JP6284883B2 - 細菌集団を直接用いて黄色ブドウ球菌のδ溶血素を質量分析により検出する方法 - Google Patents

細菌集団を直接用いて黄色ブドウ球菌のδ溶血素を質量分析により検出する方法 Download PDF

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Description

本発明は、黄色ブドウ球菌を分析する技術分野に関する。
人口の20〜30%が保有している黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、保菌(colonization)及び感染の原因となる細菌の一種である(非特許文献1)。感染症は以下のように大きく2つに分類される:接着因子「接着性マトリックス分子を認識する微生物表面成分(Microbial Surface Component Recognizing Adhesive Matrix Molecules)」すなわちMSCRAMM(フィブリノーゲン結合タンパク質[FnBP]、タンパク質A、コアグラーゼ等)が関与する化膿性感染症;並びに、最も有名なものとして溶血素、Panton−Valentineロイコシジン[PVL]、スタフィロコッカスエンテロトキシン及び表皮剥脱毒素が挙げられる外毒素の分泌が不可欠となる毒素性感染症(非特許文献2)。黄色ブドウ球菌株はいずれも、すべてのビルレンス因子を有しているわけではなく、これらの因子が細菌増殖の際に同時に発現するわけではない。対数増殖期には、宿主への定着及び侵入に必要な接着因子が発現される。一方、対数増殖期末期及び定常期には、その増殖に不可欠な栄養素源となる宿主の細胞を破壊するために必要な毒素が大多数の細菌で発現される。黄色ブドウ球菌は、これらの過程を制御する多くの調節因子を有している(非特許文献3)。その中でも、「Accessory Gene Regulator[agr]」システムは、最も重要なシステムの一つである。
黄色ブドウ球菌のagrシステムは、該菌の多くのビルレンス遺伝子と代謝を調節する。これは、2つの互いに異なる転写物:RNAII及びRNAIIIへと転写される5つの遺伝子(agrBDCA及びhld)の遺伝子座に存在する。RNAIIは、agrBDCA遺伝子を含むオペロンP2のメッセンジャーであり、RNAIIIは、デルタ(δ)溶血素の遺伝子であるhldを含む。agrCはヒスチジンキナーゼをコードしており、agrAは2成分系の受容体である。agrDは、agrBによって成熟し、分泌されるペプチドをコードしている。得られるペプチドは、自己誘導ペプチドであり、agrAを刺激するagrCを活性化する。agrA受容体は、活性化されると、プロモータP2及びP3それぞれによるRNAII及びRNAIIIの転写を誘導する。RNAIIIは、δ溶血素をコードする遺伝子hldを含んではいるが、何よりもまず調節RNAであり、agrシステムの真のエフェクターである。このように、RNAIIIは多くの遺伝子を転写及び翻訳レベルの両方で調節している(非特許文献4、非特許文献5)。agrシステムの機能不全を誘導する変異によって、自己溶菌酵素や溶血素の発現に変化が生じ、細菌の表現型、特に病原性に関連した表現型に影響が及ぼされる(非特許文献6)。
黄色ブドウ球菌のδ溶血素は、δ毒素又はδリシンとも称され、agrシステムを構成するhld遺伝子によりコードされており、agrシステムのエフェクターであるRNAIII中に位置している。RNAIIIのδ溶血素への翻訳は、(約1時間)遅れて対数増殖期末期に起こる(非特許文献7;非特許文献8)。このように、δ溶血素は、RNAIIIの転写を反映するものであり、結果としてagrシステムの機能性も反映する(非特許文献5)。δ溶血素は、黄色ブドウ球菌の溶血性毒素ファミリーに属し、細胞膜に孔を形成する。特に、細胞膜のリン脂質を破壊することにより、ヒト、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ネコ、ニワトリの赤血球等を溶解する(非特許文献9)。また、バイオフィルムの形成阻害、及び、ヒト好中球の酸化ストレスの惹起にも関与している(非特許文献8)。図1に示すように26個のアミノ酸からなり、その質量は2.9kDaである(非特許文献10)。i)天然型であり、大多数を占める形態である、メチオニン残基においてN末端がホルミル化されたもの(本明細書中、δ溶血素と呼ぶ);及び、ii)脱ホルミル化されたものの2つの形態で存在している(非特許文献4)。脱ホルミル化は、鉄依存性デホルミラーゼペプチドという酵素によって確保される。対数増殖期及びポスト対数増殖期初期において、δ溶血素は脱ホルミル化されて、弱い化学誘引物質が形成される(非特許文献8)。細菌の増殖中、徐々に鉄濃度が低下し、デホルミラーゼの活性が低下する。そして、多核好中球に対する化学誘引性を備えるδ溶血素が蓄積され、炎症反応が誘導され、その後の細菌増殖のための栄養素源が得られる(非特許文献8)。最後に、以下のような遺伝子多型が記載されている。ある変異体がイヌ由来の株から発見されているが、この変異体はアミノ酸変異を含み、トリプシンによる消化が低下している他、ヒツジ赤血球に対する溶血性の低下及び25℃未満の温度での溶血活性の低下も見られる(非特許文献11)。ヒト由来株では、10位のグリシンがセリンに置換された多型(G10S)が、Genebank(商標)に記載されているが(非特許文献12)、この変異の存在頻度については知られていない。
いくつかの研究によれば、黄色ブドウ球菌のagrシステムの欠損株の頻度は、15%〜22%であると推定されている(非特許文献13;非特許文献6;非特許文献14)。これらの株は、市中型MRSAと比較して、メチシリン耐性の院内型黄色ブドウ球菌[MRSA]においてより多くみられる(非特許文献14)。しかしながら、agr欠損株は、すべてのagr遺伝子プールI、II、III及びIVで発見されているため、クローンという推測は支持されない(非特許文献15)。
これらの株は、連続して移植を行った際に起こる変異の結果ではなく、最小限の操作を加えた生体サンプルから分離されているので、真の臨床的意義がある(非特許文献13)。agrシステムの機能不全とδ溶血素の欠如との間には、各種の臨床的関連性が認められている。
例えば、2011年には、814件の黄色ブドウ球菌菌血症を扱った2003年から2007年の間の後ろ向き研究において、22%の株のagrシステムに機能不全がみられた。上記症例の18%ではこれらの株に感染した患者が30日以内に死亡したのに対し、agrシステムが機能している株では12%であった(p=0.03)。したがって、agr欠損黄色ブドウ球菌の感染では、感度30%、特異度79%、陽性適中率18%、陰性適中率88%で死亡率の予測が可能であった(非特許文献6)。
また、MRSAによる持続性菌血症(BP)(すなわち、好適な抗生剤治療下で7日間以上、MRSAを含む陽性血液培養が持続)を扱った後ろ向き臨床研究によれば、ゲロースにおいてδ溶血素を調べることによって、agrシステムが機能不全であるMRSA株を明らかにしたところ、該MRSA株は、消散性菌血症(Resolvent Bacteremia(RB))と比較して持続性菌血症(BP)においてより高頻度で見られることが示された[BP群株71.4%に対してRB群株38.9%;p=0.057)。したがって、agrシステムの機能不全の証拠となるδ溶血素の産生の欠如は、処置を増やすこと(すなわち、最適な抗生剤治療)を必要とする持続性菌血症のマーカーとなり得る(非特許文献16)。
細菌の自己分解との関連も認められている。agrシステムは、多くの遺伝子、特にlytS及びlytRの発現を制御している。したがって、agrシステムの機能不全は、液体培地での凝集体の形成;粗面化し、四方に広がるといった細胞表面の改質;及び、自己分解しやすい傾向と関係がある(非特許文献17)。
それらに関しては、Vuongらが、ポリスチレンへの接着モデルにおいて、agr欠損株は78%がバイオフィルムを形成したのに対し、agr発現株ではわずか6%のみであったことを示した。この現象はagr阻害剤を添加することによっても確認されており、δ溶血素の界面活性能によるものと思われる(非特許文献18)。しかしながら、agrシステムの機能不全がバイオフィルムの形成に必要であるのと同様に、バイオフィルムの分散はagrシステムに依存していると思われ、慢性感染症の場合にはagrシステムの欠損株と機能株がおそらく共存していることが強調されている(非特許文献19)。これらの蓄積された結果から、慢性感染症の場合に又は血管内装置においてagr欠損株を調べることが望まれる。
嚢胞性線維症との関連も認められている。2000年にGoerkeらは、嚢胞性線維症患者の呼吸器官サンプルから分離した黄色ブドウ球菌株のRNAIIIの発現について研究を行ったが、agr欠損株が優勢であることが示された。したがって、agrシステムの機能性は、嚢胞性線維症の場合の保菌及び感染には必要でないと思われる(非特許文献20)。
最後に、グリコペプチド耐性表現型(すなわち、GISA「グリコペプチド中間耐性黄色ブドウ球菌」)との関連も報告されている。agrシステムが機能しているMRSA株に感染した患者にバンコマイシンを長期投与(すなわち9カ月超)すると、δ溶血素の発現が完全になくなることはないものの低下する。処置をやめると、δ溶血素の発現に大きな上昇が測定される(非特許文献21)。また、agrシステムの機能不全株では、バンコマイシンのファーマコダイナミクスは変化しないものの、バンコマイシンに対する感受性の低下が見られる(非特許文献14)。2002年にはSakoulasらが、彼らの研究所のGISAコレクションに含まれるすべての株がagrシステムの機能不全を起こしていることを示した(非特許文献22)。2005年には、ヘテロGISA表現型の出現とagrシステム欠損株のバンコマイシンへの長期曝露との関連性が確認された。このバンコマイシンに対する感受性の低下もまた、細菌の溶菌の減少と血小板由来抗菌ペプチドに対する感受性の低下に関係している(非特許文献20)。この関連は、Roseらの研究によっても確認されており、Roseらは、agr欠損株ではバンコマイシンに対して最小発育阻止濃度(MIC)を上昇させる能力が高まり、したがってGISAになることを示している。これに対して、他の抗生物質クラスに属する抗黄色ブドウ球菌抗生物質のダプトマイシンを使用した場合には、この現象は見られない(非特許文献15)。したがって、δ溶血素の産生の欠如を示すことは、特にバンコマイシンによる処置の際に、GISA表現型又はヘテロGISA表現型への時間依存性変化を検出するための初期マーカーとなり得る(非特許文献16)。
また、δ溶血素の検出という臨床的関心から、黄色ブドウ球菌のδ溶血素を測定するための各種方法が開示されている。溶血試験、動物モデルに対するバイオテスト、「逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応[RT−PCR]」、「ノーザンブロット」、シークエンシング及び高速クロマトグラフィー[HPLC]が挙げられる。
溶血試験では、抗α溶血素抗体及び抗β溶血素抗体の存在下で、ゲロースで培養された黄色ブドウ球菌株によって血液に対して誘導された溶血を測定することにより、δ溶血素を検出することができる。また、δ溶血素は、δ溶血素とβ溶血素の溶血相乗効果を調べることでも検出できる(非特許文献4)。以下の各種方法が記載されている。Sakoulasらは、β溶血素によって大きな溶血領域を形成する黄色ブドウ球菌株RN4420を用いることでδ溶血素を検出している。また、派生法がSchweitzerらにより開示されている。これらの方法は簡単に行えるものの、「専用」の試験を行う必要があり、主観的な読み出し、すなわち、観察しにくい場合もある溶血相乗効果の検出を含む。最後に、これらの試験は、「ノーザンブロット」及びagr遺伝子のシークエンシングと比較して偽陰性の影響を受け得る(非特許文献13)。
歴史的に、動物モデルに対するバイオテストも用いられている。この場合、マウス又はモルモットの最小致死量[MLD]の測定値からδ溶血素の活性を検出することができる。しかしながら、これは必要とする用量が大きい(マウスMLD=110mg/kg、モルモットMLD=30mg/kg)。他の方法は、ウサギにおいてδ溶血素の皮膚壊死誘導能を調べることである。約1mgのδ溶血素によって、24時間後には広範囲の紅斑(直径>28mm)及び硬化が誘導され、D+3には壊死領域が誘導される。少ない用量でも落屑が見られる場合もある(非特許文献9)。
また、δ溶血素の発現は、RNAIIIを標的としたRT−PCRによっても評価できる。株から全RNAを抽出し、コンペティティブRT−PCRを行う。結果を標準化するために、Goerkeらは、増殖期であるかどうかに関係なく一定に発現するギラーゼ(gyr)をコードするハウスキーピング遺伝子を用いている。RNAIII RT−PCRは、感度が高く特異的な定量法である。しかしながら、その使用は、不純物が混入する恐れが大きいことから、専門の研究所に限られている(非特許文献23)。
δ溶血素の発現は、RNAIIIを標的とした「ノーザンブロット」によって間接的に検出することもできる(非特許文献24;非特許文献23;非特許文献25)。
機能不全を表し得る点様突然変異を同定するために、agr遺伝子座の完全なシークエンシングを行っているものもある(非特許文献25)。
いくつかのHPLC法も用いられている。2000年にOtto及びGotzが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による定性的且つ定量的なδ溶血素の測定方法を開示している。トリプチケースソイブロスでの細菌培養物の上清を19,000×gで5分間遠心分離する。その後、1mLのPHE(「フェニル誘導体化」)カラムを使用してHPLCにより上清を分析して、溶媒Bの10〜90%グラジエント(溶媒Aは0.1%トリフルオロ酢酸[TFA]/水混合物であり、溶媒Bは0.1%TFA/アセトニトリル混合物である)で溶出する。214又は280nmダイオードバーを備えたUV分光計によって検出を行う(非特許文献26)。それらに関して、2002年にはSomervilleらが、Otto及びGotzのHPLCによるδ溶血素の検出・測定方法に似た方法を開示しているが、そこでは電気スプレー源を用いた質量分析による検出と組み合わせている。それにより得られたδ溶血素の天然型及び脱ホルミル化型のm/zは、3007Thomson[Th]及び2972Thであった(非特許文献8)。
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上記に鑑み、本発明者らは、黄色ブドウ球菌のコロニーを検査するための方法であって、診断を下すこと、及び/又は、δ溶血素の有無との関連を確立することを可能にする新規方法に着目した。この方法は迅速且つ容易であり、特に、タンパク質の抽出のためにわずらわしい工程を必要としない。
本発明は、黄色ブドウ球菌の細菌集団を含むサンプルを質量分析法で検査する方法であって、
a)上記サンプル中に存在する分子をレーザービームの作用によりイオン化することが可能な媒体に上記サンプルを接触させて置く工程、
b)上記サンプル中に存在する分子をレーザービームを用いてイオン化する工程、
c)得られたイオン化された分子を電位差によって加速する工程、
d)そのイオン化され、加速された分子を、減圧下の少なくとも1本の管内で自由に移動させる工程、
e)そのイオン化され、加速され、自由に移動させた分子の少なくとも一部を検出して、それらが減圧下の少なくとも1本の管を通過するのにかかった時間を測定するとともに、任意の瞬間に検出されたイオン化された分子の数に相当するシグナルを得る工程、
f)その検出された分子の質量電荷比[m/z]を算出して、その検出された分子のm/z比の関数として、同じ質量電荷比[m/z]のイオン化された分子の数に相当するシグナルを得る工程、
g)工程b)で得られたイオン化された分子のなかに、質量/電荷比[m/z]が3005±5Th又は3035±5Thのイオン化された分子が存在するかどうかを直接又は間接的に決定する工程、
h)工程g)で得られた結果に沿った決定を下す工程
を含む方法に関する。
第一の選択的実施形態によると、工程h)は、m/zが3005±5Thのイオン化された分子とm/zが3035±5Thのイオン化された分子の両方が存在しないことと、分析中の黄色ブドウ球菌の細菌集団にδ溶血素及びその変異体G10Sが存在しないこととの相関性を用いる工程である。
配列番号1:XaaAQDIISTIGDLVKWIIDTVNKFTKK(Xaa=N末端位に表されたメチオニン)の配列を有するδ溶血素のプロトン化した単一同位体質量(MH)は、3005,6Thである。
配列番号2:XaaAQDIISTISDLVKWIIDTVNKFTKK(Xaa=N末端位に表されたメチオニン)の配列を有するその変異体のプロトン化した単一同位体質量(MH)は、3035,6Thである。
第二の選択的実施形態によると、工程h)は、m/zが3005±5Thのイオン化された分子とm/zが3035±5Thのイオン化された分子の両方が存在しないことと、分析中の黄色ブドウ球菌の細菌集団のagr(「Accessory Gene Regulator」)システムが機能不全であることとの相関性を用いる工程である。
第三の選択的実施形態によると、分析する黄色ブドウ球菌の細菌集団は、患者から採取した生体サンプル由来であり、工程h)は、m/zが3005±5Thのイオン化された分子とm/zが3035±5Thのイオン化された分子の両方が存在しないことと、agrシステムの機能不全に関連することが知られている臨床診断を上記患者に対して下すこととの相関性を用いる工程である。
第四の選択的実施形態によると、分析する黄色ブドウ球菌の細菌集団は、患者から採取した生体サンプル由来であり、工程h)は、m/zが3005±5Thのイオン化された分子とm/zが3035±5Thのイオン化された分子の両方が存在しないことと、上記患者が慢性感染症を有するとの診断との相関性を用いる工程である。慢性感染症は、検査時に分離された黄色ブドウ球菌株と同一の耐性記録を有する株が、6か月前まで分離されていることを確認するという臨床・生物学的基準に基づいて定義される。そのような慢性感染症の例として、骨・関節感染症、慢性糖尿病性足感染症、移植可能な血管装置による感染症が挙げられる。
第五の選択的実施形態によると、工程h)は、m/zが3005±5Thのイオン化された分子とm/zが3035±5Thのイオン化された分子の両方が存在しないことと、分析中の黄色ブドウ球菌の細菌集団をグリコペプチドに対する感受性が低い恐れがあるもの(すなわちGISA)として分類することとの相関性を用いる工程である。
本発明の方法を適用するサンプルは、生体由来、特に動物又はヒト由来であってもよい。そして、全血、血清、血漿、尿、脳脊髄液、有機分泌物等の体液のサンプル、組織サンプル、又は、分離された細胞に相当するものであってもよい。このサンプルは、そのまま使用してもよいし、あるいは、検査前に当業者に公知の方法に従って濃縮型又は培養型の調製を施してもよい。
本発明の範囲内において、検査するサンプルは、細菌集団を含む細胞媒体に相当するものであり、抽出又は精製工程を経て得られた1種以上のタンパク質ではない。検査するサンプルは細菌集団を含むこと、すなわち、含まれる細菌数は少なくとも10であることが好ましい。
特に、生体サンプル由来の細菌培養液、又は、血液培養物から検出を行ってもよい。最も多くの場合、ゲロースでの細菌培養物から得たサンプルから質量スペクトルを得る。
細胞媒体を直接マトリックス中又はマトリックス上に懸濁してもよい。このような方法は、全細胞型質量分析(WC−MS(「whole−cell mass spectrometry」))の名前で知られており、長くて時間のかかる抽出操作を事前に行わずに実施できる。この方法は、以前から既に細菌の同定のために広く用いられているものの、タンパク質同定の際の使用は、サンプルが複雑であることから非常に限られている。ほとんどの場合、WC−MSで得られたプロファイルに対応するタンパク質の割り当ては知られていないか、あるいは曖昧なものである。細菌の同定につながるタンパク質プロファイルは、これらのプロファイルのタンパク質組成(すなわち、ピークとタンパク質との対応)をみることなく、ただ比較される(Welker,M.及びE.R.Moore(2011).“Applications of whole−cell matrix−15 assisted laser−desorption/ionization time−of−flight mass spectrometry in systematic microbiology.”Syst Appl Microbiol 34(1):2−11)。しかしながら、この方法を、細菌による病気の発生に関連したバイオマーカー及び/又はビルレンス因子を検出するために使用することを提案しているものもある(Bizzini,A.及びG.Greub(2010).“Matrix−assisted laser desorption ionization time−of−flight mass spectrometry,a revolution in clinical microbial identification.”Clin Microbiol Infect 16(11):1614−1619)。黄色ブドウ球菌については、MRSAとMSSAを区別可能であると示しているものもあるが、使用している株のコレクションが限られており(n=10株)、サンプルを調製するための予備操作(すなわち化学的及び機械的抽出)を必要とするものであった(Edwards−Jones,V.,M.A.Claydon,et al.(2000).“Rapid discrimination between methicillin−sensitive and methicillin−resistant Staphylococcus aureus by intact cell mass spectrometry.”J Med Microbiol 49(3):295−300)。他に、黄色ブドウ球菌のPVLが検出可能であると記載しているものもある(Bittar,F.,Z.Ouchenane,et al.(2009).“MALDI−TOF−MS for rapid detection of staphylococcal Panton−Valentine leukocidin.”Int J Antimicrob Agents 34(5):467−470)。しかしながら、これらの結果は非特異的であることが分かっており、おそらく分析した株のコレクションが同一クローンに属することを反映したものと思われる(Dauwalder,O.,E.Carbonnelle,et al.(2010),“Detection of Panton−Valentine toxin in Staphylococcus aureus by mass spectrometry directly from colony:time has not yet come.”Int J Antimicrob Agents 36(2):193−194;Szabados,F.,K.Becker,et al.(2011).“The matrix−assisted laser desorption/ionisation time−of−flight mass spectrometry(MALDI−TOF MS)−based protein peaks of 4448 and 5302 Da are not associated with the presence of Panton−Valentine leukocidin.”Int J Med Microbiol 301(1):58−63)。
そこで、本発明の範囲内において、本発明者らは、全く予想されなかった方法で、得られた質量スペクトルにm/z値が3005±5Th又は3035±5Thのピークが存在すること、並びに、3005±5Th及び3035±5Thの両方のピークが存在しないことはそれぞれ、δ溶血素又はその変異体が存在すること及び存在しないことに関連し得ることを示し、したがって、臨床診断を下すことを可能にした。
本発明に係る方法の範囲内において、用いる選択的形態に関わらず、質量分析は、細菌数が10〜10、好ましくは10〜10の集団を含むサンプルに行うのが有利で好ましい。質量分析にかけるサンプルを35±2℃で18〜48時間培養した後、黄色ブドウ球菌増殖用の標準ゲロース培地に配置する場合、その細菌数は、コロニー形成単位(CFU)のカウント数に等しいものとする。
通常、飛行時間の測定と組み合わせた任意のマトリックス支援脱離イオン化質量分析法を本発明の範囲内において用いることができる。
特定の実施形態では、用いる質量分析法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型(MALDI−TOF)「質量分析」(MS)であり、これは特に比較的容易に適用できるという利点がある。
他の特定の実施形態によると、用いる質量分析法は、飛行時間に応じて2回の連続した分離を行うMALDI−TOF−TOFタンデムMSであり、これは特に非常に良好な特異度を有するという利点がある。
イオン化の前に、サンプルをマトリックスと接触させて置くことが好ましい。
使用するマトリックスは、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシケイ皮酸(すなわち、シナプ酸又はシナピン酸)、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(すなわち、α−シアノ、α−マトリックス又はCHCA)、フェルラ酸及び2,5−ジヒドキシ安息香酸(すなわちDHB)から選択される化合物を含むことが有利である。
サンプルをマトリックスと接触させて置くための以下のような配置法を本発明の範囲内において用いることができる。乾燥したマトリックス層に配置するいわゆる「薄層」配置、マトリックスを滴下して配置するいわゆる「乾燥滴下」配置、マトリックス層に配置した後にマトリックスを滴下するいわゆる「サンドウィッチ」配置が挙げられる。
通常、マトリックスは感光性であり、サンプルの存在下で分子の完全性を保ちながら結晶化される。そのようなマトリックス、特にMS MALDI−TOFに適合したものは周知であり、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシケイ皮酸、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、フェルラ酸及び2,5−ジヒドロキシ安息香酸から選択される。他の多くの化合物も当業者には公知である。大気圧でも減圧下でさえも結晶化しない液体マトリックスも存在する(Tholey,A.及びE.Heinzle(2006),“Ionic (liquid) matrices for matrix−assisted laser desorption/ionization mass spectrometry−applications and perspectives.”Anal Bioanal Chem 386(1):24−37)。レーザービームの影響下でサンプルの分子をイオン化することが可能な他の化合物を用いてもよい。特に、「ナノ支援レーザー脱離イオン化(NALDI)」又は「シリコンを利用した脱離イオン化(DIOS)」法のように、ターゲット、すなわち、サンプルを配置する支持体が直接マトリックスの役割を果たしてもよい。レーザービームは、マトリックスの昇華又は気化を促進する波長であればいかなる波長を有していてもよい。紫外線波長、さらには赤外線波長が好ましく用いられる。
マトリックスでは、上記化合物が、溶液、最も多くの場合は水、好ましくは「超純水」、又は、水/有機溶媒混合物中に含まれている。従来用いられている有機溶媒の例として、アセトン、アセトニトリル、メタノール又はエタノールが挙げられ、トリフルオロ酢酸(TFA)が添加されることもある。例えば、マトリックスの一例として、アセトニトリル/水/TFA(50/50/0.1(v/v))混合物中に含まれた20mg/mLのシナプ酸からなるものが挙げられる。水が親水性分子の溶解を可能にするのに対し、有機溶媒はサンプル中の疎水性分子が溶液中に溶解するのを可能にする。TFA等の酸が存在すると、プロトン(H)の捕獲によりサンプルの分子のイオン化が促進される。
サンプルをターゲットと称される支持体に、最も多くの場合にはスポット状に配置するのが好ましい。マトリックスはサンプル上に直接配置してもよく、その後、サンプルと混合される。
場合によっては、本発明に係る方法は、さらに、工程b)の前に、サンプルの分子が表面又は内部に吸着したマトリックスの結晶化を行う工程を含む。
最も多くの場合、マトリックスの結晶化は、サンプルが内部又は表面に配置されたマトリックスを乾燥させることによって行われる。
特定の実施形態によると、サンプルを接触させる媒体は、ターゲット上に配置した、MALDI MSに適したマトリックスであり、上記方法は、工程b)の前に、サンプルの分子が表面又は内部に吸着したマトリックスの結晶化を行う。この場合、マトリックスは、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシケイ皮酸、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、フェルラ酸及び2,5−ジヒドロキシ安息香酸から選択される化合物を含んでいるのが好ましい。
黄色ブドウ球菌を増やすために、サンプルを事前にブロス又はゲロースで培養しておいてもよい。ゲロースを含む又はブロスとしてのそのような媒体は当業者に周知である。例えば、(ウマ又はヒツジの)血液を含むゲロース;コロンビアゲロース;Polyvitex(R)「チョコレート」ゲロース;bioMerieux社製の黄色ブドウ球菌検出用発色ゲロースであるChromID Staph(R)等が挙げられる。ゲロースでの濃縮は、ターゲット上に配置される黄色ブドウ球菌の純粋なコロニーを得ることができることから、特に好ましい。その場合、サンプルを例えば17〜30℃の範囲の温度、特に室温(22℃)で数分間、例えば5分〜2時間放置するなどして、マトリックス中の溶媒を蒸発させる。この溶媒の蒸発によって、サンプルが配置されたマトリックスを結晶化させることができる。次に、結晶化したマトリックス中に配置されたサンプルを穏やかにイオン化する。このイオン化は、337.1nmのUVビームを発する窒素レーザーを用いて行うのが好ましい。
イオン化中、サンプルはレーザーにより励起される。そして、マトリックスの結晶は光子エネルギーを吸収し、このエネルギーが放出されることで、マトリックスが昇華し、サンプルが脱離し、プラズマと呼ばれる状態の物質が出現する。このプラズマ中では、マトリックスとサンプル分子との間で電荷移動が起こる。例えば、プロトンがマトリックスから脱離し、サンプルのタンパク質及びペプチドに運ばれる。この工程により、生体分子を破壊することなく穏やかにイオン化することができる。こうして、サンプルは異なる大きさのイオンを放出する。次いで、このイオンが電界で加速され、減圧下の飛行管と呼ばれる管内で自由飛行する。最も多くの場合、イオン化中及び発生したイオンの加速中に印加される圧力は、10−6〜10−9ミリバール[mbar]の範囲である。そして、最も小さいイオンが大きなイオンよりも早く「移動」し、それにより、その分離が可能となる。飛行管の末端には検出器が位置している。イオンの飛行時間(TOF)を用いて、その質量を算出する。こうして、検出器に衝突した分子のm/z比の関数として、同じ質量電荷比[m/z]のイオン化された分子の数に相当するシグナルの強度を表す質量スペクトルを得る。質量電荷比[m/z]は、Thomson[Th]で表される。質量分析計に導入されてしまえば、サンプルのスペクトルは非常に早く得られ、最も多くの場合、1分未満で得られる。
分析中のサンプルが実際に黄色ブドウ球菌を含むことは、MALDI−TOF MSの前に試験を行うか、又は、MALDI−TOF質量スペクトルの取得と同時に判断することもできる。この場合、全MALDI−TOF質量スペクトルは、最も多くの場合、70〜200のピークを含んでいるが、スペクトルデータベースと比較することにより、分析中の細菌集団が実際に黄色ブドウ球菌に相当するかどうかを決定することができる。この比較は、供給メーカーに応じて異なるアルゴリズムの使用に基づくものであり、この比較により細菌が同定される(Cherkaoui,A.,J.Hibbs,et al.(2010).“Comparison of two matrix−assisted laser desorption ionization−time of flight mass spectrometry methods with conventional phenotypic identification for routine identification of bacteria to the species level.”J Clin Microbiol 48(4):1169−1175)。
用いる質量分析法、特にMALDI−TOF型又はMALDI−TOF−TOF型に関わらず、これまでに詳述したすべての実施形態を適用することができる。
用いる質量分析法がMALDI−TOF MSの場合、工程g)の決定は、得られた質量スペクトルにm/z値が3005±5Th若しくは3035±5Thのピークが存在すること、又は、3005±5Th及び3035±5Thの両方のピークが存在しないことから直接推断されるのが好ましい。
用いる質量分析法がMALDI−TOF−TOF MSの場合、工程d)において、上記イオン化された分子を減圧下の第一管内で移動させ、質量m/zが3005±5Thのイオン、及び/又は、質量m/zが3035±5Thのイオンを選択し、そのイオン化された分子を例えば衝突などによって断片化した後に再び加速して、上記イオン化された分子の断片化されたもの又はされていないものを第二管内で自由に移動させるのが好ましい。
MALDI−TOF−TOF MSでは、工程g)の決定は、以下のy及びbイオンフラグメント:
・3005±5Thのピークの場合には、質量147.113、275.208、376.255、523.324、651.419、765.462、864.530、965.578、1080.605、1193.689、1306.773、1492.852、1620.947、1720.016、1833.100、1948.127、2005.148、2118.232、2219.280、2306.312、2419.396、2532.480、2647.507、2775.565、2846.603及び2976.635±1.5Th(公差)のyイオンフラグメント;並びに、質量131.040、202.077、330.136、445.163、558.247、671.331、758.363、859.410、972.494、1029.516、1144.543、1257.627、1356.695、1484.790、1670.870、1783.954、1897.038、2012.065、2113.112、2212.181、2326.224、2454.319、2601.387、2702.435、2830.530及び2958.625±1.5Th(公差)のbイオンフラグメント、並びに/又は、
・3035±5Thのピークの場合には、質量147.113、275.208、376.255、523.324、651.419、765.462、864.530、965.578、1080.605、1193.689、1306.773、1492.852、1620.947、1720.016、1833.100、1948.127、2035.159、2148.243、2249.290、2336.322、2449.406、2562.491、2677.517、2805.576、2876.613及び3006.646±1.5Th(公差)のyイオンフラグメント;並びに、質量131.040、202.077、330.136、445.163、558.247、671.331、758.363、859.410、972.494、1059.526、1174.553、1287.638、1386.706、1514.801、1700.880、1813.964、1927.048、2042.075、2143.123、2242.191、2356.234、2484.329、2631.398、2732.445、2860.540及び2988.635±1.5Th(公差)のbイオンフラグメント
のうちの少なくとも5個、好ましくは少なくとも10個のフラグメントの存在から間接的に推断されるのが好ましい。
本発明に従って用いることができるMALDI−TOF質量分析法は、特に、質量スペクトルを得るための以下の連続した工程:
・飛行時間ごとのマトリックス支援脱離イオン化による質量分析に適したマトリックスの表面又は内部に、検査するサンプルを配置する工程、
・上記サンプルの分子が表面又は内部に吸着した上記マトリックスの結晶化を行う工程、
・その結晶化したマトリックス/サンプル混合物をレーザービームを用いてイオン化する工程、
・得られたイオン化された分子を電位差によって加速する工程、
・そのイオン化され、加速された分子を減圧下の管内で自由に移動させる工程、
・そのイオン化された分子を上記管の出口で検出して、それらが減圧下の上記管を通過するのにかかった時間を測定するとともに、任意の瞬間に検出器に到達したイオン化された分子の数に相当するシグナルを得る工程、
・その検出された分子の質量電荷比[m/z]を算出して、その検出された分子のm/z比の関数として、同じ質量電荷比[m/z]のイオン化された分子の数に相当するシグナルを得る工程
を含んでもよい。
通常、イオン化された分子の質量電荷比[m/z]と減圧下の管内の移動時間とを関係づける式として表される、用いる質量分析計の予備校正を考慮して、m/z比は算出される。
本発明の範囲内において使用できるMALDI−TOF MSは、電界に曝露された異なる電荷及び質量のイオンがA点からB点まで移動する時間の測定に基づくものである。この移動時間の測定は、イオンの質量及び電荷に依存しており、それによりその分離が可能となる(Welker,M.及びE.R.Moore(2011).“Applications of whole−cell matrix−assisted laser−desorption/ionization time−of−flight mass spectrometry in systematic microbiology.”Syst Appl Microbiol 34(1):2−11)。
また、本発明の範囲内において使用できるMALDI−TOF−TOF法は、特に、質量スペクトルを得るための以下の工程:
・MALDI−TOF−TOF MSに適したマトリックスの表面又は内部に、検査するサンプルを配置する工程、
・上記サンプルの分子が表面又は内部に吸着した上記マトリックスの結晶化を行う工程、
・その結晶化したマトリックス/サンプル混合物をレーザービームを用いてイオン化する工程、
・得られたイオン化された分子を電位差によって加速する工程、
・そのイオン化され、加速された分子を減圧下の第一管内で自由に移動させる工程、
・上記第一管の通過後、断片化する分子イオンの質量を有するイオン化された分子を選択し、他のすべてのイオンを例えば静電偏向器等によって除去する工程、
・上記イオン化された分子の断片化を、場合によっては不活性ガスを用いることにより、行う工程、
・上記イオン化された分子を加速させるための電位を例えば電位グリッド等により再び増加させて、上記フラグメントイオン及び前駆体イオンに異なる運動エネルギーを付与する工程、
・上記イオン化された分子の断片化されたもの又はされていないものを減圧下の第二管内で自由に移動させる工程、
・そのイオン化された分子を上記管の出口で検出して、それらが減圧下の上記管を通過するのにかかった時間を測定するとともに、任意の瞬間に検出器に到達したイオン化された分子の数に相当するシグナルを得る工程、
・その検出された分子の質量電荷比[m/z]を算出して、その検出された分子のm/z比の関数として、同じ質量電荷比[m/z]のイオン化された分子の数に相当するシグナルを得る工程
を含んでもよい。
通常、イオン化された分子の質量電荷比[m/z]と減圧下の管内の移動時間とを関係づける式として表される、用いる質量分析計の予備校正を考慮して、m/z比は算出される。前駆体イオンの質量を用いてこの校正を行ってもよい。
質量スペクトルを作成するために、任意のタイプのMALDI−TOF又はMALDI−TOF/TOF質量分析計を用いることができる。そのような分析計は、
i)サンプル/マトリックス混合物をイオン化するためのイオン化源(通常、UVレーザー)と;
ii)イオン化された分子を電位差を印加することにより加速するための加速器と;
iii)イオン化され、加速された分子が内部で移動する減圧下の管と;
iv)形成された分子イオンをその質量電荷比(m/z)に応じて分離するための質量分析計と;
v)分子イオンによって直接生成されたシグナルを測定するための検出器
を有する。
MALDI−TOF−TOF質量分析計は、減圧下の管が、延長線上に位置する2つの部分(明細書中、減圧下の第一管及び第二管とも称する)に分かれていることが異なるのみで、あとはMALDI−TOF質量分析計と同一である。この構造により、飛行時間に応じて分子イオンを連続して2回分離することができる。すなわち、第一部分では分子イオンが選択され、その分子イオンが管の第二部分においてフラグメントに分離される。「フラグメント(断片)」とは、選択された分子イオンを破壊することによって得られる任意の分子構造を意味する。
イオンの断片化は、イオン化の初期に行ってもよく、あるいは、上述した管の2つの部分の間に位置する衝突室で行ってもよい。イオン化の初期では、分子に吸収されるレーザービームのエネルギーによって直接、断片化してもよく、あるいは、分子プラズマ中の中性分子又はイオン化された分子同士を衝突させることによって断片化してもよい。断片化がイオンを加速させる段階の前に起こる場合、フラグメントは各々の質量に応じて移動する。加速段階に起こる場合は、いわゆる準安定イオンをうまく分離できない。加速初期以降に起こる場合、フラグメントイオンとそのイオン化された親分子(前駆体イオン)は同じ運動エネルギーを有し、同じ速度で移動する。この最後のタイプの断片化は、ポストソース断片化と呼ばれ、MALDI−TOF−TOF MS法で用いられる。管の第一部分(本明細書中、減圧下の第一管とも称する)によって、標的の前駆体イオンの質量を含み、且つ、質量δで限定された質量ウインドウ(領域)を選択することができる。そして、前駆体イオン及びそのフラグメントは、減圧下の管の2つの部分の間で再び加速される。こうして、上記イオンはその質量に応じた運動エネルギーを獲得する。最後に、各々の質量に応じて、減圧下の管の第二部分(本明細書中、減圧下の第二管とも称する)へと移動する。こうして、任意の前駆体イオンについて発生した全部のフラグメントを検出することができる。
この方法の代替法では、減圧下の管の両方の部分の間の衝突室内にアルゴン等の不活性ガスを加える。この場合、イオン化された分子は、不活性ガスと衝突しながら断片化される。その後、それらを上述したように加速し、分離することができる。
MALDI TOF/TOF MSによって、タンパク質がペプチド結合の辺りで好ましく断片化され、通常の命名法によるbタイプイオンとyタイプイオンが本質的に発生する(Paizs,B.及びS.Suhai(2005).“Fragmentation pathways of protonated peptides.”Mass Spectrom Rev 24(4):508−548)。インモニウムイオン、フラグメントa等の他のフラグメントも考えられる。
タンパク質のアミノ酸配列情報を得て、タンパク質配列を同定しようとする目的のために断片化プロファイルを用いることは、当業者が日常的に行っていることである。この目的のために、特に、Matrix Science社(英国ロンドン)製のMascot等のソフトウェアパッケージが使用される。
こうして、配列番号1のδ溶血素の大部分は、
・質量147.113、275.208、376.255、523.324、651.419、765.462、864.530、965.578、1080.605、1193.689、1306.773、1492.852、1620.947、1720.016、1833.100、1948.127、2005.148、2118.232、2219.280、2306.312、2419.396、2532.480、2647.507、2775.565、2846.603及び2976.635のyイオンフラグメント;並びに、
・質量131.040、202.077、330.136、445.163、558.247、671.331、758.363、859.410、972.494、1029.516、1144.543、1257.627、1356.695、1484.790、1670.870、1783.954、1897.038、2012.065、2113.112、2212.181、2326.224、2454.319、2601.387、2702.435、2830.530及び2958.625のbイオンフラグメントとなる。
また、配列番号2のδ溶血素G10Sの大部分は、
・質量147.113、275.208、376.255、523.324、651.419、765.462、864.530、965.578、1080.605、1193.689、1306.773、1492.852、1620.947、1720.016、1833.100、1948.127、2035.159、2148.243、2249.290、2336.322、2449.406、2562.491、2677.517、2805.576、2876.613及び3006.646のyイオンフラグメント;並びに、
・質量131.040、202.077、330.136、445.163、558.247、671.331、758.363、859.410、972.494、1059.526、1174.553、1287.638、1386.706、1514.801、1700.880、1813.964、1927.048、2042.075、2143.123、2242.191、2356.234、2484.329、2631.398、2732.445、2860.540及び2988.635のbイオンフラグメントとなる。
添付の図面を参照して、実施例によって以下に本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定する性質のものではない。
δ溶血素の一次配列を示す(非特許文献10)。 MALDI TOF MSによる黄色ブドウ球菌の同質遺伝子系統由来のδ溶血素の検出を示す。 MALDI TOF MSによる同質遺伝子系統3株及び臨床株2株のδ溶血素の検出に対する培養時間(18〜48時間)の影響を検討する。 MALDI TOF MSによる黄色ブドウ球菌の臨床株由来のδ溶血素及びその変異体G10Sの検出を示す。
1.装置
●マトリックス
そのまま使用可能なα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸[CHCA]マトリックス(品番411071、bioMerieux社(フランス国マルシーレトワール))を使用。
●ターゲット及び内部標準
使い捨てのターゲットVitek MS DS(R)(品番410893、bioMerieux社(フランス国マルシーレトワール))を使用。各分析に大腸菌ATCC8739株を使用することで、質量分析計の校正を行い、その校正の有効性を確認する。
●配置タイプ
黄色ブドウ球菌株は、少量のコロニーの薄いスメア(薄層状のスメア)として配置する。このスメアを室温で5〜15分間乾燥させる。その後、1ミリリットルのCHCAマトリックスを配置してから、室温で約5〜15分間乾燥させる。
MALDI TOF質量分析計
MALDI TOF型質量分析計(型式:Axima Assurance(R)、Shimadzu社(フランス国シャンシュルマルヌ))を使用。
●MALDI TOF質量分析計における分析時のパラメーター化
黄色ブドウ球菌株の分析時に以下の質量分析計の調整パラメーターを用いた。
・質量の検出領域:2,000〜20,000Th
・レーザーの出力:80ボルト
・レーザーの周波数:50ヘルツ
・レーザータイプ:N
・質量分析計モード:線形、ポジティブ
・引出電源:8330Th
・Activated≪self−quality≫モード
・最小強度:10mV
・最小シグナル/ノイズ比:10
・最低許容解像度:300
・ヒット数:5ヒット/プロファイル
・スペクトル毎のプロファイル数:100
●ソフトウェアパッケージ
Sirweb−Maldi−Tof(R)version 11ソフトウェアパッケージ(I2A社(フランス国ペロル))又はTarget Manager(R)version 1.12ソフトウェアパッケージ(bioMerieux社(フランス国マルシーレトワール))を用いてプレートの使用計画(plate plan)を作成する。質量分析計は、LaunchPad(R)version 2.8.4.20081127ソフトウェアパッケージ(Shimadzu社(フランス国シャンシュルマルヌ))により作動させる。
2.方法
●分析前パラメーター
ウマ血液を含むゲロース(TSH、品番43061、bioMerieux社(フランス国マルシーレトワール))で好気性雰囲気下、35±2℃で18〜24時間、継代培養した後の株を分析。
ポリエチレングリコール(PEG)3000からなる質量分析用校正標準を用いた、2,800〜3,200m/zの領域における質量分析計の初期校正(細菌同定のためのものとは別に行う)。
●分析パラメーター
少量のコロニーから、細菌同定の際に日常的に用いられる「スメア法」に従って使い捨てのターゲット上に配置。
5〜15分間室温で乾燥。
CHCAマトリックス1μLを上記配置物上に添加。
5〜15分間乾燥。
Sirweb−Maldi−Tof(R)又はTarget Manager(R)ソフトウェアパッケージによって「プレートの使用計画」を作成。
質量分析計Axima Assurance(R)を制御するためのLaunchpad(R)ソフトウェアパッケージを用いてMALDI TOF MSによる分析を開始。
3.結果
a.検出の有効性
i.黄色ブドウ球菌の同質遺伝子系統の使用
agr遺伝子座の対立遺伝子置換で得られたagr/rnaIII/hld系の同質遺伝子系統の分析によって、agrシステム機能株について3005±5Thのピークが存在することが示された。これに対して、agrシステムが変異していること以外は上記親株と同一である同質遺伝子系統では、3005±5Thのピークが存在しなかった。試験したRN6390株は、agrシステムが機能しており、δ溶血素を産生する。一方、LUG 950株は、RN6390株から派生したものであるが、RNAIIIをコードする遺伝子が無効化されており、この株はδ溶血素合成が欠損している。さらに、RN 6911株は、RN6390株のagr遺伝子座(RNAII及びRNAIII)が完全に欠失した株であり、この株はδ溶血素合成が欠損している。表1及び図2に、得られた結果をまとめる。図2には、試験した3株で得られた、m/z比2,800〜3,200のWC MALDI−TOF MS質量スペクトルを示す。
Figure 0006284883
ii.室内再現性及び室内精度のデータ
この検出を日常業務として行う場合に、必要とされる培養条件が極めて厳しいものにならないように、室内再現性及び室内精度のデータを確立した。このために、上述した同質遺伝子系統3株(すなわち、RN6390;LUG 950;及び、RN 6911)を使用し、さらに、一方はδ溶血素を発現し(すなわちBE1046 1395)、他方は発現しない(すなわちBE1048 1354)臨床株2株を使用した。ウマ血液を含むゲロース(TSH、品番43061、bioMerieux社(フランス国マルシーレトワール))でこれらの株を18、24及び48時間培養した。そして、これらの株をWC−MS MALDI TOF MSで2回試験した。すべてのδ溶血素産生株について、すべての場合及びすべての培養時間で3005±5Thのピークが検出され、agrシステムの機能不全株が存在しないことが分かった(図3)。
iii.δ溶血素の検出に対する培地の影響
培地の影響についても評価した。同じ5株(同質遺伝子系統3株、及び、一方はδ溶血素を発現し、他方は発現しない臨床株2株)を以下の5つの異なる培地で好気条件下、24時間、35±2℃で培養した。ウマ血液を含むゲロース(TSH、品番43061、bioMerieux社(フランス国マルシーレトワール));コロンビアゲロース(COS、品番43041、bioMerieux社(フランス国マルシーレトワール));「チョコレート」ゲロース(PVX、品番43101、bioMerieux社(フランス国マルシーレトワール));ゲロースP(GP、Bacto−Peptone DIFCO(R)、Becton Dickinson社(フランス国ポンドクレ));及び、黄色ブドウ球菌検出用発色ゲロース(ChromID Staph(R)、品番43371、bioMerieux社(フランス国マルシーレトワール))。表2に示されるように、これらの異なる培養条件は、3005±5Thのピークを用いたWC−MALDI TOF MSによるδ溶血素の検出に影響しない。
Figure 0006284883
iv.「Centre de Biologie et Pathologie Est des Hospices Civils de Lyon」の微生物学研究所から得た臨床株のコレクションの前向き分析
3005±5Thのピークが存在しないことで明らかになるagrシステムの機能不全の臨床的影響を調べるために、Hospices Civils de Lyon[HCL]の「Centre de Biologie et Pathologie Est」[CPBE]の細菌学研究所で2010年11月から2011年3月の間に168株の分離株のコレクションを予め採取した。これらのうち139株(82.7%)は、WC−MALDI TOF MSにおいて3005±5Thのピークを示し;12株(7.2%)は、3035±5Thのピークを示すが、3005±5Thは示さず;最後に、17株(10.1%)は、3005±5Thのピークも3035±5Thのピークも示さなかった。第二の方法で得られた結果を確認するために、血液を含むゲロースでの溶血試験を行った。上記17株は、3005±5Thでも3035±5Thでもピークを示さず、溶血も見られなかった。それに対して、3005±5Thのピークは示さないが、3035±5Thのピークは示す10株は、溶血試験陽性であった。最後に、上記139株から無作為に選ばれた、3005±5Thのピークを有する5株の溶血試験から、δ溶血素の検出が陽性であることが分かった。3005±5Thのピークが存在しない場合の3035±5Thのピークの存在が溶血の存在と関連していることを説明するために、δ溶血素をコードする遺伝子hldのシークエンシングを行った。上記10株では、10位のグリシンがセリンに置換された変異(G10S)が検出されたが、これはMALDI TOF MSで測定された質量の変化を説明するものである(図4)。図4にm/z比2,800〜3,200のWC−MALDI TOF MSスペクトルを示した株のうち、BE1046 1395株及びBE1103 3028株は、野生型δ溶血素(δ)を産生し;BE1050 5040株及びBE1104 4293株は、G10S変異を有するδ溶血素(δ+G10S)を産生し;BE1106 5397株及びBE1048 2354株は、δ溶血素が欠損している(δ)。
v.MALDI TOF/TOF分析
「MALDI−TOF/飛行時間」質量分析法[MALDI TOF−TOF MS]によって以下の9株を分析した。上述の同質遺伝子系統3株(すなわち、RN6390;LUG 950;及び、RN 6911)、3005±5Thのピークも3035±5Thのピークも示さない非溶血性臨床株2株、3005±5Thのピークを示す溶血性臨床株2株、並びに、3035±5Thのピークを示すが、3005±5Thのピークは示さない溶血性臨床株2株。
このように、RN6390株の3005±5ThのピークをMALDI−TOF−TOFモードで分析することにより、質量147.252、201.359、275.471、330.459、376.514、446.482、523.633、559.574、651.7、672.606、757.71、765.841、864.832、965.922、1080.95、1194.071、1307.149、1356.133、1493.23、1621.321、1672.21、1720.294、1785.044、1833.275、1948.428、2005.551、2119.576、2219.583、2307.544、2420.56、2533.786、2600.009、2602.657、2647.743、2774.373、2776.851及び2975.308Thのδ溶血素のフラグメントが検出できた。これらのフラグメントはそれぞれ、配列番号1のδ溶血素のイオンy1、y2、y3、y4、y5、y6、y7、y8、y9、y10、y11、y12、y13、y14、y15、y16、y17、y18、y19、y20、y21、y22、y23、y24、y26、b2、b3、b4、b5、b6、b7、b13、b15、b16及びb23(公差±1.5Th)に相当する。したがって、5つを超える種類の配列番号1のδ溶血素に属するフラグメントが検出された。
また、BE1050 5040株の3035±5ThのピークをMALDI−TOF−TOFモードで分析することにより、質量275.408、330.363、376.414、446.463、523.39、559.462、651.572、757.505、765.682、860.673、864.661、965.714、1080.77、1175.788、1193.829、1306.922、1493.064、1621.166、1701.34、1720.251、1814.587、1833.381、1948.485、2035.545、2148.557、2249.99、2336.585、2449.681、2562.833、2677.454及び2677.935Thのδ溶血素G10Sのフラグメントが検出できた。これらのフラグメントはそれぞれ、配列番号2のδ溶血素G10Sのイオンy2、y3、y4、y5、y6、y7、y8、y9、y10、y11、y12、y13、y14、y15、y16、y17、y18、y19、y20、y21、y22、y23、b3、b4、b5、b7、b8、b11、b15及びb16(公差±1.5Th)に相当する。したがって、5つを超える種類の配列番号2のδ溶血素に属するフラグメントが検出された。
これに対して、LUG 950株の3053±5ThのピークのMALDI−TOF−TOF分析では、配列番号1又は2に対応する質量フラグメントは検出できなかった。以下の質量ピークのみが検出された:72.826、96.485、128.727、214.235、242.298、263.249、267.247、285.276、362.359、476.458、1206.984及び1848.786Th。
いずれの場合も、MALDI TOF−TOF質量分析法による分析、及び、データベースMascott(R)(Matrix Science社(英国ロンドン))による検索によって、上述の結果のすべて、特に、3035±5Thのピークとδ溶血素の変異体G10Sとの対応関係を確認した。
これらの実施例により、MALDI−TOFモードは、より容易に適用できるが、MALDI−TOF−TOFモードと同様に同定が行える(但し、MALDI−TOF−TOFモードの方がより特異的である)ことが示された。
表3に、得られた結果をすべてまとめる。
Figure 0006284883
最後に、同一クローンに属する株が含まれることによる偏りを防ぐために、上記δ溶血素欠損株17株を遺伝子チップ(IDENTIBAC(R)、Alere社(フランス))を用いて分析したところ、それらが4つのクローン複合体(clonal complexes)及び3つの異なる遺伝子プールに属することが示された。
vi.感染の慢性性との関連
上記分離株168株の採取と並行して、黄色ブドウ球菌の感染又は保菌の急性性/慢性性に関する臨床情報を集めた。慢性感染症は、検査時に分離された黄色ブドウ球菌株と同一の耐性記録を有する株が、6か月前まで分離されていることを確認するという臨床・生物学的基準に基づいて定義される。それ以外の場合はすべて、その感染又は保菌を急性として分類した。また、高頻度で慢性感染症との関連が認められる移植可能な器具:カテーテル、骨・関節プロテーゼ又は血管プロテーゼ(Hawkins,C.,J.Huang,et al.(2007).“Persistent Staphylococcus aureus 45 bacteremia:an analysis of risk factors and outcomes.”Arch Intern Med 167(17):1861−1867)の存在についても情報を集めた。
慢性感染症の場合に分離された34株については、11株がδ溶血素を産生しなかったのに対し、急性感染症の場合には、分離された134株のうち6株であった。よって、単変量解析において、δ溶血素欠損と慢性感染症との間に統計的に有意な関連(p=0.001)が明らかとなった。また、多変量解析でも、このようなδ溶血素の欠如と感染の慢性性との関連(MSSAではp=0.023、MRSAではp=0.082)が認められる。それに対して、溶血素が検出されないことと移植可能装置の存在とには何ら関連性が認められなかった(p=0.470)。
vii.GISAとの関連
予め採取した上記168株について、表現型法を用いてGISAを調べた。5株がGISAと判明し、この5株中4株が3005±5Thでも3035±5Thでもピークを示さなかった(δ)。この検査で得られたGISA株の数が少なかったことから、「Centre National de Reference des Staphylocoques」によって完全に性質決定されたGISA株28株のコレクションのδ溶血素の産生について分析した。臨床検査によれば、28株中9株がδであったのに対し、非GISA株では13/163であった。これによっても、agrシステムの機能不全と耐性表現型GISAとの関連(p=0.001)が確認された。

Claims (10)

  1. 黄色ブドウ球菌の細菌集団を含むサンプルを質量分析法で検査する方法であって、
    a)前記サンプル中に存在する分子をレーザービームの作用によりイオン化することが可能な媒体に前記サンプルを接触させて置く工程、
    b)前記サンプル中に存在する分子をレーザービームを用いてイオン化する工程、
    c)得られたイオン化された分子を電位差によって加速する工程、
    d)そのイオン化され、加速された分子を、減圧下の少なくとも1本の管内で自由に移動させる工程、
    e)そのイオン化され、加速され、自由に移動させた分子の少なくとも一部を検出して、それらが減圧下の少なくとも1本の管を通過するのにかかった時間を測定するとともに、任意の瞬間に検出されたイオン化された分子の数に相当するシグナルを得る工程、
    f)その検出された分子の質量電荷比[m/z]を算出して、その検出された分子のm/z比の関数として、同じ質量電荷比[m/z]のイオン化された分子の数に相当するシグナルを得る工程、
    g)工程b)で得られたイオン化された分子のなかに、質量/電荷比[m/z]が3005±5Th又は3035±5Thのイオン化された分子が存在するかどうかを直接又は間接的に決定する工程、
    h)工程g)で得られた結果に沿った決定を下す工程
    を含み、
    工程h)は、m/zが3005±5Thのイオン化された分子とm/zが3035±5Thのイオン化された分子の両方が存在しないことと、分析中の黄色ブドウ球菌の細菌集団にδ溶血素及びその変異体G10Sが存在しないこととの相関性を用いる工程であるか、
    工程h)は、m/zが3005±5Thのイオン化された分子とm/zが3035±5Thのイオン化された分子の両方が存在しないことと、分析中の黄色ブドウ球菌の細菌集団のagr(「Accessory Gene Regulator」)システムが機能不全であることとの相関性を用いる工程であるか、
    工程h)は、m/zが3005±5Thのイオン化された分子とm/zが3035±5Thのイオン化された分子の両方が存在しないことと、分析中の黄色ブドウ球菌の細菌集団をグリコペプチドに対する感受性が低い恐れがあるもの(すなわちGISA)として分類することとの相関性を用いる工程であるか、
    分析する黄色ブドウ球菌の細菌集団は、患者から採取した生体サンプル由来であり、かつ、工程h)は、m/zが3005±5Thのイオン化された分子とm/zが3035±5Thのイオン化された分子の両方が存在しないことと、agrシステムの機能不全に関連することが知られている臨床診断を前記患者に対して下すこととの相関性を用いる工程であるか、
    又は、
    分析する黄色ブドウ球菌の細菌集団は、患者から採取した生体サンプル由来であり、かつ、工程h)は、m/zが3005±5Thのイオン化された分子とm/zが3035±5Thのイオン化された分子の両方が存在しないことと、前記患者が慢性感染症を有するとの診断との相関性を用いる工程である、方法。
  2. 細菌数が10〜10 集団を含むサンプルに質量分析法を行うことを特徴とする請求項に記載の方法。
  3. 細菌数が10 〜10 の集団を含むサンプルに質量分析法を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 用いる質量分析法は、マトリックス支援脱離イオン化−飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析(MS)であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  5. 工程g)の決定は、得られた質量スペクトルにm/z値が3005±5Th若しくは3035±5Thのピークが存在すること、又は、3005±5Th及び3035±5Thの両方のピークが存在しないことから直接推断されることを特徴とする請求項に記載の方法。
  6. 用いる質量分析法は、MALDI−TOF/TOF質量分析であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  7. 工程d)において、前記イオン化された分子を減圧下の第一管内で移動させ、質量m/zが3005±5Thのイオン、及び/又は、質量m/zが3035±5Thのイオンを選択し、そのイオン化された分子を断片化した後に再び加速して、前記イオン化された分子の断片化されたもの又はされていないものを第二管内で自由に移動させることを特徴とする請求項に記載の方法。
  8. 工程g)の決定は、以下のy及びbイオンフラグメント:
    3005±5Thのピークの場合には、質量147.113、275.208、376.255、523.324、651.419、765.462、864.530、965.578、1080.605、1193.689、1306.773、1492.852、1620.947、1720.016、1833.100、1948.127、2005.148、2118.232、2219.280、2306.312、2419.396、2532.480、2647.507、2775.565、2846.603及び2976.635±1.5Th(公差)のyイオンフラグメント;並びに、質量131.040、202.077、330.136、445.163、558.247、671.331、758.363、859.410、972.494、1029.516、1144.543、1257.627、1356.695、1484.790、1670.870、1783.954、1897.038、2012.065、2113.112、2212.181、2326.224、2454.319、2601.387、2702.435、2830.530及び2958.625±1.5Th(公差)のbイオンフラグメント、並びに/又は、
    3035±5Thのピークの場合には、質量147.113、275.208、376.255、523.324、651.419、765.462、864.530、965.578、1080.605、1193.689、1306.773、1492.852、1620.947、1720.016、1833.100、1948.127、2035.159、2148.243、2249.290、2336.322、2449.406、2562.491、2677.517、2805.576、2876.613及び3006.646±1.5Th(公差)のyイオンフラグメント;並びに、質量131.040、202.077、330.136、445.163、558.247、671.331、758.363、859.410、972.494、1059.526、1174.553、1287.638、1386.706、1514.801、1700.880、1813.964、1927.048、2042.075、2143.123、2242.191、2356.234、2484.329、2631.398、2732.445、2860.540及び2988.635±1.5Th(公差)のbイオンフラグメント
    のうちの少なくとも5個のフラグメントの存在から間接的に推断されることを特徴とする請求項又はに記載の方法。
  9. 前記サンプルを接触させる媒体は、ターゲット上に配置した、MALDI MSに適したマトリックスであり、前記方法は、工程b)の前に、前記サンプルの分子が表面又は内部に吸着した前記マトリックスの結晶化を行うことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記マトリックスは、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシケイ皮酸、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、フェルラ酸及び2,5−ジヒドロキシ安息香酸から選択される化合物を含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
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