図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1を示す断面図である。基板処理装置1は、略円板状の半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)に処理液を供給して基板9を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。図1では、基板処理装置1の一部の構成の断面に対する平行斜線の付与を省略している(他の断面図においても同様)。
基板処理装置1は、チャンバ12と、トッププレート123と、チャンバ開閉機構131と、基板保持部14と、基板回転機構15と、液受け部16と、カバー17とを備える。カバー17は、チャンバ12の上方および側方を覆う。
チャンバ12は、チャンバ本体121と、チャンバ蓋部122とを備える。チャンバ12は、上下方向を向く中心軸J1を中心とする有蓋および有底の略円筒状である。チャンバ本体121は、チャンバ底部210と、チャンバ側壁部214とを備える。チャンバ底部210は、略円板状の中央部211と、中央部211の外縁部から下方へと広がる略円筒状の内側壁部212と、内側壁部212の下端から径方向外方へと広がる略円環板状の環状底部213と、環状底部213の外縁部から上方へと広がる略円筒状の外側壁部215と、外側壁部215の上端部から径方向外方へと広がる略円環板状のベース部216とを備える。
チャンバ側壁部214は、中心軸J1を中心とする環状である。チャンバ側壁部214は、ベース部216の内縁部から上方へと突出する。チャンバ側壁部214を形成する部材は、後述するように、液受け部16の一部を兼ねる。以下の説明では、チャンバ側壁部214と外側壁部215と環状底部213と内側壁部212と中央部211の外縁部とに囲まれた空間を下部環状空間217という。
基板保持部14の基板支持部141(後述)に基板9が支持された場合、基板9の下面92は、チャンバ底部210の中央部211の上面と対向する。以下の説明では、チャンバ底部210の中央部211を「下面対向部211」と呼ぶ。
チャンバ蓋部122は中心軸J1に垂直な略円板状であり、チャンバ12の上部を含む。チャンバ蓋部122は、チャンバ本体121の上部開口を閉塞する。図1では、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間した状態を示す。チャンバ蓋部122がチャンバ本体121の上部開口を閉塞する際には、チャンバ蓋部122の外縁部がチャンバ側壁部214の上部と接する。
チャンバ開閉機構131は、チャンバ12の可動部であるチャンバ蓋部122を、チャンバ12の他の部位であるチャンバ本体121に対して上下方向に相対的に移動する。チャンバ開閉機構131は、チャンバ蓋部122を昇降する蓋部昇降機構である。チャンバ開閉機構131によりチャンバ蓋部122が上下方向に移動する際には、トッププレート123もチャンバ蓋部122と共に上下方向に移動する。チャンバ蓋部122がチャンバ本体121と接して上部開口を閉塞し、さらに、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121に向かって押圧されることにより、チャンバ12内に密閉された内部空間であるチャンバ空間120(図7参照)が形成される。換言すれば、チャンバ蓋部122によりチャンバ本体121の上部開口が閉塞されることより、チャンバ空間120が密閉される。チャンバ蓋部122およびチャンバ本体121は、チャンバ空間120を形成する密閉空間形成部である。
基板保持部14は、チャンバ空間120に配置され、基板9を水平状態で保持する。すなわち、基板9は、微細パターンが形成された一方の主面91(以下、「上面91」という。)が中心軸J1に垂直に上側を向く状態で基板保持部14により保持される。基板保持部14は、上述の基板支持部141と、基板支持部141に設けられるチャック部4とを備える。基板支持部141は、中心軸J1を中心とする略円環状である。基板支持部141は、中心軸J1を中心とする略円環板状の支持部ベース142と、支持部ベース142上にて周方向に配列される複数の支持ピン144とを備える。複数の支持ピン144により、基板9の外縁部(すなわち、外周縁を含む外周縁近傍の部位)が下側から支持される。チャック部4は、複数の爪部41を備える。複数の爪部41は、中心軸J1に沿って見た場合に基板9の周囲に配置される。チャック部4の構造の詳細については後述する。
トッププレート123は、中心軸J1に垂直な略円板状である。トッププレート123は、チャンバ蓋部122の下方、かつ、基板支持部141の上方に配置される。トッププレート123は中央に開口を有する。基板9が基板支持部141に支持されると、基板9の上面91は、中心軸J1に垂直なトッププレート123の下面と対向する。すなわち、トッププレート123は、基板9の上面91と対向する上面対向部である。トッププレート123の直径は、基板9の直径よりも大きく、トッププレート123の外周縁は、基板9の外周縁よりも全周に亘って径方向外側に位置する。トッププレート123の外縁部の下面には、複数の係合部241が周方向に配列される。各係合部241の下部には上方に向かって窪む凹部が設けられる。
図1に示す状態において、トッププレート123は、チャンバ蓋部122により吊り下げられるように支持される。詳細には、チャンバ蓋部122は、中央部に略環状のプレート支持部222を有する。プレート支持部222は、中心軸J1を中心とする略円筒状の筒部223と、中心軸J1を中心とする略円環状のフランジ部224とを備える。フランジ部224は、筒部223の下端から径方向内方へと広がる。
トッププレート123は、環状の被支持部237を備える。被支持部237は、中心軸J1を中心とする略円筒状の筒部238と、中心軸J1を中心とする略円環状のフランジ部239とを備える。筒部238は、トッププレート123の上面から上方に広がる。フランジ部239は、筒部238の上端から径方向外方へと広がる。筒部238は、プレート支持部222の筒部223の径方向内側に位置する。フランジ部239は、プレート支持部222のフランジ部224の上方に位置し、フランジ部224と上下方向に対向する。被支持部237のフランジ部239の下面が、プレート支持部222のフランジ部224の上面に接することにより、トッププレート123が、チャンバ蓋部122から吊り下がるようにチャンバ蓋部122に取り付けられる。
基板処理装置1では、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から上方に離間した状態において、チャンバ蓋部122のプレート支持部222がトッププレート123を支持することにより、トッププレート123が基板支持部141に対して上方に離間する位置(以下、「離間位置」という。)に配置される。実際には、チャンバ蓋部122はチャンバ開閉機構131により支持されており、実質的には、チャンバ開閉機構131およびチャンバ蓋部122が、上面対向部であるトッププレート123を支持する対向部支持機構である。
基板回転機構15は、いわゆる中空モータである。基板回転機構15は、中心軸J1を中心とする環状のステータ部151と、環状のロータ部152とを備える。ロータ部152は、略円環状の永久磁石を含む。永久磁石の表面は、PTFE樹脂にてモールドされる。ロータ部152は、チャンバ12内において下部環状空間217内に配置される。ロータ部152の上部には、接続部材を介して基板支持部141の支持部ベース142が接続される。支持部ベース142は、ロータ部152の上方に配置される。
ステータ部151は、チャンバ12外においてロータ部152の周囲、すなわち、中心軸J1を中心とする径方向の外側に配置される。本実施の形態では、ステータ部151は、チャンバ底部210の外側壁部215およびベース部216に固定され、液受け部16の下方に位置する。ステータ部151は、中心軸J1を中心とする周方向に配列された複数のコイルを含む。
ステータ部151に電流が供給されることにより、ステータ部151とロータ部152との間に、中心軸J1を中心とする回転力が発生する。これにより、ロータ部152が、中心軸J1を中心として水平状態で回転する。ステータ部151とロータ部152との間に働く磁力により、ロータ部152は、チャンバ12内において直接的にも間接的にもチャンバ12に接触することなく浮遊し、中心軸J1を中心として基板9を基板支持部141と共に浮遊状態にて回転する。このように、ロータ部152を含む回転体は、回転しない他の部材と非接触状態にて回転する。
液受け部16は、カップ部161と、カップ部移動機構162と、カップ対向部163とを備える。カップ部161は中心軸J1を中心とする環状であり、チャンバ12の径方向外側に全周に亘って位置する。カップ部移動機構162はカップ部161を上下方向に移動する。カップ部移動機構162は、カップ部161の径方向外側に配置される。カップ部移動機構162は、上述のチャンバ開閉機構131と周方向に異なる位置に配置される。カップ対向部163は、カップ部161の下方に位置し、カップ部161と上下方向に対向する。カップ対向部163は、チャンバ側壁部214を形成する部材の一部である。カップ対向部163は、チャンバ側壁部214の径方向外側に位置する環状の液受け凹部165を有する。
カップ部161は、側壁部611と、上面部612と、ベローズ617とを備える。側壁部611は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。上面部612は、中心軸J1を中心とする略円環板状であり、側壁部611の上端部から径方向内方および径方向外方へと広がる。側壁部611の下部は、カップ対向部163の液受け凹部165内に位置する。
ベローズ617は、中心軸J1を中心とする略円筒状であり、上下方向に伸縮可能である。ベローズ617は、側壁部611の径方向外側において、側壁部611の周囲に全周に亘って設けられる。ベローズ617は、気体や液体を通過させない材料にて形成される。ベローズ617の上端部は、上面部612の外縁部の下面に全周に亘って接続される。換言すれば、ベローズ617の上端部は、上面部612を介して側壁部611に間接的に接続される。ベローズ617と上面部612との接続部はシールされており、気体や液体の通過が防止される。ベローズ617の下端部は、カップ対向部163を介してチャンバ本体121に間接的に接続される。ベローズ617の下端部とカップ対向部163との接続部でも、気体や液体の通過が防止される。
チャンバ蓋部122の中央には、中心軸J1を中心とする略円柱状の上部ノズル181が取り付けられる。上部ノズル181は、基板9の上面91の中央部に対向してチャンバ蓋部122に固定される。上部ノズル181は、トッププレート123の中央の開口に挿入可能である。チャンバ底部210の下面対向部211の中央には、下部ノズル182が取り付けられる。下部ノズル182は、基板9の下面92の中央部と対向する。下面対向部211には、複数の加熱ガス供給ノズル180がさらに取り付けられる。複数の加熱ガス供給ノズル180は、例えば、中心軸J1を中心とする周方向に等角度間隔にて配置される。
図2は、基板処理装置1が備える気液供給部18および気液排出部19を示すブロック図である。気液供給部18は、上述の加熱ガス供給ノズル180、上部ノズル181および下部ノズル182に加えて、薬液供給部183と、純水供給部184と、IPA供給部185と、不活性ガス供給部186と、加熱ガス供給部187とを備える。薬液供給部183、純水供給部184およびIPA供給部185は、それぞれ弁を介して上部ノズル181に接続される。下部ノズル182は、弁を介して純水供給部184に接続される。上部ノズル181は、弁を介して不活性ガス供給部186にも接続される。上部ノズル181は中央に液吐出口を有し、その周囲にガス噴出口を有する。したがって、正確には、上部ノズル181の一部はチャンバ12の内部にガスを供給する広義のガス供給部の一部である。下部ノズル182は中央に液吐出口を有する。複数の加熱ガス供給ノズル180は、弁を介して加熱ガス供給部187に接続される。
液受け部16の液受け凹部165に接続される第1排出路191は、気液分離部193に接続される。気液分離部193は、外側排気部194、薬液回収部195および排液部196にそれぞれ弁を介して接続される。チャンバ12のチャンバ底部210に接続される第2排出路192は、気液分離部197に接続される。気液分離部197は、内側排気部198および排液部199にそれぞれ弁を介して接続される。気液供給部18および気液排出部19の各構成は、制御部10により制御される。チャンバ開閉機構131、基板回転機構15およびカップ部移動機構162(図1参照)も制御部10により制御される。
本実施の形態では、薬液供給部183から上部ノズル181を介して基板9上に供給される薬液は、フッ酸や水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液等のエッチング液である。純水供給部184は、上部ノズル181または下部ノズル182を介して基板9に純水(DIW:Deionized Water)を供給する。IPA供給部185は、上部ノズル181を介して基板9上にイソプロピルアルコール(IPA)を供給する。基板処理装置1では、上記以外の処理液を供給する処理液供給部が設けられてもよい。
また、不活性ガス供給部186は、上部ノズル181を介してチャンバ12内に不活性ガスを供給する。加熱ガス供給部187は、複数の加熱ガス供給ノズル180を介して基板9の下面92に加熱したガス(例えば、120〜130℃に加熱した高温の不活性ガス)を供給する。本実施の形態では、不活性ガス供給部186および加熱ガス供給部187にて利用されるガスは窒素(N2)ガスであるが、窒素ガス以外であってもよい。
図3は、チャック部4の一部の構成を示す図である。既述のように、チャック部4は基板支持部141に設けられ、チャック部4の一部は、中心軸J1を中心とする円環状の支持部ベース142の内部に設けられる。図3では、支持部ベース142、および、後述の当接部収容部431内の構成の一部については、中心軸J1を含む面による断面を示している(図6および図9において同様)。チャック部4は、既述の複数の爪部41と、伝達機構42とを備える。既述のように、複数の爪部41は、複数の支持ピン144により支持された基板9の周囲にて周方向に配列される。複数の爪部41の個数は少なくとも3個であり、当該少なくとも3個の爪部41のうち周方向に隣接する2つの爪部41の各組合せでは、当該2つの爪部41と中心軸J1とを結ぶ線がなす角度は180度未満である。当該少なくとも3個の爪部41は、周方向に等角度間隔にて設けられることが好ましい。本実施の形態では、4個の爪部41が周方向に等角度間隔にて設けられる。
伝達機構42は、各爪部41に対して設けられる当接部43および複数のバー44,45を備える。当接部43は、上下方向に伸びる棒部材であり、支持部ベース142の上面上に設けられた当接部収容部431内に一部が配置される。当接部収容部431内には、円環状の上側支持部432および下側支持部433が設けられており、上側および下側支持部432,433により当接部43が上下方向に移動可能に支持される。当接部43の下端部は、支持部ベース142に形成された内部空間143に配置される。当該内部空間143にはバー44が配置され、バー44の一方の端部が当接部43の下端部にピン421を介して接続される。バー44には、バー44の長手方向に伸びる長孔441が形成され、ピン421は、長孔441に挿入される。バー44は、内部空間143に設けられたバー支持部440により、図3の紙面に垂直な回転軸を中心として回転可能に支持される。
バー44の他方の端部は、上下方向におよそ沿うもう1つのバー45の下端部にピン422を介して接続される。バー45には、バー45の長手方向に伸びる長孔451が形成され、ピン422は、長孔451に挿入される。支持部ベース142の上面には、内部空間143と連絡する連絡孔145が設けられ、バー45は連絡孔145に挿入される。バー45は、連絡孔145の周囲に固定されたバー支持部450により、図3の紙面に垂直な回転軸を中心として回転可能に支持される。バー45において、バー支持部450よりも上側の部分は支持部ベース142の内部空間143の外側に配置され、その周囲が略筒状のベローズ423により覆われる。バー45の上端部には爪部41が取り付けられる。ベローズ423は、気体や液体を通過させない材料にて形成される。ベローズ423と爪部41との接続部、ベローズ423とバー支持部450との接続部、バー支持部450と支持部ベース142との接続部、並びに、当接部収容部431と支持部ベース142との接続部はシールされており、気体や液体の通過が防止される。
当接部43には、当接部43を中心とする円板部434が取り付けられる。円板部434は、当接部収容部431内において上側支持部432と下側支持部433との間に配置される。円板部434と下側支持部433との間には、当接部43の周囲を囲むばね435が設けられる。ばね435により、円板部434および当接部43が上方に付勢され、図3のように円板部434が上側支持部432の下面と当接する。円板部434が上側支持部432の下面と当接する状態では、バー44のバー45側の端部が、当接部43側の端部よりも下側に位置し、バー45が上下方向に沿っておよそ直立する。これにより、爪部41が基板9のエッジから外側に(中心軸J1とは反対側に)離間した位置に配置される。当接部43の一部(全部であってもよい。)には、ゴム等にて形成される弾性部材436が設けられ、当接部43が長手方向に僅かに伸縮可能である。伝達機構42が含む上記構成は、複数の爪部41のそれぞれに対して設けられる。
図4は、基板処理装置1における基板9の処理の流れを示す図である。基板処理装置1では、図1に示すように、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間して上方に位置し、カップ部161がチャンバ蓋部122から離間して下方に位置する状態にて、基板9が外部の搬送機構によりチャンバ12内に搬入され、基板支持部141により下側から支持される(ステップS10)。以下、図1に示すチャンバ12およびカップ部161の状態を「オープン状態」と呼ぶ。チャンバ蓋部122とチャンバ側壁部214との間の開口は、中心軸J1を中心とする環状であり、以下、「環状開口81」という。基板処理装置1では、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間することにより、基板9の周囲(すなわち、径方向外側)に環状開口81が形成される。ステップS10では、基板9は環状開口81を介して搬入される。
基板9が搬入されると、チャンバ開閉機構131によりチャンバ蓋部122が図1に示す位置から図5に示す位置(チャンバ本体121に近接する位置)まで下降する。また、カップ部161が、図1に示す位置から図5に示す位置まで上昇し、環状開口81の径方向外側に全周に亘って位置する。以下の説明では、図5に示すチャンバ12およびカップ部161の状態を「第1密閉状態」という。また、図5に示すカップ部161の位置を「液受け位置」といい、図1に示すカップ部161の位置を「退避位置」という。カップ部移動機構162は、カップ部161を、環状開口81の径方向外側の液受け位置と、液受け位置よりも下方の退避位置との間で上下方向に移動する。
液受け位置に位置するカップ部161では、側壁部611が、環状開口81と径方向に対向する。また、上面部612の内縁部の上面が、チャンバ蓋部122の外縁部下端のリップシール232に全周に亘って接する。チャンバ蓋部122とカップ部161の上面部612との間には、気体や液体の通過を防止するシール部が形成される。これにより、チャンバ本体121、チャンバ蓋部122、カップ部161およびカップ対向部163により囲まれる密閉された空間(以下、「拡大密閉空間100」という。)が形成される。拡大密閉空間100は、チャンバ蓋部122とチャンバ本体121との間のチャンバ空間120と、カップ部161とカップ対向部163とに囲まれる側方空間160とが、環状開口81を介して連通することにより形成された1つの空間である。
また、第1密閉状態では、図6に示すように、トッププレート123の各係合部241の下部の凹部242に、当接部収容部431から上方に突出する当接部43の上端部が嵌る。これにより、トッププレート123が、基板支持部141の支持部ベース142と連結される。言い換えると、トッププレート123の基板支持部141に対する回転方向(周方向)における相対位置が固定される。以下の説明では、トッププレート123が基板支持部141と連結する位置を「連結位置」という。チャンバ蓋部122が下降する際には、係合部241と当接部43とが嵌り合うように、基板回転機構15により支持部ベース142の回転位置が制御される。実際には、各当接部43の上端面、および、当該上端面に対向する係合部241の凹部242内の面には、磁石437,243が設けられ、これらの磁石437,243の間に働く磁力(引力)により、係合部241と当接部43とが強固に結合される。
このとき、図5に示すように、被支持部237のフランジ部239が、プレート支持部222のフランジ部224の上方に離間しており、プレート支持部222と被支持部237とは接触しない。換言すると、プレート支持部222によるトッププレート123の支持、すなわち、チャンバ開閉機構131による間接的なトッププレート123の支持が解除されている。このため、トッププレート123は、チャンバ蓋部122から独立して、基板保持部14および基板保持部14に保持された基板9と共に、基板回転機構15により回転可能である。
図6に示すように、係合部241の下面が当接部収容部431の上面と当接するまで、トッププレート123の自重により当接部43が下方に押し込まれる。バー44のバー45側の端部は、当接部43側の端部よりも上側に移動し、バー45の上端部が基板9に近づくようにバー45が傾斜する。これにより、爪部41が支持ピン144上の基板9のエッジ(側面)に当接し、当該エッジが爪部41により中心軸J1に向けて押される。実際には、複数の当接部43に作用する力が複数の爪部41にそれぞれ伝達され、周方向に配列された複数の爪部41により基板9のエッジの異なる部位がほぼ同じ力にて中心軸J1に向けて押される。その結果、基板9の中心を中心軸J1上に配置しつつ、チャック部4により基板9が強固に保持される(ステップS11)。基板支持部141にて支持される基板9の大きさ(直径)が変動する場合であっても、当接部43の弾性部材436の縮み量が変化することにより、係合部241の下面が当接部収容部431の上面と当接する。したがって、トッププレート123の下面と基板9の上面91との間の上下方向の距離が一定に保たれる。
基板9が保持されると、図5に示す基板回転機構15により一定の回転数(比較的低い回転数であり、以下、「定常回転数」という。)での基板9の回転が開始される。また、不活性ガス供給部186(図2参照)から拡大密閉空間100への不活性ガス(ここでは、窒素ガス)の供給が開始されるとともに、外側排気部194による拡大密閉空間100内のガスの排出が開始される。これにより、所定時間経過後に、拡大密閉空間100が、不活性ガスが充填された不活性ガス充填状態(すなわち、酸素濃度が低い低酸素雰囲気)となる。なお、拡大密閉空間100への不活性ガスの供給、および、拡大密閉空間100内のガスの排出は、図1に示すオープン状態から行われていてもよい。
次に、回転する基板9の下面92に向けて、複数の加熱ガス供給ノズル180から、加熱したガスが噴出される。これにより、基板9が加熱される。そして、上部ノズル181から、基板9の上面91の中央部に向けて薬液の供給が開始される(ステップS12)。上部ノズル181からの薬液は、回転する基板9の上面91に連続的に供給される。上面91上の薬液は、基板9の回転により基板9の外周部へと拡がり、上面91全体が薬液により被覆される。
上部ノズル181からの薬液の供給中は、加熱ガス供給ノズル180からの加熱ガスの噴出も継続される。これにより、基板9をおよそ所望の温度にて均一に加熱しつつ、薬液による上面91に対するエッチングが行われる。その結果、基板9に対する薬液処理の均一性を向上することができる。上部ノズル181から薬液を供給する際には、連結位置に位置するトッププレート123の下面が、基板9の上方において基板9を覆うように基板9の上面91に沿って広がり、基板9の上面91に近接している。このように、基板9に対する薬液による処理は、トッププレート123の下面と基板9の上面91との間の極めて狭い空間において行われる。これにより、基板9に対する薬液処理の均一性をさらに向上することができる。
拡大密閉空間100では、回転する基板9の上面91から飛散する薬液が、環状開口81を介してカップ部161にて受けられ、液受け凹部165へと導かれる。液受け凹部165へと導かれた薬液は、図2に示す第1排出路191を介して気液分離部193に流入する。薬液回収部195では、気液分離部193から薬液が回収され、フィルタ等を介して薬液から不純物等が除去された後、再利用される。
上部ノズル181からの薬液の供給開始から所定時間(例えば、60〜120秒)経過すると、上部ノズル181からの薬液の供給、および、加熱ガス供給ノズル180からの加熱ガスの供給が停止される。そして、基板回転機構15により、所定時間(例えば、1〜3秒)だけ基板9の回転数が定常回転数よりも高くされ、基板9から薬液が除去される。
続いて、チャンバ蓋部122およびカップ部161が同期して下方へと移動する。そして、図7に示すように、チャンバ蓋部122の外縁部下端のリップシール231が、チャンバ側壁部214の上部と接することにより、環状開口81が閉じられ、チャンバ空間120が、側方空間160と隔絶された状態で密閉される。カップ部161は、図1と同様に、退避位置に位置する。以下、図7に示すチャンバ12およびカップ部161の状態を「第2密閉状態」という。第2密閉状態では、基板9は、チャンバ12の内壁と直接対向し、これらの間に他の液受け部は存在しない。
第2密閉状態でも、第1密閉状態と同様に、チャック部4の複数の爪部41が基板9のエッジを中心軸J1に向けて押すことにより、基板9が強固に保持されている。また、プレート支持部222によるトッププレート123の保持が解除されており、トッププレート123は、チャンバ蓋部122から独立して、基板保持部14および基板9と共に回転する。
チャンバ空間120が密閉されると、外側排気部194(図2参照)によるガスの排出が停止されるとともに、内側排気部198によるチャンバ空間120内のガスの排出が開始される。そして、基板9への純水の供給が、純水供給部184により開始される(ステップS13)。
純水供給部184からの純水は、上部ノズル181から基板9の上面91の中央部に連続的に供給される。また、純水供給部184からの純水は、下部ノズル182から基板9の下面92の中央部にも連続的に供給される。上部ノズル181および下部ノズル182から吐出される純水は、洗浄液として基板9に供給される。
純水は、基板9の回転により上面91および下面92の外周部へと拡がり、基板9の外周縁から外側へと飛散する。基板9から飛散する純水は、チャンバ12の内壁(すなわち、チャンバ蓋部122およびチャンバ側壁部214の内壁)にて受けられ、図2に示す第2排出路192、気液分離部197および排液部199を介して廃棄される(後述する基板9の乾燥処理においても同様)。これにより、チャンバ空間120において、純水による基板9に対する洗浄処理と共に、チャンバ12内の洗浄も実質的に行われる。実際には、基板9から飛散する純水の一部がチャンバ12の内壁にて中心軸J1側へと跳ね返るが、基板9の上面91はトッププレート123にて覆われることにより、チャンバ12の内壁からの純水が基板9の上面91に付着することが防止される。
純水の供給開始から所定時間経過すると、純水供給部184からの純水の供給が停止される。そして、複数の加熱ガス供給ノズル180から、基板9の下面92に向けて、加熱したガスが噴出される。これにより、基板9が加熱される。また、加熱ガス供給ノズル180からの加熱ガスの噴出が継続された状態で、基板9の回転数が定常回転数よりも十分に高くされる。これにより、純水が基板9上から除去され、基板9の乾燥処理が行われる(ステップS14)。基板9の乾燥開始から所定時間経過すると、基板9の回転が停止する。なお、基板9の乾燥処理の前に、上部ノズル181から基板9の上面91上にIPAが供給され、上面91上において純水がIPAに置換されてよい。また、基板9の乾燥処理は、内側排気部198によりチャンバ空間120が減圧され、大気圧よりも低い減圧雰囲気にて行われてもよい。
その後、チャンバ蓋部122が上昇することにより、図1に示すように、チャンバ12がオープン状態となり、トッププレート123が基板支持部141に対して離間位置に配置される。ステップS14では、トッププレート123が基板支持部141と共に回転するため、トッププレート123の下面に液体はほとんど残存せず、チャンバ蓋部122の上昇時にトッププレート123から液体が基板9上に落下することはない。
トッププレート123が離間位置に配置された状態では、係合部241と図3に示す当接部43とが上下方向に離間しており、ばね435の付勢により当接部43が図3に示す位置に配置される。これにより、バー45が上下方向に沿っておよそ直立し、爪部41が基板9のエッジから外側に(中心軸J1とは反対側に)離間する。すなわち、チャック部4による基板9の保持が解除される(ステップS15)。その後、基板9は外部の搬送機構によりチャンバ12から搬出され(ステップS16)、基板処理装置1による基板9に対する処理が完了する。実際には、上記ステップS10〜S16の処理は、他の基板9に対して繰り返される。
図8は、比較例の基板処理装置における基板保持部近傍を示す断面図である。比較例の基板処理装置では、基板保持部95が、基板9の外縁部を下側から支持する略円環状の基板支持部96と、基板支持部96に支持された基板9の外縁部を上側から押さえる基板押さえ部97とを備える。基板支持部96は、略円環板状の支持部ベース960と、支持部ベース960の上面に固定される複数の第1接触部961とを備え、複数の第1接触部961は周方向に配列される。基板押さえ部97は、トッププレート123の下面に固定される複数の第2接触部971を備え、複数の第2接触部971は周方向に配列される。トッププレート123の外縁部の下面には、複数の係合部951が周方向に配列され、支持部ベース960の上面には、複数の係合ピン952が周方向に配列される。トッププレート123が連結位置に配置されると、係合部951と係合ピン952とが嵌り合い、トッププレート123と基板支持部96とが連結される。比較例の基板処理装置では、基板押さえ部97が、トッププレート123の自重により基板9を基板支持部96へと押圧することにより、基板9が基板押さえ部97と基板支持部96とで上下から挟まれる。
ところで、基板処理装置では、基板9の反りや製造誤差等により、搬入される基板9の直径が僅かに変動する。このような変動に対応するため、比較例の基板処理装置では、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)規格における最大の直径の基板9に合わせて、支持部ベース960における複数の第1接触部961の位置および形状、並びに、トッププレート123における複数の第2接触部971の位置および形状が決定される。したがって、比較例の基板処理装置では、上記規格における最大の直径よりも小さい直径の基板9が搬入されると、当該基板9に対する処理液の供給時や、基板9の回転の加減速時等に、基板支持部96上の基板9の位置が変動する(すなわち、基板9が僅かに動く)ことがある。この場合、基板9と接触部961,971とが擦れて汚染物が発生したり、接触部961,971の摩耗が生じる。また、基板9の位置が大きく変動すると、基板9が破損する虞もある。なお、比較例の基板処理装置では、第1接触部961の端面が調芯用の傾斜面であるが、このような傾斜面を設けても、必ずしも基板9が精度よく調芯される訳ではない。
これに対し、基板処理装置1では、基板支持部141において、複数の爪部41および伝達機構42を有するチャック部4が設けられ、トッププレート123が連結位置に位置する際に、トッププレート123の自重により伝達機構42の各当接部43が上下方向に押し込まれる。伝達機構42は、各当接部43に作用する力を対応する爪部41に伝達することにより、複数の爪部41に基板9のエッジを中心軸J1に向けて押させる。これにより、搬入される基板9の直径が変動する場合であっても、連結位置に配置されるトッププレート123の自重を利用して、複数の爪部41により基板9を外側から保持することが実現される。その結果、基板9に対する処理液の供給時や、基板9の回転の加減速時等に、基板支持部141上の基板9の位置が変動することを抑制することができ、基板9の破損も防止することができる。また、複数の爪部41により、基板9の中心が中心軸J1上に配置される、すなわち、基板9が回転中心に対して位置合わせされることにより、基板9、基板支持部141およびトッププレート123を含む回転体の重心を中心軸J1近傍に配置する(バランスを取る)ことができ、回転体を安定して回転することができる。
また、連結位置に配置されたトッププレート123が基板9の上面91に近接して上面91を覆う。これにより、回転する基板9に処理液を供給する処理において、基板9の外縁部から飛散する処理液がチャンバ12の内壁にて跳ね返って基板9の上面91に再付着することが防止される。さらに、基板保持部14では、伝達機構42が弾性部材436を含み、基板支持部141に支持される基板9の大きさが変動する場合に、弾性部材436が弾性変形する。これにより、連結位置におけるトッププレート123と基板9との間の距離を一定に保つことができる。その結果、基板9の大きさが変動する場合であっても、基板9に対して一定の条件にて処理を施すことができる。
基板処理装置1では、基板回転機構15が、中心軸J1を中心とする環状のロータ部152と、ロータ部152と隙間を空けて径方向に対向する環状のステータ部151とを備える。そして、基板支持部141がロータ部152に接続され、基板支持部141およびロータ部152が、チャンバ12内においてチャンバ12に接触することなく回転する。このように、基板支持部141に設けられるチャック部4に対して電気や圧縮空気等の動力源による駆動力を伝達することができない場合であっても、上記構造を有する基板処理装置1では、基板9を回転中心に対して位置合わせしつつ保持することが可能となる。
図9は、チャック部の他の例を示す図である。図9のチャック部4aの伝達機構42aは、各爪部41aに対して設けられる当接部43および複数のシャフト46,47を備える。当接部43および当接部収容部431の内部構造は図3と同様である。
図10は、当接部43および複数のシャフト46,47を示す斜視図である。図10では、図示の便宜上、他の構成要素の図示を省略している。図9に示すように、支持部ベース142の内部空間143には、中心軸J1に垂直な方向(図9の横方向)に伸びるシャフト46が配置される。シャフト46は、一対のシャフト支持部460により、その中心軸J2を中心として回転可能に支持される。図10に示すように、シャフト46の一方の端部には、シャフト46の中心軸J2に垂直な方向に伸びるバー461の一方の端部が固定され、バー461の他方の端部は当接部43の下端部にピン424を介して接続される。バー461には、バー461の長手方向に伸びる長孔462が形成され、ピン424は、長孔462に挿入される。
図9に示すように、支持部ベース142の内部空間143には、上下方向に伸びるもう1つのシャフト47の下部が配置される。シャフト47は、シャフト支持部470により、その中心軸J3を中心として回転可能に支持される。図10に示すように、シャフト46の他方の端部には、シャフト46の中心軸J2に垂直な方向に伸びるバー463の一方の端部が固定され、バー463の他方の端部はシャフト47の上部にピン425を介して接続される。バー463には、バー463の長手方向に伸びる長孔464が形成され、ピン425は、長孔464に挿入される。
図11は、1つの爪部41aを示す平面図であり、上下方向に沿って見た爪部41aを示している。図9および図11に示すように、爪部41aは、上下方向に沿って見た形状が楕円形の爪部本体411を有する。爪部本体411の上面412は、当該楕円形の長軸の一端から他端に向かって高さが漸次減少する傾斜面である。爪部本体411の上面412において、高さが最も大きい位置近傍には、上方に向かって突出する突出部413が設けられる。突出部413は、上部の直径が下部の直径よりも大きい逆円錐台状である。爪部本体411は、有蓋円筒状の爪部支持台410の上面に固定される。
シャフト47において、下部を除く部位は支持部ベース142の内部空間143の外側に配置され、シャフト47の上端部は爪部支持台410の蓋部の下面に固定される。内部空間143の外側に配置されるシャフト47の部位の周囲は、爪部支持台410の側壁部により囲まれる。爪部支持台410の側壁部と支持部ベース142との接続部は、両者が摺動可能な状態でシールされる。
トッププレート123が離間位置に位置し、図9中に二点鎖線にて示すように、ばね435の付勢により円板部434が上側支持部432の下面と当接する状態では、基板9のエッジが、爪部本体411の上面412において突出部413から僅かに離れた位置に配置される。図9中に実線にて示すように、連結位置に位置するトッププレート123の自重により当接部43が下方に押し込まれると、図10に示すシャフト46が中心軸J2を中心として回動し、シャフト47が中心軸J3を中心として回動する。これにより、爪部本体411が図11中に二点鎖線にて示す回転位置から実線にて示す回転位置へと中心軸J3を中心として回動し、図9中に実線にて示すように、基板9が上方に僅かに移動しつつ突出部413の側面が基板9のエッジに当接する。言い換えると、突出部413の側面と爪部本体411の上面412とが形成する凹部に、基板9の外縁部が噛み込む。実際には、基板9の外縁に沿って配列される複数の爪部41aに対して複数の当接部43に作用する力がそれぞれ伝達され、複数の爪部41aにより基板9のエッジの異なる部位がほぼ同じ力にて中心軸J1に向けて押される。このようにして、図9に示すチャック部4aでは、連結位置に配置されるトッププレート123の重量を利用して、基板9を回転中心に対して位置合わせしつつ保持することが実現される。
図12は、チャック部のさらに他の例を示す図である。図12のチャック部4bは、トッププレート123に設けられる。図12では、トッププレート123、および、当接部収容部431内の構成の一部については、中心軸J1を含む面による断面を示している。チャック部4bは、複数の爪部41と、伝達機構42bとを備える。複数の爪部41は、中心軸J1に沿って見た場合に基板9の周囲に配置される。伝達機構42bは、図3の伝達機構42を上下方向に反転したものに近似した構造を有する。
具体的に、伝達機構42bは、各爪部41に対して設けられる当接部43および複数のバー44,45を備える。当接部43は、上側支持部432および下側支持部433により上下方向に移動可能に支持される。トッププレート123の下面には略筒状の当接部収容部431が設けられ、下側支持部433は当接部収容部431内に設けられる。当接部43の上端部は、トッププレート123に形成された内部空間124に配置される。当該内部空間124にはバー44が配置され、バー44の一方の端部が当接部43の上端部にピン421を介して接続される。バー44には、バー44の長手方向に伸びる長孔441が形成され、ピン421は、長孔441に挿入される。バー44は、バー支持部440により、図12の紙面に垂直な回転軸を中心として回転可能に支持される。
バー44の他方の端部は、もう1つのバー45の上端部にピン422を介して接続される。バー45には、バー45の長手方向に伸びる長孔451が形成され、ピン422は、長孔451に挿入される。バー45は、バー支持部450により、図12の紙面に垂直な回転軸を中心として回転可能に支持される。バー45において、バー支持部450よりも下側の部分はトッププレート123の内部空間124の外側に配置される。バー支持部450の下側近傍におけるバー45の部位の周囲はダイアフラムシール427により覆われる。バー45の下端部には爪部41が取り付けられる。
当接部43に取り付けられた円板部434は、上側支持部432と下側支持部433との間に配置される。円板部434と上側支持部432との間には、当接部43の周囲を囲むばね435が設けられる。ばね435により、円板部434および当接部43が下方に付勢される。トッププレート123が離間位置に位置し、図12中に二点鎖線にて示すように円板部434が下側支持部433の上面と当接する状態では、バー45の上下方向に対する傾斜角が小さくなり、爪部41が基板9のエッジから外側に離間する。
支持部ベース142の上面には、上方に突出する係合部241aが設けられており、トッププレート123が連結位置に位置する際には、当接部収容部431から下方に突出する当接部43の下端部が、係合部241aの上部の凹部242aに嵌る。これにより、トッププレート123が基板支持部141と連結される。また、図12中に実線にて示すように、係合部241aの上面が当接部収容部431の下面と当接するまで、基板支持部141により当接部43が上方に押し込まれる。これにより、バー45の下端部が基板9に近づくようにバー45が傾斜し、爪部41が基板9のエッジに当接する。実際には、基板9の外縁に沿って配列される複数の爪部41に対して複数の当接部43に作用する力がそれぞれ伝達され、複数の爪部41により基板9のエッジの異なる部位が中心軸J1に向けて押される。このようにして、図12に示すチャック部4bでは、連結位置に配置されるトッププレート123の重量を利用して、基板9を回転中心に対して位置合わせしつつ保持することが実現される。なお、基板9の上面91から飛散する処理液が、爪部に接続する伝達機構の構成要素にて跳ね返って上面91に付着することを防止するという観点では、チャック部は基板支持部141に設けられることが好ましい。
上記基板処理装置1では様々な変形が可能である。
当接部に作用する力を複数の爪部に伝達する伝達機構として、上記以外の様々な構造が採用されてよい。例えば、図9の伝達機構42aにおいて、シャフト46におけるシャフト47側の端部におねじが形成され、シャフト47に設けられためねじと螺合してもよい。この場合、当接部43が上下方向に移動することにより、シャフト46が中心軸J2を中心として回転し、シャフト47が基板9の上面91に沿う方向(図9の左右方向)に直線的に移動する。また、伝達機構は、各爪部に対して設けられる当接部43に作用する力を当該爪部のみに伝達する構造以外に、1つまたは複数の当接部43に作用する力を連動して複数の爪部に伝達する構造であってよい。
基板支持部141に支持される基板9の大きさが変動する場合に、連結位置におけるトッププレート123と基板9との間の距離が一定となるように弾性変形する弾性部材は、伝達機構における当接部43以外に設けられてよい。また、基板9の大きさによって、連結位置におけるトッププレート123と基板9との間の距離が僅かに変動することが許容される場合には、伝達機構において上記弾性部材が省略されてよい。
上記実施の形態では、密閉空間開閉機構であるチャンバ開閉機構131が、上面対向部であるトッププレート123を支持する対向部支持機構(の一部)を兼ねることにより、基板処理装置1の構造が簡素化されるが、基板処理装置1の設計によっては、対向部支持機構がチャンバ開閉機構131とは個別に設けられてよい。
図13に示す例では、トッププレート123を上下方向に移動するトッププレート移動機構126が対向部支持機構として設けられる。トッププレート移動機構126は、第1磁石261と、第2磁石262と、磁石移動機構263とを備える。第1磁石261および第2磁石262はそれぞれ、中心軸J1を中心とする略円環状である。トッププレート123の上面には、非磁性体により形成される筒状のトッププレート軸部235が設けられ、第1磁石261は、トッププレート軸部235の内部において、トッププレート軸部235の外周面に沿うように配置される。第2磁石262は、チャンバ蓋部122に形成された環状孔264内にて、トッププレート軸部235の周囲を囲むように配置される。第2磁石262は、磁石移動機構263により、環状孔264内において上下方向に移動する。これにより、トッププレート123が基板支持部141に対して上方に離間する離間位置と、基板支持部141と連結する連結位置との間で、基板支持部141に対して相対的に移動することが可能となる。
また、チャンバ開閉機構131により、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121に対して相対的に昇降すればよく、位置が固定されたチャンバ蓋部122に対してチャンバ本体121が昇降してもよい。この場合も、チャンバ本体121を上昇してチャンバ本体121の上端部をチャンバ蓋部122に近接または当接させることにより、トッププレート123がチャンバ蓋部122と非接触状態となり、連結位置に配置される(図5または図7参照)。また、チャンバ本体121を下降してチャンバ蓋部122から離間させることにより、トッププレート123がチャンバ本体121の上方に位置するチャンバ蓋部122の一部から吊り下がりつつ離間位置に配置される(図1参照)。以上のように、トッププレート123を離間位置と連結位置とに選択的に配置する対向部支持機構は様々な構造にて実現可能である。
基板処理装置1では、基板9の上面91の外縁部のみに対向する円環板状の部材が上面対向部として設けられてよい。この場合も、回転する基板9に処理液を供給する処理において、基板9の外縁部から飛散する処理液がチャンバ12の内壁にて跳ね返って基板9の上面91に再付着することが、連結位置に配置された上記円環板状の部材により防止される。このように、基板処理装置1では、基板9の上面91の少なくとも外縁部に対向する上面対向部が設けられる。
基板回転機構15のステータ部151およびロータ部152の形状および構造は、様々に変更されてよい。例えば、ロータ部152の内側(中心軸J1側)にステータ部151が設けられてもよい。ロータ部152は、必ずしも浮遊状態にて回転する必要はなく、チャンバ12内にロータ部152を機械的に支持するガイド等の構造が設けられ、当該ガイドに沿ってロータ部152が回転してもよい。また、基板回転機構15は、必ずしも中空モータである必要はなく、例えば、円板状の基板支持部141の下面に固定された軸を回転する基板回転機構が利用されてもよい。
上記基板処理装置1では、基板支持部141、基板回転機構15のロータ部152、トッププレート123およびチャック部4,4a,4bが、密閉空間形成部であるチャンバ12内に設けられ、密閉された内部空間にて基板9に対する処理が行われるが、基板処理装置の設計によっては、開放された空間にて基板9に対する処理が行われてよい。
基板処理装置1にて処理される基板は半導体基板には限定されず、ガラス基板や他の基板であってもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。