以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
(実施形態1)
「回路機能」
図1は、実施形態1に係わるレベルシフト回路を説明した図であり、(a)は回路構成図、(b)は電位関係図である。先ず、実施形態1に係わるレベルシフト回路10の機能を、図1を参照して説明する。
図1(a)に示す様に、本実施形態に係わるレベルシフト回路10は、入力信号が入力される入力部INと、電位変換部18と、バッファー部13と、出力信号が出力される出力部と、を備えている。バッファー部13は第一インバーター回路INV1と第二インバーター回路INV2とを備えている。出力部は第一出力部OUT1と第二出力部OUT2とを含んでおり、第一出力部OUT1からは第一出力信号が出力され、第二出力部OUT2からは第二出力信号が出力される。第一出力信号は入力信号の論理が反転した高振幅の信号であり、第二出力信号は入力信号と同じ論理の高振幅の信号である。レベルシフト回路10とは、不図示の低電圧系回路からの論理信号を不図示の高電圧系回路に適する論理信号に変換する回路であり、出力信号としては、第一出力信号又は第二出力信号、或いはこれらの信号を更に他のインバーター回路やバッファー回路にてその駆動能力が向上された信号、となる。
レベルシフト回路10への入力信号は、低電圧系回路(例えば、半導体集積回路にて構成される外部制御回路)にて生成され、図1(b)に示す様に、第1電位V1と第2電位V2との間の値となる。第1電位V1は低電圧系回路で使用される二つの電源電位(正電源電位と負電源電位)の一方であり、第2電位V2は低電圧系回路で使用される二つの電源電位(正電源電位と負電源電位)の他方である。本実施形態では、第1電位V1は低電圧系回路の負電源電位(低電圧系負電源電位VSSと称す)であり、第2電位V2は低電圧系回路の正電源電位(低電圧系正電源電位VDDと称す)である。入力信号は少なくとも論理0と論理1とを有し、本実施形態では、論理0に対応する入力信号は第1電位V1であるか、或いは第1電位V1に近い電位であり、少なくとも第1電位V1と第2電位V2との平均電位よりも第1電位V1側の値となる電位である。同様に、論理1に対応する入力信号は第2電位V2であるか、或いは第2電位V2に近い電位であり、少なくとも第1電位V1と第2電位V2との平均電位よりも第2電位V2側の値となる電位である。低電圧系回路における論理信号の振幅(低振幅の論理信号、第1電位V1と第2電位V2との電位差)は1.8V程度から5V程度で有る事が多い。
電位変換部18は、第1電位V1を第6電位V6に変換すると共に、第2電位V2を第7電位V7に変換して、電位変換部18の出力ノードに出力する。即ち、第1電位V1と第2電位V2との間の値となる入力信号は、第6電位V6と第7電位V7との間の値となる中間信号に変換される。本実施形態では、論理0の入力信号に対応する中間信号が第6電位V6又は第6電位V6に近い電位であり、論理1の入力信号に対応する中間信号が第7電位V7又は第7電位V7に近い電位である。この例では、第6電位V6は電位変換部18の出力ノードでの中間信号の内で低い方の電位(中間低電位VMLと称す)であり、第7電位V7は電位変換部18の出力ノードでの中間信号の内で高い方の電位(中間高電位VMHと称す)である。
電位変換部18の出力ノードとバッファー部13の入力ノードとは電気的に接続され、電位変換部18からの出力はバッファー部13に入力される。以降、電位変換部18の出力ノードとバッファー部13の入力ノードとを第一ノード(NODE1)と称す。バッファー部13は、バッファー部13に入力された第6電位V6を第3電位V3又は第3電位V3に近い電位に変換すると共に、第7電位V7を第4電位V4又は第4電位V4に近い電位に変換し、バッファー部13の出力ノードから第3電位V3と第4電位V4との間の値となる出力信号を出力する。バッファー部13の出力ノードがレベルシフト回路10の第二出力部OUT2であり、このノードを第三ノード(NODE3)と称する。尚、バッファー部13を構成する第一インバーター回路INV1の出力ノード(第一出力部OUT1)を、レベルシフト回路10の第一出力部OUT1とする事もでき、このノードを第二ノード(NODE2)と称する。レベルシフト回路10の出力部としては、第一出力部OUT1とする事も第二出力部OUT2とする事もいずれも可能である。レベルシフト回路10から高振幅信号が供給される高電圧系回路に応じて、どちらかを適宜選択する事ができる。
第3電位V3は高電圧系回路で使用される二つの電源電位(正電源電位と負電源電位)の一方であり、第4電位V4は高電圧系回路で使用される二つの電源電位(正電源電位と負電源電位)の他方である。本実施形態では、第3電位V3は高電圧系回路の負電源電位(高電圧系負電源電位VLLと称す)であり、第4電位V4は高電圧系回路の正電源電位(高電圧系正電源電位VHHと称す)である。出力信号は、入力信号と同様に、少なくとも論理0と論理1とを有し、本実施形態では、論理0に対応する出力信号は第3電位V3であるか、或いは第3電位V3に近い電位であり、少なくとも第3電位V3と第4電位V4との平均電位よりも第3電位V3側の値となる電位である。同様に、論理1に対応する出力信号は第4電位V4であるか、或いは第4電位V4に近い電位であり、少なくとも第3電位V3と第4電位V4との平均電位よりも第4電位V4側の値となる電位である。高電圧系回路における論理信号の振幅(第3電位V3と第4電位V4との電位差)は低電圧系回路における論理信号の振幅(第1電位V1と第2電位V2との電位差)よりも大きく、電気光学装置では5V程度から50V程度とされる事もある。本実施形態では、一例として、低電圧系回路における論理信号の振幅(第1電位V1と第2電位V2との電位差)が5V又は3.3Vとされ、高電圧系回路における論理信号の振幅(高振幅の論理信号、第3電位V3と第4電位V4との電位差)が10Vとされている。又、本実施形態では、低電圧系負電源電位VSSと高電圧系負電源電位VLLとが等しく、両者が基準電位とされている(VSS=VLL=0V)。尚、低電圧系負電源電位VSSと高電圧系負電源電位VLLとは異なっていても良いし、基準電位とされていなくても良い。
上述の如く、バッファー部13では、第6電位V6と第7電位V7との間の値となる中間信号が、第3電位V3と第4電位V4の間の値となる第一出力信号又は第二出力信号に変換される。バッファー部13は論理閾値電圧VTを有する。このバッファー部13に負電源電位として第3電位V3が供給され、正電源電位として第4電位V4が供給されている場合、バッファー部13の論理閾値電位は第3電位V3と論理閾値電圧VTとの和(V3+VT)である。第一ノード(NODE1)に於ける第6電位V6は論理閾値電位(V3+VT)と第3電位V3との間の値とされ、第7電位V7は論理閾値電位(V3+VT)と第4電位V4との間の値とされる。この結果、論理閾値電位(V3+VT)よりも第3電位V3側の値であった中間低電位VML(第6電位V6)が、第二ノード(NODE2)では論理閾値電位(V3+VT)よりも第4電位V4側の値とされる共に、論理閾値電位(V3+VT)よりも第4電位V4側の値であった中間高電位VMH(第7電位V7)が、第二ノード(NODE2)では論理閾値電位(V3+VT)よりも第3電位V3側の値とされる。又、第三ノード(NODE3)では、第6電位V6がより第3電位V3に近い値とされる共に、第7電位V7がより第4電位V4に近い値とされる。この様に、バッファー部13の第二出力部OUT2では、論理閾値電位(V3+VT)よりも第3電位V3側の値となる中間信号(第6電位V6)を第3電位V3により近づけると共に、論理閾値電位(V3+VT)よりも第4電位V4側の値となる中間信号(第7電位V7)を第4電位V4により近づける機能を有する回路である。
電位変換部18に供給される第5電位V5は、中間低電位VML(第6電位V6)と中間高電位VMH(第7電位V7)とが、論理閾値電位(V3+VT)を挟む様に適宜調整されても良い。こうすると、レベルシフト回路10を確実に動作させる事が可能となる。或いは、第4電位V4と第5電位V5とを等しくしても良い。第3電位V3と第4電位V4と第5電位V5とは、高電圧系の電源であるが、こうする事で、高電圧系の電源の数を削減する事ができる。
こうして、レベルシフト回路10では、第1電位V1と第2電位V2との間の値となる入力信号が第3電位V3と第4電位V4との間の値となる第二出力信号へと正しく振幅変換される。尚、厳密には以上の通りであるが、以降は説明の便宜を図る為、入力信号は、論理0の際に第1電位V1を取り、論理1の際に第2電位V2を取るものとする。同様に、中間信号は、論理0の際に第6電位V6を取り、論理1の際に第7電位V7を取るものとする。又、第二出力信号は、論理0の際に第3電位V3を取り、論理1の際に第4電位V4を取るものとする。尚、論理0と論理1との関係はこれらと反対であっても構わない。具体的には、論理0の際に、入力信号は第2電位V2を取り、中間信号は第7電位V7を取り、出力信号は第4電位V4を取り、論理1の際に、入力信号は第1電位V1を取り、中間信号は第6電位V6を取り、出力信号は第3電位V3を取る構成としても良い。
「回路構成」
図2は、レベルシフト回路に用いられるインバーター回路を説明した図で、(a)はCMOSインバーター回路、(b)はN型インバーター回路、(c)はP型インバーター回路である。次に、レベルシフト回路10の構成を、図1と図2とを参照して説明する。
図1(a)に示される様に、電位変換部18は第一容量素子と第二容量素子とを含んで構成されている。第一容量素子と第二容量素子とは、第5電位V5(本実施形態では高電圧系第二正電源電位VHH')が供給される第5電源部EP5と入力部INとの間に直列に電気的に接続されており、第一容量素子と第二容量素子との接続点が電位変換部18の出力ノード(第一ノード(NODE1))である。具体的には、第一容量素子は第一容量第一電極11と第一容量第二電極12とこれらに挟まれた誘電体膜とを有し、第二容量素子は第二容量第一電極21と第二容量第二電極22とこれらに挟まれた誘電体膜とを有し、第一容量第一電極11は第5電源部EP5に電気的に接続され、第二容量第二電極22は入力部INに電気的に接続され、第一容量第二電極12と第二容量第一電極21とが電気的に接続して接続点(第一ノード(NODE1))となっている。即ち、第一容量素子と第二容量素子とで容量結合型の電位変換部18が構成されている。電位変換部18の出力ノード(第一ノード(NODE1))は第一インバーター回路INV1の入力ノードに電気的に接続されているので、電位変換部18では、第一容量素子と第二容量素子との容量結合にて、入力信号に応じて、第一インバーター回路INV1の入力ノードの電位を定める事になる。
尚、本明細書にて、端子1と端子2とが電気的に接続されているとは、端子1と端子2とが配線により直に接続されている場合の他に、抵抗素子やスイッチング素子を介して接続されている場合を含む。即ち、端子1での電位と端子2での電位とが多少異なっていても、回路上で同じ意味を持たせる場合、端子1と端子2とは電気的に接続されている事になる。従って、例えば、電位変換部18を停止させたり機能させたりする為のスイッチング素子を第一容量第一電極11と第5電源部EP5との間に設けた場合も、そのスイッチング素子がオン状態では、第一容量第一電極11と第5電源部EP5とは導通状態となるので、両者は電気的に接続されている事になる。
特許文献1に記載されている様な従来の回路では中間電位を生成するのに、トランジスターのコンダクタンスが変えられて、ソースドレイン電流の安定点が探されていた。これに対して、レベルシフト回路10の電位変換部18では、ソースドレイン電流の安定点が探される必要性がなく、入力信号に応じて第一ノード(NODE1)に於ける電荷が再分布される事で電位変換が行われるので、高速動作が可能となる。又、特許文献1に記載されている回路では常に貫通電流が発生しているが、レベルシフト回路10では、第一ノード(NODE1)での電荷が保存されるので、貫通電流などの余分な電流が発生することなく、低消費電力とする事ができる。更に、レベルシフト回路10は回路規模が小さいので、占有面積を小さくする事ができる。換言すると、レベルシフト回路10は、占有面積が小さく、低消費電力で、高速動作が可能なのである。
バッファー部13は、第一インバーター回路INV1と第二インバーター回路INV2とを含み、これらが第一ノード(NODE1)と第三ノード(NODE3)との間に直列に電気的に接続されている。即ち、第一ノード(NODE1)が第一インバーター回路INV1の入力ノードであり、第一インバーター回路INV1の出力ノードと第二インバーター回路INV2の入力ノードとが電気的に接続されて第二ノード(NODE2)をなし、第二インバーター回路INV2の出力ノードが第三ノード(NODE3)である。第一インバーター回路INV1の出力ノード(第二ノード(NODE2))がレベルシフト回路10の第一出力部OUT1であり、第二インバーター回路INV2の出力ノード(第三ノード(NODE3))がレベルシフト回路10の第二出力部OUT2である。第一出力部OUT1から出力される第一出力信号は、入力信号の論理が反転した高振幅の信号となる。一方、第二出力部OUT2から出力される第二出力信号は、入力信号と同じ論理の高振幅の信号となる。
第一インバーター回路INV1と第二インバーター回路INV2とには、第3電位V3と第4電位V4とが供給される。この様な構成とすると、インバーター回路が二個との簡単な構成でバッファー部13を構成する事ができる。更に、第3電位V3と第4電位V4との中間付近の電位となる第6電位V6と第7電位V7とを、第二出力部OUT2では、ほぼ第3電位V3とほぼ第4電位V4とする事ができる。即ち、第一出力信号の振幅よりも、第二出力信号の振幅を、第3電位V3と第4電位V4との電位差により近付けた値とする事ができる。従って、第一出力信号の振幅よりも第二出力信号の振幅の方が大きくなる。
本実施形態では、第一インバーター回路INV1と第二インバーター回路INV2とにCMOSインバーター回路が用いられている。図2(a)に示す様に、CMOSインバーター回路は、第3電位V3が供給される第3電源部EP3と第4電位V4が供給される第4電源部EP4との間にN型トランジスターTrNとP型トランジスターTrPとが直列接続されている。N型トランジスターTrNとP型トランジスターTrPとのゲートがインバーター回路の入力ノードINV−INで、N型トランジスターTrNのドレインとP型トランジスターTrPのドレインとが電気的に接続されて、インバーター回路の出力ノードINV−OUTとなる。N型トランジスターTrNのソースは第3電源部EP3に電気的に接続され、P型トランジスターTrPのソースは第4電源部EP4に電気的に接続される。
尚、上述の構成の場合、バッファー部13の論理閾値電位(V3+VT)は第一インバーター回路INV1の論理閾値電位(V3+VT)となる。一般に、インバーター回路の論理閾値電位とは、インバーター回路が論理1と論理0とを区別する電位である。即ち、インバーター回路への入力が論理閾値電位よりも高電位ならば、インバーター回路からの出力を論理閾値電位よりも低電位とし、インバーター回路への入力が論理閾値電位よりも低電位ならば、インバーター回路からの出力を論理閾値電位よりも高電位とするのがインバーター回路の論理閾値電位である。従って、本実施形態では、第一インバーター回路INV1の入力ノードに論理閾値電位(V3+VT)よりも低い電位の信号が入力されると、第一インバーター回路INV1の出力ノードからは論理閾値電位(V3+VT)よりも高く、且つ、高電圧系正電源電位VHH以下の電位の信号が出力される。同様に、第一インバーター回路INV1の入力ノードに論理閾値電位(V3+VT)よりも高い電位の信号が入力されると、第一インバーター回路INV1の出力ノードからは論理閾値電位(V3+VT)よりも低く、且つ、高電圧系負電源電位VLL以上の電位の信号が出力される。
バッファー部13の構成は上述に限られることなく、バッファー部13としての機能を果たす物であれば、いかなる形態であっても良い。又、バッファー部13の後段に更に他のバッファー回路やインバーター回路等を設けてもよい。尚、後述する様に、本実施形態では、レベルシフト回路10の検証には、第二インバーター回路INV2からの出力(第二出力信号)を見ている。
「原理及び検証」
図3は本実施形態に係わるレベルシフト回路の第一ノードに於ける等価回路図である。図4はレベルシフト回路の動作原理を説明した電位関係図で、(a)は論理閾値電位が第3電位と第4電位との中間にある場合、(b)は論理閾値電位が第6電位と第7電位との中間にある場合である。図5は本実施形態に係わるレベルシフト回路の機能を検証した図である。図6は本実施形態に係わるレベルシフト回路の機能を検証した図である。次に、図3乃至6を参照して、本実施形態に係わるレベルシフト回路10の原理を説明すると共に、その機能を検証する。
レベルシフト回路10では、第6電位V6(中間低電位VML)が第一インバーター回路INV1の論理閾値電位(V3+VT)よりも低く、第7電位V7(中間高電位VMH)が第一インバーター回路INV1の論理閾値電位(V3+VT)よりも高くなる様に、第一容量素子の容量値C1と、第二容量素子の容量値C2と、第一インバーター回路INV1を構成するP型トランジスターTrPのトランジスター容量値Cpと、第一インバーター回路INV1を構成するN型トランジスターTrNのトランジスター容量値CNと、第5電位V5とを設定する(以降の説明ではこれらをパラメーター群と略称する)。言い換えると、レベルシフト回路10への入力信号VIN(図3参照)が第1電位V1(低電圧系負電源電位VSS)の際に、第一出力部OUT1からは論理閾値電位(V3+VT)と第4電位V4(高電圧系正電源電位VHH)との間の電位値となる第一出力信号が出力され、レベルシフト回路10への入力信号VINが第2電位V2(低電圧系正電源電位VDD)の際に、第一出力部OUT1からは論理閾値電位(V3+VT)と第3電位V3(高電圧系負電源電位VLL)との間の電位値となる出力信号が出力される様に、パラメーター群が設定される必要がある。以下、これに関して説明する。
まずは、第一ノード(NODE1)に於ける等価回路を説明する。レベルシフト回路10への入力信号VINが第2電位V2(低電圧系正電源電位VDD)の状態では、中間電位VMは第7電位V7(中間高電位VMH)で、P型トランジスターTrPは概ねオフ状態にあるので、P型トランジスターTrPのチャネル形成領域のポテンシャルはソース電位に一致している。従って、図3に示す様に、P型トランジスターTrPのトランジスター容量値Cpは一端が第4電位V4(高電圧系正電源電位VHH)に接続した容量値と見なせる。一方、N型トランジスターTrNはオン状態にあるので、N型トランジスターTrNのドレイン電位とソース電位とはほぼ一致しており、チャネル形成領域にはN型チャネルが形成されている。従って、図3に示す様に、N型トランジスターTrNのトランジスター容量値CNは一端が第3電位V3(高電圧系負電源電位VLL)に接続した容量値と見なせる。入力信号が第1電位V1(低電圧系負電源電位VSS)の際も同じ原理が働き、その際の第一ノード(NODE 1)における等価回路も図3と同じ等価回路となる。但し、この場合、入力信号VINは第1電位V1(低電圧系負電源電位VSS)で、中間電位VMは第6電位V6(中間低電位VML)となる。尚、トランジスター容量値とは、真空の誘電率とゲート絶縁膜の比誘電率とトランジスターのゲート面積(チャンネル形成領域の長さと幅との積)との積をゲート絶縁膜の厚みで除した値である。
図3に示す等価回路では、入力信号VINが第2電位V2(低電圧系正電源電位VDD)の場合、第7電位V7(中間高電位VMH)は数式7にて表される。
同様に、入力信号VINが第1電位V1(低電圧系負電源電位VSS)の場合、第6電位V6(中間低電位VML)は数式8にて表される。
従って、入力信号VINが第2電位V2(低電圧系正電源電位VDD)の際に、第7電位V7(中間高電位VMH)が第一インバーター回路INV1の論理閾値電位(V3+VT)よりも高くなる条件は数式9にて表される。
数式7と数式9とから、パラメーター群が満たさねばならない第一の関係式は数式10となる。
一方、入力信号が第1電位V1(低電圧系負電源電位VSS)の際に、第6電位V6(中間低電位VML)が第一インバーター回路INV1の論理閾値電位(V3+VT)よりも低くなる条件は数式11にて表される。
数式8と数式11とから、パラメーター群が満たさねばならない第二の関係式は数式12となる。
パラメーター群(第一容量素子の容量値C1と、第二容量素子の容量値C2と、第一インバーター回路INV1を構成するP型トランジスターTrPのトランジスター容量値Cpと、第一インバーター回路INV1を構成するN型トランジスターTrNのトランジスター容量値CNと、第5電位V5と、)は数式10と数式12とを満たす様に設定される。数式10は数式13と整理される。
同様に、数式12は数式14と整理される。
数式13と数式14とが、レベルシフト回路10のパラメーター群が満たすべき条件である。パラメーター群が数式13と数式14との関係を満たす事で、レベルシフト回路10への入力信号VINが第1電位V1の際には第6電位V6を第一インバーター回路INV1の論理閾値電位(V3+VT)よりも低くし、入力信号VINが第2電位V2の際には第7電位V7を第一インバーター回路INV1の論理閾値電位(V3+VT)よりも高くする事ができる。従って、第一インバーター回路INV1の出力ノードからは、入力信号が第1電位V1の際には論理閾値電位(V3+VT)と第4電位V4との間の電位値となる第一出力信号を出力する事ができ、入力信号が第2電位V2の際には第3電位V3と論理閾値電位(V3+VT)との間の電位値となる第一出力信号を出力する事ができる。即ち、簡単な回路構成で、低消費電力で高速に正しく入力信号を高振幅の論理信号へと変換する事ができる様になる。
第3電位V3(高電圧系負電源電位VLL)と第1電位V1(低電圧系負電源電位VSS)とが等しく、これらを基準電位とする場合(VLL=VSS=0)、数式13は数式15となる。
同様に、数式14は数式16となる。
図4(a)に示す様に、第一インバーター回路INV1の論理閾値電位(V3+VT)を第3電位V3(高電圧系負電源電位VLL)と第4電位V4(高電圧系正電源電位VHH)との電位差の中心に設定した際には(VT=(V4−V3)/2)、数式13は数式17となる。
この際に、同様に、数式14は数式18となる。
更に、この際に、第3電位V3(高電圧系負電源電位VLL)と第1電位V1(低電圧系負電源電位VSS)とが等しく、これらを基準電位とする場合(VLL=VSS=0)、数式17は数式19となる。
同様に、数式18は数式20となる。
一方、図4(b)に示す様に、第7電位V7(中間高電位VMH)と第6電位V6(中間低電位VML)とが第一インバーター回路INV1の論理閾値電位(V3+VT)を挟んで対称とするには、数式21の関係を満たす必要がある。
数式21を整理すると、数式22が得られる。
パラメーター群が数式13と数式14と数式22とを満たすと、第7電位V7(中間高電位VMH)と第6電位V6(中間低電位VML)とが第一インバーター回路INV1の論理閾値電位(V3+VT)を挟んで対称となっているので、レベルシフト回路10は極めて安定的に動作する事になる。
第4電位V4と第5電位V5とを等しく設定し、高電圧系電源の数を減らして、簡単な電源構成としたい場合がある。この場合には、数式13と数式14と数式22とで、V4=V5として、これらの関係式を満たす様に、第一容量素子の容量値C1と、第二容量素子の容量値C2と、第一インバーター回路INV1を構成するP型トランジスターTrPのトランジスター容量値Cpと、第一インバーター回路INV1を構成するN型トランジスターTrNのトランジスター容量値CNとを設定する。ところが、製造誤差により、実際に製造された回路の第一容量素子の容量値C1と、第二容量素子の容量値C2と、第一インバーター回路INV1を構成するP型トランジスターTrPのトランジスター容量値Cpと、第一インバーター回路INV1を構成するN型トランジスターTrNのトランジスター容量値CNとが、V4=V5の条件下で、V4=V5とした数式13と数式14と数式22とを満たさない場合もあり得る。この様な場合に第5電位V5を第4電位V4からずらして、数式13と数式14と数式22とを満たす様に微調整させると、レベルシフト回路10は正確に動作する様になる。
更に、第一インバーター回路INV1の論理閾値電位(V3+VT)を第3電位V3(高電圧系負電源電位VLL)と第4電位V4(高電圧系正電源電位VHH)との電位差の中心に設定すると(VT=(VHH−VLL)/2)、数式22は数式23となる。
更に、この際に、第3電位V
3(高電圧系負電源電位V
LL)と第1電位V
1(低電圧系負電源電位V
SS)とが等しく、これらを基準電位とする場合(V
LL=V
SS=0)、数式23は数式24となる。
又、第4電位V4(高電圧系正電源電位VHH)と第5電位V5(VHH')とが等しい場合には、数式22と数式23、数式24は其々数式25、数式26、数式27となる。
結局、レベルシフト回路10の設計手順は以下となる。
まず、高電圧系回路及びレベルシフト回路10に用いられるインバーター回路の論理閾値電位(V3+VT)が第3電位V3(高電圧系負電源電位VLL)と第4電位V4(高電圧系正電源電位VHH)との電位差の中心となる様に(VT=(V4−V3)/2となる様に)、インバーター回路を構成するN型トランジスターTrNの長さLNと幅WNとの比(WN/LN)、及びインバーター回路を構成するP型トランジスターTrPの長さLPと幅WPとの比(WP/LP)、を定める。これは、N型トランジスターTrNのVgs=Vds=VT−V3=V4/2−3V3/2の際のソースドレイン電流と、P型トランジスターTrPのVgs=Vds=VT−V4=−V4/2−V3/2の際のソースドレイン電流と、が等しくなる様にWN/LNとWP/LPとを定める。
次に、第4電位V4(高電圧系正電源電位VHH)と第5電位V5(VHH')とが等しい事を前提に、パラメーター群を数式13と数式14と数式26とを満たす様に設定する。
この様に設計されたレベルシフト回路10が、実際に製造された際に、動作マージンが狭かったり、或いは、動作しなかったりした場合には、第5電位V5(VHH')を第4電位V4(高電圧系正電源電位VHH)からずらして、パラメーター群が数式13と数式14と数式22とを満たす様にする。こうする事で多少の製造誤差があっても、レベルシフト回路10は正しく機能する事になる。
<実施例1>
次に、図5を参照して、本実施形態に係わるレベルシフト回路10の機能を検証する。本実施例では、各種電位は、V1=0V、V2=5V、V3=0V、V4=10V、V5=10V、である。第一インバーター回路INV1を構成するP型トランジスターTrPのゲート絶縁膜の厚みは75nm、長さはLP=5μm、幅はWP=10μm、で、P型トランジスターTrPのトランジスター容量値はCP=0.023pFである。又、N型トランジスターTrNのゲート絶縁膜の厚みは75nm、長さはLN=3μm、幅はWN=5μm、で、N型トランジスターTrNのトランジスター容量値はCN=0.0069pFである。この結果、第一インバーター回路INV1の論理閾値電圧はVT=5Vとなる。第一容量素子の誘電体膜の厚みは75nm、長さはL1=109μm、幅はW1=10μm、であり、第一容量素子の容量値はC1=0.5pFである。又、第二容量素子の誘電体膜の厚みは75nm、長さはL2=217μm、幅はW2=10μm、であり、第二容量素子の容量値はC2=1pFである。尚、N型トランジスターTrNのゲート絶縁膜とP型トランジスターTrPのゲート絶縁膜と第一容量素子の誘電体膜と第二容量素子の誘電体膜とは酸化珪素膜であり、比誘電率は3.9である。
これらのパラメーター群は数式13と数式14とを満たして、図5に示す様に、レベルシフト回路10は正しく高速に動作する。尚、実施例1のパラメーター群の値を数式7に代入して得られる第7電位はV7=6.69Vであり、図5にNODE1にて示す第一ノードの中間高電位VMHに一致している。又、実施例1のパラメーター群の値を数式8に代入して得られる第6電位はV6=3.42Vであり、図5にNODE1にて示す第一ノードの中間低電位VMLに一致している。尚、図5でNODE1が0Vから開始されているのは、第一容量素子と第二容量素子とによる電荷分配の初期状態を実現する為の措置である。換言すれば電源投入シーケンスを含めたシミュレーションの結果である。
<実施例2>
次に、図6を参照して、本実施形態に係わるレベルシフト回路10の機能を検証する。本実施例では、各種電位は、V1=0V、V2=3.3V、V3=0V、V4=10V、V5=10V、である。第一インバーター回路INV1を構成するP型トランジスターTrPのゲート絶縁膜の厚みは75nm、長さはLP=4μm、幅はWP=2.5μm、で、P型トランジスターTrPのトランジスター容量値はCP=0.0046pFである。又、N型トランジスターTrNのゲート絶縁膜の厚みは75nm、長さはLN=3.2μm、幅はWN=2.5μm、で、N型トランジスターTrNのトランジスター容量値はCN=0.00368pFである。この結果、第一インバーター回路INV1の論理閾値電圧はVT=5Vとなる。第一容量素子の誘電体膜の厚みは75nm、長さはL1=125μm、幅はW1=10μm、であり、第一容量素子の容量値はC1=0.575pFである。又、第二容量素子の誘電体膜の厚みは75nm、長さはL2=187μm、幅はW2=10μm、であり、第二容量素子の容量値はC2=0.860pFである。尚、N型トランジスターTrNのゲート絶縁膜とP型トランジスターTrPのゲート絶縁膜と第一容量素子の誘電体膜と第二容量素子の誘電体膜とは酸化珪素膜であり、比誘電率は3.9である。
これらのパラメーター群は数式13と数式14と数式22とを満たして、図6に示す様に、レベルシフト回路10は正しく高速に動作する。尚、実施例2のパラメーター群の値を数式7に代入して得られる第7電位はV7=5.98Vであり、図6にNODE1にて示す第一ノードの中間高電位VMHに一致している。又、実施例2のパラメーター群の値を数式8に代入して得られる第6電位はV6=4.02Vであり、図6にNODE1にて示す第一ノードの中間低電位VMLに一致している。尚、図6でもNODE1が0Vから開始されているのは、第一容量素子と第二容量素子による電荷分配の初期状態を実現するための措置であり、換言すれば、電源投入シーケンスを含めたシミュレーションの結果である。
「電気光学装置」
図7は、実施形態1に係わる電気光学装置の回路ブロック構成を示す模式平面図である。以下、図7を参照して電気光学装置の回路ブロック構成を説明する。
上述のレベルシフト回路10は電気光学装置等に使用される。電気光学装置の一例は液晶装置100であり、薄膜トランジスター素子(画素トランジスター)46を画素35(図9参照)のスイッチング素子として用いたアクティブマトリックス方式の電気光学装置である。図7に示す様に、液晶装置100は表示領域34と信号線駆動回路36と走査線駆動回路38と外部接続端子37とレベルシフト回路10とを少なくとも備えている。信号線駆動回路36と走査線駆動回路38と外部接続端子37とレベルシフト回路10とは画素トランジスター46にて構成される。
表示領域34内には、画素35がマトリックス状に設けられている。画素35は、交差する走査線16(図9参照)と信号線17(図9参照)とによって特定される領域で、一つの画素35は一本の走査線16からその隣の走査線16まで、且つ、一本の信号線17からその隣の信号線17までの領域である。表示領域34の外側の領域には、信号線駆動回路36及び走査線駆動回路38が形成されている。走査線駆動回路38は表示領域34に隣り合う二辺に沿ってそれぞれ形成されている。
外部接続端子37には、半導体集積回路を含む不図示の外部制御回路が電気的に接続される。半導体集積回路は低電圧系回路であり、従って、外部接続端子37に供給される論理信号は低振幅信号で、第1電位V1と第2電位V2との間の値となる。一方、信号線駆動回路36や走査線駆動回路38で使用される論理信号は高振幅信号で、第3電位V3と第4電位V4との間の値となる。その為に、電気光学装置では、外部接続端子37とこれらの回路との間に信号毎にレベルシフト回路10を備えている。
外部接続端子37から信号線駆動回路36には、X側クロック信号CLXや信号線駆動回路用のデータDTX等が供給されている。同様に、外部接続端子37から走査線駆動回路38には、Y側クロック信号CLYや走査線駆動回路用のデータDTY等が供給されている。外部接続端子37と信号線駆動回路36との間、及び外部接続端子37と走査線駆動回路38との間、には信号毎にレベルシフト回路10が配置されており、これにより外部制御回路から供給された低振幅の論理信号が、高振幅の論理信号へと変換される。例えば、低振幅のY側クロック信号CLYはレベルシフト回路10により高振幅Y側クロック信号CLYLSに変換され、低振幅の走査線駆動回路用のデータDTYはレベルシフト回路10により高振幅走査線駆動回路用のデータDTYLSに変換される。又、低振幅のX側クロック信号CLXはレベルシフト回路10により高振幅X側クロック信号CLXLSに変換され、低振幅の信号線駆動回路用のデータDTXはレベルシフト回路10により高振幅信号線駆動回路用のデータDTXLSに変換される。他の信号に関しても同様である。尚、図7では、総ての配線や総ての外部接続端子を描いてある訳ではなく、説明を分かり易くする為に、これらから代表的な配線のみを描いてある。
図8は液晶装置の模式断面図である。以下、液晶装置の断面構造を、図8を参照して説明する。尚、以下の形態において、「○○上に」と記載された場合、○○の上に接する様に配置される場合、又は、○○の上に他の構成物を介して配置される場合、又は、○○の上に一部が接する様に配置され一部が他の構成物を介して配置される場合、を表すものとする。
液晶装置100では、一対の基板を構成する素子基板24と対向基板23とが、平面視で略矩形枠状に配置されたシール材14にて貼り合わされている。液晶装置100は、シール材14に囲まれた領域内に液晶層15が封入された構成になっている。液晶層15としては、例えば、正の誘電率異方性を有する液晶材料が用いられる。液晶装置100は、シール材14の内周近傍に沿って遮光性材料からなる平面視矩形枠状の遮光膜33が対向基板23に形成されており、この遮光膜33の内側の領域が表示領域34となっている。遮光膜33は、例えば、遮光性材料であるアルミニウム(Al)で形成されており、対向基板23側の表示領域34の外周を区画する様に、更に、上記した様に、表示領域34内で走査線16と信号線17に対向して設けられている。
図8に示す様に、素子基板24の液晶層15側には、複数の画素電極42が形成されており、これら画素電極42を覆う様に第1配向膜43が形成されている。画素電極42は、インジウム錫酸化物(ITO)等の透明導電材料からなる導電膜である。一方、対向基板23の液晶層15側には、格子状の遮光膜33が形成され、その上に平面ベタ状の共通電極27が形成されている。そして、共通電極27上には、第2配向膜44が形成されている。共通電極27は、ITO等の透明導電材料からなる導電膜である。
液晶装置100は透過型であって、素子基板24及び対向基板23における光の入射側と出射側とにそれぞれ偏光板(図示せず)等が配置されて用いられる。なお、液晶装置100の構成は、これに限定されず、反射型や半透過型の構成であってもよい。
図9は、液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。以下、液晶装置の電気的な構成を、図9を参照しながら説明する。
図9に示す様に、液晶装置100は、表示領域34を構成する複数の画素35を有している。各画素35には、それぞれ画素電極42が配置されている。又、画素35には、画素トランジスター46が形成されている。
画素トランジスター46は、画素電極42へ通電制御を行うスイッチング素子である。画素トランジスター46のソース側には、信号線17が電気的に接続されている。各信号線17には、例えば、信号線駆動回路36から画像信号S1、S2、…、Snが供給される様になっている。
又、画素トランジスター46のゲート側には、走査線16が電気的に接続されている。走査線16には、例えば、走査線駆動回路38から所定のタイミングでパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmが供給される様になっている。又、画素トランジスター46のドレイン側には、画素電極42が電気的に接続されている。
走査線16から供給された走査信号G1、G2、…、Gmにより、スイッチング素子である画素トランジスター46が一定期間だけオン状態となることで、信号線17から供給された画像信号S1、S2、…、Snが、画素電極42を介して画素35に所定のタイミングで書き込まれる様になっている。
画素35に書き込まれた所定電位の画像信号S1、S2、…、Snは、画素電極42と共通電極27(図8参照)との間で形成される液晶容量で一定期間保持される。尚、保持された画像信号S1、S2、…、Snの電位が、漏れ電流により、低下する事を抑制すべく、画素電極42と容量線47とで保持容量48が形成されている。
液晶層15に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより、液晶分子の配向状態が変化する。これにより、液晶層15に入射した光が変調されて、画像光が生成される。
尚、本実施形態では、電気光学装置として液晶装置100を用いて説明したが、この他に電気光学装置としては、電気泳動表示装置や有機EL装置なども対象となる。又、本実施形態では、レベルシフト回路10を薄膜トランジスター素子にて構成したが、レベルシフト回路10は半導体基板に形成された半導体集積回路(IC回路)で構成されても良い。レベルシフト回路10に適した半導体基板としては、シリコン基板の他にシリコンカーバイト基板などが挙げられる。
「電子機器」
図10は本実施形態に係わる電子機器を説明する図である。次に、本実施形態の電子機器について、図10を参照して説明する。図10(a)乃至(c)は、上記した液晶装置を備えた電子機器の構成を示す斜視図である。
図10(a)に示す様に、液晶装置100を備えたモバイル型のパーソナルコンピューター2000は、液晶装置100と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001及びキーボード2002が設けられている。
続いて、図10(b)に示す様に、液晶装置100を備えた携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての液晶装置100を備える。スクロールボタン3002を操作する事によって、液晶装置100に表示される画面がスクロールされる。
続いて、図10(c)に示す様に、液晶装置100を備えた情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002、並びに表示ユニットとしての液晶装置100を備える。操作ボタン4001を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が液晶装置100に表示される。
尚、液晶装置100が搭載される電子機器としては、図10に示す物の他に、ピコプロジェクター、ヘッドアップディスプレイ、スマートフォン、ヘッドマウントディスプレイ、EVF(Electrical View Finder)、小型プロジェクター、モバイルコンピューター、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、ディスプレイ、車載機器、オーディオ機器、露光装置や照明機器等、各種電子機器に用いる事ができる。
以上詳述した様に、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。まず、占有面積が小さく、低消費電力で、高速動作が可能なレベルシフト回路10を実現する事ができる。その結果、表示領域34の外周に位置する周辺領域を狭め、低消費電力で高速駆動する電気光学装置を実現する事ができる。即ち、電気光学装置全体に対する表示領域34の割合が大きい、デザイン性に優れた電気光学装置に高品位な表示を行わせる事ができる。又、デザイン性に優れ、低消費電力で高品位表示が可能な電気光学装置を備えた電子機器を実現する事ができる。さらに高速動作が可能であることから、単位時間あたりの情報量を多く取り扱えることになり、高精細な表示に対応させることが可能となる。
(実施形態2)
「リセットトランジスターを備えた形態1」
図11は、実施形態2に係わるレベルシフト回路を説明した回路構成図である。以下、図11を参照して本実施形態に関わるレベルシフト回路10の構成を説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態(図11)は実施形態1(図1(a))と比べて、リセットトランジスター19が設けられている点が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。実施形態1(図1)で述べた様に、第一ノード(NODE1)の電荷は原則として保存されるが、実際にはゲート絶縁膜や誘電体膜を介する漏れ電流により、レベルシフト回路10の動作中に電荷量が徐々に変わって来る恐れがある。第一ノード(NODE1)に於ける電荷量が著しく変化すると、レベルシフト回路10は正しく動作しなくなる事もあり得る。本実施形態のレベルシフト回路10は、この恐れを解消する為に、リセットトランジスター19を設けてある。
リセットトランジスター19のソースドレインの一方は第一ノード(NODE1)に電気的に接続され、他方は電源に接続されている。本実施形態では、ソースドレインの他方は接地電位VGrdとされている。尚、本実施形態では、低電圧系負電源電位VSSと高電圧系負電源電位VLLと接地電位VGrdとは等しくされている(VSS=VLL=VGrd)。リセットトランジスター19のゲートにはリセット信号Rstが供給される。リセット信号Rstがアクティブならば、リセットトランジスター19はオン状態となり、第一ノード(NODE1)を接地電位にリセットする。一方、リセット信号Rstが非アクティブならば、リセットトランジスター19はオフ状態となり、第一ノード(NODE1)と電源とを遮断する。本実施形態では、リセットトランジスター19はN型トランジスターTrNで、アクティブのリセット信号Rstとして第4電位V4が供給され、非アクティブのリセット信号Rstとして第3電位V3が供給される。尚、リセットトランジスター19をP型トランジスターTrPとし、アクティブのリセット信号Rstとして第3電位V3が供給され、非アクティブのリセット信号Rstとして第4電位V4が供給される構成としても構わない。
まず第2電位V2や第4電位V4、第5電位V5等の供給と言った電源投入に先立ち、リセット信号Rstをアクティブとして、第一ノード(NODE1)が接地電位にリセットされる。次いでリセット信号Rstを非アクティブとして、第一ノード(NODE1)と電源とを遮断する。その後に第1電位V1から第5電位V5を第1電源部から第5電源部EP5へと其々供給してから、入力部INに入力信号を入力する。
こうした構成としても、実施形態1と同じ効果が得られ、更に、レベルシフト回路10を正しく動作させる事が可能となる。
(実施形態3)
「リセットトランジスターを備えた形態2」
図12は、実施形態3に係わるレベルシフト回路を説明した回路構成図である。以下、図12を参照して本実施形態に関わるレベルシフト回路10の構成を説明する。尚、実施形態2と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態(図12)は実施形態2(図11)と比べて、リセットトランジスター19の接続形態が異なっている。それ以外の構成は、実施形態2とほぼ同様である。実施形態2(図11)ではソースドレインの他方には接地電位が供給されていた。これに対して本実施形態では、リセットトランジスター19のソースドレインの他方にはリセット電位VRSTが供給される。それ以外の構成は、実施形態2とほぼ同様である。
リセットトランジスター19のソースドレインの一方は第一ノード(NODE1)に電気的に接続され、他方はリセット電源部に接続されている。リセット電源部にはリセット電位VRSTが供給される。リセットトランジスター19のゲートにはリセット信号Rstが供給される。リセットトランジスター19がオン状態となるリセット信号Rstをアクティブリセット信号VAと称する。又、リセットトランジスター19がオフ状態となるリセット信号Rstを非アクティブリセット信号VNAと称する。
リセット電位VRSTは、入力信号が第2電位V2であるならば、高リセット電位VRSTH(VRST=VRSTH)であり、入力信号が第1電位V1であるならば、低リセット電位VRSTL(VRST=VRSTL)である。高リセット電位VRSTHは数式28と表される。
又、低リセット電位VRSTLは数式29と表される。
数式28と数式29とで、CRはリセットトランジスター19のトランジスター容量である。又、本実施形態ではリセットトランジスター19がN型トランジスターTrNであるので、アクティブリセット信号VAを高電圧系正電源電位VHHとし(VA=VHH)、非アクティブリセット信号VNAを高電圧系負電源電位VLLとするのが好ましい(VNA=VLL)。
リセット方法は、第1電位V1から第5電位V5を第1電源部から第5電源部EP5へと其々供給する電源投入後で、入力信号が第2電位V2であるならば、リセット電位VRSTを数式28に記載の高リセット電位VRSTH(VRST=VRSTH)とし、リセットトランジスター19のゲートにアクティブリセット信号VAを供給して、第一ノード(NODE1)をVRSTHにリセットする。
第1電位V1から第5電位V5を第1電源部から第5電源部EP5へと其々供給する電源投入後で、入力信号が第1電位V1であるならば、リセット電位VRSTを数式29に記載の低リセット電位VRSTL(VRST=VRSTL)とし、リセットトランジスター19のゲートにアクティブリセット信号VAを供給して、第一ノード(NODE1)をVRSTLにリセットする。
その後、リセットトランジスター19のゲートに非アクティブリセット信号VNAを供給して、リセットトランジスター19をオフ状態にする。すると、容量結合により第一ノード(NODE1)は、入力信号が第2電位V2であるならば中間高電位VMHとなり、入力信号が第1電位V1であるならば中間低電位VMLとなる。その後、リセットトランジスター19を閉じたまま(リセットトランジスター19のゲートに非アクティブリセット信号VNAを供給したまま)、レベルシフト回路10を動作させる。レベルシフト回路10の動作中に時々、上述のリセット動作を導入しても良い。
こうした構成としても、実施形態1と同じ効果が得られ、更に、レベルシフト回路10を連続して長時間使用しても、正しく動作させる事が可能となる。
(実施形態4)
「インバーター回路がN型の形態」
図2(b)は、実施形態4に係わるレベルシフト回路で使用されているインバーター回路を説明した図である。以下、図2(b)を参照して本実施形態に関わるレベルシフト回路10の構成を説明する。尚、実施形態1乃至3と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態(図2(b))は実施形態1(図2(a))と比べて、インバーター回路の構成が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1乃至3とほぼ同様である。実施形態1ではCMOSインバーター回路が使用されていた。これに対して本実施形態では、N型インバーター回路が使用される。それ以外の構成は、実施形態1乃至3とほぼ同様である。
本実施形態のレベルシフト回路10においては、第一インバーター回路INV1も第二インバーター回路INV2もN型インバーター回路が使用される。N型インバーター回路では、第3電位V3が供給される第3電源部EP3と第4電位V4が供給される第4電源部EP4との間にN型トランジスターTrNと抵抗素子とが直列接続されている。具体的には、N型トランジスターTrNのゲートがインバーター回路の入力ノードINV−INで、N型トランジスターTrNのドレインと抵抗素子の一方の端子とが電気的に接続されて、インバーター回路の出力ノードINV−OUTとなる。N型トランジスターTrNのソースは第3電源部EP3に電気的に接続され、抵抗素子の他方の端子は第4電源部EP4に電気的に接続される。
パラメーター群が満たすべき関係は実施形態1と同じで、実施形態1に現れる数式でP型トランジスターTrPのトランジスター容量値をゼロとした(CP=0)関係式である。従って、例えば、数式13は数式30となり、P型トランジスターTrPのトランジスター容量値を除いた他のパラメーター群は数式30の関係式を満たす事が好ましい。
同様に、例えば、数式14は数式31となり、P型トランジスターTrPのトランジスター容量値を除いた他のパラメーター群は数式31の関係式を満たす事が好ましい。
こうした構成としても実施形態1乃至3と同じ効果が得られる。加えて、P型トランジスターTrPを使用せずに、レベルシフト回路10を実現できる。従って、CMOS構成が困難な非晶質シリコン薄膜トランジスターや酸化物薄膜トランジスターなどでレベルシフト回路10を実現できる。酸化物薄膜トランジスターの半導体層には亜鉛又は錫を含む酸化物が使用される。
(実施形態5)
「インバーター回路がP型の形態」
図2(c)は、実施形態5に係わるレベルシフト回路で使用されているインバーター回路を説明した図である。以下、図2(c)を参照して本実施形態に関わるレベルシフト回路10の構成を説明する。尚、実施形態1乃至3と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明は省略する。
本実施形態(図2(c))は実施形態1(図2(a))と比べて、インバーター回路の構成が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1乃至3とほぼ同様である。実施形態1ではCMOSインバーター回路が使用されていた。これに対して本実施形態では、P型インバーター回路が使用される。それ以外の構成は、実施形態1乃至3とほぼ同様である。
本実施形態のレベルシフト回路10においては、第一インバーター回路INV1も第二インバーター回路INV2もP型インバーター回路が使用される。P型インバーター回路では、第3電位V3が供給される第3電源部EP3と第4電位V4が供給される第4電源部EP4との間に抵抗素子とP型トランジスターTrPとが直列接続されている。具体的には、P型トランジスターTrPのゲートがインバーター回路の入力ノードINV−INで、P型トランジスターTrPのドレインと抵抗素子の一方の端子とが電気的に接続されて、インバーター回路の出力ノードINV−OUTとなる。P型トランジスターTrPのソースは第4電源部EP4に電気的に接続され、抵抗素子の他方の端子は第3電源部EP3に電気的に接続される。
パラメーター群が満たすべき関係は実施形態1と同じで、実施形態1に現れる数式でN型トランジスターTrNのトランジスター容量値をゼロとした(CN=0)関係式である。従って、例えば、数式13は数式32となり、N型トランジスターTrNのトランジスター容量値を除いた他のパラメーター群は数式32の関係式を満たす事が好ましい。
同様に、例えば、数式14は数式33となり、N型トランジスターTrNのトランジスター容量値を除いた他のパラメーター群は数式33の関係式を満たす事が好ましい。
こうした構成としても実施形態1乃至3と同じ効果が得られる。加えて、N型トランジスターTrNを使用せずに、レベルシフト回路10を実現できる。従って、CMOS構成が困難な有機物薄膜トランジスターなどでレベルシフト回路10を実現できる。有機物薄膜トランジスターの半導体層には、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コージチオフェン)(F8T2)や、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ[5,5’−ビス(3−ドデシル−2チニル)−2,2’−ビチオフェン](PQT−12)、PBTTT、ペンタセン等の有機物が使用される。
尚、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。