JP6291970B2 - タンパク質吸着材料およびその製造方法、血液浄化器 - Google Patents
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Description
1.以下の項目を満たすことを特徴とするタンパク質吸着材料。
(a)X線電子分光法(ESCA)により検出される、表面の全原子に対する窒素原子の割合が、0.1(原子数%)以上、8(原子数%)以下
(b)β2−マイクログロブリン吸着量0.05μg/cm2以上
(c)表面の血小板付着数が10(個/4.3×103μm2)以下
2.1のタンパク質吸着材料が内蔵されてなることを特徴とする血液浄化器。
3.ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、セルロース系ポリマー、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩、無定形炭素から選ばれる少なくとも一つを含む基材を、ビニルピロリドンの単量体が与える繰り返し単位を含む共重合体溶液に接触させ、放射線照射して得られるタンパク質吸着材料を内蔵してなることを特徴とする血液浄化器の製造方法。
=(循環前の牛血漿中のβ2−マイクログロブリン濃度[μg/mL]−循環後の牛血漿中のβ2−マイクログロブリン濃度[μg/mL])×1000[mL]/(1.6×104[cm2])
十分なタンパク質吸着を行うためには、β2−マイクログロブリン吸着量は0.05μg/cm2以上が好ましく、0.10μg/cm2以上がより好ましい。
なお、上記測定方法はKazuhiko Ishikiriyama et al. ; JOURNAL OF COLLOID AND INTERFACE SCIENCE, 171, 103-111, (1995)の記載を参考としている。
表面開孔率[%]=孔の総面積/総面積×100
各表面の任意の5箇所で同様の測定を行い、その平均値を求める。
上記いずれの場合も、なお、孔の形状が真円でない場合も真円と仮定し、孔の面積から次式により孔径を算出する。また、上記平均孔径を算出する際は、観察された全ての孔について測定し、その平均を採る。
孔径[nm]=(孔の面積[nm2]/π)1/2
吸着材料を任意の5箇所で切断した断面の中心部分および表面近傍でそれぞれ測定を行い、その平均値を求める。
測定装置: Quantera SXM
励起X線: monochromatic Al Kα1,2 線(1486.6eV)
X線径: 20μm
光電子脱出角度: 45 °(試料表面に対する検出器の傾き)
窒素原子量としては、N1sの400eV付近に現れるピークの面積から、全元素(水素原子は検出できないので、水素原子以外の全元素)に対する該ピーク面積の割合を算出し、窒素原子量(原子数%)を求める。
(製造例1)
重量平均分子量が40万のsyn(シンジオタクティック)−ポリメチルメタクリレートを31.7重量部、重量平均分子量が140万のsyn−ポリメチルメタクリレートを31.7重量部、重量平均分子量が50万のiso(アイソタクティック)−ポリメチルメタクリレートを16.7重量部、パラスチレンスルホン酸ソーダを1.5mol%含む分子量30万のポリメチルメタクリレート共重合体20重量部をジメチルスルホキシド376重量部と混合し、110℃で8時間撹拌し紡糸原液を調製した。
(製造例2)
36島の海島複合繊維であって、島が更に芯鞘複合によりなるものを、次の成分を用いて、紡糸速度800m/分、延伸倍率3倍の製糸条件で得た。
島の芯成分;ポリプロピレン
島の鞘成分;ポリスチレン90重量%、ポリプロピレン10重量%
海成分;5−ナトリウムスルホイソフタル酸を3重量%共重合したポリエチレンテレフタレート
複合比率(重量比率);芯:鞘:海=40:40:20
この繊維70重量%と、直径25μmのポリプロピレン繊維30重量%からなるシート状物を作製した後、開孔部が3mm角のポリエステル製ネット(厚み0.4mm、単糸径0.3mm、目付30g/m2)をこれらの間に挟み、ニードルパンチすることによって三層構造の吸着担体を得た。次に、この不織布を90℃水酸化ナトリウム水溶液(3重量%)で処理して上記海成分を溶解することによって、芯鞘繊維の直径が4μmで、嵩密度が0.05g/cm3(総目付210g/m2)の不織布を作製した。
(製造例3)
50重量部の海成分(46重量比のPStと4重量比のPPの混合物)と50重量部の島成分(PP)とからなる海島型複合繊維(厚さ:2.6デニール、島の数:16;米国特許第4661260号明細書)を筒網状にした編地を作製した。
(製造例4)
ポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)16重量部、ポリビニルピロリド
ン(インターナショナルスペシャルプロダクツ社;以下ISP社と略す)K30 2重量
部、ポリビニルピロリドン(ISP社K90)2重量部をジメチルアセトアミド79部、
水1部を加熱溶解し、紡糸原液を調製した。
(製造例5)
製造例1,2、比較製造例1−4と同様の方法で紡糸原液を調製した。
2.用いた測定方法
(1)X線電子分光法(ESCA)測定
以下の実施例1,2、比較例4−8で作成したカラムについて測定を行った。繊維表面は3点測定した。中空糸膜の場合は片刃で半円筒状に削ぎ切り、中空糸膜の内表面を3点測定した。測定サンプルは、超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させた後、測定に供した。測定装置、条件としては、以下の通り。
測定装置: Quantera SXM
励起X線: monochromatic Al Kα1,2 線(1486.6eV)
X線径: 20μm
光電子脱出角度: 45 °(試料表面に対する検出器の傾き)
窒素原子量としては、N1sの400eV付近に現れるピークの面積から、全原子(水素原子は検出できないので、水素原子以外の全原子)に対する該ピーク面積の割合を算出し、窒素原子量(原子数%)を求めた。
(2)元素分析
以下の実施例1,2、比較例4−8で作成したカラムについて測定を行った。吸着材料3gを凍結乾燥させ、全自動元素分析装置varioEL(エレメンタール社)にて、試料分解路950℃、還元炉500℃、ヘリウム流量200ml/min、酸素流量20〜25ml/minで測定を行った。検出された全原子に対する窒素原子の割合を求めた。
(3)表面開孔率の測定
走査型電子顕微鏡(SEM)で吸着材料の表面を観察し、画像解析を行った。SEMで倍率50,000倍で観察し、640×442pixelsの画像を、画像処理ソフト(Matrox Inspector2.2、CRI JOLANTA製)にて二値化処理し、孔が黒、構造ポリマー部分が白となった画像を得た。次式から表面開孔率を算出した。
表面開孔率[%]=孔の総面積/総面積
各表面の5箇所で同様の測定を行い、その平均値を求めた。
(4)断面の孔径の測定
表面開孔率の測定と同様、SEMを用いた倍率50,000倍で観察する方法で、上述した方法により吸着材料断面の中心部分および表面近傍を観察し、画像解析を行った。上述の通り、孔を真円と仮定し、孔の面積から次式より孔径を算出した。
孔径[nm]=(孔の面積[nm2]/π)1/2
吸着材料断面の中心および表面近傍でそれぞれ5箇所で測定を行い、その平均値を求めた。
(5)細孔径の測定
TA Instruments社製DSC Q100で吸着材料を−55℃に急冷し、5℃まで0.3℃/minで昇温させて測定し、得られた曲線のピークトップから細孔の一次平均半径を次式から算出した。
(6)ヒト血小板付着試験
18mmφのポリスチレン製の円形板に両面テープを貼り付け、両面テープ上に繊維および中空糸膜を固定した。中空糸膜の試験の場合には、貼り付けた中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、中空糸膜の内表面を露出させた。筒状に切ったFalcon(登録商標)チューブ(18mmφ、No.2051)に該円形板を、中空糸膜を貼り付けた面が、円筒内部にくるように取り付け、パラフィルムで隙間を埋めた。この円筒管内を生理食塩水で洗浄後、生理食塩水で満たした。健常な人間の静脈血を採血後、直ちにヘパリンを50U/mlになるように添加した。前記円筒管内の生理食塩水を廃棄後、前記血液を、採血後10分以内に、円筒管内に1.0ml入れて37℃にて4時間振盪させた。その後、円筒管内を10mlの生理食塩水で洗浄し、2.5%グルタルアルデヒド生理食塩水で血液成分の固定を行い、20mlの蒸留水にて洗浄した。吸着材料を固定した円形板を常温0.5Torrにて10時間減圧乾燥し、走査型電子顕微鏡の試料台に両面テープで貼り付けた。その後、スパッタリングにより、Pt−Pdの薄膜を吸着材料表面に形成させて、試料とした。吸着材料表面をフィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(日立社製S800)にて、倍率1500倍で試料の内表面を観察し、1視野中(4.3×103μm2)の血小板付着数を数えた。異なる10視野での血小板付着数の平均値を血小板付着数(個/4.3×103μm2)とした。中空糸の長手方向における端の部分には血液溜まりができやすいことから、中央付近を観察した。
(7)カラムによるβ2−マイクログロブリン吸着量測定
カラムの入口と出口をシリコーンチューブで繋ぎ、入口から生理食塩水を流量200mL/minで5分間流し、繊維または中空糸およびカラム内部を洗浄した。生物学的製剤基準血液保存液A液を用いて抗凝固化した牛血漿溶液をタンパク濃度が6.5±0.5g/dL、β2−マイクログロブリン濃度が1mg/Lとなるように調整した。前記牛血漿1Lをカラムの入口から出口に流し、5分間、閉鎖循環した。循環前の牛血漿中のβ2−マイクログロブリン濃度および5分循環後の牛血漿中のβ2−マイクログロブリン濃度をラテックス凝集免疫測定法を用いて測定し、次式からβ2−マイクログロブリン吸着量を算出した。
=(循環前の牛血漿中のβ2−マイクログロブリン濃度[μg/mL]−循環後の牛血漿中のβ2−マイクログロブリン濃度[μg/mL])×1000[mL]/(1.6×104[cm2])
(8)β2−マイクログロブリンクリアランス測定
β2−マイクログロブリンのクリアランス測定は日本透析医学会の定める方法(血液浄化器の性能評価法、透析会誌29(8)1231−1245、1996)に従い、流量200mL/minで実施した。比較例6では中空糸の内側のみに流して試験を行った。
(9)バッチ試験によるβ2−マイクログロブリン吸着率測定
生物学的製剤基準血液保存液A液を用いて抗凝固化した牛血漿溶液をタンパク濃度が6.5±0.5g/dL、β2−マイクログロブリン濃度が10mg/Lとなるように調整した。容積5mLのガラス製の容器に前記牛血漿1.2mLおよび吸着材料を加え、37℃で2時間、振とうした。吸着材料の形状が繊維の場合には、5cmに切った繊維を49本用いた。それ以外の形状を持つ吸着材料の量は、後述する。振とう前の牛血漿中のβ2−マイクログロブリン濃度および2時間振とう後の牛血漿中のβ2−マイクログロブリン濃度をラテックス凝集免疫測定法を用いて測定し、次式からβ2−マイクログロブリン吸着率を算出した。
=(振とう前の牛血漿中のβ2−マイクログロブリン濃度[μg/mL]−振とう後の牛血漿中のβ2−マイクログロブリン濃度[μg/mL])/振とう前の牛血漿中のβ2−マイクログロブリン濃度[μg/mL]×100
(実施例1)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製“コリドンVA64”)0.001重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ2−マイクログロブリン吸着試験、β2−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ2−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、血小板付着抑制性とβ2−マイクログロブリンの吸着除去性能が高かった。低濃度の上記親水性ポリマー溶液を用いて表面をグラフトしているが、一方で、窒素原子量の測定結果に見られるように、吸着材料表面の親水性ポリマー量が多すぎることがないため、上記ポリマーグラフトを行わない比較例4に比べβ2−マイクログロブリンの吸着能を低下させずに維持できた。
(実施例2)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製“コリドンVA64”)0.1重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ2−マイクログロブリン吸着試験、β2−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ2−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、血小板付着抑制性とβ2−マイクログロブリンの吸着除去性能が高かった。実施例1に比べ、高濃度の親水性ポリマー溶液を用いたため、吸着材料表面の親水性ポリマー量が多いが、β2−マイクログロブリンの吸着能を大きく低下させるほどではない。
(実施例3)
製造例2で製造したポリスチレン(PSt)およびポリプロピレン(PP)を含む不織布を直径6mmの円形に切りとり、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製“コリドンVA64”)0.1重量%水溶液2mLに浸漬し、γ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該不織布について、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、バッチ試験によるβ2−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、血小板付着抑制性とβ2−マイクログロブリンの吸着除去性能が高かった。吸着材料表面の親水性ポリマー量が最適な範囲であるため、上記ポリマーグラフトを行わない下記比較例9に比べ、十分な血小板付着抑制性が得られつつ、β2−マイクログロブリンの吸着能を低下させずに維持できた。
(実施例4)
製造例3で製造したポリスチレン(PSt)およびポリプロピレン(PP)を含む編物を直径6mmの円形に切りとったもの3枚を、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製“コリドンVA64”)0.1重量%水溶液2mLに浸漬し、γ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該編物について、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、バッチ試験によるβ2−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、血小板付着抑制性とβ2−マイクログロブリンの吸着除去性能が高かった。吸着材料表面の親水性ポリマー量が最適な範囲であるため、上記ポリマーグラフトを行わない下記比較例10に比べ、十分な血小板付着抑制性が得られつつ、β2−マイクログロブリンの吸着能を低下させずに維持できた。
(実施例5)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(7/3)共重合体(BASF社製“コリドンVA73”)0.5重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ2−マイクログロブリン吸着試験、β2−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ2−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、実施例1に比べ血小板付着数が多く、β2−マイクログロブリンの吸着除去性能は高かった。実施例1に比べ、ビニルピロリドンの単量体が与える繰り返し単位が親水性ポリマー中で占める割合が高いため、血小板付着抑制効果は低かった一方で、β2−マイクログロブリンの吸着能の低下が抑制されたと考えられる。
(比較例1)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ポリビニルピロリドン(ISP社製“K90”)0.001重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ2−マイクログロブリン吸着試験、β2−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ2−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、ポリマーグラフトを行わない比較例4に比べβ2−マイクログロブリンの吸着能を大きく低下させずに維持できたが、血小板付着抑制性は得られなかった。
(比較例2)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ポリエチレングリコール(日本油脂社製“マクロゴール6000”)0.001重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ2−マイクログロブリン吸着試験、β2−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ2−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、ポリマーグラフトを行わない比較例4に比べβ2−マイクログロブリンの吸着能を大きく低下させずに維持できたが、血小板付着抑制性は得られなかった。
(比較例3)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ポリエチレングリコール(日本油脂社製“マクロゴール6000”)0.075重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ2−マイクログロブリン吸着試験、β2−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ2−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、比較例2よりも高濃度の親水性ポリマー溶液を用い、吸着材料表面の親水性ポリマー量が多いため、血小板付着抑制性が高かったが、β2−マイクログロブリンの吸着までもが抑制された。
(比較例4)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、水を900mL通液し、カラム内を水で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ2−マイクログロブリン吸着試験、β2−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ2−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、吸着材料表面および吸着材料全体の窒素原子は検出されなかった。また、β2−マイクログロブリンの吸着除去性能が高いが、血小板付着抑制性は得られなかった。
(比較例5)
製造例4で製造したポリスルホン(PSf)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製“コリドンVA64”)0.001重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、血小板付着試験、カラムによるβ2−マイクログロブリン吸着試験、β2−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ2−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、血小板付着抑制性は高いが、β2−マイクログロブリンの吸着除去性能は低かった。吸着材料に含まれる窒素原子量が多いこと、基材がポリスルホンであること、吸着材料断面の表面近傍の孔径に対する中心部分の孔径の比が大きく細孔のサイズが均一でないことから、高いタンパク質吸着能が得られなかったと考えられる。
(比較例6)
製造例5で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む中空糸カラムの入口側から出口側に、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製“コリドンVA64”)0.001重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ2−マイクログロブリン吸着試験、β2−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ2−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、血小板付着抑制性は高かったが、β2−マイクログロブリンの吸着除去性能は低かった。形状が中空糸である吸着材料を用いたため、中空糸の外側よりも内側での血液の流速が遅いため、中空糸内側が効率的に血液に接触せずβ2−マイクログロブリンの効率的な吸着除去が行えなかったと考えられる。
(比較例7)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製“コリドンVA64”)0.5重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。さらに、この共重合体水溶液の通液とγ線照射を、計3回繰り返して行った。該カラムについて、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ2−マイクログロブリン吸着試験、β2−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ2−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、血小板付着抑制性は高かったが、β2−マイクログロブリンの吸着除去性能は低かった。実施例1に比べ、高濃度の親水性ポリマー溶液を用い、またポリマー溶液の通液、γ線照射を3回行ったことから、吸着材料表面の親水性ポリマー量が多すぎたため、β2−マイクログロブリンの吸着能が低下したと考えられる。
(比較例8)
製造例2で製造したポリスチレン(PSt)およびポリプロピレン(PP)を含む不織布を直径6mmの円形に切りとり、水2mLに浸漬し、γ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該不織布について、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、バッチ試験によるβ2−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、β2−マイクログロブリンの吸着除去性能が高いが、血小板付着抑制性は得られなかった。
(比較例9)
製造例3で製造したポリスチレン(PSt)およびポリプロピレン(PP)を含む編物を直径6mmの円形に切りとったもの3枚を、水2mLに浸漬し、γ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該編物について、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、バッチ試験によるβ2−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、β2−マイクログロブリンの吸着除去性能が高いが、血小板付着抑制性は得られなかった。
Claims (11)
- 以下の項目を満たすことを特徴とするタンパク質吸着材料。
(a)X線電子分光法(ESCA)により検出される、表面の全原子に対する窒素原子の割合が、0.1(原子数%)以上、8(原子数%)以下
(b)β2−マイクログロブリン吸着量0.05μg/cm2以上
(c)表面の血小板付着数が10(個/4.3×103μm2)以下
(d)表面近傍の孔径に対する、中心部の孔径の比が0.5以上、1.3以下である
(e)基材がポリメチルメタクリレート、または、ポリスチレンおよびポリプロピレンを含む
(f)前記ESCAにより検出される表面の窒素原子、および/または、元素分析により検出される、タンパク質吸着材料を構成する窒素原子が、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体由来の窒素原子を含む - 前記元素分析により検出される、タンパク質吸着材料を構成する全原子に対する窒素原子の濃度が、0.0001重量%以上、1重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質吸着材料。
- 前記共重合体が、さらにカルボン酸ビニルエステル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、から選ばれる少なくとも一つの単量体が与える繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のタンパク質吸着材料。
- 比表面積が0.0001μm2/μm3以上、10μm2/μm3以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質吸着材料。
- 表面開孔率が0.1%以上、95%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質吸着材料。
- 細孔の一次平均半径が1nm以上、200nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質吸着材料。
- 基材がポリメチルメタクリレートを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のタンパク質吸着材料。
- 形状が繊維、不織布、織物、編物、粒子、フィルムおよび成形品から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のタンパク質吸着材料。
- 前記ポリメチルメタクリレートがステレオコンプレックス構造を構成していることを特徴とする請求項7または8に記載のタンパク質吸着材料。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のタンパク質吸着材料が内蔵されてなることを特徴とする血液浄化器。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のタンパク質吸着材料を製造する方法であって、
前記基材を、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体溶液に接触させ、放射線照射して得られるタンパク質吸着材料の製造方法。
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