JP6290491B1 - コンクリート構造物の接合方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】外的事象を受けた場合でも、接合された複数のコンクリート構造物の接合状態が好適に保持されるコンクリート構造物の接合方法を提供する。【解決手段】コンクリート構造物の接合方法であり、複数のコンクリート構造物を所定の隙間を空けて敷設する敷設工程と、隣り合うコンクリート構造物における離間した端面間に樹脂接着剤を注入し当該端面同士を連結する接合部を形成する接着剤注入工程と、隣り合うコンクリート構造物に対して、当該隣り合うコンクリート構造物における少なくとも左右の側面同士、及び、底面同士を繋ぐための単数又は複数の位置ずれ防止部材を取り付ける位置ずれ防止部材取付工程とを備えたものであり、位置ずれ防止部材が、一方のコンクリート構造物に対して固設され、他方のコンクリート構造物に対して相対動作可能に取り付けられている。【選択図】図1
Description
本発明は、筒状又はU字状のコンクリート構造物を接合するコンクリート構造物の接合方法に関する。
従来、筒状又はU字状のコンクリート構造物を敷設する方法として、種々のものが採用されている。その一例としては、コンクリート構造物の端部に設けた嵌合用の凸部の外周にゴム等の止水性を有するパッキンを取り付け、それを既設のコンクリート構造物の凹部に係合させた上で、ターンバックル等により引き寄せることにより、パッキンを凹部に嵌合させる方法が挙げられる(例えば、特許文献1を参照)。
従来の方法においても、複数のコンクリート構造物を敷設する段階では、好適に複数のコンクリート構造物同士を接合し得るものとなっている。
しかしながら、従来の方法では、敷設後において外的事象が発生した場合には、複数のコンクリート構造物同士が大きくずれてしまう場合があり、その場合には複数のコンクリート構造物同士の接合状態が損なわれてしまうという不具合がある。
ここで、「外的事象」とは、接合されたコンクリート構造物同士の相対位置が変わり両者の接合状態が損なわれ得る外的な事象であり、例えば、基礎地盤の沈下、基礎地盤の不同沈下、地震、地下水等に起因する浮力発生といった自然界の事象のみならず、埋め戻し時の偏載荷重、推進工法(反力壁を利用して反力を得てコンクリート構造物を押し込んでいくものの他、コンクリート構造物で反力を得てシールド機械を進める工法を含む)の過程で受ける外力といった人為的な事象が挙げられる。
本発明は以上の点に着目してなされたもので、外的事象が発生した場合でも、接合された複数のコンクリート構造物の接合状態が好適に保持されるコンクリート構造物の接合方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、次の構成をなしている。
請求項1に記載の発明は、内部空間を形成する筒状又はU字状をなす複数のコンクリート構造物を前記内部空間が連通するように接合するコンクリート構造物の接合方法であって、複数の前記コンクリート構造物を所定の隙間を空けて敷設する敷設工程と、隣り合うコンクリート構造物における離間した端面間に樹脂接着剤を注入し当該端面同士を連結する接合部を形成する接着剤注入工程と、隣り合う両コンクリート構造物にそれぞれ添接し得る寸法を有した添接板を主体に構成され少なくとも隣り合うコンクリート構造物における側面同士、及び、底面同士を繋ぐための単数又は複数の位置ずれ防止部材を取り付ける位置ずれ防止部材取付工程とを備えたものであり、前記位置ずれ防止部材が、一方のコンクリート構造物に対して固設されるものであり、他方のコンクリート構造物に対して相対動作可能に取り付けられているコンクリート構造物の接合方法である。
請求項2に記載の発明は、前記樹脂接着剤が、隣り合うコンクリート構造物同士を接着した状態で、伸び能力が1%〜500%、硬度が10〜95、粘度が100〜500,000mPa・s、チクソトロピー比が1〜5、接着力が0.1〜10.0N/mm2、密度が0.5〜2.0g/cm3での値に設定されるものである請求項1記載のコンクリート構造物の接合方法である。
請求項3に記載の発明は、前記複数のコンクリート構造物が、略四角筒状のものであり、前記位置ずれ防止部材が、複数設けられているものであり、前記位置ずれ防止部材が、隣り合うコンクリート構造物における上面同士、左右の側面同士、及び、底面同士を繋ぐものである請求項1又は2記載のコンクリート構造物の接合方法である。
なお、上記各請求項において、上面、側面、及び、底面とは、明示した限定をしていない限り、外面側における上面、側面、及び、底面のみならず、内面側における上面、側面、及び、底面が含まれる。
また、「コンクリート構造物」とは、複数の部品を組み合わせて作られたものだけではなく、単一の部品も含む概念である。
「伸び能力」とは、JIS A 1439に示される引張付着強さ試験によって得られた伸び率の値をいう。例えば「伸び能力が100%以上である」とは、接着剤によって接着されたもの同士を5mm/minの速度で離間させた際にその離間距離が離間開始前の200%以上となることを意味する。
「硬度」とは、JIS K 6253の規定に準じた値である。
「粘度」とは、BH型粘度計による測定値を意味する。
「チクソトロピー比」とは、振動又は攪拌によって粘度が低下する流動現象を意味するものであり、その数値は、チクソトロピーインデックス(TI値)に基づくものである。
「接着力」とは、JIS A 1439 に記載の方法により測定される値である。
「密度」とは、JIS K 6833に定義される比重と同義である。
本発明によれば、外的事象が発生した場合でも、接合された複数のコンクリート構造物の接合状態が好適に保持されるコンクリート構造物の接合方法を提供することができるものとなる。
以下、本発明の実施形態について図1〜12を参照して説明する。
この実施形態は、本発明を、下水道等の地下構造物Kに適用したものである。すなわち、本実施形態における地下構造物Kを構築するためにコンクリート構造物であるボックスカルバート1の接合方法が適用されている。
ボックスカルバート1の接合方法は、内部空間1sを形成する筒状をなす複数のボックスカルバート1を、連続性や水密性に優れた態様で内部空間1sが連通するように接合するものである。
ボックスカルバート1の接合方法は、同一形状をなす複数のボックスカルバート1を所定の隙間wを空けて敷設する敷設工程S1と、敷設工程S1を経た後に、隣り合うボックスカルバート1における離間した端面1a間に、外バックアップ材31、及び、非極性物質のバックアップ材たる内バックアップ材32を設置してバックアップ材介設部3を形成するバックアップ材設置工程S2と、バックアップ材設置工程S2を経た後に、隣り合うボックスカルバート1における離間した端面1a間に樹脂接着剤Bを注入し当該端面1a同士を連結する接合部2を形成する接着剤注入工程S3を備えている。
さらに、この実施形態におけるボックスカルバート1の接合方法は、敷設工程S1を経た後に、隣り合うボックスカルバート1における両外面側の上面同士、左右の側面同士、及び、底面同士を繋ぐための複数の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)を取り付ける位置ずれ防止部材取付工程S4を備えている。
まず、ボックスカルバート1の接合方法を用いて構築された地下構造物Kについて説明する。
地下構造物Kは、内部空間1sを形成する筒状をなす複数のボックスカルバート1と、隣り合うボックスカルバート1の対向する端面1a間に設けられ樹脂接着剤Bにより形成された接合部2と、隣り合うボックスカルバート1の対向する端面1a間に設けられるとともに接合部2に隣接する位置に配設され外バックアップ材31及び内バックアップ材32を有したバックアップ材介設部3と、隣り合うボックスカルバート1間に亘るように設けられ外的事象を受けた場合に内部空間1sが連通する方向である軸方向のボックスカルバート1同士の相対移動(相対変位)は許容しつつ軸方向と直交する方向の相対移動(相対変位)は禁止し得る位置ずれ防止部材M(U)、M(S)とを備えている。
以下、地下構造物Kの各構成について説明する。
ボックスカルバート1は、周囲が囲繞された内部空間1sを備えている。そして、ボックスカルバート1は、隣接する他のボックスカルバート1に対して、所定の隙間wを介して敷設されている。隙間wには、接合部2及びバックアップ材介設部3が設けられる。隣り合うボックスカルバート1同士は、主として樹脂接着剤Bにより作られ伸縮性及び可撓性に優れた接合部2を介して強固に接合されている。
ボックスカルバート1は、底版11と、この底版11の左右の端部から立設された一対の側版12と、一対の側版12の上端間に架設され底版11に対向して位置する頂版13とを備えている。ボックスカルバート1は、底版11、左右の側版12、及び、頂版13により区画された内部空間1sを形成している。つまり、ボックスカルバート1は、底版11、側版12、及び、頂版13によって略四角筒状をなしている。ボックスカルバート1は、内部空間1sが連通する方向の両端に接合面である端面1aを備えている。複数のボックスカルバート1は、対面する端面1a同士が接合部2を介して接合されており、全体として地下に設置される地下構造物Kを形成している。ボックスカルバート1の端面1aは、略四角環状をなしている。
接合部2は、互いに隣接するボックスカルバート1間に形成されるものである。接合部2は、樹脂接着剤Bが注入されたのちに固化した結果作られたものである。接合部2を形成する樹脂接着剤Bは、内バックアップ材32の内面からボックスカルバート1の内面と略面一になる仮想面との間のスペースspを埋めるように注入される。なお、隙間wにおけるスペースspの深さd、すなわち内バックアップ材32の内面からボックスカルバート1の内面と略面一をなす仮想面との間の距離は、隙間wに対して例えば0.2〜3.0倍の値に設定されている。
接合部2を形成する樹脂接着剤Bは、内バックアップ材32の内側に注入されている。樹脂接着剤Bは、隣接するボックスカルバート1間に介在し、隣接するボックスカルバート1同士を接着する機能を発揮するものである。樹脂接着剤Bは、ボックスカルバート1の内部空間1sに臨む位置に配される。
樹脂接着剤Bは、種々の樹脂を適用することが可能である。樹脂接着剤Bは、例えば、ポリウレタン樹脂、変成ウレタン樹脂、シリコン樹脂、変成シリコン樹脂、アクリル樹脂、変成アクリル樹脂、エポキシ樹脂、変成エポキシ樹脂、ブチル樹脂、変成ブチル樹脂の単独又は組み合わせによって構成され得るものである。なお、この実施形態では、樹脂接着剤Bは、エポキシ樹脂からなる主剤と、変成シリコン樹脂からなる硬化剤とを主体に構成されている。
樹脂接着剤Bは、図12に示される所定の数値に設定され得るものである。すなわち、隣り合うボックスカルバート1の端面1a間に接着した状態の樹脂接着剤Bの伸び能力は1%〜500%であり、硬度は10〜95であり、粘度は100〜500,000mPa・sであり、チクソトロピー比は1〜5であり、接着力は0.1〜10.0N/mm2であり、密度は0.5〜2.0g/cm3である。
なお、この実施形態における樹脂接着剤Bは、エポキシ樹脂からなる主剤と、変成シリコン樹脂からなる硬化剤に加えて、0.8〜1.0g/cm3の密度を得るために、適宜超軽量の粉体等を添加している。また、樹脂接着剤Bは、別途希釈剤を添加することにより、JIS K 6833による20℃での混合粘度の値が150000±50000mPa・sという値をなしている。そして、硬化剤に触媒を適宜添加して反応速度をコントロールすることにより、外気温に適した適切な可使時間が得られるとともに、施工完了時間を外気温に適した適切な範囲に収めることができる。
バックアップ材介設部3は、隣接するボックスカルバート1における対面する端面1a間に配設されるものである。バックアップ材介設部3は、外バックアップ材31と内バックアップ材32とを備えている。ボックスカルバート1の外面側から内面側に向かって、外バックアップ材31、内バックアップ材32の順に配設されている。
外バックアップ材31は、主として土砂の侵入を抑制するためのものでありボックスカルバート1の端面1aにおける外周縁寄りの位置に配されている。また、外バックアップ材31は、内バックアップ材32の外周縁を位置決めする機能を発揮するものである。この実施形態では、外バックアップ材31を互いに隣接するボックスカルバート1間に配設した後に、その内側に内バックアップ材32を配設している。なお、外バックアップ材31は、必ずしも設ける必要はない。また、外バックアップ材31を設ける場合には、ボックスカルバート1の端面1aにおける外周縁側の全域に設けなくてもよく、部分的に設けるようにしてもよい。
内バックアップ材32は、樹脂接着剤Bにより作られた接合部2に隣接した位置に設けられている。内バックアップ材32は、外バックアップ材31の内側に配され、全域にわたってほぼ同一の厚み寸法をなした環状のものである。内バックアップ材32は、非極性物質により形成されている。
次いで、位置ずれ防止部材である上側の位置ずれ防止部材M(U)、及び、下側の位置ずれ防止部材M(S)について説明する。
上側・下側の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)は、隣り合うボックスカルバート1の外周面にそれぞれ添接し得る寸法を有した板状をなす添接板(より具体的に言えば、後述する上面添接板u1及び側面添接板u2、下面添接板s1及び側面添接板s2を主体に構成されたものである。
上側・下側の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)は、隣り合うボックスカルバート1における開口端部の外周面間に架設されている。上側・下側の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)は、隣り合うボックスカルバート1同士が互いに軸方向と直交する方向にずれてしまうのを防止する役割を担っている。より具体的に言えば、上側・下側の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)は、外的事象を受けた場合に、内部空間1sが連通する方向すなわち軸方向のボックスカルバート1同士の相対移動は許容しつつ、当該軸方向と直交する方向への相対移動は禁止し得るものとなっている。上側・下側の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)は、隣り合うボックスカルバート1の内、一方のボックスカルバート1に対して固設されるものであり、他方のボックスカルバート1に対して相対動作可能に取り付けられている。
上側の位置ずれ防止部材M(U)は、頂版13における外面の左右の端部近傍に対をなして配設されている。上側の位置ずれ防止部材M(U)は、側版12と頂版13とによって形成された角部に設けられた上凹陥部h1に嵌合する形状をなしている。すなわち、上側の位置ずれ防止部材M(U)は、正面視及び断面視において略L字状に形成されたものであり、上凹陥部h1において上側に開放された上部凹陥部分h11に配設される上面添接板u1と、上凹陥部h1において側方に開放された側部凹陥部分h12に配設される側面添接板u2とを備えている。上側の位置ずれ防止部材M(U)は金属製のものであり、当該上側の位置ずれ防止部材M(U)を形成する上面添接板u1及び側面添接板u2は一体に作られている。上凹陥部h1に配設された状態の上側の位置ずれ防止部材M(U)は、上面添接板u1の外面が頂版13の外面と略面一になるように設定されており、側面添接板u2の外面が側版12の外面と略面一になるように設定されている。このように構成することで、上側の位置ずれ防止部材M(U)は、埋め戻されたあとの土砂内においてボックスカルバート1の外面から突出しないものとなる。このため、連設されたボックスカルバート1全体を軸方向に動かす場合であっても、上側の位置ずれ防止部材M(U)が無用なアンカー作用を発揮しないものとなっている。
下側の位置ずれ防止部材M(S)は、底版11における外面の左右の端部近傍に対をなして配設されている。下側の位置ずれ防止部材M(S)は、底版11と側版12とによって形成された角部に設けられた下凹陥部h2に嵌合する形状をなしている。すなわち、下側の位置ずれ防止部材M(S)は、正面視及び断面視において略L字状に形成されたものであり、下凹陥部h2において下側に開放された底部凹陥部分h21に配設される下面添接板s1と、下凹陥部h2において側方に開放された側部凹陥部分h22に配設される側面添接板s2とを備えている。下側の位置ずれ防止部材M(S)は金属製のものであり、当該下側の位置ずれ防止部材M(S)を形成する下面添接板s1及び側面添接板s2は一体に作られている。下凹陥部h2に配設された状態の下側の位置ずれ防止部材M(S)は、下面添接板s1の外面が底版11の外面と略面一になるように設定されており、側面添接板s2の外面が側版12の外面と略面一になるように設定されている。このように構成することで、下側の位置ずれ防止部材M(S)は、埋め戻されたあとの土砂内においてボックスカルバート1の外面から突出しないものとなる。このため、連設されたボックスカルバート1全体を軸方向に動かす場合であっても、下側の位置ずれ防止部材M(S)が無用なアンカー作用を発揮しないものとなっている。
上側・下側の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)は、隣り合うボックスカルバート1における一方のボックスカルバート1に添接する部分に丸孔状のボルト挿通孔n1が形成されており、他方のボックスカルバート1に添接する部分に長孔状のボルト挿通孔n2が形成されている。そして、上側・下側の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)は、隣り合うボックスカルバート1の内、一方のボックスカルバート1に埋設させたナットntに丸孔状のボルト挿通孔n1を挿通させたボルトvを螺着することによって、ボックスカルバート1に固設されており、他方のボックスカルバート1に埋設させたナットntに長孔状のボルト挿通孔n2を挿通させたボルトvを螺着することによって、ボックスカルバート1に相対動作可能に取り付けられている。つまり、他方のボックスカルバート1に取り付けられたボルトvは、外的事象を受けた際には、他方のボックスカルバート1における一方のボックスカルバート1に対する相対動作に対応して長孔状のボルト挿通孔n2をスライド移動し得るように構成されている。
なお、上側・下側の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)は、図15に示すように、長孔状のボルト挿通孔n2内に、水溶性の埋込材である水溶性ボンドJを埋め込んで硬化させ、丸孔状のボルト挿通孔n3を形成したものを使用することができる。
すなわち、上側・下側の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)に穿設されている長孔状のボルト挿通孔n2を、水溶性ボンドJを用いることによって、隣り合うボックスカルバート1の双方にボルトvを使って装着する作業時において、当該ボルトvの径に対応させた丸孔状の形態に変形させておくことができる。
より具体的に説明すれば、図15に示すように、左右方向に延びた長孔状のボルト挿通孔n2の長手方向中間部に、丸孔状のボルト挿通孔n3を設ける部位を設定し、それ以外の左右の空間部分に水溶性ボンドJを注入して硬化させる。これにより、上側・下側の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)において、鋼材に穿設された長孔状のボルト挿通孔n2の一部を利用してなる丸孔状のボルト挿通孔n3が設けられる。つまり、上側・下側の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)に、少なくとも敷設工程S1及び位置ずれ防止部材取付工程S4において存在するが、施工後すなわち地中に埋め戻された後において地下水等の地中の水によって溶解し消失することになる丸孔状のボルト挿通孔n3が設けられる。
このようなものであれば、敷設工程S1において、上側・下側の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)における丸孔状のボルト挿通孔n3とボックスカルバート1に設けられたナットntとを対応させることによって、隣接するボックスカルバート1同士の適切な相対位置(離間寸法)が設定されるものとなる。
また、各工程S1〜S4を経て完成した地下構造物Kが地中に埋め戻された後は、長孔状のボルト挿通孔n2内において硬化していた水溶性ボンドJが、地下水等の地中の水によって溶解されることになる。つまり、地下構造物Kが地中に埋め戻された後に、硬化した水溶性ボンドJが軟化しつつ消失していき、長孔状のボルト挿通孔n2が長孔として本来の機能を発揮し得るものに復帰することになる。つまり、上側・下側の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)が、一方のボックスカルバート1に対して固設されるものであり、他方のボックスカルバート1に対して相対動作可能に取り付けられた状態になる。
つまり、上側・下側の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)が、隣接する一方及び他方のボックスカルバート1に取り付けるためのボルトvが挿通する丸孔状のボルト挿通孔n1、及び、長孔状のボルト挿通孔n2を有したものであって、位置ずれ防止部材M(U)、M(S)が、丸孔状のボルト挿通孔n1を通したボルトvによって一方のボックスカルバート1に取り付けられるとともに長孔状のボルト挿通孔n2を通したボルトvによって他方のボックスカルバート1に取り付けられるものであり、少なくとも接合したボックスカルバート1が地中に埋め戻される前は、長孔状のボルト挿通孔n2の内部に硬化した水溶性の埋込材である水溶性ボンドJが埋め込まれており、当該水溶性ボンドJによって長孔状のボルト挿通孔n2の内部に丸孔状のボルト挿通孔n3が形成されたものになっている。
次に、ボックスカルバート1の接合方法について詳述する。
<敷設工程S1>
敷設工程S1は、同一形状をなす複数のボックスカルバート1を所定の隙間wを空けて敷設する工程である。複数のボックスカルバート1は、クレーン等により搬送される。複数のボックスカルバート1は、例えば、予め打設された基礎コンクリート上における所定の位置に所定の隙間wを空けて配設される。なお、推進工法を用いる場合には、搬送されたボックスカルバート1は、ジャッキによる押圧力を利用して所定の位置に配設されることになる。
敷設工程S1は、同一形状をなす複数のボックスカルバート1を所定の隙間wを空けて敷設する工程である。複数のボックスカルバート1は、クレーン等により搬送される。複数のボックスカルバート1は、例えば、予め打設された基礎コンクリート上における所定の位置に所定の隙間wを空けて配設される。なお、推進工法を用いる場合には、搬送されたボックスカルバート1は、ジャッキによる押圧力を利用して所定の位置に配設されることになる。
<位置ずれ防止部材取付工程S4>
位置ずれ防止部材取付工程S4は、搬送工程S1を経た後に行われるものであり、隣り合うボックスカルバート1における両外周面側の上面同士、左右の側面同士、及び、底面同士を繋ぐための複数の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)を取り付ける工程である。
位置ずれ防止部材取付工程S4は、搬送工程S1を経た後に行われるものであり、隣り合うボックスカルバート1における両外周面側の上面同士、左右の側面同士、及び、底面同士を繋ぐための複数の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)を取り付ける工程である。
例えば、図5に示すように、搬送中のボックスカルバート1の左右に下側の位置ずれ防止部材M(S)をあらかじめ取り付けておき、他のボックスカルバート1との間に所定の隙間wを形成し得る位置まで当該搬送中のボックスカルバート1を搬送するようにすれば、隣り合うボックスカルバート1との位置決めを好適に行い得るものとなる。
なお、位置ずれ防止部材取付工程S4は、バックアップ材設置工程S2や接着剤注入工程S4の後であっても構わない。
<バックアップ材設置工程S2>
バックアップ材設置工程S2は、敷設工程S1、及び、位置ずれ防止部材取付工程S4を経た後に行われるものであり、隣り合うボックスカルバート1における離間した端面1a間に、外バックアップ材31、及び、非極性物質のバックアップ材たる内バックアップ材32を設置してバックアップ材介設部3を形成する工程である。バックアップ材設置工程S2では、バックアップ材介設部3を形成するために、まず、外バックアップ材31を外側に配し、その後、外バックアップ材31の内側に内バックアップ材32を配設する。
バックアップ材設置工程S2は、敷設工程S1、及び、位置ずれ防止部材取付工程S4を経た後に行われるものであり、隣り合うボックスカルバート1における離間した端面1a間に、外バックアップ材31、及び、非極性物質のバックアップ材たる内バックアップ材32を設置してバックアップ材介設部3を形成する工程である。バックアップ材設置工程S2では、バックアップ材介設部3を形成するために、まず、外バックアップ材31を外側に配し、その後、外バックアップ材31の内側に内バックアップ材32を配設する。
<接着剤注入工程S3>
接着剤注入工程S3は、敷設工程S1、位置ずれ防止部材取付工程S4、及び、バックアップ材設置工程S2を経た後に行われるものであり、隣り合うボックスカルバート1における離間した端面1a間に、樹脂接着剤Bを注入し当該端面1a同士を連結する接合部2を形成する工程である。接着剤注入工程S3は、内バックアップ材32の内側に樹脂接着剤Bを注入し、当該樹脂接着剤Bが固化して接合部2が形成されるまで待機する手順を有している。
接着剤注入工程S3は、敷設工程S1、位置ずれ防止部材取付工程S4、及び、バックアップ材設置工程S2を経た後に行われるものであり、隣り合うボックスカルバート1における離間した端面1a間に、樹脂接着剤Bを注入し当該端面1a同士を連結する接合部2を形成する工程である。接着剤注入工程S3は、内バックアップ材32の内側に樹脂接着剤Bを注入し、当該樹脂接着剤Bが固化して接合部2が形成されるまで待機する手順を有している。
なお、樹脂接着剤Bは、ボックスカルバート1における内部空間1s側から注入される。隣り合うボックスカルバート1間の隙間wに樹脂接着剤Bが注入された後は、ボックスカルバート1の内面と略面一となる位置にマスキングテープ等を用いたマスキングが施される。樹脂接着剤Bが注入されて樹脂接着剤Bが固化する前には、マスキングテープ等を取り除きマスキングを解除する。
以上に述べた各工程S1、S2、S3、S4を経て、複数のボックスカルバート1が連結される。この結果、内部空間1sが連通し、水路や通路等に利用される地下構造物Kが形成される。この地下構造物Kに対して、接合されたボックスカルバート1同士の接合状態が損なわれ得る外的事象、すなわち、基礎地盤の沈下、基礎地盤の不同沈下、地震、地下水等に起因する浮力といった自然界の事象のみならず、埋め戻し時の偏載荷重、推進工法の過程で受ける外力といった人為的な事象が作用した際には、位置ずれ防止部材M(U)、M(S)が軸方向と直交する方向へのずれを抑制するとともに樹脂接着剤Bにより形成された層である接合部2が軸方向を主体に適切に弾性変形することになる。そのため、樹脂接着剤Bにより形成された接合部2によって、互いに隣接したボックスカルバート1同士の相対位置が変化した場合であっても接合部2の連続性や水密性が保持されることになる。すなわち、本実施形態に示されるボックスカルバート1の接合方法を用いれば、コンクリート製品を利用した水路や通路等の構造物に、安価で容易に耐震性、連続性や水密性を付与することができる。しかも、この接合方法によれば、必ずしもプライマーを必要としないので、工数の削減及び施工期間の短縮を図ることができるものとなる。なお、施工状況に応じて適宜プライマーを使用してもよいのは言うまでもない。
以上、詳述したように、本実施形態におけるコンクリート構造物たるボックスカルバート1の接合方法は、内部空間1sを形成する略四角筒状をなす複数のボックスカルバート1を各内部空間1sが連通するように接合するものである。そして、複数のボックスカルバート1を所定の隙間wを空けて敷設する敷設工程S1と、隣り合うボックスカルバート1における離間した端面1a間に樹脂接着剤Bを注入し当該端面1a同士を連結する接合部2を形成する接着剤注入工程S3と、隣り合う両ボックスカルバート1にそれぞれ添接し得る寸法を有した添接板たる上面添接板u1、側面添接板u2、s2、下面添接板s1を主体に構成され隣り合うボックスカルバート1における上面同士、側面同士、及び、底面同士を繋ぐための四つの位置ずれ防止部材M(U)、M(S)を取り付ける位置ずれ防止部材取付工程S4とを備えている。位置ずれ防止部材M(U)、M(S)が、隣り合うボックスカルバート1の内、一方のボックスカルバート1に対して固設されるものであり、他方のボックスカルバート1に対して相対動作可能に取り付けられている。
このため、外的事象が及んだ場合でも、接合された複数のボックスカルバート1の接合状態が好適に保持され得るコンクリート構造物の接合方法を提供することができるものとなる。
つまり、樹脂接着剤Bによって接合部2を形成しているものであるため、筒状をなすボックスカルバート1を利用した水路や通路等に、安価で容易に耐震性や、連続性や、水密性を付与することができるものとなる。
しかも、樹脂接着剤Bを施工箇所に応じて、適切な値に設定することにより施工性に優れた性質のものを提供することが可能である。例えば、樹脂接着剤Bの密度を比較的小さな値に設定すれば、施工時に樹脂接着剤Bが垂れ落ちることがないため、施工性にすぐれたものとなる。また、樹脂接着剤Bの伸び能力を高い値に設定すれば、外的事象である不同沈下や地震時の地盤の変位が発生した際であっても、樹脂接着剤Bにより作られた接合部2がずれ動くボックスカルバート1に適切に変形しつつ追従し連続性や水密性を確保することができるものとなる。
樹脂接着剤Bが、隣り合うボックスカルバート1同士を接着した状態で、伸び能力が1%〜500%、硬度が10〜95、粘度が100〜500,000mPa・s、チクソトロピー比が1〜5、接着力が0.1〜10.0N/mm2、密度が0.5〜2.0g/cm3での値に設定されるものである。このため、施工箇所の諸条件に応じて、適切な接合部2を形成し得るものとなっている。
なお、伸び能力が100%よりも下回ると、許容できる変位量が小さくなるため、外的事象すなわち不同沈下や地震時の地盤の変位に適切に対応するために、ボックスカルバート1間のスペースを比較的大きくとって多量の樹脂接着剤Bを注入する必要がある。すなわち、比較的伸び能力が低い樹脂接着剤Bを用いた場合には、樹脂接着剤Bの伸び代を予め想定した量だけ確保するためにスペースを比較的大きく設定しておく必要がある。また、伸び能力が300%より上回る場合には、変位前と変位後の樹脂接着剤Bの体積が略変わらないと仮定すると、変位後に接着剤が薄くなる部分ができてしまい、この薄くなった部分で水圧や土圧といった外力への抵抗力が低下し、漏水等の問題が発生しやすくなるという不具合や、変位後の抵抗力を確保するために多量の樹脂接着剤Bを注入する必要があるという不具合が発生する。伸び能力が100〜250%の範囲内である場合には、後者の不具合をより顕著に解消できる。
また、樹脂接着剤Bの密度を0.8g/cm3よりも下回るようにすると接着能力の確保が難しくなる。一方、接着剤の密度が1.0g/cm3よりも上回ると、施工時に接着剤が垂れ落ちやすく、施工性が低下するという不具合が発生する。
複数のボックスカルバート1が略四角筒状のものであり、位置ずれ防止部材M(U)、M(S)が、複数設けられているものである。そして、位置ずれ防止部材M(U)、M(S)が、隣り合うボックスカルバート1における上面同士、左右の側面同士、及び、底面同士を繋ぐものである。このため、複数のボックスカルバート1同士の軸方向への相対変位は許容しつつ、軸方向と直交する方向(せん断方向)への相対変位は禁止し得るものとなっている。
特にこの実施形態では、二つの上側の位置ずれ防止部材M(U)を、隣り合うボックスカルバート1における左の上角部と右の上角部の二箇所に配設離間した状態で設けているとともに、二つの下側の位置ずれ防止部材M(S)を、隣り合うボックスカルバート1における左の下角部と右の下角部の二箇所に離間した状態で設けている。このため、上側・下側の位置ずれ防止部材M(U)、M(S)を、隣り合うボックスカルバート1同士に、容易に取り付け得るものとなっている。
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られるものではない。
ボックスカルバートは種々の形態のものを適用することができる。例えば、図13、及び、図14に示すように、底版11、側版12、及び、頂版13の開口端部における内部空間1sを臨む部位に、凹ませた部位である凹欠部1kを形成したものであってもよい。凹陥部1kは隣接する他のボックスカルバート1側を向く面である端面1aと内部空間1s側を向く内向面1uとを備えている。かかる構成のものであれば、凹欠部1kにより形成された対向する端面1a間の空間に、内バックアップ材32と樹脂接着剤Bにより形成された接合部2が配設されることになる。なお、凹欠部1kは、図13に示すように隣り合うボックスカルバート1における双方に形成したものであってもよいし、図14に示すように一方側のみに形成したものであってもよい。
樹脂接着剤は、本発明の趣旨を逸脱しないものであれば、種々のものを適用することができるのは言うまでもない。例えば、樹脂接着剤が、隣り合うコンクリート構造物同士を接着した状態で、伸び能力が1%〜500%、硬度が10〜95、粘度が100〜500,000mPa・s、チクソトロピー比が1〜5、接着力が0.1〜10.0N/mm2、密度が0.5〜2.0g/cm3での値に設定されるものであれば好ましいが、これに限られるものではない。
コンクリート構造物は、ボックスカルバートに限られるものではない。コンクリート構造物には、例えば、マンホールやヒューム管等も含まれる。換言すれば、コンクリート構造物は、四角筒状のものやU字状のものに限れるものではなく、例えば、円筒状のものや半円筒状のものであってもよい。
コンクリート構造物の接合方法は、地下構造物を構成する複数のボックスカルバートがすべて新設されるときだけでなく、その一部分だけを既設のボックスカルバートや現場打ちのコンクリート構造物に接合するときにおいても適用することができる。また、コンクリート構造物の接合方法は、地下構造物を構成する複数のボックスカルバートがすべて既設のものである場合であっても、隣り合う両ボックスカルバートを接合するために適用することができる。
位置ずれ防止部材は、種々の形態のものを適用することが可能である。例えば、位置ずれ防止部材として、単純なプレート状の部材を、隣り合うコンクリート構造物の隣接する外周面又は内周面における上面同士、左右の側面同士、及び、底面同士に添設するようにしてもよい。また、位置ずれ防止部材として、H鋼やチャンネル鋼(溝型鋼)を適用して、隣り合うコンクリート構造物の隣接する外周面又は内周面における上面同士、左右の側面同士、及び、底面同士に添設するようにしてもよい。
上述した実施形態では、位置ずれ防止部材は、隣り合うコンクリート構造物における一方にはボルトによって固設されていたが、ボルト以外の他の方法によって固設されているものであってもよい。また、位置ずれ防止部材は、隣り合うコンクリート構造物における他方の表面に、面的に添設されたものであればよい。すなわち、他方のコンクリート構造物に対しては、位置ずれ防止部材が、ボルトを使用して取り付けられていなくてもよい。
位置ずれ防止部材は、隣り合うボックスカルバートの外周面に添設したものに限られるものではなく、隣り合うボックスカルバートの内周面に添設したものであってもよい。
ボックスカルバートは、位置ずれ防止部材が配設される部分が凹陥していないものであってもよい。
隣り合うボックスカルバート同士が、PC鋼材によってプレストレスが付与されているものであってもよいのは、もちろんのことである。
その他、本発明の各構成については、その趣旨を逸脱しない範囲で種々に変形され得るものである。
1…ボックスカルバート(コンクリート構造物)
2…接合部
B…樹脂接着剤
3…バックアップ材介設部
2…接合部
B…樹脂接着剤
3…バックアップ材介設部
Claims (3)
- 内部空間を形成する筒状又はU字状をなす複数のコンクリート構造物を前記内部空間が連通するように接合するコンクリート構造物の接合方法であって、
複数の前記コンクリート構造物を所定の隙間を空けて敷設する敷設工程と、
隣り合うコンクリート構造物における離間した端面間に樹脂接着剤を注入し当該端面同士を連結する接合部を形成する接着剤注入工程と、
隣り合う両コンクリート構造物にそれぞれ添接し得る寸法を有した添接板を主体に構成され少なくとも隣り合うコンクリート構造物における側面同士、及び、底面同士を繋ぐための単数又は複数の位置ずれ防止部材を取り付ける位置ずれ防止部材取付工程とを備えたものであり、
前記位置ずれ防止部材が、一方のコンクリート構造物に対して固設されるものであり、他方のコンクリート構造物に対して相対動作可能に取り付けられているコンクリート構造物の接合方法。 - 前記樹脂接着剤が、隣り合うコンクリート構造物同士を接着した状態で、伸び能力が1%〜500%、硬度が10〜95、粘度が100〜500,000mPa・s、チクソトロピー比が1〜5、接着力が0.1〜10.0N/mm2、密度が0.5〜2.0g/cm3での値に設定されるものである請求項1記載のコンクリート構造物の接合方法。
- 前記複数のコンクリート構造物が、略四角筒状のものであり、
前記位置ずれ防止部材が、複数設けられているものであり、
前記位置ずれ防止部材が、隣り合うコンクリート構造物における上面同士、左右の側面同士、及び、底面同士を繋ぐものである請求項1又は2記載のコンクリート構造物の接合方法。
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