JP6291970B2 - タンパク質吸着材料およびその製造方法、血液浄化器 - Google Patents

タンパク質吸着材料およびその製造方法、血液浄化器 Download PDF

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Description

本発明は、高いタンパク質吸着能を持ち、かつ優れた血液適合性を示す吸着材料およびこれを内蔵してなる血液浄化器に関するものである。
体液から物質を除去する方法として、人工腎臓に代表される体外循環など生体外へ体液を取り出し、目的物質を透析や吸着や濾過の原理により除去した後に生体内に体液を戻す血液浄化器を用いる方法がある。人体に有用なタンパク質であるアルブミンに分子量が近い中分子量以上のタンパク質は、透析や濾過の原理のみによる除去では、アルブミンも除去してしまう問題がある。一方、吸着の原理による除去では、アルブミンの損失を抑制しつつ、除去対象タンパク質を効率的に除去することができる。
中空糸を用いてタンパク質を吸着除去する方法が特許文献1に開示されている。ここでは、基材を親水性高分子を含む水溶液と接触下、放射線照射することが記載されている。また、基材は分離膜として用いられるものであり、形状として「平膜、中空糸膜」が挙げられている。ここでは、中空糸膜が好ましいとあり、実施例等においては専ら中空糸膜が用いられており、中空糸膜の内側にのみ血液を接触させる態様のみが記載されている。タンパク質の吸着除去を効率的に行う観点から見ると、中空糸膜の内側という領域のみを使用して吸着を行っており、吸着面積は比較的小さく、その上、親水性高分子としてポリアルキレングリコールやポリビニルピロリドンを用いており、この組み合わせでは十分なタンパク質除去率が得られないものであった。
一方で、血液と接触する材料には血液適合性が重要である。材料表面に血小板等の血液凝固系物質が付着すると、材料表面が覆われ、除去対象タンパク質を十分に除去することができないため、これらの成分が付着しない材料が必要である。形状を中空糸とする吸着材料の場合、設計が良好になされなければ中空糸の内側に血液が滞留しやすく血液凝固系物質が付着しやすくなるという懸念がある。
また、特に人工腎臓の分野では、基材表面の親水化処理が血液適合性の向上に有効であることが広く知られており、例えば血液浄化用分離膜の素材として用いられるポリスルホン系ポリマーからなる分離膜に血液適合性を付与するために、分離膜を親水性高分子でコーティングする方法が特許文献2に開示されており、親水性高分子の例としてはポリビニルピロリドン,ポリエチレングリコール,ポリビニルアルコール,ポリプロピレングリコールが挙げられている。しかしこの方法をタンパク質を吸着できる材料に適用してタンパク質の吸着を主な目的とした場合、血液凝固系物質の付着抑制と除去対象タンパク質の吸着を両立することができなかった。
一方で、特許文献3には、上記親水性高分子と共にエステル基含有ポリマーを分離膜の表面に局在化させて血液適合性を向上し、かつ膜性能を維持する発明が記載されており、具体的には酢酸ビニル基含有ポリマー等が挙げられている。しかしながら、基材としてタンパク質吸着材料は用いられてなく、当該材料を用いて吸着と血液適合性を両立する技術的思想の記載はない。
特開2011−183384号公報 特開平6−238139号 国際公開第2009/123088号公報
本発明は、β−マイクログロブリン等のタンパク吸着能を維持しつつ、血液適合性が付与されたタンパク質吸着材料を提供することを課題とする。
前記課題を達成するため、本発明は下記の構成からなる。
1.以下の項目を満たすことを特徴とするタンパク質吸着材料。
(a)X線電子分光法(ESCA)により検出される、表面の全原子に対する窒素原子の割合が、0.1(原子数%)以上、8(原子数%)以下
(b)β−マイクログロブリン吸着量0.05μg/cm以上
(c)表面の血小板付着数が10(個/4.3×10μm)以下
2.1のタンパク質吸着材料が内蔵されてなることを特徴とする血液浄化器。
3.ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、セルロース系ポリマー、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩、無定形炭素から選ばれる少なくとも一つを含む基材を、ビニルピロリドンの単量体が与える繰り返し単位を含む共重合体溶液に接触させ、放射線照射して得られるタンパク質吸着材料を内蔵してなることを特徴とする血液浄化器の製造方法。
上記の通り、本発明は、タンパク質の吸着に最適なサイズの細孔を持ち、かつそのサイズが均一な吸着材料に関するものであり優れたタンパク質吸着特性を維持しつつ血液適合性を劇的に向上させたことを見出したものである。ここで、基材とはタンパク質の吸着能を有する材料のことを指す。
吸着材料表面のビニルピロリドンの単量体が与える繰り返し単位を含むポリマー(ビニルピロリドン含有ポリマー)が少なすぎると十分な血液適合性が得られず、多すぎるとタンパク質吸着能が低下してしまう。本発明は、相反すると考えられていた両特性を両立させるために最適なビニルピロリドン含有ポリマーの量を見出したものである。
ここで、血液適合性やそれを与える親水性ポリマー等を物質として特定して記載することは困難であるため、先ず、上記要件(a)の通り、窒素原子の量を条件化して物質としての特性を規定している。ただし、どの様な窒素原子、または窒素原子含有化合物を用いてもよいということではないので、要件(b)および(c)により上記相反すると考えられていた両特性を規定して発明を特定している。
窒素原子については更に、元素分析により検出されるタンパク質吸着材料を構成する全原子に対する当該窒素原子の濃度が0.0001重量%以上、1重量%以下であることが好ましい。
また、より具体的に化合物を特定すると、上記ESCAにより検出される表面の全原子に対する窒素原子の割合、上記元素分析により検出されるタンパク質吸着材料を構成する全原子に対する窒素原子の濃度のうち少なくとも一つが、ビニルピロリドンの単量体が与える繰り返し単位を含む共重合体に由来することが好ましい。
さらにより特定すれば、上記ビニルピロリドンの単量体が与える繰り返し単位を含む共重合体が、さらにカルボン酸ビニルエステル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、から選ばれる少なくとも一つの単量体が与える繰り返し単位を含むことが好ましい。
本発明により、除去対象のタンパク質の吸着除去を維持しつつ、血液適合性が付与されたタンパク質吸着材料を提供することができる。
タンパク質吸着材料の血液適合性は、血液と接触する部分の表面状態に依存し、一般的には、表面の親水性が高いほど高くなる。しかしながら、基材表面に親水化処理を行うと、血小板等の血液凝固系物質の基材への付着が抑制されると同時に、除去対象タンパク質の吸着までもが抑制されてしまうことが懸念される。
また、上記β−マイクログロブリン(分子量11,800)と、人体に有用なタンパク質であるアルブミン(分子量66,000)は、物質を球と仮定したときの半径(ストークス半径)が近いため、透析や濾過を原理とする分離膜による除去では、β−マイクログロブリンだけでなくアルブミンまでも除去してしまうといった問題がある。
本発明におけるβ−マイクログロブリン吸着量とは、タンパク質吸着材料を内蔵したカラムにβ−マイクログロブリン含有の牛血漿を5分間、閉鎖循環したときのβ−マイクログロブリンの濃度減少から算出される。具体的な測定手順を以下に示す。カラムおよび吸着材料を洗浄した後、抗凝固化したタンパク濃度が6.5±0.5g/dL、β−マイクログロブリン濃度が1mg/Lとなるように調整した牛血漿溶液1Lをカラムの入口から出口に流し、5分間、閉鎖循環する。循環前後の牛血漿中のβ−マイクログロブリン濃度をラテックス凝集免疫測定法を用いて測定し、次式からβ−マイクログロブリン吸着量を算出する。
β−マイクログロブリン吸着量[μg/cm
=(循環前の牛血漿中のβ−マイクログロブリン濃度[μg/mL]−循環後の牛血漿中のβ−マイクログロブリン濃度[μg/mL])×1000[mL]/(1.6×10[cm])
十分なタンパク質吸着を行うためには、β−マイクログロブリン吸着量は0.05μg/cm以上が好ましく、0.10μg/cm以上がより好ましい。
または、β−マイクログロブリンの吸着の程度をクリアランスによって測ることも可能である。測定方法の詳細は実施例にて後述する。本願発明において好ましいクリアランスの範囲は、カラムの形状、大きさ等によって変わり得るものの、30mL/min以上が好ましく、40mL/min以上がより好ましく、50mL/min以上が更に好ましく、一方で90mL/min以下が好ましい。
上記のように、タンパク質吸着材料を内蔵したカラムにおけるβ−マイクログロブリンの吸着性能を測定する他、吸着材料についてバッチ試験を行って、β−マイクログロブリンの吸着率として測定することができる。バッチ試験とは、閉鎖系で吸着材料をβ−マイクログロブリンを含有する溶液に浸漬したときのβ−マイクログロブリンの吸着率を測定する試験である。タンパク質吸着材料をβ−マイクログロブリン含有の牛血漿に加えて2時間、振とうしたときのβ−マイクログロブリンの濃度減少から算出される。具体的な測定手順は、実施例にて後述する。本発明において好ましいβ−マイクログロブリンの吸着率は、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。なお、上記βーマイクログロブリン吸着量と上記吸着率の相関性は非常に高く、上記吸着量が高い程、吸着率も高い。
本発明における表面の血小板付着数とは、吸着材料の表面に血液を4時間接触させた場合に、吸着材料の表面に付着した血小板の数である。本願発明では、タンパク質吸着除去能力の向上と共に血液適合性を確保することを目的としていることから、かかる血小板付着数が少ないことを条件として挙げている。具体的な測定手順を以下に示す。まず、吸着材料の血液に接触させる面を露出させる。人間の静脈血を採血後、直ちにヘパリンを50U/mlになるように添加し、採血後10分以内に上記吸着材料に接触させ、37℃で4時間振盪させる。その後、吸着材料を生理食塩水で洗浄し、グルタルアルデヒド生理食塩水で血液成分の固定を行い、蒸留水で洗浄する。吸着材料を常温0.5Torrにて10時間減圧乾燥し、スパッタリングによりPt−Pdの薄膜を吸着材料表面に形成させ、試料とする。走査型電子顕微鏡で吸着材料表面を倍率1500倍で観察し、4.3×10μmあたりの付着血小板数を数える。異なる10視野での付着血小板数の平均値を血小板付着数(個/4.3×10μm)とする。十分な血液適合性を得るためには、ヒト血小板付着量は10個/4.3×10μm以下であり、3個/4.3×10μm以下が好ましい。
本発明の吸着材料は、高い血液適合性を有するので、医療用基材として好適に用いることができる。本発明で用いられる医療用基材は、生体成分と接触させて用いられる用途、例えば血液浄化器に適する。ここで、血液浄化器とは、血液を体外に循環させて、血中の老廃物や有害物質を吸着除去するモジュールまたはカラムのことをいい、外毒素吸着カラムなどがある。
本発明において、基材とはタンパク質の吸着能を有する材料のことを指す。基材が含有する素材はポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンや、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロース系ポリマー、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル、ポリアミドや、石英、シリカゲルなどに用いられる二酸化ケイ素、ゼオライトなどに用いられるアルミノケイ酸塩、炭素繊維、活性炭などに用いられる無定形炭素などが挙げられる。またはこれらの共重合体や複合材料でも構わない。中でも、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩および無定形炭素から選ばれる少なくとも一つを含む基材は、優れた吸着性能を有することから好ましい。ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンおよびポリプロピレンから選ばれる少なくとも一つを含む基材は、タンパク質を効率よく吸着するため、より好ましい。特にポリメチルメタクリレートでは、アイソタクチック体とシンジオタクチック体を混合し、立体複合体であるステレオコンプレックスを形成させることにより、細孔のサイズが均一な基材が得られるため好ましい。特にポリスチレンとポリプロピレンについては、芯成分がポリスチレン、鞘成分がポリスチレンとポリプロピレンからなる芯鞘複合繊維であってもよい。
本発明において、吸着材料の比表面積は、吸着材料の体積に対する、吸着材料が血液と接触し得る面の面積を表す。タンパク質を効率的に除去するためには、吸着材料の比表面積は大きいことが望ましいが、大きすぎると強度が低下する。以上のことから、0.0001μm/μm以上が好ましく、0.001μm/μm以上がより好ましく、0.01μm/μm以上が更に好ましく、一方で10μm/μm以下が好ましく、1μm/μm以下がより好ましく、0.1μm/μm以下が更に好ましい。
基材の形状としては、繊維、不織布、織物、編物、粒子、フィルム、成形品などが挙げられる。ここで、本発明における繊維とは、長手方向に連続した空洞を持たない繊維のことをいう。例えば、中実糸、海島繊維、芯鞘繊維などが挙げられる。繊維は、その繊維径を細くすることで比表面積を大きくすることができるため、好ましい。一方で、本発明における中空糸とは、長手方向に連続した空洞を有する糸のことをいう。中空糸において、内側のみに血液を接触させた場合、比表面積が小さく、効率的にタンパク質を吸着できないため、適さない。中空糸の内側と外側の両方に血液を接触させることで比表面積を大きくしても、中空糸の外側よりも内側での血液の流速が遅いため、中空糸内側が効率的に血液に接触せず、十分なタンパク質除去が行えないことがある。また中空糸の内側に血液が滞留するため、血液が凝固し、高い血液適合性が得られないことがある。このため血液適合性とタンパク質の吸着除去性能を両立させるためには、長手方向に連続した空洞を持たない繊維が好ましい。
基材を繊維とする場合、繊維径は、比表面積を大きくするために細いことが望ましいが、細すぎると吸着材料を内蔵したカラムに血液を流したときに圧力損失が大きくなるため、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましく、一方10mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、0.5mm以下が更に好ましい。
吸着材料の細孔径を測定する方法として、示差走査熱量計(DSC)が用いられる。DSCでは、吸着材料全体の細孔径を測定することができる。吸着材料を−55℃に急冷し、5℃まで0.3℃/minで昇温させて測定し、得られた曲線のピークトップ温度を融点として、次式から細孔の一次平均半径を算出する。
細孔の一次平均半径[nm]=(33.30−0.3181×融点降下量[℃])/融点降下量[℃]
なお、上記測定方法はKazuhiko Ishikiriyama et al. ; JOURNAL OF COLLOID AND INTERFACE SCIENCE, 171, 103-111, (1995)の記載を参考としている。
細孔径が小さすぎると、除去対象のタンパク質が中に入り込めないため、適さない。逆に細孔径が大きすぎると、単位体積当たりの細孔表面積が小さくなるため、タンパク質の吸着が効率的に行えない。β−マイクログロブリンの吸着除去を行うためには、細孔の一次平均半径は1nm以上であることが好ましく、3nm以上がより好ましく、5nm以上がさらに好ましく、一方で200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、30nm以下が更に好ましい。
吸着材料の表面開孔率を測定する方法として、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、画像解析を行う手法がある。SEMで倍率50,000倍で観察し、640×442pixelsの画像を、画像処理ソフト(Matrox Inspector2.2、CRI JOLANTA製)にて二値化処理し、孔が黒、構造ポリマー部分が白となった画像が得られる。次式から表面開孔率を算出する。
表面開孔率[%]=孔の総面積/総面積×100
各表面の任意の5箇所で同様の測定を行い、その平均値を求める。
表面開孔率が小さすぎると、血液成分が吸着材料の内部に入り込めないため、効率的な吸着を行うことができない。一方で表面開孔率が大きすぎると、強度が低下し損傷しやすくなる。そのため表面開孔率は0.1%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、5%以上が更に好ましく、一方で95%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましい。
表面近傍の孔径と中心部の孔径とを比較する際は、上記DSCは用いず、材料の断面を得た上で、上記表面開孔率の測定と同様、SEMによる方法で行うことができる。ここで断面とは、吸着材料の血液に接触する面に垂直に切断することで得られる面をいう。例えば繊維の場合、長手方向に垂直に切断した面をいう。吸着材料断面の中心部分および表面近傍を観察し、画像解析を行う。表面近傍の孔径とは、基材の表面、すなわち断面における外周における孔径であり、より具体的には、表面に接する256×256pixelsの視野1での平均孔径に対する、表面に対して垂直方向に視野1と隣り合う256×256pixelsの視野2での平均孔径の比が2倍未満となる場合、視野1を完全に包括する640×442pixelsの視野を表面近傍という。しかしながら、ポリメチルメタクリレート繊維等の場合は、表面に緻密層という、孔径が非常に小さい層が存在する等の場合がある。タンパク質の吸着除去のために、細孔の径がばらつきなく最適化されていることがよい観点からすると、このような層の部分は上記「表面近傍」に含めないことが適切である。そこで、視野1での平均孔径に対する視野2の平均孔径の比が2倍以上の場合、視野2を完全に包括し、視野1を全く含まない640×442pixelsの視野を表面近傍という。
また表面における2点を結んで得られる直線のうち、長さが最長となる直線の中心を中心部分という。中心部分においても平均孔径を求める。
上記いずれの場合も、なお、孔の形状が真円でない場合も真円と仮定し、孔の面積から次式により孔径を算出する。また、上記平均孔径を算出する際は、観察された全ての孔について測定し、その平均を採る。
孔径[nm]=(孔の面積[nm]/π)1/2
吸着材料を任意の5箇所で切断した断面の中心部分および表面近傍でそれぞれ測定を行い、その平均値を求める。
タンパク質の吸着除去を行うためには、最適なサイズの細孔が多く存在する必要がある。サイズの大きすぎる細孔や小さすぎる細孔が存在すると、タンパク質の吸着を効率的に行うことができない。タンパク質の吸着を効率的に行うためには、吸着材料断面の表面近傍の孔径に対する中心部の孔径の比は0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、一方で1.3以下が好ましく、1.1以下がより好ましい。
本発明においては、血液適合性を付与するために親水性ポリマーを用いて基材表面を処理することが好ましいが、中でも、親水性を有する共重合体を用いて基材表面を処理することが好ましい。共重合体を構成する一単量体が親水性を発現する一方で、他の構成単量体に疎水性を付与することもでき、親水−疎水のバランスを基材に与えることが可能となり、基材に高い血液適合性を付与しつつ、その基材の本来の特性であるタンパク質吸着特性を損なうことがないことを見出した。本発明における親水性共重合体処理とは、コーティング、化学反応や放射線照射によるグラフトなどにより親水性共重合体を基材の表面に導入することを指す。
本発明において、親水性共重合体としては、ビニルピロリドン含有ポリマー、すなわちビニルピロリドンの単量体が与える繰り返し単位を含むものが好ましく用いられ、ビニルピロリドンの単量体が与える繰り返し単位と、酢酸ビニル、メチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビニルアルコール、エチレンイミン、アリルアミン、ビニルアミン、アクリル酸、アクリルアミドに挙げられる少なくとも一つの単量体が与える繰り返し単位を含む共重合体や、グラフト重合体などのポリマーが挙げられる。中でもビニルピロリドンと酢酸ビニルの単量体が与える繰り返し単位を含む共重合体は、生体適合性に優れているので特に好適に用いることができる。ビニルピロリドンの単量体が与える繰り返し単位が共重合体中で占める割合が高すぎると、除去対象物質の吸着能低下は抑制されるが、血小板等の血液凝固系物質の付着抑制効果が得られない。逆にビニルピロリドンの単量体が与える繰り返し単位が共重合体中で占める割合が低すぎると、水への溶解性が低くなり、基材表面に均一にコーティングできない。血液凝固系物質の付着抑制と除去対象物質の吸着能維持を両立させるためには、最適な組成比の共重合体を用いることがよい。すなわち、ビニルピロリドンの単量体が与える繰り返し単位が共重合体中で占める割合は、0.3以上が好ましく、0.35以上がより好ましく、一方で0.7以下が好ましく、0.65以下がより好ましい。ビニルピロリドンの単量体が与える繰り返し単位が共重合体中で占める割合が1の場合、血液凝固系物質の付着抑制性とβ−マイクログロブリンの吸着除去性能を両立することができないため、適さない。
親水性共重合体の分子量が小さすぎると、分子運動における分子鎖の可動領域が小さく親水性が十分に得られない。また低分子量高分子は、ストークス半径が小さいため基材の細孔内にまで入り込み、目的のタンパク質の吸着サイトまで修飾してしまうため、タンパク質を効率的に吸着することができない。親水性共重合体の分子量は1000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、10000以上がさらに好ましい。逆に分子量が大きすぎると分子鎖どうしの絡み合いや、放射線照射時における分子間の架橋反応が進行してしまい分子鎖の可動領域が小さくなるので、親水性共重合体の分子量は200万以下が好ましく、50万以下がより好ましく、10万以下がさらに好ましい。
基材表面の親水性共重合体の量は、多すぎると除去対象タンパク質を十分に吸着除去することができず、少なすぎると血小板等の血液凝固系物質が付着してしまう。表面の親水性共重合体の量は、0.01mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、1mg/m以上が更に好ましく、一方で10000mg/m以下が好ましく、1000mg/m以下がより好ましく、100mg/m以下が更に好ましい。
吸着材料表面に存在する親水性共重合体の量を測定する方法として、X線電子分光法(ESCA)が用いられる。測定サンプルを超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させ、測定に供する。具体的な条件および好ましい測定装置としては、以下の通り。
測定装置: Quantera SXM
励起X線: monochromatic Al Kα1,2 線(1486.6eV)
X線径: 20μm
光電子脱出角度: 45 °(試料表面に対する検出器の傾き)
窒素原子量としては、N1sの400eV付近に現れるピークの面積から、全元素(水素原子は検出できないので、水素原子以外の全元素)に対する該ピーク面積の割合を算出し、窒素原子量(原子数%)を求める。
基材表面の親水性共重合体の量は、多すぎると除去対象タンパク質の吸着能を維持することができず、少なすぎると血液凝固系物質の付着抑制効果が十分に得られない。窒素原子を含有する親水性共重合体を用いる場合には、ESCAによって検出される表面の全原子に対する窒素原子の割合は0.1(原子数%)以上であることが好ましい。一方で、8(原子数%)以下であることが好ましく、5(原子数%)以下であることがより好ましく、3(原子数%)以下であることが更に好ましく、2(原子数%)以下であることが更に好ましく、1(原子数%)以下であることが更に好ましい。
親水性共重合体は吸着材料表面に存在することで血液凝固系物質の付着を抑制する一方で、吸着材料内部に存在する量が多すぎると、吸着サイトをブロックするため除去対象物質の吸着が抑制されるため好ましくない。吸着材料表面よりも内部の方が、ネットワーク構造により形成される表面積が広いため、吸着材料全体の親水性共重合体の量を測定することにより、表面を無視でき、内部に存在する量を測定することができる。したがって吸着材料全体に存在する親水性共重合体の量が多すぎると内部にも親水性共重合体が多く存在することになり、除去対象物質の吸着量が低下する。吸着材料全体に存在する親水性共重合体の量が少なすぎると吸着材料表面の親水性共重合体の量が少なくなり、血液凝固系物質の付着を抑制できない。吸着材料全体に存在する親水性共重合体の量は、元素分析によって知ることができる。例えば窒素原子含有ポリマーの存在量は、元素分析によって検出される全元素に対する窒素原子の濃度が0.0001重量%以上が好ましく、0.001重量%以上がより好ましく、一方1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下がより好ましく、0.05重量%以下が更に好ましい。
本発明において、放射線としてはα線、β線、γ線、X線、紫外線、電子線などが用いられる。また、血液浄化器などの医療用具は滅菌することが必要であり、近年は残留毒性の少なさや簡便さの点から、γ線や電子線を用いた放射線滅菌法が多用されている。さらには、本発明の方法を医療用基材に用いるとき、基材の滅菌と、血液適合性向上のための改質が同時に達成できることが期待でき、好ましい。また、親水性基含有共重合体等で基材表面をコーティング等する場合に、これらのポリマーの基材表面からの溶出が懸念されるが、放射線照射により架橋され不溶化し、溶出を低減する効果が考えられ、好ましい。また、特に血液浄化器は、吸着材料が水を抱液した状態である、いわゆるウェットタイプが主流となっているため、この水を親水性共重合体溶液を含む水溶液に変えるだけで、本発明の方法が簡便に使用できるため、好ましい。
基材の滅菌と改質を同時に行う場合は、15kGy以上の吸収線量で放射線の照射を行うことが好ましい。血液浄化用モジュール等をγ線で滅菌するには15kGy以上の吸収線量が効果的なためである。しかしながら、照射線量が100kGyを超えると、親水性共重合体の3次元架橋や崩壊などが起きるため、血液適合性が低下する。
本発明においては、基材をビニルピロリドン含有ポリマー等の親水性共重合体を含む水溶液と接触した後、放射線照射することにより吸着材料を製造することができる。接触させる方法としては、親水性共重合体を含む水溶液に基材を浸漬させる方法が好ましい。
また、吸着材料のみでなく、血液回路等を含む複数の構成部材からなるシステムについて、親水性共重合体を含む水溶液を通して接触させた状態で該システムの複数の部材にわたって同時に放射線照射することにより、一度に改質することもできる。特に、該複数の部材が、それぞれ異なる素材からなる場合は、効果が大きい。これは、これまでの改質方法では、基材に対する依存性が大きいので、異なる素材からなる複数の基材を同時に改質することは困難であるのに対する特徴といえる。
ここで、複数の構成部材から構成されているシステムとしては、ポート部、吸着材料および回路を含む血液浄化システムのようなものが挙げられる。例えば、外毒素吸着カラムなどの血液浄化器は、カテーテル、血液回路、チャンバー、モジュールの入口および出口のポート部、吸着材料など異なる素材からなる複数の部材から構成されている。本発明ではこれらの全てもしくは一部を同時に改質することが可能である。一例としては、血液浄化システムの場合は、モジュールに、モジュールの入口および出口のポート部および血液回路を接続し、血液回路から親水性ポリマー水溶液を通液して、システム全体に充填した状態で放射線照射を行えばよい。
血液浄化器の製造方法としては、その用途により、種々の方法があるが、大まかな工程としては、血液浄化用の吸着材料の製造工程と、その吸着材料をモジュールに組み込むという工程にわけることができる。
以下に繊維内蔵カラムの製造方法についての一例を示す。
ポリマーを溶媒に溶かした紡糸原液を調整する。本発明において好ましい原液濃度は30重量%以下であり、より好ましくは22重量%以下で用いられる。繊維は、これらの液体等を円筒型口金から吐出し、一定距離の乾式空中部分を通した後に凝固浴に通す事により得られる。温度変化によってゲル化をおこすような原液系の場合には、乾式部分において冷風を吹き付け、ゲル化を促進させることができる。繊維径は紡糸原液の吐出量によりコントロールすることができる。
口金から吐出された紡糸原液は凝固浴にて糸形状に凝固される。凝固浴は通常、水やアルコールなどの凝固剤、または紡糸原液を構成している溶媒との混合物からなる。通常は水を用いることができる。本発明においては、凝固浴の温度をコントロールすることにより、抱液率を変化させることができる。抱液率は紡糸原液の種類等によって影響を受け得るために、凝固浴の温度も適宜選択されるものであるが、一般に凝固浴温度を高くすることにより、抱液率を高くすることが出来る。この機序は正確には明らかではないが、原液からの脱溶媒と凝固収縮との競争反応で、高温浴では脱溶媒が速く、収縮する前に凝固固定されるからではないかと考えられる。しかしながら、凝固浴温度が高くなりすぎると、孔径が大きくなりすぎ、目的のタンパク質の吸着に適さないため、凝固浴温度は20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上が更に好ましい。一方で、80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましく、50℃以下が更に好ましい。
次いで、凝固した繊維に付着している溶媒を洗浄する工程を通過させる。繊維を洗浄する手段は特に限定されないが、多段の水を張った浴(水洗浴という)中に繊維を通過させる方法が好んで用いられる。水洗浴中の水の温度は、繊維を構成する重合体の性質に応じて決めればよい。ポリメチルメタクリレートを含む繊維である場合、30〜50℃が用いられる。
また、繊維は水洗浴の後に孔径を保持するために、保湿成分を付与する工程を入れても良い。ここでいう保湿成分とは、繊維の湿度を保つことが可能な成分、または、空気中にて、繊維の湿度低下を防止することが可能な成分をいう。保湿成分の代表例としてはグリセリンやその水溶液などがある。
水洗や保湿成分付与の終わった後、収縮性の高い繊維の寸法安定性を高めるため、加熱した保湿成分の水溶液が満たされた浴(熱処理浴という)の工程を通過させることも可能である。熱処理浴には加熱した保湿成分の水溶液が満たされており、繊維がこの熱処理浴を通過することで、熱的な作用を受けて、収縮し、以後の工程で収縮しにくくなり、繊維構造を安定させることが出来る。このときの熱処理温度は、繊維の素材によって異なるが、ポリメチルメタクリレートを含む繊維の場合には60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。一方で、100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましく、90℃以下が更に好ましい。
得られた繊維を用いて血液浄化器とする手段は特に限定されないが、一例を示すと次の通りである。
まず、繊維を必要本数を束ねた後、血液浄化器用カラムの筒部分となるプラスチックケースに入れる。その後両端にはみ出した糸束を切断し、両端部をメッシュで固定、ヘッダーキャップと呼ばれる血液入り口、出口ポートを取り付けて血液浄化器用のカラムを得ることができる。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
・ カラムの作成方法
(製造例1)
重量平均分子量が40万のsyn(シンジオタクティック)−ポリメチルメタクリレートを31.7重量部、重量平均分子量が140万のsyn−ポリメチルメタクリレートを31.7重量部、重量平均分子量が50万のiso(アイソタクティック)−ポリメチルメタクリレートを16.7重量部、パラスチレンスルホン酸ソーダを1.5mol%含む分子量30万のポリメチルメタクリレート共重合体20重量部をジメチルスルホキシド376重量部と混合し、110℃で8時間撹拌し紡糸原液を調製した。
この製膜原液を円筒型口金から吐出し、空気中を380mm通過した後、水100%、温度42℃の凝固浴中に導き繊維を得た。得られた繊維の繊維径は0.12mmであった。得られた繊維をプラスチックケースに組み込み、両端部をメッシュで固定し、有効面積1.6mの繊維カラムを作成した。
(製造例2)
36島の海島複合繊維であって、島が更に芯鞘複合によりなるものを、次の成分を用いて、紡糸速度800m/分、延伸倍率3倍の製糸条件で得た。
島の芯成分;ポリプロピレン
島の鞘成分;ポリスチレン90重量%、ポリプロピレン10重量%
海成分;5−ナトリウムスルホイソフタル酸を3重量%共重合したポリエチレンテレフタレート
複合比率(重量比率);芯:鞘:海=40:40:20
この繊維70重量%と、直径25μmのポリプロピレン繊維30重量%からなるシート状物を作製した後、開孔部が3mm角のポリエステル製ネット(厚み0.4mm、単糸径0.3mm、目付30g/m)をこれらの間に挟み、ニードルパンチすることによって三層構造の吸着担体を得た。次に、この不織布を90℃水酸化ナトリウム水溶液(3重量%)で処理して上記海成分を溶解することによって、芯鞘繊維の直径が4μmで、嵩密度が0.05g/cm(総目付210g/m)の不織布を作製した。
(製造例3)
50重量部の海成分(46重量比のPStと4重量比のPPの混合物)と50重量部の島成分(PP)とからなる海島型複合繊維(厚さ:2.6デニール、島の数:16;米国特許第4661260号明細書)を筒網状にした編地を作製した。
(製造例4)
ポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)16重量部、ポリビニルピロリド
ン(インターナショナルスペシャルプロダクツ社;以下ISP社と略す)K30 2重量
部、ポリビニルピロリドン(ISP社K90)2重量部をジメチルアセトアミド79部、
水1部を加熱溶解し、紡糸原液を調製した。
この製膜原液を円筒型口金から吐出した。吐出された製膜原液は、乾式長380mm、温度30℃、相対湿度78%RHのドライゾーン雰囲気を通過した後、水100%、温度40℃の凝固浴に導かれ、60〜75℃で90秒の水洗工程、130℃で2分の乾燥工程を通過させ、160℃のクリンプ工程を経て得られた繊維を巻き取り束とした。得られた繊維の繊維径は0.12mmであった。得られた繊維を用いて、両端部をメッシュで固定し、有効膜面積1.6mの繊維カラムを作成した。
(製造例5)
製造例1,2、比較製造例1−4と同様の方法で紡糸原液を調製した。
この製膜原液を2重管中空糸膜用口金から吐出した。内部注入気体として乾燥窒素を内側の管より吐出した。空気中を380mm通過した後、水100%の凝固浴中に導き中空糸を得た。得られた中空糸の内径は0.2mm、膜厚は0.03mmであった。得られた中空糸をプラスチックケースに組み込み、両端部をメッシュで固定し、有効膜面積1.6mの中空糸カラムを作成した。
2.用いた測定方法
(1)X線電子分光法(ESCA)測定
以下の実施例1,2、比較例4−8で作成したカラムについて測定を行った。繊維表面は3点測定した。中空糸膜の場合は片刃で半円筒状に削ぎ切り、中空糸膜の内表面を3点測定した。測定サンプルは、超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させた後、測定に供した。測定装置、条件としては、以下の通り。
測定装置: Quantera SXM
励起X線: monochromatic Al Kα1,2 線(1486.6eV)
X線径: 20μm
光電子脱出角度: 45 °(試料表面に対する検出器の傾き)
窒素原子量としては、N1sの400eV付近に現れるピークの面積から、全原子(水素原子は検出できないので、水素原子以外の全原子)に対する該ピーク面積の割合を算出し、窒素原子量(原子数%)を求めた。
(2)元素分析
以下の実施例1,2、比較例4−8で作成したカラムについて測定を行った。吸着材料3gを凍結乾燥させ、全自動元素分析装置varioEL(エレメンタール社)にて、試料分解路950℃、還元炉500℃、ヘリウム流量200ml/min、酸素流量20〜25ml/minで測定を行った。検出された全原子に対する窒素原子の割合を求めた。
(3)表面開孔率の測定
走査型電子顕微鏡(SEM)で吸着材料の表面を観察し、画像解析を行った。SEMで倍率50,000倍で観察し、640×442pixelsの画像を、画像処理ソフト(Matrox Inspector2.2、CRI JOLANTA製)にて二値化処理し、孔が黒、構造ポリマー部分が白となった画像を得た。次式から表面開孔率を算出した。
表面開孔率[%]=孔の総面積/総面積
各表面の5箇所で同様の測定を行い、その平均値を求めた。
(4)断面の孔径の測定
表面開孔率の測定と同様、SEMを用いた倍率50,000倍で観察する方法で、上述した方法により吸着材料断面の中心部分および表面近傍を観察し、画像解析を行った。上述の通り、孔を真円と仮定し、孔の面積から次式より孔径を算出した。
孔径[nm]=(孔の面積[nm]/π)1/2
吸着材料断面の中心および表面近傍でそれぞれ5箇所で測定を行い、その平均値を求めた。
(5)細孔径の測定
TA Instruments社製DSC Q100で吸着材料を−55℃に急冷し、5℃まで0.3℃/minで昇温させて測定し、得られた曲線のピークトップから細孔の一次平均半径を次式から算出した。
細孔径[nm]=(33.30−0.3181×融点降下量[℃])/融点降下量[℃]Kazuhiko Ishikiriyama et al. ; JOURNAL OF COLLOID AND INTERFACE SCIENCE, 171, 103-111, (1995)
(6)ヒト血小板付着試験
18mmφのポリスチレン製の円形板に両面テープを貼り付け、両面テープ上に繊維および中空糸膜を固定した。中空糸膜の試験の場合には、貼り付けた中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、中空糸膜の内表面を露出させた。筒状に切ったFalcon(登録商標)チューブ(18mmφ、No.2051)に該円形板を、中空糸膜を貼り付けた面が、円筒内部にくるように取り付け、パラフィルムで隙間を埋めた。この円筒管内を生理食塩水で洗浄後、生理食塩水で満たした。健常な人間の静脈血を採血後、直ちにヘパリンを50U/mlになるように添加した。前記円筒管内の生理食塩水を廃棄後、前記血液を、採血後10分以内に、円筒管内に1.0ml入れて37℃にて4時間振盪させた。その後、円筒管内を10mlの生理食塩水で洗浄し、2.5%グルタルアルデヒド生理食塩水で血液成分の固定を行い、20mlの蒸留水にて洗浄した。吸着材料を固定した円形板を常温0.5Torrにて10時間減圧乾燥し、走査型電子顕微鏡の試料台に両面テープで貼り付けた。その後、スパッタリングにより、Pt−Pdの薄膜を吸着材料表面に形成させて、試料とした。吸着材料表面をフィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(日立社製S800)にて、倍率1500倍で試料の内表面を観察し、1視野中(4.3×10μm)の血小板付着数を数えた。異なる10視野での血小板付着数の平均値を血小板付着数(個/4.3×10μm)とした。中空糸の長手方向における端の部分には血液溜まりができやすいことから、中央付近を観察した。
(7)カラムによるβ−マイクログロブリン吸着量測定
カラムの入口と出口をシリコーンチューブで繋ぎ、入口から生理食塩水を流量200mL/minで5分間流し、繊維または中空糸およびカラム内部を洗浄した。生物学的製剤基準血液保存液A液を用いて抗凝固化した牛血漿溶液をタンパク濃度が6.5±0.5g/dL、β−マイクログロブリン濃度が1mg/Lとなるように調整した。前記牛血漿1Lをカラムの入口から出口に流し、5分間、閉鎖循環した。循環前の牛血漿中のβ−マイクログロブリン濃度および5分循環後の牛血漿中のβ−マイクログロブリン濃度をラテックス凝集免疫測定法を用いて測定し、次式からβ−マイクログロブリン吸着量を算出した。
β−マイクログロブリン吸着量[μg/cm
=(循環前の牛血漿中のβ−マイクログロブリン濃度[μg/mL]−循環後の牛血漿中のβ−マイクログロブリン濃度[μg/mL])×1000[mL]/(1.6×10[cm])
(8)β−マイクログロブリンクリアランス測定
β−マイクログロブリンのクリアランス測定は日本透析医学会の定める方法(血液浄化器の性能評価法、透析会誌29(8)1231−1245、1996)に従い、流量200mL/minで実施した。比較例6では中空糸の内側のみに流して試験を行った。
(9)バッチ試験によるβ−マイクログロブリン吸着率測定
生物学的製剤基準血液保存液A液を用いて抗凝固化した牛血漿溶液をタンパク濃度が6.5±0.5g/dL、β−マイクログロブリン濃度が10mg/Lとなるように調整した。容積5mLのガラス製の容器に前記牛血漿1.2mLおよび吸着材料を加え、37℃で2時間、振とうした。吸着材料の形状が繊維の場合には、5cmに切った繊維を49本用いた。それ以外の形状を持つ吸着材料の量は、後述する。振とう前の牛血漿中のβ−マイクログロブリン濃度および2時間振とう後の牛血漿中のβ−マイクログロブリン濃度をラテックス凝集免疫測定法を用いて測定し、次式からβ−マイクログロブリン吸着率を算出した。
β−マイクログロブリン吸着率[%]
=(振とう前の牛血漿中のβ−マイクログロブリン濃度[μg/mL]−振とう後の牛血漿中のβ−マイクログロブリン濃度[μg/mL])/振とう前の牛血漿中のβ−マイクログロブリン濃度[μg/mL]×100
(実施例1)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製“コリドンVA64”)0.001重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ−マイクログロブリン吸着試験、β−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、血小板付着抑制性とβ−マイクログロブリンの吸着除去性能が高かった。低濃度の上記親水性ポリマー溶液を用いて表面をグラフトしているが、一方で、窒素原子量の測定結果に見られるように、吸着材料表面の親水性ポリマー量が多すぎることがないため、上記ポリマーグラフトを行わない比較例4に比べβ−マイクログロブリンの吸着能を低下させずに維持できた。
(実施例2)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製“コリドンVA64”)0.1重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ−マイクログロブリン吸着試験、β−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、血小板付着抑制性とβ−マイクログロブリンの吸着除去性能が高かった。実施例1に比べ、高濃度の親水性ポリマー溶液を用いたため、吸着材料表面の親水性ポリマー量が多いが、β−マイクログロブリンの吸着能を大きく低下させるほどではない。
(実施例3)
製造例2で製造したポリスチレン(PSt)およびポリプロピレン(PP)を含む不織布を直径6mmの円形に切りとり、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製“コリドンVA64”)0.1重量%水溶液2mLに浸漬し、γ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該不織布について、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、バッチ試験によるβ−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、血小板付着抑制性とβ−マイクログロブリンの吸着除去性能が高かった。吸着材料表面の親水性ポリマー量が最適な範囲であるため、上記ポリマーグラフトを行わない下記比較例9に比べ、十分な血小板付着抑制性が得られつつ、β−マイクログロブリンの吸着能を低下させずに維持できた。
(実施例4)
製造例3で製造したポリスチレン(PSt)およびポリプロピレン(PP)を含む編物を直径6mmの円形に切りとったもの3枚を、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製“コリドンVA64”)0.1重量%水溶液2mLに浸漬し、γ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該編物について、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、バッチ試験によるβ−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、血小板付着抑制性とβ−マイクログロブリンの吸着除去性能が高かった。吸着材料表面の親水性ポリマー量が最適な範囲であるため、上記ポリマーグラフトを行わない下記比較例10に比べ、十分な血小板付着抑制性が得られつつ、β−マイクログロブリンの吸着能を低下させずに維持できた。
(実施例5)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(7/3)共重合体(BASF社製“コリドンVA73”)0.5重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ−マイクログロブリン吸着試験、β−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、実施例1に比べ血小板付着数が多く、β−マイクログロブリンの吸着除去性能は高かった。実施例1に比べ、ビニルピロリドンの単量体が与える繰り返し単位が親水性ポリマー中で占める割合が高いため、血小板付着抑制効果は低かった一方で、β−マイクログロブリンの吸着能の低下が抑制されたと考えられる。
(比較例1)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ポリビニルピロリドン(ISP社製“K90”)0.001重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ−マイクログロブリン吸着試験、β−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、ポリマーグラフトを行わない比較例4に比べβ−マイクログロブリンの吸着能を大きく低下させずに維持できたが、血小板付着抑制性は得られなかった。
(比較例2)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ポリエチレングリコール(日本油脂社製“マクロゴール6000”)0.001重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ−マイクログロブリン吸着試験、β−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、ポリマーグラフトを行わない比較例4に比べβ−マイクログロブリンの吸着能を大きく低下させずに維持できたが、血小板付着抑制性は得られなかった。
(比較例3)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ポリエチレングリコール(日本油脂社製“マクロゴール6000”)0.075重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ−マイクログロブリン吸着試験、β−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、比較例2よりも高濃度の親水性ポリマー溶液を用い、吸着材料表面の親水性ポリマー量が多いため、血小板付着抑制性が高かったが、β−マイクログロブリンの吸着までもが抑制された。
(比較例4)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、水を900mL通液し、カラム内を水で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ−マイクログロブリン吸着試験、β−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、吸着材料表面および吸着材料全体の窒素原子は検出されなかった。また、β−マイクログロブリンの吸着除去性能が高いが、血小板付着抑制性は得られなかった。
(比較例5)
製造例4で製造したポリスルホン(PSf)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製“コリドンVA64”)0.001重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、血小板付着試験、カラムによるβ−マイクログロブリン吸着試験、β−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、血小板付着抑制性は高いが、β−マイクログロブリンの吸着除去性能は低かった。吸着材料に含まれる窒素原子量が多いこと、基材がポリスルホンであること、吸着材料断面の表面近傍の孔径に対する中心部分の孔径の比が大きく細孔のサイズが均一でないことから、高いタンパク質吸着能が得られなかったと考えられる。
(比較例6)
製造例5で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む中空糸カラムの入口側から出口側に、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製“コリドンVA64”)0.001重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該カラムについて、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ−マイクログロブリン吸着試験、β−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、血小板付着抑制性は高かったが、β−マイクログロブリンの吸着除去性能は低かった。形状が中空糸である吸着材料を用いたため、中空糸の外側よりも内側での血液の流速が遅いため、中空糸内側が効率的に血液に接触せずβ−マイクログロブリンの効率的な吸着除去が行えなかったと考えられる。
(比較例7)
製造例1で製造したポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む繊維カラムの入口側から出口側に、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製“コリドンVA64”)0.5重量%水溶液を900mL通液し、カラム内を該水溶液で充填した。この後、該カラムをγ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。さらに、この共重合体水溶液の通液とγ線照射を、計3回繰り返して行った。該カラムについて、ESCA測定、元素分析、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、カラムによるβ−マイクログロブリン吸着試験、β−マイクログロブリンクリアランス測定、バッチ試験によるβ−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、血小板付着抑制性は高かったが、β−マイクログロブリンの吸着除去性能は低かった。実施例1に比べ、高濃度の親水性ポリマー溶液を用い、またポリマー溶液の通液、γ線照射を3回行ったことから、吸着材料表面の親水性ポリマー量が多すぎたため、β−マイクログロブリンの吸着能が低下したと考えられる。
(比較例8)
製造例2で製造したポリスチレン(PSt)およびポリプロピレン(PP)を含む不織布を直径6mmの円形に切りとり、水2mLに浸漬し、γ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該不織布について、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、バッチ試験によるβ−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、β−マイクログロブリンの吸着除去性能が高いが、血小板付着抑制性は得られなかった。
(比較例9)
製造例3で製造したポリスチレン(PSt)およびポリプロピレン(PP)を含む編物を直径6mmの円形に切りとったもの3枚を、水2mLに浸漬し、γ線照射した。γ線吸収線量は25kGyであった。該編物について、表面開孔率測定、細孔径測定、断面の孔径の測定、血小板付着試験、バッチ試験によるβ−マイクログロブリン吸着率測定を行った。その結果、表1に示された通りであった。すなわち、β−マイクログロブリンの吸着除去性能が高いが、血小板付着抑制性は得られなかった。
Figure 0006291970

Claims (11)

  1. 以下の項目を満たすことを特徴とするタンパク質吸着材料。
    (a)X線電子分光法(ESCA)により検出される、表面の全原子に対する窒素原子の割合が、0.1(原子数%)以上、8(原子数%)以下
    (b)β−マイクログロブリン吸着量0.05μg/cm以上
    (c)表面の血小板付着数が10(個/4.3×10μm)以下
    (d)表面近傍の孔径に対する、中心部の孔径の比が0.5以上、1.3以下である
    (e)基材がポリメチルメタクリレート、または、ポリスチレンおよびポリプロピレンを含む
    (f)前記ESCAにより検出される表面の窒素原子、および/または、元素分析により検出される、タンパク質吸着材料を構成する窒素原子が、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体由来の窒素原子を含む
  2. 前記元素分析により検出される、タンパク質吸着材料を構成する全原子に対する窒素原子の濃度が、0.0001重量%以上、1重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質吸着材料。
  3. 前記共重合体が、さらにカルボン酸ビニルエステル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、から選ばれる少なくとも一つの単量体が与える繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のタンパク質吸着材料。
  4. 比表面積が0.0001μm/μm以上、10μm/μm以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のタンパク質吸着材料。
  5. 表面開孔率が0.1%以上、95%以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のタンパク質吸着材料。
  6. 細孔の一次平均半径が1nm以上、200nm以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のタンパク質吸着材料。
  7. 基材がポリメチルメタクリレートを含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のタンパク質吸着材料。
  8. 形状が繊維、不織布、織物、編物、粒子、フィルムおよび成形品から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のタンパク質吸着材料。
  9. 前記ポリメチルメタクリレートがステレオコンプレックス構造を構成していることを特徴とする請求項またはに記載のタンパク質吸着材料。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載のタンパク質吸着材料が内蔵されてなることを特徴とする血液浄化器。
  11. 請求項1〜のいずれかに記載のタンパク質吸着材料を製造する方法であって、
    前記基材を、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体溶液に接触させ、放射線照射して得られるタンパク質吸着材料の製造方法。
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