図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1を示す断面図である。基板処理装置1は、略円板状の半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)に処理液を供給して基板9を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。本実施の形態では、基板処理装置1において、直径300mmの略円板状の基板9に処理が行われる。図1では、基板処理装置1の一部の構成の断面には、平行斜線の付与を省略している(他の断面図においても同様)。
基板処理装置1は、チャンバ12と、遮断板123と、チャンバ開閉機構131と、基板保持部14と、基板回転機構15と、液受け部16と、カバー17とを備える。カバー17は、チャンバ12の上方および側方を覆う。
チャンバ12は、チャンバ本体121と、チャンバ蓋部122とを備える。チャンバ12は、上下方向を向く中心軸J1を中心とする略円筒状である。チャンバ本体121は、チャンバ底部210と、チャンバ側壁部214とを備える。チャンバ底部210は、略円板状の中央部211と、中央部211の外縁部から下方へと広がる略円筒状の内側壁部212と、内側壁部212の下端から径方向外方へと広がる略円環板状の環状底部213と、環状底部213の外縁部から上方へと広がる略円筒状の外側壁部215と、外側壁部215の上端部から径方向外方へと広がる略円環板状のベース部216とを備える。
チャンバ側壁部214は、中心軸J1を中心とする環状である。チャンバ側壁部214は、ベース部216の内縁部から上方へと突出する。チャンバ側壁部214を形成する部材は、後述するように、液受け部16の一部を兼ねる。以下の説明では、チャンバ側壁部214と外側壁部215と環状底部213と内側壁部212と中央部211の外縁部とに囲まれた空間を下部環状空間217という。
基板保持部14に基板9が保持された場合、基板9の下面92は、チャンバ底部210の中央部211の上面と対向する。以下の説明では、チャンバ底部210の中央部211を「下面対向部211」と呼ぶ。
チャンバ蓋部122は中心軸J1に垂直な略円板状であり、チャンバ12の上部を含む。チャンバ蓋部122は、チャンバ本体121の上部開口を閉塞する。図1では、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間した状態を示す。チャンバ蓋部122がチャンバ本体121の上部開口を閉塞する際には、チャンバ蓋部122の外縁部がチャンバ側壁部214の上部と接する。
チャンバ開閉機構131は、チャンバ12の可動部であるチャンバ蓋部122を、チャンバ12の他の部位であるチャンバ本体121に対して上下方向に相対的に移動する。チャンバ開閉機構131は、チャンバ蓋部122を昇降する蓋部昇降機構である。チャンバ開閉機構131によりチャンバ蓋部122が上下方向に移動する際には、遮断板123もチャンバ蓋部122と共に上下方向に移動する。すなわち、チャンバ開閉機構131は、遮断板昇降機構でもある。チャンバ蓋部122がチャンバ本体121と接して上部開口を閉塞し、さらに、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121に向かって押圧されることにより、チャンバ12内に密閉された内部空間であるチャンバ空間120(図6参照)が形成される。換言すれば、チャンバ蓋部122によりチャンバ本体121の上部開口が閉塞されることより、チャンバ空間120が密閉される。チャンバ蓋部122およびチャンバ本体121は、密閉状態のチャンバ空間120を形成する密閉空間形成部である。
基板保持部14は、チャンバ空間120に配置され、基板9を水平状態で保持する。すなわち、基板9は、微細パターンが形成された一方の主面91(以下、「上面91」という。)を中心軸J1に垂直に上側を向く状態で基板保持部14により保持される。基板保持部14は、チャック支持部411と、複数のチャック部材を有する。チャック支持部411は中心軸J1を中心とする環状かつ板状である。複数のチャック部材はのチャック支持部411上に支持される。チャック部材の詳細は後述する。
遮断板123は、中心軸J1に垂直な略円板状である。遮断板123は、チャンバ蓋部122の下方、かつ、基板保持部14の上方に配置される。遮断板123は中央に開口を有する。基板9が基板保持部14に支持されると、基板9の上面91は、中心軸J1に垂直な遮断板123の下面と対向する。遮断板123の直径は、基板9の直径よりも大きく、遮断板123の外周縁は、基板9の外周縁よりも全周に亘って径方向外側に位置する。
図1に示す状態において、遮断板123は、チャンバ蓋部122により吊り下げられるように支持される。チャンバ蓋部122は、中央部に略環状のプレート保持部222を有する。プレート保持部222は、中心軸J1を中心とする略円筒状の筒部223と、中心軸J1を中心とする略円板状のフランジ部224とを備える。フランジ部224は、筒部223の下端から径方向内方へと広がる。
遮断板123は、環状の被保持部237を備える。被保持部237は、中心軸J1を中心とする略円筒状の筒部238と、中心軸J1を中心とする略円板状のフランジ部239とを備える。筒部238は、遮断板123の上面から上方に広がる。フランジ部239は、筒部238の上端から径方向外方へと広がる。筒部238は、プレート保持部222の筒部223の径方向内側に位置する。フランジ部239は、プレート保持部222のフランジ部224の上方に位置し、フランジ部224と上下方向に対向する。被保持部237のフランジ部239の下面が、プレート保持部222のフランジ部224の上面に接することにより、遮断板123が、チャンバ蓋部122から吊り下がるようにチャンバ蓋部122に支持される。
遮断板123の外縁部の下面には、複数の第1係合部241が周方向に配列される。チャック支持部411の上面には、複数の第2係合部242が周方向に配列される。これらの係合部は3組以上設けられることが好ましく、本実施の形態では4組設けられる。第1係合部241の下部には上方に向かって窪む凹部が設けられる。第2係合部242はチャック支持部411から上方に向かって突出する。第1係合部241および第2係合部242は、後述のチャック部材と周方向において異なる位置に配置される。
基板回転機構15は、いわゆる中空モータであり、基板保持部14を基板9に垂直な中心軸J1を中心として回転する。基板回転機構15は、中心軸J1を中心とする環状のステータ部151と、環状のロータ部152とを備える。ロータ部152は、略円環状の永久磁石を含む。永久磁石の表面は、PTFE樹脂にてモールドされる。ロータ部152は、チャンバ12内において下部環状空間217内に配置される。チャック支持部411は、ロータ部152の上方に配置される。チャック支持部411は接続部材を介してロータ部152に取り付けられる。
ステータ部151は、チャンバ12外においてロータ部152の周囲、すなわち、径方向外側に配置される。本実施の形態では、ステータ部151は、チャンバ底部210の外側壁部215およびベース部216に固定され、液受け部16の下方に位置する。ステータ部151は、中心軸J1を中心とする周方向に配列された複数のコイルを含む。
ステータ部151に電流が供給されることにより、ステータ部151とロータ部152との間に、中心軸J1を中心とする回転力が発生する。これにより、ロータ部152が、中心軸J1を中心として水平状態で回転する。ステータ部151とロータ部152との間に働く磁力により、ロータ部152は、チャンバ12内において直接的にも間接的にもチャンバ12に接触することなく浮遊し、中心軸J1を中心として基板9を基板保持部14と共に浮遊状態にて回転する。
液受け部16は、カップ部161と、カップ部移動機構162と、カップ対向部163とを備える。カップ部161は中心軸J1を中心とする環状であり、チャンバ12の径方向外側に全周に亘って位置する。カップ部移動機構162はカップ部161を上下方向に移動する。カップ部移動機構162は、カップ部161の径方向外側に配置される。カップ部移動機構162は、上述のチャンバ開閉機構131と周方向に異なる位置に配置される。カップ対向部163は、カップ部161の下方に位置し、カップ部161と上下方向に対向する。カップ対向部163は、チャンバ側壁部214を形成する部材の一部である。カップ対向部163は、チャンバ側壁部214の径方向外側に位置する環状の液受け凹部165を有する。
カップ部161は、側壁部611と、上面部612と、ベローズ617とを備える。側壁部611は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。上面部612は、中心軸J1を中心とする略円環板状であり、側壁部611の上端部から径方向内方および径方向外方へと広がる。側壁部611の下部は、カップ対向部163の液受け凹部165内に位置する。
ベローズ617は、中心軸J1を中心とする略円筒状であり、上下方向に伸縮可能である。ベローズ617は、側壁部611の径方向外側において、側壁部611の周囲に全周に亘って設けられる。ベローズ617は、気体や液体を通過させない材料にて形成される。ベローズ617の上端部は、上面部612の外縁部の下面に全周に亘って接続される。換言すれば、ベローズ617の上端部は、上面部612を介して側壁部611に間接的に接続される。ベローズ617と上面部612との接続部はシールされており、気体や液体の通過が防止される。ベローズ617の下端部は、カップ対向部163を介してチャンバ本体121に間接的に接続される。ベローズ617の下端部とカップ対向部163との接続部でも、気体や液体の通過が防止される。
チャンバ蓋部122の中央には、中心軸J1を中心とする略円柱状の上部ノズル181が取り付けられる。上部ノズル181は、基板9の上面91の中央部に対向してチャンバ蓋部122に固定される。上部ノズル181は、遮断板123の中央の開口に挿入可能である。チャンバ底部210の下面対向部211の中央には、下部ノズル182が取り付けられる。下部ノズル182は、中央に液吐出口を有し、基板9の下面92の中央部と対向する。下面対向部211には、複数の加熱ガス供給ノズル180がさらに取り付けられる。複数の加熱ガス供給ノズル180は、例えば、中心軸J1を中心とする周方向に等角度間隔にて配置される。
図2は、上部ノズル181の底面図である。上部ノズル181の底面181aは、中心軸J1を中心とする略円形である。底面181aには、液体を吐出する複数の吐出口188が設けられる。複数の吐出口188は、底面181aの中央(すなわち、およそ中心軸J1上)に配置される中心吐出口188aと、中心吐出口188aの周囲に配置される複数の周辺吐出口188bとを含む。複数の周辺吐出口188bは、中心軸J1を中心とする1つの円周上に等角度間隔にて配置される。図2に示す例では、2つの周辺吐出口188bが、中心軸J1を中心とする周方向に180°間隔にて配置される。
図3は、基板処理装置1が備える気液供給部18および気液排出部19を示すブロック図である。気液供給部18は、上述の上部ノズル181、下部ノズル182および加熱ガス供給ノズル180に加えて、薬液供給部183と、純水供給部184と、IPA供給部185と、加熱ガス供給部187とを備える。
薬液供給部183は、弁を介して上部ノズル181に接続される。純水供給部184およびIPA供給部185は、それぞれ弁を介して上部ノズル181に接続される。下部ノズル182は、弁を介して純水供給部184に接続される。複数の加熱ガス供給ノズル180は、弁を介して加熱ガス供給部187に接続される。
液受け部16の液受け凹部165に接続される第1排出路191は、気液分離部193に接続される。気液分離部193は、外側排気部194、薬液回収部195および排液部196にそれぞれ弁を介して接続される。チャンバ12のチャンバ底部210に接続される第2排出路192は、気液分離部197に接続される。気液分離部197は、内側排気部198および排液部199にそれぞれ弁を介して接続される。気液供給部18および気液排出部19の各構成は、制御部10により制御される。チャンバ開閉機構131、基板回転機構15およびカップ部移動機構162(図1参照)も制御部10により制御される。
薬液供給部183から上部ノズル181に供給された薬液は、上部ノズル181の中心吐出口188a(図2参照)から基板9の上面91の中央部に向けて吐出される。薬液供給部183から上部ノズル181を介して基板9に供給される薬液は、例えば、化学反応を利用して基板を処理する処理液であり、フッ酸や水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液等のエッチング液である。
純水供給部184は、上部ノズル181および下部ノズル182を介して基板9に純水(DIW:deionized water)を供給する。純水供給部184から上部ノズル181に供給された純水は、上部ノズル181の複数の吐出口188(すなわち、中心吐出口188aおよび周辺吐出口188b)から、基板9の上面91の中央部に向けて、上面91に略垂直な吐出方向に吐出される。純水供給部184から下部ノズル182に供給された純水は、下部ノズル182の吐出口から基板9の下面92の中央部に向けて吐出される。
IPA供給部185から上部ノズル181に供給されたイソプロピルアルコール(IPA)は、上部ノズル181の中心吐出口188aから基板9の上面91の中央部に向けて吐出される。基板処理装置1では、上述の処理液(上記薬液、純水およびIPA)以外の処理液を供給する処理液供給部が設けられてもよい。
加熱ガス供給部187は、複数の加熱ガス供給ノズル180を介して基板9の下面92に加熱したガス(例えば、高温の不活性ガス)を供給する。本実施の形態では、加熱ガス供給部187にて利用されるガスは窒素(N2)ガスであるが、窒素ガス以外であってもよい。なお、加熱ガス供給部187において加熱した不活性ガスを利用する場合には、基板処理装置1における防爆対策は簡素化可能または不要である。基板処理装置1の基板回転機構15は中空モータ、特に、中央に大きな開口を有するロータ浮遊型のモータであるため、基板9の下方に様々なノズルやヒータを容易に設けることができる。
図4は、基板処理装置1における基板9の処理の流れを示す図である。基板処理装置1では、図1に示すように、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間して上方に位置し、カップ部161がチャンバ蓋部122から離間して下方に位置する状態にて、基板9が外部の搬送機構によりチャンバ12内に搬入され、基板保持部14により下側から支持される(ステップS11)。以下、図1に示すチャンバ12およびカップ部161の状態を「オープン状態」と呼ぶ。チャンバ蓋部122とチャンバ側壁部214との間の開口は、中心軸J1を中心とする環状であり、以下、「環状開口81」という。基板処理装置1では、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間することにより、基板9の周囲(すなわち、径方向外側)に環状開口81が形成される。ステップS11では、基板9は環状開口81を介して搬入される。
基板9が搬入されると、カップ部161が、図1に示す位置から図5に示す位置まで上昇し、環状開口81の径方向外側に全周に亘って位置する。以下の説明では、図5に示すチャンバ12およびカップ部161の状態を「第1密閉状態」という。また、図5に示すカップ部161の位置を「液受け位置」といい、図1に示すカップ部161の位置を「退避位置」という。カップ部移動機構162は、カップ部161を、環状開口81の径方向外側の液受け位置と、液受け位置よりも下方の退避位置との間で上下方向に移動する。
液受け位置に位置するカップ部161では、側壁部611が、環状開口81と径方向に対向する。また、上面部612の内縁部の上面が、チャンバ蓋部122の外縁部下端のリップシール232に全周に亘って接する。チャンバ蓋部122とカップ部161の上面部612との間には、気体や液体の通過を防止するシール部が形成される。これにより、チャンバ本体121、チャンバ蓋部122、カップ部161およびカップ対向部163により囲まれる密閉された空間(以下、「拡大密閉空間100」という。)が形成される。拡大密閉空間100は、チャンバ蓋部122とチャンバ本体121との間のチャンバ空間120と、カップ部161とカップ対向部163とに囲まれる側方空間160とが、環状開口81を介して連通することにより形成された1つの空間である。
第1密閉状態では、遮断板123に設けられた第1チャッキング磁性体441から受ける力を利用して基板9が基板保持部14に保持される。基板9を保持する機構については後述する。遮断板123の下面、および、チャック支持部411上には、上下方向にて対向する複数対の磁石(図示省略)が設けられる。以下、各対の磁石を「磁石対」ともいう。基板処理装置1では、複数の磁石対が、周方向において等角度間隔にて配置される。第1係合部241と第2係合部242とが係合している状態では、磁石対の間に働く磁力(引力)により、遮断板123に下向きの力が働く。
第1密閉状態では、被保持部237のフランジ部239が、プレート保持部222のフランジ部224の上方に離間しており、プレート保持部222と被保持部237とは接触しない。換言すれば、プレート保持部222による遮断板123の保持が解除されている。このため、遮断板123は、チャンバ蓋部122から独立して、基板保持部14および基板保持部14に保持された基板9と共に、基板回転機構15により回転する。
また、第1密閉状態では、第1係合部241の下部の凹部に第2係合部242が嵌ることにより、遮断板123は、中心軸J1を中心とする周方向においてチャック支持部411と係合する。換言すれば、第1係合部241および第2係合部242は、遮断板123の基板保持部14に対する回転方向における相対位置を規制する(すなわち、周方向における相対位置を固定する)位置規制部材である。チャンバ蓋部122が下降する際には、第1係合部241と第2係合部242とが嵌り合うように、基板回転機構15によりチャック支持部411の回転位置が制御される。
続いて、基板回転機構15により一定の回転数(比較的低い回転数であり、以下、「定常回転数」という。)での基板9の回転が開始される。次に、回転する基板9の下面92に向けて、複数の加熱ガス供給ノズル180から、加熱したガスが噴出されるとともに、外側排気部194による拡大密閉空間100内のガスの排出が開始される。これにより、基板9が加熱される。そして、上部ノズル181の中心吐出口188a(図2参照)から、回転する基板9の上面91の中央部に向けて薬液の供給が開始される(ステップS12)。基板9の上面91への薬液吐出は、基板9の中央部にのみ行われ、中央部以外の部位には行われない。上部ノズル181からの薬液は、回転する基板9の上面91に連続的に供給される。上面91上の薬液は、基板9の回転により基板9の外周部へと拡がり、上面91全体が薬液により被覆される。
上部ノズル181からの薬液の供給中は、加熱ガス供給ノズル180からの加熱ガスの噴出も継続される。これにより、基板9をおよそ所望の温度に加熱しつつ、薬液による上面91に対するエッチングが行われる。その結果、基板9に対する薬液処理の均一性を向上することができる。遮断板123の下面は基板9の上面91に近接しているため、基板9に対するエッチングは、遮断板123の下面と基板9の上面91との間の極めて狭い空間において行われる。
拡大密閉空間100では、回転する基板9の上面91から飛散する薬液が、環状開口81を介してカップ部161にて受けられ、液受け凹部165へと導かれる。液受け凹部165へと導かれた薬液は、図3に示す第1排出路191を介して気液分離部193に流入する。薬液回収部195では、気液分離部193から薬液が回収され、フィルタ等を介して薬液から不純物等が除去された後、再利用される。
上部ノズル181からの薬液の供給開始から所定時間(例えば、60〜120秒)経過すると、上部ノズル181からの薬液の供給、および、加熱ガス供給ノズル180からの加熱ガスの供給が停止される。そして、基板回転機構15により、所定時間(例えば、1〜3秒)だけ基板9の回転数が定常回転数よりも高くされ、基板9から薬液が除去される。
続いて、チャンバ蓋部122とカップ部161とが接した状態のままチャンバ蓋部122およびカップ部161が下方へと移動する。そして、図6に示すように、チャンバ蓋部122の外縁部下端のリップシール231が、チャンバ側壁部214の上部と接することにより、環状開口81が閉じられ、チャンバ空間120が、側方空間160と隔絶された状態で密閉される。カップ部161は、図1と同様に、退避位置に位置する。以下、図6に示すチャンバ12およびカップ部161の状態を「第2密閉状態」という。第2密閉状態では、基板9は、チャンバ12の内壁と直接対向し、これらの間に他の液受け部は存在しない。
第2密閉状態でも、第1密閉状態と同様に、基板9は第1チャッキング磁性体441による力により基板保持部14により保持される。また、プレート保持部222による遮断板123の保持が解除されており、遮断板123は、チャンバ蓋部122から独立して、基板保持部14および基板9と共に回転する。
チャンバ空間120が密閉されると、外側排気部194(図3参照)によるガスの排出が停止されるとともに、内側排気部198によるチャンバ空間120内のガスの排出が開始される。そして、基板9への純水の供給が、純水供給部184により開始される(ステップS13)。
純水供給部184からの純水は、上部ノズル181の複数の吐出口188(図2参照)から基板9の上面91の中央部に連続的に供給される。また、純水供給部184からの純水は、下部ノズル182から基板9の下面92の中央部にも連続的に供給される。上部ノズル181および下部ノズル182から吐出される純水は、洗浄液として基板9に供給される。
純水は、図6に示す基板9の回転により上面91および下面92の外周部へと拡がり、基板9の外周縁から外側へと飛散する。基板9から飛散する純水は、チャンバ12の内壁(すなわち、チャンバ蓋部122およびチャンバ側壁部214の内壁)にて受けられ、図3に示す第2排出路192、気液分離部197および排液部199を介して廃棄される(後述する基板9の乾燥処理においても同様)。これにより、チャンバ空間120において、純水による基板9に対する洗浄処理と共に、チャンバ12内の洗浄も実質的に行われる。
純水の供給開始から所定時間経過すると、純水供給部184からの純水の供給が停止される。そして、複数の加熱ガス供給ノズル180から、基板9の下面92に向けて、加熱したガスが噴出される。これにより、基板9が加熱される。
続いて、上部ノズル181から基板9の上面91上にIPAが供給され、上面91上において純水がIPAに置換される(ステップS14)。IPAの供給開始から所定時間経過すると、IPA供給部185からのIPAの供給が停止される。その後、加熱ガス供給ノズル180からの加熱ガスの噴出が継続された状態で、基板9の回転数が定常回転数よりも十分に高くされる。これにより、IPAが基板9上から除去され、基板9の乾燥処理が行われる(ステップS15)。基板9の乾燥開始から所定時間経過すると、基板9の回転が停止する。基板9の乾燥処理は、内側排気部198によりチャンバ空間120が減圧され、大気圧よりも低い減圧雰囲気にて行われてもよい。
その後、チャンバ蓋部122と遮断板123が上昇して、図1に示すように、チャンバ12がオープン状態となる。ステップS15では、遮断板123が基板保持部14と共に回転するため、遮断板123の下面に液体はほとんど残存せず、チャンバ蓋部122の上昇時に遮断板123から液体が基板9上に落下することはない。基板9は外部の搬送機構によりチャンバ12から搬出される(ステップS16)。
次に、基板保持部14のチャッキング機構について説明する。既述のように、基板保持部14は、チャック支持部411と、複数のチャック部材とを有する。本実施の形態では、チャック部材として、2つの可動チャック部材と、2つの固定チャック部材とが設けられる。各可動チャック部材は同様の構造を有する。各固定チャック部材は同様の構造を有する。
図7は、可動チャック部材412近傍における基板処理装置1の縦断面図であり、基板9が保持された状態を示す。可動チャック部材412は、チャック支持部411に支持され、爪部421と、ベース部422と、レバー部423と、垂下部424とを備える。爪部421は、基板9に接する。爪部421はベース部422上に固定される。ベース部422は、回動軸401を中心として回動可能に支持される。回動軸401の位置は、チャック支持部411に対して相対的に固定されている。回動軸401は、中心軸J1に対して垂直である。ベース部422が回動することにより、爪部421は中心軸J1を中心とする径方向に移動する。レバー部423は、ベース部422から径方向内方に延びる。垂下部424はベース部422から下方に延びる。
図8は、可動チャック部材412および第1チャッキング磁性体441を拡大して示す図である。ベース部422には第2チャッキング磁性体442が取り付けられる。遮断板123が下降して遮断板123が基板9の上面に近接すると、第1チャッキング磁性体441と第2チャッキング磁性体442とが近接し、これらの間の磁気的作用により、可動チャック部材412に、爪部421を径方向内方へと向かわせる力が与えられる。すなわち、後述の固定チャック部材と共に基板9の外縁部を保持する力が可動チャック部材412に与えられる。
第1チャッキング磁性体441を遮断板123に設けることにより、第1チャッキング磁性体441を移動する機構を別途設ける必要がなくなり、簡単な構造で基板9のチャッキング、すなわち、保持動作を実現することができる。また、基板回転機構15のロータ部152が浮遊している場合でも、容易にチャッキングを行うことができる。第1チャッキング磁性体441は、遮断板123から下方に延びる部材上に設けられるため、第1チャッキング磁性体441およびその周囲の構造が基板9から飛散する処理液の排出を妨げることが抑制される。
図9は、基板保持部14およびアンチャッキング部30を示す平面図である。チャック支持部411上には、2つの可動チャック部材412と、2つの固定チャック部材413とが設けられる。4つのチャック部材は、周方向に等間隔に配置される。図9では、第1チャッキング磁性体441が配置される位置を破線にて示している。アンチャッキング部30は、突き上げ機構31と、2つの傾斜防止部33とを含む。図7では、突き上げ機構31の一部と1つの傾斜防止部33とを示す。
図10.Aは、可動チャック部材412およびその周辺を拡大して示す平面図である。環状かつ板状のチャック支持部411は、内周から径方向外方に向かって窪む領域が設けられる。この窪んだ領域内に可動チャック部材412が配置される。可動チャック部材412の周方向両側には、チャック支持部411の本体から上方に突出する支持部451が設けられる。両支持部451間に回動軸401が固定される。回動軸401は可動チャック部材412のベース部422を貫通する。これにより、可動チャック部材412はチャック支持部411に回動可能に支持される。
固定チャック部材413は、ベース部と爪部とを有する。ベース部は、チャック支持部411上に固定される。爪部の形状は可動チャック部材412の爪部421と同様である。
図7および図9に示すように、突き上げ機構31は、当接部311と、当接部移動機構312とを備える。当接部移動機構312は、ガイド付きのシリンダ313と、アーム314とを含む。当接部311はアーム314の上端に取り付けられる。チャンバ本体121の内側と外側とを隔離するために、当接部311とチャンバ本体121の底部との間においてアーム314はベローズ315に覆われる。
傾斜防止部33は、図7および図10.Aに示すように、モータ331と、傾斜防止部材332とを有する。傾斜防止部材332はモータ331のシャフトの上端に水平に取り付けられる。図10.Aは、傾斜防止部材332が、中心軸J1を中心とする周方向を向く状態を示し、図10.Bは、傾斜防止部材332が、中心軸J1を中心とする径方向を向く状態を示す。傾斜防止部材332は回転するが、いずれの位置においても、傾斜防止部材332は、ステータ部151に対する相対位置が固定可能である(位置は、静止すればよく、ロックされる必要はない。)。図10.Aでは、平面視した場合に、チャック支持部411と傾斜防止部材332とは重ならず、図10.Bでは、傾斜防止部材332の一部がチャック支持部411と重なる。傾斜防止部材332の下面はチャック支持部411の上面に対して僅かに上方に位置する。基板9に処理が行われる間は、傾斜防止部材332は図10.Aに示す方向を向く。
基板9の保持が解除される際には、まず、遮断板123が上昇する。この段階では、可動チャック部材412は、図7に示す姿勢を維持する。一方、モータ331により、傾斜防止部材332の回転位置が、図10.Aから図10.Bに示す位置へと変更される。その後、シリンダ313により、当接部311がアーム314と共に中心軸J1に平行に移動して上昇し、可動チャック部材412のレバー部423に当接部311が当接する。当接部311は中心軸J1に沿う方向に移動するのであれば、中心軸J1に平行でない方向に移動してもよい。当接部311がさらに上昇して当接部311がレバー部423を押すと、図11に示すように、可動チャック部材412が回動軸401を中心に回動して爪部421が径方向外方へと移動する。
以下、可動チャック部材412の図7に示す位置(正確には、回転位置)を「チャック位置」という。可動チャック部材412の図11に示す位置を「アンチャック位置」という。アンチャッキング部30の当接部311が上昇してレバー部423を押すことにより、可動チャック部材412の位置がチャック位置からアンチャック位置へと変更される。
既述のように、ロータ部152はステータ部151により浮遊状態にて支持されるため、ロータ部152および基板保持部14は、上方へと容易に押し上げることが可能である。しかし、基板処理装置1では、図11に示すように、傾斜防止部材332とチャック支持部411とは上下方向に重なるため、当接部311がレバー部423を押し上げる際に、傾斜防止部材332とチャック支持部411とが当接して基板保持部14の上昇が防止される。このように、アンチャッキング部30の傾斜防止部33により、アンチャック時のチャック支持部411の傾斜、すなわち、基板保持部14および基板9の傾斜が抑制される。その結果、基板9の水平姿勢がほぼ維持され、基板9を外部の搬送装置と基板保持部14との間で受け渡しする際の信頼性が向上する。
基板9が保持される際には、逆の動作が行われる。すなわち、可動チャック部材412がアンチャック位置に位置する状態で基板9が可動チャック部材412および固定チャック部材413上に載置される。当接部311は下降し、第1チャッキング磁性体441も下降することにより、可動チャック部材412はチャック位置へと移動する。その後、傾斜防止部材332はモータ331により、図10.Aに示す位置へと戻される。このように、モータ331は、基板9が基板保持部14と共に回転する際に、傾斜防止部材である傾斜防止部材332を、チャンバ12内において回転する部位から退避させる退避機構である。退避機構により、アンチャッキング時の基板9の傾きを防止しつつ、傾斜防止部材332が他の回転する部位と接触することを容易に防止することができる。
図12.Aは、基板9が保持された状態の爪部421を示す図である。図12.Bは、基板9の保持が解除された状態を示す。爪部421は、径方向外方に窪む凹部425を有する。基板9の外縁部は、凹部425に嵌まる。凹部425の下部は、下方かつ径方向内方に向かう傾斜面426である。凹部425の上部は、僅かに径方向内方に突出する微小突起部427である。図12.Bに示すように、可動チャック部材412がアンチャック位置に位置する場合、基板9は傾斜面426に支持され、かつ、基板9を持ち上げると、基板9の外縁部は微小突起部427の内端の内側を通過することができる。
図12.Bでは、第1チャッキング磁性体441が下降した時の位置を二点鎖線にて示している。可動チャック部材412がチャック位置に位置し、かつ、遮断板123が基板9の上面に近接した状態で状態では、可動チャック部材412のベース部422と第1チャッキング磁性体441とは非常に近接する。したがって、可動チャック部材412がアンチャック位置まで移動する前にベース部422と第1チャッキング磁性体441とは接する。可動チャック部材412が第1チャッキング磁性体441に接する位置まで傾いた状態では、基板9は凹部425から抜け出すことができない。
換言すれば、可動チャック部材412をチャック位置からアンチャック位置に向かって位置を変更させようとすると、基板9の保持が解除される前に可動チャック部材412は遮断板123の第1チャッキング磁性体441に接触する。これにより、処理中に基板9の保持が解除されてしまうことが、機械的に防止される。なお、遮断板123が下降した状態において、可動チャック部材412が動いた場合に可動チャック部材412と遮断板123の他の部位とが接することにより、保持解除が防止されてもよい。
第1チャッキング磁性体441が下降する際には、磁気的作用により、第1チャッキング磁性体441(または遮断板123の他の部位)とベース部422とが接触する前に可動チャック部材412がチャック位置へと移動する。もちろん、第1チャッキング磁性体441等がベース部422と摺接するようにして可動チャック部材412が第1チャッキング磁性体441に押されてもよい。
図7に示すように、可動チャック部材412は垂下部424を有する。垂下部424を設けることにより、可動チャック部材412の重心は回動軸401よりも下方に位置する。そのため、基板保持部14が高速回転して可動チャック部材412に遠心力が作用すると、図7において時計回りに回転する力が可動チャック部材412に作用する。すなわち、可動チャック部材412に基板9を保持する方向へと回動させる力が作用する。その結果、回転時に基板9を安定して保持することができる。
図13は、傾斜防止部材332の他の例を示す図である。傾斜防止部材332は、基板9の処理中に必ずしもチャンバ12内で回転する部位から退避する必要はない。図13の例では、傾斜防止部材332はチャンバ側壁部214に固定され、チャンバ側壁部214の内周面から径方向内方に突出する。一方、ロータ部152とチャック支持部411とを接続する接続部材48には、径方向外方に突出する突出部材333が取り付けられる。
複数の接続部材48は周方向の配列され、各接続部材48は上下に延びる。突出部材333は、可動チャック部材412に近い接続部材48に設けられる。すなわち、接続部材48は環状ではなく、接続部材48の位置にのみ存在する。好ましくは、2以上の接続部材48に突出部材333が取り付けられる。傾斜防止部材332は、基板9の搬出入が行われる際の突出部材333の上方に位置し、径方向において傾斜防止部材332と突出部材333とは並ぶ。傾斜防止部材332と突出部材333とは上下方向に近接するが、基板9の回転時に確実に接触しない距離だけ離れている。
図11と同様に、アンチャッキング動作時に可動チャック部材412のレバー部423が突き上げ機構31により押し上げられると、傾斜防止部材332と突出部材333とが当接し、基板保持部14および基板9の傾斜が抑制される。これにより、基板9の保持を解除する際に基板9を水平に維持することができる。
図14は、第1チャッキング磁性体441および第2チャッキング磁性体442の他の例を示す図である。図14の例では、遮断板123が基板9の上面に近づくことにより第1チャッキング磁性体441は、第2チャッキング磁性体442の回動軸401よりも下の部位に近づく。そして、これらの磁性体間に生じる吸引力により、可動チャック部材412に基板9を保持する力が与えられる。すなわち、爪部431を径方向内方へと移動させるように可動チャック部材412を回転させる力が、可動チャック部材412に作用する。吸引力を利用する場合は、第1チャッキング磁性体441および第2チャッキング磁性体442の一方は、磁石ではなく、鉄等の磁性体であってもよい。
図15は、第1チャッキング磁性体441および第2チャッキング磁性体442のさらに他の例を示す図である。図15の例では、遮断板123が基板9の上面に近づくことにより第1チャッキング磁性体441の上部は、第2チャッキング磁性体442の回動軸401よりも上の部位に近づき、第1チャッキング磁性体441の下部は、第2チャッキング磁性体442の回動軸401よりも下の部位に近づく。そして、第1チャッキング磁性体441の上部と第2チャッキング磁性体442の上部との間に反発力が生じ、第1チャッキング磁性体441の下部と第2チャッキング磁性体442の下部との間に吸引力が生じる。これにより、可動チャック部材412に基板9を保持する強い力が与えられる。
図16.Aないし図16.Dは、基板9のチャッキングを実現する他の例を示す図である。アンチャッキング部30は、図9および図11に示すものと同様である。基板処理装置1では、チャンバ本体121内に磁性体移動機構47が設けられる。磁性体移動機構47は、第1チャッキング磁性体441を基板保持部14に装着する。可動チャック部材412は、図8の場合と同様に第2チャッキング磁性体442を有する。第1チャッキング磁性体441が基板保持部14に装着されると、第1チャッキング磁性体441と第2チャッキング磁性体442との間の磁気的作用により、可動チャック部材412はチャック位置に移動する。
磁性体移動機構47は、チャンバ側壁部214の内周面に取り付けられる。磁性体移動機構47は、アクチュエータ471と、アーム472とを備える。アーム472は、略L字状であり、上部は水平方向に延びる。アーム472の先端には第1チャッキング磁性体441が載置される。アクチュエータ471は、アーム472の昇降および回動を行う。チャック支持部411は、可動チャック部材412の径方向外側に、上方に突出する突起475を有し、突起475の径方向外側に、外周から径方向内方に向かって窪む溝476を有する。
アンチャック状態では、第1チャッキング磁性体441はアーム472上に位置し、アーム472の水平方向に延びる上部は、中心軸J1を中心とする周方向におよそ平行である。チャッキング時には、まず、アクチュエータ471がアーム472を回転し、図16.Bに示すように第1チャッキング磁性体441が突起475の上方に移動する。第1チャッキング磁性体441の下部には上方に窪む凹部が設けられる。図16.Cに示すように、アクチュエータ471がアーム472を下降すると、突起475と第1チャッキング磁性体441の凹部とが嵌まる。
第1チャッキング磁性体441がチャック支持部411上に装着されると、第1チャッキング磁性体441と第2チャッキング磁性体442との間の磁気的作用により、可動チャック部材412に、固定チャック部材413と共に基板9の外縁部を保持する力が与えられる。その結果、可動チャック部材412がチャック位置へと移動するとともに、基板9が保持される。アクチュエータ471はアーム472をさらに下降させ、図16.Dに示すように、アーム472から第1チャッキング磁性体441が外れ、アーム472の先端は溝476内を通過してチャック支持部411の下方へと移動する。
基板9が処理される際には、第1チャッキング磁性体441は基板保持部14および基板9と共に回転する。これにより、基板9の処理中の基板9の保持が維持される。磁性体移動機構47を設けることにより、簡単な基板保持部14の構造で基板9の保持が実現される。このような構造は、基板回転機構15においてロータ部152が浮遊する場合に特に適している。
アンチャッキング時には、磁性体移動機構47がチャッキング時とは逆の動作を行って第1チャッキング磁性体441がチャック支持部411から取り外されてアーム472上に移載される。その後、図9に示すアンチャッキング部30の傾斜防止部33の傾斜防止部材332が基板保持部14および基板9の傾斜を抑制しつつ、突き上げ機構31が可動チャック部材412を押し上げ、基板9の保持が解除される。
第1チャッキング磁性体441の装着位置は、チャック支持部411には限定されず、チャック支持部411に対して相対位置が固定された基板保持部14の他の位置でもよい。
図17は、基板9の保持を実現するさらに他の例を示す図である。第1チャッキング磁性体441はチャック支持部411(チャック支持部411に相対位置が固定された位置を含む。)に固定される。第2チャッキング磁性体442は、図8と同様に可動チャック部材412に設けられる。アンチャッキング部30から力が作用していない間は、第1チャッキング磁性体441と第2チャッキング磁性体442との間の磁気的作用により、可動チャック部材412に固定チャック部材413と共に基板9の外縁部を保持する力が与えられる。
図18に示すように、可動チャック部材412に基板9を保持する力を与える機構は、ばね443により実現されてもよい。図18の例では、ばね443はチャック支持部411と可動チャック部材412の垂下部424との間に設けられる。ばね443によりこれらの部位を近づける力が作用する。図17および図18に示す例では、アンチャッキングに必要な力は他の例に比べて大きくなるが、基板9を保持するために必要な構成は簡素化される。以上のように、基板9が基板保持部14に保持される際に固定チャック部材413と共に基板9の外縁部を保持する力を可動チャック部材412に与えるのであれば、チャッキング部は様々な構成により実現されてよい。例えば、ばね443に代えてゴム等の他の弾性体が利用されてもよい。さらには、重力を利用してチャッキングが行われてもよい。
図19.Aは、可動チャック部材412にチャッキング力を与えるチャッキング部の他の例を簡略化して示す概略断面図である。図19.Bは、図19.Aの概略平面図である。チャッキング部51では、図1の遮断板123に代えて中心軸J1を中心とするリング部材511が設けられる。リング部材511の下面には下方に突出する2つの第1チャッキング磁性体441と、2つのピン512とが設けられる。リング部材511はチャンバ蓋部122(図1参照)から独立しており、搬送ロボットにより矢印516,517に示すように水平方向および上下方向に移動され、チャック支持部411上に載置される。第1チャッキング磁性体441およびピン512はチャック支持部411上の図示省略の突起に嵌まり、基板保持部14と共に回転する。
可動チャック部材412および固定チャック部材413により基板9が保持される原理は、図1の場合と同様である。すなわち、第1チャッキング磁性体441が可動チャック部材412の第2チャッキング磁性体442に近接することにより、基板9が保持される。図19.Aおよび図19.Bの場合、チャッキング部51は、リング部材511、第1チャッキング磁性体441、第2チャッキング磁性体442およびリング部材511を搬送するロボットにより実現される。搬送ロボットは、第1チャッキング磁性体441を基板保持部14に装着し、また、第1チャッキング磁性体441を基板保持部14から取り外す磁性体移動機構である。リング部材511は、搬送ロボットにより把持されてもよく、吸着されてもよい。遮断板123が設けられないため、走査型のノズルから基板9上に処理液が供給されてもよい。
なお、図1の例の場合は、チャッキング部は、遮断板123、第1チャッキング磁性体441、第2チャッキング磁性体442およびチャンバ開閉機構131により実現される。チャンバ開閉機構131は、磁性体移動機構として機能する。
図20.Aは、チャッキング部の他の例を示す概略断面図である。図20.Bは、図20.Aの概略平面図である。チャッキング部52は、中心軸J1を中心とするリング状の第1チャッキング磁性体521と、磁性体移動機構522と、可動チャック部材412の第2チャッキング磁性体442とを含む。第1チャッキング磁性体521は、矢印526に示すように磁性体移動機構522により昇降する。磁性体移動機構522には、シリンダや、モータおよびボールねじ等の様々な機構が採用可能である。第1チャッキング磁性体521は、下降しても基板保持部14とは接しない。基板保持部14が回転しても第1チャッキング磁性体521は回転しない。
第1チャッキング磁性体521が下降すると、第1チャッキング磁性体521と第2チャッキング磁性体442とは近接し、基板9が保持される。第1チャッキング磁性体521が上昇すると、第1チャッキング磁性体521と第2チャッキング磁性体442とが離間し、基板9を保持する力は消滅する。
第1チャッキング磁性体521はリング状であるため、基板保持部14が回転しても、第1チャッキング磁性体521と第2チャッキング磁性体442との間の磁気的作用は維持される。その結果、基板9の保持は維持される。このように、磁性体移動機構522は、第1チャッキング磁性体521を基板保持部14に近接させ、また、基板保持部14から離間させるものであってもよい。チャッキング部52によっても、簡単な構造で基板9を保持することができる。特に、基板回転機構15が浮遊式のモータであっても、基板9を保持することができる。
第1チャッキング磁性体521は、図19.Aの場合と同様に、搬送ロボットにより基板保持部14に近接する位置まで搬送されてもよい。この場合、第1チャッキング磁性体521は基板保持部14に載置されて基板保持部14と共に回転してもよい。
図21.Aは、チャッキング部のさらに他の例を示す概略断面図である。図21.Bは、図21.Aの概略平面図である。チャッキング部53では、図20.Aおよび図20.Bのものと比べて、第1チャッキング磁性体531は2つの半円弧状の部材であり、磁性体移動機構532は、矢印536にて示すように、2つの第1チャッキング磁性体531を左右に移動する。他の構成は、図20.Aおよび図20.Bと同様である。
2つの第1チャッキング磁性体531が近づくと、図20.Bと同様の中心軸J1を中心とするリング状の磁性体となる。また、第1チャッキング磁性体531は基板保持部14とは非接触である。基板保持部14が回転しても、第1チャッキング磁性体531と第2チャッキング磁性体442との間の磁気的作用は維持される。その結果、可動チャック部材412による基板9の保持は維持される。このように、磁性体移動機構532は、第1チャッキング磁性体531を基板保持部14に近接させ、また、基板保持部14から離間させる。
図19.A、図20.A、図21.Aのいずれの場合においても、第1チャッキング磁性体と第2チャッキング磁性体の少なくとも一方は磁石である。
基板処理装置1では、様々な変更が可能である。
固定チャック部材413は、好ましくは少なくとも2つ存在する。もちろん、固定チャック部材413の数は1つでもよい。この場合、例えば、基板9を安定して保持するために、円弧状のガイドや複数の爪を有する固定チャック部材413が設けられる。可動チャック部材412は少なくとも1つ存在すればよい。固定チャック部材413および可動チャック部材412の位置は、基板9を支持することができる範囲内で適宜決定されてよい。好ましくは、固定チャック部材413と可動チャック部材412との数の和は3以上である。
可動チャック部材412の回動軸401は、中心軸J1に平行であってもよい。この場合、例えば、当接部311が上昇することにより可動チャック部材412と当接し、当接部311から受ける力が可動チャック部材412を水平方向に回動させる力に変換される。
可動チャック部材412のチャック位置およびアンチャック位置は、回転位置以外に、直線移動における位置でもよい。いずれの場合であっても、可動チャック部材412は、チャック位置とアンチャック位置との間で位置が変更可能な状態で、チャック支持部411に支持される。
アンチャッキング部30の当接部311が下方に移動することによりアンチャッキングが行われてもよい。この場合、アンチャッキング時に、傾斜防止部材332の上部に基板保持部14等の回転可能な部位が当接する。
傾斜防止部材332の配置や傾斜防止部33の構造は様々に変更されてよい。傾斜防止部材332は、ステータ部151に対する相対位置が固定された部位であれば、様々な態様にて設けられてよい。例えば、傾斜防止部材332は、内側壁部212から径方向外方に突出してもよい。あるいは、傾斜防止部材332は、チャンバ12内に特別に設けられた部位に取り付けられてもよい。
また、傾斜防止部材332は、ステータ部151に対する相対位置が固定可能な部位として様々な態様にて設けることも可能である。例えば、退避機構により、基板保持部14やロータ部152等の回転する部位から直線的に傾斜防止部材332が退避してもよい。傾斜防止部材332が上昇または下降することにより、傾斜防止部材332が回転する部位から退避してもよい。さらには、傾斜防止部材332として2つの小片を設け、2つの小片にて回転する部位のの一部を摘まむことにより、基板保持部14および基板9の傾斜が抑制されてもよい。
アンチャッキング時に傾斜防止部材332と接する部位も、チャック支持部411またはチャック支持部411に対して相対位置が固定された部位であれば、様々に変更可能である。例えば、傾斜防止部材332は、ロータ部152と当接してもよい。
傾斜防止部材332の数は1つでもよい。同様に、図13の突出部材333の数も1つでもよい。傾斜防止部材332の数は2以上であることが好ましい。これらの傾斜防止部材332の周方向の位置は異なる。チャック支持部411またはチャック支持部411に対して相対位置が固定された部位、すなわち、回転する部位が、2以上の傾斜防止部材332と接することにより、基板保持部14および基板9の傾きを安定して防止することができる。
傾斜防止部材332が周方向に長く、かつ、傾斜防止部材332と回転する部位とが周方向の異なる複数の位置で当接してもよい。この場合、実質的に、傾斜防止部材332の数が2以上であることと同等である。回転する部位と、傾斜防止部材332との接触位置の周方向の位置は、可動チャック部材412の周方向の位置に近いことが好ましい。アンチャッキング時の基板保持部14の傾斜を防止することができる範囲で、傾斜防止部材332は様々に配置されてよい。
基板処理装置1では、チャンバ空間120にガスを供給して加圧する加圧部が設けられてもよい。チャンバ空間120の加圧は、チャンバ12が密閉された第2密閉状態で行われ、チャンバ空間120が大気圧よりも高い加圧雰囲気となる。なお、加熱ガス供給部187が加圧部を兼ねてもよい。
チャンバ開閉機構131は、必ずしもチャンバ蓋部122を上下方向に移動する必要はなく、チャンバ蓋部122が固定された状態で、チャンバ本体121を上下方向に移動してもよい。チャンバ12は、必ずしも略円筒状には限定されず、様々な形状であってよい。
基板回転機構15のステータ部151およびロータ部152の形状および構造は、様々に変更されてよい。
基板処理装置1では、基板9の洗浄処理は、第1密閉状態における拡大密閉空間100において行われてもよい。拡大密閉空間100は、カップ部161の上面部612以外の部位(例えば、側壁部611)がチャンバ蓋部122に接することにより形成されてもよい。カップ部161の形状は、適宜変更されてよい。基板9の洗浄処理は、必ずしも密閉空間で行われる必要はなく、開放された空間で行われてもよい。
基板処理装置1では、薬液供給部183から供給される薬液により、上述のエッチング処理以外の様々な処理、例えば、基板上の酸化膜の除去や付着したポリマーの除去、現像液による現像等が行われてよい。
基板処理装置1では、半導体基板以外に、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、FED(field emission display)等の表示装置に使用されるガラス基板の処理に利用されてもよい。あるいは、基板処理装置1は、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板および太陽電池用基板等の処理に利用されてもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。