や光スペクトルメータに測定対象物を取り付けても測定することができる。右円偏光透過板をつけ、右円偏光量を測定、左円偏光透過板をつけ、左円偏光量を測定することにより、比率を測定できる。
本明細書において、円偏光につき「センス」というときは、右円偏光であるか、または左円偏光であるかを意味する。円偏光のセンスは、光が手前に向かって進んでくるように眺めた場合に電場ベクトルの先端が時間の増加に従って時計回りに回る場合が右円偏光であり、反時計回りに回る場合が左円偏光であるとして定義される。
本明細書においては、コレステリック液晶の螺旋の捩れ方向について「センス」との用語を用いることもある。コレステリック液晶による選択反射は、コレステリック液晶の螺旋の捩れ方向(センス)が右の場合は右円偏光を反射し、左円偏光を透過し、センスが左の場合は左円偏光を反射し、右円偏光を透過する。
本明細書において、「光」という場合、特に断らない限り、可視光かつ自然光(非偏光)の光を意味する。可視光線は電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の光であり、通常、380nm〜780nmの波長域の光を示す。
本明細書において、「拡散反射率」または「正反射率」は分光光度計と積分球ユニットを用いて測定した値に基づいて計算される値である。正反射率は積分球ユニットを用いて測定した値に基づく場合、測定の都合上、例えば入射角5°での測定値であればよい。拡散反射率は全反射率(積分球の全角度測定値)から正反射率を差し引いて算出することができる値である。直透過率は、積分球ユニットを用いて測定した値に基づく場合、0°での透過率である。
本明細書において、「ヘイズ値」は、日本電色工業株式会社製のヘイズメーターNDH−2000を用いて測定される値を意味する。
本明細書において、反射スペクトルは、日本分光社製の可視紫外分光測定装置V−670に積分球ユニットおよび全体反射率測定ユニットを装着して測定したものとする。本明細書において、「反射ピーク」は反射スペクトルで観測される反射波形で極大を意味する。すなわち反射率が極大になる点を意味する。「反射ピーク波長」は極大を示す波長を意味する。
本明細書において、反射率や光透過率の算出に関連して必要である光強度の測定は、例えば通常の可視スペクトルメータを用いて、リファレンスを空気として、測定したものであればよい。
本明細書において、単に「反射光」または「透過光」というときは、散乱光および回折光を含む意味で用いられる。特に、単に反射率および反射光量というときは、それぞれ全方位反射の反射率および全方位反射の反射光量を意味する。
<防虫>
本発明の反射材は防虫に用いられる反射材である。防虫は、虫の忌避または防除、または殺虫の意味を含むが、本発明の反射材は、特に、虫を忌避する、すなわち、寄せ付けないために用いることができる。例えば、虫が誘引されやすい環境下において、誘引される虫の数を減らすために本発明の反射材を用いることができる。本発明の反射材により忌避される虫は特に限定されないが、自然光(非偏光)に誘引されやすい走光性の虫が好ましい。特に飛翔昆虫が好ましい。虫の例としては、ショウジョウバエやイエバエなどのハエ類、ユスリカ、トビケラ、ヨコバイ、ウンカ、メイガ、コガタアカイエカ、ハマダラカ、コガネムシ、カメムシなどが挙げられる。
<反射材の光学的性質等>
本発明の反射材は薄膜のフィルム状、シート状、または板状などであればよい。反射材は薄膜のフィルムとしてロール状等になっていてもよい。
本発明の反射材は570〜620nmの波長域の光を波長選択的に反射する。すなわち、本発明の反射材は、可視光領域(380nm〜780nm)の他の波長域の光と比較して、570〜620nmの波長域の光を優勢に反射する。本発明の反射材は、580〜610nmの波長域の光を波長選択的に反射することが好ましい。
本発明の反射材は、570〜620nmの波長域の光を反射することにより、虫を忌避することができる。黄色光の波長域の光が虫を忌避することは、例えば、特開2010−166845号公報の0024、特開2008−210633号公報の0002 特開2005−46018号公報の0002の記載からわかるように公知である。本発明の反射材は、反射材の向こう側の視認性を損なわずに、この波長域の光を反射することができる。反射材の反射スペクトルは570〜620nmの波長域に反射ピークを有することが好ましい。上記反射ピークは580〜610nmにあることがより好ましい。
反射材の、570〜620nmの波長域の波長選択的な反射の全反射率は、30%以上、35%以上、40%以上であればよく、47%以上であることが好ましい。また、上記反射の拡散反射率は25%以上であることが好ましい。反射材の拡散反射率は、さらに、30%以上、35%以上、40%以上であってもよく、45%以下、42%以下等であってもよい。上記全反射率および拡散反射率は、570〜620nmの波長域の反射ピーク波長において測定したものであればよい。反射材が上記範囲の拡散反射率を示すことにより、反射材の表面積に対してより広い範囲で防虫効果を得ることができる。コレステリック液晶層を含む反射材において、拡散反射率は、例えば、後述するように、コレステリック液晶層の形成の際の下層の選択や、コレステリック液晶層形成のための組成物中の水平配向剤の有無で調整することができる。
反射ピーク波長における光の透過率は、60%以下であることが好ましい。また、35%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、45%以上であることがさらに好ましい。
反射材の反射スペクトルは570〜620nmの波長域の反射ピークを示す反射以外の反射を示してもよく、示していなくてもよいが示していないことが好ましい。
本発明の反射材の570〜620nmの波長域の反射光は円偏光であり、本発明の反射材は、570〜620nmの波長域で右円偏光または左円偏光のいずれか一方を選択的に反射する。また、本発明の反射材は、570〜620nmの波長域で反射光とは逆のセンスの円偏光を透過していることが好ましい。この波長域の光を570〜620nmの波長域の光を反射すると同時に透過させることにより、透過光の色づき、または色味の変化を小さくすることができる。
反射材は、570〜620nmの波長域以外の可視光は60%より大きい透過率で透過することが好ましく、70%より大きい透過率で透過することがより好ましく、80%以上より大きい透過率で透過することがさらに好ましい。
反射材は、380nm〜780nm波長域の全域の光の総透過率が50%より大きいことが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
反射材は、波長380〜780nmの非偏光可視光の直透過率が50%以上であることが好ましい。また、特に、ヘイズ値が10%以下であることが好ましい。ヘイズ値は5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。可視光透過性を有し、ヘイズも低い反射材では、反射材の反対側にある情報または風景の観察が可能である。
可視光領域以外の紫外光または赤外光に対する反射材の光学特性は、特に限定されず、紫外光および赤外光をそれぞれ、透過していても反射していても吸収していてもよい。
[コレステリック液晶相を固定した層]
本発明の反射材はコレステリック液晶相を固定した層を含んでいることが好ましい。本明細書において、コレステリック液晶相を固定した層を、コレステリック液晶層または液晶層ということもある。
コレステリック液晶相は、右円偏光または左円偏光のいずれか一方のセンスの円偏光を選択的に反射させるとともに他方のセンスの円偏光を透過する円偏光選択反射を示すことが知られている。このコレステリック液晶相を固定した層を含ませることにより、特定の波長域で波長選択的に右円偏光または左円偏光のいずれか一方のセンスの円偏光を選択的に反射する反射材を得ることができる。なお、本明細書において、円偏光選択反射を単に選択反射ということもある。
円偏光選択反射性を示すコレステリック液晶相を固定した層を含むフィルムとして、重合性液晶化合物を含む組成物から形成されたフィルムは従来から数多く知られており、コレステリック液晶層については、それらの従来技術を参照することができる。
コレステリック液晶層は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持されている層であればよく、典型的には、重合性液晶化合物をコレステリック液晶相の配向状態としたうえで、紫外線照射、加熱等によって重合、硬化し、流動性が無い層を形成して、同時に、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることない状態に変化した層であればよい。なお、コレステリック液晶層においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、層中の液晶性化合物はもはや液晶性を示していなくてもよい。例えば、重合性液晶化合物は、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
コレステリック液晶層の選択反射の中心波長λは、コレステリック相における螺旋構造のピッチP(=螺旋の周期)に依存し、コレステリック液晶層の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。なお、本明細書において、コレステリック液晶層が有する選択反射の中心波長λは、コレステリック液晶層の法線方向から測定した円偏光反射スペクトルの反射ピークの重心位置にある波長を意味する。上記式から分かるように、螺旋構造のピッチを調節することによって、選択反射の中心波長を調整できる。n値とP値を調節して、例えば、波長570〜620nmの波長域において右円偏光または左円偏光のいずれか一方を選択的に反射させるために、中心波長λを調節することができる。なお、反射ピークの波長は、選択反射の中心波長と近似し、選択反射の中心波長と同様に変化するため、反射ピークの波長も、螺旋構造のピッチを調節することによって、調節することができる。
コレステリック液晶相のピッチは重合性液晶化合物とともに用いるキラル剤の種類、またはその添加濃度に依存するため、これらを調整することによって所望のピッチを得ることができる。なお、螺旋のセンスやピッチの測定法については「液晶化学実験入門」日本液晶学会編 シグマ出版2007年出版、46頁、および「液晶便覧」液晶便覧編集委員会 丸善 196頁に記載の方法を用いることができる。
各コレステリック液晶層としては、螺旋のセンスが右または左のいずれかであるコレステリック液晶層が用いられる。コレステリック液晶層の反射円偏光のセンスは螺旋のセンスに一致する。
選択反射を示す選択反射帯の半値幅Δλ(nm)は、Δλが液晶化合物の複屈折Δnと上記ピッチPに依存し、Δλ=Δn×Pの関係に従う。そのため、選択反射帯の幅の制御は、Δnを調整して行うことができる。Δnの調整は重合性液晶化合物の種類やその混合比率を調整したり、配向固定時の温度を制御したりすることで行うことができる。
[コレステリック液晶相を固定した層の作製方法]
以下、コレステリック液晶層の作製材料および作製方法について説明する。
上記コレステリック液晶層の形成に用いる材料としては、重合性液晶化合物とキラル剤(光学活性化合物)とを含む液晶組成物などが挙げられる。必要に応じてさらに界面活性剤や重合開始剤などと混合して溶剤などに溶解した上記液晶組成物を、支持体、透明層などに塗布し、コレステリック配向熟成後、液晶組成物の硬化により固定化してコレステリック液晶層を形成することができる。
(重合性液晶化合物)
重合性液晶化合物は、棒状液晶化合物であっても、円盤状液晶化合物であってもよいが、棒状液晶化合物であることが好ましい。
コレステリック液晶層を形成する棒状の重合性液晶化合物の例としては、棒状ネマチック液晶化合物が挙げられる。棒状ネマチック液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
重合性液晶化合物は、重合性基を液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、およびアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、液晶化合物の分子中に導入できる。重合性液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、および特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
また、液晶組成物中の重合性液晶化合物の添加量は、液晶組成物の固形分質量(溶媒を除いた質量)に対して、80〜99.9質量%であることが好ましく、85〜99.5質量%であることがより好ましく、90〜99質量%であることが特に好ましい。
(キラル剤:光学活性化合物)
キラル剤はコレステリック液晶相の螺旋構造を誘起する機能を有する。キラル化合物は、化合物によって誘起する螺旋のセンスまたは螺旋ピッチが異なるため、目的に応じて選択すればよい。
キラル剤としては、特に制限はなく、公知の化合物(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)、イソソルビド、イソマンニド誘導体を用いることができる。
キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。キラル剤は、重合性基を有していてもよい。キラル剤と液晶化合物とがいずれも重合性基を有する場合は、重合性キラル剤と重合性液晶化合物との重合反応により、重合性液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル剤が有する重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、キラル剤の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、キラル剤は、液晶化合物であってもよい。
キラル剤が光異性化基を有する場合には、塗布、配向後に活性光線などのフォトマスク照射によって、発光波長に対応した所望の反射波長のパターンを形成することができるので好ましい。光異性化基としては、フォトクロッミック性を示す化合物の異性化部位、アゾ、アゾキシ、シンナモイル基が好ましい。具体的な化合物として、特開2002−80478号公報、特開2002−80851号公報、特開2002−179668号公報、特開2002−179669号公報、特開2002−179670号公報、特開2002−179681号公報、特開2002−179682号公報、特開2002−338575号公報、特開2002−338668号公報、特開2003−313189号公報、特開2003−313292号公報に記載の化合物を用いることができる。
液晶組成物における、キラル剤の含有量は、重合性液晶性化合物量の0.01モル%〜200モル%が好ましく、1モル%〜30モル%がより好ましい。
(重合開始剤)
液晶組成物は、重合開始剤を含有していることが好ましい。紫外線照射により重合反応を進行させる態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
液晶組成物中の光重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の含有量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜5質量%であることがさらに好ましい。
(架橋剤)
液晶組成物は、硬化後の膜強度向上、耐久性向上のため、任意に架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ビウレット型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物などが挙げられる。また、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度および耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の含有量は、3質量%〜20質量%が好ましく、5質量%〜15質量%がより好ましい。架橋剤の含有量が、3質量%未満であると、架橋密度向上の効果が得られないことがあり、20質量%を超えると、コレステリック液晶層の安定性を低下させてしまうことがある。
(水平配向剤)
液晶組成物中には、安定的にまたは迅速にプレーナー配向のコレステリック液晶層とするために寄与する水平配向剤を添加してもよい。水平配向剤の例としては特開2007−272185号公報の段落〔0018〕〜〔0043〕等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、特開2012−203237号公報の段落〔0031〕〜〔0034〕等に記載の式(I)〜(IV)で表される化合物などが挙げられる。
なお、水平配向剤としては1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
液晶組成物中における、水平配向剤の添加量は、重合性液晶化合物の全質量に対して0.01質量%〜10質量%が好ましく、0.01質量%〜5質量%がより好ましく、0.02質量%〜1質量%が特に好ましい。
(その他の添加剤)
その他、液晶組成物は、塗膜の表面張力を調整し膜厚を均一にするための界面活性剤、および重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また、液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、金属酸化物微粒子等を、光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。
コレステリック液晶層は、重合性液晶化合物および重合開始剤、更に必要に応じて添加されるキラル剤、界面活性剤等を溶媒に溶解させた液晶組成物を、支持体透明層、または先に作製されたコレステリック液晶層等の上に塗布し、乾燥させて塗膜を得、この塗膜に活性光線を照射してコレステリック液晶性組成物を重合し、コレステリック規則性が固定化されたコレステリック液晶層を形成することができる。
(溶媒)
液晶組成物の調製に使用する溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒が好ましく用いられる。
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、エーテル類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が特に好ましい。
(塗布、配向、重合)
支持体、透明層、下層となるコレステリック液晶層などへの液晶組成物の塗布方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤーバーコーティング法、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法などが挙げられる。また、別途支持体上に塗設した液晶組成物を転写することによっても実施できる。塗布した液晶組成物を加熱することにより、液晶分子を配向させる。加熱温度は、200℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。この配向処理により、重合性液晶化合物が、フィルム面に対して実質的に垂直な方向に螺旋軸を有するようにねじれ配向している光学薄膜が得られる。
配向させた液晶化合物は、更に重合させ、液晶組成物を硬化することができる。重合は、熱重合、光照射による光重合のいずれでもよいが、光重合が好ましい。光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2が好ましく、100mJ/cm2〜1,500mJ/cm2がより好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下または窒素雰囲気下で光照射を実施してもよい。照射紫外線波長は350nm〜430nmが好ましい。重合反応率は安定性の観点から、高いほうが好ましく70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。重合反応率は、重合性の官能基の消費割合を、IR吸収スペクトルを用いて決定することができる。
[コレステリック液晶層の拡散反射率の調整]
本発明者らの検討の結果、拡散反射率が高く、ヘイズ値が低いコレステリック液晶層は、層の少なくとも一方の表面、好ましくは層の両表面で液晶分子のチルト角が小さく、且つ液晶分子の面内配向方位をランダムとすることにより得られることが判明した。すなわち、チルト角および面内配向方位を調整することにより、拡散反射率が高く、ヘイズ値が低いコレステリック液晶層を形成することができる。コレステリック液晶層表面近傍の液晶配向方向、チルト角はコレステリック液晶層断面の膜表面近傍を透過電子顕微鏡(TEM)像などで確認すればよい。
コレステリック液晶層表面の液晶分子のチルト角と面内配向方位とを上記のように調整することにより、最表面でコステリック液晶相の螺旋軸の傾きを有する構成を実現することができる。螺旋軸の傾きを有するとは、後述の螺旋軸の傾きが2°以上である面内の位置があることを意味する。最表面でコステリック液晶相の螺旋軸の傾きを有する構成によりコレステリック液晶相の螺旋軸は面内で僅かなうねりを持って分布させることができると考えられる。すなわち、層の法線方向から螺旋軸のずれを、生じさせることができる。この螺旋軸のずれにより、散乱性の層となる。この層の内部には、複数の配向欠陥が存在しうる。
コレステリック液晶層の最表面の螺旋軸の傾きは以下のように得ることができる。
コレステリック液晶層断面をTEM観察すると、明部と暗部との縞模様が観察できる。縞模様は、層面に略平行な方向に明部と暗部とが繰り返されるように観察される。図1に模式図を示す。この明部と暗部の繰り返し2回分(明部2つおよび暗部2つ)が螺旋1ピッチ分に相当する。縞模様の法線方向が螺旋軸となる。コレステリック液晶層の最表面の螺旋軸の傾きは、最表面11から1本目の暗部がなす線と同じ側の最表面との角度として得ることができる(図1の101)。
コレステリック液晶層を、最表面の螺旋軸の傾きが面内で変化しているように構成することにより、拡散反射率が高い散乱性の層とすることができる。なお、「螺旋軸の傾きが変化している」とは、例えば、表面の任意の直線上で一定間隔で螺旋軸の傾きを測定すると、直線進行方向で増加および減少が確認される状態を示す。増加および減少は、好ましくは繰り返されており、変化は好ましくは連続的である。
最表面はコレステリック液晶層の少なくともいずれか一方(最上面または最下面)であってもよく、両方(最上面まおよび最下面)であってもよいが、両方であることが好ましい。
さらに螺旋軸の傾きの最大値を20°以下とすることにより、ヘイズ値(可視光波長域)を5%以下程度に低く調整することができる。螺旋軸の傾きの最大値は2°以上20°以下であればよく、5°以上20°以下であることが好ましい。
本明細書において、「チルト角」とは、傾斜した液晶分子が層平面となす角度を意味し、液晶化合物の屈折率楕円体において最大の屈折率の方向が層平面となす角度のうち、最大の角度を意味する。従って、正の光学的異方性を持つ棒状液晶化合物では、チルト角は棒状液晶化合物の長軸方向すなわちダイレクター方向と層平面とのなす角度を意味する。
液晶分子の面内配向方位とは、液晶分子の上記の最大の屈折率の方向最大の屈折率の方向の、層と平行な面内での方位を意味する。面内配向方位がランダムであるとは、面内の液晶化合物分子の面内配向方位の平均方位と4°以上異なる面内配向方位を有する液晶分子がTEMにて10%以上20%以下で確認できる状態を意味する。
なお、本明細書において、液晶分子というとき、液晶組成物においては重合性液晶化合物の分子を意味し、重合性液晶化合物が液晶組成物の硬化反応により高分子化している場合は、上記重合性液晶化合物分子に該当する部分構造を意味する。
コレステリック液晶層の形成における重合性液晶化合物の配向の際の、下層側表面にある液晶分子のチルト角は0度〜20度の範囲が好ましく、0度〜10度がより好ましい。上記の値にチルト角を制御することにより配向欠陥の密度と、螺旋軸の傾斜角度分布を好ましい範囲とすることができる。
コレステリック液晶層の形成における重合性液晶化合物の配向の際は、下層側表面の液晶分子のチルト角(プレチルト角)を上記のように低く、好ましくは水平にし、且つ液晶分子の配向均一性を低下させるために、液晶組成物を塗布する後述の透明層や支持体の表面にラビングなどの配向処理をしないことが好ましい。コレステリック液晶層の空気界面側の液晶分子を水平にするために、前述の水平配向剤を使用することが好ましい。
[他の層]
本発明の反射材はコレステリック液晶層以外の他の層を含んでいてもよい。他の層はいずれも可視光領域で透明であることが好ましい。本明細書において可視光領域で透明であるとは、可視光の透過率が70%以上であることをいう。
また、他の層はいずれも低複屈折性であることが好ましい。本明細書において低複屈折性であるとは、本発明の反射材が反射を示す波長域において、正面位相差が10nm以下であることを意味し、上記正面位相差は5nm以下であることが好ましい。さらに、他の層はいずれもコレステリック液晶層の平均屈折率(面内平均屈折率)との屈折率の差が小さいことが好ましい。他の層としては支持体、透明層、接着層などが挙げられる。
(支持体)
反射材は、反射材の自己支持性のための支持体を行くんでいてもよい。支持体はコレステリック液晶層の形成の際に基板となっていてもよい。支持体は以下の透明層を兼ねていてもよい。
支持体は特に限定されない。支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、セルロース誘導体、シリコーンなどのプラスチックフィルムまたはガラスが挙げられる。仮支持体としては、上記のプラスチックフィルムのほか、ガラスを用いてもよい。
支持体の膜厚としては、5μm〜1000μm程度であればよく、好ましくは10μm〜250μmであり、より好ましくは15μm〜90μmである。
コレステリック液晶層の形成のために用いられる基板は、コレステリック液晶層形成後に剥離される仮支持体であってもよく、コレステリック液晶層形成の後、コレステリック液晶層が支持体に転写されてもよい。
(透明層)
本発明の反射材は、コレステリック液晶層の形成の際に液晶組成物が塗布される下層として、透明層を含んでいてもよい。すなわち、コレステリック液晶層に直接隣接する層として、透明層を含んでいてもよい。透明層は、その表面に設けられる液晶組成物中の重合性液晶化合物分子に対して低いプレチルト角を与える材料からなる層を好ましく用いることができる。
透明層の例としては、(メタ)アクリレートモノマー、ゼラチン、ウレタンモノマーなどを含む非液晶性の重合性組成物を塗布硬化したもの、ポリイミド(日産化学社製ポリイミドワニスのサンエバー130など)、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、変性ポリアミドなどの樹脂などが挙げられる。拡散反射率の高いコレステリック液晶層の形成のため、液晶組成物を塗布する透明層の表面はラビング処理(例えば、ポリマー層の表面を、紙または布等で一定方向に、擦ることによるラビング処理)を行わないことが好ましい。
透明層の厚さは0.01〜50μmであることが好ましく、0.05〜20μmであることがさらに好ましい。
例えば、(メタ)アクリレートモノマーを含む層を塗布硬化して得られるアクリル層は面内において等方的であるため、アクリル層表面にラビング処理を施さずに液晶層を形成すると、アクリル層に接している液晶の面内配向方位はランダムとなる。そのため、アクリル層表面に液晶組成物を塗布して形成されるコレステリック液晶層を配向欠陥を有する層とすることができ、前述のようにコレステリック液晶相の拡散反射率を上げることができる。
(接着層)
反射材は、各層の接着のため、接着層を含んでいてもよい。接着層は、例えば、コレステリック液晶層と支持体との間に設けられてもよい。仮支持体上で形成されたコレステリック液晶層を支持体上に転写する際などに接着層を用いることができる。
接着層は接着剤から形成されるものであればよい。
接着剤としては硬化方式の観点からホットメルトタイプ、熱硬化タイプ、光硬化タイプ、反応硬化タイプ、硬化の不要な感圧接着タイプがあり、それぞれ素材としてアクリレート系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、エポキシ系、エポキシアクリレート系、ポリオレフィン系、変性オレフィン系、ポリプロピレン系、エチレンビニルアルコール系、塩化ビニル系、クロロプレンゴム系、シアノアクリレート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリスチレン系、ポリビニルブチラール系などの化合物を使用することができる。作業性、生産性の観点から、硬化方式として光硬化タイプが好ましく、光学的な透明性、耐熱性の観点から、素材はアクリレート系、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系などを使用することが好ましい。
接着層の膜厚は0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmであればよい。反射フィルムの色ムラ等を軽減するため均一な膜厚で設けられることが好ましい。
<防虫システムおよび防虫方法>
本発明の反射材は、防虫に用いることができる。防虫方法に本発明の反射材を用いる際は、防虫が望まれる場所に上記反射ピーク波長の光が反射されるように設置すればよい。このときの光源としては、太陽光などの環境光であってもよい。照明装置を用いる場合は、上記の反射材の反射ピークを示す波長の光を照射することができる照明装置を用いればよい。照明装置の光源は、570〜620nmの波長域に発光ピークを示すLED光源であってもよく、ナトリウムランプ、蛍光灯などであってもよい。照明装置と反射材とを組み合わせて防虫システム(防虫装置)として用いることができる。
上記の反射材の反射ピークを示す波長で、発光ピークを示すか、または特異的に発光強度の高い光源を有する照明装置を用いることも好ましい。防虫に必要な光の総量を減らすことができるからである。
また、円偏光を照射する照明装置を用いることも好ましい。このとき、上記の反射材の反射円偏光のセンスに合わせて、右円偏光または左円偏光のいずれか一方を選択的に照射するようにすればよい。
右円偏光または左円偏光のいずれか一方を選択的に照射する照明装置は、市販の照射装置の光出射部に円偏光フィルムを配置して作製してもよい。このときの円偏光フィルムは、上記のコレステリック液晶層を含む反射材の製造方法に従って製造することができる。
防虫システムにおいて、本発明の反射材は、照明装置と0cm〜100cm、好ましくは0cm〜50cmの距離で近接させて設置されていてもよい。例えば、本発明の反射材と照明装置とは一体化して防虫装置となっていてもよい。照明装置としてCCFL(冷陰極管)などの線状光源や、点状光源を連続して配置した光源を用い、反射材の側面に近接させて配置することにより、反射材の向こう側の視認性を損なわずに、反射材に効率よく光を照射することができる。このとき、照射光の方向を調整するために、遮光材を用いてもよい。点状光源を設ける場合は、例えば5mm〜20mmの配置間隔で配置して用いればよい。点状光源としてはLED光源を用いることが好ましい。
防虫システムにおいて、本発明の反射材は、照明装置との距離を、例えば50cm〜10m、好ましくは100cm〜5mとして配置して防虫システムとしてもよい。このような構成で、照明装置と反射材との間の空間の照明を行うとともに、その空間の防虫を行うことができる。このとき、反射材への効率のよい光照射のために、照明装置はフレネルレンズや各種集光レンズなどを有していてもよい。
本発明の反射材または防虫システムの具体的な使用形態の1つとして、建物の入り口または窓に本発明の反射材を貼付などにより配置して、建物への虫の侵入を防止する方法が挙げられる。このとき、同時に反射材に光を照射する照明装置を用いるとよい。光は建物の外側から照射すればよい。
本発明の反射材は可視光領域の光透過性も高い構成とすることが可能であり、そのような構成の反射材を用いれば、店舗や病院のガラス扉の入り口や窓などに用いた場合でも、その透明性を損なわず、色味も生じさせにくい。例えば、反射材を店舗や病院のガラス扉の入り口や窓などに貼付しても、建物内からの外部の視認性や、外部からの店舗などの内部の視認性を損なわない。
本発明の反射材を中間層などとして用いて、上記ガラス扉や窓用のガラス板を製造してもよい。
本発明の反射材または防虫システムの具体的な別の使用形態として、航空機格納庫の壁などに、本発明の反射材を貼付したり、航空機格納庫の周辺にカーテン状に本発明の反射材を配置したりして、防虫が望まれる精密機器等に反射材からの反射光が照射するように配置する方法が挙げられる。特に、570〜620nmの波長域において拡散反射率の高い反射材を用いて、航空機格納庫などのオープンな場所で精密機器を扱う場合も、広い範囲で虫を忌避することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
<反射材の作製>
(コレステリック液晶性混合物(R)の調製)
下記各成分を混合し、コレステリック液晶性混合物(R)を調製した。
・化合物1 80質量部
・化合物2 20質量部
・フッ素系水平配向剤1 0.1質量部
・フッ素系水平配向剤2 0.007質量部
・右旋回性キラル剤LC756(BASF社製)
目標の反射波長に合わせて調整
・重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 3質量部
・溶媒(メチルエチルケトン) 溶質濃度が30質量%となる量
混合物(R)のキラル剤LC−756の処方量を調整して、重合配向固定後の垂直入射光に対する選択反射の中心波長が600nmの塗布液R1、中心波長が525nmの塗布液R2、中心波長が455nmの塗布液R3を調製した。
厚さ80μmのPET(富士フイルム株式会社製)面に、表1に示す塗布液Aを乾燥後の乾膜の厚みが8μmになるように室温にてワイヤーバーを用いて塗布した。塗布層を室温にて30秒間乾燥させた後、85℃の雰囲気で2分間加熱し、その後30℃でフュージョン製Dバルブ(ランプ90mW/cm)にて出力60%で6〜12秒間UV照射しアクリル層(透明層)を形成した。このアクリル層上にラビング処理を施さずに捩れ方向が右の塗布液R1を乾燥後の乾膜の厚みが6μmになるように室温にて塗布し、その後上記と同様に乾燥、加熱、UV照射を行い、反射材1を得た。
塗布液R1をR2、R3に変えた以外は、上述の方法と同様にして、反射材2、および3を得た。
この反射材の垂直入射光に対する反射ピーク波長およびピークの半値幅を、AXOMETRICS社製のAxoScanを用いて測定したところ、反射材1では反射ピーク波長600nm、ピークの半値幅は73nm、反射材2ではそれぞれ525nm、64nm、反射材3では反射ピーク波長455nm、ピークの半値幅は59nmであった。また、各反射材の各反射ピーク波長での拡散反射率は、反射材1が40%、反射材2は40%, 反射材3は39%であった。反射材1の全反射率と拡散反射率を示すスペクトルを図2に示す。
<円偏光フィルム1の作製>
厚さ80μmのPET(富士フイルム株式会社製)の表面をラビング処理した後に、上述の右の塗布液Rのキラル剤LC−756を左旋回性キラル剤(化合物4)に変え、選択反射のピーク波長が595nmになるようにその混合量を調節した以外は上述の右の塗布液Rと同じ組成の塗布液Lを乾燥後の乾膜の厚みが6μmになるように室温にて塗布し、その後上記と同様に乾燥、加熱、UV照射を行い、円偏光フィルム1を得た。
この反射材の垂直入射光に対する反射ピーク波長を、AXOMETRICS社製のAxoScanを用いて測定し中心波長は595nm、ピークの半値幅は65nmであった。
<実施例1>
内部に白色LED照明を設けた 高さ2m、縦方向3m、横方向2mのパイプハウスを組み立てた。このハウスから30cmの距離に上記反射材1を2m×1mの大きさに調製し、そのPET面側がハウス側になるように2枚つるし設置した。この際、シートの長辺が高さ方向になるように、設置した。
害虫防除光源として、パイフォトニクス社製の発光波長が595nmホロライト4台を反射材から6mの距離に設置して、反射材の中心に光の中心を向けて照射した。この光源の発光スペクトルを図3に示した。なお、この光源の反射材1による反射光を、左右の円偏光板を通して目視観察することによって、反射された光が右円偏光であることを確認した。
防虫効果の確認は、夜間に内部の照明を点灯し、害虫防除光源点灯時に1時間の間に反射材を越えてハウス側面に到達した昆虫を捕獲し、害虫防除光源および反射材無設置時に1時間の間に飛来した昆虫数に対する比(値が小さいほど効果大)を求めることで行った。
シートの透明性の確認は、ハウスの中心に箱入りの菓子、菓子袋類を机の上において、これを夜間に内部の照明を点灯し且つ害虫防除光源点灯時にハウス外部からシート越しに目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:菓子の銘柄および包装の色が認識可能
B:菓子の存在が認識可能(許容範囲)
C:菓子類の存在識別が困難
<実施例2>
害虫防除光源を反射カバーつきの4本の黄色蛍光灯に、発光面を反射材側に向けて シートから20cmの距離につるして設置した以外は、実施例1と同様に評価を行った。この光源の発光スペクトルを図3に示した。
<実施例3>
黄色蛍光灯の蛍光管に円偏光フィルム1をPET面を内側にして巻きつけた以外は、実施例2と同様にして、評価を行った。なお、この黄色蛍光灯を、左右の円偏光板を通して目視観察することによって、発せられた光が右円偏光であることを確認した。
<実施例4>
図3に示した発光スペクトルの白色LED光源の光出射開口部に円偏光フィルム1をPET面を内側にして貼り付けた以外は実施例2と同様にして、評価を行った。
<比較例1>
光源および反射材を設置しなかった以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
<比較例2>
反射材として市販の拡散シート(キモト社製WSK40)を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行った。本シートの反射光を、左右の円偏光板および直線偏光板を通して目視観察することによって、発せられた光が非偏光であることを確認した。
<比較例3>
反射材を設置しなかった以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
<比較例4>
反射材を設置せず、且つ光源の発光面をハウスと反対側に向けて点灯した以外は、実施例2と同様にして評価を行った。
<比較例5>
光源としてHER-LED社製の緑色LED 7Wを用い、反射材1を反射材2に変えた以外は実施例1と同様にして評価を行った。またこの光源の発光スペクトルを図3に示した。
<比較例6>
光源としてHER-LED社製の青色LED 7Wを用い、反射材1を反射材3に変えた以外は実施例1と同様にして評価を行った。またこの光源の発光スペクトルを図3に示した。
結果を表2に示す。

Claims (6)

  1. 建物の入り口または窓に配置された反射材に570〜620nmの波長の光を建物の外側から照射することを含み、
    前記反射材が570〜620nmの波長域の光を波長選択的に反射し、
    前記反射の反射光が円偏光である、
    前記建物への虫の侵入を防止する防虫方法。
  2. 前記反射材が570〜620nmの波長域に反射ピークを示す反射スペクトルを与える請求項1に記載の防虫方法。
  3. 前記反射材の前記反射ピークにおける拡散反射率が30%以上45%以下である請求項2に記載の防虫方法。
  4. 前記反射材の380nm〜780nmの光の透過率が50%以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の防虫方法。
  5. 前記反射材がコレステリック液晶相を固定した層を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の防虫方法。
  6. 前記反射材がコレステリック液晶相を固定した前記層に直接隣接する層として(メタ)アクリレートモノマーを含む層を塗布硬化して得られるアクリル層を含む請求項5に記載の防虫方法。
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