本発明の一実施形態に係る、三次元造形物の製造方法について説明するが、まずは、本実施形態において製造する三次元造形物、および当該三次元造形物を製造するための製造装置の概要を説明する。
(1)三次元造形物の概要
図1は、本実施形態において製造する三次元造形物5を示す図である。図1は、三次元造形物5の鉛直断面図である。
図1に示す三次元造形物5は、鉛直断面が楕円形を有する略楕円球形状を有している。なお、三次元造形物5の形状は、図1に示す形状に限定されるものではなく、例えば、六面体、球型、中空構造、リング構造または蹄鉄型等、あらゆる形状であってよい。
図1に示すように、三次元造形物5は、造形層1および光反射層2からなる造形本体部分と、着色層3からなる加飾部分と、透明層4からなる被覆部分とを有する。本図に示すように、三次元造形物5の表層側(外周側)から内側(中心部側)に向かって、透明層4、着色層3、光反射層2および造形層1がこの順番で形成されている。
本実施形態では、上述したように、造形層1および光反射層2を造形本体部分とみなし、この造形本体部分の表面を被覆する着色層3を加飾部分とみなし、この加飾部分の表面を被覆する透明層4を被覆部分とみなす。しかしながら、本発明は必ずしもこれに限定されるわけではない。例えば、被覆部分を設けずに三次元造形物5を構成してもよいし、透明層4も加飾部分とみなしてもよい。
造形層1、光反射層2、着色層および透明層4は、いずれも後述する本実施形態の製造装置を用いて、インクジェット法によりインクを吐出し、これを堆積することによって形成されている。
上記インクとしては、紫外線硬化型インクを用いることができる。紫外線硬化型インクを用いれば、短時間で硬化できるため、積層させることが容易であり、三次元造形物5をより短時間で製造することができるというメリットがある。紫外線硬化型インクは紫外線硬化型化合物を含む。紫外線硬化型化合物としては、例えば、紫外線の照射により重合する硬化型モノマーおよび硬化型オリゴマーが挙げられる。硬化型モノマーとしては、例えば、低粘度アクリルモノマー、ビニルエーテル類、オキセタン系モノマーまたは環状脂肪族エポキシモノマー等が挙げられる。硬化オリゴマーとしては、例えば、アクリル系オリゴマーが挙げられる。
なお、本発明は紫外線硬化型インクに限定されるものではなく、例えば熱可塑性インクを用いることができる。熱可塑性インクを用いれば、吐出された加熱インクが室温に冷却することによって硬化する。このとき、より短時間で硬化させるために強制的に冷却する手法を用いてもよい。
三次元造形物5は、図1に示すように、単位層を、インクジェット法を用いて複数積層する積層方式によって立体造形された構造体である。なお、図面には、積層方向(第1方向)に沿った軸をZ軸とする座標系を示している。この座標系において、各単位層は、それぞれXY軸平面に沿って広がっている。なお、積層する単位層の総数には特に制限はない。
上述したように、中心部にある造形層1から、表層側に向かって、光反射層2と、着色層3と、透明層4とがこの順で造形層1をコーティングした三次元造形物5を、図1のようにZ方向に複数の層にスライスした形で得られる各単位層には、その積層位置に応じて、造形層1の一部分、光反射層2の一部分、着色層3の一部分または透明層4の一部分を含む。
具体的には、図1に示すように、複数の単位層のうち、最下位置に在る単位層と、最上位置に在る単位層を、透明層4の一部分のみからなる層とする。そして、これらの単位層が対向している領域側(内側)にそれぞれ、透明層4の一部分が着色層3の一部分の外周に形成された単位層を配置する。さらにその内側に、外周端から中央に向かって透明層4の一部分、着色層3の一部分および光反射層2の一部分がこの順で形成された単位層を配置する。さらにその内側に外周端から中央に向かって透明層4の一部分、着色層3の一部分、光反射層2の一部分および造形層1の一部分がこの順で形成された単位層を配置する。
そして、インクジェット法を用いて最下位置に在る単位層からZ方向に向かって最後の最上位置に在る単位層に至るまでを積層方式で形成することによって、図1に示す積層構造を実現することができる。なお、これら各種の単位層の配置数は図1に示したものに限定されるものではない。また、図1に示す三次元造形物5を積層方式によって立体形成するものであれば、各単位層の構成は上述したものに限定されない。
図1に示すように複数の単位層がZ方向に積層されていることにより、各単位層の透明層4の一部分が概ね三次元造形物5の最外周表面方向に連なって、透明層4を形成している。また、着色層3の一部分を含んでいる各単位層の着色層3の一部分が概ね三次元造形物5の最外周表面方向に連なって、着色層3を形成している。また、光反射層2の一部分を含んでいる各単位層の光反射層2の一部分が積層されて光反射層2を形成している。また、造形層1の一部分を含んでいる各単位層の造形層1の一部分が積層されて造形層1を形成している。
(2)三次元造形物の各層
以下には、本実施形態において、製造する三次元造形物5の各層について説明する。
造形層1は、造形本体部分の中心構造をなす層であり、モデル材によって形成される。また、光反射層2は、光反射性を有するインクによって形成された層であり、光反射層2の少なくとも着色層3側の表面において可視光の全領域の光を反射することができる光反射性を有している。光反射層2は、具体的には金属粉末を含んだインク、あるいは白色顔料を含むインクから形成することができるが、白色インクから形成することが好ましい。白色インクから形成することにより、光反射層2において三次元造形物5の表層側から入った光を良好に反射し、減法混色による着色を実現することができる。なお、モデル材を白色インクとし、造形層1と光反射層2とを同じインクで構成してもよい。
着色層3は、着色インク(着色材)および後述する透明インク(透明材)によって形成される。着色インクとしては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)、ブラック(K)、各々の淡色のインクが含まれるが、これに限定されるものではなく、赤(R)、緑(G)、青(B)、オレンジ(Or)等を加えてもよい。また、メタリック、パールまたは蛍光体色を使用することも可能である。所望の色調を表現するべく、これらの着色インクの一種類または複数種類を用いる。
最後に、透明層4は、透明インクから形成される。透明インクとは、単位厚さ当たりの光透過率が50%以上である透明層4を形成することができるインクであればよい。単位厚さとは、透明層4の最小寸法の厚みである。透明層4の単位厚さ当たりの光透過率が50%を下回ると、光の透過が不都合に阻止されて、三次元造形物5が減法混色による所望の色調を呈することができないため望ましくない。また、好ましくは、透明層4の単位厚さ当たりの光透過率が80%以上となるインクを用い、透明層4の単位厚さ当たりの光透過率が90%以上となるインクを用いることがより好ましい。
なお、透明層4を設けずに三次元造形物5を形成してもよいが、着色層3が三次元造形物5の最表層を構成している場合は、着色層3がむき出しになるので、擦れによる脱色または紫外線による退色が起きやすくなる。しかしながら、本実施形態のように三次元造形物5の最表層に透明層4が形成されていることにより、脱色または退色を防止することができるため、透明層4を設けておくことが好ましい。
(3)製造装置
図2は、本実施形態における、三次元造形物5の製造装置30(以下、製造装置30と記載する)の主要構成を示した図である。なお、図2には、製造途中の三次元造形物5も併せて図示している。
本実施形態の製造装置30は、造形本体部分と、その表面を加飾している加飾部分と、その表面を被覆している被覆部分とを含む三次元造形物5を、図1に示した積層構造体として積層方式により製造する装置である。本実施形態の製造装置30は、図2に示すように、記録ユニット10(印刷部)と、制御ユニット20と、基台40とを備えている。
(3−1)記録ユニット
記録ユニット10は、インクジェット法を用いて、上述したインクを吐出すると共に、吐出したインクを硬化させるためのユニットである。図3は、記録ユニット10の具体的構成を図示したものであり、記録ユニット10のインク吐出面(下面)を示している。記録ユニット10は、図3に示すように、キャリッジ11と、インクジェットヘッド12と、UV照射部13とを有している。
(3−1−1)キャリッジ
キャリッジ11は、Y軸に沿って往復移動可能であり、インクジェットヘッド12およびUV照射部13を搭載している。キャリッジ11の移動は、後述する制御ユニット20によって制御される。
(3−1−2)インクジェットヘッド
インクジェットヘッド12は、インクジェット法を用いて上述したインクを吐出する。具体的には、インクジェットヘッド12は、図3に示すように、第1インクジェットヘッドノズル部12Aと、第2インクジェットヘッドノズル部12Bと、第3インクジェットヘッドノズル部12Cとを有している。
第1インクジェットヘッドノズル部12Aは、図1に示した三次元造形物5の一部である造形本体部分(図1に示した造形層1および光反射層2)を形成するためのインクを吐出する。本実施形態では、当該インクとして、造形層1を形成するためのモデル材51と、光反射層2を形成するための白色インク52とを用いる。
そのため、第1インクジェットヘッドノズル部12Aには、モデル材51を吐出するモデル材用ノズル列MDと、白色インク52を吐出する白色インク用ノズル列Wとを有している。モデル材には、従来周知のモデル材を用いることができるが、白色インク用ノズル列Wから吐出する白色インク52、または後述する透明インク用ノズル列CLから吐出する透明インク54を用いることも可能である。
第2インクジェットヘッドノズル部12Bは、図1に示した三次元造形物5の一部である加飾部分(図1に示した着色層3)および被覆部分B(図1に示した透明層4)を形成するためのインクを吐出する。本実施形態では、当該インクとして、着色層3の一部を形成するための着色インク53(イエローインク、マゼンタインク、シアンインクおよびブラックインク)と、着色層3の一部および透明層4を形成するための透明インク54とを用いる。
そのため、第2インクジェットヘッドノズル部12Bには、イエローインクを吐出するイエローインク用ノズル列Yと、マゼンタインクを吐出するマゼンタインク用ノズル列Mと、シアンインクを吐出するシアンインク用ノズル列Cと、ブラックインクを吐出するブラックインク用ノズル列Kと、透明インク54を吐出する透明インク用ノズル列CLとが設けられている。
第3インクジェットヘッドノズル部12Cは、三次元造形物5には構成されない支持体を形成するためのインクを吐出する。本実施形態では、当該インクとして、支持体を形成するためのサポート材56を用いる。そのため、第3インクジェットヘッドノズル部12Cには、サポート材56を吐出するサポート材用ノズル列Sが設けられている。サポート材56には、水溶性の紫外線硬化樹脂等の従来周知のものを用いることができる。
なお、支持体とは、三次元造形物5には構成されないものであるが、三次元造形物5の形成過程において、モデル材51等を支持あるいは保持するためのものである。支持体は、三次元造形物5に構成されるものではない部分であるため、適当なタイミングで除去される。
第1インクジェットヘッドノズル部12Aに具備される複数のノズル列と、第2インクジェットヘッドノズル部12Bに具備される複数のノズル列と、第3インクジェットヘッドノズル部12Cに具備されるノズル例とは、記録ユニット10の走査方向(Y方向)に沿って配列している。すなわち、図3に示すように、イエローインク用ノズル列Yと、マゼンタインク用ノズル列Mと、シアンインク用ノズル列Cと、ブラックインク用ノズル列Kと、透明インク用ノズル列Tと、白色インク用ノズル列Wと、モデル材用ノズル列MDと、サポート材用ノズル列Sとが、この順でY方向に沿って配列している。
なお、各ノズル列は、図3に示すように複数のノズル孔をX方向に配列している。これら複数のノズル孔の一部のノズル孔のみからインクを吐出することがあってもよい。また、ノズル列の配列順または数も、図3に示すものに限定されない。
記録ユニット10は、これら複数のノズル列各々をキャリッジ11に搭載しているため、キャリッジ11の移動に伴うY方向への移動時に複数のノズル列からインクをZ方向に吐出(滴下)することが可能となっている。
(3−1−3)UV照射部12
UV照射部13は、インク硬化用の光源を有した複数の照射器13Aを有しており、これをキャリッジ11に搭載されている。具体的には、UV照射部13は、Y方向に沿って配列した3つの照射器13Aを有している。
キャリッジ11には、図3の紙面右側から左側に向かってY方向に沿って、照射器13A、第3インクジェットヘッドノズル部12C、第1インクジェットヘッドノズル部12A、照射器13A、第2インクジェットヘッドノズル部12Bおよび照射器13Aがこの順で配列している。このように、すべてのノズル列がY方向に配列して設けられているため、1回のY方向への移動で1つの単位層を構成するすべてのインクを吐出することが可能であると共に、吐出と同時に紫外線照射も行うため、吐出と硬化とを同じタイミングで行うことができる。なお、図3に示すように、キャリッジ11の左右いずれかの端部に、公知の平坦化ローラ14を配置する。平坦化ローラ14は、回転軸の軸線をX方向とし、単位層の上面で回転することによりZ方向の厚さを調整する。
なお、UV照射部13は1つの照射器13Aのみでも、すべてのインクを硬化させることができるが、Y方向において双方向に吐出を行う場合は、インクジェットヘッド12の両端に設けられていることが望ましい。
(3−2)制御ユニット20
制御ユニット20は、キャリッジ11の移動(走査)の制御、インクジェットヘッド12によるインク吐出の制御およびUV照射部13によるUV照射の制御等、各種部材の制御を行うユニットである。
三次元造形物5を製造する場合、図8に示したように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)のインクが有する減色特性の関係から、三次元造形物5を見る角度によって当該三次元造形物5の色が異なって見える場合がある。
そこで、本実施形態では、三次元造形物5を見る角度によって当該三次元造形物5の色が異なって見えることを回避するために、着色層3の画素配列に応じて、三次元造形物5の造形データを補正している。この処理は、制御ユニット20が有する造形データ受付部21、中間調処理部22、補正要否判断部23、補正画像データ作成部24および印刷制御部25によって行われる。
造形データ受付部21は、三次元造形物5の造形データ(加飾部分および被覆部分を形成するための入力データも含む)等を取得する。三次元造形物5の造形データとは、最終的に得たい三次元造形物5の形状寸法、模様および色等を三次元CADによってデータ化した後、当該データを一定間隔で単位層にスライスした多層型の画像データである。
なお、この三次元造形物5の形状データは、造形データ受付部21の外部から取得するものであってもよいし、造形データ受付部21に予め記憶されているものであってもよいし、あるいは造形データ受付部21の外部から取得した情報に基づいて造形データ受付部21が作成するものであってもよい。
中間調処理部22は、造形データ受付部21が取得した造形データを用いて中間調処理を行う。中間調処理とは、造形データを画素に分離して、各画素の階調を記録ユニット10によって再現できるようにする処理である。具体的には、中間調処理部22は、造形データの各単位層の画像データを画素に分離すると共に、RGBの画像データからCMYKの画像データに変換する。
ここで、中間調処理部22によって変換された画像データを図4の(a)に示す。図4の(a)では、説明の便宜上、単位層における2つの単位層の画像データを示している。図4の(a)に示すように、三次元造形物5の少なくとも着色層3は、下層の単位層および上層の単位層を重ねて所望の色が表現されるように形成されている。つまり、下層の単位層および上層の単位層各々を各種の着色インクで形成することにより、下層の単位層および上層の単位層の色が減法混色され、所望の色を表現することができる。
三次元造形物5の少なくとも着色層3は、少なくとも単位層の積層方向(Z方向;第1方向)および当該積層方向に直交する方向(Y方向;第2方向)各々に少なくとも2画素からなる画素ユニットを構成単位としている。本図では、Z方向およびY方向各々に2画素からなる画素ユニット(図中の斜線部分)を着色層3の構成単位としている。すなわち、着色層3は、下層の連続する少なくとも2つの画素と、当該2画素の上に位置する上層の連続する少なくとも2つの画素とからなる画素ユニットを構成単位としている。
補正要否判断部23は、中間調処理部22によって中間調処理が行われた各単位層の画像データを参照して、画像データの補正の要否、すなわち補正画像データの作成の要否を判断する。具体的には、補正要否判断部23は、各単位層の画像データを参照して、各画素ユニットにおけるY方向に並ぶ2画素が同じ色の着色インクで形成されているか否かを判断する。これは、図8の(b)〜(d)に示したように、各画素ユニットにおけるY方向に並ぶ2画素が同じ色の着色インクで形成されていると、三次元造形物5の上下の面を見たときと、側面を見たときとで当該三次元造形物5の色が異なって見えるためである。
そこで、各単位層の画像データにおいて、少なくとも1つの画素ユニットにおけるY方向に並ぶ2画素が同じ色の着色インクで形成されている場合は、補正要否判断部23は、補正画像データの作成が必要であると判断する。一方、各単位層の画像データにおいて、すべての画素ユニットにおけるY方向に並ぶ2画素が同じ色の着色インクで形成されていない場合は、補正要否判断部23は、補正画像データの作成が不要であると判断する。
例えば、図4の(a)の画像データでは、各画素ユニットにおけるY方向に並ぶ2組(上層および下層)の2画素のうち、一方(下層)の2画素が同じ色の着色インク(イエロー(Y)のインク)で形成されているため、補正要否判断部23は、補正画像データの作成が必要であると判断する。
補正要否判断部23による判断結果の情報は、中間調処理部22に送られる。中間調処理部22は、補正要否判断部23より補正画像データの作成が必要である旨の情報を受け取ると、中間調処理を行った各単位層の画像データを補正画像データ作成部24に送る。一方、中間調処理部22は、補正要否判断部23より補正画像データの作成が不要である旨の情報を受け取ると、中間調処理を行った各単位層の画像データを印刷制御部25に送る。
補正画像データ作成部24は、中間調処理部22より各単位層の画像データを受け取ると、各単位層の画像データを補正した補正画像データを作成する。詳細は後述するが、補正画像データ作成部24は、各単位層の画像データに基づき、各単位層の着色層3の各画素ユニットを、Y方向に並ぶ2画素を互いに異なる色の着色インクで形成、または当該2画素の一方を着色インク、他方を透明インクで形成される補正画素ユニットに補正した補正画像データを作成する。そして、補正画像データ作成部24は、作成した補正画像データを印刷制御部25に送る。
ここで、図4の(a)に示す画像データを補正画像データ作成部24によって補正した補正画像データを図4の(b)に示す。図4の(b)に示すように、補正画像データでは、各画素ユニットが、Y方向に並ぶ2組の2画素のうち、1組の2画素を互いに異なる色の着色インク(シアン(C)およびイエロー(Y)のインク)で形成され、もう1組の2画素の一方を着色インク(イエロー(Y)のインク)、他方を透明インク(T)で形成される補正画素ユニット(図中の斜線部分)に補正されている。
印刷制御部25は、補正画像データ作成部24から受け取った補正画像データ、または中間調処理部22から受け取った画像データに基づいて、インクジェットヘッド12によるインク吐出(具体的には、インクの吐出、その吐出量およびその吐出力等)を制御して各単位層を形成する。印刷制御部25は、インクジェットヘッド12によるインク吐出の制御と同時に、キャリッジ11の移動(走査)の制御を行う。また、印刷制御部25は、UV照射部13のUV照射を制御し、インクジェットヘッド12によって形成された単位層にインク硬化用の光を照射することにより、当該層を硬化させる。
(3−3)基台40
基台40は、記録ユニット10のインクジェットヘッド12から吐出されたインクを堆積させるプレート状のステージである。基台40上に、図3に示すように三次元造形物5が製造される。
基台40の上面に記録ユニット10の下面を対向配置し、上述したように、記録ユニット10をY方向に往復移動させてその移動中にインクを吐出させることにより、基台40の上面に沿って広がる層を最下位置の単位層として、複数層(本実施形態では全20層)積層することができる。
なお、本実施形態では、基台40の位置は固定されており、記録ユニット10のみが移動する態様について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録ユニット10と、基台40との相対位置が所定の方向に変化すればよいため、記録ユニット10がXYZ座標系において所定の方向に移動してもよいし、基台40をXYZ座標系において所定の方向に移動させてもよく、どちらがおこなってもよい。
(4)三次元造形物の製造方法
本実施形態に係る、三次元造形物5の製造方法について、図5および図6を参照して説明する。図5は、三次元造形物5の製造方法の流れを示すフロー図である。また、図6中の(a)〜(c)は、画素ユニットPの補正画素ユニットP’への補正方法を示す図である。
まず、制御ユニット20の造形データ受付部21は、造形データを取得し(ステップS1;以下、「S1」と略記する)、その造形データを中間調処理部22に送る。中間調処理部22は、造形データ受付部21が取得した造形データを用いて、各単位層の画像データを画素に分離すると共に、RGBの画像データからCMYKの画像データに変換する中間調処理を行う(S2)。
補正要否判断部23は、中間調処理部22によって中間調処理が行われた各単位層の画像データを参照して、補正画像データの作成の要否を判断する。具体的には、補正要否判断部23は、各単位層の画像データを参照して、各画素ユニットにおけるY方向に並ぶ2画素が同じ色の着色インクで形成されているか否かを判断する(S3)。
そして、少なくとも1つの画素ユニットにおけるY方向に並ぶ2画素が同じ色の着色インクで形成されている場合は(S3,YES)、補正要否判断部23は、補正画像データの作成が必要であると判断する。一方、すべての画素ユニットにおけるY方向に並ぶ2画素が同じ色の着色インクで形成されていない場合は(S3,NO)、補正要否判断部23は、補正画像データの作成が不要であると判断する。
補正要否判断部23による判断結果の情報は、中間調処理部22に送られる。中間調処理部22は、補正要否判断部23より補正画像データの作成が必要である旨の情報を受け取ると、中間調処理を行った各単位層の画像データを補正画像データ作成部24に送る。
補正画像データ作成部24は、中間調処理部22より各単位層の画像データを受け取ると、各単位層の画像データを補正した補正画像データを作成する。具体的には、補正画像データ作成部24は、各単位層の画像データに基づき、各単位層の着色層3の各画素ユニットを、Y方向に並ぶ2画素を互いに異なる色の着色インクで形成、または当該2画素の一方を着色インク、他方を透明インクで形成される補正画素ユニットに補正した補正画像データを作成する。
(4−1)補正方法
以下に、画素ユニットの補正画素ユニットへの具体的な補正方法について説明する。
補正画像データ作成部24では、各単位層の着色層3の各画素ユニットを、当該画素ユニットにおけるZ方向に並ぶ2組の2画素のうち、一方の組の2画素を互いに入れ替えた補正画素ユニットに補正する。これにより、補正画像データ作成部24では、各単位層の着色層3の各画素ユニットを、Y方向に並ぶ2画素を互いに異なる色の着色インクで形成、または当該2画素の一方を着色インク、他方を透明インクで形成される補正画素ユニットに補正している。
例えば、図6の(a)に示すような画素ユニットPの場合、Y方向に並ぶ2組の2画素のうち、一方の組の2画素が同じ色の着色インク(イエロー(Y)のインク)で形成されているため、画素ユニットPの補正が必要である。そこで、補正画像データ作成部24は、画素ユニットPを、当該画素ユニットPにおけるZ方向に並ぶ2組の2画素のうち、一方の組の2画素を互いに入れ替えた補正画素ユニットP’に補正している。
これにより、補正画素ユニットP’では、Y方向に並ぶ2組の2画素は、いずれも一方の画素が透明インク(T)で形成され、他方の画素がイエロー(Y)のインクで形成されている。
その結果、−Z方向に見たときは、図中左側の2画素の色、すなわちイエロー(Y)の色(RG)と、図中右側の2画素の色、すなわちイエロー(Y)の色(RG)とが合わさった色(RRGG)が見える。一方、−Y方向に見たときも、図中上側の2画素の色、すなわちイエロー(Y)の色(RG)と、図中下側の2画素の色、すなわちイエロー(Y)の色(RG)とが合わさった色(RRGG)が見える。
このように、画素ユニットPでは、−Y方向に見たときはRGWの色が見えていたが(図8の(b))、補正画素ユニットP’では、−Y方向に見たときはRRGGの色が見えるようになり、−Z方向に見たときおよび−Y方向に見たときのいずれからも同じ色が見える。
図6の(b)に示すような画素ユニットPの場合、Y方向に並ぶ2組の2画素が同じ色の着色インク(シアン(C)あるいはイエロー(Y)のインク)で形成されているため、画素ユニットPの補正が必要である。そこで、補正画像データ作成部24は、画素ユニットPを、当該画素ユニットPにおけるZ方向に並ぶ2組の2画素のうち、一方の組の2画素を互いに入れ替えた補正画素ユニットP’に補正している。
これにより、補正画素ユニットP’では、Y方向に並ぶ2組の2画素は、いずれも互いに異なる色の着色インク(シアン(C)およびイエロー(Y)のインク)で形成されている。
その結果、−Z方向に見たときは、図中左側の2画素の色、すなわちシアン(C)およびイエロー(Y)が減法混色された色(G)と、図中右側の2画素の色、すなわちイエロー(Y)およびシアン(C)が減法混色された色(G)とが合わさった色(GG)が見える。一方、−Y方向に見たときも、図中上側の2画素の色、すなわちシアン(C)およびイエロー(Y)が減法混色された色(G)と、図中下側の2画素の色、すなわちイエロー(Y)およびシアン(C)が減法混色された色(G)とが合わさった色(GG)が見える。
このように、画素ユニットPでは、−Y方向に見たときはGWの色が見えていたが(図8の(c))、補正画素ユニットP’では、−Y方向に見たときはGGの色が見えるようになり、−Z方向に見たときおよび−Y方向に見たときのいずれからも同じ色が見える。
また、図6の(c)に示すような画素ユニットPの場合、Y方向に並ぶ2組の2画素のうち、一方の組の2画素が同じ色の着色インク(イエロー(Y)のインク)で形成されているため、画素ユニットPの補正が必要である。そこで、補正画像データ作成部24は、画素ユニットPを、当該画素ユニットPにおけるZ方向に並ぶ2組の2画素のうち、一方の組の2画素を互いに入れ替えた補正画素ユニットP’に補正している。
これにより、補正画素ユニットP’では、Y方向に並ぶ2画素の1組は、互いに異なる色の着色インク(シアン(C)およびイエロー(Y)のインク)で形成されており、もう1組は、一方の画素がイエロー(Y)のインクで形成され、他方の画素が透明インク(T)で形成されている。
その結果、−Z方向に見たときは、図中左側の2画素の色、すなわちシアン(C)およびイエロー(Y)が減法混色された色(G)と、図中右側の2画素の色、すなわちイエロー(Y)の色(RG)とが合わさった色(RGG)が見える。一方、−Y方向に見たときも、図中上側の2画素の色、すなわちシアン(C)およびイエロー(Y)が減法混色された色(G)と、図中下側の2画素の色、すなわちイエロー(Y)の色(RG)とが合わさった色(RGG)が見える。
このように、画素ユニットPでは、−Y方向に見たときはGWの色が見えていたが(図8の(d))、補正画素ユニットP’では、−Y方向に見たときはRGGの色が見えるようになり、−Z方向に見たときおよび−Y方向に見たときのいずれからも同じ色が見える。
以上のように、補正画像データ作成部24は、各単位層の着色層3の各画素ユニットを、当該画素ユニットにおけるZ方向に並ぶ2組の2画素のうち、一方の組の2画素を互いに入れ替えた補正画素ユニットに補正した補正画像データを作成する(S4)。そして、補正画像データ作成部24は、作成した補正画像データを印刷制御部25に送る。
印刷制御部25は、補正画像データ作成部24から受け取った補正画像データに基づいて、インクジェットヘッド12によるインク吐出(具体的には、インクの吐出、その吐出量およびその吐出力等)を制御して各単位層を形成する(S5)。
一方、中間調処理部22が、補正要否判断部23より補正画像データの作成が不要である旨の情報を受け取ると、中間調処理を行った各単位層の画像データを印刷制御部25に送る。そして、印刷制御部25は、中間調処理部22から受け取った画像データに基づいて、インクジェットヘッド12によるインク吐出(具体的には、インクの吐出、その吐出量およびその吐出力等)を制御して各単位層を形成する(S6)。
以上のように、各画素ユニットにおけるY方向に並ぶ2画素が同じ色の着色インクで形成されていると、三次元造形物5を見る角度によって当該三次元造形物5の色が異なって見える。そこで、本実施形態では、補正画像データ作成部24が、各単位層の着色層3の各画素ユニットを、当該画素ユニットにおけるZ方向に並ぶ2組の2画素のうち、一方の組の2画素を互いに入れ替えた補正画素ユニットに補正している。
これにより、補正画素ユニットでは、Y方向に並ぶ2画素が互いに異なる色の着色インクで形成、または当該2画素の一方が着色インク、他方が透明インクで形成される。その結果、三次元造形物5の上下の面を見たときと、側面を見たときとで当該三次元造形物5を同じ色に見せることができる。
特に、補正画像データ作成部24は、中間調処理部22によって中間調処理を行った画像データを用いて、補正画像データを作成するため、補正画素ユニットでは、ほぼ確実に、Y方向に並ぶ2画素が互いに異なる色の着色インクで形成、または当該2画素の一方が着色インク、他方が透明インクで形成されることになる。その結果、三次元造形物5の上下の面を見たときと、側面を見たときとでより確実に当該三次元造形物5を同じ色に見せることができる。
(4−2)付記事項
上述したように、画素ユニットは、少なくとも単位層の積層方向(Z方向)および当該積層方向に直交する方向(Y方向)各々に少なくとも2画素からなる。したがって、以上では、Z方向およびY方向各々に2画素からなる画素ユニットを示したが、本発明は必ずしもこれに限定されるわけではない。例えば、画素ユニットは、Z方向およびX方向各々に3つ以上の画素から構成されていてもよい。
また、以上では、三次元造形物5の少なくとも着色層3は、Z方向およびY方向各々に少なくとも2画素からなる画素ユニットを構成単位とする構成を示したが、本発明は必ずしもこれに限定されるわけではない。例えば、三次元造形物5の少なくとも着色層3は、Z方向およびX方向各々に少なくとも2画素からなる画素ユニット、またはX方向およびY方向各々に少なくとも2画素からなる画素ユニットを構成単位としてもよい。あるいは、Z方向、X方向およびY方向各々に少なくとも2画素からなる画素ユニットを構成単位としてもよい。
あるいは、三次元造形物5において、Z軸を中心とした所定の角度の範囲では、Z方向およびY方向各々に少なくとも2画素からなる画素ユニットを構成単位とし、残りの角度の範囲では、Z方向およびX方向各々に少なくとも2画素からなる画素ユニットを構成単位としてもよい。このように、三次元造形物5上の位置に応じて構成単位とする画素ユニットを切り替えることにより、三次元造形物5の上下の面、側面および前後の面を見たときに当該三次元造形物5を同じ色に見せることができる。
また、以上では、補正画像データ作成部24は、着色層3の各単位層の画像データ全体に対して補正処理を行っているが、本発明は必ずしもこれに限定されるわけではない。例えば、補正画像データ作成部24は、着色層3の各単位層の画像データの一部に対して補正処理を行ってもよく、当該画像データの少なくとも一部に対して補正処理を行えばよい。
また、着色層3の単位層のうち、Y方向に並ぶ2画素が同じ色の着色インクで形成されている画素ユニットを含む単位層についてのみ補正処理を行ってもよい。あるいは、着色層3の各単位層の画素ユニットのうち、Y方向に並ぶ2画素が同じ色の着色インクで形成されている画素ユニットにのみ、補正処理を行うことも可能である。
なお、以上では、着色層3の画素ユニットに着色インクとしてシアン(C)およびイエロー(Y)のインクを用いる場合を例に挙げたが、本発明は、着色層3の画素ユニットに着色インクとしてマゼンタ(M)およびシアン(C)のインク、またはマゼンタ(M)およびイエロー(Y)を用いる場合も適用可能である。
ところで、補正要否判断部23は、各画素ユニットにおけるY方向に並ぶ2画素が同じ色の着色インクで形成されているか否かに応じて、補正画像データを作成するか否かを判断しているが、本発明は必ずしもこれに限定されるわけではない。例えば、各画素ユニットにおけるY方向に並ぶ2画素が異なる色の着色インクで形成されている場合でも、本発明の補正処理を行うことで三次元造形物5の上下の面を見たときの色と、側面を見たときの色とをより近い色に見せることができる場合は、本発明の補正処理を適用し得る。
(5)ソフトウェアによる実現例
製造装置30の制御ユニット20(特に、中間調処理部22、補正要否判断部23および補正画像データ作成部24)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、製造装置30は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
(6)まとめ
本発明の一態様に係る、三次元造形物5の製造方法は、造形本体部分(造形層1および光反射層2)および当該造形本体部分を覆う加飾部分(着色層3)を含む三次元造形物5の製造方法であって、少なくとも第1方向および当該第1方向に直交する第2方向各々に少なくとも2画素からなる画素ユニットから構成された上記加飾部分を、複数色の着色材(着色インク)および透明材(透明インク)を用いて形成する加飾部分形成工程を含み、上記加飾部分形成工程では、上記画素ユニットにおける上記第2方向に並ぶ2画素を互いに異なる色の上記着色材で形成、または当該2画素の一方を上記着色材、他方を上記透明材で形成して、上記加飾部分を形成する。
上記の方法によれば、加飾部分では、画素ユニットにおける第2方向に並ぶ2画素が互いに異なる色の着色インクで形成、または当該2画素の一方が着色インク、他方が透明インクで形成される。その結果、三次元造形物5の上下の面を見たときと、側面を見たときとで当該三次元造形物5を同じ色に見せることができる。
また、本発明の一態様に係る、三次元造形物5の製造方法においては、上記加飾部分形成工程では、上記画素ユニットにおける上記第1方向に並ぶ2組の2画素のうち、一方の組の2画素を互いに入れ替えた補正画素ユニットに基づき、上記加飾部分を形成する。
上記の方法によれば、補正画素ユニットでは、第2方向に並ぶ2画素を互いに異なる色の着色インクで形成、または当該2画素の一方を着色インク、他方を透明インクで形成することができる。
また、本発明の一態様に係る、三次元造形物5の製造方法においては、上記加飾部分形成工程では、上記複数色の着色剤および上記透明材を用いて形成され、上記画素ユニットを構成単位とする単位層を上記第1方向に沿って複数積層して、上記加飾部分を形成しており、上記単位層の画像データを用いて、中間調処理を行う中間調処理工程と、上記中間調処理が行われた上記画像データを用いて、上記画素ユニットを上記補正画素ユニットに補正した補正画像データを作成する補正処理工程とをさらに含み、上記加飾部分形成工程では、上記補正画像データに基づき、上記単位層を形成する。
上記の方法によれば、中間調処理を行った画像データを用いて、補正画像データを作成するため、補正画素ユニットでは、ほぼ確実に、第2方向に並ぶ2画素が互いに異なる色の着色インクで形成、または当該2画素の一方が着色インク、他方が透明インクで形成されることになる。その結果、三次元造形物5の上下の面を見たときと、側面を見たときとでより確実に当該三次元造形物5を同じ色に見せることができる。
また、本発明の一態様に係る製造装置30は、造形本体部分(造形層1および光反射層2)および当該造形本体部分を覆う加飾部分(着色層3)を含む三次元造形物5を製造するための製造装置30であって、少なくとも第1方向および当該第1方向に直交する第2方向各々に少なくとも2画素からなる画素ユニットから構成された上記加飾部分を、複数色の着色材および透明材を用いて形成する印刷部(記録ユニット10)と、上記画素ユニットにおける上記第2方向に並ぶ2画素を互いに異なる上記着色材で形成、または当該2画素の一方を上記着色材、他方を上記透明材で形成して、上記加飾部分を形成するように、上記印刷部を制御する制御部(制御ユニット20)とを備える。
上記の構成によれば、本発明の一態様に係る三次元造形物5の製造方法と同じ効果を奏することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。