本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、合成樹脂製のアウタ筒部材によって軽量化などを図ると共に、軸直角方向のばね定数を効率的に大きく設定しつつ、こじり方向のばね定数を有利に小さくすることができる、新規な構造の筒形防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
すなわち、本発明の第一の態様は、インナ軸部材に対して合成樹脂製のアウタ筒部材が外挿配置されて、それらインナ軸部材とアウタ筒部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結されている筒形防振装置において、前記インナ軸部材の軸方向中間部分には部分的に外径を大きくされた大径部が設けられて、該大径部に前記本体ゴム弾性体が固着されている一方、前記アウタ筒部材には内周面に開口する内周凹部が設けられて、該内周凹部の内面が軸方向外方に行くに従って次第に内周側へ傾斜する内テーパ面を備えていると共に、該本体ゴム弾性体の外周面も該内テーパ面に対応するテーパ状の外周面を備えており、該本体ゴム弾性体の該外周面に該アウタ筒部材の該内テーパ面が重ね合わされて該本体ゴム弾性体の軸方向外方への変形が制限された状態で固着されていると共に、該アウタ筒部材には外周面に開口する外周凹部が設けられて、該外周凹部の内面が軸方向外方に行くに従って次第に外周側へ傾斜する外テーパ面を備えており、該アウタ筒部材が防振連結対象部材の装着孔に嵌入されることにより、該アウタ筒部材の該外テーパ面が該装着孔の内周面で押圧されて該アウタ筒部材の軸方向外端部分が内周側に変形せしめられるのに伴って、該本体ゴム弾性体の軸方向外方への変形が該アウタ筒部材の傾斜した該内テーパ面によって抑えられつつ該本体ゴム弾性体の軸方向両側部分が予圧縮され得るようにしたことを、特徴とする。
このような第一の態様に従う構造とされた筒形防振装置によれば、アウタ筒部材の外周面に外テーパ面が設けられていることから、アウタ筒部材が防振連結対象部材の装着孔に嵌め入れられることによって、アウタ筒部材の軸方向外端部分が内周側に変形せしめられる。これにより、本体ゴム弾性体の軸方向外端部分が、アウタ筒部材で内周側に締め込まれると共に、本体ゴム弾性体の軸方向外方への弾性変形が、内周側へ変形したアウタ筒部材に抑え込まれて制限されることから、本体ゴム弾性体の軸直角方向のばね定数が大きく設定される。一方、インナ軸部材の大径部とアウタ筒部材の内周凹部との間に本体ゴム弾性体が固着されることで、こじり方向の入力に対して、本体ゴム弾性体において剪断ばね成分が支配的になることから、本体ゴム弾性体の変形制限によるばね定数の増大が抑えられる。それらによって、本体ゴム弾性体における軸直角方向のばね定数を大きく設定できると共に、こじり方向のばね定数を軸直角方向のばね定数に対して相対的に小さく設定することができて、ばね比のチューニング自由度が大きく確保される。
さらに、アウタ筒部材の内周面に内テーパ面を備える内周凹部が形成されていることから、アウタ筒部材の軸方向外端部分が内周側に変形する際に、本体ゴム弾性体の軸方向外側への弾性変形が内テーパ面で抑え込まれて制限される。これにより、本体ゴム弾性体の軸直角方向のばねを、アウタ筒部材の変形によって、より効率的に高めることが可能とされて、こじり方向のばねを軸直角方向のばね定数に対して相対的に小さく設定することができると共に、本体ゴム弾性体の変形態様の安定化が図られて、目的とする防振特性を安定して得ることができる。
しかも、アウタ筒部材に内テーパ面が予め形成されていることにより、アウタ筒部材の内周側への変形量が小さい変形初期においても、本体ゴム弾性体の軸方向外方への変形を有効に制限することができる。それ故、軸直角方向のばね定数をより効率的に大きく設定して、こじり方向のばね定数を軸直角方向のばね定数に対して相対的に小さくすることができると共に、所望の防振特性をより安定して得ることができる。
また、インナ軸部材に大径部が設けられていることから、アウタ筒部材の内周面に開口する内周凹部が形成されていても、本体ゴム弾性体の軸直角方向の自由長が、軸方向中間部分で必要以上に大きくなるのが回避されて、軸直角方向でのばねを硬く設定することができる。しかも、本体ゴム弾性体の軸直角方向の自由長が、軸方向中間部分と軸方向両端部分で著しく大きく異なるのを防ぐことにより、本体ゴム弾性体の軸方向両端部分に対する応力の集中的な作用が回避されて、耐久性の向上が図られる。
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された筒形防振装置において、前記インナ軸部材の前記大径部の外周面が球状湾曲凸面とされていると共に、前記装着孔に嵌入された前記アウタ筒部材の前記内周凹部の内面が該大径部の外周面に対応する湾曲断面で全周に亘って連続する環状湾曲凹面とされており、それら大径部の外周面と内周凹部の内面とが互いに対向して配置されているものである。
第二の態様によれば、こじり方向の入力に対して、本体ゴム弾性体がインナ軸部材とアウタ筒部材の間でより圧縮され難くなって、本体ゴム弾性体の剪断変形がより支配的となることから、こじり方向のばね定数をより小さく設定することができる。
また、アウタ筒部材の内周凹部の内面が環状湾曲凹面とされていることにより、装着孔への嵌入によるアウタ筒部材の変形時に、内周凹部の内面における応力の分散化が図られて、耐久性の向上が実現される。
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された筒形防振装置において、前記アウタ筒部材の前記外周凹部の内面が湾曲断面で全周に亘って連続する環状湾曲凹面とされているものである。
第三の態様によれば、アウタ筒部材の外周凹部の内面が、湾曲断面で周方向に延びる形状とされていることから、装着孔への嵌入によるアウタ筒部材の変形時に、外周凹部の内面における応力の分散化が図られて、耐久性の向上が実現される。
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか一つの態様に記載された筒形防振装置において、前記内周凹部が前記アウタ筒部材の軸方向の全体に亘って形成されて、該アウタ筒部材の軸方向両端部分の内周面が前記内テーパ面で構成されていると共に、該外周凹部が該アウタ筒部材の軸方向の全体に亘って形成されて、該アウタ筒部材の軸方向両端部分の外周面が前記外テーパ面で構成されているものである。
第四の態様によれば、内周凹部がアウタ筒部材の軸方向の全体に亘って形成されていることから、本体ゴム弾性体の外周面の全体が内周凹部の内面に固着されて、本体ゴム弾性体の外周面の軸方向端縁が内テーパ面に固着される。これにより、本体ゴム弾性体のアウタ筒部材に対する固着面積を大きく確保して、固着強度を大きく得ることができると共に、本体ゴム弾性体の軸方向外方への弾性変形が有効に制限されることで、軸直角方向での高ばね化と、こじり方向での低ばね化が、何れも有利に実現される。
また、外周凹部がアウタ筒部材の軸方向の全体に亘って形成されていることから、外周凹部の深さを確保しながら、外周凹部の内面の傾斜角度を小さく設定することができる。それ故、装着孔への装着によるアウタ筒部材の変形量を十分に確保できると共に、アウタ筒部材の局所的な大変形を防いで、アウタ筒部材の損傷を回避しながら、所定の変形を安定して実現することができる。
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか一つの態様に記載された筒形防振装置において、前記内周凹部の深さ寸法が前記外周凹部の深さ寸法よりも大きくされているものである。
第五の態様によれば、内周凹部の深さ寸法が大きく設定されることで、内周凹部の内面に固着される本体ゴム弾性体の外周端部が、軸方向外方に変形するのをより効果的に防ぐことができて、軸直角方向のばね定数を大きく設定すると共に、こじり方向のばね定数を軸直角方向のばね定数に対して相対的に小さくすることができる。
また、外周凹部の深さ寸法が内周凹部よりも小さく設定されることにより、装着孔への嵌入によるアウタ筒部材の変形量を必要以上に大きくすることなく、アウタ筒部材の変形によって外周凹部の内面を装着孔の内周面に当接させることができる。これにより、アウタ筒部材を軸方向の広い範囲で装着孔に嵌着させることができて、アウタ筒部材の装着孔への取付強度を確保できる。更に、アウタ筒部材が装着孔の内周面で拘束されることから、振動入力時のアウタ筒部材の変形が低減されて、アウタ筒部材の耐久性の向上も図られる。なお、好適には、装着孔への装着状態において、アウタ筒部材の外周面の略全体が装着孔の内周面に重ね合わされる。
本発明の第六の態様は、第一〜第五の何れか一つの態様に記載された筒形防振装置において、前記内周凹部の曲率が前記外周凹部の曲率よりも大きくされているものである。
本発明の第七の態様は、第一〜第六の何れか一つの態様に記載された筒形防振装置において、前記内周凹部の傾斜角度の平均値が前記外周凹部の傾斜角度の平均値よりも大きくされているものである。
第六又は第七の態様によれば、内テーパ面の傾斜角度が大きく設定されることで、本体ゴム弾性体の軸方向外側への変形が、内テーパ面によってより効果的に制限されて、軸直角方向のばね定数を効率的に大きくすると共に、こじり方向のばね定数を軸直角方向のばね定数に対して相対的に小さくすることができる。
また、外テーパ面の傾斜角度が、内テーパ面の傾斜角度よりも小さく設定されることにより、装着孔への嵌入によるアウタ筒部材の内周側への変形が有効に生ぜしめられて、軸直角方向のばね定数を大きく設定することができると共に、こじり方向のばね定数を軸直角方向のばね定数に対して相対的に小さくすることができる。更に、装着孔への装着状態において、外テーパ面が装着孔の内周面に当接され易くなって、アウタ筒部材が装着孔の内周面によって広い範囲で拘束されることにより、アウタ筒部材の耐久性の向上や装着状態の安定化などが図られる。
本発明の第八の態様は、第一〜第七の何れか一つの態様に記載された筒形防振装置において、前記インナ軸部材の外周面に前記本体ゴム弾性体が固着されていると共に、該本体ゴム弾性体の外周側に前記アウタ筒部材が射出成形されて、該本体ゴム弾性体が該アウタ筒部材の射出成形圧によって予圧縮されているものである。
第八の態様によれば、後成形されるアウタ筒部材の射出成形圧によって、本体ゴム弾性体が軸直角方向に予圧縮されることから、軸直角方向のばねが大きく設定されると共に、こじり方向のばねを軸直角方向のばね定数に対して相対的に小さくすることができる。特に、アウタ筒部材の射出成形圧は、本体ゴム弾性体における外周面の各部位に対して、法線方向へ及ぼされることとなる。それ故、本体ゴム弾性体における内テーパ面への固着部分では、軸方向内向きにも予圧縮されることから、本体ゴム弾性体の軸方向外方への変形がより効果的に制限されて、軸直角方向のばねをより大きく設定することができる。
しかも、本体ゴム弾性体の外周面を所定の形状とすることで、内周凹部を備えたアウタ筒部材の内周面を、金型を要することなく所定形状に成形可能であることから、アンダーカットによる金型の脱型不良を回避できる。
本発明によれば、アウタ筒部材の内周面に内テーパ面を備えた内周凹部が形成されていると共に、アウタ筒部材の外周面に外テーパ面を備えた外周凹部が形成されていることから、アウタ筒部材の装着孔への嵌入によって、本体ゴム弾性体を軸方向外方への変形を効果的に制限することができる。一方、インナ軸部材の大径部とアウタ筒部材の内周凹部の間に本体ゴム弾性体が固着されることで、こじり方向の入力に対して剪断ばね成分によってばね定数を小さくすることができる。それ故、軸直角方向のばね定数を大きく設定することができると共に、こじり方向のばね定数を軸直角方向のばね定数に対して相対的に小さく設定することができることから、ばね比のチューニング自由度を大きく得ることができる。
しかも、インナ軸部材に大径部が設けられていることから、アウタ筒部材に内周凹部が形成された構造において、軸方向中間部分で本体ゴム弾性体の自由長が必要以上に大きくなるのを防いで、軸直角方向のばね定数を大きく得ることができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明に従う構造とされた筒形防振装置の一実施形態として、自動車用のサスペンションブッシュ10が示されている。サスペンションブッシュ10は、インナ軸部材12に対してアウタ筒部材14が外挿配置されて、それらインナ軸部材12とアウタ筒部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有している。なお、以下の説明において、上下方向とは、特に説明がない限り、車両装着状態での鉛直上下方向となる図1中の上下方向を言う。
より詳細には、インナ軸部材12は、小径の略円筒形状を有しており、鉄やアルミニウム合金などの金属で形成されている。また、インナ軸部材12の軸方向中央部分には、外周側に突出する大径部18が一体形成されている。大径部18は、パイプ状のインナ軸部材12をバルジ加工によって部分的に拡径させて形成されており、本実施形態では、大径部18においてインナ軸部材12の内径寸法と外径寸法が何れも大きくなっている。更に、本実施形態では、大径部18の外周表面が、外周側に凸の球状湾曲凸面とされており、折れ点や折れ線の無い滑らかな形状とされている。
アウタ筒部材14は、インナ軸部材12よりも大径の略円筒形状とされており、硬質の合成樹脂で形成されている。アウタ筒部材14の形成材料としては、硬質の合成樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド(以下、PA)46、PA6、PA66、PA92、PA99、PA610、PA612、PA11、PA912、PA12、PA6とPA66の共重合体、PA6とPA12の共重合体、PA4T、PA6T、PAMXD6、PA9T、PA10T、PA11T、PA12T、PA13T等が、好適に採用され得る。特に、アウタ筒部材14の形成材料としては、耐加水分解性に優れたPA66が望ましい。なお、上記の形成材料は、単独で或いは2種以上を組み合わせて採用することができる。更に、上記の合成樹脂材料にガラス繊維等を加えて強度を増すことも可能である。また、アウタ筒部材14の形成材料は、熱可塑性の合成樹脂に限定されるものではなく、熱硬化性の合成樹脂も採用され得る。
さらに、アウタ筒部材14には、内周面に開口する内周凹部20が形成されている。内周凹部20は、略円弧状の湾曲断面で全周に亘って連続する環状湾曲凹面を内面とする凹所であって、軸方向中央に向かって次第に深さ寸法が大きくなっている。更に、本実施形態では、内周凹部20がアウタ筒部材14の軸方向全長に亘って形成されて、アウタ筒部材14の内周面の全体が、内周凹部20の内面で構成されている。更にまた、内周凹部20の内面には、軸方向外側に行くに従って次第に内周側に傾斜する内テーパ面22,22が設けられており、内周凹部20の内面における軸方向両端部分を含む全体が、内テーパ面22,22で構成されている。
更にまた、アウタ筒部材14には、外周面に開口する外周凹部24が形成されている。外周凹部24は、略円弧状の湾曲断面で全周に亘って連続する環状湾曲凹面を内面とする凹所であって、軸方向中央に向かって次第に深さ寸法が大きくなっている。更に、本実施形態では、外周凹部24がアウタ筒部材14の軸方向全長に亘って形成されて、アウタ筒部材14の外周面の全体が、外周凹部24の内面で構成されている。更にまた、外周凹部24の内面には、軸方向外側に行くに従って次第に外周側に傾斜する外テーパ面26,26が設けられており、外周凹部24の内面における軸方向両端部分を含む全体が、外テーパ面26,26で構成されている。なお、アウタ筒部材14は、内周凹部20と外周凹部24が形成されていることにより、軸方向中央に向かって次第に薄肉となっている。
本実施形態のアウタ筒部材14では、内周凹部20の深さ寸法(d1 )が、外周凹部24の深さ寸法(d2 )よりも大きく(d1 >d2 )されている。また、内テーパ面22と外テーパ面26が略同じ軸方向寸法で形成されていると共に、内テーパ面22の曲率が外テーパ面26の曲率よりも大きくされており、内テーパ面22の傾斜角度(θ1 )が、外テーパ面26の傾斜角度(θ2 )よりも大きく(θ1 >θ2 )されている。なお、θ1 が内テーパ面22の傾斜角度の平均値とされていると共に、θ2 が外テーパ面26の傾斜角度の平均値とされている。
なお、アウタ筒部材14の軸方向両側の端面28,28は、それぞれ、略軸直角方向に広がる平面とされており、略一定の径方向幅寸法で周方向環状に延びている。また、本実施形態では、図1に示す縦断面において、内テーパ面22の曲率が、インナ軸部材12の大径部18の曲率よりも小さくされている。
そして、インナ軸部材12にアウタ筒部材14が外挿された状態で、それらインナ軸部材12とアウタ筒部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結されることにより、サスペンションブッシュ10が形成されている。本体ゴム弾性体16は、全体として略円筒形状を有しており、内周面がインナ軸部材12の外周面に加硫接着されていると共に、外周面がアウタ筒部材14の内周面に固着されている。本体ゴム弾性体16は、インナ軸部材12の大径部18の全体を覆って固着されていると共に、アウタ筒部材14の内テーパ面22,22の略全体に亘って固着されている。
なお、本実施形態では、インナ軸部材12の外周に本体ゴム弾性体16を加硫成形した後で、本体ゴム弾性体16の外周にアウタ筒部材14を射出成形することにより、サスペンションブッシュ10が形成されている。これにより、アウタ筒部材14の内周面に開口する内周凹部20が、アンダーカットによる型抜きの困難化を招くことなく形成されると共に、アウタ筒部材14の射出成形圧によって、本体ゴム弾性体16に軸直角方向の予圧縮が施されている。特に、アウタ筒部材14の内周凹部20は、内面に内テーパ面22,22が形成されていることから、本体ゴム弾性体16には軸方向内向きの予圧縮も施されている。
さらに、本体ゴム弾性体16の軸方向両端部には、それぞれ、すぐり30が形成されている。すぐり30は、本体ゴム弾性体16の軸方向端面に開口して、周方向環状に連続して延びる溝状の凹所とされている。また、すぐり30の外周側の内面は、軸方向と略平行に広がる円筒面とされていると共に、径方向の位置がアウタ筒部材14の軸方向外端と略同じとされている。
このような構造とされたサスペンションブッシュ10は、図2に示すように、図示しない車両のサスペンション機構に装着される。即ち、図示しないサスペンションメンバに固定される略コの字断面を有するインナブラケット32が、インナ軸部材12の軸方向両端面に重ね合わされて、インナ軸部材12に挿通される取付ボルト34とナット35によってボルト固定されることにより、インナ軸部材12が車両ボデー側に取り付けられる。一方、防振連結対象部材としてのアッパアームやトーションリンクなどに設けられたアームアイ36の装着孔38に、アウタ筒部材14が嵌入されることにより、アウタ筒部材14が車輪側に取り付けられる。
ここにおいて、図2に示すように、アウタ筒部材14は、軸方向両端部分が内周側に変形せしめられた状態で、装着孔38に嵌入されて取り付けられている。即ち、アウタ筒部材14の軸方向外端の外径寸法が、装着孔38の内径寸法よりも大きくされており、図3に示すように、アウタ筒部材14を装着孔38に嵌入する際に、アウタ筒部材14の外テーパ面26が装着孔38の内周面に押し当てられることで、アウタ筒部材14の軸方向両端部分が内周側に押し込まれて変形するようになっている。なお、例えば、図3に二点鎖線で示すように、テーパ形状のガイドジグ40などを用いることによって、装着孔38よりも大径とされたアウタ筒部材14の外端部を、装着孔38の内径寸法以下まで縮径させながら、装着孔38に案内して嵌め入れることができる。
これにより、本体ゴム弾性体16の軸方向外方への変形が、アウタ筒部材14の軸方向両端部分によって制限されて、軸直角方向のばね定数が大きく設定されると共に、こじり方向のばね定数が軸直角方向のばね定数に対して相対的に小さく設定される。しかも、アウタ筒部材14の内周面には、内テーパ面22,22を備える内周凹部20が形成されていることから、アウタ筒部材14の変形前においても、本体ゴム弾性体16の軸方向外方への変形が予め制限されており、本体ゴム弾性体16の変形態様のばらつきを低減することで、目的とするばね特性を安定して得ることができる。
特に本実施形態では、内周凹部20の深さ寸法(d1 )が、外周凹部24の深さ寸法(d2 )よりも大きくされていることから、本体ゴム弾性体16の軸方向外方への変形を内周凹部20によって有効に制限しながら、外周凹部24の内面を装着孔38の内周面に当接状態で重ね合わせて、装着状態の安定化や耐久性の向上などが図られている。
さらに、内テーパ面22の傾斜角度(θ1 )が、外テーパ面26の傾斜角度(θ2 )よりも大きくされている。これにより、本体ゴム弾性体16の軸方向外方への変形が内テーパ面22,22によって有効に制限されると共に、装着孔38への取付けによるアウタ筒部材14の局所的な大変形が回避されて、耐久性の向上などが図られる。
さらに、外テーパ面26が軸方向外方に行くに従って外周側に傾斜していることから、軸方向に延びる円筒形状とされた装着孔38の内周面に、外テーパ面26が当接されることによって、アウタ筒部材14の軸方向外端部が、軸方向外側に行くに従ってより大きく内周側に変形される。これにより、内テーパ面22,22は、アウタ筒部材14の変形によって、縦断面における曲率がより小さくなるように湾曲せしめられる。なお、図2に示すサスペンションブッシュ10の車両への装着状態において、内テーパ面22,22の曲率が小さくされることで、本実施形態では、内テーパ面22,22がインナ軸部材12の大径部18の外周面と対応する略同心状の球状面とされて、それら内テーパ面22,22と大径部18の外周面とが互いに対向して配置されている。
なお、本実施形態では、アウタ筒部材14が装着孔38に嵌入されることにより、アウタ筒部材14の端面28,28が、内周側に向かって次第に軸方向内側に傾斜している。これにより、アウタ筒部材14の内周エッジの角度が比較的に大きく確保されることにより、アウタ筒部材14の耐久性が向上すると共に、軸直角方向の入力に対するアウタ筒部材14の耐荷重性の向上なども図られ得る。
このように、アウタ筒部材14が装着孔38への嵌入によって変形せしめられることにより、本体ゴム弾性体16の外周端部が、軸方向外方への変形を内テーパ面22,22によって制限されて、本体ゴム弾性体16の軸直角方向のばねが大きく設定される。一方、インナ軸部材12の大径部18の外周面が球状湾曲凸面とされていると共に、アウタ筒部材14の内周凹部20の内面が、大径部18の外周面に対応する環状湾曲凹面とされていることから、こじり方向の入力時に本体ゴム弾性体16における圧縮ばね成分が小さくなって、こじり方向のばねが軸直角方向のばね定数に対して相対的に小さくされる。これにより、サスペンションブッシュ10のばね特性のチューニング自由度が大きくされて、目的とする防振性能や支持性能を有利に実現できる。
さらに、本体ゴム弾性体16の外周端部の軸方向両端部は、アウタ筒部材14の内周側への変形によって軸直角方向に圧縮されることから、軸直角方向のばねを大きく得ることができる。しかも、本実施形態では、アウタ筒部材14を本体ゴム弾性体16の外周に後形成することから、アウタ筒部材14の射出成形圧によって本体ゴム弾性体16が軸直角方向に予圧縮されて、軸直角方向のばねをより大きく設定可能であると共に、耐久性の向上が図られている。
さらに、アウタ筒部材14の外周凹部24の内面が、湾曲断面で全周に亘って連続する環状湾曲凹面とされていることから、アウタ筒部材14の変形に際して、軸方向に応力の分散化が図られて、アウタ筒部材14の耐久性の向上が図られる。
また、本実施形態では、内周凹部20と外周凹部24が、それぞれアウタ筒部材14の軸方向全体に形成されて、アウタ筒部材14の軸方向端部の内周面が、内テーパ面22で構成されていると共に、アウタ筒部材14の軸方向端部の外周面が、外テーパ面26で構成されている。内周凹部20の深さ寸法を効率的に大きく設定できると共に、外周凹部24の内面の傾斜角度を小さく設定できて、外周凹部24の内面を装着孔38の内周面により広い範囲で接触させ易くなる。しかも、アウタ筒部材14の軸方向端部に内外テーパ面22,26が設定されることから、本体ゴム弾性体16のアウタ筒部材14への固着面積を確保しながら、本体ゴム弾性体16の軸方向外方への変形が、内外テーパ面22,26によって有効に制限される。
また、本体ゴム弾性体16の軸方向両端部に、それぞれ、すぐり30が形成されていることから、本体ゴム弾性体16の軸方向両端部が、アウタ筒部材14の内周側への変形によって局所的に大きく締め込まれるのを防いで、耐久性が確保される。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、内周凹部および外周凹部の内面は、必ずしも全体が湾曲形状とされている必要はなく、例えば、縦断面において直線的に延びる形状を組み合わせて構成されていても良い。また、内周凹部の内面を構成する内テーパ面と、外周凹部の内面を構成する外テーパ面は、何れも、軸方向で傾斜角度が漸変する湾曲形状に限定されず、軸方向に略一定の傾斜角度で広がる形状であっても良い。
また、内周凹部と外周凹部は、アウタ筒部材の軸方向全体に形成されている必要はなく、部分的に形成されていても良い。具体的には、例えば、内周凹部と外周凹部の少なくとも一方が、アウタ筒部材の軸方向中間部分に部分的に形成されており、アウタ筒部材の軸方向端部における内周面と外周面との少なくとも一方に、軸方向と略平行に広がるストレート部を設定することもできる。
また、インナ軸部材の内径寸法が一定とされて、例えば、インナ軸部材12の軸方向中間が部分的に厚肉とされることで、大径部が形成されていても良いし、略一定の内外径寸法を有する小径筒状のパイプの軸方向中間部分に、別体のストッパ部材を固定することによって、大径部を備えたインナ軸部材を二部品で形成することもできる。
また、大径部の外周面は、必ずしも球状湾曲凸面である必要はなく、例えば、大径部の外周面は、円筒形状であっても良い。
また、アウタ筒部材の少なくとも一方の軸方向端部の外周面に、軸方向外方に向かって次第に縮径されるガイドテーパが設定されて、ガイドテーパを設定されたアウタ筒部材の軸方向外端において、外径寸法が装着孔の内径寸法よりも小さくされている構造も採用され得る。これによれば、アウタ筒部材を装着孔に嵌入し易くなって、筒形防振装置の車両への装着作業が容易になる。なお、アウタ筒部材の軸方向両端部の内外周角部は、面取りされていても良い。
本発明の適用範囲は、サスペンションブッシュに限定されるものではなく、エンジンマウントやサブフレームマウント、ボデーマウント、デフマウント等にも適用され得る。更に、本発明は、自動車用の流体封入式防振装置だけに適用されるものではなく、自動二輪車や鉄道用車両、産業用車両等にも好適に適用される。