JP6287553B2 - ナノ材料製造装置 - Google Patents

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本発明は、ナノ材料製造装置に係り、特に、アーク放電を発生させて粉末を微粒子化するための、対向する複数の放電電極が放電容器内に突設されたナノ材料製造装置の改良に関する。
例えば特許文献1に記載された炭化珪素の製造装置、特許文献2に記載されたナノ構造炭素材料の製造装置、特許文献3に記載されたカーボンナノカプセル前駆体の製造装置や、特許文献4に記載されたガラス原料の溶解装置、ガラス製造装置のように、アーク放電を発生させるための、対向する複数の放電電極が放電容器内に突設されたプラズマ熱処理装置が知られている。
このようなプラズマ熱処理装置では、図1(A)に示す如く、複数(図では6本)の放電電極10A〜10Fを、その先端が概ね同一円周上に向き合うように配置し、放電電極10A〜10Fの先端で囲まれた空間に、位相の異なるアークを連続的に発生させて高温のプラズマ発生場を形成する多相交流アークが用いられている。一般的に、対向する放電電極同士の位相差を180度近くになるよう配置することによって相対電圧を上げ、対向する放電電極間での放電確率を上げることによって、中心部のプラズマ密度を上げている。
このような高温のプラズマ発生場に被処理物質を投入し、燃焼、溶融又は蒸発を起こさせ、被処理物質の分解、合成又は無害化等を行う場合、大きく且つ均一な高温のプラズマ発生場が求められる。
特開平7−187639号公報 特開2005−343784号公報 特開2012−184128号公報 特開2006−199549号公報
しかしながら、対向する放電電極の間隔を大きくして大きな高温のプラズマ発生場を得ようとすると、隣接する放電電極間の距離が近いため、図1(A)に例示したような、隣接する放電電極間のアーク12の発生確率が増加し、放電電極10A〜10Fで囲まれた空間の中心部分のアーク発生確率が減少して中央部の温度が減少し、図1(B)に例示するようなドーナツ状のプラズマ発生場14を形成してしまい、被処理物質の熱プラズマによる処理が十分に行えない場合があった。
この対策として、放電電極を細くしたり、放電電極の先端を鉛筆状に尖らせることが考えられるが、放電電極を細くすると流せる電流量が小さくなり、又、いずれの場合にも、電極寿命が短くなるという問題点があった。
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、アーク放電を発生させて粉末を微粒化する際に、放電電極の寿命を縮めることなく、大きく且つ均一な高温のプラズマ発生場を形成できるようにすることを課題とする。
本発明は、アーク放電を発生させて粉末を微粒子化するための、対向する複数の放電電極が放電容器内に突設されたナノ材料製造装置であって、前記放電電極が、軸中心部に貫通孔を有する筒状で、その先端が概ね同一円周上に配置されており、且つ、前記貫通孔を経由してプラズマ発生場に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、前記放電電極に位相の異なる交流電圧を印加する交流電源を有し、生成した微粒子を吸引回収する生成物吸引機構が、前記放電容器の上部に配設されていることにより、前記課題を解決するものである。
ここで、前記貫通孔を経由して前記プラズマ発生場に被処理物質を供給する被処理物質供給手段を有することができる。
又、前記放電電極を炭素製とすることができる。
又、前記不活性ガスを、アルゴンを主成分とするガスとすることができる。
本発明によれば、図2(A)に例示するように、筒状の放電電極22A〜22F(まとめて22とも称する)の貫通孔23の先端部中央から、例えばアルゴンを主成分とする不活性ガスを噴出させることにより、発生するアーク24を放電電極22の貫通孔23近傍に固定することができる。これは、新たに吹き込まれる不活性ガスの電離度が、既に存在する周囲の他のガスと比べて低く、不活性ガスの密度が高い場所でアークが発生しようとするからである。この効果により、隣接する放電電極との最短距離でアークが発生する頻度が下がり、図2(B)に示すように、対向する放電電極との間でのアークの発生頻度が上がる。従って、放電電極22A〜22Fで囲まれた空間の中央付近でもアークが発生し、中心部分でも高温のプラズマ発生場26を確保することができ、被処理物質の処理を十分に行える。
特に、放電電極22の貫通孔23から不活性ガスと共に被処理物質である粉末を高温のプラズマ発生場26に投入した場合には、被処理物質を直接高温のプラズマ発生場26に供給することができ、効率の高い処理を行って、処理量の増加や未処理材料の低減を図ることができる。
従来の多相交流アークの問題点を示す平面図 本発明の作用を説明するための平面図 本発明の実施形態を示す縦断面図 同じく(A)放電電極の平面配置及び(B)各放電電極に接続される多相交流電源の構成例を示す図
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。又、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
本実施形態は、二酸化珪素(SiO2)粉末を微粒子化するナノ材料製造装置に本発明を適用したもので、図3に示す如く、アーク放電を発生させるための対向する複数(ここでは図4(A)に示す如く12本)の放電電極22(具体的には22A〜22L)が放電容器20内に水平に突設されたナノ材料製造装置であって、前記放電電極22が、軸中心部に貫通孔23を有する円筒状で、その先端が、図4(A)に示すように概ね同一円周上に配置されており、且つ、前記貫通孔23を経由してプラズマ発生場26にアルゴンを主成分とする不活性ガス(以下、Arガスと称する)を供給するArガス供給機構28と、同じく貫通孔23を経由して被処理物質(ここではSiO2粉末)を供給する被処理物質供給機構30と、図4(B)に詳細に示す如く、前記放電電極22A〜22Lに位相が30度ずつ異なる交流電圧を印加する交流電源32A〜32L(まとめて32とも称する)を設けたものである。
前記不活性ガスをキャリアガスとしてプラズマ発生場26に投入され、加熱された被処理物質は、例えば昇華されて上方に移動し、その途中で冷却されて生成物(ここでは超微粒子)34となり、例えば放電容器20の上部に設けられた生成物吸引機構36により上部に吸引され、回収される。
一方、アーク放電で熱処理されずにプラズマ発生場26から落下する未熱処理原料38は、例えば放電容器20の底部に設けられた未加熱原料回収器40で回収される。
前記放電電極22は、例えば炭素製とすることができるが、放電電極22の材料は炭素に限定されず、例えばタングステン製とすることもできる。なお、タングステン電極は冷却が必要になるので、炭素電極の方が望ましい。
前記放電電極22の数は、交流電源32として商用の三相交流を使用した場合には、その位相差から電源を簡単に構成することができ、例えば、3、6、12とすることができる。
又、前記放電電極22の段数は、本実施形態の1段に限定されず、2段以上であっても良い。
又、放電電極22の形状も円筒状に限定されず、他の筒状であっても良い。配設方向も、水平に限定されない。
前記不活性ガスとしては、Arガスや、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンを含む希ガス、又は希ガス以外の不活性ガスを用いることも可能である。
本実施形態においては、不活性ガスを被処理物質のキャリアガスとしているので、構成が簡略である。なお、被処理物質をプラズマ発生場26に投入する方法は、これに限定されない。
放電電極22として直径18mm、内径5mmの円筒状黒鉛を用い、図4(A)に示したように、12本の放電電極22A〜22Lを水平面上に先端が円状に向き合うように配置した。放電電極22の貫通孔23からは、アークの発生する側に向かって噴出するように、Arガスを毎分1〜10Lで流した。
これら放電電極22A〜22Lに、図4(B)に示したように、位相が30度ずつ異なる交流電源32A〜32Lを上面視で時計回りに順次接続した。但し、反時計回りでも何ら効果は変わらない。
これらの放電電極22A〜22L間に交流多相アークを点弧させ、放電電極の対向する空間にアーク放電に起因する高温のプラズマ発生場26を形成した。このとき、12本の放電電極22A〜22L先端の作る円の直径は約100mm、電流は放電電極1本当たり150〜200A、電圧は18〜25Vであった。
又、放電電極22A〜22Lの先端が作る円の中心に向けて、上方より被処理物質であるSiO2の粉末を投入した。SiO2粉末の平均粒径は40μm、又、投入量は毎分100gである。
SiO2の粉末は高温のプラズマ発生場26で加熱され、蒸発して上昇するが、プラズマ空間を出ると急冷されて数〜数十nmの超微粒子34となる。
生成した超微粒子34は、生成物吸引機構36により上部にて吸引回収した。
プラズマ発生場26へ上方より被処理物質を投入する代わりに、図3に示したように、放電電極22の貫通孔23からArガスの流れに乗せてSiO2の粉末をプラズマ発生場26へ供給した。SiO2粉末の供給量は放電電極1本当たり毎分10g、全放電電極で毎分120gである。
なお、実施例2では、全放電電極22A〜22Lから被処理物質を供給したが、特定の1本又は複数本の放電電極のみから被処理物質を供給しても良い。
前記実施形態は、本発明を、SiO2粉末からその微粒子を製造するナノ材料製造装置に適用したものであったが、本発明の適用対象はこれに限定されず、シリコンとSiO2を混合して、酸化珪素SiOx(0<x<2)を製造する場合や、生成物が原料の反応生成物である場合にも適用可能である。原料もシリコン系に限定されず、無機材料であれば何でも製造できる。
20…放電容器
22、22A〜22L…放電電極
23…貫通孔
24…アーク
26…プラズマ発生場
28…Arガス供給機構
30…被処理物質供給機構
32、32A〜32L…交流電源
36…生成物吸引機構

Claims (4)

  1. アーク放電を発生させて粉末を微粒子化するための、対向する複数の放電電極が放電容器内に突設されたナノ材料製造装置であって、
    前記放電電極が、軸中心部に貫通孔を有する筒状で、その先端が概ね同一円周上に配置されており、且つ、
    前記貫通孔を経由してプラズマ発生場に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、
    前記放電電極に位相の異なる交流電圧を印加する交流電源を有し、
    生成した微粒子を吸引回収する生成物吸引機構が、前記放電容器の上部に配設されていることを特徴とするナノ材料製造装置。
  2. 前記貫通孔を経由して前記プラズマ発生場に被処理物質を供給する被処理物質供給手段を有することを特徴とする請求項1に記載のナノ材料製造装置。
  3. 前記放電電極が炭素製であることを特徴とする請求項1又は2に記載のナノ材料製造装置。
  4. 前記不活性ガスが、アルゴンを主成分とするガスであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のナノ材料製造装置。
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