JP6282216B2 - 通信システム及び通信装置 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の通信装置がメッセージの送受信を行う通信システム、及びこのシステムを構成する通信装置に関する。
従来、車両に搭載された複数のECU(Electronic Control Unit)間の通信には、CAN(Controller Area Network)の通信プロトコルが広く採用されている。CANの通信プロトコルを採用した通信システムは、複数のECUが共通のCANバスに接続された構成となり、送信側のECUがCANバスへ出力した信号を受信側のECUが取得することによってメッセージの送受信が行われる。また複数のECUが同時的にメッセージ送信を行い、CANバス上で複数のメッセージが衝突した場合には、通信装置間でメッセージに付されたCAN−IDに基づく調停処理(アービトレーション処理)が行われる。アービトレーション処理により、優先度が高いCAN−IDが付されたメッセージの送信が先に行われ、優先度が低いCAN−IDを付されたメッセージの送信は遅延する。アービトレーション処理によってメッセージに遅延が発生する可能性があるため、メッセージを受信したECUではこのメッセージの生成時刻(又は、メッセージを最初に送信しようとした時刻)を知ることができなかった。
特許文献1においては、エンジン制御用電子制御装置が吸気スロットルセンサからセンサ情報を取得しつつ、アクチュエータ駆動用電子制御装置に対して吸気弁ストロークセンサのセンサ情報を同一のタイミングで取得するよう指示する時間同期メッセージを送信し、アクチュエータ駆動用電子制御装置は時間同期メッセージによって指示されるタイミングに基づいて吸気弁ストロークセンサからセンサ情報を取得し、取得したセンサ情報を取得時刻と共にエンジン制御用電子制御装置へ送信する構成の分散制御システムが提案されている。
特開2006−316739号公報
しかしながら特許文献1に記載の分散制御システムでは、時刻情報をメッセージに付与して送信する必要があるため、メッセージの限られたペイロードを更に使用しなければならないという問題がある。またこの分散制御システムを実現するためには、メッセージの送信側及び受信側の双方について、通信装置が有するCANコントローラなどが、時刻情報を付されたメッセージの送受信を行う機能を有する必要がある。場合によっては、通信システムに含まれる全ての通信装置のCANコントローラなどがこの機能を有している必要がある。このため既存のCANの通信システムに対して、特許文献1に記載の分散制御システムを実現するためには相当のコスト増が必要であり、実現性に乏しいという問題がある。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、メッセージの遅延時間又は生成時点等を推定することができ、この推定機能を低コストで実現することができる通信システム及び通信装置を提供することにある。
本発明に係る通信システムは、共通の通信線を介して互いに接続され、優先度に係る情報が付されたメッセージを生成するメッセージ生成部、該メッセージ生成部が生成したメッセージに応じた信号を前記通信線に出力することで該メッセージを送信するメッセージ送信部及び前記通信線に対するサンプリングにより信号を取得して前記情報に応じて該信号に係るメッセージを受信するメッセージ受信部を有する複数の通信装置と、前記複数の通信装置によるメッセージの送信が衝突した場合に、該メッセージの優先度に応じて送信順序を調停する調停手段とを備え、前記複数の通信装置が共通の通信線を介して互いにメッセージの送受信を行う通信システムにおいて、少なくとも1つの通信装置は、前記メッセージ受信部が受信したメッセージが他のメッセージと連続的に送信されたものであるか否かを判定する判定部と、受信メッセージが連続的に送信されたものであると前記判定部が判定した場合に、前記受信メッセージ以前に連続する一又は複数のメッセージの優先度に応じて、前記受信メッセージが前記調停手段の調停により遅延した時間を推定する遅延時間推定部とを有することを特徴とする。
また、本発明に係る通信システムは、前記遅延時間推定部が、前記受信メッセージ以前に連続する優先度が高い他のメッセージの送信時間に応じて遅延時間を推定するようにしてあることを特徴とする。
また、本発明に係る通信システムは、前記少なくとも1つの通信装置が、前記遅延時間推定部が推定した時間に基づいて、受信したメッセージが前記メッセージ生成部により生成された時点を推定する生成時点推定部を有することを特徴とする。
また、本発明に係る通信システムは、前記生成時点推定部が、前記メッセージ生成部がメッセージを生成してから前記メッセージ送信部がメッセージを送信するまでの遅延時間と、前記遅延時間推定部が推定した遅延時間と、メッセージの送信開始から送信完了までの時間と、送信側の通信装置によるメッセージの送信完了から受信側の通信装置によるメッセージの受信完了までの遅延時間とに基づいて、メッセージの生成時点を推定するようにしてあることを特徴とする。
また、本発明に係る通信システムは、前記判定部が、一のメッセージの送信完了時点と次のメッセージの送信開始時点との間隔が所定時間に満たない場合に、2つのメッセージの送信が連続的であると判定するようにしてあることを特徴とする。
また、本発明に係る通信システムは、前記少なくとも1つの通信装置が、少なくとも連続的に送信されたことが前記連続送信検出部にて検出されたメッセージについて、該メッセージの送信時点及び優先度に係る情報を含むメッセージ送信の履歴を記憶する履歴記憶部を有し、前記判定部は、前記履歴記憶部に記憶された履歴に基づいて判定を行うようにしてあることを特徴とする。
また、本発明に係る通信装置は、共通の通信線を介して他の装置と接続され、優先度に係る情報が付されたメッセージを生成するメッセージ生成部と、該メッセージ生成部が生成したメッセージに応じた信号を前記通信線に出力することで該メッセージを送信するメッセージ送信部と、前記通信線に対するサンプリングにより信号を取得して前記情報に応じて該信号に係るメッセージを受信するメッセージ受信部と、前記他の装置との間でメッセージの送信が衝突した場合に、該メッセージの優先度に応じて送信順序を調停する調停手段とを備え、共通の通信線を介して他の装置との間でメッセージの送受信を行う通信装置において、前記メッセージ受信部が受信したメッセージが他のメッセージと連続的に送信されたものであるか否かを判定する判定部と、受信メッセージが連続的に送信されたものであると前記判定部が判定した場合に、前記受信メッセージ以前に連続する一又は複数のメッセージの優先度に応じて、前記受信メッセージが前記調停手段の調停により遅延した時間を推定する遅延時間推定部とを備えることを特徴とする。
本発明においては、通信システムに含まれる各通信装置が、優先度に係る情報(例えばCAN−ID)を付したメッセージを生成して他の通信装置へ送信すると共に、他の通信装置が送信したメッセージの受信を行う。また複数の通信装置が同時的にメッセージ送信を行って、複数のメッセージ送信が衝突した場合には、メッセージの優先度に応じて送信順序の調停処理(アービトレーション処理)を行う。このような構成の通信システムにおいて、少なくとも1つの通信装置が以下のようなメッセージの遅延時間を推定する処理を行う。
少なくとも1つの通信装置は、通信線に対する連続的なメッセージ送信を検出し、自らがメッセージを受信した場合にこの受信メッセージが他のメッセージと連続的に送信されたものであるか否かを判定する。受信メッセージが他のメッセージと連続的に送信されたものである場合、この受信メッセージはアービトレーション処理により遅延している可能性がある。そこで通信装置は、受信メッセージ以前に連続する一又は複数のメッセージの優先度を調べ、各メッセージの優先度に応じて受信メッセージが調停処理により遅延した時間を推定する。
このようなメッセージの遅延時間を推定する構成は、メッセージを送信する通信装置は何ら特別な処理を行う必要がないため、受信メッセージの遅延時間の推定を必要とする通信装置にのみ、この機能を搭載すればよい。よって従来構成の通信システムに対して必要な通信装置にのみ機能拡張を行えばよいため、本通信システムは低コストで実現することができる。
受信メッセージ以前に連続する他のメッセージについて、他のメッセージの優先度が受信メッセージの優先度より高い場合には、受信メッセージはこれら他のメッセージとの衝突により遅延した可能性がある。これに対して、他のメッセージの優先度が受信メッセージの優先度より低い場合には、調停処理において受信メッセージの送信が優先されるため、受信メッセージは他のメッセージとの衝突により遅延していない。そこで本発明においては、受信メッセージ以前に連続する優先度が高い他のメッセージの送信時間に応じて遅延時間を推定する。
これにより通信装置は、受信メッセージが調停処理により遅延したか否かを推定し、調停処理による遅延時間を推定することができる。
また本発明においては、受信メッセージの遅延時間の推定結果に基づいて、この受信メッセージの送信元の通信装置によりこのメッセージが生成された時点を推定する。
メッセージ生成時点の推定は、例えば送信側の通信装置によるメッセージ生成からメッセージ送信までの遅延時間と、調停処理による遅延時間と、メッセージ送信開始から送信完了までの時間(即ちメッセージの送信に必要な時間)と、送信側の通信装置がメッセージ送信完了してから受信側の通信装置によるメッセージ受信が完了するまでの遅延時間とに基づいて推定することができる。なお、メッセージ生成からメッセージ送信までの遅延時間、及び、送信側の通信装置がメッセージ送信完了してから受信側の通信装置によるメッセージ受信が完了するまでの遅延時間は、設計的又は実験的に予め決定し、通信装置に定数として与えておくことができる。
これにより通信装置は、メッセージの生成時点を推定することができ、推定した時点を他の通信装置との同期時点とする、又は、受信時点と推定時点との差を考慮して制御のための演算処理を行う等のように、推定時点を利用することができる。
また本発明においては、複数のメッセージが連続的に送信されたものであるか否かを、通信装置が次のように判断する。通信装置は、一のメッセージの送信完了時点と、これに続く次のメッセージの送信開始時点との間隔が所定時間に満たない場合に、この二つのメッセージが連続していると判断する。これにより通信装置は、連続的なメッセージ送信を容易に検出することができる。
また本発明においては、少なくとも連続的に送信されたことが検出されたメッセージについて、通信装置は、メッセージの送信時点及び優先度に係る情報を記憶しておく。これにより通信装置は、メッセージを受信した場合に、受信メッセージが連続的に送信されたものであるか否かの判定、及び、連続的に送信された他のメッセージの優先度に基づく遅延時間の推定等の処理を行うことができる。
本発明による場合は、調停処理によるメッセージの遅延時間を推定する構成とすることにより、通信システムに含まれる全ての通信装置について機能拡張を行う必要はなく、時間推定を必要とする通信装置にのみ機能拡張を行えばよいため、メッセージの生成時点の推定などを行うことが可能な通信システムを低コストで実現することができる。
実施の形態1に係る通信システムの構成を示す模式図である。 ECUの構成を示すブロック図である。 ECUの生成時点推定部による生成時点推定処理を説明するための模式図である。 ECUの遅延時間推定部による遅延時間推定処理を説明するための模式図である。 ECUによるメッセージ生成時点推定処理の手順を示すフローチャートである。 実施の形態2に係る通信システムの構成を示す模式図である。 監視装置の構成を示すブロック図である。 監視装置による不正メッセージ検出処理を説明するための模式図である。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る通信システムの構成を示す模式図である。実施の形態1に係る通信システムは、車両1に搭載された一又は複数のECU2、及び、一又は複数のECU3を備えて構成されている。ECU2,3は、車両1に敷設された共通の通信線を介して接続され、相互にメッセージを送受信することができる。本実施の形態においては、この通信線をCANバスとし、ECU2,3はCANプロトコルに従った通信を行う。ECU2,3は、例えば車両1のエンジンの制御を行うエンジンECU、車体の電装品の制御を行うボディECU、ABS(Antilock Brake System)に関する制御を行うABS−ECU、又は、車両1のエアバッグの制御を行うエアバッグECU等のように、種々の電子制御装置であってよい。
本実施の形態において、ECU2とECU3とでは、通信に関する機能に差異がある。ECU2は、従来と同様のCAN通信を行う。これに対してECU3は、従来と同様のCAN通信に加えて、メッセージを受信した場合に、このメッセージの生成時点を推定する機能を有している。なお図1においては、通信システムが7つのECU2及び1つのECU3を備える構成を図示してあるが、ECU2,3の搭載数は一例であって、これに限るものではない。例えば通信システムに含まれるECUが全てECU3であってもよい。通信システムには、少なくとも1つのECU3が含まれていればよい。
図2は、ECU3の構成を示すブロック図である。なお図2においては、車両1に設けられたECU3について、通信及びメッセージ生成時点の推定等に関するブロックを抜き出して図示してある。またECU2については、従来のCAN通信を行うECUと同様の構成であるため、ブロック図の図示を省略する。本実施の形態に係るECU3は、処理部31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33及びCAN通信部34等を備えて構成されている。処理部31は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。処理部31は、ROM32に記憶されたプログラム32aを読み出して実行することにより、車両1に係る種々の情報処理又は制御処理等を行う。
ROM32は、フラッシュメモリ又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性のメモリ素子を用いて構成されている。ROM32は、処理部31が実行するプログラム32aと、これにより行われる処理に必要な種々のデータとが記憶されている。また本実施の形態においては、メッセージ生成時点の推定に用いられる遅延時間定数32bがROM32に記憶されている。
RAM33は、SRAM(Static Random Access Memory)又はDRAM(Dynamic Random Access Memory)等のデータ書き換え可能なメモリ素子を用いて構成されている。RAM33は、処理部31の処理により生成された種々のデータを記憶する。また本実施の形態においては、車両1のCANバス上に送信されたメッセージ(自らが送信したメッセージ及び他のECU2が送信したメッセージの双方を含み得る)の履歴を記憶する送信履歴記憶部33aがRAM33に設けられている。
CAN通信部34は、CANの通信プロトコルに従って、CANバスを介した他のECU2との通信を行う。CAN通信部34は、処理部31から与えられた送信用の情報を、CANの通信プロトコルに従った信号に変換し、変換した信号をCANバスへ出力することで他のECU2へのメッセージ送信を行う。CAN通信部34は、CANバスの電位をサンプリングすることによって、他のECU2が出力した信号を取得し、この信号をCANの通信プロトコルに従って2値の情報に変換することでメッセージの受信を行い、受信したメッセージを処理部31へ与える。
またCAN通信部34は、自らのメッセージ送信と、他のECU2によるメッセージ送信とに衝突が発生した場合に、いずれのメッセージを先に送信するかを調停する処理、いわゆるアービトレーション処理を行う。各ECU2,3が送信するメッセージには、メッセージの種別に応じて予めIDが定められている。このIDは、数値として扱われる情報であり、その値が小さいほどメッセージ送信の優先度が高い。このため通信システムにおいては、CANバス上で複数のメッセージ送信が衝突した場合、最も優先度が高いメッセージ送信が行われ、このメッセージの送信完了後に他のメッセージの送信が行われる。なおCAN通信部34が行うアービトレーション処理は、既存の技術であるため、詳細な処理手順の説明は省略する。
また本実施の形態においてCAN通信部34は、CANバスに対する連続的なメッセージ送信を検出する連続送信検出部34aを有している。連続送信検出部34aは、CANバス上に送信されるメッセージを監視して、一のメッセージの送信完了時点から次のメッセージの送信開始時点までの時間を取得し、この時間が所定時間に満たない場合に、これら2つのメッセージが連続的に送信されたものであると判断する。詳しくは、連続送信検出部34aは、先のメッセージのEOF(End Of Frame)の7ビットのレセシブと、次のメッセージのSOF(Start Of Frame)との間に、2ビット又は3ビットのレセシブで構成されるIFS(Inter Frame Space)が存在することを検出することによって、連続的な2つのメッセージ送信を検出する。連続送信検出部34aが連続的なメッセージ送信を検出した場合、CAN通信部34は、連続する2つのメッセージに関する情報を処理部31へ与える。
本実施の形態においてECU3の処理部31には、プログラム32aの実行により、遅延時間推定部41及び生成時点推定部42等がソフトウェア的な機能ブロックとして実現される。なお遅延時間推定部41及び生成時点推定部42等は、その一部又は全部がハードウェアによる機能ブロックとして実現されてもよい。遅延時間推定部41は、CAN通信部34にて他のECU2が送信したメッセージを受信した場合に、このメッセージがアービトレーション処理により遅延した時間を推定する処理を行う。このときに遅延時間推定部41は、RAM33の送信履歴記憶部33aに記憶された履歴情報に基づいて推定処理を行う。生成時点推定部42は、遅延時間推定部41が推定した遅延時間と、ROM32に記憶された遅延時間定数32bとに基づいて、受信したメッセージが送信元のECU2にて生成された時点を推定する処理を行う。
<推定処理>
図3は、ECU3の生成時点推定部42による生成時点推定処理を説明するための模式図であり、例えばいずれか1つのECU2がメッセージMの送信を行い、このメッセージMをECU3が受信する場合のタイミングチャートを示してある。ECU2は、自身の処理によって他のECU2,3へ情報を送信すべき条件が成立した場合、送信すべき情報及びCAN−ID等を含むメッセージMを生成する。本図では、ECU2がこのメッセージMの生成を完了した時点をt1として示してある。メッセージMを生成した後、ECU2では、例えば処理部からCAN通信部へメッセージMが与えられ、CAN通信部によりCANバスへのメッセージMの最初のビットの出力が開始される。本図では、メッセージMの生成時点t1から、このメッセージMのCANバスへの最初の出力が開始された時点、即ちメッセージMの送信の試みを開始した時点t2までの時間を、送信側内部遅延時間D1として示している。
一のECU2がメッセージMを送信しようとした際に、他のECU2,3が同時的にメッセージを送信しようとした場合、複数のメッセージ送信が衝突し、複数のECU2,3間でアービトレーション処理が行われる。アービトレーション処理の結果、優先度の高いメッセージ(CAN−IDの数値が小さいメッセージ)の送信が先に行われ、優先度の低いメッセージの送信に遅延が発生する。本図では、最初にメッセージMの送信を試みた時点t2から、実際にメッセージMの送信を開始した時点t3までの時間を、アービトレーション遅延時間D2として示している。もし、メッセージ送信の衝突が発生しなければ、t2=t3であり、D2=0である。
メッセージMの送信を開始したECU2は、メッセージMの全ビットに対応する信号をCANバスへ出力することでメッセージMの送信を完了する。本図では、ECU2によりメッセージ送信を行っている期間をメッセージ送信時間D3とし、メッセージMの送信を完了した時点をt4として示している。
ECU2が送信したメッセージMは、これを必要とするECU2,3にて受信される。ECU3のCAN通信部34は、CANバスの信号レベルをサンプリングすることによって、時点t4においてECU2が送信したメッセージMの全ビットを受信することができる。CAN通信部34は受信したメッセージMを処理部31へ与え、これによりECU3によるメッセージMの受信処理が完了する。本図では、ECU2によるメッセージMの送信完了時点t4から、ECU3によるメッセージMの受信完了までの時間を、受信側内部遅延時間D4として示している。
ECU2からのメッセージMを受信したECU3は、このメッセージMの受信完了時点t5を知ることができる。ECU3の生成時点推定部42は、メッセージ受信完了時点t5から遡ってメッセージ生成時点t1を推定する処理を行う。詳しくは、生成時点推定部42は、メッセージ受信完了時点t5から4つの遅延時間D1〜D4を差し引くことによって、メッセージ生成時点t1を推定する。
送信側のECU2による送信側内部遅延時間D1は、ECU2の装置構成などにより定まる時間である。そこで、例えばECU2の設計段階等において遅延時間D1の理論値若しくは設計値等を算出しておくか、又は、実際のECU2の動作において遅延時間D1を測定しておくかし、送信側内部遅延時間D1の理論値又は測定値等をROM32に遅延時間定数32bとして記憶しておく。記憶しておく送信側内部遅延時間D1は、全てのECU2で共通の値であってもよく、それぞれのECU2について個別の値であってもよい。生成時点推定部42は、ROM32の遅延時間定数32bを読み出すことによって、送信側内部遅延時間D1を取得することができる。
アービトレーション遅延時間D2は、送信が衝突したメッセージの数及び衝突したメッセージの優先度等に応じて大きく変化する時間である。このためECU3は、メッセージの送信履歴を参照してアービトレーション遅延時間D2を推定する処理を、遅延時間推定部41にて行う。なお遅延時間推定部41による推定処理の詳細は後述する。
メッセージ送信時間D3は、受信したメッセージMのビット数から一意的に定まる時間である。生成時点推定部42は、受信したメッセージのビット数に応じてメッセージ送信時間D3を取得する。なおECU2,3間で送受信するメッセージが固定長のシステムであれば、生成時点推定部42は、メッセージ送信時間D3を固定値として記憶しておいてもよい。またECU3が、遅延時間D1〜D4を実時間ではなく、ビット数で扱う構成である場合には、メッセージ送信時間D3は受信メッセージMのビット数である。
受信側のECU3による受信側内部遅延時間D4は、ECU3の装置構成などにより定まる時間である。よって送信側内部遅延時間D1と同様に、例えばECU3の設計段階等において遅延時間D4の理論値若しくは設計値等を算出しておくか、又は、実際のECU3の動作において遅延時間D4を測定しておくかし、送信側内部遅延時間D4の理論値又は測定値等をROM32に遅延時間定数32bとして記憶しておく。生成時点推定部42は、ROM32の遅延時間定数32bを読み出すことによって、受信側内部遅延時間D4を取得することができる。なお、処理部31がCAN通信部34からメッセージMを受信した時点(即ちメッセージ送信完了時点t4)を取得することができる場合、生成時点推定部42は、受信側内部遅延D4を用いることなく、メッセージ送信完了時点t4から遡ってメッセージ生成時点t1を推定してよい。
なお、アービトレーション遅延時間D2及びメッセージ送信時間D3と比較して、送信側内部遅延時間D1及び受信側内部遅延時間D4は非常に小さな値である。このため生成時点推定部42は、D1=0及びD4=0とみなしてメッセージ生成時点t1(=t2)を推定する構成であってもよい。
図4A〜Cは、ECU3の遅延時間推定部41による遅延時間推定処理を説明するための模式図であり、CANバス上に送信されたメッセージの一例を2パターン示してある。本図において長方形領域として示されているものがメッセージであり、この長方形領域内に記載されている数値がCAN−IDである。またECU3は、ハッチングを付して示したCAN−IDが6のメッセージを受信し、このメッセージのアービトレーションによる遅延時間D2を遅延時間推定部41が推定する。
ECU3のCAN通信部34は、CANバスに対する連続的なメッセージ送信の検出を連続送信検出部34aにて行っている。連続送信検出部34aは、一のメッセージの送信完了時点から次のメッセージの送信開始時点までの時間が所定時間に満たない場合に、これら2つのメッセージが連続的に送信されたものであると判断する。連続送信検出部34aは、メッセージの連続送信を検出した場合、連続するメッセージに関する情報を処理部31へ通知する。このときに連続送信検出部34aは、例えば連続するメッセージの送信開始時点、送信完了時点(又はメッセージ長)、CAN−ID等の情報を処理部31へ通知する。処理部31は、通知された情報をRAM33の送信履歴記憶部33aに履歴として記憶する。なお送信履歴記憶部33aに記憶された情報は、所定時間が経過した場合などに削除してよい。
ECU3の遅延時間推定部41は、ECU2からのメッセージを受信した場合、送信履歴記憶部33aに記憶された履歴を参照することによって、受信メッセージ以前に連続する他のメッセージが存在するか否かを判定する。連続する他のメッセージが以前に存在しない場合、遅延時間推定部41は、アービトレーション遅延時間D2=0と判断する。連続する他のメッセージが以前に存在する場合、遅延時間推定部41は、これら一又は複数の他のメッセージのCAN−IDを調べ、受信メッセージのCAN−IDとの比較を行う。遅延時間推定部41は、受信メッセージ以前に途切れることなく連続する優先度の高いメッセージを検索し、これらの中から最前に送信されたメッセージの送信開始時点を取得し、この送信開始時点から受信メッセージの送信開始時点までの時間をアービトレーション遅延時間D2であると推定する。
例えば図4Aに示す例では、CAN−IDが2,3,1,6の4つのメッセージがこの順で送信され、CAN−IDが6のメッセージをECU3が受信した場合である。ECU3の遅延時間推定部41は、受信メッセージ以前に送信された3つのメッセージが全て優先度の高いものであることから、3つのメッセージの中から最前に送信されたCAN−IDが2のメッセージの送信開始時点を履歴から取得する。遅延時間推定部41は、CAN−IDが2のメッセージの送信開始時点から、CAN−IDが6の受信メッセージの送信開始時点までの時間をアービトレーション遅延時間D2と推定する。
また例えば図4Bに示す例では、CAN−IDが8,2,1,6の4つのメッセージがこの順で送信され、CAN−IDが6のメッセージをECU3が受信した場合である。ECU3の遅延時間推定部41は、受信メッセージ以前に送信された3つのメッセージのうち、受信メッセージ以前に途切れることなく連続する優先度の高いメッセージはCAN−IDが2,1の2つのメッセージであると判断する。遅延時間推定部41は、この2つのメッセージのうち、最前に送信されたCAN−IDが2のメッセージの送信開始時点を履歴から取得する。遅延時間推定部41は、CAN−IDが2のメッセージの送信開始時点から、CAN−IDが6の受信メッセージの送信開始時点までの時間をアービトレーション遅延時間D2と推定する。
また例えば図4Cに示す例では、CAN−IDが2,8,1,6の4つのメッセージがこの順で送信され、CAN−IDが6のメッセージをECU3が受信した場合である。ECU3の遅延時間推定部41は、受信メッセージ以前に送信された3つのメッセージのうち、受信メッセージ以前に途切れることなく連続する優先度の高いメッセージはCAN−IDが1のメッセージのみであると判断する。遅延時間推定部41は、CAN−IDが1のメッセージの送信開始時点から、CAN−IDが6の受信メッセージの送信開始時点までの時間をアービトレーション遅延時間D2と推定する。
なお遅延時間推定部41が推定するアービトレーション遅延時間D2は、あくまで推定値であり、実際の遅延時間と一致しない場合があり得る。例えば図4Aにおいて、CAN−IDが2のメッセージと推定対象のCAN−IDが6のメッセージとが同時的に送信されてアービトレーション処理が行われていた場合には、推定されたアービトレーション遅延時間D2と実際の遅延時間とが一致する。これに対して例えば図4Aにおいて、CAN−IDが2のメッセージ送信時には推定対象のCAN−IDが6のメッセージは送信されておらず、以降のCAN−IDが3又は1のメッセージの送信と同時的に推定対象のCAN−IDが6のメッセージが初めて送信されていた場合、実際の遅延時間は推定されたアービトレーション遅延時間D2より短い。また例えば、CAN−IDが1のメッセージ送信が完了した直後に推定対象のCAN−IDが6のメッセージが初めて送信されていた可能性もある。即ち、遅延時間推定部41が推定するアービトレーション遅延時間D2は、受信メッセージの最大遅延時間であり、実際の遅延時間は0〜D2の範囲内である。
遅延時間推定部41が推定したアービトレーション遅延時間D2と、ROM32に遅延時間定数32bとして記憶された送信側内部遅延D1及び受信側内部遅延D4と、受信メッセージのメッセージ送信時間D3とに基づいて、生成時点推定部42は、受信メッセージの生成時点t1を推定することができる。
図5は、ECU3によるメッセージ生成時点推定処理の手順を示すフローチャートである。ECU3の処理部31は、CAN通信部34にて他のECU2から所望のメッセージを受信したか否かを判定する(ステップS1)。メッセージを受信していない場合(S1:NO)、処理部31は、メッセージを受信するまで待機する。所望のメッセージを受信した場合(S1:YES)、処理部31の遅延時間推定部41は、RAM33の送信履歴記憶部33aに記憶された送信履歴を参照する(ステップS2)。遅延時間推定部41は、記憶された送信履歴に基づいて、ステップS1にて受信した受信メッセージ以前に連続して送信された他のメッセージが存在するか否かを判定する(ステップS3)。連続して送信された他のメッセージが存在しない場合(S3:NO)、遅延時間推定部41は、アービトレーション遅延時間D2=0として(ステップS8)、ステップS9へ処理を進める。
受信メッセージ以前に連続して送信された他のメッセージが存在する場合(S3:YES)、遅延時間推定部41は、送信履歴記憶部33aに記憶された履歴情報に基づいて、連続する他のメッセージの優先度を調べる(ステップS4)。遅延時間推定部41は、受信メッセージ以前に連続する一又は複数の他のメッセージの中に、受信メッセージの優先度よりも高優先度のメッセージが存在するか否かを判定する(ステップS5)。高優先度のメッセージが存在しない場合(S5:NO)、遅延時間推定部41は、アービトレーション遅延時間D2=0として(ステップS8)、ステップS9へ処理を進める。
高優先度のメッセージが存在する場合(S5:YES)、遅延時間推定部41は、受信メッセージ以前に途切れることなく連続する高優先度のメッセージのうち、最前(即ち、最も送信開始時点が早いもの)のメッセージの送信開始時点を、送信履歴記憶部33aに記憶された送信履歴から取得する(ステップS6)。遅延時間推定部41は、ステップS6にて取得した最前の高優先度メッセージの送信開始時点と、ステップS1にて受信した受信メッセージの送信開始時点との差分に基づいてアービトレーション遅延時間D2を算出し(ステップS7)、ステップS9へ処理を進める。
次いで処理部31の生成時点推定部42は、ROM32の遅延時間定数32bとして記憶されている送信側内部遅延時間D1及び受信側内部遅延時間D4を取得すると共に(ステップS9)、ステップS1にて受信した受信メッセージの送信時間D3を取得する(ステップS10)。生成時点推定部42は、送信側内部遅延時間D1、アービトレーション遅延時間D2、メッセージ送信時間D3、受信側内部遅延時間D4及び受信メッセージの受信完了時点t4に基づいて、受信メッセージの生成時点t1を算出し(ステップS11)、処理を終了する。
以上の構成の本実施の形態に係る通信システムは、少なくとも1つのECU3がアービトレーション処理によるメッセージの遅延時間D2を推定する処理を行う機能を備えている。ECU3は、CAN通信部34の連続送信検出部34aがCANバスに対するECU2の連続的なメッセージ送信を検出し、自らが受信したメッセージが他のメッセージと連続的に送信されたものであるか否かを遅延時間推定部41が判定する。受信メッセージが他のメッセージと連続的に送信されたものである場合、この受信メッセージはアービトレーション処理により遅延している可能性があるため、遅延時間推定部41は、受信メッセージ以前に連続する一又は複数の他のメッセージの優先度(CAN−ID)を調べ、各メッセージの優先度に応じて受信メッセージがアービトレーション処理により遅延した時間を推定する。
このような受信メッセージのアービトレーション処理による遅延時間を推定する構成は、メッセージ送信側のECU2は何ら特別な処理を行う必要がないため、受信メッセージの遅延時間の推定を必要とするECU3にのみこの機能を搭載すればよい。よって従来のCANプロトコルによる通信を行う通信システムに対して、必要な通信装置にのみ機能拡張を行えばよいため、本実施の形態に係る通信システムは低コストで実現することができる。
受信メッセージ以前に連続する他のメッセージについて、他のメッセージの優先度が受信メッセージの優先度より高い場合には、受信メッセージはこれらの他のメッセージとの衝突により送信が遅延した可能性がある。これに対して、他のメッセージの優先度が受信メッセージの優先度より低い場合には、アービトレーション処理において受信メッセージの送信が優先されるため、受信メッセージは他のメッセージとの衝突により遅延していない。そこで遅延時間推定部41は、受信メッセージ以前に途切れることなく連続する優先度の高いメッセージを調べ、これらの中から最前の他のメッセージの送信開始時点に応じて遅延時間を推定する。これにより、受信メッセージが優先度の高い他のメッセージとのアービトレーション処理により遅延した時間を推定することができる。
またECU3の生成時点推定部42は、遅延時間推定部41が推定した遅延時間に基づいて、受信したメッセージが送信元のECU2により生成された時点を推定する。生成時点推定部42は、送信側のECU2によるメッセージ生成からメッセージ送信までの遅延時間D1と、推定されたアービトレーション処理による遅延時間D2と、メッセージの送信時間D3と、送信側のECU2によるメッセージ送信完了から受信側のECU3によるメッセージ受信完了までの遅延時間D4とに基づいて、メッセージの生成時点t1を推定する。送信側内部遅延時間D1及び受信側内部遅延時間D4は、設計値又は実測値等をECU3のROM32に遅延時間定数32bとして記憶しておく。
これによりECU3は、受信したメッセージの生成時点を推定することができる。例えばECU2が車速又は温度等のセンサによる検出値をメッセージとして送信し、ECU3がメッセージに含まれる検出値に応じてフィードバック制御などを行うシステムである場合、メッセージの遅延時間及びECU3はメッセージの生成時点を推定することによって、より精度のよい制御を行うことが可能となる。また例えばECU2からのメッセージに応じてECU3が同期処理を行う場合に、メッセージの遅延時間を推定することによって、より精度のよい同期を実現できる。
また連続送信検出部34aは、一のメッセージの送信完了時点と、これに続く次のメッセージの送信開始時点との間隔が所定時間(例えば、IFSの2ビット又は3ビットに応じた所定時間)に満たない場合に、2つのメッセージが連続していると判断する。ECU3は、連続送信検出部24aが連続していると判断したメッセージについて、送信開始時点及び優先度等の情報をRAM33の送信履歴記憶部33aに記憶しておく。これにより遅延時間推定部41は、受信メッセージが連続的に送信されたものであるか否かの判定、及び、連続的に送信された他のメッセージの優先度に基づく遅延時間の推定等の処理を行うことができる。
なお本実施の形態においては、遅延時間推定部41による遅延時間推定処理及び生成時点推定部42による生成時点推定処理等の処理を処理部31(いわゆるCPUなど)が行う構成としたが、これに限るものではなく、これらの処理をCAN通信部53(いわゆるCANコントローラなど)が行う構成としてもよい。また連続送信検出部34aによるメッセージの連続送信の検出処理は、CAN通信部34が行うのではなく、処理部31が行う構成であってよい。
またECU3は、連続送信検出部34aが連続していると判断したメッセージについての情報を送信履歴記憶部33aに記憶する構成としたが、これに限るものではなく、例えばCANバス上に送信された全てのメッセージの履歴を記憶しておいてもよい。この場合、CAN通信部34は連続送信検出部34aによる処理を行う必要はなく、処理部31が遅延時間の推定処理を行う際に、送信履歴記憶部33aに記憶されたメッセージが連続しているか否かを判断すればよい。
また本実施の形態においては、車両1に搭載された通信システムを例に説明を行ったが、通信システムは車両1に搭載されるものに限らず、例えば飛行機又は船舶等の移動体に搭載されるものであってよく、また例えば移動体ではなく工場、オフィス又は学校等に設置されるものであってもよい。
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係る通信システムの構成を示す模式図である。実施の形態2に係る通信システムは、車両1に搭載された複数のECU2と、1つの監視装置203とを備えて構成されている。ECU2及び監視装置203は、車両1に敷設されたCANバスを介して接続され、相互にメッセージを送受信することができる。監視装置203は、車内ネットワークに対する不正なメッセージ送信を監視する装置である。監視装置203は、監視専用の装置として設けられてもよく、例えばゲートウェイなどの装置に監視の機能を付加した構成であってもよく、また例えば実施の形態1のECU3に監視の機能を付加した構成であってもよい。
本実施の形態に係るECU2は、センサなどが検知した情報又は制御対象の機器からのフィードバック情報等の情報を取得し、取得した情報を含むCANプロトコルのメッセージを作成し、作成したメッセージをCANバスに対して送信する処理を周期的に行う。なおメッセージの送信周期はCAN−ID毎に定められており、ECU2はCAN−ID毎に異なる周期で送信を行うことができる。
図7は、監視装置203の構成を示すブロック図である。実施の形態2に係る監視装置203は、実施の形態1に係るECU3と同様の遅延時間推定機能及び生成時点推定機能等を有すると共に、不正なメッセージ送信の監視処理を行う監視処理部43を処理部31に備えている。
不正なメッセージとして、例えばCANバスに対して不正な通信装置が不正に接続され、この通信装置が不正なメッセージをCANバス上に送信することが考えられる。また例えば、車両1に搭載されたいずれかのECU2に不正な改造又は改変等がなされ、このECU2が不正なメッセージを送信することが考えられる。これらは不正なメッセージの一例であり、監視装置203が検出する不正なメッセージはこれら以外の要因によるものであってよい。
不正な通信装置は、CANプロトコルに従い、特定のCAN−IDを付した不正メッセージを送信することができる。このような不正メッセージに付されるCAN−IDは、車両1の通信システムにおいて利用される正当なものが用いられるが、不正メッセージに含まれる他のデータは不正なデータとなる。CAN−IDに基づいてECU2が不正メッセージを受信した場合、ECU2は不正なデータに基づく処理を行うこととなる。実施の形態2に係る通信システムでは、正規のCAN−IDが付された不正メッセージ、いわゆるなりすましメッセージの検出を行うものである。
実施の形態2に係る監視装置203は、周期的に送信されるべきメッセージについて、このメッセージが正しい周期で送信されているか否かを判断することにより、不正なメッセージの検出を行う。図8は、監視装置203による不正メッセージ検出処理を説明するための模式図である。監視装置203は、通信システム内で送受信されるメッセージに付されるCAN−ID毎に、このCAN−IDを有するメッセージの送信を許可する許可期間を決定する。図8には、ある1つのCAN−IDが付されるメッセージについて、監視装置203が決定した許可期間などを図示してある。なお実施の形態2においては、1つのCAN−IDを複数のECU2が利用する、即ち同一のCAN−IDが付されたメッセージを複数のECU2が送信することはないものとしている。
本例において、監視装置203が監視対象とするメッセージの送信周期はTである。監視装置203の監視処理部43は、このメッセージを送信するECU2との間で所定の手続を行うことによって、メッセージ送信の基準時点taを決定する。例えば監視装置203は、ECU2に対して基準時点taを決定するための処理を行う要求を含むメッセージを送信する。このメッセージを受信したECU2は、応答メッセージを監視装置203へ送信すると共に、この応答メッセージの生成時点を基準時点taとする。ECU2からの応答メッセージを受信した監視装置203は、実施の形態1に係るECU3と同様の手順で、応答メッセージに関して遅延時間推定部41による遅延時間推定処理及び生成時点推定部42による生成時点推定処理を行う。監視装置203は、応答メッセージに関して推定したメッセージ生成時点を基準時点taとする。
なお本例においては、基準時点taを応答メッセージの生成時点(図3においてt1)とするが、これ以外の時点を基準時点taとしてもよい。例えばECU2が応答メッセージの送信の試みを開始した時点(図3においてt2)を基準時点taとしてもよい。また、例えば遅延時間推定部41が推定した遅延時間が所定時間以上である場合には、ECU2及び監視装置203が基準時点taを決定する処理をやり直してもよい。
監視装置203の監視処理部43は、基準時点taに対して送信周期Tを加えた時点tbをメッセージの送信予定時点tbとする。同様に、監視処理部43は、基準時点taに対して送信周期Tの2倍を加えた時点tcを送信予定時点tcとする。以降の送信予定時点についても同様である。監視処理部43は、送信予定時点tbに対して所定の期間A及び期間Bの猶予を設けた期間を許可期間と決定する。監視処理部43は、tb−A≦t≦tb+Bの期間を許可期間と決定する。送信予定時点tc以降についても同様である。なお許可期間を決定するための期間A及び期間Bは、例えば通信システムのシミュレーション又は実機での測定結果等に基づいて、予め決定される。期間A及び期間Bは、全てのメッセージについて同じ値を用いてもよく、例えばCAN−ID毎に異なる値を用いてもよい。期間Aは、監視装置203とこのメッセージを送信するECU2とのクロック誤差などに基づいて決定することができる。期間Bは、このメッセージがアービトレーション処理によって遅延する時間を考慮して決定される。
監視装置203のCAN通信部34は、CANバスに対するメッセージの送信を監視しており、メッセージ送信を検出した場合に処理部31へ通知する。処理部31の監視処理部43は、CAN通信部34からの通知に基づいて、送信されたメッセージのCAN−ID、及び、メッセージ送信の開始時点又は終了時点に関する情報を取得する。また監視処理部43は、送信が検出されたメッセージが、許可期間内に送信されたものであるか否かを判定する。監視処理部43は、メッセージが許可期間内に送信されたものではない場合、このメッセージが不正メッセージであると判断し、CANバスに接続されたECU2に対して、このメッセージを破棄させる処理を行う。
本実施の形態に係る通信システムにて送受信されるメッセージは、CANプロトコルに従ったものであり、CANヘッダ、データフィールド、CRC(Cyclic Redundancy Check)フィールド、ACKフィールド及びEOF(End Of Frame)等を含んで構成されている。CANヘッダは、従来のCANプロトコルにおけるSOF(Start Of Frame)、アービトレーションフィールド及びコントロールフィールド等を含むものであり、アービトレーションフィールドに上述のCAN−IDが設定される。データフィールドは、例えばECU2に対する制御指示又はセンサ検知結果等のように、ECU2間で授受すべき情報の本体が格納される。CRCフィールド、ACKフィールド及びEOFは、従来のCANプロトコルにて用いられるものと同じであるため詳細な説明は省略する。CRCフィールドは、誤り検出を行うための情報を格納する。ACKフィールドは、このフレームを受信するECU2による受信応答のためのフィールドである。EOFは、フィールドの終了を示す特定のビット列である。
監視装置203の監視処理部43は、送信を許可しないと判定したメッセージについて、このメッセージのEOFの出力期間中に、CANバスに対してエラーフレームを送信する。このエラーフレームにより、CANバスに接続された全てのECU2は、受信中の不正なメッセージを破棄することができる。
以上の構成の実施の形態2に係る通信システムは、不正な装置によるCANバスに対する不正なメッセージ送信を監視装置203が検出することによって、車両1の信頼性を高めることを可能としたものである。監視処理に必要なECU2との基準時点決定処理において、監視装置203は、ECU2から受信した応答メッセージのメッセージ生成時点を推定し、推定した時点を基準時点taとする。これにより、監視装置203の基準時点taと、ECU2の基準時点taとを精度よく一致させることができ、監視装置203による監視処理を精度良く行うことができる。
1 車両
2 ECU(通信装置)
3 ECU(少なくとも1つの通信装置)
31 処理部(メッセージ生成部、判定部)
32 ROM
32a プログラム
32b 遅延時間定数
33 RAM
33a 送信履歴記憶部(履歴記憶部)
34 CAN通信部(メッセージ送信部、メッセージ受信部、調停手段)
34a 連続送信検出部
41 遅延時間推定部
42 生成時点推定部
43 監視処理部
203 監視装置(通信制御装置)

Claims (7)

  1. 共通の通信線を介して互いに接続され、優先度に係る情報が付されたメッセージを生成するメッセージ生成部、該メッセージ生成部が生成したメッセージに応じた信号を前記通信線に出力することで該メッセージを送信するメッセージ送信部及び前記通信線に対するサンプリングにより信号を取得して前記情報に応じて該信号に係るメッセージを受信するメッセージ受信部を有する複数の通信装置と、前記複数の通信装置によるメッセージの送信が衝突した場合に、該メッセージの優先度に応じて送信順序を調停する調停手段とを備え、前記複数の通信装置が共通の通信線を介して互いにメッセージの送受信を行う通信システムにおいて、
    少なくとも1つの通信装置は、
    前記メッセージ受信部が受信したメッセージが他のメッセージと連続的に送信されたものであるか否かを判定する判定部と、
    受信メッセージが連続的に送信されたものであると前記判定部が判定した場合に、前記受信メッセージ以前に連続する一又は複数のメッセージの優先度に応じて、前記受信メッセージが前記調停手段の調停により遅延した時間を推定する遅延時間推定部と
    を有すること
    を特徴とする通信システム。
  2. 前記遅延時間推定部は、前記受信メッセージ以前に連続する優先度が高い他のメッセージの送信時間に応じて遅延時間を推定するようにしてあること
    を特徴とする請求項1に記載の通信システム。
  3. 前記少なくとも1つの通信装置は、前記遅延時間推定部が推定した時間に基づいて、受信したメッセージが前記メッセージ生成部により生成された時点を推定する生成時点推定部を有すること
    を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の通信システム。
  4. 前記生成時点推定部は、
    前記メッセージ生成部がメッセージを生成してから前記メッセージ送信部がメッセージを送信するまでの遅延時間と、
    前記遅延時間推定部が推定した遅延時間と、
    メッセージの送信開始から送信完了までの時間と、
    送信側の通信装置によるメッセージの送信完了から受信側の通信装置によるメッセージの受信完了までの遅延時間と
    に基づいて、メッセージの生成時点を推定するようにしてあること
    を特徴とする請求項3に記載の通信システム。
  5. 前記判定部は、一のメッセージの送信完了時点と次のメッセージの送信開始時点との間隔が所定時間に満たない場合に、2つのメッセージの送信が連続的であると判定するようにしてあること
    を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の通信システム。
  6. 前記少なくとも1つの通信装置は、少なくとも連続的に送信されたことが前記連続送信検出部にて検出されたメッセージについて、該メッセージの送信時点及び優先度に係る情報を含むメッセージ送信の履歴を記憶する履歴記憶部を有し、
    前記判定部は、前記履歴記憶部に記憶された履歴に基づいて判定を行うようにしてあること
    を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の通信システム。
  7. 共通の通信線を介して他の装置と接続され、優先度に係る情報が付されたメッセージを生成するメッセージ生成部と、該メッセージ生成部が生成したメッセージに応じた信号を前記通信線に出力することで該メッセージを送信するメッセージ送信部と、前記通信線に対するサンプリングにより信号を取得して前記情報に応じて該信号に係るメッセージを受信するメッセージ受信部と、前記他の装置との間でメッセージの送信が衝突した場合に、該メッセージの優先度に応じて送信順序を調停する調停手段とを備え、共通の通信線を介して他の装置との間でメッセージの送受信を行う通信装置において、
    前記メッセージ受信部が受信したメッセージが他のメッセージと連続的に送信されたものであるか否かを判定する判定部と、
    受信メッセージが連続的に送信されたものであると前記判定部が判定した場合に、前記受信メッセージ以前に連続する一又は複数のメッセージの優先度に応じて、前記受信メッセージが前記調停手段の調停により遅延した時間を推定する遅延時間推定部と
    を備えること
    を特徴とする通信装置。
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