JP6276049B2 - 造形物およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、造形物およびその製造方法に関する。
三次元の立体物を造形する手法としては、特許文献1にあるようなシート積層法のほか、溶融物堆積法(FDM:Fused Deposition Molding)、インクジェット法、インクジェットバインダ法、光造形法(SL:Stereo Lithography)、粉末焼結法(SLS:Selective Laser Sintering)などが知られている。
中でも、インクジェット法として、3Dプリンターによって紫外線硬化性樹脂を噴射しパターンを積層する方法が多用されている。この方法は、最終製品の外観内観のデザイン・機構等を三次元CADによってデータ化した後、コンピュータによって該データをスライスして薄板を重ね合わせるような多層型のパターンデータを作成し、紫外線硬化性樹脂をパターンデータに則してヘッドより噴射して積層することにより立体物を製造する。
また、このような手法を用いて造形した立体物に対して、加飾(模様や色)を施すことも知られている。
特開2003−71530号公報(2003年3月11日公開)
従来周知のインクジェット法による立体造形に関して、本願発明者が、造形用のインク、および加飾用のインク(例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の着色インク)をインクジェット法によって吐出したところ、加飾用のインクによって形成される層に不都合な凹凸や該層の内部に隙間が生じることがあることを見出した。
原因を追究したところ、加飾の内容によって加飾用のインクの吐出量にばらつきがあり、これに伴って加飾層のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさない場合があることがわかった。加飾(減法混色法による文字、画像等のカラー記録)の一例として着色を挙げると、着色層の色調を決定する着色インクは、その吐出量が色調によって異なることから、吐出量が比較的少ない場合には、着色層のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさない場合がある。そのようなインク充填密度の不足が、上述の凹凸や隙間を生じさせる原因となっていることを見出した。凹凸や隙間は、加飾による色調を損ない、また造形物の全体構造に悪影響をあたえるため、望ましくない。
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、所望の加飾を実現し、且つ、所望の形状を実現した造形物、およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明に係る造形物は、積層方式により形成された造形物であって、加飾層を有し、加飾インクのみでは上記加飾層のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさない箇所について、補填インクによって該加飾層のインク充填密度が補填されていることを特徴としている。
加飾インクのみで加飾層を形成すると加飾層のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさず加飾層に凹みが生じる場合や加飾層内に隙間が生じる場合がある。このような凹みや隙間は、造形物の製造過程において造形物を所望の形状に造形することができない事態を招く虞がある。しかしながら、本発明の上記の構成によれば、補填インクによって加飾層のインク充填密度が補填しているため、そのような凹みや隙間が生じない。したがって、所望の加飾を実現することができ、且つ、所望の形状の造形物を提供することができる。
また、本発明に係る造形物の一態様は、上記の構成に加えて、上記補填インクは、透明インクから形成されている。
上記の構成によれば、透明インクを用いるため、加飾層の加飾内容に影響せず、所望の加飾を実現した造形物を提供することができる。
本発明に係る造形物の製造方法は、上記の課題を解決するために、加飾層を有する造形物を積層方式によって製造する製造方法であって、加飾インクのみでは上記加飾層のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさない箇所について、補填インクによって該加飾層の密度を補填することを特徴としている。
加飾インクのみで加飾層を形成すると加飾層のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさず加飾層に凹みが生じる場合や加飾層内に隙間が生じる場合がある。このような凹みや隙間は、造形物の製造過程において造形物を所望の形状に造形することができない事態を招く虞がある。しかしながら、本発明の上記の構成によれば、補填インクによって加飾層のインク充填密度を補填するため、そのような凹みや隙間が生じない。したがって、所望の加飾を実現することができ、且つ、造形物の形状をち密に造形することができる。
本発明に係る造形物の製造方法は、上記の構成に加えて、上記加飾層の一部分を有した層を形成する層形成工程を含み、上記層形成工程によって形成された上記層の上に新たな上記層を形成することによって該層同士の上記加飾層の一部分が連なって上記加飾層を形成し、上記層形成工程では、加飾インクのみでは上記加飾層の一部分のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさない箇所について、補填インクによって該加飾層の一部分のインク充填密度を補填する。
上記の構成によれば、層形成工程において形成される加飾層の一部分に関して、インク充填密度が補填されるため、上述したような凹みや隙間が生じない層を形成することができる。
本発明によれば、所望の加飾を実現し、且つ、所望の形状を実現した造形物、およびその製造方法を提供する。
本発明に係る造形物の一実施形態の外形を示す斜視図である。 図1に示す切断線A−A´の断面図である。 図1に示す造形物の製造に用いるインクジェットヘッドのノズル孔側の模式図である。 図1に示す造形物の製造過程を示す図である。 図1に示す造形物の製造過程の途中の上面図である。 図1に示す造形物のメリットを説明するための該造形物の部分断面図である。 比較構成の造形物の部分断面図である。 本発明に係る造形物の変形例を示す斜視図である。 本発明に係る造形物の他の実施形態の断面図を示す斜視図である。 図9に示す造形物の製造に用いるインクジェットヘッドのノズル孔側の模式図である。 図9に示す造形物の製造過程を示す図である。 本発明に係る造形物の製造に用いるインクジェットヘッドの他の態様を示す模式図である。 本発明に係る造形物の製造に用いるインクジェットヘッドの他の態様を示す模式図である。 本発明に係る造形物の製造に用いるインクジェットヘッドの他の態様を示す模式図である。
本発明に係る造形物とその製造方法についての一実施形態を、図1から図8に基づいて説明する。なお、本発明に係る造形物は、複数の層を積層すること(積層方式)によって立体造形された構造物である。また、以下の実施形態では、造形物の製造方法としてインクジェット法を用いた形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、積層方式で造形するとともに造形物の表面を加飾(文字、画像等をカラーで記録)するあらゆるタイプの製造方法に適用することができる。
〔1〕造形物の構成
図1は、本実施形態の造形物50の外観を示した斜視図である。本実施形態の造形物50は、側面が湾曲して膨らんだ略円筒形状を有している。なお、本発明に係る造形物の形状、並びに本発明に係る製造方法によって製造される造形物の形状は、図1に示す形状に限定されるものではなく、例えば後述する六面体のほか、球型や中空構造やリング構造や蹄鉄型などあらゆる形状に適用することができる。
本発明の特徴的構成の一つとして、本実施形態では、造形物50の表層側(外周側)から内側(中心部側)に向かって、第2の透明層と、着色剤を含むインク(加飾インク)によって形成された着色層(加飾層)と、透明インクによって形成された第1の透明層と、光反射性を有するインクから形成された光反射層とがこの順番で形成されている点にある。図1は、造形物50の湾曲側面に、造形物50の最も表層側に位置する、透明インクから形成された第2の透明層4が見えた状態である。
図2は、図1に示す切断線A−A´における矢視断面図である。図2に示す造形物50の断面は、図1に示すXYZ座標系に関して、造形物50の中央位置においてXZ平面に沿った断面を出現させたものである。
図2に示す本実施形態では、一例として21枚の層50aをZ方向に積層することによって立体造形された造形物50を示している。なお、層数は21に限定されるものではない。
〔2〕積層される各層の構成
中段付近に在る1つの層50aのXY平面を、図5に示す。各層50aは、その外周側から中心側に向けて、第2の透明層の一部分54と、着色層の一部分53と、第1の透明層の一部分52と、光反射層の一部分51とがこの順で形成されている。つまり、本実施形態の造形物50は、造形物本体である光反射層1から表層側(外周側)に向けて、第1の透明層2と、着色層3と、第2の透明層4とがこの順でコーティングしていると換言することもできる。また、層50aの一層のZ方向(図の縦方向)の厚さは主に着色層3の減法混色による多色形成に適切な値で5μm〜50μmの範囲であり、例えば紫外線硬化型インクをインクジェット法で層形成する場合の好ましい範囲は10μm〜25μmである。
ここで、本実施形態では、光反射層1を造形物本体と見なすが、光反射層は造形物本体に属するものであってもそうでなくても良い。すなわち、光反射層とは別体の造形物本体或いは空洞が造形物の中心部に在り、その造形物本体(光反射性を有していなくても良い)から表層側(外周側)に向けて、光反射層と、第1の透明層と、着色層と、第2の透明層とがこの順で形成されていても良い。あるいは、芯部(光反射性を有していなくても良い)とその表面に形成された光反射層1とを造形物本体と見なしても良い。
図2に示すように複数の層50aがZ方向に積層されていることにより、各層50aの第2の透明層の一部分54が概ね造形物50の最外周表面方向に連なって、第2の透明層4を形成している。また、各層50aの着色層の一部分53が概ね造形物50の最外周表面方向に連なって、着色層3を形成している。また、各層50aの第1の透明層の一部分52が概ね造形物50の最外周表面方向に連なって、第1の透明層2を形成している。また、光反射層の一部分51が概ね造形物50の最外周表面方向に連なって、光反射層1を形成している。
また、このように配置することにより、造形物50の表面をX、Y、Zのあらゆる方向から見ても、第2の透明層、着色層、第1の透明層、光反射層の順となるので、減法混色により表現された色調を認識することができる。
なお、第1の透明層の一部分52のXY平面方向の寸法は、第1の透明層の一部分52が上下で接する着色層の一部分53の寸法よりも若干広めに設定することで、着色層3と光反射層1とを構成するインク同士の混じり合いの防止をより確実にすることができる。
また、第2の透明層の一部分54のXY平面方向の寸法は、第2の透明層の一部分54が上下で接する着色層の一部分53の寸法よりも若干広めに設定することで、着色層3の保護をより確実にすることができる。
造形物50のZ方向に沿った幅(以下、Z方向の厚さと記載する。Z方向の高さとも称することができる)は限定されるものではなく、層50aのZ方向の厚さ(高さ)も積層数等により適宜設定することができる。また、後述するように、本実施形態ではインクジェット法を用いて積層するため、その積層方法において実現可能な層50aのZ方向の厚さを考慮すれば良い。例えば後述する紫外線硬化型インクをインクジェット法で層形成する場合の層50aの厚さはインク滴の大きさに依り5μm〜20μmであるが、大型の造形物で解像度が要求されない場合は複数層を同じデータで積層してもよく、より大きなインク滴にすれば良いので、その場合、データ量の減少と造形速度の高速化が見込める。
〔3〕光反射層1(光反射層の一部分51)の構成
光反射層1(光反射層の一部分51)は、光反射性を有するインクによって形成された層であり、光反射層1の少なくとも着色層側の表面において可視光の全領域の光を反射することができる光反射性を有している。
光反射層1(光反射層の一部分51)は、具体的には、金属粉末を含んだインク、あるいは、白色顔料を含むインクから形成することができるが、白色インクから形成することが好ましい。白色インクから形成することにより、光反射層1において造形物の表層側から入った光を良好に反射し、減法混色による着色を実現することができる。
本実施形態では造形物本体が光反射層1によって構成されているが、光反射性を有していなくても良い別体の造形物本体の表面に光反射層1を形成する場合には、光反射層1の厚さ、すなわち図2に示す光反射層の一部分51の外周側から中心側方向に沿った幅(以下、光反射層1の厚さと記載する)は最小で5μm〜20μmとすることができる。なお、本発明はこの数値範囲に限定されるものではない。
〔4〕第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)の構成
第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)は、透明インクから形成される。
ここで、透明インクとは、単位厚さ当たりの光透過率が50%以上である透明層を形成することができるインクであれば良い。透明層の単位厚さ当たりの光透過率が50%を下回ると、光の透過が不都合に阻止されて、造形物が減法混色による所望の色調を呈することができないため望ましくない。また、好ましくは、透明層の単位厚さ当たりの光透過率が80%以上となるインクを用い、透明層の単位厚さ当たりの光透過率が90%以上となるインクを用いることがより好ましい。
光反射層1(光反射層の一部分51)と、着色層3(着色層の一部分53)との間に第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)を配設することにより、着色層3を形成する着色インクと光反射層1を形成するインクとが混じり合うことを回避することができる。仮に、着色層を形成する着色インクが、第1の透明層を形成する透明インクと混じり合っても着色層の色は失われないので色調に不都合な変化を生じさせることはない。したがって、着色層3において所望の色調(加飾)を呈した造形物を実現することができる。
第1透明層の一部分52の外周側から中心側方向に沿った幅(以下、第1透明層の厚さと記載する)は、積層方向に垂直な面の加飾部分において最小で5μm〜20μmである。なお、本発明はこの数値範囲に限定されるものではない。
〔5〕着色層3(着色層の一部分53)の構成
着色層3(着色層の一部分53)は、着色剤を含む着色インクによって形成される。
着色剤を含むインク(以下、着色インクと記載することもある)としては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)、ブラック(K)、各々の淡色のインクが含まれるが、これに限定されるものではなく、赤(R)、緑(G)、青(B)や、オレンジ(Or)等を加えても良い。また、メタリックやパールや蛍光体色を使用することも可能である。所望の色調を表現するべく、これらの着色インクの1種類または複数種類を用いる。
ところで、着色層3(着色層の一部分53)を形成するために用いられる着色インクの量は、所望の(呈したい)色調によってばらつきがある。そのため、低濃度の明るい色調の場合は着色インクのみでは着色層3のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たすに至らず、Z方向の高さに凹凸が形成される場合や、X、Y方向に沿った途中に着色インクが無い凹みが形成される場合がある。何れの場合も、本実施形態のように積層方式によって形成される造形物には不都合な凹凸を生じることになり、好ましくない。特に、図2に示す積層構造の真ん中付近の垂直な造形面では、誤差拡散法によるインク形成で、着色層3の一つの断面が縦横各々のインク滴二滴の計四滴の充填密度の場合で、着色インクの数は最大(最高濃度)で四滴、最小(濃度ゼロ、つまり白色)でゼロとなるので、最小の場合は四滴分の隙間の空間を形成してしまう場合があり、造形面からも色調面からも大きく品質を損なう。
そこで、本実施形態では、着色インクのみでは着色層3(着色層の一部分53)のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさない箇所について、補填インクによって着色層3(着色層の一部分53)のインク充填密度を補填することをおこなう。すなわち、着色層3(着色層の一部分53)を、着色インクと補填インクの合算の密度(インク滴の数)を一定となるように形成する。これにより、上述した凹みの発生を回避して、造形物50の形状をち密に造形することができる。
着色インクの吐出量、着色インクに構成される各色インクの着弾位置は予めわかっているため、これらを考慮すれば補填インクの補填量と補填位置(着弾位置)を判断することができる。該判断は、インクジェットヘッド装置10あるいは、図示しない他の制御装置においておこなうことができる。
また、補填インクによりインク充填密度を補填することにより、着色層3で形成される面が平坦になるために光沢感を持たせることができる。
補填インクは、着色層3(着色層の一部分53)に呈されるべき色調に悪影響を与えないインクであればよく、一例としては、第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)および第2の透明層4(第1の透明層の一部分54)において用いる透明インクを採用することができる。
着色層3の厚さ、すなわち、図2に示す着色層の一部分53の外周側から中心側方向に沿った幅(以下、着色層3の厚さと記載する)は、例えば5μm〜20μmとすることができる。
なお、本実施形態では着色層3に基づいて説明しているが、本発明は着色層に限定されるものではなく、加飾層であれば特に制限はない。
〔6〕第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)の構成
第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)は、第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)において説明した透明インクを用いて形成される。なお、第2の透明層4と第1の透明層2とは同一種の透明インクを用いても形成されても良く、異種の透明インクを用いても形成されても良い。
第2の透明層4の厚さ、すなわち、図2に示す第2の透明層の一部分54の外周側から中心側方向に沿った幅(以下、第2の透明層4の厚さと記載する)は、例えば10μm〜100μmとすることができる。
第2の透明層4は、着色層3の保護層として機能するだけでなく、積層方式を採用している本発明(本実施形態)において、造形物をち密に製造することを可能にするという優位な効果を奏する。
すなわち、仮に着色層3が造形物50の最表層を構成している場合、つまり図2に示す各層50aにおいて仮に着色層の一部分53が最も端部に位置している場合には、着色層3(着色層の一部分53)が精度よく形成できない虞がある。しかしながら、本実施形態のように造形物50の最表層に第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)が形成されていることにより、着色層3(着色層の一部分53)が精度よく形成されることから、第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)によって、所望の色調を呈することに寄与できる。
また、仮に着色層3が造形物50の最表層を構成している場合は、着色層3がむき出しになるので、擦れによる脱色や、紫外線による退色が起き易くなる。しかしながら、本実施形態のように造形物50の最表層に第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)が形成されていることにより、脱色や退色を防止することができる。
〔7〕造形物の製造方法
次に、本実施形態の造形物50を製造する製造方法について説明する。図3は、製造方法に用いるインクジェットヘッド装置10の下面を示した図である。図4は、本実施形態の造形物50を製造する過程での途中の状態を模式的に示した図である。
インクジェットヘッド装置10の下面には、大きく分けて3つのインクジェットヘッド11H〜13Hが搭載されている。図3に示すように、第1インクジェットヘッド11Hと、第2インクジェットヘッド12Hおよび第3インクジェットヘッド13Hとは、X方向に沿って配設位置がずれている。また、図3に示すように、第1インクジェットヘッド11Hと、第2インクジェットヘッド12Hと、第3インクジェットヘッド13Hとは、Y方向に沿って配設位置がずれている。つまりインクジェットヘッド11H〜13Hは、いわゆるスタガ配列で並んでいる。
第1インクジェットヘッド11Hには、シアンインクを吐出するシアンインク用ノズル10(C)と、マゼンタインクを吐出するマゼンタインク用ノズル10(M)と、イエローインクを吐出するイエローインク用ノズル10(Y)と、ブラックインクを吐出するブラックインク用ノズル10(K)とが設けられている。なお、各ノズル10(C)、10(M)、10(Y)および10(K)の配列順や数は図3に示すものに限定されない。これらノズルから吐出されるインクは何れも図2に示す着色層3(着色層の一部分53)を形成するために用いる着色インクである。
第2インクジェットヘッド12Hには、白色インク(W)を吐出する白色インク用ノズル10(W)が設けられている。この白色インク(W)は、図2に示す光反射層1(光反射層の一部分51)を形成するために用いるインクである。
第3インクジェットヘッド13Hには、透明インク(CL)を吐出する透明インク用ノズル10(CL)が設けられている。この透明インク(CL)は、図2に示す第1の透明層2(第1の透明層の一部分52)および第2の透明層4(第2の透明層の一部分54)を形成するために用いるインクである。
インクジェットヘッド装置10は図3に示す下面を形成中の層50aに対向させるように設けられている。また、インクジェットヘッド装置10はX方向に往復移動することができ、その移動中にインクを吐出する。また、インクジェットヘッド装置10をXYZ座標系において所定の方向に移動させるか、層50aが載せられている形成台(形成台の形成面Bを図4に図示)のほうをXYZ座標系において所定の方向に移動させるかによって、インクジェットヘッド装置10と、形成途中の層50aとの相対位置を変化させる。移動は、どちらがおこなっても良い。
ここで、各インクは、紫外線硬化性を有するインクである。したがって、吐出後のインクに対して紫外線を照射する必要がある。紫外線照射器は、インクジェットヘッド装置10に搭載されていても良いし、別体で構成されていても良い。紫外線が照射されることによってインクが硬化して、最終的に図2に示す各層50aが形成される。
以下に、図4を用いて、このインクジェットヘッド装置10を用いておこなう造形物50の製造過程を説明する。
まず、最初の層50a(第1の層50a(1)と記載する)を形成台の形成面Bに形成する。
この第1の層50a(1)の形成(製造)工程では、インクジェット法を用いて、インクジェットヘッド装置10から各インクを所定のタイミングで吐出して、第1の層50aの端部側から中心側に向かって、第2の透明層の一部分、着色層の一部分と、第1の透明層の一部分と、光反射層の一部分とをこの順番で含むように形成する。
第1の層50a(1)の形成(製造)工程について、図4(a)〜図4(c)を用いて具体的に説明する。
図4(a)に示すステップS1では、透明インクを用いて第2の透明層の一部分54を形成するとともに、透明インクを用いて第1の透明層の一部分52を形成する工程をおこなう。この工程では、インクジェットヘッド装置10をX軸に沿って正方向に移動させて、所定のタイミングで透明インクを図3に示す透明インク用ノズル10(CL)から吐出して、第2の透明層の一部分54となる位置、および第1の透明層の一部分52となる位置に着弾させて透明インクのインク溜まりを形成した後、インク溜まりに対して紫外線を照射してこれを硬化させる。これにより、図4(a)に示すように第1の透明層の一部分52および第2の透明層の一部分54が形成される。
続いて、図4(b)に示すステップS2では、インクジェットヘッド装置10をX軸に沿って負方向に移動させて、所定のタイミングで光反射性を有するインクとしての白色インク(W)を白色インク用ノズル10(W)から吐出してインク溜まりを形成し、これに紫外線を照射して硬化させる。これにより、図4(b)に示すように光反射層の一部分51が形成される。
続いて、図4(c)に示すステップS3では、インクジェットヘッド装置10をX軸に沿って正方向に移動させて、所定のタイミングで着色インクおよび補填インクからなる着色層形成用インクを両者のインクの合算量が一定となるように吐出して、紫外線硬化する。ここで所定のタイミングとは、ステップS1において形成した第1の透明層の一部分52と第2の透明層の一部分54との間の領域に着色層形成用インクを吐出できる位置に第1インクジェットヘッド11Hの各ノズルが在るタイミングである。このタイミングで予め決められた量のインク滴をインクジェット法を用いて吐出してインク溜まりを形成し、これに紫外線を照射することによって、硬化させる。これにより、図4(c)に示すように、第1の透明層の一部分52と第2の透明層の一部分54との間に、所望の色調を呈する着色層の一部分53が形成される。
このステップS1〜S3を経ることにより、第1の層50a(1)が完成する。第1の層50a(1)は、図5に示す層50aの上面図と同じ態様である。なお、ステップS1およびステップS2は順序を入れ替えても良い。また、ステップS2およびステップS3も順序を入れ替えても良い。
第1の層50a(1)が完成すると、次に、第1の層50a(1)の上に新たな層50a(第2の層50a(2)と記載する)を形成(積層)する。
ここで、本実施形態の造形物50は、図2に示すように、積層体の最も下段から中段にかけて積層する層50aのXY平面に沿ったサイズ(面積)が徐々に大きくなっている。このように断面に関して積層方向に沿ってサイズが大きくなるような形状の造形物50をインクジェット法を用いて製造する場合には、積層する上層50aの端部が、既に形成されている下層50aの端部よりも側方に飛び出した形となる。このように飛び出した構造を形成するためにはサポート材層を形成すれば良い。
図4(d)に第2の層50a(2)を形成するステップを図示しているが、第2の層50a(2)に含まれる着色層の一部分53(2)は、第1の層50a(1)の第2の透明層の一部分54(1)に重畳するように形成されている。このように第2の層50a(2)が第1の層50a(1)よりもXY平面に沿ったサイズ(面積)が大きいため、第2の層50a(2)の端部を構成する第2の透明層の一部分54(2)は、第1の層50a(1)の端部を構成する第2の透明層の一部分54(1)よりも側方に飛び出すかたちとなる。そこで、飛び出した部分を形成する際に飛び出した部分に堆積されるべきインクが飛び出した部分よりも下に落ちないように、第1の層50a(1)の第2の透明層の一部分54(1)よりも外側(側方側)にサポート材60を形成する。
サポート材60は、インクジェット法を用いて吐出するインクから形成することができることが好ましい。サポート材60は、その上に層が形成されても該層が落下しない程度の強度を有するが、最終的には造形物50には含まれない部分であるため除去可能なインクから構成される。サポート材60のインクも紫外線によって硬化(後工程で除去できる程度に硬化)するものや、水溶性のもので後工程で水で溶かして除去可能であることが好ましい。
このように層50aを積層する処理をX、Y方向に必要回数繰り返して一層を形成し、更にZ方向に積層を繰り返すことにより、図2に示す造形物50を製造することができる。なお、一層を形成するにあたっては、二次元の画像形成の公知のインターレイス走査をすることによってムラの少ない良好な造形や加飾が得られる。
本実施形態の製造方法では、透明インクを用いて第2の透明層の一部分54を形成する工程と、着色インクを用いて上記着色層の一部分53を形成する工程と、透明インクを用いて上記第1の透明層の一部分52を形成する工程と、光反射性を有するインクを用いて上記光反射層の一部分51を形成する工程とを含み、第1の透明層の一部分52を形成する工程と、第2の透明層の一部分54を形成する工程とをおこなった後に、着色インクを用いて着色層の一部分53を形成する工程をおこなって、第1の透明層の一部分52と第2の透明層の一部分54との間に着色層の一部分53を形成する。これにより、第2の透明層の一部分54が着色層の一部分53を形成する際に着色層を構成するインク溜まりの外堀として機能し、着色層を構成するインクが不都合に濡れ拡がる虞がなく、精度良く着色層の一部分53を形成することができる。
第2の透明層の一部分54が形成されることの更なるメリットについて、図6および図7を用いて説明する。図6は、図4(d)の図からサポート材を除いたものであり、本実施形態の造形物50の一部を示す。図7は、比較構成の造形物の断面図である。比較構成の造形物は、積層方式で形成されている点では本実施形態の造形物50と同じであるが、比較構成の各層は、本実施形態の造形物50における第1の透明層の一部分52および第2の透明層の一部分54に相当する部分が無い。すなわち、比較構成の造形物は、光反射層に着色層が直接コーティングされている態様である。この比較構成においても下層よりも上層のほうがXY平面に沿ったサイズ(面積)が大きい場合を仮定して、比較構成に生じる問題点を説明する。
図7に示す比較構成では、上層の端部が着色層152(2)によって構成されており、この着色層152(2)が、下層の端部に構成される着色層152(1)よりも側方に飛び出している。そのため、飛び出した部分を形成するために着色層を構成するためのインクを吐出したときに、インクが着色位置よりも下に落下する虞がある。
造形物の色調は着色層が呈するものであるから、着色層を構成するインクが落下してしまうと、造形物の色調が所定の色調から変わることに成りかねない。
一方、図6に示す本実施形態の造形物50は、各層50aの端部には第2の透明層の一部分54を形成する。図6において仮に第2の透明層の一部分54を構成するためのインクが落下したとしても、色調を決定するのは着色層であるため色調に影響を与えない。したがって、本実施形態によれば、所望の色調を呈する信頼性の高い造形物50を製造できる。
メリットは他にもある。例えば、第1の層50a(1)において第2の透明層の一部分54を形成すれば、第2の層50a(2)に含まれる着色層の形成可能範囲(形成許容領域)を広く確保できるというメリットがある。これにより、製造の精密性が多少緩くなり、製造効率の向上に寄与することができる。
なお、この形成可能領域を広く確保できるというメリットは、第2の透明層の一部分54を、着色層の一部分53よりも後に形成した場合であっても奏する。したがって、本発明には、第2の透明層の一部分54を、着色層の一部分53よりも後に形成する態様も含まれる。
また、本実施形態の造形物50は、着色層3の表面を第2の透明層4によってコーティングしたかたちとなるため、第2の透明層4は着色層3の保護層としての機能も有している。
なお、図4では、下層よりもXY平面に沿ったサイズ(面積)が大きい層を積層する場合を説明した。これは、図1の造形物50を上下に二分した場合の下半分の構造の製造に関するものであると言える。
図1の造形物を上下に二分した場合の上半分の構造の製造の際にも上述した製造方法は基本的に適用できるが、図2に示すように造形物50の上半分を製造する際には、下層の着色層よりも上層の着色層のほうが層50aの中心側に設けられており、上層の着色層の一部分53は、下層の第1の透明層の一部分52の上に重畳している。また、下層の着色層の一部分53の上には、上層の第2の透明層の一部分54が重畳している。
また、図2に示すように造形物50の上半分では、下層のほうが、積層する層よりもXY平面に沿ったサイズ(面積)が大きい。また、そのため、上層の着色層を構成するインクが落下する虞はほぼ無い。なお、この上半分を製造する際には、サポート材を形成しなくても良い。
なお、図2に示す本実施形態の造形物は、最下段とその近傍の層、および最上段とその近傍の層には、第1の透明層の一部分52、着色層の一部分53および第2の透明層の一部分54のみからなる層と、着色層の一部分53および第2の透明層の一部分54のみからなる層と、第2の透明層の一部分54のみからなる層とが積層されている。このような積層構造とすれば、造形物の全面が第2の透明層4と着色層3と第1の透明層2とに覆われた構造を実現することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば後述する図9に示す積層構造のように造形物の上面および下面には第2の透明層と着色層と第1の透明層が含まない構造としてもよい。
〔8〕変形例
(変形例1)
本実施形態の造形物50は、光反射層1の表面形状に沿って、第1の透明層2と、着色層3と、第2の透明層4とが形成されていると言える。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図8に示す造形物の形状であっても良い。
図8の(a)〜(d)に示す造形物の形状は、各層50a(図2)の端部が第2の透明層の一部分54であることを利用して、第2の透明層4の形状を、光反射層1の表面形状に沿わせた形状とせず、図8の(a)〜(d)にそれぞれ示すように第2の透明層4を、造形物(先述の実施形態における着色層3、第1の透明層および光反射層からなる構造物)を包含する所望の形状としても良い。
本変形例1のように第2の透明層4を造形物を包含する態様は、造形物が機械的に弱い構造物の場合に実施すると良い。すなわち、昆虫の場合の脚や羽、草花の茎や花弁などを造形する場合に有効である。生物や植物を標本や飾りとする場合は、三次元スキャナーで取り込んで造形することにより、生かしたままで自然に返すことができる。更には前述のサポート材が不要であるので、無駄な廃材が発生せず、自然に優しいシステムである。
図8の(a)に示す造形物は、第2の透明層4が六面体を構成し、その内部に着色層3、第1の透明層および光反射層からなる球体の構造を有している。図8の(a)に示す全体の構造は、図4と同様の製造方法を用いて製造することができる。
図8の(b)に示す造形物50は、着色層3、第1の透明層および光反射層からなる人形を、第2の透明層4が包含した構造を有しており、第2の透明層4が造形物全体を自立させることができる形状を有している据え置きタイプの造形物50である。この据え置きタイプの造形物50も、先述の実施形態において説明した製造方法を用いて製造(作製)することができる。
図8の(c)に示す造形物50は、着色層3、第1の透明層および光反射層からなる人形を、第2の透明層4が包含した構造を有しており、第2の透明層4の一部に穴70を形成したストラップタイプの造形物50である。例えば携帯電話に取り付けるストラップやキーホルダーとして実現される。穴70は、第2の透明層4で外形を形成すると同時に第2の透明層4の一部に穴を形成すれば良い。第2の透明層4に穴を形成すれば、着色層3、第1の透明層および光反射層からなる人形自体に穴をあけずに済む利点がある。
図8の(d)に示す造形物50は、着色層3、第1の透明層および光反射層からなる人形の上半身部分を、第2の透明層4が包含した構造を有しており、第2の透明層4の表面、または第2の透明層4の内部に、マーク、フレーム、または淡色等によって構成された装飾三次元画像71が施されている造形物50である。更に、この造形物50には、日付、人名、または場所名などの文字を記す文字エリア72が、第2の透明層4の表面、または第2の透明層4の内部に設けられている。装飾三次元画像71および文字エリア72も、第2の透明層4で外形を形成すると同時に形成すれば良い。なお、装飾三次元画像71および文字エリア72に限らず、第2の透明層4の表面または第2の透明層4の内部に形成されるのは、他の付加情報であってもよい。
なお、図8の(b)〜(d)では、一体の人形が第2の透明層4によって包含されているが、第2の透明層4によって包含される人形の数はこれに限定されるものではない。
なお、本発明に係る造形物がリング形状を有している場合、着色層は、リングの外周端部近傍に設けられているだけでなく、内周端部近傍にも設けることができる。要するに、造形物の表面に着色層を設けることができ、その着色層の上に第2の透明層を設けることができる。
また、本変形例のように第2の透明層4を所望の形状とするのではなく、上述の実施形態と同様に第2の透明層4は光反射層1の表面形状に沿わせた形状として形成しておき、得られた造形物を任意の形状の樹脂中に封入してもよい。
(変形例2)
本実施形態の造形物50は、第2の透明層4を最表層に形成しているが、本発明の目的は、着色層と光反射層との間に第1の透明層が形成されていれば達成できる。そのため、図9に示す断面図に示す造形物50´であっても、本発明の一実施形態とすることができる。以下に、本変形例2について、図9から図11に基づいて説明する。図9は、本変形例2の造形物50´の断面図であり、図2に対応している。図10は、本変形例2の造形物50´の製造に用いるインクジェットヘッド装置の下面を示す模式図である。図11は、本変形例2の造形物50´の製造過程を示す図である。
本変形例2の造形物50´と、上記実施形態の造形物50との相違点は、本変形例2の造形物50´には、実施形態の造形物50の最表層に形成された第2の透明層4が配設されておらず、着色層3が最表層を形成している点にある。
図9に示す本変形例2の造形物50´を構成する各層50´aは、実施形態の層50a(図2)の端部に配設されている第2の透明層の一部分54が設けられていない。
図9に示す造形物50´によっても、各層50´aに関して、着色層の一部分53と光反射層の一部分51との間に第1の透明層の一部分52が形成されているため、着色層の一部分53に含まれる着色インクと光反射層の一部分51を構成するインクとが混じり合うことを回避することができる。仮に、着色層の一部分53に含まれる着色インクが、第1の透明層の一部分52を構成する透明インクと混じり合っても着色層の一部分53の色調に不都合な変化を生じさせることはない。したがって、着色層において所望の色調を呈した造形物を実現することができる。
図9に示す造形物50´を製造する製造方法について説明する。図9に示す造形物50´は、例えば図10に示すインクジェットヘッド装置10´を用いて製造することができる。
図10に示すインクジェットヘッド装置10´の下面には、大きく分けて2つのインクジェットヘッド11H´および12H´が搭載されている。図10に示すように、第1インクジェットヘッド11H´と、第2インクジェットヘッド12H´とは、X方向に沿って配設位置がずれており、且つY方向に沿って配設位置がずれている。
第1インクジェットヘッド11H´は、図3に示した第1インクジェットヘッド11Hと同一である。
第2インクジェットヘッド12H´には、光反射層1(光反射層の一部分51)を形成するために用いるインクであるである白色インク(W)を吐出する白色インク用ノズル10(W)が設けられているほか、透明インク(CL)を吐出する透明インク用ノズル10(CL)が設けられている。
以下に、図11を用いて、このインクジェットヘッド装置10´を用いておこなう造形物50´の製造過程を説明する。
図11(a)に示すステップS1´では、透明インクを用いて第1の透明層の一部分52を形成するとともに、白色インク(W)を用いて光反射層の一部分51を形成する工程をおこなう。この工程では、インクジェットヘッド装置10をX軸に沿って負方向に移動させて、所定のタイミングで透明インクを透明インク用ノズル10(CL)から吐出し、また所定のタイミングで白色インク(W)を白色インク用ノズル10(W)から吐出して、それぞれを第1の透明層の一部分52となる位置、および光反射層の一部分51となる位置に着弾させてインク溜まりを形成した後、これを紫外線硬化させる。これにより、図11(a)に示すように第1の透明層の一部分52および光反射層の一部分51を形成することができる。
続いて、図11(b)に示すステップS2´では、インクジェットヘッド装置10をX軸に沿って正方向に移動させて、所定のタイミングで着色インクを含む着色層形成用インクを吐出して、着色層の一部分53となる位置に着弾させてインク溜まりを形成し、インク溜まりに紫外線を照射してこれを硬化させる。
このステップS1〜S2を経ることにより、或る層50´aが完成する。なお、上記実施形態において説明したサポート材60を本変形例2においても形成する。
図11(b)に示す層50´aが完成すると、ステップS1´〜S2´と同じ要領で、図11(b)に示す層50´aの上に新たな層50´aを形成するステップをおこなう。
具体的には、図11(c)に示すステップS3´では、ステップS1´と同じ要領で第1の透明層の一部分52および光反射層の一部分51を形成する。このステップS3´では、実施形態において説明したように下の層50´aよりも上の層50´aがXY平面に沿ったサイズ(面積)を大きく形成する必要がある。そこで、図11(c)に示すように、ステップS2´までで完成した下の層50´aに含まれる着色層の一部分53の上に、上の層50´aに含まれる第1の透明層の一部分52が重畳するように透明インクを着弾させる。これと同時に、下の層50´aに含まれる光反射層の一部分51および第1の透明層の一部分52の上に、上の層50´aに含まれる光反射層の一部分51が重畳するように、白色インク(W)を着弾させインク溜まりを形成し、これを紫外線硬化させる。
続いて、図11(d)に示すステップS4´では、ステップS1´と同じ要領で所定のタイミングで着色層形成用インクを吐出して、着色層の一部分53となる位置に着弾させてインク溜まりを形成する。所定のタイミングとは、下の層50´aに含まれる着色層の一部分53に重畳しない、上の層50´aに含まれる第1の透明層の一部分52の外側に着色層形成用インクを吐出できるタイミングである。形成されたインク溜りに紫外線を照射してこれを硬化させることにより、上の層50´aに含まれる着色層の一部分53が形成される。
このように層50´aを積層する処理を繰り返すことにより、図9に示す造形物50´を製造することができる。
(変形例3)
上記実施形態では図3に示すインクジェットヘッド装置10を用いて造形物50を製造し、上記変形例2では図10に示すインクジェットヘッド装置10´を用いて造形物50´を製造しているが、用いるインクジェットヘッド装置はこれらに限定されるものではなく、図12から図14にそれぞれ示すインクジェットヘッド装置を用いることも可能である。
図12は、インクジェットヘッド装置の変形例を示す図であり、図3および図10に対応している。図12に示すインクジェットヘッド装置10aでは、シアンインク用ノズル10(C)と、マゼンタインク用ノズル10(M)と、イエローインク用ノズル10(Y)と、ブラックインク用ノズル10(K)と、白色インク用ノズル10(W)と、透明インク用ノズル10(CL)とが、この順でX方向に配列して設けられている。
図13は、インクジェットヘッド装置の更に別の変形例を示す図であり、図3および図10に対応している。図13に示すインクジェットヘッド装置10bでは、白色インク用ノズル10(W)と、透明インク用ノズル10(CL)と、イエローインク用ノズル10(Y)と、マゼンタインク用ノズル10(M)と、シアンインク用ノズル10(C)と、ブラックインク用ノズル10(K)と、透明インク用ノズル10(CL)と、白色インク用ノズル10(W)とが、この順でX方向に配列して設けられている。
図14は、インクジェットヘッド装置の更に別の変形例を示す図である。図14に示すインクジェットヘッド装置10bは、X軸に沿って往復移動可能なキャリッジ21と、キャリッジ21に搭載された複数のノズル列と、キャリッジ21に搭載された紫外線照射器24a,24bとを備える。キャリッジ21をY方向に移動させて、ノズル列から紫外線硬化型インクを吐出するとともに、紫外線照射器24a,24bから紫外線を照射させる走査をおこなう。
複数のノズル列は、図14に示すようにX方向に沿って併設されており、X方向における紙面左側から紙面右側に向けて、シアンインク用ノズル列C、マゼンタインク用ノズル列M、イエローインク用ノズル列Y、ブラックインク用ノズル列K、白色インク用ノズル列W、および透明インク用ノズル列CLがこの順に配列されている。複数のノズル列各々は、キャリッジ21に搭載されているため、キャリッジ21の移動に伴うX方向への移動時に紫外線硬化型インクを吐出することが可能となっている。
図12、図13および図14では全てのノズルがX方向に配列して設けられているため、一回のX方向への移動で一層の全てのインクを吐出しての層形成も可能である。図14では一回のX方向への移動でインクの吐出と同時に紫外線照射もおこなわれるため、紫外線硬化型インクの場合での一層の硬化も吐出と同じタイミングでおこなうことができる。
[付記事項]
本発明の一態様に係る造形物50は、積層方式により形成された造形物50であって、着色層3を有し、着色インクのみでは上記着色層3のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさない箇所について、補填インクによって該着色層3のインク充填密度が補填されていることを特徴としている。
仮に着色インクのみで着色層を形成すると着色層のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさず着色層に凹みが生じる場合や加飾層内に隙間が生じる場合がある。このような凹みや隙間は、造形物の製造過程において造形物を所望の形状に造形することができない事態を招く虞がある。しかしながら、本発明の一態様に係る造形物50の構成によれば、補填インクによって着色層3のインク充填密度が補填しているため、そのような凹みや隙間が生じない。したがって、所望の色調(加飾)を実現することができ、且つ、所望の形状の造形物50を提供することができる。
また、本発明の一態様に係る造形物50は、上記の構成に加えて、上記補填インクは、透明インクから形成されていれば、着色層の色調に影響せず、所望の色調を実現した造形物を提供することができる。
本発明の一態様に係る造形物50の製造方法は、着色層3を有する造形物を積層方式によって製造する製造方法であって、着色層3を形成する工程を含み、該工程では、着色インクのみでは上記着色層3のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさない箇所について、補填インクによって該着色層3のインク充填密度を補填することを特徴としている。
仮に着色インクのみで着色層を形成すると着色層のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさず着色層に凹みが生じる場合や加飾層内に隙間が生じる場合がある。このような凹みや隙間は、造形物の製造過程において造形物を所望の形状に造形することができない事態を招く虞がある。しかしながら、本発明の一態様によれば、補填インクによって着色層3のインク充填密度を補填するため、そのような凹みや隙間が生じない。したがって、所望の色調(加飾)を実現することができ、且つ、所望の形状の造形物50を提供することができる。
本発明の一態様に係る造形物50の製造方法は、上記の構成に加えて、上記着色層の一部分53を有した層50aを形成する層形成工程を含み、上記層形成工程によって形成された上記層50aの上に新たな上記層50aを形成することによって該層50a同士の上記着色層の一部分53が連なって上記着色層3を形成し、上記層形成工程では、着色インクのみでは上記着色層の一部分53のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさない箇所について、補填インクによって該着色層の一部分53のインク充填密度を補填する。
上記の構成によれば、層形成工程において形成される着色層の一部分53に関して、インク充填密度が補填されるため、上述したような凹みや隙間が生じない層を形成することができる。
本発明は上述した実施形態および変形例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態および変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、実施形態および変形例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
本発明は、立体造形物の製造方法、並びにそれを実現するための製造装置に利用することができ、例えばフルカラーなど所望する加飾を施した立体造形物の提供を可能にする。
1 光反射層
2 第1の透明層
3 着色層(加飾層)
4 第2の透明層
10、10´、10a、10b インクジェットヘッド装置
10(Y) イエローインク用ノズル
10(C) シアンインク用ノズル
10(K) ブラックインク用ノズル
10(M) マゼンタインク用ノズル
10(CL) 透明インク用ノズル
10(W) 白色インク用ノズル
11H 第1インクジェットヘッド
12H 第2インクジェットヘッド
13H 第3インクジェットヘッド
21 キャリッジ
24a,24b 紫外線照射器
50 造形物
50a,50´a 層
51 光反射層の一部分
52 第1の透明層の一部分
53 着色層の一部分(加飾層の一部分)
54 第2の透明層の一部分
60 サポート材

Claims (7)

  1. 積層方式により形成された複数の層が積層された造形物であって、
    加飾層を有し、
    複数の層のうち二つ以上の層は、上記加飾層の一部分と光反射層の一部分との間に第1の透明層の一部分が形成され、
    加飾インクのみでは該加飾層のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさない箇所について、補填インクによって該加飾層のインク充填密度が補填されていることを特徴とする造形物。
  2. 上記補填インクは、透明インクから形成されていることを特徴とする請求項1に記載の造形物。
  3. 上記複数の層のうち二つ以上の層は、外周側から中心側に向けて第2の透明層と、上記加飾層と、上記第1の透明層と、上記光反射層とがこの順番で形成されている請求項1又は2に記載の造形物。
  4. 上記複数の層が積層されたものが、さらに任意の形状の樹脂中に封入されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の造形物。
  5. 上記加飾層、上記光反射層、上記第1の透明層及び上記第2の透明層を形成するインクが、紫外線硬化性インクである請求項に記載の造形物。
  6. 加飾層を有する造形物を複数の層を積層する積層方式によって製造する製造方法であって、
    上記層のうち少なくとも一層を、その外周側から中心側に向けて、第2の透明層の一部分と、上記加飾層の一部分と、光反射層の一部分とがこの順になるように形成し、複数の層のうち二つ以上の層を、上記加飾層の一部分と光反射層の一部分との間に第1の透明層の一部分を形成し、
    加飾インクのみでは上記加飾層のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさない箇所について、補填インクによって該加飾層のインク充填密度を補填することを特徴とする造形物の製造方法。
  7. 上記加飾層の一部分を有した層を形成する層形成工程を含み、
    上記層形成工程によって形成された上記層の上に新たな上記層を形成することによって該層同士の上記加飾層の一部分が連なって上記加飾層を形成し、
    上記層形成工程では、加飾インクのみでは上記加飾層の一部分のインク充填密度が所定のインク充填密度を満たさない箇所について、補填インクによって該加飾層の一部分のインク充填密度を補填することを特徴とする請求項6に記載の造形物の製造方法。
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