以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について、説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。本実施の形態に係る蒸気量測定装置は湿球温度計100を備え、湿球温度計100は、多孔質材料からなる感湿部1と、感湿部1の長手方向における一方端1aを固定する固定部2と、感湿部1の一方端1aに水を供給する供給部3と、感湿部1の長手方向における他方端1bに設置された温度センサ4とを備える。
感湿部1は、熱的に安定な多孔質材料により構成されており、たとえばセラミック多孔質体からなる。感湿部1を構成する多孔質材料は、射出成形法により成形されている。感湿部1を構成する多孔質材料は、径が0.1μm以上200μm以下程度の細孔を数多く有している。好ましくは0.5μm以上50μm以下程度の細孔を数多く有している。また、感湿部1の表面以外の領域(内部領域)においては、径が数百μm以下程度の細孔が形成されていてもよい。空隙率は40%以上75%以下程度である。多孔質材料の空隙率を40%以上とすることにより、感湿部1の水の透過性および保水性を高めることができる。また、多孔質材料の空隙率を75%超えとした場合、感湿部1の機械的強度が大幅に低下することが懸念されるため、感湿部1の取り付けや取り換え時の作業性を損なわないという観点から、多孔質材料の空隙率は75%以下であるのが好ましい。
感湿部1は、中心軸部分が中空である円筒形状を有している。感湿部1の長手方向(軸方向)における一方端1aおよび他方端1bは直径4mm以上30mm以下程度、より好ましくは6mm以上15mm以下程度であり、感湿部1の長手方向の長さは30mm以上300mm以下程度、より好ましくは60mm以上200mm以下程度である。感湿部1の中心軸部分には、一方端1aから他方端1bまで長手方向に延びる穴1Hが設けられている。穴1Hは、その中心軸が感湿部1の中心軸と同一であり、直径が1.5mm以上20mm以下程度、より好ましくは2mm以上8mm以下程度の円柱状である。つまり、穴1Hの表面(感湿部1の内周表面)と感湿部1の外周側の表面との間の感湿部1の厚みは1.25mm以上5mm以下程度、より好ましくは1.5mm以上3mm以下程度であり、感湿部1の周方向において等しい。感湿部1の寸法は、適宜変更可能である。たとえば、感湿部1を構成する多孔質材料に形成された細孔の径が均一に50μm以下である場合には、感湿部1の厚みは2.5mmよりも薄くても良い。しかし、該細孔の径に分布がある場合には、2.5mm以上程度に厚みがある方が好ましい。これは、たとえば径の大きな細孔が形成されている場合には、そこから集中して水が表面に流出するため、感湿部1の表面において水分量の均一性が低下するためである。
穴1Hは、他方端1b側において保水性、通気性の高い栓5により塞がれている。栓5は、穴1Hの延びる方向(感湿部1の長手方向)における長さが2mm程度である。栓5を構成する材料は、保水性および通気性の高い任意の材料とすることができるが、例えば、ガーゼとしてもよい。穴1Hには、栓5よりも一方端1a側に端部を有し、穴1Hの内部を一方端1a側から他方端1b側に供給された水のうち多孔質材料に流入せずに穴1Hに留まっている水を感湿部の外部(後述する供給部3など)に排水するための排水管15が配設されている。排水管15は、たとえばステンレスチューブで構成されている。穴1H内における排水管15の端部の配設位置は、栓5よりも一方端1a側に端部を有している限りにおいて、任意に選択することができるが、たとえば栓5に対して2mm程度一方端1a側とすればよい。
固定部2は、測定対象の空間を規定する処理室の壁面20に取り付けられており、当該壁面20に対して感湿部1の一方端1aを固定可能に設けられている。具体的には、壁面20には壁穴20hが設けられており、固定部2は当該壁穴20hに嵌め込まれて壁面20に設置されている。固定部2には、壁面20が規定する測定対象の空間の内外を接続する固定穴2hが設けられている。固定穴2hの直径は感湿部1の一方端1aの直径と同等程度であり、固定穴2hは感湿部1において一方端1aを含む長手方向の一部を直接、あるいは、Oリング等のシール部材を介して嵌め込むことができるように設けられている。固定部2は当該固定穴2hに感湿部1の一方端1aを含む長手方向の一部を嵌め込んだときに、感湿部1の他方端1bを壁面20に対して測定対象の空間側に突出させた状態として、感湿部1を固定している。固定部2を構成する材料は、耐熱性を有する任意の材料とすることができる。
供給部3は、壁面20が規定する測定対象の空間の外部、あるいは、固定部2に固定された状態で配置されており、固定部2と接続して固定されている配管13を含んでいる。上述のように固定部2に感湿部1の一方端1aが固定されている状態では、供給部3は感湿部1の一方端1aに接続されている。この状態において、供給部3は感湿部1の一方端1aに水を供給することができる。この場合、供給部3により感湿部1の一方端1aに供給された水は穴1Hに流入する。穴1Hは感湿部1の長手方向に延びる内流路の役割を果たし、穴1Hに連通している細孔から毛細管現象により測定対象の空間の内部に配置された感湿部1の表面に到達する。これにより、供給部3は感湿部1の一方端1aに水を供給することにより、感湿部1の一方端1aから他方端1bまでの表面全体を濡らすことができる。供給部3において感湿部1や固定部2と接続される部分は、耐熱性を有する任意の材料で構成され、好ましくは、断熱性を有する材料で構成される。
温度センサ4は、感湿部1の他方端1bに設置されている。具体的には、温度センサ4は、感湿部1の他方端1bの内部であって、表面から2mm以下程度の表面近傍に設置されている。言い換えると、温度センサ4は、穴1Hの他方端1b側の端部の内部であって、感湿部1の他方端1bからの距離が2mm以下の領域に設置されている。温度センサ4は、感湿部1の表面近傍に設置可能な任意の温度計とすることができ、例えば、熱電対や抵抗温度計とすることができる。上述のように、固定部2に感湿部1の一方端1aが固定されている状態において、温度センサ4は測定対象の空間内に配置される。このとき、感湿部1の他方端1bの表面が湿潤しており、その水分が蒸発しているときは、温度センサ4により測定される温度は、測定対象の空間の湿球温度またはその近似値とみなすことができる。
蒸発する水分量より過剰に水を感湿部に供給し、余剰分を排水管15より排出することで、感湿部を冷却することができる。この場合、感湿部表面で測定対象の空間の水蒸気の結露が生じ、表面を湿潤した状態に保つことができる。この場合は、温度センサ4により測定される温度は、測定対象の空間の露点温度またはその近似値とみなすことができる。このことから、温度センサ4で測定される温度は、露点温度として演算により水蒸気量を求めることができる。あるいは、湿球温度と露点温度は、水蒸気量が増加するほど一致するために、高い水蒸気量の場合は湿球温度の近似値として水蒸気量を求めることができる。
温度センサ4に接続されている配線14は、温度センサ4と演算部7とを接続している。配線14は、固定部2に敷設されており、固定部2より感湿部1の一方端1aから穴1Hを通って温度センサ4との接続部にまで引き回されている。
さらに、蒸気量測定装置は、測定対象の空間の乾球温度を測定する温度計(図示しない)と、当該空間の圧力を測定する圧力計(図示しない)とを備えている。当該温度計および圧力計は、測定対象に応じて公知のものから構成することができる。
演算部7は、上記圧力計および温度計の測定データと温度センサ4により測定された湿球温度から、測定空間の水蒸気量を導出する。あるいは、測定値が無い場合は、それぞれ近似的に大気圧などの標準的な値、あるいは、推測値などを用いても良い。
本実施の形態において、感湿部1は、壁面20に固定された固定部2に対して交換可能に設けられている。このとき、温度センサ4を感湿部1に予め一体として設けておき、感湿部1を固定部2に配置したときに、感湿部1の他方端1bに設けられた配線14とが接続されるように設けてもよい。あるいは、温度センサ4ならびに配線14を固定部2に固定あるいは敷設した場合は、感湿部1を固定部2に配置したときに電気的な接続は不要である。
次に、本実施の形態に係る蒸気量測定装置の作用について説明する。蒸気量測定装置は、感湿部1の他方端1bの表面近傍に設けられた温度センサ4により測定対象の空間の湿球温度を測定し出力すること、あるいは測定された温度と、測定対象の空間の乾球温度および圧力から、測定対象の空間の水蒸気量や水蒸気濃度(たとえば,水蒸気モル分率)を算出するための装置である。
感湿部1は、他方端1bが壁面20より測定対象の空間に突出した状態で、一方端1aが固定部2に固定されている。感湿部1に設けられた穴1Hは、一方端1aに供給された水の流路として機能するため、感湿部1の長手方向において他方端1b側に充分な水量を短時間に供給することができる。さらに、感湿部1は多孔質材料からなり、穴1Hの表面と感湿部1の表面との間の厚みは1.25〜5mm程度であって水の透過性および保水性が高い。そのため、供給部3により一方端1aに供給された水は、穴1Hを流通した後、穴1Hの内周表面から多孔質材料の内部に形成された細孔を伝って感湿部1の表面に到達する。このとき、感湿部1の表面近傍に形成された細孔は径が50μm程度以下であれば、感湿部1の表面に到達した水は感湿部1の表面近傍において十分に保水される。この結果、感湿部1はその内部から表面に至るまで充分に湿潤することができる。なお、感湿部1の表面近傍に形成された細孔が50μm程度以上に大きい場合には、細孔内に流入した水が微小な外部との圧力差、あるいは、重力で流れ出てしまい、感湿部1の表面の湿潤状態(水分量)を維持させるのは困難である。ここで、感湿部1の表面が湿潤しているとは、理想的には感湿部1の表面全体が水の膜で覆われている状態をいう。ここで、表面の湿潤状態(水分量)とは、感湿部表面内側の空隙に存在する水量(含水量)と、感湿部の外側に付着する水膜および水滴を意味する。
このとき、測定対象の空間の水蒸気量が感湿部1の表面温度における飽和水蒸気量よりも少なければ、感湿部1の表面近傍を湿潤させている水は、感湿部1の表面において測定対象の空間内の気流と接することによって当該空間に蒸発する。温度センサ4は、感湿部1の表面近傍を湿潤させている水が感湿部1の表面から蒸発しているときに、感湿部1の他方端1bの表面近傍の温度を測定することができる。これにより、供給部3により感湿部1に供給される水が穴1Hの内流路を経て感湿部1の他方端1b付近に至ったあとさらに毛細管現象により温度センサ4の近傍に至ったあとの水温が該表面近傍の温度と同等の場合には、温度センサ4は、測定対象の空間の湿球温度を測定することができる。なお、供給部3により感湿部1に供給される前の水温が該表面近傍の温度に対して低温または高温である場合においても、感湿部1の測定対象の空間に突出する部分の長手方向の長さは30〜300mm程度であるため、感湿部1の一方端1aに供給された水の温度は感湿部1の他方端1bの表面近傍に至るまでに測定対象の空間の湿球温度に近づけることができる。つまり、感湿部1の他方端1bの付近では、感湿部1の表面および内部(穴1H内も含む)に存在する水の温度がほぼ均一の状態となる。そのため外部から水を供給されることによる温度センサ4の測定値に与える影響による誤差を低減させることがでる。
あるいは、測定対象の空間の水蒸気量が感湿部1の表面温度における飽和水蒸気量よりも多ければ、感湿部1の表面において測定対象の空間内の気流と接することによって該空間の水蒸気が結露する。このとき、供給部3により感湿部1に供給される水温は、測定対象の空間内の露点温度よりも低い必要があるが、表面温度と近似的に同等の場合には、温度センサ4は、測定対象の空間の露点温度を測定することができる。
温度センサ4により測定される温度とともに、水温の予測値あるいは測定値に基づいて補正し、より正確な表面温度を求めることで水蒸気量の測定精度を高めることができる。
本実施の形態に係る蒸気量測定装置は、測定対象の空間の温度(乾球温度)が200℃以上の高温であっても有効に作用する。一般に、測定対象の空間の温度(乾球温度)が高温である場合には、湿球温度計も高温に熱せられる。本実施の形態に係る蒸気量測定装置においても、感湿部1の表面を湿潤させるために感湿部1に供給される水は高温に加熱された固定部2に接続された配管13を流通する際に加熱された後、感湿部1の一方端1aに供給される場合がある。そのため、感湿部1に供給された水が固定部2の内部で加熱されて沸騰してしまう可能性がある。この場合、供給水の流れが不安定となり、または、該水の温度が測定対象の空間の実際の湿球温度と大きく乖離してしまい湿球温度の測定精度は悪化する場合がある。また、該水は沸騰することにより感湿部1の表面まで安定的に、かつ充分に到達せず、感湿部1の表面を湿潤させることは困難であるため、湿球温度の測定精度は悪化する場合がある。これに対しては、供給部3によって感湿部1に供給される水の量を増加させることにより、固定部2によって加熱されることによる水温上昇を抑制することができ、該水の沸騰を抑制することができる。なお、この場合には、感湿部1から排出する水の量も増加させればよい。
また、この場合、感湿部1の一方端1aに供給される水の固定部2における温度は、測定対象の空間の湿球温度よりも低温または高温であり、該湿球温度に対して温度差を有している。しかし、本実施の形態に係る蒸気量測定装置は、感湿部1の測定対象の空間に突出する長手方向の長さが30mm以上であり、かつ温度センサ4が他方端1bに設けられているため、感湿部1の一方端1aに供給された水の温度は感湿部1の他方端1bの表面近傍に至るまでに測定対象の空間の湿球温度に充分近づくことができる。その結果、湿球温度の測定精度に対する感湿部1に供給される水の温度の影響を小さく抑えることができ、高温環境下においても湿球温度の測定精度が低下することを抑制することができる。
次に、図1および図2を参照して、本実施の形態に係る蒸気量測定方法について説明する。本実施の形態に係る蒸気量測定方法は、多孔質材料からなる感湿部1を準備する工程(S10)と、感湿部1の長手方向における一方端1aを測定対象の空間を規定する処理室の壁面20に固定する工程(S20)と、感湿部1の一方端1aに水を供給する工程(S30)と、感湿部1の長手方向における他方端1bの温度を測定する工程(S40)とを備える。
まず、工程(S10)では、感湿部1を準備する。感湿部1は、多孔質材料からなる。該多孔質材料は、径が0.1μm以上200μm以下程度の細孔を数多く有しており、好ましくは0.5μm以上50μm以下程度の細孔を数多く有しており、空隙率は40%以上75%以下程度である。該多孔質材料は任意の方法で製造することができるが、たとえば射出成形法または押出成形法により製造されたセラミックス多孔質体を準備する。射出成形法を用いることにより、感湿部1の外形を正確に形成することができ、また感湿部1を大量に準備することも可能である。たとえば射出成形法で作ったセラミックス多孔質体であれば、通水路、センサー固定構造、多孔質体の取付け構造などが簡単に形成できしかも精度が高いため取替えが容易にできる。また、押出成形法を用いることにより、棒状の感湿部1や直線的な細孔を有する感湿部1を容易に形成することができる。押出成形法を用いた場合には、感湿部1に形成されるOリングの溝等は成型後に加工すればよい。
次に、工程(S20)では、先の工程(S10)において準備された感湿部1を測定対象の空間を規定する処理室の壁面20に固定する。このとき、予め壁面20には壁穴20hと、該壁穴20hに嵌め込まれて壁面20に設置されている固定部2とが設けられている。感湿部1は、固定部2に設けられた固定穴2hに一方端1aを含む長手方向の一部を嵌め込むことにより、他方端1bが測定対象の空間に突出した状態で壁面20に固定される。
次に、工程(S30)では、供給部3によって固定部2を介して感湿部1の一方端1aに水を供給する。本工程(S30)では、感湿部1の他方端1bの表面が湿潤するまで感湿部1に対して供給部3により水が供給される。
次に、工程(S40)では、感湿部1の他方端1bに設置された温度センサ4により感湿部1の他方端1bの温度を測定する。他方端1bの表面は、先の工程(S30)によって湿潤しているため、本工程(S40)において温度センサ4により測定された温度は、測定対象の空間の湿球温度とみなすことができる。この結果、本工程(S40)において測定した湿球温度と、同一の測定対象の空間の圧力および乾球温度の測定値から、測定対象の空間の蒸気量を導出することができる。
なお、湿球温度を連続して測定する際には、たとえば工程(S30)によって感湿部1の他方端1bが湿潤した状態を維持するように、工程(S40)の間供給部3による感湿部1に対する水の供給が制御されていればよい。
以上のように、本実施の形態に係る蒸気量測定装置および蒸気量測定方法によれば、多孔質材料からなる感湿部1の一方端1aに供給された水は感湿部1の他方端1bの表面に至り当該表面上で蒸発するため、感湿部1の他方端1bに設置された温度センサが測定する温度を湿球温度とみなすことができる。また、測定対象の空間の温度が高温である場合にも、感湿部1に供給された水の流量および液温を適切に設定することにより、該水の沸騰を抑制することができる。このとき、感湿部1の一方端1aに供給される水の温度は測定対象の空間の湿球温度よりも低温となるが、感湿部1の長手方向の長さが30〜300mm程度であり、かつ温度センサ4が他方端1bに設けられているため、感湿部1の一方端1aに供給された水の温度は感湿部1の他方端1bの表面近傍に至るまでに測定対象の空間の湿球温度に充分近づくことができる。その結果、湿球温度の測定精度に対する感湿部1に供給される水の温度の影響を低く抑えることができ、高温環境下においても湿球温度の測定精度が低下することを抑制することができる。また、本実施の形態に係る蒸気量測定装置および蒸気量測定方法によれば、露点温度を測定することもできるため、従来の結露していることを判断するために光学的な測定機構を有している露点計と比べて、露点温度を安価で簡便に測定することができる。
また、本発明に係る蒸気量測定装置は、感湿部1は一方端1aにおいてのみ固定部2に固定されており、固定部2の固定穴2hから感湿部1の一方端1aを取り外すことによって、固定部2に対する感湿部1の取り付けや取り換えを容易に行うことができる。
本実施の形態に係る感湿部1は円柱形状からなり、穴1Hの表面から感湿部1の表面までの感湿部1の厚みは感湿部1の周方向において等しく設けられていたが、これに限られるものではない。たとえば、図3および図4を参照して、穴1Hの表面から感湿部1の表面までの感湿部1の厚みが感湿部1の周方向において異なっていてもよい。また、感湿部1の長手方向に垂直な断面の形状は多角形であってもよい。また、図5を参照して、感湿部1と同一の中心軸を有する穴1Hの表面(内面)と感湿部1の表面との間の領域に、第2の穴1Kが複数設けられていてもよい。複数の第2の穴1Kは穴1Hの周方向に互いに等間隔に設けられてもよい。さらに、複数の第2の穴1Kは穴1Hに対していずれも等間隔で設けられていてもよい。これらの場合には、第2の穴1Kも感湿部1に供給された水の流路としての役割を果たすことができる。また、たとえば第2の穴1K内に排水管を設けても良い。あるいは第2の穴1Kを感湿部1に供給された水を排水するための流路としてもよい。このようにすれば、感湿部1の表面を湿潤させるために必要な水量以上の水が供給された場合、感湿部を冷却して表面に水蒸気を結露させて露点温度を測定する場合、あるいは感湿部1に供給される水の沸騰を抑制するために穴1Hへの供給水量を増加させた場合にも、余剰分を第2の穴1Kから感湿部1の外部へ排水することができる。また、感湿部1内における水の流れを円滑にすることができ、感湿部1内における水圧と感湿部1外(たとえば配管13内等)における水圧とを同等とすることで、感湿部1の表面から過剰に水が溢れだすことを抑制することができる。また、これらの第二の穴は第4のセンサや配線を取り付ける穴としてもよく、さらに水の流路としてのみでなく、保水のための空隙(多孔質材料の細孔の一部)として機能させることもできる。
また、本実施の形態において、感湿部1の穴1Hは他方端1bにおいて栓5により塞がれていたが、これに限られるものではない。たとえば、図6を参照して、感湿部1に設けられた穴1Hは長手方向に一方端1aから他方端1bまで貫通せずに、他方端1bから一定距離だけ離れた内側まで形成されていてもよい。たとえば、穴1Hは他方端1bから2〜4mm程度内側まで形成されていてもよい。このようにすれば、穴1Hは他方端1bにおいて多孔質材料で塞がれていることになる。その結果、穴1Hに供給された水は穴1Hの他方端1b側の端部から毛細管現象により他方端1bの表面に到達することができる。また、このような形状を有する感湿部1も、射出成形法や押出成形法を用いることにより容易に作製することができる。
また、このような構成とした場合には、湿球温度を定期的に測定する際において本工程(S40)を実施する直前に改めて先の工程(S30)を実施することにより、感湿部1の他方端1bが再び湿潤した状態となるように、供給部3による感湿部1に対する水の供給を制御してもよい。
なお、図1に示すように、感湿部1内に栓5が設けられている場合、温湿度サイクル下に置かれると感湿部1を構成する多孔質材料と栓5を構成する材料との熱膨張係数等の差異により感湿部1が変形する場合がある。また、高温環境下において栓5が完全に乾燥すると、栓5が変性する可能性もある。この場合、他方端1bにおける温度センサ4の周囲の状態が変化するため、温度センサ4の測定精度が悪化するおそれがある。そのため、上記のように栓5を用いずに感湿部1を構成すれば、多孔質材料からなる感湿部1は温湿度サイクル下においても、あるいは一度完全に乾燥しても、変形や変性が生じにくいため測定精度の低下を抑制することができる。
先の行程(S20)において、感湿部1の他方端1bが一方端1aよりも鉛直方向において上方に固定された場合には、感湿部1の表面から測定空間への蒸発量よりも多い水量を感湿部1に供給して、感湿部1の表面から水を溢れださせてもよい。この場合には、たとえば、感湿部1の表面から溢れ出た水を回収する排水回収機構を固定部2に設けて、回収した水を循環利用してもよい。このようにすれば、測定対象の空間の温度(乾球温度)が高温であって固定部2も高温に熱せられる場合に、感湿部1への供給水量を多くすることができるため、固定部2によって感湿部1に供給された水が著しく高温に加熱されて沸騰することを抑制することができる。さらにこの場合において、排水回収機構と供給部3とを接続する配管に圧力センサ(図示しない)を設けて、蒸気量測定装置内の静圧(圧力)の測定に利用してもよい。
(実施の形態2)
以下、図6を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態に係る蒸気量測定装置および蒸気量測定方法は、実施の形態1に係る蒸気量測定装置および蒸気量測定方法と基本的に同様の構成を備えるが、感湿部1の表面の水分量を測定する第2のセンサ8と、第2のセンサの測定値に基づいて、供給部3が感湿部1の一方端1aに供給する水の水量を制御する水量制御部9とをさらに備える点で異なる。
第2のセンサ8は、感湿部1の表面上に、感湿部1の長手方向における一方端1aから他方端1bに延びるように配設されている。具体的には、第2のセンサ8は、3対の電極、8a−8b、8c−8d、8e−8fと、固定部2を介してそれらに接続されている測定回路とで構成されている。
電極8a、8bは、感湿部1の長手方向に一方端1aから他方端1bまで感湿部1の表面に沿って互いに平行に配設されている。さらに、他方端1bにおける長手方向に垂直な表面(端面)上であって、温度センサ4と感湿部1の長手方向から見て重なる領域まで、電極8a、8bは感湿部1の表面に沿って互いに平行に配設されている。電極8c、8dは、感湿部1の一方端1aから他方端1bまで、感湿部1の表面に沿って線間距離が大きくなるように配設されて、他方端1bからそれぞれ感湿部1の内部に入り、穴1Hの内側の空間に至ってから感湿部1の長手方向に互いに平行となるように他方端1b側から一方端1a側に向けて設置されている。電極8e、8fは、感湿部1の一方端1aから他方端1bまで、感湿部1の表面に沿って線間距離が大きくなるように配設し、感湿部1の他方端1bの表面の空間に長手方向に互いに平行となるように配設されている。なお、電極8c、8dおよび電極8e、8fは、感湿部1の一方端1aから他方端1bまで、感湿部1の表面に近い空間上に配設されていてもよい。
電極8a、8b間の静電容量は、感湿部1の一方端1aから他方端1bまでの表面の湿潤状態(水分量)に応じて変化する。厳密には、電極8a、8bが小さい線間距離で配置された空間において、その区間の線間に存在する誘電率が高い物質の量に応じて電極8a、8b間の静電容量が変化する。水は空気、水蒸気、セラミックスよりも誘電率が大幅に大きい。また、感湿部1の表面は感湿部1の中心軸を対称として水分量が分布することから、電極8a、8b間の静電容量は感湿部1の表面の湿潤状態(水分量)に応じて変化する。具体的には、感湿部1の表面の水分量が多いときには電極8a、8b間の静電容量は増加し、感湿部1の表面の水分量が少ないときには電極8a、8b間の静電容量は低下する。そのため、予め感湿部1の表面の水分量と電極8a、8b間の静電容量との関係を確認しておけば、感湿部1の表面に沿って一方端1aから他方端1bに配設されている2本の電極8a、8b間の静電容量を測定することによって、感湿部1の表面の湿潤状態(水分量)を求めることができる。さらに予め感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)と感湿部1の表面の水分量の関係を確認しておけば、2本の電極8a、8b間の静電容量を測定することによって、感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)を求めることができる。また、第2のセンサ8により測定された静電容量に基づいて、感湿部1の他方端1bが湿潤している状態に対する感湿部1の表面の水分量の過不足を判断することもできる。電極8c、8d間の静電容量は、感湿部1の穴1Hの内部の水の水位に応じて変化する。具体的には、互いに平行となるように配設されている2本の電極8c、8dの先端部分において、水に触れている長さに応じて静電容量が変化する。供給部3から穴1Hを経て供給される水の水位が低いときには電極8c、8d間の静電容量は低下する。そのため、予め感湿部1の穴1Hの内部の水の水位と電極8c、8d間の静電容量との関係を確認しておけば、電極8c、8d間の静電容量を測定することによって、感湿部1の穴1Hの内部の水の水位を求めることができる。さらに予め感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)と感湿部1の穴1Hの内部の水位との関係を確認しておけば、電極8c、8d間の静電容量を測定することによって、感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)を求めることができる。電極8e、8f間の静電容量は、感湿部1の他方端1bの表面の水滴の大きさに応じて変化する。具体的には、互いに平行となるように配設されている2本の電極8e、8fの先端部分において、水に触れている長さに応じて静電容量が変化する。感湿部1の他方端1bの表面の水滴が小さいときには電極8e、8f間の静電容量は低下する。そのため、予め感湿部1の他方端1bの表面の水滴の大きさと電極8e、8f間の静電容量との関係を確認しておけば、電極8e、8f間の静電容量を測定することによって、感湿部1の他方端1bの表面上の水滴の大きさを求めることができる。さらに予め感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)と他方端1bの表面上の水滴の大きさとの関係を確認しておけば、電極8e、8f間の静電容量を測定することによって、感湿部1の他方端の湿潤状態(水分量)を求めることもできる。また、該静電容量を長時間監視して急峻な変化を検出することで、懸垂液滴の落下を検知することもできる。なお、電極8a、8b間、電極8c、8d間、電極8e、8f間の測定パラメータは、静電容量に限られるものではなく、誘電率として測定してもよい。
水量制御部9は供給部3と第2のセンサ8とに接続されている。水量制御部9は、第2のセンサ8の測定値が入力されると、該測定値に基づいて供給部3によって感湿部1に供給される水量を制御する。具体的には、水を供給する工程(S30)において、感湿部1の他方端1bが湿潤したときの感湿部1の水分量を確認する工程(S31)を実施してもよい。たとえば、感湿部1の他方端1bを湿潤させたときの静電容量を第2のセンサ8により測定しておき、これを基準値としておく。さらに、温度を測定する工程(S40)では、感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)を測定する工程(S41)と、確認する工程(S31)において感湿部1の他方端1bが湿潤したとき確認された感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)と、測定する工程において測定された感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)とを比較する工程(S42)と、比較する工程の結果に基づいて感湿部1の一方端1aに供給する水の量を調整する工程(S43)とを含んでもよい。工程(S41)において第2のセンサ8により測定される静電容量が工程(S31)において定めた基準値よりも低い場合には、工程(S43)において水量制御部9により感湿部1の一方端1aへの供給水量を増すように供給部3を制御する。このようにすることにより、工程(S40)において感湿部1の表面を湿潤させることができ、温度センサ4により測定される湿球温度の測定精度を向上させることができる。
また、工程(S31)において、第2のセンサ8により測定された静電容量と感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)との関係と、感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)と感湿部1の一方端1aへの適切な供給水量との関係とを確認してもよい。工程(S43)では、これらの関係に基づいて水量制御部9による制御を行ってもよい。
感湿部1の表面の湿潤状態を水量制御部9により制御する場合、毛細管現象による多孔質材料の内部での水の移動に作用することができるが、表面の水膜の厚さを顕著に増すことは困難である。また、毛細管現象による水の移動が蒸発速度よりも少ない場合は、表面の湿潤を維持することが困難である。その場合は、水の排出機構にクランプやバルブを設け、それを制御部9により制御してもよい。たとえば、該バルブを閉じることにより、流れの抵抗を増やすことで穴1H内(感湿部1内)の圧力を上昇させることができる。このようにすれば、毛細管現象のみによらず、感湿部1の内部と測定空間との圧力差により感湿部1の表面に水を強制的に出すことができる。
また、水量制御部9によって感湿部1の一方端1aに供給する水量を増加させたり、あるいは、上記バルブ等により感湿部1内の圧力を上昇させたりすることなく、工程(S41)において感湿部1の他方端1bの水分量の増加がみられた場合には、感湿部1表面で測定空間の水蒸気が結露していると判断することができる。これは、感湿部1の一方端1aに供給される水の量または水圧に対して制御がされていない状態においては、穴1Hから毛細管現象により感湿部1の表面に到達する水の量は増加しないと考えられるためである。この場合は、温度センサ4により測定される温度に基づいて感湿部1の表面近傍の温度を推定し、その温度を露点温度として演算することで,水蒸気量を求めることができる。
また、図7を参照して、第2のセンサ8は、3本の電極8a、8b、8fと、該電極8a、8b、8fと接続されている測定回路とで構成されていてもよい。電極8a、8bは、感湿部1の一方端1aから他方端1bまで表面に沿って互いに平行に配設されている。一方、電極8a、8fは、感湿部1の他方端1bの表面上であって温度センサ4と感湿部1の長手方向において同軸上に位置する領域に、当該長手方向に沿って互いに平行に配設されている。図7では、先の説明の電極8eは電極8aで代用できるため、電極8eは配設されていないことに注意する。このとき、電極8a、8f間の静電容量は、感湿部1の他方端1bの表面上に生じた水滴の量に応じて変化する。たとえば、感湿部1の他方端1bが一方端1aよりも鉛直方向において下方に配置されている場合、他方端1bの表面には鉛直方向の下方に垂れるように水滴が生じる。
この場合、電極8a、8f間の静電容量に応じて感湿部1の一方端1aへの供給水量を水量制御部9によって制御してもよい。具体的には、たとえば測定対象の空間に設置された感湿部1に対して供給部3により一方端1aへある一定以上の水量を供給すると、電極8a、8f間の静電容量が上昇から低下に転ずる。このとき、感湿部1の他方端1bの表面において水滴の落下が生じている。そのため、電極8a、8f間の静電容量が上昇から低下に転ずる前後での当該静電容量の最大値と最小値を予め求めておき、その範囲内に電極8a、8f間の静電容量が収まるように、工程(S43)において水量制御部9により感湿部1の一方端1aへの供給水量を制御してもよい。このようにしても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
この場合においても、供給部3により感湿部1の一方端1aに供給された水量以上の水滴の増加または水滴の落下が観測された場合は、露点温度として演算する方が精度よく水蒸気量を求めることができる場合がある。また、固定部2や固定部2近傍において感湿部1を供給水により冷却することにより結露が起きる場合は、その結露水(凝縮水)を他方端1bの表面近傍まで、毛細管現象あるいは重力等で移動させることができる。これにより、他方端1bへの供給水量を減らすことができ、かつ、精度の高い湿球温度の測定ができる。結露水の分布状態についても、各電極8a、8b、8f間の測定値に基づいて供給部3や排水機構のバルブを制御することで、より精度の高い水蒸気量の測定ができる。
また、図8(a)、図8(b)および図9を参照して、電極8a〜8fについて説明する。図9は、第2のセンサ8を構成する電極8a、8bは、感湿部1の他方端1bにおいて、穴1Hと他方端1bとの間に位置する領域であって温度センサ4が設置された領域の近傍に平行に埋設されていてもよい。たとえば、他方端1bにおいて感湿部1の長手方向に垂直な方向に延びる2つの穴が、温度センサ4と配線14とを挟むように形成されていてもよい。このようにすると、温度センサ4により近い位置での感湿部1の湿潤状態(水分量)を把握できるようになることから、温度センサ4により測定される湿球温度の測定精度を向上させることができる。また、電極8c、8dは、感湿部1の他方端1bで内部に入り、穴1Hの内側で平行となるように配設する。栓5がない場合は図8(b)のように感湿部1の他方端1bに至るまでは感湿部1の表面に近い空間に配設し、穴1Hの端から内部に入り、平行となるように配設する。また、電極8e、8fは、感湿部1の他方端1bに至るまでは感湿部1の表面に沿ってまたは表面に近い空間に配設し、他方端1bの表面に対して垂直方向に平行に配設する。このとき、予め地球の重力や感湿部1の形状の影響によって水滴が発生する位置を確認し、電極8e、8fの先端部の平行部分を該位置にあわせて配設する。
なお、第2のセンサ8は、固定部2を介して取り付けられていたが、これに限られるものではない。たとえば、固定部2とは別体の固定具(図示しない)を用いて感湿部1に対して上述のように配設されていてもよい。このようにしても、感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)を測定することができる。
感湿部1の他方端1bの表面近傍への水の供給は、上述したように、結露水(凝縮水)を利用することもできる。また、その調整は、ポンプや水頭圧を利用して排水機構に設けられたバルブで制御しても良い。
(実施の形態3)
以下、図10を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態に係る蒸気量測定装置および蒸気量測定方法は、基本的には実施の形態1および実施の形態2と同様の構成を有するが、感湿部1に供給する水の水温を測定する第3のセンサ10と、第3のセンサ10の測定値に基づいて供給部3が感湿部1の一方端1aに供給する水の水温を制御する水温制御部11とを備える点で異なる。
第3のセンサ10は、固定部2と接続して固定された供給部3の配管13内に設けられており、工程(S30)および/または工程(S40)において感湿部1の一方端1aに供給される水の温度を測定する。たとえば、温度を測定する工程(S40)において、感湿部1の一方端1aに供給される水の水温を制御する工程(S44)を実施してもよい。このようにすれば、たとえば測定対象の空間の温度(乾球温度)が高温であるために固定部2が高温に熱せられる場合であって、第3のセンサ10により感湿部1に供給される水が固定部2により加熱されて沸騰していることが確認できたときには、感湿部1に供給する水量、および排水管15より排出する水量を増やすように水温制御部11を制御することができる。
本実施の形態において、第3のセンサ10の測定値に基づいて水温制御部11により感湿部1に供給される水の温度を制御することにより、湿球温度の測定精度に対する感湿部1に供給される水の温度の影響を低減したが、これに限られるものではない。たとえば、第3のセンサ10の測定値に基づいて水量制御部9により感湿部1に供給される水の流量を制御してもよい。このようにすることにより、たとえば測定対象の空間の温度(乾球温度)が高温であって固定部2が高温に熱せられている場合にも、感湿部1の一方端1aに供給される水の沸騰を抑制して適切な量の水を供給することができるため、湿球温度の測定精度に対する感湿部1に供給される水の温度の影響を低減することができる。
また、本実施の形態において、第3のセンサ10は、固定部2と接続して固定された供給部3の配管13内に設けられていたがこれに限られるものではない。第3のセンサ10は、固定部2と接続されていない供給部3の配管13内に設けられていてもよい。この場合、第3のセンサ10が設けられた配管13から感湿部1の一方端1aに至るまでの間の水温上昇を予め求めておくことにより、湿球温度の測定精度に対する感湿部1に供給される水の温度の影響を低減することができる。
また、第3のセンサ10は、たとえば穴1H(あるいは図5を参照して第2の穴1K)の内側等、感湿部1の内部に設けられていても良い。このようにすれば、第3のセンサ10および温度センサ4により測定された温度から、感湿部1に供給された水の温度による湿球温度の測定精度への影響の程度を確認することができる。湿球温度を用いて水蒸気量を演算する際に、該影響を考慮することにより、水蒸気量の算出誤差を低減することができる。同様に、露点温度を用いて水蒸気量を演算する場合にも、第3のセンサ10および温度センサ4により測定された温度に基づいて感湿部1の他方端1bの表面近傍の温度を予測することで、より正確な水蒸気量を求めることができる。
実施の形態2および実施の形態3において、水量制御部9によって供給部3から感湿部1に供給される水量を制御する方法の他の例を説明する。感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)の基準値をx、感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)の測定値をy(t)とする。tは時間を表す。水量制御部9では、まず、y(t)の変化をみて、y(t)が何秒後に基準値xに到達するかを予測する。予測時間をTとする。予測時間Tが予め設定された制御基準時間TTよりも長ければ、Tが小さくなるように供給部3を制御して、感湿部1に供給する水量を増加させる。逆に、予測時間Tが予め設定された制御基準時間TTよりも短ければ、Tが大きくなるように供給部3を制御して給水量を減少させる。この制御は、3対の電極の静電容量、すなわち、電極8a、8b間の静電容量、電極8c、8d間の静電容量、電極8e、8f間の静電容量のいずれに対しておこなってもよい。また、この制御を3対の電極の静電容量を組み合わせたベクトル値に対して行ってもよい。
本実施の形態1〜3において、感湿部1の他方端1bの形状は任意に選択することができる。具体的には、図1および図3〜図7の例では、感湿部1の他方端1bの形状は、感湿部1の長手方向に対して垂直に形成された円形状であるが、これに限られるものではない。また、図8および図9の例では、感湿部1の他方端1bは半球型に構成されており、かつ穴1Hの他方端1b側の端部も半球型に構成されているが、これに限られるものではない。たとえば、感湿部1の他方端1bは、感湿部1の長手方向において外側に凸形状である曲面が形成された領域を有していてもよい。あるいは、感湿部1の他方端1bの形状は半球状であってもよい。このとき、図8(b)のように、穴1Hは一方端1aから他方端1bまで貫通していてもよい。また、穴1Hは貫通していなくてもよく、この場合には、図8(a)のように、他方端1b側の端部の形状が半球型であってもよい。また、他方端1bには長手方向において内側に凹形状である曲面が形成された領域を有していてもよい。この場合、後述するように、他方端1bが一方端1aよりも鉛直方向において上方に配置されている場合には、当該凹形状の領域は保水皿としての役割を担うことができる。さらにこのとき、第2のセンサ8を保水皿としての当該凹形状の領域内部にまで配設してもよい。これにより、他方端1bは乾燥を容易に防止することができ、湿潤した状態を容易に維持することができる。温度センサ4は、これらいずれの場合においても、他方端1bの表面近傍に配置されていればよい。このようにしても、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施の形態において、感湿部1は測定空間に他方端1bが突出するように配置されている限りにおいて、測定空間に対し任意に配置されることができる。たとえば、他方端1bが一方端1aよりも鉛直方向において上方に配置されてもよいし、他方端1bが一方端1aよりも鉛直方向において下方に配置されてもよい。
本実施の形態1〜3に係る蒸気量測定装置において、配線14は固定部2に敷設されており、感湿部1を固定部2に配置したときに、感湿部1の他方端1bに設けられた温度センサ4と配線14とが接続されるように設けられているが、これに限られるものではない。たとえば、配線14のうち感湿部1の穴1H内に引き回されている部分は、感湿部1に予め一体として交換可能に設けられていてもよい。この場合、配線14において感湿部1と一体として設けられている部分と、固定部2に敷設されている部分とは、たとえば固定部2の内部において接続される。このようにしても、感湿部1の他方端1bに設けられた温度センサ4に接続される配線14の引き回しを簡便にすることができる。その結果、感湿部1の取り換え作業も容易に行うことができる。
また、本実施の形態1〜3に係る蒸気量測定装置において、固定部2の固定穴2hには、感湿部1の一方端1aを感湿部1の長手方向に位置決めするガイドが形成されていてもよい。このようにすれば、より容易に感湿部1を固定部2に着取り付けることができる。
ここで、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
本発明に係る蒸気量測定装置は、多孔質材料からなる柱状の感湿部1と、感湿部1の長手方向における一方端1aを固定する固定部2と、感湿部1の一方端1aに水を供給する供給部3と、感湿部1の長手方向における他方端1bに設置された第1のセンサ(温度センサ4)とを備える。感湿部1において、供給部3により供給された水は一方端1aから他方端1bに流通する。
これにより、多孔質材料からなる感湿部1の一方端1aに供給された水は感湿部1の他方端1bの表面に至り当該表面上で蒸発するため、感湿部1の他方端1bに設置された温度センサ4が測定する温度を湿球温度とみなすことができる。また、測定環境によっては、測定対象の空間を規定する処理室の壁面20に固定する固定部2が加熱体として感湿部1の一方端1aを加熱することにより、感湿部1に供給された水が加熱され、沸騰する場合がある。しかし、感湿部1に供給された水は加熱体としての固定部2と接続されている感湿部1の一方端1aを経て他方端1bに流通するため、当該水の流量および液温を適切に設定することにより、当該水の沸騰を抑制することができる。このとき、感湿部1の一方端1aに供給される水の温度は測定対象の空間の湿球温度よりも低温となるが、感湿部1の測定対象の空間に突出する長手方向の長さを30〜300mm程度であり、かつ温度センサ4が他方端1bに設けられているため、感湿部1の一方端1aに供給された水の温度は感湿部1の他方端1bの表面近傍に至るまでに測定対象の空間の湿球温度に充分近づくことができる。その結果、湿球温度の測定精度に対する感湿部1に供給される水の温度の影響を低く抑えることができ、高温環境下においても湿球温度の測定精度が低下することを抑制することができる。
上記蒸気量測定装置は、上記感湿部1の表面の水分量を測定する第2のセンサ8と、第2のセンサ8の測定値に基づいて、供給部3が感湿部1の一方端1aに供給する水の水量を制御する水量制御部9とをさらに備えてもよい。
このようにすれば、水量制御部9は、感湿部1の表面が湿潤するように、第2のセンサ8の測定値に基づいて感湿部1に供給される水量を制御することができる。そのため、温度センサ4による湿球温度の測定時には常に感湿部1の表面が充分に湿潤しているようにすることができる。また、第2のセンサ8により水蒸気の結露が起きていると判断される場合は、温度センサ4による測定値をもとに露点温度から水蒸気量を求めることでより正確な値を得ることができる。
上記第2のセンサ8は、感湿部1の表面上に、長手方向における一方端1aから他方端1bに延びるように配設されていてもよい。
これにより、第2のセンサ8は、感湿部1の長手方向における一方端1aから他方端1bまでの表面全体の水分量を測定することができるため、該表面全体が湿潤していることを確認した上で温度センサ4により湿球温度を測定することで、精度の高い湿球温度の測定値を得ることができる。さらに、水量制御部9を備えている場合には、第2のセンサ8の測定値に基づいて、該表面全体が湿潤するように感湿部1に供給する水量を制御することができる。この結果、精度の高い湿球温度の測定値を得ることができる。
上記供給部3は感湿部1に供給する水の温度を測定する第3のセンサ10を含み、第3のセンサ10の測定値に基づいて、供給部3が感湿部1の一方端1aに供給する水の水温を制御する水温制御部11とをさらに備えてもよい。
これにより、たとえば測定対象の空間の温度(乾球温度)が高温であるために固定部2が高温に熱せられる場合であって、第3のセンサ10により感湿部1に供給される水の温度が固定部2により加熱されて沸騰していることが確認できたときには、感湿部1に供給する水量を増やすように水温制御部11を制御することができる。この結果、感湿部1の一方端1aに供給される水の沸騰を抑制できるため、湿球温度の測定精度に対する感湿部1に供給される水の温度の影響を低減することができる。
上記感湿部1の内部には一方端1aから長手方向に延びる穴1Hが設けられており、第1のセンサ(温度センサ4)から穴1Hの内部を介して一方端1aまで延びるように配置された配線14をさらに備えてもよい。
これにより、感湿部1の他方端1bに設けられた温度センサ4に接続される配線14の引き回しを簡便にすることができる。その結果、感湿部1の取り換え作業も容易に行うことができる。
上記感湿部1は、射出成形法または押出成形法により形成された多孔質材料からなっていてもよい。射出成形法を用いることにより、上記形状の感湿部1を容易に、かつ正確に形成することができる。また、押出成形法を用いることにより、棒状の感湿部1や直線的な細孔を有する感湿部1を容易に形成することができる。押出成形法を用いた場合には、感湿部1に形成されるOリングの溝等は成型後に加工すればよい。
本発明に従う蒸気量測定方法は、表面近傍の温度を計測することにより水蒸気量を測定する蒸気量測定方法であって、多孔質材料からなる感湿部1を準備する工程(S10)と、感湿部1の長手方向における一方端1aを測定対象の空間を規定する処理室の壁面20に固定する工程(S20)と、感湿部1の一方端1aに水を供給する工程(S30)と、感湿部1の長手方向における他方端1bの温度を測定する工程(S40)とを備える。水を供給する工程(S30)では、感湿部1の長手方向における他方端1bが湿潤するまで水を供給する。温度を測定する工程(S40)では、感湿部1の他方端1bが湿潤した状態で他方端1bに設置された第1のセンサ(温度センサ4)により温度を測定する。
これにより、工程(S20)において他方端1bが測定対象の空間に突出するように固定された感湿部1に対して、工程(S30)で他方端1bを湿潤させた上で、工程(S40)において他方端1bに設置された温度センサ4により温度を測定するため、温度センサ4の測定した温度を測定対象の空間の湿球温度とみなすことができる。
上記水を供給する工程(S30)は、感湿部1の他方端1bが湿潤したときの感湿部1の表面の水分量を確認する工程(S31)を含んでもよい。上記温度を測定する工程(S40)は、感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)を測定する工程(S41)と、確認する工程(S31)において感湿部1の他方端1bが湿潤したとき確認された感湿部1の表面の水分量と、測定する工程(S41)において測定された感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)とを比較する工程(S42)と、比較する工程の結果に基づいて感湿部1の一方端1a水の水量を調整する工程(S43)とを含んでもよい。
このようにすれば、予め工程(S31)において確認しておいた感湿部1の他方端1bが湿潤しているときの感湿部1の表面の水分量を基準値として、工程(S40)において温度センサ4により温度を測定するときの感湿部1の表面の水分量の過不足を比較判断することができる(S42)。これにより、感湿部1の他方端1bが湿潤していることを確認した上で、温度センサ4により温度を測定することができる。さらに比較した結果に基づいて、工程(S43)において感湿部1に供給される水量を調整することにより、感湿部1の他方端1bを確実に湿潤させた上で温度センサ4により温度を測定することができる。この結果、工程(S40)において温度センサ4により測定された温度は、より高い精度で湿球温度を示すことができる。また、感湿部1の他方端1bの湿潤状態(水分量)を測定する工程(S41)において、感湿部1の一方端1aに供給された水量以上の水滴の増加が判断された場合に、感湿部1の他方端1bの表面近傍の温度を露点温度として測定してもよい。この場合、固定部2や固定部2近傍の感湿部1を供給水により冷却することで結露が起きる場合は、結露水の移動や分布状態についても判断しながら、感湿部1の一方端1aに供給する水量や、感湿部1内の圧力を制御してもよい。このようにすることで、より精度の高い水蒸気量の測定ができる。
上記温度を測定する工程(S40)は、感湿部1の一方端1aに供給される水の水温を制御する工程(S44)を含んでもよい。
これにより、感湿部1の一方端1aに供給される水の温度を測定対象の空間の湿球温度と同程度とすることができる。この結果、精度の高い湿球温度の測定値を得ることができる。
上記温度を測定する工程(S40)において、感湿部1の表面の水分量は感湿部1の表面の誘電率として測定されてもよい。
このようにすれば、感湿部1の表面の水分量を正確に測定することができる。そのため、上述のように感湿部1の他方端1bが湿潤した状態であることを確認した上で精度の高い湿球温度を測定することができるとともに、感湿部1に係る構造は簡易であるため、たとえば取り換え作業等においても取り扱いが容易である。
上記感湿部1を準備する工程(S01)は、射出成形法または押出成形法により形成された多孔質材料を用いて感湿部1を準備してもよい。射出成形法を用いることにより、上記形状の感湿部1を容易に、かつ正確に形成することができる。射出成形法で作ったセラミックス多孔質体であれば、通水路、センサー固定構造、多孔質体の取付け構造などが簡単に形成できしかも精度が良いため取替えが容易にできる。また、押出成形法を用いることにより、棒状の感湿部1や直線的な細孔を有する感湿部1を容易に形成することができる。押出成形法を用いた場合には、感湿部1に形成されるOリングの溝等は成型後に加工すればよい。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。