JP6276868B2 - 熱電変換素子、導電膜、及び有機半導体デバイス - Google Patents

熱電変換素子、導電膜、及び有機半導体デバイス Download PDF

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Description

本発明は、熱電変換素子、導電膜、及び有機半導体デバイスに関する。
熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換することができる熱電変換材料は、熱電発電素子やペルチェ素子のような熱電変換素子に用いられている。
このような熱電変換材料や熱電変換素子を応用した熱電発電は、熱エネルギーを直接電力に変換することができ、可動部を必要とせず、体温で作動する腕時計や僻地用電源、宇宙用電源等に用いられている。
例えば、特許文献1には、熱電変換素子の熱電変換層に、導電性高分子を使用した態様が開示されている。なお、特許文献1の実施例では、導電性高分子を含有する混合液を基板上に塗布し、加熱して、熱電変換層を形成している。
特開2013−84947号公報
一方、近年、熱電変換素子が使用される機器の性能向上のために、熱電変換素子の熱起電力のより一層の向上が求められている。また、熱電変換素子の熱電変換層(導電膜)の導電率は熱電変換素子の性能(熱起電力、変換効率、応答性など)に直接影響するため、高い導電率を示す導電膜が求められている。また、このような高い導電率を示す導電膜は熱電変換素子に限らず、広く有機半導体デバイスに有用である。
このようななか本発明者らが、特許文献1の実施例を参考に、導電性高分子(π共役ポリマー)の溶液を基板上に塗布し、加熱して、導電膜を作製したところ、その導電率は昨今要求されるレベルを必ずしも満たすものではなく、更なる改良が必要であることを知見した。また、同様に、導電性高分子(π共役ポリマー)の溶液を基板上に塗布し、加熱して、熱電変換素子の熱電変換層を形成したところ、熱電変換素子の熱起電力は昨今要求されるレベルを必ずしも満たすものではなく、更なる改良が必要であることを知見した。
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、熱起電力が高い熱電変換素子、並びに、導電率が高い導電膜、及び、上記導電膜を用いた有機半導体デバイスを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、熱電変換層(導電膜)に、特定の分子量の繰り返し単位を有し、キャリアがドーピングされたπ共役ポリマーを使用し、且つ、熱電変換層(導電膜)の結晶化度を特定にすることで、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
(1) π共役ポリマーを含有する熱電変換層を備える、熱電変換素子であって、
上記π共役ポリマーが、分子量150以上の繰り返し単位を有し、キャリアがドーピングされたπ共役ポリマーであり、
上記熱電変換層の結晶化度が、20%以上である、熱電変換素子。
(2) 上記π共役ポリマーが、チオフェン系化合物、ピロール系化合物、アニリン系化合物、アセチレン系化合物、p−フェニレン系化合物、p−フェニレンビニレン系化合物、p−フェニレンエチニレン系化合物、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される繰り返し単位を有するπ共役系ポリマーである、上記(1)に記載の熱電変換素子。
(3) 上記π共役ポリマーが、繰り返し単位中に少なくとも2種類以上の芳香環を含有するπ共役ポリマーである、上記(1)又は(2)に記載の熱電変換素子。
(4) 上記π共役ポリマーが、繰り返し単位中に芳香族縮合環を含有するπ共役ポリマーである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱電変換素子。
(5) 上記π共役ポリマーが、後述する式(1)で表される繰り返し単位を有する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱電変換素子。
(6) 上記式(1)中、Aが、後述する式(A1)で表される化合物の任意の位置から2つの水素原子を除いた2価の共役系連結基である、上記(5)に記載の熱電変換素子。
(7) 上記式(A1)中、mが1であり、X31及びX42が、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、若しくは−NRN2−基である、又は、X32及びX41が、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、若しくは−NRN2−基である、上記(6)に記載の熱電変換素子。ここで、RN2は、水素原子、又はアルキル基を表す。
(8) 上記式(A1)中、mが1であり、nが1以上の整数であり、A環が、ベンゼン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、シクロペンタジエン環、又はシロール環である、上記(6)又は(7)に記載の熱電変換素子。
(9) 上記式(Z)中、RZ1で表される電子供与性基のハメットの置換基定数σ値が、−0.20以下である、上記(5)〜(8)のいずれかに記載の熱電変換素子。
(10) 上記式(Z)中、RZ1が、ヒドロキシ基若しくはその塩、メルカプト基若しくはその塩、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、又はこれらの基で置換されたアリール基である、上記(5)〜(9)のいずれかに記載の熱電変換素子。
(11) 上記式(1)中、Zが、後述する式(Z1)で表される基である、上記(5)〜(10)のいずれかに記載の熱電変換素子。
(12) 上記式(Z)中、XZ1が、硫黄原子、酸素原子、又は−NRN2−基である、上記(5)〜(11)のいずれかに記載の熱電変換素子。ここで、RN2は、水素原子、又はアルキル基を表す。
(13) 上記式(1)中、Yが、単結合、又は2,5−チエニル基である、上記(5)〜(12)のいずれかに記載の熱電変換素子。
(14) 上記式(1)中、Aが、上記式(A1)で表される化合物の任意の位置から2つの水素原子を除いた2価の共役系連結基であり、2つのYが、いずれも単結合であり、2つのZが、いずれも後述する式(Z1a)で表される基である、上記(5)〜(13)のいずれかに記載の熱電変換素子。
(15) 上記式(A1)中、mが1であり、X31及びX42が、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、若しくは−NRN2−基である、又は、X32及びX41が、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、若しくは−NRN2−基である、上記(14)に記載の熱電変換素子。ここで、RN2は、水素原子、又はアルキル基を表す。
(16) 上記式(A1)中、mが1であり、nが1以上の整数であり、A環が、ベンゼン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、シクロペンタジエン環、又はシロール環である、上記(14)又は(15)に記載の熱電変換素子。
(17) 上記熱電変換層が、更に、酸化剤を含有する、上記(1)〜(16)のいずれかに記載の熱電変換素子。
(18) 上記π共役ポリマーが、酸化剤の存在下、酸化重合法によって重合することにより得られる、上記(1)〜(17)のいずれかに記載の熱電変換素子。
(19) 上記酸化剤が、鉄(III)塩、銅(II)塩、過酸化物、及び過酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、上記(18)に記載の熱電変換素子。
(20) 上記π共役ポリマーが、上記繰り返し単位とは異なる繰り返し単位を有するπ共役ポリマーと酸化剤との存在下、鋳型重合法によって重合することにより得られる、上記(1)〜(19)のいずれかに記載の熱電変換素子。
(21) 上記繰り返し単位とは異なる繰り返し単位を有するπ共役ポリマーが、チオフェン系化合物、ピロール系化合物、アニリン系化合物、アセチレン系化合物、p−フェニレン系化合物、p−フェニレンビニレン系化合物、p−フェニレンエチニレン系化合物、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される繰り返し単位を有するπ共役系ポリマーである、上記(20)に記載の熱電変換素子。
(22) π共役ポリマーを含有する導電膜であって、
上記π共役ポリマーが、分子量150以上の繰り返し単位を有し、キャリアがドーピングされたπ共役ポリマーであり、
上記導電膜の結晶化度が、20%以上である、導電膜。
(23) 上記π共役ポリマーが、後述する式(1)で表される繰り返し単位を有する、上記(22)に記載の導電膜。
(24) 上記式(1)中、Aが、下記式(A1)で表される化合物の任意の位置から2つの水素原子を除いた2価の共役系連結基である、上記(23)に記載の導電膜。
(25) 上記式(1)中、Aが、上記式(A1)で表される化合物の任意の位置から2つの水素原子を除いた2価の共役系連結基であり、2つのYが、いずれも単結合であり、2つのZが、いずれも後述する式(Z1a)で表される基である、上記(23)又は(24)に記載の導電膜。
(26) キャリア濃度が、1×1024〜3×1026個/mである、上記(22)〜(25)のいずれかに記載の導電膜。
(27) 上記(22)〜(26)のいずれかに記載の導電膜を用いた有機半導体デバイス。
(28) 基材と、電極と、上記(22)〜(26)のいずれかに記載の導電膜とをこの順に備える、有機半導体デバイス。
以下に示すように、本発明によれば、熱起電力が高い熱電変換素子、並びに、導電率が高い導電膜、及び、上記導電膜を用いた有機半導体デバイスを提供することができる。
本発明の熱電変換素子の一例を模式的に示す断面図である。図1中の矢印は素子の使用時に付与される温度差の方向を示す。 本発明の熱電変換素子の一例を模式的に示す断面図である。図2中の矢印は素子の使用時に付与される温度差の方向を示す。 本発明の熱電変換素子の一例(モジュール)を模式的に示す断面図である。
以下に、本発明の熱電変換素子、導電膜、及び有機半導体デバイスについて説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの双方又はいずれかを表すものであり、これらの混合物をも包含するものである。
また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明は、熱電変換層(導電膜)に繰り返し単位の分子量が150以上でキャリアがドーピングされたπ共役ポリマーを使用し、且つ、熱電変換層(導電膜)の結晶化度を20%以上にすることで、導電率や熱起電力が飛躍的に向上するという知見に基づくものである。導電率や熱起電力が飛躍的に向上する理由は明らかではないが、上述のとおり繰り返し単位の分子量と結晶化度を特定の値以上にすることで、熱電変換層(導電膜)中で、π共役ポリマー同士の相互作用により、π共役ポリマーの三次元的かつ緻密なキャリアパスが形成され、キャリアの移動が極めて効率的になるためと推測される。
[熱電変換素子]
本発明の熱電変換素子は、π共役ポリマーを含有する熱電変換層を備える。ここで、上記π共役ポリマーは、分子量150以上の繰り返し単位を有し、キャリアがドーピングされたπ共役ポリマー(以下、特定π共役ポリマーとも言う)である。また、上記熱電変換層の結晶化度は20%以上である。
本発明の熱電変換素子の好ましい態様としては、基材(基板)と当該基材上に設けられた上記熱電変換層とを備えた素子であり、より好ましくは、これらを電気的に接続する電極をさらに有する素子であり、さらに好ましくは基材上に設けられた1対の電極と、該電極間に上記熱電変換層とを有する素子である。
本発明の熱電変換素子において、熱電変換層は1層であっても2層以上であってもよい。
まず、本発明の熱電変換素子の好適態様の全体の構成について、本発明の熱電変換素子の一例を模式的に示す断面図である図1〜図3を用いて説明する。
図1に示す熱電変換素子10は、第1の基材11と、第1の電極12と、熱電変換層14と、第2の電極13と、第2の基材15とをこの順に備える素子である。なお、熱電変換層14は、特定π共役ポリマーを含有する。
ここで、図1に示す熱電変換素子10は、矢印で示される方向の温度差を利用して起電力(電圧)を得る態様である。
また、図2に示す熱電変換素子20は、第1の基材21上の一部に第1の電極22及び第2の電極23を有し、第1の基材21、第1の電極22及び第2の電極23の上に、熱電変換層24と第2の基材25とをこの順に備える素子である。なお、熱電変換層24は、特定π共役ポリマーを含有する。
ここで、図2に示す熱電変換素子20は、矢印で示される方向の温度差を利用して起電力(電圧)を得る態様である。
本発明においては、図3に示すように、互いに隣接する熱電変換素子30と共通の基材31を用い、一の熱電変換素子30における第2の電極33と、それと隣接する他の熱電変換素子30の第1の電極32とを電気的に接続することにより、各熱電変換素子30を直列で接続させたモジュール300としてもよい。なお、熱電変換層34は、特定π共役ポリマーを含有する。
以下、熱電変換層、基材、及び電極について詳述する。
〔熱電変換層〕
上述のとおり、熱電変換層は、分子量150以上の繰り返し単位を有し、キャリアがドーピングされたπ共役ポリマー(特定π共役ポリマー)を含有する。
以下ではまず特定π共役ポリマーについて詳述し、その後、熱電変換層が含有していてもよい任意成分、及び、熱電変換層の製造方法について詳述する。
<特定π共役ポリマー>
特定π共役ポリマーは、分子量150以上の繰り返し単位を有し、キャリアがドーピングされたπ共役ポリマーである。ここで、π共役ポリマーとは、主鎖がπ電子又は孤立電子対のローンペアで共役する構造を有するポリマーを指す。
特定π共役ポリマーの繰り返し単位の分子量は150以上である。なかでも、200〜2000であることが好ましく、250〜1000であることがより好ましい。
繰り返し単位の分子量の上限は特に制限されないが、5000以下であることが好ましい。
特定π共役ポリマーは、チオフェン系化合物、ピロール系化合物、アニリン系化合物、アセチレン系化合物、p−フェニレン系化合物、p−フェニレンビニレン系化合物、p−フェニレンエチニレン系化合物、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される繰り返し単位を有するπ共役系ポリマーであるのが好ましい。
ここで、p−フェニレンとは、1,4−フェニレンと同義であり、ベンゼン環のパラ位(1位と4位の2カ所)に隣接ユニットが連結した部分構造を意図する。また、p−フェニレンビニレンとは、ベンゼン環のパラ位(1位と4位の2カ所)にビニレン基及び隣接ユニットとの連結部位がそれぞれ1個ずつ連結した部分構造を意図する。また、p−フェニレンエチニレンとは、ベンゼン環のパラ位(1位と4位の2カ所)にエチニレン基及び隣接ユニットとの連結部位がそれぞれ1個ずつ連結した部分構造を意図する。
なお、チオフェン系化合物とは、チオフェン、又はチオフェンに他の環が縮環した部分構造を有する化合物を意図する。ピロール系化合物、アニリン系化合物、アセチレン系化合物、p−フェニレン系化合物、p−フェニレンビニレン系化合物、p−フェニレンエチニレン系化合物についても同様である。
また、誘導体とは、置換基(例えば、後述する置換基W)を有する化合物を意図する。
特定π共役ポリマーの好適な態様としては、繰り返し単位中に少なくとも2種類以上の芳香環を含有するπ共役ポリマーが挙げられる。
芳香環としては、アリール環、ヘテロアリール環などが挙げられる。芳香環は単環であっても、縮環であってもよい。
アリール環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。
ヘテロアリール環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、テトラジン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、インドリン環、イソインドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環などが挙げられる。
芳香環は置換基(例えば、後述する置換基W)を有してもよい。
特定π共役ポリマーの別の好適な態様としては、繰り返し単位中に芳香族縮合環を含有するπ共役ポリマーが挙げられる。
なお、本願明細書において、芳香族縮合環とは、アリール環同士が縮合した縮環、ヘテロアリール環同士が縮合した縮環、又はアリール環とヘテロアリール環とが縮合した縮環を意図する。アリール環、ヘテロアリール環の具体例は上述のとおりである。
芳香族縮合環は置換基(例えば、後述する置換基W)を有してもよい。
特定π共役ポリマーは、下記式(1)で表される繰り返し単位を有するのが好ましい。すなわち、上述した分子量150以上の繰り返し単位は下記式(1)で表されるのが好ましい。
式(1)中、Aは、縮環構造又は単環構造を有する2価の共役系連結基を表す。
縮環構造を構成する単環(すなわち、縮環構造を構成するために縮環させる単環)としては、単環の、炭化水素環、アリール環、ヘテロアリール環などが挙げられる。これらのうち2種以上を縮環させたものでも構わない。
単環の炭化水素環としては、例えば、シクロペンタジエン環などが挙げられる。
単環のアリール環としては、例えば、ベンゼン環などが挙げられる。
単環のヘテロアリール環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、テトラジン環などが挙げられる。
縮環構造を構成する環としては、例えば、ナフタレン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、インドリン環、イソインドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環などが挙げられる。
単環構造を構成する環の具体例は、上述した縮環構造を構成する単環と同じである。
なお、2価の共役系連結基は、一方の結合位置から他方の結合位置まで共役系が繋がる2価の連結基を意図する。
上記式(1)中のAの好適な態様としては、例えば、下記式(A1)で表される化合物の任意の位置から2つの水素原子を除いた2価の共役系連結基が挙げられる。
上記式(A1)中、X31〜X33及びX41〜X43は、それぞれ独立して、ヘテロ原子、置換基(例えば、後述する置換基W)を有するヘテロ原子、−CH=CH−基、=CH−基、又は−C(=O)−基を表す。ヘテロ原子は特に制限されないが、具体例としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。
上記X31及びX42は、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、若しくは−NRN2−基である、又は、上記X32及びX41は、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、若しくは−NRN2−基であるのが好ましい。ここで、RN2は、水素原子、又はアルキル基(好ましくは、炭素数1〜20)を表す。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
上記式(A1)中、X31〜X33を含む単環、及び、X41〜X43を含む単環は、いずれも芳香環を表す。
例えば、X31が−CH=CH−基であり、X32及びX33が=CH−基である場合、X31〜X33を含む単環はベンゼン環を表す。また、X31が硫黄原子であり、X32及びX33が=CH−基である場合、X31〜X33を含む単環はチオフェン環を表す。
31〜X33を含む単環、及び、X41〜X43を含む単環は、置換基(例えば、後述する置換基W)を有してもよい。
上記式(A1)中、A環は、共役炭化水素環、又は共役複素環を表す。
ここで、共役炭化水素環とは、共役構造を有する炭化水素環を指す。また、共役複素環とは共役構造を有する複素環を表す。なお、共役構造とは、2つの「炭素原子−炭素原子(C−C)多重結合」が単結合を介して繋がった構造を指す。共役構造は、2つのC−C2重結合が単結合を介して繋がった構造であるのが好ましい。
共役炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、シクロペンタジエン環などが挙げられる。
共役複素環構造としては、例えば、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、シロール環、フラン環などが挙げられる。
A環は、ベンゼン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、シクロペンタジエン環、又はシロール環であるのが好ましい。
A環は、置換基(例えば、後述する置換基W)を有してもよい。
上記式(A1)中、nは、0、又は1以上の整数を表す。なかでも、1〜5の整数が好ましい。nが2以上の整数である場合に複数存在するA環は、同一であっても、異なってもよい。なお、縮環することにより繋がっているA環の数を表す。
上記式(A1)中、mは、0、又は1を表す。
なお、mが0の場合、上記式(A1)は下記式(m=0)で表され、mが1の場合、上記式(A1)は下記式(m=1)で表される。
mが1で、nが0の場合、A環が無く、X31〜X33を含む単環と、X41〜X43を含む単環とが縮環していることを表す。すなわち、上記式(A1)は下記式(n0)で表される。
なお、例えば、上記式(A1)で表される化合物が下記式(A1−1)で表される化合物である場合、上記式(1)中のAは、下記式(A1−1)で表される化合物の任意の位置から2つの水素原子を除いた2価の共役系連結基であり、そのような2価の共役系連結基としては、例えば、下記式(A−1)で表される基が挙げられる。ここで、*は、結合位置を表す。
また、上記式(1)中のAが上記式(A1)で表される化合物の任意の位置から2つの水素原子を除いた2価の共役系連結基である場合、上記式(1)は下記式(1a)で表される。
上記式(1)中、Yは、単結合、−CH=CH−基、−N=N−基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は−NRN1−基を表す。上記式(1)中の2つのYは、同一であっても、異なってもよい。
上記アリーレン基の炭素数は6〜20が好ましく、6〜15がより好ましい。アリーレン基は好ましくはフェニレン基、ナフチレン基である。
上記アリーレン基は、主鎖の共役系を形成可能な原子、好ましくは窒素原子に結合した複数の芳香環を有し、異なる芳香環で主鎖に結合する基を含んでいてもよい。このような基として、例えば、異なるフェニル基で主鎖に結合する、トリフェニルアミンから得られる2価の基が挙げられる。
上記ヘテロアリーレン基の炭素数は3〜20が好ましく、5〜12がより好ましい。ヘテロアリーレン基を構成するヘテロ環は、特に限定されないが、5員環又は6員環が好ましく、このヘテロ環を構成するヘテロ原子としては、特に限定されないが、硫黄原子、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、セレン原子等が好適に挙げられる。ヘテロアリーレン基の好ましい例としては、2価のチオフェン環、2価のチアゾール環、2価のオキサゾール環、2価のフラン環、2価のピロール環、2価のセレノフェン環、2価のチアゾール環、2価のオキサゾール環、2価のホスホール環、2価のホスホリン環、2価のチアジアゾール環、2価のオキサジアゾール環、2価のピラゾール環、2価のイミダゾール環、2価のピリジン環、2価のピラジン環、2価のピリダジン環、2価のトリアジン環、2価のトリアゾール環、2価のテトラジン環が挙げられる。
Yは、単結合、又は2,5−チエニル基であるのが好ましい。
上記−NRN1−基中のRN1は、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。なかでも、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。なお、これらの基は、置換基(例えば、後述する置換基W)を有してもよい。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状又は分岐状のアルキル基(特に、炭素数1〜20)、直鎖状又は分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2〜20)、直鎖状又は分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2〜20)などが挙げられる。
上記アリール基(芳香族炭化水素基)としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。炭素数は特に制限されないが6〜18であることが好ましい。
上記ヘテロアリール基の具体例及び好適な態様は上述したYとしてのヘテロアリーレン基と同じである。ただし、具体例については、2価の基を1価の基としたものである。
上記式(1)中、Zは、下記式(Z)で表される基を表す。上記式(1)中、2つのZは、同一であっても、異なってもよい。ただし、上記式(1)中、ZはAと異なる。
上記式(Z)中、XZ1及びXZ2は、それぞれ独立して、ヘテロ原子、置換基(例えば、後述する置換基W)を有するヘテロ原子、−CH=CH−基、又は=CH−基を表す。ヘテロ原子は特に制限されないが、具体例としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。XZ1は、硫黄原子、酸素原子、又は−NRN2−基であるのが好ましい。ここで、RN2は、水素原子、又はアルキル基を表す。アルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状のアルキル基(特に、炭素数1〜20)が挙げられる。アルキル基は、置換基(例えば、後述する置換基W)を有してもよい。
上記式(Z)中、RZ1は、電子供与性基を表す。
本明細書において、電子供与性基とは、ハメットの置換基定数σ値が、−0.15以下の置換基を意味する。
ここで、ハメットの置換基定数σ値について説明する。ハメット則はベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために、1935年にL.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσ値とσ値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編,「Lange’s and book of Chemistry」,第12版,1979年(McGraw−Hill)や「化学の領域」増刊,122号,96〜103頁,1979年(南光堂)に詳しい。なお、本明細書において電子供与性基をハメットの置換基定数σにより限定したり、説明したりするが、これは上記の成書で見出せる文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではない。その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に包まれる置換基をも含む。
特定π共役ポリマーを酸化重合で合成する場合に最高被占軌道(HOMO軌道)を浅くすることにより酸化を促進させる等の観点から、RZ1で表される電子供与性基のハメットの置換基定数σ値は、−0.20以下であることが好ましい。
Z1で表される電子供与性基のハメットの置換基定数σ値の下限は特に制限されないが、−0.90以上であることが好ましい。
Z1は、ハメットの置換基定数σ値が、−0.15以下の置換基であれば特に制限されないが、具体例としては、ヒドロキシ基若しくはその塩、メルカプト基若しくはその塩、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜20)、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基(RS−:Rはアルキル基(好ましくは炭素数1〜30)を表す。)、アリールチオ基(好ましくは、炭素数6〜20)、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基(RN−:R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基(好ましくは炭素数1〜30)を表す。ただし、R及びRの少なくとも一方はアルキル基を表す。)、アリールアミノ基(好ましくは、炭素数6〜20)、ヘテロ環アミノ基、ポリエチレンオキシエーテル基(後記の構造式参照)、ポリエチレンオキシチオエーテル基(後記の構造式参照)、ポリエチレンオキシアミノ基(後記の構造式参照)又はこれらの基で置換されたアリール基などが挙げられる。なかでも、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
なお、アルキル基はハメットの置換基定数σ値が−0.15超の置換基であるため、RZ1に該当しない。
上記式(Z)中、nは、1以上の整数を表す。なかでも、2〜5の整数が好ましく、2がより好ましい。なお、nは、RZ1が置換する数を表す。例えば、後述する実施例で使用されるπ共役ポリマー1〜7はnが2の態様であり、後述する実施例で使用されるπ共役ポリマー8はnが1の態様である。
上記式(Z)中、nが2以上の整数である場合に複数存在するRZ1は同一であっても、異なってもよい。
上記式(Z)中、nが2以上の整数である場合に複数存在するRZ1は、互いに結合して環を形成してもよい。ここで、「互いに結合して環を形成する」とは、2以上の基が、任意の水素原子の位置で、水素原子を結合手として、単結合を介して結合して環を形成することを意図する。
上記式(Z)中、*は、結合位置を表す。
上記式(1)中のZの好適な態様としては、例えば、下記式(Z1)で表される基が挙げられる。なお、下記式(Z1)は、上記式(Z)において、nが2であり、2つのRZ1がアルキルチオ基又はアルコキシ基であり、2つのRZ1が互いに結合して環を形成した態様の一態様である。
式(Z1)中、XZ1は、ヘテロ原子、置換基(例えば、後述する置換基W)を有するヘテロ原子、−CH=CH−基、又は=CH−基を表す。XZ3は、酸素原子、又は硫黄原子を表す。2つのXZ3は、同一であっても、異なってもよい。RZ2は、水素原子、又は置換基(例えば、後述する置換基W)を表す。2つのRZ2は、同一であっても、異なってもよい。*は、結合位置を表す。
また、上記式(Z1)で表される基の好適な態様としては、例えば、下記式(Z1a)で表される基が挙げられる。
上記式(Z1a)中、RZ3は、水素原子、アリール基(好ましくは炭素数6〜20)、ヘテロアリール基(好ましくは、環構成原子数5〜20)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30)、ポリエチレンオキシエーテル基(以下構造式参照)、アルキルチオ基(RS−:Rはアルキル基(好ましくは炭素数1〜30)を表す。)、ポリエチレンオキシチオエーテル基(以下構造式参照)、アルキルアミノ基(RN−:R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基(好ましくは炭素数1〜30)を表す。ただし、R及びRの少なくとも一方はアルキル基を表す。)、又はポリエチレンオキシアミノ基(以下構造式参照)を表す。
なお、以下構造式中、Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。nは、1以上の整数(好ましくは、1〜10の整数)を表す。波線部は、結合位置を表す。
上記式(Z1a)中、2つのRZ3は、同一であっても、異なってもよい。*は、結合位置を表す。
上記式(1)中、*は、結合位置を表す。
上記式(1)で表される繰り返し単位の好適な態様としては、例えば、上記式(1)中、Aが、上記式(A1)で表される化合物の任意の位置から2つの水素原子を除いた2価の共役系連結基であり、2つのYが、いずれも単結合であり、2つのZが、いずれも上記式(Z1a)で表される基である態様、すなわち、下記式(1b)で表される繰り返し単位が挙げられる。
なお、上記式(1b)中の複数あるRZ3は、同一であっても、異なってもよい。
特定π共役ポリマーは、上記式(1)で表される繰り返し単位以外の別の繰り返し単位を有してもよい。
なお、特定π共役ポリマーが複数の繰り返し単位を有する場合には、共重合様式は、特に限定されず、ブロック共重合、交互共重合、ランダム共重合、グラフト共重合のいずれでもよい。
上記別の繰り返し単位は、主鎖の共役系を形成可能な連結基、原子又はこれらを組合せたものであればよい。このような別の繰り返し単位は、特に限定されないが、エテニレン基、エチニレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基からなる群より選択される少なくとも1種の繰り返し単位が好ましい。上記アリーレン基及びヘテロアリーレン基の具体例及び好適な態様は、上述した式(1)中のYと同じである。
上記別の繰り返し単位は、置換基(例えば、後述する置換基W)を有していてもよい。
特定π共役ポリマー中の上記式(1)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。上限は特に制限されず、100質量%である(すなわち、上記式(1)で表される繰り返し単位のホモポリマー)。
特定π共役ポリマーの分子量は特に制限されないが、重量平均分子量(Mw)で3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましい。
なお、本明細書において重量平均分子量は、GPCにより測定されたポリスチレン換算値である。
(キャリアがドーピングされたπ共役ポリマー)
上述のとおり、特定π共役ポリマーは、キャリアがドーピングされたπ共役ポリマーである。
ここで、π共役ポリマーについて「キャリアがドーピングされた」とは、π共役ポリマーのπ軌道から電子が除去されてπ共役ポリマーが正に帯電している状態(p型ドーピング)、又は、π共役ポリマーのπ軌道に電子が付与されてπ共役ポリマーが負に帯電している状態(n型ドーピング)を言う。
熱電変換層(導電膜)中のπ共役ポリマーについて、キャリアがドーピングされているかどうかを評価する方法としては、熱電変換層の吸収スペクトルを測定する方法が挙げられる。熱電変換層の吸収スペクトルにおいて、ドーピングされていないπ共役ポリマーに由来する吸収ピーク(A)よりも100nm以上長波長側に、π共役ポリマーのドーピングに由来する別の吸収ピーク(B)が出現し、且つそのピーク(B)の吸光度がピーク(A)の吸光度の0.05倍以上である場合、熱電変換層中のπ共役ポリマーはキャリアがドーピングされたものであると判断できる。
なお、キャリアドーピングしていないπ共役ポリマーでも、会合状態によっては吸収スペクトルが長波長側にシフトすることがあるが、これは酸化剤または還元剤の添加量を変化させることでキャリアドーピングによるものか、会合状態のみによるものかを区別することができる。すなわち、酸化剤または還元剤の添加量増減によりキャリア濃度を変化させると、そのキャリア濃度に応じて、ドーピングされていない部位の吸収ピーク(短波長側)及び/又はドーピングされている部位の吸収ピーク(長波長側に見られるポーラロン、またはバイポーラロンによるもの)の1個〜複数の吸収ピークが観測される。一方、ドーピングされていないπ共役ポリマーの会合による長波長側の吸収ピークは、ドーピングによる吸収ピークとは波長域が異なり、一般的にはドーピングによる吸収ピーク(ポーラロン、またはバイポーラロンによるもの)よりも短波長側であることが多いので、波長域の違いから両者を区別することが可能である。
なお、キャリアがドーピングされていないときのπ共役ポリマーの吸収ピークやその波長を調べるため方法としては、例えば、カップリング法など酸化剤を使用しない方法で重合したπ共役ポリマーを用いて、ドーピングせずに熱電変換層(導電膜)を作製し、その吸収スペクトルを測定する方法が挙げられる。熱電変換層(導電膜)中のπ共役ポリマーがドーピングされていないことは、熱電変換層(導電膜)のキャリア濃度を測定することでも確かめられる。キャリア濃度の測定方法は後述するとおりである。
また、上記ドーピングがp型ドーピングであるかn型ドーピングであるかは、ホール効果測定装置ResiTest8300(株式会社東陽テクニカ社製)で測定されたホール係数により判断される。具体的には、ホール係数が正値の場合、π共役ポリマーのドーピングはp型ドーピングと判断される。また、ホール係数が負値の場合、π共役ポリマーのドーピングはn型ドーピングと判断される。
ドーピングがp型ドーピングであるかn型ドーピングであるかを判断する別の方法としては、文献(Macromolecules 2000, 33, 6787−6793)に記載の通り、CV(サイクリックボルタンメトリー)法による方法も挙げられる(p型は還元側にピークが現れ、n型は酸化側にピークが現れる)。
(製造方法)
特定π共役ポリマーの製造方法は特に制限されず、公知の方法を利用することができる。例えば、重合後に分子量150以上の繰り返し単位となるπ共役モノマーを酸化重合法やカップリング重合法により重合させる方法などが挙げられる。なかでも、酸化重合法により重合させる方法が好ましい。
キャリアをドーピングする方法は特に制限されないが、酸化剤の存在下でモノマーを酸化重合することで重合と同時にキャリアをドーピングする方法や、酸化剤を用いずに重合してから酸化剤等によりキャリアをドーピングする方法などが挙げられる。酸化剤の具体例及び好適な態様は後述するとおりである。
(好適な態様)
特定π共役ポリマーは、後述する酸化剤の存在下、酸化重合法によって重合することにより得られるものであるのが好ましい。
なかでも、熱電変換層の結晶性がより向上する理由から、上述した分子量150以上の繰り返し単位とは異なる繰り返し単位を有するπ共役ポリマー(以下、鋳型ポリマーとも言う)と酸化剤との存在下、鋳型重合法によって重合することにより得られるものであることが好ましい。
上記鋳型ポリマーは、チオフェン系化合物、ピロール系化合物、アニリン系化合物、アセチレン系化合物、p−フェニレン系化合物、p−フェニレンビニレン系化合物、p−フェニレンエチニレン系化合物、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される繰り返し単位を有するπ共役系ポリマーであるのが好ましい。
鋳型ポリマーの分子量は、重量平均分子量で3000〜20万が好ましく、1万〜15万がより好ましい。
以下に、上述した分子量150以上の繰り返し単位を有するπ共役ポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。







熱電変換層中の特定π共役ポリマーの含有量は特に制限されないが、熱電変換層中、10〜80質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。
熱電変換層は、2種以上の特定π共役ポリマーを含有してもよい。
<任意成分>
熱電変換層は、上述した特定π共役ポリマー以外の成分を含有してもよい。
そのような成分としては、酸化剤、非共役ポリマー、還元剤、ナノ導電性材料、上述した鋳型ポリマー、酸化防止剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、可塑剤等を含有していてもよい。
酸化防止剤としては、イルガノックス1010(日本チガバイギー製)、スミライザーGA−80(住友化学工業(株)製)、スミライザーGS(住友化学工業(株)製)、スミライザーGM(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。耐光安定剤としては、TINUVIN 234(BASF製)、CHIMASSORB 81(BASF製)、サイアソーブUV−3853(サンケミカル製)等が挙げられる。耐熱安定剤としては、IRGANOX 1726(BASF製)が挙げられる。可塑剤としては、アデカサイザーRS(アデカ製)等が挙げられる。
(酸化剤)
熱電変換層は、更に、酸化剤を含有するのが好ましい。酸化剤は上述した特定π共役ポリマーのドーパントとして機能する。
なお、特定π共役ポリマーのドーパントは酸化剤に限らない。また、上述のとおり、酸化剤の存在下でモノマーを酸化重合することで重合と同時にキャリアをドーピングしてもよい。すなわち、熱電変換層において酸化剤は必須の成分ではない。
酸化剤としては特に制限されないが、鉄(III)塩、銅(II)塩、過酸化物、及び過酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
酸化剤の具体例としては、ハロゲン(Cl,Br,I,ICl,ICl,IBr,IF)、ルイス酸(PF,AsF,SbF,BF,BCl,BBr,SO)、遷移金属化合物(FeCl,FeOCl,TiCl,ZrCl,HfCl,NbF,NbCl,TaCl,MoF,MoCl,WF,WCl,UF,LnCl(Ln=La,Ce,Pr,Nd,Sm等のランタノイド)、その他、XeOF,(NO )(SbF ),(NO )(SbCl ),AgClO,HIrCl,La(NO・6HO)、O、O、(NO )(BF )、FSOOOSOF、塩化鉄(III)六水和物、無水塩化鉄(III)、硝酸鉄(III)九水和物、無水硝酸第二鉄、硫酸鉄(III)n水和物(n=3〜12)、硫酸鉄(III)アンモニウム十二水和物、過塩素酸鉄(III)n水和物(n=1,6)、テトラフルオロホウ酸鉄(III)等の無機酸の鉄(III)塩;塩化銅(II)、硫酸銅(II)、テトラフルオロホウ酸銅(II)等の無機酸の銅(II)塩;テトラフルオロホウ酸ニトロソニウム;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過ヨウ素酸カリウム等の過ヨウ素酸塩;過酸化水素、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、硫酸四アンモニウムセリウム(IV)二水和物;p−トルエンスルホン酸鉄(III)等の有機酸の鉄(III)塩;有機スルホン酸第二鉄、などが挙げられる。
上記有機スルホン酸第二鉄の有機スルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸又はその誘導体、ナフタレンスルホン酸又はその誘導体、アントラキノンスルホン酸又はその誘導体などの芳香族系スルホン酸が好適に用いられる。
上記ベンゼンスルホン酸又はその誘導体におけるベンゼンスルホン酸誘導体としては、例えば、トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メトキシベンゼンスルホン酸、エトキシベンゼンスルホン酸、プロポキシベンゼンスルホン酸、ブトキシベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸などが挙げられ、ナフタレンスルホン酸又はその誘導体におけるナフタレンスルホン酸誘導体としては、例えば、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、エチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸などが挙げられ、アントラキノンスルホン酸又はその誘導体におけるアントラキノンスルホン酸誘導体としては、例えば、アントラキノンジスルホン酸、アントラキノントリスルホン酸などが挙げられる。これらの芳香族系スルホン酸の中でも、特に、トルエンスルホン酸、メトキシベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸などが好ましく、とりわけ、パラトルエンスルホン酸、メトキシベンゼンスルホン酸が好ましい。
酸化剤は、無機酸若しくは有機酸の鉄塩(III)、又は過硫酸塩が好ましく、過硫酸アンモニウム又はp−トルエンスルホン酸鉄(III)がより好ましく、p−トルエンスルホン酸鉄(III)がさらに好ましい。
熱電変換層中の酸化剤の含有量は特に制限されないが、熱電変換層中、1〜45質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
(非共役ポリマー)
熱電変換層は、更に、非共役ポリマーを含有するのが好ましい。
非共役ポリマーは、ポリマー主鎖の共役構造で導電性を示さないポリマー(高分子)であれば特に制限されない。共役構造の定義は上述のとおりである。なお、非共役ポリマーはバインダーとして機能し、熱電変換層の強度を高める。
非共役ポリマーは、好ましくは、ポリマー主鎖が、芳香環(炭素環系芳香環、ヘテロ芳香環)、エチニレン結合、エテニレン結合及び孤立電子対を有するヘテロ原子から選択される環、基、又は原子から構成されているポリマー以外のポリマー、又は、これらの基を含んでも孤立して組み込まれているポリマーである。
非共役ポリマーは、ビニル化合物、(メタ)アクリレート化合物、カーボネート化合物、エステル化合物、アミド化合物、イミド化合物、フッ素化合物及びシロキサン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物に由来する構成成分を繰り返し構造として含む非共役ポリマーが好ましい。これらの化合物は置換基(例えば、上述した置換基W)を有していてもよい。
ビニル化合物は、具体的には、スチレン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ビニルピリジン、ビニルナフタレン、ビニルフェノール、酢酸ビニル、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、ビニルトリフェニルアミン等のビニルアリールアミン類、ビニルトリブチルアミン等のビニルトリアルキルアミン類等が挙げられる。また、これら以外に、例えば、ポリオレフィンの構成成分に対応するオレフィンである炭素数2〜4のオレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン等)が挙げられる。
ビニル化合物に由来する構成成分を繰り返し構造として含む非共役ポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアルコール、ポリ(4−スチレンスルホン酸)などが挙げられる。
(メタ)アクリレート化合物は、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート等の無置換アルキル基含有疎水性アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、1−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、1−ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有アクリレート等のアクリレートモノマー、これらのモノマーのアクリロイル基をメタクリロイル基に換えたメタクリレート系モノマー等が挙げられる。
カーボネート化合物に由来する構成成分を繰り返し構造として含むポリカーボネートの具体例として、ビスフェノールAとホスゲンからなる汎用ポリカーボネート、ユピゼータ(商品名、三菱ガス化学株式会社製)、パンライト(商品名、帝人化成株式会社製)等が挙げられる。
エステル化合物を構成しうる化合物として、ポリアルコール及びポリカルボン酸、乳酸等のヒドロキシ酸が挙げられる。ポリエステルの具体例として、バイロン(商品名、東洋紡績株式会社製)等が挙げられる。
アミド化合物に由来する構成成分を繰り返し構造として含むポリアミドの具体例として、PA−100(商品名、株式会社T&K TOKA製)等が挙げられる。
イミド化合物に対応する構成成分を繰り返し構造として含むポリイミドの具体例として、ソルピー6,6−PI(商品名、ソルピー工業株式会社製)等が挙げられる。
フッ素化合物として、具体的には、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル等が挙げられる。
シロキサン化合物に由来する構成成分を繰り返し構造として含むポリシロキサンとして、具体的には、ポリジフェニルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン等が挙げられる。
非共役ポリマーの別の好適な態様としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)などのポリアルキレングリコールが挙げられる。
非共役ポリマーは酸基を有することが好ましい。非共役ポリマーが酸基を有すると上述した特定π共役ポリマーのドーピング状態がより安定する。
酸基としては特に制限されないが、カルボキシ基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスホン酸基(−PO(OH))、芳香族水酸基(−OH)などが挙げられる。なかでも、スルホ基が好ましい。
また、非共役ポリマーは以下の化合物(P−1〜P−37)であることも好ましい。P−1〜P−37において、x,y,zはそれぞれの単量体成分のモル%を、Mwは重量平均分子量を表す。









非共役ポリマーの分子量は特に制限されないが、重量平均分子量(Mw)で5000〜30万であることが好ましく、1万〜15万であることがより好ましい。
熱電変換層中の非共役ポリマーの含有量は特に制限されないが、熱電変換層中、10〜65質量%であることが好ましく、15〜50質量%であることがより好ましい。
(還元剤)
熱電変換層は還元剤を含有してもよい。還元剤は上述した特定π共役ポリマーのキャリア濃度を調整する役目を有する。
還元剤としては特に制限されないが、その具体例としては、単環芳香族化合物、含窒素芳香族化合物、含硫黄芳香族化合物、芳香族ビニルポリマー、芳香族アミン、脂肪族アミン(例えば、アルキルアミン)、ニトロ化合物、チオール、金属錯塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、ホウ素化合物、アルミニウムヒドリド錯体、単体金属、還元酵素(レダクターゼ)、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の化合物などが挙げられる。より具体的には、1,1−bi−2−naphthol、1,3−di(N−carvazolyl)propane(DCzPr)、1,4−di(N−carvazolyl)butane(DCzBu)、1,4−diazabicyclo[2,2,2]octane、2,3−dihydroxy−naphthol、2,7−dihydroxy−naphthol、2−naphthol、Cr(CN) 3−、di(N−carvazolyl)methane(DCzMe)、Eu2+、Fe(CN) 4−、Fe2+、meso−2,4−di(N−carvazolyl)pentane(m−DCzPe)、N,N,N’,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルベンジジン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N−ethyl−carbazole(EtCz)、Pt(P 4−、ReCl 2−、Tetrakis(dimethylamino)ethylene(TDAE)、trans−1,2−di(N−carvazolyl)cyclobutane(DCzCBu)、アントラセン、インデン、オキサジアゾール、オキサゾール、カドリシクラン、ジアザビシクロオクタン、ジフェニルエチレン、トリエチルアミン、トリフェニルメタン、トリメトキシベンゼン、ナフタレン、ノルボルナジエン、ヒドラゾン、ヒドラジン、ピレン、フェナントレン、フェノチアジン、ペリレン、メトキシナフタレン、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、次亜硫酸カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ジボラン、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ(sec−ブチル)ホウ素リチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化トリブチルスズ、還元鉄、金属スズなどが挙げられる。
還元剤は、脂肪族アミン(好ましくは、アルキルアミノ基(RN−:R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を表す)を2つ以上有する脂肪族アミン)、単環芳香族化合物(好ましくは、ヒドロキシ基を有する単環芳香族化合物)、ヒドラジン、及びチオール(好ましくは、ヒドロキシ基を有するジチオール)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
還元剤の別の好適な態様としては、例えば、下記一般式(D1)で表される化合物が挙げられる。
一般式(D1)中、R及びR’はそれぞれ独立にアルキル基を表し、少なくとも一方が2級又は3級のアルキル基である。R及びR’はそれぞれ独立に水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。Lは−S−基又は−CHR−基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。X及びX’はそれぞれ独立に水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。
熱電変換層中の還元剤の含有量は特に制限されないが、熱電変換層中、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。
(ナノ導電性材料)
熱電変換層は、導電率及び物理的強度の観点から、ナノ導電性材料を含有してもよい。
上記ナノ導電性材料としては、導電性を有する炭素材料(以下、ナノ炭素材料ということがある)、金属材料(以下、ナノ金属材料ということがある)等が挙げられる。
ナノ導電性材料は、ナノ炭素材料及びナノ金属材料の中でも、カーボンナノチューブ(以後、CNTとも称す)、カーボンナノファイバー、グラファイト、グラフェン及びカーボンナノ粒子のナノ炭素材料、並びに、金属ナノワイヤーが好ましく、導電性向上の観点で、カーボンナノチューブが特に好ましい。カーボンナノチューブは単層、2層、またはそれ以上の多層構造のいずれでも良いが、導電性向上の観点で、単層または2層構造が特に好ましい。
ナノ導電性材料は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ナノ導電性材料として2種以上を併用する場合には、少なくとも1種ずつのナノ炭素材料及びナノ金属材料を併用してもよく、ナノ炭素材料又はナノ金属材料それぞれを2種併用してもよい。
熱電変換層中のナノ導電性材料の含有量は特に制限されないが、上述した特定π共役ポリマーに対して、1〜500質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがより好ましい。
上述した特定π共役ポリマーが上述した鋳型重合法によって重合することにより得られるものである場合、熱電変換層中の上述した特定π共役ポリマーと鋳型ポリマーとの合計の含有量は特に制限されないが、熱電変換層中、10〜80質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。
熱電変換層の厚みは特に制限されないが、0.01〜100μmであることが好ましく、0.02〜30μmであることがより好ましい。なお、熱電変換層の厚みは、任意の10点における導電膜の厚みを測定し、それらを算術平均して求める。
<結晶化度>
上述のとおり、熱電変換層の結晶化度は20%以上である。
本明細書において、熱電変換層の結晶化度はX線回折法による値であり、以下の式により定義される。
結晶化度(%)=(熱電変換層全体の結晶質ピークの積分強度)/(熱電変換層全体の結晶質ピークと非晶質ハローの積分強度の和)
結晶化度は30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。
結晶化度の上限は特に制限されないが、100%である。
熱電変換層の結晶化度を20%以上にする方法は特に制限されないが、例えば、特定π共役ポリマーを鋳型重合法によって重合する方法や結晶化処理を施す方法などが挙げられる。
<熱電変換層の製造方法>
熱電変換層を製造する方法は特に制限されないが、好適な態様としては、例えば、基板上に、上述した分子量150以上の繰り返し単位を有するπ共役ポリマーを含有する導電性組成物を塗布した後に、後述する結晶化処理を施す方法が挙げられる。π共役ポリマーは、キャリアがドーピングされたものでも、キャリアがドーピングされていないものでも構わないが、キャリアがドーピングされたものであるのが好ましい。π共役ポリマーが、キャリアがドーピングされていないものである場合、導電性組成物中に上述した酸化剤などのドーパントを配合することで、キャリアがドーピングされたπ共役ポリマー(特定π共役ポリマー)を含有する熱電変換層を形成することができる。
塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート、エクストルージョンダイコート、ブレードコート、バーコート、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、インクジェット印刷法等、公知の塗布方法を用いることができる。
基板上に導電性組成物を塗布した後、必要に応じて、加熱工程や乾燥工程を設けて溶媒を蒸発させてもよい。
上述した結晶化処理としては、加圧による結晶化処理、溶媒蒸気暴露による結晶化処理などが挙げられる。
特定π共役ポリマーが鋳型重合法によって重合することにより得られたものである場合の結晶化処理としては、徐冷による結晶化処理、加圧による結晶化処理、溶媒蒸気暴露による結晶化処理などが挙げられ、なかでも、徐冷による結晶化処理、又は、加圧による結晶化処理が好ましく、徐冷による結晶化処理がより好ましい。
徐冷による結晶化処理の条件は特に制限されないが、100〜200℃まで昇温した状態で1〜30分加熱してから0.5〜5℃/minの冷却速度で室温まで徐冷するのが好ましい。
加圧による結晶化処理の条件は特に制限されないが、圧力1〜20MPa、温度100〜200℃にて10秒〜10分間加圧した後、圧力を掛けたままの状態で室温まで冷却するのが好ましい。加圧する方法は特に制限されないが、加熱プレス機によるのが好ましい。
溶媒蒸気暴露による結晶化処理の条件は特に制限されないが、室温下有機溶媒(好ましくは、アセトン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、又はジクロロメタン等の極性溶媒)蒸気に1〜60分間暴露するのが好ましい。
(導電性組成物)
上記導電性組成物は、上述した分子量150以上の繰り返し単位を有するπ共役ポリマーを含有する。π共役ポリマーの具体例及び好適な態様は、キャリアのドーピングの点を除いて、上述した特定π共役ポリマーと同じである。
組成物中のπ共役ポリマーの含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、10〜80質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。
上記導電性組成物は、更に、酸化剤(例えば、上述した酸化剤)を含有するのが好ましい。
組成物中の酸化剤の含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、1〜45質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
上記導電性組成物は、更に、非共役ポリマー(例えば、上述した非共役ポリマー)を含有してもよい。
組成物中の非共役ポリマーの含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、10〜65質量%であることが好ましく、15〜50質量%であることがより好ましい。
上記導電性組成物は、更に、還元剤(例えば、上述した還元剤)を含有するのが好ましい。
組成物中の還元剤の含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。
上記導電性組成物は、更に、ナノ導電性材料(例えば、上述したナノ導電性材料)を含有してもよい。
組成物中のナノ導電性材料の含有量は特に制限されないが、導電性組成物(5g)に対して、0.1〜200mgであることが好ましく、1〜50mgであることがより好ましい。
上記導電性組成物は、更に、鋳型ポリマー(例えば、上述した鋳型ポリマー)を含有するのが好ましい。
組成物中の上述した分子量150以上の繰り返し単位を有するπ共役ポリマーと鋳型ポリマーの合計の含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、10〜80質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。
上記導電性組成物は、更に、親水性溶媒を含有するのが好ましい。
親水性溶媒の沸点は高沸点(具体的には130℃以上)であることが好ましい。親水性溶媒を高沸点にすることにより製膜乾燥過程における溶媒の蒸発速度が適度に抑制され、結果として、π共役ポリマーの配列がさらに促進するものと推測される。親水性溶媒の沸点の上限は特に制限されないが、300℃以下であることが好ましい。なお、沸点は1気圧における沸点を指す。
親水性溶媒は親水性の溶媒であれば特に制限されないが、例えばテトラヒドロフランのようなエーテル基含有化合物、例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンのようなラクトン基含有化合物、例えばカプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン(NMP)、N−オクチルピロリドン、ピロリドンのようなアミド又はラクタム基含有化合物、例えばスルホラン(テトラメチレンスルホン)、ジメチルスルホキシド(DMSO)のようなスルホン及びスルホキシド、例えばスクロース、グルコース、フルクトース、ラクトースのような糖又は糖誘導体、例えばソルビトール、マンニトールのような糖アルコール、例えば2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸のようなフラン誘導体、及び/又は例えばエチレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール又はトリエチレングリコールのようなジアルコール又はポリアルコール、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどの脂肪族エーテル化合物、ジメトキシフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、フェノール、ナフトールなどのフェノール化合物が好ましく使用される。これらの親水性溶媒は1種類を単独で用いても良く、また2種類以上を同時に用いても良い。
組成物中の親水性溶媒の含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、100質量%以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限されないが、全固形分量の10倍(1000質量%)以下であることが好ましい。
導電性組成物の調製方法は特に制限されないが、例えば、上記各成分を混合して調製することができる。より具体的には、通常の混合装置等を用いて常温常圧下で行うことができる。例えば、各成分を溶媒中で撹拌、振とう、混練して溶解又は分散させればよい。溶解や分散を促進するため超音波処理を行ってもよい。
(熱電変換層の製造方法の別の好適な態様)
熱電変換層の製造方法の別の好適な態様としては、例えば、重合後に上述した分子量150以上の繰り返し単位となるπ共役モノマーと、酸化剤(例えば、上述した酸化剤)とを含有する組成物を塗布し、加熱により組成物中のモノマーを酸化重合法により重合してから、上述した結晶化処理(例えば、上述した結晶化処理のうち、徐冷による結晶化処理以外の結晶化処理)を施す方法などが挙げられる。
なお、組成物中に鋳型ポリマー(例えば、上述した鋳型ポリマー)を配合し、鋳型重合法により重合することもできる。この場合、重合後の結晶化処理を施さなくてもよいが、結晶化処理(例えば、上述した結晶化処理)を施す方が好ましい。
<置換基W>
本明細書における置換基Wについて記載する。
置換基Wとしては、水素原子、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、アルケニル基(例えば、ビニル、アリル等)、アルキニル基(例えば、エチニル、プロパルギル等)、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環、アリール等ともいい、例えば、フェニル、p−クロロフェニル、メシチル、トリル、キシリル、ナフチル、アントリル、アズレニル、アセナフテニル、フルオレニル、フェナントリル、インデニル、ピレニル、ビフェニリル等)、芳香族へテロ環基(5又は6員環の芳香族へテロ環基が好ましく、また環構成ヘテロ原子は、硫黄原子、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、ホウ素、セレン原子が好ましく、例えば、ピリジル、ピリミジニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、トリアゾリル(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル、1,2,3−トリアゾール−1−イル等)、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、フラザニル、チエニル、キノリル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、ベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、インドリル、カルバゾリル、カルボリニル、ジアザカルバゾリル(上記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル、ピリダジニル、トリアジニル、キナゾリニル、フタラジニル、ボロール、アザボリン等)、ヘテロ環基(芳香族でないヘテロ環基で、飽和環であっても不飽和環であってもよく、5又は6員環が好ましく、また環構成ヘテロ原子は、硫黄原子、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、セレン原子が好ましく、例えば、ピロリジル、イミダゾリジル、モルホリル、オキサゾリジル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、ナフチルオキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、オクチルチオ、ドデシルチオ等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、ナフチルチオ等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル、メチルアミノスルホニル、ジメチルアミノスルホニル、ブチルアミノスルホニル、ヘキシルアミノスルホニル、シクロヘキシルアミノスルホニル、オクチルアミノスルホニル、ドデシルアミノスルホニル、フェニルアミノスルホニル、ナフチルアミノスルホニル、2−ピリジルアミノスルホニル等)、
アシル基(例えば、アセチル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、ペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル、オクチルカルボニル、2−エチルヘキシルカルボニル、ドデシルカルボニル、アクリロイル、メタクリロイル、フェニルカルボニル、ナフチルカルボニル、ピリジルカルボニル等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、ドデシルカルボニルオキシ、フェニルカルボニルオキシ等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ、エチルカルボニルアミノ、ジメチルカルボニルアミノ、プロピルカルボニルアミノ、ペンチルカルボニルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ、オクチルカルボニルアミノ、ドデシルカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、ナフチルカルボニルアミノ等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、プロピルアミノカルボニル、ペンチルアミノカルボニル、シクロヘキシルアミノカルボニル、オクチルアミノカルボニル、2−エチルヘキシルアミノカルボニル、ドデシルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニル、ナフチルアミノカルボニル、2−ピリジルアミノカルボニル等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド、エチルウレイド、ペンチルウレイド、シクロヘキシルウレイド、オクチルウレイド、ドデシルウレイド、フェニルウレイド、ナフチルウレイド、2−ピリジルアミノウレイド等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、ブチルスルフィニル、シクロヘキシルスルフィニル、2−エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、ナフチルスルフィニル、2−ピリジルスルフィニル等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、ブチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル、2−ピリジルスルホニル等)、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、例えば、アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、ナフチルアミノ、2−ピリジルアミノ等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリフェニルシリル、フェニルジエチルシリル等)等が挙げられる。
これらの各基は、さらに置換基を有していてもよく、この置換基としては上記の置換基が挙げられる。例えば、アルキル基にアリール基が置換したアラルキル基、アルキル基にヒドロキシ基が置換したヒドロキシアルキル基等が挙げられる。なお、置換基Wがさらに複数の置換基を有する場合、複数の置換基同士は互いに結合して環を形成してもよい。
〔基材〕
本発明の熱電変換素子は、基材を備えるのが好ましい。
基材の種類は特に限定されないが、電極の形成や熱電変換層の形成時に影響を受けにくい基材を選択することが好ましい。
このような基材としては、例えば、ガラス、透明セラミックス、金属、プラスチックフィルム等が挙げられ、中でも、コストや柔軟性の観点から、プラスチックフィルムが好ましい。
プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−フタレンジカルボキシレート、ビスフェノールAとイソ及びテレフタル酸とのポリエステルフィルムなどのポリエステルフィルム;ゼオノアフィルム(日本ゼオン社製)、アートンフィルム(JSR社製)、スミライトFS1700(住友ベークライト社製)などのポリシクロオレフィンフィルム;カプトン(東レ・デュポン社製)、アピカル(カネカ社製)、ユービレックス(宇部興産社製)、ポミラン(荒川化学社製)などのポリイミドフィルム;ピュアエース(帝人化成社製)、エルメック(カネカ社製)などのポリカーボネートフィルム;スミライトFS1100(住友ベークライト社製)などのポリエーテルエーテルケトンフィルム;トレリナ(東レ社製)などのポリフェニルスルフィドフィルムなどが挙げられる。
これらのうち、入手の容易性、100℃以上の耐熱性、経済性及び効果の観点から、市販のポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、各種ポリイミドやポリカーボネートフィルムが好ましい。
本発明においては、基材の厚さは使用目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、プラスチックフィルムを用いた場合には、一般的には、5〜500μmのものを用いることが好ましい。
〔電極〕
本発明の熱電変換素子は、電極を備えるのが好ましい。
電極の材料は特に限定されないが、その材料としては、例えば、ITO、ZnOなどの透明電極材料;銀、銅、金、アルミニウムなどの金属電極材料;CNT、グラフェンなどの炭素材料;PEDOT/PSSなどの有機材料が挙げられる。また、銀、カーボンブラックなどの導電性微粒子を分散した導電性ペースト;銀、銅、アルミニウムなどの金属ナノワイヤーを含有する導電性ペーストなどを用いて電極を形成してもよい。
〔用途〕
本発明の熱電変換素子は、熱電発電物品などに有用である。
熱電発電物品としては、具体的には、温泉熱発電機、太陽熱発電機、廃熱発電機等の発電機や、腕時計用電源、半導体駆動電源、小型センサー用電源などが挙げられる。
[導電膜]
本発明の導電膜は、π共役ポリマーを含有する導電膜である。
ここで、上記π共役ポリマーは、上述した特定π共役ポリマーと同じである。特定π共役ポリマーの具体例、好適な態様、及び製造方法は上述のとおりである。
また、導電膜の結晶化度は20%以上である。結晶化度の定義及び好適な態様は、上述した熱電変換層と同じである。
本発明の導電膜の具体例、好適な態様、及び製造方法は、上述した熱電変換層と同じである。
本発明の導電膜は、キャリア濃度が、1×1024〜3×1026個/mであるのが好ましい。なかでも、得られる導電膜の経時安定性がより優れる理由から、1×1026個/m以下であることが好ましく、5×1025個/m以下であることがより好ましい。そのなかでも、得られる導電膜の導電率がより高くなる理由から、5×1024個/m以上であることが好ましく、1×1025個/m以上であることがより好ましい。
なお、本明細書において、導電膜のキャリア濃度(個/m)および移動度(cm/Vs)は、ホール効果測定装置ResiTest8300(株式会社東陽テクニカ社製)を用いて測定した値である。
なお、上述した本発明の熱電変換素子は、本発明の導電膜を熱電変換層に用いた熱電変換素子に当たる。上記熱電変換層のキャリア濃度の好適な態様は、本発明の導電膜と同じである。
[有機半導体デバイス]
本発明の有機半導体デバイスは、上述した本発明の導電膜を用いた有機半導体デバイスである。そのような有機半導体デバイスとしては、例えば、熱電変換素子、光電変換素子、有機薄膜トランジスタ、有機EL、液晶ディスプレイ、太陽電池などが挙げられる。
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
(導電膜の作製)
酸化剤としてp−トルエンスルホン酸鉄(III)六水和物(525mg)、下記π共役ポリマー201(590mg)、重合速度調整剤としてピリジン(13mg)をジグリム溶媒(4.5g)中に溶解させ、室温窒素雰囲気下5.5時間撹拌した。この混合溶液を氷冷した後、重合後に下記π共役ポリマー1の繰り返し単位となるπ共役モノマー(221mg)を添加し、0℃にて10分間撹拌した。このπ共役モノマー溶液をスピンコート法により、3cm×4cmのガラス基板上に製膜した後、大気下70℃のホットプレート上で4時間加熱し、酸化重合反応を行った。反応後の膜(酸化重合膜)を室温冷却後、エタノールで洗浄し、窒素雰囲気のグローブボックス中で70℃のホットプレート上で15分間加熱した。その後、徐冷による結晶化処理(130℃まで昇温した状態で15分加熱してから3℃/minの冷却速度で室温まで徐冷)を行い、結晶化度を向上させて、π共役ポリマー1とp−トルエンスルホン酸鉄(III)とπ共役ポリマー201とを含有する導電膜(π共役ポリマー1とp−トルエンスルホン酸鉄(III)とπ共役ポリマー201との質量比はおよそ18:35:47)を得た。上記作製方法を方法A+Bとする。
(熱電変換素子の作製)
上記方法A+Bによって、第1の電極として金(厚み20nm、幅:5mm)を片側表面に有するガラス基材(厚み:0.8mm)上の電極表面に膜厚2.6μm、大きさ8mm×8mmの熱電変換層となる導電膜を形成した。その後、熱電変換層の上部に、第2の電極として金を蒸着したガラス基材(電極の厚み:20nm、電極の幅:5mm、ガラス基材の厚み:0.8mm)を、第2の電極が熱電変換層に接するように、80℃にて貼り合わせて、熱電変換素子を作製した。
なお、方法A+Bによる導電膜の形成において、製膜の前に、π共役モノマー溶液に、得られるπ共役ポリマーに対する含有量が30質量%になるように単層カーボンナノチューブを添加した。単層カーボンナノチューブは超音波を30分間印加することにより分散させた。
<実施例2>
(導電膜の作製)
徐冷による結晶化処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の手順に従って、π共役ポリマー1とp−トルエンスルホン酸鉄(III)とπ共役ポリマー201とを含有する導電膜を得た。上記作製方法を方法Bとする。
(熱電変換素子の作製)
方法Bによって熱電変換層となる導電膜を形成した以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換素子を作製した。
なお、方法Bによる導電膜の形成において、製膜の前に、π共役モノマー溶液に、得られるπ共役ポリマーに対する含有量が30質量%になるように単層カーボンナノチューブを添加した。単層カーボンナノチューブは超音波を30分間印加することにより分散させた。
<実施例3>
π共役ポリマー201の代わりに下記π共役ポリマー203を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って導電膜及び熱電変換素子を作製した。
<実施例4〜12、17〜32、比較例1、6〜9>
重合後にπ共役ポリマー1の繰り返し単位となるπ共役モノマーの代わりに重合後に下記表1の「第一のπ共役ポリマー」の欄に記載のπ共役ポリマーの繰り返し単位となるπ共役モノマーを使用し、p−トルエンスルホン酸鉄(III)六水和物の代わりに下記表1の「酸化剤」の欄に記載の化合物を使用し、π共役ポリマー201の代わりに下記表1の「第二のπ共役ポリマー」に欄に記載のπ共役ポリマー又はポリビニルピロリドンを使用した以外は、実施例2と同様の手順に従って導電膜及び熱電変換素子を作製した。
<実施例13>
π共役ポリマー201の代わりにπ共役ポリマー203を使用し、徐冷による結晶化処理の代わりに加圧による結晶化処理(加熱プレス機(MP−WCL、株式会社東洋精機製作所製)を用い、圧力8MPa、温度130℃にて1分間加圧した後、圧力を掛けたままの状態で室温まで冷却)を行って結晶化度を向上させたこと以外は、実施例1と同様の手順に従って導電膜及び熱電変換素子を作製した。上記導電膜の作製方法を方法B+Cとする。
<実施例14>
(導電膜の作製)
酸化剤としてp−トルエンスルホン酸鉄(III)六水和物(525mg)、重合速度調整剤としてピリジン(13mg)をジグリム溶媒(4.5g)中に溶解させ、室温窒素雰囲気下5.5時間撹拌した。この混合溶液を氷冷した後、重合後に上記π共役ポリマー1の繰り返し単位となるπ共役モノマー(221mg)を添加し、0℃にて10分間撹拌した。このπ共役モノマー溶液をドロップキャスト法により、5cm×5cmのPET基板(厚み:100μm)上に製膜した後、大気下70℃のホットプレート上で6時間加熱し、酸化重合反応を行った。反応後の膜(酸化重合膜)を室温冷却後、エタノールで洗浄し、大気下70℃のホットプレート上で15分間加熱乾燥した。その後、上述した加圧による結晶化処理を行い、結晶化度を向上させて、π共役ポリマー1とp−トルエンスルホン酸鉄(III)とを含有する導電膜(π共役ポリマー1とp−トルエンスルホン酸鉄(III)との質量比はおよそ33:67)を得た。上記作製方法を方法Cとする。
(熱電変換素子の作製)
方法Cによって熱電変換層となる導電膜を形成した以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換素子を作製した。
なお、方法Cによる導電膜の形成において、製膜の前に、π共役モノマー溶液に、得られるπ共役ポリマーに対する含有量が30質量%になるように単層カーボンナノチューブを添加した。単層カーボンナノチューブは超音波を30分間印加することにより分散させた。
<実施例15>
π共役ポリマー201の代わりにπ共役ポリマー203を使用し、徐冷による結晶化処理の代わりに溶媒蒸気暴露による結晶化処理(室温下アセトン蒸気に30分間暴露)を行って結晶化度を向上させたこと以外は、実施例1と同様の手順に従って導電膜及び熱電変換素子を作製した。上記導電膜の作製方法を方法B+Dとする。
<実施例16>
(導電膜の作製)
酸化剤としてp−トルエンスルホン酸鉄(III)六水和物(525mg)、重合速度調整剤としてピリジン(13mg)をジグリム溶媒(4.5g)中に溶解させ、室温窒素雰囲気下5.5時間撹拌した。この混合溶液を氷冷した後、重合後に上記π共役ポリマー1の繰り返し単位となるπ共役モノマー(221mg)を添加し、0℃にて10分間撹拌した。このπ共役モノマー溶液をドロップキャスト法により、3cm×4cmのガラス基板上に成膜した後、大気下70℃のホットプレート上で6時間加熱し、酸化重合反応を行った。反応後の膜(酸化重合膜)を室温冷却後、エタノールで洗浄し、大気下70℃のホットプレート上で15分間加熱乾燥した。その後、上述した溶媒蒸気暴露による結晶化処理を行い、結晶化度を向上させて、π共役ポリマー1とp−トルエンスルホン酸鉄(III)とを含有する導電膜(π共役ポリマー1とp−トルエンスルホン酸鉄(III)との質量比はおよそ33:67)を得た。上記作製方法を方法Dとする。
(熱電変換素子の作製)
方法Dによって熱電変換層となる導電膜を形成した以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換素子を作製した。
なお、方法Dによる導電膜の形成において、製膜の前に、π共役モノマー溶液に、得られるπ共役ポリマーに対する含有量が30質量%になるように単層カーボンナノチューブを添加した。単層カーボンナノチューブは超音波を30分間印加することにより分散させた。
<比較例2>
(導電膜の作製方法)
Chemical Reviews 2009, 109, 5868−5923に記載のカップリング法により予め重合させて得られた上記π共役ポリマー1(10mg)及び下記π共役ポリマー201(10mg)を1,4−ジオキサン(2mL)に溶解させ、このπ共役ポリマー溶液を窒素雰囲気下にてガラス基板(3cm×4cm)上にスピンコート法により製膜し、その後窒素雰囲気下にて130℃のホットプレート上で60分間加熱して乾燥させることで非ドープ状態の導電膜を得た。上記作製方法を作製方法X1とする。
(熱電変換素子の作製)
方法X1によって熱電変換層となる導電膜を形成した以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換素子を作製した。
なお、方法X1による導電膜の形成において、製膜の前に、π共役ポリマー溶液に、π共役ポリマーに対する含有量が30質量%になるように単層カーボンナノチューブを添加した。単層カーボンナノチューブは超音波を30分間印加することにより分散させた。
<比較例3>
(導電膜の作製方法)
Chemical Reviews 2009, 109, 5868−5923に記載のカップリング法により予め重合させて得られた上記π共役ポリマー1(10mg)を1,4−ジオキサン(2mL)に溶解させ、このπ共役ポリマー溶液を窒素雰囲気下にてガラス基板(3cm×4cm)上にスピンコート法により製膜し、その後窒素雰囲気下にて130℃のホットプレート上で60分間加熱して乾燥させることで非ドープ状態の導電膜を得た。上記作製方法を作製方法X2とする。
(熱電変換素子の作製)
方法X2によって熱電変換層となる導電膜を形成した以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換素子を作製した。
なお、方法X2による導電膜の形成において、製膜の前に、π共役ポリマー溶液に、π共役ポリマーに対する含有量が30質量%になるように単層カーボンナノチューブを添加した。単層カーボンナノチューブは超音波を30分間印加することにより分散させた。
<比較例4>
(導電膜の作製)
重合後に上記π共役ポリマー1の繰り返し単位となるπ共役モノマー(500mg)、酸化剤としてp−トルエンスルホン酸鉄(III)六水和物(600mg)をジグリム(30ml)に溶解させ、室温窒素雰囲気下28時間撹拌してモノマーの酸化重合を行い、上記π共役ポリマー1を合成した。反応液をエタノール中に再沈殿させ、黒色の固体を取り出した。得られた黒色固体を窒素雰囲気下、減圧濾過により純水及びエタノールで十分に洗浄した。更に、洗浄後の黒色固体(1.2g)に界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム(80mg)を加え、十分に脱気した純水250ml中に分散させた。その後、高沸点親水性溶媒としてジメチルスルホキシド(沸点:189℃)(5.5ml)を加え室温窒素雰囲気下にて2時間撹拌し、π共役ポリマー1とp−トルエンスルホン酸鉄(III)とジメチルスルホキシドと水とを含有する導電性組成物を得た。
得られた導電性組成物を3cm×4cmのポリエチレンテレフタレート基板上(厚み:75μm)に塗布した後、大気下70℃のホットプレート上で3時間加熱した。そして、室温冷却後、エタノールで洗浄し、窒素雰囲気下のグローブボックス中で70℃のホットプレート上で15分間加熱した。その後、上述した徐冷による結晶化処理を行い、結晶化度を向上させて、π共役ポリマー1とp−トルエンスルホン酸鉄(III)とを含有する導電膜を得た。上記作製方法を方法Aとする。
(熱電変換素子の作製)
方法Aによって熱電変換層となる導電膜を形成した以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換素子を作製した。
なお、方法Aによる導電膜の形成において、導電性組成物を塗布する前に、導電性組成物(5g)に単層カーボンナノチューブ(4mg)を添加した。単層カーボンナノチューブは超音波を30分間印加することにより分散させた。
<比較例5>
更に酸化剤としてp−トルエンスルホン酸鉄(III)六水和物(525mg)を配合した混合溶液を使用したこと以外は、比較例3と同様の手順に従って導電膜及び熱電変換素子を作製した。
<結晶化度の測定>
得られた導電膜について、X線回折法を用いて、結晶化度を求めた。
具体的には、X線回折装置(D8 DISCOVER with GADDS Super Speed、Bruker AXS社製)を用い、2θ=10〜40°の範囲の測定を行った。なおこの際、試料の全方向のプロファイルを測定した。Hindelehら(A.M.Hideleh and D.J.Johnson,Polymer,19,27(1978))の方法に従い、市販のメタアラミドの全方位回折曲線を基にピーク分離した。
結晶化度はプロファイルフィッティングを行うことにより結晶質ピークと非晶質ハローの分離を行い、結晶質ピーク及び非晶質ハローの積分強度を求め、下記式から結晶化度を算出した。結果を表1に示す。
結晶化度(%)=(導電膜全体の結晶質ピークの積分強度)/(導電膜全体の結晶質ピークと非晶質ハローの積分強度の和)×100
なお、上記結晶化度は、熱電変換層の結晶化度に相当する。
<評価>
(導電率)
作製した各導電膜について導電率を評価した。具体的には、「低抵抗率計:ロレスタGP」((株)三菱化学アナリテック製)を用い表面抵抗率(単位:Ω/□)を測定し、触針型膜厚計により膜厚(単位:cm)を測定し、下記式より導電率(S/cm)を算出した。結果を表1に示す。結果は比較例7の導電率を100とする指数で表した。指数が大きいほど導電率が高く、熱電変換素子の性能が向上するため好ましい。なお、「<1」は、1よりも小さいことを意図する。
(導電率)=1/((表面抵抗率)×(膜厚))
(移動度)
作製した導電膜について、ホール効果測定装置ResiTest8300(株式会社東陽テクニカ社製)を用いて移動度(cm/Vs)を測定した。結果を表1に示す。結果は比較例7の移動度を100とする指数で表した。指数が大きいほど移動度が高く、好ましい。
(熱起電力)
作製した各熱電変換素子について熱起電力を評価した。具体的には、熱電変換素子の第2の電極側を設定温度55℃のホットプレート(アズワン株式会社製、型番:HP−2LA)上に接着させ、第1の電極側に設定温度25℃のコールドプレート(日本ディジタル株式会社製、型番:980−127DL)を接着させた。そして、第1の電極と第2の電極間に発生した熱起電力(単位:V)を評価した。結果を表1に示す。結果は比較例7の熱起電力を100とする指数で表した。指数が大きいほど熱起電力が高く、好ましい。なお、比較例2及び3の熱起電力は、検出限界以下であり、測定することができなかった。
表1中、「第一のπ共役ポリマー」について1〜15及び101〜103は、それぞれπ共役ポリマー1〜15及び101〜103を表す。π共役ポリマー1については上述のとおりである。また、π共役ポリマー2〜15及び101〜103については以下のとおりである。なお、π共役ポリマー1〜15は分子量150以上の繰り返し単位を有するπ共役ポリマーに該当し、π共役ポリマー101〜103は分子量150以上の繰り返し単位を有するπ共役ポリマーに該当しない。


なお、π共役ポリマー1及び4〜11が有するアルコキシ基(なお、2つのアルコキシ基が互いに結合して環を形成)、π共役ポリマー2が有するアルキルアミノ基、π共役ポリマー3が有するアルコキシ基は、いずれもハメットの置換基定数σ値が−0.20以下の置換基である。
表1中、「酸化剤」に記載の「p−トルエンスルホン酸鉄(III)」は「p−トルエンスルホン酸鉄(III)六水和物」を表す。
表1中、「第二のπ共役ポリマー」について201〜206及びPEDOT:PSSは、それぞれ下記π共役ポリマー201〜206及びPEDOT:PSSを表す。また、PVPはポリビニルピロリドンを表す。

表1中、「方法」に記載のA〜D、X、A+B、B+C、及びB+Dは、それぞれ上述した方法A〜D、X、A+B、B+C、及びB+Dを表す。
なお、各方法の特徴はそれぞれ以下のとおりである。
・方法A:鋳型重合法以外の方法で重合した後に徐冷による結晶化処理を行う。
・方法B:鋳型重合法により重合する。
・方法C:鋳型重合法以外の方法で重合した後に加圧による結晶化処理を行う。
・方法D:鋳型重合法以外の方法で重合した後に溶媒蒸気暴露による結晶化処理を行う。
・方法X1、X2:鋳型重合法以外の方法で重合した後にいずれの結晶化処理も行わない。
・方法A+B:鋳型重合法によって重合した後に徐冷による結晶化処理を行う。
・方法B+C:鋳型重合法によって重合した後に加圧による結晶化処理を行う。
・方法B+D:鋳型重合法によって重合した後に溶媒蒸気暴露による結晶化処理を行う。
表1中、「キャリア濃度」は導電膜(熱電変換層)のキャリア濃度である。キャリア濃度の測定方法は上述のとおりである。
実施例1〜32、比較例1、4〜9の導電膜(熱電変換層)中の、表1の「第一のπ共役ポリマー」に記載のπ共役ポリマーについて、「キャリアのドーピング」を評価したところ、いずれも、キャリアがドーピングされていた。評価方法は上述のとおりである。また、ホール係数測定から、上記ドーピングはいずれもp型ドーピングであった。
なお、比較例2及び3では、酸化剤を使用せずにカップリング法で重合したπ共役ポリマー1を用いて、ドーピングせずに導電膜(熱電変換層)を作製しているため、比較例2及び3の導電膜(熱電変換層)中の、表1の「第一のπ共役ポリマー」に記載のπ共役ポリマーは、キャリアがドーピングされていないπ共役ポリマーに該当する。
上述のとおり、実施例1〜32において、導電膜(熱電変換層)中の表1の「第一のπ共役ポリマー」に記載のπ共役ポリマーは、分子量150以上の繰り返し単位を有し、キャリアがドーピングされたπ共役ポリマーである。すなわち、実施例1〜32において、導電膜(熱電変換層)のπ共役ポリマーは、上述した特定π共役ポリマーに該当する。
表1から分かるように、導電膜(熱電変換層)が特定π共役ポリマーを含有し、且つ、その結晶化度が20%以上である本願実施例は、高い導電率及び熱起電力を示した。
実施例1〜17の対比から、上記導電膜(熱電変換層)の結晶化度が30%以上である実施例1〜13、15及び17は、より高い熱起電力及び移動度を示した。そのなかでも、上記導電膜(熱電変換層)の結晶化度が65%以上である実施例1、3、4及び17は、さらに高い移動度を示した。そのなかでも、上記導電膜(熱電変換層)の結晶化度が75%以上である実施例1及び3は、さらに高い導電率及び移動度を示した。
実施例1〜17の対比から、上記特定π共役ポリマーが鋳型重合法によって重合することにより得られたポリマーである実施例1〜13、15及び17は、より高い熱起電力及び移動度を示した。
実施例1と2との対比から、鋳型重合法によって重合した後に徐冷による結晶化処理を行った実施例1は、より高い導電率及び移動度を示した。
実施例3と12と13と15との対比から、鋳型重合法によって重合した後に徐冷又は加圧による結晶化処理を行った実施例3及び13は、より高い移動度を示した。なかでも、鋳型重合法によって重合した後に徐冷による結晶化処理を行った実施例3は、より高い導電率及び移動度を示した。
実施例18〜32の対比から、上記特定π共役ポリマーが分子量300以上の繰り返し単位を有する実施例18〜28及び30〜32は、より高い導電率及び移動度を示した。なかでも、上記特定π共役ポリマーが上述した式(1)で表される繰り返し単位を有し、上記式(1)中、Aが、上述した式(A1)で表される化合物の任意の位置から2つの水素原子を除いた2価の共役系連結基であり、2つのYが、いずれも単結合であり、2つのZが、いずれも上述した式(Z1a)で表される基であり、上記式(A1)中、mが1であり、X31及びX42が、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、若しくは−NRN2−基である、又は、X32及びX41が、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、若しくは−NRN2−基である実施例21は、より高い熱起電力を示した。
一方、導電膜(熱電変換層)の結晶化度が20%に満たない比較例1〜5、及び、導電膜(熱電変換層)の結晶化度が20%以上であるがπ共役ポリマーの繰り返し単位の分子量が150に満たない比較例6は、導電率及び熱起電力が低かった。
10、20、30 熱電変換素子
11、21 第1の基材
12、22、32 第1の電極
13、23、33 第2の電極
14、24、34、熱電変換層
15、25 第2の基材
31 基材
300 モジュール

Claims (25)

  1. 特定π共役ポリマーを含有する熱電変換層を備える、熱電変換素子を製造する、熱電変換素子の製造方法であって、
    前記特定π共役ポリマーが、分子量150以上の繰り返し単位を有し、キャリアがドーピングされたπ共役ポリマーであり、
    前記熱電変換層の結晶化度が、20%以上であり、
    重合後に前記繰り返し単位となるπ共役モノマーと前記繰り返し単位とは異なる繰り返し単位を有するπ共役ポリマーである鋳型ポリマーと酸化剤とを含有する組成物を加熱して前記組成物中の前記π共役モノマーを鋳型重合法により酸化重合してから、徐冷による結晶化処理、加圧による結晶化処理、又は、溶媒蒸気暴露による結晶化処理を施すことにより前記熱電変換層を製造する、熱電変換素子の製造方法。
  2. 前記特定π共役ポリマーが、チオフェン系化合物、ピロール系化合物、アニリン系化合物、アセチレン系化合物、p−フェニレン系化合物、p−フェニレンビニレン系化合物、p−フェニレンエチニレン系化合物、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される繰り返し単位を有するπ共役系ポリマーである、請求項1に記載の熱電変換素子の製造方法。
  3. 前記特定π共役ポリマーが、繰り返し単位中に少なくとも2種類以上の芳香環を含有するπ共役ポリマーである、請求項1又は2に記載の熱電変換素子の製造方法。
  4. 前記特定π共役ポリマーが、繰り返し単位中に芳香族縮合環を含有するπ共役ポリマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
  5. 前記特定π共役ポリマーが、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。

    式(1)中、Aは、縮環構造又は単環構造を有する2価の共役系連結基を表す。Yは、単結合、−CH=CH−基、−N=N−基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は−NRN1−基を表す。ここで、RN1は、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。2つのYは、同一であっても、異なってもよい。Zは、下記式(Z)で表される基を表す。2つのZは、同一であっても、異なってもよい。ただし、ZはAと異なる。*は、結合位置を表す。

    式(Z)中、XZ1及びXZ2は、それぞれ独立して、ヘテロ原子、置換基を有するヘテロ原子、−CH=CH−基、又は=CH−基を表す。RZ1は、電子供与性基を表す。nは、1以上の整数を表す。nが2以上の整数である場合に複数存在するRZ1は同一であっても、異なってもよい。nが2以上の整数である場合に複数存在するRZ1は、互いに結合して環を形成してもよい。*は、結合位置を表す。
  6. 前記式(1)中、Aが、下記式(A1)で表される化合物の任意の位置から2つの水素原子を除いた2価の共役系連結基である、請求項5に記載の熱電変換素子の製造方法。

    式(A1)中、X31〜X33及びX41〜X43は、それぞれ独立して、ヘテロ原子、置換基を有するヘテロ原子、−CH=CH−基、=CH−基、又は−C(=O)−基を表す。A環は、共役炭化水素環、又は共役複素環を表す。nは、0、又は1以上の整数を表す。nが2以上の整数である場合に複数存在するA環は、同一であっても、異なってもよい。mは、0、又は1を表す。
  7. 前記式(A1)中、mが1であり、X31及びX42が、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、若しくは−NRN2−基である、又は、X32及びX41が、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、若しくは−NRN2−基である、請求項6に記載の熱電変換素子の製造方法。ここで、RN2は、水素原子、又はアルキル基を表す。
  8. 前記式(A1)中、mが1であり、nが1以上の整数であり、A環が、ベンゼン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、シクロペンタジエン環、又はシロール環である、請求項6又は7に記載の熱電変換素子の製造方法。
  9. 前記式(Z)中、RZ1で表される電子供与性基のハメットの置換基定数σ値が、−0.20以下である、請求項5〜8のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
  10. 前記式(Z)中、RZ1が、ヒドロキシ基若しくはその塩、メルカプト基若しくはその塩、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、又はこれらの基で置換されたアリール基である、請求項5〜9のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
  11. 前記式(1)中、Zが、下記式(Z1)で表される基である、請求項5〜10のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。

    式(Z1)中、XZ1は、ヘテロ原子、置換基を有するヘテロ原子、−CH=CH−基、又は=CH−基を表す。XZ3は、酸素原子、又は硫黄原子を表す。2つのXZ3は、同一であっても、異なってもよい。RZ2は、水素原子、又は置換基を表す。2つのRZ2は、同一であっても、異なってもよい。*は、結合位置を表す。
  12. 前記式(Z)中、XZ1が、硫黄原子、酸素原子、又は−NRN2−基である、請求項5〜11のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。ここで、RN2は、水素原子、又はアルキル基を表す。
  13. 前記式(1)中、Yが、単結合、又は2,5−チエニル基である、請求項5〜12のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
  14. 前記式(1)中、Aが、前記式(A1)で表される化合物の任意の位置から2つの水素原子を除いた2価の共役系連結基であり、2つのYが、いずれも単結合であり、2つのZが、いずれも下記式(Z1a)で表される基である、請求項5〜13のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。

    式(Z1a)中、RZ3は、水素原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルコキシ基、ポリエチレンオキシエーテル基、アルキルチオ基、ポリエチレンオキシチオエーテル基、アルキルアミノ基、又はポリエチレンオキシアミノ基を表す。2つのRZ3は、同一であっても、異なってもよい。*は、結合位置を表す。
  15. 前記式(A1)中、mが1であり、X31及びX42が、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、若しくは−NRN2−基である、又は、X32及びX41が、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、若しくは−NRN2−基である、請求項14に記載の熱電変換素子の製造方法。ここで、RN2は、水素原子、又はアルキル基を表す。
  16. 前記式(A1)中、mが1であり、nが1以上の整数であり、A環が、ベンゼン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、シクロペンタジエン環、又はシロール環である、請求項14又は15に記載の熱電変換素子の製造方法。
  17. 前記酸化剤が、鉄(III)塩、銅(II)塩、過酸化物、及び過酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
  18. 前記繰り返し単位とは異なる繰り返し単位を有するπ共役ポリマーである鋳型ポリマーが、チオフェン系化合物、ピロール系化合物、アニリン系化合物、アセチレン系化合物、p−フェニレン系化合物、p−フェニレンビニレン系化合物、p−フェニレンエチニレン系化合物、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される繰り返し単位を有するπ共役系ポリマーである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法
  19. 特定π共役ポリマーを含有する導電膜を製造する導電膜の製造方法であって、
    前記特定π共役ポリマーが、分子量150以上の繰り返し単位を有し、キャリアがドーピングされたπ共役ポリマーであり、
    前記導電膜の結晶化度が、20%以上であり、
    重合後に前記繰り返し単位となるπ共役モノマーと前記繰り返し単位とは異なる繰り返し単位を有するπ共役ポリマーである鋳型ポリマーと酸化剤とを含有する組成物を加熱して前記組成物中の前記π共役モノマーを鋳型重合法により酸化重合してから、徐冷による結晶化処理、加圧による結晶化処理、又は、溶媒蒸気暴露による結晶化処理を施すことにより前記導電膜を製造する、導電膜の製造方法。
  20. 前記特定π共役ポリマーが、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する、請求項19に記載の導電膜の製造方法。

    式(1)中、Aは、縮環構造又は単環構造を有する2価の共役系連結基を表す。Yは、単結合、−CH=CH−基、−N=N−基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、又は−NRN1−基を表す。ここで、RN1は、水素原子、又は炭化水素基を表す。2つのYは、同一であっても、異なってもよい。Zは、下記式(Z)で表される基を表す。2つのZは、同一であっても、異なってもよい。ただし、ZはAと異なる。*は、結合位置を表す。

    式(Z)中、XZ1及びXZ2は、それぞれ独立して、ヘテロ原子、置換基を有するヘテロ原子、−CH=CH−基、又は=CH−基を表す。RZ1は、電子供与性基を表す。nは、1以上の整数を表す。nが2以上の整数である場合に複数存在するRZ1は同一であっても、異なってもよい。nが2以上の整数である場合に複数存在するRZ1は、互いに結合して環を形成してもよい。*は、結合位置を表す。
  21. 前記式(1)中、Aが、下記式(A1)で表される化合物の任意の位置から2つの水素原子を除いた2価の共役系連結基である、請求項20に記載の導電膜の製造方法。

    式(A1)中、X31〜X33及びX41〜X43は、それぞれ独立して、ヘテロ原子、置換基を有するヘテロ原子、−CH=CH−基、=CH−基、又は−C(=O)−基を表す。A環は、共役炭化水素環、又は共役複素環を表す。nは、0、又は1以上の整数を表す。nが2以上の整数である場合に複数存在するA環は、同一であっても、異なってもよい。mは、0、又は1を表す。
  22. 前記式(1)中、Aが、前記式(A1)で表される化合物の任意の位置から2つの水素原子を除いた2価の共役系連結基であり、2つのYが、いずれも単結合であり、2つのZが、いずれも下記式(Z1a)で表される基である、請求項20又は21に記載の導電膜の製造方法。

    式(Z1a)中、RZ3は、水素原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルコキシ基、ポリエチレンオキシエーテル基、アルキルチオ基、ポリエチレンオキシチオエーテル基、アルキルアミノ基、又はポリエチレンオキシアミノ基を表す。2つのRZ3は、同一であっても、異なってもよい。*は、結合位置を表す。
  23. キャリア濃度が、1×1024〜3×1026個/mである、請求項19〜22のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法。
  24. 導電膜を用いた有機半導体デバイスを製造する有機半導体デバイスの製造方法であって、
    請求項19〜23のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法により前記導電膜を製造する、有機半導体デバイスの製造方法。
  25. 基材と、電極と、導電膜とをこの順に備える、有機半導体デバイスを製造する有機半導体デバイスの製造方法であって、
    請求項19〜23のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法により前記導電膜を製造する、有機半導体デバイスの製造方法。
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