以下に、本発明の実施の形態による滅菌装置の一例について図面を参照して説明する。
<図1の説明>
図1は、本発明の第1の実施形態による滅菌装置の一例についてその外観を正面からみた図である。
図示の滅菌装置100の正面には、カートリッジ取付用扉101、表示部102、印刷部103、および滅菌室の扉104が配置されている。カートリッジ取付用扉101は、滅菌剤(過酸化水素又は過酸化水素溶液の液体)が充填された容器であるカートリッジを取り付ける際に開閉される扉である。カートリッジ取付用扉101を開くと、カートリッジの取り付け場所があって、ユーザは当該取り付け場所にカートリッジを取り付けることができる。
表示部102は、例えば、液晶ディスプレイなどのタッチパネルの表示画面である。印刷部103は、滅菌処理の履歴および滅菌結果を印刷用紙に印刷するプリンタであり、ユーザは、プリンタを用いて適宜、滅菌処理の履歴および滅菌結果を印刷用紙に印刷する。
滅菌室の扉104は、例えば、医療用器具などの滅菌対象物(被滅菌物)を滅菌するために、当該被滅菌物を滅菌室に入れる際に開閉される扉である。滅菌室の扉104を開くと、滅菌室があって、ユーザは当該滅菌室に被滅菌物を入れて、滅菌室の扉104を閉じて、滅菌室に滅菌対象物を入れることができる。
滅菌室は、所定の容量を有する筐体である。滅菌室内の気圧(圧力)は大気圧から真空圧までの圧力を維持することが可能である。また、滅菌室内の温度は、滅菌処理中において所定の範囲の温度に維持される。
<図2の説明>
図2は、図1に示す滅菌装置のハードウエア構成についてその一例を説明するための図である。
滅菌装置100は、演算処理部(MPUなど)201、表示部102、印刷部103、ロック動作制御部202、抽出針動作制御部203、カートリッジ取付用扉101、液センサー204、カートリッジ205、RF−IDリーダ/ライタ206、液送ロータリーポンプ207、濃縮炉208、および気送加圧ポンプ209を備えている。さらに、滅菌装置100は、吸気用HEPAフィルタ210、弁(V1)211、弁(V3)212、弁(V4)213、計量管214、弁(V2)215、気化炉216、弁(V5)217、弁(V9)227、弁(V7)226、滅菌室(真空チャンバーともいう)219、気送真空ポンプ220、排気用HEPAフィルタ221、滅菌剤分解装置222、液送ロータリーポンプ223、および排気蒸発炉224を有している。
図示の滅菌装置100は、滅菌剤が入っているカートリッジ205から滅菌剤を取り出して滅菌対象物を滅菌するための装置である。演算処理部(MPUなど)201は、演算処理を行って滅菌装置100全体、つまり、滅菌装置100を構成する各ハードウエアを制御する。なお、表示部102、印刷部103、およびカートリッジ取付用扉101ついては、図1を用いて説明したので、ここでは説明を省略する。
ロック動作制御部202は、カートリッジ取付用扉101の施錠および開錠の動作を行う。ロック動作制御部202はカートリッジ取付用扉101を施錠することによってカートリッジ取付用扉101を開かないようにし、またカートリッジ取付用扉101を開錠することによって、カートリッジ取付用扉101を開けることができるようにする。
カートリッジ205は、滅菌剤(過酸化水素、又は過酸化水素溶液の液体)が充填されて密閉された容器である。また、カートリッジ205の下側にはRF−IDなどの記憶媒体が備えられている。当該記憶媒体には、カートリッジを識別する情報であるシリアル番号、カートリッジの製造年月日、カートリッジが初めて滅菌装置で使用された日時(初回使用日時)、およびカートリッジ内に充填されている滅菌剤の残量が記憶される。
このRF−IDは、カートリッジ205の中の滅菌剤の廃棄に係るデータ(シリアル番号、製造年月、初回使用日時、滅菌剤の残量の全て、またはいずれかのデータ)が記憶された記憶媒体である。
抽出針動作制御部203は、カートリッジ内の滅菌剤を吸引するための抽出針(注射針)をカートリッジの上部から刺すために、当該抽出針を動作させる。例えば、カートリッジ内の滅菌剤を吸引するための抽出針(注射針)をカートリッジの上部から刺す場合には、抽出針動作制御部203は抽出針(注射針)をカートリッジに向けて、カートリッジの上部から降ろすように動作させる。これによって、抽出針(注射針)をカートリッジの上部から刺すことができる。
また、抽出針(注射針)をカートリッジから抜く場合には、抽出針動作制御部203はカートリッジの上部の方向に抽出針(注射針)を上げるように動作させる。これによって、抽出針(注射針)をカートリッジから抜くことができる。抽出針は、例えば、カートリッジ内の滅菌剤を吸引するためのストロー(細い筒)である。
液センサー204は、カートリッジ205内の液体状の滅菌剤が、抽出針(注射針)から液送ロータリーポンプ207および液送ロータリーポンプ223に導通(連結)する管(導管)を通っているか否かを検出する。具体的には、当該導管に赤外線を照射した結果得られるスペクトルに応じて滅菌剤が導管を通っているか否かが検出される。
RF−IDリーダ/ライタ206は、カートリッジ205の下側に備え付けられたRF−IDから、シリアル番号、製造年月、初回使用日時、および滅菌剤の残量を読み取るための装置である。また、RF−IDリーダ/ライタ206からカートリッジ205の下側に備え付けられているRF−IDに、初回使用日時および滅菌剤の残量を書き込むことができる。さらに、RF−IDリーダ/ライタ206は、カートリッジ取付用扉101の裏に位置するカートリッジの取り付け場所の下部に設置され、カートリッジ205の下側に備え付けられているRF−IDを読み取り、また初回使用日時および滅菌剤の残量などのデータをRF−IDに書き込むことができる。
液送ロータリーポンプ207は、導管によって濃縮炉208と導通して(繋がって)おり、さらに導管によって液センサー204と導通している。液送ロータリーポンプ207は、カートリッジ205内の液体の滅菌剤を吸引して、導管を通して滅菌剤を濃縮炉208に送る。また、液送ロータリーポンプ207は、液センサー204と連携して、カートリッジ205から滅菌剤の所定量を吸引する。
濃縮炉208は、液送ロータリーポンプ207、気送加圧ポンプ209、計量管214、および排気用HEPAフィルタ221にそれぞれ導管により導通している。濃縮炉208は、後述する図10においても説明するが、液送ロータリーポンプ207から導管を通じて送り込まれた滅菌剤をヒータを用いて加熱し、滅菌剤に含まれる水分などを蒸発(気化)させ滅菌剤を濃縮する。そして、気化した水は気送加圧ポンプ209から導管を通して送り込まれる空気によって、排気用HEPAフィルタ221に導通している導管に押し出され、濃縮炉208内から排気される。なお、計量管214と濃縮炉208との間の導管には弁(1)211が設けられている。
気送加圧ポンプ209は、導管によって濃縮炉208および吸気用HEPAフィルタ210に導通している。気送加圧ポンプ209は、滅菌装置100の外気(空気)を吸気用HEPAフィルタ210を介して、吸気用HEPAフィルタ210との導管によって導通して濃縮炉208に送る。
吸気用HEPAフィルタ210は、導管によって気送加圧ポンプ209、滅菌室219、および気化炉216に導通している。吸気用HEPAフィルタ210は、滅菌装置100の外の外気(空気)中のちり、ほこり、および雑菌などを、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタを用いてフィルタリングして空気を清浄する。そして、その清浄された空気は、気送加圧ポンプ209によって導管を通して濃縮炉208に送られる。また、清浄された空気は、気化炉216との導管によって導通された気化炉216に送り込まれ、さらに、滅菌室219との導管によって導通された滅菌室219に送り込まれる。
つまり、吸気用HEPAフィルタ210は、滅菌装置100の外の外気(空気)に導通している。このため、気送加圧ポンプ209と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管、滅菌室219と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管、および気化炉216と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管は、吸気用HEPAフィルタ210を介して外気(空気)に導通している。
また、吸気用HEPAフィルタ210と気化炉216との間の導管には、弁(V9)227が設けられている。そして、吸気用HEPAフィルタ210と滅菌室219との間の導管には、弁(V7)226が設けられている。
弁(V1)211は、濃縮炉208と計量管214との間の導管に設けられた弁であって、開弁によって濃縮炉208と計量管214とを導通する。弁(V1)211は、閉弁によって濃縮炉208と計量管214とを不導通とする。
弁(V3)212は、計量管214と滅菌室219との間の導管に設けられた弁であって、開弁によって計量管214と滅菌室219とを導通する。弁(V3)212は、閉弁によって計量管214と滅菌室219とを不導通とする。また、この弁(V3)212は、計量管214の近くに設けられており、少なくとも後述する弁(V4)213よりも計量管214側の位置に設けられている。
弁(V4)213は、計量管214と滅菌室219との間の導管に設けられた弁であって、開弁によって計量管214と滅菌室219とを導通する。弁(V4)213は、閉弁によって計量管214と滅菌室219とを不導通とする。また、この弁(V4)213は、滅菌室219の近くに設けられており、少なくとも弁(V3)212よりも滅菌室219側の位置に設けられている。
図2に示す滅菌装置では、弁(V3)212および弁(V4)213の開閉によって、計量管214と滅菌室219とを導通又は不導通とするようにしたが、弁(V4)213および弁(V3)213のいずれか一方の開閉によって、計量管214と滅菌室219とを導通又は不導通とするようにしてもよい。
つまり、弁(V3)212および弁(V4)213のいずれか一方のみを設けて当該一方の弁を開閉して、計量管214と滅菌室219とを導通又は不導通とするようにしてもよい。
計量管214は、濃縮炉208、気化炉216、および滅菌室219の各々と導管によって導通している。弁(V1)211を開くことによって、濃縮炉208から計量管214に滅菌剤が流入する。一方、弁(V3)212および弁(V4)213を開くことによって、カートリッジ205から吸入した不要な空気、そして、吸気用HEPAフィルタ210から濃縮炉208に流入し濃縮炉208から計量管214に流入した不要な空気が計量管214によって取り除かれる。なお、計量管214の詳細については、図10を用いて後述する。
弁(V2)215は、計量管214と気化炉216との間の導管に設けられた弁であって、開弁によって計量管214と気化炉216とを導通する。弁(V2)215は、閉弁によって計量管214と気化炉216とを不導通とする。
気化炉216は、計量管214、吸気用HEPAフィルタ210、および滅菌室219の各々に導管によって導通されている。気化炉216は気化室の一例である。気化炉216は、気送真空ポンプ220によって減圧されて滅菌剤を気化させる装置である。
弁(V5)217は、気化炉216と滅菌室219との間の導管に設けられた弁であって、開弁によって気化炉216と滅菌室219とを導通する。弁(V5)217は、閉弁によって気化炉216と滅菌室219とを不導通とする。
弁(V9)227は、気化炉216と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管に設けられた弁であって、開弁によって気化炉216と吸気用HEPAフィルタ210とを導通する。弁(V9)227は、閉弁によって気化炉216と吸気用HEPAフィルタ210とを不導通とする。つまり、弁(V9)227は、気化炉216と外気(大気)との導通を開閉する弁である。
弁(V7)226は、滅菌室219と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管に設けられた弁であって、開弁によって滅菌室219と吸気用HEPAフィルタ210とを導通する。弁(V7)226は、閉弁によって滅菌室219と吸気用HEPAフィルタ210とを不導通とする。つまり、弁(V7)226は、滅菌室219と外気(大気)との導通を開閉する弁である。
滅菌室(真空チャンバーともいう)219は、図1で説明したが、例えば、医療用器具などの滅菌対象物を滅菌する所定の容量を有する筐体である。滅菌室内の圧力は大気圧から真空圧までのいずれかの圧力に維持することができる。また、滅菌室内の温度は、滅菌処理中において所定の範囲の温度に維持される。さらに、滅菌室219内には圧力センサーが備えられており、圧力センサーによって滅菌室219内の圧力(気圧)が測定される。滅菌装置100(つまり、ここでは、演算処理部201)は、この圧力センサーにより測定された滅菌室219内の気圧に応じて、滅菌室219内などの圧力(気圧)が所定の気圧となっているか否かを判定する。
気送真空ポンプ220は、滅菌室219内、気化炉216内、計量管214内、計量管214と気化炉216との間の導管内、気化炉216と滅菌室219との間の導管内、および計量管214と滅菌室219との間の導管内の空間の気体を吸引して、減圧し真空状態(大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態)にする装置である。気送真空ポンプ220は、滅菌室219に導管により導通されており、さらに、排気用HEPAフィルタ221に導管により導通されている。
排気用HEPAフィルタ221は、気送真空ポンプ220に導管によって導通している。また、排気用HEPAフィルタ221は、排気蒸発炉224に導管によって導通している。そして、排気用HEPAフィルタ221は、滅菌剤分解装置222に導管によって導通している。さらに、排気用HEPAフィルタ221は、濃縮炉208に導管によって導通している。
排気用HEPAフィルタ221は、気送真空ポンプ220によって滅菌室219などから吸引された気体に含まれるちり、ほこり、および雑菌などを、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタによってフィルタリングして、吸引された気体を清浄する。そして、清浄された気体は、滅菌剤分解装置222と排気用HEPAフィルタ221との間の導管を通って、滅菌剤分解装置222に送られる。そして、滅菌剤分解装置222によって、当該気体に含まれる滅菌剤の分子を分解して、分解後の分子を滅菌装置100の外に放出する。
また、排気用HEPAフィルタ221は、濃縮炉208と排気用HEPAフィルタ221との間の導管によって濃縮炉208から排気される気体を清浄する。この気体は、濃縮炉208において滅菌剤が加熱されて気化した水であるが、微量の滅菌剤を含むので、滅菌剤分解装置222と排気用HEPAフィルタ221との間の導管を通って、滅菌剤分解装置222に送られる。そして、滅菌剤分解装置222によって当該気体に含まれる滅菌剤の分子を分解して、分解後の分子を滅菌装置100の外に放出する。
さらに、排気用HEPAフィルタ221は、排気蒸発炉224から導管を通って送られてくる気化した滅菌剤を清浄する。そして、当該清浄された滅菌剤(気体)は、滅菌剤分解装置222と排気用HEPAフィルタ221との間の導管を通って、滅菌剤分解装置222に送られる。そして、滅菌剤分解装置222によって、当該気体に含まれる滅菌剤の分子を分解して、分解後の分子を滅菌装置100の外に放出する。
このように、排気用HEPAフィルタ221は、導管を通り送られてくる気体を清浄することによって、滅菌剤分解装置222にほこりおよびごみが溜まりにくくして、滅菌剤分解装置222の製品寿命を延ばすことができる。
滅菌剤分解装置222は、排気用HEPAフィルタ221に導管によって導通されている。滅菌剤分解装置222は、滅菌剤分解装置222と排気用HEPAフィルタ221との間の導管から送られてくる気体に含まれる滅菌剤の分子を分解して、分解生成された分子を滅菌装置100の外に放出する。
滅菌剤分解装置222は、滅菌剤を分解する装置であって、例えば、滅菌剤が過酸化水素又は過酸化水素溶液である場合、気化した過酸化水素を二酸化マンガンを触媒として用いて、水と酸素に分解する装置である。
液送ロータリーポンプ223は、排気蒸発炉224と導管によって導通するとともに、液センサー204と導管によって導通している。液送ロータリーポンプ223は、カートリッジ205内の全ての液体滅菌剤を吸引して導管を介して送られる全ての滅菌剤を、液送ロータリーポンプ223と排気蒸発炉224との間の導管を通して排気蒸発炉224に送る。
排気蒸発炉224は、液送ロータリーポンプ223と導管によって導通するとともに、排気用HEPAフィルタ221と導管により導通している。排気蒸発炉224は、液送ロータリーポンプ223から導管を通して送られるカートリッジ205内の全ての液体の滅菌剤を、排気蒸発炉224に備え付けられたヒータにより加熱して、滅菌剤の全てを気化させる。そして、気化された滅菌剤は、排気蒸発炉224から導管を通して、排気用HEPAフィルタ221に送られる。
<図3の説明>
図3は、図2に示す滅菌装置で行われる滅菌処理についてその一例を説明するためのフローチャートである。
なお、図3に示す滅菌処理は演算処理部201の制御下で行われる。つまり、演算処理部201が読み取り実行可能なプログラムを実行することによって、滅菌装置100の動作を制御して滅菌処理が行われる。
滅菌装置100において、電源がオンされると、RF−IDリーダ/ライタ206(読取部/書込部)はカートリッジ205の下側に設けられたRF−ID(記憶媒体)からデータを読み取る(ステップS301)。
ステップS301において、RF−ID(記憶媒体)から読み取られるデータとして、前述のように、カートリッジを識別する情報であるシリアル番号、カートリッジの製造年月日、カートリッジが滅菌装置で初めて使用された日時(初回使用日時)、およびカートリッジ内に充填されている滅菌剤の残量が読み取られる。言い換えると、カートリッジ205に設けられたRF−ID(記憶媒体)には、予めシリアル番号、製造年月日、初回使用日時(初回使用日時情報)、および滅菌剤の残量が記憶されている。
なお、滅菌装置100で初めて使用されるカートリッジのRF−IDには、初回使用日時(カートリッジが滅菌装置で初めて使用された日時)が記憶されていない。つまり、初めて使用されるカートリッジのRF−IDには、シリアル番号、製造年月日、および滅菌剤の残量が記憶されていることになる。そして、2回目以降に使用されるカートリッジのRF−IDには、シリアル番号、製造年月日、初回使用日時、および滅菌剤の残量が記憶されている。
従って、ステップS301においては、初めて使用されるカートリッジのRF−IDについては、シリアル番号、製造年月日、および滅菌剤の残量が読み取られる。一方、2回目以降に使用されるカートリッジのRF−IDについては、シリアル番号、製造年月日、初回使用日時、および滅菌剤の残量が読み取られることになる。
続いて、演算処理部201は、RF−IDからデータの読み取りができたか否かを判定する(ステップS302)。ステップS302の処理では、初めて使用されるカートリッジのRF−IDから初回使用日時が読み取れなかったとしても、シリアル番号、製造年月日、滅菌剤の残量が読み取ることができれば、演算処理部201はRF−IDからデータが読み取れたと判定する。
次に、RF−IDからデータが読み取れたと判定すると(ステップS302において、YES)、演算処理部201はカートリッジの取り付け場所にカートリッジが設置されていると判定して、ロック動作制御部202によってカートリッジ取付用扉101を施錠(ロック)する(ステップS303)。すなわち、演算処理部201はカートリッジを取り出すことができないようにロック(施錠)する。
このようにして、読取手段であるRF−IDリーダ/ライタ206によってRF−IDからデータが読み取れると、演算処理部201はカートリッジ205を取り出すことができないようにロックする。
なお、例えば、カートリッジに挿入される注射針を抜かないようにすることによって、カートリッジを取り出すことができないようにすることもできる。つまり、ステップS303の処理において、注射針をカートリッジに挿入して、カートリッジ内の滅菌剤を抽出することを可能とするとともに、カートリッジを取り出すことができないようにすることができる。
このようにして、演算処理部201はカートリッジの取り付け場所にカートリッジが取り付けられると、カートリッジを取り出すことができないようにカートリッジ取付用扉101をロック(施錠)する。
滅菌装置100内のカートリッジの取り付け場所に滅菌剤の余りが入っているカートリッジが取り付けられている場合、カートリッジを取り出すことができないようにロック(施錠)が行われるため、ユーザが滅菌剤を触れないようにすることができる。
以上のように、演算処理部201はカートリッジが滅菌装置に取り付けられている場合には、カートリッジを取り出すことができないようにロックを行う。
次に、演算処理部201は、カートリッジ内に滅菌1回分に当たる所定の量以上の滅菌剤(例えば、8ミリリットル)が存在するか否かを判定する(ステップS304)。具体的には、演算処理部201は、RF−IDから取得した滅菌剤の残量が滅菌1回分の所定の量よりも多いか否かを判定する。
滅菌剤の残量が滅菌1回分の所定の量以上であると判定すると(ステップS304において、YES)、演算処理部201は、少なくともカートリッジ内に滅菌1回分の滅菌剤の所定の量がある(十分な滅菌処理を実行できる)と判定する。そして、演算処理部201はRF−IDから取得したカートリッジの製造年月日から、所定の期間(例えば、13か月)を経過しているか否かを判定する(ステップS305)。
製造年月日から所定の期間を経過していないと判定すると(ステップS305において、NO)、演算処理部201は十分な滅菌処理を実行できると判定する。そして、演算処理部201は、RF−IDから取得した初回使用日時から所定の期間(例えば、2週間)を経過しているか否かを判定する(ステップS306)。
ステップS306の処理においては、初めて使用されるカートリッジのRF−IDからは初回使用日時を読み取ることができないので、ステップS306の処理では、演算処理部201は初めて使用されるカートリッジについては常に初回使用日時から所定の期間(例えば、2週間)を経過していないと判定する。
初回使用日時から所定の期間(例えば、2週間)を経過していないと判定すると(ステップS306において、NO)、演算処理部201は十分な滅菌処理を実行できると判定する。そして、演算処理部201は表示部102に、後述する滅菌開始画面を表示する(ステップS307)。
<図4の説明>
図4は、図2に示す滅菌装置100において表示部102に表示される滅菌開始画面についてその一例を示す図である。
滅菌開始画面401には、滅菌開始ボタン402が表示されており、当該滅菌開始ボタン302はユーザによって押下可能(アクティブ)となっている。
図3も参照して、演算処理部201はユーザによって滅菌開始ボタン402が押下されたか否かを判定する(ステップS308)。滅菌開始ボタン402が押し下げられないと(ステップS308において、NO)、演算処理部201は、ステップS307の処理に戻って滅菌開始画面401の表示を継続する。
一方、滅菌開始ボタン402が押し下げられると(ステップS308において、YES)、演算処理部201は、図4に示す滅菌モード選択画面403を表示部102に表示する(ステップS409)。
図4に示す滅菌モード選択画面403には、「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン404と、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン405とが表示される。
演算処理部201は、「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン404と「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン405のいずれか一方の選択をユーザから受け付ける(ステップS310)。そして、演算処理部201は、ユーザによって選択されたボタンのモードに応じた滅菌処理を行う(ステップS311)。
なお、ステップS311の滅菌処理については、図6を用いて後述する。演算処理部201は、ステップS311の滅菌処理が終了すると、ステップS301の処理に戻る。
このようにして、ユーザの指示に応じて、滅菌処理するモードを1台の滅菌装置で切り替えて行うことが可能となる。つまり、「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン404がユーザによって押下された場合には、滅菌剤を濃縮して滅菌処理が行われる。一方、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン405が押下された場合には、滅菌剤を濃縮しないで滅菌処理が行われることになる。
滅菌剤の残量が滅菌1回分の所定の量(例えば、8ミリリットル)よりも少ないと判定すると(ステップS304において、NO)、演算処理部201はカートリッジ内に滅菌1回分の所定量の滅菌剤がない(十分な滅菌処理を実行できない)と判定する。そして、演算処理部201は、図4に示す滅菌開始画面401を表示部102に表示する(ステップS312)。
但し、ここでは、滅菌開始画面401に表示される滅菌開始ボタン402は、ユーザによって押下ができないように表示される(つまり、滅菌開始ボタン402はアクティブではない)。これによって、演算処理部210は、ユーザによる滅菌処理の開始指示を受け付けないようにする。
なお、製造年月日から所定の期間を経過している判定すると(ステップS305において、YES)、演算処理部201は十分な滅菌処理を実行できないと判定して、ステップS312の処理に進む。
同様にして、初回使用日時から所定の期間(例えば、2週間)を経過していると判定すると(ステップS306において、YES)、演算処理部201は、十分な滅菌処理を実行できないと判定して、ステップS312の処理に進む。
ステップS312の処理の後、演算処理部201は、ステップS301でRF−IDから取得したシリアル番号に基づいて、カートリッジの取り付け場所に設置してあるカートリッジが既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジであるか否かを判定する(ステップS313)。
具体的には、滅菌装置100内のメモリ(記憶部)には既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジを識別するシリアル番号が記憶されており、演算処理部201は、ステップS301でRF−IDから取得したシリアル番号が当該メモリ(記憶部)に記憶されているシリアル番号に一致するか否かを判定する。これによって、演算処理部201は、現在滅菌装置100に取り付けられているカートリッジが既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジであるか否かを判定する。
ここで、滅菌剤の排出処理済みのカートリッジであるか否かを判定する他の例について説明する。
演算処理部201は、ステップS314に示す滅菌剤排出処理を行うと、カートリッジ205のRF−IDに既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジである旨を示す情報を記録する。このようにして、現在、滅菌装置100に取り付けられているカートリッジが既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジであるか否かを判定するようにしてもよい。
カートリッジが既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジでないと判定すると(ステップS313において、NO)、演算処理部201は、液送ロータリーポンプ207によってカートリッジ内に残っている液体滅菌剤の残量の全てを吸い取って、滅菌剤を分解処理した後、滅菌装置100の外に放出する滅菌剤の排出処理を行う(ステップS314)。
ステップS314の処理は、カートリッジの中の過酸化水素水溶液を廃棄する廃棄手段として機能することになる。つまり、廃棄手段は、カートリッジの中の全ての過酸化水素溶液を、触媒を用いて分解して廃棄する。そして、ステップS314の処理を行うと、演算制御部201は、滅菌装置100内のメモリ(記憶部)に、既に滅菌剤の排出処理(廃棄処理)済みのカートリッジを識別するシリアル番号として、ステップS301で読み取ったシリアル番号を記憶する。
なお、ステップS314の滅菌剤排出処理については、図10を用いて後述する。
その後、演算処理部201は、例えば、抽出針動作制御部203によってカートリッジに挿入されている注射針をカートリッジから抜くことによって、ロックを解除する。そして、演算処理部201は、ロック動作制御部202によってカートリッジ取付用扉101を開錠して(ステップS315)、演算処理部201はステップS301の処理に戻る。
このようにして、ロックを解除する前に、カートリッジ205内の全ての滅菌剤を吸い出して廃棄する処理を行うので、ユーザに滅菌剤を触れさせないようにすることができ、安全性が向上する。
カートリッジが既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジであると判定すると(ステップS313において、YES)、演算処理部201は、ステップS315の処理に進む。
ステップS302において、RF−IDからデータが読み取れないと判定すると(ステップS302において、NO)、演算処理部201は、カートリッジの取り付け場所にカートリッジが設置されていないと判定して、図5に示すカートリッジ取付要求画面を表示する(ステップS316)。
<図5の説明>
図5は、図2に示す表示部102に表示されるカートリッジ取付要求画面501についてその一例を示す図である。
図5において、表示部102に表示されたカートリッジ取付要求画面501には、OKボタン502が表示される。
図3も参照して、演算処理部201は、カートリッジ取付要求画面501においてOKボタン502がユーザによって押下されたか否かを判定する(ステップS317)。OKボタン502が押下されると(ステップS316において、YES)、演算処理部201は、ロック動作制御部202によってカートリッジ取付用扉101を開錠する(ステップS318)。そして、演算処理部201は、ステップS301の処理に戻る。
一方、OKボタン502が押し下げられないと(ステップS316において、NO)、演算処理部201は、待機してカートリッジ取付要求画面1101の表示を継続する。
ここで、図3に示す滅菌処理について説明する。
<図6の説明>
図6は、図3に示す滅菌処理(ステップS311)についてその一例を説明するためのフローチャートである。
なお、図6に示すフローチャートに係る処理は演算処理部201の制御下で行われる。つまり、演算処理部201は読み取り実行可能なプログラムを実行することによって、滅菌装置100の動作を制御して滅菌処理を行うことになる。
滅菌処理を開始する際、演算処理部201は全ての弁(弁(V1)211、弁(V2)215、弁(V3)212、弁(V4)213、弁(V5)217、弁(V9)227、および弁(V7)226)を閉じた状態する。
その後、演算処理部201は、気送真空ポンプ220を動作させて、滅菌室219の気体を吸引し、滅菌室219内の気圧が所定の気圧(例えば、45パスカル)になるまで減圧する滅菌前工程処理を行う(ステップS601)。なお、滅菌前工程処理については、図7を用いて後述する。
続いて、演算処理部201は、滅菌室219に滅菌剤を入れて、滅菌対象物を滅菌する滅菌工程の処理を行う(ステップS602)。滅菌工程の処理の詳細な処理は、図8Aおよび図8Bを用いて後で説明する。
次に、演算処理部201は、滅菌室219内および気化炉216内に含まれている滅菌剤および/又は滅菌剤が流れる経路に付着している滅菌剤を取り除くための換気工程処理を行う(ステップS603)。そして、演算処理部201は、図3に示すステップS301の処理に戻る。なお、換気工程処理については、図9を用いて後述する。
<図7の説明>
図7は、図6に示す滅菌前工程処理(ステップS601)についてその一例を説明するためのフローチャートである。
なお、図7に示す滅菌前工程は、図2に示す演算処理部201の制御下で行われる。つまり、演算処理部201が読み取り実行可能なプログラムを実行することによって、滅菌装置100の動作を制御して、滅菌前工程を行う。
滅菌前工程が開始されると、演算処理部201は、気送真空ポンプ220を駆動して、滅菌室219の気体を吸引する処理(つまり、滅菌室219の減圧)を開始する(ステップS701)。そして、演算処理部201は滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(例えば、45パスカル)まで減圧されているか否かを判定する(ステップS702)。
具体的には、演算処理部201は、滅菌室219内に備えられた圧力センサーによって測定された滅菌室219内の圧力(気圧)が所定の気圧(例えば、45パスカル)まで減圧されているか否かを判定する。
滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(例えば、45パスカル)まで減圧されていないと判定すると(ステップS702において、NO)、演算処理部201は、気送真空ポンプ220を引き続き駆動して、滅菌室219の気体を吸引し、滅菌室219内の圧力(気圧)を減圧する。
一方、滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(例えば、45パスカル)まで減圧されたと判定すると(ステップS702において、YES)、演算処理部201は、気送真空ポンプ220を引き続き駆動して、滅菌室219の気体を吸引し、図6に示すステップS602の処理を開始する。
<図8Aおよび図8Bの説明>
図8Aおよび図8Bは、図6に示す滅菌工程処理(ステップS602)についてその一例を説明するためのフローチャートである。
なお、図8Aおよび図8Bに示す滅菌工程は、図2に示す演算処理部201の制御下で行われる。つまり、演算処理部201が読み取り実行可能なプログラムを実行することによって、滅菌装置100の動作を制御して、滅菌工程を行う。
滅菌工程が開始されると、演算処理部201は、弁(V5)217を開いて、滅菌室219と気化炉216とを導管によって導通させる(ステップS801)。これによって、現在、気送真空ポンプ220によって滅菌室219の気体が吸引されて減圧が行われているので、滅菌室219および気化炉216の減圧が開始される(ステップS802)。
続いて、演算処理部201は「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン404と「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン405のいずれが押下されたかを判定するつまり、演算処理部201は濃縮モードであるか否かを判定する(ステップS803)。「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン404が押下されたと判定すると、つまり、濃縮モードであると(ステップS803において、YES)、演算処理部201は、液送ロータリーポンプ207を駆動して、カートリッジ205内の滅菌剤を所定量(例えば、2ミリリットル)吸い取る。これによって、吸い取られた所定量の滅菌剤が濃縮炉208に入る(ステップS804)。ここで、所定量は、例えば、滅菌室219内の空間を滅菌剤で飽和状態にさせることができる量である。
次に、演算処理部201は、カートリッジの取り付け場所に取り付けられているカートリッジ205のRF−IDに、カートリッジ205内に残っている滅菌剤の残量を書き込む(ステップS805)。
具体的には、演算処理部201は、ステップS301で読み取ったカートリッジ205内の滅菌剤の残量から、ステップS804でカートリッジ205から吸い取った所定量(例えば、2ミリリットル)減算した値をRF−IDに記憶する。つまり、ステップS805においては、演算処理部201は、ステップS301で読み取ったカートリッジ205内の滅菌剤の残量から、ステップS804でカートリッジ205から滅菌剤を吸い取った量の累計を減算した値をRF−IDに記憶する。
また、ステップS805においては、演算処理部201は、ステップS301でRF−IDから読み取った初回使用日時(カートリッジが滅菌装置で初めて使用された日時)に日時を示す情報が含まれていない場合には、今回、カートリッジが滅菌装置100で初めて使用されたと判定する。つまり、演算処理部201は、ステップS301でRF−IDから初回使用日時を読み取ることができなかった場合には、今回、カートリッジが滅菌装置で初めて使用されたと判定することになる。
このように、カートリッジが滅菌装置100で初めて使用されたと判定した場合のみ、演算処理部201は現在の日時情報をRF−IDに書き込む。
次に、滅菌装置100に電源が入っている際には、常に、濃縮炉208に備え付けられたヒータに通電されるため、ステップS804で濃縮炉208に入れられた滅菌剤は、ヒータの熱によって加熱されて、濃縮炉208内の滅菌剤に含まれる水分が蒸発する(ステップS806)。つまり、殺菌剤が濃縮されることになる。
滅菌装置100に電源が入っている際に、常に、濃縮炉208に備え付けられたヒータに通電を行うのは、例えば、手術室で、いつでも直ぐに滅菌装置100を使用することができるようにするためである。このように、常に濃縮炉208のヒータに通電して濃縮炉208を加熱するために要する時間を低減しているので、いつでも直ぐに滅菌装置を使用することができることになる。
つまり、滅菌剤が過酸化水素水(過酸化水素水溶液ともいう)である場合に、濃縮炉208に備え付けられたヒータを、例えば、80度とする。これによって、主に水分を蒸発(気化)させることができ、滅菌剤を濃縮させることが可能となる。
次に、演算処理部201は、ステップS804において濃縮炉208に滅菌剤を入れてから所定の時間(例えば、6分)が経過したか否かを判定する(ステップS807)。濃縮炉208に滅菌剤を入れてから所定の時間が経過しないと判定すると(ステップS807において、NO)、演算処理部201は、ステップS806の処理に戻って、引き続き濃縮炉208に滅菌剤を入れたままにして滅菌剤を濃縮する。
濃縮炉208に滅菌剤を入れてから所定の時間が経過したと判定すると(ステップS807において、YES)、演算処理部201は、滅菌室219および気化炉216の気圧が所定の気圧(例えば、500パスカル)まで減圧されたか否かを判定する(ステップS808)。
滅菌室219および気化炉216の気圧が所定の気圧まで減圧されていない場合には(ステップS808において、NO)、演算処理部201は、ステップS806の処理に戻って引き続き滅菌剤の濃縮を行う。
一方、滅菌室219および気化炉216の気圧が所定の気圧まで減圧された場合には(ステップS808において、YES)、演算処理部201は、弁(V3)212および弁(V4)213を所定の時間開ける(ステップS809)。ここでは、弁(V3)212および弁(V4)213を所定の時間(例えば、3秒)開けて、弁(V3)212および弁(V4)213を閉じる。これによって、演算処理部201は計量管214内を減圧する(負圧とする)。
ステップS809において、弁(V3)212および弁(V4)213を所定の時間開けて、弁(V3)212および弁(V4)213を閉じた後に、演算処理部201は、弁(V1)を所定時間(例えば、3秒)開ける(ステップS810)。これによって、濃縮炉208(外部)の気圧よりも計量管214内の気圧の方が低いので、濃縮炉208に入っている滅菌剤が計量管214に吸い込まれて入る。
ここでは、弁(V1)を所定の時間開けて閉じることによって、濃縮炉208に入っている滅菌剤が計量管214に吸い込まれて入る。そして、滅菌剤のみではなく、濃縮炉208内の空気も一緒に計量管214内に吸い込まれる。
そして、この後、引き続いて、気送真空ポンプ220によって滅菌室219内が減圧される。このため、滅菌室219内の気圧は、計量管内の気圧よりも低くなる。具体的には、滅菌室219内の気圧は400Pa程度であり、計量管214内の気圧は大気圧(101325Pa)程度である。
計量管214内の気圧が大気圧近くまで上がるのは、滅菌剤のみではなく、濃縮炉208内の空気も一緒に計量管214に吸い込まれてくるためである。
次に、演算処理部201は、弁(V3)212および弁(V4)213を所定時間(例えば、3秒)開けて、計量管214内の空気(液体の滅菌剤は含まない)を滅菌室219に吸い出す(ステップS811)。つまり、ここでは、弁(V3)212および弁(V4)213を開けて所定時間が経過すると、演算処理部201は、弁(V3)212および弁(V4)213を閉じる。
続いて、演算処理部201は、滅菌室219内および気化炉216内の気圧が所定の気圧(例えば、80Pa)まで減圧されているか否かを判定する(ステップS811)。滅菌室219内および気化炉216内の気圧が所定の気圧(例えば、80Pa)まで減圧されていないと(ステップS811において、NO)、演算処理部201は、待機する。
一方、滅菌室219内および気化炉216内の気圧が所定の気圧(例えば、80Pa)まで減圧されると(ステップS811において、YES)、演算処理部201は、弁(V5)217を閉める(ステップS813)。
その後、演算処理部201は、弁(V2)215を開ける(ステップS814)。これによって、計量管214内の滅菌剤が気化炉216に吸い込まれて、気化炉216内で気化する。ここで、滅菌剤は、分子クラスターとして気化炉216内で気化する。
滅菌室219はその容積が気化炉216よりも大きく、気化炉216においては、滅菌剤は分子クラスターとして気化される。これは、気化炉216の容積が滅菌室219より小さいため、滅菌室219内の滅菌剤の分子間の距離が近く分子間力によって、分子クラスターを形成しやすいためである。
このときも、引き続き気送真空ポンプ220によって、滅菌室219内の気体が吸引されて、滅菌室219内が減圧される。そして、計量管214内の滅菌剤が吸い込まれた気化炉216内は気圧が上昇する。つまり、気化炉216内の気圧は、滅菌室219内の気圧よりも高くなる。
次に、演算処理部201は、滅菌室219内の気圧が、所定の気圧(例えば、50Pa)まで減圧され、かつステップS814で弁(V2)215を開けてから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS815)。滅菌室219内の気圧が所定の気圧(例えば、50Pa)まで減圧されないか又は弁(V2)215を開けてから所定時間が経過しないと(ステップS815において、NO)、演算処理部201は待機する。
一方、滅菌室219内の気圧が所定の気圧(例えば、50Pa)まで減圧され、かつ弁(V2)215を開けてから所定時間が経過すると(ステップS815において、YES)、演算処理部201は、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を停止する(ステップS816)。そして、演算処理部201は弁(V5)217を開ける(ステップS817)。
これによって、滅菌室219内で気化した滅菌剤が拡散して、滅菌対象物を滅菌することができる。ここでは、気化炉216内の気圧よりも滅菌室219内の気圧(例えば、50Pa)の方が低いため、滅菌剤が拡散する。
ここで拡散する滅菌剤においては、気化炉内の分子クラスターがさらに細分化される結果、より効果的に滅菌剤を滅菌室内に拡散させることができ、滅菌作用を高めることが可能となる。また、細かい内腔などの滅菌対象物を効果的に滅菌することができるようになる。
続いて、演算処理部201は、ステップS817で弁(V5)217を開けてから所定時間(例えば、330秒)が経過したか否かを判定する(ステップS818)。弁(V5)217を開けてから所定時間(例えば、330秒)が経過しないと(ステップS818において、NO)、演算処理部201は待機する。
一方、弁(V5)217を開けてから所定時間(例えば、330秒)が経過すると(ステップS818において、YES)、演算処理部201は、弁(V9)227を開ける(ステップS819)。
これによって、滅菌装置100の外の気圧よりも気化炉216内および滅菌室219内の気圧の方が低いので、吸気用HEPAフィルタ210で清浄された外気(空気)が、気化炉216内に吸い込まれる。そして、気化炉216内に送り込まれた空気によって、気化炉216内に気体として充満している滅菌剤および気化炉216の内部の表面に付着した滅菌剤が滅菌室219内に送り込まれて、滅菌室219内にある滅菌対象物に対する滅菌作用が高まる。つまり、例えば、滅菌対象物である細いチューブなどの奥などの滅菌し難い部分についても滅菌作用が高まる。
続いて、演算処理部201は、ステップS819において弁(V9)227を開けてから所定の時間(15秒)が経過すると、弁(V7)226を開ける(ステップS820)。これによって、吸気用HEPAフィルタ210で清浄された外気(空気)が滅菌室219内に吸い込まれる。
ここでは、滅菌装置100の外の気圧よりも滅菌室219内および気化炉216内の気圧の方が低いため、滅菌装置100の外の外気(空気)が滅菌室219内に吸い込まれることになる。これによって、滅菌対象物である細いチューブなどの奥などの滅菌し難い部分(特に、内腔部分)についても滅菌作用が高まる。
次に、演算処理部201は、滅菌室219内および気化炉216内が大気圧まで上昇したか否かを判定する(ステップS821)。滅菌室219内および気化炉216内が大気圧まで上昇しないと(ステップS821において、NO)、演算処理部201は待機する。
一方、滅菌室219内および気化炉216内が大気圧まで上昇すると(ステップS821において、YES)、演算処理部201は、弁(V2)215を閉める(ステップS822)。
続いて、演算処理部201は、弁(V7)226を閉める(ステップS823)。そして、演算処理部201は、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を再開する(ステップS824)。これによって、吸気用HEPAフィルタ210で清浄された外気(空気)が吸気用HEPAフィルタ210と気化炉216とが導通している導管を通じて、気化炉216内に吸い込まれる。
気化炉216内に送り込まれた空気によって、気化炉216内に気体として充満している滅菌剤および気化炉216の内部の表面に付着した滅菌剤が、さらに滅菌室219内に送り込まれる。
これによって、滅菌対象物である細いチューブなどの奥などの滅菌し難い部分(特に内腔部分)についても滅菌作用が高まるばかりでなく、気化炉216内の滅菌剤を効果的に減少させることが可能となる。
次に、演算処理部201は、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を再開してから、所定時間(例えば、15秒)の後、弁(V9)227を閉める(ステップS825)。
この際も、引き続き、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)が行われて、ステップS825の閉弁によって、滅菌室219および気化炉216が密閉されて、滅菌室219内および気化炉216内が減圧されることになる(ステップS826)。
次に、演算処理部201は、所定回数(例えば、4回)、ステップS802からステップS826の処理を実行したか否かを判定する(ステップS827)。所定回数の実行を行ったと判定すると(ステップS827において、YES)演算処理部201は、図6に示すステップS603の処理に進む。
一方、所定回数の実行を行っていないと判定すると(ステップS827において、NO)、演算処理部201はステップS802の処理に戻る。
このように、所定回数ステップS802からステップS826の処理を実行することによって、滅菌対象物に対する滅菌作用の効果が高まって、滅菌対象物を十分に滅菌することが可能となる。
次に、ステップS803において、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305が押下されたと判定すると、つまり、濃縮モードではないと判定すると(ステップS803において、NO)、演算処理部201は、滅菌室219内および気化炉216内の気圧が所定の気圧(例えば、1000Pa)にまで減圧されたか否かを判定する(ステップS828)。
滅菌室219内および気化炉216内の気圧が所定の気圧(例えば、1000Pa)にまで減圧されていないと判定すると(ステップS828において、NO)、演算処理部201は、待機する。
一方、滅菌室219内および気化炉216内の気圧が所定の気圧(例えば、1000Pa)にまで減圧されたと判定すると(ステップS828において、YES)、演算処理部201は、液送ロータリーポンプ207を駆動してカートリッジ205内の滅菌剤を、所定量(例えば、2ミリリットル)吸い取る(ステップS829)。これによって、吸い取られた所定量の滅菌剤が濃縮炉208に入る。
ここで吸い取る滅菌剤の所定量は、例えば、滅菌室219内の空間を滅菌剤で飽和状態にさせることができる量である。
次に、演算処理部201は、カートリッジの取り付け場所に取り付けられているカートリッジ205のRF−IDに、カートリッジ205内に残っている滅菌剤の残量を書き込む(ステップS830)。
具体的には、演算処理部201は、ステップS301で読み取ったカートリッジ205内の滅菌剤の残量から、ステップS829でカートリッジ205から吸い取った所定量(例えば、2ミリリットル)を減算した値をRF−IDに記憶する。
ここで、カートリッジ205から滅菌剤を吸い取った1回当たりの所定量が、例えば、2ミリリットルであり、ステップS827において所定回数の実行を行っていないと判定されたとする。
この場合、ステップS802以降の処理が、例えば、2回目であるとすると、ステップS829においてカートリッジ205から滅菌剤を吸い取った量の累計は、(2ミリリットル(所定量)×2回目)4ミリリットルであるので、演算処理部201は、ステップS301において読み取ったカートリッジ205内の滅菌剤の残量から、ステップS829でカートリッジ205から滅菌剤を吸い取った量の累計である4ミリリットルを減算した値を、ステップS830においてRF−IDに記憶することになる。
つまり、演算処理部201は、ステップS301で読み取ったカートリッジ205内の滅菌剤の残量から、ステップS829においてカートリッジ205から滅菌剤を吸い取った量の累計を減算した値を、ステップS830においてRF−IDに記憶する。
また、ステップS301でRF−IDから読み取った初回使用日時(カートリッジが滅菌装置で初めて使用された日時)に日時を示す情報が含まれていない場合には、演算処理部201は、ステップS830において、今回カートリッジ205が滅菌装置100で初めて使用されたと判定する。
つまり、演算処理部201は、ステップS301においてRF−IDから初回使用日時を読み取ることができなかった場合には、今回カートリッジ205が滅菌装置100で初めて使用されたと判定することになる。
このようにして、演算処理部201は、カートリッジ205が滅菌装置100で初めて使用されたと判定した場合のみ、現在の日時情報をRF−IDに書き込む。
ステップS830の処理の後、演算処理部201は、ステップS809の処理に進む。
ステップS828において滅菌室219内が所定の気圧(例えば、1000Pa)になると、ステップS829において滅菌剤の吸引が開始されて、ステップS829において滅菌剤の吸引が終了する頃には気圧が500Paを下回るので、効率的にS809に移行することができる。
このようにして、滅菌室219内および気化炉216内の気圧が、計量管214内の減圧を開始する所定の気圧(例えば、1000パスカル)まで減圧された後、吸い取られた所定量の滅菌剤を濃縮炉208に入れて、直ぐにステップS809において計量管214内を減圧することができる。
その後、ステップS810において濃縮炉208内の滅菌剤を計量管214に入れるので、濃縮炉208から計量管214に直ぐに滅菌剤を入れることが可能となる。つまり、滅菌剤が濃縮炉208でほぼ濃縮されることなく、滅菌剤を計量管214に入れることが可能となる。
<図9の説明>
図9は、図6に示す換気工程処理(ステップS603)についてその一例を説明するためのフローチャートである。
なお、図9に示す換気工程は、図2に示す演算処理部201の制御下で行われる。つまり、演算処理部201が読み取り実行可能なプログラムを実行することによって、滅菌装置100の動作を制御して、換気工程を行う。
換気工程が開始されると、演算処理部201は、弁V(7)226を開ける(ステップS901)。続いて、演算処理部201は弁V(7)226を開けてから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS902)。弁V(7)226を開けてから所定時間が経過しないと(ステップS902において、NO)、演算処理部201は待機する。
弁V(7)226を開けてから所定時間が経過すると(ステップS902において、YES)、演算処理部201は、弁V(7)226を閉める(ステップS903)。そして、演算処理部201は、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を引き続き行う。これによって、滅菌室219内が減圧される。
続いて、演算処理部201は、後述するバルブパージング処理を行う(ステップS904)。
バルブパージング処理では、各弁に付着した滅菌剤(過酸化水素水溶液等)および/又は滅菌剤(過酸化水素水溶液等)が分解して生成された水などの生成物が取り除かれる。
演算処理部201は、滅菌室219内の減圧を継続する(ステップS905)。そして、演算処理部201は滅菌室219内が所定の気圧(50Pa)まで減圧されたか否かを判定する(ステップS906)。滅菌室219内が所定の気圧(50Pa)まで減圧されないと(ステップS906において、NO)、演算処理部201は待機する。
一方、滅菌室219内が所定の気圧(50Pa)まで減圧されると(ステップS906において、YES)、演算処理部201は、弁V(7)226を開ける(ステップS907)。
これによって、吸気用HEPAフィルタ210で清浄された外気(空気)が、滅菌室219内に吸い込まれる。ここでは、滅菌装置100の外の気圧よりも滅菌室219内の気圧の方が低いので、外気(空気)が滅菌室219内に吸い込まれることになる。
続いて、演算処理部201は、滅菌室219内の気圧が大気圧まで上昇したか否かを判定する(ステップS908)。そして、滅菌室219内の気圧が大気圧まで上昇していないと(ステップS908において、NO)、演算処理部201は待機する。
一方、滅菌室219内の気圧が大気圧まで上昇すると(ステップS908において、YES)、演算処理部201は、ステップS903からステップS908の処理を所定回数(例えば、4回)行ったかを判定する(ステップS909)。
ステップS903からステップS908までの処理が所定回数(例えば、4回)行われていないと(ステップS909において、NO)、演算処理部201はステップS903の処理に戻る。ステップS903からステップS908までの処理が所定回数(例えば、4回)行われると(ステップS909において、YES)、演算処理部201は、弁V(7)226を閉めて(ステップS910)、換気工程を終了する。
これによって、滅菌室219内の表面に付着している滅菌剤および滅菌室219内に気体として残っている滅菌剤が気送真空ポンプ220により吸引される。ここで、吸引された気体(滅菌剤を含む)は、排気用HEPAフィルタ221を通って、滅菌剤分解装置222に送られる。そして、滅菌剤分解装置222において滅菌剤が分解されて、分解後の分子が外部に放出される。
<図10の説明>
図10は、図3に示す滅菌剤排出処理(ステップS314)についてその一例を説明するためのフローチャートである。
なお、図10に示す滅菌剤排出処理は、図2に示す演算処理部201の制御下で行われる。つまり、演算処理部201が読み取り実行可能なプログラムを実行することによって、滅菌装置100の動作を制御して、滅菌剤排出処理を行う。
滅菌剤排出処理が開始されると、演算処理部201は、液送ロータリーポンプ223によって、カートリッジ205内の全ての液体滅菌剤を吸引する(ステップS1001)。この液体滅菌剤は、液送ロータリーポンプ223によって導管を介して、排気蒸発炉224に送られる。
続いて、演算処理部201は、排気蒸発炉224によって、全ての液体滅菌剤(排気蒸発炉224内に溜められた滅菌剤)を、排気蒸発炉224に備え付けられたヒータにより加熱して、滅菌剤の全てを気化させる。そして、気化した滅菌剤は、排気用HEPAフィルタ221と排気蒸発炉224との間の導管を通して排気用HEPAフィルタ221に送られる(ステップS1002)。
ここで、排気蒸発炉224に備え付けられたヒータは、例えば、滅菌剤(過酸化水素)の沸点(過酸化水素の沸点は141度)よりも高い温度に加熱される。このため、排気蒸発炉224によって滅菌剤は全て気化されることとなる。
次に、演算処理部201は、排気用HEPAフィルタ221によって、排気蒸発炉224と排気用HEPAフィルタ221との間の導管を通って送られる気化した滅菌剤を清浄する。そして、清浄された気体(滅菌剤を含む)は、滅菌剤分解装置222と排気用HEPAフィルタ221との間の導管を通って、滅菌剤分解装置222に送られる。
滅菌剤分解装置222は、演算処理部201の制御下で、気体に含まれる滅菌剤の分子を分解して、分解して生成される分子を滅菌装置100の外に放出する(ステップS1003)。その後、演算処理部201は、図3に示すステップS315の処理に進む。
<図11の説明>
図11は、図2に示す滅菌装置100において、濃縮炉、弁、計量管、および気化炉を詳細に示すブロック図である。
なお、図11において、図2に示す構成要素と同一の構成要素について同一参照番号を付す。
前述のステップS804又はステップS829の処理において、演算処理部201は、液送ロータリーポンプ207を駆動して、カートリッジ205内の滅菌剤を所定量(例えば、2ミリリットル)吸い取って、当該吸い取った所定量の滅菌剤を濃縮炉208に入れる。
図11に示すように、濃縮炉208の下部にヒータが設けられており、ステップS806の処理において、このヒータの熱によって滅菌剤が加熱される。滅菌剤が過酸化水素水溶液の場合、このヒータの熱によって水が気化される。そして、気化した水は、気送加圧ポンプ209から導管を通して送り込まれる空気によって、排気用HEPAフィルタ221に導通している導管に押し出され、濃縮炉208内から排気される。これによって、滅菌剤(過酸化水素水溶液)が濃縮される。
図8Aおよび図8Bで説明したように、ステップS810で、濃縮炉208内の滅菌剤は計量管214内に入る。
図11に示すように、計量管214は、直管部1101と枝管部1102とを有している。直管部1101は、直線の管状の部分であり、重力方向に延在している。一方、枝管部1102は、直管部1101の中間部又は上部から枝状に延びた管状の部分である。直管部1101は、直管部の軸心と枝管部1102の軸心とが垂直になるように据え付けられる。
このような構成によって、濃縮炉208から入ってきた滅菌剤は、計量管214内の直管部1101に溜まることになる。ここでは、直管部1101において滅菌剤が溜まる部分を滅菌剤溜まり部1103という。そして、滅菌剤溜まり部1103は、濃縮炉208から入ってくる滅菌剤が入るために十分な空間を有している。
これによって、濃縮炉208から入ってきた滅菌剤は、滅菌剤溜まり部1103に溜まり、滅菌剤とともに濃縮炉208から入ってきた空気は、滅菌剤溜まり部1103に溜まっている滅菌剤の空間以外の空間に充満することとなる。つまり、滅菌剤の空間以外の空間は、枝管部1102内の空間と通じた空間であるため、ステップS811において、弁(V3)212および弁(V4)213を開けると、滅菌室219内にその空気が吸い取られることになる。
そして、ステップS814で弁(V2)を開けると、滅菌剤溜まり部1103に溜まっていた滅菌剤が、気化炉216に吸い込まれて、気化する。図11に示すように、気化炉216の上部から液体滅菌剤が気化炉216に入るので、滅菌剤は気化しやすい。
また、図11に示すように、吸気用HEPAフィルタ210と気化炉216との間の導管は、気化炉216の上部に備え付けられている。このため、ステップS819において、弁(V9)を開けると、空気(外気)が気化炉216の上部から気化炉216の下部にある滅菌室219に抜ける。
これによって、気化炉216の内部に付着している滅菌剤および気化炉216内の気化した滅菌剤を広範囲に取り除きやすくなって、その取り除いた滅菌剤を滅菌室219に流すことが可能となる。
<図12の説明>
図12は、図2に示す滅菌装置100で用いられる滅菌剤のカートリッジ205を横側からみた図である。
図12に示すカートリッジ205は、1つのボトルに滅菌処理を複数回行える量の滅菌剤が入ったカートリッジである。このカートリッジ205には、滅菌剤として用いられる過酸化水素などの薬液が格納される。
図12に示すように、カートリッジ205は、第1の容器と、当該第1の容器を塞ぐ蓋とを有している。第1の容器の外観は、コップの形状をしている。また、この第1の容器の材質(材料)は、例えば、滅菌剤である過酸化水素に対して耐性のあるポリプロピレン(プラスチック)である。この第1の容器は、後述する第2の容器を保護するためにも設けられている。
蓋は、第1の容器の上側に第1の容器を閉じるため蓋である。つまり、蓋は、第1の容器の外周淵に接着している。また、この蓋の材質は、例えば、滅菌剤である過酸化水素に対して耐性のあるポリプロピレン(プラスチック)である。
ここで、カートリッジ205の上側から見て、カートリッジ205の中心点におけるカートリッジ205の断面を断面1とする。
次に、図12に示すカートリッジ205の内部に滅菌剤を吸引するための抽出針(注射針)を挿入した際の構造について説明する。
<図13の説明>
図13は、図12に示すカートリッジ205の断面1を示す図である。
抽出針動作制御部203が演算処理部201の制御下で、抽出針(注射針)をカートリッジ205に向けて、カートリッジ205の上部から降ろすと、蓋の穴、キャップの穴に抽出針(注射針)が挿入される。この際、抽出針動作制御部203は、注射針が蓋の穴、キャップの穴を貫通して、第2の容器に下部に注射針の先端が来るように制御する。
図3で説明したステップS303においては、注射針をカートリッジ205に挿入することによって、カートリッジ205内の滅菌剤を抽出することが可能となるととともに、カートリッジ205を取り出すことができないようにすることができる。
<図14の説明>
図14は、図9に示すバルブパージング処理についてその一例を説明するためのフローチャートである。
なお、図14に示すバルブパージング処理は、図2に示す演算処理部201の制御下で行われる。つまり、演算処理部201が読み取り実行可能なプログラムを実行することによって、滅菌装置100の動作を制御して、バルブパージング処理を行う。
図示のように、バブルパージング処理は、第1のバルブパージング工程(バルブパージング工程1)から第6のバルブパージング工程(バルブパージング工程6)を有しており、演算処理部201の制御下で、順次バルブパージング工程1(ステップS1401)、バルブパージング工程2(ステップS1402)、バルブパージング工程3(ステップS1403)、バルブパージング工程4(ステップS1404)、バルブパージング工程5(ステップS1405)、およびバルブパージング工程6(ステップS1406)が行われる。
<図15の説明>
図15は、図14に示す第1のバルブパージング工程を説明するためのフローチャートである。
演算処理部201は、引き続き、気送真空ポンプ220を駆動して吸引を行っており、ステップS1501からS1507において、順次弁(V1)211、弁(V2)215、弁(V3)212、弁(V4)213、弁(V5)217、弁(V7)226、および弁(V9)227を閉じる。
そして、演算処理部201は、滅菌室219内が所定の圧力に達したか否かを判定する(ステップS1508)。滅菌室219内が所定の圧力に達しないと(ステップS1508において、NO)、演算処理部201は待機する。
一方、滅菌室219内が所定の圧力に達すると(ステップS1508において、YES)、演算処理部201は、弁(V5)217を開ける(ステップS1509)。
この際、気化炉216は真空状態である滅菌室219より高い圧力にある。このため、圧力差によって気化炉216から滅菌室219に強い空気の流れが生じて、弁(V5)217およびその導管に残留している滅菌剤の移動が促される。
一般に、弁の内部の構造には凹凸があり、その隙間に入り込んだ滅菌剤は蒸発しにくい。また、コストを低減させるため、弁および導管は加温していない。このため、弁および導管に付着した滅菌剤は蒸発しにくい。このように蒸発しにくい残留滅菌剤を、滅菌室に送り出すべく、吹き飛ばしによって除去することができる。
そして、滅菌室219に移動した滅菌剤は、気送真空ポンプ220によって滅菌剤分解装置222に吸い出される。
引き続いて、気送真空ポンプを駆動することによって、滅菌室219、弁(V5)217、気化炉216、およびそれらに接続されている導管内が真空となって、気圧低下によって沸点の低下した滅菌剤は徐々に蒸発し続ける。
続いて、演算処理部201は、弁(V5)217を開けた後、所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS1510)。所定の時間が経過しないと(ステップS1510において、NO)、演算処理部201は待機する。
一方、所定の時間が経過すると(ステップS1510において、YES)、演算処理部201は、滅菌室219内が所定の圧力以下となったか否かを判定する(ステップS1511)。滅菌室219内が所定の圧力以下とならないと(ステップS1511において、NO)、演算処理部201は待機する。
滅菌室219内が所定の圧力以下となると(ステップS1511において、YES)、演算処理部201は、第2のバルブパージング工程(バルブパージング工程2)に進む。
<図16の説明>
図16は、図14に示す第2のバルブパージング工程を説明するためのフローチャートである。
第2のバルブパージング工程(バルブパージング工程2)が開始されると、演算処理部201は、弁(V2)215を開ける(ステップS1601)。この際、計量管214は真空状態にある滅菌室219および気化炉216より高い圧力にある。このため、圧力差に起因して、計量管214から気化炉216に強い空気の流れが生じて、弁(V2)215およびその導管に残留している滅菌剤の移動が促される。
また、引き続いて、演算処理部201は気送真空ポンプの動作を継続しているので、気化炉216に移動した滅菌剤は、滅菌室219に移動し、滅菌室219に移動した滅菌剤は気送真空ポンプ220により排出される。
気送真空ポンプを動作させ続けることによって、滅菌室219、弁(V5)217、気化炉216およびそれらに接続されている導管は真空状態となって、気圧低下によって沸点の低下した滅菌剤は徐々に蒸発し続ける。
続いて、演算処理部201は、弁(V2)215を開けた後、所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS1602)。所定の時間が経過しないと(ステップS1602において、NO)、演算処理部201は待機する。
一方、所定の時間が経過すると(ステップS1602において、YES)、演算処理部201は、滅菌室219内が所定の圧力以下となったか否かを判定する(ステップS1603)。滅菌室219内が所定の圧力以下とならないと(ステップS1603において、NO)、演算処理部201は待機する。
滅菌室219内が所定の圧力以下となると(ステップS1603において、YES)、演算処理部201は、第3のバルブパージング工程(バルブパージング工程3)に進む。
<図17の説明>
図17は、図14に示す第3のバルブパージング工程を説明するためのフローチャートである。
第3のバルブパージング工程(バルブパージング工程3)が開始されると、演算処理部201は、弁(V1)211を開ける(ステップS1701)。この際、滅菌室219、気化炉216、および計量管214は真空状態であるのに対して、弁(V1)211によって接続された濃縮炉208は大気圧の状態にある。
このため、その圧力差によって濃縮炉208から計量管214に強い空気の流れが生じて、弁(V1)211およびその導管に残留している滅菌剤の移動が促される。その結果、滅菌室219に移動した滅菌剤は気送真空ポンプ220によって排出される。
気送真空ポンプの動作を継続することによって、滅菌室219、弁(V5)217、気化炉216、弁(V2)215、計量管214、弁(V1)211、およびそれらに接続されている導管にはエア(空気)が流れ続けて、当該経路に残留している滅菌剤の移動が促される。
続いて、演算処理部201は、弁(V1)211を開けた後、所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS1702)。所定の時間が経過しないと(ステップS1702において、NO)、演算処理部201は待機する。
一方、所定の時間が経過すると(ステップS1702において、YES)、演算処理部201は、滅菌室219内が所定の圧力以下となったか否かを判定する(ステップS1703)。滅菌室219内が所定の圧力以下とならないと(ステップS1703において、NO)、演算処理部201は待機する。
滅菌室219内が所定の圧力以下となると(ステップS1703において、YES)、演算処理部201は、第4のバルブパージング工程(バルブパージング工程4)に進む。
バルブパージング工程3においては、濃縮炉208から大気が導入され続けるが、濃縮炉208と弁(V1)211との間の導管は、その内径が、例えば、直径1mmと細く、物理的な配管抵抗が大きく、エア流量も少ないので、気送真空ポンプの排気量が十分に大きい場合には、滅菌室219内を所定の圧力以下とすることができる。
<図18の説明>
図18は、図14に示す第4のバルブパージング工程を説明するためのフローチャートである。
第4のバルブパージング工程(バルブパージング工程4)が開始されると、演算処理部201は、弁(V2)215を閉じる(ステップS1801)。そして、所定時間が経過すると、演算処理部201は、順次弁(V3)212および弁(V4)213を開ける(ステップS1802およびS1803)。
そして、演算処理部201は、気送真空ポンプ220の動作を継続して、弁(V3)212および弁(V4)213に、弁(V1)211および計量管214を経由したエアを流す。これによって、当該経路に残留している滅菌剤の移動が促される。
演算処理部201は、ステップS1803において弁(V4)213を開いてから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS1804)。所定の時間が経過しないと(ステップS1804において、NO)、演算処理部201は待機する。
一方、所定の時間が経過すると(ステップS1804において、YES)、演算処理部201は、滅菌室219内が所定の圧力以下となったか否かを判定する(ステップS1805)。滅菌室219内が所定の圧力以下とならないと(ステップS1805において、NO)、演算処理部201は待機する。
滅菌室219内が所定の圧力以下となると(ステップS1805において、YES)、演算処理部201は、第5のバルブパージング工程(バルブパージング工程5)に進む。
第5のバルブパージング工程においても、空気が導入され続けるが、濃縮炉208と弁(V1)211と間の導管は、その内径が、例えば、直径1mmと細く、物理的な配管抵抗が大きく、エア流量も少ないものとなる。このため、今回のように気送真空ポンプの排気量が十分に大きい場合には、滅菌室219を所定の圧力以下とすることができる。
<図19の説明>
図19は、図14に示す第5のバルブパージング工程を説明するためのフローチャートである。
第5のバルブパージング工程(バルブパージング工程5)が開始されると、演算処理部201は、順次弁(V1)211および弁(V5)217を閉じる(ステップS1901およびS1902)。その後、演算処理部201は、順次弁(V2)215および弁(V9)227を開ける(ステップS1903およびS1904)。
この際、演算処理部201は、気送真空ポンプ220の動作を継続して、弁(V9)227、弁(V2)215、弁(V3)212、および弁(V4)213にエアを流す。これによって、当該経路に残留している滅菌剤の移動が促される。
この場合、弁(V2)215にはバルブパージング工程1〜4とは逆向きにエアが流れるので、一方向のエアの流れでは移動しきれないような残留滅菌剤の移動を促す効果が期待できる。
演算処理部201は、ステップS1904において弁(V9)227を開いてから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS1905)。所定の時間が経過しないと(ステップS1905において、NO)、演算処理部201は待機する。
一方、所定の時間が経過すると(ステップS1905において、YES)、演算処理部201は、滅菌室219内が所定の圧力以下となったか否かを判定する(ステップS1906)。滅菌室219内が所定の圧力以下とならないと(ステップS1906において、NO)、演算処理部201は待機する。
滅菌室219内が所定の圧力以下となると(ステップS1906において、YES)、演算処理部201は、第6のバルブパージング工程(バルブパージング工程6)に進む。
<図20の説明>
図20は、図14に示す第6のバルブパージング工程を説明するためのフローチャートである。
第6のバルブパージング工程(バルブパージング工程6)が開始されると、演算処理部201は、順次弁(V1)211、弁(V2)215、弁(V3)212、弁(V4)213、弁(V5)、弁(V7)226、および弁(V9)227を閉じる(ステップS2001〜S2007)。そして、演算制御部201は、図9に示すステップS905の処理に進む。
図14から図20で説明したバルブパージング処理は、図6に示す換気工程において行われるが、バルブパージング処理を図6に示す滅菌前工程で行うようにしてもよい。
<図21の説明>
図21は、図7に示す滅菌前工程においてバルブパージング処理を行う際の一例を説明するためフローチャートである。
なお、図21において、図7に示す滅菌前工程と同一のステップについては同一の参照符号を付す。
滅菌前工程が開始されると、演算処理部201は、気送真空ポンプ220を駆動して、滅菌室219の気体を吸引する処理(つまり、滅菌室219の減圧)を開始する(ステップS701)。
続いて、演算処理部201は、図14〜図20で説明したバルブパージング処理を行う(ステップS904)。そして、演算処理部201は、前述のように、ステップS702において、滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(例えば、45パスカル)まで減圧されているか否かを判定することになる。
このようにして、滅菌前工程においてバルブパージング処理を行うと、次のような事態が発生した場合においても、各弁などの経路に付着した滅菌剤を効果的に取り除くことができる。
1)滅菌前工程の途中で停電などによって異常終了が生じて、配管および計量管などに滅菌剤が残留している場合における滅菌剤の除去。
2)結露によって、配管および計量管などに滅菌剤および水分が残留している場合における水分および滅菌剤の除去。
3)その他の理由によって前回の換気工程において十分にバルブパージングされなかった場合における滅菌剤の除去。
<図22Aおよび図22Bの説明>
図22Aおよび図22Bは、図8Aおよび図8Bに示す滅菌工程においてバルブパージング処理を行う際の一例を説明するためフローチャートである。
なお、図22Aおよび図22Bにおいて、図8Aおよび図8Bに示す滅菌前工程と同一のステップについては同一の参照符号を付す。
滅菌工程が開始されると、演算処理部201は、図14〜図20で説明したバルブパージング処理を行う(ステップS904)。その後、演算処理部201は、ステップS801の処理に進んで、図8Aおよび図8Bで説明したようにして滅菌工程を行う。
このようにして、滅菌工程においてバルブパージング処理を行うと、次のような事態が発生した場合においても、各弁などの経路に付着した滅菌剤を効果的に取り除くことができる。
4)滅菌処理の途中で停電などによって異常終了が生じて、配管および計量管などに滅菌剤が残留している場合における滅菌剤の除去。
5)結露によって、配管および計量管などに滅菌剤および水分が残留している場合における水分および滅菌剤の除去。
6)その他の理由によって前回の換気工程において十分にバルブパージングされなかった場合における滅菌剤の除去。
なお、滅菌工程において、ステップS801からS827の処理は所定回数繰り返される。そして、この繰り返し毎にバルブパージング処理を行えば、配管および計量管などに残留している滅菌剤の量が低減されることになって、より滅菌効果を向上させることができるばかりでなく、滅菌処理に係る精度を向上させることが可能となる。
以上の説明から明らかなように、本発明の実施の形態では、医療器具などの滅菌対象物を滅菌するための滅菌剤の供給経路などに残留する残留滅菌剤を効果的に取り除くことができるという効果がある。
なお、図1に示す例においては、弁機構とは弁および導管を含むものであり、経路とは複数の弁および導管を含むものである。また、ここでは、演算制御部201が制御手段として機能して、滅菌装置100を制御する。そして、少なくとも濃縮炉208(濃縮部)、計量管214(計量部)、および気化炉216(気化部)は供給手段として機能し、気送真空ポンプ220は減圧手段として機能することになる。さらに、滅菌室219(滅菌部)には前述のように、医療器具などの滅菌対象物が収納される。
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
例えば、上記の実施の形態の機能を滅菌方法として、この滅菌方法を滅菌装置に実行させるようにすればよい。また、上述の実施の形態の機能を有するプログラムを滅菌装置が備えるコンピュータに実行させるようにしてもよい。なお、制御プログラムは、例えば、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録される。
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。つまり、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種の記録媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPUなど)がプログラムを読み出して実行する処理である。