JP6290541B2 - 塩化ビニル系樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、塩化ビニル系樹脂組成物に関し、詳しくは熱膨張性マイクロカプセルを含有し、熱溶融成形することにより熱膨張性マイクロカプセルを発泡させて塩化ビニル系樹脂発泡体を得ることができる塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
従来より、熱可塑性樹脂発泡体の製造は、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等の熱分解型発泡剤を熱分解する化学発泡法、ブタン、ヘキサン、窒素、炭酸ガス等のガスを注入する物理発泡法等が採用されてきた。
しかしながら、上記熱可塑性樹脂発泡体の製造においては、熱可塑性樹脂中で熱分解されたガス、気化したガス又は注入されたガスにより発泡体が形成されるが、ガスの圧力変動により気泡の大きさが変化したり、ガスが気泡から外部に逃げ出したりして、均一な気泡を有する発泡体を得にくいという欠点があった。
上記欠点を解消するために、最近、熱膨張性マイクロカプセルを使用した発泡体の製造方法、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、エチレンー酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂原料に熱膨張性マイクロカプセルを混合し、押出成形または射出成形による混練溶融熱によって当該熱膨張性マイクロカプセルを膨張させて成形する熱可塑性樹脂の発泡成形方法(例えば、特許文献1参照。)、(A)1,2−ポリブタジエン等の架橋可能な熱可塑性エラストマー、(B)熱膨張性マイクロカプセル、および(C)架橋剤を含有する架橋発泡用熱可塑性エラストマー組成物を成形型内に入れて加熱し、型形状を維持しながら上記組成物が占める容積を増加させて、型形状に合致する外形で架橋発泡された成形品を得る成形品の製造方法(例えば、特許文献2参照。)等が提案されており、得られた発泡体(成形品)が自動車内装材,靴底材料、家具雑貨材料、建材、スポーツ器具・プロテクター等に使用できると記載されている。
上記熱膨張性マイクロカプセルを使用した発泡体の製造方法では、均一な気泡が発泡体中に均一に分散しており、所定の発泡倍率を有する発泡体を製造することが可能である。
一方、靴底材料は、人が靴を履き歩く際に伸縮すると共に地面に接触し、履いた人の荷重がかかるのであるから、軽量で硬度が部位によらず均一であって且つ大きく、機械的強度(特に、引張強度)、耐摩耗性が優れえていると共に適度の柔らかさ(クッション性)を有していることが要求される。
この靴底材料として、塩化ビニル樹脂は硬くて機械的強度が優れているので好ましいが、高級感のある風合い、適度の伸縮性及び柔らかさ(クッション性)を付与するには多量の可塑剤を混合する必要があり匂いがきつく衛生上不都合であった。又、経時的に可塑剤が移行することで、柔らかさが損なわれる欠点があった。更に、熱可塑性エラストマーやエチレン−酢酸ビニル共重合体では柔らかすぎて機械的強度が低く、簡単に変形したり磨耗してしまうという欠点があった。
特開平10−152575号公報 特開2003−292667号公報
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、塩化ビニル系樹脂を主体とし、多量の可塑剤を含まなくても、容易に発泡体を成形することができ、成形された発泡体は軽量で、部位によらず均一な硬度を示し、機械的強度(特に、引張強度)、耐摩耗性等が優れていると共に高級感のある風合い、適度の伸縮性及び柔らかさ(クッション性)を長期にわたって有している塩化ビニル系樹脂組成物及びその発泡成形体を提供することにある。
即ち、本発明は、
[1]塩化ビニル系モノマー75〜50重量%とエチレン―酢酸ビニル共重合体25〜50重量%を水懸濁重合して得られた樹脂組成物100重量部及び熱膨張性マイクロカプセル1〜10重量部からなることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物、
[2]エチレン―酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量が10〜60重量%であることを特徴とする上記[1]記載の塩化ビニル系樹脂組成物、
[3]上記[1]又は[2]記載の塩化ビニル系樹脂組成物が加熱溶融により成形され、熱膨張性マイクロカプセルが発泡されていることを特徴とする発泡成形体、及び、
[4]発泡成形体が靴底材料であることを特徴とする上記[3]記載の発泡成形体
に関する。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物の構成は上述の通りであり、多量の可塑剤を含まなくても、発泡成形体を容易に加熱溶融成形することができ、加熱溶融成形された発泡成形体は軽量で、部位によらず均一な硬度を示し、機械的強度(特に、引張強度)、耐摩耗性等が優れていると共に、高級感のある風合い、適度の伸縮性及び柔らかさ(クッション性)を長期にわたって有しており、靴底材料、特に、靴の踵や靴底(靴の地面に接触する靴底)として好適に使用できる。
請求項1記載の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系モノマー75〜50重量%とエチレン―酢酸ビニル共重合体25〜50重量%を水懸濁重合して得られた樹脂組成物100重量部及び熱膨張性マイクロカプセル1〜10重量部からなることを特徴とする。
上記樹脂組成物は、塩化ビニル系モノマー75〜50重量%とエチレン―酢酸ビニル共重合体25〜50重量%を水懸濁重合して得られた樹脂組成物であり、塩化ビニル系樹脂とエチレン―酢酸ビニル共重合体塩化ビニルグラフト重合体の混合物である。
上記塩化ビニル系モノマーは、塩化ビニルモノマー単独が好ましいが、塩化ビニルモノマーを50重量%以上含み、塩化ビニルモノマーと共重合可能な他のモノマーを併用してもよく、塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン;無水マレイン酸;アクリロニトリル;スチレン;塩化ビニリデン等が挙げられる。
上記エチレン―酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量は、少なくなると塩化ビニル系樹脂との相溶性が悪化して充分な可塑化効果が得られなくなり、多くなると、粘着性が増加して成形性が著しく悪化するので、10〜60重量%が好ましく、より好ましくは20〜50重量%である。
上記水懸濁重合は、従来公知の任意の水懸濁重合が採用されてよく、例えば、密閉可能な、攪拌機付の反応容器内に、上記エチレン―酢酸ビニル共重合体粉末、塩化ビニル系モノマー、水及び分散剤を添加し、エチレン−酢酸ビニル共重合体を塩化ビニル系モノマーに溶解させ、水懸濁状態にした後、重合開始剤を添加し、所定温度に加熱して重合を開始し、重合反応を進め、反応終了後、残存塩化ビニル系モノマーを反応容器外に排出し、得られたスラリーを脱水機で脱水すればよく、このようにして水懸濁重合することにより塩化ビニル系樹脂とエチレン―酢酸ビニル共重合体塩化ビニルグラフト重合体が得られる。
上記分散剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール及びその部分ケン化物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、デンプン、無水マレイン酸−スチレン共重合体等が挙げられる。
上記重合開始剤としては、例えば、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート等の有機パーオキサイド類;2,2' −アゾビスイソブチロニトリル、2,2' −アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。又、必要に応じて、pH調整剤、酸化防止剤、連鎖移動剤等が添加されても良い。
尚、この際にエチレン―酢酸ビニル共重合体塩化ビニルグラフト重合体と共に得られる塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、小さくなると機械的強度が低下し、大きくなると溶融成形性が低下するので、一般に600〜2000であり、好ましくは800〜1200である。従って、平均重合度がこのようになるように重合条件を設定することが好ましく、重合開始温度及び重合温度は40〜80℃が好ましい。又、塩化ビニル系樹脂の粒子径は小さくなると取り扱いが難しくなり、大きくなると熱溶融に長時間かかるので、平均粒子径は100〜200μmが好ましい。
上記樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂の含有量が少なくなると樹脂組成物を溶融成形して得られた成形体の硬度、引張強度等が低下し、逆に多くなると耐衝撃性、伸縮性等が低下し、これらの性能を付与するには多量の可塑剤を添加することが必要になるので、塩化ビニル系樹脂70〜20重量%とエチレン―酢酸ビニル共重合体塩化ビニルグラフト重合体30〜80重量部よりなるのが好ましい。
上記エチレン―酢酸ビニル共重合体塩化ビニルグラフト重合体は、エチレン―酢酸ビニル共重合体に塩化ビニル単量体がグラフト重合されたグラフト重合体である。
上記エチレン―酢酸ビニル共重合体塩化ビニルグラフト重合体のエチレン―酢酸ビニル共重合体含量は、少なくなると耐衝撃性、伸縮性等が低下し、逆に多くなると塩化ビニル系樹脂中の分散が難しく成形性が著しく悪化するので、30〜80重量%が好ましく、より好ましくは40〜70重量%である。
上記熱膨張性マイクロカプセルとは、コアシェル構造を有する中空球体であって、シェルは熱可塑性樹脂、コアは加熱することにより膨張する液体又は気体である。この熱膨張性マイクロカプセルを加熱すると、中空球体を構成する熱可塑性樹脂が軟化し、内包された液体又は気体が気化・膨張することにより、中空球体は膨張し、冷却されると膨張された形状を保持することにより発泡剤としての作用をなすものである。
上記熱可塑性樹脂としては、上記樹脂組成物を溶融成形する際に軟化するが、溶融してしまわない程度の融点を有する樹脂であることが必要であり、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン−メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニリデン−エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルメタクリレート共重合体などが挙げられる。
上記液体及び気体としては、例えば、プロパン、プロピレン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン等が挙げられる。
熱膨張性マイクロカプセルの平均粒径は、一般に、10〜50μmであり、好ましくは15〜40μmである。又、その発泡倍率は、一般に20〜100倍であり、好ましくは30〜80倍である。
上記熱膨張性マイクロカプセルは市販されており、例えば、積水化学社製アドバンセルEHM301、EHM302、EHM303、EM304、EHM401等が挙げられる。
熱膨張性マイクロカプセルの添加量は、少なくなると発泡倍率が低い発泡成形体しか得られないので軽量化が図れず、逆に多くなると発泡倍率が大きくなり、均一な発泡成形体が得られにくくなると共に、得られた発泡成形体の機械的強度が低下するので、上記樹脂組成物100重量部に対し1〜10重量部である。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、上記塩化ビニル系モノマー75〜50重量%とエチレン―酢酸ビニル共重合体25〜50重量%を水懸濁重合して得られた樹脂組成物を主体とする塩化ビニル系樹脂組成物であり、加熱溶融により成形されるのであるから、得られる発泡成形体に高級感のある風合い、伸縮性、柔らかさ(クッション性)等を付与するために可塑剤が添加されるのが好ましい。
上記可塑剤としては、塩化ビニル系樹脂の成形の際に、一般に使用されている可塑剤であればよく、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジオクチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
可塑剤の添加量は、特に限定されるものではないが、少なくなると伸縮性、柔らかさ(クッション性)等を付与する効果が低下し、多くなると柔らかくなって機械的物性が低下するので、上記塩化ビニル系樹脂組成物100重量部に対し0〜40重量部が好ましく、より好ましくは0〜20重量部である。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、更に、汎用の塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂の熱溶融成形の際に一般に添加されている配合剤、例えば、熱安定剤、熱安定化助剤、加工助剤、改質剤、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、無機充填剤等が添加されてもよい。
上記熱安定剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている熱安定剤であれば、特に限定されず、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫系安定剤、ステアリン酸鉛、二塩基性亜燐酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤、バリウム−亜鉛系安定剤、バリウム−カドミウム系安定剤等が挙げられる。
上記熱安定化助剤としては、例えば、カルボン酸ナトリウム、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ豆油エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エステル等が挙げられる。
上記加工助剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている加工助剤であれば、特に限定されず、例えば、重量平均分子量10万〜200万のn−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
上記改質剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている改質剤であれば、特に限定されず、例えば、MBS樹脂、NBR樹脂、アクリル系強化剤、塩素化ポリエチレンが挙げられる。
上記滑剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている滑剤であれば、特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、1,2−ヒドロキシステアリン酸、ビスアミド、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、酸化ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックス等が挙げられる。
上記酸化防止剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている酸化防止剤であれば、特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤、芳香族アミン系酸化防止剤等が挙げられる。
上記光安定剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている光安定剤であれば、特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている紫外線吸収剤であれば、特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等が挙げられる。
上記帯電防止剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている帯電防止剤であれば、特に限定されず、例えば、カチオン系帯電防止剤、非イオン系帯電防止剤等が挙げられる。
上記顔料としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている顔料であれば、特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料、酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられる。
上記無機充填剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際に使用されている無機充填剤であれば、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等が挙げられる。
請求項3記載の発泡成形体は、上記塩化ビニル系樹脂組成物が加熱溶融により成形され、熱膨張性マイクロカプセルが発泡されていることを特徴とする。
上記発泡成形体の製造方法は、特に限定されず、従来公知の熱溶融押出法、射出成形法等で上記塩化ビニル系樹脂組成物を発泡成形することにより得られる。即ち、上記塩化ビニル系樹脂組成物を押出機や射出成形機で、140〜220℃に加熱し溶融して金型に圧入して発泡成形すればよい。
押出機や射出成形機で加熱・溶融する際に、熱膨張性マイクロカプセルの中空球体を構成する熱可塑性樹脂が軟化すると共に、内包された液体又は気体が気化・膨張することにより、中空球体は膨張し、発泡状態になり、冷却されると膨張された形状を保持することにより発泡成形体が得られる。従って、成形条件により、熱膨張性マイクロカプセルは、その中空球体を構成する熱可塑性樹脂が成形温度条件では軟化するが溶融はしない温度特性を有するもの選択する必要がある。
上記発泡成形体は、多量の可塑剤を含まなくても、軽量でどの部位をとっても硬度が均一で、機械的強度(特に、引張強度)、耐摩耗性等が優れていると共に、高級感のある風合い、適度の伸縮性及び柔らかさ(クッション性)を有しており、建築材料、事務用品、家庭用品等に好適に使用でき、靴底材料、特に、靴の踵や靴底(靴の地面に接触する靴底)として好適に使用できる。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、多量の可塑剤を含まなくても加熱溶融成形により容易に発泡成形体を得ることができ、得られた発泡成形体は、軽量でどの部位をとっても硬度が均一で、機械的強度(特に、引張強度)、耐摩耗性等が優れていると共に、高級感のある風合い、適度の伸縮性及び柔らかさ(クッション性)を有しており、建築材料、事務用品、家庭用品等に好適に使用でき、靴底材料、特に、靴の踵や靴底(靴の地面に接触する靴底)として好適に使用できる。
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜5、比較例1〜7)
攪拌機及びジャケットを備えた反応容器に、純水170重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量26重量%、MFR4、東ソー社製、「ウルトラセン634」)53.3重量部、部分けん化ポリビニルアルコール(クラレ社製、「クラレポバールL−8」)の3重量%水溶液5重量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学社製、「メトローズ60SH50」)の3重量%水溶液2. 5重量部を投入した後、真空ポンプで反応容器内の空気を排出し減圧して酸素を除去(酸素量100ppm)した。次いで、攪拌条件下で塩化ビニル100重量部を投入し、ジャケットにより70℃に温度制御して、2時間かけてエチレン−酢酸ビニル共重合体を塩化ビニルモノマーに溶解させた。その後、ジャケットにより64℃に冷却し、t−ブチルパーオキシピバレート0. 03重量部を添加し、水懸濁重合を開始した。
重合開始後7時間に、反応容器内の圧力が重合初期の圧力1.01MPaから0.80MPa(仕込んだ塩化ビニルモノマーの重合率が80%に達したことを意味する。)に低下したところで、消泡剤(東レ社製、「東レシリコンSH5510」)を加圧添加した後にジャケットに冷水を注入して冷却して、水懸濁重合を終了した。冷却後、未反応の塩化ビニルモノマーを除去し、脱水乾燥することにより塩化ビニル樹脂とエチレン―酢酸ビニル共重合体塩化ビニルグラフト重合体よりなる樹脂組成物(A) を得た。
樹脂組成物(A)中、塩化ビニル樹脂(ホモポリマー)は42重量%であり、エチレン―酢酸ビニル共重合体塩化ビニルグラフト重合体は58重量%(18重量%の塩化ビニルがエチレン−酢酸ビニルにグラフとしたことを示す。)であった。又、塩化ビニル樹脂の重合度は800であり、エチレン―酢酸ビニル共重合体塩化ビニルグラフト重合体中のエチレン―酢酸ビニル共重合体は69重量%であった。
得られた樹脂組成物(A)を過剰のジメチルホルムアミドに供給し、60℃で4時間攪拌して溶解した。溶解後、室温まで冷却し、濾別して濾過残渣としてエチレン―酢酸ビニル共重合体塩化ビニルグラフト重合体を得た。又、濾液を濃縮した後メタノールを添加して塩化ビニル樹脂を再沈回収した。得られた濾過残渣としてのエチレン―酢酸ビニル共重合体塩化ビニルグラフト重合体と再沈回収した塩化ビニル樹脂を秤量して得られた樹脂組成物(A)中の塩化ビニル樹脂とエチレン―酢酸ビニル共重合体塩化ビニルグラフト重合体の比率を計算した。
表1に示した所定量の上記樹脂組成物(A)、塩化ビニル樹脂(重合度1000、徳山積水社製、「TS−1000R」)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量26重量%、MFR4、東ソー社製、「ウルトラセン634」)、熱膨張性マイクロカプセル(粒子径26〜34μm、膨張開始温度140〜150℃、最大膨張温度180〜190℃、積水化学社製、「アドバンセルEHM401」)、ジイソデシルフタレート、ジブチル錫メルカプト(日東化成社製、「ONZ−142AF」)、アゾジカルボンアミド(化学発泡剤)、酸化亜鉛(化学発泡助剤)、酸化ポリエチレン滑剤(ハネウェル社製、「AC316A」)及び炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、「ホワイトン305S」)をスーパーミキサーで均一に混合して、塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
得られた塩化ビニル系樹脂組成物を、異方向二軸押出機に供給して、樹脂温度120で溶融混練し、押出すと同時に切断してペレットを得た。得られたペレットを、射出成形機(東芝機械社製、IS−350E)に供給し、シリンダー温度:180℃、射出速度:60mm/secの条件で射出成形して、直径300mm、厚さ5mmの円盤状成形体を得た。尚、射出孔は円盤状成形体の中心点であった。
得られた円盤状成形体を用いて、比重、硬度A、引張強度、50%モジュラス及び伸びを下記の通り測定し、結果を表1に示した。
(1)比重
JIS K−7112に準拠して、A法(水中置換法)にて電子比重計(ミラージュ貿易社製、ED−120T)で比重を測定した。
(2)硬度A
JIS K−7215に準拠して硬度A(デュローメーターA硬さ)を測定した。尚、硬度Aは、硬度のばらつきを見るため、円盤状成形体の中心から25mm、75mm及び125mmの3点で測定した。
(3)引張強度、50%モジュラス、伸び
JIS K―7113に準拠して引張強度及び50%モジュラス(50%ひずみ降伏強さ)、伸びを測定した。
(4)可塑剤移行性
上記円盤状成形体から切り出した試験片(幅30mm×長さ30mm)を2枚の硬質塩化ビニル樹脂板(幅50mm×長さ50mm×厚さ3mm)の間に挟んだ積層体を得た。得られた積層体を50℃の雰囲気下で、100g/cmの荷重で48時間プレスした。プレス終了後、試験片から硬質塩化ビニル樹脂板を剥離し、硬質塩化ビニル樹脂板への可塑剤が移行状態を目視で観察した。可塑剤の移行した痕跡のないもの及びエタノールを含浸したガーゼで拭いて痕跡が消えるものは可塑剤が移行していないと判定して○とし、ガーゼで拭いて痕跡が消えないものは可塑剤が移行していると判定して×とし、結果を表1に示した。
尚、上記硬質塩化ビニル樹脂板の製造方法は以下の通りであった。
塩化ビニル樹脂(重合度1000、徳山積水社製、「TS−1000R」)100重量部、ジブチル錫メルカプト(日東化成社製、「ONZ−142AF」)2重量部及び高分子複合エステル(エメリーオレオケミカルズジャパン社製、「G−78」)0.5重量部よりなる樹脂組成物を180℃のロールに供給して混練し、樹脂組成物がロールに巻付いた後、更に、1分間混練した。次いで、混練した樹脂組成物を180℃のプレスに供給し、3分間予熱した後、4分間加圧(圧力20MPa)して幅50mm×長さ50mm×厚さ3mmの硬質塩化ビニル樹脂板を得た。
Figure 0006290541

Claims (4)

  1. 塩化ビニル系樹脂70〜20重量%とエチレン―酢酸ビニル共重合体塩化ビニルグラフト重合体30〜80重量%よりなる樹脂組成物100重量部及び熱膨張性マイクロカプセル1〜10重量部からなることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物であり、エチレン―酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量が20〜60重量%であり、可塑剤の添加量が塩化ビニル系樹脂組成物100重量部に対し0〜40重量部である塩化ビニル系樹脂組成物。
  2. エチレン―酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量が2050重量%であり、可塑剤の添加量が塩化ビニル系樹脂組成物100重量部に対し10〜40重量部であることを特徴とする請求項1記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2項記載の塩化ビニル系樹脂組成物が加熱溶融により成形され、熱膨張性マイクロカプセルが発泡されていることを特徴とする発泡成形体。
  4. 発泡成形体が靴底材料であることを特徴とする請求項3記載の発泡成形体。
JP2013047686A 2013-03-11 2013-03-11 塩化ビニル系樹脂組成物 Active JP6290541B2 (ja)

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