(本開示に係るキャリアリーク補正装置の各実施形態に至る経緯)
先ず、本開示に係るキャリアリーク補正装置の各実施形態の内容を説明する前に、本開示に係るキャリアリーク補正装置の各実施形態の内容に至る経緯について説明する。
具体的には、上述した特許文献1では、送信変調波が無線通信される場合にキャリアリークが補正されるので、キャリアリーク補正用の信号の振幅と、無線通信用の送信変調波の振幅とは同程度であると考えられる。
しかし、特許文献1に記載のキャリアリーク補正装置では、無線通信に高周波信号(例えばマイクロ波、ミリ波)を用いると、直交変調器によって生じるキャリアリークが増大するので、キャリアリークの大きさが送信変調波の振幅を超えることがあり、高周波信号の包絡線振幅の変動量が均一にならず、キャリアリークの十分な抑圧が困難となる。
更に、直交変調器の製造バラツキ又は温度範囲により、キャリアリークが十分に抑圧されない状態において送信変調波が送信されるため、受信装置における受信信号の検出精度が劣化する。従って、高周波信号(例えばマイクロ波、ミリ波)を送信する場合でも、キャリアリークを十分に抑圧可能に補正する技術が望まれる。
そこで、以下の各実施形態では、高周波信号の直交変調において生じるキャリアリークを抑圧し、受信信号の検出精度の劣化を抑制するキャリアリーク補正装置の例を説明する。
以下、本開示に係るキャリアリーク補正装置及びキャリアリーク補正方法の各実施形態について、図面を参照して説明する。以下の各実施形態では、本開示に係るキャリアリーク補正装置の一例として、送信装置を例示して説明するが、送信装置の動作を規定したキャリアリーク補正方法として表現しても良い。なお、以下の各実施形態において、同一の構成には同一の符号を付し、同一の内容の説明は簡略化又は省略し、異なる内容について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の送信装置1の内部構成を示す回路構成図である。図1に示す送信装置1は、補正シーケンス制御部10と、変調部11と、無変調信号発生部12と、等価低域信号選択部13と、補正値探索部14と、オフセット補正部15と、ローカル発振器16と、直交変調部17と、アンテナ19が接続された電力増幅部18と、包絡線検波部20と、振幅測定部21とを含む。
補正シーケンス制御部10は、無変調信号発生部12、等価低域信号選択部13及び補正値探索部14の動作を制御する。例えば、補正シーケンス制御部10は、送信装置1においてキャリアリークを補正する場合(以下、「キャリアリーク補正」と略記する)では、振幅aの無変調信号(後述参照)を生成するための制御信号を無変調信号発生部12に出力し、変調信号と無変調信号とのうち無変調信号を選択するための制御信号を等価低域信号選択部13に出力し、更に、オフセット補正値(xc,yc)を出力するための制御信号を補正値探索部14に出力する。
また、補正シーケンス制御部10は、送信装置1において変調信号(送信変調波)を送信する、即ち、通常(regular)の送信データを送信する場合(以下、「通常のデータ送信」と略記する)では、変調信号と無変調信号とのうち変調信号を選択するための制御信号を等価低域信号選択部13に出力し、更に、キャリアリーク補正における探索において得られたオフセット補正値(xc,yc)を出力するための制御信号を補正値探索部14に出力する。
変調部11は、所定の変調方式(例えばBPSK(Binary Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation))を用いて送信データを変調し、変調波を示す等価低域信号(変調信号)を等価低域信号選択部13に出力する。なお、変調部11は、送信データに、例えば、プリアンブル、ヘッダ、誤り訂正符号を付加してパケット化する。
無変調信号生成部の一例としての無変調信号発生部12は、補正シーケンス制御部10により生成された制御信号により指定された振幅aを用いて、余弦波と正弦波とを示す等価低域信号(無変調信号)を生成して等価低域信号選択部13に出力する。振幅aについては後述する。
等価低域信号選択部13は、補正シーケンス制御部10により生成された制御信号に応じて、通常のデータ送信では、変調部11により生成された等価低域信号(変調信号)を選択してオフセット補正部15に出力する。また、等価低域信号選択部13は、補正シーケンス制御部10により生成された制御信号に応じて、キャリアリーク補正には、無変調信号発生部12により生成された等価低域信号(無変調信号)を選択してオフセット補正部15に出力する。
補正値探索部14は、補正シーケンス制御部10により生成された制御信号に応じて、振幅測定部21により測定された包絡線振幅の変動量w(後述参照)の最小値を与えるオフセット補正値を探索し、探索により得られたオフセット補正値(xc,yc)をオフセット補正部15に出力する。xcはオフセット補正値の同相成分を示し、ycはオフセット補正値の直交成分を示す。
具体的には、補正値探索部14は、補正シーケンス制御部10により生成された制御信号に応じて、通常のデータ送信では、キャリアリーク補正における探索により得られた固定値のオフセット補正値をオフセット補正部15に出力する。また、補正値探索部14は、補正シーケンス制御部10により生成された制御信号に応じて、キャリアリーク補正には、オフセット補正値の初期値、又は補正値探索部14の探索により得られたオフセット補正値をオフセット補正部15に出力する。
補正部の一例としてのオフセット補正部15は、加算器151と加算器152とを有する。加算器151は、等価低域信号選択部13により選択された信号の同相成分と、補正値探索部14により出力されたオフセット補正値の同相成分xcとを加算して直交変調部17に出力する。加算器152は、等価低域信号選択部13により選択された信号の直交成分と、補正値探索部14により出力されたオフセット補正値の直交成分ycとを加算して直交変調部17に出力する。
ローカル発振器16は、例えばマイクロ波帯又はミリ波帯の搬送波信号を生成して直交変調部17の移相部173に出力する。
直交変調部17は、乗算器174,175と、加算器176とを有し、オフセット補正部15により出力された等価低域信号としての変調信号又は無変調信号と、ローカル発振器16により出力された搬送波信号とを用いて直交変調し、搬送波信号を高周波信号に変換する。直交変調部17は、高周波信号を電力増幅部18に出力する。
ここで、直交変調部17では、オフセット補正部15により出力された等価低域信号の同相成分にキャリアリークとしてのオフセットxoが加算され、更に、オフセット補正部15により出力された等価低域信号の直交成分にキャリアリークとしてのオフセットyoが加算される(図1参照)。
移相部173は、ローカル発振器16により生成された搬送波信号に対して、同相(0°)の搬送波信号と直交(90°)の搬送波信号とを生成する。移相部173は、同相の搬送波信号を乗算器174に出力し、直交の搬送波信号を乗算器175に出力する。
乗算器174は、等価低域信号の同相成分と同相(0°)の搬送波信号とを乗算して高周波信号の同相成分を加算器176に出力する。乗算器175は、等価低域信号の直交成分と直交(90°)の搬送波信号とを乗算して高周波信号の直交成分を加算器176に出力する。加算器176は、乗算器174の出力と乗算器175の出力とを加算して高周波信号を生成し、高周波信号を電力増幅部18に出力する。
なお、直交変調部17の乗算器174,175は、通常のデータ送信に用いる搬送波周波数と同一の周波数のローカル信号を変調すると説明したが、例えば通常のデータ送信に用いる搬送波周波数と異なる周波数のローカル信号を変調し、直交変調部17の出力を別途設けた周波数変換部により、通常のデータ送信に用いる搬送波周波数に周波数変換しても良い。
電力増幅部18は、直交変調部17により出力された高周波信号の電力を増幅し、アンテナ19に供給する。アンテナ19は、電力増幅部18により増幅された高周波信号を放射する。
包絡線検波部20には、電力増幅部18により出力された高周波信号の一部、又は直交変調部17により出力された高周波信号の一部(点線参照)が入力される。なお、図示は省略するが、例えば電力増幅部18が多段構成では、電力増幅部18の中間段の信号の一部が包絡線検波部20に入力されても良い。
包絡線検波部20は、電力増幅部18により出力された高周波信号の一部、又は直交変調部17により出力された高周波信号の一部の包絡線を検波し、包絡線検波の出力としての包絡線振幅を検出して振幅測定部21に出力する。
振幅測定部21は、包絡線検波部20により検波された包絡線振幅の時間的な変動量wを測定して補正値探索部14に出力する。なお、包絡線検波部20の出力は、帯域通過フィルタ部(不図示)を経由して、振幅測定部21に入力されても良い。帯域通過フィルタ部は、直交変調部17におけるキャリアリークに起因して生じる包絡線振幅の変動量wの周波数成分以外の不要成分を除去する。
これにより、振幅測定部21には、包絡線検波部20により検波された包絡線振幅が入力されるので、振幅測定部21は、包絡線振幅vの変動量wを高精度に測定できる。なお、帯域通過フィルタ部は、例えばアナログ素子を用いたフィルタ、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタ、又はFFT(Fast Fourier Transform)を用いて、包絡線振幅の変動量wの周波数成分以外の不要成分を除去する。
以下、本実施形態の送信装置1におけるキャリアリークの補正に関する動作について、より詳細に説明する。
無変調信号発生部12は、数式(1)に示される余弦波信号xと、数式(2)により示される正弦波信号yとを生成して等価低域信号選択部13に出力する。数式(1),(2)において、aは無変調信号の振幅を示し、ωは角周波数を示し、tは時刻を示す。ωは変調信号の周波数範囲内に選ばれるのが好ましい。
例えばIEEE802.11adでは、周波数範囲はミリ波の中心周波数±1GHz程度であるため、1GHz以下となるように、110MHz×2π、220MHz×2πとなる。図2は、無変調信号の振幅a=1とした場合の無変調信号の一例を示す図である。
オフセット補正部15は、数式(1)により示される余弦波信号xにオフセット補正値の同相成分xcを加算し、数式(2)により示される正弦波信号yにオフセットycを加算することで、数式(3),(4)により示される無変調信号x1,y1を直交変調部17に出力する。
直交変調部17は、無変調信号x1,y1を用いて搬送波信号を直交変調するが、直交変調においてキャリアリークを表すオフセットx0,y0の影響を受ける。即ち、直交変調では、無変調信号x1にはキャリアリークを示すオフセットx0が加算され、無変調信号y1にはキャリアリークを示すオフセットy0が加算される。直交変調部17の出力としてのミリ波帯の高周波信号sは、数式(5)により示される。なお、jは虚数単位である。
本実施形態の送信装置1におけるキャリアリーク補正の目標は、測定が困難なオフセットxo,yoを打ち消すための補正係数としてのオフセット補正値の同相成分xc(=−xo),yc(=−yo)を求めることである。
包絡線検波部20は、数式(5)により示される高周波信号sの包絡線振幅vに基づく値として、例えば包絡線振幅vに比例する値又は包絡線振幅vの二乗値に比例する値を出力する。包絡線振幅vは、数式(6)により示される。
数式(6)において、r,θは、直交座標(xo+xc,yo+yc)を極座標において表した場合の半径,角度を示す。誤差rは、数式(7)により示される。
ここで、包絡線振幅について、図3(A)及び図3(B)を参照して説明する。図3(A)は、キャリアリークが無い包絡線振幅vの説明図である。図3(B)は、キャリアリークがある包絡線振幅vの説明図である。包絡線振幅vは、図3(A)又は図3(B)に示す直交座標系の原点、即ち、等価低域信号の原点から、図3(A)又は図3(B)に示す円上の位置までの距離を示す。
キャリアリークが無い場合には、図2に示す余弦波信号x,正弦波信号yが、直交座標系の横軸,縦軸に表れるため、等価低域信号は、図3(A)に示す原点を中心とした円として表される。従って、包絡線振幅vは一定となる。
一方、キャリアリークがある場合には、等価低域信号は、図3(B)に示す直交座標系の座標(xo+xc,yo+yc)を中心とした円として表される。即ち、キャリアリークがある場合には、等価低域信号を示す円の中心点が直交座標系の原点から、誤差rに応じて外れる。従って、包絡線振幅vは、時刻t、即ち位相ωtが進むにつれて周期的に変化する。
数式(6)のうち、包絡線振幅vの時間的な変動が生じる項は2arcos(ωt−θ)の成分である。つまり、オフセット補正値の同相成分xc,ycの値の探索により、包絡線振幅vの時間的な変動が無くなることは、数式(7)により示される誤差r=0となることを意味する。数式(7)より、誤差r=0は、(xo+xc,yo+yc)=(0,0)を意味し、xc=−xo,yc=−yoが達成できたことになる。
また、図3(A)においても、包絡線振幅vの変動量wがなくなることは、等価低域信号を示す円(図3(A)又は図3(B)参照)の中心が直交座標系の原点となること、即ち、(xo+xc,yo+yc)=(0,0)となることを示す。
振幅測定部21は、包絡線検波部20により検波された包絡線振幅の時間的な変動量wを測定する。例えば、振幅測定部21は、包絡線検波部20により包絡線振幅vのn乗が出力され、最大値と最小値との差(peak to peak)を測定する場合には、数式(8)により示される変動量wを出力する。
図4(A)は、キャリアリークが無い包絡線振幅v及び変動量wの時間変化の一例を示す図である。図4(B)は、キャリアリークが有る包絡線振幅v及び変動量wの時間変化の一例を示す図である。図4(A)及び図4(B)では、説明を簡単にするために、数式(8)における整数nは1としている。
キャリアリークが無い場合には、包絡線振幅vが一定値となるため、変動量w=0となる(図4(A)参照)。
一方、キャリアリークがある場合には、包絡線振幅vが周期的に変動する(図4(B)参照)。包絡線振幅vの変動周期は、図2に示す無変調信号の周期と同じである。なお、図4(B)に示す変動量wは、約0.7である。
数式(8)における無変調信号の振幅aは補正シーケンス制御部10により定められた定数であり、rは数式(7)により示され、数式(7)におけるxo,yoは定数(但し、未知数)なので、数式(8)により示される包絡線振幅vの変動量wは、xc,ycの関数となる(数式(9)参照)。
補正値探索部14は、数式(9)により示される変動量wが最小値、理想的にはゼロになるように、オフセット補正値の同相成分xc,ycを設定する。具体的には、補正値探索部14は、オフセット補正値の初期値(xc,yc)=(0,0)から始め、変動量wがより小さくなるようにオフセット補正値(xc,yc)を少しずつ変化させ、変動量wを最小値まで収束させることで、オフセット補正値(xc,yc)の探索を終了する。
なお、オフセット補正値(xc,yc)の初期値は、(0,0)以外の任意の値でも良い。また、補正値探索部14は、複数種類の初期値を用いて、探索の結果として変動量wを最小値まで収束させ、探索により得られたオフセット補正値を初期値として選択しても良い。
補正値探索部14におけるオフセット補正値(xc,yc)の探索方法は、例えば次の方法が挙げられる。
具体的には、補正値探索部14は、オフセット補正値(xc,yc)の現在値を(xnow,ynow)、αを微小な定数とし、(xc,yc)を(xnow+α,ynow),(xnow−α,ynow),(xnow,ynow+α),(xnow,ynow−α)の4通りに変化させて変動量wを測定する。補正値探索部14は、変動量wの最小値を与えるオフセット補正値(xc,yc)を新たな現在値として選択する。
補正値探索部14は、定数αを用いてオフセット補正値を4通りに変化させる動作を繰り返し、オフセット補正値(xc,yc)=(xnow,ynow)における変動量wがオフセット補正値(xc,yc)を4通りに変化させ、変動量wが最小値まで収束した場合に、オフセット補正値の探索を終了する。
また、オフセット補正値(xc,yc)の探索方法として、次の方法も挙げられる。
具体的には、補正値探索部14は、同様に微小な定数αを用いて、オフセット補正値(xc,yc)を(xnow+α,ynow),(xnow−α,ynow)の2通りに変化させて変動量wを測定する。補正値探索部14は、変動量wの最小値を与えるオフセット補正値(xc,yc)を新たな現在値として選択する。
補正値探索部14は、定数αを用いてオフセット補正値をx方向に2通りに変化させる動作を繰り返し、オフセット補正値(xc,yc)=(xnow,ynow)における変動量wがオフセット補正値(xc,yc)を2通りに変化させ、変動量wが最小値まで収束した場合に、x方向のオフセット補正値の同相成分xcの探索を終了する。
次に、補正値探索部14は、オフセット補正値(xc,yc)を(xnow,ynow+α)、(xnow,ynow−α)の2通りに変化させて変動量wを測定する。補正値探索部14は、変動量wの最小値を与えるオフセット補正値(xc,yc)を新たに現在値として選択する。
補正値探索部14は、定数αを用いてオフセット補正値をx方向に2通りに変化させる動作を繰り返し、オフセット補正値(xc,yc)=(xnow,ynow)における変動量wがオフセット補正値(xc,yc)を2通りに変化させ、変動量wが最小値まで収束した場合に、y方向のオフセット補正値ycの探索を終了する。
なお、補正値探索部14は、オフセット補正値の同相成分xcのx方向の探索、及びオフセット補正値の直交成分ycのy方向の探索を1回ずつ実行した場合に探索を終了しても良いし、更に複数回、同様な処理を繰り返しても良い。以上により、変動量wが最小となるオフセット補正値(xc,yc)が得られる。
図5(A)及び図5(B)は、無変調信号の振幅a=1とした包絡線検波部20の検波特性の一例を示す図である。即ち、図5(A)及び図5(B)では、数式(7)により示される誤差rと、振幅測定部21により測定された包絡線振幅vの変動量wの測定値との関係が示されている。
図5(A)では、包絡線検波部20の検波特性としては、例えば2乗特性、1乗特性及び1/2乗特性を示す。例えば、回路の非線形性を用いて比較的小さな信号の振幅を検出する場合には、2乗特性を用いることが多く、オン又はオフの動作を切り換える整流器を用いる場合には1乗特性を用いることが多い。また、回路の種類に拘わらず、出力電圧は電源電圧の制約を受けるので、入力が大きいと出力は飽和する。飽和を表すための一例として、1/2乗特性を示す。振幅測定部21は、包絡線振幅vの変動量wの最大値と最小値の差(peak to peak)を測定して出力する。
図5(A)では、無変調信号の振幅aは1である。上述した特許文献1では、キャリアリークは無変調信号の振幅aを超えることは想定されていないため、数式(7)により示される誤差rは0から1の範囲としている。図5(A)では、包絡線検波部20の検波特性がどの特性であっても、誤差rの増減に対応して変動量wは単調に増減する。従って、変動量wが小さくなる方向に誤差rを変化させることで、誤差rを最小値(理想的にはゼロ)にできる。
また、マイクロ波又はミリ波のように高い周波数では、直交変調部17においてクロストークが生じ易く、集積回路の製造バラツキによってはキャリアリークが変調波の振幅を越える場合もある。このため、図5(B)では、数式(7)により示される誤差rの範囲が0から2とした誤差rと変動量wとの関係を示す。
ここで、図5(B)では、包絡線検波部20の特性が理想的な2乗特性であれば、数式(7)により示される誤差rの増減に対応してwは単調に増減する。しかし、包絡線検波部20の特性が1乗特性では、数式(7)により示される誤差r>1に対して、変動量wが変化せず平坦になっている。
つまり、直交変調部17において生じるキャリアリークが大きいと、オフセット補正値(xc,yc)の初期値に対応する誤差rが1より大きいと、補正値探索部14において、誤差rの変化に対して変動量wが変化しないため、誤差rが小さくなる方向の探索が困難となり、変動量wが変化しないため、誤差r>1の範囲のどこかで探索が終了する可能性が大きくなる。
更に、包絡線検波部20の特性が1/2乗特性である場合には、数式(7)により示されるr>1に対して、誤差rが大きいほど変動量wが小さくなる特性となり、補正値探索部14において変動量wが小さくなる方向に探索すると、誤差rが大きくなる。
次に、本実施形態の送信装置1におけるキャリアリーク補正の動作手順について、図6(A)又は図6(B)を参照して説明する。図6(A)は、第1の実施形態の送信装置の動作手順の一例を説明するフローチャートである。図6(B)は、第1の実施形態の送信装置の動作手順の他の一例を説明するフローチャートである。なお、図6(B)の説明では、図6(A)の説明と同一の内容については同一のステップ番号を付して説明を簡略化又は省略し、異なる内容について説明する。
図6(A)において、補正シーケンス制御部10は、振幅aを所定の振幅(例えば通常のデータ送信に用いる通常値(a=1))より大きい値(例えばa=2)の無変調信号を生成するための制御信号を無変調信号発生部12に出力する(S11)。また、補正シーケンス制御部10は、無変調信号発生部12により生成された無変調信号を選択するための制御信号を等価低域信号選択部13に出力し、更に、オフセット補正値(xc,yc)の初期値を出力するための制御信号を補正値探索部14に出力する(S12)。
また、補正シーケンス制御部10は、包絡線振幅vの変動量wの最小値を与えるオフセット補正値(xc,yc)の探索処理、及び探索処理により得られたオフセット補正値(xc,yc)を出力するための制御信号を補正値探索部14に出力する(S12)。
ステップS12の後、補正値探索部14は、補正シーケンス制御部10により生成された制御信号に応じて、振幅測定部21の出力(包絡線振幅vの変動量w)を用いて、変動量wの最小値を与えるオフセット補正値(xc,yc)を探索する(S13)。なお、補正値探索部14におけるオフセット補正値(xc,yc)の探索方法の詳細については上述したので、説明は割愛する。
図7は、無変調信号の振幅a=2とした場合の包絡線検波部20の検波特性の一例を示す図である。即ち、図7には、数式(7)により示される誤差rと、包絡線振幅vの変動量wの測定値との関係が示されている。図7では、誤差rの範囲は通常の範囲(0<r<1)の2倍の0から2の範囲である。
図7では、振幅a=2としたことで、包絡線検波部20の特性が2乗特性、1乗特性及び1/2乗特性のいずれに対しても、誤差rの増減に対応して変動量wは単調に増減することができる。従って、補正値探索部14は、変動量wが小さくなる方向に誤差rを移動させると、誤差rをより小さくできる。補正値探索部14は、オフセット補正値(xc,yc)の探索を完了した時点において、包絡線振幅vの変動量wの最小値を与えるオフセット補正値(xc,yc)を求めることができる。
しかし、無変調信号の振幅aが通常値(a=1)より大きい場合には、通常値の振幅を用いて変調波を直交変調する場合とは異なるので、振幅a=2における探索により得られたオフセット補正値(xc,yc)は振幅a=1における探索により得られるオフセット補正値とは異なる。しかし、オフセット補正値の差異は、誤差rの値を用いて表すと1より小さくなる。
そこで、補正シーケンス制御部10は、S13の後に、再度、振幅aを所定の振幅(例えば通常値、a=1)の無変調信号を生成するための制御信号を無変調信号発生部12に出力する(S14)。また、補正シーケンス制御部10は、無変調信号発生部12により生成された無変調信号を選択するための制御信号を等価低域信号選択部13に出力し、更に、オフセット補正値(xc,yc)の初期値を出力するための制御信号を補正値探索部14に出力する(S15)。
また、補正シーケンス制御部10は、包絡線振幅vの変動量wの最小値を与えるオフセット補正値(xc,yc)の探索処理、及び探索処理により得られたオフセット補正値(xc,yc)を出力するための制御信号を補正値探索部14に出力する(S15)。ステップS15におけるオフセット補正値(xc,yc)の探索は、図5(A)に示す誤差rと変動量wとの関係に従う。
即ち、補正値探索部14は、誤差rを1より小さくできるオフセット補正値(xc,yc)を用いて探索を始めるので、オフセット補正値(xc,yc)の探索を完了する時点では、誤差rの最小値(変動量wの最小値)が得られる。誤差rの最小値(変動量wの最小値)を与えるオフセット補正値(xc,yc)は、通常のデータ送信における変調信号を直交変調する状態と同様である。
図8(A)は、キャリアリークの補正前における送信スペクトル測定値の一例を示す図である。図8(B)は、無変調信号の振幅a=1を用いてキャリアリークを補正した後の送信スペクトル測定値の一例を示す図である。図8(C)は、無変調信号の振幅a=2を用いてキャリアリークを補正した後の送信スペクトル測定値の一例を示す図である。図8(D)は、無変調信号の振幅a=2を用いてキャリアリークを補正した後、無変調信号の振幅a=1を用いてキャリアリークを補正した後の送信スペクトル測定値の一例を示す図である。
図8(A)〜図(D)のいずれについても、通常値(a=1)の振幅を有する変調信号(110MHz)を出力させた場合の送信スペクトル測定値が示されている。横軸が周波数(GHz)を示し、縦軸が電力(相対値であるdB)を示す。変調の中心周波数を60.48GHzとしたので、所望の変調波は60.59GHzに、キャリアリークは60.48GHzに現れる。
図8(A)では、キャリアリークの補正前の送信スペクトル測定値が示されており、所望の変調波よりも約1dB大きなキャリアリークが測定されている。
図8(B)では、通常値(a=1)の振幅を有する変調波を用いてキャリアリークを補正した後の送信スペクトル測定値が示されており、キャリアリークの方が所望の変調波より大幅に大きい。
図8(C)では、通常値(a=1)の振幅より大きな振幅(例えばa=2)を有する無変調波を用いてキャリアリークを補正した後の送信スペクトル測定値が示されており、図8(A)に示すキャリアリークの補正前の送信スペクトル測定値に比べて、キャリアリークが抑圧されている。但し、キャリアリークの抑圧は、13dB程度であり、送信装置1における送信データの変調精度としては十分ではない。
図8(D)では、本実施形態に従い、通常値(a=1)の振幅より大きな振幅(例えばa=2)を有する無変調波を用いてキャリアリークを補正した後に、通常値(a=1)の振幅を有する無変調波を用いて更にキャリアリークを補正した後の送信スペクトル測定値が示されている。図8(D)では、本実施形態の送信装置1は、直交変調部17において生じるキャリアリークを35dB程度抑圧でき、送信データを高精度に変調できるため、受信装置における信号検出精度の劣化を抑制できる。
以上により、本実施形態の送信装置1は、送信データを変調して送信する前に、通常値(例えばa=1)の振幅より大きな振幅(例えばa=2)の無変調信号を用い、無変調信号を基に生成された高周波信号の包絡線振幅vの変動量wの最小値を与えるオフセット補正値(xc,yc)を探索し、更に、通常値(例えばa=1)の振幅を有する無変調信号を用い、無変調信号を基に生成された高周波信号の包絡線振幅vの変動量wの最小値を与えるオフセット補正値(xc,yc)を探索する。
これにより、送信装置1は、直交変調部17において生じるキャリアリークを抑圧できる。更に、送信装置1は、キャリアリークの補正後に送信データを変調して送信する場合に、キャリアリーク補正における探索により得られたオフセット補正値(xc,yc)を用いて、送信データの変調信号にオフセット補正値(xc,yc)を加算するので、送信データの変調信号を直交変調しても、キャリアリークが抑圧された高周波信号を生成でき、受信装置における受信信号の検出精度の劣化を抑制できる。
なお、本実施形態では、送信装置1は、キャリアリークを補正する場合に、例えば通常値(a=1)より大きい振幅を有する無変調信号と、通常値(a=1)の振幅を有する無変調信号との合計2種類の振幅を用いてキャリアリークを補正すると説明したが、3種類の振幅を用いてキャリアリークを補正しても良い(図6(B)参照)。
図6(B)では、図6(A)に示すフローチャートに対して、ステップS13とステップS14との間に、例えば通常値(a=1)より大きい振幅(a=2)と通常値(a=1)の振幅との間の中間値な振幅を用いた場合のオフセット補正値(xc,yc)の探索(S16、S17)が追加されている。
これにより、送信装置1は、図6(A)に示す動作手順に従う場合に比べて、ステップS11において用いる無変調信号の振幅として大きい値(例えばa=3)を用いることができるため、より大きなキャリアリークを補正できる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、送信装置1は、無変調信号の振幅aとして通常値(例えばa=1)より大きな振幅(例えばa=2)を用いて第1回目のオフセット補正値(xc,yc)を探索した。しかし、キャリアリークが送信データの変調信号の振幅を超えることが稀となる通信環境である場合には、第1回目のオフセット補正値(xc,yc)の探索は無駄になる可能性が大きい。例えば、送信装置1の出荷前検査において、オフセット補正値(xc,yc)の探索後にキャリアリークを測定する場合には、出荷前検査に要する時間が増大する。
第2の実施形態では、送信装置1Aは、無変調信号の振幅aとして通常値(例えばa=1)を用いて第1回目のオフセット補正値(xc,yc)を探索する。送信装置1Aは、探索結果として包絡線振幅vの変動量wを最小化できるオフセット補正値(xc,yc)が得られない場合、即ち、キャリアリークが十分に抑圧されていない場合に、第1の実施形態と同様に、通常値(例えばa=1)より大きい振幅(例えばa=2)を有する無変調信号を用いて、オフセット補正値(xc,yc)を探索する(図10参照)。
図9は、第2の実施形態の送信装置1Aの内部構成を示す回路構成図である。図9に示す送信装置1Aは、補正シーケンス制御部10Aと、変調部11と、無変調信号発生部12と、等価低域信号選択部13と、補正値探索部14Aと、オフセット補正部15と、ローカル発振器16と、直交変調部17と、アンテナ19が接続された電力増幅部18と、包絡線検波部20と、振幅測定部21と、高調波振幅測定部22とを含む。なお、図9に示す各部の説明では、図1に示す各部の説明と同一の内容については同一の符号を付して説明を簡略化又は省略し、異なる内容について説明する。
補正シーケンス制御部10Aは、本実施形態における第1回目のオフセット補正値(xc,yc)の探索のために、通常値(例えばa=1)の振幅を有する無変調信号を生成するための制御信号を無変調信号発生部12に出力する。
また、補正シーケンス制御部10Aは、所定条件を満たすか否かを判定し、所定条件を満たすと判定した場合に、直交変調部17において生じるキャリアリークの抑圧は不十分であると判定する。所定条件には、次の3通りが挙げられる。なお、補正シーケンス制御部10Aは、下述の(条件1)〜(条件3)のうちいずれか又は複数を用いて、直交変調部17において生じるキャリアリークを十分に抑圧できたか否かを判定する。
(条件1)振幅a(例えばa=1)を有する無変調信号が直交変調された高周波信号に対して、オフセット補正部15の探索により得られたオフセット補正値(xc,yc)が、無変調信号の振幅a(例えばa=1)を超えるという条件。
(条件2)振幅a(例えばa=1)を有する無変調信号が直交変調された高周波信号に対して、振幅測定部21により測定された包絡線振幅vの変動量wが所定の第1閾値(例えば0.4)を超えるという条件。
(条件3)振幅a(例えばa=1)を有する無変調信号が直交変調された高周波信号に対して、高調波振幅測定部22により測定された高調波の包絡線振幅vが所定の第2閾値(図11(A)及び図11(B)参照)を超えるという条件。
ここで、(条件1)〜(条件3)について詳細に説明する。なお、(条件1)は図9に示す符号AAに対応し、(条件2)は図9に示す符号BBに対応し、(条件3)は図9に示す符号CCに対応している。
先ず、(条件1)について説明する。
通常値(例えばa=1)の振幅を有する無変調信号を用いてオフセット補正値(xc,yc)を探索した結果、キャリアリークが十分に抑圧されたかどうかは、図5(B)に示す誤差r(数式(7)参照)がどのような値に収束したかに対応する。例えば誤差rが1より小さく0付近に収束すれば、包絡線振幅vの変動量wが小さいので、キャリアリークは十分に抑圧されたと考えられる。一方、誤差rが1を超えて制御限界値(例えば補正値探索部14により出力可能な(xc,yc)の最小値又は最大値)に向かうと、包絡線振幅vの変動量wは大きくなり、キャリアリークが十分に抑圧されていないと考えられる。
但し、誤差rは数式(7)により示され、実測することは困難である。数式(7)のうち測定できる変数は、オフセット補正値(xc,yc)である。本来、キャリアリークは無変調信号の振幅aより小さいことを前提に、オフセット補正値(xc,yc)が探索される。このため、キャリアリークを打ち消すためのオフセット補正値(xc,yc)が無変調信号の振幅aを超えていれば、誤差rが1より小さく0付近に収束することはなく、キャリアリークが十分に抑圧されていないと考えられる。
次に、(条件2)について説明する。
キャリアリークが十分に抑圧されたかどうかは、図5(B)に示す包絡線振幅vの変動量wが小さい値であるかどうかに対応する。言い換えると、包絡線振幅vの変動量wが大きいと、キャリアリークが十分に抑圧されていないと考えられる。例えば、包絡線振幅vの変動量wが図5(B)に示す範囲である場合には、キャリアリークが十分に抑圧されたかどうかを判定するための第1閾値は0.4とする。但し、第1閾値は0.4に限定されない。
最後に、(条件3)について説明する。
キャリアリークが十分に抑圧されていない場合には、無変調信号にキャリアリークが重畳しているので電力が大きくなり、直交変調部17又は電力増幅部18において信号の歪みが生じる可能性が高い。図8(B)では、キャリアリークが十分に抑圧されておらず、歪みが生じているため、図8(C)及び図8(D)に比べて、無変調信号でもキャリアリークでもない周波数成分が大きい。このような信号の包絡線振幅vの変動量wには、無変調波の周波数(例えば110MHz)以外の高調波の周波数成分が残留している(例えば220MHz、330MHz)。
図11(A)は、キャリアリークが十分に抑圧されている場合の包絡線振幅vと周波数との関係の一例を示す図である。図11(B)は、キャリアリークが抑圧されていない場合の包絡線振幅vと周波数との関係の一例を示す図である。図11(A)では、キャリアリークが十分に抑圧されているので、無変調信号の周波数の2倍及び3倍の周波数成分は小さい。
一方、図11(B)では、キャリアリークが十分に抑圧されていないので、無変調信号の周波数の2倍及び3倍の周波数成分は大きい(図11(B)に示す楕円の点線参照)。高調波振幅測定部22は、包絡線検波部20により検波された包絡線振幅vの変動量wの高調波成分を抽出し、高調波成分の振幅を測定する。補正シーケンス制御部10Aは、高調波振幅測定部22により測定された高調波成分の振幅が所定の第2閾値より小さいと判定した場合に、キャリアリークは十分に抑圧されていると判定する。一方、補正シーケンス制御部10Aは、高調波振幅測定部22により測定された高調波成分の振幅が所定の第2閾値より大きいと判定した場合には、キャリアリークは十分に抑圧されていないと判定する。
次に、本実施形態の送信装置1Aにおけるキャリアリーク補正の動作手順について、図10を参照して説明する。図10は、第2の実施形態の送信装置1Aの動作手順の一例を説明するフローチャートである。なお、図10の説明では、図6(A)の説明と同一の内容については同一のステップ番号を付して説明を簡略化又は省略し、異なる内容について説明する。
図10において、補正シーケンス制御部10Aは、通常値(例えばa=1)の振幅を有する無変調信号を生成するための制御信号を無変調信号発生部12に出力する(S21)。また、補正シーケンス制御部10Aは、無変調信号発生部12により生成された無変調信号を選択するための制御信号を等価低域信号選択部13に出力し、更に、オフセット補正値(xc,yc)の初期値を出力するための制御信号を補正値探索部14Aに出力する(S22)。
また、補正シーケンス制御部10Aは、包絡線振幅vの変動量wの最小値を与えるオフセット補正値(xc,yc)の探索処理、及び探索処理により得られたオフセット補正値(xc,yc)を出力するための制御信号を補正値探索部14Aに出力する(S22)。
ステップS22の後、補正値探索部14Aは、補正シーケンス制御部10Aにより生成された制御信号に応じて、振幅測定部21の出力(包絡線振幅vの変動量w)を用いて、変動量wの最小値を与えるオフセット補正値(xc,yc)を探索する(S23)。なお、補正値探索部14Aにおけるオフセット補正値(xc,yc)の探索方法の詳細については第1の実施形態と同様であるため、説明は割愛する。
ステップS23の後、補正シーケンス制御部10Aは、上述した(条件1)〜(条件3)のうちいずれか又は複数の条件を満たすか否かを基に、直交変調部17において生じるキャリアリークを十分に抑圧できたか否かを判定する(S24)。キャリアリークが十分に抑圧されていると判定された場合には(S24、YES)、送信装置1Aの動作は終了する。
一方、キャリアリークが十分に抑圧されていないと判定された場合には(S24、NO)、補正シーケンス制御部10Aは、第1の実施形態と同様に、ステップS11以降の処理を実行する。
以上により、本実施形態の送信装置1Aは、無変調信号の振幅aとして通常値(例えばa=1)を用いて第1回目のオフセット補正値(xc,yc)を探索する。送信装置1Aは、第1回目の探索結果として得られたオフセット補正値(xc,yc)により、キャリアリークが十分に抑圧されたと判定した場合に、オフセット補正値の探索を終了し、キャリアリークが十分に抑圧されていないと判定した場合に、第1の実施形態と同様に、通常値(例えばa=1)より大きい振幅(例えばa=2)を有する無変調信号を用いて、オフセット補正値(xc,yc)の探索を開始する。
これにより、送信装置1Aは、第1の実施形態の送信装置1の効果が得られ、更に、キャリアリークが送信データの変調信号の振幅を超えることが稀となる通信環境である場合には、通常値(例えばa=1)より大きい振幅(例えばa=2)を有する無変調信号を用いたオフセット補正値(xc,yc)の探索の処理を省略できる。例えば、送信装置1Aは、出荷前検査では、少なくとも無変調信号の振幅aとして通常値(例えばa=1)を用いた第1回目のオフセット補正値(xc,yc)を探索すれば、キャリアリークを十分に抑圧できるので、出荷前検査に要する時間を短縮できる。
また、上述した第1又は第2の実施形態における送信装置1又は送信装置1Aは、例えば製造バラツキ又は使用温度範囲に応じて、直交変調部17において生じるキャリアリークが大きい場合でも、キャリアリークを十分に抑圧できるので、変動精度が高い変調信号を送信でき、通信品質の劣化を抑制できる。
以上、図面を参照して各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
上述した本開示では、送信装置1を、例えばハードウェア資源を用いて構成する場合を例示して説明したが、送信装置1の一部の構成については、ハードウェア資源と協働するソフトウェアを用いて構成しても良い。
また、上述した本実施形態の送信装置1の各部(構成要素)は、典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現される。LSIは個別に1チップ化されても良いし、一部又は全ての構成要素を含むように1チップ化されても良い。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC(Integrated Circuit)、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法にはLSIに限らず、専用回路又は汎用プロセッサを用いて実現しても良い。LSIの製造後に、プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続、設定が再構成可能なリコンフィグラブル・プロセッサを用いても良い。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、その技術を用いて受信装置100の各部を集積化しても良い。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。