以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。また、理解を容易にするために、各図は適宜実寸とは異なる誇張した寸法形状で示される。
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る筒形フィルターの製造方法を説明する。図1に示す筒形フィルターの製造方法100は、金属繊維の不織布を巻回して筒状に形成する巻回工程101を備える。巻回工程101は、その主な工程として、未焼結のステンレス鋼、例えば、SUS316L製の不織布2(図2参照)等をジルコニア製の中実円柱のマンドレル10(図2参照)の外周面上に沿わせて巻回する不織布の巻回工程101bを有する。なお、他の実施の形態では、使用上十分な強度を有する外径寸法の中空筒状のマンドレルを用いるものとしてもよい。好ましくは、マンドレルは、熱膨張の線膨張係数が、不織布の金属繊維の線材であるステンレス鋼と比較して小さいジルコニアやアルミナ等のセラミック製とする。離型材をマンドレル表面に付加する場合は、マンドレルはステンレス鋼製でもよい。更に、好ましくは部分安定化ジルコニア(PSZ)やアルミナの焼結体により設ける。このようにマンドレル10に沿わせて不織布2を巻回する場合には、所望の寸法形状に不織布を巻回して精度良く筒状に形成することができる。「筒状(筒形)」は、好ましくは円筒形状とする。しかしながら、「筒状(筒形)」はマンドレルの外周面の形状に応じて随意に変更して形成することができ、他の実施の形態では、例えば、正方形断面、正多角形断面等を有する筒状にフィルターを形成するものとしてもよい。
また、不織布の金属繊維は、相互に焼結(拡散接合)することができる材料であれば、随意の金属材料の繊維を用いることができる。また、不織布を巻回して筒状に形成することができる限度の範囲内であれば、僅かに半焼結された不織布を用いるものとしてもよい。一般に、不織布とは繊維を一定方向やランダムに集積して、熱・機械的または化学的な作用によって接着または絡み合わせる事で布にしたものを指す。したがって、本願では、「金属繊維の不織布」というとき、金属繊維を一定方向やランダムに集積して絡ませてシート状に形成したもの(特に「未焼結の不織布」と呼ぶこともあり、布と言うより薄く延ばしてシート状に成形した金属繊維からなる綿と見ることもできる)、また上記のように、そのシート状の不織布を僅かに半焼結したものも含む概念である。
不織布を構成する金属繊維の材料は、典型的にはステンレス鋼とする。特にオーステナイト系ステンレス鋼が好ましい。耐食性、耐熱性に優れているからである。また後述のように線膨張係数が相対的に大きい(炭素鋼の約1.7倍)ので、スウェージングの後でマンドレルを抜き出しやすい。フェライト系、マルテンサイト系としてもよい。特にマルテンサイト系は、耐食性はオーステナイト系に比べて劣るといえるが、強度が高い点で優れている。材料は、用途に応じて適宜選択する。
不織布の巻回工程101bでは、不織布2(図2参照)をマンドレル10(図2参照)上に複数層に巻回する。「複数層に巻回」するとは、典型的には金属繊維の不織布を複数周回にわたって円筒状に巻いて成形することをいうが、金属繊維の不織布の巻回の開始端(一周)を超えて円筒状に巻いて成形する場合であって、二周に満たない巻回数で不織布を円筒状に巻いて成形する場合をも含む。二周に満たない巻回数で不織布を巻回する場合にも、不織布の巻回の開始端部を複数層に巻回してカバーすることで内部構造に欠陥の無い信頼性の高い接合部を実現することができる。
巻回工程101は、不織布の巻回工程101bの前にアルミナペーパの離型シート材11(図2参照)をマンドレル10(図2参照)に巻回する離型材の巻回工程101aを有する。アルミナペーパ11はアルミナ繊維をアルミナペーパの総重量の約5重量%の有機物で結合(バインド)して設けることができ、アルミナペーパ11で隔離することで、不織布の内周層2a(図2参照)とマンドレル10とが焼結によって、またその後のスウェージングによって固着することを防止することができる。有機物は、例えば、紙繊維とすることができる。また、アルミナ繊維を結合する有機物は第1の焼結工程102によって熱分解するためにアルミナペーパ11は脆くなって焼結された不織布から容易に除去することができる。
本実施の形態では、マンドレル10(図2参照)の外周長の1.2倍に予め切断されたアルミナペーパ11(図2参照)をマンドレル10に一周を超えて巻回することで、不織布の内周層2a(図2参照)とマンドレル10の外周面とを完全に非接触として離型しやすいように隔離する。なお、他の実施の形態では、アルミナペーパ11を一周に満たないロール長さとしてマンドレル10の外周に巻回してもよい。この場合にも、不織布の内周層2aとマンドレル10の外周面とが拡散接合して固着してしまうことの無い限度において、一周に満たない長さで隙間を開けてアルミナペーパ11をマンドレル10に巻回して離型材とすることができる。あるいは、アルミナペーパ11をマンドレル10に丁度一周分だけ巻回するものとしてもよい。あるいは、不織布2とマンドレル10とが相互に焼結(拡散接合)し難い材質(例えば、ステンレスとジルコニア)で各々設けられている場合には、離型材としてのアルミナペーパ11を用いなくてもよい。これらの場合には、筒状に形成される不織布の内周面2i(図6参照)(以下、符号2iは適宜、不織布層の単に内周、内周面あるいは最内周層を示し、2oは適宜、不織布層の単に外周、外周面あるいは最外周層を示す)にアルミナペーパ11の重なり部によって不連続な段差が生じることがない。このため不織布の内周面2iをより滑らかな連続面として形成することができる。
本実施の形態の筒形フィルターの製造方法100は、巻回された不織布を焼結する第1の焼結工程102を備える。第1の焼結工程102は、その主な工程として、マンドレルに巻回した不織布2(図2参照)を加熱することで、不織布2の内部において相互に接触する金属繊維を拡散接合する第1の接合焼結工程102cを有する。なお、第1の焼結工程102は、この第1の接合焼結工程102cの前に、不織布をより強固に焼結することができるように、焼結環境を無酸素雰囲気又は還元ガス雰囲気に予め調整する第1の雰囲気調整工程102aを有してもよい。焼結を無酸素雰囲気又は水素、蟻酸等の還元ガス雰囲気中で行う場合には、金属繊維の表面に形成される酸化膜に起因する焼結不良を防止して、より強固に金属繊維を焼結することができる。また、不織布と離型材(又はマンドレル)との接触面の介在物等に起因する不織布の酸化固着等の不具合の発生を未然に防止することができる。また、第1の焼結工程102は、雰囲気調整工程の後であって接合焼結工程の前に、不織布の金属繊維の溶融温度以下の比較的低い温度で一定時間不織布を加熱する第1の予備加熱工程102bを有する。加熱温度は摂氏400度乃至摂氏900度の範囲、好ましくは摂氏600度乃至摂氏800度の範囲であり、本実施の形態では摂氏750度である。また、一定時間は、30分乃至120分の範囲、好ましくは40分乃至90分の範囲、本実施の形態では60分(1時間)である。予備加熱工程を有する場合には、金属繊維の表面に付着して焼結の妨げとなる油脂、水分、介在物等を熱分解して除去することができる。このため、続く接合焼結工程では、より強固に金属繊維を焼結することができる。
本実施の形態の焼結工程102では、マンドレルに巻回した不織布(ワーク)2(図2参照)を密閉して外気から遮断する密閉容器(マッフル)内にワーク2を配置した状態で、この密閉容器の全体を外部から加熱する電気焼結炉(マッフル炉)(不図示)を用いてワーク2の焼結を行う。第1の焼結工程102が有する第1の雰囲気調整工程102aでは、密閉容器内に先ず窒素ガスを流して容器内の空気と置換し、その後水素ガスを密閉容器内に還元ガスとして注入して雰囲気を調整する。また、第1の焼結工程102が有する第1の予備加熱工程102bでは、ワーク2を摂氏750度で1時間加熱して焼結を阻害する阻害物質を除去する。予備加熱工程によって、離型材として用いられるアルミナペーパ11(図2参照)に含まれる有機物を予め熱分解して除去しておくことができるから、接合焼結工程では、離型材に含まれる有機物の熱分解(熱分解物質)の影響を受けることなく信頼性の高い金属繊維の焼結を行うことができる。
本実施の形態の第1の焼結工程102が有する第1の接合焼結工程102cでは、ワーク2を摂氏1000度乃至摂氏1300度の範囲、好ましくは摂氏1100度乃至摂氏1200度の範囲、本実施の形態では摂氏1190度で所定の時間加熱する。所定の時間は、1時間乃至3時間30分の範囲、好ましくは1時間乃至3時間の範囲、本実施の形態では2時間である。本実施の形態では、摂氏1190度で2時間加熱して焼結する。また、第1の焼結工程102は第1の接合焼結工程102cの後にワーク2を収納する密閉容器を40分間ファン送風により空冷して徐冷する第1の冷却工程102d、及び冷却された密閉容器内に窒素ガスを注入して内部の水素ガスを排出する第1の置換工程102eを更に有する。なお、本実施の形態では、第1の焼結工程102は雰囲気調整工程、予備加熱工程、冷却工程、置換工程を有するものとして説明したが、他の実施の形態では、これらの工程を有することなく筒形フィルターを製造するものとしてもよい。この場合には、更に容易に筒形フィルターを製造することができる。また、他の実施の形態では、焼結する不織布の金属繊維の線径、材質等に応じて、本実施の形態の第1の焼結工程102のために例示した前述の焼結条件(温度、時間等)を適宜変更して不織布を焼結するものとしてもよい。
本実施の形態の筒形フィルターの製造方法100は、焼結された不織布を圧縮する第1の圧縮工程103を備える。第1の圧縮工程103は、焼結された不織布の外周2o(図5(A)参照)から不織布の巻回の巻回軸の軸心に向けて筒形フィルターの厚さt(図6参照)方向に沿って不織布を圧縮成型する。焼結された不織布を圧縮成型することにより、所望の空隙率及び濾過開口サイズを有する筒形フィルターを製造することができる。本実施の形態に示すように焼結された不織布を筒形フィルターの厚さt方向に圧縮成型すると、焼結された不織布は異方性を有する一方で均一に塑性変形する。即ち、本実施の形態では、不織布を濾過開口の開口面の法線方向である厚さt方向に専ら塑性変形させて均一に圧縮成型する。この場合には、従来の成型装置の内型と外型との間に金属粒子を堆積させ開口部から加圧する従来の筒形フィルターの製造法で製造された筒形フィルターの場合のように、筒形フィルター内の金属粒子の充填率が軸方向(長手方向)に不均一となる事に起因する濾過特性のバラツキが無い。このため、所望の濾過特性(空隙率及び濾過開口サイズ)を有する一方で、透過特性に優れ、圧力損失(透過抵抗)の小さい優れた筒形フィルターを製造することができる。特に、剛体とみなすことができる工具(スウェージング冶具又はマンドレル)と接触して塑性変形する筒形フィルターの表面層(外周2o又は内周2i(図6参照))における空隙率を精度良く調整することができる。また、軸方向(長手方向)に大きく塑性変形されることがないために、従来の金属粒子を圧縮して焼結する方法により製造された筒形フィルターにおいてしばしば問題とされてきた、完成した筒形フィルターの脆性の問題を克服して、優れた機械的特性を有する筒形フィルターを製造することができる。
また、本実施の形態では、焼結された不織布を圧縮成型して筒形フィルターを製造することから、従来のシート状材料を円筒状に成型して軸方向に溶接した継目を有する筒形フィルターの場合のように内部構造の欠陥を有することのない信頼性の高いシームレスな筒形フィルターを製造することができる。ここで「シームレス」とは、筒の長手方向(軸方向)に溶接による継目(シーム)の無いことをいう。更に、金属粒子を圧縮して焼結する従来の製造方法で製造される筒形フィルターと比較して筒形フィルターの厚さt(図6参照)をより薄く製造することができることから、所望の濾過特性(空隙率及び濾過開口サイズ)を有する一方で、透過特性に優れて圧力損失(透過抵抗)の小さい優れた筒形フィルターを製造することができる。また、筒形フィルターの製造に用いるマンドレル10(図2参照)の長さに制限はなく、マンドレル10の直径も可能な限り小さく設けることができることから、従来の金属粒子を圧縮して焼結する方法で製造することができる筒形フィルターと比較してより長く細い筒形フィルターを容易に製造することができる。
圧縮工程103は、焼結した不織布をマンドレルとスウェージング冶具との間でスウェージング(矯正圧縮成型)する第1のスウェージング工程103aを有することができる。第1のスウェージング工程103aは、スウェージング冶具13(図5(A)参照)とマンドレル10(図5(A)参照)との間に焼結した不織布2(図5(A)参照)を狭圧して不織布をスウェージングする。スウェージング工程103aの詳細については後に詳述する。
また、圧縮工程103は、圧縮成型された不織布をマンドレル等の冶具から離型する第1の離型工程103bを有するものとしてもよい。第1の離型工程103bは離型材11(図2参照)とマンドレル10(図5(B)参照)との間に剪断力を加えてマンドレル10から焼結した不織布2(図5(B)参照)を分離して取り外す。離型工程103bは離型材(アルミナペーパ)11を不織布から除去する離型材除去工程(不図示)を更に有することができる。本実施の形態の離型材(アルミナペーパ)11に含まれる有機物は焼結によって熱分解し、離型材11はスウェージングによって脆くなっているため、焼結された不織布2をマンドレル10から容易に離型することができ、また焼結された不織布2から離型材(アルミナペーパ)11を容易に除去することができる。離型工程103bの詳細については後に詳述する。離型工程は、常温(室温)で行うことができるが、不織布とマンドレルの線膨張係数の差を利用して、マンドレルと不織布の層を含めた全体を、摂氏100度乃至摂氏300度に加温して行ってもよい。マンドレルの抜き取りが更に容易となる。
本実施の形態の筒形フィルターの製造方法100は第1の焼結工程102と同様の第2の焼結工程201を備える。第2の焼結工程201は、第1の圧縮工程103で圧縮成型されることで、より緊密に相互に接触して接点の増した金属繊維の不織布を再度焼結することで、不織布の焼結を更に強固なものとすることができる。第2の焼結工程201では、第1の離型工程103bにおいて離型材11(図2参照)が既に除去された不織布を再度マンドレル10(図2参照)上に差し込んで焼結することができる。
第2の焼結工程201が有する第2の接合焼結工程201cでは、離型材11(図2参照)を用いることなく不織布を接合焼結(拡散接合)することに伴う筒状に形成された不織布の直径の減少(焼き締まり)を考慮して、第1の焼結工程102が有する第1の接合焼結工程102cよりも低い焼結温度で焼結を行うことができる。この場合には、第1の焼結工程102よりも僅かに低い焼結温度で接合焼結を行うことで、接合焼結後にマンドレル10(図5(B)参照)から不織布2(図5(B)参照)を容易に離型できることが本願発明者によって確認されている。例えば、第2の焼結工程201の接合焼結の温度を第1の焼結工程102よりも摂氏20度だけ低い温度とすることでこの効果を得ることができる。この効果を得るために低下させる温度の範囲は、例えば、摂氏10度乃至摂氏120度の範囲、更に狭い範囲では、摂氏20度乃至摂氏50度の範囲とすることができる。なお、本実施の形態では、筒型フィルターの製造方法100は第2の焼結工程201を備えるものとして説明したが、他の実施の形態では、第2の焼結工程201を備えることなく第1の焼結工程102のみにより筒形フィルターを製造するものとしてもよい。この場合には、更に容易に筒形フィルターを製造することができる。
本実施の形態の筒形フィルターの製造方法100は第1の圧縮工程と同様の第2の圧縮工程202を備える。第2の圧縮工程202は本実施の形態の筒形フィルターの製造方法100における最後の圧縮工程であり、焼結された不織布の内周面及び外周面の寸法を完成品の筒形フィルターの内周面2i及び外周面2oの寸法(図6参照)として精度良く仕上げることができる。第2の圧縮工程202が有する第2のスウェージング工程202aでは、第1の離型工程103bにおいて離型材(アルミナペーパ)11が既に除去されているために、不織布の内周2iは離型材11を介することなくマンドレル10(図5(A)参照)の外周と完全に一致するように圧縮される。このため、離型材11の影響を受けることなく、筒形フィルターの内周2iを滑らか且つ寸法精度良く形成することができる。また既に説明したように、不織布の金属繊維とマンドレルの材料の違いに基づく線膨張係数の差により、マンドレルの抜出しも比較的容易に行うことができる。このように、焼結工程及び圧縮工程を複数回繰り返して行うことで筒形フィルターの更に強固な焼結と更に精度の良い寸法形状とを提供することができる。なお、他の実施の形態では、焼結工程及び圧縮工程の繰り返しの回数は2回以上、例えば3回であってもよい。あるいは、更に他の実施の形態では、第2の圧縮工程202を備えることなく第1の圧縮工程103のみにより筒形フィルターを製造するものとしてもよい。この場合には、更に容易に筒形フィルターを製造することができる。
本実施の形態の筒形フィルターの製造方法100は、最後の圧縮工程(第2の圧縮工程202)の後に筒形フィルターの内周層又は外周層の表面2i、2o(図6参照)のいずれかに(特に線径の小さい金属繊維を用いた層の側に)パラジウム又はパラジウム合金めっき3(図6参照)を施すパラジウム又はパラジウム合金めっき工程301を備える。筒形フィルターの表面の濾過開口をパラジウム又はパラジウム合金めっきで封孔する場合には、パラジウム又はパラジウム合金めっき層が水素透過膜として機能することから、筒形フィルターを例えば燃料電池用の水素透過フィルターとして用いることができる。パラジウム合金は、例えば、パラジウムと銀、銅等との合金とすることができる。本実施の形態の筒形フィルターの製造方法100によれば、筒形フィルターの濾過開口サイズをミクロンオーダ、あるいはサブミクロンオーダとして製造することができるから、筒形フィルターの表面に非常に薄い膜厚のパラジウム又はパラジウム合金めっきを施すだけで、好適に濾過開口を封孔して水素透過フィルターを製造することができる。この場合には希少金属であるパラジウム又はパラジウム合金の使用量を削減することができる。なお、他の実施の形態では、パラジウム又はパラジウム合金めっきを施すことなく筒形フィルターを製造するものとしてもよい。この場合にも、所望の濾過特性(空隙率及び濾過開口サイズ)を有する一方で、透過特性に優れて圧力損失の小さい優れた筒形フィルターを製造することができる
図2を参照して、本実施の形態に係る巻回工程を詳細に説明する。本実施の形態の巻回工程101(図1参照)を実現する巻回装置20が備えるマンドレル10、マンドレルを巻回装置20に対して着脱可能且つ回転自在に軸支するマンドレルチャック10a、各々自由回転可能に軸支される第1及び第2の巻回ローラ12a、12bを図2に示す。巻回ローラ12a、12bは更に第3の巻回ローラ12c(図3参照)と共にマンドレル10を中心に囲んで相互に120度の角度間隔を隔てて配置される。第1乃至第3の巻回ローラ12a、12b、12cは各々エアシリンダ(不図示)に駆動されてマンドレル10の回転軸の軸心に向けて前進及び後退(ストローク)可能に設けられる。なお、巻回装置は本実施の形態の巻回工程を実現することができる限度の範囲において図示の例と異なる差異を有して設けることができる。本実施の形態では、外周2oの直径が12.7mm、内周2iの直径が11.04mm、厚さtが約0.8mm、軸方向の長さが200mmの筒形フィルター1(各図6参照)を製造する場合を示すものとし、マンドレル10は、その外周の直径が筒形フィルター1の内周2iの直径と一致する11.04mmに設けられる。
本実施の形態において、マンドレル10には先ず、離型シート材であるアルミナペーパ11が巻回される。アルミナペーパ11を巻回するために、巻回ローラ12a、12bを後退させてマンドレル10と巻回ローラ12a、12bとの間に隙間を設ける。本実施の形態では、脆いアルミナペーパ11に弾性シート(不図示)を外側から重ねた状態で巻回ローラ12a、12bとマンドレル10との間にアルミナペーパ11と弾性シートとを狭圧して巻回して巻き付けを開始する。この場合には、アルミナペーパ11に巻回ローラ12a、12bが直接線接触して当接することがなく、弾性シートが加えられる荷重をより広い範囲に分散することができるから、アルミナペーパ11が破壊してしまうことがない。このため均一にアルミナペーパ11をマンドレル10に巻回することができる。なお、弾性シートは透明に設けるものとしてもよい。この場合には、巻回中のアルミナペーパ11の状態を弾性シートの外側から視認しながら巻回することができる。なお、内周層となる不織布を弾性シートの代わりとしてもよい。そのときは、弾性シートの取り除きの工程を省略することができる。
本実施の形態では、アルミナペーパ11を巻回する際の巻回ローラ12a、12bによる加圧力は、各々金属繊維の不織布2を巻回する際の加圧力よりも低い加圧力に設定される。加圧力を高くすると、アルミナ繊維が破断して、形状を維持することができなくなるからである。本実施の形態では、巻回ローラによる加圧力は、例えば各々0.05MPa(狭圧長さ270mm当たり140N相当)とすることができる。この加圧力により巻回ローラ12a、12bをマンドレル10の軸心に向けて前進させて弾性シート(不図示)とアルミナペーパ11とをマンドレル10との間で狭圧した状態で、マンドレル10を回転させてアルミナペーパ11をマンドレルに巻回する。
マンドレル10は本実施の形態においてはマンドレルチャック10aに連結する手動ハンドル(不図示)により必要な回転トルクを与えられて回転するように設けられる。この場合には筒形フィルターの製造者が手動ハンドルに伝達される加工反力を確認しながら適切に巻回を行うことができる。一方、他の実施の形態では、随意に回転制御の為されたモータ(不図示)で機械的にマンドレル10を回転するものとしてもよい。この場合にはより効率良く巻回工程を実現することができる。巻回によりアルミナペーパ11に一定の丸みが付けられた後は、更に第3の巻回ローラ12c(図13参照)による加圧を加えてマンドレル10を回転させることでアルミナペーパ11がマンドレル10に密着するように加工する。弾性シート(不図示)はアルミナペーパ11の巻回後に巻回装置20から取り除くことができる。
続いて筒形フィルターの内周層を形成する線径(平均断面直径)da=6.5μmのステンレス鋼(SUS316L)製の金属繊維で構成された不織布2a(目付量150g/m2)を前述のように巻回したアルミナペーパ11の上からマンドレル10上に重ねて巻回する。図2では、筒形フィルターの外周層を形成する不織布2bの一部を説明のために切り欠いて内周層を形成する不織布2aを示している。金属繊維の線径daは所望の濾過特性(空隙率及び濾過開口サイズ)、剛性並びに透過特性を得ることができるように材質、目付量と共に随意に選択することができる。筒形フィルターの内周層を形成する不織布2aは予めロール幅が筒形フィルターの軸方向の長さ200mmを製造するために十分な270mmに、ロール長さがマンドレルに7.5周だけ巻回することができる長さ(300mm)に裁断されて用意される。
内周層を形成する不織布2aの巻回は、第1及び第2の巻回ローラ12a、12bとマンドレル10との間に巻回されたアルミナペーパ11と不織布2aとを重ねて狭圧した状態でマンドレル10を回転させることで、先ずは1周だけアルミナペーパ11上に不織布2aを巻回する。不織布2aを1周巻回した後は、第3の巻回ローラ12c(図13参照)を加えて第1乃至第3の巻回ローラ12a、12b、12cで不織布2aをマンドレル10(アルミナペーパ11)上に押圧した状態で不織布2aの全長(7.5周)をマンドレル10の外周上に巻回する。不織布2aの全長(7.5周)をマンドレル10の外周上に巻回した後に、第1乃至第3の巻回ローラ12a、12b、12cの各々の加圧力を0.2MPa(狭圧長さ270mm当たり600N相当)に昇圧して20回程度マンドレルを回転して不織布2aを筒状に形成する。このように、筒形フィルターの内周層を形成する不織布2aの全長をマンドレル10上に巻回するまでは第1乃至第3の巻回ローラによる加圧力を比較的低い加圧力として巻回することで、アルミナペーパ11及び内周層を形成する不織布2aが潰れて(塑性変形して)しまうことを防ぐことができる。
同様に、筒形フィルターの外周層を形成する線径(平均断面直径)db=2μmのステンレス鋼(SUS316L)製の金属繊維で構成された不織布2b(目付量150g/m2)を前述のように巻回した筒形フィルターの内周層を形成する不織布2aの上からマンドレル10上に更に重ねて巻回する。金属繊維の線径dbも同様に、所望の濾過特性(空隙率及び濾過開口サイズ)、剛性並びに透過特性を得ることができるように材質、目付量と共に随意に選択することができる。筒形フィルターの外周層を形成する不織布2bは予めロール幅が筒形フィルターの軸方向の長さ200mmを製造するために十分な270mmに、ロール長さがマンドレルに22.6周だけ巻回することができる長さ(900mm)に裁断されて用意される。なお、筒形フィルターの外周層を形成する不織布2bをマンドレル10上に巻回する際は、既にマンドレル10上に巻回されたアルミナペーパ11と内周層を形成する不織布2aとが第1乃至第3の巻回ローラ12a、12b、12c(図3参照)が加える加圧力を分散することとなる。このため、外周層を形成する不織布2bを巻回する際の巻回ローラによる加圧力を終始各々0.2MPa(狭圧長さ270mm当たり600N相当)としてもアルミナペーパ11及び不織布2が潰れて(厚さ方向に塑性変形して)しまうことがない。
図3を参照して、本実施の形態に係る巻回工程を更に説明する。図3は離型材としてのアルミナペーパ11、筒形フィルターの内周層を形成する不織布2a、外周層を形成する不織布2bが第1乃至第3の巻回ローラ12a、12b、12cによって厚さ方向に押圧されてマンドレル10上に重ねて巻回されていることを示す。内周層を形成する不織布2a、外周層を形成する不織布2bは複数層に巻回され、層間の接触面において隙間が生じることなく金属繊維同士が層を超えて相互に接触している。このように不織布2はマンドレル10と第1乃至第3の巻回ローラとの間で筒形フィルターの厚さt(図6参照)方向に押圧されて筒状に形成される。
図4を参照して、本実施の形態に係る巻回工程を更に説明する。図4(A)に示すように、本実施の形態の巻回工程101(図1参照)では、互いに異なる線径(平均断面直径)da、dbの金属繊維で構成される複数枚の不織布2a、2bを順次重ねてマンドレル10の外周面上に巻回する。このように異なる複数種類の不織布2a、2bを重ねて巻回する場合には、不織布2a、2bの機械的特性の差異に応じて所望の傾斜した内部構造特性を有する機能的な筒形フィルターを製造することができる。また、重ね合わせる不織布の枚数に制限はなく、他の実施の形態では、例えば、3枚の不織布を重ね合わせることで、筒形フィルターの内周層2a、中間層(不図示)及び外周層2bにおける濾過特性(空隙率及び濾過開口サイズ)及び透過特性を随意に変化させて筒形フィルターを製造するものとしてもよい。
また他の実施の形態の巻回工程では、例えば図4(B)に示すように、内周層を形成する不織布2aと外周層を形成する不織布2bとが一枚の連続する不織布として構成された不織布2cを用いてマンドレル10上に不織布を巻回する。この場合には、更に効率良く異なる複数種類の不織布2a、2bをマンドレル10に巻回することができる。更に他の実施の形態では、一枚の連続する不織布は、筒形フィルターの最内周層2i(図6参照)を形成する巻き始めの一端を形成する第一の部分から筒形フィルターの最外周層2o(図6参照)を形成する巻き終わりの他端を形成する第二の部分までにかけて、不織布を形成する繊維の材質、繊維の線径(平均断面直径)、濾過開口サイズ等の構造特性が連続的に変化するように構成してもよい。あるいは、一枚の連続する不織布は均一な機械特性を有する一枚の不織布を用いるものとしてもよい。
不織布2をマンドレル10に巻回した後に、巻回装置のマンドレルチャック10a(図2参照)からマンドレル10を取り外すことができる。本実施の形態では、巻回後の不織布2の外周の直径は19mmとなる。巻回した不織布2の端部(巻き終わった不織布2のロールの軸方向の両端部及び不織布2の終端部)が巻回ローラ12a、12b、12c(図3参照)の表面に張り付くことで巻き終わった(下層の)不織布2のロールの表面からの浮き上がりを生じている場合には、浮き上がりを生じた不織布2の端部を指で軽く押さえて浮き上がりを除去するものとしてもよい。また、続く第1の焼結工程102(図1参照)では、巻き終わった不織布2の終端部が鉛直上方に位置するように焼結炉内に不織布2を配置して焼結を行うものとしてもよい。この場合には、不織布2の巻回方向の終端部の自重によって終端部を下層の不織布2と十分に接触させることができるから、接触する金属繊維同士を拡散接合させて不織布2を強固に焼結することができる。本実施の形態では、第1の焼結工程102後の不織布2の外周の直径は焼き締まりによって1mm減少して18mmとなる。
図5を参照して、本実施の形態に係る圧縮工程を詳細に説明する。図5(A)に示す第1の圧縮工程103(図1参照)が有する第1のスウェージング工程103a(図1参照)では、回転するスウェージング冶具13の回転中心に第1の焼結工程102(図1参照)で焼結された不織布2を軸方向に挿入する。スウェージング冶具13が備える第1の対のダイス13aと第2の対のダイス13bはスウェージング冶具13の回転中心に向かって所定の距離だけ交互に往復駆動されるように設けられている。このため、製造する筒形フィルターの厚さt(図6参照)方向に沿って、スウェージング冶具13に挿入される焼結された不織布2を所定の量だけ圧縮することができる。また、スウェージング冶具13は回転しながら第1及び第2のダイスの対13a、13bを交互に往復駆動して焼結された不織布2をスウェージングするように設けられている。このため、不織布2を圧縮して製造される筒形フィルターの厚さtを偏りのない均一な厚さtとして製造することができる。本実施の形態では、第1のスウェージング工程103a後の不織布2の外周2oの直径は3mm圧縮されて15mmとなる。
ここで、スウェージング冶具13の往復運動は、次のように行われる。先ず、第1の対のダイス13aがマンドレル10に巻き付いた不織布2に打ち付けられる。その状態で、即ち、第1の対のダイス13aが不織布2のロールを保持した状態で、第2の対のダイス13bが、不織布2の層から離れた後に、マンドレル10に巻きついた不織布2に打ち付けられる。次に、第2の対のダイス13bが不織布2のロールを保持した状態で、第1の対のダイス13aが、不織布2の層から離れる。このようにして、往復運動が繰り返される。
図5(B)に示す第1の圧縮工程103(図1参照)が有する第1の離型工程103b(図1参照)では、焼結して圧縮した不織布2をマンドレル10から離型して取り外す。例えば、第1の離型工程103bでは、マンドレル10の外径と僅かな隙間を空けて嵌合する貫通穴14aを有する離型冶具14を用いてマンドレル10と不織布2(離型シート材11(図2参照))との間に剪断力を加えて離型する。本実施の形態では、不織布2を離型冶具14で支持した状態で、マンドレル10の上端部を例えばプレス加圧機(不図示)により押下することにより、不織布2(離型シート材11)とマンドレル10との接触面に剪断力を加えて離型する。あるいは、他の実施の形態では、マンドレル10を樹脂製のハンマー(不図示)で打撃することにより、断続的な打撃を与えて離型するものとしてもよい。この場合には更に容易に筒形フィルターを製造することができる。
本実施の形態では、不織布2が離型シート材11(図2参照)であるアルミナペーパを介してマンドレル10上に巻回されているために、不織布2とマンドレル10とが焼結(拡散接合)されて固着してしまうことがない。また、アルミナペーパは第1の焼結工程102(図1参照)によりアルミナ繊維を結合する有機物が熱分解しているために脆く離型しやすくなっている。また、不織布の内周2i(図6参照)を形成する金属繊維の線径(平均断面直径)daが比較的大きな線径に設けられているために、内周2iにおける不織布2の接触面積が小さく、また離型の際に接触面に生じる摩擦力を減少することができるように設けられている。更に、第1のスウェージング工程103a(図1参照)で不織布2(離型シート材11)がスウェージングされて塑性変形されるために、不織布の内周2i(離型シート材11)ではマンドレル10と接触する部分が変形して移動し、離型し易く加工されている。このため、不織布2をマンドレル10から容易に離型して取り外すことができる。また、不織布2をマンドレル10から離型した後に、不織布の内周2i上に残留した離型材であるアルミナペーパ11をエアーブロー及びふき取りにより容易に除去することができる。
本実施の形態の筒形フィルターの製造方法100(図1参照)は、前述の通り、第1の離型工程103b(図1参照)の後に、再度、摂氏750度で1時間加熱する第2の予備加熱工程201b及び摂氏1170度で2時間加熱する第2の接合焼結工程201cを有する第2の焼結工程201(図1参照)を更に備える。また、前述の通り、第2の焼結工程201は、その後40分間送風ファンで空冷して徐冷する第2の冷却工程201d及び密閉容器内に窒素ガスを注入して完全に水素ガスを排出する第2の置換工程201eを有している。第2の焼結工程201を経ることで、不織布2は更に強固に焼結される。第2の焼結工程201後の不織布の外周2oの直径は焼き締まりによって0.5mm減少して14.5mmとなる。前述の通り、第2の焼結工程201における焼き締まりは、接合焼結の温度を摂氏20度低下させることによって第1の焼結工程102(図1参照)における焼き締まりよりも緩和されている。
また、本実施の形態の筒形フィルターの製造方法100(図1参照)は、前述の通り、第2の焼結工程201(図1参照)の後に、第2のスウェージング工程202a(図1参照)及び第2の離型工程202b(図1参照)を有する第2の圧縮工程202(図1参照)を備える。前述の通り、第2のスウェージング工程202aでは、離型シート材11(図2参照)を介することなく直接マンドレル10上に不織布2を圧縮するために、不織布の内周2i(図6参照)の形状及び寸法を完全にマンドレル10の外周と一致させて精度良く筒形フィルターを製造することができる。また、第2の圧縮工程202により、随意の空隙率を有する筒形フィルターを精度良く製造することができる。第2のスウェージング工程202aでのスウェージングは、第1のスウェージング工程103aとは異なる内径を有する2対のダイス13a、13bを用いてスウェージングを行う。第2のスウェージング工程202a後の不織布の外周2oの直径は1.8mm減少して完成品の筒形フィルターの外径直径の寸法である12.7mmとして製造される。空隙率は27.12%として精度良く製造される。
第2のスウェージング工程202a(図1参照)に続く第2の離型工程202b(図1参照)では、容易に不織布2をマンドレル10から離型して取り外すことができる。これは、第2の焼結工程201(図1参照)において、本実施の形態のマンドレル10がジルコニア製であり、不織布2がステンレス鋼製であるために相互に拡散接合し難いこと、及び既に一度焼結されスウェージング加工されて設けられていることに起因する。また、第2のスウェージング工程202aにおいて、更に不織布2を塑性変形させる際に不織布2とマンドレル10との接触面に一定の剪断力を加えることができることに起因する。なお、他の実施の形態では、第2の離型工程202bは、異なる材質で設けられたマンドレルと不織布とを合わせて加熱することにより、両者の熱膨張の違いを利用して、両者の接触面に剪断力を加えると共に両者を半径方向に分離する加熱分離工程(不図示)を更に有するものとしてもよい。特に、先に説明したように、不織布の金属繊維とマンドレルの材料の線膨張係数の差を利用するとよい。この場合には、例えば、マンドレル及び不織布を一緒に摂氏100度乃至摂氏300度の範囲、好ましくは摂氏150度乃至摂氏250度の範囲、本実施の形態では摂氏200度で加熱することにより熱膨張差を利用してマンドレルと不織布とを分離して離型することができる。
最後に、本実施の形態の離型後の不織布の軸方向長さ(製造長さ270mm)の両端部(両端35mm)を切除して完成時の筒形フィルターの軸方向長さ200mmとする。この場合には、製造された不織布の内の最も製造上の信頼性の高い中央部分のみを完成した筒形フィルターとすることができるから、高品質の筒形フィルターを製造することができる。なお、他の実施の形態では、不織布の製造時の軸方向長さを当初から完成時の筒形フィルターの軸方向長さと一致させて製造するものとしてもよい。この場合には、更に容易に筒形フィルターを製造することができる。以上のように、本実施の形態の筒形フィルターの製造方法によれば、高性能の筒形フィルターを容易に製造することができる。
図6を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る筒形フィルターを説明する。筒形フィルター1は前述の第1の実施の形態の筒形フィルターの製造方法100(図1参照)により設けられる。前述の通り、筒形フィルター1は、金属繊維の不織布2により筒状にシームレスに形成された筒形フィルター1であって、筒形フィルターの内周2iを形成する内周層2a(図2参照)と、筒形フィルターの外周2oを形成する外周層2b(図2参照)であって内周層2aを形成する不織布の金属繊維の直径daと異なる直径dbの金属繊維により構成された外周層2bとを備え、不織布2は厚さt方向に圧縮された筒形フィルターとして設けられる。
このため、筒形フィルター1を継目(シーム)に起因する内部の構造欠陥を有しない信頼性の高い筒形フィルターとして設けることができる。また、筒形フィルター1を厚さt方向における不織布の剛性の変化に応じた傾斜した内部構造及び空隙率を有し、所望の濾過特性を有する優れた筒形フィルターとして設けることができる。また、筒形フィルター1を圧縮された不織布2の濾過開口の開口方向(開口面の法線方向)が厚さt方向を向くように配向され、濾過の際の透過抵抗(圧力損失)が少ない高性能の筒形フィルターとして設けることができる。
本実施の形態の筒形フィルター1についてバブルポイントテストを実施したところ、2.5kPa乃至25kPaという高いイニシャル・バブルポイント値(ISO規定に拠る)及び3kPa乃至36kPaという高いバースト・バブルポイント値(当業界における標準的測定法に拠る)を有するという優れた性能を確認することができた。この測定値に基づき、金属繊維不織布の代表的なメーカーであるベカルト(BEKAERT)社の濾過精度計算式を用いて計算してみると、筒形フィルター1の絶対濾過精度(最大濾過開口サイズ)は1.48μm乃至14.8μmであり、平均孔径(平均濾過開口サイズ)は1.03μm乃至12.3μmであるものと推定する事ができる。
絶対濾過精度=37kPa/イニシャル・バブルポイント値
平均孔径=37kPa/バースト・バブルポイント値
本実施の形態の筒形フィルター1は、内周層2a(図2参照)が7.5周巻回(ロール長さ300mm)、外周層2b(図2参照)が22.6周巻回(ロール長さ900mm)、目付量150g/m2、体積6.1903cm3(内周直径11.04mm、外周直径12.7mm、軸方向長さ200mm)、重量36g、空隙率27.12%として設けられた。筒形フィルター1の内周2i又は外周2oの表面(特に繊維系の小さい側の表面)にパラジウム又はパラジウム合金めっき3を施すことにより、優れた性能を有する燃料電池用の水素透過フィルターを設けることができる。なお、他の実施の形態では、例えば、外周層2bの巻回周数を7.5周(300mm)、15周(600mm)、30.1周(1200mm)に各々変更することで、空隙率が63.56%(重量18g)、45.34%(重量27g)、8.9%(重量45g)と各々異なる筒形フィルターを設けるものとしてもよい。また同様に、これらの筒形フィルターの内周2i又は外周2oの表面にパラジウム又はパラジウム合金めっき3を施すことにより、優れた性能を有する燃料電池用の水素透過フィルターを設けるものとしてもよい。